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参考人(
越藤俊夫君) 私鰐
組合の
越藤であります。先ず最初に大体今までのいわし
罐詰の
状況を簡単に御説明申上げて漸次お話したいと思います。
昭和十年頃より大体平均百万函くらいを
輸出いたしておりまして、
昭和十三年には最高の百六十万函を
輸出した実績に
なつております。その後大体百万函前後
輸出いたしておりましたが、戦争が起きました
関係で戦後の二十五年には約二十万函に減りました。二十六年に四十万、二十七年に六十万、二十八年に約六十万函というふうに
数字が漸次増加いたして
輸出されるようにな
つたのであります。特に昨年二十八年度は
アメリカのいわし
罐詰の
状況が非常な大
不漁だつたために全然
生産がないというような
状況でありました
関係上、それに刺激せられまして非常な高値を呼びました
関係もありまして
生産に努力いたしました結果、百三十万函を上廻るような
生産がありました。ところが不幸途中においてうるめいわしのクレーム問題が
アメリカに起きました
関係で非常な在貨を持つたというような事情が起きましたことと、東南アジア方面においては
外貨の不足による輸入の抑圧等がありました、殊にインドネシアの
関税が一〇〇%引土げられた、或いはビルマ方面では
さんま罐詰が伸びて来た
関係でやや競合があつたというような
関係もありまして、四十数万函の在庫品を持越すこととなりました
関係上、非常な値下りを来たしたというような事情であります。この持越は特に主要
生産者の大
部分を占める長崎方面の
業者を非常に苦境に陥らせたというような事情に
なつておりまして、我々としまして本年当初通産、農林両省等の御配意によ
つて砂糖の求償として二十数万函
米国並びにフィリピン方面に
輸出されることになりまして、現在ではその滞貨が全部
輸出されるように
なつた
状況です。それでも我我としましてここで必然的に
生産過剰による
海外の濫売ということが舞台に出て来た
関係上、どうしてもこの事態を切抜けなければならないというような立場に至りました
関係上、昨年の七月全国六十数社の
生産業者が自発的な熱意によ
つて現在あります
日本鰐
罐詰工業協同組合を結成いたしまして、そうして二十九年度における
輸出の適正量を最高七十万函というように
調整いたしました。そしてこの
調整した七十万函を非常に有利な
価格で販売して頂く
関係もありまして、各
組合員が出資いたしまして
日本鰐
罐詰販売株式会社というものを
設立いたしました。そしてその
組合員の
事業の経営の安定と、
生産された鰐
罐詰の
輸出の
振興を図るということで、現在着々その成果を挙げておる次第であります。で、大体いわし
罐詰を
生産しておる製造
業者というのはいわゆる中小企業を中心とする弱小な経営の規模のものが大
部分でありまして、もう
一つの特徴としましていわし
罐詰の専
業者であるということが一度
海外市況が悪化すると非常な打撃を受けるというような不安定な
状況にある状態であります。で又この製造
業者が
日本全国に散在しておりまして、
品質的にも統一的ないい
製品を造るということが非常に困難な事情にある
関係もありまして、そういう意味合いにおきましても、販売会社を作りまして
製品の統一をする、農林省その他の検査所の規格に合つたいいものを造るというようなこともありまして、又
生産費の合理化というようなことも考えて販売会社を作つたというのが現在の
実情であります。
アメリカの大
不漁による品不足は、
アメリカ製品の消費国であつた中南米、フィリピン方面というような方面の
市場も我々の手で開拓できるんじやないかというようなことで非常に期待してお
つたのですが、事実はそういうクレームの問題、それによる値下げの問題というようなことで、
生産費を割るような、出血しなけりやならんというような事情が起きた
関係上、昨年度の
生産が百三十万もありましたのですが、
輸出は六十万くらいにとどまつたというような事情であります。
次に
参考までですが、大体各国の
状況をちよつと御説明いたしますと、
アメリカの
罐詰生産状況というのは大体カリフォルニアの太平洋岸において一千七百万函
程度を造
つておるように
統計で出ております。そのうち最も
関係のあるいわし
罐詰は大体二百万から三百万というものを大体約二十
年間ずつと
生産いたしております。そしてそのうちの、それは全
生産量に対して大体四〇%、多いときは八〇%くらいに当るようであります。然るに近年の一九四九年に四百二十万、一九五〇年
アメリカでは最高の五百四十万という函を
生産いたしておりましたが、ところがその翌年の一九五一年には約三百万足らずの
数字となりまして、一九五二年にはその三十分の一の約十万六千函というような大減産と
なつて昨年の
統計では六万余りというように
なつております。その事情は専門家によ
つていろいろ指摘されておるようですが、原因として濫獲が最も問題じやないかというようなことを識者は
言つておりますし、プランクトンの変化とか、水温の異変とか研究には統一的な
意見がまだ現在出ておりませんが、まあそれらの種々な総合的な原因だろうというようなことを言われております。今後数年又は数十年カリフォルニアサーデンというものは見込がないんじやないかというようなことを現在言われております。我々としてはこの
市場が最も重要な
市場でありますので、これを是非とも確保して有利な
製品を送込みたいというのが
実情であります。然るに先ほど申上げた
通りうるめのクレーム問題が起りまして、一時停滞いたしましたが、それで
相当な我々自身としては
生産費を割るような
状況に陥
つたのであります。
次にもう
一つ申上げたいことは、その
アメリカ市場に対して現在南アフリカの
製品が
相当入り込んでいるというようなこと、現在、昨年度約三十万函がカリフォルニアの
業者によ
つて輸入されておるという事実があるのでありまして南アにおいては大体四十万トンの
水揚げがある、いわしの……、ということを言われております。これは
生産費がやや我々より安いのでありまして、それがなぜかと言いますと、
一つは英国の
製品である
関係上、
関税関係に非常に有利に進んでいるというような
関係もありまして、一大脅威に
なつているというようなことがあります。
次に東南アジア方面の
関係に移りますが、ここは昔から我々の
市場として非常に大事な
市場であ
つたのであります。然るに先ほどちよつと申上げたように
関税障壁とか平和条約の締結の遅れているというような条件が重
つております。それと又
外貨の不足というような事情がありまして
戦前のように活溌な動きをしていないというのが
実情であります。併し約二十万ケース以上のものはやはり
輸出されているというのが
実情でありまして、その他の方面としてはベルギー方面、それにアフリカ方面に
相当古い顧客と
なつて我々が進出している。この事情は余り変
つておりませんが、やはり同様に
数字的にはやや減りつつあるという事情にあるように考えております。これが大体
海外の事情であります。
現在の
罐詰業としての隘路として第一に考えられることは、今年は非常に
不漁である
関係上
原料が非常に高い。昨年に比して大体二割
程度高いんじやないかということが
生産費を非常に高くしているという事情でありますことと、第二は空罐のブリキ罐は非常に高い。大体
製品価格の四割くらいに当るのでありまして、現在空罐
価格を検討いたして見ますと、大体私たちが受取
つておる
罐詰の空罐
価格は十一万円に
なつておるのでありますが、
米国及び英国あたりのブリキ相場は大体八万円くらいであります。それで大体三万円くらいの差違があるのが
日本における
罐詰輸出の非常な欠点と
なつておるというように我々考えておりまして、これは現在八幡製鉄で一手にや
つておりますので、我々としてはどうしても九万円
程度の
価格にしてもらいたいというようなことを希望しておるのでありまして、大体
アメリカのブリキ
原料によ
つて製罐いたしましても大体九万円くらいで
業者に配給できるのじやないかというように考えておるのでありまして、この二つが非常な原因に
なつて
生産費を割る出血
輸出をせざるを得ないというような事情にあるように考えております。
次に現在参議院において審議中の
輸出水産業の
振興に関する
法律案に関して申上げたいと思うことは、第一条に「
輸出水産業の
振興を期するために、
輸出水産物の
加工度の向上及び
品質の改善並びに
輸出水産業者の
自主的調整による経営の安定を図り、」とありますが、我々としてはすでにこの趣旨に副
つておる
法律第十八条の
組合員の製造する
輸出水産物の製造
数量、出荷
数量、品目、
販売方法、販売時期、販売
価格等の
調整を現在すでに各
組合員の自主的発意によ
つて調整しておりまして、この
法律が当然その点を強調しているということにおいて我々は双手を挙げて賛成しておる次第であります。現存我々としては、先ほ
ども御
意見がありましたのですが、第一条のこれを実施するために
貿易管理会等の
法律的裏付けを受けたいと考えていたのですが、又私的独占禁止法の掣肘もかなり受けるというような
実情にあるのであります。それで法的根拠の下で現在の悪条件を克服して
貿易の
振興を図る、そうして
国民経済の発展に寄与したいというのが我々全部の意向であります。それで今度参議院においてこの
法律案が審議せられるということに対しては、この際我々の今まで申上げた苦しい内容も御賢察願いまして、この
法律案を一日も早く御通過願うように御配慮願いたいと思うことと、
法律第二条に「
政令で指定する」と
言つておりますが、でき得るならば皆様と同様にいわし
罐詰を
法律にはつきり明記して頂くというように特別の御配慮を願えたら誠に結構じやないかと、かように考えております。以上。