○
参考人(
齋藤弘吉君) 私
日本動物愛護協会理事長をしておりますが、この犬の問題につきましてはほかに東京都の
狂犬病予防審議会の
委員を二十四年九月からずつといたしておりまして、この問題には約六ヶ年間取組んでおります。そのほか
日本哺乳動物学会などいろいろ
動物に関した面約十の会の役員をしておりますので、
動物愛護協会の立場だけでなくて、広くこの
狂犬病予防法の今度の改正問題について意見をちよつと申上げたいと思います。
動物愛護協会と申しますと、外国のほうの名前で申しますと、
動物虐待防止会でございまして、ことごとくこういう
狂犬病予防法のようなことに反対する会のように世の中で非常に誤解されておりますが、決して私たちの会はそういうものでございませんで、英、米、日の役員によつて組織されておりますが、その事業を逐つて申上げますと、
狂犬病にむしろ非常に協力しておりまして、何年か前も英国が島国であ
つて日本と非常に環境が似ておるのに、
狂犬病を国内から絶滅いたしまして、最近約三十六年間は一頭も出ておりません。それでその特色を一つ真似たらいいだろうというので、丁度今の会長が前の
英国大使夫人だものですから、
英国政府に交渉してもらいまして、英国内における今日までの
狂犬病に関した法律を全部取り寄せましてその原文と
日本訳とを
厚生省並びに東京都の衛生局に参考までに提出いたしましたことがございました。又現在でも私たちの
協会では病院を持つておりますので、これは
日本で一番設備の完備した、又立派な
家畜病院でありますが、そこで
浮浪犬、飼主のない犬、或いは必要のない犬などを全部収容いたしまして、そうして或る
程度飼つておきまして、欲しい人がありますときにはそれを全部
狂犬予防の注射をうちまして、そうしてその上に雑種は繁殖されては困るものですから、雄は去勢、雌は
避妊手術をいたしました上に欲しい人に上げております。そういう人をしよつ中新聞の広告で欲しい人がないかと募集しております。それから要らない犬は、残りました犬は大体英国がとりました電気による
安楽死、一遍ですぐ死ぬ、或いは
硝酸ストリキニーネの心臓における注射で
安楽死をさしております。これで
安楽死をさしています犬が今
丁度統計を持つておりませんが、年に三千頭以上に上つております。それからなお政府のほうに今交渉しておりますが、英国の
関係省から
英国国内における
狂犬病撲滅についての一番
権威者を
日本に呼びまして、
日本の状態を見せまして、これについてはどういう施設が一番よろしいかという意見を聞いたらどうだろうということを
ロンドンにおりましたこちらの会長に私が照会しましたら、向うに、
ロンドンにおりますうちに向うの
関係省のほうに内意を打診をいたしまして、これは
日本政府からそういう要望があつたときには派遣し得る確信を得て、会長は一昨日の土曜日の晩に
日本に飛行機で飛んで来て現在おります。本日も実は傍聴したいと言つておりましたが、外人が傍聴すると、何か
日本の
内政介入みたいで悪いから行かないと言つておりました。
なお、私たちの会はそういう虐待を防止するとありまするが、
日本の
狂犬病予防の仕事が非常に今日まで研究が不足だということを痛感いたしまして、
協会の
理事会の下に
諮問機関を作りまして、これは
狂犬病の対策の
諮問機関でございまして、
動物をつかまえますのに最も国内で経験のある例えば
上野動物園の園長の古賀君、或いは
飼育主任の林君、これは一昨年アフリカのナイロビに猛獣の捕獲の
見学実習に約一年おりました。或いは
狂犬病予防法のことを警視庁でやつておりましたときから約三十年以上この事業に主任として携わりました
荒木技師、或いは
大澤技師、この方は
日本における
狂犬病の最も長い
経験者でありますが、それらの人々及び私の病院の院長など約十名ばかりでこの
委員会を作りまして、現在どうしたら野犬の捕獲ができるか、どうしたら
狂犬病撲滅ができるかという実際的な具体的な案を持つております。この案によりまして私のほうでいろいろなことを実際に実験してみよう。一部薬品を今実は実験中で、それをつかまえる
方法も近く実験してみるつもりであります。そういう工合で、決して私のほうは
狂犬病予防法案反対の会ではございませんので、その点を前以て御了解願いたいと思います。今度の
改正法案を拝見いたしまして、逐条的にちよつとした意見を申上げますが、この中で、一頁第五条の「
予防員は、犬の
所有者からその犬の引取を求められたときは、これを引き取つて処分しなければならない。この場合において、
予防員は、その犬を引き取るべき場所を指定することができる。」これは捨てるのを捨てさせない一つの大変いいことなんでありまするが、処分をするということがはつきりどういう意味でありますか、旧来の
狂犬病予防法によりますと、殺すことができるということと又
違つた意味で処分という言葉を使つておりますが、それは生きたままで大学とか何とかの実験に供するために犬を売るというようなことを言つておるのじやないかと思いますが、この処分しなければならないということの解釈をもつとはつきりきめて頂いたほうがいいのじやないか、こういうふうに考えております。又同時に引取るべき場所を指定することが、これが非常に疑問なんでございまして、例えて申上げますと東京都でそういう設備のありますのは、三河島の
野犬収容所及び世田谷の
野犬収容所でございますが、いずれも非常に辺鄙な交通の不便な所であります。こういう事態が出ますというと、そういう引取るべき場所、指定された場所というのが割合に交通の便利な所であ
つて而も一定の設備を有しなくちやならない、こういうことであります。現在の
保健所及び
警察署にあります設備と申しますのは、犬の
輸送箱のような小さい真暗な箱だけでありまして、あれでは誰も持つて来るものはないのじやないか。又私たちの
協会でもやつておりますが、外国でも皆やつておりますように、持つて来られました犬や猫は飼つておきまして、五日なり一週間なり、そうしてその中の健康なものは欲しい人に新らしい飼主を世話してやる。いわゆる生きる
可能性を与えてやるということで、
残つて欲しい人のないものは殺すという、生きる
可能性を与えないと、持つて来る人か
日本では非常に少い、持つて行けば殺されるということになりますと非常に少いのじやないか、これは私どもの
協会の病院でもそうなんですが、持つて来てそれを五日なり一週間なり
飼つて新らしい飼主、これを希望する人のないときには殺せますよというと、又持つて帰ろうかとか何とか言つて非常に悩むのです。持つて来るものを殺すということになると持つて来る人が少いのじやないか。そういう生きる途、希望を一部に与えて、そうしてそれを裏書きする一つの犬舎なり何なりを
保健所ごとに作る、こういう設備が要るのじやないか、こう思うのです。
それから次のページの第六条の第六項でございますが、これに「「三日以内」を「一日以内」に改め」、これは現在までの東京都の統計を見てみますと、大体捕まつた犬を受取りに来ますのが三日以内だそうでございます。三日以内と申しますのは、持主のわかつている犬は内容証明便で持主に通知いたしますし、捕まつても持主のわからない犬は区役所で二日間繋留いたしますので、抑留の三日と併せて五日間であります。五日間のうちに三日以内に大体受取りに来るから、あとの二日を除いてもいいじやないかということから一日以内に改めたのでございましようが、これをできれば一日を二日ぐらいにしたほうが安全じやないか、こういうふうに考えております。
その次の第十条、「「その発生地を中心とした半径五キロメートル以内における」を削る。」これは
狂犬病が発生しましたときに従来繋留令、縛つておく或いは口輪をかけるという都道府県知事の発令の権限が、
狂犬病の起つた土地から半径五キロメートル以内でできるという制限があ
つたのでございますが、今度この制限を除いたのでございます。この
改正法案で五キロメートルといいますのは、大体これは英国の法律に合つておるのでございまして、英国の法律で言いますと周囲十五マイル乃至二十マイルと
なつております。で十五マイルと申しますのが半径五キロメートルなんで、二十マイルとなりますと半径が六キロ半ぐらいになります。でほぼ合つているのでございますが、
日本の
狂犬病に罹つた犬がどれくらいその
狂犬病にかかつてから走つているかということを調べて見ましたら、二十年ぐらいに一、二例しかないのでございますが、七里乃至八里近く走つている例があるのでございます。それでまあそういう例があるところを見ますと半径五キロメートルという制限を全部とつてしまうということも無理もないことと思いますが、これが第十八条の二の薬殺する問題と関連いたしますと、殆んどこれは無制限のようになるのでございまして、十条の改正だけは何ともないと思いますが、十八条と連関いたしますとこれは非常な権限になるのじやないか、そういうように考えております。と申しますのは従来は
狂犬病が出た半径五キロメートルまで繋留令が出る、繋留令の出たところの犬は十八条の二の新らしい条文によりますと薬殺することができる、そうしますために五キロメートル以外の土地の犬は殺せなか
つたのでございますが、今度制限を除きましたから、例えて申しますと一つの県の或る端に
狂犬病が発生した。そういうときに県知事の権限ですから、その県全体に繋留令が施行し得るわけなんであります、制限がありませんから……。繋留令が全県に施行された場合に繋留しない犬は薬殺することができる。そうするとずつと反対側の端でもこれは殺されてしまうわけなんです。然るにこの制限の撤廃ということが第十八条の二の薬殺と関連しますと非常な大きな力をもつて来ますので、この点の実施の如何ということが大変問題になるのじやないか、そういうように考えております。第十八条の二は「都道府県は、
狂犬病のまん延の防止及び撲滅のため緊急の必要がある場合において、前条第一項の規定による抑留を行うについて著しく困難な事情があると認めるときは、区域及び期間を定めて、
予防員をして第十条の規定によるけい留の命令が発せられているにかかわらずけい留されていない犬を薬殺させることができる。」で、著しく困難な事情というのがどういうふうに判断いたしますか、今までの私の見ました例で申し上げますと、私どもの眼からは何もそんなに困難じやないと思われる状態なのに毒薬を用いておりました。すでに御承知のように
狂犬予防法においては、第二章の通常措置においては、
狂犬病が出なくても届出とか何とかしない犬は捕えまして抑留しなければならない、第三章ですね、それから第三章におきましては
狂犬病が発生したときは、
狂犬病にかかつた犬とか、かかつた疑いのある犬とか、又はそれらの犬に咬まれた犬については、人命に危険があつて緊急止むを得ないときは殺すことを妨げない、こういうときには殺すことを妨げない、前のときには抑留することができる、捕えて抑留することができるという一つの限定された法律でございましたが、こういう限定された法律がありますにかかわらず実際においては毒薬を散布するのであります。
去年の八月に目黒区清水町一帯におきまして五十個の
硝酸ストリキニーネの毒だんごを散布しまして、犬が一頭猫が二頭死にました。今年の十一月三十日に東京都の真中の日比谷公園におきまして麹町
保健所が二十五箇の
硝酸ストリキニーネの毒だんごを散布して犬八頭、猫一頭、外人の飼つている犬が二頭死んでおります。そういうことは今の予防法では許可していないのです。許可してないのですが、これを又罰する、或いはそういうことは、毒薬撒いちやいけないということも又ないのです。それで東京都の責任庁の局長はこれは法の盲点である。私にこう言いました。それは法律の盲点である、法律の盲点ですからやつても差支えない、こう言つた。私はこれは国会を軽視するものである、我々の代表の代議士諸氏がきめました国会できめました法律でこういう場合はできる、こういう場合は差支えないと限定しているのに、その範囲を逸脱して、そういうはげしいことをしているのは、私は法の限界を逸脱しているのじやないかというような意見を申上げましたが、これはなかなかそのどちらが正しいかということは、公務員法や何かじやわからないということを言われました。これは恐らく真接被害をこうむりました人間が民法上の裁判に訴えまして最後まで行かなくちやわからんじやないか、こう思つております。そういうふうに、それらのときが、必ずしも著しく困難な事情があるとは私は思われないのであります。それから今までそれについての周知徹底せしめる
方法が必ずしも万全を尽していない。例えば日比谷公園なんかは外人の非常に出入りする公園でありますが、それに対しまして
日本語で書いたものを紙に貼つて或いはプラカードを以て示しているだけで、外国語で周知徹底せしめる
方法については手を打つていない。こういうことが私は
日本の東京都というものが国際的な都市として外来者に対して非常に親切を欠く一つの措置である、私はこう申上げたのであります。これは或いは国法によりまして
日本語だけの掲示でいいかも知れませんが、親切を欠くものである、こういうふうな状態でございますので、この法を直ちに活かす或いは実行するとなりますと、いろいろな実際の法文が或る程度結構なものでありましても、実際に行うことについては、いろいろな障害が、或いは
副作用が出て来るのじやないか。で、若しもこれをどうしてもおきめになられるようでございましたら、私はむしろこの「著しく困難な事情」というものを、条項を、薬品使用以外の
方法を以てしては捕獲することが不可能な場合とはつきり言つたほうがいいんじやないか。それから「区域及び期間」これは場所及び日時を限定し、区域というのは一つの区、東京都で言うと一つの区のような地域を指すように解釈されておりますので、場所及び日時を限定しと言つたほうがいいんじやないか。それから「けい留されていない犬を薬殺させることができる。」という言葉を、けい留されていない犬を激烈に作用せぬ薬品を用いて捕獲させることができると、こういうふうに言つたらどうかと、自分の私案でございますが、そういうふうに考えております。従つて最後に、「その近傍の住民に対して、けい留されていない犬を薬殺する旨を周知させなければならない。」というのも、「薬殺」を、薬品を用いて捕獲する旨をと、捕獲という言葉が必ずしも生きたままつかまえるだけでなくて、狩猟法なんかによりますと、これを殺してつかまえるということもすべて捕獲に
なつておりますので、その狩猟法の捕獲の言葉を使いましても、この捕獲の文句はかまわないのじやないかと思うのであります。これは私は法律は余り存じませんが、そういうふうに解釈しております。
それでこの法案が通つたとなれば、そういうように一つの極めて限定されたもので通して頂ければ、まだいいんじやないかと思いますが、それではお前は本当はどういうものを希望しているのかと聞かれましたならば、次の国会まで延ばして頂くほうがいいんじやないか、こう考えております、正直に申上げますと……。その理由は、まだ研究が足りない。第一番に狩猟法ですね、ハンティング・ロー、私も狩猟法による東京都の狩猟監視員をいたしておりますが、例えば狩猟法の第十五条に「鳥獣ヲ捕獲スルコトヲ得ス」という中に、劇薬、毒薬が入つております。鳥獣に劇薬や毒薬を用いて、鳥獣を捕獲することができない。第十五条ですね。そうして施行規則に鳥獣、いわゆる狩獲の対象になりますものには野猫、野犬があるんです。これにつきまして、私は農林省の林野庁のほうの意向を聞きましたら、昭和二十四年でしたか静岡県の県庁のほうから問合せがありまして、林野庁のほうは鉄砲で撃つ狩猟法のほうは、山にいる犬、山にいる猫と、野犬、野猫をそう解釈しておる。街のものを、それを野猫、野犬とは解釈しない。だからこれは差支えないと、自分のほうの狩猟法の範囲には入らないのだというふうに回答をしております。そうしますと、今度逆になりますと、実際に山におります、二十頭、十頭と群をなして山にいるものを、その野犬、野猫は、毒薬、劇薬を用いて捕獲することができなくて街の中のものはこれは捕獲することができるというふうに
なつちやうのです。でこれは狩猟法との関係がどう
なつておりますか、これはもうやはり御研究を要する問題じやないかと思います。
それから次に、これは厚生省管轄に
なつておりますが、厚生省は、現在乳肉衛生課で、お乳と食用の肉をつかさどる課でつかさどつておりますが、課長一名に課員二名ですか、ほかに兼務の方六名ぐらいいらつしやいますが、これが殆んど犬とか
狂犬病とかいうものに余り経験のない方です。又地方自治団体においても、私が
委員をしております東京都におきましても、今まで捕獲について試みましたものは、ただ投繩、或いは投縄に代るべき針金で作つたわなであつて、犬を追駆けてひつかけるだけなんです。これは犬と人間との、捕獲人夫との間が約四尺ぐらいに近付かなくちやこれはつかまらないのです。その長さだけしか繩も針金も、その長さだけしかないものですから、つかまらないのです。この方法だけで捕えるのはとても困難だからと言つて、従来はよく薬品を使用しておつた。これはもつとそのほかの
方法を研究した上で、初めて著しく困難だという場合が出て来るのじやないかと私は思つております。
それで前の警視庁時代はどんなことをやつておつたかと調べてみますというと、現在よりは進んでいるのであります。現在むしろ
狂犬予防のやり方は後退しているのじやないかと思うのでありますが、前には警官が戸別訪問いたしまして、犬のことを調べまして、それから犬の捕獲人夫と共に、警官が附添いまして、これをつかまえておりましたために、現在の
予防員よりは権威があつたということが一つ、それから現在いたしておりませんが、昔は牝犬が出産したときには全部警察に届けさせました。で、届けさせましたから、その牝犬がどこに行つたかという質問が又出るわけでありまして、二月、三月経ちますと、なぜ届出ないかという、届出の対象にな
つたのです。それから警視庁時代には、去勢を無料でいたしておりました。このために街に警視庁から獣医さんを派遣いたしまして、無料で雑種犬の去勢をしておりました。現在こういうことをちつともしておりません。それから又牝犬の
避妊手術が、当時四円五十銭だつたそうですが、その三分の一の一円五十銭を、手術した獣医に警視庁から補助金を出した。それで一円五十銭
所有者が出しまして、残りの一円五十銭は獣医がこれを負担する。いわゆる手術した獣医と警視庁と
所有者と、三人が三分の一づつ出し合つたというような、一つの去勢の奨励
方法を講じております。それから薬品を撒布いたしますにつきましても、その撒布いたしますところの住民と、警官と、
予防員と、三者が協議の上で、どの場所に薬品を置いたらいいかという協議をしておりました。そうしてきまりましたらその略図を書きまして、それを隣組に、旧隣組に全部廻しまして、危険防止をした。又畜犬届の出ています家庭には、はがきを以て、前以てここの場所に薬品を置くということを予告しております。そうして而もその薬品は白い紙の上に載せまして、あとで回収が便利なようにしております。犬は白い紙に載ろうが、黒い紙に載ろうが、そんなことは考えませんから、人間が発見しやすいように、白い紙に載せております。そういうように、警視庁時代は、この一応の手を打つて、そうして薬品を出しておりますが、現在はそういうことは全然ございません。
又これは申上げていいかどうか知りませんが、登録料、犬は税金が取られていますが、そのほかに登録料というのを取られておりまして、これは年に三百円、この登録料はこの
狂犬予防法によりまして、
狂犬予防以外の金に使つちやいけないという金だ
つたのです。然るにこれが本当にそれが実行されているかどうか、私はいろいろな評判を聞きますと、すでに
狂犬病の現在ない県、或いは自治体におきましては、この金は使い途がないものですから、金は出て来るものですから、これをほかに転用してるのじやないかということが出ておりますので、皆さんがお調べになればはつきりするのじやないか。
それからもう一つ細かいことを申上げますと、
狂犬予防の、犬に射ちます注射液でありますが、これが東京都にしましても、自治体にいたしましても、製造の北里研究所その他から直接購入しておりません。私の調べによりますと、必ず中間に商人が入つております。それで商人のネツトと、この原価をずつと上廻るもので、これを入札に付して各官庁が入手しております。これらも自治体の官庁がそういう
製造所と直接
ワクチンの取引をなさればずつともつと安く行くのではないか。事実安く行くのです。それらの都民の負担なり、或いは
狂犬予防費のために出しておる登録料なりがもつと有効に使われるのではないか。これらの点がまだまだ研究の余地がある。そのほか私が見ますのに、去勢とか、避妊とか、そういうことの手術の励行、行使をしなければ野犬は撲滅はできません。
それから監視員制度、これは狩猟法では各県毎に監視員を作りまして、狩猟法違反を注意したり摘発したりしておりますが、私も東京都の監視員をいたしておりまして、丁度警察手帳みたいな入物を渡されまして、ここの中に証明書がつきましてそういう狩猟の違反に一々文句をいつております。こういう制度を役員及び民間の人間、東京都では約二百名であります、これに委託いたしますれば、無届畜犬、注射をしない犬なんかはどんどん注意を与えることができる。こう思うのであります。
それからもう一つは、小学校で子供に犬を飼つたならば必ず届出て注射をせよという知識を普及することであります。なぜならば無届畜犬の九九%は子供が野原から拾つて来る犬であります。これは飼うつもりはないけれども、子供がかわいがるから仕方なしに残飯を与える。それらが皆無届畜犬になる。それらが大きくなると皆野犬に
なつております。これは児童教育に徹底を図ることによつて、殆んど全部の犬が届出ができる、こう思うのであります。
それから先ほど申しましたように、要らない犬を持つて来る人に、不安を与えない設備と組織が必要だ。それから
浮浪犬の収容につきましても、一個所だけでなくて、ほうぼうに収容所を作つてやること、それから犬とか猫とか人間の助力によらなくちや生きることができない家畜、いわゆる野獣、野鳥、これは離せば自由になりますが……、山羊とか、豚とか、牛とば、馬とかありますが、牛、山羊、馬は捨てる人はありませんけれども、人間によらなくちや生活できない家畜を捨てることを禁止する、或いは罰する、こういう一つの制度が必要なんじやないか。こういうふうに考えています。
それから捕獲
方法につきましても、私どもの諮問
委員会でこの間ありましたときには、一案はドツク・キヤツチヤーが行きますと、犬が逃げてしまう。においで逃げてしまう。もつと近付く
方法はないか。一種の媚薬みたいなものでありますが、旧
日本陸軍がアメリカの飛行基地に犬がいて入れなかつたものですから、どうして犬をごまかして入ろうかというときに作つたものがありますので、それらの研究、それから投繩などにしましても、針金では緊つて非常に痛い。柔らかなロープでは長い年月訓練しないとかけきれない。ところが革にしますと一定の強さをしますと、それを割合にかけることができる。それで今まで
日本で使いました繩若しくは針金を革にかえる。これは野獣なんかをつかまえる方法ですが、そういう硬さを持つていれば、非常に便利につかまえられる。或いは箱に餌を置いてつかまえる。檻の前に獣が来ますと自分の体重で扉が自然にあきます、中に入るとしまつて出られない、こういうように一つの檻の方法、これらはすべてアフリカあたりで使つておりまする野獣をつかまえる方法であります。或いは電気であります。或る所に餌を置いて、餌を食べたところをこちらから見ていてスイツチを入れると引つくり返える、二分ぐらいは殆んど起きられませんからそれをつかまえる。これはアフリカあたりで猿をつかまえる方法であります。こういうふうにもつと考えればまだいろいろ出ると思いますが、今までのような方法だけではなく、いろいろな
方法を考えて適当なる施設をすれば、やはりつかまらない
浮浪犬というものはないと思います。私は
動物が好きで今までやつておりますが、とにかく食欲と性欲を持つております
動物が人間の知識に対抗してつかまらないということはない。犬科
動物、犬のような種類の中で一番利好なものは狼ですが、この狼さえつかまる。まして都会の
浮浪犬やなんかが人智に対抗してつかまらない、そんなばかなことはない、もつとつかまえる
方法を研究する余地が十分あるのじやないか。
その次には国内に対する影響でありますが、毒薬を使つてもいいじやないかということが新聞に出て来ましてから、各地方に現在民間でそういうことをやる人間が出て来たのです。ついこの間も今年の三月に
なつてからの例だけをあげますと、三月の二十五日に港区麻布新龍土町においてアメリカのミセス・パロツト、ニユーヨーク・タイムスの支社長の奥さんですが、そのうちの愛犬が庭で遊んでいてぱつたり死んでしまつた。私のほうの病院長が行きまして薬殺の疑いがあるというので解剖をしたら、胃の中に立派に
硝酸ストリキニーネの反応が出たのであります。それから私たちの会の理事をしておりました者もやかましくいつて調べさせましたところ、三月五日、十五日、二十一日、二十二日、二十四日、二十五日の六日間に毎日一頭乃至五頭これはみんな薬殺です。家の中、庭の中に繋いであつた犬まで薬を投下されて殺されております。こういう予防法改正によつて、薬品で殺すことが許可されるならば、あれはうるさいからやつてもいいだろうということで僅かの区域の目黒区中根町、自由ヶ丘、柿ノ木坂町で三月五日、十五、二十一、二十二、二十四、二十五の六日間に合計十六頭が殺されております。そういう社会的な影響もよほど考えなくちやならんものだ。こう思うのであります。
次に、これは撒きます毒薬でありますが、そういう薬を撒きますと、殊に北海道なんかの例では、雪が積ります。これは一晩で積りますから今度は回収することができない。雪がとけた頃に犬が行つて食べてしまう。とつくに制限期間は過ぎておりますから、飼主が安心しているうちに食べてしまう。これは北海道大学の
動物学助教授の市川助教授の飼犬にそういう例があるのであります。それからこれは私確認しておりませんが、何か殺鼠剤を拾いまして、そうして近所の犬がうるさいというので塀越しに投げている。こういうような劇薬、毒薬は非常に危険なことでございまして、殊に日時と場所とを指定して撒くのですから、他人が拾つたり、悪用したりすることは簡単であります。医者でなければ手に入らない毒薬、劇薬も拾えば簡単であります。今までは番人もついておりませんから、簡単である。犯罪予防上も考えなくちやならない問題であるというふうに考えております。
国内だけでなく国外への影響でありますが、大体外国においてはそういうことをしないのであります。なぜかといいますと、
動物の虐待を防止するということは、人間の残虐性を除くというように解釈しているのであります。アメリカなんかの例を見ますと、ヒユーマン・ソサイテーや、ヒユーマン・エデケイシヨン・ソサイテーの事業は
動物が対象なんです。それでものを言えない
動物に残虐なことをしないということが人道の基礎であつて、それが人類の平和の基礎となる。こういう教育を基本にしていますから、無駄な虐待はしないのであります。殊にその会の、そういう全世界の会の連盟がへーグにありまして、これはオランダの主宰に
なつております。
動物の保護連盟、これは現在全世界五十八の団体が参加して、私たちも参加しておりますが、これらが一昨年でしたか、世界共通の
動物保護法という虐待防止の法律……、法律がないのは
日本だけですが、世界共通の
動物保護法の案を寄せて来ました。それによりますというと、毒を与える、或いは与えるためにおいた、或いはおかしめたというようなことに対しては非常な厳罰、最高の厳罰に処しております。それで英国なんかも勿論そうでございまして、英国の法律で許可されておりますのは鼠と二十日鼠、その他小さい
動物の害獣を除くために毒物を置いたときは、ほかの
動物がその場所に立入らないだけの設備をしなくちやならない。その設備というものは事件の弁護の一つの理由になる、このくらいにしか解釈していません。
それから
狂犬病予防をどういうふうにやつているかと申上げますと、英国の一番古い
狂犬病予防法は一八七一年、今から八十年ぐらい前に出ておりますが、大体口輪であります。で、口輪をかけさせるのでありますが、その口輪は私最初反対したのであります。かけますと、夏にはああ言つて犬はいけないものでありますから、犬は汗線がありませんから口を空いて体力を調節いたしますので、口が空かないと非常に困るだろうと、口輪を反対したのでありますが、最近は英国では頭まですつぽり被る、頭部を被う一つの輪がありまして、それでやつておるそうでありますが、これは非常に高いものであ
つて日本では一般には無理だろう、ガス・コイン夫人から実は昨日聞いたばかりなんですが、そう言つておりました。それから英国は大体口輪には住所氏名を書かせる。
日本は昔はあ
つたのが今それがないようですが、警視庁時代は口輪に飼主の住所氏名を書かせたものですが、今はそれがありません。英国はそれをやらせまして、
狂犬病が出たときには十五マイル乃至二十マイルの地区は口輪をかけさせる、こういうやり方で以て畑部絶滅しまして、一八五五年のときには一ヵ年間に
狂犬病発生数が六百七十二であつたものが、一九〇二年から一九一八年まで十六年間というものは、国内に一頭の
狂犬病もないぐらいに
なつた。ところが一九一八年の九月に或る一人の復員の兵隊が一匹の犬を検疫を免れて密輸した。それがたまたま狂犬でありましたために、南部のイングランドとか、南部ウエールス地方に三百十九件
狂犬病が発生した。それが先ほど申上げました口輪で以て三カ年間で一九二一年に絶滅いたしまして、それから今日まで三十三カ年間というものは、
狂犬病は英国じや一頭も出ておりません。ただ出ましたのは、海外から来ました犬は六ヵ月間飛行場又は港で以て抑留されるのでありますが、これは国王の犬でも六ヵ月抑留されます。抑留されますその中で今日まで二十三頭の狂犬が出ております。国外から輸入されましたために、六カ月間の抑留期間に出ましたのが二十三件、それで一九三八年に最後の
狂犬病予防法が出ておりますが、一番最近のものが出ておりますが、それは
狂犬病に侵された犬又は侵されたと疑われる犬或いはそれらに咬まれたと思われる犬猫、これらが、検査官がそういうものだと十分認められた犬は強制的に殺される、屠殺される。それから次は
狂犬病に侵された犬又は侵されたと疑われる犬、或いはそれに咬まれたと思われる犬猫、或いはそれらの犬猫に触れたことのあつたと思われる犬猫は隔離しなくちやならない。ほかと全然別個にしなくちやならないというふうにこの二カ条に
なつております。それしかないのですが、それが随分過去において英国が
狂犬病を最初に撲滅する、いわゆる一八七一年から一九〇二年に至る間には非常なむごいことを毒薬や何かをどんどん撒いたのじやないかという説が
日本で最近唱えられましたが、ガス・コイン夫人に聞きましたら、自分の生れる前のことは知らんけれども、ひよつとしたらそういうときには鉄砲を使つたかも知れない。そういう薬品を使つたことは今まで聞いたことがない、こう言つておりました。それからアメリカなんですが、アメリカの例を申上げますと、アメリカは皆州法ですから国法がないのですが、ニユーヨーク市だけで畜犬が約三十万頭以上、東京都の十四万頭の約倍です。で、そこでは人間を咬んだ犬は衛生局の役人が犬を調査することができる。人の顔面を咬んだ犬、顔を咬んだ犬はニユーヨークの
動物虐待防止会の犬舎に十日間抑留しなくちやならない。こういうふうに
なつておる。
それから非常に注目すべきは町の
浮浪犬というものは全部役人が野犬狩をしませんで、ニューヨークの
動物虐待防止会がやつている。毎日トラックで町中歩きまして
浮浪犬を集めまして、そうして先ほど申上げましたように、健康な犬は新らしい飼主を求めてやり、不健康で飼主の希望のないものは二日間抑留の上に処分をしている。殺しております。で、捨てる必要のない犬が生れましても、捨てる必要がないようにそこへ持つて行けば、或いは廻つて来たトラックに頼めば、ちやんと持つて行つてくれる。而も新らしい飼主に飼わせてくれるというような設備をしております。
狂犬病の最も多いのはアメリカで、シカゴなんですが、これが約畜犬が三十五万頭あります。それで昨年の一九五三年の犬に咬まれた人の数は千五百五十人、最も激しいときは二十四時間内に八十八名咬まれております。それで町でも非常に驚きまして、全アメリカ合衆国の衛生中央研究所の所長のジユームス・スチール博士をわざわざシカゴ市に呼びましてその対策を練
つたのでありますが、
浮浪犬は毎日約百頭つかまえておりまするが、咬まれましたために
狂犬病に
なつた人間が出て来ましたので、非常な問題にな
つたのでございますが、結局これはやはり薬品を、毒薬、劇薬を使わないで処理しております。又テキサス州のフーストンという町においては、二百五十頭の犬を検査して八十三頭の
狂犬病菌を持つている犬を発見しております。これもやはり毒薬を使つておりません。
それでアメリカで一体
狂犬病による死亡者はどのくらいあるかと申しますと、一九五三年度は全アメリカにおいて十三名死んでおります。
日本においては三名ですね。それから過去十二年間のアメリカの平均の死亡者は一カ年間二十六名であります。全米の畜犬数は二千二百万頭、これが
日本と比較いたしまして、
日本は全国の畜犬数が約二百万頭だからアメリカの一割です。それから咬まれて
狂犬病に
なつた犬は、昨年度は
日本全国におきまして百七十八頭、それから狂犬に咬まれました人間が全
日本で三百二十一人、こう
なつております。それで死亡が三人、東京都におきましては昨年度が、狂犬に咬まれた人間が百五十九人、それから
狂犬病でない犬に咬まれた人が六千六百五十四人、アメリカのほうが約十倍畜犬数が多くて、そういう狂犬発生率及び咬まれた人の数が非常に多いにかかわらず、アメリカはやはり人道
協会と
動物虐待防止会などの意見を聞きまして毒殺、薬殺をいたしておりません。シカゴあたりでは放し飼いの犬を非常にやかましく厳禁しておりまして、犬を放している者は見つかり次第に二十五ドル乃至百ドルの罰金に処しております。これは昨年度シカゴがきめました最近の法律であります。
インドはこれ又ひどい所でありますが、南インドのクーノール市の
パストウール研究所が扱いましたのは、一九〇八年から一九四八年、約四十年間に二十六万三千七百三十六名の患者を扱つております。それでそういう
狂犬病にかかつて人を咬んだもの、
動物が又インドですから多くて、三十二種類の
動物を挙げております。犬、ジャッカル、狼、狐、猫、豹、いろいろなものです。それで死亡は、そのために死んだ者は、犬に咬まれて死にましたのが一千四十四名、ジャッカルに咬まれまして死んだ者八十六名、狐に咬まれて死んだ者十名、これは
狂犬病ですが、野犬に咬まれまして死んだ者が三名、猫に咬まれて死にました者が一名、豹に咬まれて死んだ者が三名、山羊、羊に咬まれまして死んだ者が一名、こういうふうに
なつおります。それで一九四八年は犬とジャッカルに咬まれた者のみが死亡しておりまして、又アドラスというインドの州では一九一三年から一九四八年までに死亡した者が一万九千三百八十名、こういうような一つの野犬の被害がありまするが、インドでもそういう薬殺はいたしておりません。又オーストラリアでもいたしておりませんが、最近オーストラリアではそこにおりますデンゴー、これは本当の野犬で猛獣の犬でありますが、これが牧場を襲うので、牧場の保護のために
硝酸ストリキニーネを使いまして、それが昨年度の世界
動物保護連盟の議題に上りまして、これは反対抗議が世界連盟から出まして、恐らく本年からは中止するだろうと思います。
これらが各国の
狂犬予防の現状でありまするが、このたびの一月二十日の日比谷公園の毒殺及びこの
狂犬予防法ができましてからこれらのことが各国に伝えられましたために、私のほうの
協会では英国のロイヤル・ソサイエテイ、これは王室の
動物虐待防止会でエリザベス女王が会長に
なつておりますが、直ちに抗議が来まして、どうしてもそういうことがないように闘つてもらいたい、それからアメリカの北米合衆国の
動物虐待防止会、これからは長い手紙が朝日新聞社長の村山さんに来まして、これが朝日イブニング・ニュースに来ております。それでいろいろな予防のための
方法を建議しております。私が驚きましたのはカリフオルニアのパロアルトという名前の小さい町なんでありますが、そこの
動物福祉協
会理事長のミセス・バルバラ・ダーニールという人から手紙が来まして、自分の田舎の新聞で
日本はこういう法律が下院、衆議院を通つたということを聞いたが、これに対してはどこまでも反対してもらいたいという手紙が来ております。だからそんなカリフォルニアの小さい町の地方新聞にまで
日本のこの
狂犬予防法の改正案というものの話が伝わつている、そしてこれらが皆反対している。最も驚きますことは、三月十三日付のニューヨーク・タイムズの社説にこれが出ております。ニューヨーク・タイムズが
日本のことを社説に取上げて云々するということはこれは殆んどないことだと思いますが、これを取り上げまして、この外国人が
日本のことにそういう容喙をする権限はない、これは国内的な問題であるけれども、こういうことは実にいけないことだから何とかしてもらいたい、最後にこの法案は非人道的な毒殺
方法を
日本の輿論が看過するならば、他の国の人々は決して褒めはしないであろう、参議院は必ずやこの法案を否決し、他の
方法による情けある決定がなされるだろうと、こちらの参議院のことも申しております。衆議院が通つたことを説いておりますし、これがニューヨーク・タイムズがこういうことを書いたということは私は実に驚いたのですが、昨日ですか、ニユーヨーク・タイムズ東京支局長リンゼー・パロツト氏が見えましたが、ニューヨーク・タイムズ社長はこの問題はどこまでも
日本の問題だけれども、自分たちは人道上無視できないからどこまでも闘う、こういうふうに社長は言つておりました。ニューヨーク・タイムズ社長はどこまでも闘う、そして
日本で反対の立場の人々をどこまでも援助する、こういう手紙が私宛、理事長宛に来ておりました。そういうことを言つておりますが、そのほかにさつき申上げました世界連盟、それからアメリカ全部の連盟、それから英国王室の
協会、これらが全部
日本の内閣に出先の大使を通じまして抗議文を出す、こう言つておりますから、恐らくもう着くのじやないかと思います。これらのことが対外的に非常に
日本人が誤解される、残虐な国民だといつて誤解される面が非常に多いのじやないか。これは私たちの会も戦争中に
日本人が捕虜を非常に虐待したということからこの会ができたのでございまして、
日本人の捕虜のインテリを印度で集めまして、いろいろなテストをしました結果、
動物に対しては非常に残酷なことを平気でやる、丁度
日本の子供にしますならば、とんぼをつかまえて揚子を付けたり、蝉の羽を取りましたり、そういうことで
日本人が平生は非常におとなしいが、何かの機会があつたときは、非常に残虐なことをする、これは平和に
なつたら
日本でも外国と同じような
動物虐待防止会を設けて、
日本人にそういう残酷性をなくしてもらわなければ安心してつき合えないというので、それでマツカーサー夫人が会長になられまして、それでこれはお前は
日本人の代表だからというので選挙をされまして、それを何とか残虐性を取つてもらいたい、そういう懸念なしにつき合えるような民族にしてもらいたい、こう言われたのであります。で、この会ができたわけでありますが、そういうように世界の各国の民族が非常にこの大戦によ
つて日本人を残虐性のある民族だと考えているときに、又誤解の種を播くようなことはよほど注意しなければならない。そのほかに方法が全然なくて仕方がないのならともかくも、
方法があるならやらないほうがいいのじやないか。殊に観光にもこれが大きく宣伝されますと非常に差支えるのじやないかというふうに思つております。
そう言いますと、お前は人間が大切か、犬が大切かとすぐ言われますが、犬というものは
動物の中で一番人間とのいき合の歴史が最も古いものでございまして、そうして最も愛情に富んでいて、人間のえらい人が失脚したときには、友だちも、周囲も寄りつく人がなくなるのに、犬だけはその飼主が乞食に
なつても、愛情に変りがない。墓に入つても、犬がお墓の側に付いていて十何年離れなかつたという例があるくらいなのであります。届出ないとか、注射をしないというのは飼つている人間が悪くて、犬自身にはちつとも罪がないのに、
狂犬病予防のために捕えられて殺されるということにつきましては、できるだけその犬自身の苦痛の少くなるような方法をとるのが、これは我々人類の責任じやないか、そういう一つの責任を持つて行つてこそ初めて人類というものが平和に到達できるのであつて、人類の利益のためには如何なる
方法を以てしてもこれを虐殺をしてもかまわんということは、これは最も私は人間の文明の後退じやないか、こう考えております。
それで先ほど申上げましたように、この法案につきましては、これの研究がまだ不十分である、国内の影響も相当悪い影響がある、海外の影響はまだまだ悪いということから、相当期間をおきまして、これを審議しまして、或いは英国から一人の責任のある
権威者を派遣してもらいまして、それらの意見を聞いて撲滅の
方法を考えた上で、この法律の国会をパスして施行してもいいのじやないか、そういうふうに考えております。大変長い間どうも有難うございました。