○
説明員(谷村裕君) 銀
行課長より御説明申上げます。
提案
理由説明におきましてすでに御承知のことと思いますけれ
ども、改正の要点を
法律の条文に従いまして簡単に申上げ
ようと思います。
今回の金融機関再建整備改正
法案の要点は二つございます。第一は調整勘定の処理に関連する問題であります。第二は
只今閉鎖機関等におきまして問題と
なりました在外預金或いは未払送金為替等、在外資産負債の処理に関連する問題であります。
先ず第一に調整勘定
関係から申上げます。調整勘定の第一は、すでに処分が行われました旧勘定所属の資産につきまして、再評価差額が調整勘定利益金として調整勘定のほうに廻わされるという点でございます。これは提案
理由説明の先ず第一というところで申上げておる点でございます。条文で申上げますと第三十七条の二項三項のところが中心になるわけでございます。即ち第三十七条の二項、
法案で言いますと第一ページ目の後から二行目のところに「前項に
規定する処分益又は処分損とは、」というところで、大体旧勘定に属しました資産の処分の益が出る、その処分益とは何であるか、処分損とは何であるかということの定義をはつきりといたしたわけでございます。これによりましていわゆる新旧勘定が併行いたしまして、旧勘定がその資産を新勘定に引き渡しました際の、そのときの引き渡した価額、これが処分損益を決定する
基準になるということを今回明らかにいたしました。従いまして再評価差額もそのときを
基準にして考えるわけでございますから、処分益の中には当然含まれて来るわけなんでございます。
その次に二ページのほうに入りまして「第一項に
規定する増価益又は減価損とは、」ということで、調整勘定利益に帰属すべき増加益或いは損失となるべき減価損、これは何であるかということを定義として明らかにいたしました。これでここに言う増加益或いは、減価損というものは、暫定評価のものについて確定評価のものについて確定評価がきまつた、そのときに殖えた分が増加益なんだ、減つた分が減価損なんだということを明らかにいたしました。従いまして今まで増加益の
規定が不十分でありましたためにわざわざ資産再評価法第百十一条を以ちまして、この増加益の中には資産再評価法による再評価益というものは含まれないという
規定がわざわざ設けてありましたが、それが今回要らなく
なつたわけであります。それで第二十ページのところの附則の「百十一条削除」と、こう書いてございますが、これは資産再評価法の第百十一条を削除しておるわけであります。二十ページの終りから三行目に書いておるわけであります。
それから内容を若干細かく
なりますが、これから処分をするものばかりではなくて、すでに処分されたものについてもそり再評価益は調整勘定のほうに帰属するという遡及の
規定を設けました。これが附則の六項であります。例えば協和銀行が芝にありました建物を売りまして第二丸ビルに移りました。第二丸ビルのほうは借家でございます。そうして旧本店を売りました際に相当大きな処分益が出たのでありますが、その大
部分は再評価差益として新勘定のほうに留保されておりまして、これが今回の
規定によりまして調整勘定のほうに廻ることにいたしまして、それによりまして第二封鎖預金の支払は今考えておりますよりも余計になる、こういう結果がこれから起
つて来るわけであります。
以上の
ように再評価差益を調整勘定のほうに廻すということに
なりますると、どうしても再評価積立金の取くずしが必要となるわけであります。それをやはり附則の八、九というところで、遡及した分につきましてもそうでございますが、附則の八項、九項というところで再評価積立金を取くずすことができるという
規定を設けたわけでございます。これは十九ページのところに調整勘定を設けておる金融機関そのものが再評価積立金を取くずすということで書いてございます。以上が大体再評価
関係のことを調整勘定との関連においてどう処理するかというポイントでございます。
第二点は調整勘定の閉鎖の
条件として、今の
法律三十七条の三第一項にあります資産負債の
整理の完了という
事態を明らかに、どういうときがこれに該当するのであるかということを明示いたしましたことは、
法案の二ページ目の真中辺、第三十七条の三第一項中「
整理が完了したとき」の下に「(これらの資産及び負債のうち、第七条第一項の命令で定めるものを除くすべてについて確定評価
基準による評価が行われたときを含む)」、こういうふうにいたしまして、調整勘定を閉鎖し得る
条件として、すべての旧勘定所属の資産負債について確定評価
基準がきめられたときにはもうそれで
整理が完了したのであるから、だから調整勘定は一〇〇%分配しなくても閉めてよろしいということをきめた次第でございます。それに関連いたしまして、従来暫定評価のままで来ておりますものについて、この際確定評価をきめることができるという
規定を設けまして、これは第一ページ目に第三十六の二として
規定してございます。条文の順序は条文の番号に従いますので前後いたしますが、趣旨はそういうことでございます。そこで調整勘定は本来調整勘定利益の全部を旧預金者等に分配いたしましたときに閉め得るのが理想的でございますが、なかなかそういう状態になるのも時間がかかる。併し戦争後のいろいろなそういつた旧秩序
関係の
整理が十年、十五年た
つてもまだ片が付かないという
ようなことでは困りますので、やはり
一定の時限を以て、調整勘定ならば調整勘定というものは
整理すべきときが来た、その場合には一〇〇%分配がなくても一応
整理する態勢に入る、こういうことにいたしまして、大
部分の金融機関のうちまあ相当
部分のものは調整勘定一〇〇%分配し得る
可能性も持
つておりますけれ
ども、そうでなくても調整勘定は閉め得るという
条件を作ることにいたしたわけでございます。それが第二点。
それから第三点は、調整勘定利益に若し余分がありますときには旧株主へも分配ができると、こういう
規定でございまして、二ページ目の終りから二行目の「金融機関はその調整勘定の閉鎖の際、同勘定に利益金の残額があるときは、」云々ということにいたしております。これはいろいろ問題がございますが、とにかく再建整備に当りまして損失負担いたしまして資本金を飛ばしてしまつたそういう金融機関におきまして、大体普通で行けば九割減資、もつと少なくて済んだのもございますが、ひどいところは全額飛んでしまつたというそのときに、損を負担した株主に、折角調整勘定の金が余つた場合に、調整勘定のお金というものはそういう
意味では一種の清算勘定だ。
従つて預金者等に払
つてまだ余りがあるならば旧株主にお返ししてもいいではないか、それが公平である。こういう
考え方に出ております。但し残金財産の分配のごとき、五十円の株に対して利益がうんと出たからと
言つて五百円配るということにはいたしませんで、五十円の株の金額、たまたま五十円という債権を持
つておつたという
ような形で旧株主の地位をあたかも預金者にやや遅れる
ような形における債権者の形において今回は扱
つております。これは
金融機関再建整備法による旧勘定の
整理というものが特別な清算方式によ
つておりまして、先ず株に九割手をつけて、それから預金を切り、そうして更に最後に又一割を株に手をつけるという
ような、株主の地位をやや通常の清算の場合と異
なつた地位に置いておりますためにか
ような扱をするのであります。
ここで三ページ目のほうに入りますが、「先ず負担した確定損に相当する金額」を配り、更に
余裕があれば
利息に相当する金額もやるということで、先ず普通の債権者並みの扱いになるわけでございます。そうして若し足りなければ、前項の場合において、均等の
割合で分配しろというふうに
規定してございます。そうしてなお余つたならば、これは利益準備金として新勘定のほうに廻すということが書いてございます。但し以上の
ような旧株主に分配するということは、在外資産負債を持
つております金融機関については、先ず外の預金者の方々、そういう方々に対する債務の支払が済まなければ申訳ないことでありますから、在外勘定を設ける
ような金融機関につきましては株主は一番最後です。在外預金のかた等に払いを済ましたあとでいたしますということが三ページの一番最後の「前三項の
規定は、」云々というふうに書いてあるわけでございます。
四ページ目に入りましていろいろ税
関係のことが書いてございますが、これは現在第二封鎖預金等の復活という言葉で俗称されておりますが、いわゆる調整勘定利益金の分配に当りましてとられておりますいろいろな税法上のやり方、今度は株主もそれに含まれるわけでございますが、そういつたものについて現在のやり方を
法律上明らかにしておこうということで書いたわけでございまして、元来相当分には税金はかかりませんが、
利息相当分にはやはりこれは
利息とみなして源泉徴収をするというふうな
規定に
なつております。
以上が大体調整勘定
関係でございますが、次に第五ページに入りまして、第五章の二「在外資産負債の処理」というところでいわゆる
金融機関再建整備法の適用を受けておりまする生きている金融機関、例えば富士銀行でありますとか三井銀行或いは第一銀行、三菱銀行といつた
ようなところのそういう金融機関、それについての在外預金
なり在外未払送金小切手
なりをどうするか、一般的に
言つて在外資産負債をどう扱うかという
規定が以下あるわけでございます。先ほど閉
鎖機関課長のほりから説明しました点と重複するのを避けましてポイントだけ申上げます。
第三十八条の二は、在外資産負債とはこれはどういうものかという定義を書いたわけでございまして、第一項は、今回の
法律によ
つて処理する範囲を
規定してございます。即ち第一には先ず在外資産負債というのはそういつた金融機関の在外店舗に係る資産負債である。即ち上海或いはボンベイ或いは台湾、そういつた
ようなところは今はもう
日本の領土でない。本法施行地外、そういつた所にその当時ありました店舗に係る資産負債、これが今回の処理の対象になる。こういうのが第一点、それから第二点は、現在本法の施行地外に住所を有する者に係る債権債務は除く。即ちパリに住んでおります外国人或いはボンベイにおりまするインド人がボンベイ支店に対して持
つている預金、こういうものを除く、こういうことでございます。
それから第二項は未払送金小切手というものは振出店舗の債務であるということをここに明らかに書いたわけでございます。未払送金小切手というものは御承知の
通り、在外店舗から振出されたまま内地で支払われずにシヤツト・アウトされておつたわけでございます。要するに在外店舗の債務と
なつておりますままで、まだ片が付いておらないというそういう形を、小切手法等の適用を待たずに在外店舗に係る債務であるということを明らかにしたわけでございます。
六ページに入りますが、第三項、これは換算率のことを書いてございます。換算率の内容については申上げません。
それから先ほど小林
委員お尋ねに
なりました債務者主義という点につきまして但書以下で書いてございます。どつちのほうの債務者の換算率で行くんだぞということがここに書いてございます。
それから第四項は、この
法律が施行される日からはもう在外預金については
利息は付かない、こういう
規定でございます。
整理の段階に入りますので
利息は付かない。但しこの
法律が施行されますまでは当時の約束によりまして依然
利息がずつと付いている、こういう観念でございます。
それから第三十八条の三に参りまして、これは在外資産負債の処理のために特別に勘定を設定するという
規定でございます。要するにこれも御存じと思いますが、金融機関が昭和二十一年、例の金融機関経理応急措置法という形で国内資産負債について旧勘定、新勘定というふうに区分を作
つて整理を進めて参りましたが、当時は金融機関経理応急措置法の第三十二条によりまして在外店舗に係る資産負債というもりばそのまま外枠にして処理を進めて参りました。たまたま外枠に
なつております
部分が今回独立に
一つの勘定として扱われる、こういう形でございます。第一項は設定のことが書いてございます。第二項は、これは旧帝国銀行がたまたま第一銀行と新帝国銀行と二つの金融機関に再建整備によ
つて分れました。その
ような場合のことを
規定しておるわけでございます。それから第三項は、これは要するに独立勘定である。他の勘定と混清してはならない、分別しろ、こういうことを
言つておるわけでございます。
次に七ページのおしまいから四行目、第三十八条の四の、どういうふうにこの在外勘定というものは経理をして行くかという点について申上げます。
原則としましては第一項に書いてございます
ように、とにかくどういう債務があるのだということを確認するということがここに出ております。金融機関に証憑書類を添えて未払送金小切手
なり預金通帳
なりを提示する。これは自分が上海銀行に預けておいた金う申出をするわけであります。
八ページに入りまして、第二項、そういうふうにして確認いたしました債務を、これを在外勘定の債務として計上するわけでございます。それからじや一体資産の部には何を計上するかということですが、これはやはり在外店舗等が持
つておりました資産、それがはつきりしたところで、今のところまだ例えば処分、処理が宙に迷
つているという
ようなのはいけませんが、例えば勧業銀行が沖縄に持
つておりました支店の敷地が米軍管理の下におきまして処分されまして、二百万円という金額が送られて参りました。例えばそういう
ようなものはこれは在外資産として計上する。これも第二項に書いてあるところでございます。例えば北拓がたまたま樺太所在の支店が持
つておりました国債が内地に登録してあつたという
ようなものも、これは在外店舗に係わる資産としてはつきりいたしておりますから計上するわけでございます。併し例えばボンベイにおきます三井銀行の昔の支店の資産という
ようなものはどういうふうにこれから処理せられるかまだわからないわけでございますので、そういうものは資産としては計上しない、こういうことに
なります。
それからなおそのほかに第三項と第四項に書いてございますが、第三項は資産の部に国内店舗の在外店舗に対する借というものを計上しろ、こういうことに
なつております。これは例えば北拓の北海道にございます本店は、樺太所在の北拓支店に対しまして、樺太のほうからどんどん金を送つ参りますために、約五千万円僭越しておりますが、借が立
つております。これば金融機関再建整備の債務は在外店舗に対する借として計上しております。その逆の見合になる債権、即ち貸を国内店鋪に対する貸という形で在外店舗のほうは資産に立てるわけでございます。現実には北拓は約五千万円くらいの
資金を在外勘定のほうへこの際資産として計上することに
なります。
それから第四項は調整勘定をすつかり百パーセント配りましてなお余
つておつたらば、その在外勘定の資産のほうへ繰入れろという
規定でございます。具体的に申しますれば、又北拓の例に
なりますが大体調整勘定をすつかり配りまして、なお現在七千万円乃至八千万円ほど、三月末ははつきりいたしませんが、十二月末で七千五百万円ほどだつたと記憶いたしますが、調整勘定の残額がございます。これは株主に行く前に先ずこの在外勘定の資産の部に入
つて来る、こういうことに
なります。そこで大体五項、或いは第六項で書いてございますが、この独立勘定というものは、資産を以てその負債を支払うという見合勘定として経理されるわけでございます。
従つて北拓の例を申上げますと、在外資産として例えば国債が約五千万円ほどある、それに在外店舗に対する借として約五千万円ほどのものが注込まれる。それに調整勘定の預金の残額が約七千五百万ほど入る、それに対する在外預金は約一億八千万ほどございますが、まあ三月末の決算を以ていたしますればほぼこの在外勘定の資産の部と負債の部とが見合いまして、樺太の預金は大体支払われるであろう、こういう勘定に
なります。
以下、その他金融機関につきましていろいろ問題がございますが、必ずしもこの在外資産が十分在外負債を支払うに足りる銀行ばかりではございません。むしろ北拓が特例でございます。そういう
ような銀行につきましてはそれじやどうするかということになると、次の三十八条の五或いは三十八条の六で書いてあります
ように、優先支払をするための金を借りて来るという問題、支払をするために借りて来る、或いは繰入れてもらうということで、先ず三十八条の五では、送金小切手のうち五万円までの
部分については金があろうとなかろうと、とにかく優先支払をするのだということが書いてあるわけでございます。そうして第二項でてれを払い終つたならば他の債務を払いなさい、こういうことが書いてあるわけでございます。
十ページ目に参りまして、第三十八条の六は、この優先支払をいたしますために在外勘定にその支払資産が不足いたします場合に、調整勘定から利益金の範囲内で不足金の一部又は全部を借りてよろしい、これが一般の例でございます。そうしてあとで在外資産がりまく返
つて来たらば先ず調整勘定にお返しなさい、こういう
規定でございます。第三十八条の七のほうは、これは調整勘定というものがないままで再建整備が終
つてしまつた銀行の例でございまして、而も在外勘定ができるというのは、勧銀がまあ銀行としては
一つ代表的なものでございます。そのほかにまあ鹿児島県下の無尽
会社等がございますが、例を勧銀で申上げますと、若し調整勘定を作つたとすれば、そこに深入れられたであろう金額、即ち最終処理の際の旧勘定の積立金の範囲内で借りて来い、こういう
規定に
なつているわけでございます。
以上によりまして現行
金融機関再建整備法により再建整備をやりました金融機関は、ともかく送金小切手の五万円の分だけは何とかして払える
ようにし
よう。そうしてその後におきまして在外勘定の資産の部に、どういう
理由によりますか、いずれにしてもお金が溜
つて来たならば、その余りのものを払うことにいたそう、こういうことになるわけでございます。
それから十一ページのほうの真中からあとのほうへ入りまして、閉鎖の
規定でございます。閉鎖の
規定は先ず第三十八条の八では、在外勘定かもう全部負債を払
つてしまつたという
ようなときには、これは誰ももう取りに来る人はいませんかと
言つて公告をして、そうして出て来なかつたならば閉める、こういうことでございます。そうして閉めて
しまつてから株主に余れば配る、又準備金のほうにも繰入れる、これはまあおめでたいほうでございます。
ところが第三十八条の九のほうはどう
なりますかというと、これはもう払おうにもどうにも在外資産は幾らも返
つて来ぬ。債務ばかりでどうにもならないというときは、これは勝手に閉められては困りますから、主務大臣が認可をいたしまして、もうこれでいけませんというほうでございます。これが第三十八条の九の第一項、そうして第二項で、さ
ような閉鎖をいたしましたときには、在外店舗に係わる債権というものは消滅してしまう。こういう
規定に
なつております。まあこの時期をどの程度に考えまして、いろいろ渉外交渉その他の成行きとも併せて考えなければならないわけでございますが、ともかく現在のところではまだ在外資産等について、例えば正金銀行等について、抑留中の資産の返還があつたという例もございます。いろいろこれから先外交交渉上在外資産がうまく行けば返
つて来るかも知れないというものもありますので、そう簡単に三十八条の九のほうは発動できないと思いますが、一応態勢としてはこういうことになるわけでございます。
あとはいろいろ税法上の特例とか罰則とかいう
関係でございますから説明を省略いたします。
なお附則のほうは先ほど若干関連して申上げましたが、十六ページの附則のところに書いてございます二項、三項は、これはすでに調整勘定をもう閉鎖してしまつた
ようなところと、或いは調整勘定を設けなかつた金融機関、株主だけに損をかけてずつとうまく済ませてしまつた金融機関、これは勧銀がその例でございます。こういうところにも旧株主にはやはり損失を負担したままでは気の毒でありますので、若し調整勘定を設けたとすれば如何かというところから計算した
ような範囲内で旧株主に分配をする、こういう経過
規定と申しますか、そういつたことが書いてあるわけでございます。
あとは大体先ほど関連して御説明申上げましたのでおわかりに
なつて頂けると存じます。簡単でございますが…。