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1954-05-19 第19回国会 参議院 運輸委員会 第29号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年五月十九日(水曜日)    午前十一時四十四分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     前田  穰君    理事            入交 太藏君            井村 徳二君    委員            仁田 竹一君            一松 政二君            高木 正夫君            森田 義衞君            大倉 精一君            木島 虎藏君   国務大臣    運 輸 大 臣 石井光次郎君   政府委員    運輸政務次官  西村 英一君    運輸大臣官房長 山内 公猷君    運輸省船舶局長 甘利 昂一君   事務局側    常任委員会専門    員       古谷 善亮君   —————————————   本日の会議に付した事件運輸一般事情に関する調査の件  (海運行政に関する件)   —————————————
  2. 前田穰

    委員長前田穰君) これより運輸委員会を開会いたします。  先ず運輸一般事情に関する調査海運行政に関する件を議題といたします。  第十次計画造船についての所要の経過について先ず以て御質疑のおありの方に御質問願つて、それが終つてから次の問題に進みたいと思います。
  3. 一松政二

    一松政二君 第十次造船の問題につきまして、いろいろ新聞紙上に伝つておりますし、この委員会においても、当初大体の方針を承わつたことがございますが、現在の進行状態と、当面これに対する運輸省考え方を一応大臣から御説明願いたいと思います。
  4. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 第十次造船を成るべく早い機会に始めたいという考えで、予算が大よそ検討がついた時分から至急にこの問題と取組んで参つたのであります。今年の造船で昨年と比べて変つた状態と思われる点は、昨年はいろいろな意見はありましたが、金融業者船主造船業者一体となつて、第九次造船をやるという線に進んで行つたのでありましたが、今年の情勢は少しく違つておると申しますのは、財政の面におきまして引締めが行われ、金融界においての、相当中央、地方におきましての金融の引締めが実際的に行われるようになりましたので、金融業者諸君が昨年の暮頃に申しておつた担保力を増してもらいたいとか、或いは三割の我々の資金からの融資を二割ぐらいに下げてくれないかというような程度通り越しまして、二月末から三月にかけまして以来、ずつと私この問題でいろんな人に会つて金融業者の声といたしましては、どうか今年はもう勘弁してもらいたいというような声が金融業者の集りとしては圧倒的な声であるのであります。で、個々人たちにも又当りまして、いろいろ意見を聞いたのでありますが、その中にはいろいろな立場々々の違う人たちもありますので、必ずしも全面的に金融できないということを言わない方もありまするが、大部分は、成るべく一つ我々の方へ負担の来ないようにしてくれという声は、一つのずつと続いた流れでございます。最近におきまして、新聞で御承知と思いますが、金融業者諸君が数日前集りまして、今年は一つ勘弁してもらいたいというような意味のことを話合われたということであります。その後私のほうに正式には話に参りませんが、私の方の係の者もそれぞれの銀行等に話をし、又そういう人たちが大蔵省の人たち話合つたり、いろいろしているところは、大体において今年は金融は勘弁してもらいたいというような一つ流れができておるようでございます。船主のほうは、造船疑獄がやかましく言われました最中でもあります二月頃から、私は頻りにそれはそれ、造船造船ということで、船主協会側人たちと会いましても非常に引込み思案で、もう少し様子を見てというようなふうで、造船所だけが従業員も含めまして非常に熱心に何とかしてもらわないと船台ががら空きになるということを言われました。これをもとにいたしまして、皆さん方も大変御心配頂いているようなお話もあつたわけでございます。  私どもはその後、具体的に第十次造船を進めるにはどうするかということで前にも申上げたと思いますが、先ず本年は何とかして行くにいたしましても、来年からの計画造船というものは、なかなか市中にただ出してくれといつて頼むだけではやつて行けそうにもない、それにはどうしたらいいか。一方日本国策として、もう少し私は海運界の拡充をしなければならないという考えを持つておりますので、それには政府がどういうふうな形で造船をやつて行くかという問題を先ず考えておくこと。それから業者としては、こういう苦しい海運界情勢から考えまして、海運界自身が、船主造船所整理統合というようなことをもう少し真剣に考えなければならない、これは昨年の造船終つた直後に、私はその人たちに要望をし、昨年の年末頃にも何とか具体案を持つて来てくれということを話しておりましたが、頻りに相談の途中に造船疑獄などが起りまして、それどころでないというような形に見ておりました。今度の造船をいよいよ何とかしなければならんという前提としても、これらの諸君が何かの案を持つて来なければ、今までの姿でただ船を造らしてくれ、ああそうかというわけには行かんということをずつと言いながら今日まで参つております。ときどきいろいろな意見を持つて見えますが、これはまだ作文の域を脱しないようであります。もう少し具体的に今すぐできんでも、ここ半年なり数カ月のうちに、だんだんそのほうに進んで行くという方向でも示すものを持つて来いというようなことを話しておるのでございまするが、折角話をしておる人々が又途中で引張られたり何かしまして、造船界船主のほうの御連中も、なかなかこれに対していろいろ各個の意見はあるのでありますが、まとまつた意見としては出て参りません。ただ海運界には私ども見ておるのは、各オペレーターの間に無謀な競争だと思われるようなことがないように、そういうことをやらないような方向を示したものを持つて来て頂きたいと、これは頻りに海運業者諸君も真剣に話合いをされておる状態でございます。造船所のほうも非常に急いではおるが、何とか自分たち考えなければならない。来年になりまして、どういう形になりましても、造船の量というものが、造船所の能力に比べまするとずつと少いものである、少くも半分見当だろうということが、今のところはまだそういう来年、再来年ではそんな程度ではないかと想像し得るのでありますから、それに対してどうしたらいいかというようなことを頻りに話合いはされておるようでありますが、これもこの間うちの話合い内容を、一応こういうような批判をしておつたのを正式に持つて来るのではないかと見ていたのは、これはふだんの場合の造船所をどうしてくれという希望やら、まあお願いやらというようなものばかり並らべ立ててあつて自分たちがどうするかという問題については、まだ一つも進んでないじやないか、そのほうを今求めているのだ、もう少しそういうものを話して来てくれというのが数日前のことでございます。  そういう状態でありますが、造船のほうは今申しましたように、もう六月になりますとがら空きになりますから、整理統合の面はその面でやつて行く。政府のほうの来年からどうするかというほうは、海運公社というものを私ども一応の案として出して、これを土台として話合いをして、若しこれがいけないというならば、これに代るものでもいいから、とにかく実効の上る方法はどうしたらいいかということで、ただ批評だけせずに、必ず何とか来年度からはするという方向をきめなければならない、これも引続き研究を続けて行くということにいたし、造船所海運界整理統合の問題も続けて行きながら、十次造船もそれはそれとしてやつて行く。それには六月が空きますから、今月中に手順をしつかり終つて、来月早々にはすぐ募集できるように、できれば月のうちにでも募集にかかれるように、それ以上延ばさないようにと思つてつているわけでございます。どういう方法でやるか、政府資金七割、市中資金三割という建前で市中銀行と話しているのです。市中はさつき申しましたように、なかなか困難でございます。併しそれかといつて、全部政府資金でやるということになりますと、造船の量もうんと減りますし、それをするには手続上のいろいろな問題もありますし、私としては一ぱいでも多く造りたいということを考えておりますので、そうしますと政府資金の七割ということを動かさないで、その残りの三割をどういう形で行くか、市中は放つておいて、どれだけかのものはできるかもわかりません。併しみんなはできんかもわからない。それはいろいろの見方があるのでございますが、ここのところを今いろいろの案を以ちまして、いずれにしても今月中に造船合理化審議会にもかけまして、応募できるような発表をするところまで持つて行きたいということで、昨日あたりも相談いたしまして、今日も実はこれから大蔵大臣やら経審長官などと御相談をいたして、大体の方針話合い、それから造船業者諸君とも話を進めて行きたい、こういう状況になつております。造船は遅くとも六月の上旬には募集いたすというところまで持つて行きたい、できれば今月中にでも一日も早く発表いたしたい、と考えておるところでございます。
  5. 一松政二

    一松政二君 只今の御説明を承わりまして、今月も余すところあと僅かに十日しかないわけでございますが、大体今まで承わつておる所を行きつ戻りつしておるような御説明でございますが、それはそれといたしまして、大臣のお見込では今募集すれば、応募者が昨年のように相当殺到するというお見込でございますか、その辺はどうお考えになつておりますか。
  6. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 今度私ども募集をする方法として今一つ考えを持つておりますのは、昨年と違う行き方にしまして、昨年は春、期限をおきまして、一日までに申込んで来たものということにいたしまして、それによつてその中から運輸省との相関関係によつて見る。それを開銀金融方面事情或いは信用その他によつて行くという行き方できめた。今度は随時造船の形をとつたらどうであろうかということは、私はまあ今のように困難な金融界その他の状況でありますから、そう簡単にどこへでも金融の話がうまくつくとはちよつと考えにくいのであります。それで、或いは相当遅れるかもわかりませんけれども個々船主に聞きますると、皆自分の所はこう造りたい、ああ造りたいということは、言います。併し銀行は貸さんと言つておるけれども、どこから持つて来るのだという問題になりますと、一ぱいでもできるということになります。どうもそこいらのところを考えますると、私は昨年の申込が殺到するとは思い得ないのでございます。そこで何ばいでも私ども考えております政府資金七割、民間船主がこしらえる残りの三割というものが整うたものから許して行く。それは勿論航路の関係でありますとか、何に使うとか、何に充てるとか、或いは開銀としては信用の上において適当だと認められるとかいうような状況は勿論ありますが、随時造船の形で行つたらどうであろうかとこういうふうに思つているわけであります。
  7. 一松政二

    一松政二君 私が二、三の知合いの者から聞いているところによると、大体今の運賃及び世界の海運市況から、造船については、先ほど大臣からも御説明がありましたけれども、ここで別に半年や一年を見送つて船会社としては大した痛痒を感じないのだ、船会社としては一応まるまる自分造つて自分の危険で従前のようなフリーの形にやらせるなら、今年などは一応見送るべき年じやないかと考える人が多いように私は想像しておるわけです。そこで、今十次造船を建造しなければならんということは、日本海運の増強、これは長い目で見て増強するというふうに考えるよりほかない。目先の問題としては、ここで一年仮に量が非常に少くなつても、船会社としてはさほど痛痒は感じない。日本海運政策としても痛痒は感じない。どうせ国家は悠久なものですから、半年一年はどつちになつても止むを得んと思うのですが、ここへ来て一番ピンチに追込まれているのは造船所或いは関連産業、それに附随しておる、まあ附随しておるという言葉はどうかと思いますが、いわゆるこれに対する従業員利害関係人であると思うのでありますが、先日、衆議院で十次造船促進決議案が通過いたしておるのでありますけれども、私は端的に言えば、造船所救済だというふうな感じがするわけです、理窟はいろいろつけようでございますが。それならば私は国民納得せしむるだけのことをよほど考えていないと、もう今は国民としては造船疑獄という問題で政府にも国会にも或る程度、或いは或る程度を越しているかも知れませんが、非常な不信と不愉快な念と疑惑を持つているわけです。従つてこれを促進しなければならない。促進しなければならない真の原因一体どこにあるのかということも、やはり国民納得せしむる必要があると思う。ただ従来のようにやりかけだからやらなければならないといつても、船会社はそれ自身海運の面から言えば、そう焦眉の念じやないけれども焦眉の急というのは造船台が空いて来るということであるから、今まで計画造船考え方と、今年のだんだん遅れた原因は、先ほどの説明にありましたように疑獄問題と、それからやはり海運市況もあるし、船会社それ自身が資産状態なり、経営内容が急激に悪化している。そして私は極く一部の船会社にしか僅かの担保力が余つてないということを聞いておるわけです。従つて今までのようないわゆる担保、或いはそれにも増してこういう不況時代ですから、金融業界としては担保が欲しいに違いない、ところがそれを持つている船会社が五指を屈するほどはない。そのうちの何本しか屈するほどしかないのが現状だと思うわけでございます。従いまして私は運輸省が今考えているように、従来の線を堅持して船会社に呼びかけて、一体船会社が何割その中から応募者があるであろうかという多少の危惧の念も持つているわけです。それをあれやこれや考えている間に時がたつて来たのだろうと思うのですが、やはりその旗幟を明らかにし、国民納得せしめる方向に運用されないと、又新たに不信の念を抱く。私どもは十次造船を急ぐ理由は、結局造船所の問題であると考えておるわけです。海運の健全なる発達という今までの旗印とは、私は五日や十日、一カ月を争う問題になつて来ると、それは問題の焦点が今日は違つておる。そこで、それならばそれのような考え方をしてやらなければならん、それには拙速を尊ぶのではないか、根本的な考え方になれば、私はやはり何か世界的な非常な事変が起れば別ですが、今までの過去の経験から言えば、事変或いは戦争のあつた後は当分惨憺たる状態が続く、若し東西両陳営話合いが、曲りなりにもここ二、三年続くとすれば、海運界不況のどん底に沈淪すると思う。従つて船会社としては相当警戒心も持たなければならない。ただ漫然と国がやるからという従来の安易な考え方では又許さるべきでもないし、多少考え方は変つておるであろうと思うのですが、どうしても、私は海事公社案内容はまだ承知しておりませんけれども、全面的に国策として必要であるとしてやるのならば、ここ五十万トンなり或いは六十万トンなり、その分だけは船会社にはもう担保力がないのですから、これから後に市況がよくなつて担保力がよくなつて来る気遣いない。マイナスマイナスが寄り合つたところで何も生れない。新らしくそれでは海運会社に資産が附加えられるか、これで株主を募集して、資金を集めるとしたところで、今の海運市況海運会社の株価の成り行きでは増資なんて思いもよらないであろうと思います。従つて資金信用の累積するめどはちよつと当分見込めないのじやないか。併し船は或る程度日本の貿易その他から考えてみて、国家として如何に不況であろうとも、或る程度のものを持ちたいという考え方は、私は国民的にそれは納得できる。然らばどうしてもその国家資金の許される範囲内だけでもこれを造つて行くのだ、それから後は数量がその代り減るけれども、それは一応造船所救済にもなる、又それは日本産業の基礎なり或いは海運の遠き将来のためには、それだけは必要があるのだ、というので私は国民納得するかも知れんと思うのですよ。でありますから、ただ従来の線を私は堅持されてそうして民間銀行に呼びかけたり或いは多少の嘆願なり或いは圧力を加えてもやはり遅くなるのじやなかろうかと思いますよ。で、何らか、どうしても臨時措置が間に合うか合わないかこれは知らんけれども、何か早急に考えないとやはり日がたつてしまう。従来の線でやつてみて募集してみて、応募者が五万トンか十万トンしかなかつたという場合には、これ又、或いはそれ以上あるかも知れませんよ。けれども、それではやはり先ほど大臣が言つたような量が非常に少くなる。私は今のような線を堅持しておれば、むしろ非常に少くなるのじやないか。担保力がないんですから、ということを心配するわけなのです。で、そうして今の造船所の問題から言えば、轍鮒の急という、まあ非常に古い漢語かも知らんが、轍鮒の急という言葉が、近頃はやらんかも知れませんが、ある。今ここで十日以内にきめて、六月の初めに空くというなら、それを又造船所が待つている。併しその数が十二、三万トンであつたならば、まあ一万トンとして十二、三艘、或いは十七、八万トンに運輸省考えているように行つたところで十七、八艘なのです。それを造船所にまとまつて来れば、まあ各造船所一ぱいか二はい、又造船所に対する割当も非常な問題でございましようが、こういう問題について、やはり非常な疑惑の種と現に問題を包蔵しておりますから、からりと晴れた晴天のやり方で、私は国民納得をしてもらわなきやならんだろうと思うのですよ。もう一つ突込んで、大臣はまだ今日でも、今さつき説明された程度のことでお過ごしになつておるのだとすれば、私は少し大臣希望よりも現実は遅れるのじやないかという気がするのですが、大臣もまだ遅れそうな気がして  いるのではないですか。どうですか。
  8. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) もう話合うべきものは殆んど話合つた言つていいくらい、私は二月の末項からこの問題で随分いろいろな人に会つて来たので、あれかこれかというような造船についての措置、十次造船についての措置を案としては考えておりますので、これが最後の場面にどういうふうにするかという肚をきめる時期にも来ております。それで、一両日中に、大蔵大臣経審長官とも前から話していることで、いわゆる経済閣僚の間で下相談をいたしまして、これで金融業者諸君とも話合い、或いは開銀ともよく話合いをしまして、落ち着く場所ができると思うのです。それが私ども考えておるようなことができなければ、根こそぎ引繰返つて政府資金だけでやるかやらんかという問題に追込まれるだろうと思つております。それには、いろいろこういう行き方もある、こういう行き方もあると思つておりますが、実は明後日造船合理化審議会の今までの人たちに、一遍総辞職をするために集つてもらうつもりでおります。これは四十人からありまして、造船界船主方面人たちが随分たくさんいる。金融界の人もおります。これは業界の代表的な人だけ集めまして、或いは学界の人たち、それからもつと広い意味での経済界、特に海運等について知識経験もある人で、現にやつてない人たちを入れるということにしまして、二十五名ぐらいに人数を減らそうと思つております。それで、まだ任期中でございますが、明後日集つてもらつて、一応相談して、やめて頂く。そうしてすぐあと人たちにお願いいたしまして、来週の二十六、七日と思つておりますが、その頃造船合理化審議会を開きまして、そこでいろいろ話合いをして頂きまして、これは一回では済まないと思います。二回、三回と続いてそこでやつてもらいまして、それによりまして、今後の方針を議してもらい、月内には話をつけて、今後の方針に触れるというところまで是非もつて行きたい、こういうふうに思つております。
  9. 一松政二

    一松政二君 先ほど大臣は、最悪の事態があつた場合に開銀国家財政資金の投入だけで船腹が少くても仕方がないからやらなければならんとおつしやいましたが、誠にその通りだと思いますが、そうやるためには、法律上の手続が要りはしませんか。
  10. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) そうでございます。私どもはその問題を、なかなかこういう際だから銀行などの融資を待つてつたら船ができないと思う。だから、もう政府資金だけで早くやつたらどうだというようなことを議会内でもたくさんの人から質問なんか承わつたことがございます。そうすればそれは目先造船所がきまつておるからすぐやれということだけでかかれば、これは法律ができれば……、今おつしやつたように法律がなければできない。こういう際だから、一つ両院共に急いで通してやるということでありまして、仮にそれが通りましても、全額やるとすれば、恐らく今の政府資金でやりますと十二万トンちよつと出るくらいだろうと思います。何とかして私は市中の金と申しますか、海運業者一つ資金をこしらえて銀行とも話合つてつてくれますれば最低十六万トン或いは十七万トンあたりまでできるのではないかということを考えております。最悪の場合は、政府資金だけで行くという問題があるが、そこに持つて行きたくないというので、私どもも今までずつといろいろ当つて参りましたのですが、やつて見て、私がもう幾ら頼んでも頼みきれないような状態に行くかもわかりませんが、どうも私は今までの折衝をずつと自分でまとめると、自分のほうの希望的なものが少し加わると言われるかもわかりませんが、十七万トンなら十七万トン全部がいかんにしても、相当のものは集つて来るのではないか。それじやどうするか、そのあと政府資金に残つているのはどうするかという問題になりますが、随次造船でありますか、或いはその他でありますか、年末になつたら、もう少し出て来るかもわかりませんが、残りました或る時期において、これを政府のさつき申しました海事公社資金、或いはそれに近いようなもので来年度からやつて行こうという方針のものも研究をして成案を得なければならない。その線に沿うような方法考えまして、或いはどんな形かで立法して頂くというようなことをしなければならないかもわかりません。これはまあ最後はそこまで想像はいたしておりますが、そうならずに十次造船で行けるのではないかというふうに思つておるのですが。
  11. 一松政二

    一松政二君 大臣の御希望は御尤もですが、私は普通の観念で言えば、船会社の今まで銀行に置いておる担保は非常に下つていると思うのです。従つて、普通のただ取引観念から言えば、開銀にしても或いは市中銀行にしても増し担保の要求を当然しなければならない時期だと思うのです。ところがそれに応じ得る船会社は先ず皆無じやないか、従つて非常に市中銀行がこれをいやがる、これをやることは国家市中銀行を不健全な経営に陥らしめるというそしりを免れない。金融面からだけ見ると非常に無理を強いるむずかしい段階に入るだろうと考えられるのであります。私が心配するのは、殆んどの船会社事件を起しております。造船所事件を起しております。国民は非常に納得が行かないし、今の程度の検察庁或いは政府やり方に対してもいろいろな批判があると思います。そこで今度船会社が非常に弱体になつておる、私は運輸大臣に百パーセントの御同情を申上げるのだが、非常にむずかしい問題に当面して何とかしなければならない立場に立つておられるが、船会社担保力の余裕があるとすれば、今まで増し担保を要求してもかわいそうだから要求しないとか、無理だから要求しないということであれば別問題ですが、新たに開銀なり市中銀行が要求するような担保の持ち合せのある船会社は殆んどないような気がするので、大臣はたくさん造らせたい、造りたいというお考えでも、実際はどうであろうか。私は自分でやつているわけではございませんから、多分に想像と人から聞いたり自分考えていることからの判断でございますから、必ずしも私の想像が当つているとは考えませんが、併し全体から考えてどうもそういう気がする。で、随時造船の形でおやりになる場合に、今までのような方法でおやりになるのかどうか。造船所と共同出願でやつて行くとか、そういう方面に対してまで何か新らしくお考えになつておるのかどうか。私はむしろ今日の情勢では、造船所がどこからか金を借り出して来て、船会社に頼んで何とか造つてもらいたいという段階じやないかと思うのです。船会社のほうはどちらかというと、そう急がなくてもいいのだ、おれはゆつくりやりたいのだが、造船所は息が切れてしようがない、命がないのだから何とかしてくれ、そういうなら君のほうから担保でも持つて来るなり、金の心配をしろというのが船会社の肚、勝手なことを言わせれば船会社のほうはそういう気分じやないかと、私は常識的に考えてそう思うのです。そういう点は応募したときに、もう担保さえあれば、あとの資格は問わないということになるのか、その点はどうですか。
  12. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 金さえ、三割の分さえ用意して来れば、政府資金七割をどこへでも貸すというわけには行かないと思います。特に今年のように造船疑獄の問題が起つた際でありますから、そういうことを相当考慮に入れて行かなければ国民納得しないと思うのであります。一方、今まで運輸省でずつとやつて来た方法に、共同応募というようなことも勿論否認はしておりませんが、共同で応募するような所は力もないのだというような解釈でそのほうはあと廻しだつたが、今度は整理統合というようなものを一方に考えておりますので、成るべく共同で、ゼロとゼロが集つて、三つ寄つて来たのだからおれの所へ一ぱいくれというだけではこれはどうにもなりませんが、何がしか持つているものが二つなり三つなり寄つて共同申込で、それは力あるものならば、この方を一つ力として今までのようにあと廻しにしないで認めて行く、或いはそれを推奨するくらいのつもりで行くということにしようかというような案も持つているわけでございます。それから私は、勝手に出て来れば、どれでも担保力さえあればかまわないということになりますと、船主と申しまするか船会社が、船会社らしくないようなところで案外そういう都合のつくのが出て来るのじやないか、こう思われるのです。そういうのはどういう方面に船を使うか、という点から見ましても、金さえ揃つて来ればどこへでも融資するというわけには行かないのじやないか。基準をきめて頂く、こういうふうに考えております。
  13. 一松政二

    一松政二君 その点で私は大臣と少し意見が違うと思うのですが、こういう不況の時代には、過去において物持は船を造つている。十年に一遍でも或いは十五年に一遍でも当ればいいのだから、非常な資産と心得て、いわゆる一ぱい船主というものがたくさんあつたと思うのです。併し一ぱい船主自分で船を動かすのでないから、それはチヤーターして専門家に動かせる。丁度日本で貸家が払底して、住宅難にあえいでおりますけれども、これは税金の関係、借地借家法その他の制約があつて、今日家作を持つて普通に貸している者がなくなつてしまつて、貸家を建てる人が非常に少くなつたために、私は国民が非常な不幸に陥つていると思うのです。一ぱい船主だからいけないという考え方は私はおかしいと思うのです。どこの船でも、日本は船さえあればいいのですよ。これは素人には動かせないのだから、経験と組織を持つたものでなければ動かせないのですから、これは貸すのですよ。そうして動かすものは玄人なのですから弊害はないと思うのです。一ぱいでも船を造りたければ、ただそれに今日では、あえて過分という言葉を使いますが、過分な保護育成というような部面か何か知らんが、損失補償法案なり利子補給法なりというものがついておるために、私は一ぱい船主にそれが行くのはどうかという考え方があるのじやないかと思うのです。本来から言うと、金のあるというか、融通のつくのが不況な時代に或る意味において多少賭博的な考え方か、物の一番安かろうと思うときに難平で、株式なり或いは商品なり難平で買い下がるということがありますが、難平で船を造つている。私は国家でも或る程度、年に十万トン、十五万トンを難平的に、造船能力を維持し且つ船価をならして行くためには難平的に造ることは一つ考え方だと思うのです。こういうむずかしいときに、私は一ぱい船主という言葉を使えば別問題、何か非常に奇異の感を抱く人があるかも知れませんが、かなり私は昔は、現在でもありますが、昔はこういう国家的に船を造るとか何とかいうことでなく自由に船が造れる時代には一ぱい船主というものはたくさんあつたのです。それがダムの役を果しているわけなのです。であるから従来、或いはこれは外国においてもその通りなのです。一ぱい船主はたくさんあるのです。一ぱい船主、二はい船主、三ばい船主もあつていいわけです。それを殊更に避けなければならんとお考えになる根拠はどこにあるか、それを一つ承わりたい。
  14. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 一ぱい船主を無視すると申上げたのではございませんので、妙な金が出て来て、金さえ出て来ればやるというようなものが出て来る場合も想像されますので、それは困ると申上げたので、これは船屋さんじやないが、船屋さんを偽装するような場合も出て来る、私は今おつしやつたように一ぱい二はい持つている人たちの船でも、いい船であればチヤーターされたりなんかして、日本海運全体としては大きく動いておるわけでありますから、これは無視するというわけじやございませんが、併しどういうふうにして行くか、それも今までからしますと、資産のいい状態にある一ぱい船主というものが入つて来てないのが多くて、その人たちのほうが担保力が郵船、商船多いくらいでしよう。それならばそういうところばかりこしらえるというわけには行かない、無視するわけではございません。いろいろな情勢考えまして、そういうのがこれから先の問題となつて来ると思います。あなたのおつしやる意味には私決して反対するのではないのです。
  15. 一松政二

    一松政二君 私ばかり発言するようでございますが、私はもう殆んど尽きておりますから何ですが、今の大臣の御意見にもう少し私は附加えて伺つておきたいのは、船会社がもう資産がない、併し船は水物ですから、常識的に、早ければ五年、遅くても十年に一回ぐらいは当る時が来るだろうというので、若し現在が一番安ければこれは金のある人なら造ることを考える。併しそれがむき出しに正面にいつたのでは、無論銀行としても、或いは国家としてもすぐ応とは返事すまい。従つて船会社と提携して、船会社担保を提供し、船会社としてもそういうのを探して来て、船をおれが使うのだが金がないから一つ君の方で担保を出してくれというのが出て来はしないかと思うのです。船会社担保を持つて来た場合には、その担保の出先まで一応詮索しなければならないとお思いになるか、その点一つつておきたいのです。
  16. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) その問題が一つあるわけでございまして、市中銀行で三割を出すということが実際上いろいろな点から見まして不可能であるとすれば、海運業者或いは造船所或いはそういうふうな人たちの力によつて担保というものが出て来る場合どうするかという問題が一つあるわけでございます。それも一つの問題としてまだ決定したところに至りませんが、そういうふうな問題を今考えております。
  17. 一松政二

    一松政二君 それからもう一つつておきたいのは、何か新聞紙上で見ると、去年より五%ぐらい安く船を今年は造らせたいということでございますが、去年の第九次の後期の造船の船価が船会社によつて現実に違つておる、非常に安くするから割当ててくれなどといつて、現に割当てたものもあるはずですから。そうすると今年の船価というものは非常に問題になるし、リベートの問題もあるわけですから、国家資金を伴うから、これが又非常に厳密にお考えになつて頂かないと問題が起ると思う。輸出の船価は非常に下つておるわけです。而も犠牲輸出だからといつて、砂糖の輸入権までも保証に出して輸出を奨励するということになつておる。日本の船は五%ぐらい下げたところで船価に格段の開きがある。そうすると外国の競争する相手方に、一方輸出の面からは誠に結構だし、造船能力を維持する上からも輸出はしなければなりませんが、或る意味において国家が造る船は高いものだ、船は二十五年なり三十年の生命がある、そして最初から二割も違つたような船価で競争することそれ自身が非常に無理があると思うのですが、そういう矛盾について大臣はどういうお考えを持つておるか。それは日本船会社の競争力に影響しないとは私は言い切れないし、一つの矛盾であると思うのですが、輸出の船価まで、日本の今度は計画造船を実行する場合でも下げさせるというと、これは又造船所自身が立ち行かないという問題があつて、いろいろな問題があるかとも思うのですが、併し船価を下げる、或いは造船台が空く、或いはこれで海運業者はもう立ち行かないという場合に、私は従業員諸君考え方は、私は国家にいわゆる応援を要求するならば、従業員自身自分で遊んでいるよりもいいのだ、止むを得ないということで考えないと、私はあらゆる産業がそういつた形を取つて来ると思うのです。でも極端な人になると基幹産業基幹産業などと言つて国家がやあやあ言つているけれども、あれほど膿のある会社はないのだ。むしろ中小企業の銀行国家の御厄介になつてないほうが正しいのだ。一方はただ借金ばかりを殖やしてやるから次々に協調融資だとか、或いはこれほど借金があるし、これが倒れれば大変な影響だからというので、それに又金を貸す。そしてイージー・ゴーイングになつて、これは従業員関係もあります。そういうものが日々皆国の補助を要求して来た場合に、それに堪えられるはずはないわけです。従つて、そういう場合には最後的に国は破産という場面にぶつかるわけだと思うのですが、その従業員の心掛け、又従業員のほうに言わせれば、自分たちだけがこんなひどい目に会わなければならないかという考え方もある。日本の各自の生活水準というところまで切下げなければならないかも知れませんが、国家が一応他の産業に抜きん出た施策をする場合には、その施策に応ずるところの関連従業員は、これは又それだけの心掛けがないと非常な指弾をこうむる。現在船会社などが国民の指弾を受けた原因は、非常に景気のいい時に、いつでもいわゆる成金風を吹かせるのは船会社です。昔からそれはきまつている。非常に国家の手厚いことを受けていながら、交際費や或いは遊興費などを非常に使うというのが国民感情として割切れないのですから、そういう点に対する運輸省の行政指導は確固としてやつておるのか、この二つの点です。今の輸出船価と日本計画造船の船価の値違い、及びそれが競争力にどう影響すると考えるか、それで一体競争ができて行くのかという点と、それからそれはともかくそれほどの急務ということで計画造船を急ぐが、それじや従業員一体それだけの覚悟があるのかないのかという二つの点について伺いたい。
  18. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 標準船価を毎年こしらえておつたわけであります。今年も先頃から頻りに研究をやつております。鋼材の補給がなくなりますし、それも今度計算に合せますと、約八分ぐらいな値下げの案が運輸省の案としてできたわけでございます。これによりますると一つの不定期船の単価等を比べまするとイギリスの今の船価と殆んど同じように漸く来るわけでございます。それで私どもの狙いは、標準船価というものは世界的の標準船価だということにならなければ、日本だけこれが尤もだと言つても、世界との競争の上におきまして、そこまでいろんなものがよくなつて来ることは必要でありますが、今度そういうようなものができ上りましたら、私はこの船会社造船所との契約は、外国から注文を受ける場合と、日本船主が注文する場合と違つて、そこに何か政府が値段に、ここいらが大体の標準だろう、それから下るのは、何だか運輸省のきめたのより安くては恰好がつかんというようなどこかに潜在意識でもあつてこの契約を支配するようなことがあつてはならないということが、私は第一に標準船価というものについて心配しておる問題です。今後は、この標準船価として今のような程度の、昨年度の表向きから見ると五分、内情から見ると八分ぐらい値下げになりますが、少くもこのぐらいまでは下り得る、或いはそれ以上いろいろな話の工合というか、ここまえ船主がいろいろな方法で下り得るものならば、更にそれから下る一応の基準、少くもこれ以下に造るように努力すべきだという点だけ見せて、何々は単価どれくらい、何はどれくらい、こうやつているからこうだという細かい発表はせんということになるわけでありまして、そういう意味で一昨日でございますか船主造船所両方に船舶局で話をいたしまして、船主諸君はこれまで下れば大したものだというふうな空気が強かつたということでありまして、これくらいじや我々注文できんという人は一人もいなかつた。それから造船所のほうは相当えらいことだ、えらいが、何としても我々勉強して世界的の船価に近付いて行かなければならんという一つの目標もあるわけなんで、これでできるだけ一ついろいろなものを考えながら努力して行こうというようなことだつたのでございます。そういうつもりで今年の標準船価は発表いたしました。  で、これとそれじや輸出の船価とまだ開きがあるけれども、輸出の問題も昨年の暮頃からもいろいろ引合いが来ますのが、足元を見てか相当ひどいのでございます。一、二の造船所では、自分の所のドツグが空いておるというために引受けたくはある、遊んでおるよりはいい、どうせ赤を出すのだから、赤を少くするために引受けたいが、これが日本の船価だということになつては、ほかの同業者に申訳ないという意味からも非常に悩んでおるというようなことを言うて見えた方もありました。そのときに、それはもう一遍下るとなかなか、それからほかの会社の頼まれる場合もわからないので、できるだけ頑張つてくれというような話をしたことがあるのです。この頃のインドネシア、或いはトルコの入札を見ますると、まあ日本の船価よりは安いわけでございますが、今申したようなわけで、まあ造船所としては、空いているようになつてしまうよりは、そろばんが合うという苦しいまああきらめのそろばんで見ているわけでございます。併しこういうふうにして、それじや船をどんどん日本に注文したほうが得だということで出て行くならばどうなるか。その船がやがて荷物を運んで動き出すときにおいては、日本の高い船で運ぶのと競争するわけです。これがまあ一番の問題でございます。それだから無理なことをして船の輸出をするよりは、何とかできるならばストツク・ボートでもこしらえてやつて行きたいというような、これは造船所なんかの皆関係の人は願つていることでございます。そして来るものならば来てもいいという態度をしておれば、おのずから又そこに輸出の値段も上るだろうというので、これは話としては皆そうでありますが、それじや資金はどうするか、実際問題になりますと動きがつかない。まあ千トンか二千トンの船一ぱい造るものなら、何とか手持でもやれましようが、そこまで行けないのが今の苦しい状態なわけなんです。そういうことを含みながら、私ども輸出船価のできるだけの維持と標準船価をできるだけ下げて行くということを考えておりますが、実際それじやそうなるかというと、どうも今のような船舶界の情勢ですと、輸出船価は私はそうよくなると想像できんような状態なんであります。それでそれならば、日本の船を造ることが少くなる。まあ保安庁の船もありますけれども、そんなものを合せましてもまだまだ余裕のほうが多いのでありますから、ここで又ずつと戻りまして、造船業界の整理という問題をお考えなければどうにもこうにもならない。だからこれはもう今年だけ十次造船は済んでも、来年目の前に来ているものはどうなるかという問題で、私どもはその整理の問題を何とかして目鼻をつけたい、こう思つております。
  19. 一松政二

    一松政二君 もう一つ私は伺いたいのですが、従業員がそれだけの覚悟ができているのか。経営者並びに従業員は遊んでいるよりはいい。併し賃金を減らすことは困る。時間をただで働けば労働過重だというような考え方が依然としてあればコストは下らない。
  20. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) まあ私どもが会社そのものの整理統合も、これは造船所だけでありませんで、海運界も含めての話でありますが、そういうふうなことを求めるのは無駄な、陸上勤務員と申しますか、そういう人たちのまあ無駄にならんようにということも一つありますが、これは会社々々に言わせると、戦争中にやかましく言われて船会社が一緒になつた例があつた。これは一松君なんかも御経験のあるほうかと思うのでありますが、結果から見ると、成るほど頭数は一応減る形に見えるが、実際上はそれのために失つたことのほうが多かつたという声を聞くことが多いようであります。だからこの頃でもこの船会社の人に、それははつきりしたことでもありませんが、君の所はあの船会社と近しいから一緒になつたらどうかというようなことを雑談に言いますと、造船所は引受けるが、陸上は平に御免だというようなことを言う人が非常に多い状況で、なかなか困難な状態にあると思いますが、これは併し今申したように、何とか整理統合も進めなければならないと思います。従業員諸君、特に労務者諸君がこの十次造船について一生懸命私らの所にもその他にも苦況を訴えて来られます。まあ苦況を訴えられておるからには、どうしてそこの造船所なら造船所の命を繋ぐか、或いは船会社にしても今のような苦しい、配当どころか、金利も利子補給を受けながらもなかなか払えないというような状態であります。もう少しそういうようなところでも考える余地がありはせんかという問題がよく話に出るのであります。例えば労働基準法その他によりまして、世界のどこの先進国と比べても日本のほうが船員が多いというようなことを言われるところもあるのであります。これらは私はただ労働者一人でも減らしちやいかんというような、ただそういうことを言えば労働者援護になつておるというような考え方でおやりになるなら、これは私は間違いだと思います。もつと大きな意味において、労働者の待遇もよくなるように、経営がよくならなければ待遇もよくならないのでありますから、そういうふうなことの考え方をすべきじやないか。この頃海運関係で賃金を一般的に上げてもらいたいというような動きもいろいろあつたようであります。これは非常にこの情勢を皆よく考えられまして、まだそういうことはすべてこの不況時であり、そうして海運界が非常な困難の下に政府の援助によつて漸く息をついているということを考えて、善処するということを首脳部の方が言つておられますので、私どもはその良識に信頼をいたしている次第でございます。
  21. 一松政二

    一松政二君 私はあとの答弁は要りませんから、ちよつと大臣希望を申上げておきます。今輸出船価がだんだん下つている、これは事実であります。そうしてこれはどこからそういう範を作るかというと、これは日本人お互いなんです。丁度運賃の競争をして同盟の中に割込んで行つて、そうして日本人同士が喧嘩をして、そうして全体を崩してしまう。つまりこれは日本産業のあらゆる分野にある日本人の最大の欠点なんです。これが輸出船にも現われて来る。最初インドネシアならインドネシアから或る会社が引受ける場合には値段はいいのです。そうすると甲がそういうことをすると乙がすぐ値を下げて、そうしてそこで次の引合いを取りに行く、これはもうあらゆる商品についてその悩みが日本人につきまとつているわけでありますから、これをやはり運賃競争がどうにも手がつけられなくて、今まで或る程度大分反省して来ていると思いますが、この愚をやはり造船業者がやるわけなんです。これをやはりまあ表面化すれば世界的に多少の反響があるかも知れませんが、やはり航路同盟や何かに対して海運局で斡旋するように、この輸出船のいわゆる足元を見られる、その足元を見られるのをお互いがやつている。これはまあ何としても国全体としては非常な損でありますし、その性癖が日本人にある。それがたまたまこの輸出船についてもこういうことがあるわけなんです。こういうことが私は行政指導で行かなければ、何か話合いの機関を設けて、プール計算にするなり何なりして、そうしてみずからも助つて行く方法を私は造船所自身が講ずべきだと思うのですが、合併や合同によつてそういうことができればなおいいが、そういうことができなければ、せめてそういうものをプール計算なり何なりして、お互いに能力に応じて分け合う、そうして表向きは非常に競争があるようにして、ともかく注文は別々に受けても勘定は出すんだという方面一体行かないのかどうか。そういうことをこれは造船所としても真剣に考えられて、一つ運輸省としてもそういう方面のことを考えて、いささかでも国民の負担を軽減し、みずからが助つてつて健全な経営のできる方面に御指導を願いたいことを希望して、甚だ長い間私一人取りまして恐縮に存じますが、今日の質問は私はこれで一応終つて他の委員に代りたいと思います。
  22. 木島虎藏

    ○木島虎藏君 今大臣の御説明を長々と伺つたのですが、今のいろいろその中で抜き出す必要もないんですが、例えば海運界の統合の問題とか、海運会社の統合の問題だとか、或いは造船審議会の問題とか、一連の施策は今回の第九次造船でああいう大きな疑獄事件が起きたので、それを再び絶対に起さんという線でおやりになつているというふうに了解してよろしうございましようか
  23. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 第九次造船のやつたことそのものが、私はこの間の造船汚職そのものと直接関係ありとは、そう思わないのでございますが、やりましたことは、そのときにおいては私どもは間違いなくあのときにおいての一番いい方法であつた、これはいろいろ批評はありましようが、そういうふうに思つております。併し丁度第九次までやる間においていろいろと変革をし、こうでもしたらいい、こうこうと言つてさまざまに私が知る前にも変つて来たようであります。更に今日は今お話のありましたように、いずれにいたしましてもあれだけの造船汚職といつてさまざまな問題についての批判を受けたのでございますから、その批判を頭に入れまして、私どもは万遺漏なきを期したい、こういうふうに思つております。
  24. 木島虎藏

    ○木島虎藏君 私は今度の造船疑獄運輸省がおやりになつたとは申しませんが、少くともその施策に完全なる措置を欠いたからああいう結果が出たんじやないかということは国民がひとしく考えておることじやないかと思うのであります。でありますから今度の十次の造船に当りましては、少くとも運輸省の施策においてそういう隙を与えないという方向に十分な御考慮を払つて頂きたい、こういう意味合いでございますが、その点についてはどういう考えでございますか。
  25. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 御所見の通りに私もそう思つております。
  26. 木島虎藏

    ○木島虎藏君 私がもう一つお伺いしたいのは、先ほど問題のありました船価の問題でございますが、実は新聞紙上で知るだけでございますが、新聞紙上では、新聞のことは、私ども経験から言いますと、必ずしも全部本当ではございませんが、併しあれに出ているリベートが何千万円出たとかいうふうなことを読みますと、非常に不愉快に思うわけであります。私どもの周囲に寄つて来る人たちも田舎に帰りますと、一体あれはどういうことだ、我々の税金が何ぼか入つているんじやないか、税務署では非常にやかましく言つて取立てる、その税金があそこに入つているんじやないだろうかというような質問も受け、疑惑も持つておるのでありますから、今回の船価については、少くともリベートなんかの出る余地のないように、勿論それは運輸大臣なり運輸省の御存じない業者間の問題だろうと思いますが、そういう点に十分御注意を頂くことと、それから船価につきましても、今度の施策で物価は相当下りまして、物によりましては一割とか二割とか下つておるものがあるし、先行き下るような形勢にもあることでありますから、そういう点も考慮に入れられて、相当程度合理的におきめになるように願いたいと思いますが、そういう点につきましては、さつきの点でちよつと欠けておつたと思いますのは企業の合理化です。これなんかも徹底的にやつて頂く、殊に税金が多少関与したような国家資金が出ておるということになれば、当局としても相当そういう点に御干渉なさつていいんじやないかと考えますけれども、そういう点についての御見解はどうでございましようか。
  27. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 船価ができるだけ下ることは、勿論これは実際上に船が動き出す場合の競争の上においても、原価計算の上に影響があるわけでございます。どうしてもこれは合理化されまして下ること、それから又船そのものが贅沢とは申しませんけれども、もう少し簡素にして、船の安全度等に影響なくして下げ得るものはできるだけ下げて計算をすべきものだという意味で私は指示をいたしまして、さつき申しましたような程度のものが一応出たのでございます。これにいたしますと、さつき申しましたように、漸くイギリスの船価並みに、不定期船を以て言いますると大体そういうことに出て来るような計算が出たのでございます。併しそれは私どもの最高標準という程度にして、それ以上に今度は船主造船所話合つて、こういうことよりも、これはもつとこのくらい簡単でよろしい、これはこのくらいでよろしいということによつて船価を下げるように努力してもらいたい、私どもも又それは推奨し、又そういうふうな見積りが出ますればそれを奨励して、さつき申しましたのは単なる標準でございますが、これ以下に下りまして、その意味からも世界の競争に堪え得るように、本当にそのままで計算か立つようになつて、世界の船価と同じような列まで来、或いはそれ以下になることができますれば、さつきお話のありました船の輸出の問題につきましても、相当有利な立場が築かれるわけでございまして、不当な出血競争をせずに行けるような、いろいろな日本人同士の競争を省く方法を講じながら、実際において船価が下るということでありますれば、その輸出の面もよくなる。それから貿易の上においての計算もよくなるというようなことになるわけでございます。御注意の点、私どもは是非しつかりこれをやつて行きたい、こう思つております。
  28. 木島虎藏

    ○木島虎藏君 今御答弁になかつたようですが、業者間の関係ですけれども、リベートなんかは絶対にやり取りするなというような勧告はできんものですか。
  29. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) これは私どもその問題は運輸省として、この利子補給問題が起るからというわけではございません、その前から、計画造船に入る時分からずつと言うて来ておることだつたそうでございます。それが  一向ああやつて現われて見ると完全に行われていなかつたということは誠に残念でございます。今度の造船の場合においては、特にこの点で注意を、或いは書面等でする方法をとりたいと思います。
  30. 木島虎藏

    ○木島虎藏君 それから私どもにはよくわからんのですけれども、まあ新聞で見た程度で伺いますと、造船の割当にいろいろ関係の方々から策動がありまして、それに動いたやに窺えるように書いてあるんですが、少くともそういう策動の余地のないような、形式的と由しますか、枠をおやりになつて、今度こそはもう大丈夫というふうな割当標準と申しますか、何と申しますか、そういうお考えはございませんですか。
  31. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 九次造船の場合におきまして、運輸省開銀で調べを持寄りまして話をきめたわけでございますが、これにつきましていろいろな運動があつたというのは、どんな場合でもこういう会社が自分の所にあるんだが、これの船をよろしく頼むという式のことは、その外の場合と同じように、希望はあります。併しそれによつて運輸省並びに開銀考え方を変えて、その選に入るべきものでないものを持つてつたということは全然ないのでございます。これは私の良識においてはその通りはつきりお答えできると思います。その通りでやつて参りましたが、私の眼鏡が曇つてつたらこれは別でございますが、運動によつてこれは自分たちが適当でないと思うものを動かしたというようなことは、開銀においても、私どものほうにおいてもないので、殆んど事務的にずつと組上げられたものでできて来たのでございまして、今度の場合におきましても、いろいろな条件を、一層問題の起らないようにいたすつもりでございますが、それはできるだけこういう場合はこうだという基準を成るべくはつきりすることができれば、できるだけその基準をはつきりいたしまして、その線によつて答えを出す。余りどうでもいい広い範囲におると、自分たちが一番いいと思つてつてもとかく非難されやすいのでございますが、今の御注意のような点は、十分これから先の造船決定の方針を細かくするというようなことで、一つよく相談をいたしたいと思います。今その起案中でございます。
  32. 前田穰

    委員長前田穰君) 他に御質問ございませんか。
  33. 大倉精一

    ○大倉精一君 ちよつと一つだけお聞きしておきたいんですが、今のにちよつと関連しているんですが、計画造船の割当についていろいろな運動が起つているのですが、この運動の起ること自体はそう問題ないんですが、それに伴つて贈収賄とかリベートというようなものが出て来るんじやないかと一般に懸念されることですが、今後そういうことが全然起らないというような具体的な方策が何かおありになるか、おありになればお聞きしたいと思います。
  34. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) リベートの問題に対しましてこういう問題が出て、そのリベートそのものの適当不適当は別といたしまして、リベートの扱い方が現実に非常に違法であつたというようなこと等が非常に、この使途等によつて問題が盛んになつたと思うのでございます。私どもはリベートはないものだと、実は知らずにおりました。迂闊じやないかと叱られましたが、その通りでございます。今後の問題としましては、今申しましたように、リベートをするようならそれだけ船価を落すべきものである。若しそういうことがわかれば或いは利子補給等をやめるとか、利子補給という政府の武器と言つては何ですが、政府のやつている援助があるのでございますから、そういうふうな点でできるだけの方法を講じまして、問題を起さんようにしたいと思うのであります。又こういうことをしたらどうだというお気付の点等がありましたら、又お教えを願いまして、研究の万全を期したいと思つております。
  35. 前田穰

    委員長前田穰君) それではこの問題はこの程度にとどめたいと思います。ちよつと速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  36. 前田穰

    委員長前田穰君) 速記を始めて下さい。  これにて本日は散会いたします。    午後一時十六分散会