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1954-05-19 第19回国会 衆議院 労働委員会 第24号
公式Web版
会議録情報
0
昭和
二十九年五月十九日(水曜日) 午前十一時三分
開議
出席委員
委員長
赤松
勇君
理事
池田 清君
理事
丹羽喬四郎
君
理事
持永
義夫君
理事
多
賀谷真稔
君
理事
井堀
繁雄
君 木村 文男君 黒澤 幸一君
島上善五郎
君 大西 正道君 日野 吉夫君
矢尾喜三郎
君 中原 健次君
出席政府委員
労働政務次官
安井 謙君
労働基準監督官
(
労働基準局
長)
龜井
光君
委員外
の
出席者
参 考 人 (
松竹労働組合
大船分会委員
長) 河野
貞壽
君 参 考 人 (
松竹労働組合
大船分会書記
長)
今井健太郎
君 参 考 人 (
東京
都
職員労
働組合清掃支部
長) 菅原 正松君 専 門 員
濱口金一郎
君 ――
―――――――――――
五月十八日
委員佐藤芳男
君辞任につき、その補欠として本 名武君が議長の指名で
委員
に選任された。 ――
―――――――――――
本日の
会議
に付した事件
参考人招致
に関する件
最低賃金法案
(
井堀繁雄
君外六十三名
提出
、衆 法第一六号)
最低賃金保障金融公庫法案
(
井堀繁雄
君外六十 三名
提出
、
衆法
一七号)
最低賃金法案
(
和田博雄
君外四名
提出
、
衆法
第 一八号)
最低賃金保障金融公庫法案
(
和田博雄
君外四名
提出
、
衆法
第一九号)
労働基準法
諸規則に関する件 ――
―――――――――――
赤松勇
1
○
赤松委員長
これより
会議
を開きます。
最低賃金法案
(
井堀繁雄
君外六十三名
提出
、
衆法
第一六号)、
最低賃金保障金融公庫法案
(
井堀繁雄
君外六十三名
提出
、
衆法
第一七号)、
最低賃金法案
(
和田博雄
君外四名
提出
、
衆法
第一八号)、
最低賃金保障金融公庫法案
(
和田博雄
君外四名
提出
、
衆法
第一九号)を
一括議題
とし、その審査を進めます。 まず
提案者
より順次
提案理由
の
説明
を聴取いたします。多
賀谷真稔
君。
多賀谷真稔
2
○
多賀谷委員
ただいま
議題
となりました
最低賃金法案
及び
最低賃金保障金融公庫法案
につきまして、その
提案理由
及び
内容
の
概要
について御
説明
を申し上げます。
最低賃金制
は、前世紀の末ニユージーランドに
実施
されて以来、
イギリス
、
フランス
、オランダ、ベルギー、カナダ等々に行われ、第二次大戦後の今日においては、インド、ビルマ、フイリピンの
アジア
の
後進国
及び
中南米諸国
に至るまで、ほとんど法の
制定
を見ているのであります。
ILO総会
においても、一九二八年、すでに
最低賃金制度
に関する
条約
並びに
勧告
が採択され、
わが国
の
労働基準法
にも
最低賃金
に関する
条項
があるにもかかわらず、いまだ
実施
の運びに至
つて
いないことは遺憾のきわみであります。
賃金
と
労働
時間は、
労働条件
における天井と床の
関係
にあり、いかに
労働
時間の規制が行われても、
賃金
について何らかの
最低保障
がないならば、
労働条件
の
向上
は期し得られないのであります。最近特に封建的低
賃金
よりの脱却及び
実質賃金
の
低下防止
のため、
最低賃金法制定
の要望が高まりつつある点並びに
国際貿易
上、ソーシヤル・ダンピングの復活の危惧のある
点等
も考慮し、提案した次第であります。 以下その
内容
の
概要
について
説明
いたします。 第一に、
最低賃金法
の
目的
は、申すまでもなく、
労働者
の
健康能率等
の必須の
最低水準
を維持せしめない劣悪な
労働条件
を排除するにあるのであり、全国的な
最低線
を画し、その線まで
賃金
を
保障
し、
労働者
の
生活
安定と
労働能率
の
向上
をはかり、
経済
の
興隆
に寄与せんとするものであります。 第二に、本
最低賃金法
は、附則において
労働基準法
の
最低賃金
の
条項
を一部改正し、その改正した
労働基準法
の
規定
に基いて定めたものといたしたのであります。そこで
本法適用
の
労働者
からは、
労働基準法
の
適用
を受けない
船員労働者
、
家事使用人
、
家族労働者
及び
公共企業体等労働関係法
、
地方公営企業体等労働関係法
に
規定
する
職員
以外の
国家公務員
並びに
地方公務員
は除外いたしたのであります。これらの
船員
、
国家公務員
及び
地方公務員
は、別個に
法律
を
制定
または改正し、
生活
の
最低保障
を確保する所存であります。 第三に、
最低賃金
の額は一箇月八千円といたしたのであります。
最低賃金額決定
の
基準
は、
各国
においても種々でありますが、われわれは主として
厚生省社会局委託
による
労働科学研究所
の
最低生活費
の研究の結果によつたのであります。これによれば、一九五二年
調査
で、
住生活
及び税金、
社会保険料
を除いて、
家族
と
共同生活
をしている軽
作業従事
の
成年男子
の再
生産
の
最低限度
の
消費単位
が七千円でありますので、これに
独身者たる
の
条件
を加え、さらにその後のCPIの
上昇率
、
地域差等
により修正し、八千円といたしたのであります。
最低限度
の世帯を
夫婦子供
一人、三歳とみれば、
消費単位
は二・二となり、純
生活費
のみでも一万六千円程度となり、約五〇%にすぎないのであります。なお
基本
たる
賃金
が月、週、日、時間によ
つて
定められている場合を区別し、月八千円、週一千九百二十円、日三百二十円、時間の場合は、三百二十円を
所定労働
時間数で除した
金額
を
最低賃金額
といたしたのであります。 第四に、右の
金額
に達しなくても使用できる
除外例
を設けたのであります。それは
技能者養成者
、
精神
または身体の障害により著しく
労働能力
の低位な者、
労働者
の都合により
所定労働
時間に満たない時間の
労働
をした場合、
所定労働
時間の特に短
かい者
、
労働者
が満十八歳に満たないものであります。 第五に、
中央賃金審議会
は
物価変動
その他により、
金額
の増減を行う必要がある場合において、
労働大臣
に
勧告
しなければならぬ
規定
を設けたのであります。 第六に、
最低賃金
の
支払い
のために必要な
資金
を融通するため、
最低賃金保障金融公庫
を設けることにいたし、
最低賃金保障金融公庫法案
を
提出
いたしたのであります。
資本金
は全額
政府
出資することといたし、
初年度資本金
六百億円をも
つて
出発し、年々
主務大臣
の
認可
を得て増資することといたしました。
事務所
は主たる
事務所
を
東京
都に、従たる
事務所
を都道府県の
区域ごと
に置き、役員は総裁一人、
理事
若干人、監事二人を置き、従たる
事務所
に
支所長
を置き、その
運営
については
運営審議会
を
中央
・
地方
に設け、
学識経験者
、
使用者
、
労働者
の三
者構成
とし、これが当ることにいたしたのであります。貸付の
限度
、利率及び期限、担保、元利の回収については、
中央審議会
の議を経て
業務方法書
を作成し、
主務大臣
の
認可
を受けて決定し、これにより行うことにいたしました。 以上がこれらの
法案
の
概要
でありますが、何とぞ慎重御
審議
くださらんことを希望する次第であります。
赤松勇
3
○
赤松委員長
井堀繁雄
君。
井堀繁雄
4
○
井堀委員
ただいま議題となりました
最低賃金法案
及び
最低賃金保障金融公庫法案
について、その
提案理由
を御
説明
申し上げます。
最低賃金制度
の
目的
といたしますところは、
労働者
の
生活
を安定し、それによ
つて労働資質
の
向上
をはかり、も
つて
製品の
高度化
と量産の
発展
に寄与せしめんとするものであります。
労働保護
に関しましては、すでに
労働基準法
がありまして、長期間
労働
の禁止、災害の防止並びにその補償、
女子年少労働者
の
保護等
の措置が講ぜられておりますことは御案内の
通り
であります。しかし、これらの
保護
がいかに万全が期せられましても、低
賃金
が強要せられて
労働者
が
生活
不安にさらされておりましては、
せつかく
の
保護立法
も無意義となり、
労働
の
資質
の
向上
も、それによる
労働
の
生産性
の
高揚
も、確保できないことは申すまでもありません。
労働基準法
が
実施
されてすでに七年、この
法律
の眼目である
最低賃金制度
が日の目を見ていないということは、まさに
画龍点睛
を欠くといわなければなりません。本
法案
は、かかる
労働基準法
の
跛行性
を改めまして、
保護立法
として、本来の使命を達成せしめんといたすものであります。 次に、ここで強調いたしたいことは、
中小企業
の
労働強化
であり、その被害より
労働力
の
保護
の急務なることであります。
朝鮮動乱
以降、
労働賃金
は、
規模別
に、また時間
賃金
の
較差拡大等
はますますはなはだしくなり、これを放置するときは、
わが国産業経済
は、ここから救いがたい
危機
を招来することは、火を見るより明らかなことであります。
わが国
の
中小企業
は、全
事業所
中、その九九・八%を占め、
就業人口
また八一・五%に達しております。終戦以来、
中小企業
の再建が叫ばれて来たのでありますが、その実態は、
企業者
と
雇用労働者
の悪戦苦闘によ
つて
辛うじて維持され、しかもこの悪戦苦闘もすでに限界に達し、今日では破局の一歩手前にあるのであります。その原因は、
保守政党
と
吉田内閣
の
中小企業対策
の貧困と無能のしからしむるところであります。
政府
は、
倒産破滅
の
危機
に当面している
中小企業
に対して、僅少な融資によ
つて
これを糊塗して来たにすぎません。これではほんとうに焼け石に水でありまして、
中小企業
の再建はおろか、
危機
はますます
深刻化
の一途をたどる以外にないのであります。当面している
経済
の
危機
は、基本的には
中小企業対策
の貧困が累積されたものであります。
国際的物価高
による貿易の不振は、
中小企業
が
封建的自由放任主義
のもとに、低
賃金
と長時間
労働
の低質なる
労働力
に依存して、不当な競争を余儀なくされて来た結果にほかならぬのであります。
世界先進国
の
産業
は、
労働資質
の改善によ
つて
精密、
高度化
されつつある今日、
日本
だけが往年のソーシアル・ダンピングを夢みて、
中小企業
の維持をはからんとすることは、いたずらに
世界市場
から締め出され、没落を待つのみであります。言うまでもなく、
近代生産
は組織の
生産
であります。
労働資質
の
向上
と旺盛なる
生産意欲
を組織化し、
労働効率
を確保する以外に道はありません。製品の
質的高度化
と量産を推進する
労働体制
を確立することが最も緊要であります。そのためには
労働者
の
最低生活
が
保障
されなければならないことは申すまでもありません。とりわけ
中小企業再建
の方途は、
生産
の原動力である
労働対策
を無視しては絶対にあり得ません。本
法案
は、右に述べたように
労働者
、特に
青少年労働者
を完全に
保護
し、それによ
つて産業組織
の
近代化
を推進せんとするものであります。かくすることによ
つて
、
民主的労使関係
は確立され、
産業
平和が維持される結果となることを確信するものであります。 次に
最低賃金制度
の
国際性
について、簡単に御
説明
申し上げます。すでに諸外国では古くからこの
制度
を
実施
いたしまして、
経営
の
民主化
と
生産
の
向上
が実現され、
産業
の基礎は安定し、強化されております。一部
反対論者
は、この
制度
を
実施
すれば、
企業
が倒れたり、
失業者
がふえると申しますが、それは机上の空論でありまして、前にも述べました
通り
、それは
封建的資本主義者
か、しからざれば第二次
産業革命
ともいうべき近代的な
経済進化
を否定する者であります。特に
わが国
のような
企業欲
の旺盛な
国民性
にありましては、むしろ本
制度
によ
つて不当競争
を防止いたしますことにより、かえ
つて
堅実な
企業欲
を刺激いたしまして、
産業
の
国際的発展
を促す結果を招来するものと確信いたします。一九二八年の
国際労働会議
十一回総会で、
最低賃金決定制度
の創設に関する条約及び
最低賃金決定制度
の
実施
に関する
勧告
を採択いたしましたことは御案内の
通り
であります。この
制度
を法制化いたしております国は、すでに三十箇国に達するのであります。この
会議
で、
日本
の
政府代表
は棄権、
資本家代表
は反対、
労働者代表
のみが賛成いたしましたことは、今なお
国際社会
の記憶するところであります。その
反対理由
は、
わが国産業
の
特殊事情
ということにあつたのであります。その
特殊性
とは、
日本産業
の中枢が、
中小企業
によ
つて
占められていること、
家内工業的企業
がなお多数存在しているという点にあつたのであります。しかし、実際には低
賃金
と、長時間
労働
が
日本産業
の身上であつたことは、偽ることのできない事実でありまして、
最低賃金制度
は、
産業革命的性格
なくしては
実施
し得ざるものであるからであります。当時
わが国
は
産業革命
を回避いたしまして、
満州事変
から支那事変に入り、逐に太平洋戦争に突入したのでありますが、この間におきまする
復古思想
により、ますます
封建的鎖国経済態勢
を濃化いたしましたことは、これまた否定することのできない事実であります。しかるに戦後の
民主化運動
によ
つて労働体制
は新たにされ、近代的
産業
平和への方途も試みられたのでありましたが、唇歯輔車の
関係
にあるはずの
経済
の
民主化
は、
最低賃金制度
を拒否した
特殊事情
と同様の理由によ
つて
阻止されたのであります。これが今日の
経済危機
に当面するに至らしめた要因でありまして、
資本家
、
政府
の猛省を促さなければならないところであります。
日本
が
民主国家
として、
経済自立
を達成しようとすれば、
国際的責任
を完全に果さなければならないことは申すまでもありません。
国際経済
は、
民主主義的共通性
に立脚して、
国内的社会正義
と
国際的社会正義
が、表裏一体となることを必要としているのであります。この
体制
を整えないで
国際市場
に臨むことは許されません。しかも依然二十五年前の
特殊事情
を口実にして、
最低賃金制度
の
実施
を遷延せんか、それは
国際市場
から孤立化し、貿易の道を遮断し、
日本経済
を破局に追い込む結果となるのであります。
従つて
、まず
最低賃金制度
を
実施
して、
労働
の
資質
において、
労働生産性
においても、
国際水準
に到達せしめることが、何よりも急務であります。
日本産業
当面の
危機克服
のため、はたまた将来の
発展
のためにも、
最低賃金制度
の
実施
は刻下の緊急の課題であることは、以上申し上げた
通り
であります。昨年七月発表されました
昭和
二十八年度
年次経済報告
――一般には
経済白書
といわれているが、その結語において、「今や
世界各国
にほうはいとしてみな
ぎつている産業構造
再編成の動向は、これを第二次
産業革命
とも名づけられるであろう。この機運に乗ることに失敗したならば、
日本経済
の
発展
ひいては
国民経済
の
向上
は停滞し、
経済
的のみならず社会的、政治的に深刻な苦悶に直面しなければならないであろう。」と警告しているのであります。ここに
産業構造
の再編成、あるいは第二次
産業革命
とい
つて
いるのは、
経営
の
民主化
と
労働
の
生産組織化
をさすものと解することができるのであります。白書はさらに続けて、「われわれは終戦以来八年、ひたすら
生産量
の回復に努めてきた間に、欧米においては復興の主眼を
生産性
の
向上
に置いていた。米国ではその
民間投資
の四割を、古い設備の取かえと
近代化
に置いている。英国は
産業
の若返りに必死である。
フランス
のモネ・ブランは実は
近代化
の計画である。」と述べておるのであります。さらに「今や
アジア
の諸国は軽工業化によ
つて
、
日本
が過去にたど
つて
来た道を歩き初めた」と述べ、続けて「欧米、
日本
、
アジア
の
雁行形態
において、
わが国
は次第に
中央
から後の位置に
ずり下
つて
いる」と、重ねて
日本産業
の
危機
がきわめて深刻であることを警告しておるのであります。
産業
を
近代化
するためには、
機械設備
の改善を等閑視するわけには参りません。さりながら、
日本
の
経済事情
は、欧米のごとくただちに多額の投資によ
つて機械設備
を一新するなどは、望み得ないことは御案内の
通り
であります。しかし、眼前の
危機
は一刻たりとも看過することは許されません。今日ほど、
産業政策
、
労働政策
の重要なるを痛感することはありません。
日本
の
労働者
の天性ともいうべき勤勉と才能を最大限に発揮させ、
労働
の
自主的創意
を
発展
せしめることによ
つて
、わが足らざるを補い、当面する
わが国経済危機
を打開する以外に方途はありません。そのためにこそ、
最低賃金制度
は、
基本的産業
、
労働政策
として
実施
しなければならないとかたく信ずるものであります。 以上簡単に、両
法案
を提案いたしました趣旨の御
説明
を申し上げましたが、次にこの
法律案
の
内容
の概略について簡単に御
説明
いたしたいと存じます。 第一、この
法律案
は、前にも申しましたように、
労働基準法
に基いて、
最低賃金
の額その他これに
関係
いたします事項を規定することといたしているのであります。 第二は、
最低賃金
の額についてでありますが、その額を二十歳以上の者に月額八千円、十八歳以上同七千円、十五歳以上同六千円の
三本建
といたしました。これは、それぞれの
年齢別
の
労働能力
に応じて、
生活
の基礎を確保せしめるためのものであります。
わが国
現在の状態におきましては、十八歳とか二十歳などと
最低賃金額
を一本に規定いたしますと、その
基準年齢
以下の
年少労働
に混乱を惹起するおそれがあるからであります。たとえば、十八歳を
基準
といたしまして
最低賃金額
を定めますと、雇用が偏重したり、
一定年齢
の期間、
賃金
すえ置きの状態を現出したりいたしまして、その結果は、
年少労働者
に犠牲を転嫁することとなるのであります。本来この
法案
は、
年少労働者
の
保護
と
資質
の
向上
に重点を置くものでありますから、これらの事態を重視いたしまして、それに
生計費
、
労働能力
、
一般賃金水準
、
企業
の
支払い能力等
を考慮いたしまして、三段階の
年齢別最低賃金額
を定めることとしたのであります。 次に、満二十歳を月額八千円と規定しました根拠でありますが、満二十歳といえば、すでに独立した生計を営む
適齢期
でありまして、精神的にも
経済
的にも、父兄の扶養を離れまして、独立しなければならない時期であります。また職場におきましても、一応独立した
人格
を認められ、
生産
に従事し、その
労働能力
も相当高度に達しているのであります。二十歳八千円の額は、
労働生産性
に対応した
賃金水準
でありまして、
企業
の
支払い能力
をも十分に考慮された妥当なものであります。 ここに一例を、
労働省昭和
二十五年五月、
学歴別
、
初任給調査
結果報告によ
つて
、当時の
年齢別初給賃金額
を求め、これに
昭和
二十八年末の
賃金指数
をも
つて
計算すれば、二十歳が一万五百五十三円、十八歳が八千七百二十六円、十五歳が四千二百二十七円となります。なお十八歳七千円、十五歳六千円といたしましたのは、二十歳を
基準
とした
労働力
と比較してのものでありまして、次の時代の
生産者
として、その
労働力
を
保護
育成することを考慮いたした次第であります。 第三は、
賃金
の
支払い方法
についてでありますが、
基本賃金
が、月給、週給、日給または時給によ
つて
定められている場合を勘案いたしまして、月額八千円に対し、一週千九百二十円、一日三百二十円とし、一時間につきましては四十円とする
算定法式
に
従つて
、以下それぞれの額を定めることといたしました。 第四は、
審議会
についてでございますが、
現行労働基準法
に
中央賃金審議会
を設けて、毎年少くとも一回、
最低賃金額
が適当であるかどうか、またその
金額
の変更を必要とするか
いなか等
について、
労働大臣
に報告及び
勧告
をする義務を負わせることにいたしました。 第五は、
適用範囲
でありますが、全国全
産業
の全
労働者
に及ぶことにしました。但し、国家及び
地方
の
公務員
並びに
公共企業
及び
地方公営企業
の
労働者
を、一応本法の
適用
から除外しましたが、右の
労働者
に対しましては、別に
公務員法
、
公企労法等
の法規のうちに、本法の精神に基き、これと同一の
最低賃金制
を
実施
せしめんとするものであります。 次に
最低賃金保障金融公庫法案
について、ごく簡単に
内容
の御
説明
をいたします。 本
法案
は、
労働生産性
の
高揚
によ
つて
、
企業
の
支払い能力
を確保し、労資の
共存共栄
を
目的
としたものでありますことは、先ほど来たびたび申し述べた
通り
でありますから御理解いただけると思うのであります。しかし本
制度
が完全に、その機能を発揮いたしますまでには、
過渡的措置
を必要とするのであります。すなわち、これまで低
賃金
に依存し、
労働生産性
を無視して
企業経営
を続けて来た
中小企業
、その他の
女子労働
を主体とする
企業等
におきましては、過渡的に
賃金支払い源
の確保に困窮を来すものがあることは、当然想像されますので、このために
最低賃金保障金融公庫法案
を考えまして、
最低賃金法案
とあわせて
提出
した次第であります。
最低賃金保障金融公庫法案
の
目的
といたしまするところは、
最低賃金
の
支払い
を確保するところにあるのであります。このために
最低賃金保障金融公庫
を設置することといたしたのでありますが、
公庫
の性格は法人とすることとし、その設立の
手続等
は、すべてそれに準ずることといたしました。
公庫
の
資本金
は三百億円とし、
昭和
三十年度より三箇年にわたりまして、その全額を
政府
が出資することといたしたのであります。このほかに、
労働者
に毎月支払われる
賃金
の額に千分の四を乗じて得た額を、毎月
労働者
の
賃金
から控除して積み立て、さらに
使用者
もそれと同額を積み立てて、これを
運用資金
に充てることとしたのであります。この
積立金
は、
公庫
がその使命を果したあかつきには、
労働者
及び
使用者
に返済することにな
つて
おります。
積立金制度
を採用いたしましたゆえんのものは、
労使とも
に本
制度確立
の責任の一端を負担することによりまして、一日も早く完全なものにいたしたいからであります。すなわち、
政府資金
のみに依存して本
制度
が発足いたしますと、
労使とも
にこれに頼り過ぎて、本
制度
の眼目であります
労働生産性
の
高揚
が急速に期待できなくなるからであります。
最低賃金制度実施
に対する
政府
の責任もさることながら、
労働生産性
の
高揚
に対しては、
労使
の
自主的努力
なくしては、これが達成は不可能であります。ゆえに、ここに両者の犠牲の負担と協力にまつこととしたのであります。なお、
公庫
の
存続期間
を短期間といたしましたのは、この
制度
の
保障
により、
労働生産性
が
高揚
されまして、
企業
の
支払い能力
が確保され、
公庫
がその使命を果すものと確信いたしているからであります。さらに、
労使
が平等の負担によ
つて
本
制度
の確立に協力いたしますことは、その反面におきまして、
産業
平和の思想が涵養されることになるのであります。このことは、決して過小評価してはならないことと思うのであります。 最近、
資本家
、
経営者
、あるいは識者と称せられる人々が、西独、
イギリス等
の
労働事情
を視察されて、
日本
のような苛烈な
労働争議
がない、
労働者
に
愛国心
がみなぎり、
産業
の
興隆発達
がすべてに優先していると報告されております。しかし、
日本
の
労働者
もまた、
愛国心
において西独、
イギリス等
の
労働者
に遅れをとるものとは断じて思いません。ただ遺憾なことは、
日本
の
労働者
の多くは、
生産
における
人格
が認められず、雇い主に屈従を強要されておるために、
せつかく
の
愛国心
を
生産
に反映させることができない状態に置かれているのであります。言いかえれば、
労使関係
を
主従関係
と考えるところの
封建的観念
が根強く、
労働者
は
生産
の道具以下にしか評価されておりません。かかる
体制
のもとでは、旺盛な
愛国心
を
生産
の上に発揮することはできないのであります。
労働者
の
生産性
の
高揚
は、まず
労働者
の
人格
を暢達いたしまして、これを
生産
へ組織化するところに
近代産業
の
出発点
がなければならないのであります。そのためにも、
最低賃金制度
を確立いたしまして、
労働者
の
最低限度
の
生活
を
保障
し、社会的にはもちろん、
生産
におきましても、独立した
人格者
として処遇することを必要とするのであります。 以上、
最低賃金法案
及び
最低賃金保障金融公庫法案
の概略を御
説明
申し上げた次第でありますが、何とぞ
産業
の
国家的興隆
という見地よりいたしまして、慎重御
審議
の上、本
法案
の成立に御協力賜わらんことを切に御願い申し上げる次第でございます。
赤松勇
5
○
赤松委員長
持永委員
から発言の通告がありますから、これを許します。
持永
君。
持永義夫
6
○
持永委員
私は、ちよつと
政府
の方にお尋ねしたいと思います。ただいま提案されました
最低賃金法案
についてでありますが、
中央賃金審議会
において、ある職種については
最低賃金制度
を設けたらどうかというような意見があつたとか、あるいは結論が出たというようなことを新聞で拝見いたしましたが、事実その
通り
であるかどうか。それから、もし事実であるとするならば、その
内容
についてひとつ御
説明
願いたい。 それからもう一つは、ただいま提案になりました全般的の
最低賃金制度
自体に対して、
政府
の方ではどういうお考えを持
つて
おられますか、それをお伺いいたします。
龜井光
7
○
龜井
政府
委員
最低賃金
につきましては、御承知のように、
中央賃金審議会
におきまして、
昭和
二十五年十一月以来三箇年余を経まして、慎重に
審議
をいたして参りましたところ、最近に至りまして一応の結論を得まして、近く二十一日に最終的な答申がなされる段取りにな
つて
おるわけであります。この答申の
内容
は、まだ最終的な決定にな
つて
おりませんので、私からここで詳しく申し上げることはいかがかと存じますが、一応従来の
審議
の経過におきまして、御意見のありました点を申し上げたいと考えます。 第十回
中央賃金審議会
におきまして、
わが国
におきまする
最低賃金
としましては、全
産業
を通じまする一本の
最低賃金制
を
実施
することと、低
賃金
産業
を主体としまする
最低賃金制
を
実施
すること、この二本建で
最低賃金制
を考えて行くべきである、しかし現在の
わが国
の
経済
の実情その他から見まして、今ただちに全
産業
を通じまする一本の
最低賃金制
を
制定
しますことは時期が尚早であるので、とりあえず低
賃金
産業
についての
最低賃金制
を考慮すべきであるという決定がなされたのであります。この決定に基きまして、
中央賃金審議会
におきまして、低
賃金
産業
というものの種類をいかに把握するかということの御
調査
がありまして、その結果、絹人絹織物製造業、玉系座繰生糸製造業、家具建具製造業、手すき和紙製造業、この四業種につきまして
最低賃金制
をしく前提のもとに
調査
をすべきであるという結論に達しまして、この四業種についてそれぞれ専門
審議会
を設置しました。専門
審議会
の
委員
が現地につきまして種々
調査
をいたしました結果、これらの四業種につきましての
調査
がまとまりましたので、そのまとまりました
調査
の結果をもちまして
中央賃金審議会
の答申の骨子といたしたのであります。 答申の
内容
としましては、とりあえずこの四つの業種につきまして
最低賃金
を
実施
することが適当であると考えられる、しかし今後これらの業種は逐次拡大されるべき
性格
のものであるということが第一点。 第二点は、これらの四業種について
最低賃金額
を決定するにつきましては、もちろん
労働者
の
生活
の水準を考慮しなければならぬが、一方また
支払い能力
というものも十分考慮して、その間に調整のある
金額
を決定すべきであるということと、さらにまた、その
金額
を決定するにあたりましては、地域別に、また業種別に、あるいは
年齢別
にそれぞれ各グループにおいてごく低
賃金
と認められる
賃金
を排除するような方策を樹立すべきであるということが第二点でございます。 第三点としましては、四つの業種について、それぞれ専門
審議会
が
調査
をいたしましたが、その
調査
は、まだ地域的に見まして全国のすみずみにわたりましての
調査
がなされていない。
従つて
、さらにこれらの業種について全国的に漏れなく実態の
調査
をして、その
実施
の問題を取上げるべきであるという趣旨からいたしまして、
地方
賃金
協議会、これは
労使
公益の三
者構成
の機関でございますが、この
地方
賃金
協議会を設置いたしまして、それぞれ四業種についてさらに
調査
をいたす、そこにおいて
最低賃金額
というものの算出、並びにその算出されました
最低賃金額
のその
地方
の
産業
に及ぼす影響、あるいは
経営
に及ぼす影響等を十分
調査
をすべきであるというのが第三点でございます。 第四点としましては、これらの四業種について
最低賃金
を
実施
するについては、いろいろ
企業
の
支払い能力
の面からいたしまして、
政府
としてなすべき施策がなさるべきである。それはいろいろこまかい問題はございまするが、大体金融的な
措置
、あるいは税制上の
措置
、あるいは
中小企業
の合理化の
措置
、いろいろな面におきまする
政府
の施策が要望として掲げられておるのでございます。 この四つの点からいたしまして、
政府
は、これらの四つの点を十分勘案して、すみやかに実行性のある
最低賃金
をこれら四業種について
実施
すべきであ
つて
、それらの実現については、
中央賃金審議会
の議を聴取すべきであるという大体の筋書きになろうかと思うのであります。 これをもう少しわかりやすく御
説明
いたしますと、専門
審議会
では、まだ全国的な十分な
調査
がなされていないので、
地方
賃金
協議会におきまして、それらの四業種についての実態の
調査
、あるいはどの程度の
賃金
額が
最低賃金
として適当であるかというふうなこと、並びにその影響等を十分
調査
をしまして、その
調査
が
労働大臣
に
報告
され、
労働大臣
がそれらの
調査
に基きましてその額を決定する場合に、
中央賃金審議会
にさらに諮
つて
額を決定して行くという大体の構想で答申がなされようとしておるところだと思うのであります。 なお、第二段で御質問のございました、ただいま御提案にな
つて
おりまする
最低賃金法案
、すなわち、全
産業
を通じまして一つの
最低賃金制度
を
実施
しようということに対して、
政府
はどう考えるかという御質問でございますが、先ほど御
説明
申し上げました
中央賃金審議会
の第十回の議決の中にございますように、とりあえず低
賃金
産業
の
最低賃金
というものを考える。全
産業
を通じての一本の
最低賃金
は、その後において
日本
の
経済
の実勢とにらみ合せながら考えて行こうという
中央賃金審議会
の御意向でございます。
政府
としましても、この御意向を尊重いたしまして
最低賃金制
を考えて参りたいというふうに考えております。 ――
―――――――――――
赤松勇
8
○
赤松委員長
次に
労働基準法
諸規則に関する件について
調査
を進めます。 本件につきまして、
松竹労働組合
大船分会委員
長河野
貞壽
君、
松竹労働組合
大船分会書記
長
今井健太郎
君、以上二名の方が参考人として御出席にな
つて
おりますから御了承願います。 それでは参考人各位より順次御意見を聴取したしまして、後に質疑に入りたいと存じますから、御了承願います。まず河野
貞壽
君。
河野貞壽
9
○河野参考人 過般の改正の中に、女優、結髪、スクリプターというものの夜間作業の制限は撤廃したいというようなことが出ておりましたが、この点につきまして、組合側といたしましては、なぜそういうことをしなくちやいけないかという必然性が認められないという点で
反対
であります。と申しますのは、
終戦
前、映画
産業
というものは、時間的に非常にルーズでありまして、徹夜とか、そういうことを非常にや
つて
おつたわけであります。ところが、
基準
法ができまして、ようやく普通の
産業
の
労働者
のように正規に働けるということになつたわけです。これがはずされますと、また再び元のように夜間作業というものの連続で、何日間も徹夜で映画をつく
つて
行くというようなことになるのではないかという心配のために、
反対
いたすものでございます。たまたまこれに出されている
理由
に、駅とか公共の建物で、夜でなければ使えないということがあるので不便であるということが出ております。しかしこれは、やり方によ
つて
は昼間の駅でも夜のようにとることもできます。アメリカでは、駅とか建物とか、そういうものはすべて撮影所の中でや
つて
お
つて
、表に出るなどというようなことはほとんどないということでございますが、現在の
日本
の撮影所の機構では、そういうことまで一気にできませんので、そういう点については、組合としても、映画をつくる者の芸術心といいますか、そういう面で多少悩みはあるわけでございます。ですから、組合側といたしましては、そういうものを一歩譲るといたしましても、ロケーシヨンとか、特にそういう夜間でなければ借りられないものに限
つて
は、何か許可法があるということぐらいは一応考える余裕がございますけれども、全般的に女優、結髪スクリプターというものの深夜作業を撤廃するということについては全然
反対
でございます。
多賀谷真稔
10
○
多賀谷委員
これに関連して
政府
にちよつとお尋ねいたします。実は、本日の
審議
の中にも出て来ると思いますけれども、一応この機会に聞いておきたいのでありますが、この答申案で意見が出ております。諮問に賛成、但し、いろいろ留意して行うよう、こういうことにな
つて
おりますが、これは原則的に初めから賛成というような趣旨で答申をしたのですか、その点の経緯がわかりましたら、お知らせ願いたいと思います。
龜井光
11
○
龜井
政府
委員
この問題につきましては、
中央
労働
基準
審議会
におきましても、慎重な討議がなされたのでございますが、結論的には、現在の
日本
の撮影所の機構、構造、技術等から見まして、深夜業もやむを得ない実態にあるのではないか。但し、十二歳未満の年少者をいわゆる子役として使う場合におきましては、児童に対する健康福祉の問題からいたしまして、これには相当注意をいたさなければならぬのではないか。しかし、それかとい
つて
、十二歳未満の児童を子役として深夜業に使うことを禁止することは、撮影全体のスケジュールの上から申しまして適切ではないので、十二歳未満の年少者の使用許可を与える際におきまして、それらのことを十分念頭に入れて、その許可を与えるか与えないかということを考慮すべきである。こういう希望
条件
がつきまして全員賛成をいたした次第であります。
多賀谷真稔
12
○
多賀谷委員
駅で深夜にとるという場合には、事実問題として現在どういう扱いをされているか、お尋ねいたしたいと思います。
龜井光
13
○
龜井
政府
委員
現在も、女優、スクリプターあるいは結髪等の業務に従事しまする女子が深夜業をいたしまする実例は、承知をいたしておりますが、ただ、これを監督の作用で禁じますることが、映画の製作あるいは文化水準の
向上
というような面から、はたしてただちによいかどうかという問題がございます。
内容
を
調査
いたしまするところ、深夜におきまして
労働
いたしましても、その実
労働
時間はごく短かいのでございまして、出待ち時間が長いというような現実もございまして、われわれとしては、違反であるが、しかし、これをただちに摘発しますることは、いろいろな点でさしさわりがあるりで、実は大目に見ておると申しまするか、率直に申し上げれば、そういう現状にあるのでございます。
多賀谷真稔
14
○
多賀谷委員
その大目に見ておるということには、いろいろ問題がありますが、要するに、その
運営
においては、ある限界があると思うのですが、その
基準
は現在どういうようにな
つて
おりますか。
龜井光
15
○
龜井
政府
委員
特別の
基準
というのを監督の方針の中に織り込んではいないのでございまして、結局その現場におきまする実
労働
時間等を監督官が十分検討いたした後におきまして、先ほど申し上げましたような処置をいたしておるのでございます。画一的な特別な
基準
は、まだ設定をいたしておりません。
多賀谷真稔
16
○
多賀谷委員
これを諮問に出されて、しかも十二歳以下の年少者を使う場合の使用許可に留意をするように、こういう以外は、大体全面的に賛成のようですが、この
条項
がはずれて来ますと、今参考人からも御意見がありましたように、全面的にくずれて来る、かように考えられるわけです。ことに、映画は深夜業もできる、こういうことの根拠は、どういうところから出ているのか、お尋ねいたしたい。
龜井光
17
○
龜井
政府
委員
法律
上の根拠は、
法律
の六十二条第四項にございまして、
中央
労働
基準
審議会
が議決をして、省令で
規定
をいたしますれば、
法律
的な根拠は出て来るわけであります。そのほかの根拠と申しますると、どういう根拠をお尋ねしておられますか、ちよとわかりにくいと思います。
多賀谷真稔
18
○
多賀谷委員
現在でも二本立とか三本立とかのたびに、早どりをや
つて
おる現状であります。しかも割合にわがままのきく大幹部というのは、
雇用
契約でないわけであります。女優でも全部自由契約にな
つて
おる。ですから、ここに女子の深夜業という場合において、普通の女優を考えるわけにはいかない。むしろ下つば、と言
つて
は語弊がありますが、下つぱの女優さんであり、低
賃金
の女優さんなんです。こういう人たちが対象になると思う。ですから、その前に留意しなければならないことは、もしもこれを原則的に認めるということになりますと、ますます深夜業が行われる、こういうことになるわけです。これに対して、
労働
省の方では、この答申案が出ておりますが、何かここに
基準
を設けて、その分だけを許可する、こういうような考え方はないのかどうか、これをお尋ねいたしたいと思います。
龜井光
19
○
龜井
政府
委員
われわれといたしましては、そういう問題もあわせて今検討いたしておるところでございまして、まだそれに対する結論が出ていないのでございまして、その点についてのお答えを適切に申し上げるまでには、まだ至
つて
いない次第でございます
多賀谷真稔
20
○
多賀谷委員
どうしても夜でなければとれないような場合、これはわれわれといたしましても、確かにわかるわけです。もつとも、アメリカの例をお話になりましたが、これは
経済事情
の
関係
がありますので、一概には言えませんけれども、どうしても深夜業でなくてはとり得ない場合、これはわかると思います。これを全面的に撤廃する、こういうことは、どうもほかとの関連においても考えられないのじやないか、私はかように考えるわけです。何もその日にしなくても、次の日でもできるわけですから、そういう線がぐずれるということになりますと、私は非常に困つたものだと思うのです。その点で、従来の取扱いを施行規則において明記する、こういうことがいいのじやないか、かように思うのですが、どうですか。
龜井光
21
○
龜井
政府
委員
お話の御趣旨は、ロケーシヨンの場合とセツトの中で撮影する場合の両方――特にロケーシヨンはやむを得ないが、セツトの場合は少し行き過ぎじやないかというような御意見だと私も思うのですが、この問題も、先ほど申し上げましたように、いろいろ実情を
調査
いたし、検討しておる段階でございまして、まだ結論は得ていません。適切なお答えができませんことをお許し願います。
島上善五郎
22
○島上
委員
参考人にちよつと伺いたいのですが、ロケーシヨン等で、深夜でなければ絶対できないという場合が、非常に多いものかどうか。きわめてまれで、その他は深夜でなくてもやれるものかどうかを承りたい。
河野貞壽
23
○河野参考人 お答えいたします。松竹で大体年間六十本余をつく
つて
おります。その中で、夜の駅とかということで特にやつたのは二、三本のように思います。それから公共建物というようなもので、夜でなければ明かない、劇場なんかの場合がございますけれども、これは金さえ出せば昼間でもできるわけですが、その費用のために、夜、はねてからやるということもございますけれども、そういう場合も映画全体の六十本を通じて、ほんの数本であるというのが実情でございます。
島上善五郎
24
○島上
委員
それから、もしこのように改正をいたしますと、各映画会社は、早くつくり上げようと
競争
がはげしくなる。今日でもはげしいと思いますが、その結果、今まで夜でなくとも撮影できた仕事を、無理をして夜にどんどんやるようになる。そういう弊害が非常に多くな
つて
来るのじやないかと私ども想像するのです。ロケーシヨンに限らず、セツトの場合でも、そういうような弊害が非常に多くな
つて
来るのではないか、こう心配するのですが、その点はどのようにお考えになりますか。
河野貞壽
25
○河野参考人 その点を私は一番心配しているわけです。特にロケーシヨンなり公共建物のことが出ましたけれども、これが撤廃されますと、今まで四十日くらいでや
つて
おりましたものが、おそらく三十日あるいは二十何日と、昔のように徹夜々々の連続でや
つて
行くということになるのは、火を見るよりも明らかではないかと思
つて
、組合では一番心配しているところであります。
赤松勇
26
○
赤松委員長
他に御質疑はありませんか。――なおこの際参考人の方から、先般各
委員
諸君にいろいろ陳情いただきましたような諸点について御意見がありましたら、どうぞ。
河野貞壽
27
○河野参考人 まとまつたことは申されませんけれども、映画に働く
労働者
といたしまして、これが撤廃されますと、女優から結髪、スクリプターというものは、先ほどもくどく申し上げましたように、どんどん深夜作業にな
つて
行くといいうことは必至でございます。今までそういうことがありますために、ロケーシヨンに限
つて
は一応黙認していただいてや
つて
いる、また撮影の仕方も、そういうために映画のストーリーなんか考えてやる。徹夜ということになりますと、一応女優はやめて、男子の場合だけ許された時間だけやるということでつく
つて
おりましたけれども、これが撤廃されることになりますと、全部徹夜を続けて、短かい時間で本数を上げて行くということに必至的になることを非常に心配しますので、そういう点を十分考慮していただいて、
審議
していただきたいと思います。
赤松勇
28
○
赤松委員長
今井参考人から何か御意見はございませんか。
今井健太郎
29
○今井参考人 一言言わせていただきます。私職業が俳優の端くれなんで、俳優の事情というものをよく承知しておりますので、そういう面から
説明
したいと思います。 俳優と申しましても、ピンからキリまでございまして、最低は五千円から最高は何百万円の俳優がおるわけです。そのうち女優に関しましても、これは男子より以上の価値があると会社からも認められて、相当な出演料をもら
つて
いる方もありますが、今申し上げたように五千円くらいな
賃金
でや
つて
いる人もおるわけです。ところが、たくさんもら
つて
いる女優というのは、やはり会社がたいへん重く見ているので、わがままがきくわけです。たとえば駅などで徹夜をやつた、疲れたから明日休ませろと言うと、大体自由がきくわけです。そういうわがままというものと、会社のずさんなスケジユールというものが重な
つて
、いわゆる下つぱの女優さんたちがたいへん苦労しておる、こういう事情がある。それから、たとえば一つの作品に女優として役がついて出演しておりますと、その間、たとえば生理的現象を来す、生理休暇をとりたいと思
つて
も、その人が休むために作品がストツプするから、とにかくや
つて
くれということで、作品ができ上
つて
から寝込んでしまうというようなことがあるわけです。 それから、もう全面的に女子の深夜業ができるようになりまして、女優さんがフルに働かされるということになりますと、現在普通作品で約三十日から四十日という日数を、徹夜その他を行わせることによ
つて
二十五、六日に短縮できるのではないか、こういうふうに考えます。そうしますと、有給休暇はもちろんくれないし、
基準
局の方が言われましたように、何かあいまいに現在の会社の労務担当の方と
基準
局の方とが黙認みたいな形で何かなされているということを、われわれはうすうす感じているし、それに不満を感ずるわけです。そういうやみ取引が日常茶飯事のごとく行われるのではないか、こういうふうにも考えているわけです。 それから、女優というものが一人おりますと、必ず主任の結髪が一人ついているわけです。これはむしろスターというもの、役持ちを中心にしておりますが、この結髪は下つぱの女優さんの方もやらなければならない。
従つて
、女優のあるところ必ず結髪がついているわけです。そして撮影現場というものは、休憩ができるところばかりときま
つて
おりませんので、たとえば駅などというところは、たいへん限られておるところで、プラツトホームのところに長時間立
つて
労働
している。特にこれがしげく及んだ場合には、男子についてもそうでありますが、女子の場合には、たいへん疲労があることは常識であると考えるわけです。 それから現在松竹にはスクリプターというものの中に、女子はおりませんけれども、これは他社のシステムと違うので、実際には俳優とそれから結髪というふうにな
つて
いるわけです。もう少し詳しく申し上げますと、こういう実例があるわけです。もしこれが完全に摘発されるということになりますと、われわれの方にも
責任
があると思いますが、十時以降は、
賃金
は支払
つて
おるけれども、やみで落している。
従つて
組合と会社とが締結している
労働
協定というものが、女子の場合には全然違反がない。これは全部やみでやられているので違反がないのであ
つて
、実際にはや
つて
いるのが現状なんです。 もう一つは、会社のスケジユールという点で、たとえば男子の場合には引続き十九時間やるというふうに協定がなされているわけですが、これも、一人の人が引続いてや
つて
いるということが多いので、人間の配置という点を会社がもう少し慎重にやつたならば、そういう協定のオーバーその他も防げると思うので、当然女子の場合にもそういうことが
適用
できるのではないかと思います。 こういう席には初めてですから、たいへんずさんな
説明
ですが、何かそちらの方から引出していただけば、適切な御
説明
ができるのではないかと思います。その点を一つ御理解くださ
つて
、何か引出していただけば御
説明
いたします。
赤松勇
30
○
赤松委員長
何か引出してください。――この間撮影所の方の
調査
にも参りましたから、
委員
諸君も大分よく知
つて
おられると思います。
基準
局長も、いろいろな参考人の意見等も十分参考にされまして、御考慮願いたいと思いますが、何か御発言ございましたらひとつ……。
龜井光
31
○
龜井
政府
委員
先ほど申し上げましたように、慎重に研究いたします。
赤松勇
32
○
赤松委員長
それではできる限りその陳情の趣旨に沿うように御努力をお願いしたいと思います。どうも御苦労さまでした。 ――
―――――――――――
赤松勇
33
○
赤松委員長
この際お諮りいたします。ただいま
調査
中の
労働基準法
諸規則に関する件について、
東京
都職労清掃支部長菅原正松君より参考人として意見を聴取したいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
赤松勇
34
○
赤松委員長
御異議なしと認め、さよう決します。菅原君。
菅原正松
35
○菅原参考人
東京
都職労の菅原でございます。 今回女子年少者
労働
基準
規則の第十三条第五十三号の改正によ
つて
、従前女子年少者を就業させてはならないという項の中に「焼却、清掃又は屠殺の業務」というのがあつたわけでございますが、これの改正が企図されておるということを聞きましたので、要請を申し上げたわけでございます。 これに対しましては、清掃事業に携わる従事員としては
反対
をしなければならない。その
理由
としては、大体清掃という言葉あるいは字句から起る連想としては、ぞうきんを持つたり、あるいはほうきを持つたり、その他部屋の掃除、庭先の掃除といつたようなことが連想されまして、これは年少者であ
つて
も就業できるのではないかということが考えられたのではないかと思います。ところで、実態を申し上げますと、そういうことも一部にはありましようけれども、大きな都市なんかにおいては特にそうでありますが、決して清掃という仕事は、そのような軽
労働
ではなくて、まず汚物の定義としていわれておりますものは糞尿、灰燼、塵芥、あるいは犬とか、ねことか、ねずみ等の死体、こういうものが定義されております。これらを処理いたしますために、どのようなことがなされておるかと申しますと、まず塵芥の場合におきましては、おおむね手車に積みまして、これを一定の場所で自動車あるいは船舶に積み込む、こういうことでその手車の目方が九十貫、夏場になりまして非常に排出量が多くな
つて
参るということになりますと百貫以上の荷物になる。それを坂路あるいは悪路、また距離にいたしましても相当遠い距離を扱い場に運搬するということ。それらの糞尿にいたしますと、まずおけでも
つて
くみとりをいたすわけでございますが、このおけの目方が、二本で一荷といわれておりまして、一荷の目方が二十五貫ほどございます。そういうものを一日中かついで歩きまわるわけでございますから、これは完全なほんとうに頑健な成人した人であ
つて
もなかなか容易じやない、しろうとが飛び込んで仕事をやろうとして、先般――一つの例を申し上げまするが、大田のある出張所の方で、臨時に採用されました方が――もちろん十八歳以上でございますけれども、ふなれなために坂路でも
つて
荷を積んだ車で押されまして、そうして死亡したというようなこともございます。そういうような観点に立ちますと、とうていこの仕事は十八歳以下の年少者であ
つて
はできる仕事ではなかろうということから、組合側としてはこれを
反対
しなければならぬ。それからまた、この軽
労働
にみなされました――
賃金
関係
その他加配米というものは、従前重
労働
であるという建前に立
つて
認められて来ましたものが、この業務を年少者もやれるんだということになりますと、そういう面にまで大きく影響して、事業の推進にたいへんな悪影響をもたらして来るのではないかということによりまして
反対
をしなければならぬということで、御要請申し上げるわけでございます。
赤松勇
36
○
赤松委員長
参考人に何か質疑はございませんか。
多賀谷真稔
37
○
多賀谷委員
参考人にお尋ねいたしますが、都の方に清掃部というものがあると思うのですが、その中で糞尿なら糞尿をやる人は固定しているのですか、それともきようは糞尿をや
つて
、あすは塵芥と、こういうような作業につく場合もあるかどうか、これをお尋ねいたしたいと思います。
菅原正松
38
○菅原参考人 その点は大体そのような場合も多少ありますけれども、作業の実態からしまして、糞尿あるいは塵芥というものは固定してわかれております。わかれまして、毎日同じ業務に従事しておる、こういうのが実態でございます。
多賀谷真稔
39
○
多賀谷委員
清掃の中には、何と何があるのでしようか、あなたの方で知
つて
おられる範囲でですね。
菅原正松
40
○菅原参考人 清掃としましては、塵芥を処理いたしまするところの作業がまずございます。各戸から収集して、それを手車に積んで自動車に納めてこれを一定の処理場に運搬する。また焼却作業とい
つて
、この塵芥を焼却炉に入れまして、そうして焼却しておるというその担当もあるわけでございます。それから湿地の穴埋めですね。なま埋めとい
つて
、くぼ地を獲得しまして、そこへ運搬してこれを処理するという埋立て作業もございますし、これをまた敷きならしておるところの従事員もございます。それから糞尿の処理につきましては、これを各戸からひしやく、おけでも
つて
くみとりまして、これをタンク自動車に積みかえまして、そうして船舶、自動車で農村に直送しておる面もありまするし、また扱い場に出しまして大きな船舶に積みかえて海洋投棄をいたしておる面もございます。また砂町の方には消化槽とい
つて
、屎尿を消化しまして腐敗醗酵させてこれを処理するということをしておるところもございます。そういつたようなことでございまして、またあとは灰燼でございますが、もえがらを処理すること、これは灰の処理ですが、こういうものもあるわけでございます。それから船舶の修理、自動車の修理というものもございますし、これらの機材をつくるところの工場等もあります。こういうのが大体の
概要
でございます。
多賀谷真稔
41
○
多賀谷委員
基準
局長にお尋ねいたしますが、この清掃というのは、正確にいうと業種の種類としては、どういう仕事が入るわけですか。
龜井光
42
○
龜井
政府
委員
この清掃の範囲としましては、ただいま参考人から御
説明
のございました
地方
公共団体の行いまする清掃事業、これは全部入ります。そのほかに会社、工場等において行いまするいわゆる清掃の業務――これは工場の清掃をする。その他あるいはデパートあるいはビルの窓ふき、こういうものが大体典型的なものでございます。
多賀谷真稔
43
○
多賀谷委員
今参考人からもお話がありましたように、二十五貫もあるものをさげて行くのだ、こういうことでしたが、そういうものを削除したいという諮問を出されておるわけですが、そういう場合はどこで規制するのですか。重量運搬の規制ですか。
龜井光
44
○
龜井
政府
委員
重量物を取扱います場合におきましては、女子年少者
労働
基準
規則のうちの重量物制限によりまして、当然制限を受けるわけでございます。従いまして、ここで清掃をかりにはずすといたしまして、
年少労働者
が従事し得ますものは、その重量物の制限の範囲内におきまして補助的な業務というふうなことになろうかと考えております。
多賀谷真稔
45
○
多賀谷委員
今の塵芥とか糞尿とかの処理は、やはり焼却と同じような衛生的な考慮、この要素は含んでおると思いますが、その点をどういうふうにお考えですか。
龜井光
46
○
龜井
政府
委員
もちろん衛生的な部面もございます。ただ清掃という業務の範囲は非常に広汎でございまして、ただいま参考人のお話のように重量物を取扱いますものについては、われわれとしても十分研究をいたしたい、かように思うのでございますが、そのほかにも純軽
労働
の清掃業務もあるわけでございまして、そういうふうなものまで十八歳未満の年少者の職場を狭めることがいいかどうかということについては、
審議会
でも十分検討されたのでございまして、その結果は、焼却は人体焼却を含んでおるので、これはいろいろ福祉の面からいつで適当でないので、これを削除することには
反対
であるが、清掃はその業務の範囲が非常に広い。先ほど申し上げましたように、純軽
労働
的なものもこの中に相当含まれておるので、これを一括して現行のままにすることは、多少適当でないのではなかろうかという意見でございます。
多賀谷真稔
47
○
多賀谷委員
そうしますと、この諮問に対する答申の意見としても、清掃については範囲が広いので、そのある部分だけはやはり現行のままにしなければならぬ、こういう含みがあるわけですか。
龜井光
48
○
龜井
政府
委員
答申そのものの中には、そういう含みはございません。清掃は全部はずしてよろしい、しかしそこにはおのずから重量物制限の制約を受けますので、その範囲内においてならは認めてもさしつかえないのではないかという意見でございます。
多賀谷真稔
49
○
多賀谷委員
重量物制限の方はわかるわけですが、やはり焼却を除いたという、焼却を、要するに現行のままにしたということは、この中には福祉的な面があるからというのですが、今お話のありました塵芥とか糞尿の処理ということになりますと、やはり単に重量物の
関係
だけでなくて福祉的な、衛生的な面があると思うのですが、この点についてはどういうようにお考えですか。
龜井光
50
○
龜井
政府
委員
審議会
の御議論の中におきましては、焼却は先ほども申し上げましたように人体焼却を含みまするために、明らかに福祉の問題に直結するのではないか。しかし、清掃については、いわゆる人体焼却に比べれば衛生、福祉という問題から見まして、それほどウエートを置かなければならぬものでもないのではないかという御議論のように私は聞いております。
多賀谷真稔
51
○
多賀谷委員
局長はどうなのですか。
龜井光
52
○
龜井
政府
委員
ただいま参考人の御意見もございまして、われわれとして十分検討さしていただきたいと思います。
多賀谷真稔
53
○
多賀谷委員
参考人の方は、主として重量物の点を非常に強調されておりましたが、むしろ重量物の方は重量運搬の方で当然禁止されるのだ、こういう答弁をされると思うのです。そこで、これは衛生的な面の要素が相当入
つて
おる。重量物だけであれば、初め書くときに、重量物だからというので清掃は除いたはずだが、清掃をわざわざ有害業務の中に入れたという趣旨は、これは焼却と同じように、非常に非衛生的な面があるから入れた――どうもその辺の議論は、あまりされていないようですが、やはりこの点を十分考慮する必要があるのではなかろうか。やはり年少者に糞尿あるいは塵芥の処理をやらすということ自体に、非常に問題があると思うのです。ですから、清掃についても、糞尿、塵芥についてはどの過程で取扱うかという問題もありましよう、しかし非衛生的な面をやはり考慮される必要はないだろうか、かように考えるわけですが、その点について御意見を伺いたい。
龜井光
54
○
龜井
政府
委員
御意見のありまするところは、十分参考といたしまして検討させていただきます。
赤松勇
55
○
赤松委員長
他に御質疑はありませんか。
井堀繁雄
56
○
井堀委員
参考人にちよつとお尋ねいたします。現在
東京
都公営のくみとり作業に、もし青少年を
雇用
するようなことが許されるようになりますと、一体どういうところへ使われるようになるでしようか、ひとつ御
説明
を願いたいと思います。
菅原正松
57
○菅原参考人 ただいまの御質問でございますが、これは十八歳未満でも採用してやらせることができるということになりますと、公共団体であ
つて
、会社その他と違
つて
、利潤を追求するような営利会社ではないといいながら、今財政難を言われておりますので、やはり安く使おうということから、これを採用して来るのではないかというようなことが考えられるのです。そこで、どのような面に採用して来るかと考えますと、やはり清掃の中で多少重量
関係
の重いところにでなく、そうでない面にあるいは入れて来るのではないか。 それから先ほどお話がございましたが、私の先ほど来申し上げましたことに多少附加しておきたいと思いますことは、衛生的な面が非常に大きいのでございます。成人した者であ
つて
も、かなり伝染病の危険にさらされながら、あるいは病院であ
つて
も、どのような危険な伝染病の発生された家庭の塵芥あるいは糞尿にいたしましても、どうしてもこれを片づけに行かなければならない、こういうことが言われます。これは普通の人であれば、最初なんかは御飯も何も食べられないというほどの
状態
にあるわけです。ことに病院あるいは伝染病の発生の家庭なんかに行つた場合におきましては、これを忌みきら
つて
やらないわけに行きません、それを必ずやらなければならない。そういう場合に、成人した人でさえも容易でないのに、年少者にこれをやらせることになると大きな影響があるのではないかということが考えられるわけであります。それから先ほどの御質問のように、どのようなところに採用して来るかわかりませんけれども、財政難ということがしばしば言われておりますので、何としても年少者を入れて財政支出を防ごうという
関係
から、そういうような採用をして来るのではないか。そうしますと、年少者に対しても、これは人道上の問題からしても、組合としては捨てておけないということが考えられるわけであります。
井堀繁雄
58
○
井堀委員
基準
局長にちよつとお尋ねいたします。今参考人のお話にもありましたようにこの諮問事項がもし
実施
に入ることになりますと、清掃事業に
青少年労働者
が
雇用
されるということになるわけです。元来
東京
都でも、まだ水洗便所にな
つて
いるところはきわめて狭い範囲のことで、くみとりによる清掃は将来相当続くものと見なければならぬ。予算の
関係
からできるだけ低
賃金
の者を
雇用
するという傾向はわかりますが、それよりももつと問題になるのは、今のように住宅を間に合せ的な、しかも狭い場所にどんどん建築しておる、便所の設置場所なんというものは、くみとりを考慮する余裕のないような事情がどんどん起
つて
来ておることであります。そういう場合に、実際上の問題としては、少年
労働者
に、重
労働
ではなくて、ああいうものに
関係
させると、くみとりのような狭い所をくぐらせてくみ出しなどに
雇用
しがちになるということは、今までの例にたくさんあるわけであります。これはいろいろな意味で重要なことで、先ほど伝染病の例が出ておりますけれども、そういう問題だけでなくて、今日厚生省の何か食糧検査の際にも大腸菌の問題がたくさん出て来る。これはもう今日のくみとりにまつわる下肥に
関係
する広い範囲で、いろいろ問題を起しておるわけであります。伝染病に限らぬでも、当然大腸菌と少年の場合を考えても、できだけ少年
労働
を
保護
するという立場から、そういう危険な場所へ
雇用
させなくても、
労働者
の場合、たくさん
労働
人口がふえておるわけでありますから、それでなければできないというような仕事ではなくて、それをやらせると非常に便利だということはあるかもしれない、こういうような
関係
を考慮されておいでかどうか、この点についてひとつ局長に伺
つて
おきたいと思います。
龜井光
59
○
龜井
政府
委員
先ほども
多賀谷委員
の御質問にお答えいたしましたように、この清掃の事業は十八歳未満の者でなければできないという事業ではございませんし、それによりまして多少なりとも
年少労働者
の衛生あるいは福祉に有害であるというふうなことになりますれば、われわれとしましても、十分慎重にこの問題は取扱わなければならぬというふうに考えておる次第でございます。ただ問題は、職場の範囲を拡大するという一つの
雇用
政策上の要請と、それから年少者の今の福祉の問題と両方の調和をどこで見合せるかというところに、問題があろうと思うのであります。御意見のありまするところを十分に考慮いたしまして、研究させていただきたいと思います。
井堀繁雄
60
○
井堀委員
今の御答弁で了解できますが、念のために希望申し上げるのであります。少年
労働者
の
雇用
を拡大するということは、二面には切実な要求にな
つて
来ておる。しかし全体の
労働政策
の上から判断すると、特に
保護
行政の上からいたしますると、少年
労働者
でなければやれない、あるいは少年
労働者
を通じて、将来
生産者
として、その
期間
をそういう作業を通じて経験あるいは技術を修得させるといつたような場合を除く以外は、なるべく成年
労働
によ
つて
雇用
面を拡大して行くという行き方の方が実際的ではないかとわれわれは判断しておるわけです。そういう事情からいたしまして、この種の規則の改正はできるだけ範囲を縮めて行くという行き方が望ましいのじやないかと思う。そういう意味で、今まで御答弁を伺
つて
おりますと、
雇用
の問題に相当気を配
つて
おいでのようでございますが、そういう点はむしろ逆に、もつと徹底した
年少労働
の
保護
の方が優先され、
雇用
の窓口は成年
労働
に割愛するという行き方の方が、
日本
の現状から判断して、特に
保護
行政の必要な現状から判断して、そう行くべきではないかと思うのですが、
年少労働者
及び
女子労働
者の
保護
の立場にある監督局長としてのこういうものに対する見解を、この際はつきり伺
つて
おきたい。
龜井光
61
○
龜井
政府
委員
職場拡大という
雇用
政策の問題と、年少者の
保護
という問題との調和点をどこに見出すかという点が、われわれとして考慮の対象にな
つて
おるのだというふうに先ほど御
説明
申し上げましたが、言うまでもなく、
労働
基準
行政の
目的
は、
雇用
政策ではございません、あくまでも
労働者
の
保護
でございますから、その調和点を見出すと申しましても、その
保護
が優先いたしますことは、当然なことではないかというふうに私は考えております。
島上善五郎
62
○島上
委員
菅原参考人に一、二お伺いしたいと思います。都の清掃をや
つて
おる仕事を私ども外部から見ておりますと、非常に非衛生的な面が多い。そういう意味においても、
年少労働者
には不適当だ、こう考えておりますが、現にあの清掃の非衛生的な業務をしておるために起つたと思われるような
労働者
の衛生上の問題、たとえば伝染病にかかるとか、胸部疾患の者が多いとか、あるいは入梅中の長雨のときなども、普通の
労働者
ならば、雨が降れば休むというときに、かえ
つて
仕事をしなければならぬ。夏季の非常に暑い炎天下にあ
つて
もやはり同様、よけい仕事の量がふえて
労働
しなければならぬというようなことが原因して、他の
労働者
に比べて病気が多いというようなことが想像されるのですが、直接携わ
つて
いるあなた方が、具体的に
説明
できるような事実がございましたら、ひとつ承りたいと思います。
菅原正松
63
○菅原参考人 清掃の業務は、何といいましても、特殊業務といわれております。そこで、これが行政面からいいましても、各都市とも共通の悩みといわれておるほど、清掃行政というものはむずかしいといわれております。というのは、御承知の
通り
、業務
内容
というものが、人様から非常に嫌悪されるような
状態
にあるし、それから不健康な仕事である、また屋外
労働
である。どのような暑い日でも、アスフアルトが溶けて流れるような日であ
つて
も、毎日出なければならぬ。それから冬場になりまして、あるいは入梅の時期にな
つて
、毎日のように雨が降
つて
、その中でもカツパを着て、そうしてあの重い荷を引くというようなことであります。それをやりませんと、やはり毎日々々同じように
生活
した残滓が残
つて
排出されるものですから、これを一日たりとも怠つたのでは、屎尿、塵芥がどこにも行かない、必ず自分の肩にかかるということから、休めば休むほど荷がたま
つて
難儀をするということから、非常に疲れるわけです。そこで、交通機関のような例を申しますと、交通機関が事故を起して、きようとまつた。あすまでそのきようのお客さんは残
つて
おらないで、きれいさつぱりとあすは新しいお客さんです。ところが清掃の場合は、きよう休みますと、きようの分の荷があすにたまる。そこで二倍の難儀をしなければならぬ、こういうのが実態であります。そういう
関係
で、非常に激
労働
であるというので、疲れが出て来て病気になる。欠勤いたしますと、上司の方から迎えに行つたり、どうしたのだとい
つて
、なまけものくらいに見られるというおそれもある。また伝染病の
関係
、これとても、まず淘汰されたというか、弱い者は全然勤まりませんから、非常に丈夫な者だけが今残
つて
いるということでもありましようが、それでさえも、その激
労働
と非衛生から来る死亡率が非常に高い。これははつきりここで統計的に申し上げられませんけれども、結核の
関係
も多くありますし、また死亡率も相当高いのでございます。そういうふうなことで、なまやさしい仕事ではないということは、はつきりと実証することができるだろうと思います。
島上善五郎
64
○島上
委員
たしか深川の枝川だと思いましたが、塵芥を焼却するところがあります。あそこへ焼却の塵芥を積んだトラツクが出入りするときに、消毒しているようですが、あの消毒が完全に行われておれば、従業員に不健康なこともなかろうと思いますけれども、私どもしろうとが考えますと、あのことのために病気にかかる率が普通の
労働者
より高いのではないかということが心配されるわけです。ああいう塵芥焼却場に働くことによ
つて
、伝染病にかかつた、あるいは伝染病とまで行かぬでも、病気にかかる率が多くて、病気欠勤の率が多いというような事実がございましようか。
菅原正松
65
○菅原参考人
東京
都から排出された塵芥の量は、一日約六十七万貫くらい出ております。そのうち焼却あるいは穴埋め、いろいろや
つて
おりますが、深川の枝川作業場は、その排出される量の大半をあそこで処理しているというのが現状でございます。焼却炉の
設備
があまりありませんので、露天焼きをや
つて
いるという実態、それから焼かないものは流し、炭カラを運んでそこに覆土している。そこで住民の方からのいろいろな
反対
要請もありますし、作業員もまた衛生的な
関係
もありますので、これを消毒しておりますが、十分完全とは言えない。一日何十万貫もあそこに入りますので、それを完全に消毒ということはとうていおぼつかないのでありまして、都内では相当伝染病も全体的は発生いたしましようと思うのですが、それから発生するはえとか、いろいろありまして、作業員としても、そういうことを恐れておつたのでは、仕事にも何にもなりませんので、どのような事態が起りましても、一日も欠かすことはできないというので、そういう伝染病の罹患の危険がありましても、それを顧みる余裕がないということがまず実態ではないかということでございます。
赤松勇
66
○
赤松委員長
他に御質疑ございませんか。――菅原君、何かほかに御発言ございませんか。
菅原正松
67
○菅原参考人 陳述申し上げましたのですが、希望といたしましては、各都市の方も同様だと思いますが、年少者で清掃ができるというのは、まずほんとうの部屋の掃除とか、あるいは工場等の庭の掃除とかぞうきんだとか、ちりたたきとか、あるいはほうき等でやれる仕事ならいざ知らず、
東京
都の場合におきましては、年少者でてきるところの清掃という仕事は、まず私どもとしては見当らないのでございます。そういう意味合いにおきまして、事務的な補助の方は別といたしまして、現実に現場に携わる現業員の場合におきましては、とうてい十八歳以下の年少者であ
つて
は勤まるような仕事は見当らないということでございますので、これを一律に――十八歳以下の職場を拡大するということはよくわかりますけれども、清掃事業にこれを採用して来るというおそれが多分にありますので、この面について十分なる考慮を払われまして、そういうことの弊害の起らないように、ぜひともこの際していただきたい、かように考えております。
赤松勇
68
○
赤松委員長
それではこの点につきましても、なお後ほどいろいろ
審議
するといたしまして、どうでございましようか、もう一時近くになりましたから、休憩しまして、この次札幌市電の問題と、それからやはりきようの規則の問題を続行いたしますが、規則改正といいますか、とにかくこの規則の問題の
審議
につきまして、労・使・公益の一致した意見の箇所だけは、この前
基準
局長から御
説明
願つたわけです。あとまだ残
つて
おると思いますが、
審議
の能率を上げる意味におきまして、ひとつ各
委員
の方々から特に重要だと思うところを
委員長
の手元まで出していただきまして、この次の
委員
会ではそれを重点的にや
つて
行きたい、こういうように考えます。もう会期もあと幾らもございませんから、さようとりはからいたいと思いますが、よろしゆうございますか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
赤松勇
69
○
赤松委員長
それでは暫時休憩いたします。 午後零時四十三分休憩 ――――◇――――― 〔休憩後は開会に至らなかつた〕