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1954-05-26 第19回国会 衆議院 労働委員会 第27号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年五月二十六日(水曜日)     午前十時十一分開議  出席委員    委員長 赤松  勇君    理事 池田  清君 理事 鈴木 正文君    理事 丹羽喬四郎君 理事 持永 義夫君    理事 多賀谷真稔君 理事 井堀 繁雄君       木村 文男君    井手 以誠君       黒澤 幸一君    大西 正道君       日野 吉夫君    山下 榮二君  出席国務大臣         労 働 大 臣 小坂善太郎君  出席政府委員         総理府事務官         (調達庁総務部         長)      山内 隆一君         総理府事務官         (調達庁労務部         長)      百田 正弘君         通商産業事務官         (企業局長)  記内 角一君         中小企業庁長官 岡田 秀男君         労働政務次官  安井  謙君         労働事務官         (労政局長)  中西  実君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      亀井  光君         労働事務官         (職業安定局         長)      江下  孝君  委員外出席者         総理府事務官         (調達庁総務部         調停官)    丸山  佶君         外務省参事官  関守 三郎君         通商産業事務官         (企業局特需課         長)      影山 衛司君         労働事務官         (労政局労政課         長)      有馬 元治君         労働事務官         (職業安定局失         業対策課長)  村上 茂利君         参  考  人         (日本鉄鋼産業         労働組合連合会         中央執行委員         長)      安西 虎雄君         参  考  人         (全駐留軍労働         組合中央執行委         員長)     市川  誠君         参  考  人         (関東特需労協         議長)     坂本  登君         参  考  人         (関東特需労協         副議長)    稲富 信義君         参  考  人         (日本炭鉱労働         組合九州地方本         部中小炭鉱対策         部長)     今村 国年君         参  考  人         (日本駐留軍労         働組合中央副執         行委員長)   川畑 政男君         専  門  員 沢口金一郎君     ――――――――――――― 五月二十五日  委員山本正一辞任につき、その補欠として三  和精一君が議長指名委員に選任された。 同月二十六日  委員尾関義一君、苫米地英俊君、村上勇君、島  上善五郎君、正木清君及び稲富稜人君辞任につ  き、その補欠として安藤正純君、池田勇人君、  田中伊三次君、井手以誠君黒澤幸一君及び山  下榮二君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 五月二十五日  駐留軍労働者特別退職手当立法化に関する請  願(井堀繁雄紹介)(第五〇四〇号)  労働金庫に対する特別融資措置に関する請願(  井堀繁雄君外一名紹介)(第五〇五八号)  尼崎製鋼所における労貸間紛争調査等に関す  る請願山口丈太郎紹介)(第五〇六五号) の審査を本委員会に付託された。 同日  私鉄の争議行為規制に関する陳情書  (第三一七七号)  同  (第三二一四号)  賃銀の遅欠配に関する陳情書  (第三二一五号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  小委員及び小委員長選任  参考人招致に関する件  失業対策に関する件     ―――――――――――――
  2. 赤松勇

    赤松委員長 これより会議を開きます。  失業対策に関する件について調査を進めます。質疑を許します。黒澤幸一君。
  3. 黒澤幸一

    黒澤委員 ただいま議題となりました失業対策につきまして、労働大臣にお尋ねしたいと思うのであります。  労働大臣は、本年の二月十七日の本委員会におきまして、昭和二十九年度労働行政一般について、その方針を述べられたのであります。その中で雇用及び失業状況につきまして次のように述べておるのであります。「昨年は完全失業者数は三月六十一万、八月四十三万、十一月三十七万のごとく、むしろ、減少傾向をたどつているのでありますが、明年度は超均衡予算実施等に伴い、必ずしも楽観を許さない実情にありますので、公共職業安定所の機能を一層強化してこれが能率的運営をはかるとともに、失業対策事業及び失業保険制度の円滑な運用により失業者生活の安定を期することがきわめて肝要であると考え失業対策事業費として百十一億円を計上いたしました。これは昨年度における同経費が補正予算を加え百億八千万円であるのに比べて相当の増額となつており、その効率的運用をはかる所存であります。また失業保険給付金についても、昨年の一割増を見込んで予算を編成し、万遺憾なきを期しているのであります。」とかように述べておるのであります。すなわち政府は、失業対策事業吸収人員を、二十八年度全般実績基礎として、吸収人員の約五%増し、一日平均十六万三千人にしたのであります。なお失業保険におきましては、毎月平均一般保険で三十七万四千八百人で、これまた二十八年度全般実績の五%増し、このほかに社会保険で九万四千人に対して給付を行う予算が立てられたのであります。私はこの労働大臣のお述べになりましたこと及びこの失業対策関係予算につきまして、これは非常に政府としては甘い考えではないか。これらの予算によつて失業問題に対する適当な措置をとることはむずかしいのではないかということを、当時の委員会におきまして質疑したのでありますが、今日になりますと、われわれの指摘しましたいわゆる失業者増大ということが、必至の段階に入つて来たのであります。これは何と言いましても、昨年以来の政府のめちやくちやな金融引締め、それから再軍備偏重緊縮予算のしからしむるところであります。また一方特需減少等によりましてこれは政府の施策の二十九年度失業問題に対する見通しのあやまちによる政府の責任ではないかと考えておるのでありますが、労働省におきましては、現在の失業者の数をどれだけに見ておるのであるか。また本年度中に、失業者がどのくらい増大すると予想しておるのでありますか、最初にその点をお聞きしたいと思うのであります。
  4. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 御質問の御趣旨とされる御心配につきましては、お気持はよくわかります次第でございます。ただ、私どもといたしましては、失業状態については、先般申し上げましたように、非常に悲観もいたしておりませんが、さりとて、また楽観もいたしておるわけではございませんので、随時適切なる措置をとりたいと考えておるのであります。  この機会におきまして、最近の失業の推移につきまして若干実情を申し上げさせていただきたいと存じます。  最近におきま労働力調査の結果によりまして、完全失業者の動態を見ますと、一月には三十九万人でございます。これは昨年の一月には四十六万人であつたものでございます。二月には四十三万人、これは昨年には五十一万人でありました。三月には五十九万人とふえておりますが、これは昨年の三月には六十一万人でございまして、前年の同月に比しまして、いずれも低くなつております。  次に、失業保険受給者の数を見ますと、一月には四十一万八千人でございます。これは昨年は三十五万五千人、二月は四十二万六千人、昨年は三十五万一千人、三月は四十五万人、昨年は三十五万六千人となつております。この方は前年に比較いたしまして増加いたしておりますが、これは特に最近顕著に現われましたところの北海道東北地方におきまする水産業建設業等における季節的要因に基くものが主たるものと考えております。  公共職業安定所の窓口におきまする求職者状況を見ますと、一般労働者におきましては、求職者数は、一月は百十六万四千人で、これは前年に比較いたしまして四二%ふえております。二月には百十九万三千人、これは前一年に比しまして四%、三月には百二十万八千人、これは前年同月に比べまして七六%と増加しておりまするが、一方求人数増加しておりまして、一月には五十四万一千人、これは前年同月に比べまして二一%増となつております。二月には五十六万八千人、前年に比べまして一一五%増し、三月には五十四万二千人、前年同月に比べまして九一%増しになつておりまして、その増加割合求職者数をはるかに上まわつておる実情でございます。  日雇い労働者求職数は、一月には三十七万二千人、二月には三十七万二千人、三月には三十七万三千人でございまして、これらも前年の同月に比べまして約二万人程度上まわつておりまするが、これは昨年末に開始いたしました冷害対策等によりまする失業対策事業量増加に影響されるところが多いものと考えております。  雇用量傾向を毎月勤労統計による製造工業雇用指数によつて見ますると、一月には一〇四%、二月には一〇三八%、三月には一〇四三%と前年に比して増加を見せておる次第でございます。  これらの諸指標によつて見られまするように、現在までのところ、雇用情勢は昨年に比して全般的には悪化を示しておりませんで、その基調には大した変化を見ておりません。従つて、今般作成せられました経済審議庁の上半期の見通しにおきましても、雇用につきましては、さきに発表いたしました二十九年度年間見通し基礎に、何らの改訂も必要とするものではなく、むしろ雇用量の減退というものは下半期にある、こういう私ども見通しの上に立つて、その通りの観測が引続き維持されてよろしかろう、こういうように考えておるのでございます。  御指摘のごとく金融引締めが、緊縮予算あるいは健全一兆円予算に先だつて行われました関係上、石炭、ことに北九州における中小炭鉱におきます不況の問題、あるいは計画造船の遅延に伴います造船界不況の問題、そういう問題が最近著しくその傾向を顕著にし、重要度を増して現われておるのでございますが、私ども労働省といたしましては、すなわち失業対策事業費あるいは失業保険費運営という面から見ますと、やはりこれは現在の予算で少しもさしつかえはない、むしろ第一四半期において繰延べておりますのが若干ございますので、後半期にこれを重点的に使いますことによつて、何とかやつて行けるのではないか、かように考えておる次第でございます。
  5. 黒澤幸一

    黒澤委員 ただいま大臣から御答弁になりましたように、失業者の数あるいは失業保険受給者が、予算上において予想しました数よりも上まわつた増加を示しているということは、われわれが予想しましたことと同じようでありますが、しかし、これは下半期になりますれば、予想しないような失業者増大があるのではないかということを、われわれは憂えるものであります。そういたしますと、二十九年度予算によつて、はたして失対事業費あるいは失業保険費というものが、まかない得るであろうかどうかということが、私は非常に問題になつて来ると思うのであります。こういう情勢を予想いたしますならば、近い将来にこれらの予算補正が必至になつて来るのではないか、そういうことも考えられるのでありますが、大臣としてはその点どういうふうにお考えですか。
  6. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 ただいま申し上げましたように、企業における全般的な失業雇用関係というものは、当初の見通しのごとくに推移いたしておるのでございます。一時的に、あるいはまた局部的に、失業状態悪化を見ている箇所もあるのであります。これらにつきましては、予算の効率的な配付ということによつて、何ら現在のところ支障を見ておらないのでございます。第一半期におきます失業対策費の実態を申し上げますと、一日就労実績では十五万七千人となつております。予算面では十六万三千人となつておりまして、若干余裕を持つております。このものを後期に繰越しますことによつて、不測の事態にも対処し得る、かように考えております。もちろん政府といたしまして、手放しで失業状況をただながめるというのではなしに、そこには金融引締め政策を、いかに日本産業全体とあんばいして調整するかというようなことも考慮いたしまして、あるいは石炭問題にいたしましても、重油転換をなしましたるものを、必要に応じて石炭に再転換せしめるというような措置も考慮しつついたしておるのでありまして、この間におきまして私どもは、補正予算というものは現在の見通しにおいては必要なしと考えておる次第でございます。
  7. 黒澤幸一

    黒澤委員 時間がありませんので、先に進みたいと思うのであります。最近賃金遅配欠配が続出しているのでありますが、私の承知しました統計を見ましても、たとえば今年三月中の賃金遅配欠配の発生の件数でありますが、三月中に一千七百三十八件で、金額にいたしまして五億三千九十四万円に達している。そのうち解決した件数が一千六百四十七件、今年三月末までの未解決を累計いたしますと、三千七百二十八件に達しておりまして、その金額は七億九千四百六十六万円に上つているという数字があるのであります。この賃金遅配欠配もまた、中小企業の不振による増大と思えるのでありますが、労働省といたしましては、今後の賃金遅配欠配に対してどういうお見通しを立てているか、またそれに対しまして、どうした御処置をとられる考えであるか、その点をお聞きしたいと思います。
  8. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 賃金遅配欠配の問題に関しましては、労働省といたしましては重大な関心を持つておりまして、これが解決に、従来とも基準局中心といたしまして努めて参つているわけでございます。本年三月までの状況を申し上げますと、ただいまお示しのように、二十四年三月以来の累計は、七億九千四百万円に相なつておりますが、遅欠配の発生いたしました総額と、不払いを解決いたしましたる総額との比は、点数におきまして九六%となつておりまして、この点は良好であると考えているのであります。しかしながら、最近におきまして、ことに北九州地区中心といたしましての中小炭鉱の不振ということから、賃金の遅欠配状況が激増して参りました。このことに対しましては、非常に深い関心を持つているのでございまして、これを何とか解決せねばならぬと考えております。しかし、ただ単に法律をもつて罰するということだけではこの目的は達し得ない、解決にはならぬので、何と申しましても通産政策あるいは財政金融政策というものとの関連がきわめて深いのでございます。通産省とも連絡をいたしまして、これが対策に対していろいろ要請もいたし懇談もいたしているのでございます。ただいま通産省として、この石炭問題に対する対策といたしましては、まず優良企業への融資を促進する、さらに金融機関への原資を補給して融資を円滑ならしめる、あるいは通産省自体としては、貯炭金融であるとか、整備金融とかいうものをも考えて、これを金融当局要請しているのでございますが、これは従来からのいきさつもございますし、そういうものに対しては、金融当局は強く反発をいたしているのであります。さらに国税庁関係におきましては、税金の分割払いを認め、あるいは延納を認めるということを交渉いたしているようであります。また私ども関係といたしましては、労災の保険金延納、あるいは農林省関係では食糧代金をどうするか、あるいは公共土木費というものは、これを県の関係、自治体の関係優先配付をしております。と申しますことは、中小炭鉱は非常に不況なつておりますので、事業税関係において、県あるいは市町村財政も苦しくなつて来るということでございますので、そうした公共土木費等財政的な面から、市町村面等も見てあげるようにせねばならぬのではないか、あるいは金融機関に対しましては、預託金を引上げるというようなことはできるだけ待つてあげる、あるいは炭自体に対しましては、国鉄が大なる消費者でございますので、国鉄の方であまり炭価をたたき切るようなことがないように、ほどほどにやるように国鉄として考えてもらうということを交渉いたしております。さらに電力会社につきましては、これはやはり大きな石炭消費者でございますので、この買取りにつきましてはできるだけすみやかに—買取りをしぶつていれはまだ値下りするだろうというようなことで、極端に買いたたきをせぬように交渉するというようなことを、通産省としては種々努力をしておるということでございます。  なお、全般的な問題といたしましては、重油輸入量規制ということが、当然に必要ではなかろうかと思つております。これは通産省からお聞きいただく方がよろしいと思いますが、重油石炭に換算いたしまして二十八年度には六百九十六万トンというような計画でございますが、これは相当に従来の重油に転換したものから言わせますと、きつい制限になつておるようでございます。それに対しまして、通産省といたしましても、重油規制をやるということは、新聞等にもすでに発表されております。これをぜひやりたいということで、石炭の需要をふやすということを努力いたしておる次第でございます。  また造船関係につきましても、これは先般来大西委員からも非常に熱心な御質疑、御要請もありました。この点につきましては、お説の通りと心得ておりますので、計画造船をすみやかに解決いたしますように、運輸当局話合いをいたしておる次第でございます。  全般的に、そういう経済的な不況によりまして、結果的に出て来る賃金支払いに対しましては、基準法の建前上、払えということはもとよりでございますが、払い得る能力をつけてあげるように、関係各省に対しましてもできるだけの要請をいたすという方針のもとに話合いをいたしておる次第でございます。
  9. 井手以誠

    井手委員 関連してお尋ねいたします。ただいま労働大臣は、北九州における炭鉱不況に伴う労働問題について、深い関心を持つておる。さらにその対策として、原則的なことをお話になりましたが、現地においては、そういう原則的な抽象的な対策では、とうてい済まし切れない深刻な事態なつておることを、この際申し上げておきたいと思います。昨日、佐賀県から知事が参りまして、いろいろと訴え臨いたのであります。佐賀県にあります日満鉱業は、金融のことから先般休山を宣告いたしまして、再建案を練つておりますが、数日前組合がのみました再建案によりますと、千四百名を持つておる炭鉱でございますが、一五%の賃金切下げ労働時間の延長二時間、二百三十六名の人員整理労働組合はやむを得ずのんだのであります。しかしその裏づけになる金融が全然講じてない、銀行との交渉がまとまつていなかつたということで、この再建も、現在のところ見込みがないという悲報を私は承つておるのであります。  これは一つの例でございますが、佐賀県下におきます最近の炭鉱休廃止は十八鉱、それによる失業者は三千百五十五名、近く十鉱が閉山のやむなきに至るのではないかという情勢にございますし、もし、ただいま申しました日満鉱業あたりがいよいよ閉山ということになりますれば、一万人近い失業者が出るおそれがあるのであります。  一方賃金の遅欠配について、ただいま同僚の黒澤委員からお話がありましたが、佐賀県だけで五月十五日現在の遅欠配金額は、九千九百九十二万円に上り、一県だけで一億円近い遅欠配であります。そのために炭鉱においては金券とかあるいは現物支給が行われておるが、米の売掛代金が実に千八百万円に上つておるのであります。従つて、数日前米穀販売商の方から知事に対して、もうこれ以上掛売りはできないから、配給を停止するということを強硬に申込んでおる事実もあるのであります。これはひとり佐賀県のみではないのであります。炭鉱を持つておる福岡県、長崎県、山口県あるいは常磐、北海道においても、大体似たような情勢にあろうかと私は考えておるのでありまして、ただいま大臣通産省対策を示されはしましたけれども、そういう将来の問題や、あるいはこれから交渉しようという対策では済まない深刻な事態に陥つていることを特に私は申し上げたいのであります。しかも、こういつた労働条件悪化、あるいは未払い、遅配賃金のたな上げをも承服しなければならないこの労働条件悪化が、今後恒常化するおそれもありますし、あるいは見方によりますと、これを機会人員整理をやるとか、あるいは労働条件悪化をはかろうとする一部の悪質資本家考え方も、われわれは看過することができないのであります。しかし、事態は重大でございますので、この中小炭鉱中心とする大量の現に起りつつある失業対策並びに労働条件悪化に対するサービス省としての労働省対策並びに刻々迫つておる生活の困窮私九州に帰りますときに、その往復に福岡新聞を見るのでありますが、福岡あたりで売られて行く女が、多く炭鉱のものであることを見ますときに、私は常に涙をもつて読んでおるのであります。こういつた悲惨な生活問題については、なるほど大きな問題であるし、こういう時勢に、簡単に具体的な対策が立てられにくいとは考えておりますけれども、これは昨年から情勢がわかつておつた問題でもありますので、この際炭鉱中心とする労働問題について、大臣の方から明確な答弁をいただきたい。
  10. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 非常にごもつともな御質疑であると存じます。私どもの方といたしましても、先ほど申しましたような財政あるいは金融あるいは通産全体に対する対策もさることながら、現地におきまして、その実情を正確に把握いたすということがまず何よりも必要である、また正確な把握の上に、できる限り応急的な対策も講じて行かなければならぬ、かように考えておる次第でございますが、先般五月二十一日付次官通牒をもちまして、各府県知事に発したのでありますが、これは都道府県ごとに、知事の所轄のもとに労働対策連絡協議会を設置されたい、こういうのでございます。この構成は各都道府県労働部経済部労働基準局通産局、財務局その他の関係機関をもちまして構成してもらい、これによりまして、たとえば北九州におきましては、そこの銀行原資に非常に困難しておるということであれば、その原資についていかほどか融資をすれば、どれだけの効果があるということを、現地において十分把握してもらつて中央の方に申達してもらい、中央の方においてもその対策を至急講ずることができる次第でありますので、この通牒を出した次第でございます。なお、来週になると存じますが、早々に現地に職安、基準局の係官をもつて構成いたします労働事情調査団を派遣する考えでございます。  また失対事業関係につきましても、佐賀県におきましては特にその御要望も聞いておりますので、これにつきましては対策を講じたいと考えておりますが、第二・四半期におきまして失対事業を差上げる、こういうふうに申し上げてさしつかえないと思います。
  11. 井手以誠

    井手委員 御答弁によりますと、まず実情把握が先決だとおつしやいましたが、私がただいまで申しました数字は、多くあなたの方の労働基準監督署のまとめた調査が主になつておるのであります。あなたの方の下部機関では、すでに調査がまとまつておるのであります。今から実情把握しようということは、いささかおかしい気がいたすのであります。責めはいたしませんけれども、すでに下部機関ではまとまつておるものを、今から実情把握しようということは、はなはだ私は了解に苦しむのであります。保守新党のいわれる爛頭の急務ということこそ、わが佐賀県においては言われるのであります。すでに二十五日には、佐賀県では労働対策連絡協議会を持つことになつております。次官通達に基いて、さつそく対策を講じておりますけれども、こういう会議ではなくて、現にその日の生活をどうするか、労働条件悪化をどうするかという根本問題を確立してもらわなければならぬと思う。私は、もちろんその対策が、労働省だけで完全なものが立てられるとは考えておりません。これは一般的な緊縮予算に伴うしわ寄せでございますので、政府の責任においてこういう労働対策本部というようなものでもつくつて、真剣に具体策をつくる必要があるのではないかと、私は考えておるのであります。労働省のみならず、通産省や運輸省、その他関係各省一体となつ労働問題の対策本部というような機関が必要になつて来ておる事態ではないかと私は考えます。大臣は、こういうような根本的な対策樹立のために、そういう構想をお持ちになり、対策をお講じになる御用意があるか、承りたい。それとともに、大臣もお忙しうございましようから、具体的なことはあとで局長あたりにお尋ねいたしますけれども炭鉱中心とする失業対策生活問題、労働条件の問題について、この際明確に、労働省はこういう方針てあるということを御明示を願いたい、かように希望する次第であります。
  12. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私の言葉が足りなかつたかもしれませんが、実情把握というものは、すでに現在でも把握はいたしておるのでありますが、これは刻々に動いておるのでありますから、その動態的な把握を常に敏速にいたすという意味であります。また、ある程度現地において解決し得る問題もあるのでございますが、やはり府県と地方の出先機関財政当局なり産業当局なりが、それぞれ違つた出先機関を持つておりますので、こうしたものを一堂に会して、知事の所轄のもとに協議をするということが、事態解決促進に有利であろう、便利であろうという趣旨で考えておる次第でございます。もちろん、お示しのごとくに、中央におきましても、この対策を総合するものが必要であるわけであります。私もはなはだ不敏ではありますが、労働関係におきましての責任者といたしまして、私が中心になりまして、常に関係各省にも話はいたしておるのでございます。これを事務的な一つの機関をもつて構成するがいいかどうかということでございますが、私はその方がよろしいのではないかと考えております。現在までのところ、そうしたような機関もないわけではないのでございまして、例の特需問題等につきましても、常に関係各省が寄つて話をしておりますので、その機関に対して、この問題はやはりやるようにということを命ずれば、ただちに動き出すわけでございます。しかし中央に対しまして地方から種々報告が参ると思いますから、その報告の封着を待つて、そのことは至急できる問題でございますから、考えたいと思つております。
  13. 黒澤幸一

    黒澤委員 特需関係についてお尋ねしたいと思うのでありますが、特需減少によりまして、特需関係事業が非常に不振になりまして、馘首あるいは賃金の未払いというものが続出しておるように聞いておるのであります。経済審議庁調査によりますと、特需は、二十九年度の上半期におきまして、三億二千万ドル程度を確保すれば、上々の調子ではないかというようなことが言われておりますが、これを前年度に比較いたしますと、約一億ドルの減少になりまして、このままで進みますならば、二十九年度におきましては、特需が五億ドル程度に減少するのではないかと予想されるのであります。吉田総理が最近外遊されるようでありますが、その目的はどこにあるか、われわれは知る由もないのでありますが、多分米国側に対する援助や、世界銀行等に対する借款等が含まれておるように想像されるのであります。五月二十五日の日本経済新聞の報ずるところによりますと、年間七億ドル程度の特需要請するということが報ぜられておるのでありますが、吉田総理の外遊にあたりまして、政府はそうした特需要請するような計画、御方針があるのかどうか。これは労働大臣でなく、ほかの係の方がおりましたら、御答弁願いたいと思います。
  14. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 特需関係におきましては、広義の特需は、御承知のごとく二十七年度におきましては、月平均六千九百万ドルでございますから、約七億ドル余でございます。それが二十八年度になりまして大体保合状態であつたのでございます。たとえば、一月から三月までの間におきましては、五千九百万ドルに減りましたが、十月から十二月までの間におきましては七千万ドル、大体保合状態で参つたのでございます。二十九年度になりまして、一月に三千四百万ドルと減りまして、二月に五千三百万ドル、三月に四千四百万ドル、四月に四千九百万ドルというぐあいに、やや持ち直して来ております。その間におきまして、整理されるという面もあつたのでございますが、今申し上げましたように、整理されるべきものは大体ここで一巡しておりますので、今後はむしろ何とか努力をいだしまして、特需関係をふやすような方向に持つて参りたいと考えておるのでございます。総理が渡米されまする目的その他につきましては、私も常識的にこうではなかろうかと考えておる程度で、真意については存じないのでございますが、やはりアメリカヘも行かれますので、先方の有力者と懇談いたしまする際に、そうしたことも種々話合いがあるのではなかろうかと推察はいたしておる次第でございます。私どもといたしましては、やはり特需の日本経済全体への影響にかんがみまして、何かこれを特に活発にさしてもらうような努力をいたしたい、かように考えておる次第でございます。
  15. 井手以誠

    井手委員 大臣もお忙しいと思いますが、先刻私がお尋ねいたしました失業対策労働条件の低下などについて、お答えがなかつたようであります。これだけは、ぜひひとつ明確にお答えを願いたいと思います。もちろん、私の満足する答弁はないかもしれませんけれども、やむを得ず炭鉱が廃休止になつ失業を生じた場合には、失業対策事業を確保するとか、あるいは労働条件悪化に対しては、こういう態度をもつて臨むとか、あるいは生活の危機に対してはこういう方針を持つておるとか、ある程度の安心感を与えるような労働省の最高方針と申しますか、サービス省としての方針を、この際御明示を願いたいと思います。ただ抽象的なこういうことを考えておるということでは、今の深刻な労働問題からいつて割切れないのであります。特にその点には大臣から明確な御答弁を願いたいと存じます。
  16. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 先ほど来お答えを申し上げておりますように、この問題につきましては、恒久対策と応急対策とあると思います。恒久的な対策といたしましては、財政金融面からいたします産業の活発化、あるいは産業の政策全般におきます事態の正確な認識の上に立つての産業の景気動向回復のための努力ということがあろうと存ずるのであります。労働政策というものは、むしろその間にありまして、できる限り労働条件の維持向上に努めるとともに、そうしたしわ寄せを摩擦なくする、こういう面であろうかと思うのであります。先ほど申し上げましたようにできる限り公共事業なり失業対策事業なりの面におきまして、失業の発生いたしましたものについてはこれを吸収する、こういうことであろうと思います。なお企業の性質上、石炭鉱業というものは、将来とも必要なものでありますから、一体日本の石炭の需要はどの程度に押えるのか、これがやはり根本の問題であるのであります。先般来、通産大臣が四千八百万トンということを申し上げたのでございますが、現在の状況からいたしまして、なかなかその維持もむずかしかろうという話もあるのであります。通産大臣としても、いずれこちらに参りましてお答え申し上げることがあると存じますが、まず重油をできるだけ削減して参りたい、そして何とかして四千八百万トンにできるだけ近い数量で全体の石炭の需要を押えたい、こういうことのようであります。この全般的な需要の見通しがつけば、ここにやはり金融当局としても、種々金融を講じ得る余地が十分に出て来るかと思うのでありますが、また一方労働政策上持つております金融機関と申しますか、労働金庫というようなものも、私はできるだけ活用したいと考えております。これも、やはり金融でございますので、あまり見込みのないところには、金融当局も貸しにくいかと思うのであります。そこで、何としても見通しをつけてあげる、これが非常に必要なことであろうと思つて、まずできるだけ早い機会に正確な見通しをつけて、さてそれに向つて財政金融政策なりあるいは通産政策なりと、労働政策を一体化して進んで参りたい、こういうことでございます。
  17. 赤松勇

    赤松委員長 この際お諮りいたします。ただいま調査中の失業対策に関する件につきまして、日本炭鉱労働組合九州地方本部中小炭鉱対策部長今村国年君、全駐留軍労働組合中央執行委員長市川誠君、日本駐留軍労働組合中央副執行委員長川畑政男君、関東特需労協議長坂本登君、同副議長稲富信義君、日本鉄鋼産業労働組合連合会中央執行委員長安西虎雄君、以上の諸君を参考人として、意見を聴取したいと思いますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  18. 赤松勇

    赤松委員長 ではさよう決定いたします。
  19. 赤松勇

    赤松委員長 それでは質疑を続行いたします。山下榮二君、
  20. 山下榮二

    ○山下(榮)委員 私はこの機会に、労働大臣失業問題について伺つてみたいと思うのであります。時間がないそうでありますので、要点だけを申し上げますから、御了承いただきたいと思います。  政府の本年の予算を通じてのデフレ政策による中小企業の倒産あるいは事業の縮小等による失業ないしは賃金の遅欠配等については、先ほど質問もございましたが、これはまことに深刻なものがあるといわなければならぬのであります。こういうことは、政府のデフレ政策によることが最も大きな原因の一つでありまして、デフレ政策を強行する限り、政府はこれに伴う失業政策が確立していなければならぬはずであると思うのであります。しかるに、予算面を見ましても、失業対策に対しましては、何ら措置を講じておられないのであります。私はこういうことに対して、労働大臣の所見をまず伺いたいのであります。今ここにデータもいただいたのでありますが、私が今まで調査したところと、ほぼ同様だと思うのですが、失業保険受給者につきましても、一月に四十一万へ余りであつたものが、本年になつてすでに三月で四十五万人を越えておる実情、こういうこと等から失業保険があるからいいという考え方でなくして、もつと根本的な対策を樹立してもらわなければならぬ、こう考えておるのであります。ことに私の地元である兵庫県は多くの造船所がありまして、十次造船計画等の施策の遅延等が大きな影響をいたしまして、七月には五十一台の船台がからになると言われておるようであります。さらに操業可能の日本の五十七台の船台が、八月末には五十三台がからつぽになつてしまうということが言われておるようであります。これらによつて、すでに八月の末には五万人を越える造船労働者失業者が出るであろう、こういうことが言われておるのであります。さらに、そればかりでなく、今お話なつておりましたように、北九州その他の炭鉱労働者あるいは繊維労働者、ことにわが国の基礎産業をなす鉄鋼産業等におけるところのこれらデフレ政策の及ぼす影響は、きわめて重大なものがあると申さなければならぬと思うのであります。これらに対する労働省、特に労働大臣失業対策方針を伺いたいと思うのであります。  次に、私はもう一つ伺いたいと思うことは、今申し上げましたように、日本の基礎産業である鉄鋼産業が非常に深刻な産業不況に見舞われつつあることは、大臣も御承知の通りであると思うのであります。最近問題になつております尼崎製鋼所の問題が、私は一番これら日本の鉄鋼産業の問題の顕著な現われであろう、こう考えておるのであります。この問題を伺つてみますと、問題の焦点は、いわゆるデフレ政策によつて金融引締めによる金詰まり、あるいは日本の鉄鋼製品のコスト引下げを理由として、ここに尼崎製鋼所労働組合に対しまして賃金平均一五%の引下げを要求して来た、こう言われておるのであります。一五%の引下げは一人平均手取り三千円の賃金引下げになる、こういうのであります。尼崎製鋼所労働組合は、ただちに臨時総会を開き、あるいは対策委員会を設置して、いろいろ協議をした結果、会社に対して賃金引下げを承知するわけには行かない、もつと他に適当な措置を考慮してもらいたい、こういう交渉が繰返された結果、とうとう会社は、一応はその案をひつ込めておいて、またあとで今度は首切りを発表した。しかも全従業員一千七百五十名中、組合員の馘首発表をされたのが三百八十一名、非組合員が二名、臨時工が八十二名の馘首を発表された、こういうのであります。しかもその上に、長期にわたる全工場の工場閉鎖を発表いたしております。これに対して、労使双方が折合いがとれずに、今ストライキに入つておることは、大臣も御承知の通りであろうと考えておるのであります。しかも、ふしぎなことには、この三百八十一名の組合員の中で、八十一名は三役をのけた組合の幹部、役員である、こう言われておるのであります。こういうことは、考えてみますと、労働組合法第七条に規定されたところの一つの不当労働行為に値するのじやなかろうかということも懸念され得るのであります。  私は、この尼崎製鋼所の今度のストライキの問題は、ひとり尼崎製鋼所のストライキだけでなくして、将来日本の全鉄鋼産業に大きな影響をもたらす一つのテすト・ケースとして、経営者側からしても非常に重大な問題ではなかろうか、こう想像され得るのであります。もしこの事態がこのまま進展して参るといたしますならば、日本の基礎産業である鉄鋼産業というものは、ゆゆしき事態を惹起するといわなければならぬと思うのであります。こういうことに対して、労働大臣は一体いかなるお考えを持つておられるか。日本の今日の産業の実情から見まして、できるだけストライキを避けて、平和のうちに物事を処理、解決する方策をとるように指導されることが、労働省のとらるべき手段ではなかろうか、こう思つておるのであります。それがためには、各単産には経営協議会等がありまして、いろいろな手段を施しつつあるのであります。しかるに今度の尼崎製鋼所の問題は、ただ一方的に会社の方が、しかも労働協約を無視して、首切り、賃下げを行わないという覚書をとりかわして数箇月もたたないうちに、この挙に出たということは、何としても労働組合側からしてこれは納得行きがたい問題であると、われわれの思つておるのであります。おそらくこれが経営者の勝利に終りますならば、日本の全鉄鋼界には同じようなことが繰返されるであろうことを、われわれは非常に心配するのであります。これに対して、労働大臣のお考えのほどを、私は伺つておきたいと思うのであります。
  21. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 最初の御質疑全般失業問題についてでございますが、失業保険受給者が十二月以降上まわつておるという数字につきまして先ほど申し上げ、詳細に御説明をつけ加えたのでございますが、これは、昭和二十八年十二月以降の失業保険受給者につきましては、従来もそうでございますが、北海道等に季節労務者が建設業あるいは漁業、農業に出労いたしておるのでございます。この人々が北海道の冬季降雪期のために事業がしばらく休まぬばならぬということで離職をして、また元のところに帰つて来るわけであります。その期間の季節労務者が約七万七千人と推定されるのでありますが、これを含んでおりまして、これが階層的にも地域的にも東北、北陸に非常に集中しておるのでございまして、この影響であるというふうに考えておる次第でございます。むしろ問題は、今後にあろうかと思うのでございますが、今後の問題につきましては、先ほど申し上げましたように、私ども失業保険あるいは失業対策費において増額いたしておりまするものを効率的に運用すれば、何とかやつて行けるのではないかというふうに考えております。と申しますことは、失業対策につきましても、この第一・四半期におきましては、十六万三千人のわくのうち、一日十五万七千人程度でございまして、その余力を後半期に振り向けることができるというような点がございます。全般的にも、わずかでございますが、ふえておりますし、これを後半期に重点的に使用することによりまして、何とかやつて行けるのではないかと考えております。何といたしましても、失業の問題というのは非常に私ども重要に考えておりますが、インフレ的に経済を持つて行く場合の失業対策ということですと、非常に楽であります。たとえばニュー・ディールに見られましたように公共事業を興すというようなことで、はなばなしくやり得るのでありますか、全般的に有効需要を減少せしめる方向に持つて行く、いわゆるデフレ的経済、インフレ経済をしぼつて行くという建前からいたしますと、この間における失業対策というものは、やはり御非難をこうむるかもしれませんが、ある程度出たところを見て対策を講じて行く、こういう考えでございませんと、全般の行き方とやはり逆になつて行く、こういう傾向はどうしてもいなめないのであります。わが国をインフレ経済へ持つてつていいかといえば、これはいかぬということは、皆さん御同意のところでございます。何としてもこの経済の基調を正常化しなければならぬ。しかし、その正常化ということも、そこに出て来る摩擦をどうしたらなくし得るか、これが私どもの非常に憂慮いたし、苦心をいたしておる点でございますが、現在の予算に盛られておりまするところで、ただいま御説明申し上げましたように何とかやつて行けるのではないか。しかし全般的には、問題はその緩急の度でございまして、一ぺんにがたつと局部的に、たとえば中小炭鉱において現在見られておりますような金融政策がとられるというようなことになりますと、これは非常に摩擦が起きる。あるいは第十次造船というものがないと、それに五十万総トンからの船のうち二、三十万トンというものを依存しておつた計画造船というものががたつと落ちることになれば、そこに非常な失業が段階的に一挙に盛り上る、そういうことをできるだけ少くしながら正常化して行く、こういうことでないといけないと存じますので、全般的な通産政策なり、財政金融政策なりについて、私ども常に連絡をとりつつ、私どもの意見を十分に反映せしめてやつて参りたい、かように思つておる次第でございます。  後段の御質疑の尼崎製鋼の問題は、私も実は尼崎製鋼の会社そのものへは参りませんでしたが、そのごく近所まで参りまして、よく事情を聞いて参つたのでございます。御質疑の点は私どもにも了解し得る次第でございますが、建前といたしまして、労働省は労使間の紛争には、政府として介入しないという方針で来ております。やはり調停あつせんの機関というものは、地労委であり中労委であるわけであります。その方面におきまして全般を考慮いたしまして、適切なる助言をなすことではなかろうか、かように考えておる次第でございます。
  22. 山下榮二

    ○山下(榮)委員 過般のいわゆる尼崎製鋼の問題でございますが、鉄鋼産業の将来に及ぼす影響がきわめて重大だというところから、私は質問を申し上げておるのですが、今大臣は、労使の紛争の中には労働省はあまり深くタッチしたくないのである、それは中労委、地労委という調停、あつせん、解決の道があるとおつしやつたのでありますが、それはその通りであろうと思うのであります。しかし、私は二、三大臣に伺つてみたいと思うのは、先ほども申し上げましたように、賃金値下げないしは馘首を行わないということが労働協約の中にうたわれて、その覚書をとりかわして数箇月もたたないうちに、この二つの事柄が出て参つた。しかも、さきにも申し上げましたように、船の単組におきましても、経営協議会等でもつて双方が円満に、しかも日本の産業振興のために努力しつつある今日、そういう一方的なことをやることは、将来の組合運動。上に、あるいは他の鉄鋼産業の上にどういう影響を与えるか。このことに対して、労働大臣は一体どうお考えになるか、この点をひとつ伺いたい、こう思うのであります。
  23. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 協約の内容につきましては、私も実はあまり詳しく存じませんので、労政局長からお答えいたします。
  24. 中西実

    ○中西政府委員 私の方の報告にも、協約の内容の詳しいところは来ておらないのでありますが、この会社は、われわれの方の知つております限りにおきましては、具体的に申すのもどうかと思いますけれども、やはり経営の方針等にいろいろと齟齬があつたようであります。鉄鋼全体に対する日本の経済の影響はございますけれども、それ以外に、この会社特有の手違いが相当にあつたように存じております。さらにこの会社の給与でございますが、これは的確な資料がありませんが、たしか二万一千円、二万を越えておる給与でありまして、一般賃金、ことに鉄鍋界における労働者賃金と比べますと、相当高いベースになつておるのでございます。そこで一応会社建直しのために、切下げという案を出し、これを一応中止して、あと今度はへ員整理ということになつて参つたのでありますが、これはやはり会社そのものの存続自体が危殆に瀕するという事情が起りますれば、やむを得ないのではないかと考えるわけであります。
  25. 山下榮二

    ○山下(榮)委員 私は今まことにふしぎな答弁を伺つたのであります。私は尼崎に住んでおつて、あの地方の、しかも久保田鉄工所の一工員として働いておりまして、あの付近の賃金はよく知つておるのですが、鉄鋼産業のうちでは尼崎製鋼が一番賃金がよくないのであります。住友、日亜その他、相当高いところがありまして、他と比較いたして、決してよくないのであります。その答弁は、私は非常に当らない答弁だと思うのであります。従つて労働省としては、やはりそういう労働協約を無視する行為のものに対しましては、与えられた労働協約期間内は、双方が誠意をもつて労働協約を遵守して参る、こういう態勢をとらしめるようにされることが、労働行政の一番正しいやり方ではないか、こう思うのであります。そのことに対しての労働大臣のお考えを伺いたい。三百幾十名の馘首の中で八十幾名の解雇者が労働組合の執行部を含めた幹部役員である。但し三役だけは除いているということは、労働組合法第七条に規定された不当労働行為をカムフラージユするために、三役だけをのけて、労働組合の力をなくするために執行部その他の幹部を馘首する挙に出たものであろうと想像するのであります。もしそうであるといたしますならば、この問題は不当労働行為であると断定せざるを得ないと思うのであります。こういうことが他にも繰返されることになりますならば、日本の労働運動というものは、すでに名のみであつて労働運動の実体を伴わない、しかも将来の日本の産業の上に非常に危険を伴うことになるのではなかろうかということを危惧いたすのであります。こういうことに対して、労働大臣はいかようにお考えになるか、伺つておきたいと思うのであります。
  26. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 労働協約が締結されました以上、契約当事者によつて尊重せらるべきことは、私は当然であると思うのであります。ただ、会社自体が危殆に瀕しまして、会社そのものがなくなつてしまう。すなわち、労使双方ともなくなつてしまう、こういうような事態に瀕しまする際におきましては、これは特別の事情の変更があつたものと考えるよりいたし方ないのではないか、かように思います。しかし、あくまで会社におきまして、組合側と経営者側と申しますか、これが双方誠意をもつて良識の上に立つて話合いをいたして行くということは、当然のことであろうと思うのであります。ただ特別の事情ということの認識にかかわることであろうと思うのであります。
  27. 山下榮二

    ○山下(榮)委員 八十幾名の不当解雇の問題はどうですか。
  28. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 これは具体的によく事情を伺つてみませんと、私どもの方として御答弁いたしかねます。
  29. 赤松勇

    赤松委員長 なおこの問題につきましては、安西君も来ていただいておりますし、後ほど局長等に対しましてもいろいろ質疑をいたし事から、そのときにお願いいたします。  次に日野吉夫君。
  30. 日野吉夫

    ○日野委員 ただいまいろいろの問題が質問されて答弁があつたのでありますが、けさここに配付されました労働省失業統計ですが、これはどういう角度から調査されているのか、はなはだ実情に遠いものがあるのじやないかと考えられる節がある。これはいずれ事務当局から詳細に伺うことにいたしますが、この数字の上に立つてする労働大臣失業問題に対する考え方は、少し甘過ぎはしないか。下半期における日本の失業の事情というものは、そう甘いものではなかろう。今問題になつております炭鉱失業の問題、造船の問題、それから特需の問題等も、大きな失業問題の中に入つて参りますし、しばく問題になつおります中小企業が不渡り手形を出したり、あるいは賃金遅配欠配がある会社等は、風前のともし火でありまして、やがて失業氾濫の大きな姿になつて現われて来るのでなかろうか。こう考えますと、下半期失業事情というものは、そう簡単なものじやない。特に先刻大臣がいろいろの国策的観点から輸入の縮小というようなことを言つておられるのでありますが、これは日本の国際収支から申しますと、特需の激減、これは明らかであります。昨年の一月から三月と、今年のそれとを比較いたしますと、ほとんど三分の一に減つておるのであります。これは減つておりますけれども、今年の輸出は若干伸びております。従つてMSAの関係と仏印等の期待等を考えれば、多少のバランスが破れるだけで、ここに問題になつて来るのは、大臣の言われる輸入の縮小、こういうことになつて参るのではないか、大体そういうことが通説になつている。そうなりますと、当然これは縮小均衡という方式が確立されるのではないか。そうなると、当然に低賃金が招来され、労働強化の問題が起る。そしてこれに伴う失業の氾濫の事態が起る、こう見ることができるのではないか。これらの事情が総合されて下半期に現われて来るといたしますならば、今労働省が発表したような統計が、大分狂いが生じて来るのではないか。時間がありませんから、私は簡単に労働大臣の意見を伺つておきますが、先刻井手君から質問された失業対策特別委員会でもつくつて、こうした事態に対処するのでなければ、これらの問題は解決できないと思うのでありますが、労働大臣はこれに対して、さつきの答弁では失業問題に対しては悲観も楽観もしていないというような、きわめて冷然としておられるようでありますが、そういうものではなかろう、もつと真剣に失業対策をやるという決意を表明してもらいたい。この失業対策特別委員会の仕事は、こういう内容を持つたものでなければならない。先刻来問題になつている失業の実態を、もう少し正しく把握するという一つの仕事がある。失業対策の実態が、これでは完全に把握ができていない、この内容。  もう一つ、従来労働省は、失業者が出たのをまつてこれに失業保険をやり、その期間が切れれば社会保障でやるというような消極的な態度をとつて来たが、一応この対策が出ているので、これをまず一段と強化する。  もう一つ、このごろは警察なら予防警察ということが言われ、医療に対しても予防医学ということが言われておる。失業問題でも、予防を考えなければならぬ。起り得る一つの事態に対して、適当なそれそ、の機関と提携し協力して、未然にこの防止をはからなければならぬ。失業予防の建前で、ひとつ各省を網羅した一つの失業対策特別委員会をつくつてもらいたい。  もう一つは、雇用量の問題が根本的に問題になりますので、雇用量増大をはかるいろいろの施案はかり、これらの総合的な施策をやるために、失業対策特別委員会をつくる御意思があるかどうか、それを推し進める熱意があるかどうか伺いたい。もしこれに予算がいるならば、先刻の補正予算はやらないというのは、政府方針でありましようし、労働大臣がここでやるという言明は無理でありましようから、これは求めませんが、予算効果の現われた下半期で、あらゆる予算の施行に伴う欠陥が現われて、国全体が補正予算を組まなければならないような事態なつた場合に、労働大臣はひとり労働関係では補正予算を組まないと言つてがんばるかどうか。そういう国の方針がそれを必要とするなら、欣然労働対策のために補正予算を組む用意があるということを御言明願えればいいと思いますが、これは強く求めません、そういう事態に対しても善処するという程度の軽いものでけつこうでありますから、善処する約束を、できればしていただきたい。
  31. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 先ほど来申し上げますように、経済の基調が、インフレ期と申しますか調整する際の摩擦と、あるいは非常にデフレ的な経済の基調を持つております経済を少し拡大させよう、インフレーシヨンを意識して行おうとする際の失業問題の扱い方は、非常に違うと思うのでありますが、私どもの認識におきましては、現在日本経済の基調は、インフレ的様相を帯びておる、これを何とかして正常な姿にもどさねばならないということなのであります。そこで種々の財政金融政策あるいは産業政策等との兼ね合いで、その摩擦が少くなりつつも、少しずつは摩擦がある、こういう状態ではなかろうか。その非常に困難なる問題を、私が責任を持たせられておるかつこうなのであります。そこで、先ほども申し上げましたように、たとえば石炭鉱業におきまして、非常に金融引締めを強化するということになりますと、摩擦段階が急速度に断層をもつて現われる。あるいは造船界において、計画造船という大きな比重を持つておつたものが、ちよつと見込みがないということになると、ここに断層が起きる。そこで、そういうことをしてはいけないと言いながら、計画造船は私は何としてもやらせようと思つておりますが、そういうことで、その差の断層というものをできるだけ少くして行く。その間にできた摩擦に対しましては、失業保険なり失業対策事業を行う、こういうことなのであります。ただいま私が、悲観もせず楽観もせずと申しておりますのは、政府として失業問題は非常に悲観すべき状態にあるということになりますれば、期せずして、それでは首切りは政府がやってくれるかというようなことで、不必要なことも行われる。これは少し言葉が過ぎるかもしれませんが、そういうことにもなるかと思う。むしろ政府としては、失業問題というもの、ことに現段階におきますような基調においての政策が行われておる際の失業問題というものは、その結果の現われて来るのを見つつ、これをできるだけ摩擦を少くしつつ、それに対して敏速的確なる措置をとつて行く、こういうことであろうと思うのであります。そういう方針のもとに、私は下半期において非常な摩擦的失業増大するというふうには見通しておらない。そういうことがないように、通産財政金融政策を伴わして行きたい、かように考えておるわけでございます。従いまして、そういう問題が出たらどうするということでございますが、これは仮定の問題になりましてお答えしにくいのであります。しかし、現実にその必要が起きたときに、私が便々としておられるかというと、そういうわけには参りませんので、善処するということは当然であると思う。ただ、現在そういう事態が起るというふうには私は考えておりませんので、何とかしてそういう事態のないように持つて行きたい、こう思つております。現在のところでは、そうしたような全般雇用状況の非常な悪化という傾向は見られませんで、局部的に、今申し上げたような状況が出ておる。これに対しましては、その動態を正確に把握して、これに対しては逐次現地においては現地においてなし得る手当、中央においてはこれを総合してなし得る手当を、先ほど申しましたような方法で、あるいは現地の労務対策協議会というようなものを通して考えて行く、こういう方針でおる次第であります。
  32. 日野吉夫

    ○日野委員 時間の制約を受けておりますから、簡単にいたしますが、あなたの好むと好まざるとにかかわらず、こういう事態が起るであろうとわれわれは考えておるのであります。現実に起つておるのです。それらの究明についてはあとでやりますが、あなたの悲観もせず楽観もせずということは、いろいろ政治的な含みを持つ影響等をおそれて、そう言われておるだろうと思いますが、これはとりようによつてはいかにも熱意がないようにもとられますので、今の答弁を聞いて、善処の決意ありということでありますから、ひとつ熱意を持つてこの問題と取組んでもらいたいという注文をつけて、あとは事務当局との折衝に譲つておきます。
  33. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 失業問題はきわめて重要な問題であります。ところが大臣は、警察法の関係があるということで常にお見えにならない。それで本日のような非常に重要な問題にも、一時間ほどしか時間がないのであります。これは、ひとつ大臣にもゆつくり来てもらつて、徹底的な審議をしなければならない現下の急務であろうと思うのです。そこで委員長におかれては、なるべく労働委員会に出てもらうように要請していただきたい。
  34. 赤松勇

    赤松委員長 ただいま通産省の記内企業局長及び調達庁山内総務部長お見えになつておりますから、審議続行したいと思います。それでは各参考人から参考意見を述べていただきたいと思います。一番初めに炭労の今村参考人からお願いします。今村君。
  35. 今村国年

    ○今村参考人 いろいろと御留意をいただいておりますので、蛇足となるかもしれませんが、現地におりまして考えております要点について申し上げまして、御審議の参考にしていただきたいと思います。  先ほど井手委員の御発言の中にもございましたが、現在置かれております炭礦の、特に中小炭鉱実情でございますが、これはもうすでに十分御承知のことと考えますので、具体的に実例を摘出いたしまして、私ども考えております、現在の炭鉱労働者の苦境は、かくすれば救えるということについて申し上げたいと考えるわけでございます。  日満鉱業の実例をまず拾い上げてみたいと考えます。これは先ほど要請書の形で参考資料を差上げておきましたので、その資料を見ていただくとおわかりと考えますが、一五%の賃金を引下げることによりまして、現在石炭の値段が非常に安くなつておりますので、その石炭の値段に合う生産原価に合わせられる。もちろんそのためには経費、物品といつたものも相当節約をしておりますが、それだけではどうにもなりませんので、最後には労働賃金の一五%の引下げ、こういうことで労使間で企業再建計画というものをつくつたわけでございます。そういたしまして、資料でごらんになつていただくとわかりますように、そこまで切り詰めて参りますと、若干の黒字が出て参ります。従つてこの出て参りました黒字で、今後借り入れます金の消化ができることになるわけであります。そういう計画再建計画を立案いたしました。その再建計画に基いて営業が継続されますならば、黒字になりますので、この炭鉱事業の継続が可能であり、従つてそこにおります千五百人に近い労働者失業問題というものは、解消をいたすわけであります。そういう観点から再建案をつくりましたが、遺憾ながら現在まで、別表にも示しておりますように、相当賃金の遅払いが起つております。従つて現在主食を買う金もないというのが、今の鉱員諸君の生活の実態であります。  その中で、再建計画を立てまして、そうして今後の事業がその再建計画に基いて継続をいたして参りますと、ずつと円滑に事業の継続ができるわけでございますけれども、現在すでに未払いになつております賃金、それからさらに今後働きますところの賃金、これが正確に組合員の手元に入つて参りませんと、主食を買う金もないといつたような実態では、いかに計画は正確に、そうして将来営業が成り立つ、こういうものができたといたしましても、御飯を食べずに仕事ができないことは申し上げるまでもないことでありまして、そのためにどういたしましても未払い賃金を払つて、そうして一応弁当を持つて坑内に仕事に行ける態勢をつくらなければ、その金をどうにかしてつくらない限りにおいては、そういう計画がせつかくでき上りましても事業の継続が不可能になる、こういう実態にあるわけでございます。  さらに、これは石炭局の方で詳細な御調査があつたろうと考えますが、可採炭量にいたしましても、現在の生産手段にいたしましても、能率にいたしましても、それから搬出にいたしましても、それから会社が持つております販売能力におきましても、それら再建計画の中に盛り込んでおるわけでありますが、十分採算の立つ条件にあるわけであります。そういう炭鉱が、ただいま申し上げましたように当面しておる遅払い賃金を埋め、さらに今後働いたのに対する賃金を−一応一五%引下げるわけでありますが、正確に払えるという見通しがございませんので、どうにもならない、こういう実態にあるわけでございます。  それからその資料の中に、さらに中島鉱業数字もごく荒づかみでございますが、あげておりまして、大体その二鉱山の例をあげておるわけでありますが、九州地方におきますところの中堅炭鉱状態は、大体これと大同小異でございます。従つて可採炭量があり、しかも掘り出される石炭相当一般炭としては優秀な石炭であり、しかもその会社が自分のところで生産しただけのものを売る能力を持つている。しかしながら、価格が非常に下つたので、そのために無理な経営をいたして参りまして、無理な借金ができておる。そうして諸税公課金、各種保険料、電力料金、資材代、こういつたものの未払いが起りまして、最後にはこれが賃金の未払いというような形となつて現れております。この実情から参りますと、当面しております営業計画だけがいかに完全にできましても、それだけでは、先ほど申しましたように現在運転資金がございません状態では、どうしても事業がやつて行けないというのが、大体例を示しました以外の炭鉱におきましても、いわゆる中小炭鉱の上位にある炭鉱の実際の姿でございます。さらにそれ以下の中小炭鉱につきましては、現在のところ、もうすでに百鉱余りの炭鉱事業の継続が不可能になりまして、閉山をいたしてしまいましたが、それ以外に残つておりますところの中小炭鉱状態といたしましては、こういう中堅クラスの中小炭鉱の中の大きな炭鉱よりは、小さいところが比較的にその困難の度合いが少いようでございます。と申しますのは、いろいろな要件もあろうかと考えますが、非常に生産原価が安いということであります。安く掘り出せるごく小さい炭鉱でありますれば、設備も大していりませんし、それから掘つておるところも、地表から非常に浅いところを掘つている、そういうことで諸経費が安い。こういつたことで、比較的そうした打撃はこうむつておりませんが、中堅炭鉱が最も大きな打撃をこうむつておるわけでございます。  以上は、資料を参考として御検討をお願いしたいと思うわけでございますが、従つてども見て、いろいろとこれが対策について、いわゆる労使が再建計画をつくりまして、再建が可能であり、失業しなくてもいい、職場を守つて行けるんだという状態にありながら、なおかつやれないということについて、何とかこれを打開したいという考え方で参つたわけであります。そこでいわゆる地場銀行にいろいろと融資の点を要請いたしましても、今までの石炭の価格が、昭和二十六年から二十七年の朝鮮ブーム時代、カロリー当り一円以上しておつたのが約半額に、年を追つてだんだん下つております。従つて営業計画がその価格でなされて司りましたので、その販売価格が下ることによりまして、だんだん経理の内容に無理が行つて赤字になつておる。こういう赤字の実態でございますので、ここでそういう赤字の累積が、地場銀行の短期の借入れであるとか、あるいは買掛金の未払い、そういつた経理を圧迫する無理な状態に追い込まれておる現在といたしましては、地場銀行としては、再建計画が成り立ちましても、金融引締めと、ただいま申しました過去にある未払い金の状態、そういつた状態で貸出しをいたさない。そういうことで、せつかくできた再建計画がどうにもならない実情にございますので、これは単に労働問題だけとしての処理はもちろんできないかと考えますし、通産省その他にも私ども参りましているくと折衝をいたしたのでありますが、総合的に検討をしていただきまして、できますならば労働基準局を通じてでも、賃金の未払い分、それからその後に若干の労働賃金見合いの運転資金と申しますか、そういうものの貸出し方法をとつていただく。そういたしますと、現在すでに倒壊に瀕しております中堅炭鉱労働者は、一万人に上ると考えますが、それらの労働者失業問題の解消ができる、かように考えております。  それから私ども、現在やられておりますところの政策を大して根本的にかえられなくても、行政措置ででもかえられる問題ではないかというように考えられますことは、もし白濁鉱業が、ただいま申しましたようなことで、ここで五千万円ないし七千万円程度の金がありますと、休山せずに以上の計画が可能であると私ども考えております。その金がないために事業の継続が不可能なわけでありますが、これが休山をいたしますと、千五百人からの失業者が出るわけでございます。そういたしますと、失業保険を九千円平均で押えましても、約千三百万円くらい月間の失業保険を支払う、こういうことになるわけであります。それから、これくらいの炭鉱になりますと、休山をいたしております間は、排水、通気、それから坑内の維持のための補強工事、こういつたことをやらなければなりませんので、それに要する費用が約一千万円、そういたしますと、休山をしておるために二千三、四百万円の金が月間にいる。しかも、その中で失業保険として出されるだけのものを考えましても千三百万円でありますから、半箇年間失業保険給付されますといたしますと、約八千万円近い金がいるわけであります。それから業者がむだに使う金を加えますと、一億円以上の金がこれに必要である。従つて、それだけの金をどうしても使わなければならないということにいたしますならば、これはそれ以下の金で十分この炭鉱の救済はできる。  なおまた、石炭の価格の面から申しましても、現在私どもが山元において再建計画を立てております。石炭の価格というものはカロリー当り五十銭を見当にいたしまして再建計画を立てております。現在全国平均石炭の価格は、山元価格で六十五銭ということが言われておりますが、そういたしますと、重油のカロリー当りが約一円だというふうに聞いております。それと比較いたしますと、山元価格大手、中小含めました全国平均六十五銭にいたしましても、一円の重油の価格よりは三割五分ばかり安いわけであります。燃焼効率、それからこれを使用いたしますときの諸費用を勘案いたしますと、重油よりは石炭の方が四割程度安くならないと、ほんとうの値段では消費工場としては使えないということを聞いておりますが、大体それに近い値段、しかし石炭の場合は、これは山元価格でありますから、これに消費地までの運賃がいるわけでありまして、その点重油よりは若干高くつくかと考えますが、私どもはこの価格差につきましては、重油には全然関税をかけてないということを聞いております。従つてこれが正常な経済活動と申しますか、そういうあり方で、もし関税がとられるといたしますならば、重油を使うことによつて燃料のコスト減になるということが言われておりますけれども、そういうことはあり得ない。従つて、現在工場で使われております重油を、全面的に現在の石炭の価格に引直しまして、石炭に切りかえましても、日本の製品が生産コスト高になるということはないように、私ども現在では考えております。従つて、私がここで申し上げたいことは、当面今の重油の輸入の状態の中にありましても、中堅炭鉱といたしましては、販売の能力も持つておるし、十分やつて行けるのだ。ただそのためには、るる申し上げますように、若干の未払い賃金を解消し、それからさらに今後の一箇月ないし二箇月分の賃金を補償するだけの金を出していただく。しかもその金は、失業保険で払う金よりもはるかに少い金で済む。従つて、当面最もしわの寄つております中堅炭鉱を、そういう形で救済していただく方法をとつていただくということになりますと、失業群を出すことが救われる。  それから全般的に申しまして、現在石炭がコスト高になるということで重油に切りかえられておりますけれども、現在の石炭の値段はコスト高にならない。従つて、非常に不安定なと申し上げることが妥当だと考えますが、私がここでいろいろ申し上げるまでもなく、もし重油にのみ依存をいたしておるということになりますと、よしんば日本が戦争に巻き込まれるとか、あるいはそれに近いような状態にならないにいたしましても、国際的に非常な紛争が起つた場合には、重油は入つて来ないことになろうかと私ども考えます。そういうときには、日本の産業は非常に大きな打撃をこうむりまして、産業活動の一時中止といつたような問題も起ろうかと考えるわけであります。そういう危険を冒して、しかもあまり安くない重油を使うごとにつきましては、これはもちろん労働省あるいは労働委員会で議題として取上げられる問題ではございませんけれども、そういうものを十分咀噛していただいて、そして労働省関係におかれましても、あるいは労働委員会におかれましても、極力他の関係省と、あるいは関係委員会との折衝、あるいは議会内に持ち込んでいただいて、私が申し述べましたような線で参りますならば当面つぶれかかつている中堅炭鉱は、失業保険を出す金以下の金で救済することができ、失業者を出さずに済むということが一点。そから総合的に、ただいまも申しましたような価格比較の点その他から検討したしまして、重油を全面的に石炭に切りかえることが可能であり、切りかえられることによつて、日本の現在の石炭工業が持つております生産高、それを上まわる需要量になるのではないかというふうに考えますし、私どもぜひそういうふうにやつていただきたいということを申し上げたいわけでございます。  先ほど来傍聴さしていただきまして、失業問題等について非常に熱心に御討議をいただいておるわけでございますが、私ども現地におりまして、文字通り野菜を買う金もなくて、子供を学校にもやれない、こういつたことについて、働きつつなお賃金がもらえないのでありますから、非常に地方は深刻な状態なつております。そういう組合組合大会等に参りますと、もうすでに事態組合員の労働条件をどうするかといつたようなことを審議するような、そういうなまやさしい事態ではございません。ここで何らかの問題が起りますと、非常に大きな問題に発展する、労働問題以上のものに発展する危険を私ども現地においてはひしくと感じておるわけでございます。しかも、申し上げるまでもなく、炭鉱の所在しておりますところの市町村というものは、その市町村財政もそうでございますが、その他一切の市町村の活動そのものが、炭鉱が主体でございます。従つて、そういうところで炭鉱に重大な問題が勃発いたしますと、これは局部に起きました炭鉱問題だけでなくて、その地方の社会問題になるようなことに、必然的になつて行くわけでございまして、私どもそういう点について、非常に懸念をしておるわけであります。  従つて、皆様方に申し上げたいのは、不可能なことではない、可能なことだ、しかもそれが国家的な見地に立つても、有利であると考えております。私が申し上げました数字その他については、大して間違いがなかろうと私は確信をいたしております。従つて良識ある判断をくださいまして、この炭鉱の置かれております状態は救えるし、救う方が有利であり、可能であると考えておりますので、よろしく御検討をお願いしたいと思うわけであります。
  36. 赤松勇

    赤松委員長 これより質疑を許します。多賀谷真稔君。
  37. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 この問題は、当然通産大臣並びに石炭局長に聞かなければなりませんが、本日欠席されております。そこでちよつと相手を失つておるわけですが、一応労働省に関する部分だけをお聞きいたしたいと思います。  まず第一には、今参考人から、現地お話がございましたが、いつもこういう炭鉱の事件が起りますと、石炭局は、なるほど当面の責任者でありますから、いろいろ動いていることは事実であります。しかし労働省として、どうも熱意が足りないように感ずるのであります。普通の企業よりも、非常な多くの雇用量を持つております。脆弱な企業でも、かなり多くの労務者をかかえておるわけであります。ですから、炭鉱の場合は、他の産業に比して、同じ資本金、同じ程度の企業でも、従業員が非常に多いわけであります。こういう問題が起りました際には、労働省としては、あるいは融資のあつせんなどを、石炭局にまかすことなく、あるいは大蔵省にまかすことなくやらなければなりませんが、大体だれが担任されておるかお尋ねしたい。
  38. 安井謙

    ○安井政府委員 石炭界のこの不況は、先ほど井手委員からも御質問がありまして、大臣からもお答えがあつたのでありますが、このデフレ政策に対して、労金からどんどん活を入れて行くという十分な対策がとれないことは、先刻からのお話通りであります。さらに、しかし労働省としましても、こういつた労働問題、雇用問題の面から見て、そういつた企業を打捨てておれないじやないか、ということは、おつしやる通りでございますが、直接金融をあつせんいたすとか、さらにその企業体自体を救済に乗り出すというところまで、労働省の職責が及ばないことも御存じの通りであろうと存じます。従いまして、その結果に出ました雇用問題あるいは失業問題に対しまして、でき得る限り万全の手を尽して行くということに、われわれはできる限りの力を注いでおりますので、ただちにそういつた企業体に対する当面の責任者は、一体だれだということになりますと、これは通産省その他の政府機関からもお聞き取りを願いたいと考えておる次第であります。
  39. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私がことに強調したいのは、先ほど申しましたように、コストの中で五〇%から労務費がある。同じ資本金でも、労働者を非常にかかえておる、小さな企業でも千名から千五百名の従業員を常にかかえておる。ところがこの問題は、非常に部分的に地域的に集約しておりまして、町村からいたしますと、たいへんな事態になるわけであります。ですから、労働問題から取上げた方が、この問題は解決しやすいし、労働問題が最も深刻であります。私はほかの問題をないがしろにしろと言うわけではありませんけれども、この問題は労働省が腰を入れて—通産行政から絶てば、あるいは企業はうまく行かないかもしれない。しかし、これだけの従業員を今解雇してしまう失業保険の話もありましたが、そういう見地に立つて考えなければ、なかなか困難であろう思います。石炭企業全般が、そういう関係なつておる。ことに今御指摘のありました日満鉱業というのは、カロリー当り五十一銭ぐらいしかついていない。  一般企業は六十五銭からカロリー当りについておる。もう少し申しますと、コストの平均が、昨年のコストでも四千五百円あるいは四千二百円程度ついておりますが、この炭鉱は三千百八十八円ぐらいしかついてない。ですから、これは当然採算のとれて行く状態炭鉱である。ところが、そういう危機に瀕しておるのですから、一番困るのは従業員であります。ですから、労働省としては、当然重大なる関心を持つてつてもらいたい。その責任者じやないかもしれませんが、少くとも、こういう事態が起りましたら、だれのところに行けば労働省として協力していただけるか、私はこういう方を、あるいはそういう省を設けていただきたい。なるほど失業職業安定局でやる、あるいは賃金不払いになれば基準局でやる、こういうことはわかつておる。しかしどこへ行けば一体労働省として動いていただける課があるか、こういうことをお尋ねしておるわけです。
  40. 安井謙

    ○安井政府委員 労働問題としまして、そういつた問題に直接の関係を持つておりますのは労政局でございます。しかし、これもいろいろ抽象的な問題、あるいは法規上の解釈の問題、争議上のいろいろなあつせんの問題についての機関でございまして、ただちに企業体そのものをどうするという機関は、労働省としては直接は持つておりませんし、これはまた従来の制度から申しましても、やむを得ぬことであろうかと思うのであります。特に申し上げたいのは、石炭の非常な不況と申しますのが、何と申しましても、直接には重油関係に来ておろうと思います。しかし、重油関係につきましては、石炭界の現状から申しまして、重油を極力減らして石炭の生産あるいは需要をふやすような交渉は、通産省とも終始やつておる次第でございます。  なおこれは一つの楽観だと言われるかと存じますが、今日の石炭界の不況の原因の一つは、かなり季節的のものもあるのじやなかろうか。と申しますのは、最近の各生産工場が、将来においての値下りを見込んで石炭の買控えをしておるというようなことも、今日の非常に顕著に現われておる不況の原因の一半ではなかろうか、こういうふうにも考えておる次第でございます。  なお日満鉱業でございますか、これは私どもも昨日から話を伺つておる向きもあるのでございまして、さらにこれを純労働問題として解決しなければならぬ面につきましては、今後も十分調査もいたし、さらに適切な措置を講じたいと思つておる次第でございます。
  41. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私は造船の問題とか炭鉱の問題あるいは鉄鋼の問題というような、特殊な事件として大きく浮び上づておる問題につきましては、労政課でもけつこうですから、できれば一応の資料だけはあつて、そこをお願いして側面的にやつていただく、こういう機構でもおつくりになつていただきたい、かように希望して次の問題に移ります。  基準局長にお尋ねいたしますが、今話がありましたように、百幾つかの炭鉱が休鉱しておる、賃金未払いはものすごく起つておる、こういう事態でございますので、現場の監督署としては、とても手が届きかねると思うのです。そして一つの事件でも、簡単には解決しません。業者は夜逃げをしておる、こういうぐあいです。それをどうして追いかけて行くかという問題です。それで、たとえば解雇手当なんかありましても、解雇手当なんという段ではない。しかし全般的に見れば、やはり解雇手当を出さなければならぬ。経営上やむを得ないとは必ずしも言えない、こういう事態もあると思うのです。そうしますと、やめて行くへ間は、任意退職だということになりますと、四十日ほどかからなければ失業保険がもらえない、こういう法規になつておる。そこで現地では、その認定にいつでも困つておる。そのうちにしかたがないからやめて行く、こういうことですが、これは債権か何かにして、あとからとるとかなんとかいう方法にして、一応早く失業保険をもらえるとかなんとか、その辺の方法は講じられていないものであろうか、お尋ねいたしたい。
  42. 亀井光

    ○亀井政府委員 現地状況におきましては、解雇手当の問題につきましては、基準法上から申しますれば、現金で直接本人に支払わなければならぬ建前になつておりますが、炭鉱の事情によりましては、それをやむを得ず民事上の債権に形として切りかえまして、そして失業保険の受給資格をつけるというような措置をとつておるところもあるようでありまして、これはわれわれが直接指導したというわけではございませんが、現実にそういう方法をとつて急場の切抜けを行つておるようでございます。われわれとしましては、法規の正面解釈から申しますと、いろいろ疑義がございますが、現実の面から申しますれば、こういうことも一時しのぎ用としてやむを得ないのじやないかということで、現地々々におきまして適切に、そういう場合における法規違反については、できるだけ現状に即するような措置をとらせております。
  43. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 安定所とかあるいは基準監督署は、ことに今申しましたように地域的に集中しているわけでございますので、非常に手が行き届かない、あるいは人員不足である。加うるに、先日の委員会でも問題になりました標準賃金調査もある。こういうことで、人員が足らないと思うのですが、一体どういうように処置なさつておるか、お尋ねいたしたい。
  44. 亀井光

    ○亀井政府委員 もちろん全体の仕事の処理におきます理想的な人員であるとか、あるいは理想的な予算というものもありましようが、しかし現実と理想との間にどういうふうに調和をとつて、業務の能率の低下を防いで行くかということについては、絶えず苦心をいたしておるところでございます。従つて、事案の処理につきましても、緊急必要な度合いをその都度きめまして、監督署長がその月における事案の処理をそれぞれ決定いたしておるような次第でございます。結局は、申告のありました事件を優先しますことは、われわれの従来からの基本方針でございますし、まだ申告の中におきましても、どういう事案が緊急を要するかということは、現地々々におきましてその都度決定をいたし、人員予算の機動的な配置によりまして、重点的に重要な面から解決して行くというような処理をいたしておるのでございます。賃金不払いの問題は、いろいろむずかしい問題がありまして、結局は大臣の御答弁にもございましたように、経済あるいは財政金融政策解決を見なければ、根本的な問題は片づかないのであります。それかといつて、われわれがそれらの対策ができ上るまで時をむなしくするということもできませんので、現実に起りました現象につきましては、今申しましたような態度で重点的に処理して行くという態度をとつております。
  45. 江下孝

    ○江下政府委員 安定所は、御承知の通り最近失業保険受給者がふえておりますので、その面における人手が相当きゆうくつになつているということは申し上げたいと思います。その点につきましても、われわれといたしましては、特別に一地帯に大量の失業者が発生して、失業保険給付にさしつかえが生ずるようなことがあつてはなりませんので、そういう場合には、本省に申し出させまして、必要ならば臨時に職員を増配するようなことも考えて対処して行つておりますし、今後もさよういたしたいと思います。
  46. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 安定所の方は、失業保険をもらわなかつた事例はないと思います。業務が非常に過重になる程度だろうと思います。しかし、基準監督署の方は、働かなければ事件として起らないので、私は現地で基準監督署の監督官と何回も徹夜した例があるわけでございますが、一人が少くとも一週間は一事件にかかる。そうしますと、たとえば飯塚や直方、佐賀あたりでも、監督官は何人というくらいしかいないで、しかも百何十という山が休山をしている。私は現地実情を察するにあまりがある。ほとんど知つていないのだろうと思う。あなたの方は、人員増加あるいは増加の手配をするという話がありませんでしたが、増加の手配がないということは、結局、もうしかたがない、こういつてしていないと思うのです。だから、申告しましても、すぐにこうというわけには行かない。やはり事件が次から次と起つておりますから、私が申しましたように二十日ぐらいかかる。二十日ぐらいの間には、業者もどこかへ行つていなくなる。こういうことで、自動車を押えてみたらバツク・ナンバーがなかつたというようなことで、まつたく方法がない。あるいは税務署が先に行つてほとんど持つて行きますから、何もとるものがない、こういうことで、特殊な地帯には当然増員が必要であろうと思うのです。これに対して、どういう処置をとられているか。
  47. 亀井光

    ○亀井政府委員 人員の機動的配置は、言うまでもなく必要でありますが、それが他の局との関係においては、なかなか現実の面としてむずかしいと思います。われわれとしましては、とりあえず、たとえば北九州炭鉱を持つております福岡におきましては、福岡の局の監督官なり人員をそれぞれ必要なところに臨時に機動的に配置をして行く、これはわれわれもかねがね指示をいたしていることでございます。局と局との間の人員の機動的な操作ということは、抽象的には可能ではございますが、現実の面になりますと、いろいろな点で制約を受けきて、むずかしい面があるのでございまして、とりあえず今の段階におきましては、局の監督官なり職員を、必要な署の方に臨時に派遣するという措置はとつているわけでございます。
  48. 赤松勇

  49. 井手以誠

    井手委員 先刻の今村参考人の陳述は、労働組合にとりまして、労働条件その他について、多くの意見なり希望があろうと存じますけれども、それにもかかわらず、わが国の基幹産業である石炭鉱業の再建について、きわめて謙虚な発言があつたのでありますし、同時にその内容は、再建に必要な当面の融資が、応急の失業対策事業よりも少い。この際融資が必要であるという点や、重油よりも石炭の方が、現在の炭価ではむしろ経済効果が上るという重要な発言もあつたのであります。この点については、かんじんの通産当局が見えておりません。労働省でも通産当局との懇談の場合には、その点を重要な点として御協議をいただきたいと希望する次第でございます。  そこで、労働次官にお尋ねいたしますが、いろいろな対策を講じても、やむを得ず休山する場合に、大量な失業者が発生することは、当然でございます。この場合には、申すまでもなく失業対策事業が行われるであろうとは期待はいたしておりますけれども、各地に大量に発生しておりますので、若干の懸念なしとしないのであります。先刻も、その点については大臣から若干御答弁がありましたが、お急ぎになつておりましたので、十分の御答弁をいただけなかつた。この際政務次官から、労働省を代表しての御言明を願いたいのであります。やむを得ずそういつたことで大量の失業者が発生した場合には、現在質くさもないという悲惨な労働者の実態から、当然失業対策事業をやつていただけるとは確信いたしますけれども、念のために、そういつた地帯には遅滞なく失業対策事業をやるという御言明を願いたいのであります。
  50. 安井謙

    ○安井政府委員 個々の実情を十分調査いたしまして、そういつた問題につきましては、極力御期待に沿い得るような努力をいたす予定でおります。御存じの通り失業対策費も非常に不十分ではございますが、昨年度よりは若干ふえておりますし、さらに本年度実績から申しましても、まだ今ただちに今の予算でしのぎがつかないというような状態に至つておりませんので、十分な善後措置を講じ得るように努力する決心であります。
  51. 井手以誠

    井手委員 私ども考えでは、とうていあの対策事業費では足りないとは考えておりますが、予算成立日も浅いので、これを補正するとかどうするとかいうことは申されないでしようが、万全の措置を講じてもらいたい。一人でも—というのは、極端でございますけれども失業して仕事がないというようなことでは困りますので、特に格段の御配慮を願いたいと存じます。  次にお尋ね申し上げたいのは、失業保険のことでございます。現在の制度では、一週間に一回職業安定所に出頭して保険金給付を受けねばならぬようになつておりますが、御承知の通り炭鉱は山間僻地にあるのが相当ありますし、この半年くらいは、炭鉱労働者は現金千円も手に持つたことはない、ほとんど金券や現物支給である。そういつた悲惨な場合に、失業保険金をもらうということになりますれば、金を浪費すると言うと、語弊があるかもしれませんけれども、久しぶりに町に出て金を使うというおそれも非常に多いのであります。これはりくつとしては本人が自覚しなくちやならぬことは、言うまでもありませんけれども炭鉱労務者の特性から申しましても、久方ぶりに町に出て金を握るということであれば、そこに若干の浪費も出て来る。いろいろ悲惨な実例もございますが、ここでは申し上げません。町に出て来るために、遠くのところから、相当の費用をかけて出なくてはならないという不便もあるのであります。これは正面から申しますと、失業者が仕事もなくてひまであるから、かりに一日かかつても、歩いて出て来れば金もかからぬだろうということは、当然のことといえば当然でありますけれども、実際はさようでないのであります。またそういつたことについて金を使わせないようにやらせることが、温情ある政治だとも私ども考えるのでありまして、この点について、たとえば大量に発生した地区には、現地で支給されるような方法、あるいははつきり失業ということがわかつておりますので、一週間のものを月二回とか、こういうふうな便法ができないものか。これは実態から考えまして、私はその点を非常に痛切に考えますので、今の法規では簡単には行かないかもしれませんけれども、そうすることが実情に即するあたたかい政治だとも思いますので、この点についての便法、特別の措置を、この際承つておきたいと存ずる次第でございます。
  52. 江下孝

    ○江下政府委員 失業保険の支給を受けますために、失業者が安定所に出頭いたして失業の認定を受けるわけであります。つまり失業して、ほかに仕事がないという認定を受けるわけでございます。そこで、どうしても、原則上は建前といたしまして、安定所に出頭して失業ということを認定した上で失業保険金を支給することにしないと、困るのでございます。ただ、特に僻遠の地等でございまして、安定所に出頭するのに非常に金がかかるというものにつきましては、安定所が出張いたしまして、特別に認定をいたしまして支給するという制度を、今までもとつておるわけでございます。そこでこの問題は、具体的な場合によりまして判定をすることになるわけでございます。また、今お話になりましたような特殊な事情があるということでございます。そこで失業の認定は、これはどうしても私どもといたしましては失業保険の支給の適正を期する上からやらなければならぬことでございますので、一応認定と給付ということを切り離すということで、金はその地方々々の失業地区に行つて払う、しかし失業の認定は、やはり安定所でしてやろうという考え方はできると思うのでございます。そういう意味におきまして、この問題は至急研究をいたしたいと考えておるのであります。
  53. 井手以誠

    井手委員 ただいま御答弁のありました点は、若干実情に即した一歩前進した措置であると私は考えております。さらにその認定を一週間一回というものではなくて、月二回というくらいに延長させてもらうことはできないか。この点は、旅費その他の面から見まして必要に感じますが、いかがでございましようか。
  54. 江下孝

    ○江下政府委員 本来安定所への出頭回数は、週二回とい三のが建前、でございます。それを現実には二回出てもなかなか就職はむずかしいだろうという予想がつきました地区におきましては、週一回ということで現在まで来ております。そこで、この週一回をさらに延ばすかということになりますと、私どもとしましては、ちよつと今ここでそういうことをはつきり申し上げるわけには行かないと思います。なお研究はいたしてみたいと思います。
  55. 井手以誠

    井手委員 その点は慎重に、早急に格別の御検討を願いたいと思います。  次に、基準局長にお尋ねいたします。先刻大臣にお尋ねいたしましたように、こういう炭鉱におきましては、労働条件悪化が必然に起つて参るのであります。それが恒久化するというおそれもございますし、また一部では、資本攻勢の一端としてそういうねらいもあるかに承つておりますが、この点については、労働省として重大な問題であろうかと考えております。今村参考人も、今は再建に一生懸命となつておるとおつしやいましたが、ほんとうに労働者から申しますれば、この点は重大な問題でございますし、この際労働省として確固たる対策を立てていただかなくては、労働者生活安定ということは期しがたいので、労働条件悪化ということに対する御方針を承りたいと存じます。
  56. 亀井光

    ○亀井政府委員 言うまでもなく賃金につきましては労使の自主的な話合いでその額がきまつて参ります。それは、いわば基準法外でありまして、基準法としましては、そのきまりました賃金労働者に確保させるという問題でございます。そのほかの労働時間等の労働条件につきましては、労働基準法で厳然としてその最低基準が定められておりまして、その基準を下まわりますものにつきましては、当然労働基準法違反として是正をさせ、あるいは悪質なものにつきましては司法処分をしなければならぬわけでございます。そこでわれわれのこういう場合にぎまする監督の措置としましては、使用者がそれらのものを守り得る力を持ちながら、労働条件の低下に便乗して意識的に引下げるという場合におきましては、断固として監督の措置を講じまして、使用者を司法処分にすることも指示をいたしておるのであります。ただ、善意の使用者でございまして、あらゆる手段を講じましても、融資その他の関係からいたしまして、賃金も十分な支払いがなされず、また生産の維持その他の関係から、労使の話合いで、先ほどお話のございましたような労働時間の延長等の問題がきめられた場合におきましては、それは法律違反ではございますが、企業が倒れて労働者失業するということを考えますならば、それはあくまでも暫定的なものとして、われわれとしてある程度そこにあたたかい手を差延べてやる心要があるのではないかと思うのでございまして、基本的には、先ほど申しましたよらな法律をあくまでも厳守させるという態度は持しておりますが、具体的な車案事案におきまして、それが使用者の善意に基くものであり、それがまた労働組合なり労働者が納得し得たものでございますならば、暫定的なものとして、われわれとしてその同案まつて、その間におきまする条件の引下げはできるだけ早く解決させるというふうな措置をとつておるわけであります。
  57. 井手以誠

    井手委員 私、この炭鉱労働問題について、いろいろとお尋ねしたいことがございますが、要は労働省の熱意にかかつておるわけであります。また根本的には、財政金融政策にかかるのであります。炭鉱や造船その他の失業者が続出を予想される今日こそ、労働省が一番腰を入れて活動しなければならないときではないかと考えております。何よりも労働省サービス省としてその本領を発揮されることを、私は特に期待申し上げたいのであります。  私はこれ以上は申し上げません。特にこの際労働省の格別の御活動を願いまして、あとは通産当局がおいでになつてから、あらためてこの根本対策なり恒久対策について承りたいと思います。
  58. 赤松勇

    赤松委員長 それでは一時半まで休憩いたします。     午後零時三十分休憩     午後一時五十八分開議を開きます。  この際お諮りいたしますが、本委員会に付託並びに送付されております拙願及び陳情書の審査のために、請願審査小委員会を設置いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  59. 赤松勇

    赤松委員長 御異議なければさよう決します。  なお小委員及び小委員長の選任につきましては、委員長より指名することに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  60. 赤松勇

    赤松委員長 御異議がなければさよう決しまして、指名いたします。   池田  清君  稻葉  修君   多賀谷真稔君  井堀 繁雄君を請願審査小委員指名いたします。  なお小委員長には池田清君を指名いたします。
  61. 赤松勇

    赤松委員長 それでは失業対策に関する件につきまして、午前に引続いて調査を続行いたします。  市川参考人。
  62. 市川誠

    ○市川参考人 私、全駐留軍労働組合中央行委員長の市川であります。駐留軍の労働事情につきまして、以下公述いたしたいと思います。  一番大きい問題として、一般的に注目されておりました事項としては、日米労務基本契約の改訂の問題があつたわけであります。これは御承知のように、占領時代につくられました労務提供に関する契約を、新しい独立国の重態に適応せしめるように改訂をする問題であります。一応すでに三年ほどの経緯をたどつておりますが、この契約の基本になります基本的な協定の問題については、昨年の十月九日に日米両国政府の代表の間で調印をされています。しかしこの基本協定は、まだまつたく実施されておりません。その理由といたしましては、労務基本契約の構成が、基本協定と、四つの附属書と五つの労働政策指令から成り立つというようにきめられております。これらの附属書、労働政策指令が全部合意をされた上に、契約すべてが一箇月後に実施をされる、こういうとりきめになつておりますので、附属書の交渉、労働政策指令の交渉が一向に進んでいないため、せつかく合意に達した基本協定も実施に移されていない、こういう事情にあります。もちろん組合の立場といたしましては、いろいろな経緯、特に昨年はゼネストまでも闘つて到達した基本協定でありますので、たとい全面的な実施が不可能だとしても、部分的な効力を生ぜしめるような措置をするために、三つの事項について部分的な発効措置をするように要求いたしたのであります。三つといいますのは、一つは、保安解雇に対する取扱いの条項、二番目としては、人員整理の場合の事前調整の措置、いま一点は、労務者の責めに帰する事由による解雇の取扱い、これらについて部分的な効力を生ぜしめるように要求したのでありますが、なかなかこれまた交渉が進歩いたしません。その中で一つだけ、保安条項の問題だけ、ようやく本年の二月二日に、現行契約の附属協定の六十九号という形式で調印をされたのであります。従いまして、形式としては占領時代の契約の改正という形で協定を結んだのでありますが、実質的には十に関する条項を部分的に発効せしめるという内容のものであります。その後さらにその他の附属書、労働政策指令等についての交渉を促進して参つたのでありますが、契約改訂について、当初労働組合も入れて、政府、軍、労組の三者の構成による会議で協議をすることになつていたのですが、この三者会議は、すでに六箇月も開かれていないという状況で、実際的な労務基本契約の改訂交渉はストップされている状況であります。こういう情勢の中におきまして、政府といたしましては、管理者側として軍との折衝を進めております。そういう経緯の中におきまして、本年の四月一日に、調達庁としては、附属の中で給与とか定労働、保安衛生というようなことを除きましたその他の項目、さらに労働政策指令のうちで人員整理と制裁と雇用の解除の三つについて、調達庁長官と軍側の代表の間で調印をいたしたのであります。この調印の形式はきわめてあいまいでありまして、管理者側で合意されたといわれている、ただいま申し上げた附属の三と労働政策指令の問題につきましても、いまだ政府と軍との間で一致したという案が、組合側に正式に提示されていない状況であります。  附属の中でかなりの問題点を示しておりますのは附属の一、すなわち給与表と、附属の二の職務分類表で、大きな問題点として残つているわけです。最近の調達庁側の態度といたしましては、契約改訂交渉の中におきまして、給与問題において、かなり組合側と対立を生ずるのではないかと考えまして、調達庁としては、一応軍側に附属の一とそうして現在取扱つている給与規程によつてこれを補つて行く方法をとつたらどうかというような折衝をいたしているわけであります。この問題については、まだ何ら軍側で正式な意思表示がなされておりません。  そういう状況で、契約の改訂交渉は、要約して、交渉は進んでいない。また締結の時期に対する見通しの問題についても、政府並びに軍側にいろいろ見解をただしましても、その見通しもはつきりしていない、こういう状況にあります。しかし、むしろ内部的な労働者に加えられている労務管理の実態からは、どうしても新しい契約を早く実施をしなければならないという必要性が、各現地ではかなり強く迫られて来ております。こういう情勢の中におきましては、労働組合側といたしましては、政府、軍側が、どういう意図をもつて交渉を具体的に進展せしめないのか、その意図が那辺にあるかは問題外といたしましても、組合の立場から、現在のような膠着している契約改訂の交渉の状況を打開するために、促進する措置をとらなければならない事態に来ていると考えられております。基本契約の改訂交渉については、以上申し上げたような状況で、はなはだ遺憾でありますが、一向に進展していないという一語に尽きると思うのであります。  それでは、こういう一番根本的な労務提供に関する諸条件を約束する基本契約の問題が、こういう状態で停頓しているうちにおいて、実際各地で働いている労働者は、どういう労務管理の中に置かれているかという点について、幾つかの事項について、事例をあげて御説明申し上げたいと存じます。  まず一つの問題としては、人員整理の問題であります。人員整理状況については、詳しい資料を差上げる準備がなかつたのでありますが、大体私どもが概括的に調査いたしましたところでは、対日講和条約が発効した二十七年の四月末においては、大体二十万七千ほどの政府雇用の労務者がおつたのが、二十八年の四月の調査によると、大体十七万四千ほどに減つている状況であります。その中で、特に昭和二十八年中における状況を見てみますと、大体解雇、退職者が総数として約四万程度、このうち冠の都合に、よる整理が二万一千ほどであります。あとは自己の都合による退職者が一万二千程度、軍の制裁解雇が千八百、あとは公傷病、私傷病等で、合せて三千百程度の人が退職している。その他千六百ほど、こういうことであります。二十八年に新たに入つた労務者が二万七千ほどありますので、大体推定では、労務者の減員は約一万二千くらいになつていると思います。  最近の状況については、大体青森、山形、宮城、この十六軍団の関係において約五百七十名ほどの首切りが出ております。六月の中旬、下旬にかけて、解雇の効力が発効する状況でございます。さらにキヤンプ・トーキヨーの関係においても、芝浦の補給部関係について、百七十名ほどの首切りが出ております。埼玉の朝霞の方においても、首切りが出ておつたのですが、これは折衝の結果、撤回をされたという経緯になつております。神奈川に、私ども組合関係として二百四十名ほどの首切りが出ております。大阪に日赤病院の返還等の関連で、二十名ほどの首切りが出ております。九州の方へ参りまして、長崎で陸軍、海軍と両方で大体六百名ほどの首切りが出ている。現在私どもが入手した情報によりますと、陸軍関係で千六百名ほど、海軍関係で五百十名ほど、海兵隊関係で八十余名、こういう整理がなされております。いずれも理由といたしましては、作業量の減少とか、あるいは定員の削減とか、予算の削減によると言われておりますが、職場の実態は必ずしもそのようではないので、組合といたしましては、いろいろな点を指摘いたしまして、労働強化の点とか、あるいはまた爾後の生活保障の問題とかいうような点を考えまして、これらの点についていろいろと反対闘争をいたしております。  こういうような闘争の中で見ますことは、もし新しい基本契約が発効されておりますれば、この種の整理を行う場合には、軍といたしましては、当然事前に日本政府側に通知をいたしまして、その調整手続をとるようにきめられておりますが、新しい契約が発効いたしておりませんので、これだけの整理が行われるにもかかわらず、日本政府側に交渉した際には、政府側としては何らの情報も聞いておらない、こういう状況であります。従つて政府としているく措置を尊る、あるいは失業対策等の問題も、なかなか進捗しないという状況にございます。特に労働者といたしましては、いろいろな状況を勘案いたしまして、こういうような人員整理という問題が、おそらく駐留軍の漸減的なコースをたどつておるところの首切りではないかというような状況も勘案いたしまして、首切り反対の闘争をやつておりますが、その中において、最近の顕著な要求といたしましては、条件闘争の中では、八割増しの特別退職手当を支給してくれ、こういう要求がかなり強く出ております。特に人員整理問題といたしましては、私どもの得た情報では、本年度における自衛隊二個師ほどの増強に伴つて北海道九州には相当大量の首切りが起つて来るというような状況も感ぜられておりましたので、この要求が非常に強い要求となつて参りまして、過日東京で行いました私ども組合の全国大会では、この首切りに対して、八割増しの退職手当の要求を掲げて、本年ゼネストを用意して、そうして闘うというような大会決定もなされております。現在参議院の人事委員会におきまして、議員提案という形で、この問題で法案を提出していただくようにも、いろいろとお願いをしておるのでありますが、整理をめぐる要求として、この問題が大きく浮かび上つておる状況であります。  次の第二点といたしましては、保安解雇の問題であります。先ほど申し上げましたように、基本契約の部分発効といたしまして、本年二月二日に保安に関する協定が結ばれたのでありますが、その後保安解雇がかなり集中的に出て来ておるように感ぜられるのであります。埼玉の朝霞では、二月の六日に一名出たわけであります。それから青森県の三沢で三月に一名、東京の羽田地区で三月の三十一日に十名、東京のフインカム支部で四月七日に二名、神奈川県横須賀海軍基地で四月九日に六名、それから鳥取県の美保基地でありますが、五月の六日に六名、兵庫の伊丹支部では五月の六日に五名、福岡の芦屋地区で五月四日、六日にかけて二名というように保安解雇が出ております。  これらの該当者を見ますと、組合の役職関係の全然ない方もありますが、特にはげしいと思いますのは、福岡の芦屋地区では、支部の副委員長と書記長が保安解雇に充てられておるというような状況があります。羽田の場合でも、支部の副委員長と執行委員が二名、それから委員が二名ほど入つておる。こういうような状況を見まして非常に微妙なものを感ずるのであります。  こういうような状況に対しましては、附属協定の六十九号の手続通り実施するという問題と、それから保安の基準というものが今度きめられておりまして、はたしてそのいずれに該当しておるかというような理由を明示するということを約束いたしておるのでありますが、軍側に対してはきわめて消極的で、その理由明示を迫つておらないというような状況であります。労働組合の立場あるいは該当の本人といたしましては、この六十九号の協定の中に、保安解雇になつた者は、当然訴願する権利を協定の中で認められているのであります。しかし、本人が自分の陳述書をつくりまして訴願の手続をするにいたしましても、いかなる理由でいかなる事実に基いて保安解雇として指定されたのであるか、不明のままでは陳述書の作成も困難だというような事情で、この理由明示をめぐりまして、かなりの争いがあります。特に、ただいま申し上げたように保安解雇が集中して出て来た空軍関係におきましては、つい最近まで、この六十九号の協定——アメリカ政府の代表と日本政府の代表が調印をしたこの協定自体も無視をするというような解雇もありまして、非常に紆余曲折を経たのでありますが、今この保安解雇の問題が、新しい協定を実施後、かなり集中的に出ておりますので、大きな関心事となつておるという状況であります。  その次の問題といたしましては、賃金ストツプに関するところのハル大将の指令の問題であります。この点につきましては、今年の給与改定の際に、私どもとしては、中央労働委員会に調停を申請いたしまして、調停案が出されたのですが、その調停案の第二項に、賃金不均衡の点については将来原資を別にして引続いて調整をして行くというような案が出されておりまして、労使双方ともこれを了承をいたしたのであります。その後、具体的にどのような手続方法によつて不均衡を是正するかという点については、労働協約によりますところの中央労働協議会で議論いたしまして、取扱つて行くことにきめたのでありますが、軍側といたしましては、このような賃金の不均衡是正というものは一切行わないというようなハル大将の指令が出されまして、各地方で大きな問題を起しておるのであります。具体的には、福岡の小倉では、現地部隊も県側も労働組合側も、この賃金を是正するという案に同意をしたのでありますが、その後軍側は、上級からの命令だと言つて一方的にこれを拒否し、一旦三者で確約したものを、一方的にふみにじつておるような事例が出て来ておるのであります。福岡では、このハル大将の指令の撤回の問題を掲げまして、四月二十二日、二十三日と四十八時間のストライキを行つたような状況であります。その後この指令の撤回につきましては、政府にも強く交渉いたしまして、一部昭和二十七年の一一四八号という通達をストップするものではないというところまで行つたのでありますが、また解釈問題について、新しい問題を軍側が起して参つておりまして、実質上賃金の不均衡の是正がとどめられておるという状況でございまして、一旦軍の首脳部あるいは現地部隊で約束したものも、その後一方的に拒否をして実施をしていない、こういうような事例になつております。  第四点として申し上げたいのは、いろいろな不当労働行為が基地で行われております。そういう点についての幾つかの事例といたしまして、私どもこの救済を地方の労働委員会に提訴をいたしておるのであります。昨年の十二月二十四日に、兵庫の地労委で、モーター・プールの柴田支部長に対する救済命令が一件出されております。さらに本年の一月三十日には、大阪の地労委で、日赤の支部長でありました山本一郎君に対する救済命令が出されております。また二月十日には神奈川の地労委から、追浜分会の執行委員の柳町健吉君に対する救済命令が出されております。この三つの救済命令が出されておるのでありますが、政府側としては、軍がこの救済命令を受入れないからという理由だけで、一切拒否をして、三件とも中労委に再審を申し立てておるという状況であります。中労委に再審申立てになりました中で、兵庫の柴田君の案件につきましては、審査も進められまして、実は四月二十七日に中労委から労使双方に和解の勧告がなされたのでありまして、労働組合側といたしましては、この和解勧告を受けまして、具体的に交渉するようにはなつたのでありますが、またまたこの和解勧告に対しましても、調達庁側が座間の陸軍部隊司令部に折衝をしました結果では、和解に応ずることはできないというふうに拒否をして来た。そのために、今最後的な折衝をもう一回政府側としては軍といたすことになつておりますが、このように地労委の救済命令が三つ出た場合に、すべて拒否してしまつた。もうりくつも何もわからないで、全部断つて行く。この軍の態度というものは、私どもとしては、行政協定等で日本の労働法規に従うことを約束し、また当然準司法機関としての労働委員会の権威なり地位から考えまして、その中で、どれかについては異議があるということならば、話もわかるのでありますが、一切拒否をしておる。こういう態度については、かなり重視をしなければならないのではないかというように、非常な関心を深めている次第であります。  なお、このほかにも、ことに最近東京地労委関係でも救済命令がなされております。さらにまた神奈川におきましては、地労委が却下した事案について、中労委に再審を申し立てました結果、救済命令がなされたというような事例もあります。労働委員会関係の事案については、すべて組合側の主張が通つている。しかも、それが合法的な命令として出されているが、軍が拒否をしているために、その履行が停頓しておる、こういう事情があるのであります。  その次の問題といたしましては、最近大阪あるいは埼玉等に起つている問題でありますが、大阪におきましては、部隊側で労働者に履歴書を全部書かせる。その中には個人の思想等の記述もさせる。あるいは政党関係の所属関係等も書かせるというような点で、基本的な人権として秘密が認められるべきような事項についても記述が求められているので、いろいろ反対等も行われました。その結果大阪地区本部の高橋委員長に対して、首切りの通知を出して来たというような事例が起つております。さらに埼玉の朝霞等につきましては、毎日二十人、四十人ぐらいずつ労務者を呼びまして、ずつと古い昔のやみ米を買つて経済事犯に問われたとか、あるいは無燈火で罰金をとられたとかいうようなことを調べ上げて、そういうようなことが履歴書に書いてなかつたというようなことで、いきなり首を切つているというような、むちやな労務管理が行われているのであります。  さらに二つほどの事例について申し上げますと、佐世保におきましては、ジヨスコーと申しまして、石油関係の仕事であります。それは二〇%の危険手当をつけておつたのでありますが、これを本年の二月から一方的に打切つてしまつて政府の異議申立てを受けつけていないというような状況であります。さらにまた大阪で昨年ストライキをやつた際に、軍側が労働協約におきます事前通告の条項をふみにじつて、ロック・アウトに出て来たのであります。それについての賃金補償問題については、労働省等の見解を付して折衝したのでありますが、いまだに軍としてはこのような賃金補償に応じないといつてつている。  以上、申し上げましたような事例を総合してみますと、労務基本契約の改訂交渉が遅々として進んでおらない。こういう情勢下におきまして、駐留軍労働の労使関係については、政府といたしましては非常に消極的な態度をとつておるようであります。軍側といたしましては、労働組合側の要求や政府の要求も一切拒否して、自分の思うがままの管理というものを、ここにはつきり打立てて行こう、そうして新しい契約改訂交渉の中に、そういう実例をつくろうとしているのではないかというように感じられる節があります。そういう中におきまして、組合といたしましては、やはり契約問題につきましては、占領時代の契約というものを早く改めて実施をして、また政府との関係におきましては、日本の法律に基いて、労働協約によつてはつきりした労働の諸条件というものをとりきめするようにしたいという態度をとつております。しかし、この労働協約につきましては、軍が政府に干渉して参りますので、政府組合とが自主的な立場において協約を署することも、なかなか困難な事情にあります。そういうような角度から見ますと、駐留軍労働の最大の危機的な事態がここに来ているのではないかと案じられる節もあるわけです。  こういう中で指摘し得るところの根本的問題といたしましては、すでに国会方面でも十分御考慮願つておりますが、行政協定の中におきます十二条五項の適用の問題と、同じ行政協定の中の第三条にあります軍の施設の管理権との競合の問題、これらについて、はつきりした見解なり措置というものがなされない限り、いろいろな事案の解決というものは、最後には軍の管理権の主張によつて拒否されるというような事態が現実に起つているわけです。  その次の問題としては、現在駐留軍労働におきましては、軍が経費を負担しているという点から、かなり強い主張がなされておりますが、こういう点につきましては、行政協定の二十五条の中にあります防衛分担金の負担の割合がきめられております。われわれとしては、この協定を改訂いたしまして、日本政府側が負担するところのあの防衛分担金の中から、労務費を日本政府側にリザーヴしておいて、それによつて日本政府雇用して行くという方法をとる、そうしない限りにおいては、なかなかすつきりした間接雇用制度の実施というものは困難ではないかというように考えております。それらの点が、かなり根本的な問題として指摘できるのではないかと思います。以上のような点についてもいろいろと御配慮願いたいと思うのであります。  次に国連軍関係の問題につきましては、いろいろと御配慮をいただいて、つい最近軍側との暫定的な契約の仮調印等もできまして、七月一日に間接雇用に切りかえるという状況なつております。二年有余にわたりまして、軍直用毎度というかなり悪い条件のもとに苦しんで参りました呉と岩国と東京の恵比須の労働者は、この点に関して、この委員会で御配慮いただいたことに感謝をいたしておりますので、この際申し上げておきたいと思います。  最後に、以上申し上げた基本契約下の労働者の問題ばかりでなく、軍直接雇用の宿舎要員の問題につきましては、労働基準法の適用と社会保険の諸法の適用の問題について、いろいろと御配慮願つておるのでありますが、さらにこの実現の促進をぜひお願い申し上げる次第であります。  その他の直接雇用労働者については、かなりいろいろな紛議も起こつておりますが、私ども組合といたしましては、軍直接雇用労働者に対する統一的な労働条件を設定するために、就業規則の変更を軍側に申し出るように決定いたしまして、昨日と本日にわたつて、空軍の司令官と陸軍の司令官に、退職手当に関する条項、夏季手当、年末手当に関する条項、給与改訂に関する条項、私傷病の取扱いに関する条項、社会保障制度の適用に関する条項、この五つの条項については、少くとも陸、空軍管下については、全部を通じて統一的な条件をもつて雇用するように申入れをいたしたのであります。本件につきましては、労働大臣に一応要望をいたしておりますので、これらの点について、間接雇用労働者にも増しまして深い御配慮をお願いしたいと存ずる次第であります。  以上、たいへん長くなりまして、資料も差上げず公述いたしまして失礼でございますが、以上の点について、いろいろと御配慮願いたいと思います。
  63. 赤松勇

    赤松委員長 川畑参考人。
  64. 川畑政男

    ○川畑参考人 私、日本駐留軍労組合中央委員長川畑であります。ただいま全駐労の市川委員長から、いろいろ陳述がありましたので、重複するところは避けまして、私、日駐労としましての陳情及び請願をいたしております関係上、その三件につきまして申し上げたいと思います。現在陳情をやつておりますのは、労務基本契約の早期発効につきましての請願と、駐留軍労務者の特別退職金制度の陳情及び請願、夏期手当の要求に関する陳情の三件でありますが、この三件につきましては、すでにお手元にプリントを配付してありますので、特に重要な点について私から陳述いたします。  新労務基本契約につきましては、ただいま市川委員長からいろいろ説明がありましたが、私といたしましては、新労務基本契約が発効しないために現状がどうなつておるかということについて、申し上げたいと思います。  まず第一点としましては、軍が一方的に米軍案を準用しておるという点であります。現在の労務政策指令の問題でありますけれども、この労務政策指令に対しまして、極東軍指令部から各司令官あてに対しまして、米軍案をそのまま準用せよという指令を出しております。中部管区司令部に対しましては、五月四日付でもつて各地区司令部に流しまして、現在部隊に到着いたしております。そこで、こういつた点から行きまして、米軍としましては既成事実をつくりつつある。すなわち、日本政府組合が了承しないところの労務政策指令の既成事実をつくつてつて、そこでもつてつて行こうという考えがあるのじやないかというぐあいに推測されるわけであります。この点につきましては、調達庁に対しまして、すでに問いただしたのでありますけれども、調達庁としましては、まだ不明である、調査するという回答が来ております。さらに横浜地区司令部におきましては、六項目の就業規則に値するところの条項でありますが、その条項を各人に配付いたしまして、理解した、あるいは読んだということに対しましての署名をとつております。組合側としましては、そういつたものは全然知らないというわけでもつて、その署名を拒否いたしております。  以上が、軍が一方的に米軍案を準用する意図を持つておるというところの問題であります。  次に、第二点としましては、先ほど市川委員長からいろいろ説明がありましたように、労働三法が守られていないという点であります。特に地方労働委員会とか、あるいは裁判所等の問題につきましては、まだ新しい労務基本契約が発効していないために、その効力が薄い。特に日本政府を相手どつて地方労働委員会等に提訴いたしましても、米軍が拒否しておるというような点で非常に問題点があるわけです。  第三点としましては、主文の内容につきましては、共同管理の原則になつておるわけです。ところが、これが発効しておらないために、日本政府機関がロボット化している。すなわち、第一項目で申し上げましたように、軍が一方的に米軍案を準用するという意図があります関係上、日本政府機関をロボット化したいというところの意図があるわけです。人員整理とかその他の問題等におきまして、日本政府機関に交渉しましても、その権限は米軍にあるのだ、米軍が拒否するという態度であります。特に、三者会議を開きまして、米軍を交えて会議いたしましたときに、米軍の方は、その決定等についてはおれの方にあるんだ、組合側あるいは日本政府側がつべこべ言うなということを言つておるわけです。そういつたことが、新しい労務基本契約の発効しないところの現状である。そこに現在の駐留軍関係の紛争の基点があるというぐあいに考えております。  次に、第四点でありますけれども、間接雇用の利点がそこなわれつつあるという点であります。間接雇用につきましては、すでに行政協定第三条の問題等から行きまして、現状は間接雇用でなければいけないということになつておりますけれども、新しい労務基本契約が発効しない現状におきましては、やはり間接雇用の利点というものがだんだんそこなわれて行くというところの現状にあるわけです。  以上新しい労務基本契約の発効しないところの駐留軍労働者の問題点につきまして、総括的に申し上げましたけれども、行政協定の改訂とか、あるいはこの早期発効につきましては、国会で御協力をお願いしたいというぐあいに考えるわけです。  次に、駐留軍労務者の特別退職金制度の請願につきまして申し上げます。駐留軍労働者の特別退職金につきましては、まず駐留軍労働者失業の問題がからんで来るわけです。この失業の問題につきましては、すでに駐留軍労務あるいは駐留軍業務というところの性格上の問題から行きまして、漸減するところの現在の駐留軍労務の中にあるわけです。その漸減につきましては、現在どのような状況なつておるかということを申し上げますと、昨年の暮れに、陸軍関係におきましては約五千名の人員整理があつたわけです。本年になりましては、一月から六月三十日まで、すなわち米軍予算年度下半期におきましては五%ないし一〇%の人員整理が行われております。現在十七万四千名が駐留軍労働者としておるわけです。この決定的な失業に対しまして、現在の失業対策あるいは救済制度というようなものは、どういうふうになつておるかと申し上げますと、退職金規定と失業保険のみであります。そのほか失業対策といいますのは、従来は駐留軍のほかの部隊、すなわち、ある部隊が縮小されますと、その他の部隊がふえるわけです。そのほかの部隊に、いろいろな形におきまして収容して来ておつたわけです。ところが現状におきましては、ほかの部隊の収容能力というものが一般的に減つております関係上、収容はできない。そうしますと、現状におきますところの失業というものは、すなわち一般産業等に受入れられない失業者として、ほうり出されるわけであります。そのような状況にある。だから、結局失業対策の問題がここに大きくクローズ・アップされて来るわけです。さらに来年度予算というものが七月一日から始まるわけです。ところが、七月一日からの予算につきまして、やはり同じように減少して行くということが考えられるわけです。ですから、失業対策という問題が大きく出て来るということと、さらに現状におきましては、失業した場合にどこにも行けないということで、退職金規程と失業保険のほかに、特別退職金制度というものを設けてもらいたいというところの要求を持つておるわけです。このことを調達庁及び政府に対しまして要求いたしまして、請願も出したわけです。この特別退職金制度につきましては、日駐労といたしまして一〇〇%、全駐労といたしましては八〇%ということを要求しておるのでありますけれども、その根拠になりますのは、国家公務員につきましては、すでに特別退職金制度、すなわち行政整理のときには、特別退職金をやるということが確立されておるわけです。そのほかに恩給制度とか、あるいは共済制度とか、そういつたことがあるのでありますけれども、しかしながら、駐留軍関係につきましては、そういつた制度がない。しかも、労働条件は法律第百七十四号によりまして、政府が国家公務員その他の一般産業等の労働条件を勘案してきめるということになつておるわけです。そこでいろいろ調達庁等に対して数度、団体交渉したのでありますけれども労働条件は国家公務員に準ずるということを回答しております。そこで、駐留軍労働者に対しましても、特別退職金制度を設けていただきたいというぐあいに請願したわけです。  次は、夏期手当の要求の陳情であります。現在駐留軍労働者の身分といいますのは、昭和二十七年の法第百七十四号によつて、駐留軍労務者という身かにあるのですが、その第九条に、駐留軍労務者の労働条件といいますのは、これは一般産業あるいは国家公務員等の労働条件を勘案してきめる。それは調達庁長官がきめるということになつておるわけです。そこで組合側としましては、夏期手当の要求としまして、一箇月分を調達庁長官に対しまして要求いたしました。ところが、調達庁としましては、国家公務員に準ずるということを回答しておるわけです。組合側としましても、現在の状況からいたしまして、夏期手当を一箇月分支給していただきたいということを要求しておるわけです。特に駐留軍労務者としましては、本年の一月から一〇%のベース・アップがあつたわけです。ところが、先ほど申し上げましたように、部隊の予算削減のために、現在週四十八時間から週四十時間制に減らされておるわけです。一週間六日しか働かないわけです。ですから、結局月にいたしまして三千二百円ほどの減収になつておる。それに加えて、横須賀等におきましては、強制休業をやられておるわけです。すなわち、仕事がないために強制的に休業させる、その場合には基準法に従いまして六〇%は支給されるのでありますけれども、三日に一回ぐらいの程度でもつてそれをやられるというところの、こういつた強制休業がやられておる。それによつて約二千円の減収である。そうしますと、五千幾らの減収になつておるのです。そのように非常に駐留軍労務者といいますのは、一月一日に一〇%のベース・アップはあつたけれども、実質的には減収になつておるという点、こういつた点が非常に駐留軍労務者の生活の脅威というぐあいになつておるわけです。そこで組合側としましても、駐留軍関係におきましては特にこの点を考慮していただきたいと考えておるわけです。その点を現在陳情及び要求しておるわけです。  以上申しましたように駐留軍労務者といいますのは、非常に現在困難な状況にありまして、国会におかれましても、十分御勘考願いたいと思います。
  65. 赤松勇

    赤松委員長 阪本参考人。
  66. 坂本登

    ○坂本参考人 特需関係のことについて陳述いたします。現在の役務特需われわれの場合は車両でありますが、これの概括的な状況について申し上げます。  七月の契約の改訂の時期に参りまして、昨年の十一月、大幅の軍予算の削減にによつて人員整理等の公示を見まして、そういう状況の中にありましたものですから、今度の七月においてどういうように再契約がなされるかという点は、われわれも非建心配しおつたのであります。現在これに対する予備交渉が行われておるような時期にありますが、現在でにわれわれの接しております情報では、七月契約をめぐつて、さらに契約が減るとか、あるいは全面打切りになるというような情報には接しておりませんので、一応愁眉を開いておるような状態にあります。  こういうような状況の中にありまして、ただ一つ異例の事実としましては、日本飛行機の杉田工場、子安工場、この二つ、従業員が約三千二百ほどおリますが、この中で八百名ほどの整理問題が起きまして、現在これに対してり反対闘争がストライキに発展しておる。その見通しにつきましては、はなはだ暗澹たるものがある。こういうことで、われわれがかつて経験しましたような、特需における首切りのおそれが現状においてもここには存在しておる。これが異例の事実でありまして、一般的に見ますと、先ほど申し上げましたように、一応小康を得ているというような状態にあります。早のわれわれの関心誓いたしましては、七月の契約がどういうような状況において現実に締結されるか、こういう点が大きな関心になりますが、この点につきましては、先般来本委員会、それから関係当局の御協力を得まして、われわれの要求しましたところの、間接契約あるいはその他の方法によつて保護を受けるという点は、現在の見通しにおいては、特需が非常に暗澹漁としておるから、早急には困難である。そういう点から、万一の場合に備えて、失業対策、それから退職金の保障、こういうものの法制化を要求して参つたわけでありますが、これらの趣旨をくんだ形で、今月の十八日ですか、日米合同委員会において、総括的に特需の保護措置について一応の調印を見た、こういう情報をいただいておりますが、これによりますと、まず特需が打切られるというような場合には、従来とかわつて、かなり以前に米側の方からそういう意思表示が業者になくてはならぬという点が第一点。第二点としましては、万一従業員を解雇するような事実が発生した場合には、予告手当については、従来事業主がこの負担に耐えて来たわけでありますが、今後は米側がこれに対するところの財源を保障する。さらに退職金の問題につきまして、一応労使の間に取結ばれたところの協定による退職金の額の相当額までは、米側が同じようにあらかじめ契約単価の中にこれを織り込んでめんどうを見る、こういう点。第三点としましては、急に仕事が減つたというような場合には、スライドして収入が減るということでは事業が危殆に瀕する、こういう観点から、段階方式と申しますか、エスカレーター方式と申しますか、そういう形をもつて、仕事が半分に減つても、収入の方は五割減らないで、二割あるいは三割というような一定の基準を設けるという制度をとる点。第四点としましては、一旦打切られたというような場合には、業種転換の便に供するために、米側が従来使つていたところの不要の施設を業者に安く譲り渡すというような便宜を提供する、こういうような点か要点になろうというふうに考えておりますか、これらの点が実施されますと、われわれの要求して参りました趣旨が、かなり具体的に貫徹される、こういう一とになりますので、われわれとしても非常に感謝しておるわけであります。  ただこれが、現実に米側のJPAの夫約担当官と業者の間でこの契約の折衡をする際に、従来当局の方からもしばしば言われておりましたことく、私契約という関係上、これをやる場合、これらの条項が機械的に適用されるのではなくて、それらの折衝の結果にまつという関係を見ますときに、現在の特需業者の立場が、従来言われておりますように非常に弱い立場にある、こういう点から十分な主張がなされない、結果においては従来と何らかわり“ような結果を来すのではないか。こういう点を、われわれの力あるいはあ他の力をもつて、ここに掲げられたような条文が完全に現実化する、こういうことをどういうところに保障を求めたらいいかという点が、いまだわれわれとして心配な点であります。従いまして、これらの点につきましては、きよう関係当局の方もお見えでありますので、今私の心配しますような、この合同委員会で勧告案として決定を見たものが契約に現実化する過程において、どういうようなかつこうをとつて、どういう点で未解決で、どういう点がさらに問題として残るか、こういう点について疑問を明らかにしていただきたいということを要望するわけであります。  次に、その他の問題でございますが、現在、占領中のような不当労働行為あるいは保安解雇とか、そういうような問題に対しては、特需に特に発生しておるというような事実は聞いておりませんが、契約関係につきましては、よしんば今回とられたような措置によつて、一応中間的に安定を見るといいましても、昨年の例に見ますように、米側の何かの事情で突然に変化が起るという場合には、特需の場合には、明らかに閉鎖というものをめぐつて失業問題が起るわけであります。そこで、失業対策という点は、われわれはこういう渦中にありましても、従来通り大いに関心を払わざるを得ないわけであります。この点につきまして、特需の場合には、自家施策あるいは官有施設を問わず、一応の事業所を持ち、それらに対しても相当の施設を持ち、あわせてこれらに習熟した労務者を持つ。こういう観点から、適当な仕事と、これに要するところの資金というものが見られる場合には、業種転換ということが非常に考えやすいわけであります。そこで、この特需の現在の姿から、業種転換に対するところの指導、あるいはこれに要するところの資金の特別な措置、こういう点が依然われわれ現段階として要求したい点であります。それも何もいかぬ、こういう場合が、従来われわれが現在のような情勢を見る以前において、もし特需が六月で大部分が打切られたらということを予想して参りました問題の未解決な点でありますが、業種転換が成功せずして、やはり不幸にして一部閉鎖を見る、あるいは全面的に閉鎖を見る、こういう場合の対策につきましては、これは一般の産業の失業対策とかわらぬわけでありますが、われわれの場合こは、一時期を画して非常に大量にそういう事態に見舞われる。こういう観点から、ふだんにおいて、これらに対する就職あつせんの問題あるいは退職手当の保障の問題をさらに具体的にしておきたい、こういうようなことに対して非常な関心を持つておるわけであります。大体特需の現状並びにわれわれの関心を持つておる問題は以上でありますので、よろしく御審議願いたいと思います。
  67. 赤松勇

    赤松委員長 稲冨参考人。
  68. 稲富信義

    稲富参考人 ただいま坂本参考人から、役務関係特需の問題について陳情がありましたので私も同様の関係でありますから、簡単に補足程度に陳述をいたしたいと思います。  去年の十月から在日米軍予算が約三一%削減になりましたことに端を発しまして、その後現在までに概算一万五千人の解雇を見ております。すなわち当時四万五千人の雇用をかかえておつた役務関係特需は、現在約三万人に減少をいたしております。この傾向は、今後も大体あとを絶たないのではないかというふうに予想されます。ただいま陳述がありましたように、一応七月の契約更改期において、大きな変動は予想されておりませんけれども、世界情勢の変化がない限り、漸次先細つて行くということは既定の事実であると存じます。そういう場合に、われわれとしても念願をいたしますことは、特需という形でなくて、その他の国内産業のある部門にスムーズに業種が転換されて行けば、われわれの雇用も確保される。すなわち、これ以上の解雇を見ないということになるわけであります。われわれとしては従来からこの業種の転換について、政府は綜合的な見地から業者に対する指導なり、援助なりをしてもらいたい、従つて、そういうことでわれわれの失業というものを未然に防ぐ手を打つてもらいたいという陳情を繰返して参りました。これは役務関係特需の実態が、大体少くも千名、多ければ八千名程度をかかえる事業場がほとんど全部でありまして、特に国有施設を貸与されまして特需に従事をしておる企業が相模工業、富士自動車、ビクター・オート、日本製鋼赤羽等四社あります。そのほか自家施設を持ち、役務関係特需をいたしております事業といたしましても、雇用量が多い関係で、自家施設でありながらも、スムーズな業種の転換は、ほとんど不可能であります。ましてや先ほど申しました国有施設の貸与を受けておる企業におきましては、国家が何らかの方針を確立して転換の指導なり援助なりをしないことには何ら打つ手がないわけでありまして、結局米軍予算の削減に伴う特需の先細りということは、そのまま労働者の解雇に通ずるという機械的な結果が招来されるわけであります。われわれとしては、こういう点について大体見きわめがぼつぼつつきそうな時期ではないか、すなわち、政府として総合的な対策が立て得る時期ではないかというふうに考えまして、その対策をお願いをいたしておるわけでありますが、まだはつきりした形のものは出て来てないというのが現状じやないかというふうに考えます。こういう点につきまして、すなわち失業を未然に防止するという雇用確保の対策について、今後とも御努力をお願いいたしたい。もし、これが間に合わず、やむを得ず解雇をされて行くという事態に対して、坂本参考人の陳述にもありましたように、失業対策の拡充あるいは退職金の保障すなわち調達庁などで業者と軍との間に行われる契約の側面的な援助をして退職金積立てのわくを拡大するとか、あるいはまたこの委員会で数回審議をお願いしました、少くも駐留軍関係労務者並みに政府において保障をするというような措置を講ずるとか、そういう措置によつて、退職金についても考慮をお願いしたい、こういうふうに考えるわけであります。  以上、補足的に陳述を行いました。
  69. 赤松勇

    赤松委員長 この際参考人に申し上げますが、質疑の過程で御発言がございましたら、どうぞ委員長の許可を得て発言してください。  それではこれより質疑を許します。多賀谷真稔君。
  70. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 まず政府にお尋ねいたしたいと思います。労務基本契約の主要点について、米軍側の調印が終つたわけですが、今まで附属協定ができなくて主文も発効しないという状態なつておりますが、これが遅延した理由を、政府側はどういうように御判断になつておるか、お尋ねいたしたい。
  71. 百田正弘

    ○百田政府委員 労務基本契約の主文につきましては、昨年の十月一日に調印いたされたわけでございますが、その後におきまして、御承知の通りに四つの附属書と五つの労働政策指令というものがございまして、これが交渉に入つたわけでございます。すでにその前の段階におきましても、あわせてこの問題の交渉が行われて参つたのでございますが、主文の一応の決定ということに関連いたしまして、われわれ自身の提出した案も、これをさらに有利に訂正する必要がございましたので、日本側の再提案もいたしますと同時に、先方ではそれを審議いたしましてさらに提案をして来る、そういう事態が数回繰返されたわけでございます。しかしながら、その間におきまして、われわれといたしましては、主要なる点につきましては、昨年中に大体の同意をし得るのではないか、多少問題に残るにいたしましても、そういつた大部分の点においては、同意できるのではないかというふうに考えておつたのでございますが、たびたび申し上げました通り、軍側におきましては、陸軍と海軍と空軍と、この三つの軍がそれぞれの意見を出して参りまして、極東軍司令部においてこれを調整するというような状態なつておりますために、アメリカ側におきましても、内部の意見の調整のために労働政策委員会なるものをつくりまして、日本側から出されたものを検討する。一つの軍が反対でありますと、あくまでもこれがきまらない。かりにきまつたとすると、最も悪い状態できまるというようなことになりまして、それが日本側に提出されました場合には、われわれとして、これをのむわけには参らないというような状態が、相当期間繰返されたわけでございます。こういう状態では、いつまでも双方におきましてすべてが同意できない限り、契約全体を発効できないということになりますと、非常に問題を残しますので、問題を急速に詰めてしまう必要がある。ところが、従来の行き方によりますと、われわれがある点においては異議はない、ほかの条項において意見を出すということになると、さらに向うから出して来た提案には、こつちが異議がないという点についても、さらにかわつた案を持つて来るというようなことで、これについてただしますと、要するに全体との関連であるからして、すべてまだ議論の自由は保留されておる。オープン・ツー・ディスカッシヨンというようなことになつて参りますので、かような状況でいつまでたつてもきまらないということで、本年の一月でございましたか、契約促進のため、少くとも附属書の三に関する限り一応妥結を見たところ議論はすまい。多少の不満足な点があつても、一応たな上げにするというような提案をいたしまして、それによりまして、ある程度の条項は、簡単に申し上げますと、管理手続の二十数項目のうちの十項目ばかりにつきましては、附属書の一、二、つまり給与の点に関係する事項を除いて、多少不満なところはありましたけれども、一応議論の対象から除外する。これについては双方とも意見は言わない、さらにかえて来るようなことはしないということで、本年の四月にたな上げにいたしたわけでございます。その他の問題だけに議論を集中して行く。むろん、そのたな上げした部面におきましても、これは双方ともでございますけれども、全体のできぐあいによつて最後の態度を保留しておるという事項もございますけれども、そういうふうな方式をとりまして一段階を区切つたわけでございます。  現在一番問題になつておりますのは、主文との関連におきまして、日本側とアメリカ側との間における費用償還の問題でございます。この点につきまして、現行契約時代における日本側、アメリカ側との債権債務の関係、これの清算という問題があるわけでございます。これにつきましては、向う側はこちらの費用の検査等もいたしましたし、日本側といたしましては、これに対してこちらの精算を出す。これに対しまして、向う側といたしまして、早急に出すと言いながら、現在に至つてまだ最後的な向うの案を持つて参らないというな状況のために、これは直接労働組合とは関係ございませんけれども、この点契約の主要な部分におきまして、これが片がつかなければ進まないというような点が一点あるわけでございます。  さらに、もう一つの大きな問題といたしましては、給与に関する問題でございます。給与に関する問題につきましては、附属書の一、二というものにおきまして、職階職務給の制度を提案して参つたのでございます。職階職務給の制度は、理論的には首肯し得る面もございますけれども、その格付と申しますか、それがいわれるアメリカ式である。従つて、日本における労働慣習あるいは職務の評価というものから、かなり食い違つている。しかも、ある程度の差ならばいいけれども、それが相当に食い違つているために、簡単に意見の調整ができない。そういう事態におきましては、われわれといたしましても、簡単にこれをのむわけには参らないということで、これは主として首脳部の交渉になつたわけでございますが、アメリカ側におきましても、最近におきましては、この点についてアメリカ的なやり方をやつて行くということは、結局契約そのものを遅延させるだけにすぎない。従つて、日本における状況に応じた案につくりかえる必要があるのではないかというような考え方にかわつて参りまして、この点につきまして、向う側といたしましては、最近の考え方といたしまして、これを現在の契約で使つております給与に関するスケジュールAというものがございますが、大体これの線で参ろう。しかもこれの改正と申しますか、そういう形で参りたいというふうな意向をある程度明らかにして来ておりますので、この点につきまして、双方の交渉する基盤が大体同じような基盤に乗つて参りましたので一これはことがことだけに、相当問題があろうかと存じますが、近く具体的な話合いに入れるのじやないか、こういうふうに考えておるわけでございます。われわれといたしましては、こういう契約の促進と、もう一つ言い忘れましたが、附属書の四というのが船員に関する規定でございます。これは陸上とはまつたく違つた体系をなしておりますので、この点が事務的には遅れておりますが、この点につきましての促進並びにその他の点の交渉の促進という点を、われわれやりますと同時に、実は現行契約のもとで起つて参りますところのいろご、な問題、あるいは現行契約下の解釈の問題、こういう事項について意見の食い違いが出て参りますために、これの交渉をあわせて進めているという状況でございます。それで、われわれといたしまして、今一番問題にいたしておりますのは、第一に、要するに新契約の基本協定においては、共同管理という原則がうたわれることになり、共同管理の原則というものが発効すれば、現行契約下において、現在いろいろ起つているトラブル、これは未然に防ぐことができ、従つてわれわれとしては、百も早く新契約によるところのこうした問題の処理に移行したい。と同時に、現在問題になつているいろいろな点につきまして、契約を早く発効させたいために、簡単に譲るわけには参らないというような問題があるわけでございます。しかしながら、交渉のことでありますので、あるいは百パーセント満足の行くところまでとつて初めてというまでには、そういうことが百パーセント見通しがあるということも言い切れませんけれども、この点における問題の処理、契約の早期発効という問題と、つまり新契約によつてすでに獲得した部面を早くやらせるという問題、しかもそれに附属する内容を最も有利に解決し、その線をどこら辺で、大所高所から見て判断して結末をつけるかという点に、実は最も頭を悩ましているような状況でございます。  現在までの状況はそういうふうな状況でございます。
  72. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 人員整理の問題が、差迫つた問題であり、きわめて重大な問題であります。この主文には、事前通知ということが明記されており、調整をはかるようになつているが、こういつた面でも発効はできないものかどうか、その点についてお伺いいたしたい。
  73. 百田正弘

    ○百田政府委員 ただいまの人員整理の問題につきまして、これは現在の契約のもこにおいて、私がまだ着任する以前でありますが、組合側、調達庁側、軍側、三者の話合いによりまして、現在の新契約の内容に含まれたものに、多少近づいた人員整理に関する臨時指令というものができているわけでございます。新しい契約における人員整理の規定は、今多賀谷委員からおつしやいましたように、事前調整ということが一つ入つているわけでございます。これにつきましては、昨年の十二月ごろでございましたか、去年の大量の人員整理がありました場合に、調達庁長官から軍側に強力に申し入れまして、こういうふうに突然人員整理計画の発表を見るということは、まことに遺憾である、従つて今後はこれを是正してもらいたいということで、その後軍といたしましては、大規模な、要するに全国的にわたるような人員整理につきましては、あらかじめ調達庁長官に通知をするということで、この点は了承いたしているわけでございます。  なお、つけ加えて申し上げますが、昨年の秋に大量の人員整理がありましたが、その後につきましては1事業が非常に減つたというような事情のために、多少の人員整理は見ておりますけれども、本年の一月から三月までの状況におきましては、昨年の同期よりも、はるかに少いというような状況でございまして、最近十五箇月間のうちでは、この一三の人員整理というものは非常に少い数字なつております。
  74. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 例のハル指令をめぐつての問題ですが、現状はどういうようになつているか、お尋ねいたしたいと思います。
  75. 百田正弘

    ○百田政府委員 本年の三月に、今ご指摘のありました、これは極東軍司令官としてのハルではございませんが、陸軍司令官としてのハル大将から、たまたま福岡県の戸倉で起きましたところの給与調整に端を発しまして、これをストップしたというような問題が起つたわけであります。これにつきまして、その後引続き交渉いたしたのでございますが、これについて、当初先方が、三月のハル大将名による指令そのものの内容自体については、非常に不備なところがあるということを認めまして、全面的な給与調整のストップではないのだ、現行契約下において両者の間で合意しておるところの手続によつてやることに、何もストップしておるのではないのである。ただ問題は、全般的なと申しますか、一般的な給与調整というものは、新しい契約の関係もあるので、これとにらみ合せてきめて参りたいというような意向であるということを明らかにいたしておるのでございますが、ただ問題は、現在の給与調整に関する規定そのものについて、われわれと軍側におきまして、解釈の上で完全に対立いたしておる点があるわけでございます。従つて、これにつきましては、われわれは実際の根拠をあげまして、この解釈並びに具体的な問題の発生いたしましたキヤンプ・コクラにおける問題の性格というものにつきまして、黒白を明らかにいたしたいということで、現在FECと交渉中でございます。まだ結論が出ておりませんけれども、われわれとしては、相当有力な資料も現地から出ておりますので、これは今後強力に交渉して参りたい、そして早期にこれが解決をはかりたい、かように努力したいと考えております。
  76. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 ちよつと組合側にお尋ねいたしたいと思いますが、保安解雇の問題であります。保安をする権利があるのだけれども、現実はほとんど不可能に近い、こういうことを指摘されたわけですが、もう少し具体的になぜそういうことが困難であるかをお知らせ願いたい。
  77. 市川誠

    ○市川参考人 二月の二日に、現行契約の協定の六十九号として協定されたものの中には、次のような条項に該当する場合には、保安上危険であるという理由によつて新しく採用されることもないし、また現に就労しておる者も排除される、こういう協定がなされたわけでございます。その基準は一といたしましては「作業妨害行為、牒報、軍機保護のための規則違反またはそのための企画、若しくは準備をなすこと。」二、「A側の保安に直接的に有害であると認められる政策を継続的に且つ反覆的に採用し、若しくは支持する破壊的団体または会の構成員たること。」三、「前記1号記載の活動に従事する者または前記2記載の団体若しくは会の構成員と、A側の保安上の利益に反して行動をなすとの結論を正当ならしめる程度まで常習的に或は密接に連繋すること。」この三つの基準に該当した場合には排除されるということになつております。従つて軍側が、まずこういうような基準に該当するおそれがありとした場合には、第一段の措置としては、現地部隊の指揮官が基地の中に入つてもらつては困るという就業禁止の措置を、日本側の出先であります労務管理事務所の方に通知することになつておりまして、このことはただちに措置をすることになつております。部隊といたしましては、さらに労務者を解雇しなければならないというように考えた場合には、現地部隊の指揮官が上級部隊の三軍の指令官によつて任命された指令官に解雇の承認を求めるように手続することにきめられております。そういうような軍内部の審査手続を経まして、その上級部隊の指令官が解雇を決定する場合には、あらかじめ調達庁長官の意見を聞いてそれらを考慮した上で決定をしまして、その決定した現地部隊に通報する。現地部隊の指揮官が初めて労務管理事務所の所長に解雇の要求をする、その場合には、保安の許す限り理由を明示することになつておるわけであります。  ところが、現在までになされておる状況を見ますと、先ほど申し上げましたこの基準の第一項に該当するとか、あるいは二項に該当するとかないしは三項に該当するということだけを、解雇理由として述べて来ておるのであります。どういう事実があつて第二項に該当するのか、あるいは第三項に該当するのかということは、少しも明らかにされておらないのであります。なお、幾つかの事案につきましては、全然この基準の何項に該当するかということすらも、政府の出先機関に通告して来ないのであります。そういう状況にありますので、この保安の解雇につきましては、解雇要求をなされましても、現地の労務管理事務所長といたしましては、三稼働日以内に意見を出すことができるわけでありますし、また解雇要求がありましても、現在の附属協定では、十五日間を限つて日本政府側としては、調停のための手続をとる猶予期間として期日があるわけであります。そこで十五日たつて解雇が発効いたしましても、なお本人といたしましては、解雇が発効した後十五日以内に、三軍の司令官に対しまして、それぞれ手続を経て訴願をすることができるようになつております。この訴願には、該当者本人の自由な形式による陳述書を添えて出すことになつております。もしこの訴願がなされた場合には、三軍の司令官はその事情を調査し、また調達庁長官が前に出しました意見等も十分に考慮しまして、白と認められた場合には元へもどすという措置もとられるように、訴願の項できめられておるわけであります。この場合には、組合あるいは本人といたしましては、相当詳細な事項、先ほど申し上げたような三つの事項に該当しないという陳述を整えて出すわけでありますが、解雇理由が明らかに示されておりますれば、それに対して十分納得の行くような陳述書を用意することができるわけでありますが、漠然として基準の一項該当、二項該当ということで一どういう事実があつたからそれに該当するのかということが、少しも知らされておらないので、陳述書作成にあたりましても、漠といたしまして、問題の焦点に対して明白な陳述、疎明を行うことができないというような状態に置かれているということを申し上げる次第であります。
  78. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 続いて参考人にお尋ねいたしますが、芦屋でも副委員長と書記長が解雇されておるということですが、組合としては、具体的にどういう反対闘争の方法をとられておるか、お尋ねいたしたい。
  79. 市川誠

    ○市川参考人 ます第一点でありますが、この附属協定につきましては、私ども組合の立場といたしましては、不満足なものではありますが、占領時代一の契約にありましたように、アメリカ政府の利益に反すると思われるものは即時雇用が中止され、解雇される、こういう占領時代の契約よりは、若干改善されたものと考えまして、一応同意した経緯等もあり、従つて六十九号の附属協定の手続によらない保安条項の取扱いについては、まず手続違反といたしまして、これに対して是正を政府並びに軍に対して要求いたしております。また組合といたしまして、三つの基準に該当するかいなかということは、お互い自分たちの仲間でありまして、妾の高等もいろいろ知り得ている部面がありますので、それらについているくな疎明できる窟筆整え、あるいは前に該当者が勤務しておつた会社あるいは工場等、いろいろ関係のところからの疎明資料等を集めまして、そういうものでない、該当者でないというような資料の整つたものを政府機関等に提出いたしまして、それ  によつて軍側に再審査あるいは保安解雇としての措置の撤回を要求する運動を進めております。本人につきまして、いろいろと詳しい書もそれぞれ個々に聞いて行かなければならぬの  で、画一的な闘いといたしましては、手続違反の問題では押せるのでありますが、内容の本質的な問題につきましては、一人々々の実情を十分に調べまして、組合といたしましては、とにかくこの方法によりまして、もし軍側が誤認をしたというようなことがありますれば、元にもどせる措置というものが、今度の附属協定の中にはつきり出ておりますので、こういう点については、そういう方法をとつて、これらの協定によつて、無実の者が首切られるようなことのないようにする線で、現在各地本ごとに個々の撤回闘争を進めておる、こういう状況でございます。
  80. 川畑政男

    ○川畑参考人 私から具体的な事例につきまして一言申し上げたいと思います。四月に神奈川県のYEDで保安解雇が起つたのです。そこで本人に対しまして、そういう覚えがあつたかということを聞きましたところが、全然そういうことがないというわけです。本人もそうですし、そのうちの付近等に対しまして、組合側からもいろいろ調査したのです。極端に言いますと、警察関係に行きましても調査したのです。ところが、全然そういう覚えがないということを言うわけです。そこで、労管と神奈川県庁に対して、その撤回方を交渉したのです。ところが神奈川県といたしましては、具体的な理由は言えない1言えないというよりも、軍から示していない、ただ保安解雇だけであるということです。そこで組合側としましては、横浜地区司令、中央管区司令、それから遂に極東軍司令部まで行つたわけです。ところが、本人はそういうことがないかもしれない、しかしその姉の方が何かあるのじやないかというわけです。そこで、組合側としては、今度はその姉のことを調べたわけです。ところが、本人には姉がないわけです。六つになる妹しかいない。そこで、姉はいないということでいろいろやつたけれども、結局理由は言えないこいうことで、おしまいになつておる。現在その闘争が継続しておるという状況なつております。簡単に申しまして、以上が具体的な事例です。
  81. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 労働省にお尋ねいたしたいと思います。これは実はアメリカ軍ではありませんでしたが、直接雇用の形式にありました国連軍の場合に、われわれに調査に行きましたとき、これは即時解雇の場合が多いのですが、調べようと思つても一人の人間に二十日もかかつたという事例を、現地の監督署は申しております。たつた一人調べるのに二十日もかかるということで、非常に調べにくいという陳述をわれわれは受けたわけであります。これは直接雇用ではありませんけれども、そういう面があると思う。そこで不当労働行為にかかりました場合に、労働委員会でも非常に困難をして、やつと調べ上げて不当労働行為の認定をした、救済命令を出したと思うわけですが、それが先ほど参考人からの話によりますと、全然受入れられていない。もちろん中労委に申立てをする権利はありますけれども労働事件といいますのは、御存じのような状態で、早くきめなければならぬ問題であるにかかわらず、全部中労委に出る。これはアメリカ軍だけでなくて、フランス人経営の帝国酸素のような場合も、やはり同じである。こういう一連の問題が起つておるわけですが、労働省としましては、こういう問題についてどういうようにお考えであるか、これをお尋ねいたしたいと思います。
  82. 赤松勇

    赤松委員長 政務次官がお見えになつていませんので、質問は保留されますか。
  83. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 それでは、今の問題は保留いたしまして、続いて軍直用の労務者について、質問いたしたいと思います。ことにハウス・メイドの問題であります。これは十分善処を願えるものだと考えておりましたけれども、一向にまだ返事がないわけです。一体どういうようになつておるのか、お尋ねいたしたい。
  84. 亀井光

    ○亀井政府委員 ハウス・メイドの問題につきましては、前回の当委員会におきまして、実地調査をするお約束をいたしまして、私どもの監督官がワシントン・ハイツにおきまして調査いたしました。成増その他の基地につきましては、中に入つて調査いたしますことについて、手続上なかなか困難でありましたが、ワシントン・ハイツにつきましては、一応向うの許可を得まして、また司令部の方の労働の係官並びにそういう宿舎のハウス・メイドの係を担当しておる本部の将校も参りまして、実地調査をいたしました。先般当委員会に要望がございましたいろいろな項目がございまして、その中の一つ一つにつきまして、調査をしたわけでございます。あの中の大部分のものは、御承知のように言語、風俗、習慣等が違いますことから来る感情上の問題が、相当たくさんあつたわけです。こういう問題は、労働基準法外の問題でございまして、どうするわけにも参りません。賃金の問題を調べましたところ、これも参考人がその当時お話しておりましたように、六千円から八千円という程度のものが、一応支給されておるようであります。労働時間も調べましたところ、大体九時間で、夜も五時で帰る。住込みの場合は違いますが、朝八時から五時というのが通常であります。また寮の中に湯茶を沸かす設備がないというようなお話もございました。参りましたところ、寮の各個人のとまつておる部屋にはございませんが、各寮の中にはそれぞれ炊事の設備がございまして、そこで十分湯茶を沸かすこともできるというようなことで、ワシントン・ハイツに関しまする限りは、この前参考人がお話になりましたような事柄は、感情上の問題を除きましては、直接労働基準法の上におきましてどういう対策をとらなければならぬという結論は、見出し得なかつたわけであります。従つて、感情上の問題につきましては、ハウス・メイドを管轄しております本部担任の将校に対しましても、十分その点の是正をお願いいたしました。また、名前は忘れましたが、その担当官が、そういう不満があれば、いつでも労働者自身の声として直接われわれに聞かせていただいてもよろしいし、あるいは官庁側からそういう点について不満の事項を具体的に申してくだされば、是正について十分努力したいというようなお話もございまして、ワシントン・ハイツにつきましては、相当いい印象を得て帰つたという報告を私は受けております。成増その他につきましては、多少違うかもしれないと思います。と申しますのは、ワシントン・ハイツは将校の宿舎か主体でございますので、そういう点の考慮が十分払われておる点もあろうかと思います。成増等につきましては、調査をするために入らしてもらうことにつきまして、交渉いたしておりますが、まだ了解を得られないので、いずれ了解を得られ次第さらに調査をいたしたいと思います。
  85. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 この前見えたのは、たしか成増であつたと思うのですが、実は私国連軍の直接雇用当時から、ハウス・メイドがどういうふうになつているかということを、ちよつと聞いたことがあるわけです。ところが、これは社会保険にも入つておるし、労基法をやつておるというのです。それで英軍の方が現在やつておるが、米軍の方ができないというのはどうもおかしいのですが、その点非常に差があるのじやないか。そこで国連軍の方が、ハウス・メイドについて労基法及び社会保険が実施されておるとするならば、これは当然アメリカ軍の方もできるはずですが、その点の経緯がわかりましたら、お知らせ願いたい。
  86. 亀井光

    ○亀井政府委員 英軍当局におきますハウス・メイドは健康保険なりあるいは労働基準法が適用されておるかどうかということは、実は調査をしておりません。いずれ調査をいたしまして、この問題に対してお答えをいたしたいと思います。ただ、もし適用されておるといたしますれば、雇用の形態が米軍の場合と違うのじやないかという気がするのです。すなわちホテルとかあるいはアパートというふうな形において共同の雇用をし、その共同の雇用主がそれぞれのハウスにメイドを派遣するというような雇用形態をとつておるのではないかという気がいたしますが、いずれ調査いたしたいと思います。
  87. 百田正弘

    ○百田政府委員 ただいまの英濠軍関係のハウス・メイドの関係でございますが、これはたまたま私、今度英濠軍関係の労務者の間接雇用切りかえの問題で、現地にも参つて交渉して参りました。そのとき問題こなつたのが、間接雇用切りかえの範囲であつたのであります。われわれ一番問題にいたしましたのは、その前、当委員会に私たまたまそのとき出席しておりましたし、この取扱いの問題であつたと思います。ところが、これは英濠軍関係では全然問題にならない、当然間接雇用に切りかえる。それではPXその他はどうか、これもそうだということで、全員切りかえることになつた。それで事情を調べてみますと、PXその他につきましては、これはフアンドは歳出現金でやつておるけれども、支払いは英濠軍自体が行つておる。PX等の関係はあとで内部的な関係として処理しておる。従つて、それは全部軍自体が、対外的には立てかえても、支払うことになつておる。ハウス・メイド等についてはどうか、純然たる個人サービスか、そうじやない、これは直接英濠軍自体が雇つておる。中に何人かは純然たる個人使用があるかもしれない、それは別だ。それは別だけれども、大多数は英濠軍自体の使用人だ。こういう関係であつたので、英濠軍関係については、その点が全然問題なかつたわけであります。その点は、米軍と異なつておるわけであります。
  88. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 ことに私たちが要望し、お願いしたのは、やはり雇用形態をかえなければ、法律上は無理である。いかに行政措置としてやろうといたしましても、無理であろうと思う。ですから、この前も話しましたように、どこかで雇用して、それを割当てて内部操作でやつていただきたい、こういう方法はとれないものであろうかということを提案した次第であります。ですから、その方向に動いていただきたい、かように要望して次に移ります。  労働大臣が見えておられませんので、政務次官に二点質問いたします。それは御存じのように、労務基本契約が、附属協定ができないために発効を見ていないわけであります。主文につきましては、いろいろ努力していただいたわけですが、かんじんな発効ができないということでは、何にもならないわけであります。労働省としては、どういうように努力していただいたか、こういう点が一点。実は駐留軍関係には不当労働行為が非常にひんぴんとして起つておりますが、労働委員会でいろいろ、困難な事情の中にやつと調査して、仲裁命令を出しております。ところが、仲裁命令がほとんど全部再審にかかつて、そして拒否をされて聞き入れていない、こういう実情であります。法律的に申し上げますと、それは何も再審を拒む理由はないのですけれども全般の問題として、日本の法のもとにおいてこれを遵守しようとする精神が、ちつとも見られない。これは単に駐留軍だけでなくて、外人経営の商社その他についても、同じことが言い得るのでありまして、帝国酸素のごときはその尤たるものであろうと思うのですが、こういう点について、労働省ではどういうように考えておられるか、お尋ねしたいと思います。
  89. 安井謙

    ○安井政府委員 基本契約につきましては、御承知の通りに、労働大臣が調達庁担当の大臣といたしまして、責任者として昨年来非常に努力をして参つたことは、御存じの通りでございます。しがし、その後事務的な折衝、発効に至るまでの経過では、労働省こいたしましては、これを側面的に推進いたしまし何分にも調達庁あるいは外務省が直接の担当責任者でありますので、労働省としましては、内部的にこれを推進して行くようなことで、一日も早く発効することを期待いたしておる次第でございます。  それから、不当労働行為の問題につきましては、これも御存じの通りに、地労委にかかれば、当然これは早急に解決さるべき性質のものでありましようし、また前に参考人からもお話がありました保安解雇のような問題がございますれば、これにつきましては、それぞれの労働委員会に付議するといつたような形で、早急な解決をやるべく努力をしておる次第でございます。  さらに個々の問題につきましては、労政局長から御答弁させていただきます。
  90. 中西実

    ○中西政府委員 不当労働行為事件につきましては、これは労働組合法の不当労働行為事件として、当然法の適用を受けて行われるわけであります。ただ、占領中の事件につきましては、せつかく地労委が調べましたにかかわらず、その結果のうまく実現できなかつたというような不都合が相当ございまして、その後向うにも十分申し入れまして、占領が解けまして以来は、今申しましたように完全に労働法の適用がありますので、従つて地労委に提訴される。そうすれば地労委で決定をする。しかしながら、それに不服があつて、再審で中労委に出て来るのは、これはもうやむを得ないかと思います。もちろん、実際の審問をするような場合に、若干の不便のあることは、いたし方がないのじやないかと存じておりますが、建前といたしましては、労働法の規定の通り手続をいたしてやつておる。なお、非常に不都合な点があつたり、あるいは特に遅れるというような特別な事例がございますれば、お申出いただきますれば、取調べて促進するようにいたしたいと思います。
  91. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 若干の不便というような程度ではないようであります。先ほども局長が見えないときにお話したわけですが、これは事件はちよつと違いますけれども、実際国連軍関係で、即時解雇の場合は、監督署が一人の人間について二十日もかかつておるということを言つておる。非常に困難であつて、ほとんど調査は不可能である、こういうことすら言つておるのでありまして、この点は何も米国だからといつて、そう違いがないと思う。そういう非常に困難な中でやつと調査をして、仲裁命令を出した。ことに今起つておりますのは、座間の問題ですけれども、これは再審になり、中労委で和解の勧告をしておる。ところが駐留軍の方ではそれを拒否しておる、こういう状態です。何も和解ですから、拒否し  てもいいのですけれども、そういう場合には、やはり労使関係を早く安定さすという意味で、政府の方では軍の方に早く片づけるように和解に乗つてくれないか、こういう努力をされてしかるべきだと思うわけであります。こういつた点について、どういうような努力が払われておるか、お尋ねいたしたい。
  92. 中西実

    ○中西政府委員 地労委、中労委、ことに地労委の事実審査の際に相当な困難があることは、事実でございます。しかしながら、法の建前からいいますと、やはり労働法の適用がされており、向うもそれを了承し、それに協力というか、従うことになつております。従つて、具体的な問題につきまして、御承知のように、若干の日本人同士の間の話合いというのでは、幾分トラブルがあるようでございますが、その場合には中労委が直接軍にかけ合つておることもやはりございます。それからわれわれのところと勢いたしましてやつておる場合もございます。神奈川の事件につきましては、常に中労委も直接折衝しておりますし、われわれも協力し、外務省も協力して折衝するという措置もとつております。なお具体的な問題につきましては、さらに調査の上、あるいはお申出いただければ、それにつきまして処置いたしたいというふうに存じております。
  93. 井堀繁雄

    井堀委員 駐留軍労務者の問題も、特需関係いたします労働者の問題も、かかつて行政協定の十二条の二項と五項に関する点に私はあると思います。そこで、この二項と五項について、はつきりただしておきたいと思います。  十二条二項には「現地で供給される合衆国軍隊の維持のため必要な資材、需品、備品及び役務でその調達が日本国の経済に不利な影響を及ぼす虞があるものは、日本国の権限のある当局との調整の下に、また、望ましいときは、日本国の権限のある当局を通じて又はその援助を得て調達しなければならない。」、こう明示してあるわけであります。この文言で明らかなように、役務の提供を受ける、あるいは物品その他の調達を受けようとする場合に、日本国経済に不利益を及ぼすおそれがある場合、この言葉通りに見れば、権限ある当局とは言うまでもなく政府のそれぞれの局をさすものと思うが、それらのものの協力を受ける、もしくはその援助を受けて調達するという約束をいたしておるわけであります。そこで、日本国経済に不利益になるかならぬかということについての判断は、もちろんアメリカ軍の見解もあるかもわかりませんが、この条約の精神から行けば、もつぱら日本のそれぞれの当局の見解が前提になつて来るものと思うのであります。私はこういうふうにこの条項を理解しておるのでありますが——そういたしますと、先ほど来問題になつておりますそれの解決については、私は見通し相当明るくなつて来ておると思います。  さらに、第五項でありますが、これはことに駐留軍労務の問題に関係の深い条項でありまして、これを読んでみますと「所得税及び社会保障のための納付金の源泉徴収及び納付の義務並びに、別に相互に合意される場合を除く外、賃金及び諸手当に関する条件のような雇用及び労働の条件、労働者の保護のための条件並びに労働関係に関する労働者の権利は、日本国の法令で定めるところによらなければならない。」—もちろん日本国の法令の中においては、憲法は申すまでもありません、労働法規また当然であります。こういうものが当然含まれておることは、この文言上疑う余地のないほど明確であります。しかるに、これが今日十分履行されていないところに、それぞれ問題の原因があると私どもは理解できるのであります。     〔委員長退席、池田(清)委員長代理着席〕 従いまして、この行政協定の二つの項について、今私が読み上げました、また私が多少見解を加えたのでありますが、この見解に相違がある、またこの文言について附加すべきことがあるならば、この際承つておきたい。
  94. 安井謙

    ○安井政府委員 具体的な問題でございますので、外務省の方から御答弁した方がよいと思います。
  95. 井堀繁雄

    井堀委員 この文言については、何人もそう議論のあるところではないと思うのです。  そこで、特需並びに駐留軍の労務については、私は一般労務や、一般の産業のもとにおける労働問題とは、やはり特段の相違のある点をあげなければならないと思う。その一番大きな理由は、戦後日本経済をささえる大きな役割を特需で果しておるということ。特にその大部分、役務の提供もしくは日本国の労働者の汗とあぶらによる犠牲的な奉仕によるドルの獲得であります。今日昭和二十五年から昭和十二十七年の日本経済の実態を、経済審議庁の二十八年度年次経済報告書の中で明らにされておりますものを引例いたしますと、二十五年から二十七の年間の特需を、金額に表わしまして十五億七千万ドルであります。この十五億七千万ドルが、日本経済の最も危険な状態にある際に、非常に大きな役割をしておるのであります。また今日問題になつておりまする国際収与のバランスがこわれて、それが日本経済に及ぼす経済的な危機というものは、非常に大きなウエートを占めておるわけであります。そこで、この問題が大きく出て来るわけでありますが、ついででありますから申しますと、この十五億七千万ドルというものが、当時輸入超過で日本経済を脅かしておりましたその問題を解消して、さらに何がしかのドル資金を日本経済のために余し得たのは、この二十五年から二十七年の特需経済の中にあるわけです。当時の統計を見ますと、十一億六千万ドルの二年間における貿易赤字というものを、この特需によつて決済して、なおかつ余つておるわけであります。このような大きな日本経済の危機を救う役割を演じた。すなわち、当時の占領軍駐留軍のもとに賦役を提供して、直接ドルをかせぎ、もしくは軍需をまかなうために、日本の労務者が日夜苦労を惜しまずして奉仕して得た、日本のための大きな経済的な奉仕であります。それが今日、そういう労働者の十分な保護も、労働法の適用も受けられない、あるいは労働法の保護が十分労働者に及ばないというようなことがあるといたしますならば、これは、もう言うまでもなく、日本政府の重大な責任であると言わなければならぬわけです。またそれぞれの行政を分担される当局にとりましては、大いに責任を感じなければならぬ事柄だと思う。このように問題を十分把握していただきまして、御答弁を願おうと思うのです。  そこで、さつき引例いたしました行政協定第十二条の第二項であります。私はこの二項の中に明記しておりまする日本国経済に不利益な影響を及ぼすというこの項であります。確かに特需が、アメリカの一方的な事情によつて解約もしくは破約をされた部分は、相当量に及ぶのであります。たとえば、今直接問題になりました昭和二十八年の駐留軍労務者の首切りの直接にあげられましたのは、この前のわれわれの質問にお答えになつたことで明らかなように、アメリカの第一四半期の軍事予算を四割方切り詰めるというアメリカ本国の事情によつて、日本の労務者に対しては、予告なくその整理に当面したことも明らかであります。これはもうこれだけをとつても、アメリカ国の御都合のために、日本国の経済どころではなく、日本の労働者生活権をも脅かすような首切りがいきなり行われるということは、日本の労働法の精神から行きましても、許すところではありません。少し憲法をお読みください。アメリカがサゼスチョンレ、もしくは協力してつくられた日本国の憲法でありますから、念のために読んでください。これはメイドの問題にも関係いたしますから申し上げておきますが、私どもの強調いたしたいのは憲法の二十七条の規定であります。第二十七条の規定は、申すまでもなく勤労者の権利を保護しようとする規定でありまして「賃金、就業時間、休息その他勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。」—これは、とりもなおさず労働基準法でありますが、この精神は、基準法に限られるだけでなく、基準法以外の、基準法の適用を受けられない部分については、私は憲法の解釈に基いて日本の行政的保護が行われるところに労働省の任務があると思う。こういう点から判断いたしますならば、メイドの問題が基準法にいう工場や事業場でない、すなわち日本流で言いますならば、家事使用人ということで保護を受けられない奴隷的条件がしいられるというようなことがありますならば、私は憲法の精神に基いて、当然アメリカ国に交渉してその救済を行うべきであると考えるのであります。この点に対する労働省の見解を伺つておきたい。またあの問題がありましてから、かなり長い期間を経過いたしておりますが、その期間中に、日本政府は、アメリカ国に対してどのような折衝をされて、その問題の解決に当られたかを伺つておきたい。
  96. 亀井光

    ○亀井政府委員 ハウス・メイドの御質問でございますが、先ほども多賀谷委員に御説明いたしましたように、われわれアメリカ軍と折衝しまして各ハウスを調査するように一とりあえずワシントン・ハイツについて、許可を得まして、先ほど申し上げましたように調査をいたしましたその結果は、本委員会におきまして参考人の陳述がございましたいろいろな点につきまして、われわれの調査の結果と食い違いがございます。ワシントン・ハーイッに関する限りにおきましては、労働条件その他につきまして、一応われわれが予想しておりますような労働条件の低下は見られなかつたのでございます。そこで、われわれとしましては、問題の法律的な措置こしましては、先般の当委員会におきまして申し上げました現在の基準法の第八条の解釈から参りますと、家事使用人でありますために、ただちに法律を適用いたしますことは、困難な面があるわけであります。そこで、もしその適用が必要であるとすれば、共同雇用というふうな形のものを、そこにつくり上げて行かなければならない。結局この問題は、外交折衝の結果をまたなければならぬわけでございますが、われわれは、もう少しこれらの事情について—特に成増の基地の調査につきましては、申出をしておるのでありますが、まだ許可が来ていないような現況であります。成増の基地の調査をいたしました結果、ワシントンハイツにおける場合と違う劣悪な労働条件を見出した場合におきましては、そういう問題についても促進をして参りたいというふうに考えております。
  97. 井堀繁雄

    井堀委員 ただいまの答弁は、前回伺つた以上に出ていないのであります。私が今お尋ねしておりますのは、行政協定の第十二条第五項の文言に明らかにされておるように、日本国の労働者に関する保護は、日本の法規を尊重することを明らかにしております。基準法に規定してないということは、憲法に基いて保護を要求する立場を明らかにするわけであります。もし基準法にそのことが規定してないからということによつて、日本の労働者が法律的保護を受けられないということになりましたら、何によつて保護を求めるか。私が先ほど申し上げました憲法の条章の精神に基いて、外交折衝が行われて来るべきものである。もちろんこれは、行政官が法律に基いてただちに行使するというわけにいかぬでしようが、その点に、私は政府の外交折衝の任務が生れて来ると思う。日本の労働者の奴隷的状態を、行政協定の十二条は否定しておる。この精神が基準監督行政の地位にある人ではできぬとすれば、労働省はもつと高い見地に立つて、日本政府の立場を代表されてGHQと交渉されて、ただちに解決すべきものであつたと思う。これをやらなかつたことは、はなはだしい怠慢であつた。今日からでもおそくはありませんから、さつそくやられることを要望しておきます。  次にお尋ねいたしたいのは、最近、特需関係がはなはだしく悪くなつて来ております。これはもちろん、日本の独立後における当然のことであるかもしれません。すなわち占領軍が駐留軍へ置きかえられました関係においても、起つて来ることでありましようが、こういう事柄については、すでに講和条約もしくは行政協定その他の国際条約を締結する際に、もう明らかになつておるとこであります。先ほども引例いたしましたように、日本の特需はかなり広汎にわたつております。それが日本経済にどのような影響を及ぼすかということを考慮しないであの条約が結ばれたとは、私は思いません。そこで、この特需が先細りになり、あるいはにわかに切りかえられなければならぬという運命に立たされておることは、一応やむを得ぬと私は思う。その場合に、そのもとに雇用されております労働者が、ただちに解雇され、もしくは最も近い将来において馘首の厄にあうということは、わかり切つた事柄であります。こういう場合には、過去の労使慣行から申しますならば、それは雇い主の責において解雇することであることはもちろんであります。さらにその上に、日本全体の条約改訂もしくは日本経済切りかえのために、あるいは日本政府政策変更のために、労働者がいわれなくそういう犠牲を負担しなければならない場合においては、特別の措置が講ぜられるということは、行政整理の際に公務員に対して特別手当を支給された事例によつても明らかな通りであります。それよりも私は、日本経済の危機を救つた、いわば重大な任務を果して来た労務者に対して、特別の措置が講じられないはずはないと思うのであります。こういう意味におきまして、駐留軍労務者の退職手当については、特別の手当を考慮されることは、きわめて当然なことであると思う。さらに特需関係のもとにおいて雇用されております労働者について、政府は行政協定十二条の第二項並びに第五項の精神に基いて、日本国経済の不利益な地位に立たされておることを強調されて、特需契約の中において保護を与える、あるいは援助を加えるなり、契約を有利にさせるようにするということは、この条約の命ずるところであります。この二つの点についてお尋ねいたしたいと思いますが、前段の問題については、労働省及び通産省の立場から御見解を伺いたい。ことに調達庁等においては、その契約等に対して直接の1委員会を設けられて、その委員のメンバーにみな加わつておいでになるのであります。本日は三つの立場を代表する役所の行政官が見えておりますから、それぞれのこれに対するお答えを願いたい。
  98. 安井謙

    ○安井政府委員 御説の通りに、特需関係が、日本の経済にとりまして非常に重大な役割を果して来ましたことは、仰せの通りでございます。二十七年、八年までは、広義の意味の特需関係も好転しておつたのでありますが、それが特に今年になりましてから、非常に減つて来ておる。これは将来日本の経済にとりまして、非常に大きな問題であろうと考えております。しかし、先ほど御指摘もありましたように、経審の方の見通しによりましても、二十九年の上半期も、通しで考えれば、かなり実績をあげ得るのではないかという見通しに立つておるようでございます。もしそういうことでありますれば、最近まで相当程度の特需関係労務者の整理もあつたのでありますが、これから先そう急激な解雇も起らなくて済むのじやなかろうかという考え方をいたしておる次第であります。  さらに、その待遇の問題その他につきましても、鋭意これは努力をして行くつもりでございますが、個々の問題につきましては、ひとつそれぞれの政府委員から御答弁をしたいと思います。
  99. 記内角一

    ○記内政府委員 特需の重要なことは、今御指摘になりました通りでございまして、われわれといたしましては、こういう特需が方向として漸減して参るのは、ある程度やむを得ないかと存じますけれども、日本経済の上で特需がいかに重要かということをよく認識してもらいまして、できる限り日本においているくな形で、いわゆろ広義の特需によつて、ドルの収入がふえますよように、いろいろ折衝いたしておる次第であります。ただ残念なことに、去年の場合におきましては、朝鮮事変の終了というような急激な事態が発生いたしました。その以前におきまして契約を結びます際に、そういう場合に備えての契約条項が入つておらなかつたために、その契約条項だけをたてにとれば、いろいろな問題が生じおるわけでございます。契約条項はそれといたしまして、別途緊急打切りのようなことに対する善後措置も、いろいろ先方と折衝いたした次第でございます。その後におきます契約の内容におきましては、そういう場合にも備えまして、いろいろな方案考え、たとえば段階的な打切りに備え、あるいは生産高に応じた請負賃金というふうなものも考えて参るように指導して参る、また先方とも折衝をいたしておるような次第でございます。
  100. 山内隆一

    ○山内政府委員 ただいまの御質問のうち、調達庁に関する点を申し上げたいと思います。特需問題は、御承知のごとく波及するところが非常に多いのであります。各省にわたるその分界点に立つているきわめて微妙な点がありますので、あるいはお答えの中に、多少他省にわたるものもあると思いますけれども、御了承願つておきます。十二条の問題から、政府としてどんなことを考えるか、ことに特需の問題についてはどうかという意味のお尋ねかと思いますが、十二条関係につきましては、いまさら説明するまでもないと思いますが、アメリカの予算が減つたために、特需の発注量が少くなり、あるいは駐留軍が減つたために、労務者が少くてさしつかえないことになつて、そのために減員をするとか、こういうような問題につきましては、結果において、日本に非常に不利益になる、まだ労務者にとりましては、まことにお気の毒な結果になりますけれども、それがただちに十二条の問題となつて、十二条の点からどうする、こうするということではなかろうと思います。十二条として今までやつて来ておることは、今のお尋ねとはちよつと縁が遠いのでありますが、資材問題等で、ことに講和発効の時分に、ある程度野放しにして軍が調達することによつて、国民生活必需品あるいは基礎産業のいろいろの資材という方面とダブルといいますか、圧迫しても困るということで、調達調整という意味合いにおいてある程度の資材については調整してやつておつたのであります。今日でも調達調整委員会で、十二条に基く根本の調達調整のことはやつております。  それから、特需の問題につきましても、ああいうやり方が、十二条の精神からいつて、ことに過去の経験から見て、あれが日本の国家経済にとつていいのか、あるいはむしろ不利益が多いのじやないかというように、こういう問題は絶えず検討する必要がありますので、私の方としては、絶えずその点は特需実績等から見まして、あるいはその後のいろいろの問題等から呈しても、間接調達の方がいいのじやないかというようなことも考えて、直接調達と間接調達と比較して、結論として間接調達がいいのじやないかという意見を持ちましたときには、関係各省にも意見を出して相談したこともございます。しかしこの問題は、いつかも申しましたようにむずかしい問題で、利害得失がいろいろあるので、簡単な意味で結論は出せませんが、そういう意味で検討はいたしております。  それから今の特需の契約のやり方、これは十二条と最も大きな関係がありまして、この点につきましては、できるだけ軍の求めによつては協力します。また進んで軍に意見を申し述べる場合もありますが、具体的の問題が起きたときに、どうして処理して日本の業者のためにはかるかということは、十八条の七項に契約調停の意味の規定がありまして、これによつて実行はいたしておりますが、これも間接には今の日本の経済になるべく寄与いたしたい、ことにふなれな業者が米国式の契約あるいは英文のむずかしいよいよわからないものによつて不利益をこうむることをできるだけ避ける、あるいは問題が起きたときに、業者の立場に立つて有利な弁護をする役割を引受けて折衝いたしておりますのが、契約調停委員会でありまして、これもいつか申し上げた通り、一箇年に件数としても六、七百件あります。金額にいたしましてほとんど十億円も業者から異議申立が出まして、調達庁その他の関係省協力のもとに、委員会で活動の結果、持続をいたしておるようなわけであります。そういう意味合いにおいて私どもは十二条の活用をいたしまして、できるだけ日本の経済がプラスになるように努力いたしておるような次第であります。
  101. 井堀繁雄

    井堀委員 言質をとるような意味ではございませんが、十二条二項の解釈を、あまり狭く解釈すべきでないと私は思う。こういう国際条約などについてはそれぞれの大きな立場に立つて主張されなければならぬ内容のものであると私どもは承知しております。そこで、十二条二項の日本国経済に与える影響云々ということは、あなたのように、狭くとるべきではないと思うのでありますが、しかしこの場合限定して考えて見て、たとえば特需並びに駐留軍関係に役務を提供しております点について、二十孝の統計しかわれわれいただいておりません。たびたび資料の提供を迫つておりますけれども、十分な資料を提供していただけないことを非常に残念に思います。そこで、日銀の外国為替統計の中から少し統計をとつて見た。これを見ますと、統計は狭く資料を使つておるようでありますが、二十七年の特需約七億八千八百万ドルの中で、直接役務によるドル収入が一億四千六百万ドルになつておる。そうしますと、この特需の中で、役務の提供による分野が、他の産業や企業に比べていかに大きいかということが、はつきりする。もちろん、これは駐留軍労働は入つておりません。こういう点から判断いたしまして、この十二条の二項をごく狭く解釈いたしたとしても、これだけの役務提供によつて支払われているものが一時に打切られ、もしくは最も短かい期間に打切られるということになりますことは、これは労働問題としては重大問題であつて、二項のみならず五項にも関係して来るわけでありますから、こういう特需契約については、特段の対策が講じられなければならぬことは申すまでもないことであります。     〔池田(清)委員長代理退席、委員   長着席〕  そこで具体的にお尋ねいたします。こういう労務の一時もしくは短かい期間に停止される場合において、従来の慣行からすれば、日本流に言うと退職手当その他の手当を倍増し三倍増しにするということは、先ほど申し上げた。この場合、日本の政府としては、どのくらい増せばよいか、それを増すためにはどういう契約が必要になるか。あるいは駐留軍の場合には、直接給与の内容を占めて来るわけでありますから、これは明確になる。こういうものに対しては、当然行政協定を結びました日本政府、特にここにあげております日本国政府の中の権威ある当局といえば、労務に対しては労働省もしくは調達庁あるいは通産省その他に関係があると思います。こういうものを大体見込んででないと、この行政協定の円満な運営はできない。でありますから、具体的に今一例をあげてお尋ねいたしましよう。駐留軍労組は今要求しておりますが、アメリカの都合で出先を縮小するという場合が急に起つた、それによつて労務者の整理が必要になる場合においては、もちろん今日の労働者の給与は、一般公務員にわずかに上まわると言つておりますが、大体私は近いものだと思つておる。今日公務員の給与が低いということは、雇用が安定しておるということが第一要件である。それが不安定になるということになりますと、均衡になりません。でありますから、これを見合うようにするということは、古い慣行であるけれども、退職手当を二倍、三倍もしくは特別の一時金をくれて、その生活の保障をするというのが普通の労働慣行であつて、これが最低限である。こういうことに対して一体当局は労務契約の際における相手国であるアメリカに対して、何か交渉をなされたことがありますか。まだないとすれば、今後おやりにならなければならぬと思いますが、そういう点に対する所見をお伺いしたい。
  102. 百田正弘

    ○百田政府委員 駐留軍の漸減その他によります今後の予想される労務者の解雇に伴つて起る失業問題は、非常に大きな問題であろうと思います。さしあたり、私どもとしても、特別退職手当の問題」つきまして、特に米軍の政策の転換というようなことのために起る全国的な大規模な人員整理に対しましては、国家公務員において、行政整理の際に特別の措置がとられるといつたようなことと同様な、少くともこれを下らざるような方法あるいは額で割増しの退職手当を出すべきであるということで、先ほど御説明申し上げました契約交渉の過程におきまして、附属書三においてこの点を提案しておりますので、この点につきましては、まだ合意に達する段階に参りません、これが今後の交渉の上におきまして、最後まで大きく残る問題ではないかと考えておりますが、われわれとしても、この点についてはできるだけの努力をいたしたいと考えております。
  103. 井堀繁雄

    井堀委員 次に、修理加工等の上に、もつぱら役務を提供して調達に協力しておる者のこういう場合の解雇の際においては、従来の見積り単価の中に、そういうものが相当大幅な金額になると思う。そういうものに対して、今後この十二条の規定の精神に従つて特需契約を改訂せしめるようなことについて、日本政府としては何かしかるべき方法をお考えなつておりますか。
  104. 山内隆一

    ○山内政府委員 今の問題は、条文の根拠は別といたしまして、お話の点は非常に重大な問題だと前から私どもも思つておりますが、一般的な契約条項を簡単に改めるわけにも参りません。従つて契約調停委員会の主管しておる範囲の仕事で、いろいろその後の起つた現実の事態に処するために、今までのような契約では困るということを、たびたび意見を述べて、先般中間的に御報告申し上げて、契約調停委員会がある勧告案をつくつた。それを労働委員会に正式に諮つて通りまして、極東軍司令官に勧告が届いて、新しいといいますか、現在のやり方についても、いろいろ勧告の趣旨に従つて実際のやり方を検討いたしております。あるいは七月一日から始まる新しい会計の切りかえにあたつて、この勧告の精神に従つて引直すということが、今準備せられております。そんな関係で、発注量が途中で少くなつて、それがために労務者を整理せざるを得ないというような場食いろいろ経費が予想される。それはあらかじめそのコストの中に入れて計算する。あるいは今までは数量の不確定な契約が多かつたのでありますが、今度はそれを一つの予想のもとに数量をきめまして、しかも、その数量を幾多の段階にわけて、各数量ごとに単価を幾らときめる。そういうふうにいたしますと、数量は何かの都合で、もつて減りましても、そのかわり単価が自然高くなるというような契約にするというように、この前申し上げたことを若干かえまして、そういうぐあいに労働委員会で決定して、今度新しい契約では、そういう方針でおそらくとりきめられることと予想いたしております。
  105. 井堀繁雄

    井堀委員 それでは二つほど希望を申し上げまして、調達庁にお骨折りを願いたい。先ほど来だんだん申し上げておりますように、特需関係の契約の中には、労働者生活に急な変化を遂げるような、非常に不幸なことでありますが、そういう内容を最初からはらんでおるわけです。従いまして、契約者はもちろんのこと、政府としては、アメリカ国に対して、日本の労働者が、不当な被害を受けることから救済するため、具体的に言いますならば、特別退職金が十分出せるように契約が結ばれるように、あるいは変更されるように、十分な配慮を願いたい。  次に、直接役務を提供しております駐留軍労働者、もしくはこれに類する人々については、もちろん大量解雇があり、ことに日本の失業事情の見通しの非常に悪い困難な状態において、特段の退職手当あるいは解雇手当と申しますか、そういうものが労働条件の重要な部分であることを強調されまして、労働者の保護に万遺憾のないように措置をとつていただきたいことを希望いたしておきます。都合によりましては、中間報告をお聞きするかもしれません。  それから、せつかく中小企業庁長官がお見えになつておりますので、お伺いいたします。特需関係をだんだん調べれば調べるほど、中小企業に非常に問題があります。言いかまえすと、ちよつと極論かもしれませんが、日本経済をにわかに暗くして来たのは、中小企業特需関係にかなり広い範囲のしわ寄せが急に来た、そこに政府の極端な金融引締めが拍車したものと思うのです。存外政府はわれわれの質問に対して気軽に答弁されておるようでありますが、これは決して誇張して申し上げておるわけではありません。短時日の間に中小企業のもとにおける労働関係が、社会不安の導火線になつて、大きな日本の社会問題になることは必至だと思うのです。だから、今にして対策を立てるなら、まず中小企業に救済の手を差延べるという行き方が、失業対策にもなし、あるいは労働不安に対する政策の実施面にもなつて来ると私ども考えておるわけであります。そういう意味で特需関係に限つてお尋ねをいたします。と、私ども特需というものの勉強が足りませんために、最初は直接受注を受けておる部分にばかり目をとらわれておつたのです。それが直接的にもかなり日本の零細企業が受注を受けて、さらに下請に二重、三重、間接の関係において特需をまかなつておるというようなものは——私は今統計をいろいろ要求しておりますけれども、正確な数字を提供していただけないので、私の手元で大体信のおける資料を集めて検討してみたのでありますが、特需の六割八分は中小企業によつてまかなわれた。数字で言いますと、昭和二十五年から二十七年の間に獲得いたしました十五億七千万ドルのうち十億ドルに近いものが中小企業の犠牲と、そのもとに働いております労働者の長時間労働と低賃金によつてあがなわれたという事実を遺憾ながら認めざるを得ないと思う。こういう点から見ますと、実は特需というものは、表面は、日本経済の危機を助けたことにはなつたけれども日本産業の実態を分析すればすぐわかるように、日本の経済の基礎をなす中小企業にまつたく大きな打撃を与えつばなしにして、ようやく立ち上ろうとする日本経済の腰を折らせたというこの大きな犠牲は、決して軽視してはならぬと思う。先細りになるというよりも、特需は今のところ、まつたくお先まつくらであります。この関係だけの中小企業が一体どこへ立場を求め、また中小企業対策を立てる場合に、こういうところでこわれて来たものを、どういうふうに補強なされようとしておるか。その点だけでもいいから、この際はつきりお答えを願いたい。
  106. 岡田秀男

    ○岡田(秀)政府委員 現在の経済の運営が一応中小企業も含めまして、それぞれの企業者が自分の責任におきまして仕事を運営して行くという建前になつておりますので、たとえば特需の下請をやつておりまする企業者に対しましても、われわれの方であまりに立ち入つてかれこれ申すことは、いかがかと思うのであります。特需関係がだんだん先細りになつて来るといたしまして、従来特需の下請をやつておつた下請業者の仕事がなくなり、この人たちがどういうふうに再転換をして行くかということに対しまして、中小企業庁としてどういう指導的立場をとるかということでりますが、われわれといたしましては、やはり企業者がみずからの責任において、業界の自分の経験に照してどういう方向に行くかということを選定してもらうということが、第一段階であろうと思いますが、中小企業者といたしましては、経済の動きの実態ないしは自分の得意とする技能がいかなる方面に適したものであるかというふうなことの分析なり判定というものが、なし得る能力が不十分であるという点を認めまするがゆえに、従来から私どもの方を中心といたしまして、各府県庁ないし五大都市を実施機関として、企業診断の制度を持つておるのであります。今の情勢から見て、特需の方向はだんだん先細りになるといたしますれば、自分のぶら下つております親企業がだんだんどうもこのごろ調子が悪いということの判定ができるわけであります。しからば、そのときにおいてすでに企業転換の準備を開始すべきものであろうと思うのでありまして、そういう中小企業者は、企業診断等によりまして、自分の行くべき道の指示をもらうというふうな意味の制度を持つておるのであります。また私どもといたしましては、下請に対する指導といたしまして、先般の日平産業の破綻の場合の経験等からいたしまして、下請業者がばらくになつておるということが、非常に下請業者の不幸を招く大きな原因の一つになつておるのであります。従いまして、特に親企業中心とする下請業者の協同組合の結成を強く推進いたしつつありまするし、今後特にこの点に重点を置いて指導いたしたいと考えておりますが、協同組合なんか持つておりますれば、親企業状況というものも、個々の企業者が接触を持ちますよりも、よりはつきりと状況把握できる。またかりに親企業のやり方が、下請に対して不当に圧迫的であるというふうな場合における下請の交渉というものも、個々のものがやるよりはやりやすい。また親工場がかりに調子が悪い場合におきましても、これと協力して、親工場を含めました業界の方向を建て直して行くということについても、組合がございます方が都合がいいことは、実験的に明らかでございます。かりにまた観工場が、不幸にして日平産業のような事態になりました場合においても、再建の確保という点、あるいは組合員の親工場といろいろな意味の再建に関する交渉におきましても、好都合でございます。そういうような意味において、またいよいよ親工場がいけないという場合における下請の方向転換に関する再建計画を立てる場合におきましても、好都合でございますので、下請の組合結成をこの際積極的に勧奨するという態度を持つておるのであります。ただわれわれといたしまして、個々の下請業者に直接ああせよ、こうせよというふうに、われわれの方から言いかけるという立場は、今の中小企業対策としてとつておらないのでありまして、下請業者を含めまする中小企業者が御利用になる意思がありますれば、大いに利用していただきたいという意味においているくの施設をつくつておるのであります。今のお話のような場合におきましては、企業診断でありますとか、協同組合の結成とか、さような線を通じまして努力をいたしていただきますとともに、再建、つまり従来の親工場から縁を切つて、他の親工場へ行くなり、あるいはまた製品の転換をするという場合に、資金がいるというようなことでございますれば、長期の金でありますれば、それには中小企業金融公庫という制度もございますし、それぞれの金融機関の制度もつくつておりますので、これを御利用願うようにする。またそれにしても企業診断等の制度が非常に有効に働くものであるというふうに、私どもは申し上げておるのであります。
  107. 井堀繁雄

    井堀委員 具体的なお尋ねを二、三いたそうと思いますが、中小企業の問題は、特需に限つたわけではありません、これはまたいずれ別の機会に十分お尋ねしなければならぬことと思いますが、この機会に関連いたしますので、お尋ねいたします。  労働者の立場から見ますと、最近中小企業賃金の遅欠配と申しますか、賃金未払いの事件が非常に多くなつて来た。しかもそれが、あなたも御指摘になりましたように、おおむね中小企業の場合においては、労働者の組織である労働組合がございません。従つて労働者の抵抗がないものですから、ひたむきに労働条件切下げによつて経済の危機を突破しようとする宿命的な努力が、だんだんジリ貧になつて来た。もう大体私は限界は割つていると見ている。そこで日本の経済が比較的小康を保つたと思われる昭和二十七年十二月末の国税庁の実態調査が、割合信が置けると思いまして、経営者を含めた給与の実態を検討したのでありますが、それよりますと非常な開きがある。たとえば千人以上の事業場の給与所得の総額は、平均して年額二十一万一千円に対しまして、三十人以下になりますと、半分以下になつて十一万五千円、十人以下になりますと十万円台を割つている。これは雇主も入つておる。これはおおむね労働者の給与を示しておる。こういうように規模別に所得を見て行きましても、中小企業、零細企業にかなり無理がかかつているという状態がよくわかる。それが今後の政府の極端な金融引締めによつてあなたは今金融の道を特別に中小企業のために開いていると仰せられましたが、私もよく承知している。しかしいずれも今日の金融政策上に立つて中小企業金融というものは、形式的には貸すことになつているけれども、実質的には今最も要望しているような零細企業は、その条件が整いません。そのために、実はあたらそういう新しい金融の道が開かれても、実際に役に立たないで、日にち毎日破産、倒産に瀕しているわけです。それがすべての労働者賃金未払いになり、あるいは踏み倒しになるいうな結果がだんだん露骨になつて来ているわけです。こういう問題は、私は労使関係解決することの不可能な、政治的な措置を要する労働関係だと思います。特に中小企業庁としては、こういう瀕死の状態にある中小企業問題の対策を一もちろん直接経営の内部にタッチするようなことは、われわれ何ら考えておりませんけれども、一方においては政府政策金融の引締めを余儀なくさせる、それが片方に少し出て来るときには、それが対策を立てるということは政治的責任でもあるので、政府としては当然一方の政策をとるために、他方に犠牲が要求されて来ることはわかり切つておる。こういう場合に、中小企業庁としては大胆な対策が一方になければならぬ。金融引締めのような緊縮政策に対してはまつこうから反対するという立場であれば、わかる。これを容認する以上は、もう中小企業はつぶれるにきまつております。たとえば庶民金融金庫は、つぶれかかつたならば金を貸しますか。零細企業一の貸付はだんだん引締められる。ことに今日の手形交換市場に現われておる姿を見ればわかる。こういう問題が、今日労働者にしわ寄せをされております。そういう場合に、中小企業のもとで働いております労働者賃金の遅欠配については、至急に救済しなければならないという事情は、お認めになつておるだろうと思います。労働金庫相当預託をしてすなわち般の今日の金融機関というものは、消費資金に貸付するのは質屋以外にありません。その公益質屋というものには、見るべきものがありませんから、結局労働金庫を利用するという意味であろうと思いますが、何か中小企業のもとに働いております労働者の、まず小康を保つて、お互いに平和のうちにこそ立ち上れるのでありますから、そういうものに対して中小企業庁としては、何かお考えなつたことがありますかどうか、お伺いします。
  108. 岡田秀男

    ○岡田(秀)政府委員 私は基本的な考え方といたしましては、要するに日本の外貨ポジシヨンが非常に悪くなつて、二十八年度のような経済のやり方を今後引続いてやつて行くということは、わが国の経済としてもやつて行けない。従つて、物価の面その他を考慮しながら、輸出第一主義に徹して行くんだということから来る財政の引締め、ないし金融の引締めというようなものは、基本的には容認さぜるを得ないものであろうと考えておるのであります。その政策の実行の過程におきまして、経済変動に対する抵抗力の弱い中小企業が、大企業との関連におきまして、不公平な圧力をこうむることのないようにするという前提におきましてこの基本の政策は容認されなければならぬと考えておるのであります。さような意味におきまして、たとえば金融にいたしまても、国家の財政融資を二十九年度におきましては極端に圧縮をいたしております中において、中小企業向けの国家投資は、中小企業金融公庫ないし国民金融公庫におきましても、前年度よりふやしてやつておる。もとよりその金額が、この情勢上満足すべきものなりやいなやの点は、議論の余地は十分あると思いますが、ともかくもこの一般傾向の中にあつて中小企業向けの投融資は、ある程度の増額をいたしておるというふうなことも、その現われの一つであろうと考えておるのでありますが、基本的には、金融対策といたしましては、現在中小企業融資されております金融機関の残高が、大体一兆五千億ぐらいございます。その六割四、五分というものが銀行から出ておる。銀行というものは大企業にも中小企業にも、同時に金融をいたしておるものでございまして、この金融機関の動き方が右に動くか左に動くかということによつて、この中小企業向けの残高の六割五分というものが大きく左右されるわけであります。これを銀行の全体の貸出し残高から見ますれば二兆数千億でございます。そのうちの三割六分程度のものが中小企業向けの残高になつておりまして、先ほど申しました六割四、五分とこれらは見合うものでございます。この銀行の貸出し残高のうち中小企業の占める割合が、昨年二十八年におきましては、一月から十二月まで、かすかではございましたがふえて参りましたものが、この一月以降中小企業向けの割合が、いわゆる十一大銀行のみならず、地方銀行におきましても、若干減少傾向を示しておるのでございます。これは金融におきましても、中小企業向けの金融の圧迫というものの現われは、結局総貸出し金額の中における中小企業金融の残高の割合が減るということに現われて来るわけなのであります。この傾向に対しまして、私どもといたしましては、全銀行に私自身の名において警告的希望を要求いたしますとともに、銀行局長からも先般通牒か出ておるような次第でございます。なおそれをもつては不十分であるというので、現在中小企業向けの貸出し残高につきましては、銀行の貸倒れ準備金の税法上の無税による積立限度を、中小企業向けの貸出し残高については特例を設けるようなやり方を、大蔵省と鋭意折衝中でございます。これらによりまして、一方においては中小企業者の信用の不足というものを、信用保険ないし信用保証の制度によつて補いつつ、金融の面における中小企業者の不当な圧迫を防止して行きたいというふうなわけで今国会におきましても、信用保険の制度においてかなりの改善を加えたような次第でございます。  なお、下請関係中小企業におきます遅配欠配の問題に関しましては、いわゆる親工場の支払いの遅延が相当大きな原因をなしておる事態にかんがみまして、先般公正取引委員会におきまして、下請関係の最も盛んでございます機械その他兵器等の製造工業について、不当なる下請代金の支払い遅延についての認定基準を発表いたし、それに関連いたしまして、親工場おおむね百四十程度、それにつながる下請につきまして約二千のものを、目下われわれと公正取引委員会と手わけをいたしまして実情調査をいたしておるのであります。それによりまして、不当なる支払い遅延と認めらるべきものにつきましては、公正取引委員会より警告ないし、要するに法律上の審判等も行うというふうな体制で、目下調査を実行中でございます。  大企業中小企業におきまする賃金の幅差が非常に多いということは、私もはつきりと認定いたすのでございます。私ども調査によりますれば、大体平均いたしまして、半分ないし半分以下でございます。これらの原因については、どの辺にあるかという分析は、なかなかむずかしいと思いますが、通産省の一つの調査によりますと、昭和二十七年におきまして、すでにおもな商品の製造原価中に占める原材料費の割合が七割を越えておる。そうしますれば、これを加工する部門、主としてこれは中小企業でございますが、中小企業の加工による部門は三割を割るという状態に相なる。従つて、その原料高の製品安という点が、中小企業の苦しみ、従つて賃金が伸びない大きな原因じやないかとも考えるのであります。われわれといたしましては、この物価の引下げの今の政策の中におきましても、原材料部面における引下げという点に大いに努力を要するというふうに考えまして、省内においてもいろいろと要望いたし、今度の外貨予算におきましても、これは輸出促進方策の一つとして取上げたものでございますが、いわゆる加工貿易という点を通産省としては大きく取上げておるのであります。これは要するに、建前としては輸出促進方策でございますが、見方によつては、一つの大きな中小企業対策とも言い得るかと考えるのであります。保税制度を非常に簡便なものにいたしますとともに、輸出用原材料につきましては、割安な海外原材料を比較的容易に輸入し得る仕組みといたしまして、よつて輸出の増進をはかろうというのでございますが、この効果としては、一方において原料高の製品安という苦難を輸出部門について解消いたし、また割安な原材料を輸入することによつて、国内の原材料の価格引下げに対する大きな刺激とするという効果もねらい得るかと思つておるのであります。  要は、中小企業対策と申しまして、一発注射をしますればそれによつてただちに効果が上るという、いわゆる頓服的な政策はなかなかないと考えるのであります。あの手この手、いろいろなことを総合的に運用いたしますことによつて、初めて中小企業対策というものがある効果を期待し得るのではないか、こう考えておるのであります。金融の面において、あるいは税制の面におきまして、あるいは経営の合理化の面におきまして、あるいは一人々々の努力をもつてこの経済の荒波に対抗できないといたしますれば、協同組合の結成を促進する意味において、いろいろの方策を立て、なお研究もいたしつつあるわけでございます。これらのものが総合的に活用されて、初めて中小企業対策としてある効果が期待できるのではないか、かように考えておるのでございます。
  109. 日野吉夫

    ○日野委員 関連して……。その前にちよつと参考人から伺つておきたいのですが、十七万四千の駐留軍労務者というのは、日駐と全駐と両方合せてですか。  もう一つ、去年の整理で解雇になつ人員はどのくらいですか。
  110. 市川誠

    ○市川参考人 私ども調査では、二十八年度におきましては、軍の都合による人員整理によつて大体二万一千名ほど首を切られておるという数字が出ております。
  111. 日野吉夫

    ○日野委員 さつきあなたが言われた今各地で失業の危険にさらされている労務者は、合計どのくらいてすか。
  112. 川畑政男

    ○川畑参考人 五%ないし一〇%が六月の三十日まで。七月一日以降の新しい改訂においては、現在のところわからないという状況です。
  113. 日野吉夫

    ○日野委員 稲富参考人に伺いますが、あなたのところは去年の十月、四万五千が三万に減員になつて、一万五千の失業者を出しておるが、これはこの通りとして、このほかに、あなたの組合関係していない特需産業をやつている群小工場はございませんか。
  114. 稲富信義

    稲富参考人 われわれが四万五千から三万に減つたと申しましたのは、特需の中でも役務関係特需のみでありまして、主として車両修理をやつておる業種であります。従つて、それ以外の需品関係、すなわちいろいろな復興資材、朝鮮の復興資材とか、あるいは仏印関係に送るいろいろな需品だとか、そういうものについては、いわゆる広義の特需と申しますれば、これは先ほどから議論になつておりまする下請などを含めて、相当な数に上るだろうと思いますが、はつきりした数字は、われわれの方では知りません。
  115. 日野吉夫

    ○日野委員 この問題は、前にもしばしば論議いたしたのでありますが、結局見通しが立たないままに対策が立たないということで、今のような事態なつてしまつた。その後大分時日もたつておりますし、状況もややはつきりいたして参りましたので、最近の状況判断による役務特需に関する部分1これが一番問題になるのでありますが、直接衝に当つている調達庁から最近の状況をひとつ伺いたい。  もう一つ、これは特需の重要なものになつているのでありますが、兵器産業が最近足踏みをしているというようなことが言われているのであるが、どうしてそういうことになつたか。過般論議いたしました日平等も、最近の経団連の発表によりますと、一二七ミリの砲は、厖大な発注をとつておりながら、三月末の納入がほとんどゼロで、完了予定も不明というようなことになつている。こういうことからいろいろ批判されるのでありましようが、全体として兵器特需が足踏み状態にある。こういうことが言われているので、この関係企業局長あたりが詳しいようでありますから、最近の状況を承りたい。  もう一つは、役務の点は、今の参考人の話で、大体の見当はつくのでありますが、兵器産業に関係している労務者の人員はどのくらいあるか、労働省調査がありましたら、ひとつこの点をそれぞれ御答弁願いたいと思います。
  116. 山内隆一

    ○山内政府委員 軍需工業がどういうふうになるかということは、非常にむずかしい問題でございまして、お言葉では、最近の情勢が一番よくわかる調達庁からという御指名でありますけれども、なかなか確たることは申し上げかねます。ただ特需産業のうちでも、今問題になつております自動車工業、おもに役務を中心とした大きな業者の今後の契約情勢がどうなるか。かすかに見通せはせぬかと思う点は、今までは発注量が減つて、だんだんと人の数を減らさなければならぬというような情勢のときには、来年と申しましても、アメリカの予算は七月一日からですが、その年度の新しい予算に入つてどうなるかという非常に不安を抱かれておつたと思いますが、案に相違しまして、今のところでは、特に自動車工業その他の役務関係の仕事が非常に減りはせぬかという点も、まだ明らかになつておりません。むしろ先ほどちよつと申しました新しい年度予算で、今度は向うも比較的条件等をよくしてくれるという考え方で今個々に折衝しつつあり、新しい契約内容についての準備をいたしておるようなわけでありますので、あるいは今ただちにそう減るようなことはないのではないかというように考えておるわけであります。  なお、実は私の方の、契約調停委員会の日本代表として日本側の主査になつております丸山調停官がここに来ておりますので、もしおさしつかえなければ、丸山調停官から実際に契約調停委員会に臨んでいるときの感じ等をお話させてもいいかと思います。
  117. 日野吉夫

    ○日野委員 その点重要でありますから、もし丸山調停官から、何か特にいいニュースでもあれば、ひとつ御報告願いたいと思います。
  118. 丸山佶

    ○丸山説明員 別にいいニュースと申し上げるほどのこともございません。それから今の車両修理事業が来年どのくらいになるかということも、やはり明確なことをお答えすることはできませんが、ただ先ほど参考人からお話もありましたように、ある種の契約改善の方法を合同委員会が勧告しております。しかもその勧告は、米軍側でも陸海空軍のそれぞれの代表者並びに総司令部の代表者も参画しておりまして、その措置を近いうちに管下の各調達機関に通達するそうで、昨日も確かめましたところが、米軍側は勧告の線はもう用意しておるから、一週間以内には調達機関にも届くであろうと言つておりますので、今後の契約については、契約業者側にも、交渉上相当有利な点が出て来ると私は期待しております。それで、現在の状況では、おのおの来年度契約の構想が始まりつつあるような状況ですから、確たることは申し上げられませんけれども、非常な削減というようなことが来年度から始まるとは、今のところ予想しておりません。現在のところこのような状況でございます。
  119. 日野吉夫

    ○日野委員 今のお話ですが、そのことに関して、仏印問題等に関連した期待などが持たれておるようですが、その辺の何か聞いているようなことでもあつたら、報告してください。
  120. 丸山佶

    ○丸山説明員 実は私の方の契約調停委員会と申しますのは、その性格が、現在ある契約、あるいは今後結ばれる契約条項の検討、それからその改善を要するところがあればその処置というようなことが中心課題でありますので、はなはだ残念ながら見通しについては、まだ何とも申し上げることができません。
  121. 日野吉夫

    ○日野委員 それでは兵器関係特需について、記内局長に伺いたいと思います。
  122. 記内角一

    ○記内政府委員 兵器の特需は停滞ぎみじやないかというお話でございましたが、この特需考えます際に、二つのことをわけて御理解を願いたいと思うのであります。一つは、現実の仕事は注文生産がどうなつておるかということでございまして、これが納まつてから金が入つて参るのでございます。従いまして、現実の実際のドルが手元に入るという意味におきましての仕事は、現在も引続いて行われておるのでございまして、御承知の通り一年あるいは一年以上にわたりまして、いつからいつまでにどれだけの品物を納めるということになつておりますから、これは比較的順調に進んでおる次第でございます。  もう一つの場合の特需の問題といたしましては、主文が続いてあるかどうかということでございまして、今足踏み状態ではないかとおつしやる意味は、おそらくその後者の意味だろうと存ずるわけでございますが、後者の点につきましては、去年の暮れあたりから、ずつと発注がとだえてありましたけれども、最近先方の方面におきましても、御承知の通り六月が今年度の決算期ということになつて参りますので、発注が順次進んで参つております。従来からありました砲弾類等につきましては、いわゆる継続発注というようなかつこうで、今までに注文を受けて納入をいたしました会社に、追加発注の形で逐次契約ができております。銃弾につきましては、七・七ミリでありましだか、銃弾の引合いがございまして、一応の入札はいたしたのでございますが、米軍の要求する値段が相当つておりまして、それで相当問題を生じておつたわけでございますが、最近これに必要な銅あるいは亜鉛というふうな原料方面が、内地のものはどうしても高うございますので、これを海外から輸入するということによつて、ある程度コストの引下げを見るに至りましたので、大体これによつてこの問題も近く解決するのじやないかというふうに期待いたしておる次第でございます。十二・五ミリの例の日平産業の問題につきましては、これはすでに発注は終つておるわけでありますが、ただあの会社のその後におきます経営状態について、いろいろ問題がございまして、これに必要な設備資金の金融がつかない、自然これに必要な設備が完了いたしませんので、残念ながら契約は完了しておるにかかわらず、納期が参りましても、まだ納めることができないというふうな状態でございまして、われわれといたしましては、これの建について、いろいろ事情を聴取したり手配をいたしておるような次第でございます。  なお、たとえば自動車につきましては、先ほど調達庁からもお話がございましたが、航空機等につきましては、すでに機体についてある程度のオーバーホールが契約が終りまして目下行われておりますが、いわゆるジェット・エンジンにつきましても、おそらくこの六月一ぱいまでには契約が終るんじやないかというふうにも考えておりますが、関係者がいろいろ折衝に当つておるというふうな実情でございます。
  123. 井堀繁雄

    井堀委員 せつかくの機会でありますから、最後に中小企業庁長官に、もう一点だけお尋ねいたします。それは中小企業庁長官の指摘されました問題のほかに、一つ大きな問題が中小企業対策の場合にあるのではないかと思うのであります。逆にわれわれ労働委員会の立場からいたしますと、中小企業問題は労働問題であるといつてもいいくらいに考えておる。今日労働者の犠牲なしに中小企業の存立はないと、私どもはいろいろな事実から判断しておるわけであります。ところが、今日中小企業対策の戸の一番貧困なのは、労働対策ではないかと思う。各地の中小企業企業診断をされておるようであります。その結果を、まだ私は全部拝見しておりませんが、一、二のものだけ拝見いたしました。その中で、労働対策を取上げておるものは、きわめてまれであります。しかし一、二取上げておるものもありますが、これは先ほど来お話がありましたように、金融政策の面からいたしましても、今日は壁にぶつつかつておる。数字をあげてのお答えでありましたが、なるほど今日市中銀行その他の借入れが、最も新しい統計で残高面で三割六分と言いましたが、その三割六分は私は最高になるんじやないか。ずるく落ちて行くと思うのでありますが、そういう最高の例をとりましても、全体の産業の割合から行けば、事業場の数でいつても九九・九%に対する三割六分では問題じやありませんし、従業員の数にいたしましても九一・五%、生産高においても四四・六%でありますが、こういうものに比例しての点から金融政策をながめれば、中小企業には、なおかつ跛行的な金融しかないということも言えるのであります。しかしそれも重要でありましよう、あるいは設備の近代化のための資金導入も必要でありましよう。あるいは課税の点でもつと転換をしなければならぬこともあると思います。そういうものについては、ある程度言及されつつありますが、低賃金と長時間労働に対しては、基準法を通じて労働行政の面で多少の動きがあると多少ということは、はなはだ失敬な言い方でありますが、今日の基準監督は中小企業については麻痺しておる状態である。その麻痺しておる状態を逆に改正に持つて来ようとするがごときは錯覚もはなはだしい。これは労働行政の方でまたやらなければいかぬの  ですが、今日私は限界はあると思う。もし労働者の犠牲において中小企業が存立をするようなやり方で行くならば、それは自滅を待つことだと思う。日本の置かれておる現状は、長官もるる述べておりますように、国際競争の中に、やはり日本が一定の地位を持つて行くということでなければ、今後の日本経済の再建などはおぼつかないと思う。いずれの国の現状を見ましても、企業の近代化のために、設備の若返りのために必死になつている。日本がそれをやろうとする場合に、一番大きなウエートを占めている中小企業の面においては、なかなか困難だと思う。その困難な、一番条件の悪いところをかかえた日本が、世界のはげしい競争の中に勝とうとすれば、私は労働の資質を引上げて行くという以外にないと思う。またこれは可能だと思う。もし中小企業対策の中に、世界競争の中に立つて勝ち目があるものがあるというなら、日本の中小企業のもとに働いている労働者を、いたずらに犠牲に追い込むだけではなしに、もつと積極的な、生産意欲と労働の資質を向上するという面で労働者の協力を求めるという対策がなければ、自滅をたどる以外にないと思う。こういう問題に対して、あまり言及されておりませんが、長官はそういう問題に対して、先ほどちよつと労働組合の組織の必要を述べられたようでありますから、まんざら関心もないようではなさそうですから、この点、念のためにひとつ伺つておきます。
  124. 岡田秀男

    ○岡田(秀)政府委員 先ほど私申し上げましたのは、労働組合の問題ではないのでございまして、これは主として労働省の方で御担当願つておるのでございます。私が申しましたのは、中小企業者の団結、つまり協同組合によります中小企業者の団結の力によつて、経済の荒波を乗り切つて行くようにすることが必要であろうということを申し上げたのでございまして、申しようが悪かつたといたしますれば、訂正させていただきたいと思つております。  なお、中小企業の問題と労働問題との関連が非常にございますことは、論をまたないのでございまして、私どもが若干調査をいたしました企業診断の実例を見ましても、経営部門に関します合理化関係の勧告数千五百八十七件のうち、労務関係の勧告をいたしておるものは二百五十六件、一六%に及んでおるのでございます。そのおもなところは、中小企業の中における労務管理が非常に不適当な部門が多くて、労務者の技術の向上ないし勤労意欲の向上というふうな点に欠けるところが非常に多いということを指摘いたしまして、それが改善を勧告しておる診断の例はかなり多いのでございます。もとより、先ほど私が申しましたように、中小企業の最も苦しい大きな原因の一つといたしましては、つまり原材料が高いという点がございますが、この点を改善する努力をいたすとともに、同時に加工部門であります中小企業が、輸出貿易の面あるいは国民生活の面に寄与するためには、その中の合理化というものをやらなければいかぬ。合理化ということになりますれば、結局物的施設の合理化と並びまして、人的部門の合理化、つまり労働能率の向上、それもいたずらに労働条件を低下するという意味合いではなしに、労働能率の向上という面に努力を集中いたさねば、この合理化というものは達成しないわけでございます。われわれといたしましても、その経営の一部としての労働部門の改善という意味において、企業者にいろいろと忠告なり勧告なりをいたすということをいたしておるのでありまして、労働問題それ自体としての指導ないし監督という面になりますれば、労働省の方で御勉強を願うということに相なるわけでございます。両々相まちまして、中小企業労働の生産性の向上、ひいては労働者の幸福にも相なり、また国民の利益となるというように導きたいと考えておる次第でございます。
  125. 井堀繁雄

    井堀委員 最後に一言申し上げておきますが、中小企業対策については、別な委員会でまたそれぞれお尋ねがあると思いますが、この機会に先ほど実例の一つとしてあなたの指摘されまし場た、団平産業の下請関係に現われている現状であります。多少違いはありますけれども、総括して賃金がみな遅配なつている。それを今追いかけるのに一生懸命であつて労働基準法によつて、工場閉鎖の場合には、三十日前に予告もしくは手当を出すことになつているが、その三十日の手当がとれるかとれぬかという騒ぎなんです。一方口平産業の方は、私が言うまでもなく、企業の線を越えた、われわれから言えば浪費でありますが、こういうような非常な敢行的なことが現われているのでありまして、結果は、この日平産業の動きの中にもはつきりしているように、中小企業にしわ寄せされ、中小企業の破綻は、結局最後は労働者生活を犠牲にして、なおかつ法の保護も及ばないという実態まで追い詰められているということがよく出ていると思う。こういうような状態でありますので、もちろん労働関係する諸政策労働省の所管ではありますが、しかし有機的な関係において、私は中小企業対策の中においては、もちろん手わけをしてやることけつこうでありますけれども、むしろどつちの線から強く打出して来るかというようなことは、あまり役所の形式にこだわらないで、もつと実質的な面で、労働対策について、どういう連絡がよいのか私はわかりませんけれども、もつと労働省中小企業庁との間に、緊密な連絡が必要であると私は思う。こういう点に対して、今後十分な御注意をいただきまして、中小企業のもとに一番ひどい犠牲を受ける労働問題を重視されるように、対策の中に御考慮いただきたい。こういうことを希望いたしまして、本日ははなはだ長時間まことに御迷惑でありましたが、これをもつて私の質問を終ります。
  126. 赤松勇

    赤松委員長 本件につきましては、次会の委員会にも引続いて調査を続行いたしますので、本日御出席の参考人各位には、御足労ながら次回の委員会にも御出席願いたいと存じますから御了承願います。  次会は明後二十八日午前十時より開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後五時十八分散会