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国立国会図書館長(
金森徳次郎君) この問題は今に至りましてもなかなか是非善悪非常に迷
つておる点でございまするが、もう済んだことだからして……。格別それは
実質には何らの問題ございませんが、当初この
図書館で
懸賞募集をいたしまするときに、
図書館のほうでは従来の
官庁のやり来りのまあ例を踏襲いたしまして正直に言うと
官庁に都合のいい
懸賞募集要綱を出したわけでございます。その要点というものは、
懸賞に
応募せられますると、実際これを実施するときに、その内容を或る
程度まで斟酌して、或る案はこの
部分を採用するとか、或る場合はこの一等に
なつたものでも無筆のほうには使わないと、こういうような制限を立てたのであります。そこで
建築家のほうではかなり問題が起りまして、一体に知能的な権利として
設計をしたものを、
図書館といいまするか、
官庁側の
主催者において、それを
懸賞には当選させておくけれ
ども、実際にはそのまま使わないとか、或いは勝手に
変更するとか、こういうことはけしからん、こういうふうの論が起りまして、一部の
集団ではそういう妙なことをするならばこの
懸賞には
応募しないという議論があり、これがだんだん強くな
つて行きまして、事実少数の人は
応募せらるる
可能性がありまするけれ
ども、大
部分の人はそのお
考えによ
つて、いわば
応募反対連盟というような実情が起
つて来たわけであります。私
どももいろいろ
努力いたしましたが、国のほうの側から申しますると非常に困難な点がございまして、何しろ
予算が全然その
建築についてきま
つておりません。あらかじめ
応募せられたものをすつかり使うというような声明は絶対にできないわけであります。又
応募した方に一々
相談をして直すということも、先がきま
つていないことで何ともいたしかたございません。そこで実際はできるだけそれらの人を尊敬して話合いを進めて行く。併しその
懸賞の
応募条項では、こういうふうに木で鼻をくくつたような冷厳なる
規定をするよりしようがないからと申しまして、それで話はついたわけであります。ところがその
紛糾をしておりまするうちに、
募集期間の大
部分がつぶれてしまいまして、
あと間に合わんということになりまして、そこで
期間を延ばせという
主張が出て来たわけでありまするが、今度
期間を延ばしますると、
懸賞募集というのはいろいろ学説があるかも知れませんけれ
ども、実際は二月
末日までとい
つて応募しておきまして、その
条件をこつちで勝手に変えて三月延ばすということは又支障なんかが起る
心配が非常にございまして、まあいろいろそこに又問題があつたわけであります。で
図書館の
建築の
協議会を開いて頂きまして、いろいろ考慮をいたしまして結局断固として、三カ月延ばすということにしたわけであります。
あと法律上の
紛糾が多少起るかも知らんけれ
ども、これは止むを得ないのであ
つて、
幾ら懸賞募集をしてもいい
応募がないということじや主たる目的は消えてしまうのでありますから、多少危険を冒したのでございまするが、延ばしたのであります。そうしましたら旧
応募要綱によ
つて三人だけ
応募して、ちやんと書類を出して来られまして、これは又
懸賞募集の原理に従いまして、中を開けて見ることはできませんので、封じたまま私のほうで預
つて、それを紛失なんかしないように、特に特別な
要務者に
保管を頼んで待
つておりまするが、併し
あとで物言いが付くと悪いものですから、その三人の方に一々個別的に交渉して
期間延長同意ということに漕ぎ付けたわけであります。それが今までの
事情であります。