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参考人(
宇田道隆君) ここに図が出ておりますから、これを見て
説明いたしたいと思いますが、ここに赤い線がありまして、これは
海流の潮境であります。それからここにも一つ潮境があります。この間を
流れている大体
北緯三度くらいから
北緯八、九度くらいの間に
流れているのが
赤道反流と申しまして西から東に
流れます。流速は一ノット乃至ニノツトの
流れが普通であります。その北に
北赤道海流というのが、これは大体北東貿易風の区域でその風のエネルギ—を得て東から西に
流れる
海流であります。それから
北赤道海流は大体
北緯二十度
あたりまで普通及ぶものであります。今回の
調査によ
つてこういう新らしいうず巻きが今まで知られなかつたものが発見されております。これは実はアメリカのまだ公表されていない
報告に数年前に一部出ておりまして、非常に私
ども不思議に思
つておりましたが、今回又出て参りまして、今までの記録には曾
つてないもので、この点これから一つ検討いたしたいと思いますが、それがあるためでございましよう、多分今度
ビキニから出た
放射能がこういう
流れによ
つてこの区域のほかに北のほうにちよつと出ております。この
流れの反流が西から東へ行くためだろうと思いますが、ここにこういうものが若干出ております。それでこの
海流系はこの
北緯三度以南で
赤道を越えて
南赤道海流というものが今度は東から西に
流れております。非常にこの方面は
海流の複雑なところでありまして、断面を見ますと、北のほうと南のほうの冷たい水がずつと潜
つてこの
赤道反流
あたりで上
つて上昇流を示して、その
関係でここは
水温が非常に低い帯を現わしております。そしてここは漁場でありまして、先ほ
どもお話がありましたように、
まぐろの
種類もこの
赤道反流に棲んでおるものと
北赤道海流に棲んでおるものとははつきり分れております。それから
南赤道海流のものと、こういうように棲み分けをいたしております。そのほかに緑に染
つておる
北緯十度の北に、ここは八度ぐらいのところですが、その外側にもう一つ橙色に染
つているのがありますが、こういうところに
汚染区域が現われております。大体この区域は先ほど繰返して言われておるように、
北赤道海流の区域でありますから、この全体の影響は東から西に動いておるものと、一部ここで戻
つておるものもありますけれ
ども、又これは当然
北赤道海流に乗
つて西に
流れますから、これはこちらのほうに行
つてフィリピンのほうへ行き、それから台湾の東を
通り、沖繩の北を通
つて日本の
南海をずつと廻りますのに、この流速で行きますと、ここで測つたのは大体一ノットか一ノット半くらいの
程度でありますから、仮にこれが一日にいたしますと二十乃至三十マイルであります。日本までのこの道をずつと辿
つて行きますと、三千六百マイルくらいで、この伊豆の
あたりまで行きますから、二十マイル三十マイルとして割出しますと四カ月かかります。それで三月一日から四カ月とすれば七月頃になるわけであります。二十マイルといたしますれば約半年になります。それでありますから九月頃になるのであります。それからこの水の影響を受けたものがだんだんと動いて参りまして、検出できればその頃を大体
中心として現われるものではないか、最初の山か……。この時期が三月から五、六月の中頃まで相当長い間続くものであろうと思います。併しただ水がそのまま来るものではありませんで、途中雨も降りますし、特に東支那海に触れる所になりますと、この区域では非常に大陸の揚子江とか黄河とかの水の影響を受けた非常に塩分の薄いものと混合いたしまして水が薄められる。その水の影響で相当薄められ、
放射能は先ほ
ども言いましたように、この
海水と半減期の
関係で数カ月の間に減
つて参ります。この両方から考えまして、黒潮は台湾から日本の沿岸を廻り、沖合に参ますときには相当減
つておる。而もそれが日本の沿岸に入
つて来ますのには、この黒潮の分流で入
つて参りますので、極く一
部分しか入
つて来ないので非常に沿岸水で薄められる。それから丁度日本はその頃梅雨期か台風期に入りまして、非常に雨の多い時期でありまして、それによ
つて薄められる沿岸水が沖合に拡張し上うという勢力が強いのでありますから、沿岸においてはよほど検出しがたくなるのが普通であろうと想像いたされます。ただこれは想像でございましてやはり
ビキニの
海域でいたしたと同様に、これは検査をいたすべき
性質のものであろうと思います。
これからアメリカのほうにどういうふうな経路を通
つて影響するかと申しますと、
北赤道海流は黒潮を廻
つて約三年ぐらいののちに、早ければ二年後にシアトル、カルフォルニアの沿岸に及びますから、これは殆んど問題にならないのではないか。それからこの区域、
赤道反流の区域でありますと、一年ぐらいのちに一部が中米沖合に及ぶわけでありますから、これも余り大して問題にならないであろうと思います。結局空に上つた灰が降る、これは大気の循環でありますから、勿論すぐ現われるであろうと思います。大体
海流の概略はそのようなものでございまして、
赤道区域の
海流というのは、最近アメリカでも頻りに
調査いたしておりますが、これは相当今後も繰返して観測されなければいけないし、この辺は特にうず巻の多い区域でありまして、そこは非常にいい漁場にもな
つているのであります。水産上も、今後又こういう危険防止の
関係からも
調査をいたすべきものではないかと思うのであります。
それから申し落しましたが、夏はニユ—ギニアの北側を、
海流が東から西にミンダナオ、セレベス方面に向
つて流れる、その
海流は夏は強くなります。北半球では冬は反対に、
流れが強くなるのであります。大体御質問の点についてお答え申上げましたが、何か足りないところがありましたら又申上げます。