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参考人(中泉正徳君) 第五福竜丸
事件をきつかけといたしまして、医学的に見て多少御
参考になるかと思うことを
お話しようと思います。
広島、
長崎の被爆者に起りました傷害というのは、みんな
原子爆弾から一時的に出ました熱線だとか、放射線だとかそれから爆風、こういつたようなもので傷害を受けております。
それで今度問題にな
つております灰は、あのときにはまあ医学的には殆んど問題にならなかつた。で
広島では、
広島市の郊外の己斐という所に灰が落ちたということを聞いております。それから
長崎では、
長崎のこれはちよつと郊外の、町続きというよりも郊外でありますが、西山という所にこれは確かに灰が落ちた。西山から島原半島のほうへ向
つて灰が落ちた。この西山の辺は、
長崎は地勢が凸凹しておりまして、第一次の
エネルギーは蔭にな
つていて来なかつた所であ
つて、ただ灰だけが影響をした、こういう場所であります。で
広島のほうの己斐は……、
広島市は平でありますので、第一次の勢力と、その灰との影響が両方重なり合
つてお
つたので、灰だけの影響というものは殆んどわからなかつたわけであります。
長崎のほうの西山地区には、灰だけが降
つて、第一次の勢力は影響なかつたわけですが、この地方では私どもの
予想に反しまして、白血球が却
つて一時的に殖えて来たという
現象を見られたのであります。で現在では無論正常に復しております。今回の第五福竜丸の船員が受けた災害は、この第一次の勢力は殆んどないのではないかと思うわけであります。で専ら灰によ
つて傷害を受けたのではないかと思われる。でこの点が非常に違うのでありまして、
広島、
長崎のときには、
広島市及び
長崎市のほんの街はずれという所に灰が落ちたのであろうけれども、殆んど傷害として大したことはなか
つたのでありますけれども、今度は
ビキニから八十カイリも離れた所にいました船に、御承知のような大きな傷害を起す灰が降つたという点が一番大きな問題だと思います。
それで
お話は、患者自体の治療の問題、つまり
医療の
立場から見ました
お話と、それからやはり医学の
立場から言うと
お話しなきやなりませんので、船を
一つの住宅環境と見ますと、環境衛生の
立場からの
お話と、それから第五福竜丸が積んで来ました魚の汚染の程度の問題、つまり食品衛生の問題と、この三つの
立場から順々に
お話して行くのがいいであろうと思います。
患者の問題でありますが、今申上げました
通り、
爆弾の第一次の勢力によ
つては殆んど傷害を受けていないと思います。でただ灰によ
つて傷害を受けた。で灰は
爆発しましてから数時間後に船に降り始めまして、五、六時間続いて灰が降
つておつたらしいです。そうして甲板などでは、人の足跡があとでわかるくらいに降つたらしいです。でそれがその着物に無論ひつつきますし、船中に降
つてしまつたのでありまして、粒が細かいやつは、船室や、中にも舞込んだらしいのであります。こういう環境に、船員たちは恐ろしいものだとは知らずに二週間くらいして焼津に辿り着いたわけであります。
従つてその週間にまぐろも、ほかに食べるものがないから食べておつたに違いない。それからして灰で以て汚れた手でたばこも飲んでおつたに違いない。つまり消化管を通して、灰が体内に入
つておるに違いない。それからして船室など狭い所で灰が舞上
つておりますところで呼吸しておりますからして、やはり呼吸器の中からして灰が体内に入つたに違いない。それから皮膚に灰が、殊にこの頭の毛の間に灰がこびりついておりますからして、そういうところから皮膚を通して放射性物質が体内に吸収されたに違いない。でこういうふうにしまして、放射性物質が体の中へ入
つて、そうして中からというか、中で放射線を出して船員を傷めておるという点が、
広島、
長崎の場合とはもうまるで違う点であります。で患者を御覧になりますと、皮膚にところどころに火傷がありますけれども、あれも第一次の勢力ではないのであ
つて、皆灰がたまりやすいところに火傷が起
つております。でつまり頭の毛の中には灰が長いこと溜
つておりますからして、頭の毛のあるところに火傷を起したり、或いは脱毛したりしております。そのほか灰が溜るようなところ、腰紐をしめておる上のところとか、或いは耳の穴の中だとか、そういうようなところに灰が長時間たくさん溜
つておつたために、やはり火傷を起しております。
で患者に対する手当の根本問題といたしましては、やつぱりこの体内にあるであろうところの灰を、一日も早く外へ出してやるということが先決問題であるのであります。でそれならば一体放射性物質としてどういうものが、どういう元素があ
つて、それが体へ入
つてしまつたのであろうかということが先決問題であるので、十六日の日に増田さんという患者さんが初めて東京大学へ入院されて、そのときに灰を少し持
つて来なす
つたのですが、それを直ちに理学部の
木村教授のところへお届けして、そうして即刻分析にかか
つて頂きまして、新聞で御承知のような結果が出て来たわけであります。他方医学部におきましては、灰を第五福竜丸から採集して参りまして、患者の体内には今さつき申上げましたように灰が入
つておるに違いないが、どういう臓器に一体放射性物質が沈着しておるだろうかということを見なければ、それを追出す手段が考えつきませんので鼠を使いまして、鼠に灰を食べさしたり、或いは注射をいたしましたりして、そうしてその鼠を十二時間、二十四時間、三十六時間、四十八時間とだんだんに殺しましてそうしていろいろな臓器について放射性物質がどのくらい沈着しておるかということを先ず……、定量的にはまだできてはおりませんが、定性的にや
つております。その結果を申上げますというと、一番多く沈着しておるのが骨であります。骨というのは骨髄が真中にありまして、一番放射線に対して弱い組織であります。一番弱いところに一番たくさん残念ながら溜
つておるのであります。そのほかには肝臓であるとか、或いは腎臓等に溜
つております。その放射性の灰を入れました動物からどういう経路でそれが又体外に自然に排泄されるかということも試しておるのでありますが、大体尿のうち、及び糞便のうちに排泄されて行くということもわかりました。それで今骨が一番問題なのでありますが、まだ骨にどういう元素が沈潜しておるのであるかという個々の元素についての結果はまだ出ておりません。総体として骨に一番放射性元素が余計沈着しておるということだけがわか
つております。理学部の分析結果も新聞で御承知の
通りでありますが、あれも皆まだ定性分析の域を脱しないのであ
つて、定量分析は今実行中であると思います。追
つて定量分析が明らかにな
つて来れば、患者の治療対策にも非常に益するところがあると思います。更に一歩進めば骨にどういう元素が沈着しておるのであるかということを、やはり化学的に分析の手段で突きとめることができれば、なお更結構だと思われる。併し大体において放射性同位元素の
実験的
研究が世界中で行われておりますので、どういう元素は骨に特に沈着しやすいというようなことはわか
つております。で御承知の
通り骨は大部分がカルシユームであ
つて、カルシユームは勿論骨に沈着するのであります。
従つてカルシユームと同じような化学的
性質を持
つているものは、やはり骨に沈潜する
性質を持
つております。
従つて分析の結果発見されましたいろいろな元素のうち、カルシユームと同じような化学的
性質を持つたものが骨に沈潜しておるであろうということは推定されるのであります。で、こういうものをその骨から追い出さなければならんのでありますけれども、こういうものを追い出そうとするともともと骨にあつたカルシユームがやはり一緒に追い出されてしまう危険があるのであります。もともとあつた放射性でないカルシユームは追い出さないで、放射性であるカルシユームに似た化学的
性質を持つたものだけを追い出そうというところに非常に困難がある。で、私どもは勿論こういう患者を一度も取扱つたことはないので、誠にどうも泥縄的の
研究をや
つて、何とかして追い出す方法を発見しようという手順を進めておるのであります。勿論
アメリカはこの方面では世界のまあ一番先頭に立
つておるので、こういつた
研究もあるかも知れませんので、実際日本ではもうそういう病人を持
つておるのでありますからして、
アメリカ側にも私は公開の会議の席上、若しくは私的の面会などに治療方を教えてもらうよう質問をしております。それで今後動物
実験を続けまして、何とかして無害有効の方法を発見して、それを患者に応用して行くというのがまあ根本的の問題ではありますけれども、これが果してうまく見つかるかどうか勿論わからないのであります。
広島や
長崎の時の被爆者の治療でありましても、あの当時は非常に混乱しておりましたので、測ることもできなか
つたのでありますけれども、放射線があのときは外からだけ来たと、今回は中から主として来ているというだけの違いであ
つて、体に起
つておる変化自体は共に白血球の減少であります。
従つてその対策等にも白血球減少というその兆候に対する対症療法としては差はないのであります。ただ放射性物質を追い出さなければならんということが今回違
つておるのであります。その対症療法といたしましては、これもなかなか実はむずかしいのでありまして、私ども放射線を職業的に扱
つている者は多少とも白血球が減少しておるのでありまして、私ども自分自身の問題でありながら的確な方法は発見されないのであります。殊に
広島、
長崎の原爆以来世界的に白血球減少症に対する対策を世界中の学者が
研究しておりますけれども、まだ的確な方法というものはない。ただ普通の対症療法といたしまして輸血を一番先に数えなければなりません。それからそのほかにやはり安静ということが非常に大切であります。
広島、
長崎の時にも不幸にして足に骨折でもありまして、動くことができなかつたためにおとなしくしていた人は助か
つておるのであります。で、骨折も何もなくて、ああいう場合でありますからして、一生懸命働いて過労に陥つた人が死んでおります。それで現在第五福竜丸の患者さんたちは、外見上非常に元気でありまして、食欲も旺盛であります。それでもやはり安静ということは非常に大切なのであ
つて、輸血と安静ということが根本的の治療方針であります。そのほかビタミンをやるとか、栄養をつけるとかいうことも考えられる。それから白血球がずつと減
つて参りますというと、どうしても細菌に対する、黴菌ですね、黴菌に対する体の抵抗力が減
つて来ますからして、やはり抗生物質などを使うということも忘れてはならないのであります。
こういつたような方針で今仕事を続けておるのでありますが、患者の容体は外見上極く軽微な火傷が所々にあります。併しみんな至
つて元気でありまして、食欲も旺盛である。で
只今聞いて来たのでありますが、国立第一病院に入院した患者などは、国立第一病院で提供いたします御飯ではとても足りないそうでありまして、ああいう舟乗りでありますと一日に五合くらい飯を食べる。御飯のお代りがたくさんあつたそうです。それくらい非常に見たところ元気であります。併し白血球は多くの人が大体五、六千極度に減少しております。普通の正常時は七、八千でありますけれども、五、六千程度に減少しております。東京大学病院のほうには比較的重い人が初めに二人、それからこの間の日曜日に五人入院いたしましたのですが、これらの人は多少重態なのでありますが、重態と申しましてもただ白血球が少いのですが、まあ白血球の数が三千前後、三千、四千という程度に減
つておるのであります。ただ
広島、
長崎のときに三千、四千くらいに減つた人は恐らく全部助か
つております。それは外からだけ放射線を受けたからであります。私なども職業的に放射線を受けておりまして、一番低いときには二千七百まで私自身減
つております。それでもこうや
つてぴんぴんしておるのでありますが、今度の場合には放射物質が身体の中へ入
つております。でありますから非常に心配しておるわけであ
つて、決して警戒は解けないような
状態にあります。普通放射線を受けますというと、白血球が減りきるまでに成る一定の期間を要するのであ
つて、大体患者に治療の目的で放射線、X線をかけました場合に、白血球が一番底をついて減りきりますのが四、五週間のところであるのでありまして、今度の場合には放射線のかかり方が違いますから何とも言えませんけれども、今丁度四、五週間にさしかか
つておりまして、恐らく今の患者の白血球の減少が底をつくのはもう少しあとであろうと思います。現に第五福竜丸の患者の白血球の
状態は十四日に入港したとき以来極く少しずつでありますけれども減少のほうへ向
つております。尿の検査を精密にするということが大変に大切なのであります。昨日の新聞に灰の中の一京分の一の
原子を分析で出すのだとこういうふうに
木村教授が
発表しておられる。一兆の一万倍だそうです。日本の予算の一万倍のお金の中から一円札を一枚取り出す方法だと、こういうふうに
木村教授が説明しておられますけれども、それは灰の分析のときにそういう程度なんであ
つて、尿の分析だとそれよりももつと薄いことになると思います。非常に困難な仕事だろうと思いますが、やはり
木村教授を煩わしましてそういつたことを進めて行こうと今準備をしておる次第であります。こういう基礎的の根本的の治療が、果して患者に実行できるように進んで行くかどうか請け合えないのでありますが、オーソドツクスの仕事としてはやはり輸血と安静ということが非常に大切であります。
患者のほうは大体そのくらいにいたしまして、次に船を
一つの住宅と見た環境衛生の見地から今度の第五福竜丸
事件のことを考えてみますと、私が初めて第五福音丸に入りましたのは、この十七日の日であります。測定の機械を持
つて船に近寄りますというと、もう船に入る前からしてがあがあ、があがあ鳴り出しますです。それで船へ入
つて測定をして見ますというと、針がぷんと動いてしまいますので、船に乗込んで又船から出て来てゴム長にはき替えまして、そうして着物を着替えて船へ入つたわけであります。船の外側は一番灰を余計受けたのではありましようけれども、やつぱり雨に打たれたり洗つたりしたせいで、割合に中より少いのであります。中の船室の比較的灰がこも
つているというようなところが一番強い。その一番こもつた強いところの放射能が十七日の測定では百十ミリレントゲンという単位で数えられたのであります。これはちよつと御説明申上げないとおわかりにならんと思いますが、この放射線は一体人間はどのくらいまで受けても無害であろうかということを世界中でいろいろ調べまして、そうして国際的に
一つの推奨案というのが我のほうの学界でできておるのであります。それによりますというと、一週間に三百ミリレントゲンまで受けても差支えない。これが基本の数字であります。一週間に三百ミリレントゲン、これだけならば何週間続けて受けても少しも心配がないという数であります。一週間に三百ミリレントゲンでありますからして、これを職場の場合に当てはめてみますというと、勤務時間が一週間四十八時間でありますからして、四十八分の三百ミリレントゲンであ
つて、丁度一時間に六・二五ミリレントゲンとなります。これが職場における放射能の恕限度であります。六・二五ミリレントゲン、これが職場における放射能の恕限度であります。それから住宅になりますとやつぱり一週間に三百ミリレントゲンでありますからして住宅の一週間は百六十八時間でありますから百六十八分の三百ミリレントゲンであ
つて一時間に換算しますと一・八ミリレントゲンであります。で船室は
従つて一・八ミリレントゲンでなければならんのに、十七日に測つた値いが一番強いところは百十ミリレントゲンであります。それがだんだんと今減少しつつあるのでありますからして、三月十七日より前のほうへ遡
つてみたらどんなに強かつたか恐ろしいくらいであります。まあそういうふうに船は非常に汚染されて入
つて来たのであります。直ちに船は、もう無用の者は入つちやいけないだろうということを申上げまして、そういう措置がすぐとられてあるのであります。こういうことは今後入
つて来る船に対しても非常に
参考になるだろうと思います。で私どもはその船がどの程度の時日で自然に放射能が減衰していくであろうかということを経験して行くのが
参考になるだろうというふうに考えております。ほかの船の処置等についても非常に
参考になるだろうと思う。それから又船の一部分を何らかの手段で清潔に洗うことができれば、どういうふうに洗えばどのくらいの早さに清潔になるかというようなことも経験することができるだろうと考えておる次第であります。それから衣服なども測
つて見ましたが、繊維製品のようなものが一番灰が余計残
つておる。のつぺりしました雨合羽のようなものは余り残
つておらない。いずれその繊維製品でも船員の中には石鹸で以て家庭でよく洗つちやつた人もあるのでございますけれども、洗いますというと非常に少くな
つております。
これがまあ大体環境衛生の問題でありますが、その次に今度は食品衛生のほうでありますが、つまりさめと、まぐろを第五福竜丸が積んで来たのであります。十六日の日に私は築地に第五福竜丸の魚が着いたから見に来てくれということで見に行きました。そうしますというとさめとまぐろでありましたけれども、さめの表面が非常に放射能が強い。併し、さめ、まぐろ共はらわたは出しておるのであります。その腹の中を測定して見ますというと放射能は殆んどない。つまり表面に灰が落ちているだけらしいのです。それから、さめは安いものですから、ぞんざいにしてあるらしいのでして、まぐろのほうは商品価値があるというので、
一つ一つ何か船じやハトロン紙なんかに包むのだそうでありますが、そういうせいか、まぐろのほうは非常に表面に放射能が少か
つたのです。でありますけれども、やはりまぐろもさめも、程度の差こそあれ放射能は確かにありましたので、やはり廃棄処分に
なつたような次第であります。
で、この食品を廃棄処分にするかしないかという食品としての恕限度のきめ方というのが、これが非常に大きな問題であろうと私は思います。この第五福竜丸
事件につきましては、日本もそうでありますけれども、
アメリカも、恐らく世界中或る程度やはりめくらへびだと言う人があると同時に、被害妄想にかか
つている人もあるのです。それでまぐろが売れなく
なつたりするのですけれども、私はしよつちゆうまぐろを食べておるようなわけであ
つて、やはり被害妄想と
言つて悪口を言いますけれども、これはやはり社会の実相であ
つて、これはやはり無視することはできない問題であろうと考えます。輸出等にからみまして非常に重要な問題だと思います。で、悪く言うと被害妄想でありますけれども、そういつたような観点から見た恕限度というと甚だ変ですけれども、標準が
一つ考えられます。
それからその次には、やはり行政措置として、このまぐろをOKというわけで出した以上は、そのまぐろの、非常に非常識なことになりますけれども、よく洗わないで、皮だけを食べるなんということがあ
つても差支えないというように考えないと心配だというような考え方も
一つ立つと思います。やはり行政処分としては、行政官はそういうことも御心配になるだろうと私は思います。これが第二の考え方です。
それから第三番目には、これは全く何と言いますか実際問題として考えまして、お互いにまぐろのさしみは一日に一度ぐらいしか食べないのでありますからして、一日に一度一人前のまぐろを食べるとして、このまぐろを食べたならば、放射性元素がどのくらい体内に入るだろうかという本当の実際問題を標準とした正しい恕限度、こういうものと三つどうしても考えられるのであ
つて、それを実際問題として、どういう場合、どういう恕限度を適用するかというような問題も起
つて来る。それから現在では非常に厄介なことに、放射性元素の体内に入れ得る恕限度というものが、世界的にまだ相談が整
つておらないのであります。放射能については、一週間に三百ミリレントゲンというのは国際的に学会でちやんときめておりますけれども、放射性物質、それ自体の恕限度というものはまだ決定されておらない。で、
アメリカで数
種類の元素について大体このくらいであろうということを
発表しておる程度でありますし、まあ日本といたしましては、それを
参考といたしまして、そうして何とか考えてみなければならんと思います。
それから放射性元素の恕限度が何ミリ・キユリーとか、何マイクロ・キユリーとかきまりましても、それをさめだの、まぐろだのの恰好にな
つているときの測定で、量をきめるという測定技術の問題が非常にむづかしいと思います。各三崎だの、焼津だの、そういつた港の出先で実行できるような方法できめなければならんので、そういう点も大いに
研究を要する問題だと思うのであります。
で、これで大体食品衛生の問題も終つたわけでありますが、私、これで大体話は具体的にに済んだわけでありまして、総括的に申しますと、この
原子力の平和的な応用ということは、非常に望ましいことであ
つて、大いにやらなければならんことだと思います。戦争にばかり使うということは、実に馬鹿々々しいことだと感ずるのでありますが、
アメリカにおきましても、
原子力の
研究の間に思わざる椿事が起りまして、その周囲におりました職員が相当数非常な傷害を受けたという報告が、ちやんと出ております。で、日本で今後
原子力の
研究が始まり、盛んに
実験が行われるような暁になれば、やはり何か椿事が起
つて、そうして職員が、或いはその周囲の第三者まで、不慮の傷害をこうむることが起らないとは限らないと思います。で、私ども
医療に携わ
つております者は、第五福竜丸は誠に寝耳に水でありまして、全く正直のところ泥繩で仕事をや
つてるような次第あります。で、やはり
原子力の平和的応用ということを始める以上は、やはりその
原子力に対するこういつた方面の準備も、少なくとも竝行的に、若しくは進んで先に手を付けなければならないと、まあ少し我田引水のようでありますけれども、今度誠に寝耳に水で、泥繩的にな
つてしまいまして、余り御期待に副い得ないのじやないかという心配が非常にありますので、この席で私のお願いのようなことを申上げます。
大体そんなものでございます。