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説明員(高井軍一君) お手許にお届けいたしております日本国有鉄道五カ年計画試案、この資料に基きまして御
説明をさして頂きます。
初めの頁に目次が書いてございますが、この五カ年計画を立てまする前に、まえがきといたしまして、現在の国鉄が提供いたしておりますと申しまするか、サービスなり国鉄の現状を明らかにいたしまして、そうして五カ年計画を立てる前に、将来に対する見通しをどういう工合にしておるかということを、将来の事業の構想の所において述べまして、それからそういうふうな構想の下に、二十八年度から三十二年度に至りまする五カ年計画をどういう工合に策定いたしておるか。又その資金なり或いは財政の見通しはどういうことになるかということを、ここに一応試案として作成いたした次第であります。この試案に基きまして御
説明をさして頂きます。
一頁をお開き願いたいと思うのであります。御承知のように、国鉄は今次の大戦中の酷使と戦災とによりまして
施設なり或いは車両を非常に損耗いたしまして、終戦後はその復旧に努力をいたしてお
つたのでありますが、併し戦後の輸送の需要は、社会情勢とか或いは産業構造の変化によりまして、地域的にも御承知のように内容的にも非常に変
つて参
つたのでございまして、特に朝鮮動乱を契機といたしまして輸送量は非常に急激な増大を来たしましたので、国鉄は荒廃からの立直り不十分のままに、当面の激増いたしまする輸送要請に応じて取りあえずの措置をすることによりましてその役割を果して参
つたのでございます。これを国鉄の戦前の昭和十一年当時のそれと比べてみますと、昭和十一年当時に比しまして、旅客は、二一%の客車を増備することによりまして輸送人キロ三一〇%に及びます輸送を行な
つております。殊に定期旅客の輸送人キロは非常に殖えておりまして、五四五%にも及んでおるのでございます。又貨物につきましては、四六%の貨車を増備することによりまして、輸送トンキロは二四七%という輸送を行な
つておるのでございまして、そういうような結果は、旅客輸送なり、殊に通勤輸送における御承知のように異常な混雑と、或いは貨物輸送におきまする繁忙期の駅頭滞貨の山積、適時輸送の困難というような形にな
つて現われて参りまして、当面我が国の自立
経済確立のために緊縮財政政策がとられるといたしましても、産業
経済のためにも、国民生活のためにも、国鉄の輸送力は現状のまま放
つて置くことはできないというふうな前提に立
つております。而も国鉄の現状はなお多くの荒廃した
施設なり或いは車両を抱えておりまして、不測の事故の発生を恐れるというような状態にございますばかりでなく、今後人口の増加或いは産業の伸長等も考慮されるのでございまして、国鉄の負担になる輸送はいよいよ多くな
つて行くという予想をいたしております。
それで国鉄の輸送力の現状と将来の輸送要請の見通しを考えましたときに、今後国鉄に課される使命を果しますためには、現在の停滞いたしておりますところから一歩踏み出した施策を行う必要があるのでございます。現在の国鉄にとりまして当面の課題といたしましては、第一に、今までに累積いたしております老朽の
施設なり車両なりを更新いたしまして、輸送の安全を確保すること、それから第二には、現在の
施設、車両の不足によりまして、前に述べましたような無理な輸送をいたしておるのでございますが、これを緩和いたしますると共に、今後増大いたしまする輸送要請に応ずるように輸送力を強化しなければならないということ、それと共に、将来の交通機関の発達等も勘案いたしまして、輸送方式の近代化と経営方式の合理化を推進するという考えに立
つております。それでそういうような観点に立ちまして、次に申述べますような将来の事業の大きく構想というものを描きながら、差当り今後五カ年間に亘りまする事業計画としてこの計画を策定をいたしたのでございます。
それで次の頁の然らば将来の事業の構想なるものはどういうことを考えておるかということでございますが、第一は、旅客列車輸送の改善でございます。これは非常に旅客列車も混雑をいたしておりまして、
相当緩和したといいましてもなお戦前の二倍
程度にな
つておるのでございまして、早急に改善を進めまして、将来は次のようなふうにサービスの改善を考えております。第一に、遠距離旅客の輸送でございますが、これは列車を増発いたしまして混雑の度合を戦前
程度にまで緩和し、座席の確保或いは二、三等の寝台車の増備を行な
つて行く、又技術の進歩に努め、近代的車両によりまして列車のスピード・アツプを図
つて参りたいということでございます。第二の近距離旅客の輸送でございますが、東京とか名古屋とか大阪とか北九州地域というような大都市の周辺におきましては、電化の進展に伴いまして電車運転を実施いたします。そしてその他の線区につきましてはヂーゼル動車を活用いたしまして、近距離旅客の頻繁な輸送を行な
つて行くようにいたしたい。次に通勤のお客さんの輸送でございますが、都市附近の通勤列車につきましては、将来は都市の構成もいろいろ変ると思うのでありますし、又住宅
事情というものも安定するいうことも考えられるのでございますが、現在は非常に混雑の状態にございますので、列車の増発なり或いは客車の増結等によりまして戦前
程度にまではこの混雑度の緩和を図らなければいかんというのがこれに対する考え方でございます。
次に東京とか大阪のような大都市の通勤電車の輸送をどういうふうに考えるかということでございます。東京の附近といたしまして、都心に対しまする通勤輸送は御承知のように国鉄の電車が殆んど
責任を負わされておるのでございまして、又東京都の人口増加も非常に高くな
つて行くということなんかを考えまして、山手、京浜線の分離、東北中央、総武、常磐線の一部の線路増設、中央線の緩行線の都心乗入れをいたし、及び主要電車駅の改良等をいたしまして、輸送力を現在の二倍くらいまでには強化をいたさなければいかん。それから大阪の附近でございますが、環状線の新設によります城東、西成線の環状運転、その他線区の増強を行いまして、これ又戦前
程度の雑混度にまで緩和いたして行くのを目標といたします。
次に、貨物輸送の改善でございますが、貨車の不足とか或いは幹線輸送力の行詰りのために、貨物輸送は御承知のようにその要請を満たすことができないのでありまして、地域的な滞貨を招き、
経済発展の支障となる虞れもございますので、次のような点に
重点をおきまして輸送力の強化と輸送サービスの質的改善を行うようにしたいと思います。第一は、貨車の増備でございます。特に冷蔵庫、通風車等を整備いたしまして輸送要請に応えるようにいたさなければ行かない。次は、貨物扱設備の整備でございますが、貨物駅の整備をする、或いは専用線、臨港線の普及並びに荷役機械とかコンテナー等の整備を行いまして荷役費、荷造費等の軽減を図るようにいたしたい。次に、急送貨物輸送でございますが、急送品列車を増発いたしまして、特に自動車との協同輸送の強化を行いまして、速達と共に集配の改善を行うようにしたい。これが貨物に対する将来の考え方でございます。
次に幹線輸送力の強化でございますが、今後の輸送量の増加とサービスの改善のために、幹線の単線区間の複線化及び急勾配の除去とか或いは重要幹線の複線区間の複々線化、保安設備の強化、主要旅客駅及び主要操車場の改良などによりまして、現在極度に行詰
つておりまする幹線輸送力の強化を図
つて参りたい。なお青函輸送につきましては、現在の設備を極度にまで活用いたして参りますが、更に北海道の開発の進展に応じまして、これの
限度を越すようなことになりますれば、青函隧道の建設も考えて参らなければ行かない。更に幹線の牽引動力車の輸送力を強化し、スピード・アツプをいたしますために強大化いたしますと共に、電化の進展に伴いまして不要にな
つて参りまする大型機関車は輸送量の増加いたしまするほかの線区のほうへ、電化区間以外の線区のほうへ転活用をいたして参る所存でございます。従いまして機関車重量の増加に対しまする線路の強化と、輸送量の増大に対しまする線路保守費の節約のために、主要幹線の三十七キロ軌条区間は五十キロ軌条に、亜幹線の三十キロでおりますところを三十七キロ軌条に更換するという工合にして参りたいと思います。
それから次に、幹線電化の問題でございますが、幹線電化につきましては、鉄道審議会の電化
委員会のほうの答申によりますると、主要幹線の三千五百キロ電化計画ということが考えられておるのでございますが、電化は燃料国策、経営合理化、そういうような見地から、国鉄といたしましては推進いたして参りますが、その方式につきましては、現在の直流方式のほかに交流電化ということの方式も考えられますので、又線区によりましてはヂーゼル電気機関車の活用等も考えられるのでございます。それでそういうような点につきまして十分検討いたしました上、如何なる
方法によるかは決定いたして参る必要があると思います。それからこの電化に伴いまして電化用の電源が問題になるのでございますが、信濃川、天竜川、十津川の水力発電等によりまする電源の確保も電化と共に併せて考える必要があると思うのでございます。
次に、新線建設でございますが、現在建設予定線として
定められておりましてまだ完成いたさないものが百八十七線、八千四百七十四キロあるのでございますが、鉄道建設の実施につきましては、自動車輸送との比較等、近代的輸送機関としましての価値につきまして十分検討いたしました上、国家的な要請に基きまして建設を実施をして行かなければいかんというふうに考えております。
次に、国鉄自動車の活用でございますが、国鉄自動車は鉄道に対しまする先行輸送、代行輸送という工合に鉄道の
補助的輸送として使われてお
つたのでございますが、これから鉄道と自動車との協同輸送に活用いたしまして輸送の近代化及び合理化に資することを基本として運営いたして参りたいと思います。この場合特に次のような点につきましては
重点を置いて行く所存でございます。第一は、急送貨物の速達及び集配サービスの向上を図りますと共に、これによ
つて貨物輸送の合理化を図るように考えなければ行かない。第二は、輸送合理化のために鉄道よりも自動車を得策とする場合には、これを活用するようにしなければ行かないということでございます。
次に、
公共事業の関連
工事の促進でございますが、国鉄は都市計画に伴います駅改良或いは駅前広場の整理、
重要港湾の臨港線の敷設、踏切の立体交叉化、或いは河川改修に伴いまする鉄道橋梁の改良など
公共事業に極めて密接な関連を有しておりまして、併しこの予算の
関係で国鉄のほうがついて行きかねておるようなのがあるのでございますが、これは極力こうしたのに協力いたしましてその整備を図
つて参りたい。
次に、輸送保安度の向上と老朽
財産の処理でございます。御承知のように国鉄の運転事故件数は、戦後著しく滅
つては参
つたのでございますが、今なお戦前の四倍にも達しておるのでございまして、これは主といたしまして車両とか或いは
施設の老朽甚だしい
財産、これは償却
財産の約一割
程度に当
つておるのでございますがを持
つているためでございます。又増大する輸送量に対しましては、適切な保安設備の整備が必要であると考えるのであります。このために当面老朽の甚だしい
財産の一掃と保安設備等の改善を強力に進めまして、逐次適正に老朽
財産の更新を続けることによりまして、将来の
財産の健全化を図りたいということでございます。
以上が主要な問題につきましての、将来に対しまする国鉄の考え方でございます。
さて、昭和三十二年度を目標といたしまする五カ年計画でございますが、六頁によりまして御
説明を申上げます。当面の施策といたしましては、最近の輸送量の動き方なり或いは又
経済審議庁におきまして策定されました三十二年度の
経済指標というようなものもございますので、
経済指標を見又国鉄の今までの輸送の推移、特に各輸送分野の問題、そういうものを勘案いたしまして、国鉄の三十二年度の輸送要請に応ずるような輸送を行わなければならないのでありますが、我が国の
経済の現状に鑑みまして、これに対しまする大きい投資というものもなかなか期待はできないと思いますので、この計画の
重点につきましては、投資につきましては輸送力の確保と保安度の向上におき、運営につきましては経営の合理化と能率化というような事項に
重点をおいて参りたいと思うのでございます。従いまして
一般から御期待をされておるような輸送サービスの大幅な改善は残念ながら将来に見送らざるを得ないのであります。併し長期的な見通しから着工しなければいけないものにつきましては、最小
限度これを推進いたして参る計画でございます。なお国土防衛などの新らしい
事態に対しまする対策につきましては、本計画におきましては、これを考慮いたしていないことを念のために申添えておきます。
次にこの五カ年計画の条件でございますが、計画期間といたしましては、昭和二十七年度の実績を基準といたしまして、昭和二十八年度から昭和三十二年度までの五カ年間といたしております。併し昭和二十八年度は実行予算
通りといたしておりまして、二十九年度も予算は決定いたしたのでありますが、この案におきましては、今度の国会予算の数字じやなしに別途に算出をいたしております。次に輸送量の昭和三十二年度の目標値でございますが、御覧願いますように、人におきまして八%の増、人キロにおきまして、二十七年度に対しまして一〇%の増一一〇%、貨物はトン数にいたしまし一一一%、トンキロにおきまして一一〇%というのを三十二年度の目標値として掲げておるのでございますが、これは先ほど申上げましたように、輸送分野とか或いは今までの輸送の趨勢なり、或いは審議庁におきまする工業なり或いは農水産等の指標を勘案いたしまして決定いたした数字でございます。それからこの計画におきましては、物価の変動につきましては考えておりません。それから職員の給与ベースでありますが、これも二十九年度以降現在の一万五千三百七十円といたしまして計上をいたしております。
次に、その五カ年間の計画の内容でございますが、第一旅客輸送でございます。これは旅客輸送につきましては、急行及び長距離列車は客車の増結と約二〇%の列車を増発することによりまして、多客期を除きまして定員内で輸送することを目途としております。
一般近距離輸送は、汽車列車のほか、電車又はヂーゼル自動車を
利用いたしまして列車回数を約四〇%くらい殖やして参りたい。例えば高崎線とか東海道線の名古屋及び大阪附近の近距離列車を電車化する、或いはヂーゼル自動車若しくは
一般列車の増発等によりまして、現在全国の営業キロで六分の一ほどは一日列車回数五回以下の線区があるのでございますが、そういうような線区は一掃することを目途といたしております。次に、汽車通勤輸送のお客さんに対する考え方でございますが、この混雑度は定員の現在二・二倍以上に達しておる線区もあるのでございますが、これを一・八倍以内にとどめて参りたい。そういたしますと旅客列車輸送につきましては、輸送量が八%殖えて参るに対しまして、列車回数の増加と客車の増備によりまして、客車キロを二二%殖やすことによりまして、混雑度が平均一五%緩和することになるのでございます。これは昭和十六、七年
程度の混雑ということに当るのでございます。次に、大都市の通勤電車輸送力の増強でございますが、東京及び大阪附近の通勤電車輸送につきましては、電車の増備八百両近い増備をすることによりまして、この混雑度は二割
程度は緩和いたして参りたい。特に東京附近におきましては非常に混んでおりますので京浜、山手線を分離いたしますと共に、中央線の現在八両編成にな
つておりますのを十両編成にいたしたい、こういうことでございます。次に、貨物輸送でございますが、貨車は一万二千両を増備いたしまして、列車の増発によりまして三十二年度におきまして一億七千八百万トンを輸送することを目途といたしております。車扱貨物によりましては、一部列車の長大化によりまして輸送の合理化を図りますと共に、冷蔵車とか通風車を増備することによりましてサービスの改善を図
つて参りたい。一方小口扱貨物の増備につきましては、列車回数を殖やしまして、大都市間の小口扱貨物におきましては、本日受付けたものは翌日は目的地へ着くという工合にいたしますと共に、自動車との協同輸送を行うというような工合にいたしまし、貨物の急送化を図るようにいたして参りたいと思います。又特に石炭はこの六百万トンの増産が考えられておる模様でございますので、石炭車の増備と室蘭、苅田、唐津等の港頭設備或いは背後輸送設備の強化を図
つて参る必要があると思います。
次に、幹線輸送力の強化でございますが、現在輸送力が非常に行詰
つております単線区間の中で裏縦貫線、上越線等につきましては列車単位の長大化と操車場の強化等を推進いたしまして、函館、室蘭、東北、日豊の諸線については、
部分的に線路増設等を行い、溢路の打開を図
つて参ることを目途といたしております。又大都市附近の頻繁輸送を行いますため、東京、名古屋、大阪、北九州附近の複々線化は逐次これを着工いたして参りたいと思います。なお当面五カ年間には三十七キロ軌条を五十キロ軌条に更換いたしますものが約二千キロ、三十キロ軌条を三十七キロ軌条に更換いたしますものが約千キロ、この
程度の強化をいたして参りたいと思います。次に、幹線の電化でございますが、現在着工しております山手線電化の五十七キロの完成、東海道、山陽本線姫路までの二百六十七キロの完成、そうした現在着工中の電化の開通を含めまして、その他
経済効果の大きい線区計六百キロの電化を行な
つて参る計画でございます。次に、新線建設でございますが、これは現在着工いたしております三十線八百八十一キロの完成を計上いたしております。次に、国鉄の自動車でございますが、先ほど申上げましたように、国鉄の
補助的な使命達成のために車両の充実整備を図
つて参りますが、特に貨物につきましては小口貨物、小荷物の速達と合理化を目的といたしまして、東京、大阪、名古屋、北九州におきましては協同輸送の一部を実施する、集約輸送の一部を実施いたしたいと思います。
公共事業の関連
工事でございますが、
公共事業費と国鉄予算とのアンバランスのために、この
公共事業のほうは進みましても、国鉄が遅れておるというような状態にあるのでございますが、これを回復いたしまするためには、この計画におきましては当面約七十億円を計上いたしまして、そうしてこの推進を図ることにいたしております。次に、保安度の向上でございますが、運転保安緊急取替えを必要といたしまする老朽の甚だしい
財産の処理、増大いたしまする輸送量に対しまする保安対策を計画いたしております。その主なものを申上げますと、この老朽の甚だしい
財産の処理としまして、第一、車両でございますが、これは蒸気機関車は百四十一両造りまして、一方におきましては電化の進展に伴いまして大型機関車が出て来ますので、それと新製とによりまして四百十一両の老朽機関車を三十二年度までに一掃する。電気機関車は、買収車とか或いは小型車のうちで保守困難なものを三十六車を取替えてしまう。電車の老朽の買収車二百二十両、木製車の四十二両でございまして、これを合せまして二百六十二両を取替えるようにする。客車は木製車が千七百両余りありますので、これを鋼体化いたしますと共に、老朽車の千四十二両の取替えをすることによりまして木製車を一掃するようにいたして参りたい。貨車は老朽が一万五千両、老朽車の一万五千両を三十二年度までに取替えるという計画でございます。又
施設でありますが、大型機関車の使用によりまして荷重超過とな
つております線区に対しまして、先ほど述べましたように約千キロを重軌条化いたしますと共に、又強度不足の甚だしい橋げた四万五千トンを更換いたしますと共に、隧道、護岸、跨線橋、信号保安設備、変電所機器等の老朽の甚だしい
財産は取替えて参る計画でございます。次に、増大いたします輸送量に対しまする保安対策でございますが、この信号保安設備の整備とか踏切警報機の増備、立体交叉化或いは事故電流遮断装置の整備、跨線橋の新設拡張、電車の不燃構造化、財質不良の機関車ボイラーの強化というものを行うようにいたしまして、そういうような工合に
施設なり車両なりの手当をすることによりまして、現在、戦前の先ほど申上げましたように四倍以上に達しておりまする運転事故を戦前の水準にまで減少をいたして行くことを目途といたしております。
それから次に合理化なり或いは能率化に対する考え方でございますが、この設備、車両をこういう工合に改善をすることに相成
つておりますので、事業の運営を能率化し、全般的に経営の合理化を図
つて参るのでございますが、三十二年度の主な計画の目標を次のように考えております。第一、職員の能率の向上でございまするが、この計画によりますと、三十二年度の換算車両キロは一八%に殖えて行くことになります。これに要します要員を、戦前の
傾向からはじきますと、現在の一割
程度、四万五千人
程度の増加を必要とすることになるのでございますが、いろいろ設備なり或いはその他もよくなりますので、合理化を推進することによりまして、これを七・八%三万四千人の増加にとどめて参りたい。その結果職員一人当りに当ります換算車両キロ、いわゆる能率は一〇%、三十二年度までに一〇%向上する計画でございます。次に車両運用能率の向上でございますが、これは設備もよくなり車両も改善することによりまして、車両運用効率を二乃至八%高めることにいたしまして、それで車両を生み出して行こうということでございまして、ここに書いておりますような向上率を以てすることにいたしまして、蒸気機関車が四百十両、電気機関車四十三両、客車が八百七十両、電車八十、貨車が三千七百というような車両数、これを金額に換算いたしますに三百十六億
程度に
相当するのでございますが、これを生み出して参りたい。運用効率の改善によりまして、生み出して参る計画にな
つております。それから動力費の節減でございますが、電化を推進することなり、動力車の改造及びその運用の合理化等によりまして換算車両キロ当りの動力費が約七%、年間にいたしまして三十億円節約する計画にな
つております。それから修繕費の節減でございますが、これ又修繕作業の合理化なり、或いは老朽資産の整理等によりまして、換算車両キロ当り修繕費を一割
程度、年間にしまして六十億減らす計画にいたしております。
今まで申上げましたものは、この二十七年度実績に対しまする三十二年度の比率を申上げておるのでございます。
この主なるものは今申上げた
通りでございまして、その次の十頁乃至十一頁にこれを整理しておるのでございます。で、十一頁の合計の所だけ、この設備計画表は割愛さして頂きます。十一頁の中頃で見ますと、結局この四千四百二十六億の合計の所に書いてありますように設備投資をいたしますが、そのうちで
施設が二千七百五十九億、車両に千六百六十七億ということにな
つております。そのうち二千三百三十六億が取替えということに相成
つております。車両の数字はその下に書いております。
次に十二頁を御覧願いたいと思うのでございます。十二頁にこの五カ年計画の財政の見通しというのでここに載せておるのでございます。それで第一番に、こうした設備投資と経営負担がどういうことになるかというので
ちよつと載せておるのでございます。この五カ年計画におきます投資の総額は、先ほど申上げましたように四千四百三十億でございますが、このうち老朽取替えとか陳腐化改良に二千三百四十億というものが充当されるのでありまして、この増強改良投資として資産増になりますものは約二千九十億でございます。従いましてこの計画を達成することによりまして、この支出の増のほうを考えてみますと、この減価償却といたしまして年間に六十億円
程度の支出が増して参ります。それからこの運営に伴います人件費なり或いは物件費等年間支出増になりますものが、百三十億予定せられておるのであります。そうしてこの増強改良投資に要しまする資金を、一応外部資金に依存をするということにいたしますと、年間利子を仮定いたしますと、年間利子が百五十億ということになります。それでこの三十二年、この計画を達成いたしましたときにおきます年間の支出の増になりますものは三百四十億ということになる計算でございます。それで増強改良投資のうちに採算のとれますものは、御承知のように幹線電化或いは石炭荷役設備というようなものでございまして、通勤輸送の緩和対策とか或いは幹線の増強とか新線建設というようなものは大
部分はいずれも採算には合わないような投資になることは御承知の
通りであります。例えば東京附近の通勤輸送対策といたしまして三百八十二億を使うことに計画をいたしておりますが、これは申すまでもなく増加人口に対処いたしますと共に、ラツシユアワーの混雑を緩和するために投資するものでございまして、増加輸送量に対しまする
収入増は三十七億はあるといたしましても、半面におきまして営業
経費が六十六億要ることになりまして、減価償却費が九億増すことになります。資本利子は二十七億ということになりますので、合計百二億の
経費増を伴いまして、それを差引きましても六十五億の三百八十二億の通勤対策に投資することによりまして赤字が増すということでございます。又新線建設につきましても四百六億を投資することによりまして、
収入見込が三十四億円見込まれるのでございますが、営業
経費が三十五億、減価償却が八億、資本利子が二十九億、合計七十二億の
経費を必要といたしますので、差引三十八億円の赤字になるのであります。こういう工合にこれから五カ年間にいたしております設備投資というものは経営負担の
関係にな
つております。次に、減価償却でございますが、御承知のようにこの減価償却につきましては、第三次資産再評価法に準じてやりますと四百八十億、新品価格によりまして算出する場合におきましては五百四十億ということにな
つておるのでございますが、この計画におきましては、第三次資産再評価法に準ずることといたしまして、五カ年計画二千三百三十六億というものを計上いたしております。申すまでもなく現在の減価償却は、おおなね第一次、第二次の資産再評価法に準じて国鉄はや
つておるのでございます。それから投資資金計画でございますが、こうした計画におきましては、従来外部資金に依存いたしておりますのは、御承知のように政府から借入をいたしましたもの及び鉄道債券によります
一般市場からのものでございますが、これらを合せますと毎年二百億内外に過ぎないのでございまして、今後こうしたこの起債枠乃至借入の枠というものの拡大が期待できるかどうかということになりますと、なかなかむずかしいと考えますことと、現在の運賃がすでに
一般物価に比べまして非常に低位にあることは御承知の
通りでございますので、そういう点を勘案いたしまして、新線建設の資金はこれを政府の出資に期待いたしますると共に、電化及び
公共事業の関連
工事に要しまする資金は外部資金に依存することといたしまして、この
残りの千百十億につきましては、今までの設備を逐次補足増強いたして行くものではございますし、長期的に見まして引続いてこういうことは次から次と増強をして行かなければいかんものでございますというようなことを考えまして、この千百十億につきましては、自己資金を以てこれを賄うこととして計画をいたしております。それで、その営業収支なり、或いは財政資金計画はこの表を御覧願いたいと思うのであります。
これを要するに、従来に比べまして次の資金の増加がこの計画を実施するためには必要であるということでございます。第一は、減価償却の適正化によりまする従来の減価償却費の不足額を補充すること、第二は、この計画によります資産増に、資産が殖えて参ります分については、これは当然減価償却も殖えて参るのでありますが、それが殖えて参ります。それから改良増強資金のうちで、借入資金に対しまする利子等によりまする増加
経費が殖えて参ります。それから次に、自己資金を以て行おうといたしまする改良増強等に要する資金が要るのでございます。これらの資金は、この計画によりまする輸送増に対しまする
収入増とか、或いは合理化によりまする
経費の節減を見込みましても、なお現在の運賃におきましては確保することは困難でございますので、この本計画におきましては、昭和二十九年度以降の運賃を旅客貨物とも二割
程度値上げすることにいたしますれば、この自己資金を以ちましてこの計画を達成し、現在の輸送の溢路を打開すると共に、産業
経済の活動に即応した国鉄の使命を遂行できると、そういう工合にして遂行をすることを計画をいたしておるのでございます。
以上を以ちまして私の一応の
説明を終ります。