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1954-08-09 第19回国会 参議院 水産委員会 閉会後第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年八月九日(月曜日)    午前十時二十一分開会   —————————————   委員の異動 八月二日委員田中啓一君及び佐多忠隆 君辞任につき、その補欠として平井太 郎君及び森崎隆君を議長において指名 した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     小林 孝平君    委員            青山 正一君            楠見 義男君            島村 軍次君            曾祢  益君            苫米地義三君   国務大臣    国 務 大 臣 安藤 正純君   事務局側    常任委員会専門    員       岡  尊信君    常任委員会専門    員       林  達磨君   説明員    水産庁長官   清井  正君   —————————————   本日の会議に付した事件水産政策に関する調査の件  (ビキニ被爆事件に関する件)   —————————————
  2. 小林孝平

    委員長小林孝平君) 只今から水産委員会を開会いたします。  ビキニ被爆事件に関する件を議題に供します。只今政府から出席されておりますかたは、安藤国務大臣水産庁清井長官であります。なお保利農林大臣は衆議院の決算委員会のほうに出席されておりますので、後刻出席予定であります。安藤国務大臣は十一時までここにおられますから、そういう御予定で御質問を願います。御質疑のあるかたは、順次御発言を願います。
  3. 楠見義男

    ○楠見義男君 質問よりも、前回委員会のあとで、いろいろ政府のほうからその後の経過について御説明をお願いすることが多いと思うのであります。従つて先ずその後の経過、或いは或る程度確立した結果等について御報告を頂き、その御報告に基いて質疑をいたしたいと思いますが、どうぞそういうふうにお取計らい頂きたいと思います。
  4. 小林孝平

    委員長小林孝平君) 安藤国務大臣から、その後の経過の御報告を願います。
  5. 安藤正純

    国務大臣安藤正純君) それじや大体お話いたしますが、前々からの方針に基きまして、アメリカとの交渉は継続してやつております。まだ最後の結論には達しておりません。併しだんだん進展はいたしております。それからこれと並行しまして、国内措置の問題を考えまして、過日来案を立てて国内措置の途を講じておる次第であります。併しこれもまだ最後行つておらないので、実は一日も早く決定をいたしたいと、頻りに急いでおるのでありますが、数字の問題だとか、或いはそれに該当すべき性質の問題だとかいつたようなことで今検討中なのであります。併しながらこれはもうそう日を経ないで決定することと思います。
  6. 楠見義男

    ○楠見義男君 実は、先般の委員会が済みましてから約一週間以上になつて、この間大体の国内対策についての目鼻をつけて頂くということを強く要望し、又その結果について、本日の委員会に御報告を賜わることを楽しみにしておつたのですが、併し只今の御報告のような状態であることを甚だ残念に思つております。併し是非これは進めて、一日も早く私どもの期待するような結果のあることを望むわけでありますが、それにしても私どもの感じといいますか、期待からすれば、少くとも本日完全な結果が聞けなくても、事務的折衝は済んで、上の大臣間の折衝状態くらいまでのところは少くともしてあることを期待しておつたのですが、それもできないようで甚だ残念に思います。そとでこれは一つ水産庁長官にお伺いしたいのですが、事務的にいろいろの案をお立てになつて、そして関係の省に御連絡、御折衝をしておられると思うのでありますが、その事務的折衝を進められておられる項目について、例えば融資の問題であるならば、大体どの程度金額を目標にして折衝を進められているとか、或いはそれ以外の対策であるならば、どういうような対策をどの方面に対して折衝を進められているとか、そういう事務的の折衝段階の問題について、差支えない限り詳細に御報告を賜わりたいと思います。
  7. 安藤正純

    国務大臣安藤正純君) 事務的の折衝のことは、今御質問ですから水産庁長官から答えてもらいますが、それについての大体のことだけ私から申上げておきます。今お話がありましたが、関係大臣問におきましては、すでに数回話を重ねて、ほぼ意見は一致しているんであります。ただこれを事務的のほうから検討をして、一致するところへ一致をしなければならないので、方針一致をしたところを今事務のほうへ廻しまして、事務当局相互の間で検討をしている次第です。その点は水産庁長官から答えると思います。  それから国内措置は、融資をいたそうというので、融資のことを相談をし、方針をきめている次第であります。融資につきましては、すでに一億五千万円の融資を過般いたしました。併しながらこれは神奈川静岡との両県に対する融資でありますから、その他には廻つてまだおりません。勿論多少そうほうへ廻わすべく用意をして保留してある部分もありますが、それでは足りないのでありますから、新らしく融資をいたそう、でありまするから要するに前の一億五千万円の融資に加える融資をいたして、これをほかにも廻わして行こう、こういう方針なんであります。而してその範囲といいますか、程度といいますか、これは全般的の考えを以て融資をいたして行きたい。つまり生産方面流通のほうの範囲にも廻わして行きたい。こういう方針を以て検討をいたしておる次第であります。細かいことは一つ水産庁長官から御説明いたします。
  8. 清井正

    説明員清井正君) 前回お話がございました、只今大臣から御説明申上げた通り、先般静岡神奈川にいたしました融資方針、即ち預金部の、資金運用部資金を、県に貸与して、県が適当なる金融機関を通じて関係者に貸与するという形をすでにやつておるわけであります。それを更に拡張すると申しますか、今までが静岡神奈川の両県の生産者並び流通業者を目的といたしたのでありますが、これを更にほかの府県、例えば鹿児島なり、高知なり、三重なり、愛知なり、岡山なり、いろいろあるわけでありますが、そういつた県におきまする同様種類関係業者に対しても、同様に融資の途を講じたいという考え方で、只今事務折衝いたしておるのであります。なおそのほかにも只今お話いたしました通り、いわゆる流通関係業者にもできれば一つつてもらいたいということで、そういうことも考えております。そういうことで私ども非常に細かい数字を作りまして、大蔵省相談を実はいたしておるのであります。やはりこれは金額は、関係業界は非常な多額を希望しておるのでありますが、無論これは少い金額範囲内においてできるだけ我慢して最小限度でやつて行くという建前をどうしても現在の状況ではごらざるを得ないところでありますので、この際一つ神奈川静岡融資いたしましたところの金額見合いにおいて、比較的均衡の関係において金額決定して行かなければならない。そういうことに当然相成ると雇うのであります。そこでそれらの見合いを以て、私ども只今静岡神奈川以外の生産県の生産者に対して、静岡神奈川のあの程度融資をいたすとしますれば、ほかの県にどの程度融資をしなければならないかということを考えました。そこで実は大蔵省方面におきましても、現在のような状況でありますので、地方財政も非常に苦しいときであり、そこで全体に金融事情も相当こういうような情勢にあるので、情勢もわかるけれども、なかなか実際問題としてはむずかしいのだということで、なかなか事務的なむずかしい問題があるわけであります。従いまして特に問題が問題でありますので、最近幾分物価は値上りはしておりますけれども、何しろ当時二カ月間というものは相当値下りを示しておりまして、その値下りによる業者関係のこうむつ損害はまだまだこれが回復しておらないのであります。これが回復するまでの間の繋ぎと申しますか、そういう意味合いにおきまして、是非ともこれは必要なものである。而も損害が起つた原因が特殊な原因によつてつておるのであります。これは他と比較して見ても、はつきり区別できるであろうというような観点から実は交渉いたしておるのであります。事務当局大蔵省側は非常に細かい数字を要求しておりまして、一銭一銭の損害数字まで出せということで、非常に細かい数字を出して折衝いたしておるのでありますが、大体において向うのほうとしては私ども気持はわかつてもらつておるのであります。併し問題は全般の金融政策としての問題と、それから厚が非常に財政的に不十分なところが相当ある、こういうようなことでありますので、これはにわかに決定いたしがたいということで、事情は十分呑み込んでもらつておりますけれども、なかなか最終決定に至らないのであります。流通業者についても同様な問題がありまして、これ又問題があるのであります。私どもといたしましてはもはや事務的に折衝段階は恐らくないくらいに思つておるのであります。この二週間ぐらい殆んど毎日のように折衝いたしておりますが、そこで大臣いろいろ御心配になりましたように、大臣は非常に関係大臣と御相談になつている状況でございまして、この点は近日の間に解決つくのではないかと思つておりますが、我々といたしましてはできるだけのことを大蔵当局折衝をいたしたというような現状であります。  それからもう一つ附加えて申上げますが、税金の問題について楠見委員からお話があつたのでございますが、それについて実は税金の問題につきましてもいろいろほかの災害の例もございましたので何とかいたしたいということで非常に先般から努力をいたしておつたのでありますが、実は去る七月の九日に国税庁長官から各地方国税局長宛通知が出ているのであります。これも結局関係流通業者漁業者でありますが、丁度本年度予定納税基準額減額申請を出す場合に減額申請の処理に当つては先ず個々実情を調査して適正な措置を図るようにしろという意味通知が出ているのであります。この通知を出してもらうについても実はいろいろ折衝いたしたのでありますが、丁度本年度予定納税の第一期分が七月から始まり、第二期は十二月から始まるわけでありますが、それまでに今年の三月の事件によつてこうむつた禍害について関係業者からも当然これは減額申請が出ていると思うのであります。勿論そういう場合に際しましてなかなかこれをそのままで減額申請いたしましても不十分でありますので、国税庁相談いたしましてこの通知を出してもらつたということでありまして、現実にどういうふうにこれが反映するかということも個々に聞いておりますが、これは或る程度つてもらつているところもあるのでありまして、又間に合わなかつたところは申告納税告知書の中に事情の困る者は申請をして来いというようなことを書いて納税告知書が行つたところもあるというようなことであります。要するにこれは本年の三月の非常な物価下落による影響を幾分でも早くこれを納税額に現わすという意味措置であります。これだけでは私としても不十分であると思いますので、なお十一月以降に同じような問題が起るわけでありましてその際に前回措置できなかつたものについては同様な措置をしてもらうということも措置しなければならんと思うのであります。さような個々の問題についてなお私どものほうは租税当局と十分折衝いたして行きたいと思つております。とにかく七月には不十分でございますけれども、こういう通知が出ているのでありまして、この通知を足がかりにして今後更に関係業者の有利になるように努力して行きたいと考えております。
  9. 楠見義男

    ○楠見義男君 国内的な対策についてはこの種の案件に鑑みて私は従来一般行政事務のように下から積み上げてそうして関係大臣の間で最後折衝をするという行き方は全く不適当な考えで、この案件についてはむしろ関係大臣の間で大きなところをお酌み頂いて、そうしてその実行事務当局間で整理をすると、こういうような考え方の下に立つた対策でなければ当面のこの大きな問題、而も急を要する問題はいい案ができないのじやないかと実は心配をしており、従つてそういう意味で先ず以て関係大臣の間で大きな方針なり、又枠をきめて頂くことを希望しておつたのでありますが、その点については先ほど守藤さんからもお話があつて関係大臣の間で大体の話合いをおつけになつて、そうして今事務的折衝に移しておる、こういうことで私の希望しておるところと一致しており、その点は私も満足をしておるのでありますが、そこで安藤さん並びに清井長官にお伺いしたいことは、関係大臣の間で国内的な対策としておきめになつたの融資の点、融資をしようじやないかということだけがきまつておるのか、或いは大体の枠をこの程度に持つて行つてやろうと、こういうような大きなところまできまつておるのか、この点を先ずお伺いしたいのです。と申しますのは、先般の静岡神奈川に対する一億五千万円融資の場合においても、私はこれは相当の根拠をおいての融資額であつたとまあ思う。その当時の根拠とこれから追加する額というものも同様の根拠なり事情に基いておやりになることでありますから、大体の資金融通の見当はおつきに、これは事務当局でなくてもおつきになつておるのじやないかと思う。常識的に言つても遠洋のかつお、まぐろ五万トン仕込資金が、トン当り一万円にして五億円という金はうれはまあ常識的にも当然考えられるうとであり、この点については専門家であると、それから専門家でないとにかかわらず、殆んどこの点については常識的な問題として疑う者はないと思うのです。そうするとこの前の一億五千万円が先ず資金融通をされたのでありますから、その残りの三億五千万円程度のものは早急に手を打たなければならない融資総額ではないかと、これは私は想像するのであります。この点についてどういうふうに見ておられますか。これはむしろ安藤さんは専門外ですから後ほど清井長官からもお伺いしたいと思いますが、その三億五千万円の融資額についてどういうふうに一つ……というよりもむしろ総額の枠のようなものの話合いはしておられないのか、それも小さい問題として事務当局に任しておられるのか、この点お伺いしたい。それからついでに清井長官に伺いますが、今の御説明を伺います。と、どうもこの前の条件と同じ条件資金運用部資金を県の責任において融通するというようなふうに聞えるのでありますが、併しこの点は先般来も随分やかましく質疑応答があり、又論議を重ねられた問題で、従来のようなのと同じ条件ではこれはもう殆んど絵に書いた餅で又急を救うのには役立たない。特に条件の問題において、例えば担保を要求するとかいろいろなことのむずかしい条件、これは金利もありましようが、そういう条件——金利なり、或いは担保提供とか——そういうふうな条件を従来と同じようにやつて、そしてここで仮に大蔵省との間に話合いがついても、それが円滑に業者の救済の手段として講ぜられるとお考えになつておるのか、若しお考えになつておるとすればこれは非常に私は不安なことだと思うのです。その点のところをどういうふうにお考えになつておるのか。それから県財政等のことについてのお話がありましたが、この点は一般県財政の窮乏の折柄なかなかむずかしいと思うのです。困難な問題だと思うのですが、そういう問題を承知の上でやはり従来と同じような方式をおとりになるのか、その点がむずかしいと思えば他の適当な方法というものは考えられないのか、この点を清井長官のほうにお伺いしたいのです。
  10. 安藤正純

    国務大臣安藤正純君) そのやり方の点についての細かいことは長官から言いますが、融資の今度のことについての額とか、大体のことは関係大臣の間で基礎的材料に基きまして大体方針をきめて、これを事務当局に移牒いたしまして、そうして事務当局の間でこの折衝をしていることは今水産庁長官お話通りであります。でありますからそういう数字、額の点等も大体方針はきめてあるわけであります。それを今まだいろいろの大蔵省立場、或いは又農林省水産庁立場とそれぞれ見解が一致しない点もありますので、それがひと所事務的に一致しなければならん、今そういう組かい折衝段階にあるのです。併しながら私ども考えますと、そんなことでだんだん遷延して行くことは誠に困ることで済まされないことであります。一日も早くやらなければいけないというので、実は大蔵大臣のほうにもやかましく交渉をいたしている次第でありますから、そう長くはかからないで数日の間にこれはきめたいと思います。
  11. 清井正

    説明員清井正君) 御質問の点でありますが、このそもそもの一億五千万円の資金融通方法でありますが、これは当初私は率直に申しましてこういう案を考えなかつたのであります。いわゆる一般金融機関を通るなり、或いは普通の金融機関が直接業者に貸付ける、そうしてその背後に何らかの措置をとりたいという実は率直な気持であつたのであります。これは私だけの気持でありますが、併しその後いろいろ相談いたして参つておりまして、いろいろの資金事情その他財政状況からしましてもとても無理だ、そこまでやつておつたらいつまでたつても話がつかないということになりますと、一方業界からは頻りに早くやれ早くやれということでありまして、こういうようなことでいつまでもきまらないよりはきめ得る限度できめてとにかく一つ実行して、その実行の成果に基いてできるだけ努力するということ、これはこの前も一度申上げたことでありますが、そうしてたまたま事務的に一致しましたところの預金部資金を使う、県に責任の一端を負つてもらつて、県を通じて県から金融機関を通じて貸付ける、こういう方法をとろうじやないかということで、その方法をとりまして一億五千万円という金額決定いたしたのであります。それも当時は生産地全体という話もあつたのでありますが、とにかく金額の点から申しましてもそういうわけに行かない。そこで静岡神奈川の二大生産県について融資をするということでずつとその後取扱を進めて参つたのでありますが、先般実は両県の関係者のかたに私どものほうに来て頂きまして、いろいろその後の事情を伺い、進捗状況等事情を聞いたのであります。そこで静岡県のほうが先に実は話がきまつているような状況でありまして、神奈川ももう今日あたりきまつているのじやないかと思いますが、ちよつとこれは遅れております。静岡は大体日歩一銭八厘で国から貸付けますが、県はそのまま県の漁業信連に貸付ける、それから漁業信連も初めは無利子ということでありましたが、やはり事務費等が要りますから無利子ということでなくて一厘だけとるというので、結局漁業者に渡るのは日歩一銭九厘ということになるのであります。で、六分九厘三毛、六分九厘三毛の利子になるわけでありますが、そこで漁信連のほうから生産者なり、或いは一部の流通業者のほうにも流して行くということになつて担保はとらないということに静岡はきまつております。そういうことでありましてまあ静岡のほうが先に実はきまつておるということで、もうすでにこのことあることを予期いたしまして、信連のほうから二千万円だけとにかく前貸をいたしておるようでありますが、そういうようなことでありますので、静岡としては国からの一銭八厘に一厘の鞘、それから無担保ということであります。神奈川のほうはどうかといいますと、まあ同時に関係者が集まつて話をしたのでありますが、神奈川県当局としては無担保というわけに行かない、担保をとらなければならないのではないかというようなことを言つておりましたけれども、併しこの点は静岡がこういうことでありますので、果してどういうふうになりますか、実は私どもとしても担保をとるなということを命令することもなかなかむずかしい問題がありますので、実は県の人といろいろ懇談をいたしております。併し私ども担保をとるなという命令はできないことになつておるのであります。静岡はとらないということになつて、そういう事情が起つています。その後どういうふうに経過しておりますか聞いておりませんが、そういうような状況であります。一厘の鞘のほうも恐らく神奈川も同じような状況になるのじやないかと思いますが、神奈川のほうはちよつと静岡事情が違いまして、静岡のほうは漁信連一本で行きますけれども神奈川のほうは流通業者のほうが横浜の興信銀行を使う、漁業者のほうだけを漁信連を通すということで、二本になつておるのであります。併し恐らく条件静岡側はこういうふうにきまつておりますので、神奈川のほうも大体似たような条件に落ちつくのではないかと思つております。そういうような実は状況になつているのでございます。利子補給等の問題もいろいろあるのでございますが、一厘の鞘でありますけれども、六分九厘、普通利子補給するときには、六分五厘ぐらいなら県の負担になつておりますが、六分九厘、一銭八厘とすると六分五厘、一銭九厘になりますと六分八厘、ちよつと多い目でありますけれども、この程度のものならば、利子補給の法律を作らなくてもいいのじやないか、又この資金のことも政府資金でありますから、損失補償ということも政府資金としてするというようなことも考えまして、先ず先ずこの方式で以て実行して行くのが現状では一番いいだろう、特に又前に静岡でこういう方式をやりまして、又他の方式に切替えるということも実際問題として無理がありますので、そういう話もありましたが、又問題が紛糾いたしますので、これで我々といたしましては相当の実効を挙げる見込であります。とにかく静岡神奈川のやつた方式をそのまま運用いたして行く、そういうことのほうがむしろまとまりが早い、とにかく実効においてもそういう意味において大差はないというようなことから、そういうようなことでいろいろ事情を勘案いたしましてやろうということでいたしておるような実情であるのであります。その後、只今大臣からお話があつた通り事務的な相談段階も過ぎておりまして、もう近いうちにきまる、そういうような考えでおる次第であります。
  12. 楠見義男

    ○楠見義男君 条件の問題は、今の無担保の件は非常に有難いのですが、折角そういうように静岡モデルケースができたんだから、水産庁としても神奈川県は勿論、これから実行に移る融資の点については、これは相当やはり同情的な態度で以て出して頂いて然るべき問題じやないかと思うんです。そうでないと、これだけ参つておる業界は、相当今までに担保に入つているんですから、それの上に又担保を要求するということは、実際先ほども申上げたように、折角融資の途が開かれても、絵に書いた餅に堕することで、私はそれを心配する。その点は折角そういうモデルケースができた以上は、この点について他の県にも及ぼせるように配慮願いたい。そこで今安藤さんからも大体の基本的な事柄、又大枠についての大臣間のお話がおきまりになつて、今事務当局行つておるというような御報告を頂いておるんですが、一体今事務当局として大蔵省に対し融資の額をどの程度見てやつておられるのか、先ほども申上げたように、大体五億というのは常識だと、我々素人ですが考えられる。いわんや水産庁のほうにおいては、その点はもう十二分に御存じだろうと思う。そうするとやつぱり残り三億五千万円ということになるわけですが、一体どの程度の額をお進めになつておるのか、これは又一つ見ようによつては三億五千万円という金は、例えば一方で賠償のほうが、これはゆつくり一つできるだけ多く取つて頂きたいということをお願いしておるんですが、このほうでいつでも、これは新聞の報ずるところですからはつきりしませんが、八十万ドルというものはいつでも出そうと、最近の新聞によると更にそのほかの間接被害についても多少考慮するような情報も新聞には出ております。そうすると少くとも八十万ドル、或いは百万ドルにして三億数千万円というものは今度は賠償金として入つて来る。まあその中から福龍丸関係のものの一部、そのほかの一部に賠償内渡しといいますか、そういう金額がありますが、それを除いても少くとも二億乃至二億五千万円というものは、これは日本円にしてですが、いつか入つて来る。そういうものの引合というものも考えれば、ここに一億……、前回だと一億五千万円というものの融通を考えたので、それ以外にそういうものの引当によつて二億や二億五千万円の金というものが出せるはずだ。そうしてそういうものを合せれば、全体としていわゆる常識の五億円というものを出せるだけの金の手当は、これは政府としても考えられて然るべきものである。又決してむずかしい注文では私はないと思う。例えば、ここに望むことではありませんが、仮に風水害、陸地における風水害が去年のようにあつたとする、そうすると何十億という金をこれに政府は当然お出しにならなければならないし、又出すことについては誰しも不思議に思わない。そういうことを考えると、総額については、私は常識に基いた、而もこれは私のほうか常識論て言つておるけれども、もつと理窟のある数字水産庁はお持ちになつておると思う。一体水産庁は、そういうような関係大臣の間でお話合いなつた結果に基いて、大蔵省に対しどれだけの折衝をされておるのか、それを一つお伺いしたいと思う。
  13. 安藤正純

    国務大臣安藤正純君) いろいろ委員会で御心配になり、殊に楠見さん、数字点等について細かく御心配になつておりますが、今ここで数字をはつきり申上げるわけにちよつと参りません。それを御承知願いたいが、今あなたのおつしやつたようなことと余り大差なく我々も考えておりますから、それだけ頭へ入れておいて頂きたい。それについてただ大蔵省立場としますと、それは細かくいろいろと検討して、そこにいろいろ見解が出るのも無理はないと思うのです。それを頭から押付けてしまうわけに行きません。よく了解させて、そうして我々の関係大臣考えておる方式に基いて、そうして決定させたい、又決定させるべく努力をいたしておりますから、それはそう長くないと思いますからね、そう御承知を願いたい。  それからそのほかというようなお話もあつたが、利子補給というような点についても、これは非常な困難が伴いますが、それについても我々の間では進んで考究をいたしておりますということだけ申上げておきます。  それから税の減免、減税ですね、というようなことも前々から考えておりまして、水産庁長官先ほど言われたように努力いたしておりますし、今後のことにつきましてもその減税のことについてはやはりそういうふうに業者の負担の軽くなるように行くように実は関係大臣の間で考究しておりますから御承知を願います。
  14. 楠見義男

    ○楠見義男君 清井さん何かお答えありますか。
  15. 清井正

    説明員清井正君) いや、もう大臣の答えで……。
  16. 楠見義男

    ○楠見義男君 そうすると、長官のお答えがないのですが、今の安藤さんの御説明で、以心伝心でこれ以上聞くのは非常に野暮なようなんですが、融資の点については大体常識として、水産界における常識として、或いは又専門的に見ればもつと合理的だと言えるかもわかりませんが、私どものいわゆる常識の線に沿つて考え頂けるものと、こういうふうに了解してよろしうございますか。
  17. 安藤正純

    国務大臣安藤正純君) 業者はいろいろ大きを望むでしようしね、多々益々弁ずるに違いないんです。併しながら必ずしもそうは行きませんがね。我我の間において常識と認め、且つ又事務当局の間において了解のついた点においてはその線に沿うてやつて行こうという考えです。
  18. 楠見義男

    ○楠見義男君 しつこいようですが、業者が望んでいるのは二十一億を補償してもらいたいということを望んでるんです。この点は、二十一億の補償という問題は対米折衝との関係もありましよう、又それの足りない分を国内でやるという折衝対策の問題もありましようが、これは我々も相当慎重に考慮しなきやならんという問題だと思つておるのです。併し一致しておることは、日本の水産業、特に輸出産業としても大事なこの遠洋かつお・まぐろ漁業というものをどうしても維持して行かなきやならん。もう業者の中には中共には船を引張つて行かれる、朝鮮には拿捕される、又南方ではこんなことだと、政府はあんまりものも考えてくれない、もう水産はやめだと、こういうような半ばやけ気味になつておる業者も少くないと私は承知しておる。これは政府のほうにもそういうことは情報は達しておると思いますが、併しそれではいけないんで、我々、勿論政府一致しておられると思われることは、この業界をどうしても維持して行かなきやいかん、こういう点には間違いのない結論だと思うのです。その結論から考えて、どうすれば維持できるか。而もここで金をくれと言うんじやなしに、金を貸してもらいたい、これは返す金なんですね、而もそれは生業に必要な仕込資金、こうなつて来ると、常識という問題は、業界における常識、安藤さんは今我々の常識という言葉をお使いになつたのですが、我々の常識という意味先ほど私の申上げたような常識であれば私も安心だし、又そういうことを望む、是非そういうふうに常識的な問題としてお取上げを頂き、又御解決を頂く。実はそのほかに農林大臣は先般何だか玉手箱をお持ちになつておるようなふうの御発言がこの委員会でございました。農林大臣本日お見えになればその点についてもお伺いしたいと思うのですが、まあ非常に私どもは楽しみにしておるんです。どういう玉手箱が出るか。尤も煙が出て我々真白けになつたのでは困るので、喜ぶような玉手箱をお持ちになつておるようなんで、それを是非見せて頂きたいと思つてるんですが、そういうこともある、又お考えになつておられるようでありますから、是非、而も早急に残額の問題については常識にかなつた処置を講じて頂きたい、又それを希望するんですが、もう一度念のために安藤さんから力強い御言明を頂いておきたいと思います。
  19. 安藤正純

    国務大臣安藤正純君) 日本の水産業の興廃に関する問題であつて重大問題だということを先ず第一に頭に置いて考えておる。それから来る常識であります、我々の考えておることは。併しながらそれではどれだけというような数字になりますと、それは業者が自分の立場だけで考えておることと、又大局からいろいろの方面を考案して考える事柄と必ずしも一致しないかも知れません。併しながら水産業に関する重大問題であるから、今こういうふうにして少くとも融資をしておけばそれがどういうふうに廻つて取返しがつくといつたようなことを見込んでやつておるわけであります。併しそういう細かい点は私らは漁業のことに……何も私ばかりではない、農林大臣つて漁業が詳しくわかるわけではないから、これはまあ水産庁が一番当該官庁だし、そういう事務的のところで……併し水産庁長官といつたつて業者ではないけれども、それが一番業者に接触しておりますから、それらの点をよく接触を保ち、そうして又業者の言うことも聞くが、同時に政府としては財政上の立場もありますし、それからその他の方面との照らし合いをして考えて行かなければならんということがありますから、そういう点をよく見合つて、将来これが廃れてしまつてはならない、再び立つことができる、こういう程度考えておりまして、細かい折衝水産庁等のほうでやつておる、こういうわけであります。
  20. 楠見義男

    ○楠見義男君 安藤さんやほかの大臣専門家でないように、私も実は専門家でない。そこで常識論を申上げておると同時に、先ほど申上げたように、この種の問題はびしびしと事務的に積上げる性格の対策でないということを再三申上げたのはそういう意味なんです。その点はよくわかりました。今、言葉尻をつかまえるようなんですが、国の財政事情、これもよくわかります。と同時に、他の方面との釣合いをよく考えなければならんという言葉もありましたが、この点を先ほど私は風水害の問題、或いは臨時国会で必ず立法化されようとする本年の凍霜害も、これは生やさしい金ではないことは、これは御承知の通りなんです。それらの釣合いということを考えれば当然私の申上げることは決して無理ではないということはよくわかるのですが、この点は併し安藤さんのおつしやることはよくわかりました。そこで水産庁長官に、これは常識論ではなしに、いわゆる我々から見れば専門家立場からどれだけの金を大蔵省で今折衝しておるかということをお聞きしたのですが、これは安藤さんからもおとめになつて、御発表がむずかしいようですから、どれだけの金額を要求しておるかということはお聞きいたしませんが、専門的の立場でどの程度仕込資金というものはこの日本の水産業を維持するのに必要だと、こういう観点からお考えになつておるか、それは別に折衝経過をお伺いするりじやなしに、純客観的に、専門的にお考えになつてどの程度金額が、まあこれはいいところだとお考えになつておるのでしようか、その点をお伺いしたい。
  21. 清井正

    説明員清井正君) 専門的な立場からという御質問でありましたが、私も実はどの程度がいいかということをちよつとまだお答えができないことを恐縮に考えておる次第でありますが、恐らくこれは業界としては二十億くらいの損失を出しておると私どもは思いますが、なかなか融資をいたすといたしましても相当なこれは融資をいたさなければ業界としては満足の行く数字にはならんと思います。ただ問題はこれは最近大体において漁獲が上向きになりつつある、過去の損失を、少しずつ少しずつ、これは回復しつつある、又しわの伸びない点をもう少ししわを伸ばすために貸付資金の融通をしてもらいたい。こういう短期融資の問題があるわけなんです。そこで私どもといたしましてもいろいろ推算をいたしておるのでありますが、なかなか具体的にはむずかしくてつかみ得ないのであります。損失額等も、私のほうではいろいろ計算をする関係上、計算をしたものが実はあるのでありますけれども、これもまだ外に出して申上げるような数字ではございませんし、なかなかつかみ得ない。併し問題は私ども率直に考えまして、無論これは多いほど越したことはないと思いますけれども、やはりこれは端的に申上げまして静岡神奈川に或る程度の、少いながらも融資をいたしておるのでありますから、やはりそれとの均衡ということも私どもはどうしても考えざるを得ないわけであります。やはりそれの全体を占める割合なり、そこに属する船の受けた損害というものを比較すれば、ほかの地の船はどのくらいの損害が出るだろうかというような推定をいたしたわけであります。そういつたようないろいろの観点から見た算定はいろいろ事務的にやつております。そこで全般のあの数字からすれば、ほかの県に比較すればどうしてもこの程度のことはしなければならんという限度数字を出して、今検討いたしておるというようなわけであります。従つてこれも全体の勢力から見まするというと、やはり相当の部分は静岡神奈川のことですから、それと比較いたしますと、厖大な金額に一挙になるわけには行かないと思う、そうかといつて非常に少い金額というわけにも行きませんし、そこら辺、誠にいい加減なことを申上げて恐縮ですが、要するに現在融資を行われつつあるものとの均衡ということも重要な要素になるだろうというふうに考えて計算をいたしておる次第であります。
  22. 楠見義男

    ○楠見義男君 水産長官の話を聞いて、私は非常に不安になつて来たのですよ。という意味は、静岡神奈川に一億五千万円を融通したから、ほかの県全部を含めて一億五千万円を出せば大体の均衡のとれるようなふうに心配されるような御答弁だつたんですが、若しそうだとすれば私は非常に心配になるんです。そこで専門的な立場金額をお伺いしたのですが、それは今調査中で、なかなか困難だというお話なんだが、そういう場合には結局常識というものが一番正確に当るものなんです。そこで一億五千万円では私は非常に不安だ、そこで賠償金額が、二億円以上の金が近く入つて来るんだから、そういうものの引合財源との見合い考えてやれば丁度一億五千万円くらいになるんじやないか、こういうことを実は申上げたんです。例えば神奈川の三崎なら三崎の漁船、神奈川県に融通をしてもあそこの県には、三崎にはほかの県の漁船が随分入つて来る、それでは神奈川県は自分の県が資金運用部から借りてほかの県の業者に金を貸すかというとこれは恐らく貸さないでしよう。結局静岡県の船籍を持つている漁船だけに貸すというのが実体じやないかと思うのです。そうなつて来ると残りの県に、静岡神奈川と同じ一億五千万円を貸せばそれで均衡がとれる、こんな考えで行きますと、これは非常に大変なことになるんじやないかということを実は今の御答弁で、先ほど安藤さんの御答弁で大体安心をしておつたのですが、逆に非常に心配になつて来たのですが、そういうようにお考えなんでしようか。
  23. 清井正

    説明員清井正君) 例えば静岡神奈川に他県船が入つて来るという問題を御指摘になりましたが、まさにその問題が引つかかりまして、実は融資の枠がきまらなかつたのであります。相当に多くの他県船が入つて来ております。三崎を中心といたしまして、静岡も同様であります。そこで実際問題として、例えば三崎で申しますと生産者の作つた市場と商人の作つた市場と二つあります。生産者の作つた市場に当該県の船が入つて来ますのは問題ないのでありますが、問題は商人のほうの市場であります。これに他県船が入つて参ります。従つて今度考えられますのは、神奈川につきましては、要するに三崎の組合の作つておるのはこれは勿論融資の対象になりますが、商人の作つております市場に入つて参ります他県船の問題であります。これは陸揚げされたいわゆる漁獲物の値下りに関連しての融資、これは枠の中に入るのでありますけれども、その荷揚げをいたしました他県船の漁業者としての融資分が入らないということが今度の問題になつたのでありまして、むしろ商売人の市場は自分のほうの値下りは見られても自分のお客さんのほうの、主産者のほうの値下りが見られないというのは困るじやないか。お客さんが困るんだということで当然お客さんの分も考えてもらわなければならんということで、実際問題として県の枠の配分のときに問題になつたのであります。そこでいろいろ計算をいたしまして、私どもといたしましてはこれは県の分だけであります。まあ最近の例をとつて見ますと三崎の市場に荷揚げされた分についてのみ、いわゆる三崎の船に漁獲されたものについては融資の対象として一応見られるけれども、他県の船についてはそれぞれの船籍港において見ざるを得ない、こういう形になつておるのでありまして、実は一億五千万円ということをきめましたときにも実は神奈川静岡ということが主な対象でございますけれども、話の内訳としては大体生産地の全部をこれは見られたらというようなことだつたんで、そこで一億五千万円ということが問題になつたのでありますが、実際問題としてなかなかそういうわけに行きませんが、大部分は静岡神奈川ということになりますと、結局今のような問題が起つて参りまして、当然そうならざるを得ないということになります。その後いろいろな事情を勘案いたしますと、単に指定五港で検査を受けてあるものでなくて、高知あたりで検査を受けたものが相当出て来るということでやはり影響がある、そういうものについても貸さなければならない、そういうような問題が起つて来ましたので、それで今のような第一回の交渉経過と鑑みまして、それからほかの県との釣合いとも鑑みまして、いわゆる静岡神奈川以外の県の船についても融資をやるということで、私のほうの専門家にずうつとトン数の建前とか或いは船の受けた損失の比較とか、皆想像の数字でありますけれども、そういうものを使いましていろいろの角度から検討をいたしておるのでありまして、そこで現在数字を出しているということであります。やはり問題といたしましては静岡神奈川に対する融資というものの金額が、この金額交渉の結果いろいろ起つて来ました問題に関連いたしまして、やはり融資の対象になるということは争えない事実であります。そういうことであります。
  24. 島村軍次

    ○島村軍次君 大体楠見委員質問で尽きたのでありまするが、一点だけ一つつておきたいことがございます。それは非常にお骨折頂いておることは有難いことであります。心から感謝をする次第でありますが、先ほどお話なつ生産者流通関係にも出すということは結局回復するまでの繋ぎ融資、こういうふうな考え方でいらつしやるのか、つまり市場の値下りという問題についてはどういうふうな計算、三大臣でお話合いになつておる問題であるか、その点をちよつとはつきりしかねるのでその点一点伺つておきたい。
  25. 安藤正純

    国務大臣安藤正純君) まあ生産のほうは申上げた通り流通関係のほうもこれも融資をしなければなるまいというところへ到達しまして、それにも及ぼそうというのでそこで金額を算定して今事務のほうで詳しいことを検討してもらつておる、こういうことなんです。
  26. 島村軍次

    ○島村軍次君 そうしますと、端的に伺いますというと市場業者にも資金を出そうということであるかということと、それから生産者のほうの関係はわかりますが、値下りについても或る程度まで見ようということかどうかという、この二点はどうなんですか。
  27. 安藤正純

    国務大臣安藤正純君) まぐろの値下りについてですが……まぐろが値下りになつて従つて市場がまあ混乱したとか、非常な影響が及んだということに対して、それが手当として、手当ということはつまり融資によつて将来の途を開くということに便宜になるように融資をしよう、こういう建前なのです。
  28. 島村軍次

    ○島村軍次君 大体結構です。
  29. 苫米地義三

    苫米地義三君 私は簡単に二点だけ伺いたいのですが、それは水産委員会としては或いはちよつとふさわしくないかも知れませんが、今当面の処置、こういうことはお話通りできる限りこれを緩和してやつて頂きたいということに対しては、私は楠見委員と同意見です。ところが業者が出漁の意欲を失うというようなお話がありましたが、私は全くそうだと思うのです。それはこの間のビキニの実験があれだけでもう終るものならよろしいが、これが繰返されるということになれば、こういう問題が絶えず起ることになるわけです。そこで安藤国務大臣としては外務大臣その他と連携の上で再び原爆の実験をやることに対してこれはやるということは米国の側から言えばこれは公告するわけに行かない、それによつて我々が影響を受ける、その影響をなくするような方法においてやつてもらう、今の考えでは無理かも知れませんが、併し科学の問題ですから、必ずしも無理でないかも知れない。それでありますから、原爆の実験はおやりになるならばおやりになつてもよろしい、その影響を海の上に及ぼしたり、或いは大気の上に及ぼしたりするようなことのないようにしてやつてもらいたいということは私は無理もない希望だと思いますが、その点はどうですか。
  30. 安藤正純

    国務大臣安藤正純君) 簡単にお答えいたしますが、この原爆の実験ということは私はもう実験なんぞはやめてもらいたいというのが本心なんです。併しながらこれは簡単に行きませんので、アメリカ側が実験をやるかやらないか、わかりません。それから又これは世界の関係或いは平和関係というようなところになると、現在は力の均衡と、もう一層具体的に言えば原子力兵器の優劣とかその均衡とかいうような問題で、僅かに平和を保つているのが今日の世界の状態だと思いますから、これを簡単に日本だけで結論するわけには行かない。併しながら日本の希望としては、原爆の希望ですね、希望としては原爆の実験等をやめてもらつたほうがいいと、そういう方針であるけれども、それをそう原爆を是非やめちまえと言うわけには行かない。又現にこれは実際問題として国際連合等におきまして御承知の通りに、幾回も幾回もいろんな案が出た。これがまとまらずにおるのですから、これが急にどうするというわけに行かないと思います。而して実際の問題になると、アメリカはまあ今年中はやらないという観測なのであります。併しながらやらないとはつきり断定したわけでもないからこれはわかりませんが、まあそういう観測。併し又来年になつたら又実験をやるかも知れません。やらんかも知れないが、やるかも知れない。実験をやるという場合にはそれに対する対策は講じておかなければならないと思います。日本の立場といたしましては。そこで更に実験をアメリカがやるという場合には日本としてあらかじめアメリカに交渉をして、概括的に言えば安全保障をしてもらいたい。概括的の言葉を以て言えば安全保障をして、そうして実験をするならするということにしてもらいたいと思うのであります。でそのことをもうちよつと具体的に言うと、まあ第一は、実験をやるのに対して日本には、最も損害関係の影響の多い日本に対してはあらかじめ通告をしてもらいたい。又これが日米関係という、日米親善関係の上からいつても秘密が漏れないということが保証されるならば、アメリカが日本に対して予告をしてもよかろうと思うのであります。  それから又第二は、危険区域というものをはつきり限定して被害がほかに及ばないということを徹底してもらいたいと思います。尤もこれは今苫米地さんのおつしやつたように大気の関係とか、海流の関係とかいうようなものは到底単に一口に言えないのですね。俊鵬丸が帰つて来た報告によりましてもいろいろに考察しなければならないと思いますし、それから俊鶻丸の報告を基礎にして国内の各種の専門学者の間でそれはその比較研究をしてどういうふうになるものかということを科学的な結論を出さなければならないと思います。幸い日本の学術会議におきましてはやはりそういうことを考えましてこの秋にアメリカの科学者、そういう方面の専門の科学者を呼びまして日米共同調査をやることにいたしておりまして、政府もそれを慫慂しておるのであります。そういうわけで科学者の専門の結論がそれで果して出るか出ないかもこれも問題ですが、これもできるだけのことをやつておる。それに基いてあとのことを考えて行かなければならん、対策を立てなければならんと考えております。そこで危険区域というようなことも今科学者、専門家の調査に基いておのずから危険区域であるとか、やり方であるとかいうようなことがそこに出て来るであろうというわけでありますから、そういうようなことに基いて危険区域を厳重に設定して他に被害の及ばないようにしてもらいたい。即ち先ほど申しました概括的な言葉で以て言えば安全保障といつたような言葉で現わせば現わせるのですが、そういうことを要求したいと思います。併しながら第三に、そう言いましてもこれは非常に複雑な、非常に深刻な、非常に広汎な、非常に専門的な問題だから恐らく誰でもここのところでもう大丈夫だという線を切るわけには行かないのじやないかと思いますね。そこまで行けば幸いなんです。それを希望いたしますが、それはすぐ出ないかも知れない。そこで第三にはいろいろなことをやる。いろいろな対策を講じ、いろいろな設備準備をしましてもなお且つ万々一に又被害が、万々一にでも出た場合には直接損害だとか、間接損害だとかいうようなことを言わないで、その被害全部に対してアメリカは責任を感じて賠償をすると、そういう希望を日本は述べてあつて、これらの条件を以てあらかじめアメリカに交渉をしたいとこういうことを我々の間では只今考え検討をしている最中であります。
  31. 苫米地義三

    苫米地義三君 大体そういうお考えでいいと思うのであります。ただアメリカが実験を今年中はやらないのであろうとか、それからして損害がある場合に賠償するであろうとかというようなところの、だろう話でこれは片付けられないと思います。被害を受けた者は日本です。そして現実にこれは業者は勿論のことでありますが、一般国民も非常にそれに対して不安を感じている問題です。ですからただ間接な希望やなんかでなく、現実の上において外交交渉であるとか、或いは政治折衝であるとかいうことによつてやはりきちんときめて行くべきものであろうと思います。それがために向うの実験を阻止することはこれは不可能でしよう。これはそれでもいいと思います。ただ如何にして被害を受けないようにしてくれるという点はこれは考え方によつて私はできると思うのであります。その点は今安藤大臣もおつしやる通りで大体私はよろしいと思います。  もう一つ、この現在受けている第五福龍丸の被害者がこれは現にまだ治療をしております。これが癒りましても広島の災害からいたしますというと、九年たつた今日突然に病気が起つて突然倒れている人がある。だからその間接的な被害というものは相当長期に続くものと見なければいかん。そういうことも賠償の点についてはお考えの中に当然入るべき問題だと思うのでありますが、その点はどうでしようかという点が一つ。  もう一つは被害は海の方面ばかりではないのですから、現に荒川区など空中に水爆の塵がたくさんあつてそれが本年の異常気象になつておるということを断言しておるぐらいです。かような影響力がありますと更にこの実験に対しては我々はもつと真剣に国家の立場から考えてやるべき問題だと思う。日本は距離が比較的近くであるし、気流の関係からいつて比較的被害が多いのであります。  それからこの前安藤さんからの御答弁によつて五回ほど水爆の実験をやつておる、こういうお話であります。そのことは要するに幾つかの塵を含んだ雲の層があるということに考えざるを得ないのでありまして、さような点がこの一般の気象に現われておるのじやないかと思うのでありますから、この水爆の実験に対する関係はもつと政府としても慎重に且つ深刻に考えて欲しいという希望を申上げておきたいと思います。
  32. 安藤正純

    国務大臣安藤正純君) 第一のその点は更にアメリカが実験をやる場合に対しては只今私がまあ大体三点に分けてお答えしたんですが、そういうことを今検討中なんで、無論希望ですが、そこは希望で終るのではない、実験をやるといつても、早速交渉しようということで、対米交渉へ持つて参ります。  それから第二の患者は、これに対しましては非常に心配をいたしております。ですが、これに対しては十分なる慰藉料を見込んでございます。而してそれは対米賠償として必ず応じて来ると信じております。  それから第三の点は苫米地さんお話通り、勿論同感で非常に重大な問題で、これが大きく言えば決して日本だけの問題ではない、人類の全体の問題なんですね、そしてその未来の世界に関する問題ですね、でありますから私などはこれは非常に深刻に考えておるのです。むしろ私はその点に考えて行くと余計なことを言うか知らんが、国会の衆議院、参議院の御決議のごときはもつと深刻に言つてもいいのじやなかつたかと思う。あれは実験をやめてくれとか、禁止してくれとかいうのではない、被害が及ばないように十分の手当も考えてくれろという第二段の目標に入つておる。これは国論としてももつと沸騰して来ましようし、又むしろ日本としては原爆の第一号、第二号を受け、更に強い爆弾、水爆第一号を受けた日本といたしましては世界に向つて日本人ほど発言権を持つておるものはないと思う。だから十分発言していいと思う。併しながらただアメリカといたしましては世界政策の上に、或いは平和維持の上にこれはやめるとかなんとかいうようなことはなかなかむずかしい問題あると思います。これも又よく考えて行かなければ、日本の立場としても考えて行かなければならない。ただ簡単にやめてしまえというようなことも言えないと思いますから、或いは世界全体の問題として考えて行く必要があると思いますが、それに対してはそういう希望は失わないと共に実験なりなんなりどんどんやる場合にはこれに対して被害の及ばないように十分考えて深刻な最も緻密な調査、あなたのおつしやる通りの調査を進めて行くことが必要であり、政府としてもそれに伺いまして今慎重に研究中であります。
  33. 小林孝平

    委員長小林孝平君) ちよつと速記をとめて下さい。    午前十一時三十八分速記中止    —————・—————    午後零時十一分速記開始
  34. 小林孝平

    委員長小林孝平君) 速記始めて下さい。  別に御質疑もなければ本日はこれにて散会いたしますけれども、本日は大体政府側から最終的の案を示して頂くことになつておりましたが、予定にしておりましたところ、まだ具体案が出ないようでありまするから、速かに政府側から具体案を作つて委員会に示して頂きたい、こういうふうに希望いたしておきます。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時十二分散会