○
飯島連次郎君 私
ども参議院の
東南アジア視察六名の
一行がたまたま
ビルマを視
興ヂる
機会を得ましたので、
東委員と私が
決算委員会に所属をして
黄変米問題につきましてはかねて
関係がありましたので、特に一日余りの時間を割いて
ビルマ調査中に
黄変米の問題について或る
程度の
調査をいたしましたので、この
機会に極めて簡単に御
報告を申上げたいと思います。
なお、
冒頭にお許しを頂くことは、私時間が今日は非常にございませんので、約十分
程度で御
報告を終らせて頂きまして、
あとは
東委員から詳細な
補足をいたしたいと、そういうふうに打合せをいたしておりますので、御了承を頂きたいと思います。
黄変米の問題につきましては、私
ども国内にお
つて考えておつたのと、
向うの
ビルマに行きましてから
向うの
立場で眺めた
黄変米とでは、随分大きな逕庭がございますが、
日本では非常に大きな問題にな
つているのに比べて、彼の地では、極めて冷静であり、そうして大きな問題としては取上げられておらないという実情にあつたわけであります。私
ども一行乏離れて
東委員と二人で一日
向うの
SAMBと申しますか、
日本でいえば
食糧庁に大体匹敵するような
機関、そこを尋ねて
ウー・ソー・サン・シユエというジエネラル・マネージヤーに会いまして、いろいろ
意見の交換をいたしました。そのときにたまたま
黄変米のことにつきまして話合つた際に、
日本では
黄変米という問題についてかなり国民的な不安と、それから政治的な問題にな
つておるということをこちらで話しました。それに対して、
向うでは
黄変米についてはかねて聞いておる、しかし
日本で言われるが如くに人体、或いは食生活にそれほどひどい害を与えるということは、我々の
経験に徴して一遂には受けとれない。だからそういうひどい害があるということであれば、或いは臨床的に、あるいは
菌そのものについても、もう少し科学的な
データーが欲しい、ただ漠然と言われても我々としては困る、そういうふうな考え方、そういうふうな意向が
ビルマ政府を大体支配しておる空気のように受取りました。それからなおそれにしても
日本ではそういうかりそめにも毒があるということが明らかに
なつた以上、今の
国内情勢ではこれを喜んで食べるという人はないであろう、又
日本の国としてもそういうものを、国民の欲せざるものを、これを強いて買おうということは非常に困難であるということを言いまして、それに対して何かこれに対する改善的な
方策はないかということに話題を進めましたところ、一体
玄米という形で売る、つまり
用意はないのか、こうい
つて私が聞きましたら、いやそういうことは可能である、これはか
つて戦争前にドイツとの米の取引において、そういう
経験を我々
ビルマでは持
つておるので、
日本がそれを欲するなら我々としてはそういうことは考えても結構です、こういうことを言
つています。それから本年の
収穫の状況なり、或いは本年の
価格等の
見通し等についてもいろいろ話会いをいたしましたが、その点についてはやはり世界的な米の
商品市場に対する出廻り等の
関係もあるから、値段については今のところまだ
はつきりわからないが、恐らく昨年よりも高くなることはないであろう、そういうことを申しておりました。
それからなお私
どもが一日
ラングーンの河を遡
つて例の
黄変米が
発生する
原因、或いはその
施設の
現状等について
視察をいたしました。その
機会に
東委員は三十五ミリの
撮影機を持参をされまして、約千フィート近いフィルムを
撮影をして参
つておられますので、本日は間に合いませんので、いずれ生々しい
現実をお目にかける
機会も遠からずあると考えております。なお、私もそこに回覧をしておる
写真を撮
つて参りましたので、私の
説明の足りないところは
写真によ
つて補足を願いたいと存じますが、結局
黄変米がよ
つて起る
原因というものは、これは極めて簡単でありまして、まず第一が
もみの
保管がよろしくないということであります。
この
もみの
保管につきましては特に一昨年は
ビルマでは非常な
天候の
異変がございまして、
もみの
収穫、
つまり米の
収穫時は、あちらの気候では
乾燥期に入りますので、殆んど雨が降らないというのが
一般でありますが、一昨年はこれがかなり稀有の雨があつたそうであります。それで
野積みにしておる
向うの米が非常に雨のために濡れてし
まつたということ、これがそもそも
黄変米を多発せしめた大きな特異の
理由であつたということ。
それからその次には
野積みにされた
もみは庭先で農家の手を離れまして、それが
三つの
コースをと
つて集荷されるのであります。その
一つは直接
政府売り、それからその二は
精米所に売るという方針、もう
一つは今起りつつある
農業協同組合という
農民組織を通じてそごに集荷される。
三つの
コースで
もみが集められて参りますが、そのいずれの
コースをとりましても、
集まつた
もみは結局民間で経営する
精米所で
白米にされるわけであります。
その今お手許に
写真を廻してありますが、
ビルマでは
工業と申しますと殆んど
精米工業というのがもう全国を風靡する巨大な
工業でありまして、
向うの川筋或いは鉄道の駅という駅にはもう天を摩すると言うと大げさかも知れませんが、
ビルマにしては稀に見る大きな
建物が建
つておりますが、これはもう例外なしに
精米工場であります。そういうふうに或いは水路を通じて或いは鉄路によ
つて集められて参りました
もみが、そういう大きな而も近代的な
施設を備えておる
精米工場で
白米にする、その
精白精米所に附属する
倉庫、これが
白米になされた米に対する菌の
発生する第二の
機会、第二のチャンスであります。
その
倉庫の中は私
どもの
写真機では十分、フラッシュの
用意がありませんでしたから、
写真では
内部は
はつきりとれておりませんが、その
倉庫というものは屋根はもう何十年葺換えたことのないという腐つた鉄板で葺かれております。ですから恐らく豪雨のときは雨漏りも甚だしいことに違いない。それから中に入
つて内部構造を見ますと、大体
建物は
堀立式でありまして、そうしてその土間に約一尺
程度の
もみがらを敷きます。その敷いた
もみがらの上に
アンペラ一枚敷いてその
アンペラの上に
精白された白い米が例の
麻袋に詰められて
天井近くまで、例の
深川倉庫とは違いまして、ああいう周到な心遣いなしに、ただ無雑作に
天井近くまで、高さにいたしませば、かれこれ三
メーターから三
メーター半ぐらいの高さに積まれておるわけであります。
従つて雨期になれば当然地下からする水分が上
つて参りましようし、同時に上のほうは例の、
写真でおわかりのように、腐つた
トタン板で囲われた
倉庫でありますから、上から漏
つて参ります雨と、上下から湿気が入
つて参りまして、それがああいう熱帯の暑気と相反応して蒸されて、菌が
発生するのには極めて好適な条件を備えておるということ、これが
黄変米というものが
発生する第二の
機会であろうと考えるのであります。
それから第三には、
精白された米が、
日本と違いまして規模が非常に大きいために、ときには六カ月、ときには一年を経過しても、なお
倉庫の中の米が動かないという事実がございます。私
どもが見ました
倉庫でも、一番下積みにな
つておる米のごときは、もう米が本当に何といいますか、塊りにな
つてしま
つてもう蒸せて、手でさわるとぼろぼろに砕けるぐらいひどくな
つておる米すらございます。これはいつの米だといつたら、一年も前の米である、これは売るのかと言つたら、売らないことはありません、こういうふうなあいまいな返事をしておりましたが、そういう
状態な
倉庫でありますから、恐らくここが菌の
発生する一番大きな場所ではないかというふうに考えられます。
それから第三の問題は、今度は
倉庫を離れた米は、
はしけによ
つてラングーンまで運ばれて参りまして、それで
本船に積みかえられるわけであります。その
本船に積まれてから、今度は
日本にそれが輸送されて参ります途中で、又菌が増殖をするという
機会もあるのではないかというふうに考えられますが、これは私
ども直接その点はみずから調べたわけではございませんから、文献或いはその他によ
つてそう想像するだけでありますが、どうも輸送の途中にも菌が殖えるのではないかということが懸念されるわけであります。そこでこれに対して、これをできるだけ防ぐための
検査、その他の
日本政府、或いは
政府の
意図を受けて直接その仕事に携
つておる、
ビルマでは
三つの
商社がございましたが、その
商社の
人たち、或いは
向うの領事館で働いておられる米の担当の
人たち等の
意見、或いは
経験等を聴取する
機会を得ましたが、この
検査に関しましては、
白米が
倉庫を出るときの
検査が一回ございます。
倉出しの
検査と申します。それからその次には
はしけから
本船に積みかえるときの
検査がまた一回ございます。その大体二つの
検査が行われておるようでありますが、その
検査の際に、こちらでは
日本の、つまり
商社の
人たちがみずから
検査をすると同時に、それだけでは安心ができませんので、いわゆるスイス或いは
アメリカ等の、つまり
国際検査機構に依頼をして、その
人たちも
検査に立合
つておりますし、なお、例の
ビルマ政府の
検査官も立会
つておるそうであります。ですから大体三者が米の
検査には立会
つておるという形にな
つておりますから、その間、例の昨年
黄変粒の一%以内という、
日本と
ビルマ政府との間の協定が成立いたしましたので、折角
はしけに積まれて
本船に積込みをしようというとき、或いはそれのもう
一つ前の
段階の
倉出しをしようというときに、これは一%以上である、やあ以上でない、こうい
つて実に激しい、
つまり米の品質をめぐ
つての
検査の争いと申しますか、このことがなされておるそうでありまして、そのために出先の
諸君は川の中に突落されるというか、或いは全くそのときには
戦争というか、喧嘩ごしというか、そういう
状態で、米の買取とり積込みには苦労しておることをつぶさに聞かされまして、一%以内を厳守するということの苦労が、私
ども現場に
行つてよくわかりました。
そのくらい
一考以内ということを厳守するために
努力は払われておるわけでありますが、そこでそれなら最後に
黄変粒というものを極端に少くする。つまりもう
一つさかのぼ
つて日本が米の
需給操作上どうしても
黄変粒を含む
ビルマ米を買わなければならないということを前提といたした場合において、どうしたらば最もそういつたこの病毒の
少い米を買い得るかと、こういう問題についていろいろ
意見をとりまとめてみたのでありますが、それに関しましては、いろいろな
注意がございますが、これは直接
決算には
関係ありませんけれ
ども、国民的な
立場に立
つて、できるだけそういう不安と危険を除くという
立場から考えてみますと、以下の
注意が非常に必要であろうということが大体申し得るのであります。
その
一つは
食糧長官に会つたときにも話が出ましたが、
黄変米を食用する場合の
許容限度というものの科学的な
研究がまだ
はつきりしておらない。これをひとつ明確にするということが
日本においてなされなければならない第一の
段階であろうと私は考えるのであります。特に
白色黄変粒と称して従来の
黄変米とは
違つて、その害が宣伝されておりますが、これらについてはまだ学問的の
研究が決して十分とは申せないんでありまして、これらについての
はつきりした
データーが一日もすみやかに究明されることを必要と考えるのであります。これは特に外交折衝する場合に、この点が不明確であそと
日本としてはどうしても強い
態度がとれないのではないかということが県念されるからであります。それから
白色黄変粒につきましても、
培養の結果これは悪いからとい
つて、これをリジエクトしたいという
日本側の提案は、
さつき申しましたように科学的の根拠がまだ不十分であるために、
歩渉の
任務等を担当しておる
現地の
人たちのこの
立場というものが、容易でないということが考えらるのであります。
それからその次には、これは
長期契約をするのはどうかという考えであります。というのは
冒頭にも申しましたように、
天候の
異変等によ
つて黄変粒の
発生にかなりの変異が見られるということでありますから、長い
期間契約をするということは、そういう意味でも
一考を要することではないかと考えるのであります。なぜかと申しますと特に
向うの
収穫時期に雨の多かつた年のごときは、文句なしに
黄変粒が多発するということが、これは考えられるわけでありますから、そういう場合には
ビルマからの米の
輸入というものは、極端に申しますればこれはやめる。或いはそういう危険な年には少くとも入れない。こういう考慮も必要であろうと考えるからであります。
それからその次にはこの
黄変米の問題が起りましてから、
積出品全量の
培養検査を行な
つて、無菌のもののみを積めと、こういうふうなきつい
指示がこちらからなされておるようでありまして、これはこういうことを文字通り実行するといたしますと、これは外米の、つまり
ビルマ米の
輸入を断念せざるを得ないということになる。それ
はつまりこの
指示を厳密に実行するということをいたしますと、例えば
ビルマから積み出しております港は
ラングーン、バツセイン、
モールメイン、それからアキャブ、四つの港がございまして、ここにそれぞれ
実験室を
作つて、そして
日本の学者を最低二名くらいずつ
駐在をせしめて、そして一船、
一つの船について、五十の
ロットを、各
ロット百乃至二百五十本の試験管を備えて三週間の
培養期間を持
つて試験をしなければならない。そうしてその結果、不良品をリジエクトして、改めてアロケーシヨンを受けて調べておるのでは、一年間にせいぜい数千トンの
輸入であればこういうことが可能でありますけれ
ども、又その費用もこれはかなりかかることでありますから、これに要する
経費等も度外視すれば可能でありますが、
現実にはこういうことは殆んど不可能であるということ。それからなお、ここでも又問題になりますことは、それだけなおや
つても、なお且つもう少しこれを厳格に考えますと、
許容限度が
はつきりしておりませんので、科学的な究明が立ち遅れておるという現在の
状態におきましては、この点がなお更困難を加えるということであります。
それから次にできるだけいい米を
日本で入手するためにとるべき
方策として考えられることを簡単に
箇条書きで申上げますと、
先ずその第一は、
契約の品種をS以上のものとするということが第一。少し
専門のことになりますから、
あとで米のサンプルを
一つ御覧頂けばSというものもよくわかりますが。
それからその次には、
ミリングも良好で、ブロークンのパーセントの低いものをとるということ、これが第二。
それから第三には、
洪水が
発生して
病変米の危険などが多い
地域からは米をとらない。そういう
地域が年々これはございますから、そういう
危険性のある
地域の米はとらない。
それからその次は、
本船内の
燻蒸を
研究するということ。これは
向うの
現地で直接この
経験をしておる人の
意見では八〇%
程度の菌を
燻蒸だよ
つて殺菌が可能である、こういうことを申しております。
それからその次には、
現地に
研究所を設けて、菌の
発生経路などを調べ、そしてできればそれを通じて農耕の
改良等にまで手を及ぼすということであれば、一層これは徹底するであろうということ。
それからその次には、
積取りの
期間でありますが、これは一月から五月の間に
積取りを完了するということ。
次は、
燻蒸ぶ可能な
倉庫の
建築の
指導をするということ。
それからその次は、
オン・デマンド・ミリングの励行。この
オン・デマンド・ミリングというのは昨年からすでに実施に移されておりますが、何月何日
ラングーンの港に
日本の
横取りのための
本船が入るということが
はつきりいたしますと、それに対して例えば
精白後二週間以内の米を
本船に積込ませる。
つまり精白後の
期間を長くおかないという
心使いの下にこういう
精白方法を
ビルマ政府と協定して実行しておるようでありますが、これはもう是非徹底してやる必要があるということ。
それからその次は
もみ倉庫の
設備を今度は改善して行くために啓蒙の必要がある。この
もみ倉庫に関しましては、私
ども直接見ましたけれ
ども、逐次
ビルマ政府等の
指導の下に
もみ倉庫の改善、或いは新らしい
建築がなされております。これは私
どもが河を遡行して目のあたりに、あれが新らしい
もみ倉庫ですというのが建ち並んでいるのを見ましたけれ
ども、
ビルマの
政府筋でもやはり
黄変米の問題が起りましてから、特にこういう
もみの
貯蔵等について意を用いておるという、これが片鱗であろうと考えるのでありますが、これを
一つビルマ政府に向
つては要望するということ。
それからその次には、この
食糧の
契約等に際しまして、これは
食糧庁とか厚生省の責仕のある方々の
現地出張されますことを私は非常に必要だと考えるのでありますが、なおその
機会に
国会からも
代表者が立会いをしてくれれは、非常にこの点については完璧であろうということを
現地の
諸君は申されておりました。これは特に来年度の
契約、
積取り等につきましては、やはりこれほど
日本国内で大きくな
つた黄変米の
最善の
努力としては、やはり農林、厚生、できれば
国会の
両院等から
代表者が参画をして、こういう危険を先ず防止するということが必要ではないかと考えるのであります。
それから
契約は遅くとも今年度中、つまり前年の十二月中には
契約が締結をされなければならない。これは
さつき積取り期間を
乾燥季、つまり一月から五月までの間に
横取りを完了するというためには、是非とも前年の十二月中に
契約が成立するということを必要とするのであります。
大体
ビルマからの米を
輸入するといたしました場合に、なるべくいい米をこちらへ運んで来るというための
必要最小限の
注意が以上申上げたところであります。
なお、これに附け加えて、これは
現地駐在員の
一つの何と言うか、
参考意見、試案でございましたが、こういうことを申しておりました。それは
ビニール燻蒸ということをやるといいのではないかと思う、と申しますのは、
倉庫が現在先ほ
ども申しましたように、非常に不十分、不完備な
倉庫でありますから、又
倉庫が非常に大きいのでありまして、とても
倉庫全体を種無するなんということはできませんので、この
ビルマの
現状に対しては
ビニールで覆うて、そしてこれに対してメチプロの
燻蒸をする
方法が一番
現実に即した実行しやすい
方法ではないかと、まあこういうことを申しておりました。
大体私の申上げることは以上で終つたわけであります。簡単でございましたが、私
ども米に関して
向うでつぶさに
調査し、なお聴取し得た
材料等を御
報告を申上げたわけであります。