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説明員(諏訪光一君) 私どものほうで情報を聞きましたので、先日
水産研究所の猪野博士を煩わしまして科学的に見て頂いて、本日行政的な観点から私どものほうの黒田技官が
調査に参
つております。科学的に
調査をして頂いた結果について申上げますと、今度のひとでは一種類であるということでございます。それでこの一種類と申しますのはきひとでと申すのだそうでございます。このきひとでは通常は十六メートルから百メートルぐらいの深さに住んでいるものであるので産卵の時期は春から夏にかけて行われ、現在非常に卵をたくさん持
つているということでございます。それで発生は大体深いところで発生いたしまして、そうして発生したばかりには浮游している。それが約三週間で地に下りる。当初はあじもなどに附着しておりますけれども、成長が極めて早くて、四カ月ぐらいで腕の長さが一寸ぐらいになるという種類だそうでございます。通常食物としては動物性の食物をと
つてお
つて、主として貝類を食べているのが通常の状態である。このたびこういうふうに殖えました原因については、どうも科学的にはつきりとは言えないけれども、推定するところによると、移動したのと繁殖したのと両方じやなかろうかという見方でございます。それでこれの移動する力は、目力では一分間に二十センチメートルぐらいといいますから、非常にのろいのでありますけれども、潮流とか或いは風とかで波が立つというような場合に、それを利用して相当動くというようなことでございます。一カ月に四マイルも移動したという記録があるのだそうでございます。それで今度の場合にはそういつたようなふうにして移動して来たものが、何と申しますかつまらん例でございますが、熊が丁度里へ出て来たといつたようなあんばいで、非常に食物の多いところにぶつかつたもので、そこに定住したと申しますか、足をとめて暫らくいるといつたような状態じやなかろうか。それで食物もいいので繁殖率も非常にいい、それで今度のように一斉繁殖をしたのじやなかろうかという見方をいたしております。それで現在は千葉県の市原郡のほうから発生いたしまして、浦安が今一番ひどい。続いて
東京都の葛西のほうに変
つて来まして、それから
東京都下一帯に亙
つて、現在神奈川県のほうまで発生を見ておるという状況でございます。
それでこれの駆除
対策についてはどうしたらいいかということを
調査して頂きましたところ、駆除
対策といたしましては、このものそのものにつきましては真水或いは薄い薬品を使
つてもこれは駆除できるのだそうでございますが、実際問題として海でそれを使うということは現実にはできかねる。それで結局のところ人力を用いてこれを克明に取るという以外には手はなかろうという結論が出ております。それで現在千葉県でと
つております方法は、普通の貝類を取ると同じように、貝桁網を用いて取
つております。これに対しまして千葉県といたしましては業者のほうから今まで出動してその駆除に当
つたのが五千九百隻、それから出動
人員が延九万人という
人間が出まして現在まで約百十万貫のひとでを採捕したということでございます。それでこれを海の中で叩き殺すという方法はないかということも学者のほうでも
研究したのでございますが、御
承知の
通り、ひとでを切りますと、再生してむしろ殖えるというような状況でございますので、海の中でこれを殺すという方法も、どうしてもこいつは捕えて陸に上げて処分するという以外にはどうも途はないということに
なつております。
それからこのものの利用についてどうするかということを
調査したのでございますが、これは肥料課のほうについて御相談申上げましたところが、肥料価値は成るほどある。あることはあるけれども、現在の
一般の金肥に比べて非常に肥料価値が少いから、価格採算から言いますと、高くては到底間尺に合わない。それでそういつたような
一般の現在の市場価値から割出しまして、十貫目で二百五十円
程度のものであるということでございます。これは肥料価値ばかりではなく、いろいろの採算の点から見まして現在の相場もそのくらいでございますし、肥料価値も又実際にその
程度しかない。窒素分が五・四%しかないそうでございます。それで炭酸カルシユウム、或いはカルシユウム分が四五%もあ
つて窒素分が非常に少いのでその
程度のものであるということに相成
つております。でございますので、現在は非常に多量に取れますので、千葉県附近で
最初は肥料に若干売つたし、又売れた。併し局部的に非常に大量に取れるもので、現在は十貫目二百五十円
程度でもまだ売れないという状況でございます。それでございますので、これだけの船と人手をかけて取
つても、これを肥料に売
つて全然採算が合わないという状況に
なつております。
それでこれが今後どうなるかというような見通しでございますが、これははつきりしたことは勿論わからないのでございますが、現在の状態ならば動くまいという見方をいたしております。現在の
被害状況は浦安
地方の最もひどいところで八割の貝類かこれに食われてお
つて、現在残
つているのは大体二割ということでございます。そうしますと、恐らくこの二割が食い潰されるまでは動くまいというような見方が強いのでございます。或いは潮の加減で以てこういうものはばつたりとなくなるというような例か今まででもございますから、これはどうもわかりませんけれども、大体もう少しはいるのじやなかろうか。そうしますと、あとの二割を食い潰すまでに大体あと二、三カ月で食い潰されてしまうだろう。そうなればいなくなりますが、これじや勿論被害のほうも大きく
なつて非常に困るので、何とか早期にこれを処分しなければならないというので、本日黒田技官が行
つて、行政的に千葉県、
東京あたりのかたがたの御意見を聞いて、いわゆる
東京、千葉、神奈川、三県の
水産試験場、或いは
水産課の、こういつたような担当官を集めまして
対策の協議をいたし、そうしてそれについてどういう金がかか
つて、どういう方法でいつから始めるかということを打合せまして、若し
予算関係で国として面倒を見る必要があるならば大蔵省に
交渉いたしまして、何とかできるだけの面倒を見てやりたいというつもりで現在準備いたしております。大体以上のようなことでございます。