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政府委員(高田正巳君) それでは私から、御提案申上げておりますあ
へん法案につきましての
説明を申上げたいと存じます。
この
法律は全条六十条ばかりの相当長い
法律案にな
つておりますが、その
内容、
考え方といたしましては比較的簡単な
法律案でございます。大臣から提案理由を申上げましたように、この
法律案の
内容を大きく分けますと、大体三つの事柄に相成るかと思うのでございます。御
承知のように我が国におきましては、明治十一年に薬用阿片売買並製造規則というものを制定いたしまして以来、けしの栽培を許可いたしまして、あへんの生産をしておりましたのでございます。又それと共に国はあへんについて専売を行
つて参
つたのでございます。この規則は明治三十年に阿片法という
法律に発展いたしまして、同じような建前でけしの栽培、あへんの生産並びにあへんの専売というふうなことが行われて参
つたのでございますが、終戦後昭和二十年になりまして、連合軍総司令部のメモランダムによりまして、けしの栽培は禁止されました。なお国内にございましたあへんは凍結されまして、それで阿片法は事実上死んでしま
つたような恰好に
なつたわけでございます。それで二十三年に至りまして、現在の麻薬取締法の前の麻薬取締法、その麻薬取締法でこれらのあへんの栽培を禁止し、それから国内のあへんはすべて凍結するとゆうふうなことによりまして
法律上の体制を整理した、こういうふうな恰好にな
つて参
つておるわけであります。
終戦後こういうふうな恰好にな
つて今日までに至
つたのでございまして、終戦後国内に凍結されましたあへんを
政府が適当に提供いたしまして、これから製造いたされまする麻薬を作りまして、医療用に供給されて参
つたのでございますが、その国内の保有量とゆうのが非常に減少いたしまして、今後国が輸入をしなければならん、こういうふうなことに相成
つて参りましたここと、それから昨年の六月にニユーヨークで調印いたされましたけしの栽培並びにあへんの生産国際取引卸取引及び使用の制限及び取引に関する議定書、非常に長い名前の条約でございますが、この条約に我が国も調印をいたしまして、本国会にこの承認を求めまする案が、やがて提出される予定にな
つていると聞いておりますが、この条約ができまして、この条約の要請するところに従いまして、この
法律案も提案いたさなければならんというふうなことに相成
つた次第でございます。繰返して申しまするならば、国内の保有のあへんというものがなくなりまして輸入をしなければならん、それに関連いたしましてけしの栽培というものを再開しなければならなく
なつた、それから第二には条約の要請するところに従いまして、国があへんにつきましては専売と申しまするか、さような制度を
法律上確立しなければならん、こういうふうなことに相成りまして、この
法律案を御提案申上げた次第でございます。従いまして第一は、けしの栽培に関する事柄、それから第二は、あへんの収納及び売渡し、輸入、そういうようなことについての国の独占権を
規定した事柄、第三は、この法案に関連いたしましてあへんの取締並びにけしがら等の取締りについての事柄、この三つがこの
法律案の
内容といたしまして大きく分けると、申上げられるところでございます。大体以上のことを前置きといたしまして、簡単に主な条文について御
説明を申上げたいと思います。
第一章の総則の第一条、これは
法律の
目的でございまして、そこに書いてございまするように、「医療及び学術研究の用に供するあへんの供給の適正を図るため、国があへんの輸入、輸出、収納及び売渡を行い、あわせて、けしの栽培並びにあへん及びけしがらの譲渡、譲受、所持等について必要な取締を行うことを
目的とする。」
只今私が申上げましたようなことがそこに
目的として掲げられておるわけでございます。
第二条は、先ほど御
説明申上げましたように、あへんの輸入、輸出、けし耕作者及び甲種研究栽培者から一手買取、それから売渡しの権能は国に専属すると宣言をいたしまして、国の独占権を
規定した条文でございます。
第三条は、これはこの
法律に出て参りまする
言葉の定義をいたしたものでございます。特別に御
説明を加えるほどのこともないと存じます。
第二章に参りまして、第二章は、すべてかくかくのことはしてはならないという取締りのことになりまするが、してはならないことをずつと並べて書いてございます。けしの栽培をすることの禁止、これは栽培者以外の者は栽培してはならないということ、それからあへんの採取の禁止、輸入及び輸出の禁止、譲渡及び譲受の禁止、所持の禁止、吸食の禁止、廃棄の禁止、これだけの事柄がそれぞれしてよいもの以外のものは、することが認められている以外のものはしてはならない。誰もするということが認められない場合におきましては何人もというふうに書いてございます。
第三章は、これはけしの栽培に関する章でございまして、先ず第十一条に御覧を頂きまするように、けしの栽培につきましては、毎年厚生大臣が栽培できる区域及び面積を定めて公告するということに相成
つておりまして、一定の区域、それからそこで何町というふうに厚生大臣が定めまして、その中で栽培をしたい者が願い出る、こういうことに相成るわけであります。
それから第十二条は、栽培を願い出てこれを許可する場合の
規定でございます。
第十三条は、かような者には栽培は許可しないという絶対的な欠格事由でございます。第十四条は、かような各号に該当するような場合においては、許可を与えないことができるという総体的な許可の制限でございます。
第十五条あたりは手続的な
規定でございまするが、第十六条に参りまして、このけしの栽培の許可は、許可の日から一年以内の九月三十日までとするということに許可の有効期間を一年以内に限
つております。この趣旨といたしまするところは、御
承知のように、けしは十月の末から十一月にかけて種子を播きまして、翌年の五月、六参月の候にあへんを採取いたすことに相成るわけでございます。そうして第十一条で御
説明を申上げましたように、毎年、厚生大臣はあへんの需給
計画を一応設定いたしまして、栽培することのできる区域なり、面積なりを定めて公告をするということにな
つておりまするので、従いまして、その許可の有効期間も一年以内に限るということの建前に相成
つておるわけでございます。
第十八条は、許可の変更についての
規定でございまするが、いろいろ栽培者が許可を受けますときには、栽培地、栽培面積又はあへんの乾燥場若しくは保管場というようなものにつきまして、それぞれこれらを具して許可を受けるわけでありまするが、こういうふうなものの変更をしようとするときの
規定でございます。
それからずつと参りまして、第二十六条、許可を受けて耕作をいたしまするけし耕作者は、正当な理由がなければ栽培を廃止したり、又は栽培面積を縮小してはならない、これは許可を受けた以上にやることは勿論禁止されておりまするが、それ以下にやる場合におきましても、勝手に栽培を廃止したり或いは縮小をしたりというふうなことも、これは禁止をいたしておる
規定でございます。ずつと栽培許可に関連いたしましての手続
規定でございます。
第四章に参りまして、重要な
規定が出て参りまするが、第二十九条は、これはけし栽培者がけしを栽培いたしまして、あへんを採取いたしましたあとの、国に納める
関係の
規定が並んでおります。「国は、けし耕作者又は甲種研究栽培者が採取したすべてのあへんを収納する。」全部のものを国が収納をいたす。納付期限は、毎年、けし耕作者又は甲種研究栽培者がその採取したあへんを国に納付すべき期限を定めて厚生大臣が公告するということにな
つております。
それから収納価格でございますが、これは厚生大臣が大蔵大臣と協議したしまして、けしの栽培者の生産事情、あへんの輸入価格、いわば国際価格とも言うべきものでありますが、輸入価格その他の経済事情を考慮いたしまして、毎年九月三十日までにこれを公告をいたすことに相成
つております。と申しまする
意味は、種子を播きまする前に、これから採れたあへんは幾らで国が収納してくれるかということをお
百姓の人たちにわか
つてもらうような建前にな
つておるわけでございます。
それから収納代金でございますが、これは三十二条に書いてございまするように、あへんのモルヒネ含有量を鑑定して、その含有量に応じて収納代金を支払う。御
承知のようにあへんの中に含有されておりまするモルヒネ、まあその他のものもいろいろ含有いたしておりまするが、モルヒネの含有量を鑑定いたしまして、それによ
つて収納代金を支払うということに相成
つております。で、「収納代金の額は、収納の年の前年に
前条第二項の
規定により厚生大臣が公告した収納価格による。」即ち先ほど申上げましたように種を播く前に、厚生大臣が大蔵大臣と協議をして定めて、公告をいたしましたその価格によるということに
規定をされておるわけでございます。
それから同条第四項に参りまして収納代金の一部を鑑定の結果が判明する前に支払うことができるという
規定が載
つております。これは第三十二条の第一項で御
説明申上げましたように、あへんの収納代金はモルヒネの含有量を鑑定して、それに応じて支払うということにな
つておる。従いましてその鑑定に要する期間が若干ございまするので、あとにな
つてお金がお
百姓に渡るというのではお気の毒でありまするので、その一部については前にあへんを収納したときに支払うことができるという
規定にな
つておるわけでございます。
それから第三十三条は
災害補償の
規定でございます。そこに害いてありまするようないろいろな
災害にかか
つて、その
年度に採取したあへんの収納代金の額が
政令の定めるところにより算定するその者の平
年度収納代金の額の十分の七に達しないときは、その平
年度収納代金の額の十分の七とその
年度の収納代金の額との差額の二分の一に相当する
金額の
範囲内で補償金を交付することができる。非常にややこしい
規定でございまするが、たばこ専売法でありまするとか、旧阿片法時代のやり方を勘案いたしまして、かような
程度に定めたわけでございます。
それから三十四条は国が収納をいたるましたあへんは麻薬製造業者又は麻薬研究
施設の設置者に売り渡すものとするということに、売り渡しの対象を定めておるわけでございます。それから三十五条は、国が売り渡しをいたしまする場合の価格の
規定でございます。これは
政令で定めるということに相成
つております。二項に参りまして、売り渡し価格を定める場合に考慮すべき
事項をそこに
規定をいたしておるわけでございます。これらのものを考慮いたしまして、
政令で価格を定めるわけでございます。
第五章管理という章がございますが、これは先ほど申上げましたと思いまするが、現在あへんは麻薬取締法の中で
規定をいたしておりまするのを、このあへん法のほうに抜き出して参りました。それからけしの栽培者につきましては、前にいろいろな規則を加えて取締りをいたしております。従いましてけし栽培者域外の麻薬製造業者でありまするとか、麻薬研究者でありまするとか、いろいろそういうふうな者たちの、あへん並びにけしがらを正当に持ち得たり、或いは譲り受けたりすることのできるような者に対する取締りと申しまするか、規制といいますか、さような
規定を第五章にずつと並べておるわけでございます。従いまして、例えば三十九条、四十条というふうな
規定は現在麻薬取締法にかような
規定がございまして、あへんにつきましてこれらのことが麻薬取締り法で要求をされておるわけでございまするが、麻薬取締法からあへんを抜きまして、こちらに持
つて参りました
関係上、麻薬取締法と同じような趣旨の
規定をここにずつと置いたわけでございます。第五章につきましては、大体さようなことで、特別に御
説明申上げるほどのこともないと思います。
第六章、
監督の章でございますが、第四十二条に許可の
取扱の取消の
規定がございます。けし栽培者がかくかくの場合に該当した場合にはその許可を取消さなければならない、或いはかくかくの場合にはその許可を取消すことができるというふうな
監督規定がここに掲げてあるわけでございます。
四十三条は、その
監督規定を発動いたしまする場合の手続といたしまして聴聞の
規定を置いているわけでございます。
第四十四条、これは報告を徴収いたしましたり或いは
施設に立入りましたり、帳簿その他の物件を検査させましたり、或いは質問をいたしましたり、それから試験のため必要な最小分量を収去させましたり、さようなことのできる
監督の
規定でございます。その第三項にございますように、「前二項の
規定により指定された者は、あへん監視員と称する。」厚生大臣又は
都道府県の知事が、このあへん監視員と称せられる一定の係員に、かような
監督権限を発動させる、こういうことに相成るわけでございます。
それから第四十五条は、これは
ちよつと特殊な
規定でございますが、現在麻薬取締法の中に同じような
規定があるわけでございますが、いわゆる捜査のために自分が麻薬を買
つたりなんかすることのできる
規定でございます。あへんにつきましても先ほど申上げましたように、麻薬取締法から抜けましたので、あへんにつきましてもこの
規定を存置いたしているわけでございます。
それから第七章は雑則でございまして、第四十六条は、手数料を定めております。けし栽培の許可の申請の場合には五百円、けし栽培の許可の変更の場合には三百円、それから栽培許可証の再交付を申請するような場合には百円ということにな
つております。
それから四十七条は、
都道府県知事が行う
事務に要する費用を国が
都道府県に交付するという
規定でございます。
それから第八章に参りまして
罰則でございますが、いろいろ実は
罰則が書いてございまするが、これらは総じて麻薬取締法と同一の
程度の
罰則に相成
つております。
それれから附則に参りまして、施行期日がこれは一応四月一日ということにな
つております。それから経過
規定、これはこの
法律施行の際現にあへん又はけしがらを所持しておる者については五十日間は猶予できるという
規定、それから現在麻薬製造業者、麻薬研究者が麻薬取締法に基いて正当に持
つておりまするあへんにつきましては、この
法律におきましても持てるというふうな経過
規定にいたしております。それからその他そこに書いてございますような若干の経過
規定がございます。
それから七
項目以下は麻薬取締法、それからずつと
法律がたくさん並んでおりまするが、これはこの
法律を
規定いたしまして、かような
関係の
法律に、即ち読上げて参りますると、麻薬取締法、それから麻薬取締法は非常に大きな影響がございます。それから大麻取締法、医師法、歯科医師法、保健婦助産婦看護婦法、それから歯科
衛生士法、獣医師法、毒物及び劇物取締法、出入国管理令の一部改正、
厚生省設置法の一部改正、それから
大蔵省設置法の一部改正等、これらの
法律に文章の上で若干の調整をしなければならんことになりまするので、その調整をいたしました技術的な
規定でございます。
以上で大体の
法律案の骨組を御
説明を申上げたのでございまするが、
説明が不十分でございまして、おわかりにくか
つたと存じますが、御了承頂きまして、御不明の点は御質問頂きましてお答え申上げたいと思います。