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政府委員(米田正文君) 今日たくさんのダムが、建設省もそうですが、農林省もや
つております。或いは電源
開発会社或いは電力
会社、或いは自家
会社で百に近いダムが今日行われておりますが、それらで一番問題はどこかと言われますと、今日ではセメントでも鉄筋でもございません。或いは労務者でもございません。殆んど補償の問題と言
つてもいいくらいに今日は補償の問題が、補償、買収の問題がダムの建設に伴う主要事務にな
つて来ておる。そこで昔はどんどん片付けたではないかと、こういうお話でございますが、私
どもでや
つておりますものについてもどんどん片付くものもございます。多くの中には、片付くものもございますが、そうでなく、非常にいろいろと問題を起して、買収
価額、或いは移転先、或いは補償金額の問題というようなことでなかなか両者の話合いがつかないという場合が又多々ございます。どうしてそういうふうに
なつたかということについては、我々もいろいろ
考えさせられますが、これは私は一面非常にいいことだと思います。非常に民主主義が徹底をいたしまして、各人がそれぞれの立場から十分
自分の意見を主張するというような気分に
なつたこともいろいろと問題を起しておる
一つの大きな原因だと思います。これはそういうことが
一つの原因でいろいろと問題を起しますが、先ほ
ども申上げましたように、半面見れば、又各人の希望を十分言うという点で、我々もよく希望がわかるという点では、私は補償に相当の時間をかけても、この
方法が従来よりもいいのじやないか、というのは従来は、無理に安く買われて、将来の生活も非常に困るというような人が出て来た例もよく聞かされます。そういう点については、少くとも今のような制度のほうが改善をされて行
つておる。補償についても、昔に比べますと手厚い補償がされつつあるというように言えるのじやないかと思います。併しそれだけに、手を尽すにつれて私はやはり問題は非常にむずかしくな
つて来ると思います。各人が非常に
自分の権利については主張をして参りますので、これらと話をして両者の話合いがつくのはなかなか時間がかかる。今お話のダムのために水没する村の連中が
全国連盟を今度はこしらえてやるようにな
つておりますが、今Aのダムで幾ら
土地に補償を払つたというと、もう数日後には
全国の各ダムの候補地点のところには連絡ができるような組織にな
つております。そこで
自分のところはじやそれより少し上でないと困るというようなことで、だんだん値段が吊上げをされるというような傾向がございます。一例ができると、もうそれより下ではなかなか買えないというようなことができるのですが、我々は生活再建をする
資金ということに重点を置いて、できるだけ施設で補償して行くというような方針をとりたいと思
つております。現金を渡して行くというのは、これは多いですけれ
ども、実際は施設で成るべくや
つて行きたい、こういうような
考え方を持
つております。併し各個人は非常に現金を喜ぶのでございまして、代りの施設をしてやるというよりも、やはり現金を喜ぶ。例えて言えば、家の移転にしても、じや、役所のほうで移転を全部してやると、こう言いましても、それは困る、金をもら
つて自分がやるからというようなことで、やはり現金をもら
つて自分で任意にやろうというような
気持が非常に強いのでありまして、私
どもはできるだけ施設補償で行きたい、そうして将来の生活というものを確保するようにしたい。金だけもら
つて、金をだまされて取られて、もう生活に困る、困窮しておるというような例も今日でもございますから、成るべくそういうことにならないような
方途をとりたいと思
つておりますが、要するに今日はだんだん大きいダムができるように
なつた。昔は比較的小さいダムでありまして、今日のダムはだんだん大きいダムでありまして、大きいダムができると、補償する水没面積が大きくなる、補償の
範囲も大きくなる、補償の規模も大きくなりつつあるというところが、又補償の問題をむずかしくしておるところの
一つの原因でもあるが、私
どもやはり今日の
世の中の情勢というものがだんだん補償問題をむずかしくしておるものだと
考えております。