○国務大臣(愛知揆一君) それでは
只今委員長からのお指図のありました点につきまして、私から概略先ず御
説明をいたしまして、御
質問に
お答えすることにいたしたいと思います。
昨年幕以来御承知の通り実施して参りましたいわゆる緊縮
政策でありますが、それは漸く私はその効果を現わしつつあると
考えております。例えば物価について見れば、卸売物価において大体今年の初め以来、約九%強下落いたしましたし、
国際収支も、四月以来漸次好転を示し、六月以降におきましては若干の黒字を引続き現わしておるのであります。勿論それらの点について細かく分析すれば、いろいろの問題はまだまだございますけれ
ども、漸次効果は現わして来ておるということは言えると思うのであります。ところで他面におきましては、緊縮
政策によりまするところの歪みも一面において
相当現われて来ておることは否みがたいと思います。その点から今後総合的な施策というものを講ずる必要があると思われるわけであります。更に国際情勢について
考える必要があると思うのでありますが、ジュネーヴ会議の成果、インドシナにおける休戦の成立等に伴いまして、大勢は漸次動乱から安定べと移行しておるように私は見受けるのであります。それだけに世界各
地域における
貿易競争はますますその激しさを加えようとして来ておるというかうに情勢判断ができると思います。それから更に各国のうちには、それぞれの経済基盤の
強化を完了して、
通貨価値の安定を終了したとまで言えるような各国があるのでありまして、特にイギリス、西ドイツ等におきましては近く
通貨の
自由交換性を回復して、自由
貿易主義の旗幟の下にそれぞれ
貿易の拡大に一層の努力を傾注せんとしておる情勢であるわけであります。こういつたような状態から、
我が国の
経済情勢が戦後において
生産が
相当著しく回復、増大したとは言いますものの、資本蓄積もまだ不十分でありますし、
産業の基盤も脆弱でありますし、又年々百二三十万人の
人口が殖えて、いわゆる追加
輸入をしなければならないというような重圧も
考えなければなりませんので、現状のままを以ていたしますれば今後一層
輸出を
増加し、
輸入を抑制せんとしてもおのずから限界があるものと
考えないわけには参りません。更に最近の特需の収入も遺憾ながら漸減的傾向にありますことを考慮いたしますと、
我が国の
国際収支の均衡の回復ということはなかなか困難であると
考えざるを得ないと思うのであります。併しながらかくのごとき状態におきましてそのむずかしさの中を何とかして切抜けて参りたいと
考えるものでありまして、第一に今後の
政策の
目標は、できるだけ速かに正常
貿易による
国際収支の均衡を回復したいというふうに
考えるものでありまして、その点から先ほど来御審議があつたと思いますが、基準
年度、
目標年度というものを設定いたしまして、
輸出計画を画期的に具体的なものにして伸ばして参りたいというようなことを
考えるのもその
一つでございます。併しその
輸出を伸ばすにしても、又二面におきまして
輸入の抑制を必要であると
考えるにつきましても、その実現を容易ならしめるためには物価をもう少し国際的な水準に引寄せたい、この点については先月の当
委員会におきましても私の気持を申上げたわけでございますが、この点につきまして
あとで申しますように、今後一層の努力を図りたいと思うのであります。先ず話が元へ戻りますが、
輸出増大のためには今も触れましたように、
輸出目標制というものを採用いたしたい。それから
輸出産業の優遇、商社の統合
強化、経済効果の
推進といつたようないろいろの
対策がすでに講ぜられ、又
考えられておりますが、これらをそれぞれ総合的に
推進して参りたいと
考えます。
それから第二に
輸入の抑制でございますが、一応の
考え方といたしまして、
昭和三十
年度以後
輸入の規模というものは大体において
昭和二十九
年度並みにしたい、本
年度並みにしたいということを
考えております。大体二十億ドルベースということになろうと思うのでありますが、御承知の通り、
輸入は
食糧を初めとし、原材料その他の材料関係が殆んど全部でございますから、なかなかこれ以上切ることは困難でもありますし、又
国内のいろいろの
輸出計画等と照合して
考えます場合に、逆にこの
程度は
輸入を維持しなければならないという
考え方をとらざるを得ないと思います。併しながら二面におきまして、
食糧については勿論でありますが、
合成繊維等の
自給度を向上するということに力を入れて参りたい。又貯蓄奨励といつたようなものと相並行いたしまして、消費抑制の
措置をとりたいというふうにも
考えるわけであります。それから先ほば申しました通り、
輸出産業等に関連いたしまして、一層投資の
重点化、効率化を図
つて行かなければならない。それから基礎
産業等には外資の効率的な導入というものも図りたいというふうにも
考えております。物価につきましては総合的な物価に対する
考え方を確立いたしたい。低物価の維持、
価格の安定を図りまするためには、総合的なものの
考え方も必要でございましようし、具体的には公共料金等の問題につきましても能う限りの智恵を絞
つてこれの上ることを抑制いたさなければならないと
考えております。
次に第二の
目標といたしましては、差当り正常
貿易による
国際収支の均衡ということを申しましても、これはここ一両年の間は遺憾ながら不可能と言わざるを得ないのでありまして、過渡的にはいわゆる特需の
計画的な確保、減少の防止ということが確保されなければならないと
考えます。
それから第三の
目標は、
我が国の
産業の基礎を
強化することであると思います。
産業の基礎の
強化については、これ又いろいろの打つべき手があると思いますけれ
ども、一層再評価を
促進するということも必要であり、又
企業の社内留保を増大すること等によりまする資本蓄積の
促進ということが大切な問題であります。それから財政投融資の
重点化、効率化という点については申すまでもないことと思います。
それから第四の総合
対策といたしまして、適切な雇用
対策を講ずることによ
つて社会不安の除去を図らなければならない。このためには特に失業
対策や
中小企業対策に十分の配意をして参りたい。基本的に
考えなければならない点といたしましては、大体以上申しましたような点を
考えておるわけでございます。
そこで具体的な
政策をと
つて参りまする場合のその基調でございますが、経済についての新らしい
政策とい
つても、以上申しましたように事新らしく鬼面人を驚かすようなものは私は
考えられないと思います。ただ言い古されたことや、陳腐なことであ
つても、国民全体が和協力するというような態勢の下にできるだけ実行して
行つて成果を期さなければならない。そのためには、例えば
輸出目標にいたしましても、こういう
政府は
考え方であるから、こういう
地域にこの
程度の
輸出はできるはずであ
つて、そのために努力をしなければならんというような意味の
目標なり或いは手段なりというものをできるだけ
政府としては明確にして行かなければならない責務を感ずるわけであります。それからこれらの
政策を実行して行く上におきまして、
所要の範囲において
相当長い眼で見た
計画性ということが私は必要であると思うのでありまして、例えば
輸出目標制度を採用したいというのも、その
一つの現われでございます。又一面においては、
輸入節約の
目標の
策定をすることも必要であり、又主要
産業別の
生産目標を設定する、それから
産業に対する投融資の
計画ということも必要であると思います。更に又
食糧増産、外航船、防衛
生産といつたようなものについても
計画的な
整備というものが
考えられなければならないと思うのであります。それから特にこういつたようなことをや
つて参りまする場合に、できるだけ早い機会に
経済自立の実を挙げるという観点から一定の期間を限
つていろいろの工夫を講ずることも私は必要かと思うのであります。例えば税法について申しますならば、資本の蓄積を画期的に
増加させるために
相当の
程度の預貯金、保険等について租税の減免
措置をとるとか、或いは
輸出振興のための
輸出所得に対する課税の軽減ということも
考えて行かなければならないと思います。それから先ほど申しましたような
企業の社内留保を
増加する、資本蓄積のために資産再評価を
促進する、貸倒準備金
制度を拡充する、償却に対する特別
措置や、交際費課税の拡張をするとかいうようなことも
考えて行かなければならない問題かと思うのであります。それから
中小企業に関する税にいたしましても、極く一部は十九国会で実現されましたけれ
ども、更に一層税負担の
合理化を図ることが特に
中小企業の育成のために必要かと思います。それから消費抑制と関連して贅沢品等に対する間接税の問題も
考えるべき問題だと思うのであります。こういつたような税法に対する私
どもとしては希望を持ちますと同時に、場合によりましては失業
対策費の不足を補うというような特殊の、どちらかと言えば臨時的な目的のためには或る種の目的税というものの研究な
ども必要ではなかろうかと
考えております。これらにつきましては未だ
政府を通じて全体の
考え方をまとめたというまでには勿論
行つておりませんけれ
ども、経済審議庁というような立場から申しますれば、これらについての
相当の研究を進めて、できるなら実行の過程に移して参りたいというふうに
考えておるわけでございます。
それから
中小企業の更に保護育成のために、
中小企業等協同組合法、それから
中小企業安定法、この両法律の調整というようなことを
考えなければなるまいと思うのであります。これらの点について又同時に
中小企業信用保険
制度についても
相当の改善の余地があるかと思うのでありますが、他面百貨店と小売業者との岡のいろいろの問題について、その調整の
措置も
考えなければなるまいか思うのであります。
只今申しましたように、くどいようでございますが、これらの具体的な個個の施策等につきましては、なお今後
政府部内においても十分検討を要する点が多々ございまするので、
政府全体の決意として申上げる段階には至
つておりませんけれ
ども、大体の
政府の
考え方を中間的にお聞き取り願う意味で、私一個の
考え方が大分あるのでありまするが、御披露申上げたような次第でございます。問題が非常に広汎でございますので御
質問も多いかと思いますが順次御
質問に対しまして
お答えすることにいたしたいと思います。