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国務大臣(
安藤正純君) 簡単にお答えいたしますが、この原爆の実験ということは私はもう実験なんぞはやめてもらいたいというのが本心なんです。併しながらこれは簡単に行きませんので、アメリカ側が実験をやるかやらないか、わかりません。それから又これは世界の
関係或いは平和
関係というようなところになると、現在は力の均衡と、もう一層具体的に言えば原子力兵器の優劣とかその均衡とかいうような問題で、僅かに平和を保
つているのが今日の世界の
状態だと思いますから、これを簡単に日本だけで結論するわけには行かない。併しながら日本の希望としては、原爆の希望ですね、希望としては原爆の実験等をやめてもらつたほうがいいと、そういう
方針であるけれ
ども、それをそう原爆を是非やめちまえと言うわけには行かない。又現にこれは実際問題として国際連合等におきまして御承知の
通りに、幾回も幾回もいろんな案が出た。これがまとまらずにおるのですから、これが急にどうするというわけに行かないと思います。而して実際の問題になると、アメリカはまあ今年中はやらないという観測なのであります。併しながらやらないとはつきり断定したわけでもないからこれはわかりませんが、まあそういう観測。併し又来年に
なつたら又実験をやるかも知れません。やらんかも知れないが、やるかも知れない。実験をやるという場合にはそれに対する
対策は講じておかなければならないと思います。日本の
立場といたしましては。そこで更に実験をアメリカがやるという場合には日本としてあらかじめアメリカに
交渉をして、概括的に言えば安全保障をしてもらいたい。概括的の言葉を以て言えば安全保障をして、そうして実験をするならするということにしてもらいたいと思うのであります。でそのことをもう
ちよつと具体的に言うと、まあ第一は、実験をやるのに対して日本には、最も
損害関係の影響の多い日本に対してはあらかじめ通告をしてもらいたい。又これが日米
関係という、日米親善
関係の上からい
つても秘密が漏れないということが保証されるならば、アメリカが日本に対して予告をしてもよかろうと思うのであります。
それから又第二は、危険区域というものをはつきり限定して被害がほかに及ばないということを徹底してもらいたいと思います。尤もこれは今苫米地さんのおつしやつたように大気の
関係とか、海流の
関係とかいうようなものは到底単に一口に言えないのですね。俊鵬丸が帰
つて来た
報告によりましてもいろいろに考察しなければならないと思いますし、それから俊鶻丸の
報告を基礎にして
国内の各種の専門学者の間でそれはその比較研究をしてどういうふうになるものかということを科学的な結論を出さなければならないと思います。幸い日本の学術会議におきましてはやはりそういうことを
考えましてこの秋にアメリカの科学者、そういう
方面の専門の科学者を呼びまして日米共同調査をやることにいたしておりまして、
政府もそれを慫慂しておるのであります。そういうわけで科学者の専門の結論がそれで果して出るか出ないかもこれも問題ですが、これもできるだけのことをや
つておる。それに基いてあとのことを
考えて行かなければならん、
対策を立てなければならんと
考えております。そこで危険区域というようなことも今科学者、
専門家の調査に基いておのずから危険区域であるとか、やり方であるとかいうようなことがそこに出て来るであろうというわけでありますから、そういうようなことに基いて危険区域を厳重に設定して他に被害の及ばないようにしてもらいたい。即ち
先ほど申しました概括的な言葉で以て言えば安全保障といつたような言葉で現わせば現わせるのですが、そういうことを要求したいと思います。併しながら第三に、そう言いましてもこれは非常に複雑な、非常に深刻な、非常に広汎な、非常に専門的な問題だから恐らく誰でもここのところでもう大丈夫だという線を切るわけには行かないのじやないかと思いますね。そこまで行けば幸いなんです。それを希望いたしますが、それはすぐ出ないかも知れない。そこで第三にはいろいろなことをやる。いろいろな
対策を講じ、いろいろな設備準備をしましてもなお且つ万々一に又被害が、万々一にでも出た場合には直接
損害だとか、間接
損害だとかいうようなことを言わないで、その被害全部に対してアメリカは
責任を感じて
賠償をすると、そういう希望を日本は述べてあ
つて、これらの
条件を以てあらかじめアメリカに
交渉をしたいとこういうことを我々の間では
只今考えて
検討をしている最中であります。