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1954-04-24 第19回国会 参議院 外務・内閣・大蔵連合委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年四月二十四日(土曜日)    午前十時五十二分開会   —————————————  出席者は左の通り。   外務委員    委員長     佐藤 尚武君    理事            團  伊能君            佐多 忠隆君    委員            鹿島守之助君            西郷吉之助君            杉原 荒太君            高良 とみ君            羽生 三七君   内閣委員    理事            長島 銀藏君            竹下 豐次君    委員            白波瀬米吉君            井野 碩哉君            矢嶋 三義君            吉田 法晴君            三浦 義男君            堀  眞琴君   大蔵委員    理事            藤野 繁雄君            菊川 孝夫君            東   隆君    委員            青柳 秀夫君            木内 四郎君            白井  勇君            山本 米治君            前田 久吉君            成瀬 幡治君            堀木 鎌三君   国務大臣    外 務 大 臣 岡崎 勝男君    国 務 大 臣 木村篤太郎君   政府委員    法制局長官   佐藤 達夫君    保安庁人事局長 加藤 陽三君    保安庁経理局長 石原 周夫君    外務省欧米局長 土屋  隼君    外務省条約局長 下田 武三君   事務局側    常任委員会専門    員       神田襄太郎君    常任委員会専門    員       杉田正三郎君    常任委員会専門    員       藤田 友作君    常任委員会専門    員       木村常次郎君    常任委員会専門    員       小田 正義君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○日本国アメリカ合衆国との間の相  互防衛援助協定批准について承認  を求めるの件(内閣提出衆議院送  付) ○農産物購入に関する関する日本国  とアメリカ合衆国との間の協定の締  結について承認を求める件(内閣提  出、衆議院送付) ○経済的措置に関する日本国アメリ  カ合衆国との間の協定締結につい  て承認を求めるの件(内閣提出、衆  議院送付) ○投資保証に関する日本国アメリ  カ合衆国との協定締結につい  て承認を求めるの件(内閣提出、衆  議院送付)   —————————————
  2. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 只今より外務内閣大蔵連合委員会を開きます。議題は、日本国アメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定批准について承認を求めるの件、農産物購入に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定締結について承認を求めるの件、経済的措置に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定締結について承認を求めるの件、投資保証に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定締結について承認を求めるの件、以上四件であります。なお、本連合委員会は本日を以て終了しなければ自然成立との関係からしまして、外務委員会での審議が不能となりますので、そのことをあらかじめ御了承をお願いしたいと思います。従いまして、昨日残りました質疑通告者の方々には誠に恐縮でありまするけれども、本日は一人二十分以内で質疑をやつて頂きたいと存じます。又関連質問はできる限り御遠慮を願いたいと存じます。なお附加えまするが、保安庁長官並びに外務大臣とも予算委員会からも出席の請求があるのを繰合して出て頂いておるということも御了承願います。では、先ず成瀬委員から始めて頂きます。
  3. 吉田法晴

    吉田法晴君 ちよつと議事進行について……。
  4. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 成るべく時間をとらないようにどうぞ。
  5. 吉田法晴

    吉田法晴君 約一分間、恐れ入りますが、保安庁長官出ておられますが、あとの大臣もできるだけ速かにお揃いを願いたいと思います。そうせんと質問が進みません。
  6. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 木村長官にお伺いいたしますが、MSAを受入れて自衛力増強ということでございますが、国民心配しておる点はどのくらいまでを限度として自衛隊員を殖やして行くかということ、その限度の点が私は非常に問題になると思うのです。又国民もそれがどういうふうになつておるか、経済上の点からもその他の点からもその点が心配だと関心を持つておると思うのです。そこでお尋ねしたいのですが、長官答弁よりますと、日本の安全と申しますか、平和と自由が保たれておるのは在日米軍がおるからだ、そこで自衛隊を殖やして行く、そのことが延いては駐留軍が撤退して行くことになる、こういうような説明だと聞いておるわけです。承わつたわけです。そこで在日米軍ですが、駐留軍というものはどのくらい日本に今おるのか。これはわかつてつて答弁ができないというのか、それとも全然わからないというのか、若し答弁ができないいのだとするならば、その辺のところも併せて御答弁願いたいと思うのですが、私はその点が一つ目度になるからお尋ねするのです。
  7. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 成瀬委員の御質問私は御尤もだと思います。国民もそれについては非常な関心を持つておると私は思つております。そこで先ずれどれくらいの自衛力漸増目度を置くかということにつきましては、先ずこの人員の点から考えてみなければならん。日本では御承知通り、現憲法下徴兵制度は全然実施することはできない。今の状態においては是非とも志願制度で行くよりほか途はありません。志願制度の下においてどれだけのものが予定される、考えてみますると、いろいろな点から考慮いたしまして、先ず限度は大体二十二、三万程度であろうと考えております。それ以上はどうもむつかしいのじやないか、こう考えられます。その範囲内において先ず自衛力漸増計画を立てて行かなくてはならんそれと同時に、私は常に申しまするように、日本財政状態を十分睨み合して行かなければならん、そこに限度かもるのであります。従いまして、仮に二十二、三万まで募集ができるといたしましても、急速にさようなところまで持つて行くということは私は不可能でもろう思つております。そこで差当り二十九年度におきましては、御承知のように地上部隊で二万というようなことになつて来ておるのであります。そこで三十年度にどうなるかと、こう考えられます。三十年度におきましても我々は一応の目度は立てたのであります。いつも申しまするように、やはり正規の地上部隊二万海上が八千六百、航空が六千、これだけの目度を立ててみたのでありますが、これも私は来年度殆んど実行不可能じやないかと考えております。容易じやないと思つております。そこまで持つて行くのには……。さような次第でありまして、それ以上の計画というものは今実際のところは立てられないのです。三十一年度どう、三十二年度どうというようなことについては我々は考えはしまするが、実際の計画としては私はまだ立ち得ない状態にあるということを申上げておきます。それからアメリカ駐留軍の実勢はどうかということでありまするが、これは実際について我々はわかつておりません。隠しておるわけではありません。殊に航空海上、これはしよつ中動きがあります。なかなか我々としては推測すらできておりません 地上部隊においても、これは我々としては二十九年度で二万の増員をするのでありまするが、その増員見合つて二万の在日米軍引揚げるというようなことになるまいかと考えております。今後十分アメリカのほうとの打合せをやらなければ、どれだけのものか撤退するかということについてはわかりません、今度の我々のほうの実際において殖やす程度見合つて行くよりほかはなかろうと、こう考えております。
  8. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 私はこの十八万に殖やすということがすでに私は日本財政力を上廻つたものだと、だからMSAを受入れて十八万に殖やして行くと、こう思うのです。ですから財政上の限度というものは実は越したものだと考えておつたのです。それからこの前の菊川君の質問に対して、志願制度としてはおよそ二十二、三万程度だ、これで限度は出て来たと思つております。だから財政上の限度は突破しておる。だから志願制度として二十二、三万に……。もう一つ考えなければならないのは、今言つたように、在日米軍の数と睨み合せてどのくらいの限度になつておるということは私は大きなフアクターになつておると思う。それがわからないというのは、アメリカが全然連絡を日本に寄越さないのか、どうしてそういうことがわからないのか、我我からいえば大体このくらいおるのだとか、大ざつぱな数と申しますか、それは何万何千何百何十人というところになればわからないと存じますが、大体このくらいの人数を日本駐留さしておるのだというような点につきましては、大体防衛分担金において私は出ておるのであります、ですから、それが全然わからないということはないのですから、この点について調査をせないのか、向こうから連絡せないのか、こちらから積極的に何千何名おるということを聞いておらないのか、その辺のとこるをもう少し御説明頂かなければ、ただわからないとおつしやつただけでは納得が行かないわけでありますから、この点については長官岡崎外務大臣の御答弁一つお願いしたいと思います。
  9. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) これは我我はあらゆる角度から推測はしております。勿論推測にとどまるのであります。その推測すら我々は公表することは差控えたいと、こう考えております。
  10. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 同様であります。
  11. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 委員長一分間、成瀬君の了解を得たのですが、
  12. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 今日は関連質問は本当に御遠慮願いたいのです。
  13. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 長いことやらんから、大事なところですから……
  14. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) それじや矢嶋君一分だけ……。
  15. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 木村保安庁長官に……。二十二、三万が徴兵制度限度だと、こうされれば、この五年以内に徴兵制か施行されるということを明言したことになると思います。こういう理由を私が申上げると、一月十三日に与党自由党から保守三派に示された防衛計画案、あなた方ないと言われておるのですか、これも秘密事項になつておる、衆議院予算委員会中曽根君から、尊重するか、あなたは尊重するということ、やられるということを答弁された。この自由党の三派に示された地上十八万、海空九万、合せて二十七万、又あなたが昨年の六月二日市で発表されて、その後保安庁で検討された保安庁の五年計画案にいたしましても、地上十八万と海の十五万五千と、それから空の千三百、この中にジエツト機が三百五十機と言われております。これらのいずれの案を以てしましても、五年以内には二十二、三万を突破するということは明々白々でございます、従つてこの五年頃、ここ数年にして徴兵制というものが布かれざるを得ないということを腹に持つて明言されたと思いますが、その通りでございますね。これは否定できないと思います
  16. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 只今矢嶋委員から、私か二日市で何かその日発表したとおつしやられましたが、断じてさようなことはありません。私は数字について発表したようなことはありません。誤解のないようにお願いしたい、それから中曽根委員自由党と改進党との間にさような案が出た、私はさような案については存じません。数字については少しも存じません。そこで私の今申したのは志願制度の下においては、それは限度があると、こう言つておるそれ以上になればこれは徴兵制度を布くよりほかにない。併し私はそれがために徴兵制度を布かなければならんと言つておることは少しもないのであります。これは徴兵制度を布くことになれば憲法改正をしなくてはならない。憲法改正をするや否や、これは国民の総意を問わなければならない。我々はこれにおいて徴兵制度を布くというようなことは何も申したことはありません。
  17. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 矢嶋君も指摘しておつたわけですが、あなたは大よそ推測はできると、こうおつしやつた、それははつきりして頂きたい点は、私は志願制度をとつて行くと、二十二、三万と、そこに推測される数字とそのズレがある。例えば在日米軍が上廻つておるとすれば、私はこれは非常に問題が大きいと思います。幸いにして下であれば徴兵制度というようなところにも行かないと思いますが、そこら辺のところを推測するとおつしやるなら、私は推測するなら約三十万くらいだと思つておりますが、それももつと少くて五、六万くらいと、こうおつしやるのですか、この極東関係を含めて私は言う、在日というのは、少くとも極東に配置されておるものとマツチしなくちやその数字は出て来ないと思うからそのことを心配するわけであります。ですからその点をもう一度私は推測しておる。保安庁自分のほうで以て勝手に十八万、今度二十万に殖やす、その次のは二十二、三万に殖やそうという、この程度にできればいい、そのときそれに反対なり、賛成なりすればいい、それなら幾らという目度として推測される数字というものを、例えば大約何万、六万なら六万というようなふうに一つわかるなら発表して頂きたい。どうしてそういう数字を発表していけないのですか、発表したつて差支えないじやありませんか。
  18. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 推測推測でありまして、私は責任を持つてそれは発表することは、できません。ただ申げたいのは、アメリカ駐留軍部隊に全部日本が代つてやろうというのではありません。我々は日本財政力その他募集店員の点から顧みて、自主的にどのくらい漸増していいかという計画を立てる、その計画が実行されると、それに見合つてアメリカのほうの駐留軍が撤退することであろう、こういうことを言つておる。先ず以て日本に自主的にどれだけのものが漸増して行くかということを勘案してきめなければならん、こう考えております。
  19. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 そうすると、ちよつと観点を変えまして、徴兵制憲法との関係でございますが、これを徴兵制を布くということは、当然私は憲法第九条に、或いは前文に反して来るというふうに解しておりますが、この点についてはどういうふうにお考えですか。
  20. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 徴兵制度憲法九条とは私は直接の関連性はないと思つております、その以外の、我々は憲法九条と関係なく徴兵制度を布くことは憲法改正をしなくてはならんと、こう考えております。
  21. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 そうすると、徴兵制度を布くということは、憲法改正が行われなければまあ徴兵制はやらないのだと、こういうふうに我々は了承して差支えはございませんですか。
  22. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 徴兵制度を布くには憲法改正を要する。
  23. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 それからの自衛隊漸増して行くわけですか、私は一つの目的は駐留軍日本から撤退するということは私は一つの、一つのですよ、一つの目標だと、こう考えておつたわけであります。そこで、この前の答弁を聞いておりますと、事前には話合か全然されておらなくて、今度こういうふうになつたのだと、だからそれに対してアメリカ判断をして、アメリカのほうが自主的に判断をして帰つて行くと、こんなようなふうに私はあなたの御答弁を承わつた事前に全然、こういうふうに今度おれのほうは十八万に殖やす。だからアメリカはここでどのくらい減らして行くのだということを事前には全然交渉されないのか、もう一度その点を明確に私はお答えを願いたいと思います。
  24. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 二十九年度のことを先ず例にとつて申しますと、二十九年度で制服は二万、その他で結局相当数が殖えるのだ、その実際にこれが殖えて活動ができるようになりますると、アメリカのほうでそれに見合つてどれだけのものを撤退しようかということになるのであります。それについてはいろいろ我々は交渉を今後始めたいと思つております。まだ法案が通過いたしておりません。法案が通過いたしまして、いよいよこれは募集をいたしまして、そして実際に部隊として活動できるようになりますると、アメリカのほりもそれに見合つて撤退をすることになると、こう考えております。
  25. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 それはあなたの、日本側のほうで言うと、それは希望的な、アメリカが帰るかどうかということは希望的な見解なんですか。事前にそういう約束がされているかどうかというとを私は聞きたいのです。或いは事後にでも打合せをして、そうしてそれで帰つて行くのだと、アメリカ日本自衛隊が十八万になつたと、このことを見て、この装備と、この人員なら自分のほうはこのくらい帰つていいと、自衛力漸増にからみ合つて駐留軍は減らしていいのだという約束がされているかどうか、この点を私は伺つているのです、この点については外務大臣一つ答弁を願いたいと思うのです。
  26. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 我々この保安庁関係において申しますると、実勢力がこれだけ殖えればアメリカのほうもそれに見合つて撤退するということは話はしているのであります。
  27. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 そうすると、どうも私は最初に申しました日本の国の自衛隊をどこら辺までに長官は持つて行こうとしているのか。或いは今の内閣としては防衛計画と申しますか、自衛増強計画というものはどのくらいの限度に置いているかということがなかなかわからないのですけれども、一つ限度としてわかり得ることは、ただ単に志願制徴兵制は今言つたよう憲法改正がなければできないのだから、だからまあ大体二十二、三万までは殖やすつもりだ、これは財政上できないということは、これは私は論を待たないことだけれども、アメリカMSAか来れば、この援助の如何によつては二十二、三万までは大体殖やして行く、こういうふうに考えざるを得ないのでございますが、ここで伺いたい点は、三十年になつて来たときに、これは平常化して来たときに、今こう殖やして来たときに、大体予算をどのくらいとればいいのか、いわゆる平年度化した場合の予算はどのくらいになるのか、あなたのほうでは、これを踏んでおいでになると思いますけれども、その点について一つ御説明願いたい、
  28. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 平年度化すればどのくらいになるかということでありまするが、私は今目度を付けておりまする三十年度の計画を実行することになりますれば、精細なその計算はまだ立つておりませんが、要するにアメリカから、どれだけの援助が来るかということが主たることになるのでありまして、日本といたしましては、やはりどうしても維持費その他を勘案いたしまして、約一千億くらいになるんじやないかと、こう考えております。これも私の一つ考え方であつて、十分な計算基礎としてやつたわけではありません。
  29. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 成瀬ちよつと申上げますが、保安庁長官はちよつと所用のために、五、六分中座したいとのことでありますので、これは止むを得ないと思いますが、その間は外務大臣一つ……。
  30. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 外務大臣にお尋ねしますが、不幸にして世界大戦と申しますか、米ソの戦いというようなことはないと予想されないと言えばそれまでだと思いますが、一応仮定の事実として私は予想して見る必要もあると思うのです、そのときにアメリカの軍隊がおる、或いはMSAを結んでおるとか、或いは集団安全保障が今度どうなるか知りませんけれども、そういうものはないわけですけれども、今の段階において米ソ戦争が始まつたような場合に、日本はその場合に自動的にと申しますか、国民がどうこうしようというのじやなくて、どうぜんでも、その米ソ戦争に捲き込まれる私は危険があるじやないかと心配するわけですが、外務大臣の、そういうものはないのだそういうことに対してはこういう外交交渉によつてこれを防ぐことができるのだ、若し自動的に捲き込まれないとするならば、これはこうやつて大体防ぐことかできるのだという私はその方途一つお示し願いたいと思います。
  31. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは米ソ戦争というものがどういう態様でできたかということかが具体的にわからなければ、その方途がわかるわけではありません。併しながら、そういう具体的な問題を外れて一般的なお答えをするとすれば、この前の世界大戦の状況を見ると、いずれの例でも中立はあり得ないということで主張して来まして、できるだけ自分のほうの味方に引人れようという努力、場合によつては力を以て自分のほうに味方させよう、然らずんば力を以て攻撃して、つまり敵か味方かということをはつきりさせようという努力を非常にいたしております。日本の場合にどうなるか勿論わかりませんが、そういう傾向から見れば、その間にあつて中立的な地位を保ち得るのは、例えばスウエーデンであるとか、スイスとかいう国でありますが、スイスにしましても総動員を行なつて国内の守りを固めました。スウエーデンのごときは、仮にドイツなり、ソ連なりが上陸するような場合には、これは必ずカを以て撃退するという非常な強い決意を以て、遂にドイツもそれだけの兵を割き得ないということで、スウエーデン上陸作戦を行わなかつたとさえ伝えられているくらいでありまして、こういうことは仮定の問題ですから、何とも今原則的なことを言つても仕方ありませんけれども、若しそういう非常な場合にどちらにも捲き込まれないような措置をとるうとすれば、どちらからおどかされても驚ろかないだけの防衛力を固める以外に方法はあるまいと考えております。
  32. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 あなたのおつしやるどちらからもおどかされないところの防衛力は私は持つことは不可能だと思うのです。不可能だから、不可能な日本の実情として、そういう点が一つと、それからスウエーデンスイス人の例を以て云々されますが、私はスイススウエーデンともどちらもいわゆる軍事基地と呼ばれるところがなかつたわけです。日本には今あるわけです。で、第三次世界大戦、いわゆる米ソ戦争が始まれば日本にはいわゆる原爆や或いは。水爆が落ちて来るじやないかということを国民が非常に心配をしておる。ですから私は今のあなたとして、不幸にしてそういうような場合があつたならば、いわゆる一億玉砕的なことを考えなくて、どういうふうにしたならば被害を少くするのだかというとを私はお考えになつておるはずだと思うのです。力によるところの中立は、力によつてみんなこうなつた中立というものはあり得ないのだということになれば、日本の国は基地を持つておる関係上、どちらかの私は原爆なり水爆を受けなくちやならないじやないか。そうすれば日本は全滅してしまうじやないかということを、憂えておるわけです。ですから、その方途を大体どういうふうに考えて、これに対して処して行くか、どういう外交交渉によつてこれを日本の一億玉砕を防いで行くかというようなことを私は考えておられなければならないと思うのですが、その点について何ら私は明確な御答弁を頂いておりません、もつと私は誠意ある御答弁を伺いたいと思います。
  33. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私はそういう仮定の問題について誠意ある御答弁はできません。あなたはどういう様態で世界大戦が起るのか、米ソ戦争が起るのか、又それが、どういう兵隊の配置になるのか、こういうことをせずに、ただ米ソ戦争原爆がそこら中に落つこつて来る、私はこういう理窟は徒らに国民驚ろかせるだけで以て、そうして今の日米安会保障条約なんぞを暗に非難するだけの効果しか私はないと思います。併しながら、我々の考え方は、原子力国際管理ということを先ず第一に努カしなければなりませんが、これは現実の問題にとしてはなかなか困難な場面がたくさんある。そこで、あなたのおつしやるのは、一躍飛躍して米ソ戦争をする場合、こういうのでありますが、我々はそれがないようにということのためには、原則的にはこれは原子力国際管単品ということが必要であり、軍縮が必要でありましようけれども、その次善策としては、自由主義諸国防衛力の強化、これによつて、甚だ遺憾ではあるが、この冷い戦争を熱い戦争にしない措置を講ずる、つまりあなたの恐れるような爆弾等が落ちて来ないようにするためには、日米安全保障条約を強化して、そうして侵略の脅威をなくするということ以外に方法はないと考えております。
  34. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 自衛力漸増に絡んで、それではどこか仮想敵国があつてつて来るじやないか、それについてどうするのだというような質問に対しては、どこの国だとも何とも言えない。これは仮定のことか知らないけれども、具体的には一つも示されておらない。而も何人殖やすとか、装備はどれだけすると言つて非常に具体的にお進めになつておる。片一方に米ソ戦争仮定のことだから誠意ある答えはできない、私はあなたの答弁はロジツクが合わないと思う。国民が今一番心配しておる点はあなた方御承知だと思う。それは確かに米ソ戦争がどうこうということはあり得ないかも知れない。併し万々が一に米ソ戦争が始まつた場合には日本の国はどうなるのだ、事によつたらソ連の水爆原爆が落ちて来やしないかということを心配しておるわけです。ですから、そういうことはないのだ、それを防ぐ方途は、あなたの説だと自由国家群の力がうんと強くなつてしまつて戦争がなくなつてしまう、ソ連がもう攻撃に立ち上れないような力にしてしまうのだ、それ以外にないのだというふうに承つておるわけですが、それじや私は国民が納得せないと思う。万々が一にも米ソ戦争が始まる、そういうものはないのだという、私はやはり外交折衝とか、或いは保障とかいうような、そういうことを、保障を国連によつてとるとか何とかいうことを私は考えて然るべきだと思うのですが、あなたの考え方は、力でこうやればいいのだ、これじや国民は不安でしようがない。どうするのですか、実際……。若し不幸にして始まつたとすれば、その場合にあなたはどうする。日本水爆或いは原爆から守るという方途一つ考えてもらいたい。或いはそういう外交をやつてもらうときじやないかと思う。それが私は一番大事な外交施策じやないかと思う。それだつたら、ただ単に自由国家群にくつついておればいいのだ、自由国家群の言うことをさえへいへいと聞いて、向うの言う通りになつておればいい、それしかあなたの外交施策というものはないのだ。我々はそうは感じない、意見の相違だから、そんなことはしようがない、こうおつしやるかも知れんが、もう一度……、米ソ戦争が始まつたようなときに、これを防ぐ方途はないものですか、いわゆる力で防ぐとか何とかいうか、そんなことは日本の力ではできないのですから、よその国に頼つてやるというのじやなくして、日本独自の力で生きて行く道はないのか、この点についてあなたは考えられたこともないのか。
  35. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 予算の点では、防衛力増強予算に一々組まなきやできないのですから、これは具体品的にするのは当り前のことであります。併しながら、米ソ戦争なんということを具体的に話しろと言われたつて、あなただつて具体的に何も話はできない。それが証拠には、どうやつて、一体米ソ戦争はどういう形でどういうところへ軍隊を配置して、どうやるのだと言つたつて、これは世界中誰も返事はできません。仮想の問題ですから……。どこでも計画を立ててやつているわけじやないのですから……。そこで戦争を防ぐのか目的なんで、戦争になつたらどうなるのだと、こういうことは私は考えてみたつて今のところは考えようがないということを申上げたのであります。但しいろいろのことが考え得るので、あなたは恐らくアメリカにもつかず、ソ連にもつかず、中立でやつたらよかろうというような結論に持つて来られるのかも知れませんけれども、これは佐藤委員長などは現にモスクワにおられてよく御存じだと思いますが、昭和二十年の八月九日の状況をお考えになれば、条約を作つても当てにならないという現状にあつて、ただ条約を作ればいいというのならば、それは条約ができる場合も理論的にはありまよしよう。併しながら、条約でさえ当てにならない世の中で、どうやつて守るのだとおつしやつたつて、これは差当り国際信義が回復するまでは力で守る以外には方法はないと私は率直に申上げます。
  36. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 それでは話を変えまして、今非常に水爆の被害などで日本が影響を受けておるわけですが、昨日の新聞などを見ますと、アメリカのほうの態度に対して井口さんが抗議を申込んでおられるようなことになつておるわけですが、この水爆の実験だけでも私は日本に対して非常な影響があると思うのです。あなたは先ほど原子力の問題云々というようなことに触れたわけですが、そういうことにもう少し積極的と申しますか、或いはこれを又やられたら大変なんですから、こういうことに対して積極的に原子力がなくなるということに関して外交交渉を展開する用意があるか。
  37. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これはできるだけ努力するつもりでおります、
  38. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 それは具体的に言うとどういことなんですか。片方の自衛力、自由国家群の力が強くなるということと、今言つたよう原子力国際管理というようなことに先ずするということは、若干私はそこにロジツクの違いがあるじやないかと思うのですが、具体的に申しますと、あなたはそういうことは違いがないのだ、どういうような形で原子力国際管理と申しますか、或いは日本近海、或いは太平洋などでこういうことをやらせたいようにするというその具体的な一つお話を承わりたい
  39. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 原子力の問題のごときは、日本は勿論非常に苦々しい経験を持つておりまするけれども、日本だけ弾が落ちなければいいという問題ではありません。世界の問題であります。従つて日本近海とか、日本の領土とかに落ちないとか落ちるとかいう問題でなくして、世界中を通じて落ちないように努力しなければならん。(「日本外務大臣だろう」と呼ぶ者あり)要するに、原子力国際管理ということを目指して進まなければならんのであります。原子力国際管理ということができますれば、自然軍縮ということもできましよう。従つて防衛力の強化ということは恐らく必要がなくなるかも知れない。併しながら、それができるまではやはり防衛力の強化ということは必要であります。従つてそれができた場合には、これはもう非常に国際平和が回復する時期でありますから、日本憲法の前文に言われるようなことが現実の世界の事実として行われる場合でありまするからして、これはもう世界中が平和になる。従つて防衛力は殆んど必要がなくなろう。殆んどというか、全然なくなるかどうかはこれはわかりませんが、まあそう申上げて置きます。
  40. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 あなたはそう一般論を言わずに、外務大臣として、原子力の実験の問題などについて、具体的にどんな方途を持つておるか、考えておる政策として、ここにはこういう働きかけをする、ここにはこういう働きかけをするというような具体策を私はお伺いしておるわけです。
  41. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私は今原子力国際管理ということに御返事しておるのであつて原子力の、原子爆弾等の実験の問題でありますならば、これは参議院の決議にもありましたように、原子力の実験による被害を極力防止するということでありまして、原子力実験自体を禁止しておる決議ではないと考えております。従つてこれについては被害防止ということに主眼を置いて努力いたします。
  42. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 ビキニ水爆日本の受けた被害は御承知通りひどいものであり、今度やられたあの実験だけでも日本人は参つてしまうということになるのです。決議を参議院でやつた。あなたは具体的にどうする、これをやめてくれ、こういうのか、実験をやめてくれということが言えなければ、どこかアメリカの本土なら本土でやつてくれというようなことを私は強く具体的にやられたと思うのですが、決議がある以上は、それは決議をどういうふうにやつたのだということを伺つておるわけです。具体的にどういうことをやつたのか、実験の場合にはどうする、原子力国際管理についてはどういうことを具体的にやるか、こういうことを伺つておるわけです。
  43. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 原子力国際管理については日本だけでやれる問題ではありません。これは世界中の国と協力して一致しなければ解決できないものであります。従つて世界の諸国と協力して、この方向に向つて進むよりいたし方がない。この意味で国連にも話をいたし、又関係各国にも話をいたしております。それから原子力の実験の禁止、実験に対する被害の防止につきましては、只今のところビキニ環礁の周辺における危険区域というところについては、実際上の取調べによりますれば、まあ将来はわかりませんが、只今のところは主として漁船の被害、従つてそこからとれる漁獲物が放射能を持つているかどうかという問題と、それからそこの地域に入れないために幾ばくの漁獲物の損害があるか、又その地域を迂回して行くために他の地域に行く船がどれだけの費用が余分にかかるか、それに加えて、国内においての予防措置とか、検査の措置とかにどれほどの費用がかかるか、こういう問題がつまり補償の対象になるわけでありまして、これは今後どのくらい実験が広範囲に影響を及ぼすかということによつて漸次その内容も違つて参りましようから、只今のところは、一月一日に計算をしました被害状況を算定して、これをアメリカ側に提示して交渉をいたしておるという段階であります。
  44. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 補償の点はよくわかりましたですが、再びああいうところで実験をやられては我々の被害は私は大きいと思うのです。それに対してはどういうふうにおやりになりますか。
  45. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) いろいろの衆参両院における決議の趣旨弁明とか、賛成演説とかということを拝聴いたしますと、ビキニにおいての実験禁止ということでなくして、ビキニにおける実験に対する被害を防止するという措置と私は考えております。従いまして、それについては只今のところは、今申したような損害の補償ということも勿論、これに伴つて周辺に、日本の漁船が危険な場所にありとすれば、これに対しては警告を与えたり、注意をすることは勿論これは伴つております。漁夫の生命等には何ら別条がないという前提の下に、そういう措置は十分とれるという前提の下に、要するに被害に対する補償という点に我々の措置は集中いたしております。
  46. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 ビキニの爆発があつてから、やかましくて、そうしてこれは秘密と申しますか、アメリカでも発表が禁止されておりましたが、四月六日に行われておるというようなふうで、例えば実験をやられるふうな場合には、日本に対しても事前に連絡が行われるというような、被害を最小限に食い止めるようにというようなことについて、具体的な話をされ、或いは具体的にこちらのほうからもそういうような要求が出されて、そういうことが交渉過程において進められておるかどうか。
  47. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これはまだ全体、何と申しますか、総括的にこれでもう全部何ら落ちのないのだというようなわけには参りませんが、これは新らしい経験でありますから、あとからあとからと、これもやつたらよかろう、あれもやつたらよかろうというような智慧が出て来るのでありますが、只今までのところ、科学者等の意見に基いたいろいろの危険防止の措置等は具体的にアメリカ側と話をいたしております。これも現地において実際実験をしたものは日本側にはおらないのでありますから、いろいろ具体的にやつてみると、ここが違う、あそこが違うというようなことが出て参ります。まだ結論は出ておりませんが、具体的な話合はいたしております。
  48. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 まあ時間がないので……。非常に第三次世界大戦と申しますか、原爆戦に対する日本中立ですか、日本の安全を、とにかく一億玉砕にならないような方途というものを私は外交折衝においてやつて頂きたい。或いはそれをやるのが今の日本外務大臣として最大の私は責務だと思うのに、単に自由国家群の力さえよくなればそれでいいというようなことでは、私はこの原子科学兵器の進んだ今日としては非常に不安で、あなたに、外務大臣にそれでよろしうございますと言つてお任せするわけには私はいかないと思いますが、その問題は別といたしまして、それでは、今度MSAを受けて、そうして自由国家群においてやろうということをおつしやつておるわけですが、そうして集団安全保障というようなことが考えられて来るわけですが、自由国家群の力によつて平和を維持して行こうというなら考えられると思いますが、あなたの考えとしては、大体太平洋軍事同盟というような、或いは軍事機構といつたようなものを作り上げて、日本はその中に進んで参加して行つて、そうして世界の平和を保たなければならない、こういうようなお考えですか。
  49. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私は原則的に申せば、地域的な安全保障措置というものは講ぜられて然るべきであり、これは国際連合でも予想しておることであつて、結構なことだと思いますが、それがどういう内容によるかはつきりしないと、内容によつて日本としてはこれに加入できない場合もあるわけでありまして、憲法の規定その他から見まして、十分検討しなければならんものでありますから、一概に太平洋何とか同盟に賛成するとかということも申されないし、また内容もきめていないのに一概に反対するとも申せない。具体的の内容がはつきりしますれば政府の意見はおのずからはつきりいたします。
  50. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 いや、私は若しそういう考えであるとすれば、日本としてはこのくらいの憲法の制約があつても、こういう問題のときには入つてもいいのだ、或いはこういうときには入られるというようなことになつておりますか。その場合にあなたは日本として、外交折衝として受身でおるのか、或いは積極的にこちらのほうから話を持ち出そうとするのか。
  51. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 一般的に申せば、日本としましては、今経済自立という問題で実は専心に取組まなければならん話であります。これは八千七百万の国民が終戦以来何とかかんとか暮して来たから、もう生きて行くことは何でもないのだというようにお考えになるかも知れませんが、この八千七百万の国民をちやんと生きて行くように措置することはなかなか困難でありまして、これに専念しなければならん建前である。又事実その通りでありまして、まだその他の問題にそう積極的に突込むような国の余裕というものは私は実際少いだろうと思います。従いまして、これらに積極的にどうしようという考えを持つのはまだ早いと思つております。
  52. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) もう時間が殆んどなくなりましたから、どうぞワインドアツプして下さい。
  53. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 大蔵大臣のほうの問題については、私のほうは担当が大蔵委員でありますから、経済の問題についてはそちらのほうで伺いたいと思いますが、それでは外務大臣にもう一点お尋ねして置きたいと思います。経済上私たちは不可能であつて、そちらのほうが先だと、こう思つておるわけですが、MSAを受入れて来ると、あなたが心配しておられるところの平和産業或いは民需産業というものを非常に圧迫して、日本の産業構造上、又昔のような恰好になつて来て民需を圧迫するじやないかと私たちは考えておる。それを非常に心配しておる。そこへ持つて来てMSAを受けての自衛力限度というようなものが非常にそこに問題になつて来るわけですが、これもぼやけておつて何らはつきりしないわけですが、大体外務大臣として、或いはこれから賠償問題とも私はからんで来ておると思う。日本が再軍備するならやはりその前に賠償額は殖やしてくれてもいいじやないか、こういうことになつて来ると思いますから、フイリピンとの外交交渉はあんなふうに進んでおるように新聞にも出ておるのですが、あなたはインドネシアや何かのほうに行かれたわけですが、東南アジアのほうとこれとのからみ合うところの賠償は一体どんなふうになつておりますか。それと、私たちが今聞いておるのは、日本の再軍備とからみ合つて賠償額を向うはたくさん出せ、賠償額をたくさん出せということは、日本経済が傷めつけられることですが、それとからみ合つてあなたはどんなふうにお考えになるか。日本経済力と賠償の問題、或いは賠償と日本の再軍備の問題をどんなふうにお考えになつておりますか。
  54. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私自身で確めましたばかりでなく、その後も在外公館等で始終報告を徴しておりますが、日本の今程度防衛力増強ということは、東南アジア諸国においてもこれは当然必要なことであると考えておるようでありまして、この程度防衛力増強のための費用があるならば、それを賠償に廻せというような議論は聞いておりません。従つてこの点では御懸念になるような点はないと考えております。ただ相手国としては、日本経済力を相当大きく考えておるようでありまして、これは表面から見ますると、今生産指数は非常に上つております。そうしてビルデイング等もたくさん建つており、船もかなり殖えており、その実際の底の浅い経済力ということを見ないで、表面だけ見ますると、相当大きなものがあるように誤解される向きもこれは自然あろうかと思います。そのために賠償はもつと余計払えるはずだという議論も随分多いようであります。我々は日本経済力は残念ながら実態を見ますると、そううわべから見たほどのものでないという点は極力説明に努めております。
  55. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) それではどうぞ成瀬君はこの程度にして頂きまして……。    〔矢嶋三義君「ちよつと委員長議事進行」と述ぶ〕
  56. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) そうしてこの次は堀君。
  57. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 木村長官はどうしたのですか、五、六分と言って中座して委員長から何らの我々に説明ないまま、ものの四十分も退席されているということは理解しがたいのですが。
  58. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 今五、六分ということでありましたが、何か会議が始まつたそうであります。併し……。
  59. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 どこの会議ですか。
  60. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 存じません。併しその会議は間もなくしまうそうであります。つきましては、外務大臣に対する質問を先にして頂きたいと思いまするので、どうぞ堀君。    〔矢嶋三義君「では事務局でどの会議にどういうふうに出ているのか、調べて報告してもらいたい、委員会に」と述ぶ〕
  61. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 ちよつと言葉の解釈の仕方について外務大臣にお尋ねしたいと思うのですが、昨日吉田君の質問に対しまして、池田、ロバートソン会談の例の文書の中に述べられているセルフ・デイフエンス・フオーセズという言葉を、外務大臣外務省の公式の文書においては自衛力と、こういう工合に訳しておられる、こういう答弁なんです。で、自衛力という言葉で表現されておるフオーセズというのは力ではなくて、軍隊と訳すのが普通の慣用に現われた言葉の使い方だと思うのです。これには今度のMSA協定の第八条にデイフエンシアル・ストレングスという言葉が使つてある。これを防衛力と訳しておられるわけです。ストレングスという場合とフオーセズという場合とではまるで使い方が違うと思う。極東軍はフオーセズという言葉を今アメリカでは使つているわけです。あなたのほうの外務省の訳語ではこれを自衛力と訳されたように伺いましたが、一体フオーセズという言葉を自衛力という、その力という言葉で現わすのが適当なのか、私どもの普通の常識ではフオーセズと言う場合には軍隊、而もそれは陸海空の三軍を含めた言葉として使われるのが普通だと思います。その点について御説明を願います。
  62. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私はフオーセズという言葉は、まあ英語の達人というわけでもありませんから、間違つておるかも知れませんが、もつと広い意味だと思います。それでその内容に応じまして軍と使う場合もあり、その他の意味に使う場合もある。例えばポリス・フオーセズという、こういう字がありますが、ポリス・フオーセズを警察軍とは訳しておりませんので、やはり警察力とか、警察とか訳しております。従つてセルフ・デイフエンス・フオーセズと申しますと、これは今の日本の場合には軍はないのでありますから、防衛力或いは自衛力と訳するのが当然であろうと思います。
  63. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 ポリス・フオーセズという言葉は警察力と訳されることは私どもも知つております。併し今英語で慣用語として使われておる場合にはフオーセズというのは軍隊というものを指すので、一般的に力、防衛力というような意味において使つているのじやないと思うのです。その点はそこまでにしておきます。  それから防衛力増強の問題でありますが、先ほど木村長官は、日本駐留する米車の数については自分は知らない、従つてここに答えることができない、こういうことでありますが、池田、ロバートソン会談の際に、アメリカ側で従来とつております三十五万という案、それから日本側では十八万という案が一応あすこで調整された。最後の調整は東京での会談できまつたものと私どもは想像するのでありますが、この駐留軍の数でありますが、これは木村長官のお話にもかかわらず、あなたもしよつちゆうお読みになつておるニューヨークタイムスには地図入りで、極東には、極東といつて日本、朝鮮、琉球等を含んだ具体的な数字が殆んど毎号載つていることは、あなたも御画になつていると思いますが、この駐留軍の数、外務大臣としてそれらの知識を総合されて御報告願いたいと思いしま。
  64. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 駐留軍の数等につきましては、いろいろ新聞雑誌等にも想像の記事は載つていますが、これは飽くまでも想像の記事だろうと思います。というのは、極東米軍全部においてもそうでありますが、日本駐留軍においても、この数や或いは師団等についてはつきりした発表をいたしたことは一度もありません。従いまして我々としても、これは先方の機密に属するものということでありますので、これについては申上げることを差控えます。
  65. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 それからこれも昨日か、一昨日かと思いますが、保安庁長官は三軍方式をとつて日本においても陸海空のそれぞれの防衛力増強するというお話があつたと思います。そこで最近のアメリカ極東政策についてかなりの質的な転換があつたということは、これ又新聞等においてしばしば報道されておる。そこの現われが一月の十二日の外交協会におけるダレスの演説によつて、それがいわゆるニユールック政策として発表されているわけです。それに応じてアイゼンハワーの予算教書等においてもペンタゴンの意向を受入れまして、そうして陸軍の三百五十万云々という、あの例の国防上の一定の数字に相当の修正と言いますか、修正を行いまして、陸兵はたしか本年度は八・七%ですか、減少するということが報道された。その半面空軍或いは原子力兵器等に相当の力瘤を入れるということが報道されておるのでありますが、その陸兵の削減分だけが、つまり日本として極東においては再軍備を進めるということになるのではないかと思います。従つてその観点からしますというと、三軍方式というよりは、やはり陸軍にアメリカ側としては強い関心を持つているのではないか、このように思うのでありますが、その点外務省として、このMSA協定の調印に至るまでの過程において何らかの話合がなされたと思いますが、それについてできるだけそれを御発表願いたいと思います。
  66. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは昨日も同じ御質問がありまして御返事をしたので、繰返すことになりますが、MSA協定におきましては、いろいろ先方よりの援助関係もありますから、話合をいたす機会があるわけであります。その際先方の考え方も尋ねたところが、先方としては、日本の政府で計画されることに対して口出しをするということは差控えたいが、強いてただ意見を求められるならばという前置きをいたしまして、専門家としての自分らの意見としては、陸海空の三部隊の均衡のとれたものが最も望ましいと考える。併しこれは日本側のきめることであつて自分らの意見を採用されようとか、されまいとかということは問題ではない。専門家としてはそういうふうに思うので、問われるからお答えをいたしますという程度の返事はありました。
  67. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 MSAによる日本防衛力増強ということは、これはMSA法によりましても、援助の供与がアメリカ側の安全保障を強化するものであると認めた場合に、これが与えられるという観点から申しまして、或いは又アメリカの下院の公聴会でのナツシユ国防次官補の証言等に見ましても、アメリカの兵隊が日本に駐屯を継続するよりも、むしろMSA援助によつて日本に再軍備を行わしめたほうが遥かに経済的でもあり、安上りだという意味のことを証言しているのでありますが、そうなりまするというと、結局MSAによるところの防衛力増強ということは、これは日本の防衛というよりは、アメリカの防御、アメリカ極東防衛の一環として日本がその一部を負担するということになるのじやないか。そうしまするというと、この日本防衛力増強ということは、アメリカのためであつて日本のためではないという結論になる。従つて又冷い戦争が却つてこのために激化するという結果になるのではないか。これは非常に大きな問題なのでありまするが、その点に関しまして外相の所信を承わつておきたいと思います。
  68. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これも実はもう十遍ぐらいこの委員会でも繰返しておりますが、堀君お聞きにならなかつたかと思いますので、念のためにもう一遍申します。アメリカとして日本防衛力増強するということに援助すれば、即ちそれが結果においてはアメリカの安全にも役に立つのだ、こう思うから援助するのでありまして、アメリカの安全に役に立たない、逆にアメリカの安全を脅かすようなことであれば、誰もそんな援助をするわけはありません。つまり日本が例えばその武器を受けて、今度矛を逆しまにしてアメリカを撃つというようなことであれば、それはとてもアメリカとして援助しないのは当り前で、日本世界平和を念願して、この防御力を自衛のために使い、そして日本の安全を確保するということに使われるならば、これは取りも直さず極東の平和を保つことであり、アメリカの安全を保つことであるからということになつて援助が来るのでありまして、併しそれは決してアメリカのために日本防衛力増強するという意味じやありません。それは丁度よく言われるように、同じようなことでありますが、この協定にもありまする、アメリカとして余剰小麦がある。これをさばくのはアメリカの利益であるけれども、日本アメリカから余剰小麦を買つて来るのはアメリカのために買つて来るのかというとそうじやない。向うでは余剰かも知れんが、こちらでは必要なんだ。従つて小麦を買つて来るのも日本の利益のために買つて来るのでありますが、同様に援助を受けるのも、アメリカの安全にも結局は役に立ちましようけれども、第一義的には日本の安全に役に立つから、それで援助を受けるのであります。
  69. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 余剰小麦の問題を例に引かれてお話されたのでありますが、余剰小麦の場合、例えば余剰小麦の場合はアメリカにとつては非常に有利だが、日本にとつては果してあなたが言うように有利であるかどうかということは非常に大きな問題だと思うのです。もつともつと安く買入れる方法もあることと思うのですが、それをわざわざアメリカ側から比較的高い値段で買わなければならんということは、アメリカ側にとつては非常に有利だが、日本側にとつては必ずしも有利でないという事象が起つて来るのではないか。それと同じように、あなたはこれを、MSA協定による防衛力増強ということは、勿論アメリカ側にも極東防衛の上から有利ではあるが、併し日本側にとつても有利なものだ、日本をそれによつて守ることができ、次いではアジアの平和もこれによつて確保できるのだ。こういうお話であります。併し私が心配するのは、そういうような方策をとる結果、日本アメリカとは勿論これ通じてますます親密の度を加えるかも知れまいが、併しながらアジアの諸国とはむしろあべこべの方向に行くのじやないかということを恐れられる。この日本の再軍備に対して一番心配しているのは、何と言つてもアジアの諸民族です。これは防衛力であり、再軍備でないということで御答弁なさるかも知れません。併し却つてそれがために冷い戦争が激化されるということも心配されるわけです。例えばNATOの条約が一九四九年に結成された。NATOは地域安全保障機構ですか、これは必ずしもMSA協定と同じだというわけには参りませんが、併しNATOのあの軍事機構ができましてから、西ヨーロツパと東ヨーロッパの対立が非常に激化して来ているということも現実の問題であります。冷い戦争がそのために激化したということが言えると思うのであります。そういう意味において、私は冷い戦争が却つてこれによつて激化し、平和どころか、むしろ戦争の危険をすらそこに孕んで来るのではないかということを恐れる。これは私ばかりではなくて、恐らく少しでも国際知識を持つているような国民ならば皆等しく恐れているのじやないかと考えるのです。その点について外務大臣のもう一度御答弁を願いたい。
  70. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 麦等をもつと有利に安く買えるというお話でありますが、五千万ドルに相当するこのドルを使わなくて、もつと有利な条件で買えるところがあつたらお示しを願いたい。日本は今外貨が足りなくて、それでさえ輸入超過で困つている際、五千万ドルの外貨を節約して、円で買い得る麦があつて、これより有利であるならは是非お示しを願いたい。私は直ちにアメリカ約束をやめてそつちのほうから買います。それから若し日本を無防備にしておくということがあなたの考えであるならば、もう何をか言わんやでありまして、無防備にしておくのが一番平和を確保するのだとおつしやるならば、私は議論をいたしません。無防備と言うが、貧弱なる防備によつてひどい目に会つている国がもう世界に指折り数えても数え切れんほどあるのでありますから、従つて防衛力ということの増強は必要であるという前提に立てば、又これは議論が違つて来ます。東南アジア諸国については、中共は私は行きませんから知りません。併しながら、その他の東南アジア諸国で日本防衛力をけしからんと言つている国は一つもありません。これははつきり申上げます。
  71. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 五千万ドルの小麦を日本に供給するのだ、而もドルを節約して円で買い得るのだから、これ以上日本にとつて有利なことはない。若し円で買えるような小麦を供給する国があつたら示してくれというお話でありますが、例えば中国でありますね。これはバーター制で以て貿易を促進するならば、私はドルを使わんでもこういう問題は解決できるのじやないかと思いますか、併しそういうような問題はここで私は余り議題にしたくない。それから無防備で平和が確保できるならもうそれに越したことはない。併しそういうことは現実の問題として不可能だ。あなたのお話によるというと、防衛力というものを増強することによつて日本の平和が保たれる。そういう観点の上からこのMSA協定を結んだのであり、又防衛力増強ということも従つて行われるのだ。こういうお話でありますが、私が言うのは防衛と言いますか、自衛と言いますか、こういうことは軍隊によつてのみこれをしなくても可能だということは、昨日も、一昨日も憲法論に関連してここで議論された。政府の当局においては、これは防衛というのはそれに見合うところの実質的な力の裏付が必要だという観点に立つている。私どもは勿論自衛のための武力的な裏付も一つの防衛する手段としては考えられると思います。併し防衛の手段というのは必ずしもそれのみに限るのじやないということは繰返し私どもも述べているわけであります。そういう点については両方とも完全に並行線の形になつておりまして、幾らこれ以上政府当局にお尋ねしても私は結局同等を得ることが困難だと思います。それはそれとしまして、要するにアメリカの今日までとつているところの政策というものが力による政策であるということは間違いないと思う。西の方面においても同様であるし、東の方面においても同様ではないかという工合に考えられるのであります。ところが力による政策というものが、最近国防政局の面においてかなり行詰りを来たしているということも岡崎外相十分御承知のことだと思うのであります。こういうような力の政策によつて果して平和が確保できるだろうかということが私どもの考えるところです。尤も吉田首相も国際緊張は緩和されたということを述べておられる、で、国際緊張が緩和されたということは、つまり力による政策というものから一歩退却したということを私は意味するのじやないか。力によつて国際緊張の緩和がもたらされたのではなくて、むしろあべこべに、平和的な或いは外交的な折衝によつてそういう問題が解決されつつあるんだと思うのであります。そういう意味ではジユネーヴの今度の会議というのは非常に大きな意味を持つていると思うのですが、そういうその国際政局の中にあつてアメリカの力の政策の片棒を担いで日本MSA協定を結び、そうして日本防衛力増強するというようなことは、むしろこの最近の国際政局の動向と照し合せて逆の方向をとつているのじやないか、こういう工合に考えるのでありますが、その点についての外相の御見解をお伺いしたいと思います。
  72. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 国際政局の緩和ということは、現在事実上は主としてヨーロツパ方面において見られることであつて、東南アジア等においては必ずしもそうじやないのであります。仏印の状況をみましても、朝鮮でもまだ問題は片付いていないのであります。それになぜそういうことになつたか、今甚だ残念でありまするが、私も何も防衛力たけか解決の唯一の方法だとは思つていない。勿論外交的な手段を尽すべきことは十分尽さなければなりませんが、併しヨーロツパにおいてだんだん国際緊張が緩和するやに見受けられつつありますのは、やはり今おつしやつたようなNATOの協定であるとか、欧洲防衛軍であるとか、こういうような力の手段がだんだん固まつて来まして、相当心配のない程度に向いつつあるものでありますから、そこでこの基礎において今度は力では解決できないという考えから平和攻勢と言いますか、そちらのほうに向つて行くのであつて、根本は今の状況では残念ながら力が基礎になつている、これは認めざるを得ないと思います。
  73. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 西ヨーロツパの面においては国際緊張は緩和された、併しアジア方面においてはそうではない、こういう御見解でありまするが、成るほどインドシナにおいては冷たい戦争どころか熱い戦争が現に行われている、而もアメリカがこれに対して統一行動をとるとか、或いは主要国に対して警告を発するというようなことをやりまして、而もその統一行動の道連れとして英仏を初めとする九カ国に対して提案をしている。併しこれに対してもイギリスもフランスもむしろ批判的な態度をとつている、これがついここ十日ばかりの間に起つている国際政局の動きだと思います。併しアジアの方面でも国際緊張の緩和が一応、例えば朝鮮の問題等が政治会議を通じて解決されるという一つ目度が付き、但しその政治会議も御承知のような状態で必ずしもスムースに行つておりません。併しこのアジアの面でもそういうような情勢が非常に熟しているということ、それからインドシナの戦争について見ても、フランスのラニエル首相がすでに国会において、昨年の秋も平和的にこれを解決したいという意向を示していることも、これ又新聞の報道等によつてつているわけであります。従つて西ヨーロツパだけに国際緊張の緩和の傾向が見られるというのは私はどうかと思うのであります。アジアの面においてもそういう傾向が起きているのではないかという工合に考えられるのであります。それから西ヨーロツパの方面でも、例えばEDC条約等に関してフランスのとつている態度等は、私が説明しなくてもすでに外務大臣は御承知だと思うのでありますが、こういうような国際政局の中にあつて、むしろ冷い戦争を激化するようなMSA協定を結ぶということは、そのこと自体が日本にとつてはむしろ不利な情勢をもたらすのじやないか、こう思うわけであります。それと、それからもう一つそれに附加えまして、インドシナ戦争に対するアメリカの態度から、日本がこれに対して勧誘せしめられる危険がないだろうかという心配があるわけでございます。先ほど成瀬君は第三次大戦の起つた場合における日本の立場というものについて質問しておりましたが、それよりも先にインドシナ戦争に対して日本が参加するというような危険を私どもは感ずるわけであります。特にジユネーヴ会議においてこれが極東の平和問題がうまく解決しないというような事態になりますと、その危険がますます多くなるのじやないかと思うが、その場合MSA協定を結び、日本防衛力増強し、そうしてアメリカ極東防衛のために日本がこれに参加せざるを得ないというような事態も生れて来るのじやないか、このように心配されるのでありますが、その場合に外相としてはどういう態度を持つて臨まれるか、これをお伺いしまして、それであと私時間の都合でちよつと出なければなりませんので、若し帰つて来ましたときまだ委員会が継続してやつていましたら、若干質問を継続したいと思います。
  74. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君)MSA協定は、この協定文で御覧になればはつきりわかります通り、主眼はアメリカから武器の援助を求めるという形になつております。それに附帯して、例えばアメリカに対して必要な半製品は日本からも供給することがある、又自由主義諸国防衛力増強に寄与するということも約束いたしております。併しながらアメリカの極度政策に追従するのだということは何も赴いてありません。何もそんな義務を負つているわけじやない、又インドシナの事態に日本が引張り込まれなければならないという義務も何も負つておりません。そういうことは誤解であります。
  75. 吉田法晴

    吉田法晴君 これは六月二十九日の参議院の本会議で緒方国務大臣から述べられたことですが、そこで緒方副総理にお伺いするといいのですが、今日は御出席がないので、その点は岡崎外相にお尋ねする以外にございませんが、緒方国務大臣は中田君の質問に対して「集団安全保障の理念の下で、自由民主諸国と協力をいたし、」云々と答弁をせられております。集団安全保障の理念の下で、自由民主諸国と協力をするという方針をいつ決定せられましたのか承わりたいのでございます。問題は一般的なそういう方針と、それからこの協定にございます自由世界防衛力の発展及び維持に寄与する、こういう言葉がございますので、その関係のございます講和条約、安保条約の条約に謳われております点は考慮に入れながら、恰かも集団安全保障体制の中にいつの間にか入つたように答弁せられますので、その点を明らかに一つして頂きたいと思います。
  76. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 集団安全保障の主義は国連の主義であります。日本は国連憲章に協力して行くことは平和条約にもはつきり書いてあります。で、国連の集団安全保障措置に先ず日本の安全を託するという第一義的の考え方を述べたものと思います。自由主義諸国との提携強化というのは、私の外交演説においても二、三回これを明らかにいたしておりまして、現内閣のこれは方針であります。
  77. 吉田法晴

    吉田法晴君 その程度のことはわかつておるのであります。それから平和条約に謳われておるところもわかつております。特に条約で固有の個別的又は集団的自衛の権利を有するという文句も承知の上でありますが、一般的な国連協力或いは固有の権限として集団的自衛の権力を持つておる、或いは集団的安全保障を自発的に取極を締結することができるということは平和条約に書いてございますが、MSAに関連して質問をいたしました際に、集団安全保障の理念の下で世界の平和に寄与せんとする、そうして「自由世界の防御力の発展及び維持に寄与」する、こう書いてございますので、自由世界防衛力の発展及び維持に寄与するということは、これは平和条約にも或いは安保条約にもなかつたことだと思う。そういう方針がいつきめられたかということであります。
  78. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 自由主義諸国と提携を強化するということは政府の外交方針として、国会においてしばしば明らかにいたしております。
  79. 吉田法晴

    吉田法晴君 自由世界の防備力の発展及び維持に寄与するということがいつきめられましたか、或いはいつせられて参りましたか、伺いたい。
  80. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これはMSA援助を受けますと、この五百十一条のa項によつてそういう趣旨が述べられてあります。我々は大体協定をその当時結ばなかつたにしても、いよいよ協定を結ぶということになりますれば、当然そういう点が出て来ると考えております。従いましてその趣旨を述べられたのかと思います。
  81. 吉田法晴

    吉田法晴君 そうすると、自由諸国との協力或いは国連協力という方針は今まであつた。併し自由世界防衛力の発展及び維持に寄与するという形での自由世界への協力という方針が、このMSA協定によつて初めて出て来たものであると、こういうように理解して差支えございませんか。
  82. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 具体的にはその通りであります。
  83. 吉田法晴

    吉田法晴君 時間がございませんので関連する質問はあとにいたしまして、保安庁……。保安庁長官は又ちよつと出たいというお話ですが、ちよつと出るというと、さつきは五、六分で五、六十分ほど経つておる。ちよつとお立ちになつたら恐らくこの委員会の私の質問時間は過ぎてしまうのではないか。今朝も十時からという約束をお守りにならないで、殆んどここにおられました時間のほうが少いような状態において、なお立ちたいということは私は同調することはできません。このまま質問を続行して行きます。  それで、これは岡崎、木村両大臣関係がございますが、日本防衛力を対外的に、或いはアメリカに対していつ認められるようになつたのか承わりたいと思います。
  84. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) ちよつと御質問がわかりません。もう少しはつきりおつしやつて下さい。
  85. 吉田法晴

    吉田法晴君 それでは申上げますが、従来自衛権を持つておるということは言われました。これは個人の場合にしても国の場合にしても、急迫不正の侵略について最小限度みずからを守るための権限があるということは、これは論理上言えることであります。そういう意味において自衛権があるということは論理的には言えると思います。その自衛権を守るためにどういう力を持つか。いわば自衛力を持ち得るかどうかということになりますと、憲法九条或いは憲法を貫いております平和主義がこれは問題になつて参ります。従来は予備隊にいたしましても、或いは保安隊にいたしましても、それは本質的には警察力だ、こういうことで参りました。或いは安保条約の前文には、自国の防衛のため漸増的にみずから責任を負うことを期待するという文句もございますし、或いは期待に応えるという了解があつたかと思いますけれども、それは義務ではないし、特に日本の場合に日本防衛力を持つ、こういう立場に立つたことは今までなかつたと思うのであります。それをいつ防備力を持つということに、国内で或いは国際的に認められるに至つたかということをお尋ねしておるわけであります。
  86. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) サンフランシスコの平和条約において、日本は個別的或いは集団的の自衛の権利を持つということを国際的に認められております、すると、その自衛の権利に基いて如何なる力を持つかということは、これは日本政府が勝手にきめていいことであつて、どこの国の了解もとる必要はありません。
  87. 吉田法晴

    吉田法晴君 表面的にはまさにその通りであると思うのでありますが、それではもう少し具体的に伺いますが、我々が見ておりますと、従来警察として予備隊なり或いは保安隊を持つて来た。ところがMSA協定に関連をいたしまして、MSA協定のこれは前奏的な交渉であつたと思うのでありますが、池田、ロバートソン会談で、はつきり先ほども申しますようなセルフデイフエンス・フオーセズというものを持つということに会談した者は意見の一致を見た、かように書いてございますが、そこで初めて防衛力と申しますか、或いはセルフ・デイフエンスフオーセズと申しますか、そういうものを持つに至つた、かように我々には考えられるのでありますが、それに間違いはございませんか。
  88. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) それは失礼でありますが、お間違いであります。この池田、ロバートソン会談の、お持ちであれば御覧になればわかる通り日本自衛力を強化する必要がある。又英文のほうにはインクリージングジヤパンス・セルフ・デイフエンス・フオーセズと、こうなつておりまして、それは増加するという意味であります。すでにあるものを殖やすという意味であります。その前からあるものであります。
  89. 吉田法晴

    吉田法晴君 それでは前からセルフ・デイフエンス・フオーセズがあつたと言われるのでありますか。そういたしますと、従来ありました或いは予備隊なり、或いは保安隊というものがセルフ・デイフエンス・フオーセズであつたと、こういうお話でありますか。
  90. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) その通りであります。
  91. 吉田法晴

    吉田法晴君 それでは保安庁長官に伺いますが、予備隊なり或いは保安隊というものは自衛力と申しますか、或いはセルフ・デイフエンス・フオーセズを外務大臣自衛力と、そしてそれはこの池田、ロバートソン会談の前からあると、こう言われるのでありますが、それは自衛のためのフオーセズ、フオーセズを自衛軍と解されるか、自衛隊と解されるか、これはやはり議論のあつたところでありますが、そういうものを持つてつたと、そういう性格のものとして持つてつたと、こういうように解されますか、保安庁長官に伺います。
  92. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 警察予備隊自体の実力、保安隊自体の実力、いずれもこれは国家の自衛力の一部をなすものであります。ただ警察予備隊、保安隊は直接外部からの武力攻撃に対して対処し得るものではなかつたに過ぎないのであります。併しいずれも自衛力に属することは間違いないと思います。
  93. 吉田法晴

    吉田法晴君 予備隊、保安隊は今御答弁になつたように、国会に出されました法案説明というものが間違いなければ、それは国内の治安維持に当るというもので本質的に警察というわけであります。外国の急迫不正の侵害に対して国を守るのだという、いわゆる外敵に対するという任務はなかつたはずであります。そういう任務が前からあつた岡崎君が今言われるのでありますが、木村保安庁長官の重ねて御答弁を願いたいと思います。
  94. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) これも今申上げまする通り、直接の任務とするものは国内の治安維持、人命財産の擁護にあつたのでありまするが、併し我我といたしましては、それは国家の持つ自衛力の範囲に属するものと考えます。
  95. 吉田法晴

    吉田法晴君 自衛力と申しますか、或いは防衛力と申しますか、セルフ・デイフエンス・フオーセズというものを、今言われるように国内の治安維持に当るものという説明は何としてもこれは通らんと思う。国内で治安維持に当る、或いは生命財産を守る、それはその自衛力というものを非常に広範に解釈をして、そして何でもみずからを守るための力だ、こういうように常識的に解釈されるならば、或いはそのうちに入るかも知れませんけれども、警察力とそれから国を守るべき力、それを軍隊である、ないということは、これはあとの争いになりますけれども、国を守るべきもの、外敵に対して国を守るべきもの、それをごつちやにされるなら、これはもう何をか言わんやで、予備隊、保安隊の外敵に対して国を守る役割を持つてつたと、言われるのでありますか。
  96. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) そんなことを私はちつとも言つておりません。自衛カというものは国の内外を問わず、国の存立を危うくするようなものに対して防ぐ力であつて、若し内乱等で以て国の存立が危うくなるときには、これを防ぐ力を持つておるものは当然自衛力であります。今まではそういう種類の自衛力を持つてつた、それを今度は更に直接侵略にも当り得る自衛力にいたそう、それだけのことであつて自衛力というものは外敵に当るものだけが自衛力というという定義は私はまだ聞いたことがありません。
  97. 吉田法晴

    吉田法晴君 警察が外敵に当るものか、そこで警察が単なる警察であるか、軍隊になるかの分れ目であります。国内の暴動に当る、或いは国内の警察的な役割が国際的に言われておる自衛力であるといつたような詭弁は、これはどこに行つたつて通りやしません。そんなことならば憲法九条に初めから警察と軍隊との差別なしに、何も持つていてよかつた憲法制定当時からそういうことであつたと、こういう議論にしかならんと思う。
  98. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 憲法では戦力を持つことを禁止しておることであつて、何を持つちやいかんということは何も書いてない。戦力を持たないということが憲法で禁止してある。
  99. 吉田法晴

    吉田法晴君 これは論争になつて参りますが、論争を実はまあしようとは思つておらんのですけれども、戦力でなければ何でも持つてよろしいと。もう一遍その憲法九条なり、ほかのところを出して頂きたいのでありますが、国権の発動たる戦争も、それから国際紛争を解決する手段としての武力の行使もやらないと、それから戦力は陸海空軍を含めてその他の戦力もこれを保持しない。はつきり戦争の放棄、それから武力の行使、それから陸海空軍その他の戦力、交戦者の側を含めて戦力を持たない。而も交戦権も持たない。これははつきりしております。で、初めつからこの憲法九条が自衛力を、或いは外敵に当るべき自衛力を持つてよろしい。こういう解釈をしたものはどこにもなかつたんであります。今まで……。それから保安隊、予備隊については、それは国内治安に当るのであつて、外敵に当るものではない。それをこの保安庁で外敵に当るという大きな任務、飛躍的な任務を与えようというのが今の保安庁自衛隊もそうであるし、それからそれに関連してMSA協定の中で、この防衛力を持つ義務をここではつきり規定したのが実情じやありませんか。
  100. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) この協定の中では防衛力を持つということを期待しているのではありません。防衛力増強するということを規定しておるのであつて防衛力は、持つておるものをこれを更に増強する。増強すると言いますか、維持、発展とかいう言葉を使つております。が、要するに殖やすことを言つておる。憲法は、私は先ほども言いましたように戦力を持つことは禁じておる。あなたは一緒にされておりますが、国権の発動たる戦争とか、武力による何々ということは、国際紛争解決の手段としてはこれを用いないということであつて、更に戦力というものははつきり持つちやいかんと、こう書いてあります。
  101. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 委員長ちよつと……。
  102. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 吉田君いいのでございますか。
  103. 吉田法晴

    吉田法晴君 よろしうございます。
  104. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 只今吉田君の質問に対して……。
  105. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 私矢嶋君にお願いしますが、成るべく短くお願いします。
  106. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 自衛力の……。委員長これは大臣委員は闇取引をすべきものではないのですよ。これは委員会に大臣出席すべきか、すべきでないかは一にかかつてこれは委員長の所管に属することであつて……、もう、長いことはないですよ。  只今吉田君との質疑応答を聞いておりますと、この警察予備隊或いは保安隊の当時は、木村長官を初め大橋国務大臣、当時の国務大臣にしてもどなたも、何ですよ、国内の治安と秩序の維持を目標とするものであつて、外のものに向うための編成と装備を持つていないから、憲法には牴触しないのだということで徹頭徹尾述べられておるんですよ。ところが今度その今まで直接侵略には備えないというのを、直接侵略に対処するというように飛躍した。従つてそれらに対しての編成と装備を持つようになつて来たわけで、この段階になつてやはり憲法に牴触しないというのは、これは前言との食言ですよ。更に今まで、極く最近までですよ、あなた方は自衛のために武力の行使ができるということを、こういう発言をされ出したのは警察予備隊、その当時は自衛のために武力の行使ができるとは言つておりません。まあこの段階に来てなお且つ自衛のためには戦力を持たないと言つているのですが、この戦力の定義、これは又内閣委員会のとき詳しく突込んでいろいろ研究してみたいと思いますが、この戦力の定義についてもあなた方の毎国会の解釈というものはずつと変遷して来ているのです。これはすべてこの憲法の精神には牴触するものであつて、食言も極まれりと言わなければならない。その点を吉田君は追及していると思うのです。如何ですか。
  107. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 我々は外敵に当るような組織を持つておらない時代でも、若し外敵がやつて来た場合には、国民一同手当り次第にそこらのものを持つてこれを防ぐのは当り前だ、こう言つております。これは程度は違うけれども、鍬にしたつて、竹槍にしたつて、或いは小銃にしたつて武力ということについては何ら変りはありません。ただ武力の進化しているか、いないかということで、武力は当り前の話で、これは国際紛争解決の手段としては武力を使わないと書いてある。憲法にちつとも矛盾しておらないし、初めからそう書いてある。
  108. 吉田法晴

    吉田法晴君 法制局長官、さつきから聞いておられたので伺いたいのですが、今までの外敵が来た場合に鍬でも竹槍でもということを言われましたけれども、現在では鍬でも竹槍でも外敵に対して使うことを禁止しております。それが交戦権の否認だと思うのです。その趣旨はここで今争つているというよりも、従来の予備隊、保安隊か外敵に対して当るという建前であつたということを言われるならば、これは保安庁長官なり、何なりが今まで政府で言つて来られたことと矛盾する、はつきり矛盾いたします。自衛力というのは先ほどからも何遍も言われたように、外敵の急迫不正の侵害に対して国を守るのが自衛力漸増じやなくて、警察も自衛力だと言われるとすれば、それはごまかしも甚だしい。そんなごまかしは通りませんよ。今までの予備隊或いは保安隊が外敵に当る、こういうように理解されておつたのです。御答弁をお願いいたします。
  109. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私は警察予備墜保安隊が外敵に当る任務を持つているというよなことは一遍も言つたことはありません。それはそんなことを言つたとお考えになるならそれは非常に誤解であります。それから急迫不正な攻撃に対して他にとるべき手段がないときに、必要最小限度措置を講ずるというのは、これは国際法に認められている、吉備の権利を行使する範囲であります。国際法におきましては、国内における自衛権の問題を言つているのじやなくして、国と国との間における関係を規制しているのか国際法であります。従つてあなたのおつしやるのは自衛権の一部である。国際法の規定しているものをとつているのであつて、これだけが自衛権だというのではない。国として国内の治安を維持し、国内の暴動を抑えるということも、こういうものは自衛の権利であつて、ただ国際法はそういうことは規定していないと、こういうことであります。
  110. 吉田法晴

    吉田法晴君 この間から言われております自衛力、これは自衛権から始まつて国際法上軍隊と認められるかどうかということは別問題として、外国から急迫不正の侵害に対して国を守るべき問題について、この間から論議し、その限りにおいて自衛力ということを問題にしておるのです、防衛力というものを……。そうするならば、昔から防衛力を持つてつた自衛力を持つてつたと言われるなら……、国内の問題ではありませんここで問題にしているのは国外の問題、国際上の問題です。国際法上それが正式に軍備として取扱われるかどうかということは別問題として、問題にして来ておつたのは、国際的に他国の急迫不正の侵害に対して国を守る力を持つてつたかどうか、それについては従来は予備隊、保安隊というものは、これは国際的には働くものではない、外国の急迫不正に対して働くものではない、こういうことをはつきり言つて来たのが従来の政府の答弁であります。佐藤さんそこにおられますが、問題はお聞きになつたと思うのですが、従来自衛方、防衛力を持つてつた岡崎さんは言われる。問題にしておりますのは、この間からの急迫不正の侵害に対して自衛権かあるかどうか、そういう固有の権限があることを否定するものではないけれども、それを使う力については憲法上の制限があつたのではないか。而も予備隊、保安隊というものは外国に対して働くものではない、こう申されて来たと思うのです。自衛力或いは防衛力を、外敵の急迫不正の侵害に対して働き得るものを持つてつたということは言えないんじやありませんか、これが今の問題です。
  111. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 保安庁長官のほうが正確かと思いますが、私の言つたことについての御議論ですから一応私からお答えします。予備隊、保安隊等は外敵に当る任務は持つておりません。
  112. 吉田法晴

    吉田法晴君 持つておりませんか。
  113. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 任務を持つておりません。それははつきりしております。併しながら、自衛力は必ずしもそういう場合に、そういう任務を持つているものを使わなければならんということはないので、任務を持つていないものでも急迫した場介には使うことは当然であります。従つて自衛権も、或いは自衛権を行使する不完全なる力はあるのであります。今度それをややもう少し完全にしようということであります。
  114. 吉田法晴

    吉田法晴君 それではまあ不完全なものを持つてつた、それからそれをもう少し完全なものにしようと池田、ロバートソン会談のあとの何と申しますか、この公文書、それはフオーセズというのは、今私が言つておりますような急迫不正の侵略に対して、外敵に対して守る、デイフエンスという工合に考えられるのではございませんか。それから或いは常識的に考えまして、それはフオーセズではなくしてストレングスと書いてありますけれども、防衛力或いは防衛能力、これは防衛能力のほうがもつと広いと言われておりますけれども、少くともその防衛力、これが今の保安隊が自衛隊ということになるんだと思うのですが、それはそういう任務を持つものとして二面考えられておるではないかというような、これは常識だと思うのです。それはどういう工合に……。
  115. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) セルフ・デイフエンス・フオーセズ、フオーセズというのは先ほど御説明申上げましたように非常に広い意味であつて、その一部に軍隊の観念もある。又軍隊の観念のないポリス・フオーセズというような、いわゆるフオーセズもあるのであります。それでここにおける意味は、その広い意味の一般的な自衛力ということを申しておるのであつて、その具体的内容が、現在では外敵に当る任務を持つて、おらない保安隊であり、将来はこれが外敵にも当り得るような自衛隊になることも、法律ができればなり得るわけであります。この意味は広い意味で一般的に申しておるわけであります。
  116. 吉田法晴

    吉田法晴君 それではセルフ・デイフエンス・フオーセズと言われるのは警察の意味ですか。
  117. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) ほかに何もなければ警察という意味に当ります。併しほかに保安隊というものがあれば、やはり保安隊という意味に当ります。
  118. 吉田法晴

    吉田法晴君 保安隊は今警察と言われる、そうすると、日本の現状においてはセルフ・デイフエンス・フォーセズは保安隊を含んだ警察という以外にございませんか、そういう意味でしようか。
  119. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 保安隊か警察力であるかどうかは、これは見る人によつて違いましようが、要するに只今は十分なる力はなくて、も、安全保障条約の前文に謳つてありますように、これを漸増的に日本が責任を持つようにいたして行こう、その期待も書いてありますが、その意味でだんだんにこれを日本において漸増して行こう、こういうことの現われが只今法案等になつて出ておるわけであります、
  120. 吉田法晴

    吉田法晴君 昨日でありましたか、関連して質問をいたしましたときに、保安条約の前文のあれは、そういう防衛力日本漸増するかどうかということではなくして、あれは米軍の駐留を認めることと、それから基地を提供することと、それだけしかない、こういうお話でありました。今伺います防衛方の漸増という中には、量的にも質にもその防備力を殖やすと、こういうことを言つておられる。漸増すると言われる、今この問題にしているのは、その漸増の中で、量もですが、質的に外敵に当る任務を持たなかつた保安隊を自衛隊として外敵の任務に当らせる。そういう使命を持たせるのであるのか。そういう意味で、セルフ・デイフエンス・フオーセズ或いは防衛力という意味で言われておるのではないか。こういうことをお尋ねしておる。
  121. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 防衛力とか、自衛力という言葉は、そういう意味も含む広い言葉でありまして、それを具体的に如何にするかということは、日本自体で日本の場合はきめるわけであります。
  122. 吉田法晴

    吉田法晴君 それでは池田、ロバートソン会談でも、或いはMSA協定でも、その防衛力なり或いは自衛力というものは、保安隊を自衛隊にするかどうかということについては何らの責任を負うものではない。言換えるならば、自衛隊法を否決しても今のまま保安隊なら保安隊のままで国内警察で置いておいても、これは何らMSA或いは池田、ロバートソン会談には反しないのだ、かように解してよろしうございますか。
  123. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 池田、ロバートソン会談とか、MSAには保安隊を自衛隊にしなければならんということは何にも書いてありません。その点においては保安隊を自衛隊にするということは直接にこれには関連がありませんが、保安隊を自衛隊にするという法案は、同時に人員の増加等も、或いは編成についても規定いたしておりまして、それがあればこそMSA協定ができて、援助をもらう場合にその対象になるわけであつて、この法案が成立しなければMSA協定を結んでも援助を得る、つまり協定の目的は達せられないのでありますから、その意味では協定とは至大の関係があります。
  124. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 これは保安庁長官にはつきり承わつておきたいのでありますが、これから内閣委員会で審議をしますので、その都合もありますから、他の委員における質疑を承わつていましても、このMSA協定と防衛二法案は直接的には関係がないということを答弁されておるわけであります。只今岡崎外務大臣の御答弁によりますと、或いは若干の陸海の人数を殖やす、その人数を殖やすことに対してMSAで武器の援助が交渉されておるわけです。従つて現在の海上警備隊、それから保安隊、これをまああなた方で話合つた程度人員を増加する、そういうことさえやれば、今度の自衛隊法の直接侵略にも対処するというような内容を含んだ自衛隊法は、今度の国会で成立させなくても、MSA援助を受けるのとは無関係だ、こういうふうに私は今の説明を了承したわけですが、さようでございますね、念のために伺つておきます。
  125. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 外国からの不当な侵略に対処し得るいわゆる自衛隊を今度作ります。それによつて自衛隊増員をして今の保安隊よりもずつと殖えて参ります。それと見合つてアメリカからMSA援助を受ける、こういうことになるのであります。
  126. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 それでは両大臣からはつきり申して頂きたいのですが、さつきの吉田君に対する答弁は間違つておりますよ。MSA協定承認と防衛二法案とは密接不可分の関係にあつて完全に一体のものである。直接関係はないとかいうようなことは、全然そういう答弁にとれないわけなんですが、重ねて両大臣から明確にお答えを頂きたい。
  127. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 要するに法文上は、協定の中には保安隊を自衛隊としなければならんということは何にも書いていないから、その限りにおいては直接関連はないと申したのであります。併しながら、同時にMSAによつていろいろの兵器とか、艦船とか、飛行機等の援助を受けることになつております。これは自衛隊法案が通過することを見込みまして、直接の侵略にも対処し得る、まあ全部とは言いませんが、一部対処し得る程度の武器等を援助されることを予想して、この自衛隊法等を作つておられるのでありますから、この点においては至大の関係があることは当然であります。
  128. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 木村長官答弁して下さい。
  129. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) その通りであります。
  130. 吉田法晴

    吉田法晴君 岡崎外務大臣が先ほど私の質問に答えて、自衛隊が直接侵略に対応するかどうかということは、これは日本の問題であつてMSAなり、池田、ロバートソン会談とは何ら関係がないというお話でございましたが、先ほどの御答弁では、人員の増加或いは編成等は関係があるけれども、その任務の変化、直接侵略に対応するという任務の変化は、これは関係がないというお話でありましたから、私は保安庁法の中で、外務大臣から言われるならば、或いはMSA協定から言うならば、保安庁法の中から直接侵略に対応するという点を削除いたしましても、言換えるならば、自衛隊法をそういう点で修正をいたしましても何ら差支えがない、かように聞いたのでありますが、先ほどの御答弁と今の御答弁とは重大な違いがございます。先ほどの御答弁は私は間違いがないと受取つたのでありますが、重ねて岡崎外相の御答弁を聞きたい。
  131. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) あなたの御質問MSA協定自衛隊法との間に、何と言いますか、有機的な関係があるかというような趣旨の御質問でございますから、法文上はそういう約束は何にもない。併しながら、すでに保安庁側で期待しておられる装備等の質、量等もあなた方のお手許にあるはずであります。それを御覧になれば、直接侵略に当ることも考えて相当の量の装備兵器等の援助を受けんといたしておるのであつて、その点で実際上自衛隊等の二法案が成立しなければ、MSA協定を作つてもその意味の大半は失われてしまうということにおいては密接な関係があることは、只今申した通りであります。
  132. 吉田法晴

    吉田法晴君 この問題に時間をとるのは大変恐縮なんですが、残念ですが、防衛力という言葉で、池田、ロバートソン会談で防衛力という言葉が初めて出て来た。それからそれをMSA協定の八条の中に防衛力という言葉ではつきり現わされている。その防衛力の概念と、それからその中に含まれている外国の直接侵略に対応する急迫不正の侵害に対処する、こういう任務と、自衛隊法の直接侵略に対応するとという質的飛躍とは関連があるのじやないかというお尋ねをしたところが、いや、それはございませんというわけでありますが、さつきの御答弁でいうと、人員の増加、或いは編成、向うから装備を支給される、そうしてこちらで人員を殖やすという関係はあるけれども、外敵に対処するかどうかということは、これは関係がない。警察であろうと何であろうと、その場合には働くだろう。だから保安隊であろうと、或いは自衛隊であろうと、そんなことは関係がない、こうはつきり言われた。
  133. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私は言葉尻をとらえられていろいろ議論をするのは好みませんから、若しそういうふうに御解釈でありますなら直しまして、あとから答えたのが正確でありますから、さよう御承知願います。
  134. 吉田法晴

    吉田法晴君 言葉尻じやありません。先ほどから防衛力といい、或いは自衛力という概念を分析して、その中にはどういう要素が入つていると考えておられるか、それはあなたは外敵に対するというのは含まれておらん。或いは池田、ロバートソン会談のセルフ・デイフエンス・フオーセズの中にも、或いはMSA協定の中のセルフ・デイフエンス・ストレングスの中にも外敵に当るというものは入つておらん。入らなくてもいいのだというお話でございましたから、それなら自衛隊法との関係はないじやないですか。それなら自衛隊法の中の外敵に当るというものを削つても、MSA協定自衛隊法のとの間に関係はないですかと言つたら、その通りであると言われた。
  135. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) その点なら言葉尻ではありません、速記をよく御覧下さい。私はセルフ・デイフエンス・フオーセズというのは、軍隊も含むし、警察も含む、広い概念である。外敵に当るものは含まないとか、そんなことは全然言つておりません。
  136. 吉田法晴

    吉田法晴君 話が引つくり返りましたが、それじやセルフ・デイフエンス・フオーセズは、その池田、ロバートソン会談で言われたか、或いはMSA協定防衛力という中に入つているのですか、入つていないのですか。
  137. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは一般的に広い意味でありますから、場合によつては軍隊も入り、場合によつては警察も入り、場合によつては保安隊も人り、場合によつて自衛隊も入り、あらゆる自衛力というものは全部これに入つております。
  138. 吉田法晴

    吉田法晴君 MSA協定自衛力という言葉は一般的な問題ではございません。このMSA協定に書いてある防衛力という言葉の中には、そういう外敵に当るという機能は入つておる。今あなたの言われる防衛力増強の広い概念の中だけれども、ここに書いてあるのは、これは具体的な事実であります。ここには入つておるのですか、入つていないのですか。
  139. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは広い意味で何にでも使われるようになつているから、日本の場合は只今のところでは保安隊、自衛隊ができれば、自衛隊がこれに含まれます。
  140. 吉田法晴

    吉田法晴君 概念として含まれる場合もあるし、含まれん場合もある。そうすると、自衛隊法で直接侵略に当るか当らんかということは、これは日本の自由、自衛隊法でやれる直接侵略に対応するというのが憲法違反であると考えて、自衛隊法の審議に当つてその文句を削るべきだと、こういうことを参議院がやつても、それは差支えありませんかと言つたら、最初はそれは差支えなかろうと、こう言われたのです。
  141. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 差支えないとは言いません。この防衛力の中には保安隊を自衛隊にしなければならんという義務は負つていないということを申上げたのです。同時にお手許にあるような保安庁の期待量から申せば、この自衛隊法案等が成立しなければ、MSA協定は実際上大半の意味が失われるから、その意味では実質的には至大の関係がある、こう申しておるのです。
  142. 吉田法晴

    吉田法晴君 重ねてお尋ねしますが、その実質的に関係があるというあれの中に、量的な問題じやありません、最初に言われた人員の増加或いは編成という問題だけでなしに、外敵に当るという任務が保安庁法の中には入つておりますが、それはMSA協定関係がありますか、ありませんか。
  143. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) MSA協定の実質である艦船であるとか、兵器とか、装備とかの貸与には実質的に非常に関係があります。
  144. 吉田法晴

    吉田法晴君 まあ初めからの質問に答えられた答弁とあとからの答弁とは、いわば答弁を訂正されたようにまあ解釈いたしますが、そこで自衛隊の任務として附加わるものが問題になつて参りますが、それはもう少しあとにいたしまして、時間もございませんから、先に進めたいと思うのでありますが、先ほど来自衛力或いは防衛力漸増の目標と申しますか、或いは数字について質問がございましたが、これについては先ほどのような、はつきりしないままになりましたが、重ねて岡崎外務大臣にお尋ねしたい、池田、ロバートソン会談の際にも、アメリカ側から日本に対して十個師団程度、人数ですよ、十個師団程度人員増強することが期待せられる、或いは了解せられたとさえも言われておる。なおそのことは、これは公文ではございませんけれども、台湾で出ております公論報の中にもそういう点ははつきり書いてございます。日本軍整備の目標はアメリカ側の希望によると五カ年間に十個師団の陸軍を編成することになつておるが、その編成はアメリカ式によるのか、或いは日本ではその編成方法は違つたものを主張しておる、日本側計画に従えば或いはもつと兵力は少くて済むかも知れない、こういうことが言われております。この種のことはこれは新聞雑誌等で周知の事実でありますが、そういう十個師団程度の員数を増員することを要求されたかどうか、その点が一つ。それからそれについて、その程度の、数は正確に編成の主張が違うからわかりませんけれども、十個師団程度の人数を揃えることについて了承を与えられたかどうか、その点を外務大臣にお伺いしたい。
  145. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは本会議でもその他の委員会でもしばしば政府が述べておることであります。そういうような要請をされたこともなければ、その程度の員数を殖やすことを約束したことも了解したこともありません。政府はこれはしばしば申しておるので、新聞雑誌よりも政府の申しておることを信用して頂きたいと思います。
  146. 吉田法晴

    吉田法晴君 日本自身が負う義務の問題でございますが、第三国の関係は非常に心配をせられております。それは自由世界防衛力の発展及び維持に寄与するという文句、それから六条の、アメリカ協定を結んでおります他の国に資材、需品或いは装備、六条の一項のbのほうには役務という言葉も入つておりますが、そういう点に関連してでありますが、日本が自由世界防衛力発展及び維持に寄与する態様を軍事的義務に関連してお尋ねいたしたいと思います。従来防衛力の発展及び維持というのは、日本防衛力の発展及び維持にとどまる、海外派兵することはありません、但し役務については、これは朝鮮事変のときに協力した程度には或いは協力することになるかも知れん、こういうお話でございますが、こういう文言から、非常に地域的集団安全方式には賛成だということで太平洋同盟と申しますか、アジアの広範囲に亘ります安全保障条約が提示せられた場合に、これを日本としては断わりにくいのではないか、或いはそれに基きます極東統一車と申しますか、アジア的な軍事的な関係ができます場合、これは今のような多少程度の低い軍隊と、これは政府のほうで言われるのでありますが、今の防衛力の範囲内でも参加することになるのではなかろうか、それから先ほど来インドシナの問題等も出ましたが、東南アジアの現状から考えまして、或いは近い将来について、日本の現状においても可能な統一行動を要請されるのではないかということが心配せられますが、その際に役務、の役務の中には労力だけでなしに、或いは日本の現状の保安隊或いは自衛隊等がこれは集団安全保障条約の発展と、それから統一軍と申しますか、これらに関連いたしますけれども、日本防衛力が参加するということが心配されるのであります。三点について一つ外務大臣の御答弁を願いたいと思います。
  147. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) どうもこの問題は同じことを何回も何回もご質問があつて、同じ答弁を何回も何回もしなければならんので甚だ苦痛であります。今日もこれはもうお話をいたしておるのであります。  第一には、そういう集団安全保障というものは、一般的には国連憲章の枠内でやられることは結構であるけれども、日本が入れるか入れないか、これは具体的になつて見なければわからない。  第二に、第八条の規定は人力とか、施設とか、資源とか言つておりますが、それの許す限りとあるので、なまで人力とか、資源を供給するというものじやない。従つてインド・シナ等にしても、別段我々はこれに介入する意思はない、この通りであります。
  148. 吉田法晴

    吉田法晴君 今まで論議せられたことも私も速記録等を読んで知つております。私は協定の文章の自由世界防衛力の発展及び維持、それから或いは資材、需品、装備或いは役務と書いてある第六条の文言からして、或いはすくにはそういうことも困難かも知れませんが、一般的な基本として岡崎外相は論ぜられますので、具体的に条文の文章に関連して、そういう解釈の余地はないかどうか、或いはそういう地域的集団安全保障条約の拡大が提議された場合に、二の協定に関連して断わりにくいのではないか、こういうことを心配してお尋ねしておるわけです。
  149. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) この協定はこの協定であつて、それ以上のものでは何もありません。従つてこの協定が拡大するとか、阿とかということは別問題で、この協定だけをこの際は御覧になるより仕方がない。これ以上に想像して、広がるか広がらないかということを議論しても仕方がないのであります。
  150. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) それでは吉田君に申上げますが、あなたの時間は菊川君の分も合わせて切れましたので、この程度でお願いしたい。
  151. 吉田法晴

    吉田法晴君 私が先ほど了解しておりましたのは、答弁を含めて三十分じやなくて、質問だけ三十分ということですが。
  152. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) その通りです答弁を含まないで三十分経越しましたから申上げたのです。ここでストップウオッチを持つてつておりますから、極めて正確であります。
  153. 吉田法晴

    吉田法晴君 予想外に時間をとつて大変恐縮でありますが、あと一、二点お許しを頃きたいと思うのでありますが、如何でしようか。
  154. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 大臣は先ほどから無理をしてここにとどまつてもらつておるのです。皆さん方も御承知だろうと思うのですが、これ以上私はこの委員会を続けるということは、私にはいたしかねますから、どうぞこの程度質問を打切つて頂きとうございます。では吉田委員、一点だけ……。
  155. 吉田法晴

    吉田法晴君 というのは、実は保安庁法自身に関係しては内閣委員会で質疑する機会があると思いますが、この協定と保安隊とが関連をいたします軍事顧問団のことについて、一点だけお尋ねをしたいと思うのでございます。軍事顧問団の規定は第七襄に書いてございますが、それが日本の保安隊或いは自衛隊との関係というものは実はどこのもでておらん。そこでこれについてお尋ねいたしたいと思うのでありますが、軍じ顧問団の任務、これは「援助の進ちよく状況を観察する」と書いてございますが、想像せられますのは、軍事顧問団の任務について六つほど考えられますから、それを一つお尋ねしたいと思います。装備、資材或いは役務の引渡し、これの管理についても、これらの装備、資材、役務等の管理も軍事顧問団がやられるのかどうか。それから第二は指導訓練もやられるかどうか。それは四年間指導訓練を受けて、或いは留学しておつて、もう必要はないのではないかという話が保安庁の中にもあると言つておりますが、今後相当永久的に訓練指導がなお続けられることになつておるかどうか。それから装備、資材、役務に見合う防衛力の発展維持ついても観察の便宜を与えられるのか、言換えれば日本防衛力の発展維持ついて向うで観察をされる、或いは多少その辺の限界が指導といつたようなことにも当るのかどうか。それから一千万ドルの使用についても自由に使用するように書いてありますけれども、使用についても防衛力増強ということに関連して観察がなされるのかどうか。或いは域外買付についてもそうなのか、或いば今の保安隊或いは自衛隊が今後使用いたします兵器の種類等、これを決定し、或いは注文をすることについて軍事顧問団が意見を述べられるのかどうか、或いは調達実施本部を通じてなされるという想像もあるわけでありますが、そういう点について、以上軍事顧問団の任務についてお尋ねをいたしたいと思います。それから軍事顧問団の事務費を日本が負担するということについではどうしても納得が行きませんが、どういう理由によつて日本側が負担するのか、それからもう一つ一落しましたが軍事顧問団の任務の中に、協定に関連して作られる秘密保護法のその秘密の決定について顧問団から意見が述べられるのかどうか。その秘密を軍事顧問団が決定されるのか。それからもう一つ、実際として、従来大演習の想定等は顧問団の意見が徴されておつたのか。これらの点について両国大臣から御説明を承わりたいと思います。
  156. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 一つ一つお答えいたします。兵器等の管理はいたしません。訓練については、原則的には訓練は自衛隊の人がやるのでありますが、その訓練を更に上にいてよく注意し監督するという仕事はいたします。装備、資材に見合う防備力の発展維持等については干渉はいたしません。一万ドルの使用については関与いたしません。域外買付につきましては、一部はその移動引渡し等についての責任を持つておりますから、或る程度の関与はいたすかと考えております。それから秘密の決定等は、これはアメリカの政府が法律できめておることであつて、それに基いて日本側で適当なる措置をとるのでありまして、顧問団は関与いたしません。(「相談もしませんか」と呼ぶ者あり)事務費は、これはいずれの国も顧問団を引受けている国はその事務費は自国で以て賄つておりますから、これは必要なものと考ております。
  157. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) それはは質疑者の持時間は全部切れましたし、切れたばかりではなく超過いたしておりますので、これでこの連合委員会質疑は終了いたしたいと存じます。  それでは連合委員会はこれで散会いたします。    午後一時十分散会