○鶴見祐輔君 そういたしますと、ここに初めの国際平和とか安全保障ということはまあ世界共通の問題で
日本民族の熱願するところでありますから、これは問題は別にないのですが、これを達成するための
アメリカの目的として、
アメリカの安全を維持し、
アメリカの外交政策を促進し、この
アメリカの外交政策を促進しということを含んいるわけですね。その
アメリカの外交政策というの
はつまり世界の平和を維持するというためにするのだという意味にもとれますけれども、併し
アメリカの外交政策を促進することに
日本が同調するということになりますから、そこで
日本民族としてはこれで非常に大きな問題に決断を下すのであると思う。そこで私は
外務大臣にお伺いいたしておきたいことは、この
MSA協定というものが、今
曾祢委員からだんだん
お話のありましたように、これは非常に重大な
日本の世界政策の出発点になりますので、この
協定の背景をなす
アメリカの外交政策というものについての
外務大臣のお見通しを
一つ伺
つておきたいと思うのでありますが、これは抽象的にお伺いするのじやないのであります。
アメリカの外交政策というもの
がたびたび変わ
つておりますけれども、最近は
アメリカが世界の大国とな
つて指導的の位置を持つようにな
つてからよほど変
つて来ておるという感じを私は持
つているのであります。昔のモンロー主義の時代とか或いはウイルソンの唱えておつたごく道義的な外交政策というものと変
つて参りまして、非常に現実的にな
つて来たと思うのであります。つまり英国が世界に非常にたくさんの利害
関係を持
つている結果、非常に現美的な外交政策をと
つている。今
アメリカの立場も全世界の世話をしなきやならんという指導的の地位に立つたために
アメリカの外交政策が非常に現実的にな
つて参りまして、従来のような人道的な或いは抽象的な道義論或いは又法律論を離れまして、自分の国の利害、国民の安全ということを中心に
考えなきやならんという必要に迫られて来ている。そこで
アメリカがこれから行う外交政策はこういうふうにお
考えになるかどうかを伺
つてみたい。従来といたしましては
アメリカの外交政策の根本は、いろいろな美しい言葉で
言つてはおりますけれども、結局勢力の均衡(バランス・オブ・パワー)であつたと思うのです。ヨーロツパでバランス・オブ・パワーが破れるときはカイゼルのときもヒツトラーのときもイギリスを
援助する。東洋においては非常に顕著であ
つて、ロシアの勢力が盛んであ
つてシナが危険であつたときは
日本を
援助してこれに対抗することが
アメリカの太平洋政策の根本であつた。日露
戦争の結果
日本が太平洋において余りに強くな
つて太平洋の日露のバランスが破れそうになるとだんだん
アメリカの政策が変
つて来て
日本を抑える、そして太平洋
戦争に入つた。そして太平洋
戦争まではルーズベルトの親ソ政策でや
つて来た。太平洋
戦争をずつとや
つて来たところが見込が違
つて一番大切なシナ或いは中国がソ連の勢力圏内に落ちた。そこで太平洋のバランスが一ぺん破れたから、もう一ぺん
日本をここで強力にしてバランスをもう一度作り直さなきやならん現実の必要を
アメリカは
考えて来た。それは決して利己的な
考えと
言つて非難すべきじやないので、
アメリカの政策としては自分の国の安全を保持するために止むを得ないことであるとこう思うのであります。そうな
つて参りましたから
戦争直後の
アメリカの進駐政策というものと最近の
アメリカの政策とは非常に変
つて来た。言い換えれば
アメリカの外交政策というものは東洋に関する限り何度も根本的に変
つて来ている。そこで今
アメリカの国内においては本来太平洋問題に熱心な共和党が政権を持
つている。そしてアジアのバランスということを非常に心配をし懸念し、
日本のほうを強化しなければならんという現実の必要を持
つていると思うのであります。そこで
日本を過大評価しているかどうかということは別問題にしまして、それを
アメリカの指導者が非常に強く感じておるということは、一昨年も
アメリカへ参りましていろいろな人に会
つてみて、そしてこれは共和党の指導者にも民主党の指導者にも共通した
考えであると思うのです。そこで私のお伺いしたいのは、この
MSA協定の文字上の問題は別としまして、どうしても
日本が曾
つては日英同盟によ
つて極東におけるバランスを
日本が片棒をかついだように、今度は
MSAからだんだんに発展して行くに違いない
日本と
アメリカとの
関係によ
つてもう一ぺん
日本が極東のバランスの片棒をかつぐ大事な方向に行くんじやないか。そうしますと
外務大臣として非常に大事な問題ですから私のお伺いしておきたいことは、
外務大臣のこれに対するお見通しなんであります。私がこれをお伺いしますことは、
一つの懸念がある。それは
アメリカの対ソ政策を眺めているとルーズベルトが極端に親ソ対策をと
つてロシアを非常に信頼をしてヤルタ
協定まで結んでいるという立場もあり、この頃の、マツカーシーを中心とするああいう極端な反共政策と、この中間にあ
つてアチソンとか或いはこの次の大統領候補者になるといわれるスチーブンソンなどは
アメリカとソ連、或いは言い換えれば資本義国家と共産主義国家は賢明なる外交政策によ
つて話合がつくのだという立場もあると思うのであります。そこで今も共和党政権と
日本の
政府とが
MSA協定を結んでだんだんに親しくな
つて行くという場合には、
アメリカが若し非常に極端な反共政策をとるような場合、例を挙げればダレス国務長官の一月十二日の声明のように例えば朝鮮の問題、インドシナの問題、これで共産国の軍事力が不当な
侵略をする場合には、
アメリカは自分の持
つている原子力の
武器を以て即座にこれを報復的に攻撃するというようなことの演説をしておりますが、そうなりますと、
アメリカ自身もいろいろ
あとから条件をつけておりますけれども、国民が知らないうちに
アメリカは世界
戦争に入
つているかも知れない。そうすると
日本といたしますと、いろいろな
関係はありましてもそういう事件が起
つて来ると、この条約の条文はそのときどきでいろいろ解釈はできますから、やはり
アメリカの介入した世界
戦争に
日本国民が知らないうちに入
つているということも起るかも知れない。こういうまあ極端に言えば心配をいたします。そこで私は具体的にお伺いしたいことは、
アメリカの外交政策の促進というものについて
外務大臣はどうお
考えになるか。又
アメリカにおいて今の共和党の右翼の六人の上院議員をタフトが死んで以来アイゼンハワーが抑えることができなくな
つて今のような中途半ぱな政策をと
つているという場合に、どうや
つて日本国民の安全を守る、主体性を維持するかということが非常に困難にな
つて来ていると思うのであります。日英同盟の場合にはとにかく
日本は東洋で非常に軍事力を持
つておりましたから、
日本なしには東洋のバランスが保てない。今は一兵もなく軍艦も金もなく
なつたのでありますから、ちようちんとつりがねのような恰好でありますから、
日本の主体性というものを保つことが非常にむずかしくなる。そういう心配をいたしますから、
アメリカの外交政策の根本について
外務大臣がどういうお見通しを持
つておいでになるか。若し今申上げたような懸念が万一あつた場合にどうや
つて日本民族の安全を維持するという主体性を維持して行くか、どういうようなささえをと
つて行かれるかという二つの点をお伺いしたいのです。