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説明員(宮前憲三君) それでは大阪
地方におき
まする概況を便宜私から申上げたいと思い
ます。
先ほど来
お話がありましたように、
調査の時間が極めて限られておりまして、その点の制約から十分な
調査もできず、なお今後若干調べて見たい問題もござい
ますが、取りあえず
只今まで調べましたところで御
報告申上げたいと思い
ます。七月の三十日でございましたが、午前中各官衙の長に集ま
つて頂きまして、午後から
商工会議所で
業者の
かたがたからいろいろ
お話を伺
つたわけであり
ます。丁度当日
日本患者同盟でごげい
ますか、あれの座込みに遭遇いたしまして、急遽会場を変更いたしまして国際見本市会館のほうへ参りましたものですから、午前中の
会議は若干時間がずれまして、大体主な官衛は御
出席下さいまして大阪の
状況につきましていろいろ
お話を伺
つたわけであり
ます。で、大阪
地方の
状況は皆さんも大体御承知の
通りだと思い
ますが、私
どもの気の付きました点といたしましては、まあ
デフレの
影響というものがここ一、二カ月の間に急に深くな
つて来てはつきりと現われて来た。こういうことを申しており
ます。数字を挙げるのも甚だ恐縮でござい
ますので簡単にいたし
ますが、
金融引締の効果とい
つたふうなもの、即ち商取引の減退というものは割引
手形の減少とか、或いは
手形交換が不活溌にな
つておるとか、
不渡手形が非常に殖えておるというふうなところに現われており
ます。一方先ほど山村
審議官からの御
説明のありました
通り、
生産のほうは或る
程度上
つており
ます。そうして成る
程度上
つており
ますが、最近ではやや下
つたのではないかいうふうに考えられており
ます。在庫がそれに伴
つてだんだん殖えまして五月が戦後の最高に達しておる。一方
事業の休廃止の
関係は一月四百くらいであ
つたものが六月には千件にもな
つておる。
離職者の数も一月が三千三百くらいでありましたのが六月が七千九百くらいにな
つておるというふうにだんだんと深刻化しておるようでござい
ます。併しその傾向の中にもいろいろでこぼこがござい
ますが、
繊維、商社並びに中小企業というものが一番
デフレの
影響をひどく受けておるようでござい
ます。特に注目すべき点は、これはまあ
デフレの
影響だけに限らないかも知れませんが、尼ケ崎製鋼とか、中山太陽堂とか、或いは五綿八社の
一つに数えられており
ます岩田とか、丸栄とかい
つたような企業、これはまあ比較的堅実だと思われてお
つたのであり
ますが、こういうものが整理に入
つたということで非常に商取引における不安というものが増大しておるんじやないかというふうに見られておるようでござい
ます。この心理的の不安の問題につきましていろいろ
お話を
伺つたのでござい
ますが、いろいろ新聞に出
ます、それがまあ大阪のことでござい
ますから直接ぴんぴんと響くわけであり
ます。例えば一時
デフレの手直し論というふうなものが出て来
ますと、大阪の商人としては何かしらこれはいいことがあるんじやないか、全体の感じといたしまして非常に苦しい、真暗なトンネルの中へ入
つておる、何か出口がないかとみんなで探しておる、そこでまあ
デフレの手直し論というのが出
ますと遥か向うの彼方に何かこう出口がめつか
つたんじやないかというふうな気持を与えるというふうなことを申しておられました。それから又これは非常に具体的な、例に挙げるのもどうかと思い
ます。例えば不安の
状況と申し
ますと、今日は
一つ、中小企業あたりで運動会、レクリエーシヨンをやる
ために店を閉めたということになり
ますと、あそこはいよいよ整理して店を閉めるんじやないか、そういうふうなデマも飛ぶとい
つたふうなことでござい
ます。それからこの聞一万田さんが参られましていろいろ
お話にな
つた点などにつきましてもいろいろと財界
方面に
影響を与えておるようでござい
ますが、例えばその際に
繊維はこれ以上下げさせないのだというふうなことを言われるということが今のトンネル出口論の
一つになりまして、何か少しいい希望が見えて来るんじやないかというふうな感じを抱かせるというふうな具体的な話をしておられました。全般として
デフレ政策というものを進行することについては、これはまあ止むを得ないだろう。で、その結果いろんな
影響が現われて来るのでござい
ますが、
業界がこれについて十分な受入態勢を持
つていなか
つた。それから又金融の量的引締ということで主としてやられたというので、
卸売物価が下るとか、
輸出がよくなるとか、国際収支が若干よくなるというふうな面で好
影響が現われており
ますが、又いろんな副作用も現われておる非常にたくさんの例を挙げておられましたが、先ほど申上げました企業整備だとか、
離職者の数がだんだん殖えておる。それから健全な企業でも倒れた企業に関連いたしましてそこで
倒産の危険が殖えて来る。それからこれは各地に見られる現象であり
ますが、企業というものが、どうしても下請乃至その他の中小企業ヘ
デフレのしわが寄せて来る。そういう点が非常に困
つた点ではなかろうか。
それから又
卸売物価、これの
下落でござい
ますが、これも大体在庫の払出しによ
つて起
つて来ておるのだ。従
つてコストの
引下げというものはむしろ余り進展していない。
操短などをやると却
つてこの
ために
コスト・
アップになるというふうな
部面も若干現われておる。それから
消費購買力というものが隠然としてあるように思われる。従
つて消費者
物価というものが殆んど下
つていない。それから各
方面のアンバランスは、先ほど
今泉審議官も
説明していましたが、
農業とか、鉱工業、商業、各部門で
デフレの
影響が非常にアンバランスに現われておるのではなかろうか。それから又
国際価格に比べて高いものも低いものも、これも一律に
影響を受けておるというふうな点は如何であろうか。それから
輸出面で若干伸びており
ますと申しましても、金詰りから海外に投げておるというふうな点も見られるのではないか。殊に中小企業等について更に言われ
ます点は、
金融機関が非常に選別融資を強化する。従
つて金融のコネクシヨンのないものかだんだん脱落して、日陰の企業と日向の企業というものの差が更にいよいよ甚だしくな
つて来るのではないか。従
つて今後
デフレをこのまま進めるにいたしましても、そうい
つた点を考えながらやりませんと
経済的にも社会的にもいろいろなフリクシヨンが生ずるというので、その辺の点を総合的な見地に立
つて一つ考える必要があるのではなかろうかというふうな考えでございまして、具体内な
意見といたしましては、例えば
金融引締の速度というふうなものもいろいろな
影響を示す指標、つまり
物価指数であり
ますとか、企業の整理の数とか、在庫がどう
なつおるかということをいろいろ考え合せながら必要に応じて緩急をよろしく調整してもらいたいというふうな
意見が出ており
ます。
更に又中小企業の犠牲というものを最小限度にとめる
ために強力な中小企業の
対策の手を打
つてもらいたい。それには具体的な話はなかなかむずかしうございましようが、優良企業を例えばかば
つてやるとか、或いは問屋商社等の
倒産による連鎖
倒産というものを避ける
ために何らかの措置を講ずるとか、或いは必要な
業種に中小企業安定法の発動を行な
つて過剰設備の買上げというふうなことを考えて見たらどうか。或いは止むを得ない
操短等についての資金の融通を考えてもらいたい。或いはこれは官需等につきましてもできる限り中小企業のほうへ発注してもらいたい。
それから課税、税金の問題でござい
ますね。これらにつきましても特に中小企業には実情に即して考えて頂けないか、こういう
意見でござい
ます。
それから
物価の問題でござい
ますが、これにつきましては
物価政策というものを検討いたしまして
国際物価に比較して割高であるものについては特に
コストの
引下げについて積極的な
合理化をやらなければならないが、併し綿、
繊維関係等で国際並みのものにつきましてはこの際何らか
価格の安定の方途を講じてもら
つて、先行きの不安とか、投げとかいうふうなものがないようにしてもらいたい。それからまあ
輸出ダンピングの傾向があるのでござい
ますが、これには指定商社制をとるとか、チエツク・プライスをやるとか
輸出組合を作るとか、そういうふうな措置で何らか対処する
方法を考えてもらいたい。労働問題の悪化という点が非常に心配せられており
ますが、現状におきましては非常な悪化ということはございませんが、先行きのいろいろな問題がございまして、将来大きな問題になる余地がある、この辺からでも
デフレ政策が非常な進行上
影響を受け
ますので、ここで何か
一つ大きな手を打
つて、それを解決する
方法をあらかじめ考えておいてもらいたい。こういうことでございました。それからまあ
輸出の促進につきましていろいろ御
意見も
伺つたのでござい
ますが、その中に、これはまあ全般に関連することでござい
ますが、余りにも
経済のやり方というものが無
計画ではないか。何か
計画経済というと少し言葉が過ぎ
ますが、一種の目標みたいなものを作りまして、それによ
つて何かの目安を作
つて行く必要があるのじやなかろうか。例えば
輸出品の
価格につきましても品種別に
コスト引下げの目標というものを作
つて、それによ
つて合理化の施策というものを考えることとい
つたふうなことができないだろうか。更に雑貨とか農水産物、軽機械、そうい
つたふうな将来性があるというふうに考えられるもの、まあ国内の原料を主として使うもの、これの育成の措置を強化すること、或いは
輸出カルテルの結成、指定商社或いは
輸出の共販
会社制等によりまして
価格の安定を図るというふうな措置を考えてもら
つたらどうかということを言
つておりました。
それから商社の問題に多少関連いたし
ますが、商社の整理統合の問題でござい
ますが、これはまあ一万田さんがこの間来られまして整理統合ということを非常に言われた。まあこれは議論としては非常に結構なのであり
ますが、大阪の商社というものは非常に歴史的な伝統を持
つており、従
つて一律にこれを整理統合すると言
つてもなかなかむずかしい。商社の歴史的な伝統というものを或る
程度考える必要があるのじやないか。戦時中に大建
産業と申しましたか、二村ばかり商社を統合して新らしい
会社を作
つたところが、中の経営は全く別々な計算で行われておるようなことにな
つて、戦争が済めばすぐ分れてしま
つたというような前例もあることだから、両社の育成というようなことも大阪は古い商社なんか多いのですから、その辺のところもよく考えてもらいたい。こういうことであ
つたようでござい
ます。
以上が大体の
意見でござい
ますが、そのほか
懇談会に出ました主な
意見を若干申上げ
ますと、大阪の特徴といたしましては、先ほど申上げましたような点がござい
ますが……。