○
説明員(
石原武夫君) それでは先ず初めに
経済の最近の
状況を御
説明申上げたいと思いますが、便宜お
手許に
資料といたしまして
経審で作
つております
月例経済報告書というのが、これは八月分でございますが、それをお
手許に差上げてございますのでこれに主としてよりまして最近までの実情を御
説明申上げまして、その後に今後の
見通しにつきまして或る
程度お話を申上げたいと思います。便宜上この
資料の順に従いまして御
説明申上げたいと存じまするが、初めに一枚めく
つて頂きました三頁目に
物価の問題が出ておりますので、
物価の問題から順次
お話を申上げたいと思います。
物価につきましては今の、今回の
緊縮政策が行われましてから順次
卸売物価につきましては下げて来ております。
卸売物価は本年七月の第二週で
朝鮮動乱前を一〇〇といたしますと、二月の
ピークから七・六%下
つておりまして、
昭和二十六年の三月以来の最低に落ちて来ておるわけでございます。併し最近の
状況を見ますると、その
物価の
低落状況もやや下げしぶ
つて来ておるような兆候が見えております。これまで最も
下落が甚だしかつたと言われております
繊維等につきまして見ましても、幾分
反騰の気配も窺われますし、又
食糧等につきましては
凶作予想というような
見通しから多少の強気に転じておりまして、七月の第三週につきましては、
卸売物価は
食糧、
繊維を
中心として〇・五%
反騰を見せておるという
状況でございます。現在お開きを願
つております三頁の表にございますが、それで
御覧願いますと、一月から七月の第二週までの分でございます、その一番高かりた本年の
ピークといたしましては二月十三日に一六二・一という
数字が出ております。それが七月十日に一四九・七、第三週には一五〇・五と
ちよつと
反騰いたしておりますが、これも先ほど御
説明申上げましたが、主として
食糧と
繊維が
反騰いたしておるのでございますが、そのうち
食糧だけを除きましてその他のものについて見ますと、やはり〇・二%ぐらい下
つておるという
状況で、七月第二週で
ちよつと
反騰いたしました。主として
原因は
食糧にございます。なおこれは七月の第二週まで
資料として印刷してございますが、極く最近の七月三十一日に終ります第四週目について見ますると一四八・八というところまで下
つております。その前週の七月二十四日は、一四九・九でございまして、今申しました第四週の一四八・八は二月の最高に比較いたしますと約八%の
下落ということに
なつておりまして、今まで多少最近下げしぶ
つておる
状況がございますが、順次
却売物価につきましては下
つておるという
状況でございます。次の頁を
御覧になりますと、第四頁はその
商品別についてどういうふうな構成に
なつているかをここに表として揚げてそれぞれ
下落率等も書いてございます。この
数字につきましては後ほと
御覧願うことにいたしまして一々の
説明は省略させて頂きたいと思います。
それから次に、今のは
卸売物価でございますが、
消費者価格がどう
なつているかと申しますと、これは五月頃から幾分下向きに
なつておりまするが、
卸売物価に比べますと非常にその
動きはにぶく
なつております。即ち先ほどの表でも、二月から六月にかけまして
卸売物価は六或いは七%下
つて来ておりわけでありますが、
消費者物価につきましては樺か〇・一%の
下落程度でございまして、その主たる内容は次の五頁に書いてございますように
主食、非
主食、
被服、
光熱、住居、雑費というようなことで、特に下
つておりますのは
被服と
光熱料の二項目でございます。このうち
光熱料につきましては季節的な
動きがございまして、例えば
木炭等は当然季節的に最近の時期は値下りをするわけであります。
被服は御承知のように
繊維が非常に下
つております。その
影響を受けて下
つておるわけでございますが、全般的にはまだかよりな高い
水準にあるわけでございます。かように
消費者物価は
卸売物価に比較いたしまして下らないという
理由につきましては、どういう
理由があるか、これを考えて見ますると、ここにも書いてございますように二月以来
卸売物価が相当大幅に低落しておりまするが、その主たる
理由が
流通部門の
金詰り等によりまして、
在庫調整に基くものでありまして、末端の
消費需要は減
つていないのではないかという点が弟一点でございます。
それから第二点といたしましては、
卸売物価が下りましても、それが
小売物価まで
影響して参りまするまでには、或る
程度の期間がかかるわけでございまして、その時間的な
ズレが
小売物価に現われていないのではないかと、こういうふうに考えられるのでございます。
第三点につきましては、
消費者物価のうちには
サービス料金が含まれておりまして、これらの
動きは非常に長期の時間的の
ズレを生ずるのでありまして、二月から六月にかけましても、家賃でございますとか、或いは
授業料というようなものは五%
程度上
つているこいう
状況でございまして、これが
消費者物価が下らない一つの
理由ではないかと考えられるのであります。
尤も
消費者物価の
調査につきましては、
消費者物価指数は
正札価格によりまして、或る特定の
消費につきまして、その
価格を順次毎月
調べておりますので、実際には特売でありますとか、そういうようなことで相当
大幅下つているものもありますが、それらの
数字は的確に現われていないような
調査方法がございますので、さような意味で実際の
小売物価はこの
指数よりももう少し下
つているのではないかというふうにも考えられるわけでございます。
それから次にもう一枚おめくり願いまして、六番目には
金融の
関係に移りまするが、第一の
貸出の
増加と、
預金の
減少という問題について御
説明をいたします。
日銀券は六月に百十六億円の
増発と
なつておりまするが、これは前年の同月に比較いたしますると、むしろ殖え方は緩慢でございます。
日銀券の発行高等につきましては、その下の同頁の下の表がございまするが、そこの
各月、一月から六月まで出しておりまするが、その初めの欄で
日銀券の
増減というところを
御覧願いますると、一月以降出ておりまするが、六月に至りまして百十六億円
増発に
なつております。
従つてこれを一月から六月まで半年間集計いたしますと、九百五十六億円の縮少に
なつております。これをその下の欄で二十八年の数を出しておりまするが、これを
御覧願いますると、昨年の六月は
増発は百五十二億で、これに比べますると、六月の
増発は少く
なつております。又半年の集計で
御覧を頂きましても、十八年のうち、一
——六月では六百億の縮少でございますのに対して、二十九
年度は先ほど申しましたように九百五十六億という縮少に
なつているわけでございます。
それから次に、次の頁でございます。
財政資金の
関係でございまするが、これは四月、五月と
異例の最近
撒超に
なつております。これは前
年度の予算の繰越し使用というようなものが現われて参りまして、かような
異例な
撒超に
なつているわけでございますが、六月に至りますと二百九十五億円という、前年の同月を上廻
わる揚超に転じております。これは主として租税の
収入が
法人税を
中心といたしまして
予想外に好調を示したのによりまするほか、又
食管会計の受超や、
別口外国為替貸の
減少等を反映しているものと考えられるわけであります。
それらの細かい内訳につきましては、その下に表といたしまして
数字を出してございまするが、これで
御覧願いますように、二十九年の四月は五百六十八億の
撒超でございまして、五月は五十六億円でございまするが、かようにその右にございます二十八
年度で一番下の総計を
御覧願いますると、四月は二百二十四億円の
撒超、五月はすでに二百八十五億円の
揚超に転じているにかかわらず、本
年度は五月でも
金額は五十六億円でございまするが、なお
撒超というような形態に
なつております。只今申しましたように、六月は前
年度百六十六億円でありました
揚超が、本
年度は二百九十五億円と相当大幅に
揚超に転じているような次第でございます。
次に次の頁八頁目を
御覧願いたいと思いまするが、
全国銀行の
貸出は六月百三十五億円の
増加と
なつております。これは季節的な
関係が主でございまして、ボーナスでありますとか、
産米の
関係とか、
産麦の
代金とか、或いは
納税資金というような季節的な
需要を反映したものと思われまするが、最近の
銀行の
貸出は右に五られるような
銀行の
貸出について見ますると一部には滞貨的な
融資、或いは
繋ぎ融資というようなものもあるのではないかと推測されるような
状況でございます。
それで
運転資金の
貸出は
卸小売に対しまして
減少いたしまして、むしろ
製造業のぼうに
増加をいたしておる。これは
流通部門の
買控えに伴います
生産者在庫の増大を反映したものと考えられるのであります。後ほど御
説明申しますように
在庫は非常に累月殖えておりますので、その辺の
関係も反映をいたしておるものと考えられるわけであります。
それから一
——五月の間におきます
銀行貸出増加のうち約三分の一は
地方公共団体に対するものでございまして、これには
赤字の
繁ぎ融資という性格が多分にあるように見受けられます。これは最近非常に問題に
なつております
地方財政の窮乏というような問題とも
関連をいたしておるもの、従いまして非常に相当の部分が
地方公共団体に
銀行から金が出ておるという
状況でございます。
それから第三番目に
輸入の
金融引締の
影響が本格化するに伴いまして
企業の
輸入関係借入資金の返済が殖えて六月には
輸入決済、
手形貸が二百十三億円、
別口外為貸では八十四億円
減少をいたしておりますので、かような
減少に伴いまして或る
程度のこれに見合うような
融資が行われておるというふうにも考えられるわけでございます。併しこれを通観いたしまして六月の
貸出増加も前年同月に比べますれば三割にも達しない
状況でございまして、
銀行の
融資抑制態度の基準というものは変
つておらないように見受けられます。
従つて企業といたしましての金繰りは逼迫をいたしまして
預金の引出しを求める
傾向が強く
なつております。その結果
銀行の
預金は六月には三百二十五億という大幅な
減少を示しております。
預金の
減少は主に
法人の営業性的な
預金が
減少をいたしておりまして、個人の
貯蓄性のほうの
預金はむしろ好調に推移をしておると思われるのでございます。このように
市中銀行の
貸出増加と
預金減少からいたしまして
金融市場は非常に繁忙化しておりまして、
日銀信用は六月に四百五億円を
増加いたしまして、
日銀の
貸出残高は月末で三千九百九十五億円というふうになりまして、約四千億の台に迫
つております。八月四日におきましてもほぼこの
程度の
数字でございます。八月四日は三千四百九十三億円という
程度でほぼ横ばいの
状況でございます。その以下に
全国銀行の
貸出と
預金の
増減の
数字を
各月に一つ示してございまするが、
貸出につきましては六月、第一の欄にございますように百三十六億円ほぼ殖えております。三行目の
預金におきましては三百六十二億円の
減少というような
数字に
なつておるわけでございます。
それから次に、次の頁を
御覧願いまして、十頁員にございまするが、
生産の
関係でございます。五月の
鉱工業生産はここに一六七・三と書いてございまするが、これは
速報の
数字でございますので灘だ恐縮でございますが、修正をいたしまして一六四・一に正確な
数字に
なつております。一六四・一でございますが、
前月よりも約四%弱の
減少を示しております。いろいろこの月は休日等の
関係を考慮いたしますと、実勢はほぼ四月と同じようなものではないかと考えられまするが、前年同月との比較と申しますか、その増が率につきましては約一一%引続き
減少の
傾向にございます。
他方生産者在庫は
流通部門の
買控えからいたしまして顕著な増勢を辿
つておりまして、五月の
製造工業の
在庫指数は前年同月よりも四割も多く
なつているといと
状況でございます。只今御
説明を申上げました
指数の表が次の十一頁目にございまするが、これの欄の下のほうで二十九年の一月一五六・八というこの
数字を横に
御覧願いますと、三月が一七二・四というふうに一番高く
なつております。その後四月が一六八、それから五月が先ほど申しましたように、一六四・一というふうに下
つて参りまして、六月はこれはまだ
速報でございますが、
速報によりますると、一六一・六という
数字に
なつております。この表に
ちよつと書いてございませんが、最近六月の
速報の
数字は一六一・六でございます。かように
各月少しずつ下
つて参つておるわけでございます。これを対前年の同月の比について見ましても一月につきましては、この表の最後の欄にございますが、二十九年の一月につきましては二割五分くらいの
増加に
なつておつたものが一割くらいのところまで下
つて来ておるという
状況で、
生産は漸次
減少の
傾向を辿
つておるというふうに申上げることができるかと存じます。
これに反しまして
生産者在庫の
指数は下のほうに表として掲げてございますが、これは
製造工業だけについて掲げてございますが、これを
ちよつと
御覧願いますると、この表の一番下の欄でございますが、そこに二十九年一月から順に五月までの
数字でございますが、これで
御覧願いますと、一月は一二九、二月は一三四、三月一四二、四月一五三、五月は一六五、かように二〇、三〇、四〇、五〇、六〇というふうに
在庫数は毎月相当大幅に
増加の
傾向を辿
つておるのでございます。かような
在庫の
増加の圧迫からいたしまして漸く
操短の機運が高ま
つて来たようにも見受けられます。
石炭でございますとか、
合成染料、
ゴム等の部内におきましては五月からすでに
操短の実績が現われておりまするし、又次の頁に書いてございますように、十二頁を
御覧願いますと、鉄鋼とか、一部の
機械、或いは
スフ等につきましても六月から
生産の
縮小を始めておるような
状況でございます。併し六月までにおきましてはまだ綿でございますとか、人絹でございますとか、
輸出或いはその他の
関連部門はむしろ好調でございます。又セメントを初めといたしまして
官公需と
関連の深い
部門なども概して
生産は順調に進んでおります。結局一般的な
国内需要に
関連した
部門が今のところは最も
影響を受けておるように思います。尤もこのうち、
綿等につきましては、そろそろ近く減産の
傾向に行くように見えますので、今後やはり
生産全体としては
縮小を続けるものではないかというふうに
予想をされるわけでございます。
次にかような
金融引締の
影響を受けました
部門につきまして御
説明をいたしますが、その第一は
倒産と
失業の問題でございますが、
不渡手形につきましては、五月の一日
当りは約千八百枚でございまして、これを
ピークにいたしまして減
つて参りまして、七月一日から十七日までの間の
平均では千四百四十八枚ということで減
つて参りまして、
繊維商社の
倒産も幾分小康を得ておるようでございます。これは
流通部門を
中心といたしました
弱小企業の
整理が或る
程度一巡化したものではないかというふうに思われますし、
他方生産部門を含めました
労働省調べの
事業所の
整理の数から申しますると、これは一段と多く
なつて来ております。十二頁の下に
東京手形交換所の一日
当りの
不渡手形の
数字を掲げてございます。これで
御覧願いますと、一月から六月まで、二番目の欄にその枚数が出ておりますが、四月が千五百枚、三月、四月というところは千五百枚台でありますが、五月が千八百枚、六月が千四百枚、七月が千四百枚ということで先ほど申上げましたように、多少
数字は減
つておるような
状況でございます。
次に十三頁にございます
繊維商社の
倒産数につきましては三月が一〇五という
数字でございます。多少の高低はございますが、六月が八四、五月が七六ということで
ピークに比較いたしますと多少減
つておるような
状況でございます。
次に
整理事業所数につきましては、二十九年はここにありますように、四月から非常に殖えておりまして、三月が四三三であ
つたのが約倍の八九七、五月が七七一、
事業所数の
整理のほうは相当大きく四月以降
増加をしておるような
状況でございます。
かように
緊縮政策が
生産段階のほうまで滲透をして参りまして、
操短等の気運が強まるにつれまして、
雇用、
賃金の面につきましてもこの
影響が現われ始めております。
先ず
雇用の面につきまして申しますと、六月には
常用雇用が多少
減少いたしておりますし、又一方
完全失業の数も
増加をしております。いずれも
例年の五月というのは
割合に
雇用も殖える時期でございます、さような
例年の例から見ますと、むしろ五月の
数字は
異例の
減少が現われてお
るのではないかというように考えられます。
失業保険の
離職票の
受付件数も四月、五月と引続き高い
水準にございます。又
労働市場では
求人数が著減しておりまして、殊に
一般労働者についても
求職者数の三分の一くらいに
なつておるというような
状況に
なつております。この
求人、
求職の
関係につきましては約四割、五割という
数字が
割合正常かと申しますか、
割合ノーマルな
状況というふうに伺
つておりますが、それが約三分の一くらいに減
つておるという
状況でございます。
常用雇用の
数字につきましてはそれ以下の表にございますが、二十九
年度につきまして四月が一〇二・四であ
つたのが一〇一・八というふうに多少減
つておるわけであります。先ほど申しましたように五月は季節的には
雇用数から見れば殖える時期にかかわらずむしろ
減少しておるという点が注目すべき点かと思います。この下のほうの欄は
完全失業者の数でありますが、四月が五十一万でありましたのが五月が五十八万というように多少
増加しております。
次の表の十五頁には
失業保険の
動きが書いてございますが、その三行目に
保険金の
受給者数を掲げてございますが、これは三月頃から大した
動きは示してございません。それからその下のほうの表が
公共職業安定所の
求人求職の
状況とございますが、その一番上の欄が二十九
年度でございますが、
求人求職は、五月について
求職が百十一万に対して
求人のほうは三十三万二千ということで、
比率で申しますと三分の一
程度に
なつておるわけであります。これは先ほども御
説明しました
通り相当注目すべき事柄であろうと存じます。
それから次の十六頁に
賃金の不払の
数字を掲げております、これも急速に
賃金の不払が殖えておりまして、特に
石炭でございますとか、
機械の一部等においてそれが特に現われているわけでございます。その下に表がございまするが、
各月に分けまして、一番上の欄が
前月から未解決で当月に持越した
金額でございます。これを五月で申しますと九億二千四百万という
数字になりますが、その次の二行目が当月に新たに
増加した不払の
金額でございまして、これを五月で
御覧願いますと、十億二千九百万、これを横に
御覧願いますと、一月頃は三億であります。それが三月に五億台になりました。四月に七億、五月に十億という
数字に累月に殖えて来ている
状況でございます。その次の三段目は、これは不払
金額の合計でございますが、従いまして五月におきましては、繰越の九億と、新規の十億を入れまして、十九億というような
数字に
なつております。この
賃金の不払の実際の
数字は、これはこの
調べは
労働省でお
調べを願
つているのですが、正確にはもとよりわかりませんのでございますが、ただこの
調査をしております対象につきましては一定をしておりますので、少くともこの
増加傾向というものは大体真実に近いものではないかというふうに考えられるわけであります。絶対額につきましては、
全国に
亘つて不払
賃金の額を正確につかむということはできませんので、絶対額についてはこれ以上のものがあるのではないかと思いますが、
傾向としては大体これの表から
増加傾向を察して、余り誤りがないのではないかというふうに考えられるわけでございます。
それから次に五番目は
消費水準の問題でございますが、これはまだ
現状を持続いたしております。五月の
都市の
消費水準は、これは
東京都でございますが、
昭和九—十一年を一〇〇といたしまして、九四・八ということで、前年と書いてありますが、
前月より約四%くらい低下をいたしております。前年の同月に対する
増加率は一四・一%というふうに、非常にまだ高い
水準を示しております。
尤も以上は
東京都についての
調べでございますが、
全国都市につきましてはかなり様子が変
つておりまして、前年同月に対する
消費水準の
増加率は一—四月で三乃四%、五月は僅かに〇・三ということで、
全国都市につきましては非常に下
つて参つております。なお
東京都の
勤労者の
黒字率、これは実
収入に対する
黒字の
割合でございますが、本年の一—五月
平均で三・五%という数学が出ておりまするが、これを前年同期の一・三%に比べますと相当多く
なつておりまして、
貯蓄性向が高ま
つて来ているということはこの面からも窺えるものかと存じます。
次の表は
東京都の
勤労者の
消費水準を掲げたものでございまするが、一の表の下から二番目のところは、今年の二十九年の一月から五月までの
数字でございますが、これで
御覧願いましても、三月が九五・一、これが五月は九四・八と、多少
下り気味に
なつております。その一番下の欄を
御覧願いますと、これは前年同月に対する
比率でございますが、先ほど申上げました
通りに、前年同月に対しては一制四分上廻
つているというところでまだ維持されているというような
状況に
なつております。
それからその次の六番目は、
外国為替収支の
状況でございますが、これは漸次好転をして来ている
状況にございます。
外国為替収支の
赤字は漸減の
傾向を辿
つておりまして、六月は七カ月ぶりで約一千百万ドルの
黒字を記録いたしました。これは
輸出が比較的好調を続けております半面、
輸入がほぼ前年並みの
水準まで下
つて来たことによるものでございますが、六月の
黒字で直ちに
国際収支の前途を楽観するのはまだ如何かと存じますが、次の十八頁に書いてございますように、六月におき映しては、
MSA資金を引当といたしました小麦の
買付代金は、合計いたしまして、一千六百万ドルと四百万ドル、五月、六月とで二千万ドル、米国から払込まれまして、これが
貿易外の
収入に立
つておりますので、さような一時的な
原因もございますので、既往の
数字から今後必ずしも楽観する、
黒字になるということにはならんかと思いまするが、一般的に申しますると、すでに前年同月に比べまして、二割五分から三制近くの大体
増加を示しておりますので、一般的には
外貨収支尻は改善をされて来ているというふうに考えられるわけでございます。
以上は概括的な
数字につきましての御
説明でございますが、これを概括して極く簡単に申しますると、この今の表の第一頁目に書いてございますようなことが言えるかと思います。
第一番目は、
緊縮政策の
影響は、
流通部門を
中心とする
在庫の調整から、先ず
卸売物価の顕著な低落を招きまして、二月以来七%、或は極く最近に至りましては八%
程度まで下
つて参りました。又
不渡手形の発生や商社の
倒産も
増加されて参りましたが、七月には
物価も漸く下げしぶ
つて参りまして、又
弱小企業の整備も一段落の
傾向にあるのではないかというふうに観察されるわけであります。
二番目といたしまして、併しながら
生産部門に対する
影響は漸次現われて参りまして、これは
物価の
下落から採算が苦しく
なつた者が多いようでございまして、又
流通部門の
買控えから、
生産者の
在庫が著増して、この面から圧迫を受けるように
なつたものと考えられます。その結果
在庫に対する資金の
需要が強まると共に、
操短の気運も現在高まりつつあるように見受けられます。
三番目といたしましては、
日銀券は六月に百十六億円の
増発とな
つたのでございます。これは主として
市中銀行の
貸出増加と
預金減少に伴う
日銀信用の増大を反映したものでございますが、
貸出増加の
原因には、季節的な資金
需要といたしまして当然殖えるもののほかに、或る
程度の滞貨
融資や
繋ぎ融資があ
つたのではないかというふうに考えられるわけでございます。ただ
市中銀行といたしましては、
日銀の
金融政策、特に三次高率の額が漸次殖えて参
つておりますので、容易にこれが
貸出に応ずるというような体制にはないように考えられます。
四番目は、
鉱工業生産につきましては、五月までのところは目立つた
減少はしておりませんが、一部にはもうすでに
操短の実績も現われておりまして、今後更に鉄鋼、その他の
部門については、
生産縮小の体制に移
つておるという
状況にございます。
五番目といたしまして、
操短の気運が高まるにつれまして、人員
整理も行われまして、五月の
雇用指数は
例年と違つた
動きを示し、又
賃金の不払
状況も更に深刻に
なつておるということが言えると思います。
六番目といたしまして、かような
雇用、
賃金の
動きは、
貯蓄性向の
増加傾向とも相待
つて、
消費需要に或る
程度の変化を与えるものとも思われますが、これは少くとも五月までにおきましては、
消費水準は依然として高い
水準を維持しておるように思われます。
それから第七掛目に、外国為替の収支につきましては、先ほど申しましたように、六月に初めて
黒字になるということでございますが、その
原因には、MSAの小麦
代金というような一時的の
収入もありまするので、必ずしもまだ楽観する
程度ではないのではないか。
以上は極く概括的な
経済状況の最近までの御
説明を申上げたのでございます。
以下簡単に今後の
見通しという
お話でございますが、それを申上げたいと存じます。実は今後の
見通しにつきましては、本
年度当初、本
年度の
見通しということを或いは御
説明申上げたかと思いますが、まだその後数カ月しかた
つておりませんので、本
年度の
見通しの改訂を正確にいたす段階にはまだ来ておりませんが、今日申上げますのは極く……、現在どの
程度の
見通しであるかということで、極く大ざつぱにと申しまするか、非常に精密な計算をした上で申上げるところまでに至
つておりませんので、さような意味での
見通しが非常に正しいというふうに、自信を以て申上げるわけには参りませんが、一応の
見通しを申上げさせて頂きたいと思います。
先ず第一に
生産でございまするが、
生産につきましては別に一枚小さな紙が
資料としてお
手許にございますが、これは二十六、七、八
年度の実績を書いたものでございますが、
鉱工業生産につきましてはこの
資料にもございますように、二十八
年度の実績は九年—十一年を基準といたしまして一六一・四ということに
なつておりますが、これがその後の
動きにつきましては、先ほどの御
説明のときに申上げましたように、この
指数が六月に一六一・幾つという
数字を先ほど申上げましたが、丁度現在が昨
年度の
平均指数ぐらいのところに来ておるわけであります、それで今後どうなるかという点につきましては、正確になかなかまだ申上げかねますが、一応の推定といたしましては多少上廻
つて一六三ぐらいに落ちつくのではないかというふうに一応現在考えております。これはもう少しこの上半期ぐらいの
動きを見ますと、或いはまだ多少減るということが考えられるかと思いますが、まだ今のところでは、今までのところ相当高い
数字にございますので、年間
平均をいたしましても去年の実績を多少上廻るぐらいのところに落ちつくのではないかというのが今の
現状におきます
見通しでございます。
その次は
輸出でございまするが、
輸出につきましては御承知のようにここに書いてございますように、二十八
年度の実績は十二億四千万ドルということでございます。それで今
年度の
見通しにつきましてはこれから下期の外貨予算の策定にかかりますので、その際に正確に予測を立てて予算を作るわけでございますので、まだその作業が済んでおりませんので的確なことは申上げかねますが、一応現在我々の
見通しから申しますと、これも十三億七千万ドルぐらいまで伸びるのではないかというふうに一応考えております。その
数字は今申しましたように、下期の外貨予算を検討する際に多少変
つて来るかと思います。現在の
見通しから申しますと、昨年の十二億四千万ドルに対しまして十三億七千万ドルぐらいのところまで参るのではない、かように考んでおります。
輸入につきましては昨
年度の実績がこの表にございますように、二十二億五百万ドルということに
なつておりまするが、今
年度といたしましては一応二十億ドルぐらいのところを当初から予定しておりまするし、大体その枠に本
年度といたしましても収めるつもりじございますので、大体二十億ドル前後というふうに現在のところ考えておるわけでございます。
それからその次にございます特需につきましては、これは別にお
手許にございます
資料にもございますように、二十七
年度も八億、二十八
年度が七億六千百万ドルということでございまするが、御承知のように最近までの実績におきまして特需は昨年に比べまして相当減
つておるわけでございまして、只今までのところでございますると、
ちよつと正確に今
数字を持
つておりませんので、今までのベースでございますると、五億数千万ドルぐらいのベースではないかと存じまするが、我々といたしましては五億数千万ドル乃至六億ぐらいのところは一応現在期待しておるわけでございます。併しこれは御承知のようにいろいろ対外的な
関係できまりますので、正確なことは申上げかねますが、現在のペースから申しますると五億五、六千万ドルぐらい、まあ一応年間といたしましては六億ドルぐらいまで期待できるのではないかと思いますが、これはなお今後十分もう少し外貨予算等の際に検討をすることになろうと思います。さようなわけでこれに
貿易外等を入れました本
年度の収支尻は約一億ドルぐらいの、前後の
赤字になるのではないか、かように目下のところ考えております。これがまだポンド・ユーザンス等の
関係で為替尻といたしましては多少それが減るということにもなろうかと思いまするが、大体一億ドル前後ぐらいの
赤字になるのではないかというのが
現状の
予想でございます。
それからその次に
物価につきましては、これはなかなか予測が非常に困難でございまして、先ほど申しましたように
卸売物価につきましては極く最近までに八%すでに下
つて来ておるのでございます。今後この
傾向がどういうふうになりますかは非常に予測がむずかしいのであります。実は多分当初作りましたときには今までの時期にこれほど下るとは
予想していなか
つたの下はないかと思いますが、現在までのところ八%下
つておりますので、相当そうした
指数から申しますと、
卸売物価につきましては相当大幅に下
つておると思いまするが、今後の
動きにつき申しては非常に問題があろうと思いますが、一応現在までのところ我々の
経審の事務当局で一応考えている点だけ申上げまするので、これは又いろいろ御批判もあろうかと思いますが、それで申上げますと、
生産財の
卸売物価につきましてはこの二十九
年度平均といたしまして、二十八
年度を一〇〇といたしますると、約七%ぐらい下るのでけないか。これは二十八
年度一カ年の
平均と二十九
年度一カ年の
平均の比較でございますが、約七%前後ぐらいまで
生産財の
卸売物価は下るのではないかというふうに考えておる次第でございます。従いまして本年の三月と明年の三月の時点の差で比較いたしますると、これは一割を多少越すぐらいまで下るのではないかというふうに、一割一分とか一割二分とかいうような、一割を
ちよつと越すぐらいまでのところにまで時点差の比較では、三月末で比較をいたしまして下るのではないか、かように考えております。
それからその次にCPI、
消費者物価につきましては、これは先ほど御
説明いたしましたように、殆んど現在まで下
つていない
状況でございます、今後多少下る
傾向にはあるかと思いまするが、これも
年度の
平均で申しますると、二十八
年度の
平均と二十九
年度の
平均とで比較をいたしますると、殆んど横ばいではないかというふうに
予想をいたしております。これは非常に
小売物価の下る歩調が緩慢でございまして、なかなか
卸売物価が下りましても下らんという点もございまするし、先ほど申しましたように、
消費者物価のところには料金とかその他
卸売物価に直接鯉くものだけではございませんので、さような意味で殆んど横ばいではないか。上ることはないと思いますが、ほぼ横ばいぐらいのところに落ちつくのではないかというふうに考えております。ただ先ほど申しましたように応点差、本年の三月と明年の三月で比較をいたしますると、これも非常にむずかしいのでございますが、これは五%前後は或いは下るのではないか、五、六%ぐらいというところまでは、五%乃至六%ぐらいのところは一応下り得るのではないかというふうに考えております。
それからもう一つ問題になりますのは、
雇用と申しますか、
失業の
関係でございますが、これは又非常にむずかしい問題でございまして、実は
年度当初の予測ということを、いつか御
説明を申上げたかと思いまするが、
雇用のほうは先ほど五月で申しましたように、多少五月は非常に憂いを見せておりますが、併し四月あたりは
年度当初
予想いたしましたよりも非常に
雇用は高い
水準にございますので、
従つて年度出初考えておつたほど
雇用は減らないだろうと今までの実績から考えますると思われますが、これも
ちよつと正確にどのぐらいの、何事万の
雇用になるかということは
ちよつとはつきり申上げかねるのでございます。
なお
失業につきましては先ほど申しましたように、
完全失業者は殖えて参
つておりまするが、これもいわゆる離職者が出ましても直ちに
失業にならずに、新たに営業を始めるとか帰農するとかいうような形態が行われておりますので、はつきり
失業者が幾ら出て来るかという
数字はこれは非常に困難である。ただ今の
現状の実績を申上げますると、更に今後殖えて参ると思いますが、これが何十万殖えるかということになりますると、
ちよつと今までのところ細かい計算もいたしておりませんが、はつきりしたところは申上げかねるような
状況でございます。
以上概略
現状と簡単な将来の
見通しを御
説明申上げました。