○
国務大臣(
愛知揆一君) 御
説明いたします前に御挨拶を申上げたいと思います。先般は図らずも
経済審議庁長官の大役を命ぜられまして誠に責任の重大さを痛感いたしております。御
承知のように全く経験も浅い
未熟者でございますので、当
委員会の
先輩各位の御指導と御鞭撻によりまして何とか
一つこの大役を金うさせて頂きたいと思います。何とぞ従来の御厚誼に増しまして、改めて
先輩皆様方の御協力をお願い申上げる次第でございます。
只今委員長からお話がございましたので、先般本
会議で申上げました二十九年度の
経済政策につきまして更に細かくその背景或いはその基礎として考えておりましたようなことを敷衍して御
説明申上げることにいたしたいと思います。二十九年度の
見通しに入ります前に、お手許にお配りしてあると存じますが、たまたま一月末に前月末まで、即ち二十八年の十二月末までのいろいろの
経済関係の
指数等を大体取揃えることができましたので、先般二十八年の
経済動向を振返りまして
新聞等にも
審議庁から御
説明をいたしたわけでございますが、それを更に要領を取りまとめましたものがお手許に届いておると思います。それなどを参酌いたしまして、ざつと先ず二十八年の動向を振返
つて見たいと思うのであります。ここに取上げておりまするように、主な
特色を挙げて見ますると、大体六つほどの
特徴が二十八年の
経済動向として挙げられるかと思います。第一は、
鉱工業生産の
上昇率が二十八年においては大きくあつたことがその第一の
特徴でございます。第二の
特徴といたしましては、
消費水準の
上昇も引続き相当顕者でございます。特に
都市方面におきまする
消費水準の
上昇が大きかつたということがその
特徴と考えられるわけでございます。その三といたしまして、
国際収支の
逆調が立
つて参りましたことが非常に顕著でございます。それから第四の
特徴は、災害や凶作の影響もございまして、
物価水準が
上昇いたしております。その結果と申しますか、総合的に見ましていわゆる二重価格が
輸出面におきまして顕著に
なつております。それからその五といたしまして、
投資活動が非常に旺盛であつたことが指摘されると思うのであります。第六の
特徴といたしまして
財政資金の
撒布超過額が増大いたしましたことと、これと相並びまして
日銀信用の
増加が目立つたことが挙げられることと思うのでございます。その六つの
特徴が
数字的にどういうふうにな
つて参りましたかということは、この表によ
つて御覧を願いたいと思うのでありまして、詳しい
説明は省略させて頂きたいと存じます。
で、こういうような
特徴となりましたことを概観して申上げますと、要するに
生産も
消費も異常な増大を来たしたけれども、それが
輸出の伸張を伴わなかつた。
国際収支の著しい
逆調に
なつて現われたということが昨年の
特徴であると、一口に申しましてさようなことが言えるかと思うのでございます。只今申したことの細かいことは別といたしまして、その概観いたしましたところを簡単に
数字の上でも御
説明申上げて見たいと思うのでございま
先ず企のほうの面からこれを見て参りますると、いわゆる
財政資金の
撒布超過と
日銀信用の膨脹ということのほうから見て頂きたいと思うのでございます。昨年の
国庫金の民間に対しまする
収支の
状況は百七十四億円の
支払超過でございました。これはその前の年の
昭和二十七年の、同様の
支払超過額の三百八億円というものがありましたことに比べますと非常に減少いたしております。
従つて一見いたしますると、二十七年に比べまして二十八年のほうが一見いたしまするとバランスが
改善されたかに見えるのでございますが、これはいささか細かいことに
なつて恐縮でございますが、
外国為替特別会計のほうで
国際収支が
逆調に
なつた
関係で、前年に比べまして八百四十九億円のいわゆる揚超額が増大したためにこのような様相を呈したわけでございまして、若しこの
関係を調整して対民間の
収支を見ますると、逆に二十七年は四百八十一億円でありましたのが千百九十六億円というように
撒布超過額が実に七百十五億円増大しておる。こういうことが言えるのでございまして、この点はいわゆる
通貨の面から見ましてインフレ的の様相が顕著に
なつておつたんだということが指摘されると思うのでございます。一方
日本銀行の信用の増勢のほうを見てみますると、二十八年一カ年間に千七十五億円の膨脹を示しておるのでございます。これは
国際収支の
逆調から参ります
デフレ作用を相殺しておるだけではなくて、
設備融資等が非常に増大したということを意味しているのでございまして、
経済循環の拡大にこの
数字というものが非常に大きな役割を示しておつたということが指摘できると思うのであります。で、こういつたような
状況の結果一年間に
日本銀行券の
発行高は五百三十四億円、五百三十四億円というような
増加を示したという情勢に相成
つておるのでございます。
それからその次に
先ほども
特徴の
一つとして指摘いたした点でございますが、
投資の活動のほうの
状況はどうかと申しますると、そのうちの最も問題になりまする
設備資金の
関係はどうかと申しますると、これはまだ十二月までのはつきりした実績が出ておらんのでございますが、二十久年の一月から十月までの実績を調べて見ますると、二十七年の同時期に比べまして二割五分の
増加に
なつておるのでございます。即ち
投資活動は前年に比べて二五%の
増加ということが
一つの
特徴に
なつております。而もその二五%も
投資活動が殖えたのでありまするが、それがどこから出て来た金かと申しますると、株式とか社債とかいうなものはそのうちの僅か一割なのでありまして、銀行の貸のほうは前年に比べて実に六割近くも
増加しておる。これが
一つの
特徴と
なつておるのであります。然らば、どういうものにその
投資の
増加があつたのかということになりますと、例えば
セメントでございます。又
電気機械というようなものもそのうちの顕著なものでございますが、
セメントで申しますならば一二%の
増加で十八億円の
増加ということに
なつております。それから
電気機械類で申しますと、金額で十九億円、パーセンテージにいたしますると一一四%の
増加というようなふうに非常に顕著なものと言えるのでございます。その他の部門におきましては大体一般の
機械類でありますとか
輸送用の
機械であります。
食糧品、
繊維工業といつたような
方面に対する
投資が非常に殖えておるわけでございます。
それからその次に
先ほども指摘いたした点の
一つでございますが、
国内の
生産水準のほうはどうかと申しますると、
鉱工業の
生産指数のほうは
昭和九年—十一年を例によ
つて一〇〇といたしますると一五〇
程度に
なつております。これは前年に比べますると大体二割の
増加ということに
なつておるのであります。更にこれは二十八年の大体十二月までを考えたわけでございますが、現在のこの一月二月三月、いわゆる二十八年度の第四
四半期は第三
四半期に比べては季節的な
原因等によりまして減るでございましようが、第三
四半期におきましてはこの一五〇というものは非常に殖えておるのでありまして、恐らく正確な
数字はまだ出ないのでありますが一六〇以上に
なつておるのであります。
それからその次の
消費のほうの
関係でございますが、
先ほど申しましたように、大体戦前の
水準を一割以上上廻るに至つたわけでございまして、
かなりな
上昇向を辿
つておりますが、同時にいわゆる
エンゲル係数の
関係は、二十七年に比べて或る
程度よく
なつておるわけでございます。
それから次に今度は
物価の
関係はどう
なつておつたかと申しますと、金属や
燃料等は或る
程度下落いたしました。併しながら災害によりまする
建築材料の騰貴は非常に顕著でございまして、概して申しますると、
木材等の騰貴がありましたために、全体を比べると二十七年よりも
物価が
上昇しておるのでありますが、若しこの
木材の
関係などを除きますれば、大体横這いであつたということが言えるかと思います。更に
農産物水産物のほうの
関係を見ますると、御
承知のように凶作や
海流異変等によりまして
生産が減りまして、その結果主食や
生鮮食料品が高騰いたしました。この点がやはり昨年の
特色であつたと思います。それからいま
一つ物価の動きで昨年中の
特色と見られますことは、一時、
繊維製品に御
承知のように
かなりな思惑による動きが見えたのでありまして、
物価水準といたしましては、そういうようなことから全体として見ますれば或る
程度上昇いたしたのであります。
数字で申しますと、
先ほど申しました
木材等の
建築材料は二九%八というような前年に比べて大体三割上
つております。それから
食糧は一割六分六厘という
程度でございます。
繊維製品については一割二分八厘と、こういうような
内容に
なつております。そうしてこういうような結果から
国際収支の
状況は
先ほど来たびたび申しておりますように、
逆調でございますが、その
内容を申上げますと、
輸出のほうは十一億五千六百万ドルでございまして、数量的には一割ほど
増加いたしておりましたが、
輸出単価の値下りの結果、金額的には一億三千二百万ドル減少いたしておるわけでございます。
それからそれに対しまする
輸入のほうでございますが、
輸入は凶作に基きます
食糧の
緊急輸入、それから思惑を抑止いたしまするために、
繊維原料を追加
輸入いたしましたことは御
承知の
通りでございますが、そういつた
関係で二十一億二百万ドルになりました。前年に比較いたしますると三億八千三百万ドルの
増加でありまして、特に注目すべきことは、数量において約四割の
増加をしておるということ、これは金額の
増加よりも遥かに数量のほうで
増加したことが
特徴として特に注目すべきことではなかろうかと思うのでございます。然らばどうしてこんな
輸入が殖えたので止めろうかというような、この
内容について検討して見ますると、主な品目を数点挙げて見ますると、原毛、
機械、屑鉄、原油、大豆、米、
木材、砂糖といつた、ようなものがいずれも二十七年に比べまして
相当増加いたしておるわけでございます。そのうち更に二、三の例を拾
つて見まするならば、
木材が六八%、羊毛が三四%、原油が四八%、大豆が五三%といつたようなふうに
なつておるのでございます。そういつたような
関係から、結局
外国為替の
収支は一億九千四百万ドルの赤字になりまして、
昭和二十七年におきましては、二億二千三百万ドルが黒字であつたことに比較いたしますると、僅か一年の間に四億一千七百万ドルというような逆転を示したわけでございます。
従つて若し二十七年と二十八年を比べて四億ドル以上も逆転を示したこの事実をはつきり認識いたしますると、この勢いでこのまま参りましたならば、
手持外貨が昨年末は九億七千六百万ドルでありましたけれども、今後の状態というものが極めて悲観すべき状態にあるということが、この点からはつきりすると思うのでございます。
先ほど申しましたように、
生産と
消費は伸びたけれども、そうして又それ自体は好ましいことではありますけれども、
輸出の伸張を伴わないものであつたために、かくのごとき
国際収支の
逆調を来たしたということは、今後の
我が国経済自立を考えて参りまするときに相当の電荷とな
つて参つた。そこでこの際我々といたしましては、たとえ一時的に
消費水準や
生産が
上昇することが停滞しても
国際収支の均衡を回復いたしたい。
消費水準や
生産がずつと下降するということを凌んでまでもということではございませんで、
消費水準や
生産が
上昇することを停滞してもそれはあえて
国際収支改善のほうに
努力を向げるべきだと、こういうような
考え方をかねぐ申しておるような次第でございます。そこでこれから何をして行くかということでございますが、その大綱はすでにお聞き及びの
通りと思いますが、先ず第一に
日本経済の
正常化ということを頭に置きながら、国際的に割高の
物価を何とかして是正する、
国際水準に少しずつでも鞘寄せをいたしまして、
国際収支の
改善、できれば二十九年度中に均衡を回復したいということにあらゆる
政策の焦点を合せて行くべきではなかろうかというのが私どもの
考え方でございます。で、こういつた
考え方から御
承知のようにいわゆる一兆
予算というものを組んだわけでございますが、この点につきましては、更に後ほど申上げて見たいと思いますのは、一兆円
予算と
国民経済との
関係でございますが、その点は
暫らくあとに廻しまして、先ずこの一兆円
予算を編成する
財政支出を圧縮するということが必要でありますると同時に、
過剰投資というようなことにも着目いたしまして、
金融面におきましては引締めを同時に強化する、或いは強化とは申しまするが、同時に重点的な配慮を加えて行かなければならないことは勿論でございますが、結果において
通貨の収縮を何とかして図りたい。
先ほど申しましたように、二十八年一年間のような
通貨の膨脹が招来されることは非常に好ましくないことである、同時に
通貨の収縮を図ることは
国内購買力の抑制ということになり、それを通じて
物価水準の
引下げになる、こういうふうな
考え方を持
つておるわけでございます。併しながら
重要部門に対する
合理化や
近代化、これは
国際収支の
改善にも勿論直接にも役立つことであります、更に端的に言えば、
コストの
引下げということについての必要の資金につきましては、何とかしてその確保を図りまするように一段と工夫する要があると思うのであります。それから又同時に
経済演説の中でも特に指摘さして頂いたつもりでございますが、徒らにこの
物価下落を妨げるようないわゆる
不況カルナルというようなものを安易に認めるようなことがあ
つてはならないのではなかろうか、これは
一つの行政上の指針として守
つて参りたいと考えておるわけでございます。
それから次に
輸出の
振興でございますが、私は特に通商産業省の
方面におきましては、一切の行政上の工夫を
輸出の
振興ということに凝集して参りたいと思うのであります。先に申しました
国内賦質力を何とかして減少させる必要がある、又
物価の
引下げをやりたいということも又申すまでもたくこの
輸出の
振興ということについての基礎的な
考え方であるということに立脚しておるつもりでございまして、この
輸出の
振興なくしては到底これからの
経済の
拡大発展はできなかろうというふうに考えておるわけでございます。で、この
輸出の
振興については大小取りまぜいろいろのことを考え、又
政策として打出して参りつつあるわけでございますが、その詳細のことは省略いたしますが、私は
一つはやはり海外の
市場開拓を目標とする、いわば外交的な
政策の推進ではなかろうかと思うのであります。幸いにしていろいろの御批評があるようでございますが、
日英会談が率直に申しますと、私どもがひそかに予期しておりましたところよりは相当な成績を挙げたと私は確信いたしておるのであります。ただ
日英間におきましてドミニオンを含めて
輸出、
輸入それぞれが二億九百万ポンドというような枠ができたということは、これは従来の
日英間の
関係から見れば非常に好ましいことであると思うのでありまして、併しながら例えば
輸出を見ますると、この二億ポンド以上の
輸出が果してできるかどうかということは、これからの問題であります。外交上の難関の
一つが打開できましたけれども、いよいよそれだけに
国内の
輸出努力というものがこれに伴わなければ、折角の外交が推進されましても実効を挙げることができないところに
一つの大きな問題が当面しておると思うのであります。この
日英会談の問題を初めといたしまして、
対外信用の確保、或いは
通商航海条約の
早期締結とか、ガツトヘの正式の加入とか、
東出用アジア諸国に対する賠償の問題の解決でありますとかいうよな点については申すまでもございませんが、従来にも増して更に推進して参りたいと考えておるわけでございます。細かいことは省略いたしまするが、今後早急に今申しましたような交渉を一方において進めて参りまして、例えばアルゼンチン、ブラジル、トルコといつたようなところとの
貿易協定の改訂や締結の問題がございまするが、時を移さずに適切な交渉と妥結を図
つて参りたいと考えております。
それから
東南アジアとの
経済協力の推進につきましては、いろいろ従来、民間においても或いは
当該国において、或いはその他の国々との間におきましても、いろいろの案があるわけでございまして、問題は、これをどうや
つて実現の緒につかせるかということにあるのではなかろうかと思うのであります。それらの面におきまして一層
努力を傾けて参りたいと思いますが、一方、事務的な
方面におきましても、二十九年度の
予算は実に緊縮された幅の狭いものではございますが、例えば
貿易斡旋所の
機能活用、或いは新設、増設、
又重機械類技術相談室、
海外市場調査機能の
整備拡充でありますとか、或いは
海外見本市への
積極的参加をすることでありますとか、
旅商団を派遣するとかいちような意味合いにおきまして、
予算で申しますると、比率にすれば二十八年度に比べまして七割強の増額を漸く図ることができたわけでございます。
それから
東南アジア関係で、特に御報告を申げておきたいと思いますいま
一つのことは、最近、多年の懸案でございます
プラント輸出というものが
相当増加を見込まれるようた情勢とな
つて参りました。大体只今の見込みでは一億ドル乃至一億二千万ドル
程度の
プラント輸出よく実現の緒につくというよりも、実現できるのではなかろうかというような
見通しにな
つて参つておりますが、更にこれらに
関係する、長期に亙
つて延払いをするというような、
優遇措置をとるというようなことを併せ考えて参りたいと思うのであります。
それから又、
東南アジアの、その現地の
方面におきまする資源の
開発促進のためには、
先ほどもちよつと申しましたが、いろいろの国で
日本の協力を求める、或いは
日本側が積極的に出るにおいては参加できるというような話もぼつくあるのでありますが、これを一段と促進する
措置を考えて参りたいと思います。
それから、このやはり貿易の伸張に関連いたしまして、
貿易商社の問題が
一つございます。
コスト切下げ、
合理的輸出活動を
振興するという面におきましては、
輸出商社の強化ということも当然考えなければならんことでございまして、この面におきましては、幸い第十六国会で
独占禁止法の
改正がありました。法律的にもやや緩和されておりますが、これらの緩和された規定を援用するというようなことも
一つの方法かと思うわけでございます。
又生糸の
輸出については、
アメリカ側でもそんなに先行きを悲観しなくともいいのではないかというような意向もあるようでございますので、生糸は勿論でございますが、その他の
繊維類の
輸出振興に必要な
措置をしたいと考えておるわけであります。
なお又
機械なり、石炭なり、鉄鋼なり、硫安なりにつきましては、緊縮された
予算、
財政投融資の規模内ではございますが、原則的にそれぞれの部門におきまして、或いは
生産コストの
引下げの
計画、或いは増産の何カ年
計画というようなものが、立案されたものがすでにあるわけでございますが、全体の線としては、その既定の
計画というものを尊重して参りたいと思うのであります。それらの点については、
財政投融資計画の総枠が切られたけれども、重点的の配当ということを是非考えて参りたいと思
つておる次第でございます。
なお税の
関係の
法律案が、まだ国会に提出するに至
つておらないものが多いのでありますが、
輸出につきましては、
輸出所得の控除の
特別措置を税法の上にはつきり謳い込むか、或いはその
優遇措置の
程度を更に
改善するというようなことを、是非今回の
税制改正案の上で考えて行きたいと考えております。
それから
経済演説の中で申し上げたのでありますが、特に
設備の
近代化と、
近代化された
設備を完全に操業さすということは、最近の
日本における
繊維工業の現状から見ましても、実に大事なことと思うのでありまして、
繊維工業はその点において非常に進歩をしていると思います。
今西ドイツの
機械工業が世界的に制覇しつつあるのと、その揆を同じうするのではないかと思うのでありますが、そういつた観点からも、私は企業の再評価ということに相当の
重要性を置いて参りたいと思うのでありす。私は実はできれば資産再評価は法律で強制して頂くということのほうが、端的で率直であると
思つたのでありますが、いろいろ各業態の
内容或いはその他の
関係を、更に深刻に検討いたしました、結果、法律による強制ということは如何かと思うようになりましたけれども、少くとも税法上その他、従来再評価を妨げておりましたような原因を除去するということに力を入れて参りたいと、そういう点から税法の
改正をや
つてもらうことにきめて参つたような次第でございます。この点はやはり私は
企業努力にしても、或いは
労働生産性の向上ということにいたしましても、それぞれの
関係の企業の
内容、実態というものが、
合理主義の上にはつきりされなければいけない、又そのはつきりされた実態というものが、
労使両面とも理解をすることによ
つて、根本的に
労使協調と申しますか、
生産意欲の向上ということに、非常に役立つことではなかろうかというような観点から、この点には非常に
重要性と期待とを持
つているような次第でございます。
次には、又
国際収支の均衡と言えば、単に当面の
輸出の促進だけの問題ではないと思うのでありまして、
国内自給度の向上や、資源の開発や、或いは
科学技術の
振興ということが、根本的に
外貨節減の方策になると思いますので、これらの点についても、できるだけの
努力を払いたいと考えているわけでございます。
食糧につきましては、その
増産対策についてどういうことをや
つて参つたかということは、すでに詳しく御
承知のことと思いますが、丁度この
輸入の問題にいたしましても、二億ドルも外米の
輸入をや
つているような現状でございますから、食生活の
合理化、
改善というようなことが、この点からも
一つ是非取上げて頂きたいものである、いわゆる米食偏重の是正というようなことも、この際外貨を節約し、併せて財政負担を軽減し、税の負担を軽減するということから申しましても、非常に必要な
政策ではないかと思うので激りまして、これらの点につきましては、特にこの国民的な納得と理解の上に、できるならば大きな運動が展開されて然るべきものではなかろうかとも考えるような次第でございます。
水産とか畜産とかの
振興等につきましても同様でありますが、これらにつきましても、余り細かくなりますので、又御質疑等にお答えすることにいたしたいと思
つております。
それから
先ほどもちよつと申上げたかと思いまするが、合成繊維については、やはり
国際収支の
関係から、又
国内の自給度の拡充ということから言
つて、特に重点を置いて参りたい
一つの目標にいたしております。で、昨年度末即ち現在におけるところの合成繊維の
設備能力は、日産大体五十一トンでございます。これを
昭和二十九年中
一つ日産七十六トンまで
増加しようやないか、で、そのことができますると、約千五百万ポンドの増産ということになるのでありまして、若しこれが可能であるといたしますれば、原毛に換算して八万五千俵、二千万ドル
程度に相当するわけでございます。こういう観点から合成繊維というものについては特に重点を置いて参りたいと思います。
石炭につきましては、これも余り細かくなりますので、詳細は省略いたしますが、総合的な燃料の対策の
一つの大きな問題として引続き竪坑の開鑿、その他を進めることによ
つてコストを切下げる乞いうことは勿論必要なことでありまするが、同時に石炭の需給を安定するということに
一つ需要者側の御協力も頂き、その線の上に石炭業の合理的な開発ということも続けて参りたいと存じます。
それから石油の増産ということにつきましては、やはり二十九年度の乏しいけれども、新らしい思想を出して参りたいと思います一点でございまして、石油試掘等補助金として一億三千万円を今回の
予算にも計上してございますが、これは我々の考えとしては五年間百万キロリッターの
国内原油の渓掘というものを目標にしてのはしりであるというふうに御理解が願いたいものと思うのであります。
その次の問題は電源開発の問題でございますが、
昭和三十二年でございますか、それまでの五カ年
計画として五百十万キロワットの新規開発
計画がありますことは御
承知の
通りでありまするが、大綱においてこの
計画を何とか
一つ緊縮財政の下においても守り抜きたいと思うのであります。
昭和二十九年度中に約百万キロそのうち完成させる目標の下に
財政資金は全部を合せまして六百億円乃至七百億円を投融資することをにいたしたいと、只今資金
計画を鋭意作
つているような次第でございます。
造船につきましては、やはりこれも五カ年
計画があるわけでございますが、二十九年度中に当初の希望は二十数万トンでございましたが、いろいろの
関係から十七万総トンということに一応いたしております。併しこれは十一万トンは何としても二十九年度に完成いたそうということで、開発銀行のし資金
計画の中でも特に百人十五億円を特計する予定でございます。
鉄鋼、
機械、硫安或いは全体としての
設備の
近代化、
コストの低下を図りまするために全般的にさような問題に対しても開発銀行からの融資としても、少くとも九十五億円
程度は融資をいたしたいと考えているわけでございます。
国際航空事業は予策書で御
承知のように十億円を二十九年度においても一般会計から
投資いたすことに
なつております。
次に
食糧とか、綿とかというようなものにつきましては、どうしてもやはり緊要な原料、材料でございますから、
輸入を締めると申しましても、こういうふうなものについてそうドラステイツクに締めることは
一つには
国内の
物価を考え、又思惑が起ることを考え、又どうしても必要であるという性格のものであることに鑑みまして、必要量の
輸入は確保するということで外に貨
予算の編成もいたしたいと思いますが、奢侈品や高級品その他不急の外貨支払は勿論徹底的に抑制するつもりでございまして、大体以上申述べましたような
政策を政府も、企業界も、一般民間も一体的な協力によ
つて着々その実を挙げて参りますならば、
先ほど申しましたような基本的な
考え方が充足され、現在の憂慮すべき事態は逐次
改善されるようなことになるだろうと信ずるわけでございます。
そこでそういつたような政府の施策が今後よろしきを得ること、それからそれに対して国民的な御協力を得られるであろうこと、この二つを前提にいたしまして二十九年度の
国民経済の率がどうなるであろうかということの極く概略を次に御
説明申上げたいと思うのであります。
先ず最近のこの巷間におきましても一方には期待があり、一方においては危惧の念があるようでございまするので、先ず第一に
物価についての点をやや詳細に御
説明いたしたいと思うのであります。私どもは
昭和二十八年度と二十九年度とを比較いたしまして、年度間を通ずれば
物価が五乃至一〇%下るであろう、又それを期待して総合
政策をやりたいということを申上げたのであります。その根拠の一端を御
説明いたしたいと思うのでありますが、先ずいわゆる
生産財と
消費財に分けて申上げたいと思います。勿論申すまでもございませんが、
生産財にしても
消費財にしても需要供給がその根本において
物価を制するものであることは明らかであるか思うのであります。
そこで先ず
生産財のほうについて申上げますならば、第一に、
先ほど来申しておりまするように
財政投融資というものが二十八年度に比べて非常に減額されております。その額は大体五百八十四億円ぐらいになります。これは前年度に比べてパーセンテージにいたしますと八割二分八度でございますから一割以上の減額になるわけでございます。それからそれと相並びまして民間の、日銀を中心とする
設備資金とでも申しますか、平たく申しましてさような表明を使わして頂きますならば大体の見込として二十八年度が
設備資金の総額が六千二百億円余り投入されておつたのでありますが、二十九年度におきましては五千五百億円ぐらいの
程度に見通されております。そういたしまするとこれがやはり比率にいたしまして八八%ぐらいの
程度に縮減されるわけでございます。
更にいま
一つは、一般会計の
予算の上で、例えば公共事業費でありますとか、災害復旧費でありますとか、
食糧増産対策費でありますとか、こういうふうないわゆる
国内の
投資需要に直接
関係あるものが客観的に申しまして九%減額に
なつております。
従つて以上申しましたことをつつ込みに、総体的に申しますると、
国内の
投資需要が約一割二十九年度においては減少するということが言えるかと思うのであります。それでこれに対しまして、こういうふうな事柄といいますか、要素は要するに
生産財の需要滅に現われて来ると思うのであります。それで、それに対しまする今度は供給のほうはどうかと申しますると、これも
経済演説の中で簡単にその結論だけを申上げたのでございますが、大体
鉱工業生産指数をと
つて申上げますならば、二十八年度は年度を通じて一五二の
生産指数になるであろうと想像されますが、
先ほどもちよつと申上げましたように、そのうちで二十八年の十、十二の三カ月間、いわゆる第三
四半期におきましては、この
水準は非常にもつと高いのであります。併し恐らく一月から三月まででは又低くなる、そうして二十九年度に入りましてから四月から六月頃までは大体二十八年度の第三
四半期と大体同
程度の
生産水準をとるのではなかろうか、即ち一五二よりは遥かに上の
水準になると思います。併しながら
先ほど申しましたような
国内の
投資需要がるということがだんだんにその結果を現わして参りまして、二十九年度の第二
四半期以降におきましては
鉱工業生産の
上昇が停滞する、或いは或る
程度下に下るということで結局年度間全体を通じて見れば二十八年度と同様の一五二
程度に収まるであろうと見ておるのであります。
従つて生産財につきましては、供給のほうは概して言えば変らない。需要のほうは一割或いはそれ以上の減退を生ずるということから申しまして、平均して年度と年度を比べれぱ
生産財については六七%の下落ということになるのであります。これは
生産財の各物資別につきまして相当分析して提出しただけでございます。併しながら例えば本年の三月と二十九年度末である来年の三月、この両年の生月という時点同士を比較して見ますならば、
生産財の価格の値下りというものは一〇%を或いは超えるかも知れません。そこでそれをとりまして、客観的に五一〇%の下落ということを申したわけでございます。
それから次に
消費財の
物価でございますが、これは
生産財の場合と逆でございまして、主として供給の
増加によ
つて消費財の
物価が下る、結論的に言えばさように考えております。即も
消費財は日常生活に最も
関係が深く、又御案内の
通りCPIのウェイトから申せば食べる食品の
関係が非常に比重が多いわけでありますが、その最もCPIの比重に
関係する農産物、或いは水産物等の供給のほうを見ますると、二十九年度の農林水産
生産指数を
見通しますると、戦前に対しまして、大体一一一・一というような
程度に見られるのであります。これは二十八年度におきましては九七・九でございました。
従つて二十八年度と二十九年度だけを比ぺますると、一三・五%だけ農産物の供給が殖えるのであります。又更に二十七年度と比べますると、大体三%くらいの
増加になるのではなかろうか。但しこれは二十九年度においては平年作であるということを前提にいたしております。又水産物等に関しましては天候不順による海流の異変というようなことで魚が不漁であるというようなことは考えないで、大体二十七年度、年間をちよつと上廻る
程度にとれるということが前提であることを申添えておきますが、要するに簡単に申しますと、前年に比べて一三・五%くらいの供給が農産、水産等において期待ができる。勿論CPIの他の部門におきまして住居費でありますとか、光熱費でありますとか、その低下が顕著には予想されない、或いは却
つて多少上るというようなものもあるかも知れませんが、同時にそれを相殺する要素として
国内在庫高が
増加するというようなことを考え合せますと、多少の低下要因はこの
方面からもあるのではなかろうかと考えます。
この
消費物資に対する今度は需要の面はどうであろうかということをその次に考えて見たいと思いますが、これは取りも直さず国民所得がどらなるかということに
関係するわけでございます。現在は私は率直に申しますのですが、二十九年度はどえらい不景気にでもなろうかというような、少しこれは政府側の言い方もまずかつたのかとも思いますが、そういうふうな不安があるようであります。例えば賃金の予想などをいたして見ましても、やはり二十九年度は二十八年度に比べまして三%
程度は上ると思うのであります。これは公務員のベース・アップもございましよう。そのほかのいろいろな要因もございまして、細かいことは省略いたしますが、結論的には三%
程度は上る。それからCPIの下落ということも考えられる。併し同時にこれを相殺する要因としては今回の
予算が例えば軍人遺家族の恩給でありますとか、社会保障費でありますとか、そういういわゆる購買力に向う性質のものもございますから、これを差引きして検討しなければなるまいと思いますが、大体におきまして結論を申しますと、やはり
経済演説の中にも織込みましたように、五兆九千八百億というような大体二十八年度をちよつとだけ上廻るというような
数字がここから出て参ります。これを
先ほどの
消費財の
物価で申しますならば、
消費財のほうは
生産財と逆になりますが、供給は相当殖える。それから需要の分は大体もちくになるんじやなかろうか。更にその土に将来
物価が下るであろうというような気風が出て来る、買控えの傾向が生ずるということになれば、いわゆる貯蓄性向が前よりも高くなりはしないだろうかというふうな
関係になるわけでございまして、
消費財の
物価は大体四%前後くらいがやはり年度間を通じれば下るのではなかろうか、
消費財の傾下りほどは強くはございませんが、先ずく四%或いはその前後の値下りになるのではなかろうか。大体
物価につきまして極く概略申上げますと、さような結果になるわけでございます。
なお
先ほど鉱工業を総括して申しましたが、その中を鉱業と工業、即ちマイニングとインダストリーに分けて考えますと、鉱業のほうは二九の
程度の
生産指数、それからインダストリーのほうは一五六
程度というふうに考えられるわけでございます。
以上大変長くなりましたが、大体
物価についてはその
程度にいたしまして、
輸出と
輸入の今度は姿がどうなろうかということにつきましては
先ほど総体の
数字は申上げたわけでございますが、それを更にドル別、ポンド別にいたしまして予想を作つたものがございますが、余り長くなりますので、省略さして頂きたいと思いますが、要するに
輸出は十三億七千五百ドル、これは非常に達成が困難だという御意見がございます。成るほど前年に比べて御覧になりますと、こんなに
輸出がどうしてできるだろうかという御説が一応出て来ると思います。併し私どもはこの中の一番大きな点は対英
輸出だと考えておるのでありまして、
先ほど申しましたように
日英間の支払協定或いは貿易の規模がきまりました以上は、対英
輸出については今度きまつた枠が前年の実績に比べて六割
輸出を殖やしてよいことになるのであります。それにつきましては英国側も相当いろいろな点で協力してくれると思いますが、やはり
日本側のこれは
努力次第ということになろうかと思いますが、是非ともこの対英
輸出は昨年に比べて六割ぐらい伸張させばければならない、但し
努力目標はこの中に織込んであるわけであります。
一方対ドル
輸出につきましては、最近出ましたランドール報告などを見ましても、或いは又そのほかのアメリカ
経済の前途についていろいろな情勢判断から申しまして、必ずしも対ドル
輸出は前年
通りには伸びまい、若干これは自制して見おるような次第であります。
それから
輸入につきましては
先ほどもちよつと申上げましたが、これは
日本の基礎産業が外国の基礎材に期待しておるものが圧倒的に多いのでありますから、ただ単純に公式論で
輸入をぶつた切ればよいのだというのではいかない。この点は先般参議院の本
会議場におきまして苫米地義三さんが言われたように、私は外貨
予算の編成と運用が非常にこれからむずかしいと思うのであります。で苫米地さんが御指摘になりましたように、外貨
予算の編成は武士の商法であ
つてはならないということを言
つておりましたが、まさにその
通りだと思うのでありまして、対外的にいろいろ外国
関係のものを手際よく入れるという観点からして、或いは
国内約に思惑を抑止したいということ、或いは
物価の急騰を抑止したいというようなことから申しまして、外貨
予算の編成につきましては、できるだけ武士の商法でないような手際のよい編成と運用が必要かと考えておりますが、大体におきまして
輸入の今予想いたしております二十一億四千万ドル
程度というものは、昨年度における
食糧の
緊急輸入ということを別にして考えますならば、昨年度と余り変りはないのでありまして、いわゆるドラスティックな
輸入節減というようなことは、主として高級の贅沢品というものを切るということに重点を向けなければならない、こういうふうに考えておるわけでございます。
大体以上極めて長いお時間を頂きまして恐縮でございましたが、私どもが今日まで考えましたことと申しまするよりは、むしろ先般一月二十七日に
経済演説をさして頂きましたそれまでにおけるところの私どもの研究の結果がこういうふうなものでございまして、それを取りまとめて
一つの何と申しますか、演説の表現にさせて頂いたような次第でございます。