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政府委員(
植木庚子郎君)
只今議題になりました
物品の
無償貸付及び
譲与等に関する
法律の一部を
改正する
法律案ほか三
法律案につきまして、その
提案の
理由を
説明申上げます。
今回
改正しようといたしますのは、最近における
風水害等の発生時における
救助の
状況等に鑑み、
災害による
被害者その他の者で
応急救助を要するものの用に供するため寝具その他の
生活必需品を貸し付けるとき、又は
災害の
応急復旧を行う者にその
応急復旧のために必要な
機械器具を貸し付けるときは、
無償又は
低額ですることができる途を開くこととすると共に、
国有林野の所在する
地方の
地方公共団体又は住民が震災、
風水害、火災その他の
災害により著しい
被害を受けた場合において、
当該地方公共団体に対し、
当該林野の
産物等を
災害救助の用に供し、又は
当該地方公共団体の管理する事務所、道路、橋その他の公用若しくは
公共用施設の
応急復旧の用に供するため
譲渡するときは、
低額ですることができることとしようとする等、
所要の
改正をしようとするものであります。
次に、
日本国と
アメリカ合衆国との間の二重
課税の
回避及び
脱税の
防止のための
条約の
実施に伴う
所得税法の
特例等に関する
法律案につきまして
説明いたします。
政府は、今回、
アメリカ合衆国との間に
所得税及び
法人税並びに
相続税及び
贈与税に関して二重
課税の
回避及び
脱税の
防止のための
租税条約を締結することとし、その批准について承認を求めるため、別途にその御
審議を
願つているのでありますが、この
条約に
規定されている事項のうち、特に
法律の
規定を要すると認められるものについて
所要の
立法措置を講ずるため、ここに本
法律案を
提出した次第であります。
以下本
法律案の大要について申上げます。
先ず第一に、
利子所得等に対する
所得税率の
特例を定めることとしております。
即ち、
日米両国の
国内法における非
居住者に対する
利子又は
工業所有権等の
使用料に対する
税率は、
わが国の
所得税法では二〇%、米国では三〇%にな
つておりますが、今回の
日米所得税条約によりますと、その
税率は相互に一五%を超えてはならないこととな
つておりますので、これに基き、
わが国におきましては、本
法律案において、
アメリカ合衆国の
居住者又は
法人が我が国の源泉から取得する
利子又は
工業所有権等の
使用料に対する
税率は、その者が
わが国に
恒久的施設を有しない場合には、これを一五%と定めることとしているのであります。而して、これらの所得に対する
現行の
国内法による
税率は租税特別
措置法により、特定の場合には一〇%又は五%に軽減することとしておりますので、その軽減
税率は引き続きそのまま適用があることとしております。
第二に、
相続税に関して未成年者控除の
特例を定めることとしております。
即ち、
日米両国の
国内法における非
居住者に対する
相続税の
課税につきましては、
わが国ではいわゆる未成年者控除を適用せず、米国では基礎控除が
居住者の場合の十万ドル又は六万ドルに対して二千ドルの控除にとどめられる等、
居住者の場合に認められる諸控除の一部が適用されるに過ぎないこととされているのでありますが、今回の日米
相続税条約によりますと、相互に自国の
居住者の場合と同様な控除を一定の割合により認めることとな
つておりますので、これに基き、
わが国におきましては、本
法律案において、
アメリカ合衆国の国籍を有し、又は同国に住所を有していだ被
相続人から相続により財産を取得した
相続人に対する
相続税については、その
相続人が
わが国に住所を有しない場合においても、これに未成年者控除を適用することとし、その控除の金額は、
条約の
規定の趣旨に従い、
わが国に住所を有する場合に認められる控除額に、我が国における
課税財産のその者が相続により取得した総財産に対する割合を乗じて計算した金額によることとしているのであります。
第三には、
アメリカ合衆国の租税の徴収につき必要な事項を定めることとしております。
今回の日米
租税条約によりますと、
租税条約によ
つて認められる軽減その他の特典がこれを受ける権利のない者によ
つて享有されることがないようにするために、
日米両国は相互に相手国の
所得税又は
相続税を徴収することかできることとな
つておりますので、これに基き、本
法律案におきまして、我が国における米国税額の徴収は、
アメリカ合衆国政府からの嘱託に基き、国税徴収の例によ
つてこれを行うこととする等、
所要の
規定を設けることとしているのであります。
最後に、今回の日米
租税条約の
実施に関して必要な手続その他の事項は、
条約の
規定の趣旨に従い、大蔵省令でこれを定めることとしているのであります。
次に
大蔵省関係法令の整理に関する
法律案につきまして、その
提案の
理由を御
説明申上げます。
本
法律案は、このたびの法令整理の方針に即応し、明治時代以来制定された
大蔵省関係法令のうち、実効性がなくな
つたもの等を整理のため廃止し、併せて事務手続を簡素化するため、たばこ専売法等を
改正しようとするものであります。以下、その大要について
説明申上げます。
先ず第一に、明治四年に制定されました大政官布告新紙幣を発行する件から昭和二十六年に制定されました学校及び保育所の給食の用に供するミルク等の譲与並びにこれに伴う財政
措置に関する
法律に至る二百六十件の法令を廃止することと致しておりますが、これらの法令は、おおむね特定の時期を対象とし、その時期における特定の
措置を
規定したものであり、現在においては、すでにその実効性を喪失しているものであります。
第二に、事務簡素化の見地から、巻紙の輸出につきまして、従来の日本専売公社の一手買取制を廃止し、日本専売公社の輸出と並んで、製造業者等の自己輸出をも認めることとし、又、にがり専売は、昭和十九年四月金属マグネシウムの増産確保の要請により
実施されたのでありますが、現在においては、
実施当時の目的の大部分は失われておりますので、この際これを廃止することとし、たばこ専売法、塩専売法等の一部を
改正することといたしました。
第三に、終戦後日本銀行が国内
居住者から保管した外国通貨等のうちで今なお保管しているものにつき、これを各所有者に返還するためこの際、右保管を取り止めることとし、又終戦後、財閥系会社に対し、同一資本系統の会社の株式の保有を禁止いたしました際、特に金融機関に対しては、それが担保権行使等により取得した株式等に限り、例外的に保有を認めておりましたところ、最近に至りこの保有株式の処分も完結いたしましたので、この際この
特例を廃止することとし、「ポツダム宣言の受託に伴い発する命令に関する件に基く大蔵省
関係諸命令の
措置に関する
法律」の一部を
改正することといたしました。
右のほか、以上に述べました法令の改廃に伴
つて経過
措置を必要とするものにつきまして、
所要の
規定を設けることといたしております。
最後に
企業再建整備法の一部を
改正する
法律案につきまして御
説明いたします。
企業再建整備法は、特別経理会社の終戦に伴う損失を株主、
債権者に負担させることにより企業の再建を図
つたのでありますが、その最終的処理につきましては相々困難な問題がありまして、現在のままでは、到底期待し得ない状態にあるのであります。即ち認可を受けた
整備計画の実行の過程に生じた損益は、仮勘定として整理し、整理を完了して仮勘定の損益が確定した際に利益があ
つた場合には、損失を負担させた
債権者、株主に分配することとな
つているのでありますが、資産処分等が予想外に遅延し、又、国内の資産処分等が終了しても、在外資産、負債を有する会社は確定できないこととな
つており、更に、金融機関の調整勘定及び他の特別経理会社の仮勘定の割戻しが確定しないということから、これが相互に関連して、
現行法では、傾勘定の確定ということは、極めて困難な
実情にあります。このように仮勘定が未確定であるということから、解散した特別経理会社にと
つては清算を終了し得ないこととなる等、種々の面で支障を来している次第であります。
今回
改正しようといたします趣旨は、完全な意味で仮勘定を確定することは困難でありますので、実質的に完結と同様の効果をもたらし得るように、特別経理会社の資産処分を速かに完了せしめると共に、便宜の
措置を講じて仮勘定を閉鎖し得る方途を設け、再建
整備の最終的処理を促進しようとするものであります。
次に、本
法案につき、
改正の大要を申上げます。
先ず第一に、仮勘定を有する特別経理会社の仮勘定監理人の選任についてでありますが、
債権者に損失を負担させた特別経理会社であ
つて、現在特別管理人がいない会社については、新たに
債権者の代表として仮勘定監理人を選任させ、現に特別管理人のある会社にあ
つては、
債権者を代表する特別監理人を、仮勘定監理人とし、会社が行う資産処分等を監督させることといたしております。
第二に、資産処分等を促進するため、昭和三十年九月三十日までにその処分等を完了するように努めさせることとし、やむを得ない事情がある場合に限り、主務大臣の承認を得て期限の延長をすることができることといたしております。更に、期限の延長について承認のあ
つた資産は別といたしまして、期限内に処分等を終らなか
つた資産につきましては、仮勘定監理人が一定の手続を経て資産処分等を催告し、これに応じない場合には、当該会社に代り資産の処分等を行うことができる途を開いております。又、資産処分の簡易迅速を図るため、処分に当
つての手続上の制約を排除すると共に、報告の義務を課する等
所要の
規定を設けた次第であります。
第三に、仮勘定利益の中間配分についてでありますが、特別経理会社は、昭和三十一年三月三十一日現在において仮勘定の計算を行い、仮勘定に利益のある場合には、その利益額から主務大臣の指定する金額を控除した残額を主務大臣の認可を受けて損失を負担した
債権者及び株主に一斉に中間分配させることとしたのであります。この場合、
債権者又は株主のうちに調整勘定を有する金融機関又は仮勘定を有する特別経理会社があるときは、分配すべき金額を相互に通知しあ
つて帰属すべき額の修正を行
つた後において、分配しなければならないことといたしております。なお、昭和三十一年三月三十一日以前においても、仮勘定の利益がある場合には、
債権者に対してのみは、その負担せしめた
債権額の限度までは、随時利益分配を認めることといたしております。
第四に、仮勘定推定の
特例に関する
規定でありますが、仮勘定の残額が
債権者及び株主の損失負担額以上にな
つたときは、仮勘定が確定しない場合においても随時仮勘定を閉鎖することができることとし、閉鎖したときにおいて、当該会社の仮勘定は確定したものとみなして、利益の分配ができることといたしたのであります。
第五に、解散会社に関する特別
措置といたしまして、解散した特別経理会社の場合に、資産処分等を完了したにもかかわらず、金融機関からの調整勘定又は他の特別経理会社からの仮勘定の利益の分配を受ける権利があるために仮勘定が確定しないときは、その受益権を
譲渡することができることとし、又、在外資産及び在外負債を有する場合には、主務大臣が指定する在外負債の引当金額に相当する金銭及び在外資産の管理を主務大臣の指定する特殊管財人に委托して、仮勘定を閉鎖することができることとし、これらの方法によりまして、仮勘定を確定し得る途を開いております。最後に、解散会社が在外資産及び在外負債に係るものを除いて清算事務が終了した場合においては、その清算を停止することとしたのであります。即ち清算人は株主総会の承認により、退任するものとして、特殊管財への行う事務を除きすべての清算事務は一時停止し、後日主務大臣の指定する日において再び清算人が復活して清算事務を再開することといたしております。
以上四つの
法律案の大要を申上げた次第でありますが、何とぞ御
審議の上速かに
賛成せられるようお願いいたす次第であります。