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説明員(
石井喬君) 只今
一松さんからこの前外交
調査会で一万三千名を送りたいというお話を申上げたのを引用されたのでございますが、その後私のほうでいろいろ検討いたしきた結果、まあ輸送
能力はなかなか足りないのでございますが、あちらの現地の情勢をいろいろ検討いたしますと、まあ数としましては二万人
程度は若し輸送が可能であるならば送り得るという推定は立
つているのでございます。併しながらやはりいろいろ
国家財政の
状況でありますとか、輸送手段等を勘案いたしまして、私
どもとしましては来年度にまあ一万人
程度の人を送り出したいというふうに
考えております。そこで私
どもが一応作りました案では、来年度に送出いたしまする移民数は一万二百五十人というものを想定いたしております。これは勿論国の大きな
財政資金を必要といたしますので、この
通り参りますかどうかは別といたしまして、私
どもは
国家の移民政策という観点から
考えまして、まあこの
程度のものは来年度には是非出したいという数字でございます。
それの大体の内訳を申上げますと、ブラジルが六千三百人ということにな
つております。これはブラジルは御
承知のようにアマゾン地域におきまして辻小太郎氏が、中部ブラジルにおきましては松原安太郎氏がそれぞれブラジル
政府と折衝いたしまして、アマゾンにおきましては五年間に五千家族、中部におきましては七年間に四千家族という枠を獲得しておるのでございます。これが本年度におきましては、たまたまウナという所で非常に面倒な事件を起しましたために、松原安太郎氏の計画のほうは今残念ながらストップしていたのでございます。併しつい最近になりまして、辻小太郎氏及び松原安太郎氏とブラジル側との間に
一つの協定ができました。いろいろ向う側としてもむずかしい条件を出したのでございますが、枠としましては、先ほど申上げました五千家族、四千家族という枠をはつきり認めましたので、今後はその数字に
従つて出るようになると思
つておるのでございます。これによりますとアマゾンにおきまして五年間に五千家族と申しますと、年間に一千家族になります。ブラジル
政府としては大体一家族六人として計算をしておりますので、若し六人という計算でありますれば、それでもうすでに六千は出てしまうということになるのであります。併しこれは連邦
政府の植民地に入る移民でございます。ブラジルは非常に大きな移民
関係の予算を持
つておりまして、どんどん事業はしおりますが、なかなかこれを完全に受入れるまでの設備ができるかどうかというふうなことも多少
考えまして、ブラジルだけで以て北中南伯合せまして六千三百という数字を出しておるのでございます。
そのほかにアルゼンチンに千五十、アルゼンチンは御
承知のように白人優先の国でありまして、なかなか有色人種の入国は好んではいないのでございますが、併しあすこには相当の
日本人がおりまして、おのおの非常に成功いたしております。その
関係でこれらの人々が今呼び寄せを計画いたしております。現に今向うで呼び寄せの組合を作りまして、希望者を募
つております。それが相当の数に達しますのと、更にアルゼンチンはペロン大統領が国内の開拓計画を立てております。これが来年度あたり或る
程度具体化して参ると思うのであります。そうしますと、都市周辺の地域にはなかなか
日本人は入れてくれませんが、多少奥のほうの土地になりますれば、それの開発はやはり
日本人に待たなければならんという認識がございますので、或る
程度向う側からの要望が起
つて来る。殊に御
承知のように、只今アルゼンチンの。ハタゴニヤの漁業開発という問題を自由党の松田代議士がいろいろ画策しておりますが、これも最近に発足するのではないか。そういたしますると、それだけで漁
業者だけで五百人から出るというようなことになります。まあ今後相当に出られるのではないか。
それからパラグアイに五百人
予定しております。パラグアイは御
承知のように貧乏国でございまして、なかなか向う側で金を出してまで
日本の移民を呼ぼうとは言わないのでございますが、併し御
承知のように、これはコルメナという所に現在
日本人が七百人近くおりまして、相当に成功してや
つております。そういう所の呼び寄せでありますとか、或いはアルゼンチンとの境にエンカルナシオンという所がございます。これはまあサンパウロの土地に匹敵する非常にいい土地でございます。そこに大きな開発計画がございまして、現にヨーロッパ移民はどんどん入
つております。幸いにパラグアイは白人優先とは言いながら、決して
日本人は嫌
つておりません。現に本年中に百五十家族の入国の
許可がございます。これも
推進して行かなければならんと思います。併し何と申しましても市場の狭い所でございますから、エンカルナシオンの開発が行われた暁には相当大量に出ると思いますが、それの開拓の時期におきましては、多くは出しては危険であるという
関係で、来年度あたり先ず百家族
程度のものを送りたいと
考えております。
次にボリヴイアが千四百出ておりますが、ボリヴイアはこれも御
承知のように、従来は錫の輸出で成り立
つていた国でありますが、錫の輸出が行われなくなりますと、途端に国内の食糧が、すでに困
つて来ておる。そこで何どかして農業開発から始めたいのでありますが、やはりああいうアンデスを越えた向うの土地、而も非常に原始林というようなことになりますと、なかなか入国の希望者がない。そこで
日本人の優秀性を非常によく認識しておりまして、ここに参謀総長その他で朝鮮戦線あたりに出て来たものがありまして、
日本人の優秀性を理解しております。
日本人でありますれば、土地は自由にどこの場所にでも幾らでも提供する。
日本人は好きなだけ入
つてよろしいということを言
つているところでございます。併しこれも只今申上げましたように困
つておる国でございまして、なかなかブラジルのように
政府資金で以ていろいろ受入れ施設をしてくれるということはできませんので、これを本格的にやりますということになりますと、非常に莫大な費用がかかります。現在の
日本では到底できません。たまたまボリヴイアに相当大きな農園主がたくさんおりまして、その連中が
日本人を使いたいということを言
つておりますので、それをも入れまして、一部の開発というようなことも、アメリカとのタイ・アップというようなことも
考えまして、今後大いに
推進して行きたい。殊にここではプラントの輸出ということが非常に有望であります。プラントを輸出して、今話に出ておりますのは砂糖でございます。ボリヴイアは年間五万トンの砂糖の消費があるのでありますが、国内産が僅かに九千トン、残りの四万トンというものを輸入しておりまして、而も外貨のない国でございますので、この輸入は非常につらい。そこで国内で若し砂糖の生産を興し得るならば、それの生産量に応じた外貨だけは外に支払
つてもよろしいということを言
つておりまして、
日本の国内にあります遊休の砂糖施設というものを向うへ持
つて参りますれば、相当の
企業が成り立ちます。これをやるということになりますと、現地には熟練した農民というようなものも少いので、やはり
日本の農民が参りまして、甘藍の栽培から始めなければ十分なことはできないというようなことで、今後とも大いに伸びると思います。来年度はそれに間に合わない。
これは大きな計画はございませんが、チリーにおる在留
日本人が、
日本の
自分の後継者を呼びたいという気運が強いので二百人ほど送りたい。それからコロンビアは三百人、コロンビアはパルミラという所に
日本人の家族が現在約五十数戸、六十戸足らずおります。これが白いんげんの栽培を機械化で始めまして、現在非常に成功いたしております。六十戸足らずのものが、昨年の平均収入が、
日本の金に直しまして、平均して大体二千万円から三千万円ということでございます。百姓でありながら乗用車だけで百五十台とかあるというような非常に成功している所でございます。そこに話をいたしまして
日本人を呼んでもらいたいということで、これは現地の人々が金を出し合いまして相当な広大な土地を買いまして、そこに
日本人を入れようということでございます。
従つて実は三百人というような数字でなくてもいいまうに思われるのでありますが、遺憾ながらこの国は
日本人が大量に入ることを好んでいませんので、余り目立
つてはいけない。先ず来年度三百人送
つて行きたい。
それから次にアメリカ合衆国の五百名ということを
考えておりますが、難民救済法が昨年できまして、戦災者でありますとか、或いは中共地区からの引揚者でありますとかいうような、或いは風水害の被災者でありますとかいうような人々で、そのために現にまだ定着できないでいる生活の非常に困窮しているようなものにつきましては、アメリカが難民救済法に基きまして入国を
許可するわけでございます。全体ではアメリカは二十万人の入国を
許可することにな
つております。この法律自体が大体がヨーロツパの、殊に東独からの避難民というようなものを対象としてできておりますから、極東地域は僅か三千人しか割当がないのでございます。ただ中国は別でございますが、中国を別にいたしまして、極東地域で三千人の割当がある、そのうち然らば
日本人が何人入れるかということは実はわからないのでございますが、まあフィリピンなり、朝鮮なりその他の所と競争しながら一人でも多く向うに送りたいということで来年は五百人送りたい。これはアメリカ合衆国のこの難民救済法に基きますものは、今のところは、大体向うにおります
日本人なり、アメリカ人なりというものが渡航費を
自分で持つから送
つてもらいたいというのが来ているわけでございます。
従つて数も今のところ三百名かそこらしか
申込がないのでございますが、向うにいる人間は、
日本人を呼びます場合、来る人間が一体どういう人間であるかということに非常な関心を、当然のことであるが、持つのでございます。そのために金を払
つて呼び寄せた人間がどつかへ逃げてしま
つたとい
つたようなことになるのを非常に嫌いますので、或る
程度渡航費を
日本政府で以て貸付けてやるということであれば、
あとは
責任を以て給与の中から返す、そういうことであれば安心して呼べるから
一つ渡航費だけでも貸付けてもらいたいというような要望がありますので、一応五百名という数字を出しまして、或る
程度渡航費を貸して行きたい。
そこでトータルして一万二百五十名ということになるのでございます。然らばこれをどういうような輸送手段で以て送るのかということでありますが、これは
岡田海運局長が申されましたように、結局予算の問題になりますので、この
通り送れるものであるとは思いませんが、我々はできるだけ考慮したいということでございます。そこで先ほど
海運局長から五千三百名が現有勢力であるというお話でございます。これは移民の
関係から申しますと、実は五千三百名の中には大阪商船のさんとす丸というのがございまして、これが入
つているのでございます。これはいわゆる中等クラスで移民を送るのに少し金がかかり過ぎるので私
どもは
使つておりません。それを除きますと五千二百名という輸送
能力でございます。ところがこれは現在ブラジルなり、アルゼンチンから
自分の親戚であるとか、友だちであるとかいうものを自費で呼ぼうという人間が相当いるのでございます。それがはつきりした統計はないのでございますが、年間大体千八百名か二千名くらいに達する。これは移民の運賃よりも、同じ三等でありましても、高めの運賃でやるのでありますけれ
ども、これは
船会社のほうから見ましても是非や
つてもらいたい、又私
どものほうから申しましてもこれは
国家の金がかからないで向うへ行く人間でありますから、それはできるだけ自由に送り出してやりたい、そういうことになりますと、まあ現有勢力を以てしましては三千五百名を送るので先ずぎりぎりではないかというふうに
考える次第でございます。併しまあそれを多少抑えるというようなことでいたしますし、更に私
どもとしましては、本年度の十次
造船にできれば一ぱい移民船を入れたいという強い要望を持つのでございますが、若し十次で駄目でも、十一次には是非二はいくらいは造りたいということを
考えておるわけでございます。
そこで只今ありまする船舶は、アフリカ丸、アメリカ丸、ブラジル丸というような、この三ばいでございます。アフリカ丸は定員が五百名、アメリカ丸も五百名、ブラジル丸が九百名ということにな
つております。そのうち、先ほど申上げましたいわゆる自由渡航者を除きまして、我々はアフリカ丸で四百名、アメリカ丸で四百名、ブラジル丸で七百五十名、この
程度を送り出したいというふうに
考えるわけでございます。そこでこれらの現有勢力を現実に来年どういう配船計画をや
つているかというのを、大阪商船から取りまして、計算いたしますと、大体五千二百名送れまして、これは今年と同じなんでございますが、先ほど
海運局長も申されたのと同じ数字でございますが、それと、それから自由渡航者を除きまして、大体四千二百五十名という数字が送れると思うのでございます。そこで然らば
新造船がそこに何ばい入れるか、何ばいと申しますよりも、むしろ何航海できるかということでいろいろ違
つて参るのでございますが、若し十次
造船で移民船が一ぱいできて、来年度三航海ということになりますれば、三、九—二千七百名、それの八割くらいのものは送れるというようなことになります。そこで私
どもとしましては、まあ
隻数の問題は別といたしまして、三十年度に
新造船が三往復できるという想定の下に、大体六千五百名くらいは
日本の船舶で送れるだろう。そのほかに先ほど
一松先生からお話のありました飛行機による輸送ということを
考えまして、この飛行機の輸送が大体何人くらいになるか、これは実は私
どものほうではまだはつきり言えないのでございます。と申しますのは、こちらから、一機がおよそ六十五名
程度の搭載人員数だと思いますが、これは向うから帰
つて来た人間が又それで行くということも
考えなければなりませんので、必ずしもこういうものを全部移民で占めるわけには行かないと思います。出発の回数といたしましては、大体年間六十回くらいというふうに言われておりますが、これを若し一機三十人ずつ乗るといたしますれば、三、六の千八百人くらい、四十人といたしますれば四、六の二千四百人くらい行けるというようなことで、飛行機も使いまして、大体九千百五十名
程度の人が実際に送れる。これは一万には少し足りないようでございますが、中には子供等もございますので、大体このくらいのものがあれば一万人くらいは送れるというふうに
考えている次第でございます。