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1954-07-22 第19回国会 参議院 水産委員会 閉会後第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年七月二十二日(木曜日)    午前十時八分開会   ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     小林 孝平君    理事            秋山俊一郎君            千田  正君    委員            青山 正一君            石村 幸作君            楠見 義男君            森崎  隆君            松澤 兼人君   委員外議員            木下 源吾君   国務大臣    外 務 大 臣 岡崎 勝男君    国 務 大 臣 安藤 正純君   説明員    厚生省公衆衛生   局環境衛生部長  楠本 正康君    水産庁長官   清井  正君   ―――――――――――――   本日の会議に付した事件水産政策に関する調査の件  (ビキニ被爆事件に関する件)  (北洋漁業に関する件)   ―――――――――――――
  2. 小林孝平

    委員長小林孝平君) 只今から委員会を開会いたします。  本日の議題は、ビキニ被爆事件に関する件であります。本日出席のかたは、岡崎外務大臣安藤国務大臣保利農林大臣水産庁清井長官増田海洋第二課長、厚生省楠本環境衛生部長、大蔵省の鈴木主計官であります。  只今まだ外務大臣だけおいでになつておりますが、外務大臣は他に所要がありまして、十一時までこの委員会出席されるそうでありますので、時間の関係もありますので、最初に外務大臣から御説明願つて御質問頂きたいと思います。  それでこの件に関しましては先日並びに昨日いろいろ審議をいたしましたのでありまするけれども、その際特に外務大臣にお尋ねいたしたい点といたしましては、第一には外務大臣は参議院の本会議におきまして、このアメリカ水爆実験協力するという御発言があつたのでありまするが、その御発言協力程度というものは、具体的にどういう程度とどういう程度であるか、ということが第一点であります。  第二点は只今アメリカ補償要求をされているのでありますけれども、その経過、並びに今後の見通しにつきましてもう少し具体的に、昨日も中川アジア局長から簡単な説明があつたのでございますけれども、もう少し具体的に外務大臣から御説明を願いたいという点であります。  第三点は水爆実験危険区域アメリカ設定したのでありますけれども、これに関しまして米国から日本側にあらかじめ通知等があつたのかないのか、こういう点についてお尋ねいたしたいというわけであります。  以上三点につきまして、そのほか更に附加えて外務大臣からこの問題について御説明をされる必要がございましたら御説明を願いたいと思います。
  3. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 第一の水爆実験に対して協力するという意味は、これは原子力国際管理ということが成立すれば、こういう問題はなくなつてしまうわけですが、今まだその段階行つておらない。他方ソ連側はいろいろの実験を行なつておるようであるから、これに対してアメリカなり、イギリスなり実験を阻むということは、国際的な勢力のバランスの上から考えて適当でない、こう思いますから、これを妨げる意思はないということが協力趣旨であります。併しながら前の国会においても申しました通り補償等の点については、つまり日本側がこれによつて損害を受ける場合においては、この損害は適当に補償さるべきものであつて、この点については国会発言において明らかにしております。要するにむしろ消極的な、実験禁止ということについて日本政府がそちらのほうに向つてやるつもりはないということを申したのであります。  それからアメリカとの補償交渉につきましてはいろいろ数字が出ておりまして、これをアメリカ側に通報して、殊に日米関係大局から見て、こういう小さな問題でアメリカが如何にもさつぱりしないようなことでは、却つて大局上面白くないと思いますので、細かく一々の内容について詮索をしなくても、大まかにこれは政治的に解決すべきものであろうという趣旨で話を進めております。ただいわゆる直接の損害間接損害とを観念上は区別できるわけであつて、実際上はなかなか困難な部面もありましようけれども、少くとも観念上は区別できるのでありますが、今までの、これと同じ例というものは勿論ありませんけれども、いろいろ相手方の過失なり相手方の不注意なり、その他相手方責任のあるような事故によつて他国損害を受けた場合ということは、しばしばいろいろな事件であるわけです。その補償補償というようなこともこれはしばしばあるわけです。我が国におきましても過去において何回かそういう事件はありますが、従来のやり方から見ますると、間接被害ということを考慮された例は余りないようでありまして、直接の被害につきましては、これはアメリカ側も、数字内容は別としまして、責任のあることは認めております、又これを支払うことも、原則的には異議がない、又早く支払つてこういう問題を一括して解決したいという希望を持つております。ただ間接の問題になりますとこの解釈の問題もあり、国際慣例等もありまして、なかなかその間むずかしい点があろうかと思つております。他方こういう補償の問題が日本側の満足すべきような額で落ちつけば別でありますが、落ちつかない場合には交渉を重ねて行かなければいけない。この間水産業者は非常に困るわけであります。これをどういうふうにしなければならんか、つまり片つ方は出漁にいろいろ金も要るでありましようし、今までの被害も、損害もあるわけであります。交渉が長引くためにそういう種類補償を得られない、そして政府は何もしないということでは非常に困るわけでありますけれども、この点は農林大臣水産庁長官等でそれぞれ考慮をめぐらしておるようです。併し私のほうの立場から言えば、そのほうはそのほうでお願いするが、交渉は早く成立させたい。こう思つていろいろ話を続けております。アメリカ国会も今月は恐らく閉会になるのではないかと思います。そこで話をつけ得るものはつけたいと思つてつておりますが、まだそういう間接被害等の問題についての意見が一致しておりません。従つてまだ暫らく時間を要するように思つております。  危険区域設定につきましてはこれはその初めからの歴史を言いますと、もう御承知の通り初め小さいところを設定しまして、その後これを拡張したわけでありますが、初めのときに数回やりましたのは通知のあつたのもあり、それから先方で告示をして、これを日本側で承知して、それぞれ手続をとつたのもあると思つております。まあ最後の扇形に大きくなつたのはこれはもう問題の発生してからでありますが、これは成規手続によりまして、米国政府から日本政府に通報されております。これは三月中旬でしたか、下でしたかちよつと私は覚えておりませんが、三月の半ば過ぎに通知を受けおります。それを国内でもそれぞれの手続で通報して、外務省から通報しております。今後の水爆実験の問題でありますが、これはいろいろの点を考慮しなければならんと思います。仮にあの地方で再び実験をやるという場合を仮定しまして、その場合には海の水なり、空気なり、或いは灰なり、或いは海にいる魚なりがどの程度放射能影響を受けるかということは、これは科学的な調査を速かに進めたいという希望を持つております。要するに科学的にはつきりした根拠が、これはなかなか口では言いましてもすぐに出るものと出ないものとありましようけれども、できるだけ科学的の根拠に基きましてこれに必要な予防措置を講じなければなりません。又これに必要な補償措置等も、あらかじめアメリカ側実験すると言うならば、これこれの程度被害が予想されるということを、あらかじめ科学的に立証しまして、これについて初めからアメリカ側と十分なる交渉をして、今後の、つまり仮に実験はこちらも反対しないとしましても、水産業その他、日本側一般人心影響を与えないような程度の何らかの措置を講じなければならん、こう思つておりまして、俊鶻丸等を出しましたのもその目的のためでありますが、あの調査も非常に有効ではありましたが、何分広い海域であり、新らしいことでありますから、あれだけで完全というわけにも参らん場合がありましようから、今後とも科学的調査を進めて行きたい。これによつてはつきりしたところを出したい、こう思つております。只今のところまだ少くとも本年中は実験はやらないようでありますから、その間にできるだけの根拠のある資料に基きまして、あらかじめアメリカ側とも十分打合せをし、水産業その他一般国民被害の波及を避けるような措置を講ずべきであろう、こう思つております。大体以上であります。
  4. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 経過等について承わりましたのですが、アメリカとの補償に関する交渉は、今以て話合いがつくところに行つてないということでありますが、ところでこの間接損害とか、直接損害とか言つておりますが、結局私の考えるところでは、あの実験をやつたために生じたもろもろの損害はこれはまあ天然、自然に起つたものではなく、人為的にこういう損害が起つたと思う。まあくだいて言えば加害者があるといつた恰好になつている。あの実験さえなければかような問題は起らなかつたのであつて、それによつて生じた損害、まあいろいろありましようが、業者から要求している数項目の補償問題、政府要求しているところの補償種別というものが、我々にはまだ明示されておりませんので、間接とか、或いは直接とか、俗に言われておりますけれども、それがどういう損害であるかということがはつきりいたしませんが、只今行き悩んでいるという点はどういう点で行き悩みがあるのか、金額の多寡によつての点であるか、或いはその種別の点であるのか、その種別の点であるとすればどの点がむずかしくなつているかという点をお尋ねしたいのであります。  それから昨日安藤国務大臣お話の中に、アメリカも早くこれをまとめて払いたいという考えのようだ、日本意思決定すれば早くやりたいという気持だというようなことをちよつとお話がありましたが、昨日それに対しては私お尋ねする時間がございませんでしたけれども、若しそういうことがあるとすれば、日本決定が遅れているというのは、恐らく私の考え方では、双方の話合いがまとまらないという意味じやないかと思うのですが、お話の中にそういう言葉がありましたが、何かそういうことがありますか。あるとすればまだ日本の中で何がまとまつていないかということをお尋ねいたしたいのです。  それから今後更にあの実験をやる、やらんということは、まあはつきりしておりませんが、新聞紙上ではまあやらないとは言つておらない。やはりやるのだというようなことが伝えられておりますが、恐らくそうじやないかと思います。そういう場合に、日本政府としては、只今大臣からお話のように、自由国家の一員としてこれを妨げる意思はない、言い換えれば協力をするということでありますが、妨げる意思はないけれども、あの辺でこれをやられますというと、又同じような損害が生じて来る。昨日も安藤国務大臣が、そういう際には厳重に一つ区域設定でもしてもらつて被害の成るべく少いようにというお話でありましたが、この区域設定するにつきまして、ビキニ環礁を中心とした範囲でやるとするならば、その区域を拡げれば拡げるほど、漁業には支障があるわけであります。勿論第五福龍丸のような被害はないかも知れませんが、拡げれば拡げるだけ漁場の区域にぶつかる、或いは又非常に迂回しなければならんということで、その損害は増大するのであつて、私どもとしては成るべくもうあの区域ではやつてもらわんで、やつてもらうことには反対しないが、もう少しどこか人類に被害の極めて少いような地点を選んでやつてもらうようにならんものかと、こう考えるのでありますが、外務大臣としては、さようなこの実験の位置を変えてやつてくれんかというような交渉をなされる御意思がないかどうか、又曾つてそういうことを講じたことがありますかどうか、この三点についてお伺いしたい。
  5. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) この話合いで困難ということは、先ほど申しましたその間接被害と直接の被害とが、観念的には分けられるわけであつて、例えば福龍丸の船体だとか、或いはまぐろを棄てたその値段であるとか、乗組員の病院における費用或いは家族の手当というような種類の、まあいろいろなものがありますが、直接被害というのはそういうものであります。間接被害として、いろいろまあこれもありますが、一番大きな問題は、魚の値段が下つた、その魚の値段の下つた部分をどうするか、そういうことに早く言えばなろうかと思います。で、日本決定が遅れているということは、おつしやるように決定が遅れているのじやなくして、アメリカ側も直接の被害については、大体国際慣例もあるし、何ら異存はない、又これについては一々細かく中を詮索しなくても、大体政治的な解決で行きましよう。まあこれもアメリカとしても、アメリカ国会に対する説明もつく、こういうことであります。問題はその間接被害日本側は入れるべきだと主張しておりますが、先方はこれはそうかも知れんが、とてもアメリカ国会を通すことは困難であるというようなことで、話がまとまつておりません。で、間接被害、これは全く性質が違うので、例に挙げては却つて言葉が穏当じやないかも知れませんが、いろいろ昔から議論がありまして、例えば或る二国間で戦争が始まつた、そのために第三国が商売ができなくなつた、その国に対する商売もできなければ、そこの戦争している場所通り抜けてほかへ行く船が行かれないというような場合も、やはりそれはその国にとつて損害があるわけであります。併しこれに対して損害補償要求するということも、今までの慣例にはなつておりませんが、まだそういう補償をした例は聞いておりませんが、その間接被害というのは、これは著しい極端な例ですから、今度の場合には当てはまりませんけれども、まあそういう間接被害というのは、従来からもいろいろその事件事件について出て来るものでありまして、ただ今までのところ、そういう問題は補償の対象としては取上げられたことはない問題でありますから、非常に困難であるという点であります。  それから実験場所についてでありますが、これは我々も今までの話におきましても、とにかく日本自由諸国全般の利害から言えば、或る国が、どの国かが多少の困難に遭遇するとすれば、自分のところだけは困る、よそでやつてくれということも、必ずしも当を得たことかどうかは問題でありましようけれども、我々のほうから言えば、漁業というものが国民一つ生命線でありますから、当然ほかの場所を探してくれということは言つておりますが、事実上例えばソ連のように自分の領土の北が北極にずつと連なつておりまして、人の住んでいない所が非常にたくさんあるというようなところと、アメリカのような場合とはどうも地理的に見るとほかへ持つて行つてくれ、どこへ持つて行けばいいのだということになると、なかなかそれじやここがいいという場所が我々のほうから言つても指定できないというような事情もあるのであります。今度の問題はどうなりますか、おつしやるように危険区域をただ拡大すればそれじや安全だということにもなりませんし、漁業における被害も拡大すれば拡大するほど漁獲が減るということは事実でありますから、この点は例の俊鶻丸等科学的調査によりまして、あれによつても或る海流の或る方向については放射能が多いが、逆の方向には放射能が少いのだという一応の報告もあるようであります。こういう点も十分考え危険区域等につきましても考慮の余地があろうかと思つておるのでありますが、それにしましてもそういうものができますれば、漁業補償ということはいずれにしても当然行われる。これはあらかじめ資料を整えて十分アメリカ側とも話合いをして、これだけの措置をとつてもらわなければ我々としてはにわかに賛成はできないという立場で臨みたいと、こう思つております。
  6. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 只今お話間接補償でありますが、間接補償にもいろいろありましよう。区域設定したことによつて迂回しなければならんところの操業上の経費の増大ということもありましようが、今一番日本漁業者痛手を受けておりますのはあの第五福龍丸事件以後、頻々として廃棄処分をされているような放射能を持つた魚が揚がつて来るために日本の、大臣もそうじやないかと思うが、まぐろその他かつおというものが南方で取れたのは非常に恐ろしいものであるという印象を与えたがために魚価が暴落したのです。殆んど平時の三分の一程度にまで暴落したこともあるわけであります。そのために生じた業者損害が最も大きいわけであります。この直接損害というものよりも遥かに大きい。これが一番現在業者に対して痛手を与えているものでありますが、理窟の上でなしに、実際問題の上で業者がこうむつている損害に対しては、何らかの処置を当然講ずべきではないか。私は法律のことはわかりませんが、かようなものについても国際法上、学者は恐らく補償すべきものなりという解釈をしているということも聞いております。ただ日米間の問題でありますから角突合いをしての交渉ということは困難かも知れませんが、現在日本の置かれております経済状態、その他食糧等事情から考えましても、かような大きな厖大な損害を与えたことに対してはアメリカはもう少し従来の慣例とか何とかいうことにこだわらずに考えてもらわなければならん。かような点に外務当局も御尽力がなければならんと思うのでありますが、この値下りという問題に対しては全然考慮を与えないようなアメリカ意思でありましようか。非常にこの問題が余りこじれますと反米思想がだんだん拡まる傾向にある。現在は西のほうにおいては中共、或いは韓国との問題も非常に人心を刺激して悪化する傾向にあることを私どもは非常に恐れるのであります。かような点について最も損害の大きいものに対して考慮を払つてもらわなければならん。勿論直接損害は当然でありますけれども業者が戦後船を失つたものがいろいろ融資を受けて、南方或いは西方に漸く活路を見出して動き出した途端にかような問題が起るというと、これは西も南も殆んど八方塞りという形になりまして、日本の食糧問題についても、漁業が外貨を獲得している面においても大きな貢献をしているのでありますが、これらの面が、これを二回、三回とやられますと壊滅状態になるのではないか。初めに何かこれを救済する方法を講じなければならないが、飽くまでも加害者とみなされるところのアメリカ補償しなければならん、こういうふうに考えておりますが、その値下りによる、即ち業者が揚げた漁獲物が半値、或いは三分の一までも下つたということに対してアメリカとしては、これは慣例によつて見られないというような解釈をしているのでありましようか、その点について……。
  7. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 普通申しますと、先ほど述べましたように、間接被害ということは法律的に考慮するのはなかなかむずかしいだろう思いますが、アメリカ側も先ほど言いましたように、一々細かい数字は詮索する気はないのだし、又その総括した金に対しての中の配分は、計算基礎としては日本側でいろいろ出しますが、配分については日本政府に一任するというようなゆとりのある考え方で来ております。  ただ間接被害という種類のものをはつきり出しますと、なかなか私はむずかしいと思う。向う側もその事情はわかつてはいると思います。  又おつしやるような迂回に関する費用でありますが、これなどもかなり遺漏のないような計算方法で出しております。これはやはり先方としても当然のものであろうというので、直接被害のほうに入れているわけであります。これなどは、本当を言えば何という船が、いつどこへ行つて、どういうふうに迂回して来たという実情から一つ一つの船を調べなければならんわけでありましようけれども、そうでなく、大体この程度の船がこのくらいの日数を使つているだろうという計算で出しておりまして、これなども船を持つている人のほうにいずれ廻るわけであります。直接被害のほうに計算して加えております。
  8. 小林孝平

    委員長小林孝平君) 本日は時間の 関係もありますから成るべく多くの委員のかたから御発言願うように議事を進めたいと思います。
  9. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 もう一つだけ……。そうしますと結局細かい点でなしに、金額の点で行詰つている。金額日本要求と、アメリカの出そうという意思とが、そこに大きな開きがあるということに承知してよろしうございましようか。
  10. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) つまり個々の内容は、一応計算基礎は出しておりますけれども、これは余り触れずに認めてもらう、ただ大づかみに言いますと、直接被害にはどうしても入れられない種類のものが出て来るわけです。従つてこの配分日本側で勝手にやつていいということになりますから、結論から言えばやはり総額の点になろうかと思いますが、筋道から言いますと、直接被害のほうは、どれが直接被害ということは問題でありましようけれども、とにかく多少疑問があつても直接被害のほうは払う、間接被害のほうは困難だろう、こういうような建前になつております。
  11. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 いろいろありますけれども……。
  12. 千田正

    千田正君 今、岡崎外務大臣の御説明、大体政府の意向はわかりますが、ただ特に根本的に伺いたいのは、昨日も中川局長から今大臣の御説明と同じようなお答えを頂いたのですが、このアメリカ側原子爆弾に対しての協力という点は、いわゆる自由国家群一つとして協力するのだ、これは消極的ないわゆる外交辞令的な協力の仕方であるという意味に私どもはとつております。  先ほど第二段階における損害補償という面に入りますというと、只今秋山委員の質問に対してのお答えにあるように、アメリカ側としては、主として直接、いわゆる観念的にいいますと、直接損害に対して重点を置いて十分考慮するというふうに今の大臣お答えによるというと、そういうふうにとられるのでありますが、そうしますというと、仮に間接的に損害を受けたものであつても、或いは直接のうちでも重点的に該当して賠償を受ける、それ以外のものは結局アメリカから何らの将来補償もなければ、賠償もない。こういう問題に対しては結局のところ日本側が国内的にそうした損害に対して何らかの処置をとらなくてはならない。この国内的に処置をとつた分は取りも直さず協力したという現実の問題に結論はなつて来ると思いますが、この観点は大臣としてどうお考えになりますか。
  13. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) それは仮に国内的に今措置をとつておるのは融資をやつておる程度のようでありますが、今後三更に何らかの措置をとるとすれば、それはやはりその意味では協力する意味にもなるかも知れません。まあとりようにもよりますが、併しこういう問題につきましては私はアメリカ協力するとかしないとかという問題よりも、現に業者が困つておるという事態を見れば、政府としてはとにかくこれは何とか立ち行くようにしなければならない。こう思いますのは、朝鮮の問題にしましてもそうでありましようが、これはもう政府としてはアメリカ協力したくないと言つたところで日本の漁民が実際に仕込みのできないような状況であれば、これは面倒を見ざるを得ない。又こういう問題についてこれだけを一つ取除いていろいろ考慮します。それはいろいろの不合理も出て参るかも知れませんが、アメリカとの関係につきましても全般的にいろいろの問題がまだあるのであつて、それとこれとを取引するという意思はありませんけれども、併し全般関係を円満に持つて行くという考慮は我々としても当然しなければならない。こう思つておるのでありまして、若しそれに政府の何らかのとつた措置が消極的以上の協力である、こう御判断なさつても、これは私は止むを得んと思います。
  14. 千田正

    千田正君 私から考えればむしろアメリカ側に対して消極的以上の協力するという結論になると考える。そこで問題は今一番外務大臣からこの際はつきりして頂きたいのは、昨日の局長のお話でも一体いつこれがまとまるのか、見当がつかない。つかないのですが、それに対して安藤国務大臣からは、外交交渉で一応のメドがつかないというと、国内の対策ができないのだ、一応多少の対策はできるとしても、はつきりした対策が持てない、こういうようなお答えのようでありましたが、この際漁民にしろ、業者にしろ、今のこのまま荏苒として待つということは到底堪えられない。高利貸から金を借りてそうしてやつてつても、取つて来た魚が何万カウントというようなことで、生産のコストどころじやない、債鬼に責め上げられておるというような状況においては我々はこれを坐視することはできないのでありまして、この際大臣から長くかかるのだから、それならばとにかく一応大体のところはつきり国内の措置をすべきである、或いは大体ニカ月か三カ月の間に、ニカ月くらいの間にこれは決定するような様子であるから、その問待つて見たらどうかとか、そういうような目安はつくだろうと思うのでありまして、この点ははつきりせいということは我々がこの委員会で幾ら討論していましても私ども外交折衝のほうが十分でなければ国内の対策が十分できないとか、そういう言い逃れを聞いているような感じがするのでありまして、もうすでに被害をこうむつてから三カ月以上になつておる今日、何かそこにはつきりした目安を立てて頂きたい。長くなれば長くなる。だから国内対策の立つものは農林省なり、厚生省なりにおいてやるべきであるという点の線を打出す方向に向つて大臣のお考えをこの際一つ我々委員に聞かして頂きたい、こう思います。
  15. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これはつまりこういうことになります。アメリカ側補償をするのだという態度を示しており、又直接被害と称せられるものにつきましてはそうそう一々中味まで詮索せずとも、これは補償すべきものだということになつておりますから、その程度で折れるならば明日にもできる。併しこちらで以てこれは私だけの判断じやできないのであつて安藤国務大臣もおられるし、農林大臣もおられる。それじや満足できんからここまでということになるならばそれをがんばればいつまでにということはちよつと今までやつて見たところではなかなかむずかしい。従つて話は先に延びやせんか、こう思います。
  16. 千田正

    千田正君 現段階においては只今のところビキニ被害に対する対策というものを閣内において安藤国務大臣委員長格になつてつておられる、そこでの要求というものとなかなかマツチした結論が出そうもない。だからそれを結果的に十分に現わすためには相当の期間を要する。それを直ちにはここで発表もできないし、又いつということも言えない、こういうわけであります。
  17. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 言い方が多少違うかも知れませんが、内容はそういうことになります。
  18. 楠見義男

    ○楠見義男君 時間がありませんから、簡単に三点だけお伺いしておきます。  一つはいわゆる危険区域設定の何と申しますか、国際法上の性格といいますか……の問題でありますが危険区域それ自体の内容がどうこうということも実はよく承知しないのですが、例えばその区域には入つちやいかんという禁止を含めての危険区域か、或いはこの区域に入つて損害を受けてもこれは知らんぞという、こういう意味なのか、或いは単なる注意をする程度で爾余の問題は又別な当局との交渉の対象になるという意味危険区域か、内容はよく存じないのですが、いわゆる公海において危険区域を一方的に設定をしてそうして今申上げたいろいろの内容の中で例えばこの区域には入つてはいけないというような意味、或いはこの区域外における損害には如何なる損害といえども補償の責めに任じないというような意味危険区域設定であるとして、この危険区域設定が公海において一方的に行われるということが洞際法上正当なものとされるのか、不当なものとされるのか、この点についての政府の御見解がどういうふうになつておるか、この点が先ず第一点に伺いたい点であります。  それから第二点は、いわゆる対米損害賠償要求の問題で直接被害間接被害の問題については今御説明かありましたが、観念上直接被害言つても実は今お述べになつた中に具体的に危険区域を避けて迂回をして行つた場合も含まれるようなふうになつて参りましたから、そういうふうにもとれましたが、そうすると直接被害というものの観念が極めてはつきりしておるようではつきりしていないのですが、それはそれとして、いわゆる我々が言つておる間接損害というものに対しても政府のほうは対米賠償要求をしておられるのかどうか、その点伺つておきたいと思います。  それから第三点は、今千田さんから御質問になつた問題に関連した面ですが、先般来この委員会でいろいろ安藤国務大臣を中心にしそうして又いらつしやらないときは事務当局を中心としていろいろ質疑をしておりまして、ほかの委員のかたはどういう感じを受けられたかわかりませんが、私の受けた感じでは、対内的のいろいろの諸施策を講ずること、このことが対米折衝の上においてマイナスになるのだというような印象を受けたのです。例えば政府としてもこれは当然賠償要求すべきものだとして要求をしております。それをいわば代位弁済のようなふうに政府側が賠償を代つてやる、対内的の施策としてやるということが、却つて対米交渉の現に進行中の交渉に必ずしもいい影響を持たないということ、従つて対内施策というものがそれだけで遅れておるような印象を実は受けたんです。先ほど岡崎さんのお話で承わりましても、対内的施策は並行して、例えば農林省あたりにも大いにやつてもらうように話をしておるというお話つた。私はまあそれが本筋じやないかと思つたのですが、受けた印象は今申しましたように私はそういうふうな印象を受けたのです。一体そういうふうに対内施案をどんどん平行して進めることが当面の外交折衝の責任者としてり岡崎さんがお考えになつて、対外折衝の上においてマイナスになるのかどうか、その点を第三点として伺つておきたいと思います。
  19. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) この原爆事件のような例は国際法上は今度が初めてですからして、全く新らしい例であります。従つてこれについての国際法上の見解というのはまだ確定しておりませんが、従来の考え方によりますと、公海という所は世界中の国が自由に使える所である。併しながら自由に使えると言つても、或る国がそれを使つているときによその国が同じ所を通れば邪魔になるからして、お互いに協力して、成るべくいずれの国も迷惑をこうむらないように使い合おうじやないかというような考え方で来ております。ですから従来の例だと、例えば大艦隊が公海におつて実弾演習をやる、これはかなりの速力で、例えば十五ノツト、十八ノツトとかいう速力で公海をずつて一日中走りまして、その間に実弾演習をやる、それが何日間続くという例はあつたわけです。そうするとその弾の落ちる区域危険区域になる。そういう場合には普通そのやつておる国が通告をするわけです。そこに入らないようにというと、ほかの国も特に支障がなければできるだけそこに入らないで、勿論危険もありますから入りませんが……、それに対して抗議をするというようなことは従来はなかつた。それでできるだけ国内にも告示して、そこのところは避けるようにするということで来ておるのが従来の例であります。それをおれのほうも公海の自由だから勝手に通るぞと言つてがんばつて通るということは、これは喧嘩になればどうかわかりませんが、今までは協力してやつてつたというような立場関係で来ておりまして、ただ今度の場合にはそれが長い期間であり、又艦隊がずつと行くのもかなり大きな区域通りますが、それ以上に大きな区域であるということになつて、新例になるわけでありまして、これも今までの原則から言えば、お互いに差支えない範囲で協力すべきであるということは言えましようが、それに対する長い期間であるというところから又補償というような問題も出て来るのは当然だろうと思います。補償で済むか済まないか、こういう点はつまり国民の非常な心理的な影響も実弾演習なんかと違つてありますからして、これは一つの研究課題であり、又これは実際国際法学者の研究しておるところであります。恐らく国連等の国際法規の委員会等でも取上げておると思いますが、まだこの点は確立はしておりません。  それから第二の点でありますが、間接補償という問題の中にはいろいろのものがあります。それで例えば福龍丸が帰つて来てからは一般に国内にこういう事件が拡がつて、魚の値段が下つておる。その魚の値段が下つておるのを承知しながら取りに行つてつて来たというものについては、これはやはり魚価の下りによる損害はあります。併しそれに比べると、何も知らないで行つてつて見たところが福龍丸事件が起つて魚の値段が下つたというのとは大分性質が違う。間接ではあろうが大分違う。そういう区別をしておるわけであります。我々も当然これは考えなければならんじやないかと思われるふしのあるものについては、これは賠償要求額に入れておるわけであります。間接のものを全部入れているとは申しませんが、一部は入れておるわけです。併し現実においては向う側の考え方は今申した通り、一々中味を余り詮索せんで、日本側が直接被害だと言うならばできるだけそれは見ようということになりますから、配分日本側に任せようということになりますから、計算基礎配分とは違う場合があり得るわけです。そこで結論から言うと額のことになる場合がある。額がどうなるかということがあり得るわけです。  第三点は、私の考えはむしろ、事務当局がどういうことを言いましたか知りませんが、楠見君の受けておる印象とはむしろ逆でありまして、国内でいろいろな措置をとつたということになれば口で言つたのじやなくて実際にこれだけ被害があつたからこれだけの措置をとるということになればむしろ被害の額が具体的にわかるのであつて、対米交渉の役に立とうとも邪魔になることはない、こう思つております。
  20. 楠見義男

    ○楠見義男君 わかりました。
  21. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 今のことについてこの点は安藤国務大臣のお考えは如何ですか。昨日のいろいろお話を聞いておりますと、やはり国内で早く政府補償するというような形をとると外交交渉にも差支えがあるというような御意向のようにも承わつたのですけれども只今外務大臣お話では、国内で補償してもそれは実際日本政府としてそれだけの被害を認めた。外交交渉に一向差支えない。こういうお話なんです。若し外務大臣のおつしやるようなれば、早速に差迫つておるまぐろ、かつお業界に対する補償はやつても外交交渉にはそれが少しもマイナスにならないということであれば、これは早急に農林省なり、或いは通産省なりを中心として国内の業者に対する補償ということはできることになるし、それが外交交渉上少しもマイナスにならないということであれば早速その方策を立て実施できるということになるわけです。これは両大臣の口をここで一つ合せて頂きたい。それならそうとして外交交渉は外交交渉、国内の補償は国内の補償という段取りに進めるわけなんですが、この点如何でありますか。
  22. 安藤正純

    国務大臣安藤正純君) 私が今まで申上げでおることは、殊に昨日申上げたのは、まだ国内措置をする段階に至つておらない。今アメリカとの折衝中でありまして、外務大臣がそれに当つておるのですが、その過程中にあるのであります。それで先ほどから外務大臣からもいろいろお話があつたでしようが、アメリカの見解と日本の見解と少しも違わず一致しておればそれが解決するわけでありますが、こちらの見解或いは希望と、向うの見解等と多少でも違うところがありますればそれをよく突きとめて押して交渉をして結末をつけなければならんと思うのであります。それで今過程中でありますからそれがきまらないと国内措置をするという段階には至つておらない、こういうことを申上げたわけなんであります。
  23. 小林孝平

    委員長小林孝平君) ちよつと申上げますが、外務大臣は十一時にここをお出になるという約束になつておりますから簡単にお願いいたします。
  24. 森崎隆

    ○森崎隆君 外務大臣にちよつと。じや私お聞きいたしたいのですが、賠償交渉の方式の問題でございますね。昨日局長さんにも随分この問題申上げたのでございますが、現在はとにかく秘密方式を使つておるわけであります。私たちはオ―プンの方式でやつてもらいたい。私はまあこういう意見なんです。この方式のどちらがいいか悪いかということは、昨日中川局長は、両国の政府がいろいろ交渉の結果迷惑を受けちやいけないから、まあ政治折衝をやつておるという話でございますが、この交渉はこういうように政府の便宜上の問題の理由で秘密方式をとるということは私はおかしいと思う。こういう交渉は、どういう方式をとれば賠償交渉日本被害を受けた漁民その他に対して有利に展開するかという観点に立つて、この方式が有利だとなればこの方式を採用しなければならんと思う。特にやつぱり外交というものはオ―プンでやるのが私たちは民主的であり基本的な建前だと思う。勿論政府にはMSAその他のような問題もありまして、そういう方式とは別に又援助とか或いは借款とかいろいろなまあアメリカにお願いしたい問題もありまするから、それと噛み合せてやわらかに、もらうものはもらいたいという意図かも知れませんけれども国民被害を受けた問題につきましてはもつとはつきりした方式で国民の前にガラス張りで、こういうこれだけのものを計算して要求しておる、現在の折衝はこういう段階にある、アメリカのほうでは二〇%の天引を要望して来ている、我々はそれは受けられないのだといつたような、はつきりしたやつぱり方式でやつてもらうことが、その結果が多少まずく行きましても、日本のやつぱり外務省のやり方につきまして国民は納得すると思う。そうしないと秘密方式でやりました結果、両国の政府の完全に意見が一致したということで賠償の額がきまりましても、私たちはやはり疑心暗鬼を持ちます。どうもこれは値切られて結局そこへ落ちついてお互いに日本はこう請求したのだ、向うは全面的に受入れたのだというような一つの芝居になりはしないかという疑いを持つわけであります。そこで簡単に質問申上げたいのは、昨日も局長さん、又安藤大臣のほうから話がありましたが、現在のような話合いで進んで、これでどうしても行かなければ又数字の更改をして正式な交渉をすることも考えられるが、今の段階ではこのまま進みたいというわけであります。そこで私は専門家である外務大臣にお聞きしたいのですが、それではこの秘密方式を捨ててオ―プンな方式を採用するための条件は、どういう条件が生れた場合にこれを切替えるのか。その条件を一つはつきりとお教え願いたい。  もう一つは、これまですでに半歳に亘りまして交渉しておる関係上、大体アメリカの意向もわかつているだろうし、又外相を中心にしまして交渉しておるところの皆さん方の意向もよくわかつておると思いまするから、大体時期の見込というようなものはついている。今のような秘密方式でずつと進んで行つてこのまま先に見込があるかないか。ないとすれば方式を変えるか何かの形をしなければならない。変えなければこのままで泣寝入りをするか何かの問題になると思う。ですからこの秘密方式をオ―プンな方式に変えるためにはどういう条件が必要であるか、その条件があればお教え頂きたい。  第二にはそういう限度ですね、今の外交方式の限度はどの程度までか、ここまで来ればもうどうしてもこの際折衝の方式を変えて、もつと大きく国民の世論の上に立つた外交で推し進めて行かなければならないということについては、やはり真の予想、予測というものは、私はやはり専門家である外務大臣は持たれておると思う。この二点について特に一つお話お答えを頂きたいと思う。
  25. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 国民の非常に影響のある問題は、公式でやるべきだというお話でありますが、例えばジユネ―ヴでインドシナ三国の運命を決するような交渉は全部秘密会議でやつております。私はこれは特に秘密というわけじやなくて、ここでもいろいろお話しておるのでありますが、両国間の話合いで進むべきものだと最後まで考えております。この限度ということは両国間で十分に話合いをいたすべきだと思う。併しながら御質問がありますから今まででもお答えしておるので、別に隠すことはないが、双方の国民考え方もありましようからして、余り四角張つた議論でいわゆる板門店の会議のようなやり方は私は余り得策ではないと考えております。従つて限度とかいうことは、別に今考えておりません。この方法で行きたい。こう考えております。
  26. 森崎隆

    ○森崎隆君 今の問題について一言、私も別に……。
  27. 小林孝平

    委員長小林孝平君) 森崎さんちよつと簡単にお願いいたします。又この次出て頂きますから。
  28. 森崎隆

    ○森崎隆君 私も方式を否定するんじやないんです。ですから今日まで信頼してその結果を待望しているわけです。併しこれにはやはり限度がある。これは私たちの感情的な解釈とかそういう意味でなくて、実際被害を受けた者は弱つておるわけですね。ですから或る程度の目途をつけて、それまでに解決して頂けばこれは結構なんです。例えば今のような折衝方式で七月中にでもきれいに解決してしまつておればこれで結構だと思うわけです。ですから決して否定しておるわけじやない。それで推し進めてもいいけれども、すでに半歳に亘りましても今なお解決しない。そうするとどこかにまずい点があるわけです。そのまずい点は私たちは第一にこういうような折衝方式そのものに疑問があるんじやないかということで、折衝の方式に再検討を加えて頂けないかと、再検討を加えるとすればどういう条件が必要であるか、その目途はどうであるかということをお聞きしておるわけで、外務大臣が現在折衝しておる方式を否定しておるわけじやないのですけれども、もうこの段階ではこの方式では効果が挙らないということで今質問しておるわけです。
  29. 小林孝平

    委員長小林孝平君) 簡単にお願いいたします。
  30. 森崎隆

    ○森崎隆君 それで済みます。御答弁も簡単に、明確にして頂きたい。
  31. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私はやはり今のところは、今お答えしましたような考え方で進んでおりますが、そういう御意見もありますれば更に考慮はいたします。    〔千田正君、楠見義男君発言の許可を求む〕
  32. 小林孝平

    委員長小林孝平君) それなら初めからお約束して、外務大臣も御都合があると思いますから、両氏から簡単に一言ずつお願いいたします。
  33. 千田正

    千田正君 安藤国務大臣外務大臣と揃つておるところではつきりして頂きたいのは、岡崎外務大臣お話によつては、アメリカ側考えている程度のことであればすぐでも話がまとまるけれども日本側の、やはり安藤国務大臣が一生懸命になつて日本の水産その他のために考えているような要求の問題を外交上に推し進めて、結果を十分に効果あらしむるためには相当の期間が要る、だから今すぐにはお答えができないと、いつの時期であるかわからないと、こういうようなお答えのふうに聞いておりましたが、その点は間違いないだろうと思いますけれども、時期が明確でないと、こういうことだけは確かに言われるわけでありますが、その点は安藤国務大臣と我々今後に又話合わなければなりませんので、その点を一言だけ聞かして頂きたい。
  34. 小林孝平

    委員長小林孝平君) 関連して楠見さん御質問願います。
  35. 楠見義男

    ○楠見義男君 私さつき御質問申上げた第三点の対内施策なり、対米折衝、日本との関係においてむしろ私の抱いておつた感じとは逆に御答弁を頂いて実は両足したのです。むしろ対米折衝とは別個の対内施策をやるべきだと、こういうふうに私は了解いたしたのです。安藤さんの今の松澤さんに対する御答弁ではやはり対米折衝はもやもやしておるのだから、従つて対内施策はこの成行きを見て今後やるのだと、こういうふうに御答弁になつて岡崎さんもこういうふうにお聞きになつたと思うのです。併し安藤さんもすべて対米折衝というものは、当該主管大臣岡崎さんにお任せしておるのだからということをかねがね言つておられる。その外務大臣がそういうふうなことであるならば、我々は対米折衝は長引こうと、これはどんどんやつて頂いて、それと並行的に対内施策をやつてもらいたいということを、これから安藤さんにもお願いしなければならんと思いますが、その点はどうもお二人の今のなにを聞いておりましても、私は岡崎さんの説を非常に喜んで伺つたんですが、安藤さんの御答弁伺つてちよつと又変になつて来たんです。その点だけ明らかにして頂きたい。
  36. 安藤正純

    国務大臣安藤正純君) ちよつと私からお答えしますが、岡崎さんと私と別に方針が違つておるわけではないと思います。今外務大臣責任を持つて対米交渉をしておる過程であり、而もそれが大分解決にだんだん近付きつつある際なんだから、今暫らく、国内措置は待つほうがよかろうというのであります。国内措置と申しましても、そう簡単には実は行かないので、そう簡単に行かないことは皆さんよく日本の財政事情を御承知だからおわかりであろうが、極めて簡単には行きません。そこで今の段階においては、近付きつつあるところの対米折衝の目途をつけまして、そして対内措置をとるべきであれば、とる段階に進めたいと思うのであります。そしてこの問題は関係閣僚の間におきましても十分話もし合つて、相談をしておるのですが、更に続けまして、関係閣僚の間において、よく話合いを進めて、検討をして、成るべく早く結論に導きたいと思いますから、さよう御承知願いたい。
  37. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 今の御質問でありますが、一つは、双方主張が一致しない場合にはどうもいつまでという目途がつかないのは止むを得ない、それは向うのほうの言う通りに下げれば行きつきますけれども従つてまだ残念ながらいつということは申上げられないのです。そこで楠見君の御質問でありますが、私の申したのは多少誤解があるかもわかりませんが、私の趣旨は、御質問が御質問であつたので申上げたのですが、対内措置をやつたほうがいいとか、悪いとかということでなくて、対内措置をやられても外交の面から言つても別に支障はない、併しすぐやるかどうかということは私からむしろ言うべきことではないので、ただ外交の面のほうから言えば別に支障がない。むしろこういう具体的な問題があるのだから、日本としてこれだけ金を出した、それは見るべきものであるという話がむしろやりいいのではないかと思います。
  38. 小林孝平

    委員長小林孝平君) 速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  39. 小林孝平

    委員長小林孝平君) 速記を始めて下さい。
  40. 千田正

    千田正君 安藤国務大臣にお伺いしますが、今あなたがお答えになつた言葉と、外務大臣が最後に言うた言葉と多少食い違いがある。あなたのおつしやつたのは外交折衝は今やつておる、その経過中であつて、而もその経過は大体良好なほうに向いつつあるのだから、その間国内対策は待とうというお考えのようでありますが、外務大臣の今のお言葉で聞くとなかなかそう順調に進んでおらない、いつになるか目途がつかない、こういうお答えであると、あなたの考えとは大変話が違うのでありまして、一方外交問題としては外務大臣として従来の通り進めてもらうし、又安藤国務大臣要求通り進めて頂くことにしましても、国内対策はこれは外交の目途がつかないというわけで荏苒待つわけに行かないので、その点はやはり国内対策は国内対策としてこの段階においては進めなければならない。少くとも安藤国務大臣はこれは責任を以てやらなければならないと思いますが、その点はどういうふうにお考えになつておりますか。今のお話だとあなたのお考え外務大臣のいわゆる外交折衝の結果に対する目途とは大分違うように我々は考える。
  41. 安藤正純

    国務大臣安藤正純君) それは違つていないのですよ。ただ私が外交折衝的でなく、少し言わなくてもいいことを少し進んで言つているかも知れないが、別に外務大臣と私と実際は違つておらないのですよ。そこで国内措置云云の問題も先ほど言いました通り関係閣僚の間でよく相談をしまして方針をきめて行きたいと思います。ですが、先ほど言いました通り、国内措置と言いましても、要するに金の問題なんですから、日本の今の財政の立場上なかなかそれは簡単でないということは御承知であろうと思うのです。殊にその中からすでに多少、最小限度ではあるかも知らんが、国内措置も講じておるのであります。それでありますから、ここで又やろうとすれば、第二の国内措置をとるということになるでしよう。そのことがつまりあなた方、今外務大臣日本の国内でもそれだけのことをやつているのだということが裏付になつて、外交談判の上にはむしろいいほうになるかも知れないと、必ずしも悪いということにはなるまいと言われたのだが、それはそうかも知れません。ですが、その第一の国内措置はとつてある。ここで国内措置が、それのやり方如何によつて日本でこれだけのことをしているのだから、アメリカのほうでも大いに考えなければならんということまでに行けるか行けないか、若しそこまで行かなければそれがこれはプラスになるか、マイナスになるかは私は外交当局じやないから知らんが、そう言い切れないのです。それを心配するのです。こちらはただね。それなら思い切つた国内措置をやつたらよかろう、それは事実できないのですよ。日本の財政の立場において、そうなるとそれは非常に兼ね合いの問題になりますから、そういうような点を非常に心配しておるのです。併しながらだんだん切迫しますから、外交のほうの方面もどういうふうにきまりをつけるか、それによつて国内措置段階に入つて来ると思いまして、近く関係閣僚でそれを検討しようと思つておりますから、御承知を願いたい。
  42. 千田正

    千田正君 安藤国務大臣、今の理窟はよくわかるのですが、第二の段階というのは、今の岡崎さんのおつしやるようになかなかいつになるかめどがつかないとするならば、荏苒と延ばすわけにも行かないから、これも国内問題として今すぐという手は打てない、財政上の問題がいろいろあるから、というても、やはり今年の暮までと言われても、水産に携わつている人たちはそう待てない。そこで若し外交問題は荏苒と延びるとするならば、いつ頃になればそれは仕方がないから国内措置をとるという目安だけは大臣としては考えておられるでしよう。
  43. 安藤正純

    国務大臣安藤正純君) 私としては今外務大臣によつてつている対米交渉を、日本希望に近いところに持つて行つて解決したいと考えている。併しそういうことになると大いに長引くかも知れないということになる。だからその辺が金額等とも見合う必要もありましようが、細かい検討を重ねてきめて行かなければならんと思つているのです。非常にその方針がきまつたことが、更にもつと対米交渉が長くなるとすれば、それは大いに国内措置考えて行かなきやならんと思つております。
  44. 森崎隆

    ○森崎隆君 関連して……。安藤さんね、今の千田さんの質問は一番要点で大事だと思う。私昨日申したでしよう。外交折衝相手のあることだから、そういつまでにすぐとはこれはわからない。だから腰を据えて二年でも三年でもやつてもらつてかまわない。併し現実国のほうでは漁民に対しての補償だけしておけば、あとは日本政府アメリカ政府の問題だから多少長引いてもいいと言つた。そうすると、あなたのほうでは若し数字を発表してこれを漁民のほうに支払つて補償すると、日本政府でやつたのだから、いいだろうというようなことで、外交折衝に非常にマイナスになるというようなことを昨日申した。今日外務大臣から聞くとそうじやない。そういうことは全然関係ございませんというのですよ。私はむしろプラスになると思う。そしてまあ理窟は抜きにして、安藤大臣といたしましては、外交折衝のめどはつかないでしよう。いつ頃つく見込ですということは今言えないでしよう。あなたも岡崎さんも言わない。これはいつまで続くかわからない。それはあなたとして国内的な措置をもうやらなければならない段階になつている。ですから早急に閣議でも開きまして、まあ例えば八月の十五日まで待つてきまらなければ、そのときには思い切つて国内措置をする。アメリカ要求しているのは二十億か十八億かわかりませんけれども、その金額全体は今できないとすれば、それの八〇%なり七〇%だけ取りあえず融資か何かの形で現実に支払つてやる。そうして交渉交渉で強硬に進めて行くという基本的な態度をもうきめなければならん段階だ。これ以上もうあなたがたが鰻のような答弁をなさつておられましては、もう下のほうでは弱り切つておる。私はその点をはつきり約束して頂きたい。早急にあなたの要望で閣議を開いて頂きまして、外交折衝の段階経過をよく聞いて、それの見通しを考えて、見通しがどうもつかないという場合には、それでは思い切つて国内措置を強く要求して頂きたい。そうして国内措置をするとすればいつ頃やるか、そうしてそれは何%程度やるかということをもうきめて行かなければならん。それだけの腹を大臣は持つておられると私は思うのであります。私の尊敬する大臣でございますから、是非とも一つそれはやつて頂きたい。はつきりここで確言を頂きたい。如何ですか。それで結論はつくと思う。
  45. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 今千田委員、森崎委員の御質問の趣旨と私ども全く同感でありますが、冷害とか、或いは風水害とかいう天然自然の損害は年々出ているわけでまあ今年も出ている。それらに対してはいち早く政府補償している、或いは救済措置を講じているが、ひとり漁業に対する問題のみが誠に手ぬるいのです。恐らく今度の場合は相手があつて、或る程度のものは少くとも出て来ることに間違いはない。而もそれを日本政府としては飽くまでも希望通り交渉しようとして今やつておられるのであつて、恐らくこれは当らずとも遠からずのところで解決はつくものと政府考えておられるし、我々もそれを期待しておるのでありますが、そこで国内措置の方針がどうしても今日必要になつて来ている。天然の損害に対してすらもやつているのに、人為的にこういうことになつているのに対して一向政府が手を打たんということは、これは水産業者としては堪えられない問題である。すでに国内措置を幾らかやつた言つておられますけれども、これは本当に雀の涙のようなものであつて、これは何ともしようがない。殊に融資の問題、一億二千万円融資をされたというのが、神奈川県と静岡県両県だけだ。而も害を受けたというのは東京にもあるし、千葉県その他にもある。それらに対して一億二千万円ではどうにもならない。この一億二千万円を県当局が貸付けるについて条件が非常にむずかしくて、到底これはさつさと借りるわけには行かない状態になつているということであります。これでは措置をしたという手前は気が済むかも知れませんけれども、受ける面はちつとも有難くとも何ともないような恰好になつている。それらの条件ももう少し緩和して、早急に役立つようにいま少しく重味をつけて国内措置を講ずるべきである。そうして外交折衝は外交折衝でどんどんやつて頂いて、若し長くなるならば長くなるだけやはり国内措置を強力にやつて頂く。これは昨日からのお話によつて大体日本政府要求している額もほぼ我我も見当がついているが、大した金額じやないはずです。二十億になるか、十五億になるかも知れませんけれども、全体から言うと大した金額ではない。農村の被害になりますと大きなものが出て来る。そこで安藤国務大臣とされてもいま少しく水産の問題を真剣にお考え下すつて、早急に国内措置ということに向つて進んで頂きたい。我我もかねがね国内措置を先にやるということは外交に支障を来たしはせんかということを心配しておりましたけれども外務大臣に伺いますとその点はないようでありますが、国の財政の問題もありましようけれども、許す範囲においてできるだけ国内措置を早急にやつて頂きたい。若しこれがこのままであると水産委員会として何とか手を打たなければならんようになりはせんかと思うので、私はそういうことなしに政府のほうで先にやつて頂きたい、かように考えてお願いするわけであります。
  46. 小林孝平

    委員長小林孝平君) ちよつと申上げます。関連質問が長くて質問の要点がぼけるとわからなくなりますから国務大臣が御答弁になつてから楠見さん、青山さんの順序に御発言を願います。
  47. 安藤正純

    国務大臣安藤正純君) 重ね重ねの御質問やら御要望やらでよくわかつております。幾度お話になつても同じ答えしか出ないので不満足であろうと思いますが、止むを得ない。それで期限といつても期限を切るわけには行きません。関係閣僚と今連続相談中なんです。それでありますから速かに解決をして、対米交渉をまとめるか、或いは延ばすか、延ばせば国内措置をどうするか、そういうようなことを成るべく速かにきめたいと思います。
  48. 森崎隆

    ○森崎隆君 今の大体のめどを言つて頂きたいのです。速かにというのは、どの程度に速かになのか。速かという言葉はよくわかりました。それで結構でございますが、速かとはどの程度の期間を指すのか。或る程度のめどをつけて頂きたい。
  49. 安藤正純

    国務大臣安藤正純君) 速かというのは何月何日までとここでお約束するわけには行きませんが、成るべく早くきめたいと思います。
  50. 楠見義男

    ○楠見義男君 私はくどいようですが、安藤さんは外務大臣との意向において食い違いがないというふうにおつしやるのですが、私の聞いた感じではどうしても食い違つておるように思うのです。ただ併し私は食い違いの点をどうこうというのじやないのです。今もお話がありましたように、何も無理して早く不利な条件で外交折衝をまとめる必要もなければ、又殊更に延ばすということもないと思うのです。普通の状態において、而もできるだけ外交折衝というものが進められることが一番望ましいと思います。ただ私は甚だ失礼な言い分ですが、今まで外交折衝について安藤さんは、或いはこういうことで不利益になりやせんか、或いは有利になりやせんかというようなことであなた自身もお考えになつておられたんじやないのですか。それは当面の専門家の外務大臣に餅屋は餅屋でお任せになつたらいいと思います。外務大臣はああいうふうに言つておられるのですから……。それと並行して、今もお述べになりましたように、できるだけ速かに一つ並行して対内施策というものをお考えになつて頂きたい。その対内施策というものは、外交折衝にはちつともマイナスにならないで、場合によつてはプラスになるかもわからんということを専門家が言つておられるのですから、それはそれに任せておいて然るべきである、その先まで大臣としては御心配になる必要は私はないと思います。
  51. 安藤正純

    国務大臣安藤正純君) 皆さんの御要望、御希望よくわかりました。ただ外務大臣の話と私の話とは私はそう食い違つておらないと思いますが、そういう印象を与えたのならば、更に外務大臣と個人会見しましてよく了解を、違つておるところがあれば相互了解に早速努めたいと思います。それから外務大臣は、外務大臣だけの立場としてはそう考えるでしよう。それが又当然であろうと思います。併しながら国内措置をするとか、外交折衝をするとかということの日本という国の全局から考えて行かなければなりませんから、外務大臣が外交折衝をするだけの段階ではああいう考えは当然であろうと思います。併しながらそれだけじや済まないのです。国内措置ということの全体、国内と対外折衝と皆ここで大局的に判断して見なくちやなりませんから、そういうような場合に、国内の方面の事情、実情も考えて行かなければならない。その実情が、どこまでのことができるかということになると、それが又対米折衝のほうにどう影響するかという点があろうと思います。これは岡崎外務大臣と私と話をすればよくわかろうと思いますから、そう御承知を願いたい。  それからもう一つ申上げておきますが、一体この所管は農林大臣なんです。それから又外交折衝は外務大臣なんです。私は所管大臣ではありません。若しここにビキニ省というものでもあつて、(笑声)私がビキニ大臣なら全部の責任を負うわけなんだが、そうではなくて、いろいろな事務を私が議長として取りまとめをやつている。併しながら私も閣僚でありますから、全部を考え自分責任を以てやつているわけなんです。そこでこの関係閣僚がずつと連続検討をしておるのですか、更にそれを続けて解決に早く導きたいと思うのであります。
  52. 楠見義男

    ○楠見義男君 その点は私どもは閣僚の中における安藤さんは幹事役だと考えているのです、今おつしやるように。そこで本日も、主管大臣外務大臣、それから農林大臣、両大臣出席要求しているのです。農林大臣はどういう理由がまだお見えにならないので誠に遺憾に考えておるのです。併し幹事役である安藤さんにいろいろお伺いすると同時に要望申上げておるのは、先ほど来申上げ、又お答えになつたように、できるだけ早く一つこの問題は対外的にまとめて頂く。重ねて農林大臣出席せられないのを誠に私は遺憾に考えておる。この問題については農林大臣か誠意がないと私は実は考える。  そこで水産庁長官にお伺いしたいのですが、昨日の国内対策について、せいぜい一億二千万円しか出していないりで、この点については水産庁長官も極めて遺憾であるということをお述べになると同時に、いろいろの事情があつてこの程度にしか現在の段階においては至つておらないということをお述べになつたのですが、一体対内施策としてこの段階にしか至つておらない、そのいろいろの事情というのは一体どういう事情なのか。今外務大臣、或いは安藤大臣に御質問して、その質疑の経過水産庁長官もお聞きとりのようである。外交折衝の上において国内施策を講ずることは決してマイナスにならない、場合によつてはプラスになるかもわからんということを外交折衝の当局者は言つておられる。それから安藤さんのほうは、財政の事情によつてなかなかそう簡単ではないということを言つておられる。これは余談ですけれども日本政府としてはこれだけの損害賠償すべきであるということを対外に要求をして、若しそれが容れられなかつた場合には、これはもうアメリカが金を払つてくれないのだから被害者は泣寝入りせい、こういうようなつもりで折衝しておられるのじやないと思う。政府としても当然業者にはこれこれの損害があつてこれを補償しなければならん。それは先ず当面の第一責任者としてはアメリカ補償すべきだ。併しそれができなかつた日本政府としてはやらなければならない。そういう覚悟で以て対米折衝しておられると思う。従つてここに金があるなしということでそう簡単に片付けられては、これはもう業界としては非常に困つたことであると同時に、秋山さんからもお話があつたように、他の産業との今までのいきさつから見て、そこに非常に不公平なものがあると思うのです。  それはそれとしても、いろいろな事情があつてここはこうなつておるという事情の中で、一つは対米折衝に支障がないということがはつきりした。あとの事情というのは大臣が来れば一番責任者としてわかるのですが、事務当局としてどういう点をお考えになつておるのか、その点が明らかになれば我我はその点をほごすことについてこれから努力しなければならん、その点をちよつとお伺いしたい。
  53. 清井正

    説明員清井正君) 只今御質問のありました点でありますが、先ほど来のお話私も十分承わつております。昨日も実はその点について話があつたのでありますが、私どもといたしましては外交折衝のこれを早くきめてもらえば結構でありますけれども、相当の時日を要するといたしますれば、一日も放つて置けない関係のものでありますから、取りあえず融資のことによつて事務を進めたいということで、私どもといたしましてもこの事件の起つて間もなく、相当事務的には折衝を実は続けて参つたのであります。その問いろいろ折衝いたして参つたのでありますが、結局私ども事務的にやつて参ります上に一番問題となりましたものは、只今申上げたような外交上の折衝の問題についての観点は無論あると思いますけれども、私どもの折衝の段階において一番問題となつておりますのは、一般の国内の金融の情勢からするところの制約であつたのであります。無論これは大蔵省当局との事務的折衝等を主といたすのでありますが、業者のこういう窮状を訴えまして、相当期限もかかると思われるから、その間の措置として政府の低利による融資措置考えてもらいたいということで、しばしば実は折衝をいたしたのであります。初めは、ざつくばらんに申しますというと、できればこれは一般金融機関に、政府の何らかの措置によつて金融枠を与えて、その金融枠を与えることによつて市中銀行等の融資をいたす、かねて業者が取引をしておられるところの銀行等もあるわけでありますから、そこの銀行の資金繰りを先ず考えてもらいたいということも実は考えたのであります。ところが実際問題といたしまして、或る特定の市中銀行、或いはその他に何らかの資金枠を与えてやるということは、全体の金融の立場から見て非常に困難だということになりまして、それで一つ次の施策として考えられたのが、只今僅かではございまするが、実施をいたしておりまするところの、政府の預金部資金を県に委託をいたして、県が関係業者に一定の金融をして貸付けるという施策を、極く僅かではございまするが、実現をいたしたのであります。無論金額等も、私ども初め相当そのことを要望いたしたのでありますけれども、なかなかそういうわけに行きませんし、取りあえずいつまで議論をしておつてきまらないよりは、少しでも早く手を着けたほうがよかろうということで、とにかく手を着けよう、手を着けて、その実績によつてこういうふうな状況でこういうふうになつているのだからうまくやろうじやないかということで、先ず困難なる金融上の突破口を作つて、実績を作ることによつて金融枠を拡大することのほうが、むしろ高い余計な金額を棄していつまでもきまらないよりはいいというようなことで、一億五千万円の限度の枠で生産地の生産業者に貸付をするということの措置を実はとつたのであります。只今は神奈川と静岡に、初めは一億二千万円でございましたけれども、少し殖えまして一億三千三百万円になつておるわけであります。端的に申しまして、私ども事務的には随分努力をして参りましたが、誠に申訳ない、力の足らんわけでありますけれども一般の金融実情による事務的な制約ということでこういうふうになつてつたわけであります。ただ取りあえず不満足ながら突破口を開いて、逐次その実績によつて資金枠を拡大して行きたい、こういうことであります。
  54. 青山正一

    ○青山正一君 先ほどから安藤国務大臣から、まあ非常に財政状態のことをいろいろ気にしてお話なすつておりますのですが、秋山さんの例に、他の産業には非常に重点的に考えておられる、そういうふうなことを挙げられておられましたのですが、これは同じ産業でありましても、例えば内灘の問題にいたしましても、年間あの砂地で一億五千万円の漁があるというような建前で、その三割二分の補償で、大体今年度は四千九百万円、この盆前に皆支払つたというような、これもほんの二つの組合に、漁業権の補償金なんですが四千九百万円の補償金を出した。一方ではそういうふうな扱いを受けておる、そして又他方においてはこういつた問題はなかなからちがあかない。只今水産庁長官からのお話では、ただ融資の途を講じたというふうなお話でありましたのですが、これは融資だけでは困る。実際上先ほど外務大臣にしましても、或いは安藤さんにいたしましても、間接損害とか、或いは直接損害とかというふうにおつしやつておりますが、少くとも水産に関係しておる私らの目から見ますると、アメリカ側から見まするとそれは間接損害かも知れませんが、日本の国の立場から言えば、間接損害も、実際はこれは直接損害でありますから、その直接損害としてみなされるものは、これは国内的に措置するのは当然の途だろうと思います。だからまあ水産庁長官の意向も、内心的にはできるだけこれは早く国内的に措置したほうがいいんじやないかというよう参な意向もあり、或いは外務大臣も、別にそれに対して否やというような気持もないわけなんですし、ましてここにおる各委員は、すべての党派を離れてそういうような気持で統一されておるわけですからして、できるだけ早く、その途を講じて頂くように、特にお願いするわけです。
  55. 楠見義男

    ○楠見義男君 水産庁長官にお伺いしたいんですが、さつき資金の問題について一応御説明がありましたが、その資金の問題に関連して一、二お伺いしたいんですが、一億二千万円を静岡、神奈川に出したという御説明を伺つてから二週間以上になるんですが、この資金がうまく動いておりましようかどうか、その点が一つと、それから全体から見れば、これは極く一部、而も一地方に限られておるんですが、その次の第二、第三段階の、勿論静岡、神奈川に足りない分は出すという問題のほかに、他の地方に対する資金も当然考えられるべきだと思いますが、突破口のことについての御努力があつて、よく了承いたしましたが、その第二、第三段階をどういうふうに考えられておるのか、資金の問題についてこの二点をお伺いいたしたい。それから、それのほかにいろいろの対策があろうかと思います。例えば納税期に際して納税の困難な実情にあることは、これは御承知の通りだろうと思いますが、そういう業者の納税の際の猶予とか減免とかいうような、一般の災害であれば、例えばこれは立法措置でなければならない場合、或いは或る程度現行の範囲内で行ける場合等もあろうと思います。普通の場合であれば、昨年の九州災害その他の災害等で、即時に立法措置が講ぜられておつた。あのようなことに近い考え方で以て、行政措置として、例えば税法上の問題についでどういうことが今考えられておるか、或いはそういう措置をとられようとしておるのか、そのほかいろいろと対策というものがあろうと思います。今の各省の事務的連絡打合会等においても問題になつておろうと思います。そういう問題等も、若しあとでできればいいと思いますけれども
  56. 小林孝平

    委員長小林孝平君) お話が済みましたら、一応ちよつとお待ち願つて……。
  57. 千田正

    千田正君 安藤国務大臣に、私は先般から不思議だと思つているんですが、あなたか現在やつておられるいわゆるビキニ環礁における被害に対する対策委員会ですか、委員会の幹事役だか委員だか知りませんが、あなたが持たれておる。一体内閣の閣僚としての立場は、どういう立場でこの問題を処理しようとされているのかという点であります。その点は我々は少くとも世界の問題として、各国が、被害を受けた日本以外の国々が、この原子爆弾の禁止の決議にさえ、イギリスにしてもインドにしても、世界がこの日本被害というものに対して非常に同情的であり、而も第三次世界大戦という危険を未然に防ごうという意味から、哀れな日本の国というものに対して同情的な立場をとつている。その被害を受けたところの、而もその政府を担当している自由党の内閣において、あなたは一体どういう立場でこの問題を処理しようとしているのか。自由党の外務大臣がどうだとか、農林大臣がどうだとか、そういう人たちを集めて総合的な政策を遂行して、国民の期待応えるというのがあなたの職務じやないかと私は思うのですが、あなたの立場は一体どういうふうな立場でこの問題を処理しようとしておるのですか。その責任だけを……。
  58. 安藤正純

    国務大臣安藤正純君) それは先ほどから申している通り、さつきから言つたことは所管の問題なんです。ですから外交は外務大臣がやるし、大体これは水産関係だから農林大臣の所管だと、こういうのですね。私はその所管ではない。併しながらこれに関係をし担当しておりますから無論閣僚としてその所管の農林大臣外務大臣としばしば相談をしてこれを取りまとめて日本としての対策を講じようとして努力をしておるのであります。
  59. 千田正

    千田正君 わかりました。それでわれわれの要求しておる、個々の生産の部門の人たちが要求しておる問題は一日も早くこれを解決して欲しい。いろいろな問題は、あなたがたは言つておるけれども、今の吉田内閣は何をやつておるのか。造船疑獄のリベートに一億数千円という金を出すならば、こういう問題の解決に副う。国民の期待に副うような政策をやつてこそ初めて吉田内閣の権威というものは保たれるのであつて、一日も早くこの期待に対してあなたがたはやつて下さい。この次の委員会は今月の末か来月の初めにやるはずでありますからそれまでに腹をきめて下さい。荏苒としてこういうことで国民の期待を裏切るようなことをやつて何が吉田内閣だ。はつきりしてもらいたい。この次まで、いつ頃まで一体そういう会合を開いて取りまとめるか、そういう腹だけはあなたは取りまとめ役としても立場をここで表明してもらいたい。この次の委員会まで待つています。
  60. 安藤正純

    国務大臣安藤正純君) あなたのそういう御質問であり要望であるならば……、私は腹では考えているが、委員会でそういうことを表明するわけに行きません。ですからいつまでにという約束をすることはできない。併しながら一日も早く解決をしなければならん。これは漁業者に非常な打撃であるということもよくわかつております。のみならずこれは今までにない国家及び国民としての重大な問題なんですから、それを頭に入れて処置したいと思つております。
  61. 千田正

    千田正君 そこでもう一点だけ……。我々といたしましてはあなたがたに協力するつもりでいる。僕は自由党だから、社会党であるから、或いは無所属であるから、緑風会だからと言つて反対論をするところではないのでありまして、我々はむしろあなたがたの立場に、少くとも今の政府国民の期待に副うような仕事をやるようにというので我々は協力しようと思つている。併し荏苒として今のような延び延びであつた国民の期待に副うことはできない。我々は臨時国会でなければこの問題は解決できないとするならば、我々同僚議員の力を借りまして我々議員としては議員立法としてでも、こういう問題に対する補償ができないとするならば何らかの方策を法律を以てでも決定をしなければならない。その前に政府は誠意を披瀝すべきであります。ですから今度の委員会を開会するまでにあなたがたはとにかく閣僚懇談会でもよろしいし、ビキニ環礁に対する被害に対する一つの目安をつけようじやないかという会合を持つというのなら持つように一応の目安をつける段階でもいいから我々委員会に来て、あなたが臨んで発言するだけの腹をきめて今度は来て頂きたい。これだけ注文しておきます。
  62. 安藤正純

    国務大臣安藤正純君) よくわかりました。
  63. 楠見義男

    ○楠見義男君 ちよつと速記をとめて下さい。
  64. 小林孝平

    委員長小林孝平君) 速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  65. 小林孝平

    委員長小林孝平君) 速記を始めて下さい。
  66. 清井正

    説明員清井正君) 只今の御質問でございますが、先ほども申上げました神奈川、静岡両地域に対する金融の措置は残念ながらまだ末端業者まで行つていないようであります。    〔委員長退席、理事秋山俊一郎君着席〕 それは聞くところによりますと、金額は非常に少いわけで生産業者並びに流通業者との間の配分の問題が非常に問題になり、まだ最終的にはきまつていないということであります。但しこれ又荏苒あれしてもいけませんので、県としては取りあえず一部分のものを貸付をする。最終決定をしてから残りのものを出すという措置をとりたい、こういうことを言つておりました。只今私がここへ参ります前に聞いた話はそういうことであります。これは成るべく県を通じて督促をいたして参りたいと思つております。なおその他の問題でありますが、大分御要望があるのであります。無論これは一番大きいのは神奈川、静岡でありますけれども、その他の生産県にも相当影響のあることでありますので何とか貸付をしてもらいたいという御要望があるのであります。ただ今申しました通り一億三千七百万程度でありますから、こういう金額では到底賄えない。そこで何とか第二回の要求をしなければならんのであります。実は事務的に申しますと第一回分が現在まだやつておらないわけでありまして、その実績を以てこういうふうにやつているから是非貸付けてくれということで実はもつてつたほうかいい、何とかして両県の腹をきめて、そうして然る後に他県にもこういう要望があるからこういうふうにしてもらいたいという話をしようと思いまして、実は両県の話がまとまることを持つてつたのであります。ところが今のような状況からきまらないのでありますが、もう二、三日中にきまるということでありますからその状況に応じて又各県の希望を聞いて私としてはできるだけやつて参りたい、こう考えております。その他の措置でありますが、これは税法の問題について御発言でありますが、その問題は非常に御要望がありますので、いろいろ検討しおりまして、極くまだ係官程度の意向は大蔵省方面と当つているのでありますけれども、まだ正確に私のほうとしてはこういう点を出すという段階まで遺憾ながら参つておりません。この点なお業界の意向を聞き、事務的な段階を重ねましてやつて参りたいと思いますが、まだ具体的に大きな措置としては打出すまでに参つていないのであります。そのほかにつきましては別段いろいろ考えてはおりますが、はつきりした点は出ておりませんので、ただ御承知のように第五福龍丸の買上げであるとか、内払いであるとかいうことを予備金でやつております。そういう措置を臨機にやつているという程度であります。
  67. 楠見義男

    ○楠見義男君 今の資金の問題ですね、これはこの前もその点を大分心配はしておつたのですが、県に一切任しているからということで、その県に任した結果が今日こういうふうな状態で更に第二回、第三回にも影響を及ぼしている。これは督促の方法はどういう方法でやつているのですか。こちらが出かけて行つてやるというのでなしに、県に任している以上は県がやはり一切やつてくれなければ困るというわけですね。これは是非一つ促進して頂きたいのですが、そのほかに実際に金を借りる場合に担保を提供しなければならんとか、条件が苛酷であるとか、県は県なりに又附加えてやるというようなことはないですか。
  68. 清井正

    説明員清井正君) それはお話通り私のほうとしては実は遅れているのは非常に困りますので何とか早くするようにということはたびたびやつているのであります。今日も係官を呼んでやつているのでありますが、もう二、三日でめどがつくという話でありまして、県内の事情もありますので私どもは余り指図がましいことをするのはむずかしいのでありまして、殊に県内の事情に基く流通業者と生産業者との関係がありますので、非常にむずかしい点がございますので、早く手を打ちたいという県の要望でやつて行きたいということでやつております。それからその担保その他の条件につきましては、いろいろお話があるようでありますが、できれば非常に金融しやすい条件でやつて参りたいと思いますけれども、併しこれは事務的に申上げるわけでございますけれども、預金部資金を県に委託して県がやる、県が責任を持つて融資するという立場をとつております。県が融資をするために必要な条件ということでありますれば、こちらで又余り強く言えないように思います。業者としてはやはり担保をやられては困るということを聞いておるのであります。そういう事情があるからということを県に言つておりますけれども、こうせい、ああせいという差出がましいことは私ども言いかねる条件がありますので、その点御了承願いたいと思います。
  69. 楠見義男

    ○楠見義男君 今月の三十日、三十一日にこの委員会を開いて、その際までに政府としてもいろいろ案を、国内的施策についての立案をせられて、或いは一部のものについてか、或いは全体か御報告になる機会があろうと思うのです。その際までに、勿論原案は今度中心は水産庁になると思うのです。今までの禍いを転じて福となすように、今までの資金融通の途がこうで、それがこういう点でうまく行かなかつたという点は、そういう総合的な対策をお立てになる際には、転じて福となすような条件のものについても、一つ十分にお考えになつて案を作つて頂きたいと思いますが、同時に今の税の問題その他の問題もできるだけ事務当局としては洗いざらい出してやつて頂くように、我々もできるだけこれについては御協力し、又推進申上げたいと思いますから、是非そういうふうにお願いしたいと思います。
  70. 森崎隆

    ○森崎隆君 厚生省が参つておるようでございますが、おりましたら……。
  71. 秋山俊一郎

    ○理事(秋山俊一郎君) 速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  72. 秋山俊一郎

    ○理事(秋山俊一郎君) 速記を始めて下さい。
  73. 森崎隆

    ○森崎隆君 厚生省が参つておりますので、極く簡単に現在水揚げしておる漁獲物に対する検査状況を、簡単にちよつと御報告頂きたい。  それから先だつて新聞にABCCのお医者さんかなんか、厚生省その他の検査に対して、非常に、何か大きく言つているというようなお話があつたようですが、あれに対してはあれを無視されるのでしようか、無視されるとなりますと、これはやはりABCCの意見というものが或る意味で肯定されるということになりますので、それならそれで我々も又改めて現在の厚生省のやり方について考え直さなければならんと思うし、若しあればとんでもないことだということになりますれば、政府としましてもはつきりした資料を、又理由を附してそれに対するやつぱり反撥の声明書を出すべきだと思うのです。全然出ていないんですね、それに対する態度はどんなおつもりでございましようか。この二点をちよつと……。
  74. 楠本正康

    説明員楠本正康君) お答えを申上げます。検査の最近の状況でございますが、最近は指定五港のほか、大阪、和歌山その他まぐろ漁船の多く入ります府県において自主的に検査を実施いたしております。これらの結果を総合いたしますと、最近は以前よりも大分廃棄処分に該当いたします魚類が減つて参りまして、大体最近では〇・二%程度でございます。一時は〇・五%程度でございましたが、最近は〇・二%程度に下つてつております。なおこれらの個々の検査の結果につきましては、最近は汚染魚が極めて散発いたしております。第二に汚染魚がかなり高度の汚染度を現わしまして、而もこれらの汚染が内臓、えら等の臓器に強く現われておるのでございます。かような点から考えまして、又一方俊鶻丸の調査の結果等から考えまして、これらの汚染は海流或いは爆発物の灰によるものではなく、むしろ餌によるものであろうという結論に達しつつあるようであります。  次にこの第二点のABCCのお話がございましたが、私実はまだはつきり存じておりませんで、或いはかねてアメリカ側日本の検査様式が少し厳格に失しやしないかという批判をいたしておりますが、さような点でございますか。
  75. 森崎隆

    ○森崎隆君 新聞に出ておりましたのはそういう生ぬるいことじやないんです。日本は余りに誇大して、事実でない虚構な宣伝をしておるというようなことが一つ。第二には検査に使つておるガイガ―・ミユ―ラ―を見てみるとみんなろくなものがない。この二点なんですね。これを厚生省で知らないというのは私は非常にこれはあなたのほうの不明の至すところだと思います。こういうことは是非新聞で知つて頂いて、早急に国民の誤解を解いて頂きたい。又それが正しければ率先して一つ罪を謝して国民に安心をさしてもらいたい。これは魚価に関係する問題ですからはつきりその点は責任のある処置をして頂きたい。
  76. 楠本正康

    説明員楠本正康君) かような点に関しましては、かねてアメリカ只今申上げましたように、検査がでたらめと申しますよりもその基準について批判をいたしておつたのでございます。これらの点につきましては日本の学者或いは実際家等とも相談をいたしまして、又かねていろいろ研究を進めて参つておりまして、これらの結果を総合いたしまして逐次より合理的なものに変えつつある次第でありまして、かような点はアメリカ側も正式にはよく理解をいたしておるのでございます。なお検査器具の点につきましては、極めて厳格な意味から申しますと、現在港で使つております機械というものは、極めて厳格な意味から申しますと、若干グロ―スなものであると存じますが、併しながら私ども行政手段として実施して行きます限りにおきましては、あの程度のもので支障なし、又その結果は正しいものと考えておる次第であります。
  77. 千田正

    千田正君 最近大分実験をしてから数カ月経てなお何万カウントというような放射能が摘出されている状況は、これは今後もこういう問題が続くとすれば、これ又我々としては賠償問題にしろ、或いは国内対策にしろ、十分慎重に考えなければならん。二、三日前の新聞でしたか、相当高度の放射能の反応があつたようでありますが、今後も引続きそういう問題が起るものと我我は予想されますが、厚生省としてはその点はどういうふうに考えておられますか。
  78. 楠本正康

    説明員楠本正康君) 現在の魚類の汚染は、先ほども申上げましたように、主としてプランクトン或いはいかその他の小さな魚の汚染がまぐろ等を汚染させる原因になつております。なお俊鶻丸の調査の結果等によりますと、特に北赤道海流等の一帯におきましてはかなり汚染度の高いプランクトン等が棲息を現在いたしておるそうでございます。従いましてかような点から考えまして、今後なお日本漁獲されますまぐろにつきましてはかなり強い放射能を持つたものが出て参る見込でございます。併しながら、これらのものは南方で汚れて逐次回游をして参ります関係で、その量は次第に減少をして行くものと考えております。又事実先ほど申上げましたように、汚染の結果廃棄される量は逐次減つておるのも事実でございます。
  79. 千田正

    千田正君 まあ楠本さんのほうの立場から臨時に或る程度十分に調査をされなければならないし、又国民立場から言いますと、一体厚生省で権威ある発表をした場合何カウント以上でないならば食べて差支えないのだ、この程度の汚染であつても人体には障害はないということは新聞には発表しておりますけれども厚生省としてのはつきりした態度をとつてもらわんと、これからも続々出て来る、やはり疑心暗鬼、魚は食いたくない、直ちにこれは水産に響いて来るのですから、厚生省としても公衆衛生の立場からこれははつきり発表して頂きたいと思うのですが、その点はどういうふうにお考えになつておられますか。
  80. 楠本正康

    説明員楠本正康君) これは只今御指摘のように、私どもはかなりの安全率を見まして、而もなお且つ一定の基準を定めまして、それによつて現在実施をいたしております。その限りにおきましては全く心配のないことはかねて強調をいたしておるわけでございまして、従つて厚生省の内部におきまして、或いは政府といたしましてこれに多少でも疑義を挾むというようなものは毛頭ないと考えております。ただまだ今研究段階関係もありまして、極めて稀に学者研究者等で多少の意見も出る場合もありましようが、厚生省の方針といたしましては、只今申上げましたような方針で絶対に保証をいたしておる次第でございます。
  81. 楠見義男

    ○楠見義男君 今の問題に関連しまして公衆衛生の観点から何カウント以上は危険だとか、以下は大丈夫だとかいつたような点は、これはいわば国際的にも権威があるものなんでしようか。という意味は、恐らく一方では対米損害賠償要求もしておるのですから、例えばそういう観点から見ればアメリカ側も或る程度了承したものでなければ損害賠償の対象になりませんわね。それだけでなしに、今の、相当安全度を見ておるという今お話なんだが、甚だ厚生省の権威を疑うという意味ではないのだが、相当国際的にも認められた程度の権威あるものなのか、厚生省の技術者のかたがこうだということでおやりになつておるのか、その点お伺いしたい。
  82. 楠本正康

    説明員楠本正康君) 御指摘の通りでございまして、現在百カウントを基準といたしておりますが、これらの点につきましては今後更に研究を進めまして、場合によつたらこれを逐次改めて行くということになろうと存じます。大体の方向といたしましては、恐らく百カウントを更に緩めて行く方向に向うものと考えております。それならばなぜすぐに今でもやらないのかと、こういう御指摘もあろうかと存じますが、これはなかなか学界には意見が多うございまして、又世界の学者の中にも必ずしもまとまつた意見というものはありません。従つて今ここで余りにも無理押しをいたしましても、又反対の学者が、なに危ないんだというようなことになりますと却つて国民も帰趨に迷うというような心配もありますので、私どもといたしましては、やはり全国の専門学者等の意見を総合いたしまして納得の行くところでこの問題を処置して行かなければならんと考えております。なお、これは甚だ専門的に亘りまして恐縮でありますが、必ずしもカウントだけで問題が考えられないのでありまして、たとえかなり高いカウント数を示しましても、分析の結果、その放射性物質が殆んど毒力のないものであれば、これはカウント数が如何に高くても差支えない。ところがストロンチウムのような際めて猛毒を持つておりますものは、たとえ微量でも、つまりカウント数が低くともこれは際めて危険なものと考えなければなりません。従つてカウント数だけで判断することも際めて困難でありますが、併しながらこれらの点につきましては目下大いに努力をいたしまして研究を進めております。恐らく近いうちにも又新らしいとるべき結論が得られますれば、これはどんどん改めて参りたいと、かように考えておる次第であります。
  83. 楠見義男

    ○楠見義男君 私の聞いておるのは、それが国際性を持つておるかという点を伺いたい。というのは、私は専門家ではありませんからそう詳しいことは存じませんが、つい最近の新聞でも、えらの部分が相当高カウントのものであつても、それは除いた肉のところで百カウント以下ならばいいように今度改めたという、そういうような記事を見ますと、そういうふうに変えて行くことは、できるだけだんだんと研究をして人体に及ぼす影響等についての調査がより正確になり、合理的になることは結構なんですが、一方でさつき申上げたように対米折衝をやつておるわけですね。だから向う側は日本の技術に対する不信ということのほかにそんな程度のものは何も廃棄をしなくてもいい、それを勝手に日本側が廃棄したんだからそんなものまで対象にする必要はないということも起り得るわけです。だから国際情勢の問題、特に対米損害賠償の観点から言えば、アメリカにおけるそういう権威あるスタンダ―ド、そういうものと睨み合せをしなければこれは対外折衝の面から言えば意味がなくなつて来る虞れがあるのじやないか、又対内的にも国際的の権威のあるものがあればともかくそれに従つたほうが厚生省のほうの技術の不信というのじやないがより皆納得するのじやないか、こういう意味で伺つているんです。
  84. 楠本正康

    説明員楠本正康君) この点は御指摘のように日本で採用いたしております一般の基準はまあ国際的と申しましようか、アメリカの原子力委員会、或いはアメリカの標準局等が制定いたしております基準よりも確かにこれは厳格な状況でございます。併しながら先ほども申上げましたように、この内容にもよりますので、必ずしもその基準をそのまま当てはめていいかどうか、これは又別な問題であるといたしまして、なお私どもは今後十分調査をいたしまして、成果を得られますれば甚だくどいようでございますけれども逐次変えて参る予定でございます。恐らくだんだん国際、まあアメリカの水準に近い方向に向うだろうと存じております。  なおこの賠償の点でございますが、これらの点に関しましては当初から私どもの検査の実情、或いは内容等をよくアメリカ側の学者、専門家、担当宮等にも見てもらつておりますし、又これを変えまする場合にも私どもは外務省とよく相談いたしましてかようなところに支障のないような処置は十分とつてございます。なお外務省のお話によりますと、これらのものは勿論その結果別に賠償その他に支障のあるものではないということでございまして、かような点は例えば方式を変える、基準を変えるにつきましても十分に外務省と連絡をいたしまして支障のないようにいたしている次第でございます。
  85. 千田正

    千田正君 清井水産庁長官にお伺いしますが、このビキニの問題が起きてから、さけ、ます等の輸出罐詰ですね。こういうものに対して非常に影響がありましたかどうか、而も日本側において検査をして十分に食料に供して差支えないということを勿論厚生省が発表しているし、あなたがたも発表しているが、その後においてアメリカ側が買付け等において渋つているというような実情があるかないか。我々からしますと踏んだり蹴つたりされるということは実に誠に残念至極であつて、外交で賠償が取れないとしてもせめて今度は輸出罐詰かなんかによつてそういう途を開くことも外交の一つの方針でなければならないので、そういう点の一つの参考としてこの水爆被害問題以後におけるところの輸出罐詰の見通しに対する状況はどういうふうになつておりましようか。その点聞かして頂きたいと思います。
  86. 清井正

    説明員清井正君) この事件が起つた当初に一部の業者の間で輸出の罐詰等についてキャンセルの話があつたということが一時ありましたけれども、むしろ私どもより業者のかたの話を聞きますと、これは一時的の一つの商業政策の問題で大して心配するものじやないということを業者言つてつたのであります。その後ずつと注意をいたしておりましたけれども、私ども業界におきましてもこれによつて輸出に影響を及ぼすという程度になつておらないということであります。その後ずつと順調に罐詰、冷凍等も輸出を続けておるようであります。只今のところはこの事件が起きたために減つたという現象は起きていない、こういう状況であります。
  87. 千田正

    千田正君 これは賠償が仮に成功しなくても、それならばその転換の一つとして当然これはそういう面の輸出水産の問題に対して新たな活路を聞く方法の外交の一つの動機であると考えるべきである。そういうような資料につきまして水産庁として一応輸出罐詰、或いは冷凍等の状況を簡単でよろしうございますから聞かして頂きたいと思います。
  88. 清井正

    説明員清井正君) 数字等につきましては只今つておりませんので、いずれ又数字で申上げますが、結論的に申上げますとそういうような状況でございます。
  89. 秋山俊一郎

    ○理事(秋山俊一郎君) ほかに御質問ございませんか。……木下さんから委員外議員発言がございますが、許可してよろしうございますか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  90. 木下源吾

    委員外議員(木下源吾君) 水産庁長官が丁度来ておられるから伺いますが、APの電報によりますと、昨日も北洋漁業問題についてソヴイエトではグロムイコ外務次官が日本の訪ソ議員団の諸君にお会いして、専門家も来てこの問題についてじつくり相談をするということを期待する、こういう電報であります。これは水産庁では或いは調べているかも知れないが、こういう問題はもうこの委員会でもしばしば国会中もやつてつたんです。ソヴイエト側ではそういうような回答をしております。日本の議員の団体が行つてこれについて水産庁はわかつておればわかつてつたとして、わからんならわからないでいいが、どういうような一つ考えであるか、これを一つお聞きしておきたい。御承知の通り先般来三笠丸の坐礁、或いは又衝突した虻田丸、まだいろいろの問題がたくさんある。そうして今四十七度以南の鮭鱒流し網の許可を受けて行つておるが、四十七度以南では商売にならん、それで五十一度まで是非一つ許可してもらいたい、或いは又十五日間ぐらい期間を延ばしてもらいたいという要請で、今全国の鮭鱒流し網の代表者諸君が運動をいたしております。これらとも関連があるので北洋についての漁業ですね、これは日米加の問題も重要であるが、日ソの間におけるこれが調整は非常に焦眉の重要問題である。それ故に本委員会は前回においてこれらの安全操業に関する問題を中心にして、両国の経済交流に対する話合いを進めるために代表を送るべきだという決議が出されているのは水産庁長官御承知の通りであります。然るに水産庁は何らこれに対して熱意を示さない。道行く人のごとき態度をとつている。甚だけしからんと私は思つておるのであるが、それはそれとして、今やソヴイエトにおいては正式に日本の議員団の諸君に対して話合いをする機会を希望しておる、こういう電報が入つておる。これについて一つ所見を承わりたい。
  91. 清井正

    説明員清井正君) 改まつて意見を申上げても私どもとしても甚だ伺でございますが、まあ私ども北辺の漁業につきまして沿岸漁業、海洋漁業共に非常な重要な関心を持つておるわけでありまして、この問題につきましては私どもも、御承知の通り母船式鮭鱒漁業においても相当船団が出ております。或いは一部母船等におきましては、底曳も出ている。或いは四十七度以南には鮭鱒の流し網漁業も出ている。又北海道の沿岸におきましては極く近海の千島列島に対するいろいろな問題があるというようなことで、北洋漁業が我が国の漁業の発展という観点から見まして非常な重要な問題であり、同時にこの問題は国際関係のいろいろ問題がございますけれども、我々水産の立場といたしましては、何とかして同方面において関係漁業者が安全に操業をできるようにというようなことに進まなければならないということはまあ考えておるのであります。その点につきましては私どもいたしましてもできる限度においていろいろ適切な措置はとつて行かなければならない、こういうふうに実は考えておるのであります。
  92. 木下源吾

    委員外議員(木下源吾君) 今のお考えはいつも聞いている元来のお考えなんだが、具体的にですよ、具体的に向うへ行つて向うでは日本漁業の専門家とこの問題について十分に協議をするということの考えを発表しておるわけなんです。であるからして水産庁としてはこの際それが事実であるとするならばこれを推進するというような建前で行かれるのか、従来のように相変らずソヴイエトとは国交がないからというようなことで頬かむりして行かれるのか、この点を一つお伺いしておるわけなんです。それは単なる問題ではないという理由に四十七度線の鮭鱒の問題を私は今引合いに出して言つておるだけに過ぎないのであつて、結局は、水産庁は率先して、外務次官が今声明しておるような、回答しているような趣旨に副うてやるかどうか、これをお尋ねしておるわけなんです。
  93. 清井正

    説明員清井正君) 今具体的な御質問でございますけれども、私どもは水産の立場から北方において安全に操業できるようにという希望を持つていることは御承知の通りであります。それを只今申上げたのであります。ただ具体的に只今のようなことに基いて具体的な話になりますると、私といたしましてもここですぐにはつきりとお答えできないのであります。いろいろ部内等においても十分一つ相談したいと思つております。
  94. 木下源吾

    委員外議員(木下源吾君) 私はこの問題については農林大臣に来てもらいたいと思うのですが、まあ委員会の御都合もあろうかと思いますから、これは大臣としましても四十七度線の以南における鮭、鱒は御承知の通りたくさんの船が行つておるのですね。今そして四十七度以南の漁では御承知の通り商売にならん。今も言う通りそれで皆全国の業者の諸君が五十一度附近までやつてくれと、こういうように今盛んに陳情しておるわけです。これは今に始まつたことではない。この許可したときからそう言つておる。私は前国会においてもそれは強く要請しておるわけなんです。ところがこれらの要請にはちつとも耳を傾けないで、それで現実に行つておる者が商売にならないものをこれを打つちやらかしておくなら水産行政は何のためにやつておるかということになる。この点については今日一つ水産長官に明快にお答え願いたいのです。ただ行つておる者が悪い。範囲外のところに行つておるから取締を厳重にしておる。ソヴイエトの取締より日本の取締のほうが厳重でこれを漁にも何にもならないというのが実態である。これらについては業者諸君もたくさん今日は見えておるだろうと思うのですが、これらの人も陳情もされると思うが、やがてそれに対してはお答えがあろうと思いますが、この委員会において一つ所見を伺いたいと思うのです。
  95. 清井正

    説明員清井正君) お答えいたします。確かに四十七度以南の鮭鱒漁業がまあ非常に無理であるから四十七度より北に延ばしてもらいたい、或いは期限を七月一ぱいで切れるのを延ばしてもらいたいという要望は今回限りではございません。昨年審議いたしましたときにも同じ問題として聞いておるのであります。この問題は併し関係の陳情された業者のかたも十分御承知と思うのでありますが、私どもはこの問題について考えておりますることは、やはりこれは一番の問題は何といつてもやはり対ソ関係の問題だと思います。それから母船式漁業との関連の問題、五十一度ということになりますと、只今の母船式漁業は四十七度で切つておりますので、そことの関係の根本の問題も起ります。なお五十一度ということになりますと、只今許可していないのであります。母船式鮭鱒漁業との関係も併せて考えられます。又同時にそれと関係なくても独航船としての形で五十一度まで上るということが、ソヴイエトの領海侵犯という問題と関連いたしまして、やはり相当心配すべき問題が起つて来るのではないかと考えられるのでありまして、この点は全然考えておりません。それから期日を延ばすという問題でありますが、これも私はたびたび、今回いろいろ問題もございますので、殊に北海道方面で嵐がありまして、関係業界のかたがお困りになつておるという実情もあるようであります。そこで特に今回だけ特例を認めてもらいたいというような御趣旨もあるのであります。私どもこの問題につきましては監督官のほうに電報を打ちまして、こういうような希望を持つておるのであるが、どうだというようなことを端的に聞いたのであります。問題は私どもが机の上で議論するよりも、現地の監督官として行つておる者の感覚を十分尊重しなければなりませんのでありますが、そこで聞いておりますが、現在のところ監督官としては非常な否定的な態度でありますが、と申しますのはこれは私は専門家ではございませんが、やはり期日が過ぎますと魚類というものは千島の沿岸に近寄り、そして島の間を縫つてオホ―ツク海のほうに行きます、それを追いかけて行くということになりますと、当然領海に近付く。ソヴイエトの言う領海に近付く、或いはいろいろな事故も起るというようなことになつて来る虞れがあるから、とにかくこれを延ばすということは困ると、こういうような考え方も持つておるようであります。私ども先般来この問題についてはいろいろ伺つておるのでありますが、まあそういうようなこともあります。ただこれが一時漁が不漁だつたんだが、それを補うためにということも言えるかも知れませんが、これも問題があるのでありまして、私ども母船漁業の漁期というものは悪かつたら延ばすということでいいのか、逆に言えば漁期を縮めるということも起つて来る。この期間における漁、不漁ということは当然漁業としてはあるんでありますから、やはりそれを厳格に考えて行かなければならない。必ずしもそう行かない、そういうことになりますと、漁期ということは無意味になりますから、そういうこともある。御希望としては非常に関係業者のかたが最近非常によくなつて来たんだが、もう少し延ばしてくれというお気持はよくわかるんだが、私は将来の北洋漁業の大きな見地から見ますと、これは慎重な態度を以て臨むべきものであるという結論を持つておるのであります。差当りソヴイエトは別段何もしないじやないか、或いは大したこともないじやないかというような議論も立つのでありますが、私はやはりこれはソヴイエトとの関係でソヴイエト方面との漁業の安全を念願しながらも、やはりこれは或る程度用心して行かなければならないのであります。漸進的に考えて行かなければならない。どうもしないのだから行けという考え方もとるべきものではないのであつて、やはり向うの気持も考えながら、我々としては当然この漁業をやつて行くということは、北洋漁業の将来の安全ということから行きましてもなすべきことであつて、これは少し臆病かも知れませんが、現実に固く固く少しずつやつて行くということが北洋漁業の眼目ではないかというように私は考えておりますので、非常に御陳情は承わつておりますが、私は残念ながら五十一度に延ばすことはもとよりでありますが、期限を延ばすということについては只今否定的に考えておるのであります。
  96. 木下源吾

    委員外議員(木下源吾君) それはあなたのほうの立場もよくわかる。今の御答弁によると一つはソヴイエト側に対する考慮ということがまあ非常に重大性を持つておるので、それで私は先ほど来それについてソヴイエトとの話合いのことをまあ重点的にお尋ねしたわけなんです。このソヴイエトに対する考慮は今すぐの問題ではありますまいけれども、大体はこの問題が今起るだろうことを私どもは仮に予想してそして本年も安全操業のためには是非一つ手を打たなければいかんのだ、そのためにはソヴイエトへ行つて話合いをする必要があるのだということで本委員会では決定しておるのですよ。それで私は実際個人的にもソヴイエトの元の代表部の或る要人が帰るときにこういう問題は是非一つ、あの人は函館にも元おつたことがあるからソヴイエトでも一つ考えてやつてもらいたいということを懇々と頼んでやつた。そういうこともあろうと思うのだ。私は今度昨日のAP電報によつて外務次官がこの北洋漁業の問題については専門家と十分に一つ話合いをする考えだという返答をしておるわけなんですから、これは水産庁としても今のようにソヴイエトの側を考慮せられるならば、今言うように、ソヴイエトに対して自分たちが政治的にやつてはまずいと言えば事務的に又とる何か方法もあろうと思うのです。事務的にですよ。であるからして水産庁が本当に腰を入れて何とか業者のために、漁業者のためにやつてやろうとすれば、私はもつとその方法があろうと思うのです。今十五日延ばしてくれろ、そうすれば向うの領海に入る虞れがある。こういうふうにまであなたのほうではいろいろ心配しておられる。だからしてこれをどうしたならば安全にすることができるかということは当然話合いをしなければならんということに結論はなると思うのです。それからもう一つは、水産庁としても許可している以上は漁業者は一体昨年はどういうふうな漁であつたか、本年は今どういう状態であるのか、毎年々々許可して、されるほうは、水産庁は許可してくれるから何とか漁は商売になるというつもりで仕込みをして、そうして出ておるわけなんです。ところが続いて去年も今年もそして赤字になる。こういうようなことでは全く漁業者を保護するという建前に立つておる水産庁は何をしておるか。私さつき言う通りです。でありますからそういうことについても十分調査があると思うのです。実に行つておる日本人では一億数千万円の負債を背負つておるというように言われておるのですよ、漁業者が。でありますからこれらはあとで政府が皆処置をしてくれるならば、責任を持つてくれればいいけれども、そうでない限りは毎年毎年漁を許可はするけれども漁になるかなるまいかはお前らの何だ。而も片一方は冒険的にまで一生懸命やつてつても、なお商売にならないという点は水産庁は私はもう少し調査をして面倒を見てやる必要があるのじやないかとこう考えるのです。従つて平素流し網の漁師はどういう経済状態であるかという点を御調査になつておるならば、この機会に一つ御発表願いたい。私の聞くところによれば相当の多額の、昨年も赤字になつており、そうして本年も僅かに平均して六〇%ぐらいよりも生産は上つておらん、今日ではですね。そういうことを我々は調査の結果を聞いておるのですが、水産庁はそういう点については何か御調査になつておるかどうか。
  97. 青山正一

    ○青山正一君 しかつめらしい話合いになりますと水産庁長官も非常にこうしてたくさんの陳情者もおられまするからして、返答もしにくい場合もあろうかと思いますし、それから例えば個個の期間の問題にしましても先般の被害によつて相当漁期を失しておつたとそういうふうなことを考えても幾らかこれは延長ができるのではないかということも考えられるわけなんですけれども、やはり長官は長官としてこうしてたくさんの陳情者がおりますと、やはりそこはなかなか話にくい場合もあるかも知れませんですから、その点一つ考慮してやつて進んで行きたいと思うのです。
  98. 木下源吾

    委員外議員(木下源吾君) 例えば話しにくいところがあれば話さんでもいいのですが、私は率直に申上げておる。
  99. 清井正

    説明員清井正君) 只今の経営の問題について御質問がありました。これは私只今数字を持つておりませんのではつきり申上げられませんが、業界の話を聞きますと昨年もなかなかうまく行かなかつたというような話をしております。本年も又御承知の通りの北海道の災害があつて暫らく漁業に出られなかつたから困る。こういう答弁です。それからさつきの結論の問題でありますが、私は若しもそうだとすれば四十七度の鮭鱒流し網漁業の再検討をしなければならんと思つております。これは漁業がうまく行かなかつたから区域を延ばせとか、期限を延ばせというのは逆な話でありまして、若しもそうとするならば或いは広い海域で母船式と単独の独航船漁業がありました場合に、只今の独航船は少し確かに過剰ではないか、こういうことも再検討する必要があるのではないかと思うのであります。勿論漁の良、不良の問題はあります。こういう問題は勿論ありますけれども、これは母船式漁業というものはやはりやるのでありますから、母船式漁業と独航船漁業との関連において、その兼合いを考えまして、毎年毎年漁が悪いということになれば恐らく過剰操業だと思うのであります。そこで過剰操業をどういうふうに処理して行くか。これは簡単に行きませんけれども、いろいろ考えて行かなければならんと思う。恐らく来年は北洋の鮭鱒漁業のあり方というものを一つ検討しまして、やはり出て行くからには相当の収益があるということにならなければ折角許可があつても無意味になる。その度ごとに期限を延ばし、区域を拡げるということにはやはり根本をなしている問題があるだろうと思います。お互いにやはり役所も困りますし、業界がたも困るのであります。そこで私も二カ年もそういうことが続きますと、これはやつぱり再検討の問題になるだろう、こう思うのであります。そこでなお一つ現地の監督官に、帰りましてからよく事情を聞いて見なければはつきりした判断ができませんけれども、恐らくこういう二年も続けてそういう問題を起すのはそういうところに根本があるのではないか。或いは必要があれば鮭鱒漁業の漁船を制限するとか、或いは船型を制限するとか、或いはいろいろ制限を設けて、或いは船数を減らすとか、或いは現在の漁業を他種漁業に転換するとか、いろいろなことを一つ考えて見ないとわからん。併し私は今はつきりとここでそうと申上げることはできません。よく考えて見なければならん。無理なことを続けて行つてもいかん。無理なら無理で無理のないようにすることを考えて行かなければならん。こういうように考えております。これは一つ今御質問がありましたからお答え申上げたので、必ずどうするということは申上げられませんが、どうもそういう私は感じがしてならないのであります。十分考えさせて頂きたい。
  100. 森崎隆

    ○森崎隆君 今日実は散会後に業界のかたの陳情を頂こうと思つてつたのですけれども、今木下さんから熱心な御質問がありました。長官、御答弁なされたのでありますが、今の最後の答弁を聞きますと、ちよつと一つ私意見だけを申上げたい。今のように採算がつかなければ四十七度線以南の漁船の数が多い、これを再検討しなければならん。そういう御意見のようであつて、それはよくわかります。そういうことを含めて今年母船式の船団が七船団に殖えたこと自体はどういう問題かということを考えなければならん。これは重大な問題ですよ。長官の今の言われた意見は重大な問題です。ですから四十七度線でくぎつたのは一昨年どういう理由で五十一度から四十七度線に切下げたかという問題も僕は知らなかつた。当時は水産委員でなかつたので知らなかつたのですが、これは夢のように切下げて押しへし合つてつておる。そして現在その枠の中で全体が多いから採算がつかないから船を減らすような考え方をしなければならんというのですから、一方は、母船式のほうはうんと漁港を拡大して三船団から七船団に殖えておる。それから独航船も殖えておるのだ。従つて現在これは確認しておる。これは母船式と独航船の問題は全部マツチして一緒にして考えるということになりますと、当然あなたの理論から言いますと当然これは今でも五十一度線にうんと上げまして、そうして母船式を例えば現在でも豊漁なんですから、七船団に殖やすのは仕方がないから、それを現状維持としましても、五十一度まで切上げても、これは独航船を救うことになりましても母船式を圧迫することにならんと思います。そういう検討をしなければいけないと思います。そういうことを言わないで、あなたのほう四十七度線以南で採算がとれなければこれは数が多いんだというようなことを一方的に申されると私としては収まりがつかない。今日私は議論しようとも、又御答弁を頂こうとも思いませんが、そういうことを十分腹に入れてこれは来年の問題についてお考えを願いたい。その点を私は申上げておきます。
  101. 清井正

    説明員清井正君) 只今の森崎さんからお話がありましたこれは五十一度になつていたのを四十七度に下げた。そこは議論になりまして、又私ども研究さして頂きたいと思いますが、そうなりますというと、やはりこれは独航船経営と母船式経営というものを単に資本漁業と、個別的な、いわゆる先生おつしやつておるような独航船の、極く零細な業者というような、対立的なものでないと私は思うのです。そこで遠洋漁業というものは相当資本がかかるものでありますから、やはり相当統制ある操業をしなければならんということで、やはり遠洋漁業という非常に資本がかかる経営であり、同時に技術を非常に要する経営であるということ、それから遠洋でありますから非常に経験を要するし、その他統制ある操業をしなければならんという意味が、独航船と母船式経営の根本的な差である、それ以外の差はないと考えます。従つて私が心配するのは、先ほど申上げました通り、ソヴイエトとの問題は大きな将来の長い長居問題だから、これは今すぐちよつとソヴイエトがおとなしいようだからということではなかなかむずかしい問題でありまして、やはりこれは私どもは統制ある操業をして、決して違反を起さないように、一度線を作りましたら線をみんなして守るという遵法精神で漁業をやつて行く、これを漸進的にやつて行くことが将来の大きい目で見た北洋漁業の健全な発達のためによかろうじやないか、こういう考え方から申上げておるのであります。具体的に現在の、今年の問題についても同様でありまして、私ども心配するのは、業界の言うことはよくわかるけれども、やはりこれが、魚のそばに寄つてそういうような違反が多いというようなことになりますと、どうもそういうことが相当あるようでありますが、ますますそういうことを刺激して助長するようになつて、それがために万一事故が起りまして、将来の北洋漁業に非常に障害を起すというようなことで、大事をとつて私は言つておるわけであります。四十七度線以南のこと紛糾することがあれば検討をしなければならんということで、何も減らすということを言つておるのではない。他種漁業に転換することも必要かも知れません。併しこれは経営が資本の問題もありますから、むちやなことはできないのでありますけれども、そういうことも検討して見なければならん問題だろうと、私個人がちよつと御質問がありましたから考えたのでありまして、そういう意味でありまして、やはり北洋の鮭鱒漁業全体のあり方としてこれは考えて行く、そういう、又ソヴイエトに非常に近いという意味において特殊性があるということを考えて、両方を睨み合せて考えて行く、それの一つの問題として今年の問題も解決して行かなければならん、こういう意味で申上げたのでありますから趣旨は御了承願いたい。
  102. 森崎隆

    ○森崎隆君 今の問題ですが、よくわかるのです。私も母船式と両方の対立なんてことは考えていない。さつき長官がああいうように言われますけれども、線の引き方について両方調和して行くということになれば、これはやはり漁業は保護して行かなければならん。そうすれば母船式もうまく行かなければならん、独航船もうまく行かなければならん。そうなれば片方を切るという考えは非常に危険じやないか、こういうことで、念のために申上げたので、調和さえとれればいい、調和をとるという原則に立つて業者のかたがたも五十一度線を要望して来ているのだろうと思う。それは侵入して行くとか、向うに突つこんで行くとか、そういう意味でなくて、両方調和して全体が採算のとれる、採算にしましても母船式は母船式の大きな採算がありましよう、独航船は小さな船ですから五六十トンの船でやはり食つて行かなければならんし、採算がとれればいい、それ以上のことは何も望んでない。ですからその調和という点を考えてもらわなければならん。四十七度線は、これは一つの天下の真理だから、これ以上はどうにもしようがない。そこでできなければ切れというようなことまで、これは水産庁として考えるべきじやないということを念のために申上げておくまでで、その点はよく御考慮頂きたい。
  103. 秋山俊一郎

    ○理事(秋山俊一郎君) それでは大体委員会はこの程度にいたしまして……。
  104. 千田正

    千田正君 この次農林大臣外務大臣安藤国務大臣、これははつきり出席するように要求して頂きたい。
  105. 森崎隆

    ○森崎隆君 それから大臣が時間を切つて出席するということはおかしいと思う。今日でも外務大臣十一時までと言つたでしよう。現実においては十二時近くまでおれるでしよう。十二時近くまでおるのに十一時というのはいんちきなんです。けしからんと思うのです。その点は官僚の一つの駈引じやないかと思うのです。この点特に二時間程度はどうしてもやはり大臣としては必要だということをお願いしておきます。
  106. 秋山俊一郎

    ○理事(秋山俊一郎君) それでは本日の委員会はこれを以て散会いたします。    午後零時五十六分散会