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坂本参考人 私はこれから、一昨日本
委員会におきまして、
労働大臣並びに
職業安定局長の御
発言によりまして、
失業対策一般並びに
体力検定の問題について明らかにされた点がありますから、それらについて、これに対する私
どもの
意図をさらに具体的に明らかにして行きたいと思うのであります。第一の問題は、
体力検定でありますけれ
ども、本
委員会における
安定局長のお
言葉を借りますと、
強制紹介という
言葉は私はいやだから使わないけれ
ども、いわゆるあつせんというような形で、本質的には
強制紹介をやりたい、このように私は聞いたのです。その
理由とするところは、
職業安定法の
建前はいわゆる
適格紹介である、つまりそろ
ばんの達者な者はそろ
ばんを必要とする部署へつけてやる。
〔
委員長退席、
多賀谷委員長代理着席〕
こういうような
適格紹介の
建前をとるために、失対の場合も、やはり同じく
体力検定の
実施によ
つて、それに
合格の判を押された人は
公共事業に行けるということが明らかでありますから、そちらの方へひ
とつ行つてもらいたい、すなわちこれが
適格紹介である、こういうことを申されたわけでありますが、私
どもといたしましては、そのようなことは、明らかに
憲法に保障されているわれわれの
職業選択の自由をそこなうものであると思うのです。何となれば、
失業対策の
仕事の中で、それをわれわれの定職であると考えて就労している人は一人もないのです。それぞれ働く能力を持ち、あるいは技能を備えた
人々が、
失業といううき目にさらされまして、
求職のために
安定所の窓口をたたいているわけです。その証拠には、われわれが失対の
適格者となる場合に、第一に必要なのは、いわゆる
求職票という票でありまして、それにはその人間の前歴あるいは経歴、学歴が書き込まれまして、しかしかの
仕事がほしいのだという、明らかに
求職の
意思表示をしているわけです。
従つて、われわれの場合は、われわれがその人に適した
仕事につけてもらうということ、これがわれわれのいわゆる
失業者としての本質的な要求なんです。ところが、こういう
人々に対しまして、強制的に
体力検定をやりまして、そうして好むと好まざるとにかかわらず、
からだがいいからひ
とつ公共事業の方へまわ
つてくれというのでは、われわれは首肯できないわけです。これは明らかにわれわれの
職業の
選択の自由を奪うものであるというふうに考えるのです。こういうことを前提にしまして、
失業者である
失業対策に働く
人々の全部に対しまして、
体力検定を
実施するという
意図が
はつきりされたわけです。
次に、
からだの弱い人には、これもやはりひ
とつやめてもらう、無理な形ではとは言いましたけれ
ども、最終的にはやはり
生活保護の方へまわ
つてもらうのだというふうな
政府の
意図のようでしたけれ
ども、しからば、
生活保護の方の
受入れの方はどうかということにつきましては、何らの
方法がない、具体的には何らの
対策がない、こういうことであります。このようなことでは、
はつきりここでわかることは、われわれを殺すための、人殺しのための
政策であるというふうに感ぜざるを得ないのです。もしもこのような無理な
政策をここであえて全国的に強行するならば、ただでさえ社会不安を心配されているこの世の中に、さらに社会不安の増大に拍車をかけるという結果を引起すのではないか。現在私
どもの方にも、昨日あるいは本日にかけまして、続々と問合せが参
つておりますが、それらによりましても、明らかに
全国各地では、この問題に真剣に取組んでおります。
島根あたりでは、もう
地方を中心にした全
労働者が立ち上
つたために、
職業安定所では手の
つけようがないから、
労働組合と話合いがつくまでは
体力検定を一時中止する、こうい
つて来ておるわけです。これをこのままやるならば、私はものすごい社会不安を醸成して、一大不安に陥るのではないかと思う。われわれもまた、この問題を黙
つて見のがすわけに行きませんので、一大全組織をあげて、われわれはこの
政府の
政策に闘わざるを得ないというように思うのです。
次に、私が申し上げたいと思いますのは、
公共事業に対する
吸収ということについて、若干申し上げたいと思うのです。
労働大臣の言を借りますと、
失業対策法の中にある
失業対策事業と
公共事業というものは、有機的に結びついておるというようなことを言
つておられました。その有機的という
一つの見解は、どのようなものか知りませんか、失対法のここを探してみても、
失業対策事業から
公共事業の方へ人を差向けなければならぬというような項目はないというふうだ私は思うのです。現在このような
デフレ政策の中で
産業がずつと下向きにな
つて来て、
中小企業がどんどんつぶれて
失業者が出ておる。造船、炭鉱その他あらゆる
産業が苦しみのどん底の中にある中で、
一般土建産業といえ
ども、その例外とは言えないと思うのです。私
どもは、四、五日前でしたけれ
ども、全
建労の方に会いまして、お宅の方の
様子はどうなんだと言
つて聞いたところが、もうすでに
公共事業なるものもやはり縮小の気味にありまして、
手持ち労働者が遊んで困
つておる。そこに働いておるところの
土建労働者が、まさに
失業しようとしているのです。こういう中で、それでは
失業対策に働いておるわれわれが訓練を積んで入
つて行く余地があるのかどうか、この
失業者を
公共事業に
吸収するという
政府の
方針に対しましては、これはわれわれ
土建労働者は反対しなければならぬと向うの
労働組合の人は言
つておるわけです。従いまして、
施行規則か何かをこのたびかえられたということで、従来ありました
公共事業に対する
失業者の
吸収率を一割上げて七割にしたということを私は
伺つたのですけれ
ども、従来の
実績、この
失業者を
公共事業に
吸収した
実績というものを、
労働省の編纂にかかる「
労働時報」の十月号で私は見ましたが、昨年度におきましてわずかに五・八%であ
つた。このような
吸収率をこれを七割にしたというその御
意図はどのような点にあるのか、あるいは
公共事業をどのように拡大し、それを
予算化してや
つて行くのか、その辺のところが明確にならない限り、
公共事業に
失業者を
吸収して行くという
政府の
やり方に対しては、われわれとしては首肯できる面はないと思うのです。
このように考えますと、何かわれわれに対しまして
体力検定を
実施して、
公共事業の方へ差向けるというのは、実はそうでなくて、われわれ
自身、
失業対策に働く
人々に
からだの格付をやりまして、
労働強化、
作業強化といいますか、そういうものを促進するために、われわれに過重な
労働をしいて来る
政策のように私は推測できるのです。
〔
多賀谷委員長代理退席、池田(清)
委員長代理着席〕
もともと私は申し上げておりますけれ
ども、
失業対策の
仕事というものは、これはやはり私は社会通念が、皆さんだれでもそう思
つておりますように、社会保障費の一環として出ているものなんです。しかもこのような
デフレ政策により当然
失業者を見込まなければならないような
政策を
実施するについては、大幅なる社会保障費の
増額、大幅の社会保障費の
予算の組み方が必要とな
つて来るのは当然のことだと思うのであります。
私
どもは、
失業対策の
仕事の性格は、明らかに社会保障の一環であるというように思
つているわけです。ところが実際にはどうかといいますと、年年逐次この
作業効果をあげて行くという
方向にな
つて参りまして、そこには応能性
賃金がしかれ、きびしい就業規則が適用され、
監督制度がだんだん強化されて来まして、まさにその内部を見ますと、いつぱしの何か
公共事業をや
つているような印象すら世の中の人に与えているというのが、大体
失業対策の
仕事を見られた方の、あるいは携わ
つた方のだれしもが感ずるところです。そういうふうに年々逐次
失業対策の
内容そのものが
公共事業化されて来ている。そのようなところに、さらに
体力検定による
からだの格付を施行することによりまして、一かけらの社会保障的の色彩も払拭して、完全な
公共事業的なものにな
つてしまうのじやないか、このようなことを私は心配するのです。従いましてここでひ
とつ私は、もしこのような
政策であるとするならば、私
どもはこれに対し反対しなければならない。さらに
政府に対してこのようなことに対する考え方をすみやかに撤回されて、ひ
とつここで猛反省してもらいたい、このように思うのです。
次に、
予算のことについて若干申し上げたいと思います。
補正予算は組まない、こういうようなお話でしたけれ
ども、大体下半期に相当な
失業者が出るであろうということによ
つて、上半期においてずつと調整して来た、それを数字的に出しましたけれ
ども、十七万
程度のものにする、こういう
言葉でありました。現在十六万三千
程度のものが、おそらくわくとして出ているのじやないかと思うのでありますが、そのような微温的なものでは、この苦しいあぶれは解消できないと思う。現在
政府は、二十一日就労ということを
方針として出しておりますが、二十一日就労は第二・四半期において破れており、くずれております。私
どもは私
どもとして、常に私
どもの完全就労ということを要求しております。完全就労というのは、日曜日を除いた月のうち二十五日、これを大体私
どもの
生活の、現在の
賃金とからみ合せためどとして、二十五日の完全就労を絶えず
政府に対して要望して参りました。けれ
ども、屋外
労働その他の
関係によ
つて、二十一日就労以上のことは
政府としては余地はないとしておりましたが、その二十一日の、いわゆる稼働就労日すら、すでに下まわ
つて来た。しかも、どんどん職安の窓口に新しい
失業者が殺到して来ておりまして、あぶれがふえる一方にな
つております。このような緊急の場合に、わずか五千か六千のわくをちよつぴりふやすということでは、この急場はとうてい救われない、私はこのように思いますので、何としても
補正予算を組むような措置を講じてもらいたい。百十一億の
予算は第三・四半期までで食いつぶし、そして第四・四半期には少くとも三十億円
程度の
補正予算はここで組んでもらいたい、このように思うのです。
さらに、これは追加
予算ではありませんけれ
ども、私
どもとしては、二十五日完全就労を
建前としておりまして、現在
労働省の出しておる本にもありますが、大体三十七万
程度のものは
職業安定所に職を求めて窓をたたいております。私
どものところに集ま
つております資料でも、大体四十万近くの人が
失業のうき目にさらされて、職安の窓口に来ておるのであります。この四十万の
人たちに、ぜひひ
とつ職を与えてや
つて、
失業対策の中へ
吸収してもらいたいと思うのです。
従つて、これに伴う
予算は四百億
程度のものではないかと私は思うのです。百億とか二百億台のものでは、とうていこの四十万の
失業者を救うということにはならないから、明年度の
予算を編成するにあたりましては、どうしても四百億
程度の
予算がなければならぬと思います。しかし、それも単に
予算の
増額だけでは、現在のシステムから行きますと、とうていこれはできない。ということは補助率の問題であります。御存じの通り、徴税率の低下その他によ
つて、
地方財政はまさに困難のどん底にあるのです。たとえば京都、佐賀あたりでは、すでに職員に対して遅配、欠配が出ておるわけです。まさに三分の一の負担すらできなくて、現在の状況では、もう私
どもの方では
失業対策の
仕事はできませんと言
つて、わくをどんどん返して来ておるわけです。これをただこのままの補助率でも
つて予算をいたずらにふやすことは、
地方においてまかない切れない面が多々出て来るのではないかと思うのです。
従つて、この
失業対策事業の本質は、あくまでも
失業者の
吸収と
救済を目途にした国家
事業であるからして、これを全額国庫負担にしてもらいたい。本質的には、そうでありますけれ
ども、当面としては、そのような無理なこともできないと思いますから、せめて、さしあた
つて生活保護法並の国庫補助率、すなわち八割
程度を
政府で見てもらいたい、あとの二割は
地方自治体でや
つてもらいたい。私は別に
地方自治体の
意見を代表しているものではなくて、このようなことをしなければ、おそらく円滑なる
失業対策事業の運営はあり得ないと思いますから、このようなことを申し上げるわけです。
大体以上申し上げましたところで、私の陳述することは尽きておりますけれ
ども、最後に
体力検定の問題につきましては、やはり私
どもにと
つては、まさに重要なものであるし、このことがもしこのまま全国の八千の現場に強硬に
実施されるならば、おそらく一大混乱を起すのではないかと思いますから、ひ
とつここで
政府の方も猛反省されて、すみやかにこれを撤回されんことを要望しまして、私の陳述を終ります。