運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1954-08-20 第19回国会 参議院 運輸委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年八月二十日(金曜日)    午後一時四十八分開会   —————————————   委員の異動 六月三日委員草葉隆圓辞任につき、 その補欠として植竹春彦君を議長にお いて指名した。 六月七日委員植竹春彦辞任につき、 その補欠として草葉隆圓君を議長にお いて指名した。 六月十五日委員前田穰君、森田義衞君 及び井村徳二辞任につき、その補欠 として三木與吉郎君、村上義一君及び 菊田七平君を議長において指名した。 六月二十一日委員菊田七平君辞任につ き、その補欠として松浦定義君を議長 において指名した。 八月二日委員大和与一辞任につき、 その補欠として秋山長造君を議長にお いて指名した。 八月五日委員村尾重雄君及び秋山長造辞任につき、その補欠として赤松常 子君及び大和与一君を議長において指 名した。 八月十日委員赤松常子辞任につき、 その補欠として村尾重雄君を議長にお いて指名した。   委員長補欠 六月十五日前田穰委員長辞任につ き、その補欠として高木正夫君を議長 において委員長に指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     高木 正夫君    理事            重盛 壽治君    委員            岡田 信次君            仁田 竹一君            一松 政二君            村上 義一君            大倉 精一君            大和 与一君            木島 虎藏君   説明員    外務省欧米局移   民課長事務取扱  石井  喬君    運輸省海運局長 岡田 修一君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○運輸一般事情に関する調査の件  (海運及び造船に関する件)   —————————————
  2. 高木正夫

    委員長高木正夫君) それではこれより運輸委員会開会いたします。  開会に先立ちましてちよつと簡単に御挨拶を申上げます。  私不肖の身を以ちまして、委員長の重責をけがすことになりましたが、皆さん御覧通りの男であります。至つてこういうことには慣れない男であります。平素のよしみを以ちまして何かと御援助のほどをお願い申上げたいと思います。  それではこれから運輸一般事情に関する調査中、海運及び造船に関する件を議題に供します。  御承知通りにこの造船問題は相当の問題を起したのであります。従つて政府におかれましても、十分に慎重に今度はやられたことと存じまするが、我々運輸委員といたしましても、この際真剣に一つ政府やり方につきまして、看視をする必要があるかと私は考えるのであります。従いまして、この問題を議員の方から提出されましたので、私も心から賛意を表したことであるのであります。  さて去る六月の三日に第十次造船実施促進に関する決議を本院において議決したのであります。議決文は省略いたしまするが、その議決によりまして、その後政府がとつた措置並びに経過政府より御報告を先ず願いたいと思うのであります。即ち、十次計画造船の要領、それから建造船舶船種及び造船主選考方針並びにこの際、海運業及び造船業経営合理化等について、何らかの構想があれば、その点についても併せて一応の御説明を先ず願いたいと思います。政府のほうから御説明を願います。
  3. 岡田修一

    説明員岡田修一君) 十次造船につきましての今までの経過を御説明申上げたいと思います。  十次造船につきましては、御承知通りまあ今年度開発銀行資金のうち百八十五億というものが新造船予定されております。ところが、その後国会における予算修正その他によりまして、この百八十五億が相当減少せざるを得なくなつたのでございます。これが先般最終的に百七十億に決定いたしました。それより先に、この十次造船実施方法といたしまして、政府といたしましては、当初から財政資金七割、市中資金三割は協調融資の形で是非共進めたいというので、市中銀行とも折衝を重ねたのでございますが、市中銀行のほうにおきましては、まあ最近における海運業経営内容の悪化、特に主要海運会社が、元本は勿論のこと、金利も滞つておるというような状況と、金融界一般における引締政策によりまして、海運に対する融資には到底応じられないという強硬な態度がとられて来たのでございます。併し、運輸省としては、一定の計画量を確保したいという考え方の下に、当初の財政資金七割、市中三割という方針によりまして、六月十日にまあ申込建造希望船主を募集したわけであります。そのときの方法といたしましては、建造希望船主は、先ず三割分につきまして、市中銀行からの融資確約書を取るか、或いは自己資金のできるものは、自己資金調達証明書を付けて、それを開発銀行に持ち出して、開発銀行はそれを随時審査して正式に決定して行くという、まあ随時造船方式を取入れた方法で出発したのであります。併し残念ながら、そういう方法に対して、市中銀行側態度が非常に固かつたことでありまして、まあ殆んど応募船主が出なかつた、或る程度期間を置いても応募船主の出る見込がない、こういう状況でありましたので、その当初の方針を変えまして、市中銀行のまあ協調を得るような線にまで、その融資率その他を改訂しようというので、まあ政府首脳部或いは日銀総裁等も煩わしまして、市中銀行側と懇談を重ねたのでございまして、結局先月の終りに至りまして、市中銀行側と、大体新造船についての財政資金の率は八割、市中銀行は二割、更に大体船価の一割に相当する分の既往の市中銀行からの造船融資開発銀行に肩代りする、こういうことでまあ市中銀行側の了承といいますか、話合いがついたのであります。実質的には市中銀行が一割だけ持つというふうなことに相成つたのであります。  なおその際、市中銀行との話合いの際に、担保の問題、或いは十次造船に関しては、政府として責任を以て金利程度が払い得るように、船価の低減或いは海運会社経営合理化について、努力するというふうな申合せがございましたが、ともかく財政資金八割、市中二割、一割分肩代りするということで、市中銀行との話合いができまして、この八月の五日から二十五日までを申込、まあ希望船主申込期間といたしまして、目下その船主を募集しつつあるわけであります。まだその申込船主はございません。おおむね毎年の例といたしましても、締切りの二、三日前から殺倒するというのが例でございますので、今度の場合におきましては、当初の募集のときと違いまして、最初市中金融機関確約書を取るとか、或いは自己資本調達証明書を出すとかいうことでなしに、まあ建造希望船主申込をさせるというのでございまして、従つて相当数希望船主が出て来るのではないか、かように考えております。  次に、大体先ほど申しました百七十億の金額で、何隻ぐらいできるかという見込でございますが、大体九次後期のときの船価から五%ぐらい安い船価で船を造らせるという推定に立ちまして、大体十三万五千トンから十四万トン、隻数にしますと十七隻乃至十八隻程度、こういう予定でございます。併し今度はこれを船価を安くしまして、少しでもこの船の採算を良好ならしめようというので力をいたしておりまして、いろいろ今船主造船所の間に引合いをやつているのでございますが、その船価が相当私ども考えておつた船価よりも下つて来るのではないか、かように考えております。そういたしますと、そこに多少の建造隻数なりトン数が殖えるかと思いますが、いずれにいたしましても、その予定トン数に対して、相当たくさんに申込船主が出て来るかと推定せられます。従いましてその多数の申込船主の中から、予定船主隻数に相当する船主を選ばなければならないわけでございます。従いまして例年つておりますように、如何なる方法で、如何なる基準で、船主選定するかというその選定のまあ基準をきめなければならんのでございます。これ又例年つておりまするように、運輸省に設置しておりまする海運造船合理化審議会にその基準を諮問したわけでございます。造船合理化審議会ではその選考基準につきまして、八月の十七日に答申があつたのでございます。その答申書はお手許にお配りしているかと存じます。この答申書に基きまして、まあ運輸省及び開銀において、それぞれの分野において審査する、互いにその審査の内容を持ち寄つて選定しよう、こういうことに相成るわけであります。まだいつ頃選考に取りかかるかはつきりいたしませんが、船主選考は恐らく九月の中旬以降になるのではないか、かように考えている次第でございます。  大体十次造船につきましては、以上でございます。
  4. 高木正夫

    委員長高木正夫君) 私の申上げたところで、最後に造船業の、又海運業経営合理化等について何か御構想があれば、その点をこの際お示しを願いたいと思います。
  5. 岡田修一

    説明員岡田修一君) 大変説明を申し落しまして申訳ありません。  海運並びに造船合理化推進につきましては、まあ一般的な輿論といたしまして、もつと徹底させるべきではないかという意見が非常に強く行われておりまして、私どもといたしましては、海運会社に対して、或いは造船所に対して機会あるごとにその推進に努め、又海運業者造船業者からそれぞれ自主的に如何なる方法を以てこの合理化を徹底するかという方策を立て、官庁等にやらせるように仕向けて参つたのであります。なおそれが十分でございませんし、更にこれを強力に指導いたしまするために、この六月の五日に海運造船合理化審議会に対しまして、海運業並び造船業合理化を如何なる方法推進すべきであるかという諮問を運輸大臣からいたしたのでございます。それに対して海運造船合理化審議会におきましては、まあ海運につきましては特別の小委員会を或いは六回くらい開きましたか、造船におきましても四、五回それぞれ特別の小委員会を設けてその方策を検討いたしまして、七月の二十一日にそれに対する方策答申されているのでございます。  その答申内容を極く概略的に申上げますと、先ず海運業の再編成ということが必要である。再編成方法といたしまして企業提携企業統合、こういう二つの面がある。併し企業統合はなかなか一朝一夕に実現するということが困難でございますので、このほうは機会あるごとに政府でその統合を強力に推進するという方法をとるが、企業提携のほうはできるだけ早い機会に一つ具体的なるその提携方策を講じさせるべきだ、こういうふうな答申をされております。その企業提携方法として、今自分で船を運航しているいわゆるオペレーター、これが約まあ大小取りまぜて二十社くらいございまするが、このオペレーターを数個のグループ編成させまして、そのグループ内で企業の緊密な提携を図り、そして競争の緩和、或いは経費節減を図らせる、こういう内容でございす。  で、このオペレーターグループ結成につきましては、この合理化審議会の行われる前からその結成を慫慂しておつたわけですが、この合理化審議会からの答申が出まして、直ちに業者に早急にそのグループ編成をいたすようにということを伝えまして、今海運業界ではこのグループ結成について、いろいろの努力をいたしておるような次第でございます。その他オーナー統合とか提携、それからオペレーターオーナーとの関係等につきましても、その統合とか提携を強力に進めるように、これは船主協会を通じ、或いは個別酌に省として指導して、そうして合理的なる海運業の形態を作り上げるようにいたしたい、かように考えております。  それから航路経営の安定でございますが、まあ一番日本海運で問題になりますのは、日本を中心とする定期航路安定策でございます。これにつきましては、海運業界におきましてもそれぞれ自主的にその安定方策を講じているのでございますが、この合理化審議会ではその安定方策を更に決定するようにということを答申しております。実際問題としてニューヨーク航路におきまして非常な混乱を極めておりましたが、これは日本海軍業者が自主的に積荷を制限する、或いは安定運賃を設定するというので、非常にその効果を挙げて来ておりまして、且つ日本海運業者の真剣な努力を外国の海運会社が非常に深く認識して、日本海運業者努力に追随して来ているということで、全くこの航路におきましては、一時見えましたような混乱状態が影を潜めたという状況にまで立ち直つております。それからもう一つ混乱しておりましたインド・パキスタン航路におきましても、最近非常に安定した傾向が出ておりますし、又航路同盟のほうにおきましても、アウトサイダーである日本業者同盟に加入せしめんとする空気も出つつあるように思われるのでございます。或いは一瞬混乱の予想されておりました南米航路も、別に問題を起さずに解決したというような状況で、あと欧洲航路の問題が残つておりますが、非常にその日本海運業者航路安定の努力が実を結んでおるということが言えるわけであります。  それから経費節減におきましては、これ又業界におきましても自主的にこれを徹底する方法を講じようというので、いろいろの努力をやつおります。少くとも総経費の五%程度は節約をしようというのでいろいろの努力をいたしておりまして、今その効果を非常に挙げておるように思われるのであります。かようにして海運業者としていろいろの考え努力をいたしており、私どもといたしましても、更にこの上ともその推進をいたしたい、かように考えておるのであります。  で、造船業合理化でございますが、これはなかなかむずかしい問題いろいろ論議れましたが、合理化の中でどの造船所を生かし、どの造船所を実際上休止状態に置くということは、一概に言うことすらなかなか困難な問題であります。この合理化審議会答申では、今後の造船量というものは非常に限定されたものになつて来る。せいぜい考えて四十万トン程度のものではないか。ところが能力は六十万総トン以上ある。従つて今後の造船量減少状態を、一応それぞれの造船業者が頭において自主的にその操業を縮めるような方向に持つて行くべきである。実際問題としては、十次造船その他で自然受注する造船所もその補給から外れる造船所が出て来て、自然の淘汰ということが行われるのである。それを待つより仕方がない。併しどうしても造船所整理ということが必要であるとすれば、優秀にして且つ堅実な工場の操業が安定するということが望ましいというような意味の答申がされておるのでございますが、これは造船業者の自発的、自主的な努力に待つて、その造船業の縮小、整理といいますか、造船業全体の合理化が進められるより仕方がない、こういうふうな見解を立てておる次第であります。私どもはこの造船合理化審議会答申のありました線に沿つて海運業並び造船業経営に無駄のないような方向に強力に指導したい、かように考えておる次第であります。
  6. 高木正夫

    委員長高木正夫君) 有難うございました。それではお聞きの通り大体説明終つたように思いますので、これから質疑に入りたいと存じます。ちよつと参考までに申上げておきますが、本日の御出席説明員は、運輸政務次官岡田信次君、海運局長岡田修一君、外務政務次官秋山俊一郎君、外務省欧米局移民課長石井喬君です。  それでは御質問のある方は順次御発言を願います。
  7. 一松政二

    一松政二君 岡田海運局長に伺いますが、八月十七日の海運造船合理化審議会委員長石川氏の御答申で、大体その方法によつて船主選考せられるということはわかりますが、昨年までは造船所建造を依頼する船主とが連名か何かで、いわゆる造船所が主となつて、その建造許可造船所におりるという法律上の建前になつているが、たしか連名でやられたのじやないかと思うのだが、本年はその行き方を変えて、船主任意に船を造らせるという方針変つたのかどうか、その点を一つ承わりたいと思います。
  8. 岡田修一

    説明員岡田修一君) 計画造船申込船主がするわけであります。従いまして適格船主選考いたしまするには、船主事情を従来とも主にしております。ここで選考されたあとで、いわゆる臨時船舶調整法建造許可申請いたしますのは、造船所が主となり、船主連名申請をするということになつております。この計画造船のほうの申請は、船主が主になつて開発銀行に八割の財政資金融資をお願いしたい、こういう申請であります。同時に運輸省に対して、市中銀行からの融資に対して利子補給損失補償法の適用をお願いする、こういう申入れをすることになつております。
  9. 一松政二

    一松政二君 昨年は御承知通りいろいろ問題を起し、各造船所船会社もそうですが、恐らく造船所に船を造らせるという、造船所選定も大きく問題になつたように考えられるのですが、本年はこういうふうに船主を或る程度集中的に選考する方針だというと、例えば郵、商船或いは、三井のごときいわゆる旧財閥系会社に或る程度船が集中されると思います。そうすると又この系列的な造船所もあるわけですから、選考された船主自分の船を任意自分の選ぶ造船所に対して発注をする、そういう場合に運輸省はこれを手をつかねて見ておるのかどうか。或る造船所にかたまり過ぎるし、或る造船所が非常に仕事が少くて困つておるから、そうして相当優秀なことはわかつているが、そのほうの船の注文は今の船主との連繋がそれほど密接でないために、造船台が空くというようなことが起り得ると思うのですが、そういう点に対して運輸省は全然船主任意に任せるか、或いは運輸省が、それじやこつちのほうがかわいそうじやないか。或いはかわいそうとかかわいそうじやないとかということは、一つの感情になりますが、国家的に見て、或いは船の輸出というような面から、或る程度基準以上の造船所に対しては、この能力とこの技術を維持させる必要は国家的に必要であると思います。一、二の造船所は船を二隻も三隻も、或いは五隻も取つたが、或る造船所能力技術も優秀でありながら一隻しかない、或いは二隻しかないというような結果が生じはしないかと思うのですが、そういう点に対する運輸省としての見解はどうですか、岡田海運局長に伺いたい。
  10. 岡田修一

    説明員岡田修一君) 船主選考の場合におきまして、船主造船所関係でございますが、これは従来におきましても、船主事情を主にしまして造船所事情は第二次的に考える、こういうのであります。船主事情が同じである場合に、造船所事情考える、こういうことにいたして参りました。ところが従来は相当の建造隻数がございまして、而も船主事情が甲乙を付けがたいというものが相当ございましたがために、実際問題としては、造船所事情からその船の割り振りを考える、従つて結果的には大体造船所能力に応じた計画造船の割当ができておるということに相成つております。併し原則は飽くまでも船主事情が主であつて造船所事情は従である。今度もやはりその方策がとられておるわけでございます。ただ今度の場合は非常に隻数が少うございまして、只今御指摘のように、相当いい造船所でも隻数が一隻行くか行かないかというようなところが起つて来るのじやないか。然らばといつて、そういう造船所についている船主内容が非常に悪いのに、そこに割り当てるということは、この選考基準に照しましていたしかねるというふうに考えるのでございますが、併しその船主事情が、集中している造船所船主と然らざる造船所についている船主とが同じでありまする場合には、その造船所事情考える。その造船所事情考える場合に、ここにありますように、海運造船合理化審議会答申の趣旨に副つて造船所事情考える。これはもう一つはつきりしないのですが、要するに優秀で且つ堅実な経営をやつておる造船所については、その事情船主事情が同じである場合には、その事情考える、こういうふうに御了解願つていいかと思います。  最初から運輸省船主造船所の結び付きに介入して、造船所能力に応じて仕事が行くようにするかどうか、こういう点でございますが、まあ私どもとしては、成るべくそういう業者間の取引の内容に介入して、まあ政府が指図をするというふうなやり方はいろいろな弊害をかもす虞れがありまするので、できるだけ避けたい。業者間の自由な取りきめに待つことにいたしまして、その出て来た結果を、まあ事情の差支えない限り按配するといいますか、まあ国家としての行過ぎた介入はできるだけ避けたい、こういう考えでおる次第でございます。
  11. 一松政二

    一松政二君 局長の大体のお考えはそれでいいと思うのですが、ただ実際問題としては、この標準によつて選考される船主が、恐らく大半が、今言つた三社に殆んど大部分が行く結果に終りはしないかと考えるわけです。それで衆参両院でいわゆる第十次造船促進決議案を通したのも、これは恐らく造船所のほうの要請が造船所事情及びこれの関連産業ということを考慮されて、そうしてああいう決議案ができ上つたものと私は考えるわけです。そこで不当な干渉は無論私も賛成するところではございませんけれども、非常に時局が、何というのか、まあ英語で言えば、アブノーマルと言うのかレクリスというのか、ともかくめつたに見ない窮状に陥つているわけでありまして、そうして各造船所とも合理化をせなければならんことはわかり切つておるけれども、今日それを率先してやるものがない。率先してやれば、造船所を潰してしまう、会社を潰す結果に終る。これは尼崎製鋼の例を見ると、皆躊躇逡巡しておる。或いは日本製鋼所の例がそうである。従つて賃銀、給料の遅配、欠配はやりながらも、そうして行く先はわかり切つていながらも、飽くまでいの一番に整理を進めようとする勇気のある造船所がないわけなんです。これは岡田さんも御存じの通りだと思うのです。それは日本のいわゆる労働事情が非常に深刻であるから、まあそういう問題も起るのでありましようが、そういう一般の実情であつて、いわゆるこの三社につながる造船所はどつちかと言えば、これはもう残る造船所にきまつておる。そうして自然淘汰をされれど自分たちのところにしか転げ込んで来ないという大体の想像はついておつて、むしろ自然に任せておいて倒れるものが倒れてしまえば結局僕のところだけしか残らん。船も決して急いで造ることはない。十次造船が遅れることは別に苦にならないというのが私は偽わらざる本音であると心でも思う。船会社は又現に今船を造るか造らないか、そう採算に乗るわけでもございませんから、これを飽くまで進めてはいない。併しながらまあ船の安いときに国家保護を受けて長い期間の問に償還すればいいのですから、それを造ることは、又他日を期するゆえんでもあるから、まあまあもらえるものならもらう。造りたい。そうして一番欲しいのは造船所です。造船所こそは大早に雲竜を望むがごとしという壁の通りですが、ところが折角十次造船は決定されたが、隻数が少くて、少数の造船所に行つてしまつてあとのものは手をあげたということも、私は大体そう国家が干渉することもどうかと思うが、百八十五億というと、まあ金額は何ですが、国家資金を投入することでなければ、これは私は何をか言わんやだけれども、これにも莫大な国家資金使つてそうして保護を加えて、建造する船を船主の希望する船会社のみにやつてよいか悪いかということは、これは一つ考え方があろうと思いますが、無論過去においては一隻とか二隻とか造つたというようなこと、或いは戦後急に造船台を殖やして計画造船目当て造船所を作つたような会社は、これは私は何をか言わんやである。けれども戦争前から或いは戦時中に日本海運業を担つてつて来たところの造船所があると思う。その造船所が著しく片手落な結果に終ることを国家が指をくわえて見ておつてよいか。指をくわえて見ておつてということは、非常に極端な言葉ですが、そこには何らか財政的な指導をやはりやるだけの価値をいいますか、責任といいますか、国の資金を投入するということにおいて一応かなりな考え方を持つべきじやなかろうかと思うのですが、その点はどうですか。
  12. 岡田修一

    説明員岡田修一君) 財政資金を投入して船を造ります場合に、今先生のおつしやつたように二つの相反した考え方があると思います。一つは、その財政資金が最も効果を挙げるような方法をとつて行く、効果といいますか、それで造つた船が最も効率的に且つ国家的に見て必要な所に使われる船の建造に集中すべきである、こういう考え方、もう一つは、国家資金だから、その恩恵をできるだけ広く潤おすようにすべきだ、こういう考え方、今までは何といいますか、まあどちらということでなしに、相当の隻数がございましたから、先ほど申しましたように、造船能力に応じた仕事の配分ができた。今度は隻数が非常に少くなつておりますから、従つてその資金効果も、最も効果を挙げ得るような面に流して行きたい、こういう考えが非常に強くなつておるのであります。私どもといたしましては、先ほど申上げましたように、相当の設備を持ち、又古い歴史、且つまあ技術も優秀だ、こういう造船所事情を相当考えなければならんというふうには考えておりますが、併しそれはやはり船主側の事情によつて、その船主側が最も効果的に仕事を、効果を挙げるような船の建造をする、且つ投下された財政資金が、将来確実に回収されるような見込のある船主に造らせる、こういう観点からまあ考えるべきでありまして、造船所事情はそれに附随して考えるというふうな措置を今回においてはとらざるを得ない。更に又船価の低減とか、或いはその他造船業合理化というふうな点から考えまして、相当造船所に集中したほうが安く船が造れるというような考えも相当一部には強く行われておるのでございます。  それからもう一つは、或る一定規模以上の船主造船所に対しては、どうしても或る隻数をつけるのだというような考え方をいたしますと、どうしても造船所側の努力というものも鈍つて来る。だから優秀な、少くとも優秀な船主をつかまえるのが一つ、その造船所努力に待つて、優秀な船主をつかまえ得ない造船所は落伍して行くというふうなところで、造船所の競争と努力を求めるというのも一つの行き方ではないか、かように考えられるのでございまして、まあ気持としては、私どもは優秀な造船所操業が或る程度安定するような方策を講じたいという気持は持つておりますが、これを具体的に表わしてどうするというふうなことでは、却つて弊害を起す、これは避けたほうがいいと、かように考えております。
  13. 一松政二

    一松政二君 先ほど局長の、集中的に、そうして国家資金効果的に使うことと、それから広くこれをばらまくことと、二つ相矛盾したというけれども、それは必ずしも矛盾したと考えるべきじやなかろうと思うのです。私も何も広く、どこへでもここへでもばらまくほどないのだから、それをばらまけというわけじやございませんが、少くとも日本の今後の造船業としては、殆んど輸出船に主力を置くよりはかなかろうと思う。殊に日本が戦争がなくて、六百トンなり、七百万トンなりの船腹を若し戦前のごとく擁しておるならば、リプレイスするために、年々一定の三十万トンや四十万トンのこれは置き換えの船の注文が自然と起つて来るわけです。ところが、日本のこの海運事情は、戦争によつて壊滅してしまつて、そうして残つているものは戦標船か、或いは極く屈指の船だけしかない。あとは全部戦後に造つた船だということにたると、これはただ老齢のためにこれを置き換えて行くという船はないのです。英国のごときは、その点は如何に船腹を喪失しても、これはもう置き換えるために相当年々の造船量があるわけですが、日本では今後恐らく十四、五年の間老朽船を置き換えるための船というものは、需要が殆んど先ずないと見ても差支えないわけです。全部これは新造して、置き換えの船じやなくなるから、その建造量をそうたくさん見込むわけに行かない。従つて造船業を支えるのには、単にいわゆる計画造船と輸出の船腹によつて僅かに造船業を維持して行くという観点に立つだろうと私は思うのです。そうすれば輸出船を或る程度能力を維持させなきやならん。従つて、例えば具体的に言えば、三井、三菱造船所は今度の計画造船でかなり潤おうでしよう。併しながら今度はそれがあるために、それじや今直ちに期近かものの輸出船の引合いのあつたときに三井、三菱の造船所でそれがすぐ引受けられるかというと、一方において計画造船を取れば、計画造船のこれは隻数によるわけですが、隻数が取れて、もう一応自分のところは満腹と言わんまでも、せめて六、七分の船台が埋まつた、これはただ単なる一つの仮定ですから。そういう状態である。輸出船はほかの腹のすいているところにやるよりほかしようがないという現象が起るのじやないかと思うわけです。私もだからあらゆる造船所に万遍なく振舞うなんていうことは到底、それじや合理化にもならんし、何にもならん、それは御意見の通りなんです。だから戦前からやつてつた、そうして輸出船の経験もあり、又現にやつておるけれども、今のように系列化とか何とかいうような言葉を言えば、これは昔のいわゆる財閥になつちまうわけなんです。或いは銀行の、もう特にこの系列銀行に入つておるというような造船所か何かだけに集中される虞れがあるわけです。それが幸いに五、六の優秀な造船所がそういうふうになつておれば結構だけれども、今見るところによれば三、四社に集中的に造船が割当てられた場合に、打ち砕いて言えば、三井、三菱の造船所だけが請負うという結果に終るわけです。そうするとまだ他にも輸出船をやつている造船所もたくさんある。それから又戦前からやつているのもある。私はそういうところにはやつぱりいろいろな事情も考慮して政府が介入と言えば語弊があります。私も権力を振うことは頗るよくないとは思いますけれども、そういうところに仮に分けたからといつて、それが船価が高くなるとか……、そういうところのほうが必ず安く勉強しますよ。私は財閥会社でやれば、馴れ合いで国家資金を使うのですから、馴れ合いの造船船価が出て来ますよ。これはそういう兄弟会社、親子でなかつたら血を出してやる。遊んでいるよりはいいし、六割のレイ・オフで無駄賃金を払うよりは、仕方がないから赤字覚悟の上でやりますよ。私はそういうふうなところへ、或る程度造船所に集中されると国家資金は無駄にこそ使わるれ、決して血の出るような競争の、安い船価の船は供給できないと思う。だからそこはよほど行政的に、非難の起らない範囲内において、これはむずかしいことかも知れません。併しその腹を据えて、そうして岡田さんのところでも船舶の輸出ということを大きく考えておられるのだから、その場合に造船能力と信用のあるところというものはおのずからこれはきまるのです。決して去年あたりのような猛運動か何か知りませんが、そういう権力や何かによつてそれは左右されやしない。過去の歴史が証明しているのだから、過去の歴史のあるところを、実力のあるところを行政担当者がそれをピック・アップする場合において、そう非難の起り得る余地はなかろうというので、私はその辺に相当の考慮を置かれないと、やはり又別な角度から非難が起る虞れがないか。そうして所期の目的を達せずに、今私が、或る船会社の重役の者から言えば、ドイツの船のほうがよほど安い。日本の高い船価の船を、何も買つて今造つて、そうして国際競争場裡に出て勝てるわけがないじやないか。だから日本の船をせめてドイツの船価までやつて、そうして船を造れというのならまだわかる。けれども日本造船所の現在の船価、輸出船価とこれは又違います。外国に安い船を売つて、内地では国の資金使つて高い船を船会社に持たせる結果になる。船会社に言わせれば、みすみす高い船価承知しながら船を注文しなければならんということになつている。そうして場合によつては、私は杞憂かも知れんが、同系列の船会社に注文をすれば、これは馴れ合いの船価が生まれて来る。これは競争見積りにさせれば、これは別な問題も出て来ます。三井と全然関係のない造船所にやつて、三井の造船所と競争させれば、必ず三井だけに最初から行く予定船価より安くなる。であるから合理化々々々と言つても、集中することが却つて合理化を妨げる結果にもなるわけです。だからそういう点はよほどお考えになつて、そういう、業者の或る意味から言えば売口になる、そういう売口に乗ぜられるのでなく、それこそ集約して効果的に挙げたつもりのやつが、何ぞ知らん高いものをつかませられているという結果に終らないとも限らない。必ず終ると私は断言はいたしませんが、懸念はある。そういう点をお考えになつて海運局としては、船会社のほうですけれども運輸省の重大なる行政所管なんだし、そうしてそれは又ピンからキリまで生かそうと言つても、それはできないのだから、過去の歴史によつて、アプレの造船所などはどうなつてもいいということは言えませんけれども、それとはおのずから明かに差異が起ろう。又アプレのほうが力があつて、そうして不定期船の船主が金の工面をして又願い出るといういろいろな方法もあるでしよう。併しそれを選考されるものは、一応開発銀行だろうとか、銀行だとかいろいろあるけれども、打割つて言えばこれは運輸省である。造船合理化審議会とか何とかいつたところで、結局は運輸省方針が、そういう名を借りて現われてくるだけの話で、これは運輸省でよほどしつかり考えられて、そういう問題も頭に置かれつつ造船合理化なり、或いは船主合理化をやることが必要ではなかろうか、かように考える。それで私は同系列にある船会社は必ず高いものをつかむ危険がある。ただ私はつかむと断言はいたしません。世の中のことは断言するとなかなかいろいろなことがありますが、得てしてなかなかそういうことになりやすい。又輸出船の関係もありますから、そういう点は運輸省で消極的にお考えにならないで、むしろ積極的にそういう気持を働らかしてもらつたらどうだろうと考えるのです。私はあえてあなたにそういうことを強要するわけじやございませんが、一つの参考意見として、そういう方針をお考えなつたらどうだろう、こういうのです。如何ですか。
  14. 岡田修一

    説明員岡田修一君) 私どもの気持も、今先生がおつしやつた気持と全く同一であるといつてよかろうと思います。相当規模の、且つ優秀な造船所に或る程度仕事が行くように配慮すべきである、こういうふうに考えております。選考方針では船主事情が主になつて造船所事情が従になる、こういうことになると思います。併し船主事情で非常に優秀なもの、こういうものがはつきりしておりますのは、一部の限られたものである。その他はおおむね船主事情というものは、そう差があるわけではない。そういう場合には今先生のおつしやつたような気持を働かせ得る余地がある。併しそれは船主事情に格段の差がありますとこれはちよつと無理ですが、そこに相当の余地があると、かように考える次第でありまして、先生のお話の趣旨をよく省内に伝えまして善処いたしたい、かように考えます。  なお先生のおつしやつた優秀な造船所或いは優秀な船主が、船価低減その他に努力しないのではないか、努力程度が薄いのではないか、こういう点は私どもも実は恐れているところでありまして、自分のところでは努力しなくてもどうせ値は上がる。だから安い引合いに応じなくてもいい。こういうふうな態度が私は必ずしもなきにしもあらず、これは私どものほうにおきましても厳重に船価の審査というものを徹底いたしまして、そうして例えば優秀な造船所で、何といいますか、その上にあぐらをかいているようなものがあれば、たとえ優秀なものであつてもそれに認めないようにいたしたい、かように考えて、船舶局長ともその点十分連絡をとつて、御心配のことのないようなことに指導いたす、かように考えております。
  15. 一松政二

    一松政二君 更に今度は別の問題で海運局百長にお伺いいたしたいのですが、本年は移民船の建造が一隻もない。移民船は船価が高くついて、そうしてただでさへ少い貨物船の隻数を減らすことになるから、移民船は今年はやめたというようなことを灰かに聞いたのですが、それはどういう事情になつておりますか、一応御説明を承わりたい。
  16. 岡田修一

    説明員岡田修一君) 御説の通り、これは十次造船では移民船は計画の中に入れておりません。と申しますのは、現在大阪商船が保有しております船のうち、移民船の働く能力が大体年間五千三百名ぐらいあるわけであります。ところで二十九年度の送出計画が予算面で三千五百名、そういうことでございまして、まだ多少の余裕があるということでございます。御承知通り、やはり移民の送出計画が確定して、これだけは確実に移民が出るというものを見ませんと、それに対応する船を造つて、船が先ばしつたということになりますと、それだけ船舶経営にロスが出るというような考えから、私どもとしては、むしろ移民計画が確定して、それについて行つて船を造つて行くという考え方で進む。従つてどもは明年度の移民計画が確定して、そこに或いは半年なり一年なりの時間的なズレがあるかも知れませんが、それによつて来年度の建造計画に移民船を加えるようにいたしたい、かように考えておる次第であります。私どもは移民計画の確定を待つて建造するようにいたしたい。取りあえずは船の輸送力のほうにまだ余力があるというふうに一応考えておるわけであります。
  17. 一松政二

    一松政二君 そこで岡田さんの今の説明で、なおあとから伺いますが、その移民の問題につきましては、私は自由党の外交調査会で移民の問題についてかなり突込んだお互いの意見を交換しておつて、そうして最も問題になるのは輸送機関の問題、それで現在ではまあ航路の日数の関係だろうと思うのだが、まあ少し四捨五入するような恰好にすれば、五千名ぐらいは予想できるだろうが、それ以上はできないと、ところが我々自由党の外交調査会で外務省から承わつているところによると、来年度は一万三千名ばかりを中南米のほうにやりたいのだ、それで輸送力が足りないのだからイタリーで移民の航空会社をやつているのがあるから、移民の航空会社を作らなければならんというので、現に太平洋航空株式会社なんというのを、日本航空がありながら、そういうものをもうすでに運輸省申請しているわけです。そうして又、エヤー・ルートの関係で同一会社では運賃を特別安くすることはできないというので、まあ太平洋航空が、そういうことを率先して申請していると思うのですが、それは一応航空会社その他から聞けば、移民の片道十一万円かそこらのもので、航空会社が成り立つとか成り立たないとかいうお話も承わつたことがございますが、すでにその計画は、船会社の大先輩である村田省蔵氏が太平洋航空というものを計画して運輸省申請しているわけです。そこへ以て来て貨物船を、ライナーにしろ、それからトランパーにしろ、それが何も焦眉の急務じやありませんよ、日本の今日では。何もそんなものが一隻、二隻多いとか少いとかいうことは、世界の海運事情日本海運事情から言つて、私は一つも焦眉の急務じやない、焦眉の急務なのは造船所の船台が空くということのほうが焦眉の急務、それだから一隻でも多く造らせたいというので移民船を省いているというのがまあ偽らざる実情であろうかと思うのです。だから政府の計画がまちくになるわけです。一方ではたくさんの人員を送りたい、又現にやれば向うは受入れる態勢があるのだ、それで日本はすべての問題が人口過剰に原因しておる、物価の高いのも、企業の倒産も、失業者も、お互いの身を削るような、このだんだん住みにくくなる日本のすべての問題がこの人口の過剰にある。人口の過剰にあるが、移民によつて人口問題が解決するかというと残念ながら、日本の今日のようなことでは移民によつちや解決しないけれども、九牛の一毛として少くとも息抜きにはなる。それが又他日の移民を呼ぶよすがになる。日本の発展の基礎になる。それが現内閣としてもこれは力を入れていることであろうし、我々自由党員としても移民という問題は、人口問題解決、或いは我が国の将来の発展の下地として、一人でも或いは半人前の子供でも、できれば送りたいというのが、私は日本政府の政策であろうと思うし、幾ら予算があろうとなかろうと、それが国策である以上、削るべからざる問題であろうと思う。それをただ金の面から削るという大蔵省のお考えならば、私はその大蔵省の意見を聞きたいと思うんだけれども、何か大蔵省から横槍が出ておるのか何か知らんが、移民船が造れないというような話をまあ聞いたから今御質問申上げたわけですが、私は岡田さんにはあとで御答弁願うこととして、一応移民の政府の計画について、委員諸公の御認識を新しくして頂くために、幸いにそこに外務省から移民課長が来ておられますから、来年度の計画を一応。それと外務省としての見解一つ承わりたいと思う。
  18. 石井喬

    説明員石井喬君) 只今一松さんからこの前外交調査会で一万三千名を送りたいというお話を申上げたのを引用されたのでございますが、その後私のほうでいろいろ検討いたしきた結果、まあ輸送能力はなかなか足りないのでございますが、あちらの現地の情勢をいろいろ検討いたしますと、まあ数としましては二万人程度は若し輸送が可能であるならば送り得るという推定は立つているのでございます。併しながらやはりいろいろ国家財政の状況でありますとか、輸送手段等を勘案いたしまして、私どもとしましては来年度にまあ一万人程度の人を送り出したいというふうに考えております。そこで私どもが一応作りました案では、来年度に送出いたしまする移民数は一万二百五十人というものを想定いたしております。これは勿論国の大きな財政資金を必要といたしますので、この通り参りますかどうかは別といたしまして、私ども国家の移民政策という観点から考えまして、まあこの程度のものは来年度には是非出したいという数字でございます。  それの大体の内訳を申上げますと、ブラジルが六千三百人ということになつております。これはブラジルは御承知のようにアマゾン地域におきまして辻小太郎氏が、中部ブラジルにおきましては松原安太郎氏がそれぞれブラジル政府と折衝いたしまして、アマゾンにおきましては五年間に五千家族、中部におきましては七年間に四千家族という枠を獲得しておるのでございます。これが本年度におきましては、たまたまウナという所で非常に面倒な事件を起しましたために、松原安太郎氏の計画のほうは今残念ながらストップしていたのでございます。併しつい最近になりまして、辻小太郎氏及び松原安太郎氏とブラジル側との間に一つの協定ができました。いろいろ向う側としてもむずかしい条件を出したのでございますが、枠としましては、先ほど申上げました五千家族、四千家族という枠をはつきり認めましたので、今後はその数字に従つて出るようになると思つておるのでございます。これによりますとアマゾンにおきまして五年間に五千家族と申しますと、年間に一千家族になります。ブラジル政府としては大体一家族六人として計算をしておりますので、若し六人という計算でありますれば、それでもうすでに六千は出てしまうということになるのであります。併しこれは連邦政府の植民地に入る移民でございます。ブラジルは非常に大きな移民関係の予算を持つておりまして、どんどん事業はしおりますが、なかなかこれを完全に受入れるまでの設備ができるかどうかというふうなことも多少考えまして、ブラジルだけで以て北中南伯合せまして六千三百という数字を出しておるのでございます。  そのほかにアルゼンチンに千五十、アルゼンチンは御承知のように白人優先の国でありまして、なかなか有色人種の入国は好んではいないのでございますが、併しあすこには相当の日本人がおりまして、おのおの非常に成功いたしております。その関係でこれらの人々が今呼び寄せを計画いたしております。現に今向うで呼び寄せの組合を作りまして、希望者を募つております。それが相当の数に達しますのと、更にアルゼンチンはペロン大統領が国内の開拓計画を立てております。これが来年度あたり或る程度具体化して参ると思うのであります。そうしますと、都市周辺の地域にはなかなか日本人は入れてくれませんが、多少奥のほうの土地になりますれば、それの開発はやはり日本人に待たなければならんという認識がございますので、或る程度向う側からの要望が起つて来る。殊に御承知のように、只今アルゼンチンの。ハタゴニヤの漁業開発という問題を自由党の松田代議士がいろいろ画策しておりますが、これも最近に発足するのではないか。そういたしますると、それだけで漁業者だけで五百人から出るというようなことになります。まあ今後相当に出られるのではないか。  それからパラグアイに五百人予定しております。パラグアイは御承知のように貧乏国でございまして、なかなか向う側で金を出してまで日本の移民を呼ぼうとは言わないのでございますが、併し御承知のように、これはコルメナという所に現在日本人が七百人近くおりまして、相当に成功してやつております。そういう所の呼び寄せでありますとか、或いはアルゼンチンとの境にエンカルナシオンという所がございます。これはまあサンパウロの土地に匹敵する非常にいい土地でございます。そこに大きな開発計画がございまして、現にヨーロッパ移民はどんどん入つております。幸いにパラグアイは白人優先とは言いながら、決して日本人は嫌つておりません。現に本年中に百五十家族の入国の許可がございます。これも推進して行かなければならんと思います。併し何と申しましても市場の狭い所でございますから、エンカルナシオンの開発が行われた暁には相当大量に出ると思いますが、それの開拓の時期におきましては、多くは出しては危険であるという関係で、来年度あたり先ず百家族程度のものを送りたいと考えております。  次にボリヴイアが千四百出ておりますが、ボリヴイアはこれも御承知のように、従来は錫の輸出で成り立つていた国でありますが、錫の輸出が行われなくなりますと、途端に国内の食糧が、すでに困つて来ておる。そこで何どかして農業開発から始めたいのでありますが、やはりああいうアンデスを越えた向うの土地、而も非常に原始林というようなことになりますと、なかなか入国の希望者がない。そこで日本人の優秀性を非常によく認識しておりまして、ここに参謀総長その他で朝鮮戦線あたりに出て来たものがありまして、日本人の優秀性を理解しております。日本人でありますれば、土地は自由にどこの場所にでも幾らでも提供する。日本人は好きなだけ入つてよろしいということを言つているところでございます。併しこれも只今申上げましたように困つておる国でございまして、なかなかブラジルのように政府資金で以ていろいろ受入れ施設をしてくれるということはできませんので、これを本格的にやりますということになりますと、非常に莫大な費用がかかります。現在の日本では到底できません。たまたまボリヴイアに相当大きな農園主がたくさんおりまして、その連中が日本人を使いたいということを言つておりますので、それをも入れまして、一部の開発というようなことも、アメリカとのタイ・アップというようなことも考えまして、今後大いに推進して行きたい。殊にここではプラントの輸出ということが非常に有望であります。プラントを輸出して、今話に出ておりますのは砂糖でございます。ボリヴイアは年間五万トンの砂糖の消費があるのでありますが、国内産が僅かに九千トン、残りの四万トンというものを輸入しておりまして、而も外貨のない国でございますので、この輸入は非常につらい。そこで国内で若し砂糖の生産を興し得るならば、それの生産量に応じた外貨だけは外に支払つてもよろしいということを言つておりまして、日本の国内にあります遊休の砂糖施設というものを向うへ持つて参りますれば、相当の企業が成り立ちます。これをやるということになりますと、現地には熟練した農民というようなものも少いので、やはり日本の農民が参りまして、甘藍の栽培から始めなければ十分なことはできないというようなことで、今後とも大いに伸びると思います。来年度はそれに間に合わない。  これは大きな計画はございませんが、チリーにおる在留日本人が、日本自分の後継者を呼びたいという気運が強いので二百人ほど送りたい。それからコロンビアは三百人、コロンビアはパルミラという所に日本人の家族が現在約五十数戸、六十戸足らずおります。これが白いんげんの栽培を機械化で始めまして、現在非常に成功いたしております。六十戸足らずのものが、昨年の平均収入が、日本の金に直しまして、平均して大体二千万円から三千万円ということでございます。百姓でありながら乗用車だけで百五十台とかあるというような非常に成功している所でございます。そこに話をいたしまして日本人を呼んでもらいたいということで、これは現地の人々が金を出し合いまして相当な広大な土地を買いまして、そこに日本人を入れようということでございます。従つて実は三百人というような数字でなくてもいいまうに思われるのでありますが、遺憾ながらこの国は日本人が大量に入ることを好んでいませんので、余り目立つてはいけない。先ず来年度三百人送つて行きたい。  それから次にアメリカ合衆国の五百名ということを考えておりますが、難民救済法が昨年できまして、戦災者でありますとか、或いは中共地区からの引揚者でありますとかいうような、或いは風水害の被災者でありますとかいうような人々で、そのために現にまだ定着できないでいる生活の非常に困窮しているようなものにつきましては、アメリカが難民救済法に基きまして入国を許可するわけでございます。全体ではアメリカは二十万人の入国を許可することになつております。この法律自体が大体がヨーロツパの、殊に東独からの避難民というようなものを対象としてできておりますから、極東地域は僅か三千人しか割当がないのでございます。ただ中国は別でございますが、中国を別にいたしまして、極東地域で三千人の割当がある、そのうち然らば日本人が何人入れるかということは実はわからないのでございますが、まあフィリピンなり、朝鮮なりその他の所と競争しながら一人でも多く向うに送りたいということで来年は五百人送りたい。これはアメリカ合衆国のこの難民救済法に基きますものは、今のところは、大体向うにおります日本人なり、アメリカ人なりというものが渡航費を自分で持つから送つてもらいたいというのが来ているわけでございます。従つて数も今のところ三百名かそこらしか申込がないのでございますが、向うにいる人間は、日本人を呼びます場合、来る人間が一体どういう人間であるかということに非常な関心を、当然のことであるが、持つのでございます。そのために金を払つて呼び寄せた人間がどつかへ逃げてしまつたといつたようなことになるのを非常に嫌いますので、或る程度渡航費を日本政府で以て貸付けてやるということであれば、あと責任を以て給与の中から返す、そういうことであれば安心して呼べるから一つ渡航費だけでも貸付けてもらいたいというような要望がありますので、一応五百名という数字を出しまして、或る程度渡航費を貸して行きたい。  そこでトータルして一万二百五十名ということになるのでございます。然らばこれをどういうような輸送手段で以て送るのかということでありますが、これは岡田海運局長が申されましたように、結局予算の問題になりますので、この通り送れるものであるとは思いませんが、我々はできるだけ考慮したいということでございます。そこで先ほど海運局長から五千三百名が現有勢力であるというお話でございます。これは移民の関係から申しますと、実は五千三百名の中には大阪商船のさんとす丸というのがございまして、これが入つているのでございます。これはいわゆる中等クラスで移民を送るのに少し金がかかり過ぎるので私ども使つておりません。それを除きますと五千二百名という輸送能力でございます。ところがこれは現在ブラジルなり、アルゼンチンから自分の親戚であるとか、友だちであるとかいうものを自費で呼ぼうという人間が相当いるのでございます。それがはつきりした統計はないのでございますが、年間大体千八百名か二千名くらいに達する。これは移民の運賃よりも、同じ三等でありましても、高めの運賃でやるのでありますけれども、これは船会社のほうから見ましても是非やつてもらいたい、又私どものほうから申しましてもこれは国家の金がかからないで向うへ行く人間でありますから、それはできるだけ自由に送り出してやりたい、そういうことになりますと、まあ現有勢力を以てしましては三千五百名を送るので先ずぎりぎりではないかというふうに考える次第でございます。併しまあそれを多少抑えるというようなことでいたしますし、更に私どもとしましては、本年度の十次造船にできれば一ぱい移民船を入れたいという強い要望を持つのでございますが、若し十次で駄目でも、十一次には是非二はいくらいは造りたいということを考えておるわけでございます。  そこで只今ありまする船舶は、アフリカ丸、アメリカ丸、ブラジル丸というような、この三ばいでございます。アフリカ丸は定員が五百名、アメリカ丸も五百名、ブラジル丸が九百名ということになつております。そのうち、先ほど申上げましたいわゆる自由渡航者を除きまして、我々はアフリカ丸で四百名、アメリカ丸で四百名、ブラジル丸で七百五十名、この程度を送り出したいというふうに考えるわけでございます。そこでこれらの現有勢力を現実に来年どういう配船計画をやつているかというのを、大阪商船から取りまして、計算いたしますと、大体五千二百名送れまして、これは今年と同じなんでございますが、先ほど海運局長も申されたのと同じ数字でございますが、それと、それから自由渡航者を除きまして、大体四千二百五十名という数字が送れると思うのでございます。そこで然らば新造船がそこに何ばい入れるか、何ばいと申しますよりも、むしろ何航海できるかということでいろいろ違つて参るのでございますが、若し十次造船で移民船が一ぱいできて、来年度三航海ということになりますれば、三、九—二千七百名、それの八割くらいのものは送れるというようなことになります。そこで私どもとしましては、まあ隻数の問題は別といたしまして、三十年度に新造船が三往復できるという想定の下に、大体六千五百名くらいは日本の船舶で送れるだろう。そのほかに先ほど一松先生からお話のありました飛行機による輸送ということを考えまして、この飛行機の輸送が大体何人くらいになるか、これは実は私どものほうではまだはつきり言えないのでございます。と申しますのは、こちらから、一機がおよそ六十五名程度の搭載人員数だと思いますが、これは向うから帰つて来た人間が又それで行くということも考えなければなりませんので、必ずしもこういうものを全部移民で占めるわけには行かないと思います。出発の回数といたしましては、大体年間六十回くらいというふうに言われておりますが、これを若し一機三十人ずつ乗るといたしますれば、三、六の千八百人くらい、四十人といたしますれば四、六の二千四百人くらい行けるというようなことで、飛行機も使いまして、大体九千百五十名程度の人が実際に送れる。これは一万には少し足りないようでございますが、中には子供等もございますので、大体このくらいのものがあれば一万人くらいは送れるというふうに考えている次第でございます。
  19. 一松政二

    一松政二君 只今移民課長の御説明のように、この移民の輸送能力というものが、もう徹底的に足りない、来年度において足りないということが余りにも明白なんです。それでいて国家資金は、或る意味から申せば不急なんです。造船所は非常に急務なんだけれども、貨物船を殖やすということはそう急務じやない。造船所に注文を出すことは急務であるけれども、船を殖やすことはそんなに急務じやない。ところが移民を送り出すということは、これは日本の国策の根本でなければならない。たとえ小なりといえども、できるだけ向うが受入れてくれなくても押込みたいほどの人間がたくさんいるんですから、送りさえすれば受付けてくれるんだということになれば、幾ら一兆円が一兆二百億になつつて、まあそんなに殖える必要もないけれども、極端な一つの事例を言えば、例えば十億や二十億移民に貸付ける金は、これは将来必ず返つて来るんだから、これを通常予算で計上しているけれども、これを通常予算で計上しておるということは、どつちかと言えば無理なんです。貸付金なんです。将来必ず返つて来る。そういうものを削るということは愚の骨頂なんです。私が自由党の政務調査会でも、この移民の最小限度の、まあ移民課長はこれを大分遠慮されておるようですが、これはもう徹底的に大蔵省へ迫つて、私どもも自由党でこれは是非実現させなければならん。航空会社も想定されておるけれども、これは運輸省では反対されておるはずなんです。その実現の可能性というものは殆んど私はなかろうと思います。いわんやその計画が、カリフオルニヤの何とかいう航空会社のDC4を二機借りて来てやる計画だそうですが、これ又チャーターじや、そつちの航空機を借りれば、それはドルを払わなければならん。そうして一方で或る意味から言えば不急の貨物船を一艘殖やすために移民船を犠牲にするということは、これは政策の矛盾である。そうして最大の急務である日本から一人でも多くの人間を送り出そうというのに輸送力が足りないとか、又むしろ輸送力がそのあとからついて行くという考え方は、私は運輸省は捨てて頂きたいと思う。輸送力のほうが常に先行して、これでもかこれでもかと言うてくれて初めて私は政策が一致すると思う。それであればこそいいので、行きたいけれども船がない。或いは金は政府で貸してくれるけれども船がないというような状態では、日本の人口問題の大きな解決にはならんけれども、九牛の一毛にはなる。先ほど申上げた通りでありますが、息抜きになる。少くとも青年を奮い立たせるに足るわけです。当委員会におつた服部重五郎君も、これは家族六人を率いてブラジルへ行つておる。この委員会におつた服部君が、もうすでにここの国会の職員であるよりは、アマゾンに自分の志を伸すべくすでに行かれておる。だからそれは輸送力の点は、輸送力を先に用意しておいて、そうして移民の数をできるだけ多くとるというのが、私は政策の根幹でなければならんと思うし、殊に計画造船のごとき、政府が音頭をとつてやるようなことには、これは毎年一艘、まあ移民のことで相手方もあることですから、こつちが五万人送りたいと言つたつても、向うが受入れなければしようがない。二万人送れば受入れるというなら、二万人もどんどん送れるようにしたほうが、私は日本の国策としては、もう何人にも受入れられる、これは重要問題なんです。そこへ僅かなはした金と言つらや語弊があるが、それじや余つている貨物船を一艘造るか造らないか、どつかの造船所に七、八千トンか一万トンの船が一艘行くか行かないかということで移民船を犠牲にするということは、私はこれは政策の矛盾である。この点は焦眉の急務だと私は考えて、そうして特に移民船の問題を私は今日議論をしてもらいたいと思つて今日伺つているわけなんです。でありますから、来年度の予算を見た上で再来年度、まあ来年度ですけれども、船から言えば再来年になつてしまう。来年は現状維持だというようなことは、これは日本海運を掌られるところの岡田さんも、これは一つ一考をしてもらいたい。そうして何としても私はもう一隻、少くともブラジル丸というのか何という船か知らんけれども、その程度の移民船はやるべきである。幸いにまだ十次造船の計画も船主選考以前だというんです。だからその移民船をやるのは、移民船をやればその船会社はおのずからきまつてしまうとか、或いはそうすればどうなるとかいうような何かこう商売上のお互いの嫉視反目みたようなことがないかも知れんがあるかも知れない。国策というものは、そういうものは超越しちやつて、そうして私はきめべきであろうと思う。で、若し何か移民船を作るのに大蔵省側の意見か何か反映しているのであるかどうか、これを岡田さんに一つ伺いたい。
  20. 岡田修一

    説明員岡田修一君) 移民船を造るのについて、大蔵省から牽制をされているとか、そういうことは全然ございません。ただ、只今移民送出の緊要性についてお話があり、私ども十分その点を認識しておるわけですが、今までの外務省、大蔵省の折衝の経過を見ますと、必ずしも外務省の計画に対して大蔵省が、予算を掌つておるところがまあ十分な賛成をしていない。従つてその当初の計画が大幅に削減されているというのが今までの例なんであります。従いまして三十年度の計画におきまして、果してその大蔵省との折衝においてどういうふうな成り行きになるか、私どもとしては非常な危惧を持つております。従つて輸送の面は多少ずれて遺憾の点が出るかも知れないが、一応今年は見送つて、来年度においてはその見通しというものがもう一つはつきりして参りますから、それによつて進む。私どもとしては、その移民送出の緊要性が非常に大きいという点を痛感しておりまするし、若しそうであるならば、この移民の計画についてもう少し大きく総合的に毎年幾ら出すということ、又それに対して大蔵省の予算の裏付けについて政府としては責任を持つて努力する、その一環として移民船はこうこうにして造る、こういう移民送出計画全体としての政府方針というものを大きくおきめ願いたい。それならば安心して私どもとしてはついて行ける。それなくして、ただ輸送面を先行せよと言われても、まあそれにはいろいろ私どもとしての事情もありまするし、むしろそういう大きく政府としての方針を決定願うようにお取り計らい願うべきであると、かように考えております。
  21. 一松政二

    一松政二君 それじや、今の移民課長にちよつと聞きますが、これはちよつと技術上の問題みたいですが、本年度の予算で移民の渡航費だけ削られずにたしか殖えております。あれはどうですか。
  22. 石井喬

    説明員石井喬君) 昨年に比べてでございますか。
  23. 一松政二

    一松政二君 ええ。
  24. 石井喬

    説明員石井喬君) 昨年に比べましては殖えております。今年は三千五百名になつております。昨年度は、これは私も昨年の当初おりませんのではつきり覚えておりませんが、当初はたしか三千名ぐらいの予算が一度つきまして、それがなかなか進行しないので千五百名に削減されたと思います。従いまして今年は昨年に比べますれば、予算としましては倍ちよつと殖えたということになつております。
  25. 一松政二

    一松政二君 それで余り削られなかつたわけでしよう。大体何名というて三千五百名になつたのか、かなり削減された予算の中で、移民費だけは余りそう削られなかつたのじやないかというように私ちよつと聞き覚えておるのですが、その点はどうでしよう。
  26. 石井喬

    説明員石井喬君) これは相当にやはり削られております。私どもは昨年本年度の予算折衝をいたします際には、外国船をフルに使うということで大体七千名ぐらい送りたいという当初の要求をしておるわけでございます。それが三千五百名になりましたから、先ず半分になつたわけです。
  27. 一松政二

    一松政二君 そこでですね、岡田海運局長はそれを心配しておるわけです。今外務省が一万名、一万名と言つて騒いでおるんだけれども、結局又五千名ぐらいになるんだろうと、そうなつた暁には、どうも船だけが先に進みすぎちやつても困るじやないかというのが頭の中にあるわにです。ところがですね、私どもの自由党の外交調査会では、移民だけは百尺竿頭一歩も二歩も三歩も進めて、帰趨を明らかにしてやりたいということで一生懸命やつておるわけです。来年度の予算においても、それは相当自由党として政府を鞭撻してそれはやることになると思うのです。その際にあなたがたの、いわゆる事務当局が、最初から半分に若し削られる虞れがあるならば、最初から二万名ぐらい出せばいい。それを一万名ぐらいを恐る恐る出すものだから五千名に削られるというへまなことになる。もう少し腹を据えて……、私は日本の各省の事務当局みたいに、大蔵省がいつも一段上になつて、予算で大上段に銘を振り上げるわけだ。それはまあ政府責任もありますけれども、それで何とかかんとか言つて、そうして一万減し二万減し、引いて、最後にはいいかげんなところへ持つてつて、数字を妥協せざるを得ぬようなふうに追い込まれて行つてそれできまつてしまう。それは物によつては、或いは災害費とか或いは道路費とか建築費とかいうものならば、これは大蔵省が相当目を見張るのは一応了解する。けれども移民みたような国策の根幹、日本の人口問題の一助になり、息抜きをもしようというところは、これは外務省が移民局を作りたいが、こつちが反対した……、移民局であろうと課であろうとそれは一つもかまいやしない。まあ公務の中に局と課というものを非常に重く見て使い分けることはあるかも知らんけれども、我々から見れば、課長であろうと局長であろうと、仕事の軽重によつてこそ物を考えるのであつて、課長ではできぬ、局長でなければできないという考え方をすること自身が我々甚だ取らざるところなんです。そこで岡田さんは、大体五千二百名を輸送されるから来年度は一応それでいいんじやないか、だから今年は見送つても来年度は船を造るようになるだろうからそれでよかろう。ところがさつきのあなたのお話を承わると、結局計画移民としては四千名そこそこしか送れないんだと、それでもうすでに千何百名が現に不足しておるわけです。一艘今年造つたからといつて、それは半年か七、八カ月先の話、それが来年度に送り得る数量というものは、三航海になれば一年フルです、四カ月かかつたら。だからそれが十次造船がいつ発注になるかと言えば、早くて十月か十一月になる。それから半年か一年、一年はかからんかも知らんけれども、犠装して航海に出られるまでには、又七、八カ月、幾ら早くたつて七、八カ月以上がすんでしまうから、三航海などできつこありません。僅かに二航海できればいいほうです。二航海はできない、八カ月ではできない。そうすれば来年度の五千二百名の輸送、岡田さんね、五千二百名輸送するのに今から十次造船に入つて丁度とんとんの数字にしかならない。で、今年三千五百名が本年度の移民の予算上許されたる数字である。来年度は幾ら外務省が弱腰でも恐らく六千名、七千名には漕ぎつける。そんな熱のないことなら、最初から移民なんて言わないほうがいい。輸送力は明らかに不足ですよ。その輸送力は現在下足しているのです、現に。だから今年の十次造船に一艘入れたところで、それは過剰になる気遣いは全然ないわけですよ、それて私はこれはもういわゆる閣議決定か何かしてやらなければ、今日の段階となつては、岡田さんが一人重要性を認めても全部すぐそれを変更してかかれることじやないだろうことは想像つきます。併しながら岡田さんは責任者としてその認識を一つつてもらいたい。その必要性の認識を事務当局者の取高責任者が認識するとせざるとは、ものの実現性を確実にするせざるの大きなキーポイントになるわけです。そこで私は今日この暑いのに皆さんにお願いしてその必要性ありやなしやをここで検討しているわけです。今まで聞いたところによると、いろいろ説明承わつているところによると、造らなければ徹底的に不足なんだ。現に来年度が造つたところで過剰にはならんという……過剰どころじやない、まだ足らんと、もう二艘も一緒に造らなければ、今の外務当局が考えている数には及ばん。一艘造つたところで現在の輸送能力から見て一つも過剰にはならん。貨物船は過剰ですよ、岡田さん。貨物船は世界的に見て、これは日本自身から見ても過剰ですよ。過剰なものは造るが、足らんものは造らんのでは平仄が合いませんよ。それはそれが過剰でないのは造船所から見た場合に過剰でないのであつて船会社及び日本の船腹事情及び世界の船腹事情から見れば、貨物船は過剰ですよ、日本の移民船は徹底的に下足していますよ。そこで十次造船の移民船を省く理由は私はなつていないと思う、絶対に。私はそれを、まだ今日といえども間に合う段階にあるから、是非とも移民船を実現するように岡田さんの奮起を促してやまないのです。それで岡田さんから  一つ答弁してもらいたいということは、貨物船は余つているのだから、何といつたつて……。
  28. 岡田修一

    説明員岡田修一君) どうも一松先生のお言葉ですが、私どもは貨物船が余つているとは決して思つておりません。成るほど世界的には船腹過剰で運賃が非常な低落を示しておりますが、日本海運業者はその引合いの貨物に対して、今まだ非常に船腹の足らざるをかこつているような状況でございます。従いまして船腹だけは確保したいという熱意に燃えております。ただ運賃が安いものですから採算がとれない、こういうことです。従いまして私ども計画造船が余計なものを造つているというのでは決してございませんで、日本海運業者として非常に欲しがつている貨物船の船腹を早急に増強したい、こういう考えでございます。  それから移民船の点でございますが、私ども移民船のまあ必要となつて来ることは十分認識しておるのでございますが、これがやはり来年度の予算がどの程度に確保されるかどうかという一つの見通しにかかつておるわけでございます。例えば今外務省が出していらつしやる一万名の半分が成立するとすれば、まあ五千名、そうすると送り不足が千名ぐらいになる。若しそれが確定してどうしてもそれを日本船で送らなければならないとすると、例えば十一次造船ですね、これは財政資金が本年度中にきまるわけです。ですから移民船だけを取上げて四月早々に着工させる、これはもう造るべき会社もおのずからきまつております。四月早々に着工されれば大急ぎでやると、まあ一、二月頃には利用可能じやないか、そうするとまあ一航海ぐらいな人間は送り出せる、こういうことも考えるわけであります。或いは繰上げて工事を実施させておいて、仮の支出を年度に入つてからするということも可能じやないか、併しそういう方法は一種の権道になるわけですが、併しどうしても本年度の計画に入れて考えるべきであるということならば、先ほど申しましたように、何か移民の送出計画について、一つ政府の強い方針として、全体的に閣議決定を願うというふうなことをして頂けないものか。石井君は一生懸命大蔵省と予算面で折衝されいろいろ努力されおるのですが、まあ仄聞しますのに、大蔵省の常に予算を担当しておる人の頭というのは、ちよつとやはり一種の違つた観点からいろいろ検討されまして、私ども常識的に非常にいいだろうと思つても、別な見地からそろばんをはじかれて、移民よりは別のほうに金を投ずる、このほうが効果的である。移民などはあと廻しにしていいじやないか、こういう考え方が相当支配的ではないかと思うのです。これはやはりまあ党その他で大きく政治的に御判断願つて、そうして強く一つのまあ政治的な推進力を以てお進め願う、割当の船の建造もその一環として実行に移させて頂きたい、こういうことになれば、私どもは非常に幸いだと思います。
  29. 一松政二

    一松政二君 大分私長くしやべつておりますが、余り岡田さんと論争したくないが、貨物船が足らん足らんというのも、足りるか足らんかというのは運賃というものを見れば一番よくわかる。物の値段が下るときは余つておるから下る。余らなければ必ず上るのです。日本海運のいわゆる六百万トン戦前に保有しておつたので、その水準に一日も早く漕ぎつけたいというのならそれは足らないでしよう。  それから日本の輸出入の貨物の日本船による積取り数量をどの標準に求めたいという一つの理想案を掲げてくれば、それも又足りないという結果が出る。けれども日本船が先になつて血の出るような競争を世界の各航路に挑みかかつておることは、これも事実である。それから船会社が非常な国家の恩典を受けて船を造られれば、これはまあ前の国会で小笠原蔵相が、十年に一度は当るということもありますからといつて衆議院の大蔵委員会で述べられましたが、そういうことを頭の中に入れて造るのであつて計画造船による高値の船をまあ積極的に造りたいことはないけれども、これは人間の心理で、折角そういう恩典があるのに甲が造つて乙が指をくわえて見ていれば、自分がそれだけ勢力が少くなるので、どうしても競争意識が出て来まして、どうしても自分のところはできるだけたくさん造りたいと、これは損得は度外視してやる。これは商売人の常でございます。それやこれやで、募れば希望者もある。けれどもつて置けば、今の船会社から積極的に一日も早く造つてくれという声が起らない。ということは、一応それを今造つてもそれですぐ来年も黒字になつて自分のところの会社を潤おしてくれるとは思わないのです。むしろ赤字になつて負担を増すということになる。楽しみを将来に残して結局造ろうというのがおちである。そこでそういう程度のものだから、造船所を考慮するときに、これは一刻もゆるがせにならんというのが、私は今日の今次造船の現状だと思います。そこで私は移民船というものが、ここに一艘の移民船の姿を見ないということは、国策の矛盾である。これは私は現在の政府が自由党を基盤にしてできているからであり、私も自由党員であるということから、この政府の一貫せざるところを、私はむしろそいつを多少においても、ここをもう少し努力の足らない点だと思うから、私は大いにこれは努力をしたいと考えて、外交調査会の委員にもなつて移民の問題にもいささか携わつて来たから、今日こういうことをお願いできている。私はもう議論を繰返したくはございません。岡田さんもよくわかつておられるし、まあ外務当局もわかつたろうと思う。で、どうぞ、私は御答弁を求めませんが、幸いに我が党の同僚が両方の政務次官になつておられる。だから岡田政務次官と秋山政務次官に私は特に一つこの問題について、国家のためにこの調整を、移民船の建造という問題を真剣に取上げてもらつて、そうして大蔵省へ強く当つてもらいたい。私は今日主計局長出席を要求しておつたのですけれども、どうしても会議で御勘弁が願いたいという話らしいので、次の委員会で私はその点は来週に開かれる委員会に持越したいと考える。得てして、先ほど岡田さんの言つたように大蔵省の査定の仕方がある。だからそれじや結局政治的に、岡田さんが言われたように、政策として、政府の政策として、或いは党の政策として強く掲げなければ、どうしても小手先の金の効果金の効果と言われるが、金の効果が、大蔵省の言う通りにやつても決して金の効果は万全じやない。大蔵省の言う通りにやつても金の効果がない場合もある。又各省の要求した通りつて金の効果があることもある。決して大蔵省が万全じやないけれども、丁度銀行家が事業家に威張るのと同じように国家の金を大蔵省が一人で握つて、おれのところへ来なければ、何ができるかというような顔をする。これは各省から大蔵省に日参されたりしている状態を見ればわかる。それはお気の毒に思います。この問題は政府の問題として、或いは国策として、或いは党の問題としても私は一貫した政策をとる必要がある。で、私ども十次造船について、しばしば委員会を開いて討議しておるし、或いは決議文も本会議で通つている責任上、十次造船をして最も効果的に国策の線に一貫して沿うようにするように委員会としても分相応の努力をしたいというので、今日委員会をお願いしたわけで、以上を以ちまして私の今日の質疑は一応打切ります。
  30. 高木正夫

    委員長高木正夫君) 他に御質問はございませんか。  それでは本日は一応これで閉会いたします。    午後三時四十五分散会