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1954-10-26 第19回国会 参議院 厚生委員会 閉会後第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年十月二十六日(火曜日)    午前十時二十七分開会   —————————————  出席者は左の通り。    理事      竹中 勝男君    委員            榊原  亨君            中山 壽彦君            高野 一夫君            谷口弥三郎君            横山 フク君            藤原 道子君            湯山  勇君            山下 義信君            紅露 みつ君   事務局側    常任委員会専門    員       草間 弘司君    常任委員会専門    員       多田 仁己君   説明員    法務省刑事局刑    事課長     長戸 寛美君    厚生省公衆衛生   局環境衛生部長  楠本 正康君    厚生省薬務局監    視課長     大熊 治一君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○社会保障制度に関する調査の件  (黄変米配給に関する件)  (覚せい剤取締に関する件) ○参考人の出頭に関する件   —————————————
  2. 竹中勝男

    理事竹中勝男君) それでは只今から厚生委員会を開会いたします。  上條委員長不在のため私が委員長代理をいたします。  この際お諮りいたします。新医療費体系に関する件について参考人から意見を聴取することとし、その人選、日時及び手続などは委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 竹中勝男

    理事竹中勝男君) 御異議ないものと認めます。   —————————————
  4. 竹中勝男

    理事竹中勝男君) 次に、黄変米配給に関する件を議題といたします。  その後の状況について厚生省当局から御説明を願います。
  5. 楠本正康

    説明員楠本正康君) お答えを申上げたいと思います。黄変米の問題につきましては、当時厚生当局といたしましては、或る一定基準以下のものであれば絶対安全という考えをいたしましたが、たまたま私ども資料研究等の不足から国民に多大の不安を与える結果と相成りましたことにつきましては、誠に遺憾に存じております。私どもといたしましても国会その他の御意見を十分に身に体しまして、極めてすなおな気持で一応絶対安全とは思いながらも、もう一応これを確め意味調査研究をいたすことといたしました。これらの結果に基きまして国民に安心して頂くということに決定をいたしたわけでございます。従つてこれら国民納得するに足る資料を得られるまでは、一応農林当局と相談をいたしまして配給を絶対に停止をいたしております。従つて現在までいやしくも黄変菌の附着してあるごとき米は全部倉庫に滞貨となつて存在をいたしておる次第であります。この量もその後かなり入つておりますので、当時八万五千トンと申上げました滞貨は、現在は更に増加をいたしておる次第でございます。一方厚生当局といたしましては直ちに再び調査研究を進めることといたしまして、東大、京都大学、新潟大学、慶応大学、伝染病研究所予防衛生研究所衛生試験所の七機関に対しまして緊急研究をお願いいたしておる次第でございます。なお、これらのほかに、それぞれこれらの班の中には地方の衛生研究所、或いはその他著明の研究機関も若干含まれております。現在までは、これらの調査研究は順調に進んでおります。併しながら今までのところは、何らいわゆる白米黄変米、白い米が害がありという結論は何ら出ておりません。動物試食試験におきましても、或いは化学分析検査におきましても、或いは組織的に、形態学的に米を調べてみましても、何ら現在までは白い米が危険であるという資料は出ておりません。併しながらまだ最終的な決定に至りませんので、私どもといたしましては一応最後的な結論が下されるまで、農林当局に依頼をいたしまして、配給を一応中止した形になつて現在に至つている次第でございます。
  6. 竹中勝男

    理事竹中勝男君) 只今の御説明に対しまして御質疑はございませんか。
  7. 山下義信

    山下義信君 今どういう調査研究をやつているのですか。それから最近新聞に出ているのを見ますと、精米ですか、搗米をすれぼ非常に菌が減つてか、安全性が高まつて来ているというようなことが新聞に載つておりましたが、どういう調査研究を今やつている段階ですか。又その一部分どういう成果が挙つているかということ、具体的に一つおつしやつてみて下さい。
  8. 楠本正康

    説明員楠本正康君) 先ず最初動物に対する試食試験黄変米を食べさしてみる試験でありますが、私どもは従来各港で発見されましたうちの最も高率に黄変米の含まれております米を例にとりまして、サンプルといたしまして、これを使用いたしております。そのうち三三%含まれております黄変米ビルマ米、これを猿に九月六日以後試食試験をいたしております。この猿につきまして毎日血液を調べ、或いは肝臓機能を調べ、或いは腎臓機能を調べ、小水を調べ、又一方全体的なす。肝臓機能にも何ら変化を認めません。血液にも別に変化は来しておりません。又小水試験、或いは腎臓機能等につきましても何ら変化を認めません。なおこれらの猿は試験に取りかかる前に、約一カ月に亙りまして厳密に健康診断をいたしまして、血液検査肝臓機能等を十分に調べてある猿でございます。猿を使つて三三%の黄変米試食試験をいたしておりますが、何ら現在までは変つたところは見られておりません。又一方猿につきまして、他の二七%含まれている黄変米使つて調べておりますが、これも同じように何ら変化はございません。それから一方鼠その他の小動物について実験をいたしておりますが、これは長いところではすでにニカ月に亙つておりますが、これらの鼠も対症例につきまして比べまして、体重の増加、その他健康状態に何ら変りは認めません。更に、今後は小動物につきまして試食試験を継続いたしまして、最後的にはこれを解剖いたしまして組織変化を調べる予定で進んでおります。更に次にいろいろ米から毒素がありとすれば、これを抽出いたしまして、米からいろいろな化学物質を抽出いたしまして、それを試食試験経口試験、その他いろいろな化学試験を実施いたしております。併しこれら高率に含まれております黄変米につきましても、現在までの化学試験におきましては何ら毒性を認めておりません。  それから第三に、私ども形態学的に、つまり組織的に米を切ることに成功いたしました。目下組織検索を進めております。つまり化学試験或いは菌学的試験のほかに、目で見て判定するという、つまり組織検索を進めております。現在一千倍に拡大して顕微鏡で見ております。これらの検査によりますと、南方から入つて参ります高率に黄変菌の証明されます米を調べてみますと、菌の所在は極めて表面的であります。殆んど表面に附着した程度、それからやや中に根が張るように、やや菌糸が入り込んだという程度であります。かようなことが確められております。なおこれらの程度変化は内地の米においても見られまして、産地において搗精をいたしまして配給地に輸送されます、いわゆる国白と言われます米におきましても、やはり場合によりますと、その表面にあたかも附着したように若干の菌が認められます。併しこれらの表面に存在する菌は内部に変化を与えることはなく、米の澱粉粒の増その他は全く正常であります。なおこに関連いたしまして、従来実験に用いられておりましたいわゆる黄色い米、或いは人工的に培養した米を同じように形態学組織学的に調べてみまする、これらの黄色い米になりますと、殆んど全粒が変質をいたしまして、澱粉粒が崩れておりまして而もかなり深いところまで菌糸或いは胞子がたくさん伸びておるのを証明することができます。従いまして私どもは、組織学的に調べましても、黄色い米と白い米との間には格段の差がある、つまり白米のいわゆる黄変米といわれるものの変化は、単に表面的に菌が附着した程度のものである、かように考えられます。なお、これらの米は現在まで何千粒となく組織検索をいたしております。かような表面的なことから考えまして、一方私ども只今山下先生の御指摘のように再搗精を試みております。従来まで多数の米の種類につきまして、それぞれ再搗精の前後の成績を比較いたしております。今まで五十余りの検体から多数の菌を選び出しまして、再搗精の前後を菌学的に比較をいたしております。再搗精をいたします前には、培養試験によつて黄変菌が発見されますが、再搗精の後においては、殆んど菌の証明されない結果と相成つております。全体で五十体余り検査いたしまして、菌の証明されましたものは十例以下であります。而も菌が証明されると申しましても、その量は極めて少くなりまして、例えば再搗精前に八粒認め得たようなものは、再編精後に辛うじて一粒というようなふうに減つております。かように再編精によつて菌がなくなる、菌学的に証明することができなくなるということは、先ほど申上げました組織検索によつて、極めて表面的な変化であるということと、全く符合した成績であります。従つてどもといたしましては、再編精ということは一応これで安全化されるというふうにも思われますが、併しながら更に念を入れて、これらの試験を続けると同時に、現在まだ再搗精によつて化学試験で、化学的にどんなふうに変化して来るかということが調べて、ございませんので、目下形態学的、菌学的のほかに、更に化学的な検査をいたしておるわけでございます。従つてこれらの検査を全部完成し、念には念を入れて実施いたしまして、初めて結論を導きたいと、かように考えておる次第であります。
  9. 山下義信

    山下義信君 今政府中間報告を聞きますと、前回とは非常に異なつて黄変米の、何といいますか、有毒性思つたほどにはなかつたので、むしろ今日までの各種の試験をやつた結果、比較的無害といいますか、安全性が強いように思われるという報告と私は聞いたのです。従つてお尋ねしたいと思うのは、政府はこの黄変米有毒性について、この段階においては、どういうふうにひつくるめて、これを見ておるかということですね。それからいま一つは、次の検査というか、研究というか、試験というか、その段階はどういう検討の段階にかかるのであろうか、又全体的にいつ頃結論が出るのであるか、その点を一つ政府の御所見を承わつて置きたい。
  10. 楠本正康

    説明員楠本正康君) 第一点の御質問に対しましては、私どもは現在白米である黄変米外見変化のない米につきましては、先ず安全ではなかろうかというようて考えておりますが、併し未だ最後的な結論を得ておりませんし、実験の進行中でありますので、これらの実験から来る結論暫らく差控えさして頂きたいと存じます。従いましてここ当分の間は、黄変米農林省は或いは迷惑かも知れませんが、配給操作を工夫いたしまして、配給最後的結論が出るまで、一つもう暫らく何らかの措置のつくまで待つているというふうに考えております。そうして仮にいい結論が出ましても、国民が十分に納得をいたしまして安心して頂ける段階になつて初めて配給なら配給ということにいたとたいと、かように考えております。ただこれらのうち、再搗精の問題だけにつきましては、或る程度他実験に比べまして見通しもついておりますし、又一方この米の臭みがとれる、或いは米が一層おいしくなるというようなことから、結構なことでありますので、これらの点につきましては、大分見込があるのではないかと、かように考えております。併しながら再搗精をするということは、必ずしも根本的に問題を解決することにはなりませんが、取りあえず滞貨、まあ二十万トン程度ある滞貨を何とか処理するということにつきましては、これは極めて応急的な措置と思われますので、かような点は結論の出次第、まあ幸いにも無害という結論が出ますれば、これは直ちに実施いたしたい所存でございます。  第二の点の次の試験段階でありますが、再搗精試験研究にいたしましても、或いはその他の試験にいたしましても、現在実施いたしておりま“試験成績を更に確かめる、多数の例について確かめるという段階を踏んで参る所存でございます。  それから次にこれらの試験は、大体三通りに分けて考えたいと存じます。一つは眼で見て顕微鏡的に組織的に形態学的に調べるという一つのやり方、もう一つは菌学的に、菌の培養試験をするというような菌学的な試験、第三は、この動物試食試験、かような三段階で進みたいと存じております。なおこれらによりまして、或る程度結論的なものが得られましたら、そこで初めて人体実験に移りたい所存でございます。従いまして現在未だ動物実験等におきまして最後的な見通しというものが立つておりませんので、人体実験は未だいたしておりません。  次に、いつごろ最後的結論を得るかという御質問でございますが、これは私どもといたしましては、国民の不安を一掃する意味でも、できるだけ早い機会に最後的な結論を得たいと存じておりますが、これは学問のことでもありますし、又研究には意外に手間も取れますので、必ずしも今ここで直ちにお約束はできませんが、併しながら再搗精に関する試験研究は、現在はこれを再び確かめる、もう多分いいが確かめるという意味で、もう一度やりたいと、こう考えておりますので、この再搗精結論というものは比較的早く、一カ月以内で結論が得られるのではなかろうかと期待をいたしている次第であります。
  11. 竹中勝男

    理事竹中勝男君) 他に御質疑ございませんか。
  12. 高野一夫

    高野一夫君 ちよつと私伺いたいのですが、これは私、この前の決算委員会で、我々この問題を扱つていて、まだその過程にありますので、この間も私は聞いたのですが、一体現在厚生省がこういうふうな試験をして、まだいずれなりとも結論が出てないというふうなことの今日の報告に私は受取つておりますが、一番最初に、厚生省がいろいろ試験の結果、例えば或る基準以内なら差支えない、或る基準以上は有毒であるとか、有害であるとか発表したことが、国民に不必要な不安感恐怖感を与えたことになるのじやないか、こういうふうなことについては、私は相変らず、特にこの食糧問題については、どうも厚生省農林省との連絡といいますか、協調点研究というか、そういう点に何か欠けるところがある気がしてしようがないのですが、そこでなぜ、今から過ぎ去つたことを追及するのもどうかと思うけれども、今後のこともあるから伺つておきたいが、なぜあのころはあんなにいち早く厚生省が、有害だ、無害だという研究のまだ完全でないのに、国民を不必要におびやかすような発表をしなければならなかつたのか、これはどういうわけですか。
  13. 楠本正康

    説明員楠本正康君) 私どもも今先生のお言葉を伺いまして反省させられるところが多いわけでありますが、ただ事情を申上げますと、従来は黄色い米が一%ということで、国民にも納得して頂き、又私どももそれを行政に移しまして、一%以上のものはこれを配給しないという措置をとつておりました。その後昨年の秋から白い、外見上は何ら変りのない米にも、培養上は菌が証明されというのが出て参りまして、そこでこれをどうしようか、これを黄色い米と白い米と一緒にして扱うこともできない。やはり黄色い米で一%、腐つた米で一%ならば、白い米ならもう少し率を上げてもいいだろう、こう考えておりました。併しながらこれらの試験研究をいたしますのに案外時間を取れているうちに、すでに半年余り経過をいたしまして、その間にたまたま多量の滞貨ができてしまつたわけであります。これらの滞貨は、まあ一応とにかく白い米でも菌が証明されるものはちよつとその待つていてくれと、こう申入れた結果出て来た滞貨であります。そこで滞貨が多くなりますと、やはり私どもといたしましては、結論を急ぐわけではありませんが、何分の基準を設けなければならないというところへ逐次追いやられて参りました。その場合まあ今考えると甚だ申訳ないのでありますが、従来黄色い米は一%というと、今度白いピカピカした米なら少しは率を上げてもいいんじやないか、こう考えましてああいつたその基準を設けたわけであります。但し従来の黄色い米、腐つた米につきましては、臭い米につきまして、試験研究が行われておりましたが、白い米については何らその毒性試験研究成績は、ございませんでした。私どもといたしましては、公衆衛生上と申しますか、医学的な常識から、問題は菌がたくさんおるようなものはそれだけ危険性も多いし、又それから外見上何ら区別もなく、即ち菌が極めて少いようなものは、これはそれはど危険性は黄色い米に比べて少ないという一つ常識、判断と申しまし上うか、かような点を基礎に基準をきめたわけであります。併し、従いまして先ほど当初お断り申上げましたように、私どもとしては資料石足の点から国民にいろいろな不安をお与えたことにつきましては、責任を感じておるような次第であります。そこで私どもといたしましては、これらの全く国民納得の行く資料を得べく現在まで努力をいたしておる次第であります。即ち白い米の研究をいたしておる、白米研究をいたしておる段階でございます。
  14. 高野一夫

    高野一夫君 それから、これから試験をされて、その白い、黄変米といいますとおかしいけれども病変米、それから黄変米、こういうものについて、どの程度含有しているものは差支えないと、配給して食べさして差支えないというような結論が出て来るのだろうと思いますが、この前の厚生省発表したときに、例えば黄変米三彩含んでいる、それ以内のものは害毒がない、食べてよろしいとこういうような発表があつたのですが、これも厚生省関係正規機関に諮つて関係学者が或る程度研究をされて発表されたものだと思うのですが、当時やはり問題になつたのは、ほかの学者でやはり反対された学者もあつたわけであります。今度こういう一定基準を設けて、厚生省農林省協力して、発表されて配給をするというときになつた場合に、医学者農薬者か何か知らないけれども、とにかくやはり同じ専門学者がこれに異論を出すということがないでもないと私は思うのです。そこで、我々まあ考えるに学説に、同じ専門学者の、十人なら十人一致した学説というものは曾つて古往今来聞いたことがない。ただむしろ、ここですべての学説が一致したことは、白米が如何に有毒であるかということだろうと思うのです。それならばこれだけすべての学者が一致した、白米が有毒であるというならば、白米配給を停止すると、そして七分描きにするとか玄米にするとか、麦を混ぜるとかいうことのほうが政府としては最も適切な方法ではなかろうかと思うわけです。そういうことも考え合わされて、ここで一定基準が出た場合に、厚生省正規機関研究した結果、データを出されて、そしてこれなら差支えないと言われた場合は、反対学説を唱える人がありましても、そのときは毅然として政府はその方針でおやりになる覚悟であるかどうか。又ぐらぐらしてしまつて、もう一遍又検査しましよう、試験しましよう、そうして八万五千トンの米は又これから滞貨させるのだ、こういうようなことになりかねないのか、どうだろうか、その辺のところを伺つておきたいと思います。
  15. 楠本正康

    説明員楠本正康君) 誠に御指摘の点御尤もでございまして、お恥しい限りでございますが、この問題は当初から二、三の学者が強く反対をいたしました。併し勿論学者の中には白米は無害だという人もかなりありました。併しここに大きな国民の不安を与えましたことにつきましては、厚生省としてはまあ甚だ遺憾でございますが、従いまして今後は、先ほどちよつと経過の御説明に言い落しましたが、今後は食品衛生調査会諮問をいたしまして、学者意見を総合して、正式に答申をして頂きたいと存じまして、目下食品衛生調査会諮問中でございます。でもなお今回はこれ品委員会の中に特別委員会を設けまして、この特別委員会にこれら先ほど申上げすしたいろいろな研究者のほかに、更に従来いろいろ米問題等関係の多い方々、或いは曾つて研究せられた先生方等をも含めまして、一つの特別な委員会を設けまして、目下審議を頂いているわけであります。勿論これらの委員方々の中には従来反対を唱えた二、三の学者も含まれております。併し研究結果をすなおに解釈いたしまして、これによつてどもは学界の一致した意見が得られるものとかように固く信じている次第であります。従つて答申がなされれば、私どもは直ちにこれを行政に反映いたして行きたい。こういたしますれば、再び国民に疑惑を与えたり、不安を与えたりする問題はなかろうかとかように存じている次第でございます。
  16. 榊原亨

    榊原亨君 先ほどから伺いますと、その道の専門の方の御研究によりまして、この黄変米が有毒であるかどうかということの御検索が行われていると、その検索方法はこれこれだということを今承わつたんでありますが、私ども素人の者から考えますと、今御報告にあずかりました実験だけでは安心して国民がこの黄変米を食べるか、食べんとかということを決定するわけに行かんと、かように私は素人として思うわけであります。と申しますのは、先ほど実験の様子を承わりましたのでありますが、一カ月間経過を先ず見まして、これは丈夫な猿だからと言つて、その猿に黄変米を食べさせるんだと、そこでその結果を見て、これは何ともないんだからと、別に異常はないんだからと、これで何ともない、こういう御結論を出していらつしやるように承わつたのでありますが、私どもこの政治の面から見てみますと、黄変米有毒性ということは、健康な人に黄変米を食べさして、何ともないと、無害であるということを我々は心配しているだけではないのであります。これは配給によりまして、配給のルートにこれを乗せますと、その中には病人も食べるでございましようし、或いは小さい子供も食べるだろう或いは特別にからだの異常を持つた人も食べるだろう、それを配給の面において規制することができない。そこでそういうような状態の人にもなお且つこの黄変米が有毒でないという実証がなければ、ただ一カ月間猿を見て、健康な猿にそれを食べさして、それを有害でないという結論だけではこれはまあ専門家がおやりになつた御実験でありますが、私ども素人にはわからんのでありましようけれども、その実験だけでは素人の私は少くとも満足できん。殊にこの黄変米の有毒なる物質というものは、肝臓機能障害ということにもう尽きている。そこでその肝臓解毒作用がどんなふうになつているか、例えば普通の健康の人でもお酒、お酒は肝臓毒でありますが、お酒と一緒黄変米の毒を食べたら非常に害があるかも知れませんけれども、お酒を飲まないときた食べたのでは何ともないかも知れない。そこでこれらの実験については少くとも四塩化炭素その他によりまして、肝臓障害をあらかじめ起さした動物についてもなお且つ影響がないという御実験がなければ私ども素人はわからない。御専門家が御実験をなさるのでございますから、私ども素人にわからんかも知れませんが、その点の御研究をなさるつもりであるか、なさらんつもりであるか、それを承わりたい。
  17. 楠本正康

    説明員楠本正康君) お答え申上げます。御指摘通りであります。先ほどもお断りいたしましたように現在の段階ではかような経過であるという点で申上げて来たわけでございまして、勿論このことを以て、先ほど猿の肝臓機能調査或いは腎臓機能調査血液小水等調査だけで結論を得ようというわけでは毛頭ございません。勿論今後更に只今指摘のように肝臓毒性物質も同時に与えてその所見を見る、或いは今後は動物実験で一応の見通しを得ましたら、直ちに人体実験に移すというようなこともしなければなりません。従つて只今指摘のような点は十分に考慮をいたしまして、どこから見ても国民納得のして頂ける資料を得たい所存でございます。
  18. 湯山勇

    湯山勇君 中間の御報告でございますから、なお結論を待つていろいろお尋ねいたしたいと思いますけれども、先ず先ほど八万五千トンの滞貨が現在はもつと殖えているというようなお話でございましたが、現在どれくらいあるのでございますか。
  19. 楠本正康

    説明員楠本正康君) 現在はその後六、七万トン又殖えておるように承知をいたしております。併し今後は、最近は特にこの約白米から五〇%程度が検出されますので、農林省もこわくなりまして、一切外米の買付を停止いたしておりますので、今後はもうものが入つて来ないのですから、現状通りだとかように考えます。
  20. 湯山勇

    湯山勇君 今のでわかりましたが、そうすると大体十五万トン近くあるということになるわけでございますね。  次にお尋ねいたしたいのは、以前に決定した基準でございますね、三%以内というあの基準は撤回されたのか、あの基準はそのままで配給だけを中止しておる現状なのか、その辺は如何でございましようか。
  21. 楠本正康

    説明員楠本正康君) あの基準は厳として生きております。ただ配給は一応しないというだけのことでありまして、多少でも黄変菌の証明されたような米は配給しないということでございますが、基準は現在まだ生きております。
  22. 湯山勇

    湯山勇君 基準というのは三%以内というあとできめた基準のほうでございますか。
  23. 楠本正康

    説明員楠本正康君) はい。
  24. 湯山勇

    湯山勇君 その基準をきめた要素になつたものは、現在相当くずれておると思うのですが、この際こういう研究が進んでおる段階で、あの基準を撤回する御意思はございませんか。
  25. 楠本正康

    説明員楠本正康君) 現在はこの研究成績からいたしましても“まだ一応の結論が出ておりませんから、只今お答えを申上げ通りでございますが、併し今後研究成績によりまして、新らしい事態が、学界の一致した意見によつて確認されれば、これは或いは基準を変えるということになろうかと存じます。
  26. 湯山勇

    湯山勇君 現在国民の頭の中にはあの基準がしみ込んでおります。そうしてそれに対する不安がああいう事態になつたと思うので、あのときの基準の基礎になつた白色米にも毒があるという前提に立つてきめられた基準は、もはや意味をなさなくなつておる段階だと思うし、これだけ組織的な研究をして行くという段階には、ああいうものがあれば、今されておる研究があの基準の裏付けの研究であるというような不安も出て来ると思います。疑念も出て来ると思う。この際いさぎよくあの基準はもう白紙に返して、そうして新らしい基準を作るための研究だというような打出し方をする御意思はございませんか。
  27. 楠本正康

    説明員楠本正康君) あの基準は飽くまで試験研究が進行中でありますので、あの当時におきましても暫定基準であるということを申上げておるわけであります。従つて今後新らしい基準ができるような事態になりますれば、当然新らしい基準に直さなければならんわけであります。併しながら少くとも現在においてはあの基準は十分に安全率を見た基準と今でも考えております。更に当時よりも一層その確信を深めておるわけでございまして、現段階におきましてはあれを更に改める、結論を前にして改めることは考えておりません。
  28. 湯山勇

    湯山勇君 改めることじやなくて白紙に返す、私は当然そうすることが正しいと思うんですけれども、そういうふうにお考えにならなければ、これは委員会でとやかく言う筋合もないと思いますから、ただ強くああいう基準を速かに撤回して、白紙に返して、もつと何といいますか、フランクな態度で新らしい基準をきめて頂きたいと思います。  なお、それと関連してですが、あの基準の有無にかかわらず、今依頼された新らしい多くの研究機関に対しては、こういうこと、こういうことを研究してもらいたいということを厚生省は指示しておるのでございますか、或いは要望しておるか、それらの研究機関は大体研究機関独自の立場でそれぞれ周到な研究をしておるのか。これは榊原先生の御質問と関連して厚生省の指示したことだけを狭くやるとすれば、非常に不安な点がたくさん残つて来ると思いますし、それぞれの研究機関学者たちがいろんな場合をそれぞれの立場で周到に検討してやるとすれば、出てくるものには非常に信頼性が高まると思いますので、フランについてはどういうふうにされておりますか。
  29. 楠本正康

    説明員楠本正康君) 厚生省といたしましては学者にいろいろな研究をお願いいたしました以上、研究方法或いはそのやり方等について一々注文等は出しておりません。ただ従来は人工培養米と申しまして、普通の米に真黒の菌を培養さしたものを何汚とかいう、うに実験をいたしておりました。従つて現在まで何ら実験のないのはいわゆる白米の問題でありますので、白米を材料にして、私どもは現に配給を受けるべき白米を材料にして、それが果して食べられるものか否かという点を調べて下さいということをお願いしてあるだけでございます。
  30. 紅露みつ

    紅露みつ君 只今段階では、動物試験をしてそれから相当自信を持つたところで人体実験をするというようなお話でございますけれども厚生省としてはこの動物試験と共に人体実験ということを計画されたのではないのでしたか。それからそのことですが、これは人道上からも重大な問題だと思うのですが、私どもうわさに聞くのでありますが、すでにもう学生のアルバイトを募集してそうして厚生省は試食せしめている。そうしてその結果が非常にふらふらしてしまつてよくないのだというようなうわさが聞えるのでありますが、一体これは何ですか。確かめておきたいと思うのですが、計画はあつたと思うのですが、実際にしておらないのですか。そういうことはございませんの。
  31. 楠本正康

    説明員楠本正康君) 私どもは当初から最後的には人体実験をいたす計画で進んでおります。その点は先ほどお答え申上げ通りであります。ただ、そのやり方といたしましては、これはすべて人体実験は、動物試験その他で十分な見通しをつけてから人体実験に移すことが例であります。従つてこの場含も各種の動物……、猿等を使いまして十分に見通しをつけたあとで仕上げをする意味人体実験に移したい、こう考えております。従つてまだ別に人体実験は計画はしておりますが、併しその人体実験を実施する段階には至つておりません。併し間もなくその段階に入ることと期待をいたしております。なお第二点の、学生アルバイトか何かを募集して、人体実験を始めたというようなことはこれは全然事実無根であります。私どもは当初から学生アルバイトで人体実験なんかでできるものじやございません。人体実験ほどむずかしいものはございません。これはやはりよほどこの仕事に理解した専門家でないと、なかなかできないものでありまして、ちよつと食べ物を変えても肝臓機能くらいは直ちに障害が現われます。晩にちよつと酒を一ぱい飲んでもすぐに障害は現われます。学生アルバイトなんかというようなことで、とても人体実験はできないものであります。さようなことは全くためにせんとする宣伝かと存じます。
  32. 藤原道子

    ○藤原道子君 この際なお一応私確認しておきたいのですが、さつき部長は黄変米は一切配給していないということでございましたが、それは一切やつていないのですか、何%かはやつておるのですかその点を一つ。  それから農林省厚生省との間に意見が統一していないように思うのでございますが、その点非常に不安に思うのです。この前保利農林大臣は、あなたがたが見たつてわからないのですから、配給されても知らないでしよう、それを発表したほうが親切なんだというような暴言さえ吐いておるので、今部長のお話を聞くと、五〇%の最近のものには菌があるということを……、現実に我々が外米の配給を受けておるということになれば、一切配給していないのか、ごまかして配給しておるのか、何%は配給の中に入つておるのかということを明かにしてもらいたい。  いま一つ、私過日北海道の小樽に参りました。小樽は輸入米の船が入つてつたわけです。倉庫にたくさんにある。それで地元が黄変米配給反対の猛烈な運動を起したところが、これに対して、そういう反対をするような所には今後荷揚げをしないというので、ほかの港に着ける。そうすれば小樽市民は困るじやないかというようなことで反対運動を抑えておる傾向がある。北海道ではどうしても十月には配給をする。再搗精したものを、何ですか、十のものを七割五分までに搗き減らしをすれば大丈夫だ、大丈夫なものを配給して、而もなお且つ反対をする者があれば、反対があつても押し切つて配給をしろというのが農林省の指令であるということを言われて、非常な不安を与えておるということでございましたが、そういう点に対してもう責任逃れでなくて、ありのままに率直に私はこの際聞かして頂きたい。
  33. 楠本正康

    説明員楠本正康君) 現在までいやしくも黄変菌の付着が証明されたような米は一切配給をいたしておりません。たとえそれが極めて微量であろうが、何であろうが、一切配給をいたしておりません。従いましてその後滞貨が再び殖えたわけであります。  なお第二点に、現在すべて外地から入ります食糧は厚生省の輸入検査措置が済みませんと、内地に配給等ができないことになつております。従いましてたまたま小樽には成るほど検査機関がございます。併しながら検査機関のない港に入りましても、これは検査を受けることになりますから、私どもはどこの港へ入つても安心だと存じております。  それから第三にお尋ねの問題でありますが、成るほど現在あそこにイタリー米が一万トン入つております。これが一・八%に黄変菌の存在が証明されたわけであります。イタリー米は準内地米と称しまして、内地の米と全く同じでありまして、非常に消費者から歓迎をされている米であります。従つて是非この米は滞貨せずに配給をしたいというのが成るほど農林省の希望でありました。私ども先ほどお答えをいたしましたように、これを一応再掲精をいたして見ました。これを十一検体とりまして、再搗精の結果、果して菌があるかどうかという点を調べて見ましたところが、再搗精後はおつしやるように七分五厘描きといたしまして二割五分を排除いたしまして、これらの再搗精の結果は菌は全くどの検体にも証明されておりません。而も逆にぬかのほうに若干の菌が証明されておるわけであります。かような点から見まして、私ども先ほど搗精をすれば安全化されるということを申上げたわけであります。併しながら先ほど山下先生にもお答え申上げましたように、私どもとしてはもう一応この再搗精の問題を念のために別な方面から調べて見ようというわけで、この点まだ再搗精すればいいということは言つておりません。従いまして再編精いたしました米は現在小樽の倉庫にそのまま入つておる次第であります。併しこれは先ほどお答え申上げましたように、再搗精の結果が取りあえずできますれば、これは勿論処理いたします。
  34. 藤原道子

    ○藤原道子君 そういう点についてもう少し県民なり国民に知らせる親切心が欠けておる。南方米であるとか、イタリー米であるとか、その結果どうなんだ、だからこうなんだという親切な心遣りがないので、いきなり船の入港をとめるとか何とかというおどかしで出ているという点が私は非常に遺憾だと思うのです。官僚のやり方は全く怪しからんと思う点が多々ございますから注意して欲しい。  それからもう一つは、いやしくも黄変米の菌が見られたものは配給していないと言われましたけれども、この前厚生省発表では、輸入しておる米の四〇%ですかくらいより検査ができない。従つて六〇%は無検査である、抽出検査ですから……ということだつたが、全部現在は検査ができるような手配ができたのかどうか。全部の輸入米の四〇形より検査ができなくて、あと六〇%は無検査で入つて来ておる。ところが五〇%も最近菌が見えるようになつたとすれば、四〇%くらいのものを検査してあと六〇%が無検査であるとすれば、我々はそれを食べさせられておるわけです。それが僅か二、三カ月の間に係員を増員して、全部が検査をしておいでになるかどうか。
  35. 楠本正康

    説明員楠本正康君) この点も御指摘のように、当初は大体逆でありまして、四〇%無検査、六〇%検査というところでございます。と申しますのは、これは黄変米問題が起りました梅雨期前に、実はできるだけ買付けをいたしますので、そこに荷物が集中いたしますので、実は止むを得ず四〇%は無検査で出しております。併しその後配給が、ああした問題が起きてから垣後は、十数万トンしか入つておりません。極めて僅かなものしかその後入つておりませんので、現在の職員の範囲におきましても、これは全部全品検さをいたしております。従つてその後は検査洩れになつて出ておる米はございません。併し御指摘のように当初の米には四〇%程度は無検査のまま止むを得ず消費されたものがございます。
  36. 藤原道子

    ○藤原道子君 もう一度確認さして頂きたい。それでは現在外米を我々食べておりますが、それは絶対菌はないということでございますね。
  37. 楠本正康

    説明員楠本正康君) 検査の結果菌を証明し得なかつたものでございます。
  38. 横山フク

    ○横山フク君 先ほど榊原さんからの質問楠本さんからお答えがあつたのですが、病人、肝臓障害の人或いは小児であつたならば……健康人ならば問題ないでありましようけれども肝臓障害の人或いは小児、そういう場合も一応検査してのちなのかという質問に対して、柿本さんは検査してからだというお話ですけれども、それは本当でございますか。小児に対してどういう形で検査するのですか。
  39. 楠本正康

    説明員楠本正康君) これらは果して誰が食べても食べられるものか否かということを私ども研究者にお願いしてあるわけであります。で、当然研究者のほうにおいては肝臓機能というようなものにつきましては、肝臓に特性物質を与えながら、与えたものと与えないものと比較しつつ検査をするというようなことになるだろう。当然そうしなければなりません。又一方赤ん坊等に対しましては、これは勿論である。かような考慮をいたしまして、動物なり赤ん坊その他にやりまして、その発育を見るというようなこともしなければならんと思います。又一方更にそうした上でよほどの安全率をかけなければならんと思います。最後に例えば何でもないのだということになれば、まあ別として、かなりの安全率をかけて計算いたしますから、病人の場合も、肝臓機能障害者の場合も、或いは乳幼児の場合等も問題はない、かように考えております。
  40. 横山フク

    ○横山フク君 勿論学者のなさることですから、私たちも安心して然るべきだと思うのでございます。併しこういう公式の席上で榊原委員質問に対して楠本さんのお話だけですと、余りに小児に対して簡単に取扱つたような、モルモット的な気分が私には感じられたんですね。で、殊に鼠の赤ん坊というのがあるでしようが、余り発育期間の短いのと、すぐ成長するのと、人間のように長い期間をかけて成長するのと同じような過程では行かないのでございますね。そんなことはもう学者がよく御存じだと思いますけれども楠本さんのお話に対する御答弁では、簡単に扱い過ぎるようなきらいがあります。勿論高良委員のお話に対しての御答弁ではやや慎重であるふうにも思つたんでございますけれども、もう少し人体実験に対する御発言は、よその場合なんかより慎重な態度、言葉でおつしやつて頂きたいと思うのですね。  それからもう一つは、これは厚生省の問題ではないと思うのでございますけれども、五〇%検出されたから、だから輸入買付けは停止した、これは当然然るべきだと思うのでございます。私丁度ローマで以てイタリー米の買付に来た農林省の人と会つたのですが、イタリー米にも黄変米が多少認められるというので、外米買付を停止したそうですが、併し新聞紙等によりますと、供出米の分量も甚だ少くなり、八日分の配給ということになると、将来の配給計画はどういうふうにするのか、これは一応私たちとしてその場合にもう配給物はなくなつたから、もうこれで行つて、背に腹は代えられない式に研究されて、人体検査までするとなると相当期間を要するわけですがね。その間に又これを配給せざるを得ないような状態、立場に追込まれるかどうか。それを私としては懸念しなければならん。而も厚生省でも食生活の改善のほうも委員会を作つているわけですけれども、そういう形でただ黄変米だけの点でなくて、それに備えての形でどういうふうなところまで対策を食生活のほうに進めておるか、こういう問題も考えて頂かなかつたらばいけないのじやないか。イタリー米は恐らくイタリーでは黄変米は出なかつたけれども、輸送の過程で出たと思うのです。どうも私たちは黄変米がない、絶滅することはできないのだろうと思います。食生活のほうからどういうふうにお考えになつていらつしやるかも伺わせて頂きたいと思います。
  41. 楠本正康

    説明員楠本正康君) 配給計画が今後どうなつて来るかという問題でございますが、この最後的な責任、或いは細かい点は農林当局にお聞き取りを願いたいと存じますが、私ども農林省といろいろ打合せております段階におきましては、まあ十一月の二十日過ぎまでは現在の手持外米、黄変菌の見付からない手持外米或いは内地米等において操作が可能であると聞いております。その後はこれは供出の進捗状況等によつても支配されますが、まあ農林省の言い分としては、できるだけ早く一部の現在滞貨になつておる黄変米の米につきましても、できるだけ早い機会に結論を欲しいということはこれは言つております。併しこれらのことは私どもは学界の一致した意見があるまで慎重に考えたいと、かように考えておる次第であります。  次に食生活の点につきましては、私ども只今先生の御指摘のように米食に依存し過ぎる点が私どもの食生活に必ずしもいいことではありません。のみならず外貨の問題或いは価格の問題等を考えれば、私どもは理窟から申しますれば勿論、むしろ粉食にこの際切替えることが食生活改善の面では合理的だというふうに考えております。併しこれはまあ他にいろいろな関もあります。影響するところも多うございます。又一方国民の食生活の実態というようなものもございますので、私も趣旨といたしましては先生に全く御同感でございますが、実際問題となりますとこれはいろいろ考えなきやならん問題が出て来るのじやないか、まあこう考えております。
  42. 横山フク

    ○横山フク君 十一月二十日というお話ですというと、あと一月ないのです。でこの間黄変米の騒ぎが起きたのも、或る意味から言つたら、厚生省農林省に乗せられた、乗せられたと言うと悪いのですけれども楠本さん自身も少しおどり過ぎたと思うのです。そしてニュース映画の中で以て、アルコールでもメチル・アルコールが何%入つていてもどうとかだから、黄変米が何%くらいは何ともないというところまで見得を切つたのです。今度の場合は今のお話では、たしか或る程度の化学検査が済まなければそれはいたしませんというお話をしておられるけれども、さて十一月二十日まであと一月未満で、今の研究程度で、まだ猿の一月くらいの研究、鼠の二月くらいの研究で、まだ肝臓機能の障害のどうとかいうところまで行かない。今まで何月かかつていて、二月、三月かかつていてここまでしか行かないのに、これから一月の間にその研究が行つて、而も一番大きな問題は国民納得でしよう。あれだけのニュース映画が出れば、国民黄変米がないと言つてもあると思つています。その国民納得させるまでのことが一月未満でできるかどうかの問題です。そしてその場合によつて、いや配給するものがないのだから、国家的見地に立つて楠本さんが義侠的な精神を出して、又変なことをおつしやらないかどうかということを私は非常に懸念するのです。もう過去のことは言わないのですけれども、今度は慎重な気持で、まあ大体そういうふうな追いつめられるところまで行かない間に研究もすべきであるし、それに対する対策、はかの代替物資といつたことも考えるべきだと思うのです。でございますので、慎重にして頂きたい。まあ質問はしません。したつて同じだと思うのですがね。どうぞ慎重にやつて頂きたいと思います。
  43. 高野一夫

    高野一夫君 時間も大部経つて、あとヒロポンの問題もありますが、一つだけ厚生省に要望しておきたいのですが、滞貨の八万五千トン、或いは六万乃至七万トンのその後の滞貨ができたということでありますが、これを食べるためのいろいろな試験をやつておるわけですが、これを材料にしてアルコール醗酵に使う、或いは酒の醸造という試験をやつておられるかどうか。若しやつておらなければこの試験もして、若しも万一の場合にこの八万五千トン乃至七万トンの滞貨を廃棄しなければならないというような場合が起つたときの準備にする必要はないかも知れないが、アルコール醗酵をやれば何万石、酒の醸造をすれば幾ら、それでその金額は幾らになる、そうするとこれだけの滞貨に対する損失の補償をすることができるかできないかというような金額の面、損害をなくするような方法を別個の道で考えなければならん場合があるかも知れない。こう思うので、これは実験が間に合わなければ一応大体計算でパーセンテージが出て行くと思いますから、それで一応計算してその資料をお出し願いたい、委員長を通して一つ……。
  44. 横山フク

    ○横山フク君 それからもう一つでございますけれども、食生活改善のほうの、それは今の国民生活感情或いは今までの習慣から言つて簡単に行かないのはわかつております。併し簡単に行かないからといつてほつといたら、この問題はもう日本の国のある限りつきまとう問題だと思うのです。で今予算の編成期にあると思うのですけれども、そういう点に対して何かお考えになつて、そうして予算のほうにも乗り出していらつしやつておるのですか、これは簡単にできないからといつて今まで通りの形でとつていらつしやるのですか。
  45. 楠本正康

    説明員楠本正康君) 細かい項目、数字等の記憶をいたしておりませんが、来年度の予算におきましては食生活改善の面を十分予算を要求いたしております。なお今後引続いて食生活改善につきましては一層一つ力を尽して参りたい、かように考えておるわけであります。
  46. 竹中勝男

    理事竹中勝男君) お諮りいたしますが、本件の本日の質疑は大体この程度にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  47. 竹中勝男

    理事竹中勝男君) 御異議ないと認めます。   —————————————
  48. 竹中勝男

    理事竹中勝男君) 次に、覚せい剤取締に関する件を議題といたします。法務省当局及び厚生省当局から取締りの状況について御説明を願います。最初厚生省の監視課長の大熊治一君。
  49. 大熊治一

    説明員(大熊治一君) 最近の覚せい剤の取締りにつきまして簡単に御説明申上げます。  厚生省といたしましては、現在覚せい剤取締法で規定せられております製造業者、施用機関研究者につきまして、常時の監視によりまして、この間に流れております正規の覚せい剤が闇に流れないように常時監視をいたしております。現在まで我々の手許に参つております報告によりますと、これらの機関、製造業者、施用機関研究者につきまして正規のものが闇に流れておるということは報告を受けておりません。従いまして、今後もこれらの正規の覚せい剤につきましては監視を強化いたしまして、今後も十分こういつた方面の取締りをやつて参りたいというふうに考えております。
  50. 竹中勝男

    理事竹中勝男君) 次に、法務省刑事局刑事課長の長戸課長にお願いします。
  51. 長戸寛美

    説明員(長戸寛美君) 覚せい剤の密造、それから密売等、覚せい剤をめぐります犯罪は年々増加いたしておりまして、その弊害は、治安維持の面からしましても到底黙過し得ない情勢でございます。そういうことに対処いたしまして、法務省といたしましては、この種事犯の根絶を期するためには、先ず検挙の初めから公判の終結に至りますまで、その処理が終始計画的に統一的な方針の下に行われなければならないというふうに考えまして、本年五月先ず覚せい剤の担当の係検事を設けた、覚せい剤担当の専門の検事を設けたのを初めといたしまして、六月と七月には全国八高等検察庁別の係検事会同を行いまして、密造、密売の根源を突く方策等について種々協議を遂げますと共に、その撲滅のために徹底的な、全国的に徹底的な検挙を励行しまして、その処理においても厳罰を以て臨むように指示いたしたのであります。更に、本月七日と八日に全国の次席検事会同がございましたが、その際にも重ねて同じ趣旨の指示を行なつておるわけでございましてこれらにより覚せい剤犯罪の絶滅を期しておる次第でございます。従いまして、検察官におきましては覚せい剤違反についてその容疑のあります者は原則として起訴方針を堅持する。で、この種の事件の論告、求刑につきましては検事の、検察官の意図するように厳罰を科せられるよう裁判所に要望するというふうにいたしておるわけでございます。現在検挙を、各関係機関と連絡いたしましてこのような方針の下に励行しておるのでありますが、従来検挙の面で困難視されておりました密造の事犯につきまして、最近に至りまして大阪を初めとして全国十数カ所においてその検挙に成功を見たのであります。  ただ、この覚せい剤の事犯の取締りというものは、従来の経済事犯の取締りと同じように、ただ一時的な検挙を以てしてはその絶滅を期し得ないのであります。これを継続的に計画的な検挙をしなければならないということに鑑みまして、目下引続き全国的に一斉検挙を行なつているわけでございます。只今お手許に表を差上げておきましたが、その表で受理の欄を御覧願いますと、そこに新受と申すところがございます。これは我々の用語でございまして、その年に検察庁て受理したということでございます。その新受の計の欄を御覧願います。昭和二十六年に覚せい剤取締法が制定されたわけでございますが、その二十六年には全国検察庁で受理いたしました事案は一万一千九百ばかりございました。二十七年には二万三千余となり、二十八年には四万三千というふうにだんだん増加しております。本年はこの一月から八月までで四万二千人を受理しております。本年一月から八月までの受理人員が四万二千でございますが、昨年同期におきましてはそれが二万四千余でございました。約二倍に近い検挙をしておるわけでございます。まだ統計に現われて参りませんけれども、この九月、十月は引続き松挙をいたしておりますので、本年末までには七万人は検挙できるというふうに考えておるわけでございます。今後とも関係機関との連絡を密にいたしまして、このような徹底的な検挙を行い、事犯の根源を突くように努力いたしたい、こういうふうに考えております。
  52. 竹中勝男

    理事竹中勝男君) 只今の御説明に対しまして御質問がございましたらお願いいたします。
  53. 榊原亨

    榊原亨君 この覚せい剤の取締りがまあだんだん実行されおるようでありますが、最近チクロパンソーダをヒロポンの代りに用いるという青少年がだんだん植えて来ておるのでありますが、これを一つ覚せい剤取締の中に御指定下さるわけには行かないのでございましようか。そういう御意思がありますかありませんか。承わりたいと思います。
  54. 大熊治一

    説明員(大熊治一君) 只今指摘のチクロパンソーダにつきましては、かねてから覚せい剤と裏腹に使われるということを聞いておるわけでございまして、これにつきまして、過日オートンがやはりこのチクロパンと同じように使われていたという事例に鑑みまして、オートンにつきましては御承知の通り麻薬に指定されたわけであります。このチクロパンにつきましては、現在使用の状況等につきまして調査いたしました上で、御指摘のような検討をいたして参りたいというふうに考えております。
  55. 榊原亨

    榊原亨君 どうも御当局の措置が非常に遅いのであります。例えて申しますと、今御指摘になりましたオートンのごときは、もう数年前にモヒ、阿片の代用品として使つておる。これはぜひとも早く麻薬取締法の中に入れて取締つてもらいたいとこういうふうに我々言つておるのでありますが、さていよいよ実行になりますと、数年後になつて漸く今指定するとかせんとかいうお話、もう調査も何も実際土のことを御覧になればすぐわかる。チクロパンソーダが如何に今の青少年のヒロポンの代用品に使われておるか、或いはこのヒロポンにいたしましても、もうずつと前に進駐軍が参りましてそうして阿片その他の麻薬の取締が厳重になつたときに、もうすでにそのときからヒロポンは問題になつていた。ところがそれをそのままに放つておいて、そうして数年経つてもう殆んど全部に行き渡つてしまう時分になつてから、初めて覚せい剤というものが問題になつて来たというわけでありますので、このチクロパンソーダが今ヒロポンの代りに使われておるというのは、もう明らかな事実でありますから、それが全国で何人あるとか、或いはどういう分布であるとかいうようなことをお調べになる前に、早くこれを指定して頂くということがもう人道上の上から申しましてもこれは大切なことである。そういう意味において厚生省はこれは速かにチクロパンソーダをヒロポンと同様にお取扱いを願いたい。或いは昨年高野委員なんかの御尽力で国会を通過いたしました覚せい剤の取締法の中にも、省令一本でこれがきめられるというふうに私どもは記憶しておるのでありますが、そうでございますならば、早くもうその調査も何も要らない。もう速かにチクロパンソーダというものを指定して頂いてまだ十分行き渡らないうちにこの芽を摘んでしまうということが必要だと思うのでありますが、その点についての当局の御意見はどんなふうにお考えになつているのでしようか。
  56. 大熊治一

    説明員(大熊治一君) 只今指摘になりました覚せい剤の取締法のこの前の改正でございまするが、政令で指定ができるというふうになつておるというお話でございまするが、覚せい剤となつておりますこの覚せい剤という意味が、先ほどからのチクロパンと作用が反対の作用でございますので、そういつた面でこの政令で指定するということは、当初我々のほうの考えでは、同じような覚せい作用を有するほかのものが出て来た場合ということを一応想定いたしまして、この取締法の中に改正があつたというふうに考えておるわけでございまして、チクロパンにつきましては別途に検討いたして参りたいというふうに考えております。
  57. 榊原亨

    榊原亨君 そういたしますると、当局のお考えでは、チクロパソソーダは覚せい剤と作用が違うから覚せい剤取締法においては取締ることはできん、別の法律を作らなければできないのだという御見解でございますか。
  58. 大熊治一

    説明員(大熊治一君) 先ほど申上げましたように、覚せい剤というものとチクロパンというものが本質的に薬理作用が違うわけでございます。従いましてこの法律のいわゆる政令で指定するものという中にチクロパンを指定するということは、先ほど申上げましたように覚せい作用という点で問題があるのではないかというふうに考えましたので、現在までのところ、御指摘のようなこの政令で指定するものというものの中には含まないというふうな考え方で現在まで来ておつたわけなのであります。
  59. 榊原亨

    榊原亨君 端的にお尋ねいたしたいのでありますが、そうすればチクロパンソーダに対しましては別の取締法を作らなければ、当局はお取締りができないという御見解でございますな。端的に一つお答えを願いたい。
  60. 大熊治一

    説明員(大熊治一君) 現在までのところ、チクロパンについてはこの覚せい剤取締法の政令で指定するものという中には含まないということで考えて参つたわけなのであります。
  61. 高野一夫

    高野一夫君 私長戸課長に伺いたいのですが、ヒロポン禍が最近ますます問題になるようでありますが、これは法律改正だけでなく、いろいろな啓蒙運動なんかが特に大事なのかも知れませんが、少くとも我々が法律改正をやつたということは、取締の適正を期してもらいたいという意味でやつたわけなのであります。そこで先ほどのお話の中に、検察のほうで要望した、求刑した通りの判決といいますか、処罰が下されるように実は要望したのだ、こういうお話がありますけれども、従来といえども、どうもこの問題に対する処罰が非常に軽いというわけでありますから、今度は非常に高度の高い処罰をそこに引上げたわけなんですが、そのときも我々が考えたことは、如何に年数を引上げても、やはり処罰がそこまでいかなければなんにもならないじやないかということがあつたわけなんです。今、今度まあできるだけ検察の要望通りに処罰してもらいたい、こういう要望をしたというお話でありますけれども、法律改正後、然らばそういうようなふうの、あなた方が適正と考えられるような改正の趣旨に副うたような処罰をされた、そういう判決があつた事例がありましようかどうかということが一つと、それからもう一つは、最初我々が法律改正のとき考えましたのは密造、密輸入、これが一番大きい問題であるから、これに重刑を科する、こういう方針でありましたところが、どうも不法所持なり不法使用も同等の重刑を科するということにすれば、検挙の捜査上非常にやりいいというような法務省からの御要望もあつて、そうして我々もどうかと思つたが、不法所持、不法使用に対しても密造乃至密輸入と同格の重い刑罰を処することに法律を改正したわけなんです。そこでそういう意味におきまして不法所持、不法使用というようなものに対する犯罪検挙の方法は、今度の改正の趣旨からいつて、うまく適用されているでありましようかどうか。こういうことについて二点伺つておきたいと思います。
  62. 長戸寛美

    説明員(長戸寛美君) 先生方の御尽力によりまして先頃覚せい剤取締法の改正をみたのであります。これは我々として非常に喜んでいる次第でございます。それを機会に、つまり覚せい剤取締法の改正によりまして罰則が強化されたのを機会として、従来の起訴なり或いは求刑なりの考え方をうんと引上げると申しますか、という態勢をとつたわけでございます。先ず起訴についてみますと、我々は起訴率を、起訴したものと不起訴にしたものと足したものに対する起訴の比率を出しておりますが、昭和二十八年度におきます一般の刑法犯の起訴率は三五%であります。覚せい剤取締法違反の起訴率は五三六%であります。それが本年になりますと、これは一月から六月乃至八月までの計数でございますが、一般刑法犯における起訴率は三九%であります。それに対しまして覚せい剤の取締法違反の起訴率は六六%、六割六分というものを起訴しておる。原則として、起訴と申しましてもいろいろとその間に事情がありますが、この六六%という起訴率は相当高度のものであります。只今先生がおつしやいましたように、従来裁判所の刑が若干軽いという憾みがございました。例えて申しますと、重くてもまあ二年どまりぐらいしかいかない。これは我々検察の面のほうも十分反省しなければならん点があつたと思うのであります。これは覚せい剤の害悪に対する認識その他が一般に徹底しなかつたというところにもあろうかと思います。そういうところを十分に改めまして、裁判所に対してもこの覚せい剤の害悪の非常にひどいということを十分に納得するような論告を行い、又従つてかなり強く見えるその求刑が、如何に妥当であるかという点の理解を得て頂くというふうに指示しておるわけであります。なおそういうふうな求刑をなしました場合に、裁判が著しく軽いというふうなときには、検察官はその求刑が正しいのであるからして、それに対しては検察官控訴を以て争つても、裁判所の認識を高めて頂くと、こういうふうにして参りたい。で、先生おつしやいましたような、改正後に非常に重い判決があつた事例というのはまだないのであります。併しながら我々としましては現在五年ぐらいの求刑をしたものはすでに事件があるわけでありまして、今後とも求刑並びに判決が厳罰を維持し得るようにして参りたいと、こういうふうに考えております。それから第二点は、先生のおつしやいました所持罪の問題でございます。この所持罪を重くして頂きましたことによりまして、我々としては検挙、捜査が非常に楽になるのであります。この点は厚く御礼を申上げたいと思うのであります。ただ、その所持罪という一般に受ける考え方から、刑が軽くなつてはこれは意味ないのであります。それを若し密造の場合に所持罪でやつた場合には、その事情を十分に裁判所に反映いたしまして、密造事犯として、当然然るべき刑を盛られるようにしたいと、こういうふうに我々は指示しておるわけでございます。
  63. 高野一夫

    高野一夫君 どうも私はこの刑事問題を余り知らないのですが、不注所持とか不快使用を検挙するというような場合に、持つているか持つていないか、使用しているか使用していないか、仮に持つている場合は捕えれば持つているわけですから、持つているか持つていないかわかるわけでしようが、使用しているというふうな場合は、これは使用している現場でないといかんわけですか。医師なら医師が診断をして確かに使用している、注射の痕があると、これは覚せい剤の使用した痕だと、こういうようなことだけではやはりいかんのであるか。いわゆる今の犯罪検挙のように使用している、注射なら注射している現場を捕えなければ如何ともすることができないわけですか。この点はどうなりますか。
  64. 長戸寛美

    説明員(長戸寛美君) 先ほど申上げましたように、所持罪が一番検挙しやすいことは事実なんでございます。ただ御承知のようにこの覚せい剤は使い始めますと、早ければ一カ月、遅くとも数カ月では常用者と申しますか、中毒者と申しますか、かなりの段階に進むわけでございます。一番初めはそれを少量使つておりましても、その後には四十本乃至六十本を一日に使う。最も少いもので一カ月にこのヒロポンを買うのに要する費用は五千円といわれ、多ければ一万円以上の金をそれに費すというふうになつております。そうしますれば先生のおつしやいましたように注射痕その他によりまして不正使用剤というものもわかるわけでございます。
  65. 紅露みつ

    紅露みつ君 この表で拝見します未済のところですが、これはこんなに二十六年度から二十七年、二十八年ずつとこう未済の分があるのですが、これはどうしてこんなに古いのが未済で残されておるのでございますか。
  66. 長戸寛美

    説明員(長戸寛美君) この未済をなくするということは、我々指示もし、努力もしておるわけでございますが、実を申しますと十一月、十二月になりまして一斉取締的なものが非常に重なるわけでございます。例年警察からはもう十一月、十二月となりますとどんどん事件を送つて参ります。それが警察のほうの検挙とこちらが受けるのと若干のずれがございますものですから、そうすると暮に非常に溜つてしまうのです。そういう関係でどうしても若干翌年に繰越されるというつまり形になるわけでございます。まあこの事件はもう一つはこういう問題もあるわけでございます。と申しますのは、この事犯は無職の者が四七%くらいこの違反については考えられるのです。そうしますと住居不定のものもかなりある。相当事犯が重くて身柄付きで検察庁に行きますものはよろしいわけですが、在宅のままにしておるものが喚び出しても、そこにいないというふうなことも考えられるわけであります。それからもう一つは、密造事犯は大体身柄付きにしておると思いますが、警視庁の昨年の検挙しました事犯から見ますというと、密造犯の七〇%が朝鮮人である。そういうふうなことからこれ又密造というのは今四畳半くらいのところで、もう或いは押入れの中で、而も蒸溜水を使わず、水道の水ならまだよろしい。普通の井戸水を使つてこれを作るという危険なやり方をしておる。これがところどころ転々いたします。場所をしよつ中変えるわけでございます。そういうふうなことのためにそれか一時在宅が許されておるというふうな場合には、そこにいなくなるという状態もある。そういうふうな検察庁に行きまして、記録としてそのまま暫く残つておる、未済になるというふうなことがあり得るわけであります。
  67. 紅露みつ

    紅露みつ君 事情を伺つてみると、非常に取締り困難だということがわかるのでございますけれども、ただそれを追駈け廻しているというだけではなかなかだと思うんですね。あれよあれよという間にこのヒロポン患者というものは殖えて来ておるんですね。やはりこれは責任の所在ということを皆考えているわけですが、これはやはりなんでございましようね、厚生省もさることながら、この取締は検察庁にあるんでしようが、何か根本的なお考えがこの機会になければならないと思うのですが、もう少し撲滅をする方法としてのお考えを伺つておきたい。
  68. 長戸寛美

    説明員(長戸寛美君) これは取締は勿論大事でありますが、これは密輸、密造、密売、こういうふうなところに先ず重点を置かるべきものであろうと思うのです。ところが先ほど申上げましたように、密造については朝鮮の人たちが大部分を占めておるわけです。それをやつておる人たちが……。ところが今度はそれを全体として見ますると、日本人が八三%ばかり占めておる。そうすると使つておるものは日本人が大部分であるということになるわけです。その中で少年は昨年の警視庁の調べによりますと、大体二二%が二十歳未満の少年である、我々の調べによりますと、全国的に見てこの違反者のうちでやはり一割ばかりが少年であるということになる。この少年に対しまして私はただ処罰のみを以てやつていいかどうかは相当疑問であるというふうに考えておるわけです。学生は全体の一%ばかりで少うございますけれども、この学生の扱いにも相当気を付けなければならん。そこで今のところ実は覚せい剤は麻薬と違いまして、禁断症状も麻薬ほどひどくないように思われます。それから中毒のあれも、早ければ二週間くらい或る所に置きまして隔離しておけばなおる人もあるわけです。もつと長く置かなければならんものも勿論ございます。そこでこれは本来言いますと、処罰だけでやつていいかどうかわかりませんが、少年院に送りまして、或る一定の期間そのものを入れておけば、それが中毒症状から又治癒して行く、或いは少年鑑別所というような拘禁所がございます。そこに二週間なり何なり入れておけば、或る程度はなおるということが考えられます。ただ同じ又元の古巣へ帰るところに問題があるわけです。そこで治療の点もそういうふうな少年院とか、鑑別所とかべやるのでなしに、やはりこれに対しては治療の施設というものを別に考えるべきである。そこでこの前の国会におきまして、先生方の努力によりまして、精神衛生法が改正されまして、精神病者ばかりでなしに、覚せい剤なり、麻薬なりの中毒者につきましても、精神病院に入れられることになりました。これは非常に結構な道が開けたわけでございますが、それについてやはり病床をもつと殖やさなければならない。そこでなおして頂く。例えば船橋に総武病院というのが御存知のようにあります。ここには覚せい剤の患者が八十名ばかりおります。ところがこれは割合に何と申しますか、家庭のいいところの子弟ばかりでありまして、家庭のほうで何とかしてこの子供をなおしたい、こう考えているわけであります。ところがそうでなしに、貧しいといいますか、家庭の悪いところの子弟というものは本当に悪いことをしてしまつて、それが気違い沙汰になつた、心身喪失ということで精神病院に入れられて、初めて治療をされるというのではこれは足りないと思う。何とかもつと悪くならん前にそういうふうな青少年がなおるような施設が拡充されることが私どもとしては望ましい、こう考えているわけであります。
  69. 藤原道子

    ○藤原道子君 そこで私いつもこれに疑問に思うのでありますが、密造者というものが根源ですね、結局製造を許してないのですから……。密造者が保釈になる、これはどうしても納得できないのでございます。これも法を犯した者であり、青少年を蝕むものは、これより大きいのはないと思います。従つてこれは密造者は即決重罪に処するというくらいの強い方針をとつてもらわなければ駄目です。中国の亜片戦争などの例を見ましても、容易なことでヒロポンがここまで来ているものを退治できないのです。ですから今までの法律で保釈が許されるとか、ほかの犯罪ならば求刑が五年であつたら判決は三年であるとか、二年とか、執行猶予とかいうことになる。そういうほかの例とは別個の犯罪だと思いますので、これは国民をも破壊してしまうものでございますから、密造者は絶対に保釈しないようにしてもらいたいのです。私素人ですから法律は無知ですけれども、併し国を憂うるならば、やはり裁判もその問題に処して対策が立てられていいのではないか、素人なりに考えるのでございますが、如何ですか。
  70. 長戸寛美

    説明員(長戸寛美君) これは御存知のように刑事訴法で、八十九条に保釈の規定がございまして、これに関連して該当しますのは、「被告人が常習として長期の三年以上の懲役又は禁錮にあたる罪を犯したものであるとき。」、この事犯は今度は常習の営利場合には七年まで参ることになつておりますからしてそういうふうな場合に当るわけであります。「被告人が罪証を隠滅し又は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。」、こういう場合を除いては保釈の請求があつたならば、必ずこれは許さなければならないというのが刑事訴訟法の建前になつております。従つてそういうふうな事由がございましても、保釈を許すこともできるわけでございますし、裁判所はそのほかに刑訴の九十条に「裁判所は、適当と認めるときは、職権で保釈を許すことができる。」、要するに新刑事訴訟法の建前は、恐らくは裁判の確定するまでは白いと申しますか、というのを建前にして作られておりますので、むしろ保釈が原則的なことになつておる。そこで我々といたしましては、こういうふうな、只今申上げました被告人が常習として長期、三年以上の懲役又は禁錮に当る罪を犯したものである、こういうふうな条項がございますので、そういう点を裁判所に強く訴えて成るべく保釈をさせない、しないでもらうというふうに努力して参りたい、こういうふうに考えるわけです。
  71. 藤原道子

    ○藤原道子君 それはよくわかるんですよ。法律の建前は……。だけれどもこの密書する者はれ、保釈をすれば証拠隠滅の虞れも多分にあるし、方々へ連絡をとるんですね。密造者が、これは実に網の目のようなものでございますから、明らかに証拠隠滅の虞れは多分にあるわけでございますから、更に長戸課長の御判断によつて一つ厳罰に処するように裁判を速くして頂くように、ヒロポンに関しては特例を以て私はお運びを願いたい。ヒロポンから起る社会的悲劇というものはもう今更私が申上げるまでもないことでございますので、是非そういうふうにお願いいたしたい。それから罪が大体に軽過ぎるように思いますので、先ほどのお話もございましたが、更にお願いをいたしておきます。  それから、いま一つは、麻薬にしてもヒロポンにしても、もうやめようと思つてもなかなかやめられないものだそうですね。殊にヒロポンはいろいろな網ができておりまして、出て来ても友達が呼びに来る、映画に行つた帰りにひよいと元の同僚に会うようなことから、ずるく入つて行くということを大変私たちの周囲でも聞いているのでございますが、これはやはり後保護施設といいますか、結核におけるですね。そういうふうな本人が勤労の意欲がついてはつきりするまでの間保護するようなところ、更生寮というんでしようか、そういうものも必要だと思いますが、どうでしようね。
  72. 長戸寛美

    説明員(長戸寛美君) これは先ほど先生方からお話がございましたように、取締りは取締り、又は治療は治療でございますが、これは国民的と申しますか、或いは一般家庭を含めて全体が覚せい剤の善悪のひどいことを認識されて、それによつて只今先生のおつしやいましたように、その者が同じ環境の下におかれないように持つて行かなければならないというふうに考えております。それともう一つ私の非常に心配しておりますことは、私どもが法務省の報告を受けました事案をちよつと調べて見ましても、この覚せい剤を原因すると思われる殺人、放火というものがかなり多いのでございます。これは御承知のように、分裂病によく似た症状になつて参るわけです。それによりまして嫉妬妄想にかられまして、殺人を犯し、傷害を犯し、放火をするというふうになつて参るのでありますが、これが刑法上心神喪失と認定される場合がある。次には心身耗弱と認定される場合がある。或いはそうでなしにやはり普通の正常人として扱われている場合があるわけでございます。正常人的に扱われまして、これが処罰されていればよろしいんですが、それが心神喪失と認定されれば、刑務所でなしに精神病院に行くことになります。ところがもつと中間存在である心身耗弱の程度でございますと、これが一般の家庭に帰つて行くということが考えられるわけでございます。そうしますると、再びそういうことは繰返されるということが考えられるのであります。これは施設の問題もそういう意味においてもう一遍考えて頂かなくちやならんし、我々も考えるべきである。心神耗弱の者をどう扱うかという問題であります。これはもう本当におかしいような幻覚妄想にかられるわけでございまして、自分が誰かから殺されるというふうな放送が聞えてくる。しよつ中聞えてくる。それで相手が殺すならば、自分のほうから先に殺してしまうというふうな妄想にかられて殺人を犯すというふうなこともあります。或いは放火にいたしましてもマイクロフォンがどこかに隠されており、自分の動静を始終見ておる者がある。ところが火鉢の底を探してもそのマイクロフォンがわからない。家を焼けば出て来るであろうというふうなことで放火をする。こういうふうな症状にまで達する恐るべきものであります。従いまして、心神耗弱についての施設ということは我々は望ましいというふうに考える次第であります。
  73. 藤原道子

    ○藤原道子君 厚生省にお伺いしたいのですが、これは厚生省の問題になるのじやないかと思うのですけれども、こういう問題についての国民的な関心を高める。国民の協力がなければ覚せい剤の取締りの成果は挙らないと思うのです。そういう場合に覚せい剤の恐怖についての国民的広報活動というようなものについて何かお考えになつておいでになるか。それから保護施設というようなものについての具体的な方法をお考えになつておられるか。それから最近覚せい剤の恐怖とかいろいろ映画が出ておりますね、小さな二巻ものくらいの……。そういうものを各地方に持たせて、それによつて絶えず宣伝活動を行うというような方法をお考えになつておられるか。こういう点について一つ厚生省側の御意見を伺わして頂きたいと思います。
  74. 大熊治一

    説明員(大熊治一君) 第一点の広報活動についてでございますが、先生が今おつしやられましたように、この覚せい剤の問題は、我々といたしましては、要するに取締りの強化と、それから啓発宣伝、それから中毒者の処置というこの三点が大筋であつて、而もこれを同時に強力に推し進めて行かなければならないものだろうと考えているわけであります。只今指摘の広報活動につきましては、我々といたしましては昨年来各都道府県に対しまして青少年問題協議会の運動期間中、この覚せい剤の問題を取上げまして、強力に広報活動を行なつてつたわけであります。本年の五月に入りましてもやはり青少年問題協議会を通じて広報活動をやつてつたわけであります。これにつきましては、我々といたしましては相当の成果が挙つたというふうには考えておりまするが、なお今後もこの広報活動については相当大きく力を入れて参りまして、各都道府県に強力な広報活動をやるように指示いたしておりますし、現実に各都道府県はその実情に応じまして現在も続行いたしております。これに関連いたしまして映画でございまするが、この映画の問題は実は私どもこの広報活動を去年から初めますにつきまして、先ずスライドを作りまして、これを都道府県に配付いたしまして、それによつてこの覚せい剤の恐ろしさというものを知らせるという方法をとつてつたわけでありまするが、最近この映画について二、三の映画会社から我々のほうに内容の検討を依頼されたものがございまして、その内容を検討いたしまして、現在でき上つております「覚醒剤の恐怖」それから「失われた青春」、この二本につきまして厚生省といたしまして推薦いたしまして、各都道府県の実情に応じまして、これを都道府県で買上げてこの映画によつて今後は更に強力に広報活動を行うように指示してある次第でございます。なおもう一点の保護の施設につきましては、これは実は公衆衛生局のほうで中毒者の収容施設というものに関連して検討されておりますので、所管が違いますので詳しく申上げられないのでございますが、いずれにいたしましても中毒者の処置という問題になつて参りますと、精神病院又その他の精神病院に収容されない一歩手前の者というものについても何らかの処置を必要とするのではないかというふうに考えております。
  75. 高野一夫

    高野一夫君 長戸課長さんに伺いたいのですが、この犯罪人の約七〇%が朝鮮系であるというお話ですが、これは前の古い統計もたしかそういうふうになつていると私は承知しておりますが、七〇%の朝鮮系のうちでこれの殆んど全部が北鮮系であるか南鮮系であるか、大体大ざつぱなところでその比率がおわかりになりますか。
  76. 長戸寛美

    説明員(長戸寛美君) 現在のところわかりません。
  77. 高野一夫

    高野一夫君 速記をとめて頂きたいのですが。
  78. 竹中勝男

    理事竹中勝男君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  79. 竹中勝男

    理事竹中勝男君) 速記を始めて。
  80. 紅露みつ

    紅露みつ君 お話を伺つて、これはなかなか大変に複雑な問題だと思うのでございますけれども、今厚生省でおつしやつたように、まあ取締りと広報活動と、啓蒙ですね、それから施設で更生さして行く、この三者揃わなければという御意見、これは御尤もだと思うんですが、一体このヒロポンというのはどちらでも強力に行つて頂けば、厚生省でも、法務省でも、私はどつちでも成果が挙げられると思うんです。法務省にすれば、取締りをしつかりやつて頂いて、密輸ができない、密造ができない、密売ができないということになれば、厚生省のほうの、つまりその啓蒙も、或いは収容もそこでもう絶えてしまうと思うんですが、或いは又厚生省のほうが先に行つたつて結構だと思うんです。これはもう広報活動が十分にでき、啓蒙ができて、使う人がなければ要らないんだ。ですからお互いに厚生省はどこまで進んだだろう、法務省はどこまで進んだだろうというふうな工合に、見合わせているような工合にも映るのでございますが、まあできるだけ一生懸命やつてはおられるのでございましようが、私はその三者が協調して行けば、一番効果を挙げ得るということはわかりますけれども、遠慮なくどちらからでも私は進めるだけ進めて頂かなければ解決がつかないと思うんです。結果から見れば何か牽制し合うみたいな、まあそんなこともないでしようけれども、どうか一つそんなつもりでどちらからでも進めるだけ進めて頂かないと、これは本当に亡国だと思うんです。十分専門な立場に立つておられるので御存じだとは思いますが、この点を強く要望しておきます。
  81. 藤原道子

    ○藤原道子君 最後に一つ伺いたいんですが、「覚醒剤の恐怖」とか、それから「失われた青春」、これは十六ミリで幾らでしよう、二、三万円でしよう。大きいのが五万幾らで、それで十六ミリは三万円だと思う。それを厚生省関係だけでなく、婦人団体へも、それからあらゆる団体へ連絡をとつて、その協力を求めるようなもつと強い積極さが私は欲しいのです。そのことを一つ
  82. 竹中勝男

    理事竹中勝男君) それでは本件の本日の質疑はこの程度にいたしたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  83. 竹中勝男

    理事竹中勝男君) 御異議ないと認めます。本日はこれを以て散会いたします。    午後零時三十四分散会