○
説明員(
町田保君) 御
承知のように
首都建設委員会は
首都建設法に基いて
首都を新らしく
平和国家の
首都にふさわしいものに
建設することを目的として
首都建設計画を作成し、その推進に当るというのが
首都建設委員会の任務でございます。
非常に広汎な問題でございますが、
只今までにや
つて参りましたことは、
首都建設委員会で取上げるべき問題というのを最初に
委員会で
論議いたしまして、二十四項目ばかりをきめました。その中の過半の問題につきましては今まで一応
結論を出し、勧告すべきものはいたして参
つたのであります。
あとは非常にむずかしい問題であるというようなものが残
つておりますが、目下私
どもが一生懸命取組んでおります問題は、
東京の
過大膨脹、
人口の顕著な
増加という問題に対してどういう対策を講ずべきであるか、又そういうことを
前提とした
首都の将来の姿というものをどういうふうに持
つて行くべきであるかという
首都建設の
構想と申しますか、そうい
つた問題を目下一生懸命
調査をし、それから
委員会でも
論議をいたしておるわけで、ございまして、それで問題の重点をそこら辺に置いて御
説明申上げてみたいと思います。
この
東京の
過大膨脹の問題はすでにいろいろなところで問題に
なつおりますので、十分御
承知かと思いますが、
東京都の二十三区の
人口が将来どうなるかということにつきましては
人口問題研究所、それから
東京都等においていろいろその道のエキスパートを集めて御
研究に
なつたものが発表されておりまして、それによりますと、
昭和二十五年の国勢
調査で五百六十三万であ
つた東京都二十三区の
人口は、
昭和五十年には千百八十一万五千人になるというような
推計が立てられております。この千百八十万という一
千万を突破した
人口というものは一体どんなものであるかということを
比較をして
ちよつと申上げてみますと、二十三区の全
面積で千百八十万というものを割りますと、一
ヘクタール当りに二百五人というような見積になるのでございます。然らば現在の
東京及びその他の
都市の
密度はどう
なつておるかと申しますと、現在の
東京都の二十三区の
平均密度は一ヘクタール九十三人でございまして、この二倍強になるのであります。大阪は百二十六人、名古屋は六十五人というような
程度のものでございます。又外国の
都市について申しますと、
ニユーヨークは一九五〇年の
調査で一ヘクタール九十六人というような
程度でございます。それから
ロンドンが百三十四人、これは
ロンドン・カウンテイについてであります。ベルリンは四十八人、そうい
つたような
程度でございまして、非常な高い
密度になる。これを全
地域平均でなく、
居住区域だけについて本当の
平均密度を出してみるとどうなるかと申しますと、
東京都の
地区の
面積は五百六十四方キロあるのでございますが、その中のいわゆる
居住用地というものは約その半分で、二百七十一方キロくらいになるのでございます。これは
公共用地であるとか河川、
緑地とい
つたようなものを除いた
部分でございます。その
部分について先ほどの千百八十万という
人口を割
つてみますと、
ヘクタール当り四百三十人というような高い
密度に
なつているのです。同様なことを
ニユーヨークについての調べを見てみますと、マンハツタンが一九五〇年の
人口密度が
ヘクタール当り三百四十人というようなことでございます。こういうような高い
密度の
人口があるということは非常に問題であるわけであります。だから放
つておけば、この千百八十万になる
人口を成るべく減らすような工夫が必要ではなかろうかということが
考えられる。
それから私
どものほうで現在の二十三区の
地域制が
都市計画法によ
つて決定されておりますが、この
地域が飽くまで尊重されるものとして、それぞれの
住居地域、
工業地域、
商業地域等についてそれぞれの
適正密度というものをこの
面積に掛けて
計算をいたしますと八百五十万というような
数字が出て参ります。二十三区の将来
人口は八百五十万
程度に若し収まるならば非常に望ましい、こういうような
計算が出ておるのでございます。八百五十万人という
都市は現在は世界のどこにもございませんで、世界一の
ニユーヨーク市も七百八十万くらい、八百五十万といえ
ども誠に恐るべき
数字でありますが、併しその
程度ならばまあまあ
密度で言えば適当な
密度と言えるであろうというような
推計が出されておるのであります。
次に
東京だけでなく
東京の
周辺をも含めました
人口の将来
予想でございますが、これは
東京及び隣接の四県の中から
東京都と
比較的縁の薄い
区域をカツトいたしまして、
東京都と経済的、社会的に密接な
関係のある
部分のみを捉えて
計算をいたしますと、現在千五十万くらいな
人口がこの中に住んでおるのでありますが、これが同じく
昭和五十年には千八百万くらいになるというような
人口問題研究所の
予想が出ておるのであります。この千八百万の中から区の
人口が八百五十万くらいが適当であるということになりますと、残りは九百五十万くらいに
なつて来る。そうしますと現在の
周辺の
区域から将来四百万人ばかり殖えるというような
結論が出て来るわけでございます。これは横浜、川崎、横須賀三市を含んでおりますが、四百万くらい殖えるというような
予想が立てられるのであります。かような
予想の上に立ちますというと、どうしても
衛星都市という問題を真剣に
考えなければならん。京浜三市を除いた
部分に約三百万くらいの
人口が今後二十年くらいの間に殖えるという
予想が立つのでございますから、相当
周辺地域に対しては国なりその他が力を入れて
周辺の
中小都市を育成するように努力をして行かなければいけないと、こういうようなことが
考えられるのであります。
それから前回の
質問のときにこういうようなお
考えの御
意見があ
つたと承わりました。
衛星都市というような方策で
人口問題を解決するよりも、むしろ
都心部の
高層化を
図つて、
人口をコンパクトに収容するほうが賢明ではないかというような御
意見の開陳があ
つたように承わ
つたのでありますが、八百五十万と仮定いたしましても、これは相当
住居地域の
高層化を図らなければならないのでありまして、試みに私
どものほうで
計算をいたしました
結論によりますというと、仮に八百五十万といたしましても、二十三区の
居住用地に対する
人口密度は
ヘクタール当り三百人見当になるのでありまして、この三百人を無理なく適当に住まわせるということにいたしますというと、一戸
当り十六坪くらいな
建物だと仮定いたしますというと、
平均三階
程度のものを建てなければ、
居住用地全部について
平均三階建のものを建てて行かなければならないというような仮の
数字が出て参るのでございまして、全部が三階になるわけではございませんからして、平家もございますからして、相当アパートその他については
高層化しなければならんということが言えるわけでございます。八百五十万でも相当
高層化を図らなければならんのでありまして千百万というような
数字がこの二十三区に入るとすれば、これは
高層化を図ることは勿論としても、それだけで果して入るかどうかということについて疑問が持たれるのでございます。仮に現在の
東京の
密度が
居住用地については二百七人ということに
なつておりますが、この
密度で千百万に
なつたとすると、つまり現在のような
状況でだらだらと市街地が延びて行
つたら一体どういうことになるかと申しますと、
中心から
半径二十三キロの範囲が全部市街化する。現在の二十三区の
区域は
都心から約十六キロの
半径内に収
つておるからして、
あと六キロ外にはみ出して行かなければならない。言い換えれば現在
衛星都市と
考えられている浦和とか立川が全部事実上の
東京市内になる
状況でございまして、かような
状態が果していいかどうか。従いまして私
どもは
都心部における
居住様式を
高層化すると同時に、
周辺の
衛星都市に
人口を分散して行く、この
二つの
考え方で行かなければいけない、一方だけで物は解決しないというふうに
考えておるわけでございます。
それから余談でございますが、
ロンドンを見て来られた方の
お話では、
ロンドン周辺に現在
ニユー・タウンが八つ
建設されつつありますが、この思想を汲んで
東京都に
衛星都市をやろうという
考えについては、
ロンドンの場合は
人口増加率が非常に少い、年約三、四万
程度でございますが、その
程度の
ロンドンにおける
ニユー・タウンの問題というものは、現在の過密な
状況を改善する、つまり
都市をよりよく改造する
手段として
ニユー・タウンの問題が取扱われておるのであります。ところが
東京の場合にはそうではなくて放
つておけば年に三十万乃至四十万の
人口が殖えて非常に
状態が悪化するから、悪化させない
手段として
衛星都市問題を取上げて行こうということであるのでありますが、その見て来られた方々の御
意見では、
ロンドン流の
都市改造のための
衛星都市問題は日本においてはまだ早い。もつと
道路を改善し、その他
都市をよくしてから然る後に
衛星都市問題をや
つたらよかろうというような御
意見がありましたが、それはいささか私
どもと
考え方が違うので、新
都市或いは
衛星都市問題は、
東京の場合においては、更に放置すれば悪化するであろうところの予防のために使うのである。単に
都市を改善するための
手段として使うのではないというふうに私
どもは
考えております。
衛星都市に関する問題の
調査はその
程度でございまして、なお
衛星都市問題を積極的にや
つて行くためには立法的な措置が必要であるということについては、この前のこの
委員会の席で
衛星都市整備法案なるものの要綱について御
説明申上げたと思います。さような
考えを現在も持ち続けておるわけでございます。