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説明員(久下勝次君) 私から概略の経過を御説明申上げます。
問題の経過を申上げます前に、従来の私
どものほうの
やり方を御了解願
つておきたいのであります。御案内のこととは存じますが、薬価の変動によりまして、
社会保険の点数は全般的に変る
建前にな
つておるのでございますが、そのうち単位当りの値段の低い一般の医薬費につきましては、薬価
基準というものを定めまして、これによ
つて大体毎年一回、時によりましては二回
程度薬価
基準の改訂ということを行いまして、これによ
つて実際の薬価に適合するような措置がとられておるのであります。このほうは政令の定むるところによりまして、厚生大臣の権限で必要の都度改訂をいたしておるのでありましてその薬価
基準の改訂につきましては、本年度に入りましても、六月の一日以来薬価
基準の改訂が行われておる次第でございます。それに反しまして、ストレイプトマイシン、ペニシリンでございますとか、葡萄糖でございますとか、特別な単位当りの値段の高い医薬品につきましては、特別固定点数というものを定めまして、それを薬価の変動に応じて動かしておるのでございまして、過去におきましても、相当の薬価の変動がありますと、その都度中央
社会保険医療協議会に諮問をいたしまして、改訂をいたして参
つておるのであります。今回問題にな
つておりますのは、今申上げた単位当りの値段の比較的高いいわゆる特別固定点数の定められておりまするものについての点数の引下げでございます。その主なる種別を申上げますると、ストレプトマイシン、
結核の
治療薬であります。ストレプトマイシン或いは略語でパスと
言つておりますパラアミノ・サルチルサン、それからぺニシリン、リンゲル、葡萄糖の医薬品につきまして相当の大巾の値下りがございましたので、従来の例にならいまして点数の引下げを行
なつたのでございます。この値下りの傾向はすでに昨年の秋頃から現われておつたのでございますが、私
どもといたしましては当時すでに
結核治療指針の改訂につきまして日本医師会を通じて日本医学会に諮問をいたしておりました。その答申が近くあることが予想されておつたのでございます。これは今回の
予算案に関係のありまするストマイ、パス等の
結核新薬につきましては特に関係の深い問題でもありますので、実際の影響等も
考え、私
どもとしては
結核治療指針の改訂と同時に値下りに伴う点数の改訂を行うことが妥当であるというふうに
考えました。若干時期はその
意味で見送つたわけでございます。具体的に
治療指針の改訂に関する学界の答申も近くあるという見通しが立ちましたとき、即ち二月の下旬頃から日本医師会をはじめ、関係の諸団体とは点数の引下げに関しまして内交渉を開始をいたして参つたのでございます。
この点数の、そういう
意味合におきまする引下げにつきましては、従いまして二月下旬以降特に日本医師会との関係におきましては再三の折衝が行れておりました。私
どもといたしましてはその間におきまして相当
程度了解がついたものと理解しておるような経過もあつたのでございます。殊に例を挙げて申しますると、ストマイの値下りが新らしく改訂をいたしました結果、従来のグラム単位三百三十円を基礎にして計算をされておりましたが、値下りによりましてこれが一グラム百七十五円ということに相成つたわけでありますが、百七十五円ということにつきましても、これは申すまでもなく取引の関係がありまして、すべての医師が百七十五円で必ずしも買
つているというわけではありません、もつと安く購入している人もあり、それよりも若干高く購入するような条件にある医師もあるわけであります。でありますから、当然若干の中はございます。その点につきましても日本医師会とも打合せをいたしまして百七十五円というような
程度で押えることが適当であるということで了解がついておつたわけであります。その他一般的にも先ほど申上げたような傾向はあつたのでありますが、その他いろいろ客観的な情勢がからみ合まして予想外に難航な状態に入つたのでございます。併しながらいろいろこうした交渉の経過を見まして、一方におきましては先ほど申上げました
結核治療指針の改訂も四月中旬になりまして、学会からの答申もありました。それと同時に点数の改訂をいたす時期であるというように
考え、了解をつけまして四月三十日に
医療協議会を開催いたした次第であります。四月三十日に本件に関する第一回の
医療協議会におきましては途中で医師会から基本的な問題、即ち
社会保険診療報酬に関する基本的な問題についての意見が出ましたために、点数の改訂の問題だけを保留いたしまして、一時散会をいたしましたのであります。更にその後私
どもといたしましても、特に日本医師会と折衝を重ねておつたのでありますが、その了解を得まして五月二十七日に本件に関する第二回の
医療協議会の開催をいたした次第であります。以上申上げましたように五月二十七日という時期まで、相当前から実際には値下りが行われておりましたにもかかわらず、点数の引下げが行われておりませんでしたので、保険者を初め、その方面の人からは、なぜ早くやらないのかという
意味における促進の意見が相当強く行われておつたことも御了承頂けると思うのであります。
一方医師会におきましては、五月二十七日の
医療協議会を前にして、たまたま副会長の選任をする全国代議員会が開かれました、その席上におきまして本件を切離してやることは適当でない、他の問題と一緒に処理すべきであるという決議が行われました関係もあり、日本医師会の幹部といたしましてもいろいろ措置に苦しまれたように承知をいたしております。それで五月二十七日の
医療協議会に
なつたのでございますが、その点も簡略に申上げることにいたしますが、
医療協議会の開会の直後におきまして保険者側から医師会に対して約一カ月間
医療協議会を延ばしておつたのは医師会の希望によ
つて延ばしておつたのであるか、その後の経過について医師会からの意見を聞きたいという発言があり、医師会からの一応の説明がありましたと同時に、本件に対して基本的な
反対の意思表示があつたのであります。そこで保険者側との議論になりまして、一応保険者側からこれ以上議論をしてもしようがないという討論終結の動議が出ましたために、医師会側の
委員は協議会の席上から退場するというような羽目に
なつた次第でございます。併しながら
医療協議会の構成員二十四名のうち六名が
医療担当者にな
つておりまして、そのうち医師会代表が四名、歯科医師会、薬剤師協会代表それぞれ一名はそのまま席に残
つておりましたが、その後の議事にも参画されたわけでございます。そのような関係から、従来の
医療協議会の慣例から申しまして、会長としては、
医療協議会は正式に成立しているということを宣言した上で、その後の議事を進めました結果、点数の改訂につきましては、出席
委員の満場一致の賛成で決定を見た次第でございます。なお施行期日につきましては、保険者側
委員の、先ほど申上げましたような意見に基きまして、六月一日
実施説が強く主張され、多数を以て六月一日
実施という答申が行われた次第でございます。即ち点数の改訂それから
治療指針の改訂につきましては、それぞれ全会一致で決定があり、第二回目に医師会代表退場のままの一致でございましたが、そういうことで施行期日の点につきましては多数を以て六月一日ということで
医療協議会の決定がございましたので、会長から即日厚生大臣に対しまして答申があつた次第でございます。
そこで
厚生省といたしましては、
医療協議会の席上における残留
委員の、特に
医療担当者
委員としての意見等もありましたので、又一方におきまして、医師会側の意見も考慮いたしまして、
医療協議会の答申は六月一日
実施ということでございましたけれ
ども、厚生大臣の権限に基いて、七月一日
実施ということで、一カ月
実施の時期を延ばすことにいたしまして、大臣の決裁が済み次第公布の運びに至つた次第でございます。
ところがさような経過を経ましたけれ
ども、依然として医師会側にはこれを契期といたしまして他の点数のアンバランスの是正、或いは単価の改訂、
社会保険診療報酬に関する所得税課税の問題の解決、
社会保険制度の根本的な改正というような関連事項を引つさげた御主張がありまして、百方いろいろ話合いをしておつたのでございまするけれ
ども、六月の十八日になりまして、突如として医師会長の名を以て本件に関する
反対の声明書が出たというような運びに
なつたのでございます。その後一部の保険医の
座り込み事件等もございましたことは御案内の
通りでございますがこれらの坐り込み等が一応解消しました後におきましてあらためて日本医師会と厚生大臣との間に正式な交渉が、すでに数回持たれおりました。いろいろと今後の問題につきまして話合いをいたしておる次第でございます。
厚生省の態度といたしましては、以上申上げたような経過もありまするし、事柄の実態の性質からも、今回の点数改訂の告示を今更変更する意思は今日毛頭ないのでございますけれ
ども、これに関連して医師会側から要求のございました他の点数の不合理なものといわれるものの改訂につきましては、目下事務的に検討を続けております。できるだけ早く結論を得るように運んでおる次第でございます。
なお併せて
医療担当者側から御注文のありました所得税課税の問題につきましても、関係の向きに現在連絡をし、話合いを進めておりますような次第でございます。
又単価の改訂につきましては、これは甚だ影響するところも多いということもございますけれ
ども、先日日本医師会の代表者と厚生大臣との会見によりまして、すでに御案内の臨時
医療保険審議会というのが、診療報酬問題、殊に単価問題を中心として検討するために生まれておるものであります。すでに本
委員会でも私からも再三経過を申上げているような状態で、なかなか結論を得ておりません。これは余りに
社会保険、社会
医療の
原則というような大きな問題に取つ組んでしまいましたために、議論が多くて結論を得ないような
実情でございます。先般厚大臣と日本医師会の代表との話合いのときには、一度そういうこの臨時
医療保険審議会の行き方についてもお互いに
一つ考え、その旨を会長等にもお伝えをして何とかこの際その成規の機関によりまして話合いを進めるような段取りをしたらどうかということで了解がついておりまするような次第でございます。
極く概略でございまするけれ
ども、以上点数の改訂と、これに関連をする諸問題につきまして一応申上げた次第でございます。