○
国務大臣(
安藤正純君)
只今の
委員会を代表しての
委員長の
お尋ねに対しまして、大体
お答えいたします。又個個のことにつきましては、それぞれに担当しておりまする
農林大臣、
岡崎外務大臣も出席しますから、そのほうから
お答え願います。
久保山愛吉君が遂に亡くなられましたことは、何とも言えない悲惨の極みであります。これは
水爆の第一の
犠牲者でありまして、
政府といたしましても深甚の同情と関心を持つ次第であります。これに対しまして、
只今御
質問の
慰藉料の
交渉経過、或いは
政府の
態度ということについて
お答えいたしますが、
政府から
アメリカに
要求してありまする
賠償の中に
患者二十三人に対しまする
慰藉料と申しますか、まあ
生活保障費と言いますか、そういう性質のものは計上してあるのであります。今までの
交渉の
段階におきまして、それは
アメリカとして大体了解をしておる次第であります。それでありますから、過日、まだ
アメリカとの
折衝が
終局まで参りませんから、そう待
つているわけに行かないから、
国内措置としまして
患者一人に対して五十万円ずつ
内払いを
政府がすることを過日
閣議で
決定いたしまして、それを今
実行中であります。ところが遂に何とか起死回生を期しておりました
久保山君が死にましたので、これはそれだけの今まで
見積つてアメリカに
交渉をしていただけの
慰藉料では到底済むまいと存じまして、
久保山君の死と同時に更に
閣議におきまして
協議の結果
閣議決定をいたしました。そしてそれぞれの
手続きを経まして、
久保山君に対しましては
総額五百五十万円を至急給与することに
決定をいたしました。これは又速かにしなければならんことでありますので、一昨日、
久保山君の遺骸が焼津へ帰える前に非常の
手続きをいたしまして、これを
向うに
手渡しを
政府からいたしました。その
慰藉料の問題はそういうわけであります。
それから第二の御
質問の今後の対
米要求という問題でありますが、これは
政府としましてもまだ
終局には
行つておりませんが、今までの
段階だけではいけないだろう、この際更に進んで幅の広い
折衝をする必要があろうと存じます。
政府としてはそういう
考えでおりますが、どういう程度でどういうふうの過程を経てやるかとい
つたようなことにつきましては、現在
関係閣僚の間で
検討をいたしておる最中であります。但しこれに対しまして
アメリカのほうの
情報を
電報等によ
つて見ますると、いろいろなことが伝わ
つて来ております。何か
久保山君の死に対して
日本人があまりヒステリツクにな
つているとい
つたような
向うの様子もあるというようなことも
向うの
新聞等にも出ておる。で
甚しきに
至つては、今八十万ドルとか百万ドルとか九十万ドルとか言われているが、むしろこの際
日本人は、
アメリカとしては
久保山の死んだことは実に気の毒である、併しむしろこの際今までの八十万ドルとか九十万ドルとか百万ドルとか言われているその額を減額する必要があるのではないかということすら言
つているものもある、こういうようなことであります。併しながら更にその一面においては、この際
アメリカ人がもつと
認識を深くする必要があるだろうというようなことも又一面にはあるのであります。併しこれらは断片的な
新聞電報でありますから、それらを一々とらえてすぐ
どうこうというわけには参りませんので、今外務省のほうからそれらに対する詳しい
情報をと
つております。で、まだこつちに達しておりません。いずれ達しますると早速それらを
根拠とし、又参考としまして
政府で
検討をいたしたいと存じております。要するに私
どもは
アメリカの
水爆に対する
認識、
水爆実験に対する
認識、並びにこれから受けている
日本人の
被害、そのことが
人類的の問題である、世界的の問題であるという
立場に立
つて認識をもつと深くしてもらいたいと私
どもは
考えております。
政府もそう
考えておる次第でありますけれ
ども、
只今申上げましたように、よく
向うの
情報を明らかにし、更にこちらでいろいろのことを
考え併せまして、
関係閣僚で慎重な
検討を経て行きたい、こういう
段階にありますからこれを御了承願います。
それからもう
一つお尋ねのありました、
水爆実験に対して今後どうするのかという、
政府の
態度はどうかということでありますが、これは今まででも
質問が出ておりまして、私からも
お答えいたしてありますが、まあこれはなかなかむずかしい問題であり、複雑な問題であり、又
国際関係上微妙な
関係のある問題であります。でありますからそう簡単には申上げられませんが、
政府としましては、
外交交渉の上において、今年はやらないというのでありますが、若し来年にな
つて更に
水爆の
実験を
アメリカがやるというのであれば、第一に
日本のほうに近くない所でや
つてもらいたい、
アメリカの
領土でや
つてもらいたいということを
外務大臣を通じて
外交交渉をしたい、こう
考えております。それでありますが、それとてもいけないとい
つた場合におきまして、じやどうするかということになると、今
ソ連のほうでも
水爆実験をや
つて、その灰が
日本の北のほうに盛んに降
つて来るというような
状態であり、どうもそういう
世界情勢の上から見てなかなか複雑なことであります。併し一面には、
水爆実験ということが
日本人ばかりじやない、如何なるところの
人類に対しても
被害が及んではならないのであります。けれ
ども殊に
日本がそういう
被害を今まで受けているのだから、その
日本の
立場といたしましては、まあそういうことをよく
向うにも
認識してもら
つて、成るべく
向うの
領土でや
つてもらいたい。併しどうしてもいかんということに
なつた場合においては、先ず十分なる
安全保障をしてもらいたいという
考えであります。即ちどうしてもこつちのほうでやらなければ、
太平洋の今までのような所でやらなければならんというならば、
危険区域を厳重にして、更にその外側に
安全区域とか何とかいうようなものもこしらえて、大丈夫だというふうにしてもらいたい。これは
科学者が、しろうとじやわかりませんが、
科学者が寄
つてやれば、更にそういうよう慎重なこともできるのではないか思いますから、そういうふうにや
つてもらいたい。併しそうや
つた上にも、満々一
被害が出るとい
つた場合におきましては、これらに対してはすべての
損害補償はしてもらわなければならんということについて、まあこの三
段階について、大きく言えば厳重なる対
米交渉をして行きたいという
政府の方針であります。併しこれも又閣内におきまして、よく慎重な
検討をして、直ちにそれにかかりたいと思うのであります。
委員会を代表せられての
委員長の
お尋ねに対しまして、大体
お答えをいたします。