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1954-05-25 第19回国会 参議院 運輸委員会 第31号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年五月二十五日(火曜日)    午後二時二十二分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     前田  穰君    理事      入交 太藏君    委員            岡田 信次君            仁田 竹一君            一松 政二君            森田 義衞君            大倉 精一君            大和 与一君            木島 虎藏君   政府委員    運輸大臣官房長 山内 公猷君    運輸省鉄道監督    局長      植田 純一君   事務局側    常任委員会専門    員       古谷 善亮君   説明員    日本国有鉄道施    設局長     佐藤 輝雄君    東京陸運局鉄道    部長      伊東 道郎君   参考人    私鉄経営者協会    技術委員会委員    長       井上 隆根君    小田急電鉄株式   会社専務取締役  沢  勝蔵君    小田急電鉄株式   会社専務取締役  服部  諭君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○運輸一般事情に関する調査の件  (鉄道踏切改善に関する件) ○参考人の出頭に関する件   —————————————
  2. 前田穰

    委員長前田穰君) これより運輸委員会を開会いたします。  運輸一般事情に関する調査中、鉄道改善に関する件を議題といたします。  本日は参考人の方に三人おいでを願いましていろいろ御意見の開陳をお願いいたしたいのでありますが、参考人方々は御多用中をお差繰り下さいまして御出席下さいましたことを御礼を申上げます。  実はこの踏切保安という問題は、先般運輸一般事情調査中に問題になりまして、当委員会としてもう少し詳しく調査をいたしたいという考え方から、本日の委員会を開きましたような次第であります。踏切保安の問題は、別段今日に始まつた問題ではないのでありまして、いわば古くして且つ新らしき問題だと思うのであります。長く鉄道当局においても種々研究を尽されて来たわけであります。最近に鉄道監督局から踏切保安に関する基準一般地方鉄道に示されたやの話も聞いておるのでありますが、私どもはまだその詳細を承知いたしておりません。国有鉄道におきましても、それぞれの地方において、経費査定立場から基準がそれぞれ設けられて来ておつたようにも思うのでありますが、国有鉄道全体としてどういうことになつておりますか、詳しく承知いたしておりません。この問題は一面において踏切通行せられる国民諸君の自制に待つべき点も多いと思うのでありますが、同時に鉄道を経営しておる側の万全なる保安設備を要するということになるわけであります。一面財政の面もありまするし、それから鉄道が当初敷設せられましたときの設計協議の場合における交通実情と、その後その附近の発展に伴いまして、交通事情が非常に変つて参るといつたよう事情もあろうと思います。各般の面からこの踏切保安ということを如何ようにして行くのが望ましいかということについて、専門家であられる各位の御意見を聞いて、私どもの将来の調査参考に資したいと存ずる次第でございます。  なお、本日お集りを願いました参考人の中には、踏切を常に通行しておられる側の方も特にお越しを願いまして、踏切通行者立場からのお考えを伺いたい、かように存ずるわけであります。畢竟本日の会合の趣旨は、一般的に踏切保安ということに関する我々の参考資料を頂くということにあるわけであります。どうかそのおつもりでそれぞれお考えを忌憚なくお述べを願いたいと存じます。  なおこの際参考人の方に申上げておきたいと思いますのは、大体十分程度お話を先ず以て各参考人から伺いまして、その全部が終了いたしました後に、私どものほうの委員から御質問を申上げたい、かように存じておりますので、そのお含みで順次御発言をお願いいたします。先ず井上隆根君。
  3. 井上隆根

    参考人井上隆根君) 私が井上でございます。  踏切の問題は只今委員長お話がありましたように、古くして且つ新らしい問題で、私どもも日夜苦心しておるところでございますが、何分にも国家の人口の増加が甚だしくて、昨日の田舎道は今日は都会の重要なる交通路となるというような事情がございまして、私鉄全体といたしましても相当努力をいたしているつもりでございますけれども皆さま方の御安心の行くような点にまで達し得ないことを誠に遺憾に存ずる次第でございます。私鉄といたしましては、従来国鉄一つ基準らしいものがございまして、国鉄基準を大体基準として今までやつて参つておつたのでありますが、併し何分にも国鉄私鉄の間には性格的に相当な違いがある。例えば勿論東京附近のごとき電車線におきましては、国鉄私鉄も大した違いはございませんけれども、一般的に言いますというと、国鉄蒸気機関車を以て運転しておる。併しそのユニツトといいますか、単位は相当長くて且つ重い。ところが私鉄におきましては、ユニツトは小さくて且つ回数が非常に頻繁であるというような事情がありますので、どうも国鉄基準をそのまま適用するということにいろいろ不自由な点があるというふうに感じましたので、昭和二十六年以来、私どものほうで集りまして、何とか踏切改善について手を打ちたいということを研究し始めたのでありますが、事頗る面倒でございまして、遅々として進みませんでしたが、どうしてもこれは運輸省監督局にも御協力を願わなくちやならんというようなことから、私どものほうでいろいろと資料を作りまして、そして監督局にお願いしておまとめ願つたというような経過で以て、最近できましたのがそういうふうな経過を辿つてできたものでございます。この最近できました私設鉄道軌道踏切保安設備標準とししますのは、大体私鉄全体の踏切が二万七千九百八十四あるのでございます。このうちに踏切の幅が一メートル八十以上のものが、約一間でございますが、これだけが一万九千五百四十四ございます。そのうちから東京名古屋大阪福岡、この地域だけのものをピツクアツプしまして、そうして全国に及ぼすことはなかなか困難でございますので、便宜東京名古屋大阪福岡、これだけの地区を調べたならば大体要領を得るのじやなかろうかというような想定の下に、一万九千五百四十四の中から一万五千六百十一を選んで、そうして大体全体の踏切の数の八〇%でありますが、これを選びまして、そして一種、二種、三種、四種——一種、二種、三種、四種につきましてはあとで申上げますが、これらの踏切をとりまして、そしてこの踏切通行量と、それから事故実情調査して、そしてどの程度踏切交通量に対しては保安設備を施すべきであるかということを算出して、そしてあの基準が作られたようなわけでございます。  大体の考え方としますというと、この基準は一日当りの交通量が二千人、それから列車通過回数が一日に四百回、そういうふうな地点をとりまして、そうしてそれが七年間に一回の事故を起す、そういうもの以上に危険な所は保安設備をするというような考え方であの基準を作つたものでございます。この基準は只今お話しましたように、極く最近にできたものでありまして、この基準によつて、それぞれ私設鉄道はその標準によりまして今から施設をするわけでございますが、然らばどれだけが今日この標準に反しておるか、標準に合致しない点があるかといいますと、その現在第四種と申しておりますもののうちで、保安設備を必要とするようになるものが二百九十八カ所、それから現在四種と称しておるもののうちで、やはりこれは限界が若干ありますけれども、そのうちA線B線というものがありますが、A線によつて保安設備を必要とするものが二百九十八カ所、B線保安設備を必要とするものが三百四十八カ所というようなことになつております。でありますからして、合計しまして約七百四十カ所くらいの第四種という現在保安設備の付いていない踏切がこの標準によりますと防護されるということになるのであります。併しながら現在保安設備を有しておるものの中でも、三百四十七カ所というものは、これは付けなくてもいい所に付けてあるというようなものもあります。併し現在付けてあるもので今度の標準で付けなくてもいいというようなものを取ることは、これは甚だ困難であろうと思いますので、結局これはむずかしい。結局先ほど申上げましたように、この標準によりますというと約六百四十八カ所ばかりの踏切が今後この標準防護されるということになるのであります。先ほど一種、二種、三種、四極と申上げましたが、第一種と申しますのは、要するに遮断機を以ちまして、通過するときに通行人踏切を通さないようにする設備を第一種と申します。従いまして番人がおつて遮断機を上げ下げするものもあります。或いは機械的な遮断機を付けまして通行者通行を防止するというふうなものもこれに含まれておるのであります。  それから第二種と申しますのは、これは国鉄では例のないことかも知れませんが、私鉄では大体朝の五時頃から夜の零時半くらいまで、つまり初電から終電までは電車が頻繁に動きますから、夜中に動かないのを原則といたしておりますので、この間は踏切番を置かないというふうなものでございます。踏切番を置かないし、遮断装置も付かないというのを第二種と称しておるのでございます。  それから第三種というのは、機械でなくいわゆる自動警報機と申しますか、ベルが鳴る、或いはあかりがついて通行者に今列車が近付きつつあるということを自動的に表示するような設備になつておるものを三種と称しておるのでありますが、四種というのは、それ以外の踏切に何も防護をしていない、つまりどうしても通行する人が自主的に警戒して通らなくてはならないけれども、なおそれにもかかわらず防護設備はない。三種のごときは自主的に通つてもらえますけれども、それに対してベルが鳴り、或いはぴかぴかとあかりがついて、おのずから通る人に警戒を与えるというような装置のものでございます。そういうふうな状態でございますが、私ども今までこの踏切というものをいろいろ取扱つて考えますというと、どうも踏切というものが他動的に、つまり設備的に通行者通行防護するということを全面にやることができればこれは非常に結構でありますけれども、そこまでの経済的の余裕がないというような場合において、どうしても通行方々自分踏切を通るのだという意識を濃厚にして頂くということがかたがた必要じやないかと、国家立体交叉というような非常に完全な踏切事故防止をする力がない以上は、鉄道もやはり監督官庁が与えた基準従つて設備をするけれども通行者も又同時に自分は危険なる踏切を通過しつつあるのだという自分自身で以て防護する、つまり踏切通過注意義務というものを自覚するというような方法をとるのが必要ではないかと思うのであります。これは二十五年以来行われております全国踏切安全週間におきまして、この安全週間のある時には、踏切事故が非常に減ずる、そうでない場合には又踏切事故が殖えて来るというようなことからも、他動的に、或いは法的に何か通行者自身が自覚して注意義務という観念を持つて踏切を通過するか通過しないかということが非常に踏切事故数を左右するように思うのでありますからして、私ども鉄道業者立場としましては、鉄道業者としてもどこまでも施設に、標準改善に、基準の実施に忠実でなくちやならんと同時に、やはり一般通行者踏切を通る時にはみずから危害を招くようなことのないように注意して通るような何か法的の措置というようなものができるならば、そういうものをとつて頂けば非常に踏切事故というものは減るのではないか、こういうふうに考えておる次第でございます。  大体そういうふうなことでよろしうございますか。又御質問がございましたら申上げたいと思います。
  4. 前田穰

    委員長前田穰君) 次に、沢勝蔵さんに御発言をお願いいたします。
  5. 沢勝蔵

    参考人沢勝蔵君) 小田急の沢でございます。  私鉄踏切の一般的な問題につきましては、井上さんからお話がございましたので、私からは関東私鉄が内部でどういうふうに踏切の問題を取扱つておるかということを申上げればいいのではあるまいかと考えまして、私のおります小田急踏切の問題をどういうふうに調査をし、設備改善考えているかということを申上げたいと思います。  小田急におきましては東京近郊では非常に踏切の数の多い電鉄でございまして、現在百十キロの営業線に対しまして、踏切が五百十八カ所ございます。このうち一種と申しまして番人の付いておりますものが現在三十四カ所、二種と申しまして、番人は付いているが、時間が来ると番人を帰すという個所が四カ所でございます。それから第三種と申しまして、警報機が付いております個所が四十五カ所、このうち一カ所は人の付いておりません自動門扉がついております。それから何も警報装置、音とか光のない、光と申しますか、閃光がぴかぴかと光ります装置のないのが四百三十五カ所ございます。  こういうような状況でございますので、踏切の問題は、最近交通量が、どんどん自動車交通が殖えて参りますために、我々が非常に頭を悩ましておる問題でありますので、こういうふうなことで毎年十月頃、秋に全踏切交通量調査いたします。それでこの交通量調査いたしますと、時間別それから種類別交通が全部出て参りますので、これを或る基準を設けまして設備をすることを考えておるわけであります。  改善方法につきましては、先ず第一番に、交通量の少い踏切は、踏切道があるということを通行人に気を付けさすようないろいろな柵垣ですとか、そういうものを作ることにいたします。それから道路が不完全な所は道路との取付けをよくするというふうな改良方法も行います。それから基準でございますが、先ほど井上さんから国有鉄道基準があるというお話がありましたが、私鉄国有鉄道と同一の条件をとることができないものでありますので、各社でそれぞれの基準こいうものを作つております。私のほうで作つております基準は、大体次のような基準でやつております。列車回数が一日五百回ぐらいの所は、これは私のほうでは新宿と成城の間までであります。ここらあたりは交通量に或る換算率を掛けましたものの総和が千九百を越しますと、警報機を付けるというふうに考えております。それからそれが六千以上になりますと、番人を付けるというふうな標準をとつております。成城—登戸間、これは一日約三百回、それから登戸から西のほうへ参りますと、一日電車回数が百三十回ぐらい、それぞれにそれぞれの標準作つて、これでこの標準によりまして、なおその上に見通しがいいか悪いかというようなことを勘案いたしまして改良を行なつておるようなわけであります。  大体こういう標準で行なつて参りますと、どういうふうな結果が今まで現われたかと申しますると、二十七年度には、四種から三種になりました踏切が、二十七年から二十八年に移ります一年間に五種から三種に三カ所移つております。それから二十八年の末からこの四月、現在までにやはり三カ所殖えております。それから九月まで一応私のほうの今度の予算の期日でありますが、九月までには更にこれが二カ所殖え、それから一種と申します番人が付きます踏切が一カ所殖えることになつております。大体こういう標準を用いて改良を行なつて参りますと、年間四、五カ所から六、七カ所ぐらいの今後改良が行われて行くのではないかと考えるのであります。  大体一般論について、井上さんからお話がございましたが、関東の一例といたしまして、小田急がやつております踏切設備基準についてはこの程度にとどめます。
  6. 前田穰

    委員長前田穰君) 次に、服部諭君に御発言を願います。
  7. 服部諭

    参考人服部諭君) 最初に、今日運輸委員会で私どもの請願を取上げて頂いたことを非常に有難く感謝する次第であります。  私は昨年十月の三日に小田急祖師ケ谷大蔵第二号踏切におきまして子供を亡くしました親でございます。その以前から踏切については非常に危険を感じておりましたのですが、何せ自分のことにならないとさほど痛感していなかつたのでございます。幸いにして周りの人が、町の人が、又小学校その他の人が踏切施設について重大に感じて是非この点を改善してもらいたいと言いまして、小田急踏切改善要求貫徹同盟というものを皆様の力で作りました。その後小田急さんに上りまして、当時踏切につきまして懇請いたしましたけれども、常におつしやられることは、会社専用軌道である、専用軌道通行しているのだから、むしろ事故の起きたのは通行人のほうの責任があるのだ、こういうふうなことを言われておる次第なんでございます。その他たびたび会社側に上りまして懇請いたしましたところが、大体先に申したようなことが主体になりましたので、どうしてもこれは法の改正、もつと監督権強化をして頂かなければ、沿線の住民は安心して暮らして行けないということを同盟皆様方考えた次第でございます。そうして先ほどからお話がありましたけれども、従来の踏切事故を見ますと、非常に整備された所においては事故が少くて、むしろ整備されていない第四種踏切について決定的な事故が多い。これは代田二号におきまして児玉さんのお子さんが亡くなり、又御主人が亡くなつたことによつてもはつきりわかることでございます。そういう点から考えまして、是非第四種の踏切をなくして、せめて第三種にしてもらいたいということが同盟の全体の要求として今日出ているわけなんでございます。  それから踏切施設のことにつきまして、大体関東陸運局の調べによりますと、京王が一七%五、京浜が四一%、京成が三五%、それに比して小田急踏切施設におきましては一四%三という数字になつているということがわかりました。その結果、昨年、二十八年度の同調査におきまして、事故発生総数京王四十五件のうち死亡者が十二名、負傷者が十名、京成三十七件のうち死亡者十二名、負傷者二十名に比して、小田急事故総数は七十件のうち死亡者が二十五名、負傷者が十二名であるというような多数の数字を現わしているというようなことは、現実の踏切施設の不完全ということが証明されるということを私どもは感ずる次第でございます。このことにつきまして、私の子供事故が起きましたときに成城署交通係の所へ行きまして、この施設の整備についての監督はどうなつているかと申しますと、私が成城署に勤務して以来、監督局から一度も施設のことについて監督したということは聞いていない、踏切道について監督したということは聞いていないという次第で、監督官庁としても、この点非常に不備ではないかということを私どもは痛感する次第でございます。  それから同時に申しますと、私ども事故が起きてからその後小田急の人が各被害者の所へやつて来まして、大体においてここに現われているように相当数の所へ行きまして、かなり暴圧的な態度でお前のほうが悪いのだからどうしても我慢しろというような調子でやられておりますし、又一つの例としましては、下北沢に金子という葬儀店がございまして、その葬儀店の親交さんが事故がありますと私どもの所へ来まして、まあまあとなだめまして、問題は起してもしようがありませんから、何ともしようがないというようなことを申しまして、大体において香奠が千円、そうして見舞金が三千円という形で処理されているというのが多い次第なんでございます。こういうことは小田急が如何に事故処理を安易な形で処理して、そのためか、被害者の方方が何となく忿懣のやり場所がなくて非常にあとから残念がつている次第でございます。この問題がちつとも公正な形で処理されていなくて、かなり大きな禍根を残して処理されているような状態であります。これは大きな意味において社会不安を来たすことではないかと思う。大いに小田急さんに交渉しているのですが、なかなか小田急さんとしてはこのことを取上げていない次第であります。  その他運転士事故処理に対しても非常に不満で、適当な処理をいたしておりません。殊に児玉さんのお子さんが亡くなられたときには、三時間以上も怪我をした者をそこらに放置して行くような状態で、結局死に至らしめたというような事故処理の点に欠陥があると思うし、又而も児玉さんのお子さんの骨だとか肉片が線路の傍に簡単に埋められているというような処理をされているということでございます。こういう点を考えまして、私ども常に考えますのに、運転士の教育と申しますか、運転士技術に対しても非常に不安を感じており、一体どこでこれを監督しているのか、どこで教育しているのか、少くともパーマネントとかその他の業種に対しては国家試験があるにかかわらず、恐らく国家試験をされてないのじやないかと考えている次第であります。又制動機装置にしても、非常に不備であるということを児玉さんの場合なんかにおいても考えられております。  最後に申上げたいと思いますのは、やはり踏切の問題と同時に私は交通不安という点から考えまして、小田急労働者がどのように働いているのかということについてちよつと懸念をいたすのでありまして、聞くところによりますと、小田急経営電車区におきましても、普通のダイヤについても運転士その他が七名不足している。そうして最近みたいに非常に臨時電車が多くなると、非常な労働強化になつて、そのために事故が非常に多いということが考えられます。そうした点におきまして、更に先ほど申上げましたように、小田急踏切が他社に比べまして非常に劣つているということと、四月一日からスピード・アツプして電車回数が多くなつているという状態でございます。そのような状態でありますので、どうしても小田急電車回数を多くし、同時にスピード・アツプする以上は、踏切を完全なものにしてもらわない限りにおいては、住民として安心して暮して行かれないということを痛感している次第でございます。このことは単に小田急だけの問題でなくして、西武線の鷺ノ宮でも、又井草でも、京王線の烏山でも、又東横線の祐天寺附近におきましても、やはりこの問題が大きな問題となり、踏切の問題が大きく取上げられておるというような次第でございまして、このことに関しまして、ほかのことでございますけれども名古屋から、又三重県から、大阪から、いろいろな方面から是非踏切を完全にしてもらいたいという要望の、激励のお手紙を頂いておる次第でございます。何とぞ皆様のお力を以ちまして安心して住めるような、そうして安心して通行できるような踏切法規作つて頂きたいと思います。  もう一つ先ほど申しましたけれども踏切施設を完全にやらない限りは、幾ら交通安週間をやつて頂いたところで、我々としては安心していられないということを申上げて終りにいたしたいと思います。
  8. 前田穰

    委員長前田穰君) それではこれから質問に入りたいと思いますが、本日は政府委員鉄道監督局長植田純一君、関係当局として日本国有鉄道施設局長佐藤輝雄君、それから東京陸運局長が旅行中不在でありますので、東京陸運局鉄道部長伊東道郎君の出席を得ておりますので、これらの方々に対する質問のおありの方は併せて御質問を願いたいと存じます。
  9. 大和与一

    大和与一君 先ず国鉄施設局長に、踏切問題に対し国鉄はどういうふうな考え方或いは措置をしているかということを、十分以内くらいに一つお話を頂きたいと思います。
  10. 佐藤輝雄

    説明員佐藤輝雄君) 国鉄にも現在踏切の数は総数にいたしまして約四万一千くらいございまして、数といたしまして相当な踏切を持つておりますし、又事故発生から見ましても、踏切事故だけは、他の事故が減少するのに比べまして、踏切事故は増加して行くという誠に憂慮すべき状態でございます。それでこれに対しまして私たちといたしましても、交通の安全並びに交通円滑化というような見地から、是非ともこれを解決して行かなければならないということで、今まで各種の努力をして参りました。  例えばどのくらい今まで踏切に金をかけて来たかと申しますと、この二十八年度で申しますと約五億四千万円、二十九年度で約五億七千万円くらい踏切施設に金をかける予定にしております。  それではどういうふうなことに踏切の金をかけておるかと申しますと、これにはいろいろございますが、先ず大きなのは立体交叉の問題でございます。これも年々大小合せまして二十カ所くらい改善して行つております。併しこれはなかなか道路管理者との協議も要しまして割合に時日がかかり、進行が思うように行きませんのと、又金の点からして非常な経費を要するので、数にも制限を受けるような次第でございます。その次にやつておりますのは、見通しの悪い踏切に対する警報機の設置でございます。二十九年度に対しましては、大体二十カ所くらい予定しております。御存じのごとく道路交通取締法の第十五条によりますれば、自動車は踏切で一旦停止することになつております。勿論警報機があればその警報機の現示に従つて差支えないことにもなつておりますが、大体一旦停止するのを原則としておりますし、又諸外国の例に見ても、そういうような状態でございますが、この一旦停止と、見通しの悪い踏切におきまして警報機を設置すれば大体事故は防げるのじやないかというふうに考えておる次第でございますか、併し実際におきましては、この四月の十八日に実は国鉄の福島県下におきまして大きな事故を二つやつております。その一つは、東北本線の金谷川の駅の踏切でございますが、これは朝オート三輪が踏切を横断して参りまして、道を間違えてバツクした、そこに急行貨物が来て引つかけたという事故がございますし、それから常磐線におきましては、久ヶ浜近くでございますが、山側から海側に向つて道がついております。この道が常磐線を横断しておるのでございますが、ここを砂利輸送のトラツクが三台続けて……、一台目が通る前になりましてすでに警報機が鳴つておりました。それを一台目が通り、二台目が更に通つて、その踏切にいた歩行者が危険だと言つて防止したのも聞かずに又三台目が行きまして到頭列車に引つかかつてしまつた。これなどは非常に乱暴極まる話でございまして、こういうことをやつては幾ら三種踏切を付けましても、事故は防止できないというふうに思うのでございますが、併し私たちといたしましては、この三種踏切を今増すことに全力を注いでおります。そのほか道路踏切の幅の合わない所とか、或いは勾配のついている所、こういう所の改善をやつております。併しこれは道路管理者との関係もあるので、ここらのほうの又協議も必要とする問題がございます。  こういうふうにいたしまして、私たち踏切設備改善は図つて来ておりますが、併しこれでは先ほど申しましたように完全ではないものですから、道路を利用される方々に対しましていろいろPRをしております。この四月にも全国交通安全運動を催しております。国鉄では特に踏切安全運動としてやつておりますし、又秋にも毎年十月から十一月にかけまして運輸省主催の踏切安全運動をやつております。先ほどお話がありましたように、確かにこの運動期間中は事故が減ります。私たちといたしまして、できるだけPRいたしまして事故を減らすように考えております。併し子供さんなどよく見ますと、踏切の近くで小さい子供さんがよく遊んでおります。これなども非常に危ないことでございまして、家庭における両親の方々がよく注意して下さることを私たち望むのでございますが、更に小学校に行つている方々もよく踏切附近で遊ぶのを見るのでございますが、そういうような方に対しましても、学校等へのPRをいたしまして、極力事故を少くするということをやつております。なお踏切安全運動のときには、自動車事故が非常に多いものですから、自動車の運転士に対しましてもよく踏切の実状を認識して頂くようにしておりますし、昨年も列車に乗せまして、実際に機関車或いは電車に乗つて頂きまして、如何に列車を運転する側から見て踏切というものが非常にむずかしいものだということも認識して頂いております。実際に乗つて頂いた方々にも、成るほど踏切というものはむずかしいものだ、やはり自動車を運転ずるほうの側で十分気を付けなければいかんということも私たち聞いております。こういうふうな大体手を打つて来ております。  なお将来に亘りましても、国鉄といたしましていろいろ設備改善をやつておりますが、最近できました長期五カ年計画におきましても、安全のための投資を約三百五十億見込んでおりますが、このうちには直接踏切改善に約三十億ばかりの金を考えております。こういうふうに国鉄といたしましても、とにかく事故を絶滅するのともう一つは、輸送の円滑化ということから、極力この事故を減すように私たちといたしましてもできるだけのことをし、又利用される方々にも私たちの立場から考えまして、なかなか列車の性質その他から行きまして或る程度のことしかできないということもよく御了解願いまして、双方から努力いたしまして事故を少くするように手を打つている次第でございます。  以上でございます。
  11. 大和与一

    大和与一君 陸運局鉄道部長に、報告ですね、死傷事故なんかあつた場合に、それは正確にまとめられてそれをあなたのほうではよく承知しておつて、それに対してはどういうような指示、或いは特に大きな問題について、どういうふうな関心なり対策を具体的にしたことがあるのですか。或いはするようになつているのか。こういうことを、或いは積極的に指導するという面までお話があつたのですが、これも要点的にお伺いしたい。
  12. 伊東道郎

    説明員伊東道郎君) 陸運局鉄道部長伊東でございます。只今御質問のございました点につきまして大体お答えいたしたいと思います。  踏切事故が起りました場合におきまして、規定によりまして、会社側からは直ちに一定の様式によりますところの報告書を運輸大臣宛提出することになつております。一般に申しまして、事故がございましてから早いものは当日、或いはその翌日くらいになりますと報告書が陸運局のほうに届いて参りますので、私どものほうといたしましては、直ちにその事故報告を本省のほうに申達いたしますと同時に、又死傷者五人以上を生じた場合等におきましては、直ちに係員を派遣いたしましてその原因とか、それから事故の状況等に対する調査を行います。そしてこれらの点に関する調査を終りましたならば、必要とする場合におきましては、本省のほうに報告するような次第でございます。又一般的に踏切事故その他につきまして、監督の面におきましては、大体現在陸運局鉄道部の職員の数も非常に少くなつて来ておりますので、年がら年中出歩くというわけにも参りませんので、一定の計画を立てまして、各鉄道事業者のそれぞれの事業の監督を行う計画を作つております。これによりまして踏切施設そのほか車両、運転その他における監査を行いまして、悪いと考えられるところ、或いは不十分であると考えられる点につきましては、その場で指摘いたし、或いは又後日文書によつてその改善を求めまして、できるだけ完全な状況におきまして運転ができるようなふうに持つてつているわけなんでございます。  大体報告の処理或いは監督の大要につきましては、そういうようなことになつております。
  13. 大和与一

    大和与一君 それでは少し質問いたしますが、先ず経営者協会のほうから井上さんにお尋ねいたします。国鉄には基準らしきものがあるというふうなお話がありましたが、それはどういうことなんですか。
  14. 井上隆根

    参考人井上隆根君) 基準らしきものと申上げましたかどうか知りませんが、国鉄の状況は、昭和二十六年に換算交通の率をきめたものがありまして、そうしてそれは通行者一人に対して自転車は一・五とか、或いは牛馬車は五とか小自動車は一〇でありましたか、或いは大きな自動車は三〇というような、そういう換算率がきめられておる。それによつてこのくらいな交通量のある所では第一種の保安設備を行う、こういうふうな交通量の所では第三種保安設備を行うというようなことがきめられたことを承知しておる程度でございます。そういう意味でございます。
  15. 大和与一

    大和与一君 それは国鉄にはやはり基準というものははつきりしたものではなくて、やはり私鉄私鉄として自主的に自分がきめて行く、法律も何もないわけですから、そういうふうな意味と解釈してよろしいわけですね。
  16. 井上隆根

    参考人井上隆根君) 国鉄でそういうふうな基準がありますにかかわらず、従来私鉄では国鉄のやり方をまねるというような傾向が非常に多かつたのでありますが、考えて見るというと、私鉄国鉄とは、鉄道運営といいますか、踏切に対する鉄道というものの性格が少し違うから、どうしても私鉄には私鉄らしい基準と申しますか、標準を作る必要があるということで、今度先般発表になりましたような基準ができ上つた動機をなしておるわけでございます。
  17. 大和与一

    大和与一君 私が政府なりに聞きました御回答では、設置基準はできていない、そういう法律はないということを言明しておられるのです。ですからそれでは一体政府はあなたのほうにこういう基準踏切を作れ、そういうことを具体的に示した事実がおありになるかどうか。
  18. 井上隆根

    参考人井上隆根君) そういうふうに基準をこれでやれというようなものを命ぜられたことはない他のであります。ただこういうふうなものでやつたらばいいじやないかという一つ標準が出たということでございます。
  19. 大和与一

    大和与一君 そうしますとやはり私鉄経営者協会といいますか、そこでは一つ基準をはつきり持つておるというふうに御回答をされるのか。なお研究中であつて、それぞれの会社は適当に自主的に自分でいろいろ判断をしてきめておるのか、そういうことについてお尋ねします。
  20. 井上隆根

    参考人井上隆根君) その点は、あの通牒を出されましたときに、監督局から説明書みたいなものが交通新聞なんかにも発表してありますが、それを御覧になつてもわかりますように、これは私鉄の現状から見て、強制的にこれを実施させることはどうも今日の実情では困難である。併しながら私鉄自体ができるだけこういうふうな標準によつてやることを希望するというような、意思表示であつたと思つております。
  21. 大和与一

    大和与一君 そうしますと、政府からそういうふうな指示程度のものだから、責任の所在からいいますと、それは自分たちの責任ではない、政府が法律を作らないからいかんのだ、こういうふうに一応言わなくちやならんと思いますが、そうですが。
  22. 井上隆根

    参考人井上隆根君) なかなかそういうふうに追及されますと私もちよつと答弁に困るわけでありますが、私は大体踏切問題というのはこういうふうに考えておるのであります。踏切問題を解決する根本策というものは、これは立体交叉にすることだ、立体交叉にすれば空間的に踏切交通する交通者と、それから鉄道を通過する列車が衝突することはない。併しながらこれには厖大な金がかかる、たとえて言いますならば、仮に申上げますならば、東京附近で十本の私鉄が環状線に首を突込んでおるとする、それが仮に十五キロ区間だけは立体交叉にしなければ危険だということになりますというと、百五十キロの私鉄立体交叉にしなければなりませんが、今日の工事費から申しますというと、恐らく一キロ当り四億円くらいの金がかかるのじやないかと思うのであります。そうしますと百五十キロの踏切立体交叉にするためには、六百億というような厖大な金がかかる。こういうふうな金をかけてそれを国家が補償すればいいし、若し国家の補償ができないということであれば、各会社がこれを負担しなければならん、そうするというと、負担しなければならん会社が参るということになるというと、今日一年に四十万も膨脹しておるところの東京の人口の処置に困つてしまう。つまり今日の東京の増加する四十万の人口というものは、これは環状線外の、つまり近郊電鉄の沿線に膨脹しておる。この膨脹して行く方々のために、又日に日に増加する自動車、今日の自動車は恐らく東京では五十人に一台くらいの自動車だと思いますが、これは追々殖えて来るというと、踏切を通過する人の数はますます殖えて来るということになりますが、今申上げましたように、非常な負担をかけて立体交叉にしたために、この私鉄が採算がとれないで破産するというようなことになつて来ましたならば、これは膨脹する郊外居住者の足を奪うというような結果にもなつて、結局今日の東京程度の経済機構といいますか、そういうふうなものも崩壊というようなことにも延いてなつて来るというふうに考えますというと、これはどうしても私鉄私鉄だけの、或るできるだけの力を以て踏切防護をし、又これを横断する交通者も互譲の精神を以てみずから守つて交通をするというようなふうにして行かなければ、この問題は解決しないのじやないか、こういうふうに考えますからして、今お尋ねの私鉄といたしましては、そういうふうなできるだけの力を尽して、常識的に考え鉄道の経営もできるように、且つ交通の安全も図るように、そういう考えで以て、与えられた標準を十分に活用して行くというほかにはないのじやないか。こういうふうに私は考えております。
  23. 前田穰

    委員長前田穰君) 今の御質問から御答弁を伺つておると、ちよつとよくわからないのですが、私から念のため一つ伺いますが、ここに地方鉄道軌道及び専用鉄道踏切保安設備設置標準という印刷物があるのですが、踏切等の種別、それから換算率、それから保安設備設置標準、こういつた項別になつておるのですが、これが今井上隆根君が言つておられる標準のごとくにも考えられるのですが、鉄道監督局はこれに対して何かタツチして来られたのか、これは全然経営者協会のほうの試案なのか、或いはこれに対してどういう権威を持たれておられるのか、そういうことを一つ伺います。
  24. 植田純一

    政府委員植田純一君) 設置基準につきましては、先ほど来いろいろとお話にのぼつておりますが、これの制定に対しましては、私鉄経営者協会等のいわゆる意見も十分伺いまして、鉄道監督局といたしましてこの基準を設定いたしたわけでございまる。そしてこの基準鉄道監督局長といたしまして、陸運局長なり或いは各府県知事に通達いたしまして、そしてこの踏切の整備の指導方針といたしまして通達をいたしたと、かように考えております。かような状態であります。
  25. 前田穰

    委員長前田穰君) そうしますと、これは指導方針であつて、各会社はこれだけの基準に基いた施設をしなければならんという命令ではないわけですね。
  26. 植田純一

    政府委員植田純一君) 法的にはこれによりまして命令と申しますか、強制する力はございません。ただそれには勿論法的のなにが要ると思いますが、いわゆる差当りの行政指導の方針といたしましてこれを通達したということであります。
  27. 大和与一

    大和与一君 そんなものは僕ら知らんですが、今までの監督局長の委員会の答弁の過程からいつて、そういうものは何もできていないと断言しておるのです。今日も資料はないし、そういうことも触れてお尋ねしているわけですから、それは一体どういうところから出たのでしようか、大分前じやないのですか。
  28. 前田穰

    委員長前田穰君) 説明して下さい。
  29. 植田純一

    政府委員植田純一君) 実は踏切の問題が当委員会でお取上げになりましたときは、実はこの踏切設置基準につきましても、目下検討中であるということを申上げたのでございますが、問題の性質上、これは急速に設置基準をまとめることにいたしまして、実は四月の二十七日に通達を出したということになつております。従いまして前回当委員会で問題になりました以後におきまして、この通達を出したということでございます。
  30. 大和与一

    大和与一君 おかしいな、そうすると井上さんのおつしやつたことは、今の四月何日かにできたそれをよりどころにして話しておるのだ。全然違うのですよ。今までは何もなくててんでんばらばらにやつておつたけれども、それをあたかも前からあつたように、その基準に従つてあなたのほうでおやりになつたというふうにお答えになつておるのですか。
  31. 井上隆根

    参考人井上隆根君) 私はそういうふうに申上げたつもりはないのでございますが、今まで私鉄には基準らしいものがなかつたので、各会社は恐らく私の見ておるところでは、大体国鉄基準のようなものがありますから、それに準じてやつておつたと思うのであるが、併しこれではどうも私鉄の性格に合わないところがあるから基準を作つたのだと、こういうふうにお話したつもりでございます。
  32. 大和与一

    大和与一君 これはやはり何とか設置要綱とかそういうことを言葉で出しますと、あたかもそれがあつたような錯覚を起して、それによつてつておるというふうなことに聞えたわけですね、それはそうでないわけです。はつきりしておかんと、できてしまつてそれでやつておるのだというような言い方は、非常に間違えると思います。  それから引続き聞きますが、踏切設備を付けなくてもいい所に付けておる、こういうふうなお話先ほどあつたと思いますが、これはもう少しどういうことなのか。念には念を入れて、今から非常にまだ早いけれども、付けておくという万全の措置か、或いはやつておつたけれども、情勢が変つたというのか、その辺がちよつとよくわからないのです。
  33. 井上隆根

    参考人井上隆根君) 私が申上げ方が悪かつたかも知れませんが、私は基準ができたから、それによつて今後は改善される。その基準を適用するというと、今後防護施設をしなければならん分がこれだけあつて、そうして従来防護施設があるもので、この基準によれば防護施設が要らなくなるというのがこれだけある。併しながら、かくのごときものを取るということはなかなか困難なことであるから、恐らくこれは取れないであろう。従つて、今度の標準ができたために殖える防護施設、この通りに防護施設をするとすれば、殖えるものが六百何カ所あるだろう。こういうふうにお話したつもりでありますが、若し言葉が足りませんでしたら、御了承願いたいと思います。
  34. 大和与一

    大和与一君 やはりあなたのお話は要綱に従つて皆話の筋を立てておりますから、それによつて要綱を適用されればこうこうである。こういう今のお話ですね。
  35. 井上隆根

    参考人井上隆根君) そういうことです。
  36. 大和与一

    大和与一君 それから安全週間をやりますと事故が減るということ、これは皆さんのお話でありますが、これは国民の大衆の自覚といいますか、そのほうを非常に強調されておるのですが、それじや実際具体的に経営者協会として、この設備改善踏切改善、これの宣伝啓蒙、こういうことを具体的に指示されたことがあるのか。或いは内容はどういうふうなことを指示というか、指導されておるか。そういう点がありましたらお尋ねします。
  37. 井上隆根

    参考人井上隆根君) 経営者協会としましては、そういうふうな、まあこれはいろいろ見方がある、経営者協会の性格としていろいろ見方があると思いますが、経営者協会としては、そういうふうに各私鉄にいろいろな命令だとか指導をするというようなことはいたしておりません。これは運輸省監督局を通じまして、或いは地方保安委員会とか、東京附近でありますというと警視庁とか、そういうような発動によつて計画され、又その計画に我々各私鉄も参加して、そうしてその計画に則つて実施するものでありまして、私鉄経営者協会として各会社をそれがために指導をするということはやつたことはございません。
  38. 大和与一

    大和与一君 ですから、結局協会としては、結論的には政府にはそういう法律が今までなかつた。今一つのまあ要綱ができようとしておる。ですから、今までの実態としては、各会社から諮問とか、或いは問い合せがあつた場合に、それに対して答える。その答える内容としては、国鉄では実際はこういうことをやつているらしい。これがまあ基準らしきものがあるらしい。こういうような程度のあなたのほうの答えというか、回答をされておる。従つて会社に対しては強制力とか何というものは勿論ない。こういうふうに理解してよろしいわけですね。
  39. 井上隆根

    参考人井上隆根君) その通りでございます。
  40. 大和与一

    大和与一君 じや次に小田急の専務さんにお尋ねします。  今のお話で、結局経営者協会は別に会社に対して強制力は、どこの会社にもないわけです。だから会社自体としては、この踏切問題については、どのように考えておるかということをお尋ねします。会社の経営方針というか、踏切に対する基本方針というものを先ずお伺いいたします。
  41. 沢勝蔵

    参考人沢勝蔵君) 只今の御質問、ちよつと私わかりかねる点がございまするが、最近出ました設備基準小田急はどう考えるかという御質問だつたと思う……。
  42. 大和与一

    大和与一君 いや、今までの、従来はどういう考え方であつたかということ……。
  43. 沢勝蔵

    参考人沢勝蔵君) 現在は先ほどお話が出ましたように、国鉄の古い基準を多少私のほうで独自の考えでこれを変えまして、ということは、国鉄は終夜運転をやつておりますし、私どもは夜中は電車は通らないわけであります。そういうような状況。それから、国鉄全国一般の問題等が、大きく取扱われますが、私どもは都市附近電車です。それから国鉄と私どものほうの経済面の負担力というようなものを考えまして、国鉄の古い基準の形はとつておりますが、例えば先ほどちよつと御説明申しました標準交通量、完全交通量というものは、私ども国鉄とそのまま同じものではないのであります。そういうやり方で私ども独自のものを自分作つてつております。ということになつております。
  44. 大和与一

    大和与一君 今独自なものという基準でございますが、経営のほうの負担力に重点を置けば、人命のほうはこれは軽く扱う、人が死んでもしようがない、こういう極論も出るし、人命のほうを十二分に尊重すれば、経営のほうが苦しくなる、こういう一つの対蹠的な考え方がありますが、それはわかりますが、具体的に交通頻繁という言葉でありますが、それは会社としてはどういうふうに考えて、会社踏切設備施設を備えて来たのか、そういうことをお尋ねいたします。
  45. 沢勝蔵

    参考人沢勝蔵君) やはり標準といたしましては、交通量を一番に考えまして、それからその附近の見通しと申しますか、附近の環境、そういうものを考えて総合的に判断を下しているわけであります。それでここへはどうしても付けなければいかんという結論が出ますれば、私どもはできる限りの努力はいたしまして、或る時は採算を犠牲にしても作つた場合もございます。一般的には採算を度外視してやるということばかりやつておりますと経営が成立ちませんけれども、その状況によりましては、やらなければならん場合も出て来ると思います。例えば踏切ばかりではございません。最近の例を申上げますと代々木から十二社に抜けて参ります、小田急のガスタンクのほうへ向いて参ります都市計画道路なんです。これが都市計画で新らしい道路作つて小田急に両方から道路を突きつけている。ところがこの幅がたしか十五メートルから二十メートルあると思います。ところが現在の踏切は一間か一間半ばかりの踏切であります。それを多少今までは拡げて我慢して来ました。東京都のほうは前後鋪装して参りました。そうしますと、毎日自動車がこれを頻繁に通つて、一昨年は殆んど自動車が通らなかつた踏切が、現在では一日に三千台とかいうように自動車が通る。これあたりは、私どもとしては実は迷惑な話でありますが、併しこれを放つて置くわけには行かない。放つて置くわけには行きませんので、私どものほうは都に申入れて、立体交叉は都の責任であるべきだけれどもつて置くわけには行かないから、私のほうも費用を持つから立体交叉にいたしましようということを申入をいたしているわけであります。先ほど番人を付けなければならんと申上げたのは、そこが今まで警報機でございましたが、もうどうしても放つては置けせんから、道路を少し拡げて番人を付けた。ここらあたりは私どもに理があるのでありますが、理窟ばかりを言つておりましても事故を起してはしようがないので、そういうような対策も講じているような始末で、採算ばかりにかかつているわけにも参らん、こういうふうに考えております。
  46. 岡田信次

    ○岡田信次君 僕は植田監督局長に伺いたいのですが、先ほど四月二十七日に出た私鉄踏切設備標準ですが、この問題なんですね。恐らく国鉄にもそういうやつがあろうと思います。そのほか国鉄にはいろいろ駅本屋のそういう標準とか、駅舎の標準とかありますが、それは建設規程とか或いは運転規則とかと違つて標準はあるけれども、その実施は非常に遅々としている。この標準に則つてつているということだと思いますが、従つて私鉄に対してそういう基準を作られても、特に強制力がなければ何にもならんと思うのでありますが、どういうお考えで出されたのか。
  47. 植田純一

    政府委員植田純一君) その点につきましては、先般来当委員会におきましても議論がございましたように、何か指導の標準がございませんと、具体的に踏切保安設備を指導する上におきまして、具体的な指導ができないということでありまして、設置基準はどうしても必要であるということを感じておつたわけでございます、勿論これは強制力はございませんが、それだけに何と申しまするか、全然不可能と申しますか、会社が全然相手にしないような基準作つて見てもこれはもう不可能であります。従いましてそういう意味におきまして、理想と現実とどういうふうにマツチさすかというふうな点が実は基準を作る上におきまして非常にむずかしい点であつたわけであります。経営者協会を通じまして、各会社の意向も間接的に聞きますと共に、いろいろの現状をも斟酌いたしまして、この程度なら全体といたしましてまあ実行可能ではないか、而も全体として踏切設備の向上という上におきまして相当効果があるのではないか、かような観点から作つたわけでございます。勿論各会社の現状がそれぞれ違いますので、各会社によりまして必ずしも一様でございません。従いまして相当努力をしてもらわなければ、この基準に達しないという会社もございますし、或いはもう殆んど現状においてこの基準に達しているという所もあるようでございますが、全般的に申しまして、只今申しましたような考え方から基準を作つたような次第でございます。
  48. 岡田信次

    ○岡田信次君 その基準を作ることは大変結構なんですが、要はやはり実施するということなんですが、大体各私鉄の経営状態その他を考えられて、この先三年なり或いは五年のうちに、大体この設備標準通りのものになるという何か目安を立てられたのですか。
  49. 植田純一

    政府委員植田純一君) 大体只今井上技術委員長から話がございましたように、この基準を作りますにつきまして、まあそう無理もない、実はそれ以下の所にも設備がされておるような点がたくさんありますが、そういうようなところでどういうところに線を引くかということは非常にむずかしいわけでございます。一面におきましては国鉄の設置基準というものも参酌いたしまして、即ち国鉄私鉄とは列車の単位であるとかスピードであるとか違いますから、その通りには行きませんが、いわゆる危険度というものにつきまして、大体釣合がとれるというふうな点に一つの理想を置きますと共に、現実の只今申しました姿をよく斟酌いたしまして、まあそう長い間かからないでこの基準に達し得るという見通しを立てたわけであります。
  50. 岡田信次

    ○岡田信次君 もう一つ伺います。そうすると、今後今のような基準の実施状況を見て、政府は進んで踏切改善のために私鉄に対して或る程度補助をしようというところまで考えておられるのですか。
  51. 植田純一

    政府委員植田純一君) 基本的には踏切の整備ということにつきましては、そういう問題が当然起ると思います。併しこれは将来のいわゆる根本的な対策という面におきましてそういう点は考えるべき問題だと、かように考えておりますので、只今作りました基準につきましては、そういう点までは考えておりません。会社のいわゆる自主的な努力によりまして、達し得るという程度基準である。かように考えておるようなわけでございます。
  52. 大和与一

    大和与一君 引続きお尋ねしますが、監督官庁のほうから踏切の問題について具体的な指示とか、或いは連絡というようなことが実際にあつたことかございますか。ちよつとお断りしておきたいのは、その設置要綱とかいうことは中身のない風船なんだから、これを相手にしてやる必要はない。それについては幾らでも監督局長からお話を承わることができますから、今日は主として参考人の方に質疑をさして頂くほうが妥当だと思いますから、お願いします。
  53. 沢勝蔵

    参考人沢勝蔵君) 今まで踏切設備に対しまして、不足であるというような指示を受けたことはございません。
  54. 大和与一

    大和与一君 そうすると、会社としてはもう別に法律の規定もないし、又監督官庁から何も言われたことはないから、まあおれたちはこれでやつていることは最善に近い、こう思つてつておられて、改めるところはもうなかろう、こういう気持でおられたのですか。
  55. 沢勝蔵

    参考人沢勝蔵君) 大体おつしやる通りでございます。ただ私どもが、自分標準自分で作ります場合には、勿論他社とも比較して見ておりますし、それから事故発生というような事柄も十分に参考に入れて作つておりますので、私どもとすれば、現在の私どもの経営状態の余裕と申しますか、という意味では最大限まで踏切保安設備に努力をしておるというふうに考えておるわけであります。
  56. 大和与一

    大和与一君 鉄道部長にお尋ねいたしますが、実際に踏切問題だけでなくて、幾多の監督事項があつたから、なかなか現在の人員では十分にできないということも言えると思いますが、ところでこの踏切の問題につきましては、人間も足りないからとても全体へ手が廻らないと、こういうことをお認めになられますか。
  57. 伊東道郎

    説明員伊東道郎君) 只今の御質問に対してお答え申上げます。まあ監督事項と申しましても、各会社の業務運営状況を定例的に監査に行つて悪い所を直してもらつているわけなんでございますがこれに対しましては、現在東京陸運局の管内におきまして、踏切の数は三千八百二十九あるわけなんでございます。この踏切につきまして、一々全部を見るわけに行きませんので、監査に際しましては、ほかの運転、車両、施設等の部門についてもございますが、大体抽出的に見せてもらうわけなんでございまして、全部見るわけにはとてもいかないという点がございます。そういう点がございますが、まあできるだけ少数の人員を以てやつて行くようにいたしたい。従来は、只今本省のほうにおきまして作られましたところの設置基準というようなものもございませんでしたために、まあ見た目で目分量でやつているという面があつたわけなんでございまして、踏切問題につきましては、多少不十分な点もあつたかとも存ずる次第でございますが、今後は一応のたとえ抽象的ではございましようとも、基準がございますわけで、よりどころができて、そういう監査、監督の業務をやりやすくなるであろうと考えておる次第でございます。
  58. 大和与一

    大和与一君 世田谷区だけで最近四十六万近い人口を持つておるんじやないかと思いますが、そうしますと、常識的に非常に人家、人口が稠密になつて来るから、従つて自動的にも踏切問題も起つて来ると、こういうことはお気付きにならなかつた、それに対してこういうことを法律的にきめるわけにもいかないので、そこまで気付かなかつたということになるのか。当然交通量が殖えるわけだから、そうすると幾つかの踏切を重点的に、会社にも間合せればわかることだし、こういうようなことを具体的に今日まで指示になつたことはないと、そういうことですか。
  59. 伊東道郎

    説明員伊東道郎君) そうでございます。
  60. 大和与一

    大和与一君 そうすると法律的には一つ会社に対する制約はないし、又指導、指示についても適用法がなかつたからやらなかつたと、その点は若干遺憾の点があつた、そういう程度のことはおつしやることができますか。
  61. 伊東道郎

    説明員伊東道郎君) そういう点は言えると思います。
  62. 大和与一

    大和与一君 それでは沢さんにお尋ねしますが、そうなりますと、国の法律もできていない、又監督官庁としても、その基本的な法律がなかつたために、官庁のほうからは十二分に各会社に対して指導するという具体的なことはできにくかつた、こういうことになると思います。そうすると、そういうようなことを人から言われる、言われるのじやなくて、人命の問題だから会社自体として、一体人命尊重、一人でも死者を出してはならん、勿論こういうふうに不注意ということはないとしても、会社自体としては全体のことをよく考えて、或いは具体的な踏切設備が完全でないことはたくさんあるわけで、これは御承知だと思いますが、そういうようなことを、どうも基本的に会社が人命尊重についてどの程度の、法律がなくたつて、人から言われなくても、これだけは守らなくちやならんという最低安全性というものがあると思いますが、そういうことを本当に会社の幹部としてどの程度にお考えになつておるか、所信をお伺いしたいと思います。
  63. 沢勝蔵

    参考人沢勝蔵君) この踏切の問題につきましては、私どもは非常に頭を悩ましている問題でありまして、いろいろ事故の場合などに話が出ます責任の所在というような点は別にいたしましても、私どもとすればできるだけ事故の起らんように設備をしなければならん、それで私どもといたしましては、設置の基準がどの程度……、最近出ましたものにつきまして、私ども踏切全部に当つてこれを当てはめて見てはおりませんけれども、勿論前に私鉄経営者協会のほうでも内容についてちらちらと聞いておりますので、私どもはこの標準は採用できると考えておりますが、なおその上にできるだけの努力をいたしまして、踏切事故をなくすることに努力したいと考えております。
  64. 大和与一

    大和与一君 それでは会社の沿線の住民方々の声も十分聞かなくちやならんと思う、民主的に……。それで踏切事故も大変起つたわけですから、これに対して沿線の住民の方が何とか改善をしたい、こういうふうな同盟を作つたり、或いは七、八千人の人がすでに署名をしておる、こういう国民の声に対してあなたのほうはどういう処置をされたのか、そういうことを伺いたいと思います。
  65. 沢勝蔵

    参考人沢勝蔵君) いろいろと踏切の問題につきましては、沿線の各地から話が出ております。それでこれを協議の、相談の形式に持つて参りますと、沿線全体をまとめてやりませんことには結論が出ない、そういう意味で私どもといたしましては、一応私どもなりの順序を立てまして、そうして地方地方については、その都度具体的な御相談は地元とする、こういうふうに考えておるのであります。全体の順序というようなものに対して一部の、一地方お話だけを伺つているだけではまとまらん。具体的にはその地方の方方の御意見を聞くことはできると思います。
  66. 大和与一

    大和与一君 そうしますと、沿線全体の住民の声が自然に湧いて来て、それがまとまつたときに全体のことを考える、それまでは各地に具体的な不祥事故が起つても、その地区の方々がこれではやり切れん、こう言つて来たことの具体的な要求については一顧もしない、こういうことになりますか。
  67. 沢勝蔵

    参考人沢勝蔵君) 甚だ極端に申しますと、そういうことになりがちなんですけれども、そうではないのでありまして、私ども長年踏切を扱つて来ておりますので、大体これは設置の基準に触れるか触れないか、緩急順序はどうであろうかということに対しましては、私どもといたしましても十分の自信はあるわけであります。それによつて全線に踏切改良を要するものの緩急順序というようなものは私ども毎年立てていつでも持つているわけであります。この次はどこの踏切警報機が要るだろうかというような一応の方針は私どもは持つております。ただこれを発表いたしますことは、御承知の通り自分の家の近所に警報機が付くことはどなたもお望みのようであります。これを迂闊に発表いたしますと、却つてできるものもできなくなるようなことになりますので、それは私どもの方針として発表しないことにしておるわけであります。ただ半年先とか一年先とかいうようなものは、もうこれは予算措置もできておりますから、その都度地元に発表しているわけであります。例えば世田谷の問題を小田原で処置いたしましてもどうにもならない。そこで一応の順序というものは私どもが立てまして、あとは地方々々の問題はその地方で御協議をするというふうにいたしたいと思つております。
  68. 大和与一

    大和与一君 特に住民方々要求の中で、学童の通学問題が一番大きいと思う。これに対して例えば経営小学校ですか、或いは明正小学校、こういうような学校からそういうようなお願いをしているように聞いておるのですが、その点はそういう願いは来ておるか、或いは来たことに対して、会社としてやはりどういうわけでそれをなかなかやつてやれないか、こういうこともついでにお尋ねしたいのですが。
  69. 沢勝蔵

    参考人沢勝蔵君) 地元のほうでそういう声が、殊に小学校の場合には非常にそういう要望がよく出るのであります。そこらあたりは全般的によく考えてできるだけ御希望を入れるように  しておつたのでありますけれども、何しろ御希望の数と私どものやり得ます数とに相当に開きがありますので、思うように参らない、そういうような状態であります。
  70. 木島虎藏

    ○木島虎藏君 監督局長とそれから井上さんにちよつとお聞きしたいのですが、根本的に鉄道の線路に踏切がある。その場合に両方で立会うわけなんです。だからそこを通る電車なり汽車なりが踏切を注意して行くのか、或いは鉄道を横切る人が注意をするのか、一体考え方はどつちに基いておられるのか、根本の考え方
  71. 植田純一

    政府委員植田純一君) いわゆる注意の義務といいますか、そういうような点から申しますと、これはやはり踏切を横切る通行者にあると思います。車を運転する、列車を運転する上におきまして勿論前方の注視は必要でありますが、一々個々の踏切を注意して通過するということは、これは不可能ではないか、かように考えております。
  72. 井上隆根

    参考人井上隆根君) 先ほども申上げましたように、この踏切問題というものは私は国家的の問題で、事故が多いということは国家が背負つている一つの宿命だというふうに考えているくらいでありまして、私ども運転士に対しては、常に注意、警告をしながら行かなくてはならんということを力説し、又そういうふうに指導しておるのであります。現に或る会社のごときは、上りの警笛と下りの警笛とを変えて、そうして通行者が上りが来たか、下りが来たかに迷つて右から来た列車には見送つたが、左から来た列車にぶつつかる、はねられるというようなことがないように注意をしている次第であります。又、これは派生的の問題でありますけれども、この警笛につきまして、上りの警笛は一般に用いられている警笛だからいいが、下りの警笛は相当何といいますか、非常に尖鋭的な音を出す。だから沿線の人々からああいうふうな音を出されては困る、もう少し穏かな音を出してくれというようなことを言われて中挟みになつておるような会社もあるくらいで、私どもとしては、運転士にも気を付けなければならんということを十分力説しておる次第でございます。
  73. 木島虎藏

    ○木島虎藏君 今のお話で根本のことはわかつたのですが、併しそれじや通行者が注意して通るのだから、通行者のほうの側から見て、汽車なり電車なりが通るのに非常に見分けにくい、或いは通行する人が完全な人でない、即ち子供が多いとかいうような所は、やはり或る程度通行者に義務があるというふうな観念だが、考え方はまあそれが認識がしやすいように考えなければならんというような考え方もあるのですか。植田さんそういう思想もおありですか。だから通行する者が注意しろ、こういう一本槍か、或いはそこに多少のニユアンスも考えておられるかということです。
  74. 植田純一

    政府委員植田純一君) いわゆる注意するという側から申しましてやはり通行者側が注意してもらわなければならんだろうということを申しましたわけでありますが、勿論いわゆる列車運転士に、例えば踏切で通るたびに直ちにとまり得るというふうな態勢で運転するということは事実不可能であろうと、かように申したわけであります。ただ踏切のいわゆる状態によりまして、非常に交通が頻繁である、或いは又その上に更に見通しも悪いというような場合におきまして、これは列車運転ということではなくして、いわゆる鉄道運営、鉄道企業の立場から見まして、やはり然るべき保安装置をやるべきであるということは、これは現在の法規の建前から申しましてもこれはそうあるべきであると、かように考えるわけであります。ただ具体的にどういうふうな状態においてどういうような保安設備をやるかということにつきまして、非常に不明確であつたというのが従来の状態でございます。
  75. 大和与一

    大和与一君 先ほど私が質問しましたときに、沢さんはこういうふうにしたいという言葉を最後に使つたのです。だから全体の問題は別としても、具体的な個々の問題については若干考えつつある、併し今までそれを具体的に悪意を以ていろいろ住民の声を聞いてそれを具体的に進めたというのではなくて、これからしたいと思うと、こういうような言い方をしたようですが、そうでなければ、具体的にどういうふうなことをどういうふうにあなたのほうで住民方々の御意見を、交渉なり陳情なり、話をして、どういうふうな回答をされたか、そんな点も少しお尋ねしたいと思います。
  76. 沢勝蔵

    参考人沢勝蔵君) 実は御承知の通り、私どもの営業は直線的に長く拡がつておりますので、大体私どもの触角としては駅長が触角になつておるわけなんです。ですからいろいろな地方考え方というものは、駅長から私どもの所へ入つて来るわけなんであります。ただそれが率直に伝わりませんか、或いは不十分なというときに、じかに本社のほうへおいで下さつて、皆さんがいろいろお話を私どもにされるわけであります。ですから一般的にはそういうところで意思の疏通は或る程度できなければならんわけなんです。これがその通り行つていないということになりますと、私どもにも責任があるわけです。駅長なり或いはその問題に対しましては、経営に保線区というものがあつて、そういうふうな出先の機関がありますので、そこらで或る程度地元の意向は反映して来るべきなんであります七若しそれがちつとも通らないということになりますと、私どももよほど気を付けて、これは先ず第一に、それからやらなければならん、こういうふうに考えております。その上、先ほどお話が出ましたように、もう少し広く意見を調整するというような場合には、必要に応じてやりたいと、こういうように思つております。
  77. 大和与一

    大和与一君 サービス第一と考え会社が、ちよつと今のお話は何だか役所みたいな感じがするのですが、これは直接に駅長さんが現地の声を聞いておるのですが、会社に直接来たらそれに常に門戸を開放して幾らでも利用者の声を聞く、こういう態度が当り前だと思うのですが、何だかこう少し杓子定規的な、駅長の所へ来ないといかんし、又来るべきである、こういうふうな話は少し本末顛倒みたいな気がするのですが、そういう点は何か少し、会社の直接本社に行つた場合には、格式張つて尤もらしくして簡単に会わないとか、そういうことになつておるのですか。
  78. 沢勝蔵

    参考人沢勝蔵君) いや、そういうわけではありません。駅長で相当地元の声が私どもに入るべきでありまして、そう行つていないので、私ども会社の運営がそこはまずいと思つておるのであります。併し会社へおいでになりまして、私どもは別にそれに対して来ちやいけないとかいうようなことを言うわけではないのであります。ただ私どもは一般的の問題は非常にこれはよく知つているのです。併し個々の問題は、誠にこれは申訳ない話ですけれども、個々の問題では私どもそうよく知らない。だから知らないものがいろいろ話を伺つてもあれですから、地元のほうの意見とか、そういうことを聞いたあとで私どもは実はお目にかかりたい、そういう意味で申上げたのであります。会わないというようなことではありません。
  79. 大和与一

    大和与一君 三月二十三日の運輸委員会でも、次の問題がやはり一応話題となつて、いろいろと私も御質問をしたのです。それは事故の死傷者の遺族なり、その他の処置、これに対してやはりいろいろと巷間噂もございましたし、又私にもお話があつたこともあるので、そういう事実はどうかということを局長にお尋ねしましたが、これはそういう個々の事実はおわかりにならないので、いい機会ですから、もう少しその点について今御質問したいと思います。そんな馬鹿な話はないのですが、例えば千円やつてあとはしらばつくれておる、こういうふうなことも何かプリントが廻つて来た事実もあるのですが、そういう点は大体どのようなお考えで、この人間の命に対して、特にその遺家族に対してどういうふうなお考え、どういうふうな処置を具体的におやりになつておるか、これは非常に重大な問題だと思うのです。ですからその点を一つよくわかるようにお話を頂きたいと思うのです。
  80. 沢勝蔵

    参考人沢勝蔵君) お答えいたします。千円というようなお話が出ましたのでありますが、これはそういう額を私どもが別にきめておるわけでもございません。ただお亡くなりになつた方に弔意を表する場合、それから怪我をされましたときには、見舞品として差上げておるような実例もあります。それから事故処理につきましては、これは示談という形式でみんな処理をしております。これは会社の側と、それから言葉は悪いですが、被害者と申しますか、その側との示談の協議の結果によるわけであります。これに対してこれは大体責任の所在とか、当時の状況、そういうものが勘案されて相談されるわけであります。これに対してルールがあるわけでも何でもない、そういうふうな趣旨で今までやつております。
  81. 大和与一

    大和与一君 責任の所在には二つあるのですが、一つは政府が法律を作つていない、こういうことにして会社がやや軽く考えがちではないか、こういう点はないだろうか。それから直接に会社とその被害者との間の責任の所在、これはやはり相当公正によくお調べになつてきめなければいかん、こういうことになると思いますが、この前者の考え方は、勿論おありにならないですね。政府がこういう法律を作つていない。だからおれのほうでは少しは罪は軽い、大体政府が悪いのだと、こういうふうなことはそう強く考えてい云いと思いますが、その点は如何ですか。
  82. 沢勝蔵

    参考人沢勝蔵君) そういうふうには考えておりません。ただ先ほど根本的の問題ということで話が出ましたのでありますが、踏切はやはりあれは公道なものでありますから、やはり通行人のほうも或る程度注意をしてもらわなければ、通行人が不注意の場合も、会社に責任があるという前提でお話があると、示談がいつももめるのであります。会社が全責任を負うべきだ、通行人が幾ら不注意でも、会社に全責任があるということに考え基準があると示談がもめまして、甚だ遺憾でありますが、そういうときには訴訟になつたり、そういうことがあります。責任の所在を多く勘案するということは、そういうことをまあ申上げたのであります。踏切を許したのは国の責任だから、踏切事故は責任を負わない、こんなふうには考えておりません。どつちかというと、国の責任というふうに考えておりますのは、立体交叉にするように早く処置をとつて欲しいというようなことを国に対して考えておるのでありまして、個々の踏切事故処理とか、そういう問題は、これは私どもの責任だと考えております。
  83. 大和与一

    大和与一君 そうすると、事故のいろいろな問題については、まだ未解決の点も多々ある。それはまあなお今後誠意を以て努力すると、又今日まで会社としては如何なる問題、或いは如何なる個人、或いは集団、こういうものに対して区別をしないで誠心誠意、絶対に良心的な態度で来たと、こういうことを国会で断言できますか。
  84. 沢勝蔵

    参考人沢勝蔵君) 私どもといたしましては、誠意を尽して来たつもりでおります。ただ先ほどもほかの参考人の方から話が出まして、事故のときに会社の社員の態度が非常に強圧的であつたとか、或いはけしからん態度をしたとかいうようなことで、そういう感じを与えましたとしたならば、私どもとしましては、これは非常に申訳ない話だと考えます。この点は重々そういうことがありましたならば、お詫びをすると同時に、そういうことがないように気を付けたいと思います。事故処理につきましては、今までも私どもは誠意を失つたとは思つておりません。今後も誠意を以て事に当るつもりでございます。
  85. 大和与一

    大和与一君 私はもう少し質問して、最後には局長に要望して終りたいと思いますが、今度は服部さんに伺いたいと思いますが、いろいろ今までの会社の御意見、或いは監督官庁の御意見お聞きになつたと思うのですが、あなたのほうとしては、今おつしやつたことには別に間違いということはないにしても、なお重要なことで少し話をしたいことがあつたら少し発言をしてもらいたいと思います。具体的にいろいろ要求をした問題、或いはそれがどうなつたかということについて……。
  86. 服部諭

    参考人服部諭君) 今沢さんからいろいろ事故処理についての誠意を以てされておるようなお話がございましたが、実は私の調べましたデータによりまして、種々ございますのですけれども、これは世田谷区船橋町の大野栄二さんの問題でございます。大体において弔慰金が五千円、香奠を含めてやられた。そのときの事故に対する会社の態度はどうだつたかということを、大野さんの署名入りで頂きましたけれども、暴圧的で被害者側に責任を転嫁している。こういうふうな形を遺族は考えておる次第でございます。それは明らかに示談になつた場合のことを言われておると思います。又遺族の意見として、納得の行く全施設改善と弔慰方法を講じて、被害者に対して最大な謝意を表してもらいたいということを申しております。  又世田谷区の世田谷二の千九百五十五の田中淳子さん及び田中佐登子さんのお二人が、梅ケ丘の第一号踏切、信号だけで番人いない所で事故に会つて、一人は重傷後死亡、一人は即死された。こういうことに対しても、この方の証言によりますと、会社の態度は極めて冷淡であつて、郷里の寺に埋葬するための旅費さえもらえなかつた。これもたしか香料千円で、一万円そこそこでやはり解決しておるという話です。  又経営の今井さんという、このかたは乃子さんという十二歳のお子さん、この方も会社の態度は暴圧的で被害者側への責任転嫁である。今後絶対このような不幸がないように全施設改善を希望する。こういうことでございます。  それから世田谷区世田谷五丁目二千九百五十、桑原邦博さん、八歳にいたしましても、非常に弔慰金が軽少であつたということをはつきり申しております。  又世田谷区の経営町に住んでおりました岡田喜久子さん十九歳の亡くなつたときには、最初運転士の偽れる証言の下で自殺という形になつておりましたが、最近におきまして調べた結果、自殺でないということがはつきりした。これもやはり弔慰金と、そういう形によりまして、明らかに会社側の不注意であるということがわかりましても、会社から一千円の香奠を持つて来たきりで未だ解決してない次第でございます。  又世田谷区の石川喜久という方、四歳の男ですが、この方が亡くなつたときには、やはり会社の、これは長文になつておりますから読上げますが、会社の態度、極めて冷淡なり。示談にしてくれこの申越しに、今後のためを思い、踏切に何らがの設備をするよう二十九年度予算編成の際に組入れる口約束をした。(事故係和田)過ぐる三月二十四日一周忌を迎えたが、会社側から何ら話がないので、最近問い質したところ、まだそのままにしてあるということで憤激を覚えた。面会の申込をしたところが、過ぐる四月五日午後三時に和田氏来宅との約束に万難を排して待ち受けたが、とうとう面会ができなかつた。翌る日六日も音沙汰なし。七日にこちらから電話をしたところが和田氏は不在、こちらから訪問するとまで申込んだが、和田氏が帰り次第連絡するとの代理人の返事に八日の今日も今か今かと待つている次第です。一周忌に現場に花を捧げようと駅員の許可を求めたところが、フンといつた態度。駅員の精神的訓練が必要である。こうまで申されております。  まだほかにありますけれども、例えば北多摩郡狛江町和泉におります朝田静枝さんが轢れたときも、やはり弔慰金一千円を持つて来た次第です。  先ほど申上げましたように、そのときも下北沢にあります金子という葬儀店小田急の葬儀でございますけれどもと言つてわざわざ出て来まして、まあ余り問題にしないようにしたら如何ですか。どつちにしても被害者のほうが悪いんですからと、こういうふうなことで、むしろなだめるような形になつている。  世田谷五丁目の海老沢清さんの長女豊子さん、この方はやはり千歳船橋五号踏切で死んだときは香奠が一千円、見舞金三千円。  又大蔵町の千八百七十四市村五郎次女信子の死んだときも、やはり一千円の三千円。  それからこれは一つ特徴的に出ておりますのは、世田谷区祖師谷二丁目四百十三番地の清水徳治次男の儀弘君が死んだときは、香料千円持つて来たきりであります。そうしてそのときは踏切改善してくれ、おれの子供が犠牲になつたんだからよくしてもらいたいということを小田急に誓約してくれと言つて頼んだけれども、未だにその踏切改善されてないといつて現在憤激されている次第であります。  又北多摩郡調布町国領千四百八十山内光子長女の史子のときには、やはり香典一千円を持つて来たきり未だに今日まで事故係の和田氏に何遍か交渉して見ましても、行けばなかなか会つてくれない。そうして来ると言つても来ない。それでそのときにたまたまその光子さんの長男が発言したときも、どうも運転士が代つて運転したらしいと言つたら、何を言うか、そんなことを言うと、運転士に殴られるぞというような暴言を吐いている次第であります。  最後に申上げますことは、経営電車区の足立金治という男が私の所へ参りまして、昨日もこの一つ先に事故があつてかなわん、こんなにちよいちよい事故があつてはかなわないという、こういう発言なんです。被害者の宅へ来て随分無礼なことを言うやつです。お茶を出しましてなだめて話をしました。小田急からは一千円の香奠をもらいました。又それから果物の添え物をもらいましたけれども、見るのも何となく、いやです。そのままお返ししたのです。そうしますと、その足立金治は、何を言うか、人の好意を無にするやつがあるか、こういうような発言がありました。人の好意ということはどういうことか。誠意があるならなぜ葬式やお通夜に来ないかというと、通知がないから来ない、こういうのです。通知がないから来ない。そんな馬鹿なことはあるか。駅も近いから当然葬式を出せばわかるじやないか。そういうとそのときには発言しないのです。足立は私のほうでも轢きたくて轢いたのじやないのだ、こういうような発言をしたために、私は俄然憤慨しまして、それならば帰つてくれというと、帰りしなに玄関の戸をぴしやつと閉めながら人の好意を無にすると言つて帰つた次第でございます。  このような、徹底的に小田急が如何に被害者自身の麻痺して、そうし非常に淋しい気持になつているときに、高圧的な態度で処理されているかということがはつきりとわかります。このようなことでありますし、確かに私ども被害者のこういう運動を始めましてから、町の人たちは踏切りを通るのも怖くてしようがないといつて非常に注意して通るようになつたことは事実でございます。これはもう多数の方がそういう意見を聞かされて、むしろ本当にそれこそこういう運動を自主的にやること、自分たちの力でやること、民衆が理解することは、小田急とか国鉄当局が幾らじやんじやん鳴物入りでやつても何にもならないということをはつきり私は認識した次第であります。  それはそうでありますけれども、勿論自分の命を失うことでありますから、当然注意することは当り前でありますが、施設も何にもしないで、私の現にいる踏切、私の子供の亡くなつ踏切は、明らかに何らの施設もしていない。ただペンキのはげた棒が二本両側に立つておるだけである。それも瀬戸引きのはげました踏切注意という極く僅かな見えるか見えないかというような棒が二本立つておるような状態でございます。それが大多数でございます。そのような状態で、あらゆる踏切施設に対しての完全なる施設をしないで、ただ単に通行者の責任であるという監督局長のお言葉は実に暴言だと思います。こんなことで踏切問題が解決してそれでどんどん合が発展して行く都市の周辺にある私鉄があぐらをかいておつて住民が安心して生活ができて行けるかどうかということを考える。又同時に小田急の沢専務は、たまたま本社で会いましたので、お客さんの事故におきましては私たちは満腔の敬意と弔意を表します。これは切符を持つておるお客さんである、こういうことを申されました。だが一般の踏切通行人の場合には、私はそうは考えません。どんな事故であつても、私どもは構内に起きた事故に対しては絶対の責任を持つていたしますということを、私ども多数の人間の前で公言されております。この点はどうかと思うのですけれども、私たち沿線の住民は、いつも小田急の沿線に住んでいる人間は皆お客さんじやないか。乗るにきまつているのですよ。但し子供は乗らないかも知れないけれども、親は定期を持つておる人たちが毎日乗るか、いつかの機会に乗つていると思います。その人たちに対する考え方が、構内に起きた事故に対しては絶対の責任がある。この梅ヶ土の駅を代表的に取上げますとよくわかりますのですが、梅ヶ丘の駅においては、現に従業員は三人しかいない。そうして切符を売りながら、又切符の改札をしながら急行が飛んで来ますと、飛んで来て踏切の所に立つて両手を拡げて立つというような状態であります。こんなことで踏切交通が安全に保たれているかということはかなり疑問に思います。  それからもう一つ申上げたいことは、私は先ほど申上げました運転士の労働条件のことについてちよつとこれは調べましたが、児玉学さんが調べられた文書がございますが、小島さんのお子さんを轢きました守屋茂という運転士が、その事件がありました八十一日目の三月二十二日午前四時事故の件で検察庁に取調べを受けたのです。そうして帰るとすぐ混乱した精神状態のまま車に乗りまして、同日の午後八時五十分又「生長の家」の宣伝カーと衝突した事故があるのでございます。こういうことを考えて見すと、運転士がどのような精神状態で使われておるかということがわかると思うのです。もうこれで昼間のうちに検察庁へ行つて取調べを受けたその人間を乗車させて、やがて八時五十分に踏切事故で「生長の家」の自動車にぶつかつているのです。こういうような状態で私たちは殆んど安心して暮して行けるかどうか。沢専務の言うことは非常に鄭重であつて、非常にきれいでございますけれども、実際上精神において、私はこういう点において非常に考えられない。まだまだ申したいことは、たくさんあります。例えば車の中に救急函が一つも置いてない。又労働者の場合におきまして、小田急労働者か大体において神奈川県の農家の出身が多いのでございまして、従つて通勤に非常に時間がかかる。特に乗務員にあつては前夜から家に帰れません。一週間も帰宅できない場合も珍しくないような状態であります。それの上に休日は農業の手伝いをする。又電車区に泊る場合は、その設備も全く劣悪であつて、狭い一部屋にごろ寝をする状態であります。その上に昔の軍隊の従卒のように助役の靴を磨く必要があるというぐらいに、封建的な形で従業員が使われておるというような状態でございます。このような状態で安心してただ単に踏切の問題だけでなくて、むしろ従業員の問題と踏切の問題とに非常に関連性を持つて来るのではないかと思います。たまたま小田急運転課のほうから出されておる書類によりまして私ども拝見いたしますところによりますと、これは運転課のほうにおきましての課第百五十五号に出ております二十八年度運転事故数に鑑みて、昭和二十八年度運転事故統計簿によりますと、衝突とか脱線等の重大事故はない。大変に結構なことだと言うが、踏切傷害は多い。踏切事故の増加、それによる死傷の数が著しく増加しておるのは、その主たる原因は、被害者側にある。被害者側にあるとはつきり言つておるのです。自分たちが踏切施設ちやんとして置かないで、この踏切事故による死傷の増加、死傷者の数が著しく増加しておるというのは、原因は被害者側にあるとはつきり言つておる。こういうようなわけでありまして、最後に行つて裁判所の判例なんかを挙げまして、お前たちが注意をしなければいかん、運転士が注意すれば事故が片付くと思つておるが、そうでなくて、踏切施設を完全にしてくれれば先ず運転の業務は楽に運転でき、むしろ安心して住民もやつて行けると思います。それですから、非常に何か全部の責任が被害者通行人、従業員だけにある。小田急の経営者当局は関係ないのだというような態度で通告を出されておるところを見まして、如何に小田急の経営が非民主的であるかということは、私はここで断言できる次第であります。
  87. 大倉精一

    ○大倉精一君 私あとから来て質問するのですが、先ほど御当局の方或いは監督局長からいろいろ御答弁があつた中で非常に腑に落ちないところがある。これは根本問題としてやはりお尋ねしておかなければならんと思うのです。今参考人の方がちよつとおつしやつたのですが、通行人の責任だと、これは一般論として非常に僕は重大だと思う。これは通行人といつても盲もあれば唖もおれば、聾もおる、子供もおる。諸外国に行きましても、例えばタクシー等の交通の場合におきましても、英国でもフランスでも私自分で聞き見して来たんですが、シグナルがあるようでございますので、混雑しておる交通状態の中で通行人が不注意で過つて仮にシグナルを無視した場合においても、それは飽くまでも人間が優先だということで、自動車そのものが注意して人間を優先に通すというような状態も見て来ましたが、今のような通行人の責任であるというまあ一般的な思想があるとすれば、これは非常に私は重要なものじやないか。無論通行人も注意しなければなりませんが、これはそれと同時に、少くともああいう土地にレールを敷いてそこに大きなものを走らせる、この根本的なものをどうやつて安全に走らせるか、安全に運行するかということが私は優先にならなければならんと思うのですが、その点の考え方についてもう一回お伺いしたいということと、それからもう一つ私が脇に落ちんことは、踏切の問題について地方の輿論が出て来た、地方の声が出て来たからそれに基いてそれを直すというふうに私は受取つたんですが、踏切というものはそんなものじやない。警察法をどうする、教育法をどうするという輿論なんかと全然違う。輿論如何にかかわらず、その踏切の事実、その事実を点検をして事前にこれを危険だと思えば率先して積極的にこれの設備を直して行くのが普通だと思う。事故が起つて、或いは輿論が起つてからということはどうも私は腑に落ちない。例えば私は最近に国会の車で成城学園ですか、成城学園の踏切を越した経験があるんですが、非常に危険の思いをしました。それはあすこは丁度御承知のように駅があつて、そうして踏切は全然見通しが付かない。両方とも家があつて全然見通しが付かない。そこで丁度駅を発車した車が警笛を鳴らしてボツと走つて来ましたから、運転手はそれは待つていました。ところが同時にこちらのほうからもやつて来た。これも警笛を鳴らしておつた。おつたけれども駅を出た車の警笛によつてこの警笛がわからなかつた。これは事実です。そうしてこの車が出たところへ運転手がぐつとエンジンをかけたらぐつと来たが、これは殆んどちよつと違つたらここで私自身が踏切において同じような結果になつたわけです。こういうようなことは、輿論がどうのこうのじやなくて、やはりそういう責任者が踏切一つ一つを点検をして、これは人命に関することなんですから、私は一つ一つ点検をする必要があると思う。この踏切はこういう設備をすべきだ、この踏切はこういう安全措置をとるべきだということを会社みずからがお考えにならなければならんと思いますが、そういうような点について、この二点についてお伺いしたい。
  88. 植田純一

    政府委員植田純一君) 前段の点につきましてお答え申上げたいと思います。実は御質問踏切におきましては通行者が注意すべきであるか、列車運転士が注意すべきであるか、根本的にはどちらが注意すべきものであるかという御質問であつたものでありますから、私は踏切において通行者が注意すべきものであろう。列車運転士は勿論前方注視をする必要があるが、それぞれ個々の踏切において安全であるかどうか個々に注意するということは非常に、ここまで負わすということは無理じやないかというふうに申上げたのであります。これがいわゆるあらゆる問題の責任云々と言つたつもりはございません。
  89. 大倉精一

    ○大倉精一君 ちよつと今のお話の中で誤解されておると思いますので申上げます。私は運転士が注意すべきだというふうには言つてない。私は小田急なら小田急の電鉄株式会社というものが、いわゆる運転士を含んで株式会社というものが注意すべきだということを申上げたのです。従つて運転士が注意することは勿論でありますが、その安全に要する設備なり或いは措置なりというものは、これはその電鉄株式会社自身が注意しなければならん、総合的に注意しなければならん。従つてそういうようなことから私は通行人の責任だという一つの思想があるとするならば、これは轢かれた者が悪いんだ。ところが通行人というものは誰だつて設備がなかつても、注意するなといつて自分の命が惜しいから注意します。そこでたまたま酒を飲んでおる、酩酊しておる者とか或いは子供とか或いはその他の不具者とかいう者が不可抗力的にそういう事故に会うこともありましよう。そういうことも考えて、或いは酒を飲んでおるんだから向うが悪いんだといつてしまえばそれまでですけれども、たとえ酒を飲んでしまつている人が来ても、こうしておけば安全だ、こういういわゆる良識あるところの施設はする必要があるんじやないかということを申上げたのです。私は運転士は無論注意してもらわなければならんが、それを含んだ小田急電鉄株式会社というものがそういう注意をしてもらわなければならんのだということを申上げたのであります。
  90. 植田純一

    政府委員植田純一君) 只今のお話よくわかるのでありますが、ただ私が通行人のほうが注意をすべきであるということを只今申上げたのは、先ほど申しましたように運転士が注意すべきか通行人が注意すべきかという点についてのお答えとして申上げたのでありまして、第二段の質問に対するお答えでも申上げましたように、いわゆる企業として或いは踏切状態によつて設備すべきものは設備すべきであるという点につきましては、只今申した通りだと考えております。
  91. 井上隆根

    参考人井上隆根君) 只今鉄道が優先するか、踏切交通者が優先するかというお話でございましたが、これはまあ私は鉄道に関係している者であるから言うのではございませんけれども、これは非常に大きな問題であると思います。問題の根本はやはりここにあると思うのでございます。私ども理窟を申上げるまでもなく、鉄道は非常に国家の重要な土地を割いて、そうして鉄道の企業を許されておる以上は、国家として相当鉄道に期待するところがあつて、その経営を許しておるものだと、こう思うのであります。又昔からの慣行といたしましても、鉄道優先ということで行つておると私は感じております。併しこの点について疑問があるとすれば、これは国会あたりで以て十分御討議になつて、そうしてどちらが優先すべきかということをおきめになるべきことじやないかと思う。若しこれがきまらなければ、幾百万言を費して論じても、私は結論を得ることはできないのじやないかと、こういうふうに考えます。  それからもう一つ、これは余計なことかも知れませんが、先ほどから小田急のやり方についていろいろ御批判がありました。で、まあ勿論やり方の巧拙或いはそれが非常に誠意があつたかどうかということはこれは問題外で、いろいろ議論があることだろうと思いますけれども関東地方、恐らく日本全部でございましよう、私鉄におきましては、国鉄さんでも恐らくそうだと思うのでございますが、やはり責任の帰属がはつきりしない限りは、香奠とかお見舞金だとかというようなもので、千円とか千五百円とかというものを差上げて、あとそれから花輪を上げるとか或いはその当時の処置料を差上げるというような程度でありまして、結着どれだけ人命の補償をしなければならんかどうかということは、責任の帰属がきまつて処置するのが一般の習慣でございます。この習慣がいいか悪いかということは、やはり今の鉄道優先かそうでないかという問題に帰着すると思うのでございますが、現在は国鉄もそうだと思うのでございますが、私鉄のやり方はそうで、小田急さんだけが特に冷酷なやり方をやつておられるとは私どもは感ぜないのでございます。
  92. 沢勝蔵

    参考人沢勝蔵君) その件についてお答え申上げます。実は先ほど来大分その問題が問題になつていたのであります。小田急はこういう標準交通量を計り、現状を調べ、自分標準はこういう標準で、今までやつていた。監督局から今度出ました標準がありますので、今後はそれが基準になると思いますのですが、そういう標準でやつておりましたので、これは私どもの経営面の許す限りは、私どもはできるだけ踏切事故の起らないように、先ほどおつしやいました気が付かなくても気が付くような設備、これは程度にもよりますけれども、私どもはそれはできる限りの努力をいたしたい、こういうふうなところまで御説明申上げていたわけであります。それで先ほどその地元の声を聞かないのかという御質問がありましたので、それは聞かないんじやない、聞きます、こう申上げました。ですから標準は一応自分たちで作つております。それによつて今まで踏切施設改善して来ております。本年度に入りまして警報機は九月までに六つ付けることになつておりますので、そういうふうに自分基準自分ではやつておるのでありますが、地元の声も聞かないんじやない、こういうことを申上げたんで、地元の声が挙がるのでなければ何もしないのかというふうにとられますと甚だ困るのでございます。
  93. 大倉精一

    ○大倉精一君 私は小田急さんだけを責めておるのじやなくて、そういう踏切問題一般について申上げておるのですが、先ほど井上さんがおつしやつた例えば鉄道優先ということですね、これは鉄道はやはり定時間で走りますし、そして鉄道の持つ意義からも優先奉仕することは、これは当然だと思うが、その半面において、そういう特権があると同時に、その半面に同様な責任があると思うのです。その安全を守らなければならん責任がある。だから優先に走る特権があるからといつて、ぷつぷつやられたんでは皆たまつたものではない。これはトラツクも通りますし、タクシーも通りますから、いろいろなものが通つおりますから、そういう特権の半面にそういう重大な責任がそこに附随しなければならない。この責任というものがいろいろな安全装置があるでありましようが、踏切に関する限りは、私はその実態に即応してそうして積極的にこれを安全運転をしなければならん。今お話なつたそういうことをやるつもりはあるのだが、経営に即して、或いは経営の実態の許す限りというお話があつたのだが、これは場合によると逃げ道にもなると思う。私は恐らく場合によるとなると思う。それで私は経営の実態云々ということは、無論営利事業である限り考えなければならないが、併しながら危険度を優先に考えなければならない。これは或る危険というものをどうしても防止しなければならんということになれば、借金を質においても優先的に安全設備をしてもらうということが公益事業である、公益事業の本当の意味じやないかと考えるわけです。従つてこれは電鉄会社が公益事業として公に奉仕するという限りにおいては、私は経営面が少々無理でも公益事業における安全運転は優位するものであるということを考えるのでありますが、その点についても一つ意見を伺いたいと思います。  それから一つ標準作つておるというふうにおつしやつたのですが、この標準というものは、これは私は確固不動のものではないと思うのです。その標準についても、そこに欠陥があれば進んでその標準というものを直して、そうして安全という点についての最大限の確保をするならば、標準を作る必要があるのじやないか。うちの会社はこの標準でございますからと、こういう標準でございますからと言つても、別段それは誰も承認したわけではないのです。ただ小田急さんなら小田急さんが、自分でそう考えている標準があるだけであつて、そういう標準を上のほうから指示されても、そういう標準を一応作つておられても、それは一つ会社の認識によるところの標準であるということであつて、必ずしも住民なり或いは一般の人々の承認を与えるべき標準ではございません。そういうような意味からいつても、私は標準ということに一応何と申しますか、確固不動のものとして考えられるということも私はなければならないと思います。要するに、そういうような意味で、この踏切の安全ということについては、更に積極的に、国家の責任じやなく、みずからの責任において処置をされなければならない性質のものである。たとえ軽微のものであろうとも、断固処理すべきものであるということを考えますが、その点についての、御所見を承わりたいと思います。
  94. 沢勝蔵

    参考人沢勝蔵君) 只今の小田急標準が一人よがりではないかというふうに私には聞えたのでありますが、標準をきめる場合には、私どもは脇の標準を勿論見ております。それから脇の関東、関西を通じて大きいところが十数社ありますが、ここらあたりとも比べまして、私どもといたしましては、自分標準はよそに劣つているとは思つておりません。  それから責任の問題でございますが、これは事故を起さないように努力すること、これは私どもそういうふうに努力することには責任を感じます。併し実際問題として、事故が起らないようにする全責任は、お前のほうだと言われましても、これも限度があることでありまして、どの程度に整備すべきかという問題になりますと、先ほども再々話が出ましたように、終局まで参りますと、踏切をなくせよという問題になると思うのです。番人を付けた踏切でも、相当事故はあります。それから警笛が鳴つている三種踏切でも、相当事故が起るのであります。設備には、人的にも機械的にも、やはり欠陥がございますので、終局の問題は、危い踏切立体交叉ということになるのじやないかと思うのです。そこまでの責任は、私どもには負い切れません。私どもとすれば、背伸びして届く程度までしかできないというふうに考えております。できるだけの努力は私どももここでお約束できると思います。ただ無制限にお前の責任だと言われましても、これはちよつとどうにもならんというふうに考えます。今後も努力は続けて、できるだけ踏切改良はいたすつもりでおります。やはり考え基準は、経営が成り立たなければ踏切を直そうにも直せないということになると思うのであります。この点御了承願いたいと考えます。
  95. 大倉精一

    ○大倉精一君 私はこれ以上御返答して頂こうと思つておりませんが、お言葉の中に、私は非常に重要なものを感ずるのです。例えば安全にも限度があるから或る程度以上はやれないというお話、或いは経営にも限度があるから、やろうと思つてもやれないのだというお話である。これは取りようによつては非常に重大なことだと思う。無論限度があることは、いつの場合でも止むを得ませんが、これは、私はむしろ電鉄会社あたり、一定の軌道を以て走るところの優先的な特権を持つておる方方は全責任を感じられるのが前提だ。その上に、いろんな限度もあり、何もあるでしよう。だから先ず安全に関する全責任をみずから感ずるということが優先にならなければならない。それで、仮に安全装置をしたい、あつちにもこつちにも安全な設備をしたいのだが、経営がこれを許さないと言えば、それは電鉄会社を経営する資格はない。危なくてしようがない。そういうものに鉄道の優先特権を与えるということは私は疑問だと思う。従つてこれは、これ以上御質問申上げませんが、そういう鉄道優先の特権を持つておられるならば、先ず以て住民に対する、乗客に対しては勿論ですが、住民に対する安全ということについては、全責任を持つということが、前提である。この前提に立つて、いろんなことを進めて頂かなければ、逆になつて行く。いわゆる経営にも限度があるということは、これは一つの逃れである。そういうような逃れ道を与えるようなものであつては、私は公益事業或いは公共事業はそういうものじやないと考える。  従つて、私はこれから強く要望しておくのですが、特に踏切で度重なる事故で、そういう問題が起つたとすれば、これは文句なしに、経営の状態がどうであろうとも、安全な処置をする責任をとられるということが先決になると思います。それができないということになれば、それは非常に重大な問題になつて来るという工合に私は考えますので、特に将来御考慮をお願いしたいと思つております。
  96. 大和与一

    大和与一君 監督局長に御質問をしたいと思うのですが、今回の踏切問題については、亡くなられた方の魂が輿論を動かしたというか、遺族の方たちを中心にした沿道の住民方々の声が国会にまで反映して、国会で運輸委員会でも初めて踏切の設置基準に対する何ら法律がなかつたということを政府から聞かされて、全く全部の人が唖然としたというのが実情なのです。従つて政府の今日に至るまでその措置をしなかつた責任は誠に重大であつて、全く国民に対して申訳ない。こういうことになろうと思うのです。監督局長にはかねてから、早急に踏切設置の基準作つてもらいたい、一体どの辺まで話が進んでいるかというお尋ねをしましたところが、前からも苦労をして、幾つかの案はあります、いずれそれをお目にかける時機は来るだろうというふうにおつしやつておりましたけれども、本日まだ公開はされておらないらしいけれども地方鉄道軌道及び専用鉄道踏切等保守保安設備設置標準というものが一応できたと言つておられますから、これがただ一つ標準として方向を示すだけでなくて、やはり政府が責任を持つて最低の安全度或いは今後死傷事故がうんと少くなるように、そういう努力への方向をもつとはつきりときめて、それを全部実行してもらう、こういうふうにしてもらわなければならないと思うのです。この点を一つ監督局長からはつきりと言明をしてもらつて、これを直ちに法律なり或いは法律の一歩前でも必ず実行し得る規定というか、標準というか、そういうものにしてもらうことをお願いしたいと思います。  それからこの事故処理につきましては、三月二十三日の運輸委員会で、監督局長はこういうふうに速記録を見ると言つておる。踏切事故の慰藉の方法については、責任の所在等によつておのずから違うけれども、いずれにしても死者に対しては丁重に礼を尽すべきことは言うまでもないところでありまして、その点については、今後私鉄に対して指導をやつて行きたい、こういうふうに速記録に書いてあります。先ほど小田急の沢専務のお話では、如何なる場合においても、私たちは誠心誠意やつたのであつて、国会においてその点を言明した、こういうお話がございましたが、若しもそれが間違いであり、事実に相違すると仮にすれば、当然監督局長はそれに対してよく実情を聞いて、公正な措置をなさることが望ましいと思います。又大局的に事故が頻発する場合に、会社とよく話をして、督励をして優先的に施設改善を図つて行きたいと、これも三月二十三日の運輸委員会で速記録に監督局長のお答えがあつた。この点も全体を見てといつて荏苒時を過すのでなくして、具体的に大きな問題であり、或いは国民の七千人、一万人の声が実際に陳情されて来ている。こういう事実に対してはやはり具体的に誠意を以て、よくお調べになつて、正しいことは小さくても一歩ずつやつて行くという具体的な御指示をなさることをお願いしたいと思います。  いろいろとまだ質問したいことがございますが、本日はこれを以て私の発言を終りたいと思います。
  97. 植田純一

    政府委員植田純一君) 只今のお話で、踏切事故につきましては、この前の当委員会でも申上げましたが、鉄道営業法の規定によりまして、この踏切の設置が規定付けられておるわけでありますが、ただはつきりした基準はなかつたというのが従来の状態であつたわけであります。それで今回設置基準を作つたわけでございますが、先ほど来申上げておりますように、強制の力はございませんが、行政指導によりまして、この基準にできるだけ早く合致するように指導して参りたいと、さように存じておる次第であります。  なお基本的にはこの踏切の整備に関しましては、立法措置の必要な点がたくさんあるわけでございます。この点につきましても並行的に研究を進めて参りたいと、かように考えております。  なお事故処理につきましては、先ほど来御指摘になりました当委員会におきます私の発言、その通りに存じております。今後ともそういう気持で指導して参りたいと存じておる次第であります。
  98. 服部諭

    参考人服部諭君) ちよつと申上げたいと思います。  先ほど監督局長さんも、私鉄の経営者協会の方も、沢さんも基準ということをおつしやられた。完全な設備のできたところには大きな事故は少いのです。むしろ不完全な設備、四号踏切において決定的な事故があるのです。そういうことになりますと、完全な基準に達しなければ踏切施設はできないとすれば、小田急の場合四百幾つか多数あるのです、踏切施設ができないとすれば、もう常に危険にさらされているということです。この点基準ということよりむしろ中心に考えて頂きたいと思います。  それから何も三号踏切にするという形でベルを付けることだけが、最善の設備でもないと思うのです。これは私どもがよく仲間のうちで話合いをしておりますが、今四号踏切と申しますのは大体周りに注意柵という柵があるだけなのでございまして、踏切自体が開けつ放しなのでございます。そこで何らかの措置をして、いきなりその踏切に飛込めないような措置をして頂きますれば、例えば木材を交叉して打つて頂くとかすることによつて、いきなり飛込めないようにするのです。その木材を交叉に打つた所に真正面に看板を立てれば一番完全です。そういうことも考えられる。金が幾らもかからない。  それからもう一つ申上げたいことは、児玉学さんが亡くなりました踏切の場所に、私はその翌日児玉さんの轢かれた電車と同じ時刻の電車のどの状況かと思いまして、その踏切に立つておりました。丁度代田の踏切を出ました急行電車が真しぐらにそこへ入つて来ましたときに、私は踏切からたしか三尺ほど離れて立つておりましたけれども、もう完全に体が引込まれるのです。もうあわててそのすぐ側の柵にかじりついたのです。それで自分のほうは冷汗かいたわけですが、十分注意していて立つていてさえ、もう急行がびゆつと来ると引込まれてしまうのですから、児玉さんの怪我した所を見ますと、ここをこういうふうに打たれております。丁度下り線でございますから、丁度真正面に見ましてこう来る電車なのです。ここを打たれておりまして、ここに擦過傷を受けておりまして、これは明らかに真正面にぶつかつた傷でなくてむしろ吸い込まれて電車にぶつけられたというような傷であるということが証明できると思うのです。そういう点で必ずしもちりんちりんを付けるだけでなく、むしろもつと創意工夫によつて簡単な設備でも踏切の安全度はできると思います。その点を申上げたいと思います。
  99. 前田穰

    委員長前田穰君) それではこれで質疑を終了いたします。  それではどうも本日は参考人方々長時間に亘つて熱心に御意見をお述べ下さいまして誠に有難うございました。我々として大いに将来の示唆について参考になる点が多かつたと思います。厚くお礼を申上げます。以上、お引取りを願います。   —————————————
  100. 前田穰

    委員長前田穰君) それから東京都における自動車交通の取締について、警視庁警邏交通部長を当委員会参考人として出席を求めたいという提案がございましたが、そのように取計らいたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  101. 前田穰

    委員長前田穰君) 異議ないと認めます。  それでは本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十七分散会