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参考人(宮崎米一君) 私宮崎でございます。本日参りました要旨につきましては、只今菊川先生からお話がございまして、私の今日参りました資格は全国軽金属労組同盟これは全国で代表的な加工産業の労働組合四十二組合を以て発足いたしまして、その後
業者の干渉を受けてとてもついて行けないということで小さいのが十組合ほど脱落いたしまして、只今三十二組合を以て組織いたしております。なぜこういうふうな運動を起したかということにつきましては、
説明をする中でいろいろと申上げたいと思いますが、この内容がともすると通産
委員会の問題に属するものが多うございますので、できるだけそういうものは避けて、当
委員会にお願いいたしたい点を述べたいと思いますが、或いは少し触れる面もあろうかと思いますのでお許しを願いたいと思います。
御審議願いたいことの結論を先に申上げますというと、国の最高機関である国会に申請され、認可されたあとにおいて、その申請
条件というものが履行されないでもいいものかどうか。而もそれが二年を経た今日において履行されていないということが業界に大きな影響を及ぼしておるというような場合においてもいたし方のないものであるかどうかということについて、非常に私
ども疑念を持
つておるわけでございます。その点を御審議頂きたいと思う次第でございます。で
先ほど通産の問題にも触れると申しましたが、かいつまんで申上げますというと、アルミ産業は只今この加工面におきましては、一時
世界第四位の加工能力を誇
つておりましたこの
日本の加工産業が、只今では生産力を持て余して、狭い
国内市場におきまして徒らに
競争を繰返して、倒産或いは企業縮小ということが相続いておる
状況でございます。これの原因と申しますのは、やはり原料高による
輸出不振、それから用途が非常に広いこのアルミ産業にありまして、
日本の場合におきましては極く限られた範囲内しかこれが用いられておらない。これもやはり原料価格の面からそういうふうに
なつておるという
状況からいたしまして、用途が非常に狭い、こういうことで戦前の地金生産量は戦争中の三分の一程度でございますが、而もその量さえ十分捌け切れないというような
状況でございます。この
輸出が減退いたしましたのは、特に顕著になりましたのが、昨年初め頃から特にひどうなりまして、最近では一時の約半分程度のところを前後いたしております。その半分の
輸出量から見まして、更にそれを分析いたしますというと、当時アルミの
輸出価格というものが、板であるとか、まあ板
関係のものに例をとりますというと、昨
年度におきましては二十五、六万円でございましたが、今日では二十一万円から二十一万五千円程度に
なつておるのじやないかと思いますが、急激な値下りはやはり西欧製品の東南
市場に対しての急激な進展が見られるようでございます。この
輸出が伸び悩みに
なつておるということと、それから国外におきまして非常に特需の減退が影響いたしまして、全く仕事がない。お目にかかりますのは店頭高く積まれております、全く実用上余り必要でないというものが山ほど積まれておるような
状況でございまして、とうていこういうふうなことを繰返しておりますというと、国の産業は、加工産業はつぶれるよりいたし方がない。何としても、国際価格の水準にまでこの地金価格を持
つて参りますというと、用途は広いのでありまして、又
輸出実績を持
つておりまして、必ずこれが出る。先般ビルマの特使が
日本にもお見えになりまして、これらのかたがたとも関西におきまして懇談会がございましたが、やはり価格の面さえ合えば
日本製品を、国民感情の上から言
つても
日本製品を選ぶのであるということを申しておりましたように、多分に
東南アジア地方におきましては伸びる余地がございます。併しやはり値段が余りにも違い過ぎる。その値段が何故
日本の場合が高いかということになりますと、やはりこれから申上げたい非常に矛盾したものがたくさんございます。この点をお話いたしたいと思います。
先ず一九五三年八月現在の
各国の値段を見てみますというと、これは差上げました五ページに表に
なつてございますが、
日本が最高でございます。国際価格は当時でポンド二十一セントでございますから十六万六千円程庭でございますが、
日本の場合は二十三万四千円、市価は二十三万五千円で
取引されておりまして、この当時
輸出につきましては特価といたしまして二十一万円で供給されておりましたが、とてもそれでは企業の切売りにひとしいということで、
輸出もだんだん減
つて参りまして、その後いろいろな
事情がございまして、これは通産
関係になると思いますが、特に製錬業が発表いたしました出荷資料とは別に
輸出がされておりました。
日本の
国内価格に比較いたしまして当時の価格といたしますと非常に安い、十八万円前後の価格を以てアメリカあたりに
輸出してお
つた事実がございます。これは業会で発表されておりませんのでございますが、それはあとで出て参
つたのでございますが、そういうふうなことからいろいろ業界に問題がおきまして、
輸出におきましては十七万七千円まで下げておりました。更に本年四月からは、たしか五月であ
つたと思いますが、十七万円までに下
つておる、これは
輸出に関する限りでございます。これにはいろいろ
条件が付いております。併しこれを以ていたしましてもとても話にならんわけでございます。
こういう
状況下にあります場合に
日本の原料価格は何故高いかということは、当
委員会とはちよつと
関係が違うのでありますが、一番大きなものといたしまして電力
事情について、これは曾
つて我々も国会に請願をいたしたことがございます。電力につきましては、アルミニウムの製錬というのは電力が非常にたくさん要るわけでございまして、自家発電設備を持つということは製錬会社のこれは常識でございます。これは戦時中日発に吸収されました自家発電設備を現在製錬をや
つております
日本軽金属、住友化学、それから
昭和電工、この三社が同様に返還してもらいたいということを運動いたしておりましたが、他の二社の自家発電設備にはいろいろなものがぶらさが
つておる
関係で、日軽の場合には一社だけのものであるという
条件に恵まれまして、日軽だけが返還をされて、他のニ社の運動についてはそのままの形に
なつております。従いまして一トン当り自家発電設備と買電との差額というものは業界では四万円と称されておりますから、それだけの差がこの会社に電力
事情によ
つて生じておる。この差を持
つて、差があ
つて、而もそれが採算の取れる価格で以て
協定価格とされております
関係で、一方ではそれ以上の利益を挙げておられるでありましようしいたしますからして、価格が高いのだということが業界の一つの常識みたいな形に
なつております。
それと更に、本題に入りますが、
日本軽金属の外資導入につきまして、これは当時非常なセンセーシヨンを捲き起したわけでございます。併しながらこの導入
条件というものについて、或いは契約書というものにつきましては全文は発表されておりません。ただ部分的にいろいろな金属情報であるとか或いは又業界雑誌であるとか、又は最近いろいろな学者が本を出しております中から拾い上げて見ますというと、大体においてその
条件というものは三つか四つくらい拾うことができるのじやないかと思います。先ずこの
条件として知られておりますことは、倍増資株千二百四十万株を一株十円のプレミアでそつくりカナダに渡す、これが当
委員会でも今菊川先生からお話がありましたように、非常に問題に
なつたと思われる点でございますが、これで、五十、五十の提携が相成
つたわけでございます。それともう一つは、貸付金といたしまして百八十万ドル、これは年利五分五厘、八カ年の償還、但し
最初の三年六カ月というものは据置にして、自後六カ月間の均等償還、こういうふうな形に
なつておるのでございます。こういうことを、低利
資金を借入れて、そうして企業の合理化をやり、地金価格を下げる、こういうことがいわれております。次はマレー南岸の既開発のボーキサイドの鉱床を借入れて、それを日軽が操業することによ
つてボーキサイドの値段を下げて行く、地金価格も当然下げて行く、こういうふうなこと、それから技術導入ということも申しております。なお殊に経営の自主性ということについては噂されることがないということがこれは強く打出されておるようでございます。その他各項目について
説明資料を加えて当
委員会に提出されたものと
考えられますが、これが非常に問題を呼びまして、六カ月間の審議を経て漸く認可されたわけでございますが、認可されましたのが二十七年の十月だ
つたと思います。その後正式調印は二十八年の三月、こういうふうにいわれておりますが、今日この提携
条件のうち履行されておりますのは重役数の問題だけであろうかと思います。今なお貸付金が入
つたとは聞いておりません。なお技術導入その他によ
つて一般の期待しておりましたこの値下げ問題につきましても、
先ほど申上げた電力
事情という大きなものが前にあります
ために、結局全生産量の五割以上を生産する日軽が独走するというような形に
なつております。而も株式配当におきましては年三割きちんきちんとやはり払
つておる。この
条件を履行されず、リミデツトの所有するボーキサイドの鉱山もまだ開発されないで、これは既開発ということであ
つたようでありますが、未開のジャングルであるというふうなことも伝えられております。こういうふうに
条件というものが食い違
つておりますので、この点を十分一つ御審議をお願いいたしたいと
考える次第でございます。
なむこの履行しないということがどういうふうに影響して来るかということを申上げますと、我々の期待いたしておりましたものは、この提携がやがては
日本のアルミ産業をして国際
市場に十分乗出す、そのことによ
つてあり余る生産能力を
海外に持込み、これで外貨を獲得し、同時に
国内産業も今日のような
状況ではなくて、一層のアルミ産業の共存共栄と申しますか、原料メーカーと加工メーカーとが一つに
なつたものになるであろうことを期待いたしてお
つたのですが、今日でございますと全く案に反したような形に
なつております。
なおここで付加えて申上げたいことはこの
予算関係、大蔵
委員会等においても
関係のございます
予算面から見ました加工産業の一つの実例を付加えておきますと、最近保安隊
関係の仕事がたくさん出て参りました。これらによりますというと、曾
つて旧軍部か失敗いたしましたことを再び繰返して、国家の
予算を無駄に使
つておるようなこともございますので、これは例えば最近出されております食器類等の例を見ましても、必要でない面、つまり一遍熱湯消毒をやりますというとそれで影も形もなく
なつてしまうような光沢の面についてもいろいろな
条件を付けてや
つております。こういう無駄なことをやることによ
つて価格も高くなり、必要以上の厳重な検査によ
つて、現在大阪の
日本軽金属化工機という会社がこれの不良の
ためにつぶれかか
つておる、こういうふうなことな
ども起りつつありますので、アルミ産業に対する、殊に保安隊
関係の実際の面の
予算の組み方等につきましても専門家に十分御意見をお聞きになるといいのではないかというような話になりましたが、そういうような点も付加えておきたいと思います。
時間等の
関係もございましようから極く簡単にかいつまんで申上げましたが、質問等がありましたらそれによ
つて私の知る限りにおいてお答えいたしたいと、かように
考えてあります。