運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1954-11-16 第19回国会 参議院 厚生委員会 閉会後第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年十一月十六日(火曜日)    午後一時二十四分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     上條 愛一君    理事            常岡 一郎君            竹中 勝男君    委員            中山 壽彦君            榊原  亨君            横山 フク君            高野 一夫君            高良 とみ君            山下 義信君            有馬 英二君   国務大臣    厚 生 大 臣 草葉 隆圓君   事務局側    常任委員会専門    員       多田 仁己君   説明員    厚生省公衆衛生   局環境衛生部長  楠木 正康君   参考人    労働科学研究所 相原 葆見君    社会保障制度審    議会委員    斎藤  斎君    早稲田大学教授 末高  信君    作     家 中山 義秀君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○小委員長中間報告社会保障制度に関する調査の件  (新医療費体系に関する件)   —————————————
  2. 上條愛一

    委員長上條愛一君) 只今から厚生委員会を開会いたします。  国民生活改善に関する小委員長報告をお願いします。
  3. 中山壽彦

    中山壽彦君 去る十一月十二日の本委員会決議に基きまして、国民生活改善に関する小委員会に付託されました乳及び乳製品の成分規格等に関する問題について、今日までの審議経過の概要を御報告申上げます。  小委員会は、問題の緊要性に鑑み、十二日と十五日の二回に亘り調査審議を急ぎました。即ち厚生当局楠本環境衛生部長農林当局大坪畜産局長を招致して、熱心に問題の所在を検討したのでありますが、農林当局としては、今日生牛乳年間生産量は五百万石、昨年の四割増に達し、なお四万石、約四億円の生産過剰を来しておる現状であるから、この際飲用牛乳普及促進のため、高温殺菌一般に適用し、現在の低温殺菌高温殺菌の二本建として、牛乳価格を下げることが必要であるとするのであります。  これに対し、厚生当局としては、低温殺菌を原則とすることによつて、今日例外となつている高温殺菌都市に適用することは無益であつて牛乳生産価格が低下した割合に消費価格が下らない点は、都市高温殺菌を適用しても解決すべき問題ではないとするのであります。  小委員会におきましては、単に過剰牛乳処理という問題ではなく、広く保健衛生立場から国の方針として飲用牛乳処理基準が根本的に定められるべきであると強調されたのであります。厚生当局の見解といたしましては、次の通りであります。即ち、  一、牛乳処理については、従来の  低温殺菌方法による処理基準を原  則とするが、特に指定した地域、主  として農村部においては高温殺菌に  より得ること。  二、学校給食等集団給食の場合に  おいては、小分操作及び表示を省略  し、別に定める施設基準により許可  すること。  三、その他成分規格及び取扱いに関  し、多少の技術的改正を加えるこ  と。  以上中間報告といたします。
  4. 上條愛一

    委員長上條愛一君) 只今の小委員長中間報告は、これを了承することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 上條愛一

    委員長上條愛一君) 御異議ないと認めます。  なお、本件に関し、この際厚生大臣に対する質疑がございましたらお願いいたします。
  6. 高良とみ

    高良とみ君 大臣にお伺いしたいことは、農林委員会に去る土曜日に御出席になりまして、農林委員会衆参両院決議趣旨をできるだけ実行に移す御意思であるような御発表があつたやに承わるのでありますが、その真実がよくわかりませんので、どういうお答えがあつたのか、大変失礼でございますが、もう一遍この委員会にお聞かせ頂きたいと思うのであります。  それから第二にはその内容が、できるだけ御趣旨に副いますとおつしやつたようでありますが、それは只今小委員長から御報告のあつた種類のものをお指しになつたのか、或いは農林委員会要求いたしておりますような、低温殺菌高温殺菌と二本建で行くことが農林委員会決議のようでありますが、それに副いたいという御趣旨であるのかどうか、その点を分けてお聞かせ頂きたいと思います。
  7. 草葉隆圓

    国務大臣草葉隆圓君) 実は農林委員会で、牛乳の問題についての厚生省方針その他について再三御検討を頂いており、最後に私にも出て来て、厚生省方針を説明するようにという御要求でありましたので、参りまして御質問にお答えした次第であります。で、厚生省といたしましては、実は従来低温一本で参つており、その後いろいろな情勢から本年の、詳しくは二月十日、農林委員会で私たしか三月と申上げたのでありますが、調べますと、二月十日に次官名を以て府県知事宛に通知を出しまして、特別の地区農林地区においては高温殺菌知事の指定した地区においてなし得るというのを出したのであります。これは今申上げましたような意味におきまして、農村地帯において、牛乳処理保健衛生上からも考えて、それを一つは容易にするという点でそういう通牒を出したので、今回の農林委員会のこの御要求には細かい技術的な点もたくさんあつたようであります。それらは、その全体につきましては、技術的に検討すべき問題がたくさんあると存じます。ただ従来の一本建の低温殺菌ではなく、高温殺菌も取入れ得る地区というものを指示したわけでありまするから、今後におきましては、その取扱いを徹底せしむるようにすることには私ども大いに協力する。ただ実際上の問題では、二月に通牒を出しましても、現在まで殆んどその実施地区がなかつた、だからこれを何とかもうちつと普及するように厚生省考えるべきじやないかという趣旨であつたと存じます。従つてこれらについては検討して考えるべきものである。ただこの牛乳の問題については、当委員会でわざわざ小委員会を持つて生活改善に関する委員会で十分御検討になつておりますから、その検討の結果はよく私ども承知をして、国会の御意見を十分尊重して参る。従つて私特に「国会」ということを強調して申上げたのでありまするが、それは農林委員会並びに当委員会の御決議と申しますか、御審議によつて生れまする御要求なり或いは御方針というものを私どもは尊重して参る。従来低温殺菌一本でやつておりましたのを、高温殺菌を加えるようにいたしたことにおきましては、すでに今春来その方針をとつておりますから、その点はよく申上げておいたつもりであります。それから二本建ということを私は申上げなんだので、その取扱い技術的な部門、或いは省令等にこれを移します場合の内容等の問題は、これは十分検討してかからなければなりません。私はただ従来の低温一本を高温を加えることにして、それが不徹底であるならば徹底するという意味でございます。
  8. 高良とみ

    高良とみ君 そうしますと、二月九日の次官通牒でお出しになつたものが実行されていないところを、今回更に省令に加えて実行が促進するようになさるという御趣旨のように只今伺つたのです。まあ非常に二月以来今日まで実行ができなかつたのを、もう一遍繰返しておるということ、私ども消費者側として非常にゆつくりな話だと思うのでありますが、それと共に、それならば一、二のことを伺つておきたいのは、主として農村は、特別地区として申請をして許可を得れば、そこは高温殺菌許可するというような御趣旨のようでありますが、現在新しい市がたくさんできて参りまして、それは殆んど農村とのけじめのつかないような市がたくさんできつつございますが、ああいう地区は果して特別地区にわざわざ申請してやつて行くようになるのか。或いはそれはただ都市農村とを分けずに、実情に即して、そこに低温殺菌の組織のない或いは設備のない所にまで低温殺菌をやる御意思はないと、そういうふうに考えて間違いないものでありましようか。申すまでもなく、今緊縮財政のときに、若しお示しの今度の省令改正案のようでありますと、新しくできた都市に、低温殺菌のないところにまでずつと低温殺菌をやれというようなふうにも思えるのでありまして、果してこれが農林委員会によりますところの過剰牛乳処理、或いはできるだけ高温でもいいんではないかという考えとは何だか逆に、却つて低温殺菌の領域をずつと伸ばして行くような御意思のように受取れるので、その点如何でございましようか。
  9. 草葉隆圓

    国務大臣草葉隆圓君) 実は私ども考えはむしろ逆で、従来は低温一本で作つておりますが、市販に供する牛乳低温一本で参つておりましたが、現に、農村と申しますのは、全部の農村という意味でもないわけなんですが、乳牛を飼育しておつて、そうして手つ取り早くその牛乳を供給し得る、そういう場合に、それが都市に来て、そして更にその自分の村に来て或いは学校用の、学童用牛乳等に廻る。これらをいろいろ保健衛生考えてもそう無理のない程度で、そこでできたものを新鮮な牛乳を而も保健衛生上の危険度を減らしてそうして供給するようにすることが低廉であり、或いは保健衛生上もいいというような地区においては、知事が指定した場合においては高温殺菌できる。高温殺菌牛乳をさような方面に使用ができるという口を拡げたというつもりであり、又実情に副い得るという方向で進んだ次第でございます。従つて、相当私どもは実はこれが実施されており、或いは集団学童等の場合にも用いられると考えておりましたが、余り用いられておらない実情のようでございます。従つてこれを用いられるようにするにはどうかという問題になつて、その点に絞つて考えられますから、その場合には、或いは私は通牒趣旨を徹底する方法をとるなり、それがどうしてもいかんというならば、省令の一部改正ということもあるかと思います。これらの点はそういう一つ考え方においては、この二月以来同じことでありますが、取扱いの徹底という点において、もう少し細かく掘り下げる問題があつたと存じまして、その点を申上げたわけであります。
  10. 上條愛一

    委員長上條愛一君) 速記をとめて下さい。    〔速記中止
  11. 上條愛一

    委員長上條愛一君) 速記を始めて下さい。
  12. 楠木正康

    説明員楠木正康君) これはいずれこの決定をいたしますに当りましては、一定基準というようなものによつて区分けをする必要があろうと存じますが、一応現在考えております点は、乳牛のいるということを一つの目標に考えておる次第でございます。
  13. 上條愛一

    委員長上條愛一君) ちよつと速記をとめて下さい。    〔速記中止
  14. 上條愛一

    委員長上條愛一君) それでは速記を始めて。  本件の本日の質疑はこの程度にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  15. 上條愛一

    委員長上條愛一君) 御異議ないと認めます。   —————————————
  16. 上條愛一

    委員長上條愛一君) 次に、社会保障制度に関する調査の一環として、新医療費体系に関する件を議題といたします。本日は本件に関する調査参考に資するため、前日に引続き参考人方々の御出席をお願いいたしております。この機会に委員会を代表しまして一言御挨拶を申上げます。  本日は、参考人の各位には御繁忙のところを特に御出席願いましたのでありますが、当委員会において緊急協議をしなければならない事項がありましたので、大変お待たせいたしまして御迷惑をおかけいたしましたことを深くお詫び申上げます。本日は、国民保健重大関係を持つております医療に関して、厚生省当局国会報告になりましたいわゆる新医療費体系について、それぞれのお立場から御意見を拝聴いたしまして、当委員会調査上の参考にいたしたいと存じておるのであります。厚生省提案資料は、すでにお手許にお送りしておきました通りでございます。どうぞ隔意ない御意見の御発表をお願いいたします。  なお、勝手ながら時間の都合がありまするので、お一人当り十五分間程度にお願いいたしたいと存じますので、何とぞよろしくお願いいたします。  次に、各委員方々にお諮りいたします。時間の都合上各参考人の御意見発表が全部済みましてから御質疑を願いたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  17. 上條愛一

    委員長上條愛一君) 御異議ないと認めます。  それでは、労働科学研究所桐原葆見さんにお願いいたしたいと存じます。
  18. 相原葆見

    参考人相原葆見君) 私は、今日ここに参考人としてお呼び出し頂いたわけでございますが、この方面には全くの実はしろうとでありまして、準備の期間も少くて、内容を詳細に研究をしていないのでございますが、これを一覧いたしました上について申上げまするが、第一に、この新医療費体系のよつてつて作られました資料と、それからその操作に関しまして、これが昭和二十七年度の医療経済に関する調査結果、計算された各種医療行為について実際に要した費用を点数に換算するというその信憑性につきましては、いろいろまだ疑問な点があるかと思うのでございます。勿論その許容の限界は見る人によつて違うのでございますけれども、またこれ以上に信憑性のある資料がほかにないかもしれませんけれども一般にこの給与体系に類するものをきめまする場合の資料といたしましては、なるべくできるだけその利害関係者納得の行く信憑性のある資料の上に立つてきめませんと、それを実施されました場合は、あとがうまく行かないといつたような経験を我々は産業経営体の中の給与体系決定などの場合に経験をしておるのでございます。で、これが延いて従業員の士気を沮喪いたしまする結果、技術進歩も、それから作業上の向上も、そこに望まれないというような結果が往々にして出ることがあるのでございまして、そういうふうなことがこの医療の上にも若し出るということになりまするというと、その被害を被むるものは民衆一般でございまして、この点につきまして、もつとこの資料につきまして、十分な資料があつたほうが将来のためにいいのではないかということを第一に感じておる次第でございます。  それからその次には、新体系への移行によつて国民医療費の増減を来たさないように配慮するという御方針の下にこれがいろいろ案とされているように伺つております。この昭和二十七年度の医療経済に関する結果から換算せられたこの体系で、ずでにその年の最後医療施設実態調査の結果によりましても、各施設共赤字が出ておる。二十八年度は国民医療費がかなり増加しておるというような事実が報告されておるところからみまするというと、赤字はいよいよ増加して経営が困難になるおそれがあるのではないか。そうなると、この医療進歩改良というものも或いは期せられないというような批評があるように存じまするが、この問題は新体系そのものの問題ではなくて、むしろ多分にこの一点単価関係ある問題ではないかと思うのでございます。体系自体とは切離してそれに対する単価をどう物価にスライドさせられなくてはならないかといつたような面から考察され措置されて行けば、以上申上げましたような批評はおのずから、問題はおのずから解消するのではないか、こう存ずる次第でございます。そういうことがこれと同時に提案され、同時にそういう措置が行われまするならば、非常にありがたいことでございまするし、又一般納得も行くのではないか、こう考えるわけでございます。  それから体系の、体系自体につきましては、診療報酬が物の対価として授受されていた今日までの仕組みを物の対価と切離しまして、診療技術に対する報酬評価して支払うように考慮されますることは非常に進歩的なことだと思つております。医療だけでなく、一般に日本では無形の技術能力に対する報酬支払いという習慣が非常にまだ発達しておりませんために、これが技術進歩というもの、一般技術進歩というものに非常にそれを阻んでおるような感を我々は持つのでございます。その意味におきましても、この技術と物の対価と分離せられましたことは一つ進歩であるかと思うのでございまするが、併しその技術能力評価というものはなかなか簡単に行かないものでございます。そのために新体系では差当り診察料薬治料注射料三種について、その他はあとから考えるというようなことになつておると伺いますのでありますが、それでは恐らく人々の納得の行かないものではないかと思うのでございます。この技能評価方式につきましては、最近特に生産事業方面におきまして、いろいろな方式がかなり進歩して参つておるのでございます。それらの方式をこの場合にもいろいろ応用して頂きまして、一応それにつきましての適当と思われる評価方式によつて技能評価されて行く、それを大本にしてこの体系ができ上るということに相なりますれば、非常に仕合せかと思うのでございまするが、その方式につきましては、ここで講義をいたしまする必要もないかと思いまするが、結局は、併しこの方式最後は主観的な評定になるかと思うのでありまするが、その主観的な評定も多数の人が納得をして評定ができるような線にまで、そして而もその誤差をできるだけ少くするように操作をして行くということをやりまして、最後に特に関係者の十分な納得と、そして評定によつてこれがきまるというようなふうになるだけに、そうするに足る操作を経ておりましたならば、この実施が非常に円滑に行くだけでなくて、そのあとで混乱が起らないかと思うのでございます。この点がこの体系におきましては甚だ不足しておるのではないかと、こういう感じを持つものでございます。  それからもう一つ、これまでのこの体系、その他これに関連のありまする問題につきましてのいろいろな方面調査資料なり、或いは御議論などを見まするのに、一番大切な医療を受ける側の、特に罹病率の高い、又病気にかかつておりましても療養をすることの非常に困難を感じておりまする低収入者労働大衆、そういうものがこの医療審議、この新しい体系実施されました結果どういう利益を受けるか、又どういう不利益に立ち至るかという点の資料が実は多少探しましたのですけれども、その調査は殆んどないといつていいかと思うのでございまするが、こういつた点についての資料も整えて頂いた上でこれが実施される、又論議されるということに相なりますることを望む次第でございます。  そんなわけでございまするから、結論といたしまして、この体系そのものは、これを以て現在完全なものとは言いがたいのでございまするが、従いまして、これが実施されましたあかつきに、どういう結果が来るかということについて予想をいたしまする資料もまだとしいわけでございますので、実施になりまするに先だちまして、以上申上げましたような資料の上に立つた検討をもう少しお願いをいたしましたならば、非常に仕合せだと思つておる次第でございます。  以上を以ちまして、私の意見を述べました次第であります。
  19. 上條愛一

    委員長上條愛一君) どうもありがとうございました。  それでは次に、社会保障制度審議会委員であります斎藤斎さんにお願いいたします。
  20. 斎藤斎

    参考人斎藤斎君) 私、今日参考人としてここへお呼び出しになつたのはどういう関係からかということを考えてみますと、それは恐らく昭和二十六年にございました臨時診療報酬調査会、その委員をしておつたという関係からかと存じます。その当時の委員会におきましては、医師会側薬剤師会側も、こういうような新体制を作るべしというようなお考えに一致したわけでございます。その点からみまして、そういう皆様の御意向がここに具体的に現われて来たということは誠に慶賀すべきことだと存じます。併しながら、私がこれに対して何か意見申上げることを望まれますると、私はその当時の委員会におきまして、これをどういうふうにしたらいいか、そういう大体の方向をきめますことにつきましては、私は或る種の意見も述べたのでございまするが、その後具体的の問題につきましては私は関与しておらないのでありまして、今日出て参りましたこれだけの資料につきまして、これがいいか悪いかというような具体的の意見を述べろとおつしやいますると、私にとりましては、これは非常に困難なのでございます。併しながらその委員会の当時におきましては、すでに技術の面と薬の面とはこれは分けるのだということだけは方向がきまつてつたのでございまして、その点につきましては私は賛意を表したいと思います。具体的にこれがいいか悪いかということにつきましては、もう少し資料を頂きませんと、私には何とも御批評申上げることができないのでございまして、折角参考人としてお呼び頂きましたけれども、そういうような次第でございます。
  21. 上條愛一

    委員長上條愛一君) ありがとうございました。  それでは次に早稲田大学教授末高信さんにお願いいたします。
  22. 末高信

    参考人末高信君) 今回発表されました新医療費体系は、医薬分業と不可分のものがあると言われておりますが、これは単に医師薬剤師の間の問題でなく、国民全体の問題でございます。私は社会における各種の経済問題を科学的に探究する一学究といたしまして、以下この問題に関する所見を述べてみたいと思います。  先ず、私はこの新体系を極めて高く評価するものであります。私がこれを高く評価するゆえんの第一点は、それは医薬分業を可能ならしむると共に、国民の負担する総医療費増加に対して一定の枠を与えることができるのではないかという点でございます。この新医療費体系は、従来漠然と薬治料、又はむしろ薬代の名の下に、薬剤というものと治療という技術とが総合せられて支払われておりましたものが、明確に物であるところの薬の代価と、医師としての技術に対する報酬とに分離したものでありまして、このことによつて明年一月を期して行われることになつておりまする医薬分業を円滑にする意味において大いに価値あるものであると思います。何ゆえに我々国民医薬分業実施を望むかと申しますれば、次のごとき理由に要約することができると思います。即ちその第一は、治療調剤に対しておのおの専門家に委せることができるという点であり、第二は、とめどなく増加を続けるところの国民医療費一定の枠の中に処理することがこれによつて可能になるからでございます。  先ず第一の効果について申しますと、診療即ち病人をみて病源を究め、治療方針を確立いたしまして治療実施するというのは、勿論医学の専門家であられる医師任務でございますが、薬の調剤は薬学の専門家である薬剤師任務でなければなりません。これに対し、従来医師調剤を行なつて来たが、大過がなかつたから、これを改めて分離するの要を見ないのではないかと説く者がございますが、これは例えて申しますれば、従来から高等学校において国語の担任教師漢文をも兼担していたのが普通であつたといたしましても、漢文又はシナ文学を専攻した文学士教諭として多数得ることができます今日におきましては、これを分離して別個の教諭にまかせるのが当然でございます。  次に私ども医薬分業に期待する理由の第二は、究極においてこの分業によつてのみ国民の負担する医療費総額国民経済の枠の中におさめることができると信ずるからであります。即ち、国民の負担した総医療費厚生省発表するところによりますと、二十六年度千百七十二億円、二十七年度千五百五十億円、二十八年度には二千九十二億円、二十九年度を今日までの実績を以て推計いたしますれば二千八百億円、又社会保険診療報酬支払い基金支払つた診療報酬は、二十六年度に二百九十二億円、二十七年度に四百三十五億円、二十八年度六百八十五億円、二十九年度の推計をいたしますと九百五十億円に上るだろうと言われております。これらの数字は前年に比しおのおの大体三〇%乃至四〇%の増加を示しております。然るに一方、この医療費を負担するところの国民所得は、二十六年度において四兆五千億円、二十七年度において五兆二千億円、二十八年度には五兆八千億円となつております。おのおの前年度に比較いたしまして一〇%あまりの増加を示しているにすぎないのであります。勿論医学、医療方法進歩と発達はそのこと自体としては人類の最大の喜びであります。それは絶対の価値であるところの生命に直結するからであります。けれどもその結果としての医療費のとめどない増進と、これを負担する国民所得とのアンバランスということになりますと、これは医学、医療方法の発達は無条件にこれを喜んでいるわけには行かないということになります。それは一家の経済の観点に立てば、医療費の負担のために娘を売らなければならないということになつたり、国民経済の観点に立てば、医療費のために治山治水の予算が流れたり、或いは六三制の教育制度がゆがめられたりするようなおそれなしとしないのであります、かくて。国民医療費はこれを国民経済のうちに均衡を得た額として処理しなければならないわけであります。このような医療費国民所得と均衡を得るという枠のうちに処理し、而も必要にして十分なる医療国民の全部に対して確保するためには、或いは社会保険診療において原則的に被保険者に対し一部負担をかけるところのフランスのような方法をとつたり、或いは医療無料の原則に徹しまして、医療国民全部国家管理とするところのイギリスの方法を究極においてとらなければならないかもしれませんが、現在の段階におきましては一応保険医療の適正化、即ち濃厚診療の抑制をしなければならないと思います。そして今日断行すべき保険医療の適正化の方策としましては、保険医の嘱任の厳正化と、定員制度の採用乃至は診療報酬請求書の審査の強化、および保険医の監査の徹底等が考えられるのでありますが、それらと共に、否その前提条件として過剰投薬の根幹を立ち切らなければならないと思います。それがためには薬の投与を切離してこれを薬剤師の仕事とし、且つその処方箋の上に投薬日数を明記することにすればよいと思うのであります。その上、この処方箋そのものが監査のための重要な資料となることを考えますると、分業が濃厚診療を防止することによつて国民医療費のとめ度もない増加を是正することを期待して決して誤りでないと思います。  私がこの新医療費体系を高く評価するゆえんの第二点は、医薬分業を円滑に始めることができるからであります。この新医療費体系は、右に申述べましたように、かねて我々の望んでいた分業を可能ならしむると共に、国民の負担する総医療費国民経済との間に均衡のとれたものとして処理することを可能ならしむるものであるが、それらの効果に加えて更に分業への移行を全く円滑に行うことができると思われる点がその特色をなすものでございます。即ちこの新医療費体系は、現行の体系を基礎として、現実あるがままのものから出発し、且つ国民医療費の増減を来さないように配慮せられておりますが故に、各種医療機関即ち病院、診療所の間に、或いは内科と外科、耳鼻科等の各科の間に不均衡の起らないように計画せられ、而も医薬分業実施を目前に控えてそれに必要な事項にとどめたのでございます。  そして以上に述べたような意図は、この新医療費体系のうちにほぼそのまま達成せられており、病気を癒すための医療技術報酬と、物であるところの薬剤の代金とは分離せられて、合理的な評価となつて表現せられている次第でございます。  右述べたように、この新医療費体系は、医療費医師技術料と薬剤の代価とに分離することに成功し、医薬分業への途を開いたものではございますが、なお二、三不満の点なしとしないのであります。  その第一点は、先ほども御指摘がありましたよう、資料がやや古いのではなかろうかという点でございます。この新医療費体系昭和二十七年三月の医療経済調査を基礎といたしたものでありまして、すでに二年あまりの年月を経過し、現在の状態を必ずしも如実に反映しないおそれがございます。従つてこの古い数字を以て新医療費を算定したことは納得しがたいと一応考えられるのでございます。けれどこれは、このような厖大な調査にはその後の集計、補整には相当の作業を必要とすることは常識でございまして、この程度の時間的距離は私はやむを得なかつた考えるのでございます。而も医薬の実態調査につきましては、常に医師方面の抵抗がございまして協力を得がたい実情からいたしますれば、新医療費体系が二十七年の数字を基礎といたしたことは満足ではないといたしましても、やむを得ないものであつたと言わなければなりません。而も厚生省から国会報告せられたとこによりますると、新宿地区の保険診療の実績をこの新医療費体系で換算して見ましたところ、それらの医師の収支は大体大きな狂いがないことを実証せられているようなことを聞いているわけでございます。  この新体系の不満の第二点は、薬治料注射料等についてのみ技術と原料とを分離いたしまして、処置、手術その他の医療行為全般に及ばなかつた点でございます。で、従つてこの体系薬治料注射料を中心といたしましたために、内科、小児科についてはやや徹底的に医療費技術と物とに分離することができましたが、他の部門につきましては、未解決に残されているところが多いのでございます。何と言つても満足できない点がここにあるかと思いますけれど、この新体系の作成が明年一月の分業を控えての作業であつたことを考えますれば、それがために最も必要な内科、小児科に重点をおき、その他の部門については後日にその研究を持ち越したことは、むしろ賢明な処置であつたかも知れないと思うのであります。  以上、私は新医療費体系に関する所見を略説いたしまして、特にその後段において若干の不満を述べたのでございますが、かくのごときいわば不完全又は未完成の案ではありますが、これを実行に移して、さていいか悪いかという結論について申上げたいと思います。  私は、これは実施に移すべきものであると考えております。如何なる案でも完璧であり、何ら反対のないというものは立て得ないのであります。私をして言わしめれば、厚生省、わけてもその主管局であるところの医務局がよく幾多の困難を克服してこの厖大な資料と取つ組みまして、このような成果を納めた労苦に対しましては、国民の一員としてむしろ感謝の念に堪えないものでありまして、提案の趣旨通り明年一月より実施に移すべきものであると考えるのであります。実施上遭遇するところの難点につきましては、今後の研究に待つて改善しなければならないと思います。  最後に、実施に当つての希望意見一つだけ申添えておきたいと思います。それはこの新医療費体系社会保険としての医療にこそ実質的な効果を持つものであることは論がないところでございますが、この体系実施と表裏の関係にある医薬分業実施地区についてでございます。この分業実施地区につきましては、従来から審議会その他におきまして種々の意見が出ているようでございますが、私の見るところを以ていたしますれば、医師薬剤師、患者等の相互の距離なんというような面倒な基準を設けるよりも、むしろ行政区画そのものでずばり決定したほうがいいのではなかろうかと思います。即ち第一段階といたしましては、市部に先ず実施をして、暫くその成果を見ました上に第二段階といたしましては町部に実施いたしまして、村制を布いているところの地区につきましては、相当の年月の後にこれを見送ることが過当であろうと考える次第でございます。  以上、私の所見を申述べました。
  23. 上條愛一

    委員長上條愛一君) 有難うございました。  それでは次に作家の中山義秀さんにお願いいたします。
  24. 中山義秀

    参考人中山義秀君) 私は御覧の通り大変丈夫でおりますものですから、医薬というものに余り関係がありませんので、医薬分業が言われてから大変日月がたつているように考えております。又進歩というものはなかなか冒険なしには行われないと思つておりますしも天人間の誇りと権威を尊重する上においても、私の自分のささやかな仕事でも尊重して頂きたいように、医師の方も薬剤の方も、やはり責任を皆で分担するような意味でこの法案が規定通り行われんことを祈つております。
  25. 上條愛一

    委員長上條愛一君) 以上で参考人方々の御意見発表は終了いたしましたので、これから御質疑をお願いいたします。
  26. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 桐原さんにちよつとお尋ねしたいのですが、技能の詳価方式について、医師技能の詳価が他の産業技術者の詳価に比べては非常にむずかしいと思われますし、又これまでもこの委員会で相当問題になつたんですが、私どうも医者でもない者がやはり常識的に考えてみましても、いわゆる大家の診療と、そうでないお医者さんの診療とが時間というものによつて計算されておるという、この評価の仕方には相当疑問があると思うのですが、一般の産業技術者においては、どういうようにその評価がなされておるかということですね。ここにも、まあ前において言うのはあれですけれども、榊原博士がおられるようですが、これは心臓の日本における大家です。僕はこの間病気しまして、心臓が工合が悪くなつて、実は榊原先生に見てもらつたんですが、一瞬間なんですね、私に手を出せとつ言て、こうやつてつてさあつと、ああこれはもうこういうことだと一瞬なんですね。そうするとこれは時間に計算できないのですね、(笑声)これは瞬間なんですね。それは今までの経歴とか経験とか、頭脳だとか、まあいろんなものがそこの中にはあるわけなんですね。ほかの医者とは全然違うという、質的にも恐らく違うのじやないかという私は感じを受けるのですね。そういう評価を、労働科学者としてどういうようにこれを評価する方法考えられるかということが一つと、あなたは労働心理学者、労働科学者、心理学の権威者として医薬分業ということが、どういうように国民の意識というか、国民の心理に影響を及ぼして、どういうように受取られておるだろうか。これが非常に不便なものというように受取られるだろうか。お医者さんで診察して、それから処方箋をもらつて、又お薬屋に行かんならんというような印象を与えておる、つまりこれが不便だという印象を与えておるのか。只今技術が医者の診療、診察というものと調剤というものがはつきり区別されたので、このほうが信頼されるのだというふうに国民が心理的に受取つておるか、そういう観察をどういうように受取つておられるか。この二点を桐原さんにお尋ねしたい。
  27. 相原葆見

    参考人相原葆見君) 只今の御質問につきまして、第一の技倆の評定につきまして、技倆というものは量の問題だけでなくて質の問題が非常に大きな要素を占めておるものでございますので、ただその作業時間、所要の作業時間を、例えば単位時間あたりの給与なら給与を、まあ給与というのは一つの格付けがしてあるわけでございますが、その格付けされた給与を単位時間当りの給与にして、そうしてそれにその仕事のでき上る要所時間を掛ける。そうして出て来た値というものは、これは技術評価というよりもむしろ労力の評価になるかと思うのでございまして、従来我々の生産関係の作業についての技術評定いたしまする上にとつております方法は、或る仕事をするまでに要する経験年数であるとか、或いはその熟達のために特殊な習熟を要する、その練習、或いは学習に要する期間なり或いは年限、そういうものも考慮に入れ、それから更に一方ではその技術の難易度と申しますか、その難易度につきましては、結局先ほども申上げましたように、最後の判定は主観的な判定にならざるを得ないのでございまするが、特に医療技術のごときは多分にそういう面があると思うのでございますが、その主観的の評定をただ片寄つた評定に陥らないためにいろいろな操作方式考えまして、そうして誰が見てもここに落ち着くのだというような一つ評定方法でございますか、いろいろな方法がございまするが、それを用いまして一つ評価をするわけであります。そうしてその評価が成るべく、できるだけその誤差がないようにするということは、結局具体的に申上げますれば、最後は多数決ということになるわけでございまするが、そうして誰が見ても適切な評価であるというスケールを一つつて、その上に乗せて一つ評価をやつて行く、こんやなり方をやつておるわけでございます。技術につきましては、非常にこれが生産の技術から見ますと困難かと思いまするけれどもが、併し或る程度までやれば不可能ではない。少くとも現在のこの極く任意な評定よりはよほど確実性のある、又すべての人々に納得され得るようなものが必ずしもできないものではないということを考えておる次等でございます。  それから第二の医薬分業につきましては、私は触れませんでしたが、どう受取られておるかということにつきましては、こんなように考えるのでございますが、これが非常に不便になると感じて受取られておる向きには、医薬分業というものの姿が、ただ医薬分業と言えば、治療はお医者さんのところへ行つて、それからずつと離れた薬局へ又薬をとりに行かなければならんというふうに極く素朴に、簡単に受取られているのじやないかとも思うのでございますが、そういう点は、まだ医薬分業というものの実態はどういうものかということについての啓蒙と申しますか、こういうものも確かに足りない点もあるのじやないかと思うのでございますが、これは先ほど私がちよつと触れましたことにも関連いたしますが、医薬分業のいろんな議論がこれまで主として医薬界といいますか、或いは医界とそれから薬剤界というものの間で主として取交されて来た。そうして大衆との関連においてこの問題についての論議が乏しかつたのであります。これももつとその面からの考察が重要なことだということを考えている次第であります。
  28. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 今の最後の問題を中山先生にもお尋ねしたいのですが、先生は日本の医療制度の進歩の上に思い切つて、やはり、この分業制度の可否の問題があるにしても、進んでやるほうが日本の医療制度の進歩になるというふうにお考えのようでいらつしやいますが、まあ作家として広い御経験の上に立たれて、国民が、或いは大衆がやはりそういうように感じているものでございましようか。医薬分業、新医療費体系というものを、先ほど言われたように宣伝というか、啓蒙、教育というものが非常に不徹底であると思いますけれども、まあ今の段階でこれをやつてみて、国民がこれをどういうように受取り、どういうような感じ方をせるだろうかという作家の観察というか、洞察というものについて御意見を伺いたいと思います。
  29. 中山義秀

    参考人中山義秀君) 作家という立場より庶民として申上げますが、私の妻が肺病で二年ほど患つておりましたが、その際まだ世田谷におりましたが、薬剤師の店に行つて、いい医者を紹介してくれと言いましたところが、神田にある白十字の、これは病院を持たれていたのか或いは勤めておられたのか知りませんが、内科の或る専門医をすすめてくれました。行きましたときに、すぐ処方箋を書いてくれましたが、薬剤師の所に参りまして、どうしてあの医者を推薦してくれたのだと言いましたところが、非常にほかの医者から見ると優れた医者だと言われので、そういう意味申上げたのです。
  30. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 これはやはり、そうするとこれを実施すればだんだん国民がこれに慣れて来て、大衆はやはり医薬分業によつて利益するところが多いというふうにお考えになりますか。
  31. 中山義秀

    参考人中山義秀君) それは私わかりません。
  32. 高野一夫

    ○高野一夫君 桐原さんにちよつとお伺いいたしますが、さつき新医療費体系資料検討する場合は、関係者関係団体が納得するところまで行くことが必要であるというお話がありました。これは誠に尤もだろうと思うのですが、若しもこういうような場合に、関係団体の一つでもいわゆる拒否権を発動して、これに協力をしないというような場合があつたときは、結局一つの団体はいつまでもこれを納得させることができなくなるわけですが、そんなような場合はどうですか。例えばここに五つなら五つの団体がありまして、これの会議の上でいろいろ資料を作り、調査をし、体系なりデータを出すということが最も望ましいことで一番合理的なものが出ると思う。そうすると、この五つの関係団体が全部納得ができればいいわけですが、そのうちの有力な一団体或いは二団体が拒否権を発動してこれに協力しないというような場合には、その関係団体全部を納得させるような資料というものはその団体においてはできないわけです。こういう場合はどういうようなふうにお考えになり、又お取扱いになりますか。
  33. 相原葆見

    参考人相原葆見君) 今私、その関係団体の中にそういうものがあつた場合にはこれは成立しないことになるんじやないかと思いますが、結論としては……。だから問題は、その前に協力の下に資料が整えられる、そうしてその資料というものは何と申しますか、或る種の客観性を持つている。ですから仮にそれをどう説明し、どう解釈するかは団体によつて違いますけれども、そのもの自体はちやんとした妥当性を持つているものであるということであれば落ち着くところに落ち着くのじやないかと思いますが……。
  34. 高野一夫

    ○高野一夫君 もう一つ伺いますが、若しも何らかためにせんとする考え方がありまして、その一部の団体がいわゆる協力しないということで、協力しないことがこの問題を破壊する、破壊させたいという希望の下に、これに協力することを拒否する、こういう意図の下に協力しない、こういうような場合は、新しいデータを出して、改善策を図ろうと思つても、結局永久にできないことになろうと思いますが、これはどうなりますか。
  35. 相原葆見

    参考人相原葆見君) それはその団体の態度の問題だと思いますから、一体何のためにやつておるのかということですね。そういう目的がもう少し高い目的に一致するということになれば、今おつしやつたような状態は起らないのではないかと思いますが、そういう今御仮想になつているような状態が……、例えば国民医療をできるだけ向上させ又普及させるために、現在現にあるような、医療が受けたくても受けられないものが一人もいなくなるためにこうするのだというような目標に向つて、みんなが、その各団体が進むのでありましたならば、御懸念のような事態は何か解決の途があるのではないかと思います。
  36. 高野一夫

    ○高野一夫君 それじやもう一つ、私はこの新医療費体系の問題であなたの御意見を伺つたわけでありますが、この新医療費体系の問題について、只今の、今私がお尋ねしたことを、具体的に一つ申上げてお聞きしなければ、どうも余り抽象論で、御意見を伺いにくいと思いますが、この新医療費体系は、先ほども斎藤さんからもお話がございました通りに、二十六年の二月に、新しい医療費体系というものは、調査会で各関係団体の代表委員皆合意の上で一致して作り上げた。厚生省はその衝に当つて資料を集め、この算定調査にかかつて、この猶予期間の間に納得の行くようにまとめ上げようと努力したけれども、不幸にして関係団体の一番有力な団体たる日本医師会はこれに協力することを拒否した。そういたしますれば、これは一番有力な団体で関係の深い医師会がこの調査にも算定にも協力しなかつたということになりますならば、而もそれは医薬分業実施にこれは最も大きく響いて関係するわけであるから、これを拒否するといつたことになつた場合には、分業に反対し、飽くまでもそういう協力しないということに目的を全うするということになるならば、これは幾ら法律を作りましても、ほかの政府なり各関係団体が如何に協力いたしましても、結局それは成立たない、こういうことになつてしまう。それでは世の中の制度の改善、改革というものはなかなかできないのではないか。それで私はソ連側のだから拒否権と言つたのでありまして、そういうような意味の拒否権を発動する団体があつて、これがうまく百%満足するような資料ができなかつた、こういうようなふうの場合があるとするならば、ある程度の不満な点があつても満足せざるを得ない資料として受け取らざるを得ないのではないか、こうも思うわけでございまして、先ほどの先生のお話は非常に私は感銘深く聞いたものですから、さようにありたいと思うものですから、その点について御意見を伺つておきたいと思います。
  37. 相原葆見

    参考人相原葆見君) 今伺いました経緯につきましては、私よく存じないのでありますけれども、先ほど私抽象的に申上げましたのは、結局この資料もそういう特に最も関係の深い団体が協力して、そうして一緒に作つて、その上で論議されるということになりますれば非常に仕合せだと思うのですが、その点非常に遺憾に存じておる次第であります。
  38. 高野一夫

    ○高野一夫君 末高博士にちよつと御意見を伺いたいのですが、先ほどの先生のお話にもございましたが、私もいつもこの問題を出すのですが、二点伺いたいのですが、一点は、年々医療費が莫大な増額を来たしておる。四百億から五百億、乃至は七百億も一カ年の間に増加しておる。医師に対する支払が増加しておる。これは人口の増加とか、或いは今まで医療を受けなかつた者が医療を受ける、受診率の増加とか、結核対策とかいろいろございましようけれども、何が故に一体こんなに増加しなければならないものであるかということについて、私は医学の進歩や科学の進歩で、だんだんだんだんこういうものは低下するのが当り前だと思うのですが、仮に国民所得増加、人口の増加その他の点がありましても、増加しても、多少の点で増加するならわかるけれども、一カ年に四百億も七百億も殖えるということについては、どうもいろいろな人の意見を伺つても、専門家の御意見を伺つてもどうもやはり納得ができない、不敏にして……。この点について先生の明快なる御意見をお伺いしたいと思います。  それからもう一つは、技術料というものは、当時もうここに斎藤さんも特別委員長としておいでになつたわけですが、当時技術料というものは医師の生計費、診療技術料が医師の生計費に充当するものである。そのほか物の面はすべてその物の代償として消えちまうわけですから、技術料か医師の生計費に充当する。そういたしますと技術料の算定というものは、医師の生計費というものを頭におかずしては考えられないものであると思う。ところが現在においてもそうであるし、先般も日本医師会々長の出席を求めまして、私も質問したのでありますが、一般市民の生計費よりも高度の生計費を医師要求することは当然である、こういうようなふうのお話があつたわけなんです。私はさようなことになつてはならないので、医療が如何に大事な職業であろうとも、大事な職業はいろいろある。一般市民の生計費は、先生のほうがお詳しいわけですが、いろいろ医師薬剤師一般市民も全部入つておるわけです。それよりも何倍か或いは何十%か高い生計費でなければ医師の生活ができないという、こういう考え方が私は今どき許されるものであるか、こういう点について多少の疑問を持つのです。この二点について御意見をお聞きしたいと思います。
  39. 末高信

    参考人末高信君) 第一点の、私が先ほど申上げました医療費のとめどもない増加ということをお取上げになりまして、その原因がどこにあるかという御質問でございますが、原因というものを適確につかむことができますれば、その原因に直ちにメスを加えることができると思いますが、私どもまだ原因を十分つかんでおりませんです。先ほど申しましたように、高野委員からお話がありましたように、人口の増加であるとか、或いは医療方法の向上であるとか、いろいろの原因がからみ合つてこの増加の趨勢を我々に示しておると思うのでありますが、それにいたしましても、毎年前年度に対しまして三〇%から四〇形という増加を示しておるのは一体どういうわけであるかということにつきましては、私は実は十分なる理由をお示しすることができないのであります。いわば一種の濃厚診療、過剰診療というようなものが社会保険診療の中に或る程度混在しているのではないかという虞れを多分に持つものでありますが、然らばそれはどういうところに、どういうことで私がそういうことを申すのかということになりますると、二、三の極めて卑近な具体的な話を申上げることはできますが、一般的にはそれをここで申上げることはちよつと避けたいと思うのであります。ただこのとめどもない増加に対しまして、このまま進んで参りますると、恐らく医療亡国という言葉は非常に乱暴な言葉で、公開の席上などてむやみに使うべき言葉でないかと思うのでありますが、私は医療亡国というような虞れなしとしないと思うのであります。即ち医療費のとめどもない増加が、その国民経済の枠を破り又国民の負担能力の限度を超えて増加して参りますると、それ自体非常な大きな害悪が起るだろうということは、一例を以て申しますれば、仮定的に申しますれば、おやじの病気は治つたけれども、娘を売らなければならないとか、或いは国家的に申しますれば、治山治水の予算は全部削つてしまわなければならない。全部医療費の国庫補助であるとか、負担というほうに、ぶち込んでしまつて、治山治水の費用は全部削らなければならないとか、或いは六・三制の学校制度はもはや維持することはできないということになりますると、体は治つたけれども、さてそれから先、日本の国家はどうするかということが問題になると思うのであります。  そこでやはりこれはどうしても国民経済の枠の中に収めなければならない。で、そういうような事例につきましては、例えば或る事態、制度がいいものであるといたしましても、日本経済、国民の負担能力の枠を破りますると、それが国家的に非常に害悪になるということは、例えば、仮にですね、再軍備或いは軍事費というものの問題が出て参りまして、これは日本の国家を守るためにどうしても軍事費は必要であるというので、これがどのくらいの限度において支出せられるか、殆んど国民能力の限度を超えてそれを支出するということになりますれば、却つて国防にはならないで国を破る原因になる。僕は如何なる問題につきましても、結局国家の枠であるとか国民経済の枠を破つての増大というものは許されないと思うのであります。これはお医者さん方もおられますので申上げる必要もないと思いますが、或る細胞或いは組織が体全体の調和を破りまして増殖いたしますると、癌という病気で死んでしまう。即ち調和を破つてその組織が増大するということは、国民経済上許されないことであると思います。医療につきましても、これを一定の枠の中に収めなければならない。それにつきましては、先ほど申しましたように、或いは医療費の一部被保険者負担或いは患者負担というような形にするか、或いは国民経済のうちにこれを縛るならばイギリスのような医療国営の制度に持つて行くかというようなこころが結局究極の解決策であると思いますが、現在のところでは、やはり先ほど私が冒頭に申上げましたようないろいろな施策を講じなければならない。その有力なものが即ちこの新医療費体系実施にあるという工合に私は考えております。従いまして高野委員からの御質問の第一点については十分お答えをすることができないのでありますが、併しそれに関連する私の感想は以上申上げたようなところにあるのであります。  それから第二点、技術料でありますが、この技術料が先ほど榊原先生に手を握つて頂くと一瞬にしてその心臓の状態が解決してしまう、この技術料はどうかというようなお尋ねが竹中委員から提出せられておりましたが、そういうような技術料というようなことになりますると、評価は殆んどむずかしいのではないか。従つて医師というものがやはり社会的な生活をしている。社会的に存在しているという意味から申しますると、これはやはり医師の生活全体がそれぞれの技術にどう分配せられるかということは問題になると思うのでありますが、併し技術料そのものが一体技術の難易によつて決定すべきか、時間によつて決定すべきか、或いは経験ということによつて決定すべきかということになりますると、あらゆる人を納得するところの基準というものは僕はあり得ないと思うのであります。これはやはりそれぞれの技術に対して与えられた点数の総合がその医師という方々の生活をどの程度に維持することができるかということによつて、やはり技術料というものはきまつて来る。そういたしますると、高野委員が言われましたような、結局一種の生計費をどの程度国民として承認できるかということに落着くと思うのでありますが、昨日も私の読売新聞に数日前に出ました記事につきまして、私のところに厳談に来られたお医者さんがあるので、あります。そのお医者さんの言葉によりますると、私のような考え方であると、今、実は自分はインターンを終えて、或る病院に勤めておる。同時に自宅におきましては、或る程度開業しているのだ。ところが金で以て、月に十万円とか、何万円とかいうような収入があるのだけれども、逐次本格的な開業に対して準備をしているけれども、非常に阻止せられる、遅れる、こういうことに対してお前はどういう責任を負うつもりかというようなお話を承わつたのであります。私は、それはやはりお医者さん方の、いわば一部特権階級的な御意見であると考えてお答えをしたのでありまして、お医者さんの中には、勿論全部が立派な生活をして頂くことは私ども国民として望ましいことであると思うのでありますが、或いは医者が思うような生活ができないという事態が、今日の自由主義の社会において存在する。而も医療国営等の最終の段階に到達いたしますれば、その問題を併せて解決しなければならないと思うのでありますが、今日のところにおきまして、自由経済を原則とする日本の社会において、或るお医者さん方が自分の思うような高さで生活ができないということについては、国民全体として別に責任を負うべきことではないというふうに私はお答えを申上げたのです。高野委員の質問に対しまして、そのものずばりのような回答を申上げることはできませんが、ややそれに関連したところの所感を申上げまして、お答えに代えたいと思います。
  40. 高野一夫

    ○高野一夫君 中山さんにちよつと伺いますが、先ほどあなたは世の中の改善、改革については、或る程度の冒険も必要である。そして医薬分業実施は賛成であるという意味の御意見でございましたが、このことは完璧なる事態が揃うまではすべて何事もやつちやいかんということになるならば、これは古往今来東西の歴史を見ても決して改革、改善ということは行われなかつただろうと思いますので、そういうことから来ての話であろうと思いますが、一方において先ほど処方、調剤のお話の実例も出ましたが、そういうことは患者にとつて国民側にとつて医師が専門の医学を生かし、薬剤師が専門の薬学を生かしてくれて、患者を治す体系を整えること、そして医薬分業ですが、医師薬剤師が協力して患者を治す、こういうような体系国民として望ましい、こういうお考えから、出たさつきの御意見でありましようか。
  41. 中山義秀

    参考人中山義秀君) わからんと申上げたじやないですか。私個人の経験だけを話して、その薬剤師の方に感謝しただけです。例えばまあ医者の立派さを認めます。アビリティ、そういうものを信じますから。まあ試してみたらいいんじやないかと思うわけです。それだけのことです。
  42. 高野一夫

    ○高野一夫君 いや、結構です。
  43. 高良とみ

    高良とみ君 私は末高教授に一点だけお伺いしたいのですが、最近のこの全総医療費と国家財政のことを御心配になつていることはよくわかるんですが、これが近来非常に急激に増加しつつあることについて、それの恩恵を受けている方面もある。殊に平均生命等が伸びて参つておりまするから、それが差当つてはつきり数字で金銭的に現われているのは、まあ国民の勤労意欲も殖えておりましようけれども、先生のお関係の生命保険方面つたと思う。これは長いことないかもしれませんが、ここ、数年来国民保険、生命保険方面ではその利益を十分に均てんして受けているように思われます。そういう点からもこの国庫財政が今日のような状態でありまするときに、特殊な保険制度等も加えまして、フランスその他の国でやつておりまするような支払の機関として保険会社がもう少し、ただ病気にならないための医者の診療等開いておくということ。或いは保険に入るときの診断をするというときのほかに、もう少し積極的な、支払機関の中に、その財的な組織を加えて来るならば、国家財政の負担、まあ国庫から支出するものの負担に幾らかでもゆとりのできる、クッシヨンの役をするのではないかというように考えるのですが、併し戦後の各保険会社は、困難な建設途上でありまするので、今日直ちには行かないにいたしましても、よその国のように、戦敗国でない国と比べることはできませんが、その点は先生はこれについてどう考えておられるか。従つてまあ将来にイギリスのように国営になつて来た場合とは形が違いますけれども、ああいうまあ自由にして而も安全な支払を生命保険が代行して行くということは今日では困難であるか、或いは将来とも保険会社が基金をたくさん持つて来たときには可能であるか、そういうことについて伺いたい。
  44. 末高信

    参考人末高信君) 高良委員の御質問の要点を、実は的確につかむことはできませんでしたが、私が申上げることで、若しも答えになつておりましたならばお聞き取りを願いたい。間違つておりましたらば改めて御質問を願いたいんでありますが、生命保険会社は御承知の通りに、今日では強制加入ではありませんで任意加入でありまして、生命保険に加入しておる人の数というものは、全国民から見ますれば大した数ではない。相当普及はして参りましたが、大した数ではない。そこで生命保険会社の経営は、今更申上げるまでもなく、予定死亡率、即ち死亡表というものの基礎の上に、予定死亡率というものを土台にいたしまして保険料を算定いたしております。で、今日平均生命が漸次延長して参りましたために、従つて生命保険会社の利益と申しますか、剰余金の源泉が、死差益と私どもつておりますが、予定死亡率とそれから現実の死亡率との差額が死差益でありますが、その死差益というものから相当の利潤と申しますか、利益を得ているということは事実でございます。併しこれは生命保険会社に加入している集団の人たちが、お互いにその利益を均てんし合うというので、利益配当であるとか、又は保険料割戻しの方法を以ちましてこれを被保険者に還元してしまつておりまして、国家のほうに差出すということは今のところやつておりません。若しもこれを税金のような形で以て、つまり民間事業における生命保険から利益を、死差益の利益を吸い上げて、これを社会保険のほうの資金に使えばどういうことになるかということが、一つの問題になると思いますが、併し今日生命保険会社に対してそういう扱いをいたしますれば、恐らく生命保険会社は殆んど存立することができないと思います。というのは、今の民間生命保険会社は、実は死差益の点につきましては利益を相当挙げておりますが、経費がべらぼうにかかりまして、立派な大保険会社といえども、一カ年に収入するところの保険料の五割も経費として使つてしまつておるという実情でありまして、経費のほうで計算上非常な赤字が出ているのです。それを埋め合せてどうやらやつているというのが、今日の生命保険の実情でありまするからして、若しも生命保険から死差益の部分を全部国家で吸い上げるということになりますれば、それは今日の生命保険そのものを否定するということになりまして、これは又別個の立場から検討しなければならない問題になつて出ると思うのでありますからして、従いましてこれは私の今の感想では、不可能であると考えております。よほど社会経済の組織を大幅に変更するというような機会でもありますれば別でありまするが、現在の国民経済の姿を大体維持し、多少ともこれは改善はして行かなければなりませんが維持して行く現在の建前では、生命保険会社から相当社会保険のほうに資金を吸い上げるということは、それは即ち生命保険会社の存在を否定するということになつて、不可能であるという工合に考えております。
  45. 高良とみ

    高良とみ君 私がそういう御質問を申上げ理由は、勿論戦敗国でないスイス或いはフランスなどにおきましては、患者が医者の治療を受けますと、その支払つた受取を、薬屋の受取もありますが、保険会社に持つて来て保険会社がこれを代払いしてくれる。そしてスイスなどは特にその方面で発達しておると思いますが、その点でそこによほど富の蓄積がある、そういう結果その仕事ができるのですが、これはまあ日本の全体の貧乏から来ている、そういうあれであるか。又それにはただ生命保険のほかに疾病保険を、軽い意味での疾病保険をかける民間会社もタッチしなければならんであろうと思われるのでありますが、その点について、私ども国庫から支払う保険料というもの、健康保険料の増額は心配しておるわけで、ついてはもう一点として、フランスとかスイスとかいう国の国庫が負担しておるところの国民保険の保険料の率というものが日本などと比べてもつと高いのではないかというような点、こういうような七、五%以内、又そのうちの圧縮された、疾病保険料は低いのじやないかという考えですが如何ですか。お教え下されば結構です。
  46. 末高信

    参考人末高信君) 今高良先生からのお尋ねの点は、はつきり今私資料も持つておりませんし、空ではお答えができません。
  47. 上條愛一

    委員長上條愛一君) それでは参考人に対する質疑はこの程度にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  48. 上條愛一

    委員長上條愛一君) 御異議ないと認めます。  参考人方々には長時間に亘りまして貴重な御意見発表を頂きまして誠に有難うございました。意のあるところは当委員会におきまして十分参考にして新医療費体系調査のための資料にいたしたいと思います。お忙しいところおいでを願いまして厚くお礼を申上げます。  本日の委員会はこれにて散会いたします。    午後三時五分散会