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説明員(大沢実君) 千五百十三号について御
説明申上げます。
この
農林漁業資金融通特別会計という特別会計は、御承知の
通り、二十七
年度で廃止しまして、この融資残高及び
業務ば挙げて二十八
年度から発足しました
農林漁業金融公庫のほうに移されたわけであります。そうして
会計検査院といたしましては、この農林漁業資金融通の
検査をどうするかということを考えまして、やはり全国的な融資の実際を把握しなければならんのではなかろうかと考えまして、時間の許す限り、人員の許す限り、各
方面に亘
つて検討したわけであります。これは概況を申上げますと、昨年のこの
検査報告を取りまとめる時期、二十八年の十月末現在頃までに融資されてお
つた件数が約一万九千件ありました。その金額は約三百九十億であります。そのうち
会計検査院で実地につきまして
検査いたしました件数が九百二十四件、一万九千件に比べると五%
程度のものでありますが、これは大阪府ほか北海道及び十五県に亘
つて抽出的に
検査したわけであります。その結果千五百十三号に掲げてあります融資のやり方、審査の
方法或いは融資後の管理が適当でないと認められた件数が百二十五件にな
つております。そうしてこの貸付金額が五億七千万円、この五億七千万円の貸付のうち、ここで貸さなくてもよか
つたのではないかと考えられる金額は三億四百万円ということにな
つております。そうして、これはその
検査の都度、もうすでに
農林漁業資金融通特別会計は廃止されて、事務が
農林漁業金融公庫のほうに移されておりましたので、
農林漁業金融公庫のほうについてその事後処理について
照会を発して、それぞれ意見を闘わした結果、公庫のほうでも大体認められまして、今年の二月現在かと思いますが、三億四百万円という融資をしなくてもいいという金額のうち、一意三千万円
程度のものは回収されております。あとはその後又是正しようとしてそれぞれ整理されておるという
状況であります。一応概況はそういう
状況でありまして、書いてあることを御
説明申上げますと、第一に(1)に書いてあります分は、資金を融通する場合に、もう少しよく
検討したならば、こうしたものは融資対象にするのは不適当だということがわか
つたではなかろうかと思われる件が三件、六千九百六十万円というものがあります。
この三件を簡単に御
説明しますと、
一件は冨田町の農業協同組合、ここに出ておる分でありますが、これは貸付申請当時には
設計書が提出してなか
つた。どういうことをやるかという成規の
設計書が提出されてなか
つた。それで仮
設計そのままを認めて融資されたのでありますが、殆んど仕事は進まずに、二千万円の貸付に対して、二十八年の九月に
現場に行きましたときには二百三十万円というものが漸くに着手されたような
状況であ
つた。これはもつと
設計がはつきりしてから貸付けたほうがよか
つたのではないか、こう考えられます。
それからもう
一つは広島の田幸村という所の土地改良区に九百六十万円貸付けたのでありますが、これは図面を見ますと、灌漑排水の
工事でありますが、主要な排水路よりも、地図から見ましても、もつとそのレベルの高いほうまでも受益地区に入
つて、その
人たちがそれぞれ受益者負担金を払
つてこの
工事をするという
設計にな
つております。考えてみましても、灌漑排水が自分の所に全然利益を及ぼさない所まても受益者としてそれをみんな負掛さしておるという
設計は、初めからどうも少しおかしか
つたのではないか。そのために、結局最後におきましては、そうした余り受益しない
人たちが負担金を負担するのはいやだというようなことで紛争を生じまして、これは二十八年のたしか七月頃実地
検査をしたのでありますが、まだ
工事は全然着手されていない。こういう
状況であります。
それからもう
一つは、鹿児島の高山町という所の土地改良区に貸付けたのでありますが、これは小さな町の土地改良区で、技術者も一人しかいないという話でありますが、そこで四千万円という大きな用水路の改修等の
工事を
計画して融資申請された。これに対しまして、できるだろうというので四千万円貸付けたわけでありますが、結局これもなかなかそうした厖大な
工事でありますので着手ができず、これも二十八年の九月頃
検査しましたときにば、一四%
程度しか当時は
工事ができていない。あとはそのまま貸付金額は取扱
つた銀行の預金として残
つておるというような
状況でありまして、この三件は、もう少し審査のときに十分審査したならば、こうした金額を一時に貸付けなくてもよか
つたのではないかと思われる件であります。
それから(2)に書いてありますのは、これは融資します場合に、この
一つの
工事が国庫補助を受ける
工事であるか、受けない
工事であるかによ
つて、融資の金額がよほど違うわけであります。国庫補助を受けない
工事ならば、総
工事費の八割まで融資する、ところが国庫補助を受ける
工事ならば、受益者負担金というか、地元負担金、つまり大体補助が七割、八割くらい出ますと、あとの二割、三割、これの八割を融資すればいいということにな
つておりまして、この(2)に書いてありますのは、融資するときには、すでにそれが国庫補助
事業であるということが補助指令を受けてわか
つておる。だけれ
ども、それが審査するときにはわからずに、非補助
事業ということで
相当厖大な金額を貸付けた。そのために五百八十万円というものがいわゆる限度超過の貸付にな
つておる。こういう
事案であります。これが全部件数としまして四件というものがそういうことにな
つております。
それから(3)に書いてあり、ますのは、同じような
事案ではありますが、初め融資するときにはまだ国庫補助
事業になるかどうかわからない、そうした場合には、当時の扱いとしまして、若しもこれが国庫補助
事業に指定されたならば、そして
補助金が交付されたならば、その
補助金相当額は優先的に繰上償還するということを念書を入れて
契約してお
つたわけであります。ところが貸付けたときはそれでいいのでありますが、あと県その他へ連絡されて、実際補助が来たかどうかを調べて、その分を念書に従
つて償還させなければならないのを、その間の監理が不十分であ
つたために、
補助金はすでにもら
つているのにその分が繰上償還されていなか
つた。これが
補助金額にして八百二十九万円というものがそうしたことにな
つております。
それから(4)に書いてありますのは、これはいろんなケースがあるのでありますが、結局最初に融資申請される場合には、例えばここの堤防なり井堰を改修するのだということで融資申請されておるが、実際の仕事は、そこの仕事をせずに、ほかのところの溜池を作るとかいうような別の仕事をしている、或いはそれを自分の組合などの運転資金に
使つているというように、目的外にその融資金額が
使用されてしま
つた。これをそれぞれの金融機関がもう少し十分に目を光らしておれば、その点を発見して繰上償還をさせるべきではなか
つたかと思うのが、十分にその間の監理が行われていなか
つたというのが(4)に掲げてあるものであります。これが一億八千百万円ほどあります。
(5)に書いてありますのは、これは融資申請したその仕事は融資を受けたところで
工事を施工しておるのであります。併しながら初め申請した金額よりも少額で
工事が完成している。こうした場合には、又これも
契約によりまして、
契約といいますか、むしろこの資金融通法の
建前からいいまして、必要な金額の八割というものを融資することになりますから、それ以上は限度を超過して貸付けているものは繰上償還させなければならんというのが、やはり監理が不十分なために限度超過のまま、まだ償還にな
つていなか
つたものでありまして、これが四千百万円ほどあるのであります。以上(1)、(2)、(3)、(4)、(5)と項目に分けて、それぞれ融資の審査が不十分であ
つた点、或いはその後の監理が不十分であ
つた点を掲げておる次第でありますが、ただこの記述が非常に、ほか何ヶ所というようなことでおわかりにくいかと思いますが、これは北のほうの県ばかりあが
つておるようでありますが、この記述の掲載上、北のほうを頭に書いて掲げたので、こういうことにな
つておるのでありまして、九州から中国、四国に亘
つてもこの中に入
つておるわけであります。そこでこうしていろいろな融資上適当でないものがあることの原因はどこであるかということを探求しました結果が、三百頁に(ア)、(イ)、(ウ)として書いてあるのでありますが、これは当時はまだ
農林省内部の資金融通特別会計でや
つておるのでありますから、
農林省として
補助金を交付されるという場合には、この
工事には、初めは非補助
事業だ
つたかも知れませんけれ
ども、これだけのものは
補助金が交付されているということを連絡されれば、その分はすぐ特別会計に繰上償還の手続をするというふうに、部内連絡が十分であれば、比較的早くこの
補助金の繰上償還、或いは非補助
事業として融資したものが補助
事業にな
つたときのすべての融資金額の
変更ということはできたであろうと思われるのが、この
農林省部内の連絡が不十分であ
つたためにそれが行われていなか
つたのではないかという点が一点であります。
それから第二点としましては、融資後の監理、いわゆる監査機構というものが十分整備されていないために、融資した先は勝手に
使つていても、なかなかそれを抑えにくい。又この資金融通は大体農林中央金庫の各地の支所その他市中銀行が委託金融機関として融資しておるのでありますが、こうしたものも、人手薄とその他の
理由で、なかなかその融資後の
現場の把握というものが十分行われていないということで、この監査機構の不整備ということも
一つの原因であ
つたのではなかろうか。
それからもう
一つ上に書いてありますのは、これはここに書いてありますように、「必要があると認めたときは
関係都道府県知事の意見を求めることができる。」つまり融資する場合に都道府県の知事の意見を求めることができるとあるのですが、まあ人手不足その他の
関係もありまして、実態を見ますると、殆んど都道府県の知事といいますか、その農地
関係の方が、これと、これと、これは融資してくれというと、そこを融資する。そうすると、その県のほうでできているといわれると、できたと思
つて、おる、というように、県のほうに或る
程度任せつきりにな
つている。これが何ら法律上、県が責任を持つ体制にもありませんし、又これに罰則もないのでありますが、そうした点で県のほうにあまり依存しがちである。こうい
つた点がこうした適当でない融資が発生し、又融資後の監理が適当でなか
つたことの原因ではなかろうかと考えておる次第であります。この点に関しましては、
農林漁業金融公庫に改組と言いますか、
農林漁業金融公庫が発足しまして、
相当いろいろな点で努力はされおるのでありますが、まだ二十九年、今年の実地
検査の結果を見ましても、ここに掲げてあります類似の事態は、件数としてはやや減少しておるようには見えますが、まだ残
つております。将来としまして更に一層、今度は
農林漁業金融公庫と
農林省の連絡とか、
補助金を出すか出さんかということの連絡、それから公庫内部の監査機構及び受託金融機関に対する
指導というものを、もつと徹底的にされると同時に、県に対して或る
程度責任を負わせ、そうした委託料を多少負担しても、若し県が偽わ
つた竣工の
報告を出して来てや
つておるという場合には或る
程度の損害賠償も付し得るというように、何か県との間に協定を結んだならば、或る
程度これは防げるのではないか。現に住宅金融公庫のほうでは県との間にそうした協定がありまして、或る
程度の委託料を払
つておりますが、県の職員が例えばこの建物はできたという証明を出して住宅金融公庫は金を貸した、ところが実際できていなか
つたという場合には、県のほうがその弁償金を払うということを協定しております。こうした
方法を考えたならば或る
程度こうしたことは防げるのではなかろうかというように考える次第であります。なお本年の
検査の結果を見ますると、県のほうも、今のような何ら法律的な責任その他はないのでありますが、我々が
検査するという場合には、管内を廻りまして、こうしたものはないかということをそれぞれ
検討している県も
相当ありまして、実地
検査に行くという通知を出して行
つて見ますと、その直前に
相当の金額が繰上げ償還されておるという事態もあります。こうした点で、県のほうも
相当真剣にな
つて来ておられるという点もわかります。併しながらまだまだ不十分ではなかろうかと考える次第であります。二十七
年度検査報告に関連しまして、二十八
年度の
状況も一応
説明申上げました。