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1954-11-15 第19回国会 参議院 厚生委員会 閉会後第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年十一月十五日(月曜日)    午後一時二十七分開会   —————————————   委員の異動 本日委員紅露みつ君辞任につき、その 補欠として有馬英二君を議長において 指名した。 ————————————————  出席者は左の通り。    委員長     上條 愛一君    理事      常岡 一郎君            竹中 勝男君    委員            中山 壽彦君            榊原  亨君            高野 一夫君            横山 フク君            高良 とみ君            藤原 道子君            山下 義信君            有馬 英二君   事務局側    常任委員会専門    員       多田 仁己君   参考人    一橋大学教授  高橋長太郎君    日本歯科医師会    常務理事    中村  嘉君    日本医師会副会    長       水越 玄郷君    日本薬剤師協会    副会長     野澤 清人君    医師、画家   宮田 重雄君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○社員保障制度に関する調査の件  (新医療費体系に関する件)   —————————————
  2. 上條愛一

    委員長上條愛一君) 只今から厚田委員会を開会いたします。  社会保障制度に関する調査の一環として新医療費体系に関する件を議題といたします。本日は本件に関する調査参考に資するため、参考人方々に御出席をお願いいたしております。  この機会に委員会を代表いたしまして一言御挨拶を申上げます。  参考人方々には御繁忙のところを特に御出席下さいまして誠に有難うございました。本日は国民保健重大関係を持つております医療に関して、厚生省当局から国会に報告になりましたいわゆる新医療費体系について、それぞれの立場から御意見を拝聴いたしまして、当委員会調査上の参考にいたしたいと存じております。厚生省提出資料は、すでにお手許にお送りしておきました通りでございます。どうぞ隔意のない御意見発表をお願いいたします。  なお勝手ながら、時間の都合上、お一人当り十五分間程度にお願いいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。  次に、各委員方々にお諮りいたします。時間の都合上、各参考人意見発表が全部済んでから御質疑願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 上條愛一

    委員長上條愛一君) 御異議ないと認めます。  それでは一橋大学教授高橋長太郎さんからお願いいたします。
  4. 高橋長太郎

    参考人高橋長太郎君) 新医療費体系について專門的な御意見はそれぞれ専門の方からあると思いますので、私は一般的な国民として極めて常識的なことを申上げます。  要するに一口に申せば、いろいろな未解決な問題に対する国民のいわば不満或いは不安というようなことに尽きるかと思いますが、先ずこの新医療費体系を拝見いたしまして特に感じましたことは、全体の医療費が変らないという根本前提と、もう一つ治療内容従前通りであるという規定のようであります。併しながら分業という全く我が国におきます医療保険の新らしい実験といたしまして、治療内容が当然変ると考えられます。例えば薬品代りに錠剤を以てするとか、或いは薬品代り注射を以てするということは、たとえ医師の故意又は悪意でなくても従来そういう一般的趨勢があつたのでります。それがいよいよ拍車をかけられるということになりはしないだろうか。これは単に国民負担だけでなくして、この体系自体が立つておりますところの医療内容がつまり従前通りでなくなるということです。奥に分業と申しましてもなかなか完全な分業へ行くのには時間がかかつて、相当期間の不完全な、つまり従前通りの状態が続くのではないだろうか。それは特別のいろいろな規定がございますが、特に患者が希望した際には、従前通り医師投薬できるということになつております。これが一体どの程度にどのくらいの割合で起るかということを果してこの新体系は見込んでいるかどうかということです。一口に申すならば、分業という新らしい事態に対応するために、この資料に出ております範囲では旧態依然たる、或いは正確に言うなら二十七年の三月或いは九月という非常に古い資料を以てそのままこれを採用するというのは根本的に矛盾ではなかろうか、こう思うのであります。一口に言うなら、それに尽きるわけでありますが、細かい問題はあとかりいろいろ皆さんの御意見があると思います。  次に、新医療費体系そのものというよりは、分業そのものに対する国民の不安、と申しますのは、従来患者に対して医師が全責任を持つてつたのが、今度は医師薬剤師とに責任がいわば分れる。この結果、処方箋が正しかつたのかそれとも調剤が正しくなかつたのかというような問題が生ずる可能性があると思います。その際に我々素人考えでありますが、処方箋適否ということは比較的容易に判定できても、調剤適否というようなことは非常に微妙な問題であつて、容易に解決ができないのではなかろうか、その結果責任の帰趨が明らかでなくうやむやなるという慮れが生じないどころか、これは国民の非常な不安であると思います。  それからその次に点数の問題でありす。本来日本報酬算定方式は、単価点数を掛けるという極めて詳細であるけれども、同時に煩雑な世界無比な方式をとつております。単価についではしばしば問題があり、現に私は単価というものは、詳しくは申しませんが、生活水準に比例して動くものだと考えております。と共に点数医師の医学の技術水準に応じて絶えず改訂をされるべきものである、つまり点数のランキングというのは、この医療内容とか技術というものを正確に反映してきめられるべきものであると思います。現行の点数は必ずしもそういう理想に近付いているとは思えない。そういう不完全な点数を整理して、これを根本円改訂して初めて医薬分業という大問題に対応できることと思うのに、今回のこの新医療費体系は、僅かに先ほど申したように、この全医療費二つに分けて、そうしてそれから算定いたしましたものでありまして、初診料と再診料についてだけ点数ちよつと変えるという、いわば、甚だ言葉が悪いのでありますが、姑息な応急措置にしか過ぎない。すべてを将来というところに持つてつておる。併し、将来と申しましても、こういう大問題のときにこそ初めて点数根本的改訂ができるのであります。将来果してできるかどうかということを国民としては非常に不安に思うわけであります。  最後に、この全医療費を昔のままとう根本的な前提、これからすべての理が起つているのではなかろうかと思うのであります。というのは、日本は現在人口が確実に百万人ずつ殖えておる。やがて十五年後には一億になるという計算になつております。百万人の人口増加に対しまして、この体系病気頻度が変らないという前提の下に計算されております。百万人も人間が殖えるのにどうして病気が殖えないのか、私には全然納得が行きません。病気が殖えなくても受診は殖えるに違いありません。現に最近受診率が非常に上昇しておりますが、受診率上昇ということは同時に死亡率低下というものと裏はらになつておる。最近日本死亡率が世界無比に低い死亡率低下いたしました根本的な理由は、私は国民が積極的に病気になつたらすぐお医者さんにかかるという受診率上昇に現われていると思います。この趨勢は当分続くに違いない。医薬分業になつても続くと私は考えます。然るに全医療費を昔のまま、従来のままというこの根本的な前提から、そういう趨勢というものはどうして織込めるのだろうか。先ほどから申しましたことは、すべて分業に対しまする医療内容変化、それから更にそういう人口増加に基く受診増加という趨勢的なことを申上げているのであります。而もこういう趨勢的なことが織込んでなければ、事態に対応できないのじやないかということを私は深く疑問に思います。  更にこの全医療費一定だということの中には、国の負担分一定であるということが含まれておるのではないかということを疑います。で、先ほど言いましたように、趨勢として医療費増加するというこの傾向に対しまして、本日のこの社会保険或いはその中の医療保険というものを根本的に考え直さない限り、当然国の負担増加すると考えるほうが常識ではなかろうか。つまり、予算緊縮予算である。それは国民の誰もが知つております。併し、緊縮予算ということは、単に予算の枠がきめられているというだけでありまして、その中の一つ一つの費用が固定しているということを意味しません。こういう筋の通つた支出が、そういう筋の通つた経費が膨脹するということは、納税者としても十分に納得が行くのであります。それを何か固定しているかのごとく考えておるのではなかろうかということに疑いを持ちます。で、ここにすべての無理が、つまりこの範囲でやらなくちやならんという根本前提に新事態に対応するのにふさわしくない無理が出て来るのじやないか。極端に申すならば、こういう事態に対しまして甚だしく準備が不足しているのではなかろうか。つまり、先ほど申しました医療内容変化点数改訂という問題をすべてあとに押しやつて、そうして当座の間に合せと申しますか、補足的な応急措置で間に合せて行こうとし下るのではなかろうかというところに私は疑問を持ちます。言い換えますと、厚生当局はこういう筋の通つた予算をもう少し積極的に増額要求される熱意を持たれて然るべきではなかろうかということであります。  つづめて言うならば、新医療費体系根本的矛盾は、そういう趨勢的に変化し且つ増加するということを全く考慮の外において何か一定の枠の中でこういう大問題に対応しようというところに、補足的なその場限りの暫定措置が行われており、そして重大問題をすべて将来に持つてつておる、それが私どもの大変不安とするところであります。つつめて言うなら、そういう重大問題は将来はむしろできないので、こういう重要なときにのみ解決できるのではなかろうかということであります。  最後に、私の申上げたことに或いは誤解に基く点があるかと思いますけれども、それはその罪は一にかかつてプリントにあります。こういう不親切極まるプリント素人に押付けて、何か参考意見を言えということは元来無理で、私はこういう試験問題は出しません。もう少し、これからも素人をお呼び出しになる機械がたびたびあると思いますが、そのときにはもつと素人にわかるように、つまり問題点というものをはつきりと解説して頂きたい、これが私の最後の希望であります。これで終ります。
  5. 上條愛一

    委員長上條愛一君) どうも有難うございました。  それでは次に日本歯科医師会常務理事中村嘉さんにお願いいたします。
  6. 中村嘉

    参考人中村嘉君) 御諮問に応じまして、只今からお与え下さつた時間内におきまして要点を逐条的に申上げて、私の意見といたしたいと存じますが、先ず第一に御諮問通り、別紙の第一から五までの要綱に従いまして御意見を申上げたいと存じます。  第一の「昭和三十年一月一日より医薬分業制度が実施せられることになつている。」、これについて意見はどうかという御諮問と存じます。これに対しまして、医薬分業制度が実施せられるにとに対しましては、日本歯科医師会の我々は反対をいたしたいと存ずるのでありますそれは御承知のように昭和二十五年サムス准将が、分業の可否並びに分業が可としたならば、厚生省調査を任せてよいかとの医師歯科医師薬剤師の三者の会合である三志会これに対する質問書が提出されたのであります。その後いろいろな過程を経て今日に及んでおります。当時右御質問に対しまして日本歯科医師会といたしましては第一に、医薬分業診療費に及ぼすところの影響調査すると、第二に、医薬分業に対する国民の輿論を調査すること、第三には、薬局受入態勢を整備することを条件といたしまとて、これに対する賛否を保留したのでございます。ところが日本歯科医師会では、今日においてもこの考えは変つておりません。然るに御承知のような現状でございまして、この三つの御質問を申上げた回答が私ども満足できません。従つてこの満足結論が出ない以上におきましては、今日この医薬分業というものには賛成できない。即ち反対を申上げたい。  その反対理由といたしまして、第一に患者に不便である。この条件はどのようなときが参りましても診察した医師調剤するということが私どもは最も便利であると考えるのであります。現在医薬関係審議会審議課題となつております診療所薬局との距離の関係等におきましても、相当私ども患者中心にしで考えなければいかん、即ちこれであればゼロが最も理想ではないかというふうに考えます。  第二に、投薬責任は診察した医師が当然負うべきではないか、これは当然医療行為の一端であるというふうに考えます。従つて臨時診療報酬調査会答申案医療報酬診療に対する報酬調剤に対する報酬二つに分けることができるとありますが、勿論医療報酬だけを考えますと、二つでなく、三つ四つにも分ける可能性があると考えます。併しながら患者疾病を治すのだという医療そのもの根本理念から申しますと、投薬責任をも診察した医師が負うべきではなかろうかと考えておる次第でございます。参  第三は、医療費は高騰するという考え方を持つております。国民医療費で押え、医師歯科医師薬剤師等の収入に大きな影響を与えないという条件があります以上、医療費は増さないと言い切つておるのでありますけれども、一人の人がやつてつたことを二人でやらせれば増すのは当然ではないかと思います。二つ条件で押えておるから増さないと言うのでありましようけれども、逆に考えますと、二つ条件で押えておいて一人を押込もうとするのだからして、増すのは当然であると考えております。  第四には、医師歯科医師医療という本質からこれはどうしても同一基盤に立たなければならんことは御承知通りであります。  以上四つ観点からいたしまして、医薬分業に対しましては、私どもは賛成の意思表示というものをいたしがたいのでございます。  第二の御諮問でございますところの「現状より分業制度に移行するため新医療費体系を実施する。」、かように御諮問になつております。これに対しまして私どもは次の点が強く強調されなければならない、問題視されなければならぬと考えておるのでございます。お示し頂きました資料というものは頻る薄弱なるものであります。こういう薄弱な資料によりまして計画されたものが実施ざれるということは、誠に刻ども反対意思表示をしなければならぬのであります。それが薄弱な資料であるということは、第三の御諮問でございますところの「総括並びに結論」についてちよつと申上げまして、ことでは新医療費体系が実施される場合の考え方を、特に歯科においての中心を申上げたいと思います。  先ず第一に、この出されました資料におきましての考え方を申上げますと、歯科技術特異性を全然顧慮しておらない。これは一般医療行為同一に取扱つておられるという点に私は不満足を表明いたします。これは御承知のように法律におきましても、医師法歯科医師法というはつきりした二つ医療行為基盤同一医療行為基盤に立つておりましても、法文においては明確に分離されておる。そこに歯科技術特異性というものがございますことは、各位の十分御了承のことと存じます。この点から考えまして、お出し頂いたところのいわゆる新医療費体系資料というものにおいては私ども特異性が没却されておる。特に私ども考えておりますことは、歯科保存、つまり歯科疾病そのもの保存する、保つための治療のうち四点以下のものが全部抹殺されて、再診療、いわゆる看視料的な再診療にこれが繰入れられております。かようないわゆる従来とも特殊な技術である、即ち私ども保存処置というものを歯に加えますことは、これは再診ではない、診療ではない、むしろ一つの特殊な技術である、この技術行為というものが全然看視料的な再診療に含まれておるというこの技術評価をおき忘れたかような考え方が、私ども非常に不満であります。  又もう一つ申上げますと、歯科においては最も特技といたしますところの補綴、逆に申しますと、歯を入れるその他のこと、これらの点のしわ寄せが非常に新医療費体系が、即ち総医療費を増さないという枠内で操作されておりますため、必要なるところの技術解釈点が没却されておる、かように考えるのであります、  第二には、こういう分業制度に移行いたしますと、医療内容低下を来たしはしないかという虞れを抱いております。新医療費体系資料によりますと、四点以下の処置料はすべて再診療にこれは吸収をいたされて、而も再診療は出面、即ち患者一人一回で計算されるという関係上、若しこれが保険にそのまま移行され、実施されるというような場合におきましては、或いはこれはあつてはならぬことでございますけれども医療担当者研究意欲を阻止し、或いは診療日数延長等の弊害の生ずるような慮れがないでもないと思います。従つてこれが医療内容低下を来たすという危険がありはしないか、かような虞れを抱いておつて、これに対しましては当然反対したいと考えております。  第三の御諮問でございますが、昭和二十七年三月及び十月に厚生省が実施した医業経済調査に基く新医療費体系総括並びに結論についての御諮問がございました。これはこれから申上げますところの理由によりまして賛成いたしがたいのでございます。  先ず第一に、この資料にはございませんけれども、私どもが仄聞しました、又実際に調べました基礎資料によりますというと一病院診療所等と、勿論これは個人病院公立病院も含めてでございますが、すでに基礎資料において、赤字経営でございます端的に申しますという病院においてその百五十五の施設調査いたしますと、二千五百九十八万円という数字が出ております。又二百施設一般診療所におきましては、九十七万六千円という赤字が出ております。特に歯科診療所におきまして百四の施設を調べますと、大体において三十九万、約四十万の赤字が出ておる、こういう資料をもとにしまして、その総医療費を枠内に当てはめおるというにとがすでに私ども考えて頂かなければならんことじやないか、これを勿論余談でございますが、こういう赤字経営がすでに保険においてやつておるという考え方には、一点単価の値上げをされることは当然ではないかというふうに、私は余談でございますが、附け加えて申上げます。  第一は、新医療費体系基礎になつた昭和二十七年三月の医業経済調査及び十月の精密調査との客体が違つておる、全然客体を違えておる、こういうふうな基礎客体が違つておるということは、先ず私ども不満を表します。  第二にその調査対象が少な過ぎる、四百七十七、こういう調査対象では少い、特に歯科におきましても百四の施設実態調査においては二十一施設個人診療所施設、これの調査をして、これだからこうだという枠に押し込めるということは少しく調査対象が少いのではないか。第三は、抽出が各層からいたしてございません。これを拝見いたしますと、この抽出層の層的な報告が私どもから申しますと、もう少し都市、田舎或いは農村、漁村、こういつたものと工場地帯或いは更に、これを保険の面において抽出しておりますのでございますから、各毎月の請求点数層、千点とか五千点とか一万点とか、こういうふうな層によつて先ほど申上げました調査対象をもつと多くしまして、その場実態はつきり把握して私どもに示して頂くことによつて初めて納得できるのではないか、かように考えております。  それから第四に、二十七年度の頻度をそのまま二十九年度乃至三十年の一月一日の頻度には当てはまりません。この調査を行いました昭和二十七年分三月若しくは十月の調査に比べて医療のおのおのの行為というものの頻度は大きく変化されることが当然ではないかと、従つて疾病そのもの増加はなくても、医療行為群変化、つまり医療を行う行為群が数を増すということも考えられる。従つてどもはその受診率が多くなれば、頻度が多くなる、こういうふうに考えて参るのであります。このことは社会保険支払の面からもはつきり今日データが出ております。そこでこの補正を社会保険に持ち込んだ際にどういうふうにやるのかということが今日私どもには表明されておらない。ただ頻度変化がないからというふうな逃げを打つた資料では、その真意のあるところはつかめないのであります。  つまり技術料評価算定方法ということが、先ほどちよつと触れましたが、非常に新体系改訂根本主旨と違つておるように考えられるのであります。技術料評価算出には技術指数というものを考えなければならんと考えます。この新体系におきまするところの技術料算定は、医師、勿論歯科医師も含んでおりますが、この一分間当り平均報酬、つまり実働対価というものに対しまして、その診療行為を行なつた時間を掛けただけのものがいわゆる医療担当者技術料評価基準になつておる。従つてそこには個人技術差或いは技術難易差というものについて何ら考慮が払われておらない。勿論これは後段においてこの文書には考慮は特別にすると書いてありますが、これがいつ払われるのかはつきりしていない。これには私ども不満を持つものでございます。特に先ほど申上げましたように歯科技術料というものは、この線において当然御考慮願わなくては我々専門医療担当者といたしましては、この新医療費体系というものは納得できないのであります。又新医療費体系薬治料注射料技術料には人件費物件費等が含まれておりますが、薬品の原価だけは切り離されております。従つて新体系根本主旨である物と物の対価を切り離した技術料云々ということは、根本観念がこの面において没却されておる、こういうふうに考えます。  又提出いたされました資料を拝見しましても、歯科診療所マイナスがございますということは、頂きました資料の十一頁のここの歯科診療所百四施設におきまするところの各種の医療行為の現点数を新らしい新医療費体系により評価した点数に換算して見ますというと、マイナス三千百八十一点、かような数字が出ております。一診療所少くとも三十点以上のマイナスでございます。これを年間の歯科診療所担当者二万三千人の、このマイナスに換算いたしますと九千九百九十万円、約一億円というものが私どもマイナスになつておる。このマイナスをどうするかということになりますと、これはしわ寄でやる、端数整理でやる、こう申しております。果してこの技術ができるかどうかということに対しまして、少くともお示し頂いたところの資料におきましては、歯科関係では今申上げましたように、一診療所三十点の平均毎月マイナスであるということをはつきりここに申上げられる資料でございます。どうかこの点につきましても十分御考慮願つて、そして善処願いたいということを要望する次第でございます。  次に第四は、新医療費体系医薬分業と不可分の関係にあり、国民福祉に重大なる影響があるという御諮問でございます。これは勿論国民福祉に重大なる影響があると考えます。国民医療費負担が先ほど申上げましたような観点からしてどうしてもこれは多くなる。即ち医療行為群増加或いは頻度が多くなるということは、たといそれが国民自家負担でなくて、若しもこれが国庫負担で出すとしても、これは国民の税金において負担しなければならん。現今のデフレ政策緊縮予算においてこれは当然お考え願わなければならんと存じます。特に初診料二点がいわゆる保険者登録料というようなことにおいてとられるというようなことがあると仄聞しますが、するとなればなおこの点は考慮しなければならん、かように考えるのでございます。従つて先ほど申上げましたような新医療費体系による内容によりまして、医療内容低下を来たすような場合には、誠に国民福祉に寄与するという点は非常に危険になるのではないかと考えるのであります。  次に、最後の御諮問でございます。医師薬剤師だけの問題でなく、国民の立場から論ぜられなければならない。誠に当然のことと存じます。国民福祉に寄与するか否かということの検討が主でありまして、これは医師、勿論歯科医師も含んでおりますが、薬剤師の業権争いや収入の分配争い等であつてはならない。これは冒頭申上げましたように、私ども国民の輿論がどうであるかということを、昭和二十五年におきまして、日本歯科医師会は甚だ僭越でございますが、御質問申上げて満足なる御回答を得ることを期待しておりましたが、遺憾ながら冒頭申上げましたような結論は出ませんでした。こういうわけで私どもはかような御諮問に対しましては、以上御諮問五カ条の逐条的の意見を開陳いたしまして、最後に御善処頂くことを要望いたしまして陳述を終ります。
  7. 上條愛一

    委員長上條愛一君) それでは次に日本医師会副会長水越玄郷君。
  8. 水越玄郷

    参考人(水越玄郷君) 水越でございます。新医療費体系について日本医師会を代表して意見を申上げたいと思います。去る十月九日衆議院厚生委員会におきましても、この新医療費体系に関して日本医師会意見を極く抽象的に申上げておきましたが、本日は少し具体的にその反対意見を申上げてみたいと考えます。  この体系昭和二十六年一月二十四日の臨時診療報酬調査会の答申に基いて作成せられたものだと、かように解釈しておりまするが、この内容は同答申と全く異なつたものであることを指摘いたしたいのであります。医療の向上ということは、国民の経済的負担力と共に、調査会に諮問された主題であつたにもかかわらず、赤字経営に喘いでいた医療機関の一部を昭和二十七年三月と十月の二回に亘つて調査し、これから類推して医療費の総額を出し、これを技術料と物の対価に分析して再びこれを集計したものであつて医療の向上を指向すると解せられる向は全然どこを探しても見当らない、かような観点を申すものであります。この答申の中に謳われておりまするG=(1+α)gtの技術指数であるアルフアーを全然我々は探し出すことができないという見方をしておるのであります。この問題につきましては、去る十一月五日の本院におきましても榊原委員の御質問に対して曾田局長はアルフアーは必ずしもプラスばかりではない、やさしいものはマイナスの場合もあるというようなことからして、プラス・マイナス・ゼロにしたというような答弁がなされておりまするが、この答弁は日本医師会意見と全く相容れない考え方でありまして、このアルフアーの研究とこの探求というものこそ、我々が従来最も強く、主張しておつたものであります。このことは調査会の決定事項ではなかつたとはいいますものの、答申の中には明記されておる事項でありまして、本体系発表するまでは、厚生省も先ほど申上げましたようにG=(1+α)gtという方式を大体において認めて、そのような形で従来は医療費のデイスカツシヨンをしておつたのでありますが、今回新体系発表するに及んで突如として、このプラス・マイナスがゼロであるというような意見を出されたことに対しては絶対に承服いたしかねるところであります。  更に本体系分業のために作成したものであると発表されておりまするが、技術料と物の対価を分離するということは医療費支払方式における非常に大きな革命でありますので、この作成に当つては、医学、医術が驚異的に進歩発達しつつある現状を十分勘案して、医療担当者の学問、技術の向上と医療施設の改善、拡充に努力するような細心の注意が払わるべきであるにもかかわらず、これら医療の本質については全く目を覆つておることは、国民福祉のためにも慨嘆に堪えない、かように考えておるわけであります。  次に、本体系は医薬を分業することによつて国民医療費負担に増減を来たすか否か不明であるにもかかわらず、増嵩は来たさせないという前提を以て作られたものでありまするが仮定に基く作文というものは非常に我々は恐れておるのであります。若しこの仮定が崩れたときには、一体誰がその帳尻をぬぐつてくれるのか、こういうようなことも明記していないのでありまして、非常に不安であるわけであります。先ほども申上げましたように、本体系基礎をなす調査が行われました昭和二十七年という年は、現在の単価、甲地が十二円五十銭、乙地が十一円五十銭というこの単価が、医療担当者の要求したものを遙かに下廻つておるので、これはこの低単価では赤字経営が克服できないという理由で大騒ぎをしたその翌年であります。官公立病院を初めとして病院協会が入院料の値上げを非常に大きく騒いだ、更に一般診療所におきましても、応急策として保険収入の三〇%を所得税の課税対象とするというようなことで、辛うじて保険行政の危機というものを乗切つた年であるのであります。でありまするので将来或いは新たな計画を立てるための調査を行うことに不適当な年であつた考えられるのでありますが、この二十七年の国民医療費調査及び純粋に医療機関に支払われた医療費調査をして、更に赤字経営、出血経営の中から経営費を調査分析して、そうして再びこれを組立をして、これで医療が健全に実施されるかのごとく作文をし、そうして赤字を追求された場合には、これはその原因を十分検討してそうして別途考慮すべきであるというような責任のない御答弁に対しては非常に憤懣をさえ覚ゆるような気持がするのであります。而もこの二十七年以来病床数は一割五分も現在増加しておりまするし、これに伴つて長期診療やそれからマイシン類の抗生物質、非常に高価につくわけでありますが、こういう抗生物質の使用、更に胸郭外科手術、大きな手術を伴う結核患者の入院が激増していることは御承知通りであります。更に一般の内科、小児科、或いは耳鼻科、眼科すべての科におきましてやはり高価な抗生物質の使用が行われている。で、精神病院においても入院患者に従来と違つた高価な手術を施すようなことも行われた。更に医学の発達に伴つていろいろとむずかしい精密検査も殖えて来ている。又そのほかにも社会保険及びこれと軌を一にしている保険患者と、それから自由診療患者との比率が昭和二十七年は七対三であつたものが、二十八年には七・五対二・五ということになつており、この傾向はだんだんに顕著になるであろうという現状からして、昭和三十年度にはどのような姿になるかということも十分把握しておらんにもかかわらず、昭和二十七年と三十年とが医療行為の種類別頻度変化のないものとすれば、新医療費体系実施後も国民医療費負担には先ず変化のないものと考えられるというような結論が出されているのですが、これは非常にでたらめと言いまするか、とにかく納得の行かない表現である、かように考えて絶対にこの言葉には賛意を表し得ない、かように考えているのであります。で、この結論只今申上げましたようなその種類別頻度変化がなければ、先ずまあ二十七年のこの状態で行けるであろうというようなこの結論に対して、我我が一番憂えることは、若しこのような仮定に基いた作文というものが崩れましたときには、それはまあ保険医の濫診、濫療であるというような、従来厚生省が常套語のごとく使つておりまするこの言葉ですべてが葬むられはせんか。要するに、挙げて責任保険医に転稼して、そうして甚だ芳ばしくない結果が社会的にも起りやしないかということが憂えられるのであります。  次に、現行体系では病院診療所ともに診察等最も医業の中心となり、医師が多くの時間をかけている行為薬治料注射料のごとき物の物価の中に含めて支払われているが、これは妥当でないから、物の対価の中から抜き出して支払うこととしたというふうに調つているわけでありますが、四点以下の処置料、而も四点以下のものならば何カ所処置をしてもすべて四点の診察料の中に含めてしまうということは、どうしても我々には理解できないのであります。これを裏返して考えて見ますると、四点の処置をすれば、四点の診察料は払わないということになるのではないかと、かように解釈されるわけであります。従つてとにかく今まで物の対価の中に尊い技術料という、診察料のようなものが盛り込んでおつたということを今回は抜き出したぞというようなことを謳つておりながら、やはり同一矛盾といいまするか、同一形態の、医療費体系になつておるのじやないかというようなことを指摘いたしたいのであります。  次に、昭和二十七年の医療費の実情を調査したところ、初診費は六・二〇三点、まあこれを金に換算しますると、七十三円八十八銭、再診費は四・五九五点、金にしまして五十四円七十三銭、これだけ支払われるべきであるということが記載されておるにもかかわらず、保険にこれを適用する場合には、端数整理をしてまるめたものにするということでありまするが、これをだんだんとその後聞き及んでみますると、その端数整理という場合は、初診の場合には〇・二〇三点を切り落す、再診の場合には〇・五九五点を切り落すというようなことでありますが、現在の医療費が如何に苛酷であるかということは、官公立並びにこれに準ずる日赤病院或いは済生会等にお聞き願つても、十分理解して頂けると考えておりまするが、医療費が低過ぎて、経営に困難を来たしているという理由で、去る七月一日より実施された抗生物質の点数引下げの告示以来、全国の保険医が大騒ぎをしたことは御承知通りであります。而もあの当時、六月の二十一日でありましたか、あの厚生省の前に座り込みまでした一部の人たちもあつたようなあの状態、こういうような不満を抱いておる現状の中から、更に端数整理という名目で以て実質医療費の切り下げをするという今度の体系に対しては、我々といたしましては、言葉は妥当でないかも知れませんが、まさに侵略体系であるというようなことを申上げても差支えないではないかと、かように考えておるわけであります。  次に、処方箋についてちよつと一言申上げたいと思いまするが、処方箋の交付というものは、我々の解釈といたしましては、患者を次回に診察するまでの責任を持つ行為である、こういうように我々は考えておるのであります。この意味での診療行為として、従来五点となつてつたわけであります。このことにつきましては、去る五日の本院におきましても、山下先生の御質問に対して、処方箋料を認めれば、処方箋発行を奨励することを恐れるから、即ち処方箋の濫発を防止するためにはこれは零にしたのだというようなことを、久下局長が答弁しておられるようでありますが、日本医師会では、この意見には全く与し得ないのでありまして、罰則までつけて義務付けたこの処方箋発行の費用を全く認めぬということは、これは筋が通らんではないかと考えておるのであります。僅かの紙代、或いは印刷代もこれはかかるのでありますが、更に処方箋作成に当つては、非常に我々は神経を使う、これは責任を持つという意味合いで、如何なる間違いがあつてもいかんということで、非常な神経を使う、そういうような処方箋を出しても出さなくても、とにかく金は同一である、出さん場合も出した場合も同じ金きり払わんぞというようなことが、一体ほかの社会の経済行為の中であり得るでありましようかということを疑問に思つておるわけであります。更に、本体系基礎をなす統計数値の集計処理方法というものは、我々にはどうも明確につかみ得ない。二十七年の三月調査と十月調査との異なつた調査方法及び対象から適当に選り抜いて、そして都合のいい形で再組織をした、組立てをしたというようなことに解釈されまするので、信憑性に欠けておるということを特に主張いたしたいのであります。  従つて技術料と物の対価とを切り離した場合、本体系によつてこれを行うとき、国民医療費負担に増減を来たすか否かの判定をするには非常に不適当なものでありまするので、科学技術を尊重し、医療内容を向上し、よつて以て国民生活の福祉を増進せんと念願しておりまする日本医師会といたしましては、本体系に絶対に反対するということを日本医師会を代表してここに意思を表明する次第であります。  なお、別紙に御諮問頂きました医薬分業が明年の一月一日より実施されるということにつきましては、あらゆる機会におきまして、日本医師会はこれに妥当でないという意思表示をしておりまするので、これでこの問題についての答弁に代えさせて頂きたいと思います。  以上簡単でありまするが、日本医師会意見を述べさせて頂きました。
  9. 上條愛一

    委員長上條愛一君) どうも有難うございました。  それでは次に日本薬剤師協会副会長の野澤清人さんにお願いいたします。野沢さん。
  10. 野澤清人

    参考人(野澤清人君) 日本薬剤師協会を代表いたしまして申上げます。  今次の新医療費体系は、現実的な構想としては極めて合理性のあるものと考えまして全面的に賛意を表するものでございます。併しこのたびの新医療費体系考え方が全く医薬分業の理念を具備したものから出発しておりまするために、殆んど大部分の方々が新医療費体系医薬分業とをこつちやにして、あたかも新医療費体系医薬分業前提的な絶対条件であると解釈しておる向きもあるようでありますが、再三参議院におきましても可分、不可分等の議論があつたようでありまするが、ここでこの新医療費体系に対する私ども考え方と理解の範囲を率直に申述べたいと存じます。  先ず、新医療費体系とは何ぞやという問題から出発いたすわけでありますが、昭和二十六年の一月に臨時診療報酬調査会の答申によりまして初めてこの名称が生れたのが沿革であります。つまり医療費算定の基本的な方式が示されたと思うのであります。その内容を貫きますものは、医療報酬を二大別して診療報酬調剤報酬とに分け、診療行為調剤行為とを分離して、これが対価を合理的に算出し得るよう決定付けたものであります。ところが今回政府で発表いたしましたいわゆる新医療費体系というものは、只今申上げました新医療費体系とは相当の開きがあると理解すべきではなかろうかと存ずるのであります。つまり今次の新医療費体系は、医薬分業実施を前提として定められたもので、現行の医療報酬を分析しまして、国民の総医療費を増額せしめない方針をとつた。又第二には、各種医療機関に著しい経済上の変動を与えない方針をとつた。この二つの目標を中心にいたしまして、理論的に検討せられたもので、曾つての新医療費体系の諸条件の一部を現実の上に実現したとみなすべきであると思うのであります。つまり前段で申上げました新医療費体系と、今次の政府の発表した新医療費体系とは、これを貫くものは全く同一であつても、基礎条件を逐次満たすために大きな新医療費算定の門戸を開いたものと理解しなければならんと思うのであります。  かかる意味において政府案の計算の基礎並びに換算等は共に理論的に無理がないと思うのであります。併し一般には理想的な新医療費体系にこだわり過ぎるため、いろいろな意見や論議が生ずるわけでありまして、医薬分業実施のための適切な処置としての精神面と施策面とが誤解されておるのではないかと思うのであります。今度の政府案につきまして申上げますならば、  第一に、新たな基礎に立脚して全然別個な立場から立案されたものではなく、現在支払われつつある医療費を対象としたという点であります。第二は、現在の医療費を科目別に大別してそれぞれ点数換算を実施し、比較検討が行われたという点であります。  第三は、形式払いを改めまして、実質報酬を基本として技術と称する無形のものが換算され、具体的に表現されたと思うのであります。この点に関しましては、我々仲間では画期的なものであると賞讃をいたしておるのでありまして、要約しますならば、現行医療費の合理的な配分率が定められ得るのであると了解いたしております。  第四には、調剤報酬の組成を独立せしめましたことでありまして、物と技術とを分離したという点であります。この点に関しましては、我々といたしましても、不満足ではありますが、一応医と薬との技術分野が明確化されたということについて大いに感謝をいたしておるのでありますが、それでは満足しない点はどういう点か、こういうことを殊更に申上げますならば、諸外国の事例等を考えてみましても、今後或いは保険経済に一般医療形態の中で心配され得るものは、投薬と診察とが分離されても、注射薬が放任され、医師考えのままにこれが濫費される虞れがあるという点であります。従いまして、第十国会におきまして注射薬を除くというような話合いから分業法案が確定されておるのでありますけれども、将来この調剤報酬の組成というものを考えた場合には、少くとも薬と技術とを分離する以上は、この注射薬に対しましても処方箋発行が必要であると我々は主張しておるのであります。併し今回の問題に関しましては、この点が疎んぜられておりますので、不満足ではあるがまあ賛成をするという意思表示を申上げる次第であります。第五は、従つて薬治料注射料に含まれておりました医師技術、一般にはこれを称しまして秘密治療の温床とまで言われております極めて不明朗な部分が、おのおのの責任において確立し得る基礎条件付けられたことになると思うのであります。  以上の五項目より結論いたしますならば、今次の新医療費体系は、現行の医療費の配分率を示したもので、制度上に新しい進歩の基礎が生れたのでありますからして、国民の立場から政府のこの大英断に全面的な賛意を表さなければならんのであります。  更に付加えまして、今度の別紙に掲げてあります第一項、昭和三十年一月一日より医薬分業制度が実施されることになつているというこの項目でありますが、すでに昭和二十六年において法案が成立されまして、三年間に準備されていよいよ実施が目睫に迫つたわけであります。然るに、最近ややもすれば医薬分業の可否がまま論ぜられるようでありますが、すでに可否を論ずる時代は去つて、実施の一歩前であるということを我々は主張いたしております。  又第二の問題でありますが、この暫定的な分業実施に移行する一つの手段として新医療費体系を実施したものと我々は了承いたしておりますが、万一分業実施と共に、多少不満であつても新医療費体系国民の利益のために、或いは又将来の医療内容の向上のために実施することを怠つたらどういう結果になるかということであります。御承知通り昭和二十六年に医師法歯科医師法、薬事法の三法が改正されて、直ちに新医療費体系の検討に入つたにもかかわらず、三回、四回の会議の以後、医師会の諸君はこの体系を運営するための会議を欠席してしまつております。つまり三カ年間これがまとまらなかつたという責任は、政府にもありますが、医療担当者側にもその責任がないとは言えないと思うのであります。万一これをこのまま存続せしめるということになれば、果して近き将来に日本医療費の合理的な算定ができるかどうかという点であります。従つて、如何なる障害があり、如何なる反対がありましても、一月一日の実施と共に不合理は更に協議をして正常なものに導くように努力するのが本筋じやないかと思うのであります。従つて、新医療費体系資料の取り方、或いは部分的な批判等はまま聞くのでありますけれども、我々といたしましては、その年代が二十七年度であろうと、二十八年度であろうと、総体の医療費の配分の比率をきめたものでありまするので、この資料の如何にかかわらず、統計学的に成功いたしております政府原案に衷心より賛意を表する次第であります。  更に又、第三の問題につきましては、別にとり分けて申上げることはありませんが、第四の新医療費体系医薬分業との不可分の関係について、当然議論せらるべき問題は、いわゆる保険経済についてであります。この保険経済の矛盾といいますか、欠陥といいますか、そうした事柄に対しましては、恐らく有識者は必ずこの矛盾を御指摘になると思うのであります。その社会保険医療費の請求等に多分の査定があつたり、或いは水増しがあつたり、こういうふうな社会常識的な一つの欠陥の生れたということは、根本において医師が悪い、歯科医師が悪い、薬剤師が悪いというような、医療担当者のみを責めるということは、不可解であると思うのであります。つまりその本質的なものがどこにあるかと申しますというと、保険制度の欠陥が第一に挙げられなければならないと思うのであります。つまり保険医を選択する場合に、選択契約が可能ならば今日のような事態は引起されないのではないかと思うのであります。ところが一律一体に誰も彼も保険医にするというところに大きな欠陥が生れる。  第二には、経過的なものとしまして、監査制度に矛盾があると思うのであります。つまり、医療監査というものを専門的な立場からでなければできないと考える一部の団体がありますが、これらに対しましては、むしろ神秘性が生れたり、特権的な立場が生れたり、自己満足的な監査を要求するような結果になると思いますので、社会制度としてこれは更に公けに監査する制度が生れなければならないと思うのであります。医療保険の完璧を期すると高唱しながら、こうした大きな矛盾を包蔵しております。  第三には、水増しの根源であります。この水増しと称せられるものは、まま特定されたもののみが指摘されるようでありますけれども、この水増しに包蔵される大きな役割をしておるのは何かと申しますと、いわゆる診察と共に行う医師投薬であります。この投薬が大部分であると私たちは考えるのであります。相当の経験を持つ良識ある医師はこの対象にはなりませんが、患者により有効な収入源として待遇しております、或いは対象としておりますところのお医者さんは、いわゆるこの水増しということをお家芸としております。処置や診断では水増しもしにくいから、専ら調剤においてこの水増しを励行しなければならん。つまり診察即調剤の制度を存続せしめるならば、おのずと水増しの温床となることは当然の帰結であります。かような意味合で、将来の保険経済を国民の名において確立するということでありますならば、基本的な診察と調剤との二大分立ということを直ちに実施することが必要であると思うのであります。  第五には、これは医師薬剤師の間の問題ではなく、国民の立場から論ぜられなければならないという考え方でありますが、私どもも全くこの考え方で終始いたしております。従つて点数が高い安いというようなことよりも、医師医師の本然の姿に立返り、又薬剤師薬剤師の本然の姿で技術分野を確立したいと考えておるのであります。経済的な根拠が薄い厚いという問題でなくしまして、飽くまでも技術を奉仕する日本の国家免許を与えられます医師薬剤師の本職として、どうしてもこの分業前提といたしました新医療費体系を施行されまして、而も又その価格が高い安いということは二の問題でありまして、どうしてもこうした制度を生んで頂きたいと思うのであります。  かような意味合におきまして、今回の新医療費体系は現在の医療費の配分率を示したものと了承いたしまして、国民の立場から政府に対し全面的な賛意を表する次第であります。
  11. 上條愛一

    委員長上條愛一君) 有難うございました。  それでは次に医師であられ画家であられる宮田重雄さんにお願いいたします。
  12. 宮田重雄

    参考人(宮田重雄君) 富田であります。只今おつしやいました医師であり画家である現在の私の生活は、後者の画家のほうに比重がかかつております。新医療費体系で縛られるならば、実力勝負の画描きになろうというのでなつたわけではございませんから、どうぞその点御了承をお願いいたします。私は従いまして、今まで述べられました専門家諸氏の意見ではございません。曾つて医師ではありましたが、現在は医療制度に従事していないと言つていい立場におります。極めて平凡な一常識人としての私の考えを述べさして頂きたい、こう考えて参りました。  医薬分業は、私は青年時に暫らくフランスで生活をいたしました。このときは、画家として暮すつもりでありましたのが、医師として暮しました。パスツール研究所へ参つて勉強いたしておつたのでありますが、日本医師であるために、日本の諸君の病気も無論相談を受け、診察もして、従つてフランスの薬局との関係もありましたのですが、これは見事に医師薬剤師がおのおのの技術分野に独立して、而も誠によき調和を保つておりました。昨年久し振りでパリーへ参りましたけれども、少しも昔と変らずに、医師薬剤師とが相互の信頼と相互扶助的であり過ぎると思われるくらいな緊密なる提携を結んでいるのを見て、誠に羨ましいと思わざるを得ませんでした。これは大変結構なことですが、決してフランスでは法律によつて制定されたものでなく、自然発生的に相互の信頼が生れつつあつたようであります。従いまして、薬剤師のところに行きまして、私は日本の医者だがペニシリンを売つてくれと言いましても、売つてくれませんし、アスピリンすら処方箋がなければ売らないという状態で、辛うじて買えるものは極めてありふれた売薬という程度にできておりましたが、今度日本で問題になつております新医療費体系、これが医薬分割について不可分だということになりますると、先ほど水越副会長が言われました通りに、大変杜撰なもので、私は決して合理的な算定方法になつたものではないと考えます。  第一に、どの医師も実際に医療に従事しております者が不満に思いますことは、技術の価値を時間と資材とによつて計算するという問題、これは誠に不合理極まるものでありまして、下手なやつがたくさん材料を使いまして手術をした場合には、手際よく少し材料を使つて手術したものより高くもらえるという、甚だ不思議な結果がここに出て来ると思います。手術は下手なほど材料も要りますから、時間も材料も下手な医師ほどかかるという結果を来たしはしないか、こういうことを我々の友人の医師たちは口を揃えて言つておりますが、尤もなことだと思います。  それから先ほど専門的な点数の問題は、私がここで述べますよりも、水越副会長が述べられましたが、最初高橋教授が言われました通りに、現在の医療費というものを殖やさないという前提においてこれができておるというところに、私は大きな矛盾があると思わざるを得ません。そういう意味で、私は高橋教授の説に全く同感なのであります。今日皆様方無論御承知だろうと思いますが、入院料というものが、結核で四百五十円で三食ついて医療がついておるという点数で押えられておりますが、参これは今日の物価の常識から考えても、甚だ不合理極まるというのですか、大変ほかに比べてアンバランスではないかというふうに考えられます。ここに送られました表も、私は医師でありながら、これを見まして、高橋教授も言われました通りに、なかなか難解でありまして、いろいろな説明を専門の方に承わらなければわからないようにできておりますが、どうも医薬を分割するためには、患者負担が殖えないということを前提とするために、患者診療費は殖えないということを先ずきめておいてから計算した結果ではないかという気が私は公平に考えてするのであります。どうしたつて人口が殖え、医療内容が向上すれば、当然国民診療費が上つてよいのでありまして、それを何か医薬を分割することによつて患者負担が殖えるという印象を一般に与えないために、それを押えて、それから逆算したという印象をはつきりと私は受けました。こういう点不満考えるのであります。最後に、ここに書いてありますように、国民の立場としましては、最初に申しましたように、今日のように医師薬剤師とが犬猿もただならぬような形でいがみ合つて、闘争などという言葉を使つておる状態においてこの実施か行われた場合、一番迷惑するのは国民大衆だと考えます。どうしてもフランス……私の経験はフランスしかございませんが、フランスで見て参りましても、誠に相互の信頼と友好の上に立つた立場において両者が提携するのでなければ、一番迷惑をこうむるのは何といつて国民大衆だと考えざるを得ません。そういう意味で、私は法によつて医薬分業規定されるということに対しては、今日の日本国民に、何といいますか、集団生活の水準、レベルという点からいつてまだ早いと考えざるを得ないのであります。明らかに、残念ではございますが、フランスの民度の高さというものが、彼らに医薬分割を自然発生的にうまく実現せしめておるというふうに考えます。  専門的なことは専門家がおられますから、一般常識人としての私の考えだけ述べさせて頂いて私の貴を果したいと思います。
  13. 上條愛一

    委員長上條愛一君) 有難うございました。  以上で参考人方々の御意見発表は終了いたしましたので、これから御質疑を願います。
  14. 高野一夫

    ○高野一夫君 ほかの委員のかたがたの御質疑もあろうと思いますので、先ず最初一、二私からお尋ねし、御意見参考人方々から伺つておきたいと思いますが、先ず高橋さんに伺いたいのですが、私は学問のことであなたの似意見はつきりと聞かして頂きたいのであります。丁度医師会も分業になると、あなたは分業論に御反対になりましたから申上げるのですが、分業になるというと責任の分離が行われて困る、いわゆる医療責任が持てない。処方箋は間違つていたらわかるだろうが、調剤が間違つたら、薬剤師調剤適否はわかりにくい。こういうようなお話があつたわけであります。これは日本だけでなく、外国いずれのところも然りでありますが、医学という学問と、薬学という全然別個の学問があるということを、否定をなさるのであろうかどうか。これは医師が薬学をやらないでそして現在調剤しているのは、御承知通りに、明治初年から便法として許したに過ぎない。それがいろいろの事情で、今日まで、医師の独占的調剤行為ということになつているわけです。そこで薬学を修めた専門家である薬剤師調剤に対して、その適否がわかりにくいということは、薬学をやらない医師よりも薬剤師調剤のほうがまだあやしい、こういうようなお考えであるのかどうか。又それで責任の分離が行われる、学問が二つつて二つの学問が患者一人を対象にして治療の完璧を期するという建前だろうと思うのですけれども、そういうことをやつたのでは医療責任の分離ということになつて、その分離ということはどうも悪い意味における分離で、責任がまとまり得ない、こういうようにお考えになつたならば、然らば学問というものはどういうことになるのだろうか。医学、薬学という二つの学問はどちらかが要らない、一つはやらなくてもいい。それじや薬学をやつた者は、医学をやらなくても、医療行為をやつても差支えないとか、或いは医師が医学だけやつて薬学をやらないで、医師が全部調剤のことをやつたらいいじやないかという意見になつてしまうと思うのです。私は学問の独立性がなければならんということから考えて、その学問に立脚した技術二つにわけて、そして一人の患者を相手にして正しい適正な医療行為が行われるということこそ、今宮田先生がおつしやつたように、本当の分業になり、本当の協調協力、又治療体系ができるのだ、こういうふうに思うのでありますが、高橋先生、如何考えますか。
  15. 高橋長太郎

    参考人高橋長太郎君) 今の御質問にお答えいたします七私の言葉が少し足りませんようですから、補足説明、意見を申上げてみたいと思います。学問の独立性ということは言うまでもないことで、二つの独立した学問があるならば、おのおの独立したものであるということは言うまでもありませんが、従来の、責任の問題でありますが、従来責任医師が全部、つまり調剤責任までも負つていた。ここに問題があると思うのです。今度はそうでなくて、責任はつきり分れる。この点は或る意味では非常に合理的ではあります。私の言つたことは、医師調剤のほうが正しいということを言つているのではなくて、間違つてつても、医師調剤責任までも今まで負つていたから、言わば責任の所在が一つである。それが二つになつたときに、問題が若しも起つたならば、国民としては迷惑しやしないだろうかということを言つただけです。
  16. 高野一夫

    ○高野一夫君 今まで医師が一人で診察して、一人で処方箋を書いて、書くか書かんかわからんけれども、一人で調剤して渡す場合に、診察が間違つたかどうかもはつきりわからん。薬を間違つて調剤したかどうかもはつきりわからん。そういうことに対するお考えはどうですか。それで若しも今度責任が分離されて、お互いに専門の立場からやるということになれば、そこで医師に誤りがあるならばこれは正され、薬剤士にあるならば正されて、そして患者にとつては未然に誤りが防げる。こういうような従来神秘的で陰に隠れておつた、闇から闇へ、或るところの患者にとつては闇から闇であつた治療行為が明るみに出て、それがどちらかに間違いがあるならば、それがはつきり明るみに出ると、発見しやすくなる、こういうふうに考えるのでありますが、それともやはり現在の通りに、一人の医師責任を負う現在の制度のほうがあくまでもよくて、そして間違つてつて責任は医者が負う、調剤師が間違つてつて責任は負わない、こういうような意味において、一人が責任を負うような現在の制度のほうが
  17. 高橋長太郎

    参考人高橋長太郎君) 現在の制度がいいということを言つているのではありません。私の申すことは、責任二つに分れているし、或る意味で非常に結構です。今おつしやつたように、どちらがいいか悪いかはつきりわかるという点については、確かに利点だと思います。併しそういうことが一体、実施され得るかということです。そういうことが合理的ではありますけれどもはつきりと実施され得るかどうかということです。従来はたつた一人を責めればいいのですが、今度は二人を相手にして責任の所在を問うという非常に繁雑なことになりはしないかということなんです。
  18. 高野一夫

    ○高野一夫君 これは考えの相違であつて、私はそう思わないのでありまして、それが明るみに出るということのほうが患者にとつては有難いことであり、そして責任の所在も明確になり、正しい治療が行われる、こういうことになるわけであります。処方箋の誤り、調剤の誤りということ、処方箋の義務も将来調剤の分離ということによつて初めてできるのだ、私はこう考えておりますが、御専門でないから学問的御意見を伺えば、それで結構です。  次に私は中村さんにお伺いしたいのでありますが、中村さんもこれと同様のお考えがあつたのでありますが、あなたに二点私は御意見を伺いたいのであります。投薬責任医師が負うべきもの、こういうふうにお考えになつておりますが、これはやはりどういうようなことになりますか。もう一遍完全に言うならば、医師がもう一度薬科大学を修めて薬剤師の試験でも受けて、医師であり薬剤師であればいいかも知れんが、現在の段階において、薬学をやつた薬剤師でない医師投薬責任を負うべきものか、あなた理論的に考えて、どんなものでしようか。
  19. 中村嘉

    参考人中村嘉君) ちよつと御質問でございますが、私どもは私どもの立場からかように観察しておるのであります。結局は、処方箋の誤りというものは、それじやどこから責任が見つけられるのだというふうな考え方も出ますのでございますが、一応私どもは診察をして、そしてその病状に応じて処方箋を発行して、そして自分で仮に投薬をいたしますことが、一番責任の所在が明らかである、こういう理念で申上げたのであります。
  20. 高野一夫

    ○高野一夫君 そうすると、併しながらこれは診察し処方箋を書くということは、医師診療行為で、医師の義務であるわけなんですが、あとの調剤、薬を扱うということは薬剤師責任行為として、現在の法律は原則としてなつている。そうすると、それより、原則通り専門薬剤師に扱わせることよりも、やはり除外例式のことになつているが、専門家でない医師が扱うことのほうが、処方の関係上やはり投薬責任を負うべきものだ、負えると、こういうふうにお考えになるわけですか。
  21. 中村嘉

    参考人中村嘉君) 私どもの立場からさように考えて行くことが、何と申しますか、我々としては正しいのじやないか、かように考えております。
  22. 高野一夫

    ○高野一夫君 そうすると、学問技術の分離ということは、独立ということは、査定なさるわけですか。それを現在学問が別にある、技術が別にある、資格が別にある、そういうことは一切お考えにならないわけですか。その点をもう一度。
  23. 中村嘉

    参考人中村嘉君) これは、現段階においてはそれは考慮はいたしておりますが、先ほど申上げましたように、現段階において国民層に及ぼすところの影響から見れば、こういうほうが我々は妥当ではないかという、つまり抽象的と申しますか、かような考えの下に申上げたのであります。
  24. 高野一夫

    ○高野一夫君 時間をとらないようにしますから、もう二、三伺いたいのですが、そうすると、現段階においては国民のためには、投薬責任医師が負うべきもの、負わせるほうが仕事がやりいい、診療がやりいい、こういうお考えになるならば、将来に向つてもやはりそういうことになると思うのだが、現段階において、過去数十年来薬剤師養成を国家はやつておりますが、医師と殆んど同数の薬剤師が出ているのですが、そんなものは実際のところ養成する必要はなくなるわけでありますが、医師だけ養成すればいいことになりますが、これはどういうふうにお考えでございますか、あなたのお考えでは、投薬責任医師が負うべきものと、こういうふうにおつしやれば、学問と技術の分離を否定なさつておる、私はこういう考え方が根本にあると思います。それをはつきり一つここで、別にあなたを責めるわけではないのだが、あなたの御意見が何かはつきりしないところがあるから、そこでお互いの是非は別といたしまして、はつきりお考えの、肚の底を一つ伺いたいと思います。
  25. 中村嘉

    参考人中村嘉君) 私どもの申上げますことは先ほど申上げたようなことで、最後に追込みになつた今、学問的に否定するという意味は十分に感じておりません。従つて今日の段階においてはという言葉を使つたので、将来においても現在のような状況であるならば、これはやはり医師調剤投薬責任を負うほうが当然である、こういう考えであります。
  26. 高野一夫

    ○高野一夫君 これ以上追及することは、今日は参考人としておいで願つたわけですから、やめます。又他日過当な機会に御相談申上げることにいたします。  水越さんに私是非一つつてみたいのですが、あなたの、分業実施の問題について伺いたいのですが、先ほど野沢さんのお話に出ましたが、診療技術料調剤技術料を区別して、無形の技術をそれぞれ別個の技術料に区別した診療報酬調査会の答申は、これは医師会側でも全員一致御賛同になつたわけですから、日本医師会の皆さんも御了承願つていることと思うわけですが、この診療技術料調剤技術料の分離ということは、そういうこと自体私は技術の分離だと考えております。そうすると、今後医師調剤が勿論できるわけですが、医師調剤した場合でも調剤技術料医師の所に来なければならないが、こういうことを私は伺いたいのでありますが、現在薬事法二十二条においては、医師がみずから調剤しなければならないことになつております。そういたしますと、ここに患者が五人おつた場合に、一人の患者を診察されて、そうしてその患者に対して調剤投薬の必要があると医師がお考えになつた場合には、みずから薬剤室においでになつて、次の患者を待たせておいて、そうして調剤をなさらなければ、これは法律違反なのです。それでそういうような法律違反行為が行われているということはよくないことで、私は行なわれているかどうかわからんが、現在は正しく法律通りに、次の患者の診察をお預けにしておいて、何十分、相当待たせておいて、そうして医師みずから診察された診察後、調剤室においでになつて調剤をしておる、大部分の薬剤師を置かない開業医はそういうような調剤をなさつておるかどうか。この点については、あなたはどういうようなお考えをお持ちでありますか。別に違反行為をどうこうと言つて追及するわけではありませんが、これは技術料のお互いの受取りとか払うとかいうことに大いに影響がございますので、法律通りに現在行われているかどうかということを、一応あなたのお考えとして伺いたい。
  27. 水越玄郷

    参考人(水越玄郷君) 只今の御質問は非常にデリケートというか、実情を或る程度承知の上で御質問なさつたように私は解釈しておるのですが、現状におきましては、できるだけ自分で盛る努力をしておることは、これは言い得ると思いますが、ただ必ずしも全部がそのような形で調剤が行われておるとは、私は考えておらないということで御了承願いたい。
  28. 高野一夫

    ○高野一夫君 その問題は法律違反問題でありますから、それ以上は追及いたしませんが、続いて御質問はいたしませんが、そういたしますと、よくあなたがたが、分業になると不便であるということをおつしやいますけれども、ところで、法律通りにやるということになりますれば、只今私が申上げた通りに、一人の患者を診察して、そうして次の患者が何人おろうとも待たしておいて、そうして御自分が調剤室へ行つて調剤をなさらなければならない、この間ずつと患者は待たなければならない、こういうようなことは、法律通りにおやりになつた場合に、患者にとつて非常に便利でありましようか、不便でありましようか、どうお考えになりますか。
  29. 水越玄郷

    参考人(水越玄郷君) 調剤というものに対して、はなから、盛る、計るから、分けてそうして包み終るまで、それまでを全部するということは、なかなか大変なことであろうと、かように考えます。
  30. 高野一夫

    ○高野一夫君 併し調剤というものは全部のことを意味しておるのでありまして、調剤医師がみずからするということに法律で決定して、きまつておる。そうやらないのは、みんな処罰されることになつておるわけです。現在はそうでない場合もあるというお話を、あなたから、直接責任ある日本医師会の代表者から伺つたわけですが、そこで、併しながらあなたのお考え通り一部分やつたにいたしましても、それでは診察したあと調剤室へおいでになつて、それでみずから調剤をされるということになるならば、待つておる患者は非常な不便を感じなければならんはずだと思いますが、この点はどうなんですか。それでもかまわんわけですか。
  31. 水越玄郷

    参考人(水越玄郷君) 待つておられる患者の不便はそれはありましようが、併しながら責任については飽くまで、やはりおのおのがおのおのの立場において責任をとつておられると、かように解釈しております。
  32. 高野一夫

    ○高野一夫君 ほかの委員のかたに譲つて、あとで又質問いたします。
  33. 山下義信

    ○山下義信君 私は、丁度二十六年の当時同じような論争が繰返されたのでありますが、野沢君の言われるように、この機会に又再び同じようなことを言つてつてもどうかと思うので、おさらいは結構です。それで私は具体的に一つ参考人のかたに伺つておきたい。丁度いい機会なので、この現実に当面しております諸問題に対する医師会側の態度というようなものについて、この機会に承わつておきたいと思う。  その前に、非常に御指摘になつて非難をされまする厚生省昭和二十七年度の三月の医業経済調査のことであります。それでこの調査の信湿性といいますか、結局そうでありますが、内容につきまして非常に疑問を持つておいでになり、御指摘になつておることは、私どもによくわかつております。そうしますと、議論をいたして行きます上に、厚生省調査をいろいろ検討して行きます上に、どうしてもそれに何といいますか、対抗するといいますか、それ以上の調査がなくては、政府の調査が不完全だ、不十分だということを議論されることは、なりかねるような気がするのです。それで医師会のほうには、政府の調査資料の不完全さに対抗して、あなたがたのほうはもう御自分の分野でありますから、如何ような調査でも、如何ようなる精密なものでも、やろうと思えばできるし、又権威ある団体でありますから、やつておいでになるのではないかと思うのでありますが、政府の持つておりまする二十七年三月乃至十月調査以上に、国会が傾聴して比較させて頂くような医業経済調査的なものが、おありになりますかどうかということを伺いたい。若しありますれば、至急に我々に一つ、あとでようございますから、お出し願えますかどうかということを、一つつておきます。簡単に一つお答え願います。
  34. 中村嘉

    参考人中村嘉君) 中村から山下委員に伺いますが、歯科医師会も一緒にしたもので……。
  35. 山下義信

    ○山下義信君 一緒でよろしゆうございます。
  36. 中村嘉

    参考人中村嘉君) それでは、私ちよつとお答え申上げておきます。私どものほうにおきましては、只今山下委員の御指摘になりましたような点につきまして十分考えをおきまして、その対象の人員とそれから件数は極く、これも又信憑性が薄いとおつしやれば薄いのでございますが、大体におきまして五百の、新らしい八月の社会保険診療請求書の原本でありますところのカルテにつきまして、各診療行為分の個々のものを抽出するべく、好意的にそのカルテを拝見さして頂きまして、その結果、診療行為の回数、それから旧点数、それから新点数とに換算しまして、プラス、マイナスを取上げましたその資料が、実はできております。本会におきましては早速これを各委員方々にお送り申上げまして、その啓料の件数は僅かではございますけれども、御参考に供したい、かように考えております。ちよつと申上げておきまする
  37. 水越玄郷

    参考人(水越玄郷君) 山下委員の御質問にお答え申上げますが、日本医師会では、現在調査をしつつありまするが、まだ御報告の段に至つていないとを、御了承願いたいと思います。
  38. 山下義信

    ○山下義信君 歯科医師会のほうの様子はわかりました。至急一つ資料を拝見いたしたい。それから医師会のほうは、いつ頃調査が完了されまする御予定でございましようか。
  39. 水越玄郷

    参考人(水越玄郷君) 即刻というわけにはちよつと参りませんので、いま暫く猶予をお願いしたいと思います。
  40. 山下義信

    ○山下義信君 その点は強いて追及はいたしませんが、できましたら拝見いたしたい。願わくば、我々が結論を出しまする、この問題の解決に参考になることができましたら、有難いと思つておることを申しておきます。  その次は、これは非常に大まかな話でありますが、これは水越副会長からお答え下すつても、或いはその他のかたからでもようございますが、ひつくるめまして、新医療費体系とそれから現在の医療費の制度と、これを比べまして、新医療費体系の不合理なところや、まあ御不満な所はよくわかる。欠点のあることはわかる。然らば、今の医療費制度はこれは非常によい制度で、欠点も不合理なところもなく、比べて見て、現在の医療費制度のほうがよいというお考え方でございましようかね。医師会、歯科医師会のほうはどうでございますか。これも欠点があつて、いけないところもあり、直すべき点もあるのでしようか。この新医療費体系と比べて、今の医療費制度はいいとお考えになりますか。その点はどうでしよう。
  41. 水越玄郷

    参考人(水越玄郷君) 山下委員の御質問にお答え申上げます。現行体系につきましても、現在日本医師会は必ずしもこれを妥当とは考えておらないのでありまして、従いまして、更によきものを作るために現在最大の努力をしております。更にこの問題に関しましては、御承知通り昭和二十七年に設置されました臨時医療保険審議会におきましても現在審議を進めつつある状態でありまするので、いずれは何らか具体的な案も出て来るんではないか、かように考えております。従いまして新医療費体系、現在ここに出されましたこの体系につきましてどうこうというような考えは、例えばこれをどうしよう、将来推し進めてこれを育てるといいますか、いずれにしましても、現行の体系そのものを検討をして、そしてより合理的な、より納得の行くものにしたいと、かように考えておりますので、御了承願いたいと思います。
  42. 山下義信

    ○山下義信君 私たち門外漢で、素人でありますが、私たちもやはりさように考えるのですね。それで現在の医療畳制度におきましても、多々欠点がある、これは是非改革せにやということは、今のお答えでよくわかるのであります。その点は意見が一致しているわけです。  それからいま一つ伺いたいことは、これも非常な雑駁なことを伺うのでありますが、若し今の諸条件で本当に一月一日から実施しましたら、どういう現象が起きるという予想を持つておられますか。例えば処方箋の発行が、患者がどういうふうにそれを見るか。或いは調剤等も、かかつている主治医のところで薬をもらいたいという者が多いか少いか、薬局へ行く者が、患者が多いか少いか。一体医師会のほうでは若しこのまま実施せられたらば、患者はどういう態度をとるであろうか、どういう予想を持つておられますか。その辺を一つ、お見込みを承わりたいのです。
  43. 水越玄郷

    参考人(水越玄郷君) これは、見込みということは申上げられませんが、私の想像を以てしまするならば、この法律が若し施行せられた場合には、患者としましては、まあ何といいますか、新らしいもの好きで、一応は何かがちやがちやするようなこともありはせんかという気持もあります。たが要するに、我々の憂えますのは、実際に医薬が分業された場合には、恐らく新らしく開業する諸君は、薬局というものは恐らく作らないんじやないかと思うのです。更に、私は婦人科でありますが、私も若し医薬が分業されたというような場合が起りましたならば、恐らく、手持の薬品はあるうちは使うかも知れませんが、行く行くは恐らく薬を買い込んだりどうこうしたりするという煩瑣に堪えないので、恐らくは薬室を閉鎖するのじやないかと、私はかように考える。そういうときに、緊急の場合とかいろいろのケースを作つて、そうして特にこういうような場合には薬を盛つてよろしい……そのよろしいというときには、もはやよろしいということが行われない、行いがたいような状態が起りやせんか。患者自身はそういうケースにぶつかつた場合に初めて、大騒ぎをいたしますが、我々はそのようなことが起りやせんかということを、実は憂えておるのです。
  44. 山下義信

    ○山下義信君 いろいろな予想があるわけでありまして、併し或る程度の見通し、予想というものがなければ、ただ理論の可否論だけでなくして、その予想に基いての又御意見があるわけです。予想ということは非常に困難でありますが、今、副会長が或る程度の御予想の下におつしやつたのですが、重ねて伺いますが、この法律を実施いたしましたときに、国民は大体この分業、新医療費体系のその方向に、ついて来るというお見込みでございますか。或いはついて来ないで、こういうような規定を作つたけれども、やはり従来と大体同じようなことに患者がなるだろうという見込みをお持ちになるでしようか。今、実施してみるというと、だいぶがちやがちやするだろうと思うという、そのがちやがちやというのは(笑声)どういうがちやくでしようか。随分処方箋を要求したりして、それで以てあつちこつち振り回してみたり、いろいろ医師に対して、何といいますかね、いろいろ患者としてのあり方というのが混線、混乱して来るという、がちやがちやというのはどういう意味でしよう、一つ内容を……。
  45. 水越玄郷

    参考人(水越玄郷君) 私の申上げたことが甚だ雑駁なことを申上げたが……。
  46. 山下義信

    ○山下義信君 私の質問が雑駁なんで。
  47. 水越玄郷

    参考人(水越玄郷君) とにかく混乱に陥るであろうということでありますが、その混乱の内容といたしましては、実際には、先ほど申上げましたように、いざ薬をもらいたいというときに、非常にもらえないで大騒ぎしてみたり、更に又、こういう分業になつたから、実はこの薬を或る薬剤師さんからもらつた。だけれども、もらつたその結果、どうとか、いろいろなことが起りはせんかと思いますが、具体的なことについては、この際ちよつと申上げたくないという考え方でおるのであります。
  48. 山下義信

    ○山下義信君 これも一つの仮定、いや仮定じやない、これはもうすでに実際になつておる。現にあなたがたで御心配頂いております分業関係の審議会で、除外例の場合、つまり但書の場合とか、その他或いは実施地域の問題とか、いわゆる省令事項の御審議をなすつていらつしやる。その審議会に政府案が出て、例えば実施地域については薬局医師との距離が一キロとか、いろいろそういうものが、或いは但書、除外例の場合も政府案が出ている。それに対して医師会、歯科医師会から対案をお出しになつていらつしやいますね。あなたがたのほうで言えば、医師薬局の距離は五百メートル、而してそれが六万にあること、或いは除外例の場合でも各種の場合が、ずつと具体的に一つの対案を出しておられます。そういう医師会、歯科医師会の要望を政府が全部、殆んど大部分呑んだとして、認めるというようなことになりましたならば、実施上一向差支えはございませんか。
  49. 水越玄郷

    参考人(水越玄郷君) この点は重大な点でありまするので、特に私から申上げまするが、そのような条件を備えておることは、地域の問題といたしましてはですね、例えば日本医師会が提案いたしましたのは、一診療所薬局が五百メートル以内にある、これが一〇〇%満たされた行政地域でなければならん、というような提案をしておるわけであります。更に医師みずから調剤するケースにおきましても、医師患者というものの結付きといいまするか、とにかくその医師患者を診る主観といいまするか、とにかくこうしなくちやいかんというこの考え方を尊重してくれなくちや困るんだと、こういうことを強調しておるわけであります。従いまして、日本医師会が提案をしておりまする如何なるケースをも、全部満たしたというようなことでなければ、分業というものは妥当でないということであるわけであります。
  50. 山下義信

    ○山下義信君 そういう五百メートル以内に六個の薬局が存在する地域があるかないかは別として、具体的に省令事項につきましては、両医師会から対案が出ている。ですから、それが満たされるような場合には実施はいたしてもよろしいということが拝見できるわけで、念が押してあるわけですが、只今のお答えでおよそ御意思は私はわかると思うのです。  それからもう一つ伺いますが、逆に、これは国会がどうきめるか、又世論がどういうふうな判断を下すか、これからでありますが、医薬分業が仮に当分見送りだということになつたといたしますると、単価問題は放棄されますか、この点一つ水越副会長に伺つておきたいと思います。
  51. 水越玄郷

    参考人(水越玄郷君) 単価問題を、医薬分業が仮に延期された場合に、放棄するか、こういうことでありますか。
  52. 山下義信

    ○山下義信君 そういうことでございます。
  53. 水越玄郷

    参考人(水越玄郷君) 先ほどもちよつと医療保険審議会のことにつきまして申上げましたが、現在関係団体の代表が集まりまして、そうして医療費の検討を実施中であります。我々はやはり適正なる医療費保険におきまする医療費と申上げまするのは、現行方式では、御承知通り点数単価方式でありまするが、従いまして点数につき、更に単価にもつきまして、具体的に検討を進めて、そうして適正なるものを一つ打出そうという努力をしておる最中であります。先ほど私が申上げた中にも、特にここで改めて又申上げまするが、実は昭和二十七年がすでに赤字であるというようなその赤字のときを調査して、そうしてそれを類推して一つの新らしい体系を作り上げた。その体系の中で行われる、初診、再診の例をとりましても、端数を切り捨てるというようなことで、如何に大きい影響が来るか、或いは又如何に大きな保険医の間に不満の声が起るかということは、先ほど申上げた通りであります。従いまして現在、私先ほども申上げましたが、単価が妥当でないということにつきましては、官公立病院を初めとして、これに準ずる日本赤十字、或いは済生会の病院、そういうような所に具体的に当つてお聞き願つても、今の単価では妥当でないということは御理解願えると思います。従いまして、分業が仮りに延期されたといたしましても、単価問題はそのままここで放擲するということではないということで、御了承願いたいと思います。
  54. 中村嘉

    参考人中村嘉君) ちよつと私のほうも関連しておりますので……。日本医師会の水越副会長からも御答弁申し上げましたように、日本歯科医師会を代表いたします私も、考えは同じでございます。先ほど冒頭御意見の前に申し上げました通り、この新医療費体系をこしらえた当時は、すでに病院診療所等の経営が赤字だ、従つて単価の問題が当然湧いて来るということも、余計なことでございますが、申上げてあるのであります。従つてこの問題は、分業が延期されましても、単価の問題としましては別個に、日本歯科医師会ではやはりその適正なるところの単価を検討いたしまして、この線に向つて医師会と同様、進んで参りたいと只今観念しております。
  55. 山下義信

    ○山下義信君 これで私の質問を終りますが、政府はどうしてもやろうとしているのです。万難を排して実施しようとしているのです。政府の腰が本当は弱いようで、おざなりで、義務的にやつておるというなら、若干考えなきやならんが、政府の意思はどうかと叩いてみるというと、厚生省は大臣以下一致結束して、この実現を期すると、こうまあ豪語しているんです。言葉通りに強いかどうか知りませんけれども、豪語している。(笑声)それに対して、これを実施するということになりますと、これはどういう情勢に変るか知りませんが、お互いに見ている通り、或いは延期の措置をとるいとまもないような場合も考えるわけでありますが、とにかくいずれにいたしましても、一月一日から実施するということになりますれば、日本医師会並びに歯科医師会の医師諸君は、如何なるこれに対する態度をおとりになるというお考えでありますか、この点を承わつておきたいと思います。
  56. 水越玄郷

    参考人(水越玄郷君) 只今の御質問に対しましてはすでに、日本全国に保険医がおりまするが、その保険医の諸君、医療担当者の諸君の決意というものは、非常に固いのであります。如何なることがありましても、現状を以てしては医薬分業に承服できないという、固い決意を持つておる。従いまして、この諸君の決意に基いて私たちは動かざるを得ない、かように考えておりますので、御了承願いたいと思います。
  57. 山下義信

    ○山下義信君 まだはつきりしないのですが、その非常な決意というのは、これは世間伝うるところによりますと、道聴塗説によりますと、或いは保険医の総辞退とか、或いは法律に違反してまでもおれたちは処方箋を出さんのだ、おれたちは調剤してみせるんだ、引つくくられてもこの分業法には従わないというようなことが、我々の耳に入りますが、そういう決意でありますか。その御決意というものを具体的に御表明を願いたいと思います。
  58. 水越玄郷

    参考人(水越玄郷君) この席で一つの過程の奈辺に立つて、具体的にこうするのだというようなことは、実は私自身としては申上げかねると思うのでありまするが、先ほども申上げましたように、山下先生のお話のごとく、各医師というものは非常な反対の強い意思を持つておるのであります。その意思の現われ方が、先生のお話のようなケースになつて現われるかも知れませんが、いずれにしましても、会員の心は即我々日本医師会代表の意思であると、かように御了解願いたいと思います。
  59. 山下義信

    ○山下義信君 私はそういう事態の発出しないことを心から念願をいたしておるものでありますが、宮田先生に伺いますが、本日宮田先生に御苦労を煩わしましたのは、私ども特に希望いたしたのでありますが、世間一般に非常に常識豊かなかたとして、御所見を伺いたい。この日本医師が、これはまあ今のイギリスの社会保障制度の下の医師もなかなか団結してやつておる、アメリカも又然りであります。併し日本では最近こういうことは稀有の例ですし、ちよちよいこの頃重大な決意をしばしば聞くのですが、私はこういう状態は本当に困ると思うのです。何川、宮田先生、名案はないでしようか、どうお考えになりますか。
  60. 宮田重雄

    参考人(宮田重雄君) たびたび決心、坐り込むことは困ると、私どもも思います。先ほど私が言いましたので、この際の新医療費体系の瞬間と資材、すでに又先ほど水越副会長にも山下委員から御質問がありましたが、在来の保険制度に不満があるか、新医療費体系よりか前がいいかといえば、在来の保険制度にもすでに欠陥があると私は思う。例えば学校を卒業したすぐの医師と経験学識を重ねた医師とが、同程度診療内容を測定されるということは、私大変不合理だと思うのです。これは又幾らでも、地域的に都会と地方とか、学識経験、そういうものを勘案して等差をつけるとか、いろいろな具体的な規則によつても、これはできるのじやないか。現実といたしまして、つまり名医といわれるようなかたに、保険を受けておる国民大衆は診察を受けられないという形になつておるのが、多いのじやないかと思いますが、保険医を引受けていないそういうかたの言分を随分聞きますと、大学を出た者と同じ程度ではというあれは、確かにあると思います。それは医者としてのデイグニテイも傷つけることであると思います。それも考えなければならんと思いますが、そういう点について何か、委員のかたがたにおいても妥当と思召したならば、これを改正する熱意を持つて頂きたいと私は考えるものでありまして、そういうことやなんかの反感、不服がこんがらかりまして、とかく重大な決意になるのではないかというふうに考えられます。そういう点でも、私お名指しがありました機会に、委員のかたがたに、決して妥当でないと思召したならば、今までの新医療費体系のみならず、改良すべきところは虚心坦懐に改良の熱意を持つて頂きたい、こういうことをお願いしたいと思います。
  61. 山下義信

    ○山下義信君 御名答を頂いたのですが、(笑声)実はああいう一日休診とか、社会保険医総辞退ということは、困ると思うのです。これは政府はちつとも困らない。困るのは患者であり国民である。これはいわゆる労働ストが、国民を困らしておいてストをすることは、方向が間違つておると同じように、政府を困らせるのではないのですがね。何か、政府がちつとも困らないのですね。社会保険医総辞退と一日休診で、困るのは患者です。私は戦術として、これは政府が痛くもかゆくもないのです。もつと政府の喉元を抉るようなことは、私どもすぐ賛成するのですけれども、これは国民を困らせ患者を困らすだけで、そういうことは私どもとしては、結果としてはまずくもあり、且つ痛くないと私は思うのですね。これは一つ宮田先生から、よう忠告しておいて下さい。
  62. 宮田重雄

    参考人(宮田重雄君) 何か政府を困らす手を考えます。
  63. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 関連して宮田先生にお尋ねしますが、宮田先生は絵描きさんであるけれども、お医者さんの立場を大体とつておるようにもお伺いしたのですが、医師会と薬剤師会が対立するような現状においては、直ちに新医療費体系を実施することは不適当だという考えでお考えのようですが、それで若し延期をすれば今度は、医師会が反対しておるように、又薬剤師会が恐らく反対されるのだろうと思うのですけれども、私は公平な立場で、医師でも薬剤師でもないのですから、この国民のこうむる迷惑ということについて心配しておるわけです。薬剤師会も反対するという立場にあるときに、先生は医師会の立場だけで延期するということを言われるのですか、どう思われますか。もう先生の責任じやないのですが……。
  64. 宮田重雄

    参考人(宮田重雄君) 私が言いましたのは、私の趣旨はおわかりだろうと思いますが、医薬分業が、技術的な立場においてはつきり分れるということにおいては、私は不賛成ではないのであります。といいますのは、私は戦争中中島飛行機の附属病院長をしておりまして、曾つて私は開業いたしたことはないのですが、薬は必ず薬剤師調剤してもらつておりました経験がございますから、そういうのじやなく、私の申しますのは、新医療費体系というものが医薬分業と不可分だと厚生大臣も言つておられますので、この新医療費体系というものの、先ほど申しました通りに、診療制度に対する価値の計算の仕方というようなものに、多くの医師不満を持つておるというようなことから、こういう新医療費体系というものがもう少し医師側の内部の替われるようなものであつたならば、医薬分業が実現しても変なことが起らないのじやないか、というふうに考えておるわけでございます。そういう意味で、何といいますか、私が国民の民度などと言いましたが、私の若い頃暮しましたフランスなどで法律以上うまく行つております形態が、私が理想的な形態だと考えざるを得ないということを申上げたのでございます。そういう意味では、私は割に公平な立場で言つておるつもりであります。
  65. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 薬剤師会の野沢さんにお尋ねしたいと思いますが、先ほどのお話に、水増しの根源は診療とともに投薬行為が行われるところにあるというように、具体的にお話になつたわけですが、この新医療費体系保険経済にどういう影響を持つかということについて、もつと具体的に、薬剤師協会のほうで考えておられる点を、はつきり述べて頂きたい。
  66. 野澤清人

    参考人(野澤清人君) 非常にむずかしい問題でありますが、これはどういう点で割り切るかというその点の引き方によつて決定さるべき筋合のものだと思います。そこで私どもはこれを二つの面から研究をいたしております。一つは、分業形態で診療が行われた場合の診療調剤との関連性であります。つまり医師が診察をして、処方箋を書いて患者に渡すという行為は、診療内容を公けにするものであるという考え方であります。従つて国民の立場から、患者若しくは附添人が多少でも技術なり、或いは医業なり、或いは薬なりの常識を備えておるものでありますというと、その医師治療に対す、る、或いは診断と対する常識的な判断が求められるのじやないか。従つて処方箋をもらいましたときに、その処方箋によつてその患者は直ちに薬局に行つて調剤して飲むかどうか、又その処方箋のあり方によつては、他の医師に行つて更に診察を受ける患者が出て来る。こういう面から考えて来ますというと、この診療調剤とが分離された場合には、患者みずからには医師の技能に対する信頼性というものが比較的公平に批判されるのじやないか、これが一点であります。  それから第二点は、保険経済に対してどういう影響を及ぼすかという根本でありますが、私どもは必ず保険経済に対してはプラスの面が生まれて来ると、プラスということは、いわゆる水増しもなくなることは当然でありますが、更に従来行われておりました投薬の口数が必ず減るという見通しをつけております。なぜ減るかと申しますというと、従来の診断から申しますならば、必ず患者を診察した場合には、散薬なり、水薬なり、或いは両方なりを出すのが習慣であります。併しながら処方箋を書く行為に移つて来ますというと、恐らく私どもの見通しでは、全体の処方箋調剤数というものを十三億五千剤と想定いたしたのでありますか、医薬関係審議会に提出されました医師会の資料では、十五億剤と算定されております。これが少くとも三分の一に減つて来るという私たちは考え方を持つております。つまり必要のない投薬は絶対に今後医師は、患者の利益のために、やらないのじやないか。国民の利益のために、必要でない投薬はしないというように、私たちは考えて知ります。併しこれを三分の一と限定することは一つの仮説でありますので、現在審議会等で論議をします際には、二分の一に減るものと前提をいたして、議論を進めております。以上のような状況でありまして、必ず必要な処方箋患者に渡る回数が少くなる、同時に保険経済というものは増額されずにむしろ減額される傾向に追い込まれる、かように考えております。
  67. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 処方箋料をとらないということになつておるわけですが、処方箋料をとれというような意見もあるのですが、薬剤師協会の立場としては、処方箋料というものについてはどういうようにお考えになりますか。
  68. 野澤清人

    参考人(野澤清人君) 処方箋料に関しましては、薬剤師協会側としては、当然無料で然るべきだという考えを持つております。なおいろいろな場合にいろいろな議論もありますが、紙代とか、インク代とかいうお話も医薬関係審議会等でも出ましたが、こういう問題につきましては、実費計算で〇・〇何点というような計算でもするわけですが、同時に紙代ぐらいのものは、恐らく分業実施後には、問屋なり、メーカーなり、或いは薬局なりが、処方箋ぐらいは印刷して差上げるサービス面が生まれて来るのじやないか。こういうことで、当然この実費徴収ということは、処方箋料は必要ない、診断に伴う一つ行為であるから、丁度金を払つて、金をとり立てて領収書を発行すると同じように、当然これは無料で発行すべきものだと、かように考えております。
  69. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 薬剤師協会の野沢さんと、それから医師会の水越さんと、両方にお答え願いたいのですが、この分業制度が行われますと、処方箋が相当どんどん出ると思われますか、処方箋が減ると思われますか、その点をお答え願いたいと思います。
  70. 水越玄郷

    参考人(水越玄郷君) 現在の日本医師会考え方といたしましては、必要なものに必要なる薬剤を投与している、かように考えております。従いまして、仮に分業が行われましても同様に、必要なる調剤に対する処方でありますので、従つて処方箋は同様に出るであろう、かように考えております。
  71. 野澤清人

    参考人(野澤清人君) 竹中委員の御質問の要旨は、分業となつた場合に処方箋が多く出るか少なく出るか、という御質問だと思いますが、先ほど申しましたように、処方箋の数は私は比較的少くなると見通しをつけております。但し何%出るかということは、診断をしまして投薬を必要とする場合には、一〇〇%処方箋は発行さるべきであると信じております。これは医師法二十二条の規定によつて投薬の要ありと認めた場合には必ず患者処方箋を交付しなければならない。但し交付された処方箋が町の薬局にどれだけ流れて、医師調剤室にどれだけ行くかという、この見通しでございますが、これは医薬関係審議会に提出されました医師会の実態調査から、私は申上げたいと思います。大宮市の医師会で調査いたしました二千百名の患者につきまして、一人々々の患者に大宮市の医師会がアンケートをとりました。処方箋をもらつたらいずれの薬局にこれは行きますかという問題があります。これに答えましたのが、二千百名中多分九百四十名か六十名であると記憶しておりますが、約四六・七%のものは薬局に行くということを答えております。而もその薬局まで指定して書いております。この資料医師会から提出されたのでありますが、これらの実態から見ますというと、分業の制度そのものを国民全般に理解されない今日であつても、本年の七月二十八日一日間に扱いました大宮市の患者の数から考えて見まして、五〇%のものは薬局調剤を望んでいる、かように了解をいたしているわけであります。
  72. 高良とみ

    高良とみ君 私は宮田先生にフランスやその他社会保障をやつている国の支払いのことを、保険経済の支払いのことをお伺いできたら仕合せだと思うのでありますが、聞くところによりますと、大体フランスあたりは、診察に患者が参りますに千フラン持つて行く、大体初診料が千フランと了承しているのですが、日本よりは非常に高い。そうしまして、その受取を持つて行くと、その金をすぐ患者に払つてくれる。又薬局に行つて薬代を払つて来ると、又それも払つてくれるというような、能率のいいやり方をしている。若し日本でそれをやりますときに、やはり政府管掌とかその他の組合で、それを払わなければならないわけですが、その点が、ヨーロツパの或る国においては、これは保険会社がこれを支払つている。それで先ほど山下委員のように、どんどん技術が進むにつれ、或いは受診率が殖えるにつれ、診療費というものはどんどん上つて行く。これを支払う機関として、生命保険、或いは特殊な保険を多少受けておりますところが払つてくれれば、それが政府の支払とのクツシヨンができるわけでございます。それを若し日本のようなクツシヨンなしにやれば、これは政府が悲鳴を上げるべき筋合のものではないかと思います。人口増加するし、受診率はどんどん上つて来るし、この点日本ではまだそこまで生命保険会社も進んでおらない。そういう点で民度が低いとおつしやるかと思います。併しお医者さんもそれだけ千フランぐらい初診料を受けて、そうしてたくさんの患者を特殊技術を持つてやれば、調剤なんかに時間を費していることはできない。で、勿論薬剤師のほうにやつてくれということになるのだと私は考える。その点実情を少し伺えれば大変幸いであります。即ち保険会社がそういう面をやつているかどうか、その点一つ御説明頂きたいと思います。
  73. 宮田重雄

    参考人(宮田重雄君) 今高良委員のおつしやつたことは誠にその通りでございまして、御質問は、日本でそういうものがあるかということでございますか。
  74. 高良とみ

    高良とみ君 はあ。これからどれぐらいは政府のクツシヨンとしてそういう機関がもつと発達し得るかということ……。
  75. 宮田重雄

    参考人(宮田重雄君) 発達すべきだと私は考えておりますが、ただそういうものは、私は常識としてそういうものがなければ当然そういう問題が起るだろうと考えるわけで、実際的なものについては私は何の知識も持つておりません。ただ、御説の通りにそういうものがあれば、つまり広告代理社の電通のようなものがそういう支払いの面であれば一番こういう問題も円滑に行くのではないかという点では高良委員と全く同感でございます。
  76. 高良とみ

    高良とみ君 大変恐縮でございますがなお一、二点伺いたいのは、どこの国へ行きましても、ドラツグ・ストアなり薬屋さんというのは二十四時間開店であります。お医者さんもそれは二十四時間でありますけれども、それ以上に薬を売つているところはどういう所でも締めることはできない。それから又待合室みたいなものがありまして、行路病者でないにしても少し気持か悪いことがある、そういう人を休ませるような設備を持つておるわけですね。それはフランスへ行つてもどこへ打つても同じことであると思う。そうなると今までの日本の薬剤技術というものはそこまで行つていないのじやないか。ただ待合室もなくて薬を作つてもらう程度のものではないかと思うので、この点から言つて調剤師の技術のほうも、もつと上つて来なければこういう分業或いは社会保障のお役に立つようなことにならないと思いますか、如何ですか。
  77. 宮田重雄

    参考人(宮田重雄君) 私が民度が低いと言つたことの具体的な説明を高良委員がなすつて下さつているような感しがいたしますが、先ほど山下委員がおつしやいました、医師会が言つている一キロですか五百メートルですか、そういう問題もそういうことを考慮されてのことだと存じます。パリでは一区、二区、例の区の中に区分を設けまして、その区分の中の何軒かの薬屋は必ず徹夜営業しておる。これはイタリーでもそうでございます。殊にイタリーでは私は美術家として感じましたことは、ネオンサインが一つも赤い色はない。御承知だろうと思いますが、大変きれいな街なので感心しましたが、赤のネオンサインがある所はパルマシイだけだということをいたしておりました。だから深夜駈けつける際にいネオンサインを求めて行けば起きている薬剤師の店に着くというようなことをやつておりましたパリでも、ネオンサインはフランスでは自粛的に外というものは使わないで、法律が嫌いなところですから強制されないで自粛して、やつておりませんでしたが、そういう特殊な所に薬剤師がいるというわけではございませんでしたが、明らかに必ず長年の習慣で薬剤師は一軒は薬剤師自身起きています。娘にやらせるとか女房にやらせるということはいたしておりませんで、はつきりと薬剤師自身が責任を持つて徹夜営業をやつておるようでありました。そういう意味で特に先ほど申しました行路病者、そういう者に対する設備といいますか対策というもの、こういうものがまだ率剤師ばかりではなく医師のほうにも政府の政策としても日本は未発達だと私は考えざるを得ないものであります。
  78. 高良とみ

    高良とみ君 もう一点薬剤師協会の野沢さんにお伺いしたいのですが、当然若し新医療費体系その他が実施されますと、よほど、数カ月、政府からの支払い、或いは組合からの支払いが遅れるという点について、薬剤師諸君の組合においても御考慮になつている点があるのではないかと思います。  それからもう一点は、注射薬品について先ほどお話がありましたが、そちらの御希望によると、注射薬についても処方箋を発行してもらいたいという御希望のようであります。而も宮田先生の話では、ペニシリンでも何でも処方箋がなければ打つてくれないというような実情からしまして、徹底すればそこに行くのだろうと存じますが、現在はこれは処方の角度を落しての話でございますが、希望があればビタミンの注射薬局などでやつているところもあるのじやないかと思われますし、それからお医者さんは、そのほうは散薬、水薬ではなく、注射に代えてしまえという、そこにも逃げ道があるのじやないか、そういう点についてどこまで……、薬剤師組合その他の方面は、いわゆる受入れ態勢ができたらということでありますが、それについて格段の飛躍をなさる具体的な、或いは法的な御用意があるのか、私ども一般国民として伺つておくと参考になるので、供せて待合室、寝る部屋についても伺いたいと思います。
  79. 野澤清人

    参考人(野澤清人君) 第二問からお答え申上げたいと存じます。受入れ態勢についてのお話でありますが、昭和二十六年の六月以降、日本薬剤師協会は今日あるを予期して、準備万端行き渡つておるつもりであります。二十八年、二十九年二カ年に亘りまして、各都道府県ごとに薬学講習会を開催いたしまして、分業受入れ態勢のためのあらゆる技術面、又操作面等についての講習会を一人漏れなく集合さしては教育して参りました。更に二十七年度から開始いたしまして、全薬局の規模の整備をいたしました。これは金額にしますと、単位薬局から申しますと僅かでありますが、総体の金額は相当なものであります。調剤室、試験室を完備するには最低二十万から最高五、六十万程度の改造費をかけまして、殆んど大半の薬局は整備を完了いたしております。  なお本年に入りましてから、夜間調剤の問題に関しましては、のちほど委員長のお許しを受けましたならば、薬局の整備状況の指針として私のほうで指導いたしておりますパンフレツトを委員各位に差上げたいと存じますが、これを見て頂けば、これの規模の状況がよくおわかりになると思います。先ほどお話がありました夜間標示の問題、又夜間調剤の場合の非常待合室等の設計等も全部行き届いております。ただ今日東京都内或いは大阪等でも、一部の金のある薬局ではすでに改造を実施しておりますが、他の面では設計、見積り等は完了いたしましても、昨今のように分業法案が延期されるのではないかというような新聞を見ます関係上、又薬局整備と同じように相当の金をかけてしまつて、元の木阿弥になつては大変だというので、待機の姿勢中でおる状態であります。従つて受入れ態勢に対しましては万全の策を講じ、而も又それに対する所要薬品、或いは処方発行予定数等まで地域別に推定して対策を講じておる状態であります。従つてこれらについては十分来年の一月一日から応じ得る態勢が完備しておるということを御報告申上げます。  なお注射薬等についての御質問がありましたが、現在薬局で、店頭で注射しておるものがあるのではないかという御質問でありますけれども、数ある薬局の中でありますから、或いはそういう不心得者もあるかも知れませんけれども、現在私どもの知つている範囲では、薬局において顧客に注射をするという行為は全然やつておりません。但し戦争後における日本人の一つの奇現象として、戦争中の衛生兵が国民に流れております関係から、殆んど大半の地域においては素人注射を実施しております。従つて皮下注射等は簡単に素人注射薬を買われて、自宅で注射されるということを聞いております。列車の事故があつて怪我人が出た場合に、お医者さんを探したらば素人が八人も注射器を持つてつたというような実例さえ伝えられております今日でありますので、これを店頭でやられるか自宅でやられるかの差でありまして、店頭では恐らく薬剤師のほうでは御自由にしなさいということは決して申上げないつもりでありますので、従つてこうした誤解については十分誤解を解いて頂くと同時に、薬剤師協会としては、そういう不心得の行為がないように注意をいたしております。  それから第一問の支払いが遅れた場合にどうするかということでありますが、これは薬局経済と分業後における経済との比較差の問題でありますが、私は現在のところ二月や三月薬局の支払いが遅れても薬局経営には大した影響がないという分析をいたしております。なぜならば普通薬局と称せられるものが、中以下の薬局で大体一日七千円ぐらい売れるのが常識であります。そうしますと月間二十万円ぐらいの売上げになります。それから処方箋によつて調剤いたしました場合を連想いたしますというと、今度〇・五九三点というあの点数でこれを七円平均といたしまして、一日四十剤を調剤いたしたと仮定しまして、二十八日の稼働日数でやつてみますというと、手数料として収入になりますものは僅かに一万円程度になります。従つて二十分の一程度影響力でありますから、二月や三月支払いが社会保険で遅れても何ら影響がないと確信を持つてお答えできるわけであります。終ります。
  80. 高良とみ

    高良とみ君 もう一点だけ。高橋先生に伺つておきたいのは、今日本厚生省所管或いは広く国民の厚生問題はあらゆる方面から山積しております。こういう際にこの新医療体制を基にしまして医師薬剤師がこうやつて同じ国民の間でまあ相当な感情的な論争をしておること、これについては私ども消費表或いは国民の生活安定を考えるものとしては、まあ端的に申して非常に不愉快に思つておるわけであります。これは学者の立場からしまして、これには多くのまだ不十分な民度の低いという点もありますし、ただ国民がこうやつて戦後受診率が高くなるほど苦しんでおるときに、もう少し高所大所からこの問題を、病気は共同の責任において治療されるけれども、それを両方のいろいろ或いは三つ四つの職域のものが相争つておることについて、もう少し世界の状態から見てもまだ実施されないところもあるし、或いは保険会社等がこれをやつておるところもあるし、という点で一つ結論的な御意見を伺つておけば、ただ今日の新医療体制御反対ということのほかに、何らか将来に期待することができるかどうかについて伺えれば仕合せだと存じます。
  81. 高橋長太郎

    参考人高橋長太郎君) 私が何か新医療費体系全体を不賛成のようにお聞きとりかと思いますが、そうではなくて、趣旨としてはまあ結構だが、準備が甚しく不足しているのではないかということを申上げたのであります。今の御質問にお答えいたしますが、まあ厚生省所管のいろいろな費用のうち、社会保険ばかりでなく、社会保障費というものはこれは御承知のようにこういうデフレに伴いまして、生活保護又失業対策というようなものも非常に増額する可能性があるわけであります。特に費用の中で今問題になつております医療保険の費用というのは、今申しました或いは失業対策とか生活保護に比べますと非常に複雑になつている、ほかの費用ですと一方的に支出をすればそれで済むのでありますが、こちらのほうはつまり保険という関係で、普通の似保険者保険者の間に医師とか薬剤師とかいうものが入りまして、非常に複雑になつている、利害関係が衝突しておるというふうに私ども受取れるのであります。これが今度の新医療費体系につきましても、およそ政府の支出の費用の中で、このように利害関係の対立したものは余りないのじやないか。なぜこれが対立して、未解決のままといつては語弊があるかも知れませんが、こういう新らしい制度に突入しようとしているか、これは一口に申せばやはり医師が、特に医師歯科医師が、自分の生活がこれによつて果して前よりよくなるのか悪くなるのか、或る意味で不安心な状態に置かれておるんじやないか、これを政府当局としては、絶対に生活程度は下らないんだということを、やはり、もう少し納得の行くような措置を講じられない限りは、折角のこの費用が無駄でないまでも、お互いに喧嘩状態で使われるということは、国民としては非常に迷惑である。で、できるだけ早く両者が仲よく協力して日本国民の健康のために尽力して頂きたい。これによつて納税者といたしましては、一番筋の過つた費用が一番立派に使われる、それがために増額ということもむしろやむを得ないとさえも思つておるわけでありますから、この点どうぞ、私の言つた言葉が足りませんで誤解を招いたようですが、ちよつと一言さして頂きます。
  82. 上條愛一

    委員長上條愛一君) 時間の都合がありますので、各委員一つできるだけ簡略に御質疑をお願いいたします。
  83. 藤原道子

    ○藤原道子君 私も、時間がございませんので簡単にちよつとお伺いしたいのですが、先ほど来宮田先生からもお話のございますように、医者と薬剤師は夫婦のような立場でなければならないと思います。それがこの頃は相憎み合うというような状態で、このままで参りますと一番困るのは国民なのでございます。今のところ医者と薬剤師と保健組合、三者相争つておる現状でございます。これは誠に歎かわしいと思うのです。で、私の医師会にお伺いしたい、医師会としても先ほど山下先生からお話がございましたような、資料が目下調査中ということでは少し手ぬるいと思う。とにかくあの法律ができてから三年経つております。反対されるならば反対される理論的根拠を以て反対されるのが私は妥当だと思う。従つて今私たちはぎりぎり結着の審議に、もう入つているのです。この点は少し怠慢だつたと私は思うのでございまして、至急にこの資料を提出して頂かなければならない。それはいつ頃おできになる見込みがあるかどうかということが一点。  それからいま一点は、先ほどどなたか、委員から御質問がございましたように、調剤医師に限られているわけですね、今のところ。薬剤師、特定の場合に医師に限つてあるが、許されておるわけです。私は医師調剤技術が劣つているなどとは考えておりませんけれども医師が全部やるとなつたときに、果してこれに耐え得るかどうか、この点を私聞かして欲しいのでございます。先ほど、全部をやるということになると困難だと言われましたが、調剤というのはどの程度調剤とお考えであるか、私はやはり計つて、混ぜてですね、まあ分けるまではお医者さんでなければならん、包むのは看護婦でもいい、或いは奥さんでもいいけれども調剤するまで、それから分けるまではお医者さんの役だろうと思うのでございます。この点についてどういうお考えを持つておられるか。果してこれを医師がそこまで診察の片手間におやりになれるかどうか、私はここに医薬分業の狙いがあるんじやないかと思うのです。その間患者を待たしておく。医師が貴重な医術というものを持つておられながら調剤に時間とそれから頭脳を使われるということは非常に不経済だという点も私は考えられるのでございますが、果して今の体制の下にこれを責任を以ておやりになれる自信がおありになるかどうかという点を一つ医師会にお伺いしたいと思うのです。  それから薬剤師のほうに対しては、私はとかく評判が悪い。これは処方箋なくして投薬しているというようなことが盛んに新聞の投書欄等にも現われております。そういうことがあつたのでは私たちは困るのです。そういうことを厳に戒めて、そういうことなくやり得るという自信をお持ちになれるかどうか、これはもう皆さんの御意見参考にして私たち結論を出すのでございますから、責任ある御答弁を伺いたいと思う。  それから最後に、立て続けで済みませんが、時間を急がれておりますので、宮田先生にお伺いするのでございますが、便不便は、私は、もう勿論大切な問題だと思うのですが、どこを以て便不便というかというと、それは医者の所へ行つて調剤してもらうのは便利でございますけれども、今申上げましたように、今のお医者さんがやつておられる実情で、このままでやつてよろしいというお考えでございましようか。誤りない調剤が期せられるとお考えでございましようか。ことごとに間違いであつたときは看護婦が責任を負わされるとか何とか……、私は看護婦でございますので、そういう立場から言つて非常に私残念でございます。こういう責任をとるという体制でなければいけないと思うのでございますが、この点について宮田先生のお考えを伺いたい。  今一点、医師会に。薬局が、一診療所に六カ所ですかの薬局を必要とすると言われる理論的根拠を私は承わりた
  84. 水越玄郷

    参考人(水越玄郷君) 只今藤原委員の御質問に対して三つあると思いまするので、三点について御答弁申上げます。  第一点の、この日本医師会が作りつつあるというその資料ですね。いつ頃になつてできるかというようなことでありまするが、大体急がして二十日以内くらいには恰好をつけるというように今事務方面とも話合つて努力をいたしたいと、かように考えます。  それから調剤の定義といいますか、調剤とはどこまでかというような御意見でありまするが、これに関しては必ずしも意見が一致すると私は考えておらない。必ずしも同一意見とは考えておりません。それは調剤というものが、まあこれが漢方薬のごとく非常に技術を要する、まあ非常に技術を要すると思います漢方薬は。さようなものの調剤でしたならば終始自分が手を出しておらなければならんということにもなろうと思いまするが、現在の調剤のごときものでありまするならば、この調剤というごときものをまあ元の瓶から幾つかの薬を取出して計るというところまでの責任で私はいいんじやないかと思う。あとを、例えばこれを三つに分ける、五つに分けるというようなことは、何もそれはその医者がやらなければならんというようなことは、私は必ずしもそうは解釈しておらないのです。従いまして必ずしも調剤にそれほど時間をかけなければならんとは考えておらない。それから更に第三点の一診療所に六カ所ということ、この理由につきましては書面でお答え申上げたいと思います。以上であります。
  85. 藤原道子

    ○藤原道子君 医師会の今の御答弁について再質問したいと思います。漢方薬は非常に技術を要するから責任がある。併しそうでないものはそれほど必要でないというように軽く伺つたのでございますが、これはとんでもないことだと思う。〇・〇〇と書く場合、〇・〇といつたらこれは大変なことなんです、〇が一つないということは。そういういうことで、これは医者が一々立つて……、私は対立して行くんじやない、納得行くまで伺いたいのです。それはここで審議したことがすぐ法律になつて施行されるのでございますかり、従いましてやはり医者が診察しながら書いたのを渡して、ほかの人がやるというのでは、私たちは不安なんでございます。従つて診察しながら調剤室へ行つて、まあどの程度までをあなたは定義とされるかわかりませんけれども、おやりになつていて、それで便利と言えるであろうかどうか、安心ができるであろうかどうかということを私は伺つておるのです。
  86. 水越玄郷

    参考人(水越玄郷君) 只今の〇・〇〇幾つというようなものは、大体において倍散とか、何倍散とか、まあこれ御承知だと思いまするが、大体それが作つてあるわけでございます。従いましてそういうようなものを、倍散にするときには、これは、もう終始医者がやらなければならんと、かように考えております。で、この〇・〇〇幾つかというその計り方につきましても、実は先ほどもいろいろと医者は薬学を習つておらんというような御意見もありましたが、我々も実はこの化学分析も教育を十分受けておる。(藤原道子君「それは承知しておる」と述ぶ)それから薬物学についても十分教育を受けておるわけであります。従いまして、このような倍散を作るときにはこれはもう終始責任を持つてやることは当然であります。併しながら、これを一応この倍散なら倍散ができました後ですね。これを例えば乳鉢なら乳鉢に入れて計る。その計るときを自分でやれば、あとはそれを三つに分けるとか五つに分けるというようなことは、そこまで立入らなくても十分調剤責任はとり得ると、かように考えております。
  87. 藤原道子

    ○藤原道子君 その計るまでは医者がやられると、やつて行くとおつしやるわけですね。
  88. 水越玄郷

    参考人(水越玄郷君) そうです。お説の通りです。
  89. 藤原道子

    ○藤原道子君 わかりました。
  90. 野澤清人

    参考人(野澤清人君) 先ほどの薬剤師の評判が悪いという藤原委員の御質問でありますが、自信を持つて答えなさいというお言葉でありますので、自信を持つて日本薬剤師協会を代表してお答え申上げます。評判が悪いという事実がどういう事実があるか存じませんが、実は医薬関係審議会で医系の代表のかたがたがこの問題について辛辣な質問をして来ましたが、厚生省からも私どものほうからもお答え申上げたのですが、現在店頭で調剤して渡します薬剤師行為に対しては法的に擁護された分があります。御承知通り戦争中統制経済に入つて売薬が統制を食いましたときに、その数ある売薬を全部取上げまして、国民薬品集というものを政府が作りまして、第二部というもので、腹痛のときにはどういうものを使う、頭の痛いときにはどういう薬を使うということをきちんときめて処方箋を出しております。従つて、この行為は問診投薬、又は対症投薬と言われる筋合いのものではありません。患者が来られた場合に、その患者の要求しますものを、製薬許可を取つておきまして、薬局製薬と称しておりますが、許可を取つておきまして、これをその患者の要求に従つて渡す。但しそれは常に一定の処方に従つて準備をしておいて渡すのが建前であります。恐らく対症投薬をしたというように悪い評判をされるかたがあるとすれば、たまたまそのときに製造されたものがなかつたために、患者のいる前でお作りになつてお渡しになつた場合があると思います。但しこれは調剤とは申しません。要するに許可を得て製造をいたしておるわけでありまして、製造販売行為であります。これを当時の医薬関係審議会でも四人のお医者さんともこのことのあることを御存じなく、対症投薬又は問診投薬として追及されて来ました。これは政府のほうでもはつきりしております。恐らくこういう点から評判が悪いのだと私は感ずるのでありますが、どうか若しそういうことでありましたならば御訂正が願いたいと思います。なお、この点に関しましては、如何なる事態が起きましても薬剤師としては自信を持つて正当に国民のために、或いは医療制度のためにまじめに御奉仕する考えでありますので、その点慎んでお答え申上げます。  なおお許し願えますならば、関連した問題でたびたび先ほどから出て参ります医師薬剤師とが仲が悪いということであります。これは七十数年来表向き仲の悪いことでありまして、実際は決して仲が悪いわけではないと思うのであります。この事柄は、私は今年の初めから分業が実施されさえすれば医師薬剤師は必ず仲好くなるということを申上げております。その証拠にはすでに分業が実施されることは必然であるということで、全国各地の町或いは市等で医師会と薬剤師会が地域的に話合いを進めております。その話合いの内容を見ますというと、分業になつた暁には医者で使う使用薬品は何種類までで限定しようじやないか、薬局もそのくらいのものは準備してくれという話合いまで進んでおります。これはむしろ旗を立て、プラカードを立ててデモ行進する心境とは全く違う状態だと思います。従つて仲良くするのにはどうしても分業を実施しなきやならないと私ども考えております。なお、もう一つ藤原先生から薬剤師医師は夫婦だと、こういうことを言われましたが、全くその通りであります。私ども医師の女房のつもりでおりますが、どういうものか七十年来お医者さんは横暴であつて、女房を片隅に片附けて浮気をされておる状況であります。而もその浮気の程度がこれも俺のほうだ、あれも俺のほうだというので裸にされておりますために、お医者さんが薬を売らなきや生活が営めないと同じように薬剤師調剤がありませんからやむを得ず雑貨を売つて生活をしておる、そのような状況でありますので、画期的なこの分業実施のためにどうか委員各位の絶大なる御同情と御批判とを得まして、一日も早く実施されるようお願いいたします。
  91. 宮田重雄

    参考人(宮田重雄君) 藤原委員の先ほどおつしやいました便不便というものは何だか私には……。もう一ぺん質問の要旨をお伺いしたいと思います。便不便というのは何ですか。
  92. 藤原道子

    ○藤原道子君 とかく医者で診察してもらつても薬をもらつたほうが便利だという宣伝が多いのでございます。これに対して常識人としてそのほうが便利だと簡単にお受け取りになるのでなくて、先ほど申上げたような例がたくさんあると思うのです。そういう場合に、今医者からもらうのが便利だからといつて、このまま遂行されたのがいいとお考えだろうか、それとも、そういうことを正しく質した上に立つての便不便でなければならないと私は考えるのでございますが、宮田先生の……。
  93. 宮田重雄

    参考人(宮田重雄君) これはなかなか何といいますか、医者に対する信頼度といいますか、信憑性といいますか、医者みずからがくれた薬のほうが効くのじやないかという一つの暗示が私はあると思います。そういうことから考えれば医者自体が、先ほど水越副会長が言われましたが、調剤の問題は医師みずからがするか、或いは女房や娘がするかは別といたしまして、医者自体からもらつた薬だから効くんじやないかという患者の感情は、これは否定できないと思います。併し私は先ほどから申しました通りに開業した経験はございません、必ず薬剤師を使つて投薬をしております。そういう場合でも、もらうほうの患者の気持から言えば、薬剤師からもらつたという感情ではないのであります。あの病院からもらつたという、あの先生からもらつたという信頼があるんじやないかというふうに私は考えております。取りに行て実際上の便不便ということから考えますとすれば、例の今度の除外例にもありますように医者から、先生から下さいと言われれば出せるのですから、それはそのほうが患者としては足を二度運ばなくてすむ便利があるのじやないかというようなことが言えると思います。が、併し今おつしやいましたように、全くその薬剤師のほうに、例外でございましようが、お医者さんへ行けば胃の薬ならこれを混ぜたほうがようござんすと言つて投薬しておる事実は否定できない、そういう例を実際に耳にいたしておりますし、医者と薬剤師は不幸にして仲はよくないと私は正直に思つております。この状態のまま法による分割が行われたならばどうなるかということが、私たち公平な立場に立つた常識者の立場から考えてのこわさ、又医者のほうから申しましても先ほど高橋委員から責任のありかについて御質問がございましたが、それは責任のありかでなくて、医者が自分のこの処方が果してそのまま正直に患者に行つておるかしらという不安が診療の面につきまとうのじやないか、これははつきり言うと、薬剤師に対する不信でありますけれども、そういう感情が現在の医者たちにないとは私は言い切れない、だから私ども大変抽象的なことでありますが、みずから薬をやりたいという感情が、利益の問題でなく診療する者の立場からいつて感情的におるのじやないかということが考えられます。これでよろしうございますか。
  94. 高野一夫

    ○高野一夫君 時間がありませんから簡単に私野沢さんと水越さんに一つずつ御意見を伺いたいと思うのですが、先ず水越さんにお伺いしたいと思うのですが、最近全国の医師会が医薬分業反対のパンフレツトを出し、雑誌に書き、或いは演説をされていろいろおるようでありますが、その中には非常に法律を無視した主張をされておる。而も医師会の名前においてされておるやに私は考えるわけなんです。例えばここで患者が、或いは特にこの看護に当つておる者が、特にその医師からもらいたいという場合はそこで調剤ができるにもかかわらず、医師会の名前において出されるパンフレツトにおいても強制医薬分業になれば絶対に医者からお前たちは薬をもらえないのだぞというふうな意味のことをよく言われる。それから山間僻地においては困るじやないかということも書いてある。そういうことが現在医薬制度審議会、医薬関係審議会意見を練つておるわけでありますが、前の医薬制度調査会においても我々吟味したところであり、又薬事法二十二条の二号においでも書いてあるところでございまして、緊急治療の場合とか夜間とかはどうするかということは、これは或いは医局のあるところには実施するとか、ないところは実施できないというようなことは常識から考えて当然のことであつて、それを相談するために審議会でいろいろ議論を練つて頂いておるわけです。にもかかわらず、山間僻地へ行つて三里歩かなければ薬局へ行かれない、或いは強制医薬分業になれば決して医者から調剤してもらえないというようなことを言われるということは、私はこれは法律解釈の如何ではないのであつて、法律をわざと曲げて民衆を指導されるというような私は意図に感ぜられるのでありますが、こういう点が事実行われておると思うのだけれども、あなたは行われておるとお考えになりますか。又行われておるとお考えになりますならば、この点についてあなたのお考えを一応伺いたい。  それからついでにもう一つ時間の関係上野沢さんに伺つておきたい。先ほど山下委員が、これは山下委員は非常な先輩でおられるのでありますから、医師会の重大決意なるものについて上品な言葉でお尋ねがありましたけれども、この医師会の重大決意はいろいろの場合があるであろうということを水越さんがおつしやつておるけれども、各地で医師会の大会を開いて、保険医の大会を開いて、保険医総辞退決議、厚生大臣辞職要求、こういうことを決議して文書になつて我々のところにも来ておるのです。そこで万一保険医総辞退というような総ストが起つた場合に、これは私は公共事業に更にもつと優先するような違法行為として、できるかできないかは別問題だが、いろいろな考えを持つておりますけれども、さような事態が万一起つた場合に、この医薬分業の半分の責任を分担しなければならない薬剤師が、特に日本薬剤師協会としてさような事態が起つた場合にどういうような考え方でこれに対処されようとしておるか、これを明確に一つここで発表しておいて頂きたい。それで質問を終ります。
  95. 水越玄郷

    参考人(水越玄郷君) 只今患者がもらいたいと言うても絶対にもらえないということとか、山間僻地、三里も先に薬屋があるというような場合ではこれが、この分業が実施されたそういうときには困るじやないかというようなパンフレツトが盛んに出ておるというようなお話でありまするが、私は東京におりまして、地方のことにうといと言われればそれまででありまするが、私の目にした範囲では、そのようなものが明記してあるものは私は目にしたことはない。
  96. 野澤清人

    参考人(野澤清人君) 高野委員からの御質問は、医師会の重大な決意についてでありますが、先ほども仮説の場合というようなお話がありましたけれども薬剤師の立場からいたしますというと、保険医総辞退というような不祥事は絶対に起してもらいたくないと考えております。ただ国民の立場からこの総辞退が決行された場合のことについて簡単に申上げたいと存ずるのでありますが、万一保険医に総辞退されたりしたらばどうなるかということは、すでに国会でも取上げられて御心配されておるようでありますから、従つてこれは国民の立場から見ますというと、今度の新医療費体系なり医薬分業などの問題から、むしろ国民を脅迫し恫喝しておるものだと我々は考えております。従つてその内容について詳細に一応検討いたしまして、どういう程度の結果が生れるかということの内容を検討したのでありまして、これが正当かどうかはおきまして、結論としてどういう結果が生まれるかということの判定を私自身がやつてみたわけであります。先ず保険医総辞退の状態に陥つた場合に国民の何%が迷惑するかという計算をいたしました。計算の基礎は官公立の病院それから公益法人並びに医療法人、第三は個人立と、三つの層から調べました。第一はベツト数からこれを換算いたしました。官公立のベツト数が二十万八千三百四十あります。それから公益法人及び医療法人のベツト数が五万五千二百六十ございます。このベツト数と更に個人立が四万三千百三十ございますが、若し総辞退というような不祥事の起きた場合にはどれだけ参加するかという想定をいたしました。官公立の病院は全部脱落するだろうと想定して二十万八千三百四十のベツトは助かる、更に公益法人及び医療法人のうち、この脱退に参加するものは半分くらいでないかという想定の下に計算をいたしますというと、大体二十三万五千九百七十というベツトの数が国民に与えられて来る。この比率を個人のベツト数と更に公益法人並びに医療法人の半数のものを加え合せてパーセンテージを出しますと、健康保険診療に継続使用し得るものが七七%、それから辞退されて使用できないものが二三%という状況になるのではないか、更に医師数からこれを判断しますというと、官公立病院医師数が二万四千五百七十四名、診療所に従事するものが六千七百一名あります。なお又公益法人、医療法人の医師数が六千六百四十名、診療所が五百六十三、個人で開業しております医師数が五千六百二十、診療所が四万九千五十であります。この比率で計算いたしてみますというと、脱落するだろうと、要するに参加しないだろうと目される者が三万四千八百七十六、四〇%であります。それから参加するだろうと想定されるものが五万八千二百七十二、約六〇%であります。かような数字から現在の診療の実体というものを調べてみますというと、病床数による観察を申上げますならば、一般診療所の総数の六九%は病床を全然持つていない医者であります。それから二六%が十床未満のものであります。それから五%は十床以上の有床施設を持つておる。更に医師歯科医師等による観察をいたしますというと、診療所総数の八五%というものは、医師一人の施設であります。二人の施設を持つているのは一二%、三人以上の施設が三%ということになつております。又その医師の従業員の有無による観察をしますというと、一般診療所の六九%というものは、医師以外に従業者があるものであります。全然従業員なしでやつているものは、三一%に達しておるわけであります。かような状態から病院診療所保険診療の取扱いをしておりますパーセンテージを拾つてみますというと、病院保険診療をしておりますのが八六%、一般診療所が九二%、歯科診療が九六%ということになります。これを更に診療所病院のこの保険に従事しています医師の数によつて表わしてみますというと、診療所での医師が約六〇%、病院医師か約四〇%、こういうふうな内訳になつて来るわけであります。そこで全体の医師保険医を辞退した場合の非常事態を想定した場合に、保険診療稼働能力というものがどうなるかという計算をしますと、四〇%しか稼働診療の能力はないという結果になります。従つてこの数字だけを見ますと、社会的にも非常に重大な打撃を及ぼすと思うのであります。併し実際の場合を連想いたしますと、分業実施に直接影響が生ずるであろうと想像されますものは、恐らく旧市制施行地だけが中心になると思います。従つて保険医総辞退という重大事態が発生しましても、郡町、村等は恐らく脱落するのでないかという考え方を以ちまして、この郡部の病院診療所等における数を調べてみますというと千六百九十五というのが病院であります。診療所が二方二千三百九十六という診療所で、病院診療所の比率から病院が四〇%、診療所が四八%、郡部にあるということであります。こうして考えて来ますと、保険医たるものの総数四万五千名のうち四八%が総辞退に脱落したと仮定すると、約二万三千名という程度しかこの辞退に参加しない。保険医の診療稼働数というものは、若しこういう事態を連想しますというと七〇%に達しておる。そうすると三〇%が保険医総辞退によつて影響をこうむる範囲であるというように結論付けられるわけであります。併しながら都市といえども考えの進歩的なお医者は、恐らくこれに参加しないものが出て来るのじやないか、こうした脱落者を考えますと、大体常識的に七〇%が要するにこの総辞退の対象になるのではないか。かようなことを考えますと、総体の医師のうちの二〇%前後がこの総辞退に参加する結果になる。日常の患者の取扱数からこれを常識的に判断しますと、患者層としましては僅かに一〇%前後の影響ではないか。この一〇%前後の影響は、恐らく官公立の診療所患者を吸収し得るという事態になりますので、若しこのような不祥事態が国会や一般社会に恫喝資料として提出されるとすれば、我々はこうした一つ観点から、もつと繊細な批判をつける必要があるのではないか。国民を明らかに脅迫している医師会の保険医総辞退というものに対する恐怖観念というものを一掃しなければならない。そうして若しどうしてもこういう事態に行くということでありますならば、政府も又国会もしつかりした根拠の下に、保険医の選択契約の制度を生む絶好のチヤンスになるのではないか。同時に又社会的な経済不安を唱える医師層が八〇%までは保険医の収入で生活しているというのでありますが、その生活根拠を奪われて何カ月闘争ができるかということであります。これを正しく国民に教えることこそ国会として必要なことであると思いますので、折角御質問がありましたので、半分の責任を負わなければならないと指摘されました高野委員に対して、半分どころか全体の責任は、むしろこの無謀な計画や宣伝され、恫喝をされる医師会のほうが全責任を負うべきであると思うのであります。  以上お答え申上げます。
  97. 上條愛一

    委員長上條愛一君) それでは参考人に対する質疑はこの程度にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  98. 上條愛一

    委員長上條愛一君) 参考人のかたがたには、長時間に亘り貴重なる御意見発表を頂きまして誠に有難うございました。意のあるところは、当委員会においても十分参考にいたし、新医療費体系調査のための資料にいたしたいと存じます。厚く御礼を申上げます。  本日の委員会はこれにて散会いたします。    午後四時三十一分散会