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千田正君 第二班の調査
報告を申上げます。
今般、
青山理事と私の両名は院議にまりまして、兵庫、徳島、高知の三県につきまして本年度台風による水産
関係災害並びに水産事情調査のため派遣せられましたことにつきまして御
報告申上げます。
一行は去る十月二十二日東京を出発いたし、一週間に亘り高知県、徳島県、兵庫県の順序に三県を歴訪いたしまして調査いたしましたのでありますが、これら三県の災害並びに水産事情につきまして順次申上げます。なお詳細につきましては時間もございませんので、別途資料によ
つて御覧願いたいと存じますが、今主なる点について申上げます。
先ず高知県について申上げます。高知県におきましては建当局並びに県漁連代表者を含め災害の甚大であつた宿毛市、清水市、須崎市及び吉川村等の
地元漁
業者代表から説明並びに要望を聴取いたしました後引続きまして吉川、赤岡、安田、
室戸、
室戸岬、椎名、佐喜浜、野根等の町村に亘り現地を視察いたしました。高知県は本年五号台風以来、十二号、十四号、十五号と連続的に来襲した猛烈な台風によりまして甚大な
被害を受け、特に太平洋に面しました水産
関係公共施設、漁船、漁具等の
被害は過去にその例を見ない甚大なものであつたのであります。水産
関係の
被害の額は五号台風から十五号台風までを合計いたしますと、漁港施設
被害七十港、
被害金額五億二千七百万円に及び、漁港の大半が壊滅の状態であります。漁船一千五十八隻、
被害金額三千九百万円、漁具、船具等二百四十五件、六千三百万円の
被害額とな
つております。その他沿岸零細漁家、家屋、
共同施設、養殖施設、増殖場、養殖物、製品類等を加えますと、水産
関係被害総額は七億四千九百三十八万六千円に上
つております。これら災害の復旧措置について県並びに
地元関係当局において鋭意努力中であるが、特に次のことを要望いたしております。一、公共漁港施設については、査定後緊急復旧費として交付金決定までに相当の日数を要し、又従来の例から見て当年度は
被害額の二割
程度にとどまり、残余の復旧には数年を要する状況であるが、緊急復旧が必要であるので、この際
政府資金による特別
融資措置の促進並びに大幅な枠の設定を要望する。二、施設の早期復旧を期するためには国庫金が早期に交付せられることを要望する。三、特に十五号台風による漁船、漁具の
被害は過去に例を見ないほど甚大であるので、漁船の復旧については漁船保険の利用のみでは到底及ぱないので、漁具の購入資金をも含めて特別
立法による
融資の途を講じられたい。又県としても取りあえず一千万円を県の漁信連に預託して
融資に努力しているが、更にこの点に関しましては、今回の
被害に対する繋ぎ
融資として漁信連に一千万円
程度にては甚だ僅少なるため、更に県は二千万円
程度を追加して預託するよう
青山、
千田、両名より強く知事に対して要望いたしましたところ、知事もこれを諒とせられました。又県として預託を増額するためにも特別
立法につきましては速かに閣議において
方針を決定せられるよう要望がありました。
その他本県は地曳
漁業が重要な
漁業であるので、地曳網代の荒廃漁場の復旧、障害物除去についても国庫の助成を要望するとのことであります。
これら災害
関係の要望に関連しまして、更に困窮している沿岸
漁業振興救済のために必要な措置として特に次のごとき要望がありました。一、沿岸つり
漁業の振興策並びに底曳網
漁業侵入防止対策として、高知県は毎年県費助成三百万円を以て築磯設置を実施しているが、地方財政の現状では十分の効果を挙げることができないので、瀬戸内海地区において実施せられているものと同様、国庫助成の措置を要望する。二、
漁業災害
補償制度を早急に確立せられたい。三、中小
漁業信用基金制度において保険料の国庫負担、利子補給等を講じられたい。四、
漁業取締について県の監視船一隻のみでは取締が困難であり、且つ維持費にも困難があるので、国自体による
漁業取締の強化と、地方監視船の維持費の助成を要望する。五、沿岸
漁業の転換策として五十トン未満の
かつお、
まぐろ漁業の大臣許可制限は廃止せられたい。六、
漁業経営の困窮の折柄
漁業用燃油の輸入関税は今後も免除せられたい。
次に
室戸及び
室戸岬におきましては、
かつお、
まぐろ漁船の根拠地でもあり、全国に亘り多数の同
関係漁
業者を出している
関係上、米国の水爆
実験による
損害並びにその対策について活機な要望がありましたが、高知県としては放射能汚染によ
つて漁獲物を
廃棄した漁船の
損害は四月から九月までの間に百三十隻、三万三千六百四十二貫、約一億円余、魚価の低落によるもの
事件後三カ月の
損害四億八千五百万円、合計約六億円の
損害であ
つて、
関係漁
業者の窮状はますます逼迫しているので、
政府において早急に適切な対策を講じられたいとして、
実験禁止、早急な賠償
補償の実施、長期
金融措置、並びに汚染海域の調査等につき強い要望がありました。
次に徳島県について申上げます。高知県から引続き徳島県に入り、鞆奥町、牟岐町、日和町等の現地の状況を視察いたし、県当局、
地元市町村並びに水産
関係代表者から説明、協議がありましたが、徳島県は十二号、十四号及び十五号の台風により
被害を受けておりますが、水産
関係としましては、漁港施設三十五港、四千九百四十四万円、
共同施設八十件、三百九万円、漁船二百四十七隻、七百六万九千円、漁具及び副漁具八百七十四万円、養殖施設八百二十三万円、養殖物一千八百七十万円、その他二百四十一万円等、総合計九千七百七十一万一千円の
被害額とな
つております。
これらの災害復旧に必要な措置として、一、復旧のため特別
立法又は農林
漁業金融公庫の低利且つ長期
融資枠の拡大。二、農林
漁業資金の既存施設の
被害に対する利子償還の延期。三、罹災者に対する減免税の措置。四、復旧に要する繋ぎ資金の早期
融資措置。五、漁船保険の現地査定による早期支払。六、気象通信網の早期整備。等について実現方の要望がありました。
又
一般水産問題として、小型機船底曳網
漁業の整理転換について徳島県として七は困難を克服して逐年整理を行い、本年度を以て国の示す整理目標を達成することにな
つているが、最近他の県において
既定方針通り完遂せず、一部計画を中止することについて検討されているとのこ兵、あるが、一部府県のみの犠牲に終ることのないように、国の
既定方針通り速かに整理を完了し内海
漁業秩序の回復を図られたいとの要望がありました。
次に徳島県北部海区の底曳網
漁業は夏秋の「えび」を捕獲して生活しているのであるが、本年は台風の
被害のみならず、えびの繁殖が殆んどなく、最盛期に入
つているえび
漁業は不振の極に達し、漁民は生活の恐怖に襲われている、このえびが激減したことは、農薬の毒性が原因とな
つていると思われるので、至急に
被害対策を確立し、
補償の途を開かれたい。農薬は国、地方等の奨励補助政策によ
つて使用されているものであるから、水産業がその犠牲に甘んずる必要はないとの
趣旨の陳情がありました。同様
趣旨の陳情は兵庫県においてもありましたが、農薬の水産資源に及ぼす
被害並びにこれが対策の樹立に関し
政府は早急に措置を講ずる必要があると
考えられます。
最後に兵庫県について申上げます。兵庫県下におきまして、水産
関係の
被害が甚大でありましたのは、淡路島西岸並びに本土の播磨海区沿岸でありますが、福良町、鳥飼村、郡家町、明石市、御津町等の現地視察を行い、県並びに
地元代表者から説明を聞き協議いたしました。十二号から十五号までの台風による水産
関係被害を総合いたしますと、人的
被害七名、漁家二百六十三戸、一千百三十四万五千円、漁港二十港、七千六百万円、
共同施設四百九万九千円、非
共同施設五百二十四万円、漁船六百十二隻、八百八十一万七千円、漁具六千四百十一万二千円、養殖
関係百四十七万円、その他を合せて総合計一億六千八十六万九千円とな
つております。
復旧につきましては、
一般金融ベースに乗りがたい
漁業関係としては、災害復旧の
融資を通常の
方法によ
つて期待することは困難でありますので、財政支田による資金源の確保を図り、その損矢
補償並びに利子補給を行うことを目的とする適切な
立法措置を講ぜられたいというのが災害復旧に関する主たる要望でありました。
一般水産問題についても要望がありましたが、主なるものを申上げますと、一、漁船保険における国庫の負担率を現行法による五割を八割に引上げられたい。二、漁船
損害補償法による指定猟船の範囲を
日本海沿海における重要徳業である底曳漁船においても国庫負担の恩恵を受けられるように少くとも二十トンを五十トンまでに引上げるよう措置せられたい。三、農業と同様水産業についても
政府の事業として改良普及員制度を設定し、国庫助成の途を講ぜられたい。四、漁場の拡張と過剰漁撈力の
解決のため、県外出漁を奨励しているが、特に海外
漁業移民を国において組織的に施策実行されたい。この要望がありましたが、特に兵庫県として特殊な問題として黄燐弾引揚げについて強い要望がありました。簡単に御説明申上げますと、本年七月中側に県下の姫路市及び担保郡御津町の底曳漁
業者の間に集団的に黄燐弾によるびらん症病が発生し、現在約百名の罹
患者を出しておりますが、これは終戦後軍需用弾薬約二万トンが播磨灘沿岸漁場に放棄せられ、最近その弾体が腐蝕し、内容物の黄燐が漏出したのが原因でありまして、そのために約三十平方キロメートルに亘る漁場が操業不能とな
つており、今後イペリットの漏出も予想せられ、これらの毒性は定着性の漁介類、稚魚等水産資源に悪
影響を及ぼし、現に漁
業者の漁獲減は五割に上
つており、今後危険は拡大の予想で。ありますから、危険水域内の投棄弾薬類の引揚げを国が実施するよう、格段の配慮を煩わしたいとの
趣旨でありました。
以上三県の状況につきまして概況を申上げましたが、今般
被害をこうむりましたこれら地域の漁民は、殆んど零細漁民でありまして、而も
関係漁民は極めて多数でありまして、その復旧につきましては、
地元の要望にもありますごとく、格別の措置が必要であると
考えられますので、
委員各位の何分の御検伏討御協力をお願いいたす次第でございます。
以上御
報告申上げます。