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説明員(
楠本正康君) 先ず
最初に
動物に対する
試食試験、
黄変米を食べさしてみる
試験でありますが、私
どもは従来各港で発見されましたうちの最も高率に
黄変米の含まれております米を例にとりまして、サンプルといたしまして、これを使用いたしております。そのうち三三%含まれております
黄変米、
ビルマ米、これを猿に九月六日以後
試食試験をいたしております。この猿につきまして毎日
血液を調べ、或いは
肝臓機能を調べ、或いは
腎臓の
機能を調べ、
小水を調べ、又一方全体的なす。
肝臓機能にも何ら
変化を認めません。
血液にも別に
変化は来しておりません。又
小水の
試験、或いは
腎臓機能等につきましても何ら
変化を認めません。なおこれらの猿は
試験に取りかかる前に、約一カ月に亙りまして厳密に
健康診断をいたしまして、
血液の
検査、
肝臓機能等を十分に調べてある猿でございます。猿を
使つて三三%の
黄変米の
試食試験をいたしておりますが、何ら現在までは変
つたところは見られておりません。又一方猿につきまして、他の二七%含まれている
黄変米を
使つて調べておりますが、これも同じように何ら
変化はございません。それから一方鼠その他の小
動物について
実験をいたしておりますが、これは長いところではすでに
ニカ月に亙
つておりますが、これらの鼠も対症例につきまして比べまして、体重の
増加、その他
健康状態に何ら
変りは認めません。更に、今後は小
動物につきまして
試食試験を継続いたしまして、最後的にはこれを解剖いたしまして
組織の
変化を調べる予定で進んでおります。更に次に
いろいろ米から毒素がありとすれば、これを抽出いたしまして、米からいろいろな
化学物質を抽出いたしまして、それを
試食試験、
経口試験、その他いろいろな
化学試験を実施いたしております。併しこれら高率に含まれております
黄変米につきましても、現在までの
化学試験におきましては何ら
毒性を認めておりません。
それから第三に、私
どもは
形態学的に、つまり
組織的に米を切ることに成功いたしました。
目下組織検索を進めております。つまり
化学試験或いは
菌学的試験のほかに、目で見て判定するという、つまり
組織検索を進めております。現在一千倍に拡大して顕微鏡で見ております。これらの
検査によりますと、南方から入
つて参ります高率に
黄変菌の証明されます米を調べてみますと、菌の所在は極めて
表面的であります。殆んど
表面に附着した
程度、それからやや中に根が張るように、やや
菌糸が入り込んだという
程度であります。かようなことが
確められております。なおこれらの
程度の
変化は内地の米においても見られまして、産地において
搗精をいたしまして
配給地に輸送されます、いわゆる
国白と言われます米におきましても、やはり場合によりますと、その
表面にあたかも附着したように若干の菌が認められます。併しこれらの
表面に存在する菌は内部に
変化を与えることはなく、米の
澱粉粒の増その他は全く正常であります。なおこに関連いたしまして、従来
実験に用いられておりましたいわゆる黄色い米、或いは人工的に
培養した米を同じように
形態学、
組織学的に調べてみまする、これらの黄色い米になりますと、殆んど全粒が変質をいたしまして、
澱粉粒が崩れておりまして而もかなり深いところまで
菌糸或いは胞子がたくさん伸びておるのを証明することができます。従いまして私
どもは、
組織学的に調べましても、黄色い米と白い米との間には格段の差がある、つまり
白米のいわゆる
黄変米といわれるものの
変化は、単に
表面的に菌が附着した
程度のものである、かように考えられます。なお、これらの米は現在まで何千粒となく
組織検索をいたしております。かような
表面的なことから考えまして、一方私
どもは
只今山下先生の御
指摘のように再
搗精を試みております。従来まで多数の米の種類につきまして、それぞれ再
搗精の前後の
成績を比較いたしております。今まで五十
余りの検体から多数の菌を選び出しまして、再
搗精の前後を菌学的に比較をいたしております。再
搗精をいたします前には、
培養試験によ
つて黄変菌が発見されますが、再
搗精の後においては、殆んど菌の証明されない結果と相成
つております。全体で五十体
余りを
検査いたしまして、菌の証明されましたものは十例以下であります。而も菌が証明されると申しましても、その量は極めて少くなりまして、例えば再
搗精前に八粒認め得たようなものは、
再編精後に辛うじて一粒というようなふうに
減つております。かように
再編精によ
つて菌がなくなる、菌学的に証明することができなくなるということは、
先ほど申上げました
組織検索によ
つて、極めて
表面的な
変化であるということと、全く符合した
成績であります。
従つて私
どもといたしましては、
再編精ということは一応これで安全化されるというふうにも思われますが、併しながら更に念を入れて、これらの
試験を続けると同時に、現在まだ再
搗精によ
つて、
化学試験で、化学的にどんなふうに
変化して来るかということが調べて、ございませんので、目下
形態学的、菌学的のほかに、更に化学的な
検査をいたしておるわけでございます。
従つてこれらの
検査を全部完成し、念には念を入れて実施いたしまして、初めて
結論を導きたいと、かように考えておる次第であります。