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1954-04-19 第19回国会 参議院 厚生委員会 第30号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年四月十九日(月曜日)    午後一時四十三分開会   —————————————   委員の異動 本日委員藤原道子君辞任につき、その 補欠として竹中勝男君を議長において 指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     上條 愛一君    理事            大谷 瑩潤君            湯山  勇君    委員            高野 一夫君            谷口弥三郎君            横山 フク君            廣瀬 久忠君            竹中 勝男君            有馬 英二君   国務大臣    厚 生 大 臣 草葉 隆圓君   政府委員    厚生省公衆衛生   局環境衛生部長  楠本 正康君    厚生省医務局長 曾田 長宗君    厚生省社会局長 安田  巖君   事務局側    常任委員会専門    員       草間 弘司君    常任委員会専門    員       多田 仁己君   衆議院事務局側    常任委員会専門    員       川井 章知君   説明員    厚生大臣官房人    事課長     畠中 順一君    厚生省公衆衛生   局結核予防課長  聖成  稔君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○狂犬病予防法の一部を改正する法律  案(内閣提出衆議院送付) ○らい予防法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○消費生活協同組合法の一部を改正す  る法律案内閣提出衆議院送付) ○社会保障制度に関する調査の件  (厚生省の定員に関する件)   —————————————
  2. 上條愛一

    委員長上條愛一君) 只今より厚生委員会を開会いたします。  狂犬病予防法の一部を改正する法律案議題といたします。
  3. 湯山勇

    湯山勇君 この前にお尋ねしておつたときの御答弁について、なお疑義がございますのでお尋ね申上げたいと思います。それは例の狩獵法の「ノイヌ」、「ノネコ」ですね、これはどういうふうになつているか、もう一度御説明頂きたいと思います。
  4. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) この「ノイヌ」「ノネコ」いずれも野犬その他の犬を意味いたしておりませんし、又猫とも全然別なもので、種類の違うことを意味しております。従つて狩猟法は犬及び猫には適用がないものと考えなければなりません。
  5. 湯山勇

    湯山勇君 ところがこれは林野庁長官から各府県知事に出ております通牒によりますとそういうふうにはなつていないのです。これは愛知県知事からの問合せに対して昭和二十五年十二月二十八日林野第一万六千九百九十九号を以て回答したのには、そういうふうにはなつていない。でこの「第一条のノイヌとは山野に常棲する犬をいう市街地村落に棲息する所謂野良犬はこの範疇には入らないものと解せられたい」と、こういうふうになつておりまして、結局この畜犬が山に入つたもの、種類としては同じものを指しているわけです。林野庁のほうの見解としては……。そうすると種類が違うというのじやなくて、ただその棲息の場所違つただけであるのです。そうなりますと薬殺の場合に非常に問題になつて来るのじやないか、こういうふうに考えるのですが。
  6. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) 私この「ノイヌ」の見解を、動物園古賀園長に実は尋ねたわけであります。古賀園長はこれは全然もう種類が違うものである。そしてすでに日本には現在はこの「ノイヌ」というものは残念ながらいなくなつたということを伺つておりますが、なお併し只今指摘のような林野庁見解等については、更にその点を質してみたい考えでございますが、なお実際に薬殺するというような場合に、山野の、人里離れた山野等において薬殺することはこれは考えられませんので、実際に人畜に傷害を与える犬を、つまり薬殺する意味であります。殊に現に狂犬が出て、真に緊急上止むを得ない場合に限つておりますので、さような観点からいたしましても山野適用されることはあるまいと、かように考えておる次第であります。
  7. 湯山勇

    湯山勇君 今の見解動物園長お話つたということですけれども、これは園長も恐らく若干勘違いしておられると思います。と思しますのは、学名じやなくて和名ですね、日本名前というのは、いろいろな文献見たのですけれども、やはり「ノイヌ」という名前はありません。「山の犬」となつているのはあります。「山犬」若しくは「山の犬」、まあですから「ノイヌ」というのは、やはり林野庁の言う見解に立つたほうが、この法の適用上から言つても間違いないと思います。そうでなければ今部長の言われた処置もできなくなると思いますので……。  なお都市の中には、都市の真ん中に山がある、例えば私の郷里の松山なんかは市の真中に山があります。そうしてその山の中に相当多数の畜犬の野性化したものがいるのです。そうしていわゆる野良犬がそれに入り込むということもたくさんございまして、このことは、やはり林野庁との間にはつきりした見解統一をなさるのと、そうして今のように山に入ることはないというけれども、事実そういうこともあるということも併せて一つ事施上においては御検討頂きたいと思います。  それからもう一点ですね、この狂犬病予防法によれば「第四条等四項」、二十二条のこの登録料の問題で、この前に何か登録料を他へ廻す。東京、神奈川のような所では足りないが、ほかの所では他へ流用するというような意味の御答弁があつたかと思うのですが、これは三百円以内の登録料というものは、すべてこの目的達成のために用いなければならないと法律にはなつていると思うのです。そうすると狂犬病予防以外にはこの費用は使えないのではないかと思うのですが、これは如何でしようか。
  8. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) この点は全く御指摘のように登録手数料の収入というものは、挙げて狂犬病予防法のために使いまするのが法の建前でございます。但し先日、狂犬が殆んど出ていない地方におきましては、ときたま地方経費に困る点もありますものですから、さようなときにおきましては、場合によつて他のほうに流用されることもあるという意味のことを申上げたわけでございます。
  9. 湯山勇

    湯山勇君 それは他のほうへ振向けるということを厚生省としては認めておられるわけですか。或いはそういうことをしちやいけないというように指示しておられるか。
  10. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) これは法律の示しますように、私どもといたしましては極力地方に対しましてこれらの経費は挙げて狂犬病予防のために使うように指導をいたしております。
  11. 湯山勇

    湯山勇君 そういたしますと、狂犬病の発生の虞れのない地区等におきましては、これはそういう予防措置を講ずる必要のない地区においては登録料というものを取らなくていい、実際にそのために要する手数料は別として、それ以外のものは法律によつても三百円以内ということですから、実際の実費として最低額で以て現在取つておる。大体どこも三百円取つておると思うんですが、そういうことはどうも不都合ではないかと思うんですが、如何でしようか。
  12. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) この点は誠に御指摘通りでございまして、私どもはかねがね他に仮にも転用するような余裕があるならば、当然御指摘のようにこれは登録手数料を減額すべきものでありまして、この点も府県に強く要望いたしておる次第であります。
  13. 湯山勇

    湯山勇君 最後に今の御趣旨が御答弁では非常にはつきりしておりますけれども、実際はもう殆んど違反しておるのが大部分の県であると思うので、重ねてこれをよく守るように御措置を願いたいと思います。
  14. 廣瀬久忠

    廣瀬久忠君 今の登録料というものは全国でどのくらい取つておりますか。
  15. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) 現在全国登録犬は最近逐次登録が徹底いたしておりますので、最近は約二百万頭と概算をいたしております。なお手数料は約三百円でございますので、おおむね五、六億ほどの経費狂犬病予防のために使われておるわけでございます。
  16. 廣瀬久忠

    廣瀬久忠君 その狂犬病予防のためにということの内訳は大体予防注射経費ということですかね、如何ですか。
  17. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) これは狂犬病予防事業、広く考え狂犬病予防事業という意味でございますが、ただすでに関東地方のように狂犬病の発生いたしておりまする県におきましてはこれは極めて経費が足りませんので、かような場合には極めて厳格に解釈しておるようであります。ところが逆に狂犬病が殆んど出ていない地方等におきましては、比較的幅を以て解釈をいたしておるようであります。
  18. 廣瀬久忠

    廣瀬久忠君 私が一つ伺いたいのは、人間狂犬に噛まれた場合の治療注射ですね、これはいつか説明伺つたのですが、大体非常によくなつてはいるようですが、まだ完全ではないというように聞いておりますが、どんな実情なんでしようか。
  19. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) 現在私どもが国の基準として決定いたしておりまするのはカルボールワクチンであります。これは先日も証人が申されましたように、約百五、六十名について一名の被害者が出ております。又一方私どもはすでに各国の例にならいまして、逐次ワクチンの改正を図つておりますが、なかなか思うに任せません。これは何も日本だけの例でなく、世界各国もなかなかこれは困難な問題のように聞いております。なお最近カルボールを使いまする代りに紫外線照射ワクチンができております。このほうは若干被害が、副作用は少いようでありますが、併しこのほうはまだ試験した数字も極めて少うございますし、先日これ又証人お話になりましたように、必ずしも最後的な決定はし得られないという実情でございます。なお世界各国におきましてもこの紫外線照射ワクチンについてはまだ議論が残つているわけでございます。そこで私どもといたしましては、やはり国で定めた基準といたしましては、現在のところ若干その副作用はありますが、止むを得ずカルボールワクチンを使用いたしているわけであります。
  20. 廣瀬久忠

    廣瀬久忠君 このワクチンなり或いは治療薬なりについて政府自身研究をいたしているのですか。或いは全然これは民間の任意に任してあるものなのでしようか。
  21. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) 政府予防衛生研究所におきましては、公衆衛生研究立場からこの問題をかねて研究をいたしております。なお伝染病研究所その他各地研究機関でもこの問題は研究されているわけであります。
  22. 廣瀬久忠

    廣瀬久忠君 それからもう一つお伺いしたいのです。現在狂犬病予防のために働いている職員等犠牲者というようなものは相当数あるものでしようか。
  23. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) これも御指摘のように東京都の例をとりましても、東京都の狂犬病予防員狂犬を命を的に捕ろうとしたために、つい狂犬に咬まれまして、その結果注射をしてそのうち二名が副作用のために気が違つて参りまして、目下松沢病院入院をいたしております。かように狂犬病病予防作業は都民のためにも命を的にして闘つていると言うても過言ではなかろうかと存じます。
  24. 廣瀬久忠

    廣瀬久忠君 私は質問ではありませんがやはりこの狂犬に咬まれた一般人並びにその職員等に対する被害実情を見ますると、如何にもお気の毒なことであり、これが非常にやはり公安を書する、若しも薬が非常に発達して必ずなおる。副作用がないのだということになると、非常に安定すると思うのですが、政府においてこの治療方策についてなお一段と一つ研究願つて一つとして副作用によつて事故のおきないように最善の努力をいたして頂きたいと思います。
  25. 高野一夫

    高野一夫君 これは私欠席したときにすでに質問が出たかも知れませんが、この追跡中の犬を捕獲しようとして人の家に入るには、「合理的に必要と判断される限度において」というのは大体どういうことになりますか。
  26. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) これは家族に頼みまして入つた屋敷内から追い出してもらうとか、或いは棒でも持つて行つて塀の外へ追い出せるというような場合には、入つてならんことに考えております。どうしても入らなければならん場合を合理的だと考えたわけであります。
  27. 高野一夫

    高野一夫君 これは私は実際にこういうときにたびたびぶつかつておるのでお伺いするのですが、人の家へ逃込むのですね。ところがそれは石の塀でもありまして取囲まれるのならいいんだけれども、どこからでも、こつちから入つて向うのほうの庭の隅から逃げられるというような場合に、その屋敷に入る、人の家へ入る場合に協力してくれないとなかなか捕らないのです。そういうような場合に一々家人に尋ねて、そして何とかして出してくれと言つている間に犬はいなくなつてしまう。だから一々家人に言わなくても事後承認でどんどんそこに入つて差支えないという解釈にはできませんか。
  28. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) この点は私ども実務にたずさわつておりますものには誠に有難いお言葉なんですが、併しながら実際に国民生活立場から考えますと、やはり正しい仕事とはいえ、犬取り、まあ捕獲のための予防員に立入られるようなことは余りいいことでもありませんので、私どもといたしましてはやはりさような点を考慮いたしまして、真に止むを得ない場合に限つて、而も承諾を求めて立入るというふうに絞つて考えておるわけでございます。併しまあこれはいろいろ行過ぎその他を防ぐ必要もありますので、かような措置をとつておる次第であります。
  29. 高野一夫

    高野一夫君 これはまあそういうような御配慮は誠に結構だと思うけれども、これではなかなか捕りません、実際問題として……。だからこれをもう少し厳格に考えて、皆が協力してくれるようなふうに仕向ける何か啓蒙運動でもやつて頂かなければ、やはり一々遠慮して入れないというので、逃げちやうというようなことでは、これは実際問題としてむずかしいと思うのですがね。どうせ人の家へ逃込むのですから、この点は十分一つ何とか御配慮を願いたいと思います。
  30. 上條愛一

    委員長上條愛一君) 他に御発言もないようでございますから質疑は尽きたものと認めて差支えございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  31. 上條愛一

    委員長上條愛一君) 御異議ないと認めます。  それではこれより討論に入ります。御意見をお述べ願います。
  32. 大谷瑩潤

    大谷瑩潤君 私は繋留されていない大で薬で殺すということに対しまして、随分世間でも輿論になつておりますし、この委員会でもいろいろ御意見つたようでありますが、時によりますと、繋留されなかつた犬でも飼犬であつて非常にその家では大事にしておられた犬が絞殺されたというようなこと、又薬殺のために死亡いたしますときに、非常に残酷な有様で息を引取るというような事情も、我々人間として見るに忍びないというようなことがたびたびあつたようであります。つきましては、本案に左の附帯決議を附する動議を提出いたしたいと存じます。    狂犬病予防法の一部を改正する法律案に関する附帯決議案  野犬薬殺については、狂犬病予防のため緊急止むを得ず、且つ他に代るべき捕獲方法のない場合に限り、これを実施するものとする。而してこれが薬殺の実施については、場所及び日時を指定し、他に不測の災害を及ぼさざるよう周知徹底せしめると共に、犠牲動物の苦痛を軽減し、社会人心に与える影響を顧慮して慎重に措置すべきことを要望する。以上の通りであります。
  33. 湯山勇

    湯山勇君 私は只今大谷委員の御提案に賛成をいたします。なお、この附帯決議案の中の周知徹底という項目につきましては、これの対象になるものは犬でございますから、そういう点、並びにこれに対しては子供のいたずらもあるだらうし、又子供が誤つてそういうものをどうこうするという問題もありますので、従来のような周知徹底という概念と違つて、実質的に周知徹底するということを特に御確認願つておきたいということをも要望いたしたいと思います。
  34. 上條愛一

    委員長上條愛一君) 大谷委員附帯決議は成立いたしました。  他に御発言はございませんか……。別に御発言もないようでございますから、討論は終局したものと認めて差支えございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  35. 上條愛一

    委員長上條愛一君) 御異議ないと認めます。  それではこれより採決いたします。衆議院送付の案について御賛成の方は挙手を願います。    〔賛成者挙手
  36. 上條愛一

    委員長上條愛一君) 全会一致でございます。  次に、大谷委員提出附帯決議に御賛成の方は挙手を願います。    〔賛成者挙手
  37. 上條愛一

    委員長上條愛一君) 全会一致でございます。よつて本案附帯決議を附して可決いたすことにいたします。  それから委員長から議院に提出する報告書には、多数意見者署名を附することになつておりますから、本案を可とされた方は順次御署名を願います。   多数意見者署名     大谷 瑩潤  高野 一夫     谷口弥三郎  廣瀬久忠     湯山  勇  有馬 英二     竹中 勝男  横山 フク
  38. 上條愛一

    委員長上條愛一君) 署名洩れはございませんか……。署名洩れないと認めます。  なお、本会議における委員長口頭報告については、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔(異議なし」と呼ぶ者あり〕
  39. 上條愛一

    委員長上條愛一君) 御異議ないと認めます。
  40. 上條愛一

    委員長上條愛一君) 次に、らい予防法の一部を改正する法律案議題と  いたします。御質疑を願います。
  41. 高野一夫

    高野一夫君 私は先週のこの問題の質疑のときに国立癩研究所のことについて政府当局のほうに質疑を申上げたのですが、なお十分でなかつたので大臣に伺いたいと思いますが、国立癩研究所設置を昨年この委員会において決定をいたしましてから相当の時日が経つておるわけでありますが、まだ癩研究所設置について何ら具体的にきまつていないというような局長お話でございましたが、これはいろいろ各地から陳情がございまして、東大を中心として東京に設立したい、或いは九大を中心にして学者連中が熊本こそ好適の地であるというので各地から陳情もございまするししておるのですが、我々としては研究、文化、教育中心地東京だけでなく地方に分散してそれぞれ特色を生かすことが本当に研究機関教育機関を活かすゆえんだと考えてこの意見も先般申上げたことがあるわけですが、それはそれといたしまして、この国立癩研究所はいつ頃場所なり、或いは規模なり、そのほか具体的に設立又運営の運びになるものでありましようか。大よその大臣の御見解を伺つておきたい。
  42. 草葉隆圓

    国務大臣草葉隆圓君) これは予算関係もありまするが、予算只今六カ月分を二十九年度では計上いたしております。そういたしますと、少くとも後半までには決定いたさなければならないと存じております。
  43. 谷口弥三郎

    谷口弥三郎君 私から二、三お尋ねしたいと思います。この癩は疫学的に申しましても、寒いところからだんだん暑いところに残つて行くということが言われておりますので、我が日本におきましても、現在は九州においては総数の三分の一ぐらいの患者九州に来ているように思いますのですが、現在我が国における十カ所ほどの国立癩療養所並びに二、三の私立の療養所におきましての入院患者はどの程度になつておりますか。これは大臣でなくてもほかの方でも結構です。
  44. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) 只今医務局長がすぐに参りますから暫らく一つ……。
  45. 谷口弥三郎

    谷口弥三郎君 それでは医務局長が来られてから二三続いてお話を聞きたいと思いますが、先刻高野委員からもお聞きになりましたので関連してお尋ねしたいのですが、実は二、三年前に癩の刑務所ができるということになりました場合に、癩の刑務所につきましてそれを九州恵楓園のごときは、九州恵楓園に置いたらよかろうという話が出ました場合に、全患者は非常に反対いたしました。人段しの癩患者とか、喧嘩ばかりするような癩患者自分の軒下に入れられることは絶対反対である。刑務所を作るなら全国療養所にお作りになるか、或いはいろいろと御便宜であろうから中央に置いてもらいたいということをしきりと言いますので、その恵楓園園長が参りまして、是非一つ刑務所はほかにしてもらいたいというお願いをいたしました場合に、厚生省当局としておつしやられますのには、刑務所全国に一カ所しか作らんのである。従つて療養所に作るわけには行かん。殊に癩病は非文明病と言われておるのであるから、日本の体面上から言うても、東京みたいなところに癩のそういうような刑務所を置いたり、或いは癩の療養所とかいうのを置くことは実は好まんのであつて東京附近にある癩療養所は次第によそに持つて行きたいとまで思うておるのである。若し癩の研究所などができる機会があつたら、今度は刑務所設置賛成をしてもらえれば、その場合には大いに考慮するということを言われたというので、その患者に対しまして非常に納得に努めたようでございます。丁度私は第五国会から十三国会ぐらいまではこの参議院厚生委員会における癩の小委員長をいたしておりました関係で、昭和二十六年十一月十八日を以て国立癩療養所菊地恵楓園患者総代増重文氏というのからこういうような陳情書がその当時参つたのでございます。それは全国に一万五千からの患者がいるが、これらの全体の希望は、国立癩研究所設置してもらうということが我々のすべての希望である。ところが今回刑務所自分のほうの恵楓園に置いてくれということであるが、将来癩の研究所を我々のところに置いてもらえるなら、それなら、大いに苦しいけれどもこらえてそれに賛成をしたいというようなことを言つて参つたのでございます。従つて参議院内における癩の小委員会におきましても、非常にこの問題について、或いは各方面研究所又はこの癩に関しまして特別の権威者などに来てもらつていろいろと研究をいたした結果、やはり癩は先刻も申しましたような、将来は日本の南のほうに残るのであるから、又従つてそのために恵楓園が最も大きい療養所としてあるのであるから、やはり恵楓園に置くべきものであろうというような大体の話ができた。なお我々のその当時の委員会におきまして恵楓園がよかろうと言うた条項につきましては、又あとで申上げてみたいと思いますが、大臣におかれましては、どうせ今度は癩のいよいよ国立研究所ができるということになつておりますので、癩の患者並びに恵楓園園長などに厚生省がそういうようなふうに言つてつたやつを、これをその当時ほんの方便的に患者をなだめるために言うたことということになれば、これは非常なあとで又問題が起りはせんかと思うのですが、大臣におかれましてはどういうようなふうにお考えでございましようか、その点を……。
  46. 草葉隆圓

    国務大臣草葉隆圓君) 只今いろいろ過去のいきさつを拝承いたしまして、そういう点につきましては十分一つ検討してみたいと存じております。
  47. 谷口弥三郎

    谷口弥三郎君 次に医務局長見えたようですから、医務局長にお伺いしたいと思いますが、この癩の患者は現在文明諸国には殆んどなくなつてしまいまして、いわゆる非文明的とでも言われるような例えばアフリカとかインドとか或いは中共とか南米とか日本という方面に癩の患者が現在まだ残つておるようでございますが、どういうふうな程度に残つておるのでございましようか、そういうような点をお知らせ願いたい。
  48. 曾田長宗

    政府委員曾田長宗君) 大体の数字で申上げますと、詳しい数字はこの性質上なかなかつかみにくいかと思うのでありますが、この世界各国殊WHO等が集めました資料というものに基いて見ますと、大体世界にほぼ三百万ぐらいの癩患者がおるようであるというふうに言われております。で、勿論このうちにも推定が入つておると思いますけれども、この三百万というものはかなり確実なものと考えられるのでありまして、さようにとるといたしますれば、恐らく実際には更にその倍ぐらいもおるのではないか、よく検査をいたしますればおるのではないかということさえ想像されるのであります。そのうち最も数の多く上つておりますのは、いわゆる東南アジア地区でありまして、インド、ビルマ、それからマレー、インドネシア、というような方面でございまして、約二百二十万ばかりという数字が出ております。それからそれに次いではアフリカで四十万余りということになつております。それからそれに続きましてはソビエト及びその近隣というバルカン半島等のソ連区域というようなものが入つておると思うのですが、これは十五万というような数字が一応出ております。それからオーストラリア及び南洋諸島と申しますか、その周辺に約一万七千というようなことが出ております。それからなお、南北アメリカには六万五千くらいということになつておりまして、この日本の近隣におきましては、朝鮮がこの数字によりますと三万五千という数字になつております。それから中共地域は、これはもうなお明確でないのでありますけれども、恐らく百万に近いものがあるんじやないかというようなこともいわれております。それから台湾は大体二、三千というようなことになつております。日本は御承知のように大体一万五千というふうに推定されておるのでございます。大体今日においての流行の状況はおおむね今申上げたようなことではないかというふうに承知しております。
  49. 谷口弥三郎

    谷口弥三郎君 先刻医務局長の見えておらんときにお伺いしたいのですが、日本の今の十カ所の癩療養所並びに私立の療養所にはどのくらい入つておりますか。
  50. 曾田長宗

    政府委員曾田長宗君) 正確な数字といたしましては昨年末の数字がございます。国立に当時九千九百十人おりました。それから丁度その頃日本の統治下に還つて参りました奄美大島に和光園というのがございます。これが定床三百でございますけれども、二百九十八人というのでございまして、これはまあ中へ入れるべきか入れないほうがよろしいか疑問でございますが、これだけおります。そのほかに法人立の民間の療養所に二百三十一名ということになつておりまして、全体で奄美の和光園を含めまして一万四百三十九というのが収容いたしております患者の数ということになつております。
  51. 谷口弥三郎

    谷口弥三郎君 続いてちよつとお伺いしたいと思いますが、癩の研究所は、まあ私どもつておる範囲でも、無論病気もないせいでありましようが、ロンドンとか、パリとか、ベルリンとか、或いはワシントンとかいうような文明国の首都には全然ないということでありますが、今、現在世界のうちで癩の研究所を開設しておる所はどこにありますか。
  52. 曾田長宗

    政府委員曾田長宗君) 国立癩研究所というものを設けております国は只今のところ承知いたしておりません。
  53. 谷口弥三郎

    谷口弥三郎君 国立でなくてもよろしうございますが、ほかに研究所は何かありますか。
  54. 曾田長宗

    政府委員曾田長宗君) 例えばフイリピンでございますとかのような所で、大きな療養所のございます所に相当完備した研究施設があるということは承知しておりますけれども、それが特に研究所という銘を打つているかどうか、その点については私もよく存じておりません。
  55. 谷口弥三郎

    谷口弥三郎君 国際癩学会というのが開かれておることは御承知の通りでありますが、これは五年ごとに開かれますので、十一、二年前にエジプトのカイロに開かれ、続いてキユーバのハバナ、昨年はスペインのマドリツド、次はインドで開くという順序になつておりますが、前に来ましたいわゆる癩学者というのはどこ辺からどのくらい来ておつたか、それを一つおわかりならばお知らせ願いたい。
  56. 曾田長宗

    政府委員曾田長宗君) 今度のと申しますのは昨年でありますが、昨年の会議に出席されました東大の北村教授からの話でございますが、非常にほうぼうから集まつて見えたということでございまして、勿論開催国でございますからスペインが一番多くて、それから南米のほうからアルゼンチン、ブラジル等、これはまあいろいろ経費関係もあるかも知れませんですが、相当にたくさん参加者があつた。又土地の関係からヨーロツパのドイツ、フランスというような所からも十数名の参加者があつたというようなことでございまして、そのほか参加国が四十六カ国、参加者二百八十名というような状況で、かなり広範囲に亘つて参加者があつたというふうに聞いております。
  57. 谷口弥三郎

    谷口弥三郎君 いま一つお伺いしたいのでありますが、癩の癩菌は御承知のように未だに純粋培養ができんくらいの程度でありますので、癩の研究をしようと思えば、どうしても癩の療養所内に研究所がなければならん、或いは療養所に極く接近した場所でなければならんということは殆んどすべての人が言つているようでございますが、従つて今回いよいよいよお作りになる、癩の国立研究所をお設置になる場合には、そういう点も十分に無論お考えの中に入れられまして、そうしてやはり癩の研究所は、いわゆる療養所内又はその附近に是非置くようにして頂きたい、大いに御考慮願いたいと思います。なお、その点につきまして一、二私の、これは質問よりか希望の問題でありますが、先刻も申しましたように、恵楓園においては患者がそれだけひどく熱望した点もありますし、又やはり実際に申しますと、あそこには朝鮮などからの密入国者もやはりあそこに入れてしまつておるというふうなことで、すべてのいわゆる犯罪患者、或いは密入国者というのまでも入れておるところのものに対して、前に申しましたような方便的にやられたというようなことが絶対にないように、一つ大いに御考慮願いたいと思つております。
  58. 竹中勝男

    竹中勝男君 谷口委員のに関連したことと思いますが、或いは前に申されたかと思いますけれども、癩の治療或いは撲滅に対する政策といいますか、国の政策という点について、ここ十年或いは二十年前から今日までにどういうように癩患者が減つておるか、或いは伝染がどういう状態におかれておるかという点について何か御報告がありましたでしようか、なかつたら私はお伺いしたいと思います。
  59. 曾田長宗

    政府委員曾田長宗君) 先ほども申上げましたように、癩患者の的確の数というものをつかみますことが非常にむずかしいのでございますが、大体都道府県におきまして、いろいろ患者の状況を調べるとか又ときどき検診をいたしますというようなことから、各都道府県における現在患者、又収容所に収容されております患者の数というようなものを合算いたしまして推計したのが時々発表されて記録に残つております。今日残つております数字としましては、明治三十七年に患者が三万三百九十三、当時の人口に比較いたしまして、人口一〇〇〇に対して〇・六四三というような数字が出ております。その後数年、四、五年ごとぐらいな数字が記録されておるのであります。例えば明治三十九年には二万四千四百八人、大正八年は万六千二百六十一、それから大正十四年が一万五千三百五十一、昭和五年が一万四千二百六十一、昭和十年が一万五千百九十三、それから昭和十五年が一万五千七百三十六、人口対比としましては明治三十九年が〇・五〇四、次いで〇・二九二、次が〇・二五七、次が〇・二二一、次が〇・二一九、昭和十五年、戦争前の数字といたしましては〇・二一六という数字が最低になつてつたのであります。それが戦後におきましては大体一万五千というふうに推定されておりますので、今日の人口の比率ということにいたしますると〇・一六七というくらいなことになつて参ります。如何ような、どの政策がこの効果を挙げたかというような分析も困難でありますし、又減少いたしましたことは、これは広く日本の文化がだんだんと進んで参つたというようなことにもよるのかも知れませんが、一応順調に減つてつたという数字は出ております。
  60. 竹中勝男

    竹中勝男君 これは非常に調査が困難であろうと思うのですが、まあ順調に減つておると言えば減つておるとも言えるのですけれども、三十七年から三十九と非常に減つておる。大正年間には相当減つておるのですけれも、人口比率の上から減つておると言えるわけです。絶対数は減つていない。即ち大正十四年から今日まで、患者数というものは減つてない、人口比率からすりや減つておりますけれども……。だから順調に癩撲滅政策というものが進展しておるという数字上の基礎というものは私は疑問じやないかと思いますが、ただそれは、例えば現在でも五千人の癩患者というものは療養所以外にいるわけになりますが、そういう人たちが癩菌を伝染さしておるという事実はどういうように考えられるのですか。
  61. 曾田長宗

    政府委員曾田長宗君) 今お話がございましたように、率としては多少減つておるかも知らんけれども、余り絶対値においては減つておらないというようなお話でございますが、私はこの絶対値におきましても決して減つていないとは言えないのじやないかというふうに思います。と申しますのは以前はこれも、結核の場合でもさようだと思うのでございますけれども、この診断の的確さと申しますか、検査が以前のほうがどうしても粗漏でございまして、だんだん見つけ方が厳密になつて参りますので数も殖えておる。勿論これは又見つかつて収容されました患者のその後の治療にも響くかも知れませんけれども、御承知のように最近は一万人もおります中で、百人という死亡者は出ない。八十数名というくらいのところまで減つても来ております。又患者の病状を見ましても非常に程度が軽くなつてつております。こういうような意味で、必ずしもこの数と申しますか、患者の状況も改善の跡が認められないとは言えないと私考えておるのであります。併しそれにもかかわらず数千名のまだ未収容の患者がおるということにつきましては、私どもとしては、これは私よりも公衆衛生局のほうからお答えするほうがいいのかも知れませんけれども、この患者はできるだけ多く収容いたしたいというふうに考えてはおりますけれども、なかなか十分にし尽さない。併しながらこの未収容の患者は概して言いますならば、収容患者よりは軽症の者が多い。勿論例外はございます。こういうような意味でそのうち感染の危険のあるという者は半分か三分の一かというようなことではないかと思います。いずれにしても、さようなものが感染源となりまして、これも一遍や二遍の危険暴露では感染いたしませんかも知れないのでありますが、これが長く続きますと、そこから患者が出て来る。今日まで年々届出のありますいわゆる新発見患者であります。この届出もなかなか完全さを吟味いたしますというと、いろいろ検討の余地はございますが、例えば昭和二十三年には七百十二人、それから二十四年には七百七十八人、それから二十五年には六百四人、それから二十六年には四百八十五人、それから二十七年には三百二十六人、二十八年の分ももうまとまつておるのでありますけれども、今ここに持つて参りませんでしたが、こういうような工合に二十四年が最高でございますが、以後逐次この新らしい発見患者の数も一応は、減つてつてはおりますので、大体蔓延の状況としましては改善の跡は見えるというふうに思つております、油断はできないと思いますけれども……。
  62. 竹中勝男

    竹中勝男君 こういう未収容の患者が未収容のままで減りつつあつても、五千人、少くともそういう者が実際未収容であるということに対する対策は、収容対策といいますか、或いは収容対策のどういうところに隘路というか、困難があるのですか。療養所が足りないというのか、或いは生活問題がそれに関係するからして収容ができないというのですか、或いは研究所ができれば、それがこの未収容患者に対しては、どういうような結果になつて来るわけですか。
  63. 聖成稔

    説明員聖成稔君) 現在、先ほどお話がございましたように約五千人未収容の癩患者がおるわけでありますが、これをことごとく療養所へ入つて頂くということが癩対策の根本の問題でございますが、現在医務局所管の国立のベツトのほうから言いますと、約二千床の空床があるのであります。従つて、現在の在野の患者が全部入つてしまうには十分ではございませんけれども、なお二千名が入れるという状態にある。これを早く少くとも現在空床になつておりますだけでも、早く入れたいというように私ども考えておるわけでございますが、ただ入れ方といたしましては、昨年制定になりました新らしい癩予防法にもはつきりございますように、長期に亘ることでございますから、これを強権を以て直ちに入れてしまうということは好ましくない。従つて、十分に相手に納得をさせまして、そうして連れて行つて、収容するという方法をとつておるわけでございます。いわゆる勧奨によつて入所させるということを建前にいたしておりまして、併しどうしてもそれで成功しない場合には、止むを得ず入所するように都道府県知事の命令を発する、或いは又、最悪の場合には、どうしても強制的な収容の方法を考慮しなければならないというような考え方になつておるわけでございますが、実際問題といたしましては、全部これを話合い、納得によつて入れたい、こういう方針をとつておるのでございます。  そこでその収容、なせ入らないか、ベツトは若干空いておる、当然入るべき患者がおるのに、なせそこがうまく行がないかという問題なんでありますが、大体未収容の患者でまだ入りません理由は、私どもの調査によりますと、大体三つくらいの理由に分けられるのでありまして、一つはやはり経済上の問題で、自分が行つてしまうと、あとの家族が生活に困るからという理由によるものが一つであります。もう一つは、やはり長期に亘りまして妻子、或いはその他の家族と別れることが辛いという、その何といいますかそういう感情の上から、家を離れて行くに忍びないという点で、どうしても行くのを肯んじないというのが第二の理由、なおもう一つの理由といたしましては、世間で、あそこの家には癩患者がいるというような頻りに噂が立つておる。併し自分が頑張つておれば、はつきりと癩でないと頑張つておればいいのですけれども療養所に行つてしまえば、やはりいなくなるから、やつぱり癩だつた、癩が発生したのだということをそこで確認されるということになるのを嫌いまして、ために収容に応ぜない、大体この三つに大別ができると思うのであります。その第一の家族の生活の問題、この点を考慮いたしまして、一昨年の参議院で、附帯決議をお付け頂きましたように、患者の家族の生活援護を行うということが、今回の癩予防法の改正の第一点であるわけでありますが、この措置によりまして、かなり入所の促進を図ることができるのではなかろうか、かように、又是非さようにいたしたい。あとの二点の問題につきましては、専ら啓蒙であり、又いろいろ癩の係りの職員の努力によりまして、よく納得して、行く気になつてもらいたい、かように考えておるわけでございます。大体そういうような状況でございます。
  64. 竹中勝男

    竹中勝男君 研究所は元来治療法の研究に主力を注がれると思いますけれども、もつと総合的な研究もやられる。その何年後には癩を撲滅してしまうというような経済的な研究も、或いはその心理学的な研究もですね、或いは国民の輿論、それに対する輿論を作り上げるというような、例えば癩患者を非常に恥じておつたり、いやがつたりするのに対して、輿論をやはり正当に、国民の医療とか健康上、それは当然収容所に入るべきだという輿論を作るというようなそういう総合的な研究もやられるという研究所ですか。
  65. 曾田長宗

    政府委員曾田長宗君) 御指摘通り今度できます癩の研究所は、主として治療の問題が重点となるというふうには考えるのでありますけれども、その治療を十分にいたしますということのためにも、患者の状況、病状を的確につかまなければならんし、又如何ような変化が体内に起つておるかという病理的な研究というものも必要でございます。又そのことから見て参りまして癩菌それ自身に関する研究も必要になつて来る。又癩菌自身の研究或いはそれを用いての動物実験の研究というようなものに進んで参りますれば、これは当然今度感染の様式というような、どうして癩にうつるかというようなことも明らかになつて来ると考えられる。そういうような意味におきまして治療が、特に患者の今直截に要求しておるところではございますけれども、この研究所はそれだけではなしに、この病気がどうやつて次から次とうつつて行くか、それを防止するためにはどういう方法をとればよいかというような予防の面もこれは当然に取上げて参りたい。又それと同時に今のお話のございましたように、癩患者のいろいろな心情というものは、この非常に病人独特なものがございますので、その患者の心理的な研究、心理の動きというようなものの研究、或いは患者が出ました場合に、その家族に如何ような影響を与えるかというようなこと、従つてこの患者の収容に付添ういろいろな困難というようなものも如何に解決して行くべきであるかというような心理学的、社会学的、経済学的な、そういうような考慮もやはり払つて行かなければならんかというふうに考える。そうしてこれらをすべて総合いたしました国の癩対策というようなもののプランも、ここで或る程度骨組を立てて行くということが望ましいと思うのでありまして、今のところではまだそう資料が十分に収集されておりませんけれども、初めから余り多くを望んでもどうかと考えられます。併しこの研究所の何と申しますか、大きい目的としてはすべてをカバーしたもので行きたい、ただ当初、本年認められました予算というようなものでは、そのうちのどの部分から着手するかということを慎重にきめて参りたいというふうに考えておるのであります。
  66. 竹中勝男

    竹中勝男君 もう一つだけ大よそ何年くらいしたら癩患者日本になくなるというふうな計算が立てられますか、この伝染率といいますか、今までの抵抗率といいますか、減少しつつあるものから計算しますとそういうものが立てられるものですか。
  67. 曾田長宗

    政府委員曾田長宗君) 大体の傾向で見ますならば、先ほどお話申上げましたように明治三十七年と申しますか、七年はたしか一九〇三年じやないかと思つております。本年が丁度一九五四年に当るわけです。丁度五十年経つておるのじやないかと思うのであります。そういたしますれば五十年で約四分の一程度に減少したというようなことでございますので、この傾向で今後も行くとすればという計算は割合に簡単に出て参ります。併し伝染病の状況を見ますと、同じ比率で以て年々減少して行くというものと、それから中に特別な治療方法とか、或いは予防方法が考案されますというと、そのときから急激に減る場合もございますので、まあ私どもは更に急激に減少して来ることを希望しておるわけでございます。いずれにいたしましても、今後百年もいたしますれば、まあないに等しい状況に行きやせんかというふうに思つております。
  68. 竹中勝男

    竹中勝男君 有難うございました。
  69. 有馬英二

    有馬英二君 関連することになりますが、癩の感染のことですけれども、今のところ、そんなにたくさんの患者でないと言えるわけですが、多いと言えば多い、少いと言えば少い、どつちにも解釈ができるかも知れませんけれども、とにかくどこの村には何の某が癩患者であるという記録が恐らくできているのじやないかと思うのですが、そうすれば今年はその記録以外に新らしい患者が、つまり誰々が今度は癩として発見されたということになつて、新患の発生というものが一年に何名であるということが大体わかつているかと思うのですが、どうでしようか、そういう点は……。
  70. 曾田長宗

    政府委員曾田長宗君) 実はその数字に該当いたしますのが、先ほど申上げました通り新らしい患者の届出数ということなのでございますけれども、併しまあこれを見付けることがなかなかむずかしいので、どの程度に正確かということを申上げかねる。ただ特にいつから急に詳しくなつたり又急に粗漏になつたということもございませんので、この数が一時七百くらいでございましたのが三百くらいにまで下つて来たところを見ますと、まあ発生は逐次減少しつつあろうというふうには予想がつくと思うのでございます。
  71. 有馬英二

    有馬英二君 その発生された新らしい患者の年齢層というものは大体どういうようなことになりますか。
  72. 曾田長宗

    政府委員曾田長宗君) 今ここに細かい数字を持つて来ておりませんけれども、大体新らしい患者はやはり若い者でございます。大体十歳前後から二十歳代ぐらいまでというのが殆んど全部を占めております。その他の年齢はむしろ例外的な事例になつております。
  73. 有馬英二

    有馬英二君 そういたしますと新患者は十歳から二十歳までくらいの……二十歳代と申しますかに大体限定されておる。そうすると年を取つた或いは成年以上になつた年齢の人には新らしい感染はないということになりますか。
  74. 曾田長宗

    政府委員曾田長宗君) 決してないというわけではございませんので、かなり高齢になりまして、五十、六十を過ぎまして発病しておる者もございますが、これは若い者に比べますと格段に少くなつておるという意味でございます。
  75. 有馬英二

    有馬英二君 昨年らい予防法案が出ました際に、多数の癩患者療養所から出て、そうして本院の周囲にまで押し寄せて来た。あの際の患者の言い分と申しますか、考え方の中に、癩は大人になるとうつらないのだ、癩病というものは子供の時分にうつつてしまうので、大人になるとうつらんのだという考えから、自分たちは出て歩いて、何と申しましようか、健康な社会を汚染して歩くのだというような考えを持つてはおるのかも知れませんが、それは大人にはそう有害ではないのだ、或いは伝染の虞れはないのだ、従つて出て歩いても許さるべきであるというような観念を持つておる者があるやに私どもは聞き及んだのですが、その際当局ではどういうようにお考えになりましたか。
  76. 曾田長宗

    政府委員曾田長宗君) 今申上げましたのは比較の問題でございまして、若い者に年を取りました者よりも遥かに感染率が高いということを申上げたわけでございますが、年令の高い者に対しましても感染の事例は相当にございます。それともう一つは、この患者か外へ出まして子供だけに危険を及ぼし、大人に危険を及ぼさないという保障かどうもできません。而もこれは直接の感染だけではなしに、やはり間接の感染ということもこれは皆無とも言い得ないのでございます。そういうような意味から、患者がやはり外で一般の人たちと共同の生活をするということは、仮に年を取つた人たちに対する感染力というものが或る程度低いといたしましても、危険がないとは申上げかねるというふうに思います。
  77. 有馬英二

    有馬英二君 もう一点まあ昨年は特に頻繁でありましたが、らい予防法案が改正されるというので、非常な陳情が各療養所から参りましたが、その際療養所から発送されておるところの書状が消毒済という判が押してあるのと判が押してないのとがあつた。恐らく判の押してなかつた未消毒のままのものは、これは療養所の外に出て出したのではないか、或いは何らかそういうような手段によつて出したのではないかと、私どもはその当時非常に癩患者の、つまり収容患者考え方なり、或いはそういう処置について疑いを抱いておつたのでありますが、最近はその数は非常に減りましたけれども、未だにまだ療養所から消毒或いは未消毒という区別なしに、何らの判も押してないのがやはりやつて来る。非常に数は減りましたけれども、やはり来るのでありますが、これは患者自身の考え方が大変間違つておるのか、或いは昨年と同じように外に持ち出して送るというのでありましようか。つまり監視が不十分であるのか、監督がだんだんルーズになつたというようなことを昨年は特に感じたのでありますが、今日はどういうふうな状況になつておりましようか。
  78. 曾田長宗

    政府委員曾田長宗君) 今の消毒の点につきましては私ども国立療養所の方針といたしましては、全部消毒をして、消毒済の判を押すということにいたしておるのでありますが、その判を押した書状が患者の家族等に送られますと非常にそれが目立つというようなことで、それはやめてくれというような患者の意向もあるので、判を押すことを差控えておるという療養所がございました。その後、成るべく判を押すほうがいいのじやないかというようなことを私ども話しておるのでありますが、まださような意味でこの消毒済みの判を押さないところも若干あるのじやないか、併しながら判が押してないのは全部未消毒かと申しますというと、決してそういう意味でもないのでありまして、私ども大体消毒は済んでおるものと了解いたしておるのでありますが、更に療養所のほうによく注意いたしまして、抜けることのないようにいたさせたいと思います。
  79. 谷口弥三郎

    谷口弥三郎君 先刻のに関連してちよつと一言……。日本癩患者は、先刻のお話のように三万或いは最近では一万五千と言われておるのですが、八年ほど前に出ましたアーネスト・ミユアーさんの、あのような大学者の出しました書物でマニユアル・オブ・レブロンに日本癩患者は十万二千人ほどおる、そして日本は東洋においてはインド、中国に次いで癩病国であるというようなことを非常に宣伝されておるということは、これは日本を観光都市というふうにするという上においても、こういうようなのは一つ厚生省あたりから先刻おつしやられたような実情を少しそういう方にも知らしてあげるような方法でもとられてできるだけ日本は今一万五千そこそこしかおらんのだということを言つて頂きたいと思うのです。従つて私は、ついででありますが、この癩の研究所ども東京あたりみたいな中央に置くということは、これはやはり癩の宣伝に使われるわけでありまして、できるだけ癩研究所ども田舎のほうに持つて行くようにすべきものじやないか、こういうように思つておりますからして、その点お考えの上に、一方にはミユアーさんあたりに一つ御連絡をとつて頂きたい。
  80. 廣瀬久忠

    廣瀬久忠君 先ほど竹中君からの御質問に対する答弁のうちに、決して私言葉尻をとらえる意味ではありませんし、又そういう意味でおつしやつたのではないと思いますが、今までの癩患者の減り方を推定すると、今後非常に長くかかる、百年という言葉も言われましたが、それで別にそういう言葉をとらえるわけではありませんが、私は長い間自分自身も厚生行政にたずさわつてつて、癩に対する国の行政は私みずから顧みて甚だ遺憾であつたということを考えるのであります。昨年私はらい予防法につきましていろいろ陳情を聞き、又実際の模様をもなお深く研究して見ましてそう思つたのでありますが、今までの国の行政が予防ということには非常に力が入つておりましたが、治療ということにはどうも力の入り方が足らなかつた。これは病気自体が非常にむずかしいということと、それから予防に非常に力を入れ、治療に非常に力が入らなかつた、どうしたらいいかという方面に非常に力が入らなかつたというような面から、国の行政が予防のみに力が入り過ぎたという感じを自分は持つのであります。そこで今日法を犯さず、罪を犯さないで、偶然の伝染ということで、あれだけ長い間死に至るまで自由を拘束せられなければならん事実に直面しまして、非常に深刻な感じを私は持ちます。これは是非治療の力によつて、医学の力或いは薬学の力によつてどうしてもこれはなおすということにしてあげなければ……、あれを自由にしてあげることができない、私は罪を犯さずしてあれだけ長い間、死に至るまで自由の拘束を受けなければならんという制度は、どうもなかなか納得ができないように自分は思うのです。今日まで長い間日本の癩対策というものが予防には非常に力が入つてつたが、治療に関する力が入つておらなかつた従つて患者になおるという確信を与えることもできないし、世の中に対してもどうしても拘束しなければということで来ておるということは、どうも非常に私どももむしろ苦しく感じられます。そこで先ほども竹中さんも、文化国家であるから長い間拘束しておいてはならんという、全く同感であります。文化国家であろうとなかろうと、非常に自由の大拘束であつて、これを早く何とかしてやりたい。そして強制収容しておる間というものは伝染力のある間、これだけの間は伝染力があるのだ、併しここまで行けば伝染力がないんだから自由にしてあげるのだ、何とかそこまで持つて行かないと、これは私は厚生行政の中で重要なむずかしい問題だと思う。そうして予防に何とか力を入れて頂かなければならんのですが、今年の治療機関の何を見ますと、甚だまだ貧弱であつて誠に残念です。是非一つこれは大臣考えてもらいたいのです。罪を犯さずして一生自由を拘束される一万数千の人があるのだ。これはやはり医学の力、薬学の力、即ち根本においては厚生に関する政治の力によつて、この悲惨なる事実を除去するほうに最善の努力をして頂かなければならん。先ほどの百年という言葉を聞いて胸を打たれる感じがしました。こういう言葉尻をとらえるわけではありませんが、是非一つ長いことではなくして、一刻も早く自由に解放してやりたいという熱意を以て厚生大臣はこの問題に臨んでもらいたい、これを一つお願いいたします。
  81. 草葉隆圓

    国務大臣草葉隆圓君) 誠に私ども衷心緊張して伺う御意見と拝聴するのであります。先刻来だんだん御答弁も申上げましたように一応一万五千の現在の、将来伝染の状態が相当ありましても、とにかく一応は一万五千の人たちを早く収容し、その収容施設におきまして十分な治療をし、又治療の方法を研究し、而もそれが殆んど一生を通じたような病気でございますから、その収容所はもつといろいろな意味から考えた収容所にして行くという意味から、大変大事な、そしてこの病気に罹つている立場の方々にとりましては、誠に言語に絶するお気の毒な状態であると存じます。私は従来から前の皇太后様なり或いは宗教家、或いは識者の方々がこの病気に対しまして大変な力を注ぎ、又殊に本委員会等におきまして、昨年来からいろいろと御検討を頂き、お力添えを頂いております点も同様そこにあると存じます。一方から申しますと、この一方五千の方々を早くなおしてあげて、そうしてこれが一般社会に伝染しないようにするという方法さえとりますと、割に目標ははつきりして来る治療対策が講ぜられるのではないか。今年もほかの仕事に比べますと、昨年の当委員会等の附帯決議等もありまして、相当このほうの費用は増額いたしたつもりでございますけれども、それにいたしましても今申上げましたような、又お話のありましたような病気の性質から考えまして、まだ不十分であると考えます。十分御意見の点を私ども今後尊重いたしまして、この病気にかかつておられる方々の心情等も十分汲みまして、治療並びに施設に力を注いで参りたいと、かように考えます。
  82. 高野一夫

    高野一夫君 私は曽田医務局長に今の廣瀬委員質問に関連して伺いたいのですが、あなたが百年かかるだろうとおつしやつたことは、医務局長として僕は非常に軽率な意見だと思う、過去四十年間の間に三万人が一万五千人に減つた、その比率から見ましても、今後意外に医学や科学の進歩いろいろ考えてみて、プロミンもできた、今後更にもつと優秀なやつもできるかも知れない。医術のほうももつと進歩して来るでしよう。そうするとこの過去四十年の間に三万人が一万五千人に減つたということと、医薬の進歩ということを考え併せたならば、これが五十年で済むかも知れない、或いは三十年で病気がなおるかも知れない。それを無視して百年もかかるであろうということは、医務局長ともあろう人が軽々におつしやることは速記にも残つておるし、国会においてこういうことを世間に発表されることは非常に遺憾だと思う。この点についてどうお考えになるか。医務局長はさようにどうしても百年かかるとお考えなのかどうか、これは私は由々しき言葉だと思う。それを伺つておきたいと思います。
  83. 曾田長宗

    政府委員曾田長宗君) 私も今の速記録をよく調べて頂いて、若しも私の申しましたことが間違つておりましたら、或いは御訂正を願う必要があるかと思いますが、私が申しましたのは癩がなくなるのに百年かかるとは申上げなかつたと思う。今の勢いで行ければ計算ができます。計算ができるということは結局五十年に四分の一、更に五十年経ちますと百年目になりますが、更に四分の一の十六分の一、だから現在一万五千人でありますならばこれは千人になります、というようなことが考えられると思います。私が申しましたのは併しながらこの勢いでなしに、特別な治療というものが起ればもつと急速に減つて行くし、そのことを希望する。それで先がどれくらいに将来なるかということは私はなかなかわからないのでありますが、併し百年も経てば殆んどないに等しいところに参りましよう、百年かかるとは申さないので、これはちよつと詭弁のようですけれども、百年も経てば殆んどないようになるということを申上げましたが、言葉が悪かつたら又改めて御訂正申上げます。
  84. 高野一夫

    高野一夫君 私の受けた印象が違つていたら私が取消しますが、百年も経てばなきに等しいということは、あなたの直感であろうというようにしか、我々は頭がぼんくらだからわかりませんよ。だからその辺のことは家族もいることだし、患者もいることだから、殊にらい予防法案の審議について神経過敏なくらい速記録は全部調べております。だからお互いにこういう質疑応答等については注意すべきではないかと思います。
  85. 湯山勇

    湯山勇君 私も今の点申上げようと思つていたのですが、高野委員のほうからお話がありましたが、過去四十年なら四十年の実績でこうなつたということで今後を推測するということは、やはり工合が悪いのじやないかと思うのです。と申しますのは、若しそういうことの計算ができるとすれば、これは医学の進歩とか、薬学の進歩ということは別としても、何のためにらい予防法をこういうふうに改正したかということが意味がなくなつて来ると思うのです。この法律がこういうふうに適正に実施された場合には、こうという、一つのこの法案を審議する段階においては医務局長のほうの御見解がなくちやならないのではないか。そうすると、この法律を一層適正に実施するように社会がなつて行く一つの方法であるというふうに考えられますので、これはやはり医務局長のおつしやつたのは非常に用心深くおつしやいましたけれども、言葉の響きとしてはやはりそういう響きがあると思いますので、一つ御善処を願いたいと思います。  なお、ついでにと申しまして失礼ですが、大臣にお尋ね申上げたいのですが、昨年九項目に亘る附帯決議廣瀬委員長の下で随分苦心をされてできたのでありますから、今回は今大臣お話にありましたように不十分であるが、他に比べると先ず満足しなければならないような措置がなされたということでございますが、これはなお九項目についてもこれは国会の意思でございますから、次の機会に更に順次それらの点が実現するように大臣としては御努力をして頂けるかどうか、この点はつきり一つお示し頂きたいと思います。
  86. 草葉隆圓

    国務大臣草葉隆圓君) あの九項目の中にも、予算措置の伴わずに行けるものもあつたのでありますし、又実際行政の面に亘り、又収容施設におきましての取扱方の上におきまして、今後なし得る点もありますので、これは十分尊重して参りたいと存じております。
  87. 湯山勇

    湯山勇君 具体的なことを申上げますと、先般四国のほうで患者が収容されまして、何か家族の人が患者に附添つてつた留守に、係の人がやつて来て、近所隣へこれはこうこうでこうだから消毒をするのだというようなことを宣伝しましたというか、警告を与えて消毒したというようなことも、事実かどうか、聞いております。こういうことやそれから癩という病名も随分この前に問題になつたのですが、非常に中国の古い時代の名前であつて、悪い病気である、どちらかと言えば前世の何と言いますか、業によつて起るというような意味を多分に持つている。新らしい観点に立つて科学的に見て行つた場合には、そういう性格のものでないということも大体認められている。今日国民社会一般のこの病気に対する認識を新たにするという手がかりを作る意味からも、名前については変えたらどうだろうかというようなことを前の十六国会のときにも申上げたのですが、こういうことについても今回の修正、改正案では何ら措置されていないわけなので、こういう点は私どもとしては非常に不満に思います。と申しますのは、これはこうこうだからこうだという説明をされれば別ですが、今回の改正に当つてそういうことに関しての納得の行くような御説明がなされておりません。是非こういう問題は本気で誰かにやつて頂かなければできないし、殊に大臣がこれに関心を持つておられて、ときどきあれはどうか、こうかと、こう言つて頂くのと言つて頂かないのとでは、うんと違うと思います。で、これは要望のような形になりましたけれども、是非一つそういう点につきまして、大臣の御善処をお願い申上げたいと思います。
  88. 草葉隆圓

    国務大臣草葉隆圓君) 実は今の名前の点につきましてもいろいろ検討いたして参つたのであります。今後も一層研究して参りたいと存じますが、ただ癩という名を直ちに変えて、世の中に余りわからんような名前にしてしまうのも一つの方法だと思います。ハンゼン氏病という名前だけで適当かというのも一つのこれは問題のようであります。従いまして、こういう点はよほどもう少し検討を十分する余地がありまして、なお私自身も実は就任いたしますとすぐに療養所に参りまして、職員も本当に献身的にやつておりますし、又入つておられる人たちも、先ほど広瀬さんのお話のような誠にお気の毒であります。それで一層今後とにかく治療が十分、いわゆる一応治療ができ上る、なおる、一応のなおるという程度まででも早くいたしながら、そして社会とは一種の隔離したような状態になつておりまするから、生活等におきましても、かれこれ十分検討しながらやつて行かなければならんわけであります。そういう考えでいたしておりまするから、いつでもそれを念頭に置いて今後も参りたいと存じております。従いまして、本委員会で御検討を頂きました先般の附帯事項等につきましても、十分検討して参りたいと思つております。
  89. 竹中勝男

    竹中勝男君 私の質問から医務局長の御返答に対して高野委員或いは広瀬委員からの御希望があつたようですので、その点に関連して私は医務局長に、いわゆるどこまでもやはり科学者として、私も社会科学のはしくれをやつている者ですから、冷静にやはりお答え願つたことを私は認めています。これは傾向率について冷静に言つたらやはり百年かかるということが、私は却つてまじめな返事だつたと私は拝聴しているのです。これを医務局長が、若し政治的に或いは社会的な影響だけを考えて、十五年とか二十年とかで全滅するというような返事をされたら、なお私は国民が不安を感ずるだろうと思うのであります。それに関連して、私は、だからこそ研究所を作つて、それで国家が新らしい癩患者に対しての不安を除くような即ち治療の道を講じ、或いは伝染の防止の方法を研究する。それによつて百年かかるものが或いは五十年になり、或いは三十年になるかも知れないということ。そういう基礎の数字として百年ということは出て来たんだというふうに私は解釈するものです。そういうふうにはつきり希望を持たせるということは、そういう意味において冷静に、やはりここは委員会ですから、科学者として又、良心的な行政官としての返事だつたというふうに解釈して頂きたいと思います。又自由の点については、私は新らしい文化国家という、或いは民主主義国家という上から言つても、その特定の人が、将来の民族の幸福のために、一定の強制を受けるということは、私はこれはあり得ることである。又非常なこれは枠であると考えているものです。併しながら自由を一層拘束されるということについては、成るだけ収容の程度において、或いは収容後の施設の中における自由において、即ち人間としての権利が最高度に収容においてなされ、確保せられるということを我々は考えなくちやならないと思いますので、ただ私はいつでも、私は政治なんかやれる柄ではないのですが、科学的な冷静などこまでもそういう基礎に立つて、こういう問題を扱うということが委員会では殊にふさわしいのだと思います。私の質問から医務局長のお言葉は私は正しいと、そういうふうに感じたのです。一言国民に対して了解を与えるという意味において、そういうふうに解釈して頂きたいと私は思います。ただそれだけを附加えます。
  90. 上條愛一

    委員長上條愛一君) それでは本案に対する本日の質疑はこの程度にいたしまして、次に移りたいと存じますが御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  91. 上條愛一

    委員長上條愛一君) 御異議ないと認めます。   —————————————
  92. 上條愛一

    委員長上條愛一君) それでは消費生活協同組合法の一部を改正する法律案議題といたします。先ず本案に対する衆議院における修正の要点について、衆議院の厚生委員会専門員の川井章知君から説明を聴取することにいたしたいと存じますが御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  93. 上條愛一

    委員長上條愛一君) 御異議ないと認めます。それでは、川井衆議院専門員から御説明を願います。
  94. 川井章知

    ○衆議院専門員(川井章知君) 只今お手許に衆議院の修正部分に関する対照表をお配りいたしておりますが、衆議院でもこの法律に関する論議は相当長く続いたのでございますが、結局条文にいたしますれば九十三条、九十四条、九十五条の三カ条、事項にいたしますれば一項目に集約される次等でございます。それで九十三条を御覧を頂きますと、下の衆議院の修正部分について、「又は組合の会計経理が著しく適正でないと認めるとき」その上のほうには、「組合の運営が著しく不当であると認めるとき」この組合の運営は著しく不当であるときはどういうことであるかという問題について論議が非常に交されたのでございます。例えば会計の紊乱が極めて甚だしい場合というようなことを政府のほうで答弁されたのでございますが、いろいろの場合を考えて見ますると、結局組合の運営が著しく不当である。そういうことは、それがどういう形において現われるかということになりますると、結局において組合の会計経理が著しく適正でない。こういう形に集約されて来るということになりまして、この九十四条にも九十五条にもございます通り、すべて組合の運営が著しく不当であるという場合を、ことごとくその会計経理が著しく適正でないと認める。こういう項目に修正いたした次第でございます。  簡単でございまするが、修正の趣旨だけ説明させて頂きました。
  95. 上條愛一

    委員長上條愛一君) 御質疑を願います……それでは衆議院の修正に対する御質疑はないものと認めて差支えございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  96. 上條愛一

    委員長上條愛一君) 御異議ないと認めます。それでは政府に対する御質疑を願います。
  97. 湯山勇

    湯山勇君 最初お尋ね申上げたいのは名義の使用についてですが、今回の改正案の第三条第三項によつて消費生活協同組合、或いは連合会がその名称を他人に使用させることはできないそういうことをした場合には九十五条によつて必要な措置をとることを命じこれに従わないときは解散を命ずることができるというようになつておりますが、これは考え方によれば当たり前のように見えますけれども考え方によれば非常に組合にとつては重大な問題ではないかと思うのです。現状から見まして……。でこれの実際の運営なり或いは実施に当つてはどういうふうにお考えになつておられるか承わりたいと思います。
  98. 安田巖

    政府委員(安田巖君) 消費生活協同組合が名義を貸しまして、事実上個人経営の商店が消費組合の或いは青果部であるとか、或いは菓子部であるとか、パン部であるとか、こういうふうな名前を持つ例が非常に多いのでありまして、これは今のところでは名称保護規定がございますから、使うほうは若しそれが消費生活協同組合でなければ使うことができないのであります。併しそれを許容したほうは別に何ら罰則の対象にならないわけでございます。で私どもの調べましたところでは、大体もう名義貸し組合として何とかしなければならんという組合が三十五組合ぐらいございます。それから又一番甚だしい例を申しますというと、一つの組合で組合所有の形の店舗が二つで借上げの形の店舗が百五十というようなのがある。一組合平均二十一店舗ぐらいがそういうふうな名義貸しの組合の実態であります。これはいろいろ弊害がございまして脱税方面関係で国税庁関係からもいろいろ注意がございますし、又一方から言いますというと、消費生活協同組合というものはそんなものかということで、正しく運用いたしておりますところの消費生活協同組合の今後のいろいろ運営に支障を来すわけでございます。いろいろ考えました結果、どうしてもやはり名義貸しというものはいけないということをはつきり書きまして、そうしてそれに対しよしては勿論措置命令等もございますけれども、最後には解散ができるぞということを書かなければいかんという結論に達したわけでございます。
  99. 湯山勇

    湯山勇君 お終いのほうからもう一度お尋ねしたいと思うのですが、これはできるぞというその可能性を示したものであつて必ずしも名義貸しをしておるものはすべてこれによつて解散させるというわけではないのでございますか。
  100. 安田巖

    政府委員(安田巖君) 法律の、改正法の九十五条の三項を御覧になりますと「組合が第二条等一項各号に掲げる要件を欠くに至つた場合、」それから「第三条第三項」と書いてございます、これが名義貸しでございます。それからずつとお出でになりますと、そういつた場合には「当該行政庁が第一項の命令を出したにもかかわらず、これに従わないときは、当該行政庁は、その組合の解散を命ずることができる。」ということになります。先ず第一に措置命令を出しまして、それからそれでも聞かない場合に解散を命ずることができるとなつております。  それでなおその次の九十五条の二を御覧になりますと、新らしく設けられました規定でございますけれども、そういう場合にも、組合が実はそうじやないのだという弁明の機会を与えるという条文が新らしく入つております。そこで解散ということは、組合にとりましては死刑のようなものでございますから、できるだけそういう措置はとりたくないのでございますが、ただ私ども地方庁におりましてこういう仕事をしております係りに聞いてみますというと、なかなか指導ということがむずかしいような実例も聞いておりますので、この法律のきめたことに従いまして措置命令を出して、どうしても聞かないという場合には、甚だしいものはやはり解散命令まで行かなければならんのじやないかというふうに考えます。併し尤もこういうふうな解散命令というものが規定にはつきり現われますと、或いはその措置命令もよく聞かれるということはあるかも知らんと思つております。
  101. 湯山勇

    湯山勇君 そこでもう一つ関連してお聞きしておきたいことは、名義を貸すということの定義といいますか、意味ですね。これはいろいろな場合があると思います。今局長指摘になつたように脱税等のためにやるというのもあると思いますけれども、実際その組合の運営のために是非必要である、例えば消費生活協同組合の扱う品物というものは雑多でございますから、その中で特に臭気の強い物、味噌とかたくあんというものはここでやらせるというようにして名義貸しというか、こちらから頼んでやつてもらおう、分店とか出張所とか、そういう場合もあり得るのではないかと思うのですが、そういうこともやはりいけないということになるわけでございますか。
  102. 安田巖

    政府委員(安田巖君) これは具体的な実態について議論をいたしませんというと、名義貸しに当るとか当らないとかいうことは言えないかと思うですけれども、原則的に申しますれば、組合が当該商店なら商店というものに対しての人事権をはつきり持つておりまして、そうして会計経理が一本でされるということが必要なのでありまして、往々に現在組合がやつておりますような指定店とか、或いは委託店舗だとかいうようなものは取締るつもりはないのであります。これはただ組合が、どこへ行つて買えば、自分の組合員でありましたならば、幾らか安く売つてもらえるということになるのでありまして、それは別に取締るつもりはないのであります。併しそうでなくて、生活協同組合の中の有機的な一部だということになつておりながら、実際上は会計においても人事においても一体になつていないというのが実は問題なんでございます。
  103. 湯山勇

    湯山勇君 そうすると、やはりこの今の局長お話は衆議院のほうで修正されましたように、主として会計経理が著しく不当であるということが、まあ全部じやありませんけれども、半分くらいはその理由になつている、こういうふうに大体解釈してよろしゆうございますか。
  104. 安田巖

    政府委員(安田巖君) 現在までの法律でございますというと、行政庁の権限を特に御説明申上げますが、報告の徴収ということがあるのでございます。これは法令処分、定款違反の疑いがあるときだけでございます。法令に基く行政処分と定款に違反した場合、それから今度検査というのがあるのでございます。これもやはり法令及び法令に基く行政処分、定款に反した場合、いずれも千円以下の罰金がつけてあるのでございまして、更にそれからどう処理するかということはできなくなつております。それから措置命令というのがございまして、これも法令に基く行政処分、それから定款違反の事実がある場合、それから事業停止命令というのは右の措置命令に従わないとき、それから解散は委員外利用と、それから消費生活協同組合の目的たる事業として掲げられておること以外の仕事をやりました場合にできるということになつております。今度の規定は先ず第一に名義貸しをしてはいかんというのがございます。現行法にありますところの員外利用の点とそれから事業目的にはずれた場合と、それからもう一つ入りましたのが認可になりましても一年も事業をやらないという場合、それから事業休止を一年以上やるというような場合、これが解散の理由になる。それで今仰せの会計経理が著しく適当でないといいますものは、今度新しく入つたのでございますが、これは実は解散命令の対象になつていないのでありまして、そういうものがありました場合に、措置命令まで行くというので、解散命令は実は落ちておるわけであります。これは首尾一貫いたさないのでありますけれども、いろいろ消費生活協同組合等の意向もございまして、解散だけは実は当初から落してございます。それで私はまあこの程度のことは今までの行政の実績から見ますというと、法令とか定款違反ということはなかなかございませんし、併しながらやはり何とか経理上の問題等につきましてはこちらから意見も言い、調査もし、それから措置命令も出さなければいかんというような問題もたくさんありますから、それだけは一つ今度の改正でやつて行きたいと、こう思つております。
  105. 湯山勇

    湯山勇君 今のお話で聞きましても、この名義貸しの問題というのは相当実際の適用に当つてはむずかしい問題がたくさんあるのじやないかと思うのですが、それらはやはり個々の実情をよく調査した上で、これは措置命令を出すべきだというようなことの御判定をなさると、こういうふうに解釈してよろしうございましようか。
  106. 安田巖

    政府委員(安田巖君) 勿論この法規できめられましたことに具体的に当るかどうかということは、地方庁で判断いたさなければならんわけでございます。名義貸しの場合は、仰せのようになかなか具体的にこういう点が事実があるから名義貸しになるという証明がむずかしいかも知れません。むずかしいかも知れませんけれども、今までの私どもの行政上の経験では、もうそういうのではなくて、はつきりわかつてつてもどうにもならんというのがあるのでございます。でありますからしてそう私はこれをやりましたからといつて、いい組合が迷惑を受けるということはないのであつて、むしろこういうふうなことがどしどし行われるならば、消費生活協同組合に対する信用も高まつて行きますし、又こういうことがありますというと、将来又消費生活協同組合に対しまして立法的に或いは行政的にいろいろと便宜を与えるということがだんだんやりやすくなりやしないかということを実は狙つておるわけでございます。
  107. 湯山勇

    湯山勇君 私も今おつしやつたような点は同感ですけれども、ただこの法律ができることによつて、ともすればこの中小商店と対立的な関係にあるものですから、そういう場合に今後においてこういう法律ができたために、今までなかつたようないろいろな問題が又起つて来ることも懸念されると思うのです。そういうことからお尋ねしたわけですが、今の御説明によつて大体御趣旨よくわかりましたので、次の質問をいたしたいと思いますが、前に一度御提案になつたときには、員外利用の拡大ということをお考えになつてつたかに記憶しておりますが、どうだつたでしようか。局長おわかりでございますか。
  108. 安田巖

    政府委員(安田巖君) この前は別に員外利用の拡大ということは考えておりません。実は現在今湯山委員からお話がありましたように小売商店といろいろ問題がある、と申しますのは、消費生活協同組合が仕事をするために、小売商と対立するという本質的な問題のほかに、員外利用を無制限にさしているんじやないかということが、実は一番大きな点なんでありまして、これは最近で申しますというと会社、工場あたりの職域の組合員がそういう点で問題を起していることを私は二、三聞いておるわけでございます。そこで私どもはこの際員外利用ということを持ち出すことは、いろいろと今回の改正をいたしますような、若干でも生活協同組合に得になるような措置をいたします上におきましては、不利だと思つて、実は出さなかつたのであります。現在はどういうことになつておりますかというと、員外利用を認めますには、当該行政庁の許可を得ることになつておりまして、この許可は例えば衣料なんかのように事柄の性賃上員外利用をさせなければならんとか、或いは炭鉱の所在地のようなところで消費生活協同組合があります場合に、これは生鮮食料品その他のものはやはりその地域になければ、当然許さなければならんと思います。それから薬でありますとか、専売品なんかもやはり許さなければいかん。事の性質上止むを得ない、そういうふうなことを考えておるのであります。
  109. 湯山勇

    湯山勇君 それから次にお尋ねしたいのは、生活協同組合の事務担当者の問題ですが、これは民間の労働組合などが、そういう言い方は悪いんですが、まあ工場とか会社単位にできておるものには大して問題ございませんけれども、公務員の場合ですね。その場合には公務員が生活協同組合の事業に専念するということは認められてないわけなんですが、これは非常に矛盾しておると思います。というのは、公務員関係の生活協同組合の専従職員というのはそれ以外のものから採らなければならない。もとこういう生活協同組合ができないときには、組合の事業としてそういうことはできるというので専従が認められておつたわけですが、認められておつたわけではなくて、組合専従がその業務をしてよかつたわけですが、今日はそれができない。併し消費生活協同組合の仕事というのは、そういう公務員にとつても非常に重要なものであると思いますが、これらの仕事を身分をそのままにしてこれに専従するというような措置はとれないものかどうか。これはひよつとすると国家公務員法か地方公務員法か、そつちの関係かと思いまするけれども、一応お尋ねいたします。
  110. 安田巖

    政府委員(安田巖君) その問題は仰せのように公務員法の問題になりまするので、地方公務員法にしろ国家公務員法にしろ、そこまで認めていいかどうかということは、公務員法の規則によつて考えなければならんと思います。私の今の気持から申しますと、そこまで行くのはちよつと無理じやないかという気がいたしております。現在学校生協というのがございまして、これはやはり地方公務員でございましようが、消費生活協同組合の仕事をするために、勿論俸給をもらつてどうということは私は聞いておりません。或いは教職員組合の方がおやりになつておるかも知れませんけれども、現在の実情及び私の漠然たる気持は以上のようなことでございます。
  111. 湯山勇

    湯山勇君 私は学生協を二年ほどやつた経験を持つておるのですが、まあ私どものところは厚生省からもお調べに見えましたが、問題なかつたのですが、佐賀県あたりでは、教員の身分で給料はもらつていないわけです。休職の形で無給休職ですが、そういう形にしてやつてつたのが問題になつて、結局その人は職を引きましたが、そういう形があります。で、別に身分だけ繋がれば、給料はもらわなくていいわけです。そういう形で丁度これは職員団体のほうでもああいう形で無給休暇が認められておるように、消費生活協同組合にも、こういう組合を結成するということが法によつて認められている以上は、これは当然認められていいじやないかと思うのですが、その点に関しての御見解如何でしようか。
  112. 安田巖

    政府委員(安田巖君) 法によつて認められておりますという点になりますと、まだほかにもあるのじやないかと思うのでありますけれども、とにかく現在は公務員法によりますというと、そういつた職員団体につきましては専従職員を認められておるということで、それをほかにもつと拡げろということになつて来るわけです。まあ私もよく考えてはみますけれども、俸給を出さないにしてもちよつとどうだろうかという私気がいたしております。現在はこれは湯山委員も御承知の通りで、先ほどもちよつと触れましたけれども、団体のそういつたような専従員が手伝つている場合が相当多いように私聞いておりますから、そのほうで実は専従員で俸給をもらつて、そして学校その他に出ていない方が手伝つておる例が多いのじやないかと私は承知いたしております。
  113. 湯山勇

    湯山勇君 これは手伝つている例が多かつたのは二、三年前です。二、三年前か、三、四年前なんで、各府県で問題になりまして、結局全部殆んどそういう形で外しまして退職をして入るか、或いは又専従者のほうからそれから手を引くという形になつたのがむしろ多いと思うのです。それで又実際に職員団体の専従者はこういうことをしてはいけないということに法律でもなつておりますから、常勤でない、非常勤の役員としての業務はとつておると思いますけれども、常勤としてはとつてないと思うのです、実情は……。そこでこれは非常に困るので、例えばその仕事に専念するために職を退けば、もうその組合員たる資格を喪失します、正式には……。ほかから雇つて入れるにしても、正式な組合員の中からは入れるわけにいかないというので、運営と組合の性格が非常に違つておるということになつて、どこも困つているのではないかと思うのですが、それらの点については何か御考慮頂けるかどうか。
  114. 安田巖

    政府委員(安田巖君)  その専従職員を置いて給料を払うかどうかという問題、或いは又給料を払わないけれども、そういう仕事に専従さしたらどうかというような点もあるだろうと思いますが、私はそういうことまで実は深刻に考えたことはなかつたものでございますが、お話もございますので、研究さして頂きたいと思います。
  115. 湯山勇

    湯山勇君 この頂いた資料で見ましても、職域組合では相当組合員の中からそういう役員が置かれております。例えば職域組合では、組合数二百十五の中で常勤が三百九名いるという形になつておりますが、学校組合などでは、これは二十八年三月となつておりますけれども、私立学校等は別として、公立ではこういうことができないわけです。やつておれば又工合が悪いはずですから……。この資料にもおかしいところがあると思いますので、それやこれやを併せてもう一度御検討頂きたいと思います。  それから最後にお尋ねいたしたいことは、この資料で拝見いたしましても、生活協同組合の資金面です、これは非常に窮屈である。殊に今回のような財政投融資、金融引締めというようなことになつて来ますと、従来これを殆んど銀行からの融資に仰いでいた生活協同組合としては、非常にむずかしいことになつて来るというように考えられますが、今年度まあ生活協同組合に対して一千二百五十万円の政府資金の融資ということが考えられておるのですが、これはどういうふうに出される御予定なのか、一応それを御説明頂きたいと思います。
  116. 安田巖

    政府委員(安田巖君) 消費生活協同組合に対する金融の問題は御指摘のように大事なことでありますが、而も系統金融機関がないという状況でございます。それで実はこれができますときは、国民金融公庫等とも連絡をつけてそちらから借りたらいいじやないかというようなお話があつたのでありますけれども、実際問題としてはそれはいろいろむずかしいことでございますので、労働金庫法ができましたときに消費生活協同組合がその中に入るという条項を入れまして、そちらからも貸してくれることにいたしまして、大蔵大臣も非常に好意を示してくれまして、これから貸してくれた額は、この表にありますように相当の額に上つております。なお、これは確かだつたと思いますが、中小企業金融公庫法の中に消費生活協同組合に貸していいということが今度の法律の中に入つております。それから中小企業信用保険法の中にも、生活協同組合が入りまして、金融面で実際上どのくらい助かるかまだわかりませんけれども、新たな途が開かれたことは事実でございます。  なお昨年と本年二千五百万円ずつ国から金を出しておるわけでございますが、これは昨年が二千五百万円、本年が一割引きの二千二百五十万円で、これを県に持つて行きまして、県がそれを同額のものを組むわけででございますが、そうして大体二年据置きで五年償還でございますから、七年間で償却をするという形で参つております。利率は国から県へ参りますのは年三分でございますが、県は最初の二カ年間というものは据置き期間にいたしまして利子を取ります関係上、大体五分近いものを取つておるわけです。これは主として生活協同組合が施設をいたします場合に、それを対象として融資をするという方針をとつております。
  117. 湯山勇

    湯山勇君 今のお話ですが、これは二千二百五十万円というものを各県にばら撒きましても極く少額でございまして、実際私どもの知つておる範囲では、国から来たものはその大部分をその県の県庁職員の生活協同組合に先ず出して、そうして残りの僅かなものが他に行つているというような形が大多数ではないかと思うのです。そういうほどまあ額が少いということを申上げたいわけなんですが、そこで今の労働金庫からの借入れということもありますけれども、これは結局出資総額の十分の一ですか、それを超えてはならないという規定がありますので、実際問題としてそう今日こうやつて拾い上げてみますとかなりたくさんになりますけれども、消費生活協同組合が活溌に本当に役目を果して行くためには随分不自由をすると思いますし、又中小企業金融公庫ですか、それや信用保証協会等から来るものにいたしましても、どうもまだはつきりしない。これと丁度対比的な関係にある農協等に対しては、各県は相当何億という融資をしておるわけでございます。それに比べて如何にもそれはそういう面で虐待視されておりますので、やはり政府のほうから特に今日の金詰りの状態、そういうことをも御考慮に入れてもつとたくさん融資して頂かなければ、なかなか消費生活協同組合の何といいますか、育成強化ということは困難ではないかと思うのですが、この点に関して局長の御所見を伺いたいと思います。
  118. 安田巖

    政府委員(安田巖君) 仰せのごとく二千五百万円、二千二百五十万円で十分とは申されないのでございますが、二十八年度の実績を見ますと、大体御指摘のように県庁の職員の組合に大部分行つておるということはございません。私ども承知いたしておりますのは、熊本と徳島か何かにそういうところに多少そういうものが動いておるようですが、ほかは全部、地域内の職域の組合に参つておりますから、数から申上げますと、問題なく一般の消費生活協同組合に行つておると思います。それで農業協同組合との御比較でございますが、確かにこれは農業協同組合のほうが融資、その他につきましても多額の金が流れておりますし、手厚く私は措置されていると思うのでありますが、これは実態も私は違うと思うのでございます。それでどうしてもまあ農業協同組合というものは、これはもう農村におきましては一つの組織的な下部機構として、生産とか或いは配給その他にタツチしておりますけれども都市中心にいたしますところの消費生活協同組合というものは、なかなか現在は伸びんとしても伸びないような事情がたくさんあるわけでございます。実は私はなせ伸びないかということをよく聞かれるのでありますけれども、はつきりはわかりませんけれども、最近のように小売店が非常に殖えて参りますと、これは日本のそういつた一つの特色だと思うのでありますけれども、小商人が非常に殖えて参りまして、それが取つているマージンというのは非常に低いものでございます。そしてこれは家族労働で以て成立つておりますからして、朝から夜遅くまで働いてサービスをいたしております。そういうのと競争して行かなければならという点、まあなかなかむずかしい問題が実はあると思うのであります。そこで私どもはさつきの融資等につきましても、そういつたものの販売でございますね、そういう面ばかりで消費生活協同組合というものを育てようと思つても、なかなかむずかしいので、やはりこの施設を利用するというような点であるとか、或いは組合員双互にいろいろと会合などを持つて生活改善等に乗出して行くとか、そういうものがやはりあつたほうが私は消費協同組合のあり方としては本当じやないか。そこで今の施設に対する融資にいたしましても、例えば浴場を設けるとか、或いは洗濯場を作るとか、そういうようなものに成るべく貸して行きたいと思うので、商売の資金にすぐに、運転資金或いは施設資金に貸して行くというやり方は、まだ今のところとつていないのであります。それにはやはり償還その他について非常に心配もございますし、非常によい組合というのは少い現状なんであります。で重ねて申しますけれども、今の現在の政府資金の貸付といたしましては、決して或る特殊なところに偏するというようなところはないように気を付けておりますし、なお又どうしても割にしつかりした組合を中心にして貸付けるというようなことが現在の段階でございます。併しだんだん消費組合が建直つて来まして立派になりますならば、仰せのようにどしくどし又資金等も殖えて行くのじやないかと思います。
  119. 湯山勇

    湯山勇君 今の県庁の生活協同組合の問題は、昨年とか一昨年とかじやなくして、ずつと継続してみますと、恐らくどの県庁職員の協同組合も借りていると思います。そういうことを申上げたので、昨年だけがどうこうという意味ではなかつたわけですが、今の局長お話のように、私どもやはり実際にはそういう施設が必要だと思いますし、そういう面でやつて行かなければ、今日のような状態ではむしろ消費生活協同組合は要らない、ダンピング等が相次いで起つた場合には、むしろ要らないということのほうの要素が多くなつて来ると思います。そこで今のように施設等をどんどんやつて行かせるといつたようなことから考えれば、一層政府資金はそういう方面へ向けられるという性格上、更に増額しなければならないのじやないか。それがなければなかなかああいう零細な資金の持ち寄りで、新らしい施設を作るということは困難だと思いますので、この点については更に御検討、御善処を頂きたいと思います。
  120. 上條愛一

    委員長上條愛一君) 他に御発言もございませんようですから、質疑は尽きたものと認めることに御異議はございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり」〕
  121. 上條愛一

    委員長上條愛一君) 御異議ないと認めます。それではこれより討論に入ります。
  122. 湯山勇

    湯山勇君 私は本案に左の附帯決議を附する動議を提出いたします。案文を朗読いたします。  消費生活協同組合法の一部を改正する法律案に関する附帯決議案  わが国消費生活協同組合の実態にかんがみ政府の融資額を増額すると共に、その指導監督に当つては慎重適正な配慮を以て之に当り、特に名義貸による解散権の実施に関しては、真に已むを得ない場合に止め、その育成発展を図ることを要望する。  以上の通りであります。
  123. 大谷瑩潤

    大谷瑩潤君 今の湯山委員の動議に賛成いたします。
  124. 上條愛一

    委員長上條愛一君) 湯山委員の動議は成立いたしました。  他に御意見もないようでございますから、討論は終結したものと認めて差支えございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  125. 上條愛一

    委員長上條愛一君) 御異議ないと認めます。  それではこれより採決に入ります。衆議院送付の案に賛成の方は挙手を願います。    〔賛成者挙手
  126. 上條愛一

    委員長上條愛一君) 全会一致でございます。  次に、湯山委員提出の附帯決議を附することに御賛成の方は挙手を願います。    〔賛成者挙手
  127. 上條愛一

    委員長上條愛一君) 全会一致と認めます。よつて湯山委員提出の通り附帯決議を附することに決定いたしました。  それから委員長が議院に提出する報告書には、多数意見者署名を附することになつておりまするから、本法案を可とせられた方々は、順次御署名を願います。  多数意見者署名  大谷瑩潤 高野一夫  谷口弥三郎横山フク  廣瀬久忠 湯山 勇  竹中勝男
  128. 上條愛一

    委員長上條愛一君) 署名漏れはございませんか。……署名漏れはないと認めます。  なお、本会議における委員長口頭報告については、委員長に御一任願いたいと存じますが御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり」〕
  129. 上條愛一

    委員長上條愛一君) 異議ないものと認めます。   —————————————
  130. 上條愛一

    委員長上條愛一君) 次に、厚生省の定員改正に対するその後の状況を聴取いたしたいと存じます。畠中厚生省事課長の御説明を願います。
  131. 畠中順一

    説明員(畠中順一君) 御説明申上げます。厚生省の現在の定員は、資料を手許にお配りしてあると思いますので御覧願いたいと思います。  厚生省の現在の定員は四万五千八百八十七人でありまして、これに対しまして減員となりますものは、行政整理によるものが二千七百三十八人、それから国立病院の地方移譲に伴うものが三百八十七人でありまして、増員となるものは国立癩療養所の百十一人、それから国立癩研突所が十人及び国立精神療養所の五十人でありまして、差引新らしい定員は四万二千九百三十三人となります。  次に行政整理の二千七百三十八人の内訳を申上げますと、内部部局が百七十六人、附属機関が一千三十一人、地方支分部局が三十人、それから四月一日から引揚援護局となりました元引揚援護庁が一千五百一人でございます。  以上の整理数はおおむね各機関の事務の簡素化、事務運営の能率化等を行うことによつて算定いたしたものでございます。ただ、厚生省といたしましては、附属機関のうち、国立病院及び国立療養所につきましては、医療機関の特殊性に鑑みまして、癩療養所、精神療養所等の特殊療養所につきましては全く整理は行わないことにいたしましたし、又一般の病院、療養所につきましても医師、看護婦等は整理を行わないことにいたしております。又引揚援護局におきましては、その業務が逐次進捗するに従いまして減少することといたしまして、特に四カ年計画で行政整理を行うことといたしております。即ち初年度におきましては百五十人、三十年度が四百八人、三十一年度が四百八十三人、三十二年度は四百五十人整理することにいたしております。  簡単でございますが御説明申上げました。
  132. 上條愛一

    委員長上條愛一君) それでは人事課長の御説明に対して御質疑を願います。
  133. 横山フク

    横山フク君 看護婦の定員でございますけれども、普通病院は四ベツドに一人でございます。療養所は六ベツトに一人の割合になつておるのだと思いますが、そうでございますか。
  134. 畠中順一

    説明員(畠中順一君) そうでございます。
  135. 横山フク

    横山フク君 でございますと、実際において四ベツドに一人、六ベツドに一人の割合に定員法がなつておりますか。
  136. 畠中順一

    説明員(畠中順一君) 患者四人に一人が病院、それから患者六人に一人が療養所ということになつております。
  137. 横山フク

    横山フク君 私の伺うのはそうでないんです。それは四ベツドに一人、六ベツドに一人ということは定員できまつておりますが、総数ベツドに対してその割合で定員ができておるかということです。
  138. 畠中順一

    説明員(畠中順一君) 定 員はそのようになつております。
  139. 横山フク

    横山フク君 私の伺いますところによりますと、ベツドは増設されておるけれども、総体数の定員は殖えていない。従つて、四ベツドに一人、六ベツドに一人という割合になつていないということを聞いておりますが、如何でございますか。
  140. 畠中順一

    説明員(畠中順一君) 四ベツドに一人、六ベツドに一人ということになつておりますが、ただ今度の予算通りました結核の一千床につきましては人員が入つておりません。それ以外につきましてはそういうことになつております。
  141. 横山フク

    横山フク君 今よく伺わなかつたのですが、一千のベツドの増床に対しては人員が入つていないとおつしやつたのですか。
  142. 畠中順一

    説明員(畠中順一君) 二十九年度の予算におきまして予算が修正されまして、一千床ベツドが増床になつておりますが、その分につきましては職員の定員が入つておりません。
  143. 横山フク

    横山フク君 これは非常に大きい問題だと思います。ベツドを殖やして定員を殖やさない。四ベツドに一人、六ベツトに一人という割合がきまつておるが、総数において定員が殖えないということは、事実上においては減員されたとか、超過労働という形になつておるわけであります。而も一千ベツドというのは公式的にきまつた増床でありまして、そのほかに随時臨時に増床されたベツドがあるわけであります。なお四ベツドに一人、六ベツドに一人の内容を調査いたしますというと、看護婦以外の人をその六ベツドに一人の割合の中に当てはめて、そうして六ベツドに一人という割合にみなされておるということを私は実情として聞いておりますが、如何でございますか。
  144. 畠中順一

    説明員(畠中順一君) 先ほど申上げましたように、一千床の二十九年度の増床分については職員が入つておりません。それから看護婦の定員のうちでも看識婦の養成募集が十分でないために、いわゆる代用看護婦というものですか、そういうものを採用しておることは事実のようであります。
  145. 横山フク

    横山フク君 今の御答弁は私には承服できないのです。看護婦の養成が足りないためにほかの者を、雑役婦等を看護婦の定員の中に入れておるという御答弁でありますが、国立療養所の附属の看護婦養成所で養成された人がそこの療養所で採用されないで、地方のほうに職を求めて流れておるのを見ておる実情なんであります。養成所の入が足りないから、だからほかに雑役婦で看護婦の定員に当てはめておるという御答弁は私は実際と離れた御答弁だと思いますが、如何でございますか。
  146. 畠中順一

    説明員(畠中順一君) 国立病院、療養所におきまして、附属看護婦の養成所で看護婦を養成しておりますが、それが民間の病院等に行く者もございますので、国立病院養成所で十分確保するだけの職員を得られない状況でございます。
  147. 横山フク

    横山フク君 それはますますおかしいのございます。国立療養所で採用してくれないからよそへ行かなければならない。而も東京にそういうところがないから、地方に流れて行くのです。これは、私ははつきりした資料を持つておりますので、お目にかけても結構でございますけれども法律で定員法がきまつておりまして、四ベツドに一人、六ベツドに一人になつておる。そうしたら、総数もそういう割合の定員が当然きまるべきだと思います。そうして看護婦が四ベツドに一人、六ベツドに一人であつたら、看護婦の資格者で充てるべきで、雑役婦で充てるべきものではない。それは結局予算の上で他のものを以て代用するといつたようなこと、それは看護の、医療の低下という形にもなるのだと思います。そうしてそのために患者をして苦しませる、病気に苦しませるということであつて、そうして長い期間そういう費用を使うということであつたら、結果においては大きな損失だと思うのであります。この点については是非御再考願いたいと思うのであります。先ほどのような御答弁は事実から離れております。私いつでもそれに対して、実際どこの病院は幾つのベツドであるのに幾ら足りないということ、而もそれが整理されるという、卒業生もそこでは採用されないでよそへ流れて行くといつたような資料は、いつお目にかけても結構だと存じております。よろしく看護婦の問題については御再考を願いたい。そうして今後においてそれだけの定員数は確保するように御努力を願いたいと私は思います。
  148. 湯山勇

    湯山勇君 定員法の問題は非常に問題が多くて、これは資料等の関係も随分あると思うので、本日は定員法については一応これで置いて頂いて、厚生省のほうもずつとそういう具体的調査をして頂く資料も集めて頂いて、ゆつくりこれは本腰を入れてやつて行く問題ではないかと思いますので、そういう扱いにして頂きたいと思います。    (「賛成」と呼ぶ者あり)
  149. 上條愛一

    委員長上條愛一君) それでは定員法の問題は、本日はこの程度にいたしまして次回に譲りたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  150. 上條愛一

    委員長上條愛一君) なお、二十八年度における風水害予算中、厚生省所管事項の実施状況を聴取することにいたしておりましたが、本日は政府当局のほうの都合によりまして当局の出席が困難でありますので、次回に譲りたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  151. 上條愛一

    委員長上條愛一君) それでは本日はこれにて散会いたします。    午後四時二十分散会