運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1953-12-11 第19回国会 参議院 厚生委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年十二月十一日(金曜日)    午前十時十九分開会   ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     堂森 芳夫君    理事            大谷 瑩潤君            常岡 一郎君            藤原 道子君    委員            榊原  亨君            高野 一夫君            西岡 ハル君            林   了君            廣瀬 久忠君            竹中 勝男君            湯山  勇君            有馬 英二君   国務大臣    国 務 大 臣 塚田十一郎君   政府委員    外務政務次官  小滝  彬君    厚生政務次官  中山 マサ君   事務局側    常任委員会専門    員       草間 弘司君    常任委員会専門    員       多田 仁已君   説明員    行政管理庁次長 大野木克彦君    厚生省大臣官房    総務課長    小山進次郎君    厚生省公衆衛生    局長      山口 正義君    厚生省公衆衛生   局環境衛生部長  楠本 正康君    厚生省医務局長 曾田 長宗君   参考人    日本赤十字社社    長       島津 忠承君    日本赤十字社外    事部長     工藤 忠夫君    日本赤十字社外    事部調査課長  木内利三郎君   ―――――――――――――   本日の会議に付した事件 ○社会補償制度に関する調査の件  (ソ連地区引揚者援護対策に関する  件)  (厚生省の機構に関する件) ○理事補欠選任の件   ―――――――――――――
  2. 堂森芳夫

    委員長堂森芳夫君) 只今から厚生委員会を開会いたします。  社会保障制度に関する調査を議題といたします。本日はソ連地区引揚者援護対策に関する参考にするためソ連赤十字社交渉を行われ、最近ソ連からお帰りになりました日本赤十字代表島津社長工藤外事部長木内調査課長参考人として御出席を願い、ソ連地区からの引揚についての交渉経過残留者引揚について今後の見通し等おわかりになつておられる模様を詳細にお伺いいたしたいと存じております。  島津社長以下の各位には御帰朝早々お疲れのところ御出席頂きまして有難うございました。この機会ソ連においての引揚交渉に対する御苦労を感謝いたします。  先ず島津社長から順次御発言をお願いいたしまして、御三人のかたが済んでから各委員の御質問をお願いいたしたいと存じます。では島津社長からお願いいたします。
  3. 島津忠承

    参考人島津忠承君) 今回モスクワに参りまして、ソ連赤十字社との間に存ソ同抱の送還について話合いをいたしました経過の大要を御報告申上げます。  去る七月下旬、大山郁夫教授ソ連モロトフ外相との会見の際、同外相が在ソ日本人戦犯の逆還は赤十字を通じて解決できるであろうと話したという報道がございました。私どもも従来引揚問題はジュネーブの赤十字国際委員会を通じまして、促進に努力をいたして参つた関係もありますので、同委員会ソ連赤十字双方に対しまして、日本赤十字はいつでもこの問題解決に当る用意のある旨の電報を送り、回答を待つたのでございました。その後更に大山氏から直接ソ連赤十字に連絡されたいという知らせがございましたので、重ねてソ連赤十字に対して代表者モスクワに派遣する用意があることを通報いたしました。折返しその同意を得ましたので、私ほか二名の代表と随員二名と共に十月二十四日東京を出発、モスクワ向つたのでございました。予定通り十月二十八日にモスクワに到着いたしまして、三十一日からソ連赤十字との会談を始めましたが、十一月二十八日までに五回の正式会談と、数次の非公式会談を行いました。  会談内容について申上げますと、問題は今回ソ連側送還を予定しておりました在ソ邦人帰国の具体的問題、即ち港、船の問題、引渡しにに関する細目等々と、私どもの関心の深い、いわゆる引揚問題全般とに分けることができるのでございます。今回の送還につきましては円滑に話が進み、先方も余りむずかしいことを申しませずに、十一月十九日一千二百七十四名の送還に関する協同コミュニケに署名を終りました。その結果、すでに第一船によつて私どもモスクワ滞在しておりますうちに八百十名のかたが日本に帰られたのでございます。なお残り四百六十四名については第一次終了後十五日乃至三十日の間に行われる旨の約束をして参つております。それで年内にこれらのかがたも帰国されるものと信じております。この千二百七十四名は戦犯者四百二十名と、一般人八百五十四名に分れております。後にソ連側より回答がございまして、リストの交付を受けました残留戦犯千四十七名とこの四百二十名とを加えますと千四百六十七名となりまして、一九五〇年四月タス通信の発表いたしました戦犯者千四百八十七名とほぼ一致することとなりまして、一般人八百五十四名ということは新らしい数字でございまして、送還細目共同コミユニケによりまして、すでに御了承を願つたことと存じます。  さて引揚問題全般につきましては、私どもより今次の送還問題と並行して或いは口頭により、或いは文言によりまして、十一月十日までに十二項目に亘る質問を提出いたしましたが、ソ連赤十字側は手持ちの資料が少いので、回答を受けるまでに相当時日を要したのでございます。もとより多数の未帰還者があり、その留守家族の窮境を常に見ております日本赤十字側と、抑留国でありますソ連赤十字との間にはその準備の程度に相当の相違のあるのは止むを得ない次第と思いますが、ソ連側当方質問に対しまして、直ちに慎重な調査を始めたようであります。回答時日を要したのはこの調査のための時間であつたのではないかと思われます。以下その質問回答により明らかになりました諸点について申上げたいと存じます。  第一には残留戦犯者の数でございますが、これは前に申しました通り、千四十七名であることが明らかになりました。  第二はこれら戦犯者帰国援助方申入れでございますが、刑期が終るに従い、今回に準じ援助するとの確約を得たのであります。  次に残留する一般人犯罪者の数その他についての質問及びその帰国援助についての申入れでございますが、これは犯罪人でない一般人についての同様の当方質問に対しまして、この二つに対しまして一括して、一般人については目下ソ連赤十字には何ら資料がないという回答でございました。将来における問題解決の糸口はその辺にあるかと思われまして、或る意味では正確な数字等を発表して、双方ともこれに縛られるようなことにならずに、大きな含みができたと申せるかとも思うのでございます。一般人の問題については日本赤十字といたしまして、今後ともこの調査努力するつもりでございます。  第六にソ連領内における死亡者の数を知りたい。でき得ればその名薄をもらいたいという申入をいたしましたが、先方従前タス通信が発表した通りであるといたしまして、一万二百六十七名の数を挙げ、終戦前後の混乱時に死亡した者の調査は困難であると言明をいたしました。その数は日本側数字相当食い違いがありますので、問題は将来に持ち越されるわけでございます。  次に一九五〇年四月、タス通信中共に引渡すべき戦犯が九百七十一名あると発表した件でございまして、ソ連側回答はこれら九百七十一名のうち二名は死亡し、九百六十九名は一九五〇年中に中共に引渡されたとのことでございました。その氏名については中国側に問合せてもらいたいとのことでございました。私どもといたしましては、適当の機会中国紅十字会に照会することを考えております。  次に第八は一九五〇年、即ち昭和二十五年四月、ナホトカ引揚終了の頃まで通信があり、その後消息がなくなつた人々、或いは終戦時に南樺太におられまして、その後消息のない人々、その他の安否調査に協力を求めましたところ、従来の国際赤十字慣行に従い、調査を行う旨の確約を得たのでございます。私どもモスコー滞在中に留守家族かたがたから申出られましたこの安否調査のことを整理いたしました結果、少数ではございましたが、滞在中に個人別安否調査ソ連赤十字に依頼いたしました。今後も引続きこの安否調査を行うことといたします。  次に第九に、内地との文通の増加でございますが、これは国際慣例等により現行のままとするとの回答でございました。  次に内地服役の可否を尋ねましたが、これは全くソ連赤十字権限外のことであり、如何ともしがたいとの回答でございました。  次に外蒙、北鮮における消息不明者抑留者の問題についてはそれぞれの国の当該機関に連絡してもらいたいとの答えでございました。  最後収容所の訪問についての希望を表明いたしましたところ、直ちに承諾を得まして、十一月二十四日モスクワ東方三百キロのイワノヴオ郊外にあります収容所を訪問することができまして、三十八名の元軍人かたがたと面会し、その希望を聞くことができたのでございます。その際慰問品制限なく受領を許されていることが判明いたしましたので、その送付については今後一層努力するつもりでございます。  このようにいたしまして一応の回答を得まして、併しこの回答は私ども決して満足するところのものではございませんでしたけれども、併し今回これをこれ以上尋ねましても短い期間には到底回答が得られないと思いましたので、今回の会談は一応打切りまして問題は将来に残りましたが、一昨日の朝こちらに参つたような次第でございます。以上で大体の御報告といたしますが、今後も日本赤十字赤十字立場におきましてあらゆる機会を捉えましてソ連赤十字との連絡を一層密にいたしまして、この引揚問題全面的解決努力いたしたいと考えております。
  4. 堂森芳夫

    委員長堂森芳夫君) 次に日本赤十字社外事部長工藤忠夫氏にお願いいたします。
  5. 工藤忠夫

    参考人工藤忠夫君) 日本人送還に関する詳しい話は、今島津社長からお話がありましたので、私は極く簡単にこの送還問題を討議した結果得ました私の感想、それからそういう送還問題を縛るソ連の事情みたようなものを簡単に報告いたしまして送還交渉報告に代えたいと思つております。  マレンコフ政権になりましてから皆さん御存じのように、非常な緩和政策が行われるようになりまして内外共にいろいろの徴候が現われおるのでございますが、抑留者の釈放問題につきましても、日本ソ連との交渉以前にすでにいろいろの緩和的な徴候が見えておりまして、オーストラリヤの戦犯の釈放問題、それから更にドイツ戦犯の釈放問題が両国間に協議されて、順次実行に移されておるという話も聞いたのであります。それから日本との交渉の後におきましても、フランス人戦犯フランス人戦犯問題は、実はフランス政府も知らなかつたという話でございますが、フランス人戦犯が突如として数人帰されてフランス政府めんくらつたというような話もモスコーで聞いたのでございます。それから又イギリス軍人と戦争中に結婚したソ連の妻が終戦後八年間も出国を禁止されておつたのでございますが、最近又全部イギリスに、自分の夫のところへ行く許可を与えられて国外に出ることを許された、こういうような事情もあります。こんなことで日本人送還の問題も、恐らくその一還と思う次第でございます。従来御存じのように日本機関、殊に我々は国際赤十字の一員としてソ連赤十字に過去数年間何十回手紙を出したかわからないのでございますが、未だ一回も回答がなかつたにもかかわらず、大山さんとモロトフとの会見以後非常に話がとんとん拍子に進みまして、これが実行の端緒となつたのでございます。恐らくソ連日本人戦犯者送還する意向はマレンコフ政権の成立直後に、もうきまつたものと見えまして、この実現をどういう機会に掴むかということを考えておつた模様でございました。大山さんがこの五月にウイーンに行かれ、そして七月にスターリン平和賞を受領したこの機会が一番いいものと思つたのではないかと思うのでございまして、丁度その機会引揚問題も出まして、国際赤十字並び赤十字の正常なる径路を通ずれば、日本人抑留者の問題も解決し得る見込があるということをモロトフ大山さんに答えたそうでございます。この新聞情報が伝わりまして、直ちに私たちソ連赤十字に対して七月二十三日に我々は、先ほど島津社長から報告がありました通り引揚者を引受ける全面的な用意があるという電報を打つたのでありましたが、実はその回答がないのでちよつと困つておつたのでございますが、大山さんが二月後の九月の十九日にソ連赤十字ホロドコフ社長と会いまして、この問題の実施に関して具体的な話をされた模様でありまして、ホロドコフ社長の伝言として、大山さんから本社に対しまして、日本赤十字と直接に引揚の問題について交渉する用意がある。特に直接にということに重点が置かれて、アンダーラインが引いてございました。そうして日本赤十字から具体案を出すように答えてもらつてくれというような話でございます。どうも受取るほうから具体案を出すというのもおかしな話で、本当ならソ連赤十字のほうから具体案を出して頂ければ我々のほうでは非常にやさしかつたのでございますが、どういう経緯かその辺は存じませんが、常に日本側実行に関するイニシアテイヴはとるように仕向けられていたようでございます。こういうわけで私たちのほうでは直ちに引取る用意がある。船はいつでも出せる。港はどこであるか、期日はいつであるか。何人ぐらい帰してくれるのか、というようなことを聞いたのでございます。そうして若し必要があるならば代表団を指定されるところに派遣して直接話合いをする用意があるというようなことを電報したのでありますが、直ちにモスクワから、モスクワに来ることを歓迎するという電報参つたのでございます。こういうわけで我々は十月二十八日にモスクワに着きまして、約一カ月間モスクワ滞在いたしまして、引揚の問題について交渉したような次第でございます。モスクワに着きましてこの引揚の問題を話しましたが、先方ではすでにもう腹案はきまつておつたようでございまして、大体返す人間の数は千二百七十四名という数は大体きまつたようでございます。そして戦犯者にして釈放される者は、刑期が満ちた者は、僅かに戦犯者で釈放される者は、四百二十人のうち刑期満了の者が二十二人で、三百九十八名は今年の三月のソ連の閣議による特赦によるもの、若しくは最高裁判所の再審査によるものだというような話でございまして、そういうところにも、刑期満了者よりは政治的な含みによる釈放者が多いというような感じを得たのでございます。そして一般人は僅かに八百五十四名というような数でありまして、この一般人送還に関しては、私たち一般人の問題として、戦犯者以外の人の送還を是非やりたいと思つておりましたところ、先方から一般人犯罪者約九百名という話が一番に出まして、ああ、これは非常にいいことだ、戦犯者についてはすでにタス通信で一千四百八十四名しかいない、もうあと日本人の捕虜は一人もいないというふうに言つておりますので、シヴイリアンというような形で帰してもらえれば、すべてがスムースに行くと思つておりましたところ、先方からそういうような話が出まして、この問題によつて残余の問題が解決する見込がついたのではないかと思つております。併しこの一般人につきましては、戦犯者を含めて、先ず日本政府の発表によりますと、一万四千五百名の生存者がおるということになつておりまして、今回帰される者が千二百七十四名、ほかに戦犯者で残留する者が千四十七名ということになりまして、二千二、三百名しか帰れない。そういうことになりますと、一万二千数百名はまだ残つておることになりますが、ソ連は今回帰す一般人以外の犯罪者と非犯罪者を問わず、残つた一般人に関する資料は全然ないと言つております。島津社長が先ほど申述べました通り、この問題につきまして余り争うということは、数字の問題で争うということは’結局お互いにのつぴきならん立場になりますので、むしろソ連資料がないと言つたところにソ連含みがあるのでございまして将来時期至らば帰すという意思があるのではないかということが想像されるのでございます。そういうわけで一般人につきましては資料がないということで、大きな含みを残して将来の問題としてこれが解決が期待されるようなことになつたのでございます。併し他方消息不明者残留者と見なされておりながら、なお消息がないものにつきましては、従来赤十字慣行によります安否調査というようなものがありますので、この安否調査の方式によつて調査を引受けるということを言いました。これは長い赤十字慣行でございまして、別に新らしいことではないのでございますが、今まで一回もソ連赤十字が我々の安否調査に対して実行をしてくれなかつたのにもかかわらず、とにかく改めてそういうことをやるということを確認してくれたことに特別の意味があるのでありまして、我々はソ連赤十字誠意に信頼いたしまして、今後消息不明者調査を順次依頼してみたいと思つておるのでございます。  それから最後にこの引揚の問題が、赤十字径路によりまして多少でも実現いたしたことは、甚だ同慶に堪えないのでございますが、何と言いましてもこの引揚の問題は、単に日本の問題だけではないのでございまして、西欧諸国、殊にドイツ、イタリアなんかは非常に重大関係がありますし、赤十字だけでやろうと思つてもなかなかこの実現はむずかしい。むしろ国際情勢の変化に伴つて実現する可能性も多くなり、或いはむずかしくもなると思うのでございまして、この辺この政治機関としての皆様に御後援をお願いしたいと思うのであります。殊にソ連におきましてはああいう国情でございまして、なかなかソ連赤十字がやろうと言つたつて、これは殆んど不可能のことだと思います。  最後に十二月一日に、ソ連赤十字社長ホロドコフ博士は、ソ連赤十字のやつているこの人道事業は、殊にこの引揚の問題は、ソ連政府平和政策従つてやつているのである、勿論我々は伝統的な人道主義従つておるのであるが、ソ連の立派な平和政策従つているということを特に銘記してもらいたいというような意思表示がありました。こういうことは私は特にソ連において意味がある言葉ではないかと思うのでありまして、こういう点も含味いたしまして、特に皆様の御援助をお願いいたしますと共に、我々といたしましては、あらゆる方面から伝統的な人道平和主義によりまして、現在残つている人の苦痛を和らげる方面に最善の努力をいたしますと共に、できるだけ多数の人が早く帰れるように、今後も努力を続ける所存でございますから、どうぞ御了承を願います。  簡単ながら御説明申上げます。
  6. 堂森芳夫

  7. 木内利三郎

    参考人木内利三郎君) 只今島津団長工藤代表から申しましたところで大体尽きておりまして、特に附け加えることもございませんが、私ども交渉に当りまして作戦をするとか、馳け引きをするとか、そういうことは全然考えませんで、従前以来御家族のかたや、関係方面のかたと御一緒に研究し、調査して参りました問題を、全部率直にソ連側に持ち出しまして、隔意なく話合つたつもりでございます。そうしてソ連側も非常に誠意のある態度で、わからないものはわからない、あらゆる点について全部返答をくれました。確かに誠意があるということを言つて間違いないと思うのでございます。それで今後も、今回の話合いを基にいたしまして、気長に、而も着実に、できるだけすべての点が解決しますように努力したいと思つております。  細かいことを一つ二つ補足いたしますと、先ほど島津社長から申しました安否調査ソ連赤十字が今後引受けてくれましたが、私ども出発いたします前に五百二十名ほどの御家族から安否調査の御依頼がありました。その中でソ連側調査のしやすいものから頼むほうがよいと思いまして、あちらで整理をいたしました結果、一九五〇年、この前の集団引揚が終ります頃に、確かに向うにおられて内地便りを寄越されたかた、そういうかたを選びまして、四十二人について一人々々の調書を作りまして、各国赤十字間で行なつております安否調査の様式のものを作りまして、あちら側に渡しました。調査をして回答するからという返事がございました。  それからもう一つは、今回お帰りになるかたは千二百七十四名で、第一次は八百十名というお話でございましたが、その後一名急に帰国をしなくなつたそうで、八百九名となりなして、それから子供が別に二人入りまして、結局八百十一人お帰りなつたわけでございます。  それから第二回が四百六十四名、これは第一次の終了後、十五日乃至三十日以内に帰国させるという約束でございます。その日取りは電報で日赤のほうへ言つて来ることになつております。  それからイワノヴオ収容所を訪問いたしましたときの感想を二、三申上げたいと思いますが、私どもが参りますことは、収容所のほうの山田元大将以下のかたには全然予告がなかつたようでございまして、まあ言葉も出なかつた。初めは茫然としておられたようなことでございました。いろいろ御希望伺つて、或いは書籍が欲しい、それから慰問品制限はないから、日本の香りのするものを送つてもらいたい、こういうような御希望も伺いましたし、とにかく皆さん八年間全然外界と遮断されておられるので、非常に何か八年前のままであるというお気の毒な感じを持ちまして、書籍送付等は、赤十字としてすぐに努力をいたしたいと感じました。  以上でございます。
  8. 堂森芳夫

    委員長堂森芳夫君) それでは各委員から御質疑がございましたならば、御発言を願います。
  9. 林了

    林了君 今の慰問品については制限がないというお話でありましたが、これはこの間引揚者に会いましたところが、レコードに声を吹込みまして、そうして送つてくれたのが一番嬉しかつた。そうして何か蓄音機がありまして、それにかけて、慰問の、まあ留守家族がかようにして元気にやつている、それから元気で引揚を待つういるからというようなことを言われたことで、一同がそれを聞いて非常に嬉し涙に皆むせんだというようなことを聞いたのですが、果してそういうものが向うに行くならば、私たち考えとしては留守家族の人にテープレコーダーで各家族の人に、たとえ何分間でもしやべつてもらつたものを送つてやりたいという考えを持つているわけでありまして、こういうものが果して向うに着いたときに、テープレコーダーで聞かしてくれるようなことができるかどうか、この状態は如何でございましよう。
  10. 木内利三郎

    参考人木内利三郎君) 先ほび制限がないと申しましたのは、何と申しますか、量の問題と申しますか、月に一回一個という制限はないということでございまして、やはり内容については、写真家族写真などは入れてもよいが、便り手紙に類するものは、別に手紙は月一回、往復はがきによるということがございますので、手紙慰問品の中に入れることは規則違反である、そういうことになつておりますので、声の便りとかいうようなものも、まあお入れにならないほうがよろしろのではないか、そういうふうに考えております。
  11. 林了

    林了君 わかりました。そういたしますと、引揚者のかたから伺いましたのは、テープレコーダーというようなものは我々の手にも入らないし、そういうことはなかつたけれども、あの何かセルロイドの簡単なレコードでのね、あれに入れて北海道のなんとかいう人から来たと言つておりましたがね。それを聞かされたのだと、こういうことなのですが、そういうことは非常に喜びますということを言われたので、それはいい思い付きだ。私はレコードは二分か三分のものですから、それでは大勢の留守家族の者を集めて、そういうものは入れにくいから、テープレコーダーならば相当長い時間一巻のものに入れられますから、それならば入れてみたいと考えて御質問申上げなのですが、レコードのようなものならばよろしいかどうか、セルロイドのレコードのようなものならばよろしいかどうか。それはどうでございましようか。
  12. 工藤忠夫

    参考人工藤忠夫君) 恐らく慰問品の中にそういうものが入つたのは、恐らく例外的に入つたものであつて、偶然向うへ着いたというものでありまして、これがプリンシプル、原則としてレコードも入れてよいかどうかという問題は、先方と協定しなければなかなかむずかしいのではないかと思います。確かに今木内代表の申しました通り慰問品には通信とか、そういうものに関するものは許されておりません。食糧と衣類というものが慰問品の主なるものでございまして、書籍は又別の方法で送らなければなりません。それから通信につきましては、俘虜通信が月に一回許されているだけでございまして、そのほか詳しい、家族が直接に送れるような通信を拡張して貰いたいということを申入れたのでございますが、現行の国際慣例で十分であると認める、それ以外の通信は承諾しがないという拒否の回答がありました関係から、現在の状況では特別の日本との協定がない限り、レコード送付というのはむずかしいのではないかと、かように考えております。
  13. 林了

    林了君 どうも有難うございました。
  14. 常岡一郎

    ○常岡一郎君 書籍は自由にどんな書籍でもいいというわけじやないんですか。
  15. 工藤忠夫

    参考人工藤忠夫君) 書籍の問題につきましては、収容所を訪問いたしましたときに、山田大将から、自分はドイツ語を大いに勉強したいと思つているのだが、独自の辞書がない。それでまあロシヤ語の辞書を通じて孫引きをして漸くドイツ語を読んでいるのだが、とにかく辞書が欲しいというような意向もありまして、書籍の問題が出たのでございますが、書籍は個人的の送付は許されてはおりません。収容所に宛てて書籍を送る。そしてその書籍は収客所において検閲いたしまして、適当なもののみ収容所に納めて、みんなの共用にするという趣旨でございます。それからこの内容を伺いますと、政治的なものというようなものは一切許されてはおりません。大体語学の研究とか、或いは又サイエンテイフイツクなもであるとか、そういうようなもののようでございまして、思想的なものとか、政治的なものというようなものは許されていないような印象でございました。収容所にあります印刷物を見ましても、プラウダ、イズベスチア、その他ソ連製のもの、或いは東ドイツで発行されたドイツ語の新聞でありまして、それ以外の国から来たようなものは一切見受けられなかつたのでございます。こういうような意味におきまして、書籍の種類も非常に限定されておりまして、思想方面、そういうような問題から、やつぱりむずかしい検閲があるのではないかとの印象を受けたのでございます。
  16. 林了

    林了君 工藤さんにお伺いいたしますが、工藤さんから、向うにおいでになるときに、第一次の帰還者の様子というものの反響がソ連のほうにあるから、こういうことについては注意を喫起したいというようなことが新聞に現地から言われて来たということをちよつと拝見いたしましたが、その第一次帰還者の中でお会いいたして見ますると、地区によつて取扱い方が大分違いましたし、それからノルマの状態も違いまするし、それからその他それに対する食糧の状態も違いましたので、一概には私は言えないと思いまするが、総括的に、第一次帰還者の中で、舞鶴に見えたときの状態というようなことが、事実は事実といたしましても、余り誇張して、新聞なり報道に出るというようなことが、ソ連のほうに対してどういう影響を及ぼすか、中で聞いて見ますると、いや、事実なんだから事実として報告したほうがいいんだというかたがおりまして、まあ収容所の下級な取締りをやる者といいまするか、責任のある立場の人というものは、現在ソ連ではそういう人道上許すというか、或いは又人道上問題になるようなことは絶体しない、そういうことがわかつたならば処罰される。併しながら或る例を挙げますると、相当に責任のある人が中央から行きまして、いろいろのことについて上からの指示があつたためにひどい目に会つたというようなことを発表されたときに、果して現在残つておるところの残留者引揚にどういう影響を及ぼすか、事実を言えば言うほど却つて現在のソ連としては弱いところがあるから、そういうことを言われると、これはしまつたということで是正するという言い方の人もありまするし、いやそれは暫くそういう刺戟になるようなことはしないほうがいいという人がありましたけれども、それについてどういうふうにお考えなつていらつしやいますか、ちよつと伺いたいと思います。
  17. 工藤忠夫

    参考人工藤忠夫君) この判断はむしろ政治的な問題で非常にむずかしい問題と思いますが、私はソ連政府はやつばり抑留者を帰すというようなことは一つのソ連の非常な純真な……、これは記録に出るとちよつと困りますが。
  18. 堂森芳夫

    委員長堂森芳夫君) 速記を止めて。    〔速記中止〕
  19. 堂森芳夫

    委員長堂森芳夫君) 速記を始めて。
  20. 廣瀬久忠

    ○廣瀬久忠君 ドイツ戦犯釈放の取扱はどうなつているのでしようか。赤十字を通じて帰すというような方法になつておるのですか。
  21. 工藤忠夫

    参考人工藤忠夫君) ドイツ戦犯の釈放は、東ドイツのグローテヴオール首相がこの夏モスコーへ行きまして、東ドイツモスコー政府との間においていろいろの政治的協定があつたようでございます。その中に、戦犯者の釈放に関する一条項がありまして、それだけ条文が発表されたという話でございます。ほかの条項は全然発表されていない。そうして、その三分の一が大体今回釈放された。そうしてそれは東ドイツの国境において即座に釈放されまして、東ドイツはそれを受取つて又直ちに西ドイツのほうに、たしか三分の二以上が西ドイツだそうでございますが、それが西ドイツの国境ヘバスでみな持つて行つて、僅か二日ぐらいで殆んど釈放の送還の業務を終つたというような話を聞いております。そうして西ドイツの俘虜は、今も言いましたように口を結んで一口も言わなかつた、そうして慰問品のことだけ言つたということを聞いております。  それからちよつと問題が外れますが、慰問品なんかにつきましては、ドイツ赤十字が中心になりまして全面的に慰問品をできるだけ送るというようなことをやつております。赤十字が送るということによりまして、個人的送付によつて受ける者は受けるけれども、もらわない者はもらわないという偏頗な弊を除くことができるということで、公共団体が主になつてやつております。ドイツのほうはなかなか非常に統一がどれております。そうして戦犯の釈放問題も、釈放された俘虜が強烈なる団体を作りまして、釈放運動に大きな政治的拍車をかけているというような話も聞いております。私のこれはもう本当に聞いただけで、裏付のある証拠があるわけではございません。
  22. 廣瀬久忠

    ○廣瀬久忠君 只今お話で、ドイツの俘虜、西ドイツの関係の釈放については、西ドイツ関係の政治機関なり、或いは赤十字というものは関係がなかつたように伺うのでありますが、日本だけがそうすると赤十字を通じて取扱つたという、まあ実例になるというのでございますか。そこで、なお先ほど工藤さんのお話のうちにちよつと私よく意味のわからない点があるのでありますが、今回のソ連日本人戦犯等についての釈放の態度はマレンコフの平和政策の一環として行われておる、それはそうであろうと思います。そこでなおソ連赤十字のほうでも、ソ連赤十字の仕事として日本赤十字と提携をして日本人戦犯の釈放を行うのはマレンコフの政策は順応してやつているのだということを特に銘記せよというようなことのお話があつた。それについて工藤さんのお話のうちに、そういうように政治的の背景があり、政治的の意味が非常にあるのだから、日本においても政治的の方面における働きを希望するというような意味に私には聞えたお言葉がありましたが、そこにどういう意味がありましようか。私の或いは聞き違いかも知れませんが、どんなお考えがあるのでございますか。
  23. 工藤忠夫

    参考人工藤忠夫君) これは少し私の言葉の行過ぎであつたかと思いますが、日ソの関係におきましては、赤十字も一生懸命にやりますが、赤十字だけではなかなかこの全面的解決というのはむずかしいのではないか。殊にソ連日本との関係、殊にソ連の国内情勢から見ましても、政治優先ということがどうしても主なる要請でございまして、こういう方面から政治的部面における日ソの親善関係の促進というようなことがこの引揚の問題に非常に大きな役に立つのでございまして、そういう方面から皆様の御援助をお願いしたいという一般的な考えでございます。政治的な交渉がなければ引揚の問題はできないというような趣旨ではございません。世界情勢の緊張の緩和、延いては日ソ親善関係の設立、こういうようなものができることによりまして、この我々の努力しておる引揚の問題は一層容易に行くという気持でおりましたので、御援助をお願いしたような次第であります。
  24. 廣瀬久忠

    ○廣瀬久忠君 只今お話でよくわかりましたのでありますが、私はこの際外務省の政務次官がお見えですからお伺いいたすのでありますが、今回のソ連赤十字並びに日本赤十字との関係におきまして、非常に人道的に立派なことが行われたので、国民としても皆非常にこれを喜び、又将来に希望を繋いでおるのであります。そこで只今日本赤十字社の御当局のお話で、赤十字社としても人道的立場に立つてこれから全力を挙げてやるつもりだが、何と言つても力が十分でないから、やはり大きな政治的の背景を希望するというようなお言葉もあり、誠に御尤もに思います。併しながら、同時に日本の大きな国際関係における日ソの問題ではありますが、これらの問題につきまして、今回の赤十字向うにおる俘虜戦犯送還帰国、この問題に関連して外務省として何かそこに外交と申しますか、或いは全然関係が今はないのだから、戦争状態だから、いたしかたがないというあつさりした態度であるのか、それに対してなんらか人道的な立場に立つて、なんらかお考えがあるでありましようか。新らしい緒かなにか、外務省の方面にお考えがあるか、この点を一つ。
  25. 小滝彬

    政府委員(小滝彬君) 今般島津社長並びに日赤の代表かたがたの御努力によりまして、在ソ邦人の帰還を見るに到りましたこには、御同慶に堪えないところでありまして、日赤の代表かたがたの御努力は、私ども感謝してやまないところであります。そこで一体外務省としては、これに関連して如何なる措置を取ろうとしておるかという点が、廣瀬さんの御質問の要点だろうと思います。もう始終議会でも申上げておりますように、工藤君のお言葉を借りて言いますならば、日ソ間の親善関係が結ばれるということに対しては、何ら根本的に異議のあるわけではない。双方の国交が回復することを希望してやまないわけであります。ただ現実の問題といたしましては、今度の送還問題について考えてみましても、十分おわかり下さいます通り、又工藤君の証言の中にもありました通り、これは好機を掴まえて、大山先生を煩わしたということは、換言すれば、日本政府は相手にしないという態度でありまして、我々としては今般の取計らいについても、日赤の陰にいてお手伝いすることは、結局送還を早からしめるゆえんであるという考えで、表面に立たないで、陰から御援助申上げたようなわけであります。勿論日本が今の平和条約を廃棄してしまう、今の安保条約廃棄ということになれば、道も開かれるかもしれませんが、現実の政治というものを考えてみますると、一足飛びにそうできない。然りとすれば、結局国際情勢が今後どう動いて行くかということにかかるのではなかろうかと存じます。ヨーロツパの問題について四国会談が開かれるということになつておりますし、又朝鮮問題についての政治会談というものも一応予定せられておりまするが、こうした会談がどういうように取運ばれるかということによつて、ただ日本ソ連というのではなしに、全体的な問題の一環として日ソの関係がどう動くかということになつて来るのではなかろうかと考えておりますが、併し在ソ邦人の帰還ということについては、この特定の問題につきましては、全般の問題が仮に解決しないまでも、最善の措置をとらなければならない。あらゆる機会をとらえてこれが早く完全に実行できるようにということは、私どもも常に考えておるところでありまして、現に国連では第三委員会において日独伊の代表者が参加いたしまして証言し、そしてあそこで決議案もでき上つたような次第であります。これにつきましては、廣瀬さんの友人である有田さん、山下さんにしてもジュネーブに行かれまして、いろいろな資料を提供されて、今度の第三委員会の決議案の基礎を作つて頂いたようなわけでありまして、こうした面で先ほどの話では、或いは国際赤十字というものの関係ではあるかも存じませんが、とにかくこうしたあらゆる機会を通じまして、今直接外交もないのにこうした機関を通じまして、或る特定の問題については最善の努力をいたしたいと考えておる次第でありまして、或いはそれは不十分であるかも知れませんが、こうした問題を一つ一つ解決して行くというほか、今全面的な問題を日本側から取上げましても、それが実現するというようなことは、直ちには期待できないのではないかというように考えておる次第であります。
  26. 廣瀬久忠

    ○廣瀬久忠君 只今政務次官のお話を承わりまして、よくわかりましたが、現在日ソの関係が現状のような事態においては、直接日本外交として進捗するということはできないということについては、誠に御尤もと思います。併しながらなおいろいろな国際連合の機関その他を通じて、できるだけ努力をするということは、誠に結構なことであり、大いにやつて頂かなければならん。それと共に私のお願いするのは、外務省としても是非この問題に限つては、私はソ連政府と比較的近いと申しますか、いわゆる自由諸国家陣営の中にあつて、例えばイギリスのごときは比較的アメリカよりはソ連に親しく話合つていることを伺うのでありますが、とにかく日本としては今回の事件について直接手は触れないが、或いは国連の会議等においては相談をすると同時に、やはりこういうことについては、日本は非常な感謝をしておるということをイギリスにおける日本の大使館を通じ、イギリス政府、或いはイギリスの外交機関を通じて、モスクワイギリスの大使館に移し、そうして又これがクレムリンにも移すということを一つ努力して頂きたい。非常なこの問題についての感謝の意を表わすのに細心の注意をしてもらいたいということをお願いすると同時に、国内におきまして只今日赤のかたが努力しておる、それに対して力強い御援助を願いたいと思うのであります。そこで私がお願いすることは、日赤の社長等が向うに行つて努力をして来た、それに対していろいろあなたのほうに御希望があると思う。それに対してはできる限りの援助を与えてもらいたい。殊にこの問題についてお願いしたいのは、過日も中共の紅十字の会長ですか、日本に来てもらうということを日赤の当局からそういう希望を出しておる。併し外務省はなかなか同意しない、こういうことでありました。我々たしかこの委員会においても是非一つ日赤の賓客として中共の紅十字会の会長にこちらに来てもらうというその日赤の希望を叶えてやつてもらいたいということを外務省に申立てたつもりであります。これについてはどういうふうにお考えなつておられましようか。これを一つ。
  27. 小滝彬

    政府委員(小滝彬君) 先ず第一に、廣瀬さんのおつしやいますことは誠に御尤もでありまして、私どもといたしましては、国連だけを頼るだけでなしに、今御指摘になつイギリスや印度についても、こうした問題について情報を提供し且つ援助を願つていることもあります。今度のことにつきましては、御説のように今後も更にそうした面とも接触を保つて、側面からそういう問題が早く解決できるようにできるだけの措置をとらせるように仕向けて行きたいということを私ども考えているところでございます。ただ新らしい例を申上げますならば、中共に関しまして印度へ申入れたこともありますけれども、印度のほうが聞かないというような実際上の困難はございまするけれども、我々としてはそうした方面にも働きかけたいということを考えておる次第でございます。  なお国内でこうした問題について十分の援助を与よとおつしやいます御趣旨も御尤もでありまして、これまでこの委員会で再三この問題が出ましたので、我々のほうの考え方なり、又現在の努力の次第は申上げたつもりでございます。特にこの紅十字につきましては、これまでの委員会においても再三問題になりましたので、よく大臣又関係各省等もこの厚生委員会の意向を伝えまして、できるだけ早くこれが実現すとようにというように目下検討を加えておる次第でございます。なお与党の委員かたがたも御援助下さいまして、今この話を進めたいと努力をいたしておりまするけれども、過日もちよつと申上げましたように主張、考え方の相違、或いは又説明の違い等もありましたので、まだはつきりとした結論に至つておりませんけれども、幸い島津社長も御帰国になりましたので、更によく打合せまして、できるだけ皆様の御趣旨に副うように議論をまとめたいと考えております。
  28. 廣瀬久忠

    ○廣瀬久忠君 政務次官のはつきりとしたお考えを伺いまして誠に結構でありますが、是非一つこの問題は政治的にいろいろなことを考えないで純人道的の立場からお取扱いになり、お進めになつて私は差支えないものと思う。是非一つ今の赤十字希望である紅十字に対する問題、その他今回のソ連との関係についても何かいろいろあるであろうと思いますが、最善の外務省当局の御配慮をお願いをいたしまして私の質問を終ります。
  29. 林了

    林了君 ちよつともう一つ、私落しましたのですが、赤十字のどなたでもよろしいのですが、ラーゲルを追放になりましてあちらこちらに国籍を持たされないで、ソ連の婦人と結婚をしておる者はまあいいといたしまして、そういう人たち、或いは又全く人として最低生活をしておるような希望を失つた人がおる。そういう人に今度の引揚者が偶然ばつたり会いまして、全く涙なしにはおられなかつたということでありましたが、この人たちはこの名簿にも載つておりませんし、又どういうふうに将来なつて行くかという問題に対しては引揚者も心配しておりましたけれども、日赤といたしましてこういう人たちをどういうふうに御覧になつて来たか、それから又四十二名のかたの安否調査のことについて資料をお出しになりまして、これをソ連赤十字のほうにお渡し頂いたということでありましたけれども、そういうかたについてもやはり何か将来日本帰国できるような手続をされて来ましたか、相当にそういうかたがおるように思うのでありまするけれども、この点についてのお見通しと言いまするか、御覧になりました様子、或いは将来日本にこの人たちが帰れないということでありまするが、帰られるように向うがしてくれる状態であるかどうかということをちよつと伺いたいと思いますが。
  30. 工藤忠夫

    参考人工藤忠夫君) 協定中にこの刑期を満了した者はソ連赤十字援助によつて帰国ができるということが明記してありますので、今後そういう者はできれば順次先方から通知を受けまして、それが個別的に帰るように全力を尽したいと思つておりますが、どうもソ連の状態から見ますれば、今までのところでは大体集めて返すというような感じがするのでございます。そうなると集まるものはどういうようになるかというようなことが心配になりますのですが、そういう問題についてこれはもう最後のときにいろいろ話しましたので、具体的な詳細の問題について話す時間もありませんでしたし、こういう問題についてソ連赤十字も本来これはやつぱり政府の所管事項のように見えますので、責任ある回答をしてくれるのにはまだ何日か何十日か待たなければならんというようなことで詳しい話はすることができませんでした。併しそういう話をもう昨日、一昨日から随分聞きましたので、事情を詳しくまとめましてソ連赤十字に善処方をお願いすることは一向差支えないのでございまして、できるだけそういう人が不幸な目に遭わないようにソ連赤十字に折衝してみたつもりでございます。
  31. 湯山勇

    ○湯山勇君 ちよつと先ほど団長の御報告下さいました中に、一般人犯罪者、それから一般人犯罪人以外のものというようなお言葉があつたかと思うのですが、そういう一般人犯罪人以外の何と言いますか、向うに残つておる人というのがあるのでございますか。
  32. 島津忠承

    参考人島津忠承君) その点はソ連赤十字側では何ら資料を持たないという回答でございました。でございますが、現実にモスコーで一人の日本人のかたにお会いいたしました。そういう実情でございます。
  33. 湯山勇

    ○湯山勇君 で、このことに関しては向うのほうも一般人犯罪人以外の何と言いますか、残つておるものがあるということは認めておるのでございましようか。
  34. 島津忠承

    参考人島津忠承君) ソ連側で今回送還いたしまするのを、最初に一般人犯罪人刑期を終つたもの約九百名ぐらいを帰すと申しましたときに、我我のほうといたしましては、送還されるものがある以上は、なお一般人で刑に服しておるもの又は全然刑に服しませんでソ連に居住しておるものがあるのではないかということで、ソ連のほうにその辺の情報を質問したわけでありますが、それに対してソ連赤十字側は、現在ソ連赤十字として何ら資料を持つていないという返事でありましたが、ソ連側では認めてもおりませんし、又一般人日本人がいないとはつきりも言明をいたしておりません。
  35. 湯山勇

    ○湯山勇君 で、そういう一般人犯罪人以外の居住しておるものについての向うからの情報は得られなかつたとしても、いらつしやつてそれらについての情報なり或いは事実もあつたというようなお話でございましたが、事実があつたならば、そういうことについてもう少しおわかりになつておる範囲で御説明頂けませんでしようか。
  36. 島津忠承

    参考人島津忠承君) モスコーで偶然お会いしたのがただ一人の日本人のかたでありました。それ以外のことはちよつと何も現在のところわかつておりません。
  37. 湯山勇

    ○湯山勇君 次にお尋ねいたしたいのは、中共のほうへ送つた九百七十一名についてでございますが、これは先に紅十字との交渉過程においては全然このことは出て来なかつたのでございましようか。何かそれらしいという情報が大体得られておつたのでございましようか。
  38. 島津忠承

    参考人島津忠承君) この二月に北京におきまして中国紅十字会と会談をいたしておりました際に、中国におる日本人戦犯について中国紅十字会のほうに質問をいたしましたが、その際中国側は今回の会談日本人居留民で帰国希望する者を帰すことの会談であつて、それ以外のことは今回の会談において話すべき筋合でないということで、一切その問題については向うが取上げませんでした。今回ソ連に参りましていろいろ送還問題以外のことも尋ねましたが、ソ連赤十字では慎重にいろいろ研究いたしまして、先ほど御報告申上げたような回答を得たのでありまして、一九五〇年にすでに中国側に九百六十九名の者が引渡されておる事実がわかりまして、我々北京に参りました頃はすでに中国側に引渡されたのちであつたのであります。
  39. 湯山勇

    ○湯山勇君 今おつしやいました中国へ引渡された者の中で、向う刑期を終りましてすでに引揚げた中に交つて帰つておるという例もございませんのですか。
  40. 島津忠承

    参考人島津忠承君) 中国からの帰還者は中国に居住しております日本人ということになつておりまして、刑期を終つて帰国したかたはないのではないかと思つております。
  41. 湯山勇

    ○湯山勇君 それからこれは先ほどの廣瀬委員質問とちよつと関連があるのでございますが、外務次官のほうのお話では大山氏を通じてでなければこういうことができなかつたという、その一つの具体的な例を捉えて、一般的に向う政府の態度を規定されたような御答弁だつたと思うのです。先ほどのお話とも関連いたしまして、今日本政府が直接何らかの交渉向う政府とするというような途があると御判断になられますか、或いはそういうことはやはり駄目だというように御判断になられますか、これは質問のほうが無理かも知れないと思いますけれども、非常に、何となくこの問題お聞きしたい問題なものですからお尋ねしたいのでございますが。
  42. 工藤忠夫

    参考人工藤忠夫君) 私自身の印象から申しますれば、ソ連政府日本政府に直接折衝する意思はないのではないかというような印象を持つております。やはりこの戦争犠牲者の処理に関する問題は、赤十字がジユネーヴ条約の原則によりまして、やはり赤十字の責任に当る事項が非常に多いのでございまして、各国とも赤十字がこういう仕事をやつております。そういう関係から赤十字径路によつたほうが便利だと思つたのではないかと思つております。そういうような関係から赤十字の正常なる径路によつてこの問題を円滑に解決したいということをモロトフ外務大臣が大山さんに伝え、そして更に大山さんがモロトフ外相の示唆によつて行かれたかどうか、そこまでは存じませんが、ホロドコフ社長と会われて、そして日本赤十字社との径路を樹立されたような工合でありまして、やはり民間団体である赤十字を通じてこの問題を処理したいというような意向があつたように思います。そしてソ連赤十字ソ連政府との間は勿論非常に密接な関係がございまして、ソ連赤十字がやはり口には一言も言われませんでしたけれども政府の意を受けてすべて処理しておつたような印象を受けました。ソ連赤十字はこの戦争犠牲者の保護であるとか、或いはいろいろの戦争による民間人の不幸な状態を救う業務を主としておりますが、抑留者の実態問題というような問題、収容所の管理、そういうふうなことは完全に政府の所管事項でございまして赤十字は全然関与しておりません。そういうようなわけで釈放自体は政府の所管事項であることはもう明白なる事実でございます。凡そ釈放されたものを如何に運送するか、如何に処理するかというような実施の問題が赤十字社の仕事であるということは、もう各国とも共通な事項でございます。さような関係からやはり問題は政府の所管事項、そうして実施が赤十字、併し赤十字は又逆に民間団体として政府に強力に発言することができますというようなことから、政府赤十字とは、やはり相寄り相扶けてこの問題の円満なる解決に資さなければならないと思つているのでございます。
  43. 湯山勇

    ○湯山勇君 今のような御観点から赤十字といたしまして、この残つた問題の処理に当つて政府に対して何か特別な御要望事項というようなものがおありになるんでございましようか、具体的に。
  44. 島津忠承

    参考人島津忠承君) 具体的にどうといつて、今私の頭にはありませんけれども、最初に申しましたように、世界情勢の一環として世界の緊張が緩和され、そうして早く日ソ間の親善関係が成立いたしますれば、この問題の解決に対する我々の努力も非常に効果があると思いますので、そういう観点から政府並びに議会国民全体の後援をお願いたすようにしたいのでございます。
  45. 湯山勇

    ○湯山勇君 最後に、この問題に関してなお今後もこの代表のかたがソ連のほうへ行かれるというようなことは予想されますか、あともう行くようなことは考えられないのでございましようか。
  46. 島津忠承

    参考人島津忠承君) 只今のところは再び代表団を派遣することは何も考えておりません。併し今後の情勢によりましてそういうことはきめられなければならないと思つております。
  47. 藤原道子

    ○藤原道子君 私は島津社長初め皆さまに大変な御努力を頂きまして、誠に御苦労さまでございまして感謝をいたします。  ちよつとこの際お尋ねいたしますが、すでに同僚委員からいろいろ御質問があつたのでございますが、ただ一点お伺いしたいことは、島津社長中共引揚の問題のときは紅十字会の李徳全女史ですか、日本にお招きをしたらどうかということでお約束をされたとかいように伺つております。私たちも大変この引揚問題に対しての今後のむずかしい問題を処理して行くにはあらゆる手を打たなければならない、そういうことも大きな役割を果すと実は非常に期待をかけていたのでございますが、その後なかなかこれは具体的になつて来ない、当委員会でもこの問題を取上げまして、政府申入れをしたわけなんでございます。赤十字へ働きかけられることに対してまあ側面的な援助にもなることであるから、是非そういうことをというようなことでやつたのでございますが、その間においてどうも島津さんの言われていらつしやることがそれほど熱望されているのじやないというふうにもちよつとこの際聞かれましたし、或いは他団体が云云というようなこともちよつと言われましたのでございますが、お約束されたときの状況等をちよつと私お尋ねしておきたいと思います。
  48. 島津忠承

    参考人島津忠承君) お答え申上げます。中国紅十字会のほうといたしましても日本に参りますことは非常に希望をいたしておるようでありました。で、何と申しましても約三万名に近い日本人が中国から帰ることになりました。これは当然帰る者が帰るのだと言つてしまえばそれまででありますが、併しこれには中国紅十字会から非常な好意もございましたので、最後会談のときに、これは大量引揚げが終りましたのちに、これは日本に我々代表団帰りましていろいろ当局と打合せをしなければなりませんが、そういうことが円満に解決いたしまして、できますならば是非御招待をしたいということを申しましたわけであります。で、今後も中国にまだ残つておられるかたも多数あるのではないかと思いますが、はつきり数もわかつておりません。今後のこともございますので、そうして又赤十字社連盟のほうから申しますと、中国紅十字会が北京にございますが、その中国紅十字会の正式メンバーになつておりまして、我々赤十字の国際会議とか赤十字社連盟の会議に出席いたしますと、常にそのメンバーとして中国紅十字会の代表と接触いたすような次第もございますし、何とか是非これは招待をいたしたいと私ども考えておる次第でございます。
  49. 藤原道子

    ○藤原道子君 重ねてお伺いしたいのでございますが、それは私はそういうふうに理解しておるのでございますが、もう一度念を押したいのでありますが、飽くまでも日本赤十字としてお迎えをしたいというお考えなんでございましようか。
  50. 島津忠承

    参考人島津忠承君) 当時の記録にもあると存じますが、日本赤十字中国紅十字会を御招待したいと思つておる次第でございます。
  51. 藤原道子

    ○藤原道子君 政府にお伺いしたいのでございますが、今も直接ここでお聞きの通りでございまして、この前のときには葛西さんの言われたことと何だか食い違いがあるようで、まあうやむやになつておるのですが、私は非常に遺憾だと思うのです。少しでも途が見出せるならばその途をなお切開いて進むべく努力がなされなければならない、こういうふうに私は考えられてならないのです。で、いろいろ向う日本を敵国とみなしておるであろう云々というような言葉も絶えず吉田総理初め予算総会なんかでも繰返されていた。そういう言葉を使つて、そういうことを言つていたらいつまでも切りがないのであつて、幸いに政府の関係でなくて、御努力を続けていらつしやる日赤がそういう方向に進みつつそれをやつてみたいと言つておいでになるときに、政府はこれに援助を与えられて行くべきではないか、私はそう思うのです。今でもソ連の問題にしてもやはり政府との交渉意思がないらしいということは、これは当然のことだと思うのです。それならば、日赤以外にその途を進むことができないならば、その日赤の考えていらつしやることに対しては全面的に御協力申上げて、日赤の賓客としてお迎えになるということになれば、どこに聞かれてもおかしいことじやない、筋の通つたことだと思いますが、何とか一日も早く実現できるようになお一層の御努力をして頂きたいと思います。そういうことに対してどうお考えでございましようか。政府からの御答弁を伺いたいと思います。
  52. 小滝彬

    政府委員(小滝彬君) 政府考え方は褄々申述べた通りでありまして、先ほども申しました通り十分日赤とも連絡をとりましてこの重大なる人道問題について我々の希望が早く達成できるように協力いたそうとして目下実際の措置を考慮中であります。  なお又、こういうことを申しますと議論の種になるかもわかりませんが、今島津社長がおつしやいましたことと私が過般説明したこととは私は大した矛盾はないだろうと思います。と申しますのは、島津さんがそういう御希望を持ち、そういう趣旨をお述べになられましたのを葛西副社長から承わりました。ただ今度電報を打つについて三団体として日赤の社長が半分約束したようなことを聞かなければ、向う電報を打たないというようなことを持つて来て説明しておられましたので、送還ということはちやんとやると紅十字会のほうでも言つておるところであり、そういう掛声がありますと、各団体の名前は出さないけれども、いろいろ何か別段のお考えもあるようにも思われますので、そうした面を実は事務的に外務省が世話をしておるのに多少それに齟齬を来たしたということは、私率直に申上げたわけでありまして、今島津さんのおつしやつたことを否定するようなことは申上げたつもりはありません。なお先ほど申しましたようにできるだけ島津社長とも連絡をとりまして極力そういたしたく私も努力する考えであります。
  53. 藤原道子

    ○藤原道子君 特に私はあなたを云々しようというのではありません。今日幸いにお約束された島津さんがおいでになるので、私はなおここで確認しておきたいと思つて申上げたのであります。  それからいま一つは、この頃帰還者の新聞談話とか、NHK等の取扱等についてもひやつとすることがたびたびある。向うを刺戟しやしないかと思つてひやひやすることが多いのでございます。又一面政府の言動に対してもこれは誠に遺憾な点が多いと思う。本当に帰還を希うならば政府みずからも私は言葉を慎んでもらわなければならんところが多々あると思います。どうぞ日赤のこうした御努力に対しまして一日も早くその努力が実を結ぶように重ねてお願いを申上げます。
  54. 堂森芳夫

    委員長堂森芳夫君) 藤原委員或いは廣瀬委員から紅十字会の代表を呼ぶことについて御質疑がございました。廣瀬委員からは外務政務次官の説明はよくわかつたというようなお言葉でしたが、私はわかりません。我々は前に決議をして外務大臣にこういうことを要求しております。又その後、外務政務次官にたびたび御出席を願つて御説明を聞いておりますが、どうも私は頭が悪いせいかわかりません。そして数日前から外務大臣に面会を要求しておりますが、言を左右にして会おうとしません。小瀧外務政務次官からも厚生委員長に会えということを言つてもらいたいと思います。
  55. 藤原道子

    ○藤原道子君 少くとも厚生委員会全員の総意によつて申入れしたはずであります。その代表として厚生委員長が面会を申込んだのに会わない、そんなことではいけませんよ。そういうことになればこの厚生委員会として更にあとで御相談申上げましよう。(「賛成」と呼ぶ者あり)
  56. 小滝彬

    政府委員(小滝彬君) 御趣旨はよくわかりました。早速大臣にも連絡いたしまして善処いたします。
  57. 堂森芳夫

    委員長堂森芳夫君) 御三人の御発言に対しまして他に御質疑ございませんか。  私ちよつと一、二分でいいからどなたからでも結構ですからお尋ねしたい。それはソ連におられる消息不明者と申しますか、そういうかたの数、赤十字社を通じての、赤十字社としての概算と申しますか、若しおわかりでしたら御説明願いたいと思います。それから赤十字社としての調査からおおよその数がわかつたお話を願いたいと思います。それから今後ソ連赤十字社にいろいろ折衝して参るもの思うのですが、見通しとして万国赤十字社を通じてやるというよりは、ものことを運ぶ上において万国赤十字社を通ずるよりも直接おやりになつて行く、こういうふうな方法をおとりになるのでございましようか。この二点についてちよつと御説明願いたいと思います。
  58. 島津忠承

    参考人島津忠承君) 第二の点につきまして私からお答え申上げます。  赤十字社の従来の行き方といたしまして、特にこの戦時中は赤十字といえども敵国の赤十字とは直接連絡がつきませんのです。その場合仲介機関としてジュネーヴにございます赤十字国際委員会を通じて連絡をすることになつております。ところが只今まだソ連とは講和条約は締結されておりませんけれども、併し戦闘状態ではございませんので、直接連絡もでき得るわけでありまして、で、ソ連赤十字の側におきましては赤十字国際委員会に対しまして、どうも従来のようなよい関係にございませんので、国際委員会を認めないような態度でありまして、今度も帰りにジュネーブに寄りましていろいろその点につきましても説明をいたして参りましたが、現在のような状態でございまして、ソ連赤十字社日本赤十字社と直接交渉ができ得るのでございますから、今後も強いて国際委員会を煩わしませんで、できます範囲で直接交渉して行きたいと存じております。  第一の点につきましては、私詳しい数字を知りませんので、他の参考人からお答え申上げます。
  59. 工藤忠夫

    参考人工藤忠夫君) 在ソ邦人の調査に関しましては、赤十字は国内調査機関を持つておりませんので、政府数字に依頼するほか方法がないのでございます。政府数字は御承知の通り死んだ人か生きている人については明白な数字を出しておりまして、シベリアやその他のソヴィエト領土における消息不明の人はないと言つております。死んだ人以外は皆生きている情報を持つております。ただ千島、樺太に四百八十五名の消息不明者がいるということを発表しておりますので、この報告を信ずるほかしようがないのでございます。
  60. 堂森芳夫

    委員長堂森芳夫君) 他に御発言ございませんですか。
  61. 藤原道子

    ○藤原道子君 参考人のいられる前でこんなことを言つてどうかと思うのですけれども、前の委員会皆さんの決議があつた、それは本当に、今一応御報告つたのですが、あなたが大臣に面会を申込んでも、どうしても会わんというのは事実でございますか。
  62. 堂森芳夫

    委員長堂森芳夫君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  63. 堂森芳夫

    委員長堂森芳夫君) 速記を始めて。  午前中の委員会はこれにて休憩いたしますが、御帰国早々御多忙でお疲れのところ、御三人のかたがたが狂げて長時間御出席願いまして、いろいろと御報告、或いは質疑に対しまして御答弁を願いまして有難うございました。これにて休憩いたします。    午後零時九分休憩    ―――――・―――――    午後一時五十五分開会
  64. 堂森芳夫

    委員長堂森芳夫君) 午前中に引続きまして委員会を再開いたします。  日程に追加いたしまして、理事常岡一郎君の後任補充のため理事互選を行いたいと思います。
  65. 林了

    林了君 理事の互選につきましては、成規の手続きを省略いたしまして、委員長の指名によられんことの動議を提出いたします。
  66. 堂森芳夫

    委員長堂森芳夫君) 只今の林君の動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  67. 堂森芳夫

    委員長堂森芳夫君) 御異議ないものと認めます。それでは常岡一郎君をお願いいたします。   ―――――――――――――
  68. 堂森芳夫

    委員長堂森芳夫君) 行政機構改革について厚生省関係の事項につきまして行政管理庁長官から御説明を願いたいと思います。
  69. 塚田十一郎

    ○国務大臣(塚田十一郎君) それではお尋ねでございますので、簡単に現在の段階におきます進捗の程度に応じた考え方を申上げたいと思うのでありますが、あらかじめお断り申上げて置かなければなりませんのは、今度の機構改革は先日も本会議で申上げましたように、最初に事務整理を検討しまして、それから機構、こういう順序で、事務の整理のほうは法制局のほうで審理をやつて頂いておりますが、法制局のものを機構改革本部であとを検討する、こういうことになつております。それから機構のほうは一応行革本部の素案ができまして、これに対してそれぞれの所管の省の御意向や御意見を伺つてみて、その上でもう一度考え直そう、こういうようになつておりますので、今各省にそれぞれ漸くお渡ししてお考え願う段階になつておりますところでありますから、今これから申上げます考え方は、その程度の段階においての物の考え方でありまして、従つて行政管理庁としましても又機構改革本部といたしましても、従つて勿論政府といたしましても何ら最終的な考え方のものではない、こういうように御了解を願いたいと思うのであります。  そこで先ず第一にこの官房統計調査部でありますが、これは一応廃止をしよう、こういうことになつておるわけであります。これは調査部を廃止しようということでありますけれども、仕事そのものをやめようという考え方で  ないのでありまして、大体今のこの統計に対する行革本部の考え方は、今各省のやつておられる仕事のうち共通の部分と申しますのは、集計をする部分は御承知のように各省がばらばらにやつておられて、又統計局でもやるというようにして、各省の部分は割に能率的に運用はして頂いておるようでありますが、統計局にある部分が非常に非能率になつておるものでありますから、それで集計部門を全部統計局にまとめて、全体として機構及び人員の整備と節約を図りたい、こういう考え方になつておるわけであります。そこでそういうものを抜いて行く関係からしまして、一応部を廃止してもいいのじやないか、こういう考え方になつておるわけであります。ただいろいろ意見を聞きましたところ、やはりこの各省の責任者の地位のかたがたにはかなりな素養、それから専門的な知識、そういうものをお持ちになつているかたがないと困ると言うので、それにはやはり相当な地位と待遇というものを伴つたポストというものがいるのじやなかろうかということで、部長という恰好でなしに、統計調査官というものを置いたらいいんじやないか。この考え方は厚生省だけに限らず、各省共通の考え方でございます。そういたしまして、なるべくこの部課の分れをやめてもらいまして、あとの人達もフリーに課とか、係とかいうことに捉われずに、フリーに機動的に働いて頂いて、今の仕事をやめるというようなことは勿論なくて、特定の人間で、最高の能率で、今の仕事を続げて行つて頂いたらいいんじやなかろうか、こういう考え方でございます。それからなお全体としてなるべく今度の機構には部制をやめてしまおう、こういうことになつておるのでありまして、今局、部、それから課、係というように全体として見まして非常に分課が多過ぎるという感じであります。そこで非常に小さい課がありますものですし、又非常に小さい係がありますものですから、課もなるべく整理して、大きくまとめて、そうして現在の部というものは実は実質的に課であるというような感覚にまで考えかたを直して頂いて、そうして部というものは大体の省において大部分の部を廃止しよう、こういう考えかたになつておるわけであります。従つて部制を廃止するということが、そこで今までやつておられた仕事を軽視しておるという考えかたでは少しもないものであるということを併せて申上げておきたいと思うわけであります。  それから国立公園部はその方針に従いまして、一応これは官房内の一課にしていいのじやないか、こういうふうに考えております。  それから環境衛生部のほうは、これは今の公衆衛生局の中の一つの仕事ですから、これも部を廃止して、何とかやつて行つて頂けるのじやないか、こういう考え方であります。  それから医務局、薬務局は一応統合して医薬局にしようという考え方になつております。これはなかなか御意見がおありのようでありまして、私どももなお慎重に民間側の意向、その他を今伺つておる最中でありますが、ただ感じといたしましては、薬務局というものを一つの局として独立するだけの仕事の量、その他果してあるのだろうかということについても、かなり疑問を持つておるのでありまして、ただこの案が新聞紙上を以て世間に洩れましてから、公衆衛生局、それから医務局、薬務局、この三つを二つにするという考え方ならば、むしろ公衆衛生局を二つに解体して、医務局と薬務局に仕事をわけてもらうほうがまだ合理的であるというような意見も伺つておるようなわけでありまして、どの辺にこれを最終的に持つて行くか、なお私どもとしても検討して見たいと考えております。  厚生省の所管では中央に関する部分はこんなものでございましようか、なお引揚援護庁を内局に移して、これは部制を是非やめてしまおう、こういうような終戦後から特殊の任務を持つて出て来ました役所は、実は非常に今度の整理にどうしようかということで、かなり困つた問題だと思つておりますが、引揚援護庁でございますとか、調達庁でありますとか、こういうものは皆共通のものであります。今臨時には仕事がある、併しやがてこれはなくなつてしまうのだ。なくなるので置いておくという考えかたも一番合理的だと思うのであります。恐らくなくなるまで置いておいて、いよいよなくなつたときに、ばたつと切られてしまつたときに非常に混乱を起すだろうという、実際面の考慮をかなりいたしておるわけであります。そこでこういう、もう先行きの或る程度の見通しのついておりますものは、逐次これは小さくして行つて、場合によれば仕事が若し十分できないというならば、仕事の一部分を他のところへ移しても、この機構自体をだんだんと何年かの年次計画で縮めて行つたらいいんじやないか、そのほうが本当に政治をされるときのそこに現在勤めていらつしやるかたの立場から言つても、非常に好都合じやないか、こういう考え方で、こういうものは相当大巾に今後何年間かの計画で縮小したいという考え方を持つております。その一つとして引揚援護庁を取りあえず内局に移して、部制を廃止してれ恐らくこういうところはかなり人員の整理という問題も出て参ると思うわけであります。  それから検疫所でありますが、これもなかなか厚生省側に御意見がおありのようでありますけれども、実は今度の機構改革の一つの考えかたとして共管事務となるべく統合しようという考えかたも一つあるわけであります。税関に、港についているいろいろな行政事務というもの、これは必ずしも共管という形のものではないのでありますけれども、狭いところに各役所が実にたくさん出ておりますので、港における行政事務というものが一番乱雑になつて、複雑化しておるということが顕著に目に立つわけであります、これはそういう意味におきまして、どこかに主として、そこに仕事を持つておるところへまとめたらどうだろうかという考え方をいたしておるわけでありまして、検疫所を税関に統合しようという考え方はその面から出て参つたわけであります。併しこれは仕事本来の行き方からすれば多少仕事の向きも違うようでありますので、いろいろまだ今後議論があると思いますので、一応の考え方はそういう考え方でございます。  それから医務出張所でございますが、これも御承知のように各地に分散している国立病院その他の病院系統のものの所どころに出張所を置いて監督なさつておるという役所のようでありますが、今日の状態になればもうそういうことも必要ではないのではないか。監督が必要であれば、何か監理官というようなものを適当な所のかなり大きな病院かどこかに一部屋くらい置いて、そこに駐在させておかれて連絡をとらせるというような程度でいいのじやないかということで、これは是非廃止をしたい、こういうような考え方になつております。それからして麻薬取締官事務所でありますが、これは麻薬取締、こういうような特別の任務を持つた警察は、成るべく今度の機会に……、警察庁という構想が警察制度の改革にあるわけでありますが、そこに移管をして、勿論これは専門知識をお持ちのかたでないとできないようでありますが、そういう人たちを警察の中に置かれて、そうしてそこでやつて行つたらいいのじやないだろうかという考え方で、麻薬取締官事務所というものを廃止しよう、こういうように大体なつております。  それで厚生省の分は大体そんなところでございまして、全体として見た感しでは他の省に対してかなり大巾な整理を考えたのでありますけれども、どうも厚生省という役所は、官庁自体に一つの社会政策的な考慮がある官庁でありまして、戦前から比べますと非常に厖大に拡大しておるものの一つなのでありますが、どうも考え方として、十分これを整理したり研究したりしようという考え方に、かなり私などの気持の上でも、そこまでやつては無理かなという感じの面が多くて、まあ今の段階で考えております各省の部分と比較いたしますと、割に厚生省は、俗な言葉で申しますと、改革が甘いという形になつておると私は考えておるのでありますが、併し所管の省としまして、やはりなかなか手厳しいということのようであります。まあ一応御報告申上げます。
  70. 高野一夫

    ○高野一夫君 只今長官の御説明では、私はまだ途中の案で、目下検討中だということでございますので、お尋ねするのもどうかと思いますし、我我も党内で特別委員会を作りまして目下検討しておる問題でございますが、折角厚生委員会で審議を始めるということになつたのですから、厚生省の関係として意見を申上げて、お聞きおきを願いたいと思います。  それは、こういうような行政機構改革ということは、事務簡素化、或いは予算の削減そのほか能率を上げる点、いろいろ効果を伴うことを目的とするものだと思いますけれども、然らば仕事の本質について私はよく吟味をした上で、統合すべきは統合し、分けておくべきは分けておくべきものじやなかろうか、こういうふうに根本的に私は考えます。そこで統計調査部とか国立公園部、まあいろいろございましようが、そういう点におきまして先ず公衆衛生局、医務局、薬務局、この三局について調べてみますると、仮に今問題になつている医務局と薬務局、この二つを見ますれば、これは本質的に仕事が違うのです。医務局のほうは、いわゆる本当の医療行政、医師を中心とした、或いは歯科医師、看護婦、そういうものを中心とした人に対する問題、或いは医療機関に対する問題、いろいろございます。尤もこの医務局の中でも管理課、国立病院課、国立療養所課、整備課、四課でございますけれども、とにかく医師、歯科医師、看護婦並びにその医療機関ということを目的としておる、それを相手にしての行政面の仕事をする。薬務局は、これは又全然本質が違うのでございまして、例えば、ここに企業課、薬事課、製薬課、監視課、細菌製剤課、麻薬課七課ございます。その企業課は日本における家庭薬そのほか医師が使う純然たる医薬品に関する商工業的な行政を掌る課でございます。いわゆる通産省でやるべき問題、製造工業或いは販売或いは防疫関係、そういうことを薬務局で取扱つておりまして、日本における医薬品工業は全く……、取締の面においても、生産工業或いは販売、商工行政の面においても、すべてこの薬務局においてやつておるという一つ事態があるわけであります。それから薬事課というのは、これは薬務局は感じとしてはという長官のお言葉がございましたが、その薬事課なんというものは極めて複雑なんでございまして、私は別に厚生省の代弁をするわけではござませんが、多少承知しておる点で意見を申上げます。薬事課というのは薬剤師だけでなくて、製薬業者或いは薬剤師以外の医薬販売業者、そのほか家庭医薬業者、そういう人に対する問題、或いはいろいろな製薬工場、販売場所、そういうものに対するいろいろな手続その他すべての関係法律を中心にして行く、製薬課はさきほど申上げました企業関係と相待つて、日本における製薬の振興のために……。製剤課は又特殊なものでございますが、やはり同様の意味においてやつて来ているわけであります。監視課というのは、これはヒロポンのことにいたしましても、そのほか不良薬品にいたしましても、人命にかかる医薬品を製造させて、そうして優秀なる医薬品を医療機関に提供する、一般に提供するということで、監視ということが如何に専門家の手において大事に、厳正にやられなければならんかということを考えますと、これは大事な特殊な仕事でございます。麻薬課は御承知の通り、この麻薬の仕事は国警なら国警のほうに移すということになりますと、これは曾てそういうことがあつたのであります。曾てそういうことがあつて、うまく行かんからこれは厚生省の薬務行政の所管に移つて来た、而もこれには麻薬法そのほかいろいろな法律がございまして、いわゆる薬学的の専門の法律があつて、そうして現在麻薬司法官が司法権を持つて、そうして専門的の取締をやる、こういうようなことになつているわけです。こういうふうに考えますと、まあ詳しくは申上げませんが、薬務局の仕事というものと医務局、公衆衛生局の仕事というものが本質的に私は違う、学問的にも技能的にも、仕事そのものの性格が違う、こういうふうに思うのであります。そこで医務局と薬務局というような仕事の本質の違うものを一つにして、果して円滑に、うまく行政が行われるかどうかという点になりますと、私どもは頗る疑問に思う。殊に薬務局が仮になくなるということになれば、地方の薬務課も殆んどなくなる。そうすると地方における薬務行政というものの在り所というものが誠に何と申しますか、心許ない結果になろうかと思います。これは公衆衛生局を分けて医務局に一応持つて行き、一部を薬務局に持つて行く案もあるというお話でございましたが、それならばまだ話は私はわかると思うのであります。その点は深く触れません。こういうようなふうに仕事の一つの本質、それから日本におけるいろいろな業態の立場、そういうことを十分一つ御検討願つて、この厚生省における案を考えて頂きたいと思うのであります。仮にこういう点に手をつけるとなれば、もつと手をつけなければならんことはたくさんあるのであります。仮にそれじや社会局に更生課、生活課というものがある。そうすると児童局にいろいろな課がある。そうすると、児童局と労働省の婦人少年局、それは労働に従事する婦人少年を対象にしたものでありましようけれども、併しながら厚生並びに衛生的観点から労働省の婦人少年局でやつている仕事を見ますると、児童局と重複しているところがたくさんある。社会局においても同様であります。農林省においては薬事課というものがございます。これは動物的の医薬品は農林省でやつている。而もそれは根拠は何かというと、厚生省の薬務局のやつている薬事法に基いた動物的の医薬品なんです。それを何らかの政治的な意味がありまして、これが農林省に持つて行かれてしまつたわけです。そのために同じ医薬品でありながらこれが所管を別にしておるので極めて不便であるというようなことを考えなければならんのでありまして、そうすると根本的にいろいろいじつて参りますために、厚生省の問題を検討いたしますれば、労働省と大蔵省にも保健関係がある。更に労働関係の衛生行政も労働省に入つている。そうして又生活改善課というような公衆衛生局と同じような仕事が農林省にある。そういたしますと、これは農林省、労働省、大蔵省、少くとも文部省、これだけのものも併せ考えなければ、厚生省の本当の私は合理的なる機構改革案はでき上らないと思う。そうすることには到底半年、一年においてそういうような各省に跨がつている本当の厚生行政の在り方を検討して結論を出すのには甚だ私は容易なことではなかろうかと思うのであります。いろいろ事情もございましようけれども、もつと深く仕事の在り方について一つお考え置きを願いたい。いずれ又我々の意見を開陳する機会もありましようけれども、一応私の意見を申上げておいて、御参考にもなりますまいけれども、お考え置きを願いたいと思います。
  71. 堂森芳夫

    委員長堂森芳夫君) 榊原先生に申上げますが、長官非常にお忙がしいようですから、できるだけ簡単に。
  72. 榊原亨

    ○榊原亨君 今高野委員から言われましたように、この医務局関係のものと薬務局関係のものとは本質的に違うのであります。これを一つ十分御検討をお願いいたしたいと思います。むしろ医務局は、この医務関係のことを申しますならば、労働省或いは文部省その他におきまして、医務局関係のものはたくさんございますから、むしろ医療行政というものは当然医務局に統合されるというふうな形をとつて頂かなければならんと思うのであります。又保険局について無理に申しますならば、保険局の医療行政に関するものも当然これは医務局に合するというようなことによりまして、初めてこの行政改革の実が上るというふうに私ども思つておるのでありまして、これは時間がございませんようでございますから詳しく申上げませんが、薬務局と医務局とは本来の本質が違うということを一つ長官においても十分御検討をお願いいたしたいと考えておる次第であります。
  73. 湯山勇

    ○湯山勇君 私から基本的な問題についてお願い申上げたいと思うのです。それは政府の施策の全体の中で、率直に申しましてやはり一番欠けておるのは厚生行政だと思います。例えば社会保障の問題にいたしましても、今の国民衛生の問題にいたしましても、生活擁護の問題にいたしましても、みんなそうだと思うのです。従つて、こういう機構改革の場合には、部局の改廃とか、そういつたことに重点が置かれがちですけれども、全体として厚生行政はもつとやつて行かなければならんという立場にお立ちになれば、今の薬務局の問題にいたしましても、新らしい観点に立つての医療行政なり或いは薬務の行政なりの使命は将来性があるのでありますから、基本的にともかく、厚生行政については今の日本の大きな欠陥だから、これを一つ大きく伸ばして行くというような観点に立つて、機構改革としての御考慮をお願い申上げて、単に整理という意味ではなくてお願い申上げたいと思います。
  74. 林了

    林了君 今の湯山委員からのお話に、更に附加えて私からお願いしたい。塚田長官は、国務大臣におなりになる前に私も曾て厚生問題でお訪ねいたしまして、いろいろお願いに上つたときに、厚生行政は力が足りないということを特に強調されたことを私は記憶いたしておりますので、その点は一つどうか昔のあの言葉をお忘れなく、この際是非とも御努力頂きたいということを私から特に一つお願い申上げておきます。
  75. 堂森芳夫

    委員長堂森芳夫君) 他に長官に御意見或いは御質問ございませんか。  では、私からちよつとお願いしておくのですが、もうくどいことを申しませんが、単なる行政機構改革というのではなしに、一つ厚生行政でなしに、政治は前進するのだという建前で、単なる部局を改廃するとか統合するとかいう、そういうのではなしに、厚生行政だけは新らしい観点に立つというお約束を願いたいと思うのですが、それは御無理かも知れませんが、一つ御考慮願いたいと思います。
  76. 塚田十一郎

    ○国務大臣(塚田十一郎君) それでは御意見を伺うことがなければ、一応総括的なものの考え方としまして、一言お答え申上げましておいとまを頂きたいと思います。  実は先ほどもちよつと申上げましたように、今度は各省かなり辛辣に考えておるわけでございますけれども、併し基本の考え方としては、今やつている仕事をどうこうという考え方は、もとより事務整理の面もありますけれども、国としてはこういう仕事をしないでもいいというものは仕事をやめるという考え方もあるわけでありますが、そうでないものにつきましては、今仕事をやつているものをなくするという考え方ではなしに、今やつている仕事をもう少し能率を上げてやつて頂く工夫がないだろうかというのが今度の考え方の基本であります。そういう工合に考えながら、先ほども申上げましたように、私も実は厚生行政というもの自体は昔よりも随分伸びておる。昔のあれからいたしますと、厚生省、労働省、建設省、自治庁、こういうものが大体皆内務省に一本になつておつたので、昔の内務省の陣容からすると、この面は実に厖大になつてしまつておるのであります。そういういろいろの過去のことから検討をいたしてみましたけれども、やはり事柄の性質上これを強くどうこうするという考え方はできないのじやないかという感じをいたしております。又一つの省の中の仕事を話てみましても、例えば今児童局のお話がありましたが、又その中でも有力な発言力を持つたバツクのない非常に弱いものがありまして、そういうものを弱いからといつてやつてしまうと、伸びるべきものが伸びないと、そういう意味におきましては、いろいろ今高野委員から伺つた医薬行政というものが、どちらもなかなか背後に強いプレツシヤー・グループをお持ちになつておるので、(笑声)それだけに何も国がそんなに面倒をみないでも十分必要な利益やそういうものは国政の上に御主張になるチャンスもあるのじやないかという感じもないわけではないのでありまして、だから個々の省の内部の状態を見ておりまして、弱いものであるけれども併し先行き大いに面倒をみてやらなければならないという感じのものは、成るべく今度は傷めつけないで育てて行こうというような感じでありまして、恐らくその感じ委員会皆さんがたに御賛同願えると思うのであります。併し、最初に申上げましたように、まだ最終的な考え方ではないのでありますから、本日伺いました皆さんがたの委員会の御意向を速記録などを取寄せまして十分又重ねて検討いたしまして、成るべく誤りない結論を出したいと考えておりますので、本日は御了承願いたいと存じます。
  77. 堂森芳夫

    委員長堂森芳夫君) なお行政管理庁の次長の大野木さんが出席されておられますので、引続き御質疑願いたいと思います。
  78. 有馬英二

    ○有馬英二君 先ほど長官から伺いましたのですが、これはいろいろ今まで出先官憲、出先官憲と言つていいかどうか、例えば厚生省の出張所というようなものが各県にある、或いは各地方にありますが、それを今度はおやめになるようなお話のように伺つたのですが、これはただ厚生省に限らず、各省の出張所というようなものを全廃なさる御意見でありましようか、如何でございましようか。
  79. 大野木克彦

    説明員大野木克彦君) 御承知のように、この頃各省の出先機関でブロック的なものと各府県にあるものとございまして、それが一つのものがブロックにもあり府県にもあるというようなものが相当ございますので、それらを成るたけどちらか、府県段階にするか、或いはブロックにするか、三段階になつていたものは成るたけ二段階にして行きたいという基本の方針がございます。只今お話の出張所は、ブロック機関でその先に府県があるというような機関ではございませんけれども、まあ現在の段階におきましては、必ずしも各ブロックになくても、本省からの駐在官くらい出してあれば仕事はやつて行けるのではないかというふうに考えておるわけでございます。それに似たようなものといたしましては、法務省の矯正管区というのがございまして、これはやはり法務省に属します、例えば刑務所であるとか、少年院であるとか、少年鑑別所であるとかいうような、要するに法務省の矯正関係の施設に対しまして、或る程度以下の人事であるとか、或いは作業の振割りであるとかいうことをやつておるわけでありますが、そういうものにつきましても同様な考えをして行きたいというふうに考えております。
  80. 有馬英二

    ○有馬英二君 厚生省の出先機関である出張所を若しおやめになると、その機構だけをやめて、出張所の機関はそのままにして、どこかへ附けるというようにするおつもりですか。
  81. 大野木克彦

    説明員大野木克彦君) 仕事そのものを全部やめるという考えではございませんので、適当に駐在官でも派遣いたしまして、止むを得ない仕事だけはそのままやつて行つてもらおうと、こういう考え方でございます。
  82. 有馬英二

    ○有馬英二君 実際上においてどういう形態になるか、私はまだちよつとこれはまあ想像にしか過ぎませんが、従来の国家公務員が地方庁の中におつて、そして仕事をしておる。これは国家公務員であつて、地方庁と直接の繋りが仕事の上においてはあるのですが、命令系統から言うと繋りはないということで、大変どうも、何と言いますか、仕事が捗るとか何とかいうことではないのですけれども、どうもそこはしつくり行かん点がある。自分は国家公務員であるから知事の支配を受けないというようなことを言つて大変威張つている者があつたりなんかしまして、地方庁としては、地方庁ばかりではないのですが、ちよつと困るような点があるのですが、この際若し今の厚生省の出張所をやめて、そしてこれを地方庁の中で働かせるというようなことによつて、今私が申上げたような形態が又そこへ一つできるのじやないかというような点を心配するのですが、そういう点は如何ですか。
  83. 大野木克彦

    説明員大野木克彦君) その点は、私ども考えおりますのは、地方庁に入るのではなく、まあそのブロツクの中の一番適当な大きい施設であるとか、例えば大きな病院でありますとか、これは直接地方の機関に関係するものではなくて、国の病院とか療養所とかいうような厚生省機関の仕事だけをなさるものでございますから、何か適当な出先機関の中でやつて頂けばいいのじやないかというふうに考えております。
  84. 高野一夫

    ○高野一夫君 ちよつと大野木次長に伺いますが、私先ほども申上げたのですが、この社会保険関係が労働省と大蔵省に分かれておる。労働省の職業安定局に失業保険課があり、それから労働基準局の中に労災補償課がある。それから大蔵省の主計局の中に給与課があつて社会保険関係のことをやつておる、こういうようなものを厚生省の保険行政の管轄下に統一するというようなことはむずかしかろうと思うのですが、何かそれについてお考えなつたことがありますか。
  85. 大野木克彦

    説明員大野木克彦君) その問題につきましては、行政改革本部でも相当研究をいたしましたのでございますが、只今お話のように、なかなか実行上困難な点もございますので、只今のところではまだ最後的に決定いたしておるわけではございませんけれども、まあ少くとも最後の線として何か窓口が一緒になれるように区分はできないかということで、今最後の線はその辺に置きたいと考えております。
  86. 高野一夫

    ○高野一夫君 これも先ほど申上げましたが、農林省の畜産局に薬事課というのがある。これは御承知の通り、動物に対する医薬品を扱つているわけですが、この基本の法律は薬事法で、これは薬務局で殆んど全部所管してやつているので、動物薬品だけが農林省の畜産局の薬事課というのをわざわざ設けて、そつちに行つているということについて、医薬品取締上非常に不便、不都合が起つていると私は思いますが、この農林省の薬事課をやめて、動物医薬品を厚生省の薬務局関係のほうに統合する、持つて来るということについて、何かお考えなつたことがありますか。
  87. 大野木克彦

    説明員大野木克彦君) それは一応動物であるということで従来考えて来ておりましたのですが、なおよく検討いたしてみたいと思つております。
  88. 高野一夫

    ○高野一夫君 これは動物であつても、人間であつても、薬事法でとにかく生きたものの病気の予防、疾病の治療ということを主眼としてやることをきめて作る医薬品でございますので、この点はどうか一つ統一的にお考え願いたいと思います。  それからもう一つ伺いたいのですが、農林省の農業改良局、ここに生活改善課というのがある。この間も厚生委員会の小委員会で農林省の課長を呼びましていろいろお話を伺うと、その内容厚生省の公衆衛生局でやつていることと全く同じなんです。ただその対象が、相手とするものが都会と農村と違うから、これは農林省でやつたほうがいいとおつしやるのですが、これは私はおかしな話で、仕事の内容において、都会向け、農村向け、それから漁村向けに区別して仕事をして行けばいいのであつて、こういう生活改善課の仕事も是非一つお調べ願つて、公衆衛生局の取扱つておる仕事は衣食住全体に亘ることでありますが、これは衣食住全体に亘る問題として、当然公衆衛生局方面の仕事に統合して差支えないと思うのですが、これについて次長のお考えを伺いたい。
  89. 大野木克彦

    説明員大野木克彦君) 実は少し角度が違うかも知れませんけれども、生活改善課でも、対象といたしておりまするところは婦人などでありまして、婦人の関係の仕事をいたします。ところが、先ほど来お話のように、労働省の婦人少年局があり、厚生省の公衆衛生局もあり、又児童課もあり、又文部省の社会教育のほうにもございますので、主としてこの問題は生活問題になると思います。が、これらは何か一緒にならないかということはかねて考えてはおるところでございますけれども、やはりいろいろそれぞれの対象が違つたり何かいたしておりまして、どうも今直ちに一緒になりというような状況ではございませんが、検討は進めて行きたいと思つております。
  90. 高野一夫

    ○高野一夫君 その点についても十分一つ御研究願いたいと思います。  もう一つ伺いたいのは、農林省の食糧庁に食糧研究所というのがございます。厚生省の公衆衛生局関係の所管には、御承知の通り国立栄養研究所というのがございますが、この厚生省関係の栄養研究所と食糧庁関係の食糧研究所はどういうような仕事をしておるというふうに行政管理庁のほうではお考えなつておるのでしようか。この仕事の内容は非常に似通つたものである、或いは同一である、それがただ所管が変つて、別個の立場から研究しておるのだとお考えになるかどうか、その点について一応あなたの御見解を伺つておきたい。
  91. 大野木克彦

    説明員大野木克彦君) これも仰せの通り、似たような面が非常にあると思います。ただまあ厚生省のほうの栄養研究所のほうはいわゆる栄養という点に主力を置かれておりますし、又農林省のほうは、例えば食糧に対する虫害の対策であるとかいうような面にも触れておりますので、若干違いはあるように思いますが、併し広い範囲では似たものであるという感じは持つております。ただ従来やはり別々に発達して参りましたので、この点ももう少し研究さして頂きたいと思つております。
  92. 高野一夫

    ○高野一夫君 私ばかりしやべつて申訳ないですが、私の承知しておる限りでは、食糧研究所は農芸化学的の飲食物に対する研究を主にしてやつておると思うのです。それから昆虫、そのほかいろいろな虫についての問題もございましようが、昆虫、鼠族の問題は、これは厚生省の所管であつて、厚生行政として、羽虫にしても、穀象虫にしても、そのほかの食糧に対するいろいろな昆虫、鼠族の害ということは、厚生省の公衆衛生局が中心になつて研究を進めておる問題です。そうして一方の厚生省の栄養研究所は、カロリーとか、蛋白はどうとか、そのほかいろいろな栄養的なことをやつておりましようが、これは食糧研究所における農芸化学的な仕事、或いは害虫等の仕事、それから厚生省関係の栄養的な仕事、これは全く私は同一線で行くべきものだと思う。これは当然主たる業務をやつておる厚生行政関係に食糧研究所は合体すべきものじやないかと私は考えているんですが、これも一つ十分御研究置き願いたいと思います。率直に申上げて、これは私は学閥争いに過ぎないと思う。食糧研究所は農科出の、農芸科出が別に自分たちが一画を設けて仕事をする。或いは栄養研究所は医学出がやるというようなことで、とかく余り連絡もよくないように承知しております。そういうことではやはり国家の機構としていかんのでありまして、これは私は一つに統合されることが、食糧問題の科学的研究として非常に合理的に行くんじやないか、こう思いますので、その点を主として扱つている公衆衛生関係のほうに統合できるかどうかということについて一つ御研究置き願いたいと思います。
  93. 榊原亨

    ○榊原亨君 只今高野委員との問答でも私どもは大体わかりますが、結局医務局と薬務局の仕事が違うということ、それも医務局と薬務局と、まあ医薬に関することだから両方一緒にしようというような考えは全く素人のことなんですね。先ほど高野委員も言われましたように、人間の薬だから薬務局がやるんだ、動物の薬だから農林省がやるんだというふうな考えを持つておられれば、これは当然薬務局と医務局が一緒になるのは、それは薬のことだから、医者のことだからというのでありますが、全くこれは一方は製造ということでございますし、一方は人間ということを扱つているのでございますから全然その内容が違つているわけなんです。それを仮に一つの局にまとめましてても、結局その中は二つに分れるということでありますからして、これはむしろ今高野委員が言われましたように、薬の製造、監督についてだけ各省各局から薬務局に集め、一方医務局のほうにおきましても人間の治療という、医療行政ということを、各省各局から集めて医務局に一本にされるということが本当の行政改革の実が上ると私は思うのであります。先ほどから薬務局関係について高野君が言われましたように、やはり医務局関係につきましても、労働省は労働省に医療行政に関することがあり、文部省は文部省の中にある。又保険局のほうにおきまてしもやはり医療行政に関することが保険行政の中にあるというようなことでございますならば、それを統合したほうが早いのだ、というのは各省各一局のセクシヨナリズムといいますか、今までの行きがかりということに全く捉われた考えでありまして、政府が行政改革をやるという以上は、そのセクシヨナリズムというものを打破して、そうして本当の能率的な統合、整理ということをしなければならんと思うのでございますから、ただ安易な素人考えで医務局と薬務局と一緒にして医薬局を作るのだというようなお考えでやられたのではとんでもないことだと思います。又こういうことは厚生行政の上から言いましても、日本の政治の上から言いましてもこれは大変なことが起ると思うのでありますから、どうか一つその一つ一つの課が行なつおります本質を十分専門家について御認識下さいまして、そうして大所高所から適当な処置を講じられんことを私はくれぐれもお願いいたす次第でございます。例えて申しますと、今いろいろと高野君が言われましたからもう附け加えて申しませんが、例えば公衆衛生局におります水道課と同じです。建設省と二つに分れてしまつて、水道を造るのが建設省、管理をするのは水道課だ、とんでもないことでありまして、んなことをやれば、病院を造るのは建設省で造らなければいかん、監督だけは医務局でやる。そういうことじやないのです。そこで水道課なんかも当然これは公衆衛生局に一本にまとめて、水道の建設並びに監督というものは公衆衛生局一本でやれば、書類も簡単で済めますし、いろいろな点において事務量が少くなる、そういう点を十分一つ一つの課につきましたところのお仕事を、ただ安易な考えでなしに、その本質を十分お究め下さいまして、一つの行政革改の案を作つて頂きたいと思うのでありますし、すでにお作りになりました案につきましても、いろいろな声を聞いて謙虚な態度でこれを改正して頂くということを十分次長においてもお含み下さいますことをお願いいたす次第であります。
  94. 林了

    林了君 只今高野、榊原両委員からのお話がありましたが、厚生行政が非常に弱いということは、先ほど塚田長官が、自分が今整理をしなければならんというときになつてみると、どういう考えを持つているのかわかりませんが、曾つて私がおつたときに閣僚の名前まで出しまして、厚生大臣しかじかとまで言うたくらいなんで、先ほどそこまでは私は言わなかつたんだけれども、この問題は一つ是非考えてもらいたいと思つて先ほど部というものを今度廃止をするのだ、局にまとめて部を抜いて課にするというような話でありましたけれども、すつきりするという考え方でそういうことも一つの方法かも知れないが、例えば今公衆衛生局の環境衛生部なんという部はどういうふうにされるお気持があるのか、課にして小さくしでしまつてこの仕事が折角伸びんとしたものを小さくするというふうなことは、これは私といたしましても国民としても、今日の文化生活や何かというているときに、こういうものを小さくして行つていいか悪いかということは、あなた自身もよくおわかりだと思うことで、こういうことについてはどういうふうに考えておられるか、私は行政機構改革というものは小さくして行くことだけがこの改革でない、いいところはもつと大きくするんだ、そうしてほかの部門でこれを廃止するものは廃止するというふうにやつてもらつてこそ初めて意味があるので、厚生省の中の、とにかく部を課にする、そうして小さくして行つて、果して今まで厚生行政が弱い弱いと国民からも言われ、厚生委員会からも盛んに政府は鞭撻を食つておるこの状態に更にこれを弱くしたときに、一体日本の文化国家建設なんということができるか、これを一つよく考えてもらつてこの環境衛生部というようなものは、これは国民生活とは最も密接な関係があるところなんですから、こういうところは、一つ部を廃止して課にするというような考えが若しあるならば、これは断乎として反対をしてもらいたい。どうか今も私が申上げましたように、こういうところはむしろ大きくしてもらいたい、逆に。それを一つ希望しておきます。
  95. 有馬英二

    ○有馬英二君 お尋ねいたすんですが、厚生省の外郭局といいますか、団体があるのですが、例えばもと公衆衛生院と称しておつた予防医学研究所のようなもの、或いは精神衛生研究所、それから栄養研究所というような厚生省の附属と言いましようか、研究機関があるのですが、そういう機構についてはどういうふうにお考えなつておりますか。
  96. 大野木克彦

    説明員大野木克彦君) 厚生省関係試験研究機関である附属機関につきましては、現状とそう違つたことは考えていないのでございまして、一番初めお述べになりました予防衛生研究所にも別に触れようといたしておりません。ただ今までの段階で若干考えたこともございましたけれども、今の段階では皆そのままになつております。
  97. 有馬英二

    ○有馬英二君 いろいろまあデマだろうと思いますけれども、この行政改革に際してそういう機関まで廃合されるようなことが若しあるとすれば、これはやはり先ほどから高野委員或いは林委員が言われたと同じように、厚生行政の上において非常な退歩と私ども考えるのです。御承知のように日本厚生省などというのはまだできてから間がない。内務省の中に小さくなつておつたような、そういう哀れな状態からようやく厚生省が独立して、そして今日の状態にまで我々が盛上げて来たようなわけであるのですから、こういういろいろな外郭機関があつてやつと厚生省が幾らか国際並みになつたと私ども考えているのですから、こういう際にこういう最も必要な機関を拡張されるならそれは差支えないのですが、これを縮小するというようなことがあつてはならんと私ども考えておりますから、その点をよく御考察を願いたい。
  98. 高野一夫

    ○高野一夫君 公衆衛生局長お見えになつておりますか。ちよつと伺いたいのですが、人口問題研究所というのがありますが、これは事務的な仕事をしているのだと思いますが、そうですが。
  99. 山口正義

    説明員(山口正義君) 人口問題研究所は総務課のほうの所管になつておりますから、総務課長のほうから。
  100. 小山進次郎

    説明員小山進次郎君) 人口問題研究所は人口現象の研究とか或いは各国の人口政策の科学的研究とかといつた、どちらかというと人文科学に近い方面の研究をしております。
  101. 高野一夫

    ○高野一夫君 この人口問題研究所というのはやつぱり結局まあ調査研究にしましても別に試験室による研究所ではないので、事務的の研究所であるわけですが、これは厚生省の大臣官房とか或いは公衆衛生局とか、そのほかのところに一つの課として持つて来るということはできないですか。極めて不都合がありましようか、
  102. 小山進次郎

    説明員小山進次郎君) これは純粋な科学的調査研究をしております機関でございますので、行政事務として扱つたり或いは政策を立てるという機関として扱いますと科学的な純粋性を失つて参りますので、人口問題研究所はやはり研究機関として別個に置くということにいたしておりまして、実は現在のところ、まだお恥かしいながら人口政策と称するほどのものを現在の政府は持つておらないわけですが、そういう方面の仕事は今のところ他の局部の所管に属しない事項という意味で私どものほうでやつております。
  103. 高野一夫

    ○高野一夫君 厚生省は内閣の方針に従つて受胎調節運動そのほか人口問題に非常に関係の深いことを公衆衛生局所管でおやりになつておる。これは人口問題研究所でも取り上げて非常に重要な問題として研究しておる。仮に研究所だから科学的な研究調査をしてデーターを出す、行政的の事務がないということであつても、然らば統計的な仕事はどうかということにもなるわけでありまして、統計的な仕事でもそれがほかの仕事の参考になる基本になる、そういう課がやはり省内の一つの仕事としてあるのと同じような意味において、研究所が別に結論を出すわけではないのでありましようから、そういうような調査研究をしてデーターを出す仕事を省内の一つの課として、局の配属は御随意として、持つて来てやつぱし工合が悪いものでしようかね。どうも私は行政機構の問題は余りよく知らんのですけれども
  104. 小山進次郎

    説明員小山進次郎君) 只今お話のありましたように人口政策を立てまするとか、或いはそういう政策に基いた行政事務を実施するというような点から考えますというと、若しも人口政策というものをもつと真正面から取上げるという段階になりますればこれは当然そういつた部局が必要であろうと思います。曾つて厚生省が設置されました当時体力局が後に変えられまして人口局になりましたことがあるのでありますが、この当時は人口局においてさような事務を取扱つておつたのでございます。ただ現在ではまだそういつた段階になつておりませず、日本として現在の人口問題の上においてどういう点が問題になるか、又どういう人口政策を持たなければならんかということから検討する段階でありまするので、人口問題研究所とか或いは各省の関係の研究機関で研究いたしました研究資料を基礎にいたしまして、丁度一月ほど前から発足いたしました人口問題審議会で漸く検討を始めたというような状況でございます。
  105. 高野一夫

    ○高野一夫君 私は人口問題の研究が非常に大事だから申上げるわけでありまして、この点については今後も厚生省それから大野木次長のほうでも一つ十分御研究願いたいと思います。
  106. 有馬英二

    ○有馬英二君 只今高野委員から人口問題研究所について御質問がありましたが、私は高野委員とは少し考えが違うのですが、日本の諸問題が人口過剰に胚胎しておる、胚胎といつちや少しぼんやりしているかわからんかも知れませんが、どうしても日本の人口をこれを今調節しなきやならんという際に、少しも確乎たる人口政策というものを政府が立てておらん。而も人口問題研究所なるものが現今では外務省の傍らに少さい部屋を少しもらつてやつておるというような、実に情ない状態であります。これは根本的に私は誤りだと思うのです。政府はすべからく人口問題研究所を拡大して、もつと、これは行政面ばかりじやありませんが、研究に予算を十分に出して、そうして科学的に研究をさして、その基礎の上に確乎たる人口問題の政策を立てるべきである。そういう点から申しまするというと、只今の人口問題研究所はなつておらん。フランスあたりは、これはまあ御承知のようにフランスは人口が少くて困つているのですから、人口問題の政策ということはフランスにとつては非常に重要な問題である。丁度日本は反対の立場にある。フランスの人口問題研究所なんというものは厖大なる予算を組んでやつておるという話です。私はその予算は知りませんけれども、とにかくヨーロツパでフランスが最も力を入れている国ですからでありましようけれども日本は反対に人口過剰に苦しんでおる国なんですから、どうしても政府が思いをそこにいたしてもつと大きい予算を組んで、そうして今のようなちつぽけな研究でなしに、もつと人を殖やし、そうして十分のテーマをもつて研究させるべきである、私はそういうふうに考えておる一人でありますが、どうぞこの行政改革の際において人口問題についてもう少しお考えを願いたいと私は思う。  それからなお私は常に遺憾に思つておりますのは、国立公園の問題なんですが、これもどうも国立公園部というものが厚生省の中にあるのですが、予算がいつも誠に少いので、あつちこつち国立公園を廻つて歩きましても、もう何も手がつけておらん。私は北海道ですが、北海道には大きい国立公園がいくつもあるのですが、何も施設がしておらない。こんなことでは将来とても外人を誘致するとか、それによつてどうするとかいうことは、どうも夢のような話だと思うのですね。こういうことにもつと政府は堂々と積極的の方策を立てて予算を組んで頂きたい、こういうふうに考えておりますが、今回の行政機構改革には国立公園部というものは何とか変りますか。どういうような考えですか。
  107. 大野木克彦

    説明員大野木克彦君) 大体の方針によりましてこれも課になる案にはなつております。
  108. 堂森芳夫

    委員長堂森芳夫君) 有馬委員、御発言ございませんか。
  109. 有馬英二

    ○有馬英二君 まあ具体案がまだ恐らくできていないのじやないかと思うのですが、もの少し具体的な方針が、方針といいますか、決定する前に、もう一遍それじや伺いたいと思います。
  110. 榊原亨

    ○榊原亨君 只今有馬委員が国立公園というお話がありましたのですが、これも水道課と同じことで、道路その他の関係、建物の関係はほかの省というようなことで、国立公園をよくしようと思つたつてなかなかできないというようなことでありますので、これもやつぱり国立公園に関することはやはり一本の行政で行けるというふうにお考えおきを願わなければ、今有馬委員の言われたように実績が上らんと思うのであります。現にこの国立公園の監督官を置きました公園、例えて申しますと、十和田湖の公園というようなところと、指導員がおらないところの、たつた一人でありますが、おらないところの国立公園を比べてみますると、もう雲泥の差があるのでありまして、これはどうしても観光客をとるという上から行きましても、やはり行政が一本化するということが必要であり、又監督官がおりまして指導するということが必要であると思うのでありますが、こういう点につきましてもやはり各省各局を併せて一本化するということを一つお考えおきを願いたいと我々は思うのであります。  それからまあこれは行政改革とは余り関係がないと思うのでありますが、医務局にお尋ねしますが、この際、これは行政改革とは違うと思うのでありますが、国立の頭部療養所と国立の脊髄療養所とこの二つあるのでありますが、これは一体何人の患者を容れて、どういう意味でこれが二つに分れておるのでありましようか、医務局のかたがおいでになりましたら。いや、今おわかりにならなければいいのですが、こういうことも、よく見ますと、これは頭部療養所とは戦後暫くの間は、脊髄をやられた患者だけを容れておる。一方は頭をやられた患者ということで、要するにこれは身体障害者のことでありまして、もう今ではこういうものを特別に療養所を作らんでも身体障害者を扱うようなことで、一本でできるのじやないかと私は思うのでありますが、国立脊髄療養所と国立頭部療養所と、頭をやられた患者と脊髄をやられた患者とを分けて療養している。これは何か意味があるのでしようか、何人の患者がおるのですか、ここでわからなければ……、こういうところにも統合されるか、整理されるとかいうようなことが必要ではないかと思うのですが。
  111. 曾田長宗

    説明員(曾田長宗君) 頭部療養所及び脊髄療養所の現状でございますが、この頭部と申しますのは、一応その名の通り頭部における障害、特に戦傷による者の収容施設、下総にございますのですが、今日におきましては一般の精神病者をむしろ主として収容いたしておる状況でございます。それから脊髄のほうは、これはその後も新しい患者を収容しておるわけでありまして、いろいろ脊髄の障害を受けた後積極的な医療を必要とするという者が収容されておるのでありますが、それで只今お尋ねのありました一般の身体障害者の施設と同じではないかという御質問に対しましては、この頭部或いは脊髄の療養所というふうに申しておりますのは、今も申上げましたように、治療を更に要するという者を私どもの療養所で扱つておるわけであります。一通り症状が固定いたしまして、そうしてそれに職業復帰をいたさせますに必要ないろいろな訓練、指導をいたすというものが、この身体障害者の収容施設になつておるわけであります。なお只今も申上げましたが、確かに名称といたしましては、頭部療養所と言うのは今日の状況としてはふさわしくないのでありまして、私どもはこれを精神頭部療養所というふうに称しておるわけであります。その収容定員は、この脊髄の療養所は小田原にございまするが、百二十が定員になつております。それから只今申上げましたように、以前に頭部と申しましたのは下総の療養所でございましたが、只今は精神頭部療養所というふうにまとめておりますが、三カ所ございまして、収容定員は千五百になつております。
  112. 榊原亨

    ○榊原亨君 これなんかも頭部の障害とか何とかいうことであると思うのでありますが、それでございますならば、脊髄の療養所に合致させていいわけであります。又その頭部の中でも精神病に属しまする者の療養所に容れられてもいいわけでありますので、殊更に頭部というようなことは戦後八年もたつて、もう必要がないのじやないかと私は思うのでありますが、いろいろ御事情もあると思うのでありますが、御研究を頂くほうが必要なのではないかと私は思うのであります。
  113. 高野一夫

    ○高野一夫君 関連いたしまして、今頭部と精神と、これは役所の便覧を見ますと、国立精神療養所というのがニカ所、頭部療養所というのが一カ所、それを二つ併せて三カ所という今お話があつたと思うのでありますが、一方には国立精神衛生研究所というのがあつて、大学なんかは治療所であつて且つ研究機関なつておる。これを療養をやりながら一方において精神衛生の研究をするというようなふうに統合的の機関にすることができないのですか、医務局長に伺います。  ついでにもう一つは、病院管理研修所というのはどういう仕事をするのか、それも併せて一つ御説明を願いたい。
  114. 曾田長宗

    説明員(曾田長宗君) 精神衛生研究所は公衆衛生局の所管でございますので公衆衛生局長からお答え申上げるといたしまして、病院管理研修所の点につきましては、これは御承知のように、戦後におきまして日本の病院のあり方というようなものを根本的に考えなければならん、その病院の業務、非常に病床の数も殖えて参りましたし、又その後戦災でいろいろと潰滅をいたしました医療機関を更に回復して行かなければならんというような問題があるのであります。この際にその病院及び整えられました病床を最も効率的に運営して参るということについては、従来非常に方針として欠けておるところがあつた、具体的にはいろいろな無駄があつた、こういうようなものを省いて行くためにはいろいろ病院の経営の仕方、或いは運営のやり方というようなものにつきまして検討をする必要がある。又そこで以て得られましたいろいろな技術、方針というようなものを、これは敢えて国立、公立の病院と限らず、民間の病院に対しましてもこれを示して、そうして効果的な、又経済的な運営をいたしたいというふうに考えておるのであります。病院の管理に当つております院長のみならず、この庶務関係の事務担当者及び医療及び看護或いは炊事、こういうような面を担当しておりますものを集めていろいろ講習をやつておるわけであります。かような仕事を只今研修所はやつておるのでありまして、非常に毎回の講習に当りまして応募者も定員の数倍に及ぶというような状況でありまして、かなり立派な成績を上げておると私ども考えておるわけであります。
  115. 高野一夫

    ○高野一夫君 医務局の仕事を見まするというと、国立病院関係が、管理課と国立病院課と国立療養所課と整備課と四課に分れて仕事をやつておる、その四課において国立病院関係の只今のいろいろな改善或いはいろいろな調査というようなことを、この四課のどつかで今のそういう意味の、御説明になるような仕事はできそうなものたと思うのですが、又これは今の国立病院関係ばかりでなく民間の病院にも及ぼすとおつしやるならば、医務局の中に病院の講習に関するような仕事もおやりにならなければならない、これはやはり事務だけでなくて、そういうことをやはり調査して、調査資料に基いて、こういうことを一応おやりになるのだろうと思うのだが、医務課なり、そのほかこの国立の病院療養所に関する四課のどつかでそういう仕事はできませんか。
  116. 曾田長宗

    説明員(曾田長宗君) 只今の趣旨に基きましてこの病院管理研修所が設けられておるのでありますが、従いまして私どもがお預かりしております国立病院或いは療養所、こういうところで得られました経験というものがこの関係者を教育いたして参りますために非常に貴重な資料なつておるということは申上げられるのであります。勿論国立病院及び療養所並びにこの関係の四課というものは、その病院、療養所の運営ということ自身に忙殺されております。勿論これを最も合理的に運営するために心胆を砕き、又いろいろの調査も研究もいたしておるわけでございますが、これは差し当りの病院、療養所の運営というこの行政事務を担当しておるわけであります。こういうようなところから出て来た資料及びその他の方面から集まつて参ります資料、或いはいろいろ過去の経験、こういうようなものを集めて一つ統合的な方針を立てるということは、現業四課にどうしてもこなし切れないのでございます。なおこの仕事の性質といたしましては仰せの通り医務課が大体担当すべきことでありまして、医務課の所管となつております。
  117. 榊原亨

    ○榊原亨君 この厚生常任委員会が何も厚生省の代弁をしておるわけじやないということは次長にもおわかりになつておると思うのです。我々は当然改善を要する点は、今お聞きになつたように当然改善すべきであると思うのでありまするが、なお且つそういう私どもの頭からいたしましても、医務局と薬務局の合併のごときは非常に無謀であるということを申上げておるのでありまするので、厚生省の代弁で我々がやつておるんじやないということはよくおわかりになつたと思いますから、お帰りなつて十分御検討願いたいと思います。
  118. 山口正義

    説明員(山口正義君) 先ほど高野先生からお尋ねのございました精神衛生研究所の問題について御説明申上げたいと存じます。精神衛生行政を公衆衛生局で所管いたしておりますので、その行政に科学的な裏付けをいたします精神衛生研究所は公衆衛生局の所管になつておるわけでございます。精神衛生研究所でやつております仕事は従来の精神衛生行政が主として患者の治療或いは換地というようなことに重点を置かれておりまして、予防の方面が比較的等閑視され、又日本の精神衛生行政がその方面で立ち遅れておりましたので、精神衛生研究所におきまして、現代の精神衛生行政は患者の治療ということも勿論でございますが、どうすれば近年ますます殖えて参ります精神障害者の発生を防止できるかということに重点を向けなければならない、そういう意味で国会においても精神衛生法を制定して頂きまして、それに基いて私ども行政をやつておるわけでございますが、精神衛生研究所におきましては、精神障害の発生要因というものがどういうところにあるかということを医学、社会学、心理学、各方面から総合して研究しているわけでございまして、そうしてその精神障害の発生要因を突きとめまして、そうしてそれを予防するにはどういう手を打つて行つたらいいかということを現在研究しておるわけでございまして、従いまして精神衛生研究所では、精神障害者について実験的にいろいろの研究をいたしますと同時に、社会環境の調査その他について実際に出かけて参りまして、医学、心理学、社会学、それぞれの専門の者が総合的に研究を実施いたしているわけでございまして、大学の精神学教室等においても脳の研究等、それぞれの専門的研究をされておりますが、精神衛生研究所では、先ほどから申上げましたような各方面の専門家が総合的に一つの問題に取り組んでやつて行くということを実施いたしているわけでございます。
  119. 高野一夫

    ○高野一夫君 今の御説明を伺えばますます私は先ほど申上げました通りにこの療養所と合体すべきだろうという私は考えを強くします。予防に関するいろいろの衛生上の研究ということがやはりここに病人があつて、治療と予防とは切つても切り離せないだろうと思います。大学の病院なんかでは、治療しながらも一方において予防医学の研究をどんどん進行して、そうして療養所は別、それから予防研究は別というようなことではなくして、これは同じところでそれぞれ必要な学者が集まつて、そういう予防関係以外にも又治療にも役立つことと思うので、この辺は私は十分現在の機構がいいかどうかということについて疑問を持つておりますので、なお厚生省においても、行政管理庁においても、厚生について専門的に一つ御研究を願いたいと思います。  殊にこの衛生研究所は公衆衛生局、療養所は医務局、同じ厚生省管轄であるけれども所管も違うということもございましようし、又事務的のことは別個に事務的なことをやる課は現在の課で幾らでも私はやれると思いますが、こういう研究所なり療養所としては十分これの統合ということについて御研究置きを願いたい。
  120. 山口正義

    説明員(山口正義君) 只今高野先生の御指摘の通りの予防と治療は密接に連繋をして処置をやつて行かなければならないことは御説の通りでございまして、先ほども申しましたように、精神衛生行政が公衆衛生局の所管になつておりますので、精神衛生研究所を厚生省で所管いたしておりますが、実際に使います、使いますと申しましては語弊がございますが、研究の対象といたします患者は、国立の精神療養所、国立療養所の患者を対象としてやるとういふうにいたしておりまして、その間におきましては密接な連繋をとりながら研究を実施いたしておる次第でございます。
  121. 有馬英二

    ○有馬英二君 私は厚生省の医務局長にお伺いしたいと思うわけですが、御承知の通りに、敗戦後我が国において最も遺憾である社会現象は、戦傷者が今でもまだ白い着物を着て街の中をギターを持つたりいろいろなことをして歩いている人が全国到るところにいるわけであります。汽車の中にもいれば、大きいデパートの入口にもいるというようなことで、如何にも社会がうまいこと整備されておらない。これは聞いて見ると、みんな国立病院かどつかに入つておつて、出て行けと言つても出て行かない。そうしてそういうものが今はだんだん減少したそうですけれども、家がないというようなこともありましようけれども、そのままにしておいて打つちやらかしておる。これは私は必ずしも医務局が悪いとは申しませんけれども、とにかく行政上黙つておけない問題だろうと思う。こういうような戦傷者に今では浮浪人のような、或いは悪く言うと乞食のような状態で国家が打つちやつておくというわけには行かないはずである。これを何とかして病院に置かないで一まとめにして、そして、何にも治療の必要がないのですから、ああいう人は。ただ家がない、食うのに病院にいたほうがいいので、その病院から毎朝出て行つてそしてデパートの入口に立つたり、それから汽車の中で毎日人に愍みを乞うたり、これは職業的にやつている。一日に多いのは何千円と収入があるという話である。こういうのを長いこと打つちやつておかないで、どこかに一まとめにして、昔癈兵院というのがあつたのですが、そういう癈兵院としなくてもいいですが、何かこれを社会的にも不安な状態ではなしに、それこそ行政改革のこの際それについて何かいいお考えはございませんか。それについてどういうお考えを持つていらつしやるのか一つ伺いたい。
  122. 曾田長宗

    説明員(曾田長宗君) 只今お話のような事態には、私どもの施設といたしましても非常に苦しんだのでございますが、これを一気に解決するということには余りにも問題がむずかしいのでありまして、むしろ私どものほうの問題と申しますよりは、このような人たちのお世話をいたしますのは社会局の所管でございますが、社会局のほうと、私どもと、いろいろ相談をいたしまして、身体障害者に対しましては、その収容施設或いは職業補導施設、或いは住宅の供与というような点を睨み合せながらこの措置を講じて行かなければならんのでありまして、お話のような事態に苦しんだのでありますが、逐次この事態も改善されて参りました。殆んど私どもの施設としては恐らく相模原一カ所程度に縮小して参つた思つております。ここには数十人の者が先般までおりましたのでございますが、これも最近非常に話合いがうまく進みまして、今日は極めて僅かの者が残つている程度でございまして、大体社会局のほうと従来の方針を踏襲して参りますれば近く根本的に解決がつくものと考えております。
  123. 林了

    林了君 次長にお願いいたしまするが、衛生行政の学校衛生は今文郎省がやつておられるようですが、やはりこれも一本化するという意味厚生省にこの行政は移管したほうがいいのじやないかというようなことを考えるのですがね。ときどき外郭団体の医師会或いは我々の歯科医師会でもそういう結果、学校歯科の連中の会と、或いは又医師会なり歯科医師会と別個な団体ができる。それができている間はいいですが、ややもすると政治的な妙な関係もできて来て、文部省と厚生省との間でまあセクシヨナリズムというか、そういうことがありまして、我々が厚生省に行つてこの問題は一つ厚生省で所管をしてやつて行つたほうがいいのではないかと言つても、なかなか厚生省の、これは厚生省の次官なんがおられる前で悪いけれども、力が足りないというか弱いというか、とにかく解決しない。そういうところは、私たちは、一遍今度あなたのほうに御研究頂いて、そういう点で若し機構改革をしたほうがいいというような結論が出ましたらこれも一つ考えおき頂きたい。
  124. 高野一夫

    ○高野一夫君 私から一つお願いしたいのですが、先ほど有馬委員、榊原委員よりもお話がありました国立公園のことでありますが、全く私も両委員のお説に同感でありまして、日本の美しい自然を材料にして外客を誘致する、外貨を稼ぐというようなことを殆んど最近の国是、大きい一つの国是とまで考えられている今日に、国立公園に対する仕事の面が縮小されるというようなことでは誠にどうも遺憾だと思います。これは改革されたので仕事が少さくなるのではないかとおつしやればそれまでのことでありますが、日本の温泉行政にいたしましても、そのほかのことにいたしましても、現在国立公園でやつておる仕事の重大さということを特に一つお考え置きを願いたいと思います。
  125. 堂森芳夫

    委員長堂森芳夫君) 私から環境衛生部長でも公衆衛生局長でもどなたでもよろしいですが、さつきお聞きしておると、いろいろ水道の問題があつたのですが、建設省と厚生省と両方の課があつて、そういうふうなややこしいことになつておると、で、これは諸外国の例を見れば余りそういうことはないと思うのですが、従来の日本の内務省の中でやるというのが諸外国の例だと、そうだと思うのですが、それを日本ではどういうわけでそういうことになつたか、或いはこれは次長にお尋ねすることかも知れませんが、今度の改革でそれは一つのケースですが、そういう場合をこれはどういうふうにおやりになるか、放つて置くか、一つにするか、一つ方針をお聞きしたい、こう思います。
  126. 楠本正康

    説明員(楠本正康君) お答えを申上げます。  どういう経過でかようなことになつたかということは、これは内務省に曾つて厚生省の行政が土木行政と一緒に一局として存在しておりました時代にしばしばこの衛生局にも、この衛生局が元々主管をしておりまして、衛生局に水道の関係の技術者がないということは極めて不便であるということを衛生当局としてはしばしば考えたそうでありますが、たまたま同じ省内に土木局に同じような、似たような技官がおるのだから、まあ、それで一つ兼務してでも間に合わせてくれということがどうも出発の基らしいのです。そこで今度は厚生省昭和十三年に分れたのでありますが、そのときには勿論水道行政の主管は衛生局が持つておりましたので、予算その他を厚生省に移管をしたわけでございます。ところがそのときに聞くところによりますと、人間のやりくりの関係で結局こちらに、厚生省のほうに土木局で兼務しておる技師を持つて来れなかつたということだそうでありまして、その後従いまして主管は厚生省、工事の面は当時の内務省ということになりまして極めて複雑な状況になつてしまいました。そこで両者は覚書を交換をいたしまして一切のこの計画、或いは予算の執行等は厚生省、工事の監督指導はこれは地方、土木部の関係もあるので一応主管は、主管と申しますか、工事関係は建設省が担当すると、後の建設省が担当する、当時の内務省が担当するということで進んだと聞いております。  それから次に世界各国の実例でありますが、これは世界各国も全く例外なく衛生当局の主管であります。従いまして国連のWHOにおきましても御承知のように上下水道はWHOが所管をいたしておる次第であります。従つてこの辺はそれならばどういう結果になつておるかという点を申上げますと、一応建設省も工事面でこれに関連をして参りますので、一応地方からは両省に書類を出す、而も陳情も両省にいたします。一方そこにはお互いに邪魔が入ると申しましようか、厚生建設両省の連絡でもうまく行きませんと結局困りますものは市町村であります。現に市町村は泣いております。余りにも事務がうるさいので泣いておる。併しながら市町村としてはやはり厚生省に一元化してくれというようなことを言うと又建設省に恨まれても困ると、やはりほかの予算に響いても困るというので泣く泣く両方に相手をしているというような状況でございます。  それから次に私どものほうの事務の執行状況はどうかと申しますと、これはやはり両省の連絡がうまく参りません。そのために工事の監督とか或いは工事の竣工認可は建設省がいたしております。ところが私どものほうは予算執行が進んでなお且つ工事の認可申請というようなものを場合によりますというと連絡いたしましてもやつてくれないというようなことがございます。その結果たびたび会計検査院の批難事項が生れて参りまして、そんなところにも又要らざる義務が派生して来るというようなことに相成りまして、誠に奇々怪々な姿でございます。  それからついでに申上げておきますが、建設省には施設課というのがございます。施設課におきましては公園緑地或いは屠畜場、塵芥焼却場、それから火葬場或いは清掃事業というようなものを担当している一課がございます。又一方都市排水事業と称しまして、開渠は建設省が実施をいたして、都市の開渠は建設省が実施をいたしておる。ところが下水、まあいわば暗渠、開渠も暗渠も実質は一体的なものでありまして、私どもが都市の環境衛生を整備するために開渠が極めて不衛生であります。即ちスラム街や何かの開渠が極めて不衛生でありますので、その場所を利用してそれを暗渠に変えて行きたいという計画を立てております。これは当然でございます。  又一方暗渠も一たび郊外に出て海にでも流すことになりますと、これは暗渠は金がかかりますから、開渠の形にいたしたい。これは当然でございまして、これが暗渠、開渠のことに所管が変るということで、実際の事務は困難となるわけでございます。以上御質問の事項を申上げました。
  127. 大野木克彦

    説明員大野木克彦君) 水道の問題につきましてはまあ広い意味のいわゆる共管事務と申しますか、それから何とかこれを解決したいということを今度の行政改革本部でもいろいろと目下努力をいたしておるようです。実はこの問題は只今お話になりましたように、実に古くからの問題でありまして、この間も行政審議会では一応厚生省という線が出ておるのでございます。そういうわけでございますから、よく一つ努力いたしたいと思つております。
  128. 堂森芳夫

    委員長堂森芳夫君) 本日の委員会はこれにて散会いたします。    午後三時四十四分散会