○
説明員(
小峰保栄君)
只今専門員から
建設省を
中心といたしました
補助工事の
全国の概況、それに対しましての
原因或いは
対策、こういうようなことを
お話頂いたのでありますが、私から
会計検査院としてこの数年間、
農林省、
建設省、それから
運輸省も入りますが、この
公共事業関係の
補助工事というものを
検査して参りまして現在或る
程度の結論を得ておるわけでありますが、これについて御
説明申上げたいと思います。
検査報告は
昭和二十六年度の
審議でございますが、事実は二十七年度の
検査はもう終りまして、一層に、二十六年度よりも顕著な事実がわか
つておりますので、これを取り混ぜまして御
説明して行きたいと思います。
この
検査報告で御覧の
通りに、
災害復旧を
中心といたします
公共事業の
補助工事というものは、非常に
不当工事が多いのが現在の姿でございます。私
どもは
建設省につきましてはすでに三年間、それから
農林省関係につきましては、
運輸省も同じでありますが、二年間、
全国に亙りまして
工事の
検査をいたしまして、その
検査報告を年々お出しいたしておるわけでありますが、実は
会計検査院の能力の
関係からいたしまして、
全国全県を一応は廻りますが、非常に薄い
検査しか現在できない状況なのであります。と申しますのは、
工事の数が非常に多い。具体的に計数で申上げますと、
昭和二十七年度は、
農林省の
工事現場は
全国で約六万六千でございます。それから
建設省が四万一千、
両方合せまして十万七千近いという
工事現場があるのであります。
会計検査院として
工事現場を
検査いたしましたのは、
農林省では僅かに三千八百余りであります。
建設省は四千六百余り、率で申しますと、農林は六%弱、それから建設は一一%弱、こういう
程度しか実は
検査できないのでありますが、
工事のようなものはまあ
全国的に同じようなことをや
つておりますので、大体これだけでも
検査いたしますと、
全国的の傾向は一応窺えるんじやないだろうか、人間の考えることでございますから、そうそう奇想天外な手口というものもどうもないようであります。大体これだけの数を
検査いたしまして、相当のたくさんの不当事実というものをつかみまして分類いたしますと、その
種類というものは八
種類か、せいぜい九
種類くらいにな
つてしまう、こういう状況にな
つているわけであります。
従つてその
原因とか、或いは
対策とかいうものもややつかめるようにな
つて来たわけであります。
それで今申上げました
農林省が三千八百三十、それから建設が四千六百十と、この現場を
検査いたしまして、これは不当だということで
検査報告で取上げました件数を御
参考に申上げますと、二十六年度で申上げますと、農林が二百七十二件、建設が百七十三件、これは一件十万円以上で整理してございます。二十七年度は、これを個別に批難いたします分は二十万円以上に金額を上げましたので、
検査報告の批難件数とは、これは合
つておりませんが、便宜肩を揃えます
意味で十万円で整理して申上げておるわけであります。二十六年度は今申上げましたように、農林が二百七十二件、金額にいたしますと一億三千万円、建設が百七十三件で、金額にいたしますと一億五百万円、二十七年度は農林は著しい増加ぶりを示しまして、千七百五十七件、金額にいたしまして六億八千七百万円、それから建設が三百二件、一億八千七百万円、農林に比べまして建設の増加ぶりは少いのでありますが、これは前年度の百七十三件のうち、七十五件という大きな数を占めておりました
原形超過工事というものが、
法律が改正になりまして、二十七年度では批難の対象にならない、こういうことになりまして、前年度の七十数件というものが、こつそり落ちたわけであります。その
関係で比較的増加が少か
つたわけでありますが、それにいたしましても、百七十三件が三百二件にな
つたわけであります。農林が非常に目立つのでありますが、建設も相当数が
検査報告に載
つておる、こういうことにな
つておる次第であります。
それでこういうふうにたくさん私
ども見つけまして批難いたしましても、結局年々それを繰返しておるだけのことでは何にもならないのでありまして、この
原因を究め、
対策を考えて、事態の改善、将来再び同じようなことが起きないようにということに力を尽したい、こう考えまして、いろいろ
原因を究め、
対策を考究しておりまして、一応の成案を得ましたときに、丁度昨年の六、七月の水害、それから台風、こういうような大きな
災害が参りまして、これをこのまま放
つておきますと、又従来と同じような不当経理を繰返すのじやないだろうか、こういうことで、早急にそれまでに練りました
原因、
対策というものをまとめ上げまして、
関係の
建設省、
運輸省或いは
農林省、こういう所に照会の形或いは
改善意見という形でお出ししてあるのが、先ほど
専門員から御紹介になりました去年の夏の照会なのであります。それでこの参議院の
決算委員会からも、
原因はどうか、或いは
対策はどういうものがあるかというので御要求がありまして、
資料の形としてお出ししたのが、今お手許にあるものでございます。
建設省と
農林省とに分けましてお出しした次第であります。これは
一つ一つ先ほど
専門員からも御紹介がありましたように、何百件という
不当工事ではありますが先ほど申上げました
通り、所詮は人間の考えたことでありまして、そうたくさんの
種類はないわけであります。八つか九つになるわけでありますが、それぞれの
種類につきまして、共通的な
原因と
対策、或いはそれぞれの
種類の特有の
原因と、これに対する
対策という形で、ここに少しくどか
つたのでありますが、一々
原因、
対策をお書きして御
参考に供したわけであります。それぞれの間に共通的な
原因もありますし、共通的な
対策もたくさんございますので、一々これを読上げることは省略いたしまして、まとめて
対策というものを御
参考に供したいと思うのであります。
今まで
会計検査院で
検査の結果、現在までに得た結論的な
対策でありまして、これは二十七年度の
検査報告の百六十六ページに項目だけ掲げてございます。ここには簡単に項目だけ書いたわけでございますが、先ず先ほど
専門員から御紹介がありましたように、
会計検査院法の
規定による
改善意見として正式に意思表示をした「支出負担行為制度の整備、」ということであります。先ほど
専門員から御紹介がありましたように、現在
行政手続としての
成功認定、それから
会計経理の
手続としての支出負担行為、この制度がチャンポンと申しますか、入り乱れておりまして、お互いの間に
連絡もなく、そうして
両方が別々にや
つておる、そうしてその結果
両方とも成果を挙げておらん、こういうのが現在の姿なのでありまして、
成功認定が
工事竣工後三年も二年もかかるというような御紹介がありましたが、まさにその
通りでありまして、これは
会計行為としての支出負担行為制度と
両方絡ませて改善の必要があるのではないだろうか、こういうふうに私
どもは考えております。一本にしてよろしい、
農林省では
成功認定というような制度は、ございません。
建設省と
運輸省だけがこういう制度を持
つていて、而も大した成果は挙
つておらん。もう
工事ができて三年も四年もかか
つてから
成功認定というようなことをやるようではどうにもならんのでありまして、支出負担行為のほうは、これは年々
会計行為といたしまして、年度ごとにきちんきちんとや
つて行かなければいけないものであります。むしろこちらのほうを整備、徹底させることによ
つて、現在の
成功認定制度というようなものはやめてしま
つてもいいのじやないだろうか、こういうふうな考え方も
一つ浮ぶわけであります。ただ先ほ
ども御紹介がありましたが、
府県の公務員のやることと、国の公務員のやること、こういう点でいろいろ複雑な問題はあると思いますが、併し制度をよくしようという心がまえさえあれば、そういうような点は自然に解消するのではないか、こう考えておるわけであります。先ずこの第一が支出負担行為制度の整備であります。
その次が「
机上査定の減少」ということが書いてあります。
不当工事は
種類が幾つかございますが、
査定が悪か
つたということのために、そこに
原因があるというものが
種類としては非常に多いのであります。
検査報告で取上げました架空
工事、全然
災害も受けておらん、而も
従つて工事もや
つていない、そういうようなのに対して
補助金が行
つているというような事実も幾つか出ているのであります。又先ほど御紹介がありましたように、
農林省と
建設省と
両方から
査定をと
つてしま
つて補助金を二重にと
つておる、こういうような誠にどうも面白くない事実も相当に出ておるのであります。又たくさんにございますいわゆる便乗
工事というようなものも相当にございますが、これらはいずれも
査定がまずか
つたところに
原因があるのでありまして、こういうものにつきましては、結局
査定を十分にや
つてもらうほか
対策はないのでありますが、この
査定がまずいというものが一番多いのは、このいわゆる
机上査定であります。現地の
工事費を決定するのでありますから、当然に
工事現場を見なければ決定できないはずでありますが、
人員の
関係などでそれをおやりにならん、や
つておる率が非常に低い、そのためにただ
書類審査だけで
工事費をきめてしまう、そこに不誠実な
事業主体なんかおりますと、
設計を水増ししたり或いは改良
工事、便乗をもぐらせる、こういうような結果が出るわけでありますが、この
査定を厳正にする、
机上査定をうんと減らすということが相当大きな改善の
対策ではないかと、こう考えておるわけであります。今度の昨年の大
災害では
建設省では非常に、まあ従来から
会計検査院も随分これはやかましく言
つておる
関係もあるそうでありますが、
現地査定を非常にたくさんおやりにな
つた、その結果が私
ども今、後ほど申上げますが、早期の
検査を、早目の
検査をや
つておりますが、その結果にもはつきりとそれが出て参りまして、
農林省と
建設省との差、二十七年度の
検査報告では非常に件数に差が出ておりますが、それが一層拡大されるのではないか、これを言い換えますと、
建設省は
机上査定を減らして
現地査定を一生懸命おやりにな
つたということによ
つて、相当の不当の経理
工事が減
つて来るのではないだろうかということを私
どもとしては現在予想しておるわけであります。
それから「高率
補助の活用と
事業主体負担分の適時融資」、これも相当大きな問題でありますが、先ほど高率
補助がいいか悪いかということについては、全然
反対の
意見があるということを
専門員から仰せになりましたが、その
通りでありまして、ただ非常にひどい
災害を受けたようなところには、これは何としても相当の
補助を交付しなければ
災害復旧はできないというのは、これはもう現実であります。これをうまく高率
補助というものを活用して頂くことが必要じやないだろうか、それから自己負担、
事業主体の自己負担というのが、これは相当負担するわけでありますが、これに関連する問題というものは非常に多いのであります。地元が自己負担をしたがらない、
補助金の範囲内でや
つてしまう、それからひどいのは
補助金の頭をはねておる、
補助金を残しておるという事態も相当に私
どもの
検査ではわか
つておりますが、結局財政の貧弱な
事業主体として、なかなかその
法律の案ずる自己負担ができかねるという問題が、相当にこれは
全国的に大きなあれにな
つておるわけでありますが、これを融資によ
つて解決する、而もそれは適当な時期に金が先方に届くような配慮をしなければいかん、これは折角融資を斡旋をしても遅れたために、地元がその融資を使わないで、
国庫補助金の範囲内でや
つてしま
つたという事実も相当に私
どもの
検査の結果明らかにな
つております。
それから「改良費
補助の増額」、これは先ほど申上げた便乗
工事と関連するわけでありますが、改良的な
工事、防災的な
工事に対しては
補助金は非常に少いのであります。その結果、現在では
災害復旧がありますとそれにかこつけて便乗
工事、改良的な
工事をもぐらせるという事態が
全国的に非常に多いようでありますが、そうして国は又御承知のように、改良
補助よりも
災害復旧のほうが国庫負担の率が遙かに高いのでありますから、結局高い
補助金をまあ取られているというような妙な結果にな
つているのでありまして、これは改良
補助をむしろ増額して、増額と言いましても
災害復旧費から廻せばいいのでありますが、廻して適正にや
つて行くということが必要じやないだろうか、こう考えているわけであります。
それから「小
事業主体工事の合併
施行」、これでありますが、先ほど
府県に、
町村工事なり農業協同組合あたりの
工事を委任するということを
専門員から
ちよつと
お話がございましたが、これはすでに実行いたしまして、相当の成果を挙げている県がございます。小さい
町村や組合などでは大きな
災害復旧工事をやるような能力は実のところないのでありまして、それが何千万円、何百万円という
工事の
事業主体ということになりますと、なかなかうまい
工事はできない。どうかすると請負人にごまかされる、こういうような事実が相当見受けられるのであります。これは
府県がまとめて委任を受けるなり、合併して委託を受けるなりしてやるというようなことが、非常にこれはいい結果をもたらすのでありまして、それをすでに実行いたしまして、いい結果を得ている県も見受けられるのであります。
それから
あとは「適正な実施
設計の作成」、これも相当大きな問題でありますが、
査定のときには非常に急ぐ
関係もりまして、現地をなかなか見ないで、標準
設計を作るというようなことが行われております。併し実際に
工事をやるときは、これは現地について現地に適合した
設計に組直すということが原則なのでありますが、実際には組直さないで
査定設計のままや
つてしまう、そういうような事態が相当に多いのであります。
それから「不誠実な
事業主体および請負人に対する
補助取消または指名停止」、こういうようなことも県によ
つてはすでに考えておられる県があるようでありますが、如何さま、そのいろいろなものを水増したり、相当悪い事態もあります。それから請負人の中には手抜きをするという者も相当見受けられるのでありまして、そういうものに対しては現在のまま放
つておくのはどうだろうか、こういうことで考えているわけであります。
それから「
工事監督機能の充実」、これも先ほど
専門員から
お話がありましたように、
監督とか
検収とか、そういう機構が県によ
つては相当しつかりしたところもありますが、そうでないところが相当にある。そうしてそのために
出来高不足の
工事とか、或いは疎漏
工事というようなものが出まして、
ちよつと水が出ますと又壊されてしまう、又
補助金をもら
つてやり直す、結局
災害復旧と
国庫補助との悪循環というような感じも身受けられるのでありまして、こういうものは、
府県の
工事監督機能の充実ということをお考え願うほかないんじやないだろうか、こういうふうに考えているわけであります。
大体非常に、各
種類毎にこの
資料は作りましたので、大変長くな
つておりますが、全部まとめて考えますと、そういう今申上げましたことが主なところになるわけであります。私
どもといたしましては、先ほど申上げましたように、従来は
工事が出来上りまして
あとから見まして、そこで
設計通り出来ていないのに金を払
つているとか、或いは地元が正当の負担をしていないために
工事が手抜きされたという、そういうことで
検査報告に掲げて批難しているのでありますが、
当局に事実を並べて照会するわけでありますが、それに対して金を返しますとか、或いは
工事の手直しをしますとか、こういう
回答があるのでありますが、実は果して
回答の
通りに金が返
つたか、金が返
つたのはわかるのでありますが、
工事の手直しをしたというのは、一々見て歩く余裕が実際今までないわけであります。ところが写真を付けて、この
通り直しました、こういう
回答も頂くのでありますが、実は
会計検査院に
回答するために
工事をや
つた写真、言い換えますと、写真を撮るところだけ手直しした、こういうような事実も従来
あとでわか
つたのであります。誠に遺憾でありますが、我々も結局そういう
回答を頂いて、手直しをするなら果してしたかどうかというところまで
検査しなければいかんのじやないか、国会にそれも御報告しなければいかんのじやないか、こういうことで今年初めてでありますが、これから全部手直しの事実を調べて廻ろうということで、特に旅費もございませんので、予算の配慮を願いまして、それをこれからやる予定であります。
それからもう
一つ、悪い
事項を見つけまして
あとから批難だけいたしておりましても、なかなか事態を改善することができませんで、どうしても、
工事に着手する、着手したばかりのとき、或いは着手前、これに早期に
検査をいたしまして、便乗
工事とか、水増し
設計とか、こういうようなものを洗い出してしまわないといかんのじやないか、こういうことで、これも今年初めてでありますが、現在一月早々から、昨年の
災害で相当に
災害復旧費の
補助金のつきます県を選びまして、早期の
検査を今年初めてや
つております。或る県のこれは農林
関係でありますが、一県で百二十億円も
査定がついたという県がありますが、これは非常な巨額でありますが、そういうところの
検査をすでに終えまして、まだた
つた一つでありまして、現在盛んにや
つておるのでありますが、この結果も計数的に大体わか
つたのでありまして、これについては
当局なり、地元なりの納得も得たわけであります。それが今のところ一県でありますが、非常に驚くべき結果が出ているのでございまして、
全国そういうことにはならんと思いますが、これは非常に顕著な県だとは思いますが、全体の百二十億のうち三分の一強を
検査、三分の一強しか
検査できなか
つたわけであります。三分の一強を
検査、四十数億の
検査をいたしましたところが、十五、六億減る、こういうようなところも今までにわか
つております。非常に大きいのでありまして、三分の一あまりのものが減る。而もそれは減ることに対して県の
当局なり
事業主体のかたはもう納得しておられる。こういうような事態も現在わか
つております。
全国がこんなだ
つたら大変なんであります。ほかの県はそういうことはないと思いますが、そういうようなひどい例もすでにわか
つております。早急にまとめまして御報告したい、こう考えておる次第であります。