○平林太一君 それでよく了承いたしました。やはり結局、
総裁が最後の
決定をなさる。役員会でありますとか、或いは本問題に対しまする
融資のことに対しましては、
国家資金の、いわゆる
開銀の
資金運用に対する活殺の権限は、挙げて
開発銀行総裁に委ねられておるということは、これは明らかなんです。それだから、そこで
一つお尋ねをするのでありますが、そうしてあなたが御決裁になりましたこの
船舶融資の問題が、この
ような不祥な事態を今日起したわけです。これはまあ実に私から
考えますれば、
只今の首相吉田君自体は、非常にこのことは同君の例の我が儘ぶりを遺憾なく発揮しております。当初は吉田内閣というものは、綱紀粛正というものを、芦田内閣のあとを受けて、いわば看板にして掲げて来た。それでありますから、この綱紀粛正問題というものは吉田内閣の全生命であ
つたわけであります。従いまして、私、当時与党におる一人といたしまして、当時ですよ、スキヤンダルというものを起しちやいかんぞと言
つたときに、同君は、スキヤンダルはありませんと、只見川の問題、四日市燃料廠の問題の
ようなことが起きておりましたが、スキヤンダルはありませんと、こう
言つてお
つたのです。ところが今度いよいよ
船舶融資の問題の
ような事件が起きて来て、スキヤンダルが出て来るというと、こういう事態は検察庁が調べればよろしいのだと、検察庁で調べて裁判によ
つて決定した後に善処し
ようと言うのです。これは総理大臣がそういうことを言うから、世間往々にしてそれが当然なことだと不思議を持たないのですが、過去の歴史を
考えまして、これは私は容易ならないことだと思う。こういう
ようなことによ
つて、いわゆる
政府の失政、殊に官紀紊乱ですね、綱紀の弛緩というものを、平然として、検察庁でや
つておるのだから
政治上の
責任はないということになりますれば、全
国民に及ぼす影響、いわゆる道義、風教と申しますか、これは根底から破壊されてしまいます。
政治上の基盤というものは全く私は将来想像も及ばない
ような危殆に瀕すると思うわけなんです。ですから、昔は、そういう事件が内閣に起きますれば即時皆辞職したものです。山本権兵衛内閣においても、或いは大隈内閣の大浦内務大臣の事件においてもそうであるし、或いは台湾
銀行の事件なんかも、丁度今度の
船舶融資の問題と同じ
ような事件でありましたが、
国家資金における神戸事件だと思いましたが、斎藤内閣が即時辞職しております。それを、辞職どころではない、検察庁がなにしておればそれでいいのだと、我々は関せずと、こういうことなんです。これはまあ大変なことだと思
つている。世の中にはそんなことがあり得ることではないという
ようなことが、特殊なる人物が言えばそれが納得せられ、それが
国家にと
つて取返しのつかないことになる。
戦争中、東條という大将が
戦争は勝つと言えば、全
国民挙げて勝つと思
つた。一部の者は、負けては困るという気分の人が、識見の高い人があ
つたのですが、併し総理大臣が勝つと言うものだから、世間その
通りにな
つてしまう。それでああいう結果にな
つた。そこで、今度のこの綱紀問題、いわゆる官紀紊乱の問題も、私は同様だと思う。それだから、私はこれに対してあなたに、事務的なことで甚だ御迷惑かも知れませんが、併し今申上げておる
通り、これは
国家資金を資本としておる
開発銀行である。だからこれは世界
銀行からお借入れもあなたの御苦心によ
つて先年成立いたしたことも、私はよく了承いたしておりますが、併し外資の
資金が
開銀に廻るといたしましても、それはいわゆる
政府資金という間接なる背景によ
つてできるということは明らかなことなんですから、そういう
資金がとにかくこういう
ような事態を惹き起したということ、最後的
決定者でありまするあなたのお貸付にな
つた、あなたの
融資したところの
船舶融資に対してか
ような問題が起きたということに対しましては、今日私は
総裁としての
小林君はどういう
考えをお持ちにな
つておるか。そうして又、その
責任上に当
つてもどういうふうのお
考えを持
つておりますか。これは決してあなたを責めるわけではありません。
国家全体の
一つの機構、国というものは
一つの機構で成立
つておるわけですから、その機構の中において行われることは……、
個人々々によ
つて行われることは直ちに刑事事件になる。併し機構の中において行われることは、
個人においては刑事事件になる
ような何十倍もの問題が、常にそういうものが普通の常識のごとく行われておるということは、実に私は将来のことが心配に堪えない。終戦以来私
どもが国の会計、決算を
審査いたしておりますが、二十二年以来累年増加しておる。会計検査院の不当事項、批難事項、或いは甚だしきに至りましては不正事項、こういうものが累年多くな
つておる。殊に二十三年の十月と思いますが、吉田内閣が成立いたしまして以来五年五カ月になります。この間に累年増加しておる。こういうことは、
一般国民が知らないからこれは黙
つていられるのでありまするが、そういうことをして行きますれば、今に隠し切れない事態に立ち至
つて、国というものはいわゆるスキヤンダルというものを中心にして
一つの亡国の運命を辿らざるを得ないということを私は非常に憂えますので、この際あなたの
船舶融資に対しまする最後的
決定者といたしまして、この際、全国的な
国民に対する御態度、そういうものを
一つ承わりたいと思う。