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国務大臣(
石井光次郎君) 標準船価を毎年こしらえてお
つたわけであります。今年も先頃から頻りに
研究をや
つております。鋼材の補給がなくなりますし、それも今度計算に合せますと、約八分ぐらいな値下げの案が
運輸省の案としてできたわけでございます。これによりますると
一つの不定期船の単価等を比べまするとイギリスの今の船価と殆んど同じように漸く来るわけでございます。それで私
どもの狙いは、標準船価というものは世界的の標準船価だということにならなければ、
日本だけこれが尤もだと
言つても、世界との競争の上におきまして、そこまでいろんなものがよくな
つて来ることは必要でありますが、今度そういうようなものができ上りましたら、私はこの
船会社と
造船所との契約は、外国から注文を受ける場合と、
日本の
船主が注文する場合と違
つて、そこに何か
政府が値段に、ここいらが大体の標準だろう、それから下るのは、何だか
運輸省のきめたのより安くては恰好がつかんというようなどこかに潜在意識でもあ
つてこの契約を支配するようなことがあ
つてはならないということが、私は第一に標準船価というものについて心配しておる問題です。今後は、この標準船価として今のような
程度の、昨年度の表向きから見ると五分、内情から見ると八分ぐらい値下げになりますが、少くもこのぐらいまでは下り得る、或いはそれ以上いろいろな話の工合というか、ここまえ
船主がいろいろな
方法で下り得るものならば、更にそれから下る一応の基準、少くもこれ以下に造るように努力すべきだという点だけ見せて、何々は単価どれくらい、何はどれくらい、こうや
つているからこうだという細かい発表はせんということになるわけでありまして、そういう
意味で一昨日でございますか
船主、
造船所両方に船舶局で話をいたしまして、
船主の
諸君はこれまで下れば大したものだというふうな空気が強か
つたということでありまして、これくらいじや我々注文できんという人は一人もいなか
つた。それから
造船所のほうは相当えらいことだ、えらいが、何としても我々勉強して世界的の船価に近付いて行かなければならんという
一つの目標もあるわけなんで、これでできるだけ
一ついろいろなものを
考えながら努力して行こうというようなことだ
つたのでございます。そういうつもりで今年の標準船価は発表いたしました。
で、これとそれじや輸出の船価とまだ開きがあるけれ
ども、輸出の問題も昨年の暮頃からもいろいろ引合いが来ますのが、足元を見てか相当ひどいのでございます。一、二の
造船所では、
自分の所のドツグが空いておるというために引受けたくはある、遊んでおるよりはいい、どうせ赤を出すのだから、赤を少くするために引受けたいが、これが
日本の船価だということにな
つては、ほかの同
業者に申訳ないという
意味からも非常に悩んでおるというようなことを言うて見えた方もありました。そのときに、それはもう一遍下るとなかなか、それからほかの会社の頼まれる場合もわからないので、できるだけ頑張
つてくれというような話をしたことがあるのです。この頃のインドネシア、或いはトルコの入札を見ますると、まあ
日本の船価よりは安いわけでございますが、今申したようなわけで、まあ
造船所としては、空いているようにな
つてしまうよりは、そろばんが合うという苦しいまああきらめのそろばんで見ているわけでございます。併しこういうふうにして、それじや船をどんどん
日本に注文したほうが得だということで出て行くならばどうなるか。その船がやがて荷物を運んで動き出すときにおいては、
日本の高い船で運ぶのと競争するわけです。これがまあ一番の問題でございます。それだから無理なことをして船の輸出をするよりは、何とかできるならばストツク・ボートでもこしらえてや
つて行きたいというような、これは
造船所なんかの皆
関係の人は
願つていることでございます。そして来るものならば来てもいいという態度をしておれば、おのずから又そこに輸出の値段も上るだろうというので、これは話としては皆そうでありますが、それじや
資金はどうするか、実際問題になりますと動きがつかない。まあ千トンか二千トンの船
一ぱい造るものなら、何とか手持でもやれましようが、そこまで行けないのが今の苦しい
状態なわけなんです。そういうことを含みながら、私
ども輸出船価のできるだけの維持と標準船価をできるだけ下げて行くということを
考えておりますが、実際それじやそうなるかというと、どうも今のような船舶界の
情勢ですと、輸出船価は私はそうよくなると想像できんような
状態なんであります。それでそれならば、
日本の船を造ることが少くなる。まあ保安庁の船もありますけれ
ども、そんなものを合せましてもまだまだ余裕のほうが多いのでありますから、ここで又ずつと戻りまして、
造船業界の整理という問題をお
考えなければどうにもこうにもならない。だからこれはもう今年だけ十次
造船は済んでも、来年目の前に来ているものはどうなるかという問題で、私
どもはその整理の問題を何とかして目鼻をつけたい、こう
思つております。