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1954-10-07 第19回国会 衆議院 労働委員会 第41号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年十月七日(木曜日)     午後零時三十七分開議  出席委員    委員長 赤松  勇君    理事 池田  清君 理事 持永 義夫君    理事 多賀谷真稔君 理事 井堀 繁雄君       木村 文男君    三浦寅之助君       黒澤 幸一君    島上善五郎君       大西 正道君    日野 吉夫君       矢尾喜三郎君    岡田 春夫君  出席国務大臣         労 働 大 臣 小坂善太郎君  委員外出席者         労働事務官         (労政局長)  中西  実君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      亀井  光君         労働事務官         (職業安定局         長)      江下  孝君         参  考  人         (全日本自由労         働者組合中央執         行副委員長)  坂本 周一君         参  考  人         (東京自由労働         組合組合長)  馬場 大静君         専  門  員 浜口金一郎君     ————————————— 十月七日  委員中原健次君辞任につき、その補欠として岡  田春夫君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  失業対策労使関係及び労働基準に関する件     —————————————
  2. 赤松勇

    赤松委員長 これより会議を開きます。  失業対策労使関係及び労働基準に関する件について調査を進めます。  本日は失業対策問題について坂本周一君、馬場大静君の両人が参考人として御出席になつておりますから、御了承願います。  多賀谷君。
  3. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私は職安局長に、職業安定法施行規則第四条に関連した問題について、具体的にお尋ねいたしたいと思います。  今、問題といたしたいと思いますのは、日通立川支店におけるフインカム臨時要員の問題でございます。この要員は、大体二百名程度でございまして、作業内容梱包箱詰め流れ作業と、それからランニングマット再製作業、さらに製函作業、この三つにわかれておるわけであります。資材、器具、設備全部駐留軍のものでありまして、これを借り受けて日通でやつておる、こういうことであります。さらに、最初申しました梱包箱詰め流れ作業は、これはLSO労働者と、今申しました臨時要員とが渾然としてその作業に携わつておる、こういうことでありまして、直接の指導者といいますか、そういう人が日通から出ておるそうでありますが、何も技術を指導しておるというものではなくして、むしろ人員配置をやつておる。しかもこの指導者は、一箇月前に臨時工としてやはり入つて来たものである、こういうことであります。さらにその上の監督は、LSO指導者がやつておる、こういうことでありまして、これらの作業が雑然として行われておる。こういうことになりますと、どうも普通の請負形態ではないのではないか、かように考えられるわけであります。  さらに二番目のランニングマット再製作業も、やはりLSO労働者監督によつて行われておるのでありまして、製函作業につきましてもやはりLSO労働者監督によつておるようであります。この要員使つておる様子をながめてみますと、請負契約によつて作業全般請負つて、その中から賃金を払つておる。法律上もいろいろな義務を負つており、さらに施行規則第四条第四号に規定する条件も全部備えておる、こういうようには考えられないのであります。どうも労働者個人がいろいろ言うておる様子を見てみますと、むしろ一人幾らという賃金を軍の方からもらつて、それを直接さやをとつてつておるのではなかろうか、かように考えられるわけであります。それは作業形態が、請負に適した形態ではないのであります。日によつても違いますし、またそのときの状態によつてもいろいろ作業が違います。さらに今申し上げましたように、LSO労務者と一緒に仕事をさせておる、こういう点から見ましても、普通の請負形態ではなくて、労務供給業の疑いが非常に濃い、かように解さなければならないと思うのであります。それらの点について、どういうように考えておられるか、ひとつお尋ねしたいと思います。
  4. 江下孝

    江下説明員 フインカム基地日通請負梱包作業等が、安定法施行規則第四条違反ではないかという御質問でございます。問題が現地のこまかい問題でございますが、私も実はこの件については、まだ簡単な報告しか受取つておりません。その報告と申しますのは、この事業請負であるかあるいはそうでないかという判定は、出先公共職業安定所において行うものでございます。そこで公共職業安定所で、それではどういう基準でこれを請負認定いたしたかということについては、この事業は、梱包あるいはランニングマット関係仕事であつて、比較的専門的な経験、技術を必要とするものである、その点について一応この施行規則四条の第四号の条件に該当すると認めて、これを許可したというように報告を聞いております。一応私ども立場といたしましては、出先機関におきまして、本省の詳細な方針を指示いたしておりますので、その方針にのつとつてやりまして認定を正しいというほかないのでございますが、現在多賀谷委員からのお話がありましたいろいろ疑問の点があるということで、本省でも直接この問題をなおもう一度調査いたしまして、はつきりした結論を出したい、かように考えます。
  5. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 なお、つけ加えておきたいと思いますが、LSO従業員班長と称する人が、ひよつとすると政府が来るかもしれない、政府調査に来た場合は、業務上の命令は日通班長がやる、技術指導LSO班長がやつておるのだということを言え、こういうことを労務者を集めて言つたそうでございます。さらに聞くところによると、一人当り七百五十円から八百円程度で人夫を請負つておるらしいが、実際払つておるのは四百円から四百五十円である。しかもこれは土曜日は全部休みでございますので、一週五日しか働けない、こういう状態でございます。さらに午前中で早引けした者については、当然賃金を差引いておりますけれども、軍の方には全日働いたように届けが出ておる、こういうことも労務者が申しておるわけであります。こういうところを見ますと、やはりこれは中間搾取の要素が非常に多分に看取されるわけでありまして、職業安定法の四十四条に基きました施行規則が、最近非常に緩和といいますか、むしろ精神がゆがめられてほとんど骨抜きのようになつておることは、私は非常に遺憾に思います。現地の方でも、実際はかなり苦慮しておるようでございまして、中央の大きな方針が、どちらかといえば緩和方向に来ておる、こういう事情において認定の問題で非常に苦慮しておると聞いておるのであります。しかし今申しましたような条件がそろいますと、これは何を申しましても労務供給業であるということは明白でございますので、十分調査をしていただいて、そしてそういう作業は早く切りかえていただきたい、かように要望いたしまして質問を打切ります。
  6. 赤松勇

    赤松委員長 それではこれより参考人意見の陳述に移りたいと思います。馬場大静君。
  7. 馬場大静

    馬場参考人 昨日私の方から意見として申し上げた点のほかに、まだ申し述べてなかつた点があつたと思いますので、その点でひとつきようは申し上げて、さらに御審議願いたいと思います。  要は、本日申し上げたい点は、この前に私といたしましては、労働省体力検定をしようとするその目的の意図はつきりしなければ、われわれとしては反対も賛成も申し上げられないというようなことを申し上げておきましたが、過日の労働大臣発言によりますと、意図はつきりしたように思いとつたのであります。一体、われわれが今日考えておりますのは、失業者なつ理由を、政府はどういうふうに考えてわれわれに接しおいでになるか。われわれが自己の意思によつて、すき好んで失業者にさもなつたような感覚で政府にとられておるのではないか、こういうような点が多分にあるのであります。それはほんとうにわれわれが失業者なつたその面について認識していただいておるならば、現在実施されようとする体力検定の問題につきましても、あるいは現在すでに実施中である日雇い失業保険法内容におきましても、また日雇い健保内容におきましても、あたたかみのある法が実施せらるべきでありますが、その法がわれわれの実情に相反した法ばかりであるということが、ここに申し上げられるのであります。それは、例をとつて言えば、失業保険のごときは、日雇い労働者すなわちわれわれは、きよう働かねばきよう食えない、絶食しなければならないという悲惨な状態にある者に対して、今日の失業保険のごときは、まさに三日も四日も、あるいは断続的には六日も七日もあぶれなければ、百四十円という金がもらえないというような現実であります。かつまた、健康保険にしてもそうであります。現在われわれは医者にかかるということもできない。また現在失業対策に従事して、もらつておる賃金は、現在大蔵省が認めておる扶養家族三人、本人を合せて四人という家族生活を営んで行くための賃金にしては、あまりにも少い賃金であります。その中から八円を引き、かつまたその八円をひかれた健康保険の適用が、現在補綴もできない、入れ歯もできない、給付もない、ただ診断をして薬をやるだけであるというような、まことに死ねと言わぬばかりの、かりそめのやり方であつて、われわれの日常の実情はつきり認識していただいた法の制定ではないというような点が多いのであります。  それにかてて加えて、今日まず体力検定という言葉をもつて、さらにわれわれ日雇い労務者に苛酷な責を負わするような法を実施せられようとしておりますが、この点につきまして、過日の労働大臣発言内容から見ますと、政府、しかも労働省当局者としては、あまりにもわれわれの実情を無視し切つたやり方である。そのやり方の一例を申しますならば、現在就労日数の面におきましても、また賃金の面におきましても、法に制定せられている問題が、一つもわれわれの実態に相応してない、まことに苛酷な法ばかりであるという中にあつて、今度されようとする体力検定のごときは、さらに失業者が増大しようとしており、また増大しつつある今日にあたつて——政府憲法第二十五条によつて保障されたその精神を守るためには、また生かすためには、いかなる予算をも排除して、われわれの失業対策事業費増額し、われわれのために救済策を講じてくれることが当然なのに、そういう予算の問題については、増額意図も見られない。ただ今日、われわれの体力検定行つて、その検定の結果は、不合格者をより多く出して、しかもより多く出したその穴の中には、今流れ込もうとする失業者吸収せしめ、いたずらに現政府がきめた一兆円の予算の中で、政府みずからの手によつて首切つた、あるいは政府責任において失業者とならされたわれわれに対して、何らの責任も持たないで、一方的にその責任をわれわれに転嫁せしめるのであります。今日われわれが失業者なつたというのは、とりもなおさず戦争のため、次には政治の貧困、あるいは政策の無能、この三つの点からなつているものであります。この点については、政府自身が再軍備の予算をそこに見積る前に、まず人を生かす、国民の生活を安定化すことを第一に取上げて、そうして失業対策事業費を十分に御考慮願うならば、今日われわれの上に課せられようとする体力検定のごときものも、こういうふうな苛酷なやり方ではなくて、もつとあたたかみのある方法が講じられるのではないか、こう思うのであります。その体力検定方途につきましても、これは過日私が議長としての立場から労働省事務次官斎藤氏に会つたとき、斎藤氏から出た言葉でありますが、四、五年前何ら審査しないで登録せしめたが、今日に至つては、その中に相当年とつた人もあり、かつまた裕福な人もあるので、そういうものに対しては何らかの手を打たなければならない、その打つ方法をどうしようかと思つているのだと言われたのであります。私はそれに対しまして、労働省として手を打たれようとするならば、その手を打とうとする前に、その犠牲となつ人たちを救う手をほかに講じてからでなければ、そういうことは望ましくない、その手はまず労働省と厚生省がよく御相談をなさつて——現在の生活保護法給付面を見ましても、これは地方別によつて違いますが、二千五百円ぐらいにしかなつていない。その二千五百円の生活保護法給付では、われわれとして絶対生きて行けるものではない。この点五千円あるいは六千円、七千円までも引上げて、そういう態勢がとられたときに、政府がそういうことを思われているならば、そのことをよくわれわれ労働組合の方にも相談をしていただくならば、そのときはまた何とか御相談に乗る場合もあるであろうが、今日何らの考えもなく、無意味にさらに首を切るがごとき悪政はやめてほしい、考え直してほしいということを私は申し上げておわかれしたのでありますが、それがとりもなおさずこの体力検定というような言葉に今日かわつて来ているように考えます。そういうことは、明らかに現政府政策の無能といわざるを得ない。しかもその政策をつかさどる政府当局者、すなわち労働省当局者としては、十分にこの点考え直していただいて、明るい政治をとつて行かれるような方途を講じてもらいたいと思います。  われわれが今日体力検定に反対するという点は、まずそれの一番恐るべき問題は——労働省自体、かつまた大蔵省自体失業者が相当氾濫して来るにもかかわらず、増大して来るにもかかわらず、何ら予算の措置を講じないで、現行の予算の中において、救済しなければならない人たちの首を切つて、その氾濫して来る失業者を入れかえしようとする意図は、われわれとしては見のがせないことである。だから、あくまでもこの点については予算増額をしていただいて、当然これに対しましてのそういう悪辣な方法はおとりやめ願いたいということをわれわれは申し上げたいと思うのであります。われわれ全日労使協議会と先月の二十四日の午後一時に大蔵省で会いましたときに、大蔵省河野事務次官がわれわれの質問に対して言われたことは、現在二十九年度の予算で百十一億組んである、その百十一億の予算の中には、五%というものは、今おつしやるように相当増大して来るというような場合には、その五%をいつでも使えるというような態勢考慮して、五%というものを含めて百十一億の予算は組んだものであるから、その五%はいつでもそういう事態が起きた場合には使つてもよろしい予算である、労働省はひとしくそれを使うべきである、そうしてそういう事態には対処すべきである。こういうようなことを大蔵省河野事務次官言つたのでありますが、さらにそれに対しまして、それだけでは足らないで、さらに今後われわれが必要とするような場合、あるいはますます失業者が増大して就労日数も低下し、われわれの騒ぎが大きくなつたというような場合には、どういう手を考えているのだ、絶対百十一億の予算から微塵も予算増額は見ないとしているものであるか、あるいはまた重ねて考えようとする意図を持つているものであるかとわれわれが問いただしたときに、大蔵省河野事務次官は、その事態至つた場合には、また何らかの方法を別途に考慮いたします。じや、その考慮ということは補正予算を組む意思を持つているのかいなかということを問いただしたところ、補正ということは言葉においては出し得ません、あくまでも一兆円内のきめられた予算の中でそのやり繰りはいたすのでありますが、そのやり繰りする方途としては、ほかの各省の予算を削つて、またそれに再度あてがうというような方途を講じなければならないということを、大蔵省事務次官は申しました。こういう点から見れば、今日失業者が増大して来る反面において、もつと国民的の生活基準を上げなければならない今日の段階にあつて労働省はむしろそれを逆な方向に向わせ、失業対策に従事する人たち生活基準というものは、一番最低——最低どころか、三度の飯は二度しか食えない、あるいは一度しか食えないというような現状の人があるにもかかわらず、その中から体力検定というような名目にかこつけてこれを首にし、かつまた、その首にした者の救済受入れ態勢を何ら考慮もしないで、一方的にそういうふうな実施を行うということは、まことにわれわれの頭上に水爆か、あるいはまた青酸カリでも飲ませて殺すがごときことと何らかわるところはないというような観点をわれわれは持たざるを得ないのであります。だから、あくまでも労働省というものは、われわれのためにある労働省としてわれわれは考えている観点から、あくまでも情ある処置を今日とつていただきたいというのが、われわれの労働省に対する希望であります。この希望に対しましては、われわれが率直に労働省に訴えるというよりも、むしろ今日のこの労働委員会労働委員の方々にお取上げ願つて、そうして率直にわれわれの意見として申し上げた内容をつぶさこ御審議願つて最低生活に苦しんでいるわれわれのために御善処方を願いたいと、こう思うのであります。  以上であります。
  8. 赤松勇

  9. 坂本周一

    坂本参考人 私はこれから、一昨日本委員会におきまして、労働大臣並びに職業安定局長の御発言によりまして、失業対策一般並びに体力検定の問題について明らかにされた点がありますから、それらについて、これに対する私ども意図をさらに具体的に明らかにして行きたいと思うのであります。第一の問題は、体力検定でありますけれども、本委員会における安定局長のお言葉を借りますと、強制紹介という言葉は私はいやだから使わないけれども、いわゆるあつせんというような形で、本質的には強制紹介をやりたい、このように私は聞いたのです。その理由とするところは、職業安定法建前はいわゆる適格紹介である、つまりそろばんの達者な者はそろばんを必要とする部署へつけてやる。     〔委員長退席多賀谷委員長代理着席〕 こういうような適格紹介建前をとるために、失対の場合も、やはり同じく体力検定実施によつて、それに合格の判を押された人は公共事業に行けるということが明らかでありますから、そちらの方へひとつ行つてもらいたい、すなわちこれが適格紹介である、こういうことを申されたわけでありますが、私どもといたしましては、そのようなことは、明らかに憲法に保障されているわれわれの職業選択の自由をそこなうものであると思うのです。何となれば、失業対策仕事の中で、それをわれわれの定職であると考えて就労している人は一人もないのです。それぞれ働く能力を持ち、あるいは技能を備えた人々が、失業といううき目にさらされまして、求職のために安定所の窓口をたたいているわけです。その証拠には、われわれが失対の適格者となる場合に、第一に必要なのは、いわゆる求職票という票でありまして、それにはその人間の前歴あるいは経歴、学歴が書き込まれまして、しかしかの仕事がほしいのだという、明らかに求職意思表示をしているわけです。従つて、われわれの場合は、われわれがその人に適した仕事につけてもらうということ、これがわれわれのいわゆる失業者としての本質的な要求なんです。ところが、こういう人々に対しまして、強制的に体力検定をやりまして、そうして好むと好まざるとにかかわらず、からだがいいからひとつ公共事業の方へまわつてくれというのでは、われわれは首肯できないわけです。これは明らかにわれわれの職業選択の自由を奪うものであるというふうに考えるのです。こういうことを前提にしまして、失業者である失業対策に働く人々の全部に対しまして、体力検定実施するという意図はつきりされたわけです。  次に、からだの弱い人には、これもやはりひとつやめてもらう、無理な形ではとは言いましたけれども、最終的にはやはり生活保護の方へまわつてもらうのだというふうな政府意図のようでしたけれども、しからば、生活保護の方の受入れの方はどうかということにつきましては、何らの方法がない、具体的には何らの対策がない、こういうことであります。このようなことでは、はつきりここでわかることは、われわれを殺すための、人殺しのための政策であるというふうに感ぜざるを得ないのです。もしもこのような無理な政策をここであえて全国的に強行するならば、ただでさえ社会不安を心配されているこの世の中に、さらに社会不安の増大に拍車をかけるという結果を引起すのではないか。現在私どもの方にも、昨日あるいは本日にかけまして、続々と問合せが参つておりますが、それらによりましても、明らかに全国各地では、この問題に真剣に取組んでおります。島根あたりでは、もう地方を中心にした全労働者が立ち上つたために、職業安定所では手のつけようがないから、労働組合と話合いがつくまでは体力検定を一時中止する、こういつて来ておるわけです。これをこのままやるならば、私はものすごい社会不安を醸成して、一大不安に陥るのではないかと思う。われわれもまた、この問題を黙つて見のがすわけに行きませんので、一大全組織をあげて、われわれはこの政府政策に闘わざるを得ないというように思うのです。  次に、私が申し上げたいと思いますのは、公共事業に対する吸収ということについて、若干申し上げたいと思うのです。労働大臣の言を借りますと、失業対策法の中にある失業対策事業公共事業というものは、有機的に結びついておるというようなことを言つておられました。その有機的という一つの見解は、どのようなものか知りませんか、失対法のここを探してみても、失業対策事業から公共事業の方へ人を差向けなければならぬというような項目はないというふうだ私は思うのです。現在このようなデフレ政策の中で産業がずつと下向きになつて来て、中小企業がどんどんつぶれて失業者が出ておる。造船、炭鉱その他あらゆる産業が苦しみのどん底の中にある中で、一般土建産業といえども、その例外とは言えないと思うのです。私どもは、四、五日前でしたけれども、全建労の方に会いまして、お宅の方の様子はどうなんだと言つて聞いたところが、もうすでに公共事業なるものもやはり縮小の気味にありまして、手持ち労働者が遊んで困つておる。そこに働いておるところの土建労働者が、まさに失業しようとしているのです。こういう中で、それでは失業対策に働いておるわれわれが訓練を積んで入つて行く余地があるのかどうか、この失業者公共事業吸収するという政府方針に対しましては、これはわれわれ土建労働者は反対しなければならぬと向うの労働組合の人は言つておるわけです。従いまして、施行規則か何かをこのたびかえられたということで、従来ありました公共事業に対する失業者吸収率を一割上げて七割にしたということを私は伺つたのですけれども、従来の実績、この失業者公共事業吸収した実績というものを、労働省の編纂にかかる「労働時報」の十月号で私は見ましたが、昨年度におきましてわずかに五・八%であつた。このような吸収率をこれを七割にしたというその御意図はどのような点にあるのか、あるいは公共事業をどのように拡大し、それを予算化してやつて行くのか、その辺のところが明確にならない限り、公共事業失業者吸収して行くという政府やり方に対しては、われわれとしては首肯できる面はないと思うのです。  このように考えますと、何かわれわれに対しまして体力検定実施して、公共事業の方へ差向けるというのは、実はそうでなくて、われわれ自身失業対策に働く人々からだの格付をやりまして、労働強化作業強化といいますか、そういうものを促進するために、われわれに過重な労働をしいて来る政策のように私は推測できるのです。     〔多賀谷委員長代理退席、池田(清)委員長代理着席〕 もともと私は申し上げておりますけれども失業対策仕事というものは、これはやはり私は社会通念が、皆さんだれでもそう思つておりますように、社会保障費の一環として出ているものなんです。しかもこのようなデフレ政策により当然失業者を見込まなければならないような政策実施するについては、大幅なる社会保障費の増額、大幅の社会保障費の予算の組み方が必要となつて来るのは当然のことだと思うのであります。  私どもは、失業対策仕事の性格は、明らかに社会保障の一環であるというように思つているわけです。ところが実際にはどうかといいますと、年年逐次この作業効果をあげて行くという方向になつて参りまして、そこには応能性賃金がしかれ、きびしい就業規則が適用され、監督制度がだんだん強化されて来まして、まさにその内部を見ますと、いつぱしの何か公共事業をやつているような印象すら世の中の人に与えているというのが、大体失業対策仕事を見られた方の、あるいは携わつた方のだれしもが感ずるところです。そういうふうに年々逐次失業対策内容そのものが公共事業化されて来ている。そのようなところに、さらに体力検定によるからだの格付を施行することによりまして、一かけらの社会保障的の色彩も払拭して、完全な公共事業的なものになつてしまうのじやないか、このようなことを私は心配するのです。従いましてここでひとつ私は、もしこのような政策であるとするならば、私どもはこれに対し反対しなければならない。さらに政府に対してこのようなことに対する考え方をすみやかに撤回されて、ひとつここで猛反省してもらいたい、このように思うのです。  次に、予算のことについて若干申し上げたいと思います。補正予算は組まない、こういうようなお話でしたけれども、大体下半期に相当な失業者が出るであろうということによつて、上半期においてずつと調整して来た、それを数字的に出しましたけれども、十七万程度のものにする、こういう言葉でありました。現在十六万三千程度のものが、おそらくわくとして出ているのじやないかと思うのでありますが、そのような微温的なものでは、この苦しいあぶれは解消できないと思う。現在政府は、二十一日就労ということを方針として出しておりますが、二十一日就労は第二・四半期において破れており、くずれております。私どもは私どもとして、常に私どもの完全就労ということを要求しております。完全就労というのは、日曜日を除いた月のうち二十五日、これを大体私ども生活の、現在の賃金とからみ合せためどとして、二十五日の完全就労を絶えず政府に対して要望して参りました。けれども、屋外労働その他の関係によつて、二十一日就労以上のことは政府としては余地はないとしておりましたが、その二十一日の、いわゆる稼働就労日すら、すでに下まわつて来た。しかも、どんどん職安の窓口に新しい失業者が殺到して来ておりまして、あぶれがふえる一方になつております。このような緊急の場合に、わずか五千か六千のわくをちよつぴりふやすということでは、この急場はとうてい救われない、私はこのように思いますので、何としても補正予算を組むような措置を講じてもらいたい。百十一億の予算は第三・四半期までで食いつぶし、そして第四・四半期には少くとも三十億円程度補正予算はここで組んでもらいたい、このように思うのです。  さらに、これは追加予算ではありませんけれども、私どもとしては、二十五日完全就労を建前としておりまして、現在労働省の出しておる本にもありますが、大体三十七万程度のものは職業安定所に職を求めて窓をたたいております。私どものところに集まつております資料でも、大体四十万近くの人が失業のうき目にさらされて、職安の窓口に来ておるのであります。この四十万の人たちに、ぜひひとつ職を与えてやつて失業対策の中へ吸収してもらいたいと思うのです。従つて、これに伴う予算は四百億程度のものではないかと私は思うのです。百億とか二百億台のものでは、とうていこの四十万の失業者を救うということにはならないから、明年度の予算を編成するにあたりましては、どうしても四百億程度予算がなければならぬと思います。しかし、それも単に予算増額だけでは、現在のシステムから行きますと、とうていこれはできない。ということは補助率の問題であります。御存じの通り、徴税率の低下その他によつて地方財政はまさに困難のどん底にあるのです。たとえば京都、佐賀あたりでは、すでに職員に対して遅配、欠配が出ておるわけです。まさに三分の一の負担すらできなくて、現在の状況では、もう私どもの方では失業対策仕事はできませんと言つて、わくをどんどん返して来ておるわけです。これをただこのままの補助率でもつて予算をいたずらにふやすことは、地方においてまかない切れない面が多々出て来るのではないかと思うのです。従つて、この失業対策事業の本質は、あくまでも失業者吸収救済を目途にした国家事業であるからして、これを全額国庫負担にしてもらいたい。本質的には、そうでありますけれども、当面としては、そのような無理なこともできないと思いますから、せめて、さしあたつて生活保護法並の国庫補助率、すなわち八割程度政府で見てもらいたい、あとの二割は地方自治体でやつてもらいたい。私は別に地方自治体の意見を代表しているものではなくて、このようなことをしなければ、おそらく円滑なる失業対策事業の運営はあり得ないと思いますから、このようなことを申し上げるわけです。  大体以上申し上げましたところで、私の陳述することは尽きておりますけれども、最後に体力検定の問題につきましては、やはり私どもにとつては、まさに重要なものであるし、このことがもしこのまま全国の八千の現場に強硬に実施されるならば、おそらく一大混乱を起すのではないかと思いますから、ひとつここで政府の方も猛反省されて、すみやかにこれを撤回されんことを要望しまして、私の陳述を終ります。
  10. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 失対事業の就労者の体力検定並びに公共事業に失対事業労務者吸収する問題につきましては、本委員会において、労働大臣等に御質問申し上げたのでありますが、なお二、三の点について安定局長の方に聞きたいと思います。     〔池田(清)委員長代理退席、委員長着席〕  こういう強制的な体力検定強制紹介、こういうことを政府がやるようになりましたことは、政府労働政策のあやまち、なお昭和二十九年度の失対事業に対する予算編成についての見通しのあやまちが、こういう問題を起した原因じやないかと考えるのであります。先ほども申し上げたのでありますが、昭和二十九年度の予算におきまして、失対事業費が若干昨年度より増額されましたけれども、その失対事業の対象となる労務者は、三十七万を標準としております。ところが、その後失業者が増大いたしまして、七月末に六十四万になつておるというようなことが、政府から発表されておるのであります。こういう事態になつても、なお政府は、補正予算を組まなくてもやつて行けるというようなことを大臣も答弁しておるのでありますが、われわれはどうしてもその点納得ができないのであります。これは新聞の報じておるところでありますが、七月の二十七日に小笠原大蔵大臣がこういうことを新聞に発表しております。「失業対策費は昨年度よりも五%増の失業を見込んで計上してあり、来年一—三月の分を今年内に支出すれば少なくとも今年末までは切り抜け得ると思う。しかし失業対策費は必ずしも十分とは思つていないから、今冬の通常国会で必要な補正予算を出してもよい。」こういうことを述べておるのであります。なお前の本委員会におきまして、前の植木大蔵政務次官にこの点を質問したのでありますが、植木大蔵政務次官も、補正予算は必至であるということを本委員会に述べておるのであります。大蔵省さえそういう意向を持つておるときに、その直接の責任立場にあります労働省において、補正予算を組まなくてもやつて行けるというようなことは、われわれは納得できないのであります。この点について、労働大臣にただしたのでありますが、労働大臣は、公共事業吸収して行くというようなことを言つておるのでありますが、公共事業の費用は昨年度より二十九年度は非常に減少しております。そこへ持つて来まして、先ごろの実行予算の編成にあたりまして、各省を通じ九十一億も公共事業を減らしておる。こういうような中に失対事業労務者公共事業吸収するということは、何といつても無理があるのではないか。先ほども申し上げましたように、そういうことをしますと、公共事業に働いておる特殊な労働者がおります。土工と一口に言われます専門の労働者がおります。なおそこに潜在失業者といいますか、地方におきましては、農村方面の失業者がたくさんそこに働いております。その中へ無理に失対事業労務者吸収するということになると、そこから今まで働いておりました労働者がはみ出してしまう。これが完全失業者となつて来るのでありまして、そういうことになつて参りますれば、失業問題の解決には全然ならないのではないか、そういうことを私は心配するのであります。私はそういうようなややこしいやり方をしないで、どうしても失業対策費が少い、やつて行けないということなら、労働省といたしましては補正予算を提出して、それによつてできる限りの失業対策事業の完璧を期して行く、そういう行き方が妥当ではないかと考えておるのでありますが、その点について、なお重ねて安定局長にお伺いしたいと思うのであります。
  11. 江下孝

    江下説明員 お答えいたします。失対事業予算は本年度五%増しということで出発したわけでございますが、最近においてこの予算が相当苦しくなつておるということは事実でございます。今のままで参りますと、来年の一—三月ごろには、相当日雇い労働者の数もふえて参るであろうから、従いまして、この予算につきましては、私どもも事務的にはある程度やはり将来増額をしなければならぬというふうには考えております。ただ、大臣のお話になりましたのは、予算補正ということで行くか——増額することはやむを得ないだろうが、補正で行くかあるいは予算の節約分をこちらに振向ける、これはどちらでも結果においては同じだと私は思うのでございますが、そういう趣旨でお話になつたのでございまして、必要ならば当然予算増額するということは、はつきりお話になつておるわけでございます。  それから、公共事業の問題でございます。これは実は非常に技術的にこまかくお話がございましたけれども、私どもの考えといたしましては、前回に御答弁いたしましたように、日雇い労働者の皆さんができるだけ定職を得てもらうということが念願でございます。いつまでも失対労務者として残るよりは、できるだけ定職を得るという方向職業あつせんを進めて参ることが、当然の措置でございます。そこで、前回にも申し上げましたように、公共事業は失対事業より賃金の割もいいわけでございますから、現在及び過去におきましても、職業安定所におきましては、できるだけ失業者公共事業あるいは民間の一般の事業に紹介あつせんすることも、実はこれは努めてやつて来ておるわけでございます。何も今度事新しくやろうと申しておるのじやないのであります  しかも、先ほど申し上げましたように、失対労務者賃金よりはいいわけでございますので、手近に公共事業の就労現場がありますれば、私どもとしまして、当然まずそちらに行かないかということを勧めなくちやならない。  この場合、なぜそれでは体力検定等をやることにいたしましたかと申しますと、従来公共事業安定所があつせんをいたします際には、大体の勘であつせんをする。顔を見て、お前は丈夫そうだから公共事業に行つたらどうかというようなことで、非常に勘的に動いたものでございますから、受入れ主体の方では、どうも安定所の紹介する人には適格者は少い、もう少し公共事業に働くのなら公共事業に働けるようなりつぱな人を、体力的にもりつぱな人を紹介してもらわないと困る、こういうことでございます。そこで、私どもとしましても、これはなかなかむずかしいことではございますけれども、わずかな予算でございましたが、先般大蔵省からいただきました。しかしこれは全国各地で、あらゆる安定所でやるというほどに、大じかけにやるほどまでには、諸般の点から私どもとしてはとてもむずかしいと思いますが、とりあえず公共事業がありますような地帯におきましては、公共事業へのあつせんをいたします際の基準としてこれをやつてみたらと、実はこう考えておるわけでございます。お話のように、公共事業は本年度予算を削減したので、あまり人はもう入らぬのじやないかということでございます。確かに本年度の公共事業費は昨年度よりは減つておりますので、これはそう簡単にはあつせんはできないと思いますが、しかしながら、一人でも二人でもそういう適格者があれば、公共事業の方が賃金も高いし、定職的なものでございますから、そちらの方に私どもとしてはあつせんをして行くということを、当然やらなくてはならぬと思つております。昨日も大臣が申し上げましたように、将来の失業対策といたしまして、失対事業だけについて云々という面は、やはり財政の面から相当困難な面もある、従つて今後の失業対策といたしましては、失業情勢の深刻な地帯を重点的につかみまして、もつと失対事業という従来のわくにとらわれない公共事業的なものを国でどんどん考えて行くという方向に参りたいというお話をされたと私は覚えておりますが、そういう手も実は今後あわせてやりたい、そういたしますれば、既存の公共事業にあつせんをいたしますよりは、新しく着工いたします公共事業へは当然あつせん可能になるというふうに考えるわけでございます。
  12. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 ただいまの局長の御答弁によりますと、公共事業に失対事業の就労者を吸収するということは、あまり期待を持てないようでありまして、今後新たな方面で考えて行くというふりに私はお聞きしたのですが、今の御答弁の中で、失対事業労務者を公共手業に吸収することが、定職につかせるというような御答弁のようにも聞いたのでありますが、そうでありますか。
  13. 江下孝

    江下説明員 まあ失対事業の就労に比べて、定職的なものであるというよに申したつもりでございます。
  14. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 次にお伺いしたいのでありますが、本人の自由意思によらないで強制的に体力検定をする、また強制的に公共事業に就労させる、こういうことは、行政措置でなすべきではなくて、これは当然法の裏づけがなければできないのではないか、そう考えておるのでありますが、何かそこに法の裏づけがあるのでしようか。
  15. 江下孝

    江下説明員 公共職業安定所求職者に就職をあつせんいたします際に、この人ははたしていかなる仕事に適しておるかということを判定いたしますときに必要な手続は、職業安定局長がこれを定めるという施行規則がございます。現在におきましても、たとえば、これは日雇い労務者の方ではございませんが、一般の求職者につきまして、特に新規学校卒業者につきまして、これは体力検定ではございませんが、一定の試験をいたします。たとえば適性検査その他の試験をする、こういう手続も定めております。それから、これは日雇い労働者の皆さんからは、必ずしも歓迎されなかつたのでございますが、日雇い就労者手帳に写真を張りまして、一応その人の正体を明確にしておくという手続も、職業安定局長が定めておるのでございます。従つて、今回のように肉体的な労働に従事せしめます場合に、どういう方法でやるがいいかということにつきましては、これは人権蹂躙になるというようなことはございませんで、労働者の利益のためにやる場合には、当然職業安定局長の定める基準によりまして、安定所は諸般の調査その他をいたすということに相なろうかと考えております。  それから強制的に就労させるというお話でございましたが、強制的には就労させないのでございます。これは緊急失対法をお読み願うとわかりますが、労働者の方に強制的に公共事業に就労せしめるという規定はございません。日本国中どこを探しても、強制的にお前さんは今この仕事につけということを命令する規定はございません。ただ、失対法の中にこういう規定があるのを御承知願いたい。公共事業安定所労働者を紹介いたします場合には、正当な理由がない場合においてはこれを拒んではならない。つまり、求人者の方にはこれを義務づけているわけであります。それほど求人者に対しては強く公共事業労務者の採用を強制しておるわけでございます。そういう意味で、決して労働者の方にいやだと思う公共事業に無理に行けということは申し上げません。ただ私どもは、先ほどから申し上げましたように、労働者の方々の利益のために公共事業にお行きなさいということを申し上げているのでございまして、決して強制的にいやがるのに行けということはありません。憲法違反とのお話もございましたが、憲法違反は職業選択の自由でございますので、自分で自由にどこに行くということは、これは自由でございます。ただ安定所の基本方針といたしましては、安定法の一条、それから十六条に書いてありますように、求職者に対してはできるだけその能力に適した仕事をあつせんしなければならないという規定がございますので、安定所を通じてやりますときは、どうしてもこの方針を私どもとらざるを得ないということに相なるわけであります。
  16. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 強制労働ではないという御説明でありますが、失対事業労務者が、政府方針であります体力検定はいやだ、公共事業で働くのはいやだということになりますと、これは失対事業から排除される、あるいは登録を取消される、そういう制裁がそこに生れて来るのであります。そういうことになると、その職につかなければ、失対事業で働かなければ生活を維持して行けない、そういう立場労働者が、自分の意に反しても、場合によつて公共事業において働かなければならない、いわゆる自分の意思に反してもやらなければならない、また体力検定も受けなければならない、私はそういうことになると思うのです。そうしますなら、それは強制的ではないと言われますけれども、実際問題として、私は強制的になるのではないかと思う。しかも安定法等からさしつかえないというようなことを言われておりますが、私は安定法にそういうことがありましても、そのために本人の自由意思を束縛して生活を奪つてしまうというような、そうした強制的なやり方はできないのではないかと考えております。それでありますから、今局長の言われたように、強制的ではないと言われても、実質的に強制的なことになるのではないか、そういうふうに考えないわけに行かないのでありますが、もう一度その点を御説明願いたいと思います。
  17. 江下孝

    江下説明員 先ほど申し上げましたように、就労は強制しないわけでございます。しかしながら、ある人が自分の能力に適当な職業安定所からあつせんされた、しかも正当な理由がないにもかかわらず、自分はいやだということを言つた場合に、そういう事態を絶えず安定所が認めるといたしますならば、各人かつてな自分の希望通りの職業につくまでは満足しない、極端に申し上げますとそういう結果に相なろうかと思います。安定所が、各人の能力にふさわしい職業にあつせんするということは、当然これは国が機関として設置いたしております以上、その方針にのつとつて求職者もこれに従つていただかなくてはならないということではないかと思います。しかも、公共事業の場合におきましては、先ほどから繰返して申し上げますように、決して私どもは、九州の失対労務者を北海道にやるとか、そういうことは毛頭考えておりません。できるだけその近くで、通勤区域でない場合におきましても家族連れで行ける住宅がある場合、しかも、たとえば賃金の月払いが困るならば、賃金の日払いにしてもらうというような点も十分考えましたあげくの果てに、行かないかということを申し上げるわけでございまして、決してやみくもに昔の動員式なやり方でやろうなんということは、全然私どもは考えておりません。  なお、このことにつきましては、現在各地で云々というお話がございましたけれども、これを本格的にやつておりますところは、まだ一箇所もございません。これはそういう道具や機械を私の方から全然配当いたしておりませんので、やれるはずはございません。ただ、試験的なやり方をやつたところはあるかもしれませんし、あるいは準備段階として、何らかの作文を発表したところもあるかもわかりませんけれども、しかしながら、これはまだ実施もしない、しかもわれわれといたしましては、できるだけ労働者の利益のためにやろうとしておることでございますので、御注意の点は十分私どもも気をつけて参りたいとは思いますけれども労働者のためになることでございますので、この方針でやつて参りたいというふうに考えます。
  18. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 失対事業の就労者が、失対事業の就労についていろいろ係官の方から御指示があつて、それを拒否するというようなことになりますならば、今局長の申されたようなこともわかるのでありますが、失対事業労務者が、政府方針によりまして公共事業の方へ行つて働けといわれたとき、それを拒否したことによつて失対事業から排除するとか、あるいは失対事業で働いてはいけないとか、そういうことは少し行き方が違うのじやないかと考えるのですが、その点どうでしよう。
  19. 江下孝

    江下説明員 失業対策事業の就労者でありましても、非常に体力壮健で、重労働向きの方も相当あられると思う。そういう方々に対しては、できるだけ冒頭に申し上げました緊急失業対策法の線に沿いまして、日雇いとしてではございますけれども公共事業とかあるいは一般の民間事業にあつせんする、それがやはり労働者本人の利益になる。今度失対事業以外には絶対に行かないということを全部の労働者が固執したら、政府はそれだけ全体の失対事業のわくをあくまでも広げて行かなければならないか、一方において公共事業の就労者は人が足りないというような事態がもし起きました場合に、この点はどうなるかということを私どもは考えなければならぬと思います。公共事業も失対事業も、ほとんど全部これは国の税金によつてまかないます国の施設する事業でございますので、国といたしましては、やはり求職者のうち、公共事業向きの人は公共事業行つてもらう、しかもそれの方が労働者の利益になるということでございますから、そちらに行つてもらう。それに向かないような人は、あるいは公共事業が近くにないとか、適当な公共事業吸収策がないという場合は、失業対策の方に向けるということが当然の筋ではないかと考えております。
  20. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 その点は、私と局長はちよつと見解を異にしているようでありまして、これはある程度平行線に行くのではないかと思いますので、質問を先に進めて行きたいと思います。  公共事業吸収される労務者は、賃金の点については、一般の公共事業に充てられておる労働者と同じ賃金になるのかどうか、その点はいかがでございましようか。
  21. 江下孝

    江下説明員 公共事業賃金は大体PW——プリヴェーリング・ウェージと申しまして、その地方でおおむね行われておる賃金でございます。失業対策事業に就労いたします人たち賃金は、それより若干低目にきめなくてはならないという法律の規定に従いまして、一割から二割の間低いというわけでございます。
  22. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 失対事業労務者公共事業吸収されますと、失対事業関係労務者に、それだけの穴があくことになると思うのでありますが、それはどういうふうに御処置いたすことになりますか。
  23. 江下孝

    江下説明員 その分につきましては、新しく求職をいたしました人のうちから、適格の日雇い労働者がありますれば、当然それによつて穴埋めをするということになります。
  24. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 五日の日でありましたか、参考人の陳述によりますと、四国方面それから愛知県、三重県などにおきましては、新しい失業者の登録をさせない、長い間拒否的な態度を安定所はとつているというようなことを述べられたのですが、そういう事業があるのでございますか。またどういう理由でそういうことをおやりになつておるか、お尋ねしたいと思います。
  25. 江下孝

    江下説明員 私の承知いたしておりますのは、意識的に登録を押えておるということはないと思います。もしこれをやつているといたしますれば、あるいは予算的に、たとえば第一・四半期のわくが一応きまりますと、なかなか途中で変更等ができませんので、その期間の就労日数を確保するというつもりで、やつているのかもしれませんけれども、当然適格者がありますれば、これは安定所としては登録しなければならないはずでございます。
  26. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 今の点につきまして、参考人から、何か具体的な事例がありましたら、お述べ願いたいと思います。
  27. 坂本周一

    坂本参考人 私どもの承知いたしている範囲では、現在大阪では、市が財政的に非常に困りまして、失対のわくを返上して来たということですが、そのために月の就労がほとんど十五、六日程度であります。そういうわけで、これもどうかと思いますが、いわゆる空認定という形で、失業保険をほとんど無制限にあぶれた人に出しているという報告を実は受けておりますが、ここでは手帳をほとんど無制限に出しております。それからその逆に、隣にあ出る京都では、ほとんど新規登録を受付けておりません。それから愛知、四国の高松、愛媛あたりでも、ほとんど新規の手帳は出しておらないということが、大体私どもの方の報告として上つておる点であります。
  28. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 ただいま参考人が述べられたように、非常に全国的に違つた取扱いをしておるようでありますが、こういう点について、局長はお聞きになつておるのではありませんか。またこういう事実があるとしますれば、今後どういう御処置をとるお考えでありますか。
  29. 江下孝

    江下説明員 数ある中でありますので、何らかの事由でそういう登録を押えているというのが、実はあるかもしれません。私ども全国の全事業主体を詳しく調べたわけではございませんので、あるかもしれませんが、全般的に申しまして、私ども方針といたしましては、そういう登録を抑制するということはさせていないつもりでございます。従つて、もしそういう事実があるといたしますれば、具体的に調査いたしまして、できるだけそういう措置をしないようにということはいたしたいと思います。
  30. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 もう一点だけお尋ねしたいと思うのであります。御承知のように、政府デフレ政策あるいは緊縮予算のために、非常に地方の自治体が財政的に困窮に陥つて来ております。そのために、この失対事業に対してあまり積極的にやることを非常に敬遠している、そういう傾向が現われて来ているのじやないかと思います。これはもちろん財政窮迫のために、そういうやり方がされている自治体があると思うのでありますが、こういう失対事業の負担にさえも困つているような自治体に対しましては、どういう御処置をとられる御方針でありますか、その点をお聞きしたいと思います。
  31. 江下孝

    江下説明員 お話の通り、その点が今後の失業対策事業の運営の一番の問題点であろうと思つております。私どもといたしましては、この問題は地方財政にも関連いたしますが、しかしながら、地方財政とは一応切り離しまして、失対事業実施の確保という面から、別途いろいろ研究、対案講じたいと思つております。一つの方策といたしましては、特別交付税——これは自治庁におきまして、その年度において特別な事情によりまして地方の財政が苦しくなつたという場合に、それらの市町村に対して特別の交付税を出すわけでございますが、この中に失業対策事業実施状況をも兼ね合せて考慮に入れた上で、この特別交付税の中に入れてもらうということを自治庁と話し合つております。この点は、自治庁の方でもある程度了解をいたしております。いま一つ方法は、補助率の問題でございます。今年度におきまして、補助率を全国的に云々ということはとうてい不可能でございますが、特定の都市、たとえばその都市の規模に比較いたしまして不相応に失業対策事業が大規模に行われておる、あるいは行わざるを得ないというような市町村、その他二、三の基準をつくりまして、それに合致いたします特定の市町村につきましては、特別に補助率を考えて参るということもただいま研究中でございます。いまだ実を結びませんけれども、この二つの方途によつて、何らかのその点に関する打開の道を私どもは講じたいというふうに考えております。
  32. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 今の問題に関連してお尋ねいたしたいと思います。特別交付税、補助率の増額の問題ですが、早くしなければ間に合わないのでありまして、すでに返上しておるということになりますと、今度の臨時国会あるいは通常国会の劈頭にでも出されるのかどうか。この特別交付税は、法律の方ではございませんが、補助率の問題になりますと、法律関係もあるのではないかと思うのでありますが、その点はどいうような状態になつておりますか。
  33. 江下孝

    江下説明員 仰せの通りで、非常にこの点は急いでおるわけであります。同者とも法律の措置は不必要であります。
  34. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 では、先ほどの体力検定の問題に関連して質問いたしたいと思います。失対の不適格者体力検定の結果出て来た場合に、それを生活保護法の対象に置く、こういう話があつた。     〔委員長退席、持永委員長代理着席〕 これは公共事業に強制就労さす以上に、大きな問題を持つと思う。それじ、従来働いておつて、この体力検定の結果失対の不適格者が出るということは、どうも考えられないのですが、これは病気か何かで、安静にしておつても悪いという状態のものであるのかどうか、この点をお聞かせ願いたいと思います。
  35. 江下孝

    江下説明員 失対事業に規定いたします事業は、非常に幅が広いものでございまして、軽労働等も相当入つております。従つて普通のからだの方ならば、大体適格者になるわけであります。しかし就労いたします際にも、相当な年配の方であるとか——それか、現在失対事業実施いたして、四年、五年となつておりますが、年をとりますと衰えも早いものでありますから、あるいはそういう方が出ておるということも若干考えられます。あるいはそのほか特別な事情によつてからだが悪くなつたということで、入りますときには元気であつたけれども、あとでからだが弱くなつたという場合も考えられます。大幅に排除されるということは、この体力基準によつては私はそう考えていません。
  36. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 体力検定の問題が非常に大きな問題になつている一つの要素は、失対の不適格者ができておる。それが失対のわくからはずされる、こういう面も大きいと思う。私はこの際、基準もお聞きしたいのですが、それ以上に、今度の体力検定ではそういう措置はしない、こういう言明をされたらどうか。これは実際問題としてはそうはないと思いますし、さらに私は、そういつた人がもし万々が一あるとしても、むしろそれに適した仕事を探すべきである、そういう措置が必要である、かように考えるのですが、まずこの基準と、さらに今度の体力検定の結果には、失対の不適格者、こういう問題は考えていない、こういうように言明される意思がないかどうか、その点をお聞かせ願いたい。
  37. 江下孝

    江下説明員 失対労務者のうちで、今度の体力検定等で不幸にして合格しなかつたという方が若干出るということは、予想されるのでございますが、しかしながら、前回も申し上げましたように、これらの人たちに対しましては、必ずその人たち生活の安定が、別途の方法で得られるという確証がつかない限り、これをただちに排除するという措置はとらないつもりでございます。  実は、基準を申し上げますと、私どもの方でここに書いておりますこまかい、たとえば体重と身長の比を見るとか、あるいは背筋力と上膊囲、こういうものをある程度測定いたしまして、大体この程度以上は軽労働にも耐え得るという科学的な基準が出るわけであります。この基準にのつとつてやる。しかもこの基準につきましては、労働科学研究所あたりでも詳細検討していただいて、これならば無理のない基準であるという非常に軽い基準なんです。
  38. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 どうもその点が不安なのですが、労働省の方は、もうすでに何パーセントは不適格者だ、こういうようなわくを考えられておるのじやないか、その点は絶対ありませんか。
  39. 江下孝

    江下説明員 そんなことは絶対に考えておりません。
  40. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 この基準の問題も、私はなるべく就労をさす、こういう目的でつくられたのか。それとも医学的に見て、これは無理だ、むしろ医学的な方から見て、より万全を期すといいますか慎重にやる、こういう面ではかなり私は食い違いがあると思う。その基準は、純然たる医学的に見て、幅を広くするという意味でなく——そのこと自体はけつこうなことですが、今度の場合にはそれでは困るのです。その基準がどのようにつくられておるのか、その考え方をお聞かせ願いたい。
  41. 江下孝

    江下説明員 先ほど申し上げましたように、失業対策事業で考えられますいかなる労働にも耐え得ないという人は不合格になる。わかりやすく申し上げますと、そういう基準でありますが、もう少し申し上げますと、軽労働にも耐え得ないという人は合格しないということであります。
  42. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私は失対の不適格者が出るということを、非常に悲しむものでありますが、この者について十分処置を講ぜられるとともに、私はできれば、今度の体力検定というものは非常に問題になつておる際ですから、失対の不適格者は今度は出さないのだ、こういうことを言明していただくと、この問題もかなりスムーズに行くのじやないかと思うのですが、どうも御返事がないようですので、次の問題に進みたい、かように思つております。  それは日雇い失業保険の問題です。百四十円で頭打ちになつてから、もう何年にもなるわけですが、その後賃金は、額としては上りませんでしたが、率としてはかなり上つておると思うのであります。この百四十円は、当時の幾らの平均賃金のときに定められたものであるのか、さらにその後の情勢とにらみあわせて増額する意思はないのかどうか、この点をお聞かせ願いたい。
  43. 江下孝

    江下説明員 賃金の額は、しかと覚えておりませんが、日雇い労働者に対する失業保険法の改正が行われたときの賃金額だと思います。大体これによりますと、百六十円以上の場合と百六十円以下の場合にわけておりますので、大体この辺が平均賃金ではなかつたかと私は思いますが、正確な金額は、いずれまた別途調査いたしまして御返事いたします。  そこで、この額を上げるという問題については、私どもも実は再三検討いたしておるのでございますが、いずれにいたしましても、日雇いの保険金を上げるためには、保険料を上げなくてはならないという問題がございます。先ほど参考人からもお話がございましたように、日雇労働者健康保険の八円の負担というものも、非常に重荷になつておられるという関係からいたしまして、保険料の値上げという点もあわせ考えまして、実は今まで慎重に研究中でございます。別に今のところ、まだどうするという結論は出ておりませんけれども、保険料の値上げの問題と関連いたしまして、今後も研究いたしたいと思います。     〔持永委員長代理退席、井堀委員長代理着席〕
  44. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 この保険は、一般の保険と別途会計ですが。
  45. 江下孝

    江下説明員 そうです。
  46. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 同じ労務者で、ことに非常なみじめな状態にある労務者なんですが、この問題については私は失業保険の会計を一本にして——何も保険料を上げないということではないのですが、そういうようにして、なるべくお互いに社会的な連帯性によつて負担をする、こういう方式にはならないのでしようか。
  47. 江下孝

    江下説明員 失礼いたしました、会計は一本でございます。一本でございまして、一応予算的に日雇いと一般というふうにわけておりますが、もちろんその間において、心要ならば資金融通はできます。
  48. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 これは私はきわめて早急に実施してもらいたいと思う。これを実施することによつて就労日数を下げる、こういう意味ではなくて、それを口実にされると非常に困るわけですけれども、また日雇いの分は日雇いの分で、一応採算の合うようにする。今の段階では、それほど厳密にする必要はないのではなかろうか。保険料でそれを十分まかない得るほど上げる必要はないのではないか。これは相互連帯の責任においてやられるようなことを考えられてはどうか。全然ストップをせよということではございませんが、それに比例して上げる必要はないのではなかろうか。一般の労働者が出しております失業保険の財源を若干食つてもいいじやないか、私はこういうふうに考えるわけです。ことに会計が一本であるならば、当然こういうことが考えられるわけですが、その点については、どういうふうにお考えですか。
  49. 江下孝

    江下説明員 今の予算の立て方が、一応日雇い日雇い、一般は一般ということで、保険経済が別々になつて組み立てられております。一般の保険の方を、日雇いの方で少しぐらいは食つてもいいじやないかというようには、私どもちよつと考えて参るわけには行かぬと考えております。
  50. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 では、会計は一本だけれども経済は別だ、こういうことでございますね。
  51. 江下孝

    江下説明員 そうです。
  52. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そうですが。では、私は根本的にお尋ねしなければならないわけですが、やはり保険経済を一本にしてお考えになつたらどうでしようか。
  53. 江下孝

    江下説明員 お尋ねの趣旨はよくわかりませんが、保険経済を一本といいましても、結局そのもとになる計算は、いたさなければならないわけでございます。日雇いの保険料がどのくらい入る、一般の保険料はどのくらい入る。日雇いの保険金がどのくらいいる、一般の保険金がどのくらい、これを計算しなければなりません。その際、日雇いの方は少し負けでもらおうということは、ちよつと今の予算の立て方では困難ではないかというふうに考えております。
  54. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 予算の立て方は困難だけれども、改訂すればできるでしよう。
  55. 江下孝

    江下説明員 それは保険というものをそういうふうに考えてしまえば、できない相談でもないと思いますけれども、私どもの通常の保険経済の理論からいたしますと、やはり保険というものは、おのおのその保険の経済によつて考えて行く。つまり、一般の保険、失業の保険というものは、おのおのやはり別個に考えて行くということではないかと思います。もう少し具体的にお伺いしませんと趣旨がわかりませんが……。
  56. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私がお尋ねしておるのは、財源的なものをプールにして考えられたらどうか、こういう考え方でございます。
  57. 江下孝

    江下説明員 それは現在でも日雇い失業保険は赤字でございます。赤字の際には、一般の失業保険が黒字になるとそちらの方からカバーする、こういうことになつております。ただ、最初の経済を立てますときには、一応別にして考えておる、こういうことです。
  58. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 経済を立てるときに、一本にしてお立てになつたらどうですか、こういうことでございます。
  59. 江下孝

    江下説明員 それは、従つて日雇いの方はできるだけ保険料を少くして、一般の方からそれを見る、こういうことでございますか——その点については、今後十分検討して参りたいと思つております。
  60. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 先ほどの問題に帰りますけれども、軽労働とおつしやいましたその程度内容を、少しくお聞かせ願いたいと思います。
  61. 江下孝

    江下説明員 失対事業の中で軽労働と申しますと、草をむしる、あるいは掃除をするというのがございます。従つてどもの考えでは、そういう草むしり——もつとも、これは一日中屋外でやるわけですが、そういうこととか、あるいは掃除をするということとかが、一番軽い労働ではないかと考えております。
  62. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 関連して質問したいのですが、そういう屋外の草むしりというような労働に耐えられないような労働者が、現在の失対事業の就労者の中におるのですか。
  63. 江下孝

    江下説明員 全国で三十七万人おりますが、おるかおらないかは、今後調べて行けばわかると思います。現在のところは、私ども何ともこの点につきましては御返事できませんが、一応こういう基準は、労働に従事する以上は、あつてしかるべきものではないかと考えております。
  64. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 現在失対事業をやられて何年になりますか、その間存在しないような労働者を対象にして、こういう基準をつくるということは、その必要はないと考えるのです。三十七万人の中には、もちろん病気で床についておる人もあると思います。あるいはからだの不自由なために、一人歩きもできないような人もあると思うのですが、そういう人が失対事業に登録して就労するというようなことは、あり得ないことだと思うのです。そういうことを対象にして、非常に刺激を与えるようなことを基準の中に明記するということは、賢明なやり方ではないではないか。そういう想像的な、存在することも考えられないような基準をきめておく必要はないのではないか。これは多賀谷委員が御質問になりましたように、除いてはどうかと思うのですが、そういうお考えはございませんか。
  65. 江下孝

    江下説明員 ないということは断言できないのでございまして、これはやはり若干あるかもしれないと思います。  それから、これは何も失対事業から排除することだけをねらいとしておるのではございませんで、もつと建設的な意味の公共事業への就労あつせんということを主眼といたしております。かたがたあわせて、失対事業適格者をこれによつて考えて行くというわけでございます。     〔井堀委員長代理退席、多賀谷委員長代理着席
  66. 井堀繁雄

    ○井堀委員 失業対策で一番問題になるのは、従来の失対事業法それ自身が、今日の失業対策には抜本的な改正を要請されておるのではないかと思うのであります。また運営の上に、いろいろな支障が折り重つておるのではないかと思うのですが、こういう点に対する処置について、何かお考えになつておいでになるかどうか。
  67. 江下孝

    江下説明員 確定的なお話はできないのでありますが、問題点については申し上げられると思います。一つは、現在の失対事業は強制力を持つてない。つまり自治体は、これをやろうとやるまいと自由であるということでごさします。この点に一つ問題がある。それから財政負担を、これは必ずしも法律には直接関係はありませんけれども、今のように市町村長あるいは府県というものが事業主体になつてやるというやり方だけでよろしいかどうか。あるいは必要ならば国がやるという建前も、やれないことはないと思いますが、その点をはつきりさせる必要があるのではないかという点があると思います。それから事業といたしましていろいろ羅列してありますものを、もう少し幅広く考えられないか。つまり、インテリ向きの、あるいは未亡人向きの失業対策事業というものも、もつと考えられないかというような点等があると思います。
  68. 井堀繁雄

    ○井堀委員 さらに、今度当面するであろう失業対策の中で、適正な職業が得られる割合が非常に少くなつて来るので、どうしても失対事業に流れ込んで来る分量と範囲が広くなる。従つて、従来の窓口ではとうてい消化し切れないということは必至だと思う。やはりこういう緊急な大量の失業に対する処置というものは、考えなければならぬ一番大切な窓口だと思う。この点に対する臨機な措置を講ぜられる用意があるかどうか、そういう点に対する御見解を承つておきたい。
  69. 江下孝

    江下説明員 今の窓口というのは、失対事業を扱う役所のことでございますね。——これは私もその通りだと思つております。そこで、実は先般、最近の失業情勢の深刻化にかんがみまして、大蔵省に予備費の要求をいたしまして、——これは大臣からもお話になつたと思いますが、日雇い労働関係だけの専門の出張所を全国に二十箇所置く、それから臨時職員でございますけれども、これを八百名ばかり別途にふやしてもらいまして、これを各府県に配置いたしたのであります。建物につきましても、お説のように、今後いろいろ問題があると思います。どうしてもカバーできないという場合には、当然大蔵省に対して予備費を要求いたしまして、増築その他の手段を講じて参りたいというふうに考えます。
  70. 井堀繁雄

    ○井堀委員 もつと具体的に、今の職業安定所の中の日雇い労務者だけのことに限定してお尋ねいたします。その場合に、従来の設備では、あなたも御指摘になつたように、とうていさばき切れない。第一に、職員の臨時雇いを予定しているようでありますが、ああいう失対事業のあつせんというものについては、かなり技術上の素養がないと、なかなか合理的に行い得ないのではないか。実際われわれが見まして、そういう感じが強くいたすのであります。ですから、日雇い労働者に対する一番大事な問題は、そういうところに実際あるのではないかと思うので、こういう点に大幅な予算の要求をされておることと想像して、さつきお尋ねをしたわけです。予算の額はあとで伺うといたしまして、わずかの臨時雇いを増員する程度でも、日雇い労働者の窓口の受付だけは一応やらなければならぬ。その受付をやるのでも、ただ数が出たからカードを渡せばいいというわけには行くまいと思う。そういう人たちの配置等について、くふうを要すべきものだと思う。こういうことは、今日準備がなければ、とうてい失業に対する対策とはならぬと思うが、まずその点についてお尋ねしたい。
  71. 江下孝

    江下説明員 現在全国に安定所の職員が一万おりますが、そのうち日雇い関係仕事をやつておりますのは三割程度だと思います。そこで、私どもといたしましては、安定所日雇い関係の職員につきましては、特別に人事院と話しまして、一般の職員より号俸を高くいたしております。これは決して満足すべきものではございませんけれども、しかし、非常にめんどうな仕事でございますので、他より給料を高くする。それから平素におきまして、これらの関係職員の教養訓練と申しますか、これらにつきましても、絶えず予算の制約がございますが、集めまして訓練をいたしております。何と申しましても、この仕事はやはり体験を積まないとだめでございまして、そういう点におきまして、今後日雇い労働者がどんどんふえて参るという場合に、私どもも実は非常に心配しておる問題の一つであります。要は、これらの職員にあまり過重な負担をかけてはいけない、この点を私も一番憂慮して、これについての十分な対策を将来においても考えて参りたいというふうに考えております。
  72. 井堀繁雄

    ○井堀委員 このことはぜひ早急に対策を講ぜられて、万遺憾のないようにしてもらいたいと思います。とかく問題になりがちなのは、多数の人が一拳に押し寄せて来る、どうしても仕事が過重になる、つい感情的になつて、そういうところに、摩擦が起つて能率が落ちるというようなことは、ばかにならないと思います。  そういう点で、もう一つお尋ねしておきたいと思いますが、朝の窓口にわれわれが行つて痛感するのですが、これは窓口に押し寄せて来る日雇い労働者の組織がないこと、またあつても、きわめて不完全と言つては言い過ぎかもしれませんが、十分な組織がないわけです。ですから、その組織を活用してというか、組織に協力を求めてやるということは、いろいろな意味において重要だと思うが、そういうような点について、労働省としては何かお考えになつておることがあるかどうか。  もう一つつつ込んでお伺いいたしますと、今までのところ、労働組合に対する一般的な扱い方においては、これは今質問する必要はないと思うのでありますが、今みたいな工場労働者や鉱山あるいはその他の特定の事業場に雇用されておる労働者の組織と違いまして、組織自身が非常に困難なものであり、また組織されても運営上いろいろな困難があることは申すまでもないと思います。     〔多賀谷委員長代理退席、委員長着席〕 そういう点を十分御考慮の上、そういう団体をある程度、育成と言うと言い過ぎかもしれませんが、組織の成長のために何らかの手を打つことが必要ではないか。もつとつつ込んで言いますと、これの組織化について、一方の職員の資質を引上げたり待遇を改善したり増員したり設備を改善したりすることと同様の意味において、そういう組織に対する積極的な働きかけを労働省としてはする必要があるのではないか。もちろん、これは職業紹介の直接の業務ではないかもしれませんが、しかし労働省には他の所管もあつて労働者の組織に対するあつせん協力をしなければならない立場の役所でありますから、こういう点をこの際考えていなければならないのではないかと思うのですが、そういう点を何かお考えになつたことがあるか。ないとすれば、お考えになる御意思があるかどうかということをお伺いいたします。
  73. 江下孝

    江下説明員 私どもも、当然労働者が集まれば組織があるということも考えられますし、労働省立場として、正常な組織ならば、当然これを育成するという意思もあると思います。今さしあたり日雇い労働者の組織化についてどういう考えがあるかと言われましても、さしあたつての私の考えはございませんが、御意見のところは十分拝聴いたしまして、今後労政当局ともこの問題について十分研究をして参りたいと思います。
  74. 井堀繁雄

    ○井堀委員 これはあなたの所管違いかもしれませんし、労政局との連絡等もあろうと思いますが、この問題は非常に重要でありますから、この点に対しては、ひとつ十分考慮を煩わしたいと思います。  労働大臣がお見えでありますから、お尋ねをいたしたいと思いますが、先ほど、労働省予算の中で、失業対策関係した部分だけでも失対局長からはつきりしてもらえぬかというお尋ねをしたのですが、大臣がおいでにならないとというふうに、たいへん渋つておられました。これは全般の予算としては約倍額に近い——昨年の二百五十億程度のものに対して五百十億からの要求をしておることについては、非常に関心を持つておるわけです。特に失業対策の点については、どちらから判断してみても、相当の予算が裏打ちされなければ、対策としてはにつちもさつちも行かぬのじやないかと思われますが、労働省予算編成をめぐる方針がおありだと思いますので、まず失業関係について、この点を詳しく伺いたい。
  75. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 予算を編成いたします前に、各省から予算要求を出すのでございますが、新聞にも出ておりましたが、今年はこの予算要求を合せると、一兆八千億ということになつております。しかし、これは昨年の場合におきましても、やはり予算要求を合せますと一兆九千億になつたのであります。これを財源との見合せで、一兆円そこそこに決定をいたしたのでございます。私どももそれぞれの主務局を通しまして、大蔵省に対し、われわれの希望、要望というものを伝えて、強く折衝いたしておるのでありますが、どうもこの点は、同僚井堀君に申訳ないのでございますけれども予算の編成ということは、これはその前にいろいろ申し上げない慣例になつておりまして、実はこの編成権の問題と私の責任の問題とが、ちよつと触れる点があるように思いますので、はなはだ申訳ございませんが、もう少し時期をお貸し願うようにお願いしたいと思います。
  76. 井堀繁雄

    ○井堀委員 やぼな質問なつたかと思いますが、先日労働大臣の新労働政策に対する決意のほどを伺つて、これがどの程度実現されるかを大きな期待を持つて見守つておるわけです。そういう意味で、さぞかし積極的な予算が組まれておることであろうと思いましてお尋ねをしたわけであります。数字については、総額的な数字が大体明らかにされておるようでありますが、失対事業の場合にすぐ問題になつて来るのは、今も局長にお尋ねしておつたところですが、ことしは、完全失業はもちろんですが、相当の失業者が人口自然増の形によつて生れて来る。さらにデフレのしわ寄せが、失業として相当化けて出て来ることは必至だと思うのです。こういう失業者に対して労働省は、九月九日の参議院の労働委員会で、かなりはつきりした発言をなさつておいでになります。その発言の中でも、失業対策費の増額については、数字は言つておりませんようですが、相当増額するということを明らかに答弁なさつておいでになります。このことは、さつきもお尋ねしておりましたが、労働省の単独予算だけではどうにもならぬかもしれない。地方の自治体の協力もなければ、今日の失対事業を完全に遂行きないことは、われわれ承知しておるわけであります。こういうような関係を持つておりますので、現在の失対事業法では、今当面しておる大きなデフレ下における過剰人口、労働人口をさばくのには少し荷が重い。この点で、もつと失業対策に対しては新しい構えが必要ではないかという考えを私自身が持つておるものでありますから、そういう意味でお尋ねをいたすのであります。こういうものは、数字がなくて議論をしておりますと、抽象論になつてしまう。いかに失対事業を徹底的にとか、あるいは相当増額をいたしますとか言つてみたところでなんでしようから、予算の数字については遠慮いたすことにいたしまして、一体失対事業の対象になる人員はどのくらい押えておいでになるか。この点は明らかにできるだろうと思いますので、これをひとつつておきます。
  77. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 実は九月の二十八日に、失業対策審議会が内閣に対して意見書を出しております。この中におきまして、大体私どもの考えておるような線を出して来ております。特に目新しいと申しますか、表現の違いという程度のものもございまするけれども、特別失業対策事業ということを申しております。これは私ども失業対策事業を行います場合に、時期的に、あるいは地域的に重点的に行う、こういうことのうらはらのようなことでございまするが、やはり何か地方財政負担の関係もございまして、場所によりましては相当機動的な失業対策事業の運営ということを考えてみてもいいのではないかという点では、一致をいたしておるのであります。その行います場合に、ただ漫然と行いますよりも、失業対策にいたしましても、一つ事業でございますし、やはり何といつても、国民の税金をお預かりして、社会均衡の気持から失業対策事業行つておるのでございますから、もとよりこの作業におきましても、無理はいけませんけれども、できるだけ能率的にやつて行くという方針で、必要な失業者吸収をはかるとともに、あるいは民間あるいは公共事業への切りかえという積極的な転換をはかりながら、失業対策事業の機動性ないし弾力性を確保する、こういう考え方で運営して参りたいと私は考えておるのでございます。来年の予算の基礎になる見通しということになりますと、やはり予算金額にすぐ触れて参りますので、この点もいずれ申し上げることでございまするけれども、ただいまのところは、参議院で申したこと以上のことを先般私かここで申し上げておるのでございまするから、その点はひとつ御了承を賜わりたいと考えます。
  78. 井堀繁雄

    ○井堀委員 失業対策については、前段政府労働政策の全般が明らかにされておるのであるし、かたがた産業政策、金融政策、財政その他の諸政策の上から判断して、雇用量が急に増大するという見込みはどこにもない。でありますから、新規労働力として従来からの統計を推測して行けば、一〇〇から一二六くらいの自然増が一方にあるわけです。ですから、自然増がそのまま地上にあふれるとは限らぬでしようけれども、しかし一応数字をつかむものとしては、一方には新規の雇用増大の余地がどこにもなくて、むしろ逆に相当の完全失業者が、すでに失業保険の統計の上からだけでも、あるいは政府失業統計の上だけでも増大している事実と、その勢いは、大体欲目で見ても横ばい、しかし実際はもつとつつ込んで行くのではないか。こういう点は私は労働行政の中に、特に失業対策を考える役所としては、そういうものに対する大体の見通しだけは持つべきではないか、持つておると思うのでありますが、その数字をこの際明らかにされることが、われわれがこういう問題と取組む上に非常に重要な前提条件になると思うのです。私どもの考えでお尋ねをするよりは、労働省がどういう数字を握つておるかということを明らかにされた方が、こういう問題を話し合う上に、むだがないのではないかと思いますので——これは予算の数字とは関係がありませんし、当然労働省は明らかにすることのできる役所でありますから、その点をひとつこの際お答え願いたい。
  79. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 これはちよつと今申し上げたようなことで、少し時期をお待ちいただきませんと、どうもそういう人口の増大、雇用量の見込みということは、私どもの要求している予算内容の一番大きな部分になるのでございまして、その基礎になるものでありますから、もう少しこれは時期をお待ち願いたいと思います。ただ、一般情勢について申し上げますと、あるいは先般申しましたことと重複いたすようになるかもしれませんが、やはり失業情勢というものは、大都市及び炭鉱地帯等の特殊地域においてさらに情勢が悪化するであろう、こういうことは言えると思うのであります。しかし一方におきまして米作に特別の変化のない限りは、農村及びこれを背景とする中小都市においては、さしあたり情勢の変化はなかろうかと思えるのでございますが、やはり現在失業保険を受給しておる方々が受給の切れまする時期、すなわち明年の一月から三月までの間には、かなり数がふえて行くのではなかろうかというふうに考えまして、これにつきましての失業対策事業費については、増額考慮するということでございます。しかし、それに新規財源を見つける、あるいはまた今後増税をするということはちよつと考えられませんので、他の役所であります建設、農林、そういう方面も先般来予算節約をしてくれておりますが、かなり節約の解除を行つておりますので、失業対策費をつかまえますように、そういうものを財源としての対策費の増額を考えておる次第でございます。なお場所によりましては、失業対策事業費地方負担に支障を生じている都市がございますので、市町村に対しましては、自治庁あるいは大蔵省との間に折衝をしておるのでございますが、ある一定基準以上の失業対策事業を行います市町村につきましては、超過した分について補助率を引上げるとか、あるいは特別交付税の増額等の措置を考慮してもらいまして、赤字市町村に対するところの財政負担の問題を解決してあげたい、かように考えておるのでございます。なおこれは一昨日もお話申し上げましたように、鉱害復旧事業のような適切な公共事業については、これを繰上げて支給して行く、こういうことを考えておる次第であります。  さらに、一部に目的税をつくつて、目的税によつて失業対策事業をやつたらどうかという意見も、新聞等にも出ているのでございますが、私はこれはどうも意図するところはわかりますけれども、あまり適切なる方法ではないじやないかと思つている。しかし、それにかわると言いますか、そうした考え方の実現の方途といたしましては、たとえば道路であるとか、あるいは港湾、橋梁というようなものをつくる、そのつくることがその近所にありまする会社、事業場等に非常に利益のあるものとするならば、その補助に見合う分だけを会社が市町村に寄付採納願いたい。その寄付採納願つた分を、市町村の負担分として公共事業失業対策事業に持つて行き、その分の失業者吸収する、こういう行き方をしたらどうかと思つているわけであります。これは少し労働省がやることとしては、むろん一省ではできぬことだと思うのでございますが、やはりアメリカのシビリアン・コーポレーシヨン・コープス——CCCという計画がございます。こうしたような計画にならいまして、われわれ青年層の中から国土建設隊を選抜しまして、国土の保全開発に適当の仕事を遂行していただく。これは建設省でも農林省でもいたしているのでありますが、こういうことを考えてみてはどうかと思うのでありますが、これに対しましての職業訓練、こういうものをやる際には労働省というものも一役買つてもいいじやないか、こういうように思うのであります。ただ漫然と仕事がない。一方には人口が増加する。労働人口はあふれて行く。それじやどうするかと言いますと、これに対する積極的な打開策といたしまして、ただ財政負担をふやして行くというだけでは、国民に対して申訳ないし、国の政策としても、それでは十全とは言われないのではないかと考えますので、こういう何か建設と同時に失業吸収をやつて行くという方法を考えるのが、私どものねらいの一つになつておるのであります。
  80. 井堀繁雄

    ○井堀委員 お考え方、われわれもたいへんけつこうだと思うのですが、私どもも今お漏らしになりました中で、ただいたずらに、出て来る失業者を財政的な力に依存して救済するというやり方は、望ましくないと思うのです。言うまでもなく、日本の失業問題は非常に深刻な、しかも重大な岐路にあると思うのです。できるなら、やはり世界の産業再編成という革命的な新しい計画経済の中に日本も遅れないようにしなければならぬ。そういう意味では、むしろ労働者の再編成と言いますか、労働者の生産性をぐつと高い地位に、労働者の資質を引上げるような意味の失業対策というものが、私はあつてしかるべきだと思う。そういう意味では、今小坂労相のお触れになつた点に対しては、非常な関心を私ども寄せているわけです。それが大がかりなものでなくて、たといごく小規模在のでありましても、将来だんだん育つて行くというものであるならば、思い切つてこの際試みるべきじやないか。ところが、労働省予算の中で、昨年も私は非常に惜しいと思うのですが、労働者の技能養成のためのわずかながらの補助金まで削つてしまつた、ああいう行き方は、私は時代錯誤だと思う。今日あえてもつと進んだ積極的な意図を持つ、何と言つても設備や資源の乏しい、しかも労働力の多分にある日本の場合においては、やはり労働者の高い生産性の上に依存して行く以外には、世界の競争に勝つことはできないとだれも考えられることと思う。こういう意味で、私は失業対策については、あなたがお触れになりましたような、きわめて重要な、これはだれにということでなく、日本全体の立場に立つて、そういう点はごく小規模でもいいのでありますから、ぜひ打出して行くべきじやないか。しかし、それは当面の間には合いかねるので、やはり大波の押し寄せて来る生活の保障をしなければならぬ状態の人口が非常にふえますから、これを生活救済というような、ああいう社会政策的な面でなしに、やはりこれも失業対策の中に幾つかの段階を置かなければならぬ。一方には今いう新しい抜本的な労働再編成といつたような線に見合うような、上は高いところ、それから一番下は今の失対事業の、いわば遊ばしておくよりは、多少でも労働という形において生活費を出そうという考え方、そのまん中に来る失業対策が、今当面している問題じやないか。先ほどあなたがお見えになる前に、職業安定局長に伺つてつたところですが、失対事業法は時代的にずれがある、いろいろな意味で改正を迫られておると思うのです。しかし、いきなりあれをいじるということが適当でないとすれば、そういう段階的なものとして、やはり日本経済にプラスになるような形における労務の提供になることを労働者願つておると思う。また国家の経済の上から考えて、そういうことが期待されなければならぬ。だから、たまたま体力検査等の問題がそういう意味で取上げられて来て、日雇い労働、失対事業の対象の労働じやなくて、今のところ求人と求職者とをつなぎ合せるという職業あつせんよりは、もつと計画性を持つた適所配置の場合でも、公共事業が一方に興つて来て、その公共事業に見合うような労働力にするという意味であるならば、私は労働者の体力を検査するという消極的なものではなく、もつと積極的に労働の再教育をやるといつたようなものが、そこにも必要じやないかと思うのです。そういう意味であなたのお考えを伺つたわけであります。そういうお考えは非常に賛成であります。できるなら、それがすぐ実際政策に役に立つて来ないで、夢であつて失業対策としては意味をなさぬと思うので、予算の裏打ちはどの程度かということをお尋ねしたわけであります。これはそれ以上お尋ねすることは何でしようから、今言つたような点について、失業対策三つぐらいの段階で、この際窓口でも開く必要があるのじやないか。そういう点に対して、小坂構想というものが具体的に出ていなかつたものですから——ちよつと上の方だけ出て来たのですが、もう少しあなたのお考えをお聞かせいただきたいと思う。
  81. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 私企業にも公共事業にも就労の機会を得られない当座の非常にお気の毒な方に対しましては、私どもとして、できるだけの施策をしなければならぬと思つております。その方の予算的な措置については、財政当局の認識を得ることが一番大切なことであります。その点については、努力をいたしておるわけであります。ただ、今も非常に意義深いお話をいただきまして、非常にありがたく思つております。また、私の先ほど申し上げましたことに御共感をいただきまして感謝いたしますが、ただ財政負担をふやして行くということ、一方においてはできるだけ減税をし、また物価も下げて、生活をその意味から楽にしなければならぬ。しかし一方においては、財政支出をしてそうした方々を救わなければならぬということで、二つの相反する命題があるわけでありますから、この財政支出をしただけは、やはりそのときなり、また将来の国土なり国民なりの幸福に寄与するかつこうの労働になるということが、どうしても必要だと思つておるわけであります。最近、移民の問題等もいろいろ言われるのでございますが、従来移民と言われたような形での移民は、どこへ行つて受入れられない、やはり技術を持つた者でなければならぬ。そこで職業補導というものの重要性というものは、非常にウエートが上つて来ておる。職業補導所をあつちこつちにつくつておるわけでございますが、ただいま御指摘のように、工場内の技能養成に対する補助というものが、一千万円以下の予算は打切るという、予算節約の大方針に触れまして、不幸にして実現を見なかつたわけでありますが、この点につきましては、非常に有用なるゆえんを説いておるのでございます。しかし、今までの技能養成に対する補助金というものがどう使われているかと申しますと、非常に分散して使われている。結局全国の工場別に割つてみますと、二万円とか三万円とかいうものが工場に行く。これが技能養成の補助金ということになりますと、結局何となく使われてしまう。ですから、これは出すならば、やはり相当重点的に、この技能養成の補助金というものは、かくかくの技能養成にほんとうに実態的に役に立つたという形で出す方法を講ぜなければならぬと考えておるのでございます。実は最近国土建設に関連いたしまして、あつちこつちの土建業が、盛んに電源開発なり道路工事なりで相当工事が行われております。この技術に対して一つの断層がある、土建の仕事というものは、昔なりに日本にあるわけでございますけれども、最近御承知のように非常に機械力を使う、機械を使つて土建の仕事をするということで、従来からやつてつた土建の仕事との間に、機械を使いこなすという点において少し断層がある。トンネルを掘つて行くにしても、その技術は非常に断層ができて来ている。そういう国土開発技術の技能養成に対する特別の措置につきまして、来年度予算においては、大いに考慮して行きたいと思います。実はこういうことで、話をしている向きもあります。まあそのような点、ちよつと申し上げておきます。
  82. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 先般新聞でも報道され、また当委員会でも大臣から小坂構想なるものをお聞きしたわけですが、そのうち私は二点ほどお伺いいたしたいと思います。  第一点は、外国法の導入についてであります。日本の労働法は、制定当初は必ずしもアメリカ法的な色彩が濃厚であつたとはいえないと思うのであります。組合法は、むしろ大陸法的な考え方のように構成がなつておりまするし、また基準法も、従来ありました法律を全部かき集めて、そしてさらに大体国際労働条約の線に沿つて制定されたようでございます。そこで、その法律の内容あるいはその形式というものは、必ずしも軍から強制されたようにはどうも考えられないようであります。しかし、その後公労法とか、あるいは組合法の中にアメリカ法的な色彩の濃厚なものが入つて来た。これは、確かにそうであろうと思うわけであります。それはともかくといたしまして、外国法を研究されることは非常にけつこうでありますし、また当然しなければならぬと考えるのですが、大臣は何か都合のいいものだけをピック・アップして、その外国法の背景とか生成の歴史とか、あるいはその基盤というものをどうも無視してお考えになつておるのではなかろうかということを危惧するものでございます。たとえば解雇制限法のごときも、大臣が自由党の政調会で説明されたように新聞報道でも見ているし、あるいは当委員会においても、若干その片鱗がうかがわれたわけですが、何か労働者が争議をして、ことにそれが解雇反対の争議をして企業をつぶすということはいけないから、争議を禁止するという意味の方が、むしろ主目的になつているようであります。私が申し上げるまでもなく、この法案は、第一次世界大戦後に、経済復員法の中に入つて来たドイツの解雇制限法というものを源にするものですが、その考え方というものは、企業がなるべく労働者をかかえ込ませるというのが趣旨で、もう少し申し上げますと、不生産的な労働者でも、なるべく収容するというのが、立法の趣旨であつたように見受けられるわけですが、それが、むしろ反対に解雇をしやすくする、解雇反対の闘争を制限するということに使われているのでは、私が昨年委員会で若干述べましたことと、まつたく趣旨がはずれまして、これこそ同じ名でまつたく目的の違う、むしろ労働者を、きつい言葉でいえば、欺くものだと思うわけです。権利争議という話をされましたが——もつとも、ドイツは権利争議というものはなくて、利益争議がおもだという話をされましたけれども、なるほどドイツは、権利争議と利益争議をわけている人もありますし、あるいは個別争議と集団争議とわけている人もあります。それはともかくといたしまして、ないことは事実のようです。しかしアメリカに行きますと、二〇%以上が権利争議で、権利争議が非常に行われている、こういう状態です。また日本にそういう考え方を持つて来ますと、近江絹糸の争議なんというものは、まつたく意味をなさないで、あれは基準法違反だとか、あるいは人権擁護の問題だとかいうことで、そういうことで争議をすることはけしからぬ、こういうことになつて来ます。しかし、あれはずいぶん輿論の支持を受けた争議であろうと思います。そういう争議をしたからこそ、やつと監督署が動き出したり、人権擁護局が動き出したのもまた事実です。ですから、そういう観念をすぐ持つて来られると、非常に私は困ると考えるわけです。そこでお尋ねいたしたいのですが、大臣はこの前何かいろいろおつしやいましたけれども、都合のいいものだけを構想に描かれて、その背景をお考えになつておらない。ドイツでも、失業いたしますと、賃金の八割が八箇月ぐらいもらえる——あるいは九割であつたかもしれませんが、その後は保険でなくて、失業給付で国家が保障して永久にもらえるわけです、次に収容するまで。そういう基盤の上に立つており、また会社が首になつても、組合員にはそのまま置かれている。そういう状態ですから日本ほど解雇というものが労働者に打撃を与えない、こういう制度になつているわけであります。そういう制度を全然考えなくて、解雇反対闘争はけしからぬ、あるいは制限すべきだという考え方は、どうも解せないのであります。一体外国法をいろいろ研究され、あるいはそれを見習つて国内法にされるその態度について、お聞かせ願いたいと思います。
  83. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 まず根本的な考え方でございますが、私はこの労働関係の法律というものが、従来国会において審議せられますときに、非常な険しい対立の中に審議されているという事実、これは何によつて来るかということを、ひそかに考えてみているのでありますが、これはどうも今お話がありましたように、両方ともその自分に都合のいい点を取上げまして、政府が提案者である場合が多かつたのでありますが、政府の方にしても、いきなり自分の都合のいいという考え方を成文化してただちに国会へ投げつけて、これで通るか通らぬか、どうしても通すということをやつたところに、相当問題があつたのではないかと思つております。しかし労働関係の問題というものは、申すまでもなく非常に重要でございまして、国の産業の興廃というものは、やはり労使の平和、産業平和というものが保たれるかどうかにかかつていると私は考えております。そこで、そういう問題につきまして、やはり、常時討論し、批判をし合う、こういう機会が持たれていなければならぬのじやないかというふうに思うのであります。そこで私は、今いろいろ御意見がございましたが、労働関係の法律が与えられたものであるかどうかという点につきますと、若干多賀谷さんと意見を異にしているのでございまして、私は当時の国会というものが一々司令部のオーケーをもらいましてやつておりました時代を、非常に不満を持つて過しておつたものでありますが、この法律のできて参ります経緯について薄々知つておりまして、非常に無理をしいられている点が多かつたと思うのであります。そこで、そういうものはやはりわれわれの目から見て、ほんとうに淡白な気持でお互いに討論していいんじやないか、こういう気持を持つておりますので、率直にこれは——賀谷さんは社会党左派、私は自由党におりますが、それはおのおの党の考え方が違えばこそ、別の党になつている意義があるので、違うわけですが、その違う党の意見というものを出し合つて話し合つて行くうちに、なるほどこういう点は法律的には無理だ、あるいはこういう点は事実問題としてもう少し考え直した方がいいのじやないか、こういう点がだんだん出て来るのじやないかと思つているのであります。そういう意味で、実は構想として、国会の開かれておらない際どうということはないのでありますが、こうやつて委員会を開いていただく機会もあるのでございますから、そういうことを特に公にいたしまして、皆様のお考えの材料にしていただきたい、こういう考え方でおります。もちろんただいま議論に相なりました解雇制限法につきましても、これは日本とドイツの国情は大きく開いております。ことに人口問題が問題になりつつある点が最近西ドイツにおける傾向として見られつつあるのでありますけれども、日本のごとき厖大なる過剰人口を有している国とは、まるで国柄が違う。労使の間の状況におきましても、片方はやはり経営協議会的なものが相当発達している。そこで、解雇の問題につきましても、相当労使間の意見を瀘過している。日本の場合は、会社が配置転換を考えておつても、何でもかんでもいかぬというようなことになつたりするような状況があるわけでありまして、実態的にも相当違うのであります。そこで私はただちに、ドイツでやつているから、何でもかんでも日本でやるのがいいと、こういうところまで飛躍することは、実は私の考えとは距離があるように見ている。ただ、こういう問題は真剣に取上げて、今現に行われているいわゆる権利争議というものは、たとえば会社がどうにも客観的にも賃金の負担に耐えられなくなつた場合に、どうすればいいのか、その間、会社の方は解雇したいと言い、組合は反対だと言つて争議をしておつて、結局その間に何ら国としても得るところがないし、会社自体としても、労使双方において得るところがないという争議を何とか解決する道はないか、ということを考える一つの問題の提起の仕方として、こういうことを御審議を願うことは意義あることと、かように考えているわけであります。
  84. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 今考え方を聞いたわけでありまして、一応素材にする、こういう意味でありますから、出て来た問題について、さらにわれわれ意見を述べたいと思います。ドイツも、やはり個々の解雇について、その社会的な妥当性があるかどうかという点については、確かに若干の成功を見ているかもしれません。しかしながら大量解雇についても、私も統計を持つておりますけれども、事実かなりの数に上つております。しかし、ドイツはデフレの経験を経ていないので、はたしてデフレの状態において労働者も一応納得するようになり得るかどうか、私は大きな疑問がまだあるのじやないかというように考えるわけです。経営参加についても、やはり同じことが言い得ると思う。しかし、それは法案として出て来ましたときに審議したいと思つております。  もう一つは、実は先般労働大臣が、どうも日本では拘束八時間で、実際法律も実働八時間になつているのだけれども、ほとんど拘束八時間だ、何とかそれを実働八時間に直したいと、こういうような記事を新聞でも見、また本委員会でも聞いたわけです。私は、新聞を見ましたときに、大臣がどういう意図でこういうことを発表されておるのか、どうも解せなかつたわけです。一体これをどうして大臣が思うようになされるのか、どうも具体的な手続としてもわからなかつたわけです。基準法は、私が申し上げるまでもなく、これは最低の基準でありまして、これ以上は、労働者あるいは資本家がお互いに労働条件を改善して、さらにその向上をはかるように努めなければならない、こういうことは一条の二項にもうたつておるところであります。そこで拘束八時間というものが現在ほとんどの工場において実施されておるというのは、これは必ずしも戦後そういうふうになつたとは限らないのであります。戦争中は別ですけれども、一応戦争の前の状態を見ますと、たいていの工場でやはり拘束八時間でした。あるいはそれ以上の会社もあつたかもしれませんが、大体そうでした。戦後さらに、そういうものが行われていない工場においては、拘束八時間制の確立ということで、八時間になつたのでありまして、むしろその後に基準法というものができたのであります。ですから、そういう経緯から考えましても、どうも大臣がおつしやつているのはおかしい。法律が八時間になつておる、しかもそれは実働である。だから拘束八時間は実働八時間に直すべきた、こうおつしやるとすれば、むしろ第一条の趣旨に反するわけで、その点、どうも私は不可解しごくで、いまだに疑問を持つておるわけです。  それからもう一つは、最近規則を改正されたばかりでありまして、三十人未満の事業所も九時間——事業所といいましても、ことに商店ですが、九時間あるいは一週五十四時間になつたのですから、そういうことをしておいて、さらにまたやつぎばやにそういう発表をされるということは、これはどうも基準法というものはだんだん後退するから、守らなくてもいいのじやないかという感じを非常に与えるものであり、国際的な影響もあろうと思うのですが、この点について大臣の真意を承りたいと思います。
  85. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 私は、基準法というものはけつこうな法律であると思うのでありますけれども、どうも世間に、基準法は非常に国情に合わないという意見が強いわけであります。そこで、なぜそういう議論が出るかということについて考えてみますと、工業も非工業も、おしなべて一本にして基準法にしておるというところに相当問題がある。これは労働の質が違うのでありますから、一本の法律で労働基準を縛るということ自体に、問題があると思います。しかし、そういうことが一番問題であるにかかわらず、要するに基準法の拘束八時間ということがいかぬのだ、こういうことを一般に言う人が多い。そこで、基準法というものは、そうではなくて、労働というものは使用者の指揮に従つて行う時間を労働時間というので、それが実働八時間ということになつておるのだ。しかし、そのやり方について、たとえば炭鉱の場合であれば、どこからどこまでを実働と見るかということは、協定によつてつておるので、そういう点には法律自体にはあまり問題がないのだということを、こういう機会に知らしめるということに一つ意味があると思います。そうような気持で申しておるのでありまして、何と言いますか、国際的に反響があるということを言う方も一部ございますけれども、またそれは当然であるというふうに、日本におります外国の出先機関は思つておりますので、その点はあまり問題にして考えぬでもよろしいというふうに考えておる次第であります。
  86. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 大臣が小坂労政の構想の中に、今おつしやつたようなことを言われるというのは、私どうも解せないのです。あるいはそういう話を聞きに来たり、いろいろ教育する場合に、そういうことを言うのならよろしいのですけれども、構想の中に、一つの項目としておつしやるということは、これは非常に誤解を招くと思う。また大臣が、あるいは労働省でもいいですが、労働省の方で、いや実は基準法というものは実働八時間だから、拘束八時間は実働八時間に直してもいいぞと、こうおつしやれば、これは一条二項の精神に当然違反して来ると思うのです。要するに、この基準法の一条二項というものは、これは最低なんだから「この基準理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない。」こう書いてある。ですから、基準法というものが実働八時間だから、拘束八時間ば実働八時間にしてもいいのだ、こうおつしやれば、これはまさに第一条第二項を大臣みずから踏みにじられておる、かように解せざるを得ないわけです。  さらに時間がございませんから、続いて今の工場と商店の問題に触れて行きたいと思いますが、イギリスの商店法でも、何も何時から開店して、何時に閉店する、こういう式には書いていない。日本に戦争中、あるいは戦争少し前からございました商店法は、何時まででそれ以後は商売してはならぬ、こういうふうに書いてある。こうなりますと、これはいい、悪いは別として、守られているか守られていないかということは、一目瞭然すぐわかるわけです。しかしイギリスの場合はそうでなくて、工場法との差は、ただ婦人のことが規定されていないというにすぎないのでありまして、ほかはあまり大した違いはない。それで、大臣が考えられておるような状態でもなく、またイギリスの実態というものが、大臣御存じの通り旅行者泣かせというぐらい、店は夜になると締まつている。日曜日はほとんど店は明けない、こういう形になつておる。ですから、その基盤と国情の情勢が非常に違うと私は思うのです。まあ思いつきもけつこうですけれども、あまり構想として、思いつきを表面に出されると、非常な誤解を生みはしないか、これは私大臣のために惜しむものです。ことにさつきの問題は、どう考えても大臣に似合わないような発言ではないか、こう思うのですが、もう一度御答弁を願いたいと思います。
  87. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 今申したように、工場、商店一本のもので縛るということは、実はいずれの国でもされていないと私は思つておりますが、そういう趣旨で基準法が悪い、悪いと盛んに言つておる者が多いという事態から、それはこうしたら基準法はちやんと守れるのだ、だれが見ても、これは日本人がつくつた法律だから、日本では守らなければいけないのだというふうに持つて行く方が、私は日本全体の政治的な信頼感といいますか、政治の底に流れるものの安心感といいますか、そういうものに対しても非常にいい効果があると、そう思つておるわけであります。さて二つにわけた場合に、基準法の内容を工場基準法、商店基準法というふうにわけて行くかという問題になりますと、これにつきましては、まだ実は具体的に問題として提起しておらないわけでありますが、そういう問題につきましては、またそのときにいろいろ御議論を承らしていただきます。
  88. 亀井光

    ○亀井説明員 第一点の問題でありますが、この考え方は、基準法三十八条に、言うまでもなく実働八時間の規定がある。従いまして、御指摘の通りに、従来労使双方できめられておる拘束八時間というものが、ただちに法律の規定によつて、それを実施することによつて条件が低下されるということは、基準法の第一条二項の望まざるところであります。但し、問題として起りますのは、実働八時間という考え方の中に、いろいろ疑問の点がある。たとえば就労を始めます前の準備行動、あるいは就労が済みました後の跡始末、具体的に申しますと、清掃、機械の手入れ、修繕、こういうようなものが実働の中に入るか入らないか、こういう問題が具体的な問題として起る。もちろんノーワーク・ノーペイの原則で、実働八時間の中で、労働に従事しなかつた時間については賃金を差引く、これは当然のことでございます。そこでこれらのいろいろな問題、賃金の支払いとの関連において、それらの準備の時間なりあるいは跡始末の時間、こういうものが実働であるかどうかということを考える際に、われわれとして正常な労務の提供というのがどういう状態においてなされるときに初めて実働時間の計算の開始になるのか、あるいはその終了になるのかという問題が起つて参ります。そこで、労務の正常な提供というのは、その機械なら機械を正常に動かし得る状態においておくこと、これは労働者の義務であるということも一つの考え方なんです。そうなりますと、機械に油を差したり修繕をして、たとえば就業規則によりまして午前八時から就業開始、実働が始まるとすれば、その前におけるそういう準備行為というものは、労働者が正常な労務を提供するための当然の義務ではないか。そうすると、これは使用者の負担においてなされるべきではなくて、労働者の負担においてなされるべきであるという考え方も成り立つ、そういう問題も、やはり実働八時間というものにからんで、いろいろ問題が起きておる。そういうものを明確化したらどうかという考え方であります。
  89. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 すでに明確なものを、とんでもない解釈をされようとしておる。私は大臣の考え方と局長の考え方は、必ずしも一致していないと思うのですが、私が質問をいたし、大臣が答弁をされたことと、局長が今補足されたこととは、かなり違う問題であると思う。しかし、それはともかくとして、今の局長の言は、あなたはたいへんな解釈を今なさろうとしておる。実働八時間というのを、当然その工場あるいは工場の作業能率の向上のためにやつておる。しかも、それは当然労働者責任である、こういうような考え方自体が、基準法を法律改正しなくても、あなたがそういう解釈をされて、そしてこれには実働ということはどこにも書いてないのだということをおつしやるならば、私はこれは行政解釈としてもむしろ行き過ぎである、かように考える。私は今はその考え方の一端、どこかの心のすみにある一端を述べられたと思つて、あまり追究したくないのですけれども、そういう考え方で、実は大臣のおつしやつておるのはそういう意味だというのならば、これはまるつきり大臣の話とは違うし、われわれは質問を試みなければならぬわけですが、一応もう一度、法律を改正しないでそういう解釈で行こうという考えがあるのかどうか、お聞かせ願いたい。
  90. 亀井光

    ○亀井説明員 拘束八時間と実働八時間という問題、これで問題になりますのは、拘束八時間が悪いのだということを、何も私らは言おうとしているわけじやないのです。ただ拘束八時間というものの中に含まれる実働の時間として、どういう時間というものが含まれておるか、あるいは実働八時間というものの中に、一体どういう実働の時間というものが含まれるのかということについて、もう少し明確に考えて行こうという考え方だけでございます。そこで、従来もいろいろこの問題について質問が投げ出されて、われわれ解釈上困難を生じた点もあるわけでございます。そこで、そういう過去のいろいろな解釈例規等をもう一度この際に考えてみて、実情に合わぬと申しますか、解釈の間違い等がありますればそれは是正して行こう、そういう考え方だけでございます。今私が申しましたことは、そういう考え方があるということを申し上げたのでございまして、何もそういうふうに解釈し、あるいはそういうふうに規則を改正するという趣旨のことを申し上げたわけではありません。
  91. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 時間がないようでありますので、最後に一言だけお尋ねいたしたいのですが、現在の法律でも、それほど違反をしなくても、私は十分商店なんかもやつて行けると思うのです。それで、私たちは反対をいたしましたけれども、三十人未満の商店には九時間と五十四時間、こういうことになつておる。さらにそのほかに三十六条の適用もあるわけですから、こういうことを、教育するわけではありませんけれども、十分御存じの通りである。ですから、そんなに法律をいじらなくても、商店が困るようなことはないのです。すでは過去においてやつて来ておりますし、また今からでも、私はこれを違反をしなければ企業は倒れるというようなことはないと思うのです。かようにないように、ないように法律もできておりますし、またその後施行規則も改正になつておる。それをいまさら工業と非工業とを分離する、こういう考え方は、ひとつおやめになつたらどうかと思うわけですが、再度それだけをお尋ねしたいと思います。
  92. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 多賀谷君の仰せのように、私も、基準法が悪い悪いといわれるのは、この法律自体というよりも、施行令初め厖大な関係諸規則がついておる、これにかなりの問題があると思うのであります。この規則の制定等は、もちろん国会も経ませんで、行政府と司令部の担当官との間でできたもので、かなり国情を無視し、一般的には適用しがたい規則があると思うのです。中には法律に根拠のないものまであるというような点が問題であつて、これはまたじつくり整理をしたい、また若干して来ておる分もあるわけでありますが、そういう点につきましては、だんだん改めつつあるのでございます。しかし、今一般的に基準法が困るといわれる、あるいは基準法なんか守つてつたのではとてもやつて行かれないというような声すら、かなりの部門に聞かれるのでありますが、これはどうも基準法の施行規則をいじる前の、実態から来ている点が相当多いように思うのであります。私は、いわばそうしたものを十分整理いたしまして、これならいいと思われるものに、ここは政治感覚の問題でございまするが、すぱつと商店、工場をわけて、これは日本人の法律だということにすることが、有用な働きをするのではないかというふうに思つておるのであります。しかしこれについては、いろいろ御議論もございまするから、これはなおよく研究して行きたいと思います。
  93. 赤松勇

  94. 島上善五郎

    ○島上委員 時間がないそうですから、簡単に日鋼室蘭の争議の二とに関して伺いますが、遂に昨日相当多数の負傷者を出すに至り、しかもこれは警察官がピケット・ラインを排除する際に、排除しようとしてそこにおつた者をなぐつたという事件であります。私どもは、そういうことがあつてはならぬと考えまして、かつて武装警官を五百名も六百名も動員して警察権力をもつて争議に介入しようとした事実がありました際に、警告を発しました。そうすると、武装警官は一たん引揚げまして、その後は警察権力が介入するようなことが一時なかつたわけです。そうして正常な状態において労使の自主的な団交によつて、遠からない将来に解決するものと期待しておりましたところ、昨日遂に、新聞の報道するところによりますれば、ピケット・ラインを張つておる第一組合側に対して、警察官がこれをなぐつた、そして十六人もけがをさした、さらに一人検束した、そしてピケツト・ラインを警察権力をもつて排除して第二組合員を工場の中に導き入れた、こういうことです。実は本日争議の当事者がこちらに来るはずでしたけれども、飛行機の都合で来れませんので、私は新聞報道を根拠にして伺うわけですが、このようにピケット・ラインを張るということは、労働組合の争議行為の許された一つの行動だとわれわれは考えております。このピケツト・ラインを警察権力をもつて排除して、張つている者をなぐつてしまう、こういうような事実に対して、労働大臣はどのようにお考えになつておるか、お聞きしたいと思います。
  95. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 日鋼室蘭の問題につきましては、非常に私どもも心配をいたしておりまするか、実は今お話のような実情については、報告を受けておりませんので、また報告を受けました後におきまして、お答えを申し上げるようにしたいと思います。
  96. 島上善五郎

    ○島上委員 昨日の実情については、詳しく報告を受けていないということは、私どもも了解しますし、私自身も今言つたような事情で、直接当事者から真相を聞くことはできませんでした。しかし、それはそれでいいとしましても、その前にもすでにそういう介入があつた。日は私ははつきり記憶しておりませんが、一ぺんこういうことがあつた。ピケツト・ラインを張つているとき、これを排除して第二組合の幹部を工場の中に導き入れたことがある。私ども抗議に行つたときは、導き入れたのじやなくて、工場の中におつた警察官が出るからそのピケツト・ラインをどけ、こう言つてどかしたのだ、そのときに第二組合の幹部がそこから入つたのだ、こう言つておりますけれども、これは偶然にそういうふうになつたのじやなくて、ちやんとしめし合せてやつたものと私ども解釈されるのです。警察官が外に出るからそこをどけといつてピケツト・ラインをどかしておいて、そのピケット・ラインが開かれたとたんに第二組合の幹部がすつと入つてつた、こういうことが一ぺんあつた。それからそのあとですけれども、炭労の一幹部がなぐられまして、かなりの重傷を負つた事件がありますが、そのときなどは警察官が近くにおつた。近くにおつて、ピケツト・ラインを張つている側よりも、破ろうとする側の方が優勢であつた。そのときには、優勢な第二組合が暴力をもつてなぐつて突破して行つたが、そばにおつて何も知らぬ顔をしておつた。これではまさに第二組合に味方しておると言わざるを得ない。私どもは、第二組合がいいとか悪いとかいう議論は別としまして、警察権力というものは、こういうふうに労働組合の争議に介入して片方に味方するとか、片方を弾圧するとかいうことをすべきではないと思います。少くとも、以前のその事件については御報告があつたと思いますが、こういうふうなことに対して、大臣はどのようにお考えになりますか。
  97. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 ピケの合法性の限界というのは、申すまでもありませんが、平和的な説得の範囲ということであります。その平和的な説得の範囲を越えて暴行が行われたというふうな場合に警察官がこれをとめるというような立場は、これはそれをとりしずめるという気持でやつたのだろうと思います。警察官がゆえなくその争議に介入して、あくまで一方の味方をするというふうなことはやるべきではない、こういうふうに思います。
  98. 赤松勇

    赤松委員長 島上君、近時警察権が労働争議に介入する傾向が全国各地に現われて来ておることは、非常に遺憾であります。きのうの室蘭の日鋼の問題も、新聞の報道だけしか知らないのですが、相当やはり大きな問題だと思う。現に明日から法務委員会におきましても、実情調査をやつて、そうしてこの問題を徹底的に追究するということを言つておりました。従つて労働委員会としましても、当然この問題は、労働争議に警察権が介入したのではないかという疑いが十分ございまするので、この点につきましても、ひとつ労働省側で至急現地のいろいろな模様につきまして御調査をお願いして、本委員会に御報告を願う。またわれわれとしましても、でき得る限り真実を究明して万遺憾なきを期したい、こういうふうに考えておりまするので、これはひとつ労働省の方で可及的にすみやかに、労働者の権利を守るという立場から調査をしてもらつて、本委員会報告をしてもらう。それによつてども再度この問題を取上げて行きたい、こういうふうに考えておりますので、さようひとつ御了承をお願いしたいと思うのです。  それでは次回の開会につきましては来る十一月八日、九日、十日の三日間、いずれも午前十時より開会いたします。但しこの期間前に緊急の問題がありました場合には、公報をもつて開会をお知らせいたしますから御了承を願います。  本日はこれをもつて散会いたします。     午後三時三十七分散会