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1954-04-09 第19回国会 衆議院 労働委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年四月九日(金曜日)     午前十一時九分開議  出席委員    委員長 赤松  勇君    理事 池田  清君 理事 持永 義夫君    理事 稻葉  修君 理事 多賀谷真稔君    理事 井堀 繁雄君       木村 文男君    黒澤 幸一君       島上善五郎君    大西 正道君       日野 吉夫君    矢尾喜三郎君       中原 健次君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 石井光次郎君         労 働 大 臣 小坂善太郎君  出席政府委員         通商産業事務官         (企業局長)  記内 角一君         運輸技官         (船舶局長)  甘利 昂一君         労働事務官         (労政局長)  中西  實君  委員外出席者         議     員 青野 武一君         議     員 楯 兼次郎君         議     員 山口丈太郎君         議     員 館  俊三君         議     員 山村新治郎君         総理府事務官         (調達庁総務部         長)      山内 隆一君         外務参事官   関 守三郎君         日本国有鉄道参         与         (職員局長)  井上 正忠君         日本国有鉄道参         事         (職員局労働課         長)      中畑 三郎君         日本国有鉄道参         事         (職員局給与課         長)      星野守之助君         日本国有鉄道参         与         (厚生局長)  吾孫子 豊君         日本国有鉄道         参与         (建設部長)  大石 重成君         日本国有鉄道参         事         (東京鉄道管理         局運転部長)  水野 正元君         参  考  人 岩井  章君         参  考  人 歌崎 藤作君         参  考  人         (富士自動車労         働組合渉外部         長)      川内 文一君         参  考  人         (関東特需労協         議長)     坂本  登君         参  考  人         (関東特需労協         事務局長)   細貝 義雄君         参  考  人         (日平産業労働         組合横浜支部副         委員長)    大吉  光君         参  考  人         (日平産業労働         組合横浜支部書         記長)     高橋 兵二君         専  門  員 濱口金一郎君     ————————————— 四月七日  委員井堀繁雄辞任につき、その補欠として岡  良一君が議長指名委員に選任された。 同月九日  委員岡良一辞任につき、その補欠として井堀  繁雄君が議長指名委員に選任された。 同日  井堀繁雄君が理事補欠当選した。     ————————————— 四月三日  けい肺法制定に関する請願(高田弥市紹介)  (第四二〇一号)  同(加藤勘十君紹介)(第四二二二号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  理事の互選  小委員補欠選任  参考人招致に関する件  仲裁裁定実施に関する件  失業対策に関する件  特需関係労務に関する件     —————————————
  2. 赤松勇

    赤松委員長 これより会議を開きます。  この際理事補欠選任の件についてお諮りいたします。理事井堀繁雄君が去る七日一旦理事辞任され、ただいま理事が一名欠員になつておりますので、理事補欠選任を行わねばなりませんが、これは前例により、選挙の手続を省略して、委員長より指名いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」に呼ぶ者あり〕
  3. 赤松勇

    赤松委員長 御異議なしと認めて、それでは井堀繁雄君を理事指名いたします。     —————————————
  4. 赤松勇

    赤松委員長 次に、小委員補欠選任の件についてお諮りいたします。井堀繁雄君はけい肺病対策小委員でもありますので、その委員辞任に伴い、小委員にも欠員を生じておりますので、その補欠選任を行わねばなりませんが、これも前例により委員長より指名いたすに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 赤松勇

    赤松委員長 御異議なしと認めて、井堀繁雄君をけい肺病対策小委員指名いたします。     —————————————
  6. 赤松勇

    赤松委員長 なお先ほどの理事会で御了承願いましたが、来る十三、十四日の両日、私労働事情調査のため北海道に出張したいと思いますので、御了承願います。なお本委員会は、十四日が定例日でございますが、都合により、十五日に開会いたしたいと思います。なお十六日は定例日でございますから、定刻より開会いたします。  なお、厚生年金保健法案連合審査につきまして、昨日厚生委員長と協議をいたした結果、該法案は十五日の本会議上程の予定でござしましたが、厚生委員長の了解を得まして、十七日に連合審査を行い、その後、該法案の本会議上程日取り等につきましては、厚生委員会理事会において決定するということに相なりました。     —————————————
  7. 赤松勇

    赤松委員長 それでは前会に引続き、仲裁裁定実施をめぐる紛争問題について調査を進めます。  本件につきまして、前回の委員会に御出席になりました参考人岩井章君及び歌崎藤作君の両君が御出席になつておりますから、御了承を願います。  なお本問題につきまして、前会同様、委員外の楯兼次郎君、青野武一君、山口丈太郎君、館俊三君より、それぞれ発言を求められておりますので、これを許すに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 赤松勇

    赤松委員長 御異議がなければ、さよう決します。  これより質疑を許します。楯兼次郎君。
  9. 楯兼次郎

    ○楯兼次郎君 前会は、両方の総括的な説明を聞いたのでありますが、いろいろ両方の言い分があると思います。当時時間がなかつた関係で、委員会が中止されたのでありますが、集約いたしまして、三三列車の七十分の遅延、それから荷物愛護運動によるところの列車遅延等がその主要なる原因である、こういうようにわれわれ委員承知をいたしたわけであります。その三三列車の七十分遅延いたしました原因につきましては、組合側国鉄当局との理由が違つておるまま散会になつておりますので、三三列車の七十分遅延について、国鉄当局並びに組合側から、ひとつその詳細なる説明をお願いしたい、かように思います。まず当局からひとつお願いいたします。
  10. 大石重成

    大石説明員 三三列車遅延のことにつきまして、この前からもう一度調査をいたしましたことを説明申し上げます。  三三列車は、常時の場合でありますと、九時三十五分に東京駅のホーム到着いたしまして、そして機関車をつけまして、十時に発車をするというのが普通の運行であります。当日は、東京駅に到着いたしましたのは定時到着をいたしましたが、所定乗務員東京機関区のピケラインに押えられまして、出勤ができませんでしたので、やむなく管理局といたしましては、他の列車乗務員をこれに振りかえまして、発車をさせようという計画をいたしたのであります。それでこの前お話のありましたように、列車の中に一部タイヤ弛緩を来しました列車がありましたので、これをさしかえまして、そしてまた他の乗務員を—これは先ほど申しましたように、常時は東京機関区の乗務員を乗せて出すのでありますが、これができませんでしたので、静岡の乗務員をこれに振りかえまして発車をさせようとしたのであります。その際またピケラインによりましてこの運行を妨げられまして、発車ができなくなつたということで、いろいろとトラブルがありまして、合計七十分遅延をして発車をした、かように申し上げたのでありますが、その間故障の特別二等車のタイヤ弛緩し、車両をさしかえますのに約四十分間かかりまして、合計七十分の遅延をしたのであります。この前御説明いたしましたときに、かようなこまかい時間を申し上げませんので、まことに恐縮でありますが、私といたしましては、かような時間の問題もさることでありますが、組合員妨害によりまして列車が遅発して、正常な運行ができなかつたという点を重点に考えまして、御説明を申し上げた次第であります。
  11. 楯兼次郎

    ○楯兼次郎君 先日の委員会での国鉄当局説明では、三三列車は、組合員妨害によつて七十分遅延をした、こういう御説明であります。たまたま組合側の力から、タイヤ弛緩によるところの事故によつた時分が相当あるしいう点が指摘をされて、初めて本日の委員会においてそれが明らかになつて来たわけであります。国鉄当局としては、当初からこの事故があつたということを御承知であつて、かつ、この処分の理由の内容に盛られなかつたのかどうか、この点をひとつ聞きたい。
  12. 大石重成

    大石説明員 この前、私ここで御説明申しましたときに、持つておりました記録に、はつきりとした明細がなかつたものですから、はつきり御答弁ができなかつたのでありますが、特にこれを申し上げないというようなことを考えたのではございません。
  13. 楯兼次郎

    ○楯兼次郎君 事は非常に重要な、人一人が処分されるというような問題でありますので、相当慎重な態度で御説明がなければならないはずだと私は思います。ところが、幸いにしてこの点が指摘されたのでありますが、もしこの点が指摘されなければ、いわゆる組合側行動によつてということで、三三列車の七十分の遅延は、全部組合側責任が転嫁をされる、こういう危険な点がひそんでおつた。こういうふうに私は考えまして、この点につきましては、はなはだ遺憾であります。ただいまの国鉄当局説明では、タイヤ弛緩による手直しが四十分、以後は組合行動に妨げられたために三十分の遅延を来した、こういうように御説明がありました。  そこで組合側にお聞きいたしたいことは、当局のただいまの説明に間違いがないかということ、それから爾余の三十分にわたるところの列車遅延については、いかなる原因遅延をしたのか、この二点について詳細に御説明願いたいと思います。
  14. 歌崎藤作

    歌崎参考人 第三三列車の遅刻につきまして、今大石説明員の方から言われた点については、大体同じように思いますが、その中で、特に組合員ピケ隊によつて要員東京機関区から来ることができなかつた。こういう点については、組合側としては、ピケ隊が三三列車要員を阻止した、こういうとはあり得ないわけである、絶対になかつたわけであります。いわゆる三割の休暇によるところの、とにかく当日出づらの三割というものが休暇をとつておる。こういう点で、当然それに対するところの、三三列車に対する乗務員は、前に当局手配をしなければならぬ、こういう点であつて、われわれの方があえてその点を阻止したものではない。この点は明確に申し上げられると存じます。今申し上げたように、タイヤのぐあいの悪い点において四十分という時間がかかつた。この点は組合調査した結果におきましても、時間は同様四十分と推定をいたしております。そもそもこの列車発車線にすえつけられるまでにおきましては、一応品川の客車区において、列車整備をされて、東京回送をされて参るわけであります。通常九時三十五分ごろに東京到着するのが常時の状態であります。これが当日は回送をする場合に、電気機関車東京機関区の者が運転をし、回送して持つて参るわけでありますが、そうした三割休暇の影響から、東京機関区の電気機関車での回送が不可能になり、これが品川機関区の蒸気機関車回送をして、東京の十五番線に持つて来たときに、すでに十分間の遅延をいたした、これがまず第一の原因として十分という時間が考えられるわけであります。あとの約二十分という問題につきましては、当初、先ほど大石説明員からも申されたように、三三列車乗務員がおらない、こういうことで他の列車から—その列車は、一二九列車の京都行の普通列車であります。この一二九列車乗務員を一応この三三列車に、運転課課員現地に参つておりまして、手配をいたし、乗務させようといたしたわけでありますが、これに対しまして当局側としては、これをさらに変更いたしまして—一二九列車は、一応三三列車機関士に振り当てたのですが、それをさらにとりやめて、一二九列車にまた振りかえて、正規の通り発車をさせた、こういうような関係もあるわけであります。従つて、その後に三三列車乗務員というものを、今度はほかから持つて参りまして、この三三列車乗務させる。その間、この間も私は申し上げておいたように、われわれといたしましては、旅客の乗車をいたしております列車を、故意に遅延をさせよう、あるいは運休をさせようという意図は毛頭ないわけであり、その間当局側が、いわゆる三三列車乗務員を乗せる場合におけるところの機関士のいわゆる携行品、その他少くとも旅客列車運転する場合には、安全確保という点を十分おもんぱかつて、それらの点について細心の注意を払い、または乗務員が非常なロング・ランになつて疲労度が加わつたりしてはいかぬ。こういうような点も注意をいたし、機関士に対して、現地に派遣しておいたところの木田闘争委員なりその他の者が、いわゆる機関士に、そういう携帯品は全部持つておるかどうか、あるいは勤務時間の問題等調査したわけであります。トラブルは多少あつたわけですが、これもあえてトラブルを起したというわけではなくて、一応安全確保をするために、やはり機関士としての本来の使命を果すためには、それだけの諸条件が整つておるかどうか、こういう点を詳細に調査するために、多少の機関車の周囲においての話合いが行われた。こういうようなことであつて、ここにピケ隊を動員して、ピケ張つて機関士乗務を阻止した、こういりようなことは全然なかつたわけでありまして、お手元に差上げてあります資料の中に、詳しくそれらの状況を書いてあるわけであります。  以上、簡単ではありますが、大体四十分は車体の故障あとの三十分に対する問題につきましては、十分は品川から回送されて来るときにすでに遅れて到着した、それからあとの二十分につきましては、いわゆる当局側におけるところの乗務員手配関係で二十分という時間が出て来た、こういうふうに私の方では確認をいたしておるわけであります。
  15. 楯兼次郎

    ○楯兼次郎君 大石説明員にお聞きしたいと思いますが、今、組合側参考人説明を聞きますと、三三列車運転するまでに、相当あなたの方の手落ちがあつた、こういうように私ども聞きとれるわけでありますが、この点について、それを認められるかどうか、そうじやなかつたか御返答を願いたいと思います。
  16. 大石重成

    大石説明員 お答え申し上げます。今私たちの聞いておりますところでは、三三列車東京駅のすえつけというものは、定時到着をしておる。そしてピケ隊員によりまして、通常事務員東京機関区において押えられておる、従つて乗務員やりくりをした。そのやりくりをいたしましたときに、いろいろ組合の方から、組合員ホームに出ておりまして、あるいは定例乗務員でないから、またこの列車仕業東京機関区の仕業であるのに、他の乗務員を乗せるということはやめてもらいたい、そしてわれわれに協力してくれというようなことを申しまして、乗務を阻害し、また機関車のデッキに乗つて参りまして、いろいろともみ合いをし、列車発車ができなかつたということによりまして、車両の入れかえの約四十分以外の遅延は、ただいま申しましたようなことがおもな原因といたしまして遅延をしたのだというふうに私は報告を受けております。     —————————————
  17. 赤松勇

    赤松委員長 この際お諮りいたします。  札幌交通局の争議問題について、札幌交通局長九里正蔵君、札幌交通局労組書記長木村貞雄君、以上二名の方、また、宇部元山運輸商事株式会社の争議問題については、元山運輸商事株式会社社長松重善兵衛君及び全日本港湾労働組合関門支部書記長奥田金太郎君、以上二名の方に、それぞれ本委員会賢参考人として御出席を願い、御意見を聴取いたしたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  18. 赤松勇

    赤松委員長 御異議なしと認めてさよう決定いたします。  なお適当な時期に参考人各位の御出席を願うことといたしますから御了承願います。     —————————————
  19. 赤松勇

    赤松委員長 それでは前の問題につきまして質疑を継続いたします。
  20. 楯兼次郎

    ○楯兼次郎君 どうも食い違つておるわけですが、急遽他の乗務員を三十三列車乗務させる、そういう取扱い方は、正常な取扱いであるかどうか、この点について大石説明員見解をまず承りたいと思います。
  21. 大石重成

    大石説明員 これは時宜の措置といたしまして、管理局においてやつてさしつかえのない行為であろうと思つております。
  22. 楯兼次郎

    ○楯兼次郎君 組合側が数日来言つておりますところでは、携帯品について所定のものがなかつた従つて、それらを整備してから乗務させよというところに、相当遅延原因があるように私どもは聞いているわけであります。たとえば時刻表不備であるとか、運転通告券不備というような問題について、それらの人たち列車に乗せて成規取扱いと言えるのかどうか、この点について、大石説明員見解を承りたいと思います。
  23. 大石重成

    大石説明員 今お話の点につきましては、問題はなかつたと私は確信しております。
  24. 楯兼次郎

    ○楯兼次郎君 問題はなかつたというのは、所定のものを整備しておつた、こういうことをおつしやるのかどうか、お伺いしたいと思います。
  25. 大石重成

    大石説明員 今御指摘のありました、たとえば運転通告券というようなものにつきましては、管理局が直接指示をしておりましたので、問題はなかつたと私は確信しております。
  26. 楯兼次郎

    ○楯兼次郎君 問題はなかつたということは、そういうものがなくても成規取扱いであるというのか、あるいは備えておつたから問題がなかつたと言われるのか、そのどちらか、はつきりわかりませんから、この点について。
  27. 大石重成

    大石説明員 運転通告券については、当時管理局から直接乗務員指示をしておりましたので、問題にならないと私は考えております。
  28. 楯兼次郎

    ○楯兼次郎君 通告券については、直接指示をしたから必要はないとおつしやるわけですか。
  29. 大石重成

    大石説明員 御説の通りであります。
  30. 楯兼次郎

    ○楯兼次郎君 今は通告券の問題ですが、組合側の主張によりますと、時刻表等につきましても、成規なものを備えておらなかつたということを指摘しております。ただいま大石説明員は、時刻表には触れておりません。運転通告券についても、直接指示をしたから必要がないと言う。そういう慣行が規定上取扱われているかどうか、また時刻表成規なものを持つてつたかどうか、この二点について、組合側参考人の御回答を承りたいと思います。
  31. 歌崎藤作

    歌崎参考人 かねがね私申し上げているわけですが、私もいささか運転経験を持つているわけです。たとえば列車運行変更するという場合に、管理局長からの指令で何々列車はどういうふうに変更しろという通知が当然駅長に参ります。その場合に、当然駅長はその命によつて、いかなる場合でありましても運転通告券を発行し、所持をさせなければならない。私といたしましては、こういうふうに記憶をいたしているわけですが、当日の取扱いといたしましては、これらの運転通告券成規に発行をされておらなかつたということが、現地に派遣されておりました闘争委員からの報告によつて明確に言われているわけであります。これらが中心になつて東京駅頭におけるトラブル原因になつた。あるいは時刻表については、組合側は当日遵法闘争を併用しておりましたので、成規機関士としての諸条件を整えておらないという点を指摘いたし、乗務する機関士に対しても、成規運行表を所持しろという要求をいたしたわけであります。ところが、当日三三列車におけるところの乗務員におきましては—これらの時刻表カード式にこういうケースに入つているわけです。これを後ほど資料として写真をもつて提出をいたしますが、これらが整備をされておらなかつたことが、当時の三三列車をめぐる紛争の要因になつている、こういうふうに組合側といたしましては確信をしたしているわけであります。
  32. 楯兼次郎

    ○楯兼次郎君 どうも大石説明員の話と組合側参考人の話と食い違います。私どもは前の委員会の経過から行きましても、当然これらの運転通告券であるとか、あるいは時刻表等については、成規なものを携帯をしておらなければ、正常な運転であるとはいえない、こういうふうに受取つているわけでありますが、先ほど大石説明員の言われましたように今後も取扱つてさしつかえないものかどうか、大石説明員国鉄本庁職員局長にお伺いしたい。
  33. 大石重成

    大石説明員 運転通告券は、所属長を介さずに局が指令をしようというときに、駅長にまず話をいたしまして、駅長がこれを発行するという場合がある。また緊急やむを得ない場合には、駅長がこれを処置するというようなことでありますが、あくまで局がやるものを駅長がかわつてやるという場合にそれを出すのでありまして、当時は局員が直接ホームに参りまして乗務員に局の意思を伝えたということでありまして、この場合には運転通告券はいらないということが言えるのであります。また時刻表につきましては、特別な規格と申しますか、形式はないのでありまして、当時も時刻表携帯をさせておつたのであります。
  34. 井上正忠

    井上説明員 実は職員局の所管ではございませんが、運転通告券というものは、局長運転指令を行いまして、駅長をして発行させる、こういうかつこうになつております。但し、御承知のように国鉄正常運転ばかりで参りませんで、天候の状況だとかいろいろなことで、列車運行が乱れることがございます。そういう場合に、その運転通告券は、列車番号がかわり、あるいは取消しになつて別列車になるという場合に、原則として駅長局長の命を受けてつくるものであります。当時の三三列車状況を聞いておりますと、局長の命を受けた局員通告券を発行している、そういうふうに聞いておりますので、この点は通常の場合とは思いませんが、非常時の場合にとり得る措置だと考えております。時刻表も同様であります。
  35. 楯兼次郎

    ○楯兼次郎君 組合側資料によりますと、通告券なしで運転した。今までの説明を聞きますと、あなたの方では運転課員が発行して交付した、異例でない、こういう御説明でございます。組合側は、運転通告券機関士が受取らずに運転をせしめられたと言つているのでありますが、この点について大石説明員見解を承りたいと思います。
  36. 大石重成

    大石説明員 当時の国鉄運転の直接の責任運転部長がここにおりますので、かわつて詳細に御説明させていただきたいと思います。
  37. 水野正元

    水野説明員 実は運転通告券を発行する場合の規定というのは、運転取扱い心得に定めておりまして、列車番号変更とか着線変更、それから信号機の不良の場合の取扱いというふうなことを定めておるわけです。そこで、当時は列車が遅れて出る場合でありまして、その場合には口頭通告で出して、運転通告券を使わなくてもいいものだ、それでそういう措置をとつたものだと思つております。
  38. 楯兼次郎

    ○楯兼次郎君 組合側参考人にお聞きしたいと思いますが、今の説明員の話で、平常そういう取扱いが行われておるかどうか。また実際の慣例の運営についてお聞きしたい。
  39. 歌崎藤作

    歌崎参考人 私の運転係助役としての経験からは、いまだかつてそういう異例な取扱いをいたした記憶はございません。さらに申し上げておきますが、戦時中の最も混乱をいたした当時におきましても、運転変更その他につきましては、運転通告券を必ず発行をいたし、処理をいたしておつたわけでありまして、規定の上から言つても、今運転部長からさような話を聞いたわけでありますが、私としては、どこまでも運転変更に対する問題については、運転通告券を発行しなければならぬ、こういうふうに指導をされて今日まで参つておりますので、今日におきましても、その場合は当然運転通告券が発行されなければならぬ、こういうふうに考えております。
  40. 楯兼次郎

    ○楯兼次郎君 私も実は前に現場で助役をいたしておつたのでありますが、先日来の委員会における国鉄当局説明は、それを今日以後そのまま実施をされて行つたならば、非常に慣例を破つたところのいろいろな問題が現場に発生すると思います。一々具体的には言いませんけれども、当時当局が、しいて言いますれば組合側行動に対抗するためにとつた態度の、矛盾をした拙劣な行為を合法化するために、この委員会においていろいろ逃げ道を言われておるとしか私には受取れないわけであります。それで、私この問題のみに終始することはどうかと思いますので、この問題に対する私の質問は一応打切りたいと思いますが、われわれは別に片寄つた審議をしておるのではない、あなた方の答弁によつて、当時の実情をばこの委員会において究明をしよう、そういう立場に立つてつておるわけであります。ところが、先日来の委員会において国鉄当局の方が御説明になるには、ほかの原因はともかくとして、この取扱いについて、矛盾を合法化そうとして強弁をされておる点がたくさんあると思います。私は事実は事実として、今後とも率直な見解を述べていただきたいと思います。  休暇をとる、あるいはピケを引いたという点については、これは別問題であります。ところがタイヤのぐあいによつて七十分遅延をした、なお正常なる携帯品乗務員が持つておらない、これを阻止するということは当然であると思います。従つて、この問題についての紛争から列車遅延をした、この三三列車が七十分遅延をしたという原因については、私ども当局説明にどうも物足りない点がある、こういうふうに感じますが、あとほかの委員からも御質問があるそうでありますから、この問題についてはあとでまた質問をいたすことにいたしまして、三三列車については一応打切りたいと思います。
  41. 館俊三

    館俊三君 この委員会は、もうやがて終ることでありましようが、私は五、六回続けて出ていて、各委員の質問を聞いたり、自分も質問をいたしましたことを回想いたしまして、総括的に述べてみたいと思うのであります。そういう意味で感じたことをこれから述べます。  第一は、この年末闘争といわず、その他の国鉄の両当事者の紛争というものは、公労法制定の実際の趣旨が履行せられないというところに、端を発しておるのであります。従つて、こういうところにできた紛争というものは、その公労法に基いてこの法を適用して処理するということを、はるかに超越した政治的な立場からこれを考えるのが至当であると思うのであります。公労法のわく内において仕事をするということになりますと、すでに政府においてこの法の制定の趣旨を誤つておるので、この制定の趣旨の誤つたことに憤激した立場からこの紛争が起きておるにもかかわらず、その誤つておる公労法自体のわくの中でこの問題を片づけようとすることは、ほんとうの趣旨から言うと間違つておる。公労法を適用する前に、公労法を実際上履行しなかつたために起きておるという根本原因を考えれば、公労法の違反であるとかないとかという論議は、もうすでに意義を失つておると思うのであります。これは公労法をはるかに超越して、政治的な立場でこの紛争の解決をはかるのが至当である、これが根本原則であると私は考えるのであります。ましてこの紛争の両当事者の一方が首切りの当事者になるということは、ほとんど笑うべき事態なんです。最初に申し上げたように、極東裁判のごとく勝つた方が裁判をすることはどうかということがよく言われておりますが、これと趣はちよつと異なりますけれども、公労法を適用する当事者が紛争の一方の当事者であるということは、運用の面から根本的に間違つておる、私はこれを言うのであります。従つて、ごこにおいてお互いに何回質疑応答をしても徹底をしないというのは、そういうところに根本原因があると私は考えるのであります。  それから、紛争が起きて、いろいろ汽車をとめたり、列車運行を乱したということがございます。これを総括して考えますと、紛争の両当事者が、広島あるいは新潟において、三割賜暇をやるとか保安運転をやるとかいうよりなことは、ある意味においてお互いに探り合つて事前に知り合つてつた。よく行つている場所においては、こういうやり方でやるという打合せさえあつたというふうになつておるのであります。そういたしますと、すでに当局としては、それは既定の事実でございますから、運行その他について十分なる対策がなければならなかつたはずである。その対策に非常に欠けておつたことは事実です。これは紛争の一方の当事者であると同時に、運行責任者でもある。新しい事態、かわつた事態に処して、それにできるだけ対応できる措置当局として十分とり得る余裕があつたはずであり、それをするのが運行の当事者の責任である、それを怠つてつた。そのために非常に事態を大きくしてしまつた。その責任は、組合側よりも、運行責任者の国鉄当局の負うべきところが非常に多い。当局も闘争心理にかられておつたという点も認められる。それから、あらかじめの対策としての運行手段を整えておかなかつたという点も認められる。歴然たる証拠は、うろたえてしまつて、今のお話のあつた通告券を持たせなかつたり、時間表を持たせなかつにり、あるいは資格のない者に急に試験をやつて飛び出させたり、またようようつれて来た車掌さんあるいはその他の人が、準備して行くべきいわゆる七つ道具を持たせないで飛び出させたり、一般民衆から見れば非常な危険な状態において、辛うじて運転をしておつたということは、責任者として実にはずかしい立場がそこに露呈されておる。その責任の大部分は、予備的対策を講ずることを怠つてつた、あるいはうろたえておつた、あるいは闘争心を燃やして……。
  42. 赤松勇

    赤松委員長 館俊三君、ひとつ質疑に移つてください。
  43. 館俊三

    館俊三君 順次申し上げます。—そういうことをひとつ感じておる。  第三番目には、首の切り方が実におかしい。これはこの前もちよつと言つたのですが、組合の中闘指令そのままを受けて下部機関がその通り動いたのでありますから、中闘の責任は地方本部の責任であり、その責任者の追究にぐんぐんと移つて行かなければならない。しかるにその馘首の仕方がそういう形で行つておらない。馘首の理由の中には、中闘指令ということまでほとんど認めておる。認めておりながら、その中間指令を実行したそれ自身の馘首が各局においてまちまちになつておる。これはあとで御返事願います。そういう形になつておることはどうもおかしい。その点でねらい撃ちをやつておるのではないかという疑問が、私は今もつてつておるのであります。  それから発令の当事者が不明朗であつた東京の鉄道局長お話では、二人は局長の名前で首を切つており、一人は工事事務所長の名前で首を切つておるというのである。しかるに、そういうことは所属長の権限に属するのだから、その名前で発令したと言つておる。首を切つたところの詳細は、所属長は管区所属長ではないのである。地方の局長あるいは工事事務所の範囲に属する人もあるわけです。その点の首の切り方がきわめておかしい。そういうふうに発令の権限がどこにあるのか、その所所によつてまちまちになつておる。ここにも混乱があるのではないかと私は思う。混乱があるということは、公労法の適用の仕方にも根本的に間違いないという確信がないのではないかと、私は総括的に考えざるを得ないのであります。この前、多賀谷君の質問に対して、吾孫子氏は「お話のように、刑事責任の追究ということも問題にはなるというふうに、いろいろ事実を聞いております間、相談しております間に、そういうことも考えました。また単なる公労法上の問題のみにとどまらない責任の追究の方法というようなことも、考えなかつたわけでもございません」というようなことを言つております。このことを考えますと、どうもこの首切りの問題は、国鉄の争議そのものが公労法に違反するからというふうにやつたのではなくて、別の問題を含めてやつたのではないか。もう一つは、そういう刑事上の責任の追究が公労法に名をかりてやつたとするならば、これは公労法の違反に値しない者もおるのではないか。こういうところに、あなた方の立場も非常に不明確なものがある。そういうふうに私は総括的に考えまして、どうも解せないものがあるという印象を、この間からの四、五回の委員会で、総括的に認めないわけには行かないような気がするのであります。それぞれの御答弁を願いたいと思います。
  44. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 館議員にお答え申し上げます。最初にお話になりました公労法の立法趣旨との関係というようなことは、立法問題でもございますし、これについて意見を申し上げることは差控えたいと存じます。  第二番目におつしやいました紛争当事者の一方が公労法を適用することは、間違いがあるのじやないかという点でございますが、これも、もちろん立法論としてお考えになりました場合には、確かに問題になる点もあるかと私も考えますけれども、現行法の解釈といたしましては、別に当事者以外の第三者があの条文の適用を行うのであるというようなことを定めておるものとは考えられませんので、やはり紛争の当事者ではございますが、使用者側であります当局側が公労法違反の事実が発生しておると認めました場合には、使用者の立場において事実の認定をし、これに所定の条文を適用した処置をとる責任があるものと、私どもは考えておるのでございます。  それから紛争の両当事者が、場所によつていろいろ違いはあるが、相当程度双方で事情がわかつてつて、既定の事実というふうに思われたところも相当あるはずである。そういう状態にあつた場合であれば、当局側としてももつとしつかりした対策があつてしかるべきじやないか、その点において当局側の尽すべき責任において欠けるところがあつたのではないかというお話がございました。これは第三者的にごらんになりました場合には、もちろんこれもまたいろいろ御批判の余地は多いことと存じますが、当局側関係者が、いかに正常な列車運転の確保を、何とかして続けたいという努力をしておつたかということは、今までの当局側説明員の申し上げた点からも御理解いただけるのではないかと考えるのでございます。  それから、首の切り方がおかしいではないか、同じ中闘指令を受けて争議行為を行つた下部機関における処分が、各局によつて区々になつておる、そういうところに非常におかしいところがあるのじやないかというお尋ねでございます。この点につきましても、今まで御説明申し上げました過程において触れたことがあると思うのでございますが、この点は、実はしばしば申し上げておりますように、公労法の十七条の解釈上、あの公労法の規定というものは、単に組合に対して争議行為を禁止しておるというだけでなく、公共企業体の職員すべてに対して、そのような行為を行うことを禁止しておる趣旨であるというふうに解釈いたしておりますので、昨年の年末闘争にあたりましては、各所でいろいろな態様の争議行為が……。
  45. 赤松勇

    赤松委員長 答弁中ですが、その問題は次の委員会でやることが理事会できまつておりますから、今の質問に対する答弁をしてください。一般的な、公労法違反であるかないかという問題については、今日やつていただくことは困るのです。今日は事実調査をやつて次期委員会というふうに理事会で御了承願つているのです。そうでございませんと審議の運行上困りますから、事実調査に対する質疑について答えてください。
  46. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 今、館議員から、その点について返事をするようにというお言葉がございましたので……。
  47. 赤松勇

    赤松委員長 総括質問はなお残つているのです。総括質問は各党からずつとやられると思いますので、総括質問はまだあとにとつてありますから、ひとつ事実調査についての質疑についてお答え願います。
  48. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 それではただいま御注意のございました点につきましては別の機会にお答え申し上げることにいたします。  なお発令の形式のことについてのお尋ねがございましたが、これは日本国有鉄道という公共企業体がそれぞれ十七条該当の行為が顕著であつた職員の方々に対して十八条を適用したのでございますが、これは通常の場合、それぞれの所属長が発令権者ということになつておりますので、各所属長が発令をその原則に従つてつたわけでございまして、東鉄の例の場合、東京鉄道管理局の職員であつた人に対しては、東京鉄道管理局長の名において発令をし、東京工事事務所の職員であつた人に対しては、工事事務所長の名において発令をした、こういうことでございます。なお中闘の四人についてそれぞれ元所属長というのがあるはずなのに、なぜ総裁の名において直接解雇の発令をしたとかというお尋ねがございましたのですが、この点は従来の慣行もございますし、本来各所属長の権限というものは、総裁から委任されたものでございまして、中闘の最高幹部の諸君に対して総裁が直接発令をするということは何らさしつかえはない、そういうふうに私どもは考えておる次第でございます。
  49. 赤松勇

    赤松委員長 三三列車の問題に関して、関連質問がありますからこれを許します。島上善五郎君。
  50. 島上善五郎

    ○島上委員 重要な馘首の理由になつております三三列車遅延の事実について、大分食い違いがあるようですから、これをお伺いしたいと思います。  先ほどの組合側当局側のそれぞれの証言にもありましたし、また両者から提出されました書類にもございますが、まず第一に伺いたいのは、この三三列車通常九時三十五分に東京駅に入るべきところを、当日はすでに十分遅れて東京駅のホームに入つて来た、こう組合側は言つておるわけです。そうして組合側では、そのように遅れた理由としては大体この二つがその理由になつたのではないかと推定される、東京駅の構内作業の遅延、つまり構内が満線の状況であつたということ、それから回送に、ふだんは東京駅機関区の電気機関車を使用するものを、当日は品川機関区所属の蒸気機関車を臨時に使用したというようなこと、これが理由として推定されるのではないか、こう言われる。ところが当局側においては、先ほどの証言にも、今見せてもらつた文書にも、ちやんと定時到着した、こういうふうに言つておる。一分や三十秒の違いなら、これはそういうことはあり得るでしようが、時間の正確を最も尊重する国鉄において、十分も違うということは、私は普通はあり得ないことだと思います。私は当局側組合側両方から、はたして十分遅れて入つたか、あるいは定時に入つたかを、はつきりと伺いたいし、その裏づけとなるような根拠をはつきりとこの際両者から明示していただきたいと思う。
  51. 歌崎藤作

    歌崎参考人 先ほども説明申し上げましたが、六〇三三列車として品川客車区からこの三三列車整備され、列車番号は六〇三三列車として東京機関区の所属でありますので、当然東京機関区の機関車が牽引をいたし、この発車線にすえつける作業をいたさなければならないわけでありますが、当日の三割休暇によるところの要員の問題から、これが品川の機関区—品川機関区は主として貨物列車あるいは品川駅構内の入れかえ作業をやつておる。この品川機関区の機関車を臨時につけまして牽引をし、これをすえつけて東京駅まで持つて来た、こういう状態で、この列車が入りますと、当然品川客車区所属のいわゆる東京支区という品川客車区の支区が東京にございます。ここの客車検査掛といいますか、車両掛、こういう方々が、この列車を博多まで運転するために、運転保安上大丈夫であるかどうかという精密な検査が行われるわけであります。そのときの客貨車事故報告書というものが、これはすでに当時局長の手元にも提出されているはずでありますが、これの当時の状況報告の中にも、当時の三三列車東京駅に到着をした時分としては、約十分遅着をしておる、こういう報告当局側にすでに提出をされておりますので、当局の方でもその点はお認めになられると存じます。当時の客車事故報告書という当局側に出しましたものの控えを、ここに持つてつておりますので、これらについては、当局側としても十分の遅延については異論がないと存じます。     〔委員長退席、池田(清)委員長代理   着席〕
  52. 大石重成

    大石説明員 私、当時六〇三三列車東京駅に定時到着したというふうに報告を受けておるのでありますが、今歌崎参考人からいろいろ説明もありましたので、この点につきましては、なお詳細に調べて参りたいと存じます。
  53. 島上善五郎

    ○島上委員 そうしますと、この当局側の今までの証言と、文書にはつきりと「定時到着しました」と書いてある基礎が、くずれて来たわけです。今歌崎参考人から述べられました、ホームに入る際に約十分遅れたという報告書が当局に提出されておる、ここにその控えがあるというを言われましたが、その報告書が提出されておるという事実については、確認されるわけでありますか。
  54. 大石重成

    大石説明員 当時いろいろ事故がありましたので、事故報告は来ておることと私も考えております。
  55. 島上善五郎

    ○島上委員 それでは私どもは、すでに十分遅れてホームに入つたということについては、組合側の証言が正確であると認めざるを得ないと思うのです。そこで七十分の遅延ということですが、さらに先ほど四十分の遅延は特別二等車のタイヤ弛緩という故障の発見、その故障の手直しのために要したということも、実はこの前の委員会までは当局側においてはことさらに言わずにおつたのを、本日の委員会において明らかになつた、これは故障の修理のために要した時間ですから、何ら組合側の責めに帰すべきものではなくて、その責任は当然当局側において負うべきものだと私ども考えるわけですが、その点に対して、これまた両者から御意見を伺いたいと思います。
  56. 大石重成

    大石説明員 先ほど申し上げましたように、特別二等車の故障のために、その車両のさしかえによりまして四十分間遅れたということは、先日私の持つて参りました資料に見当りませんので、保留させていただいたのでありますが、お手元に差上げました資料にもありますように、東京駅に定時到着したということは、私ただいままでさように報告を聞いておりますので、これは定時到着したものだというふうに確信しております。
  57. 歌崎藤作

    歌崎参考人 四十分間の問題につきましては、車体の問題として、当局側も事実その事故を認められておるわけであります。時間の点におきましても、組合調査と何ら食い違つておる点がありませんので、これは当局側も一応認めていただいたと私確信いたすわけでありますが、さらにその他の列車到着のときに、十分遅延という問題等につきましては、すでに運転事故報告局長の手元に出されており、当時の車両掛として業績賞与としてこれらは認められておる。こういう点についても、すでに一月に決裁がされて、業績の手続がされておる。こういう点から参りましても、ここに四十分対十分の問題は、そうしたことによつて明確に何ら組合の争議行為によつて遅延をしたものではない、こういうふうに私は確信をいたしておるものであります。同時に、先生方におかれましても、当然そういうふうに御解釈が願える、こういうふうに私といたしましては考えておるわけであります。
  58. 島上善五郎

    ○島上委員 七十分のうち、五十分はすでに組合側責任ではなくて、当局側責任であるということが明らかになりましたが、さらに本日当局側の出された資料によりますと、こういうことが書いてある。乗務員がいなくて「沼津機関区所属の乗務員に振り替えて、所定通り発車させることを計画いたしました。ところがこの乗務員機関車に乗り込みましたところ、レバーサー・ハンドルがないので、やむなくホームに降りました。」という事実が記載されておるわけです。こういうようなレバーサー・ハンドルがなかつたということは、これまたあるべきものがないということは、当局側責任だと思います。そしてこのことのためにまた相当時間を要していると思いますが、これについて、これまた当局組合側と両者から御見解を承りたいと思います。
  59. 歌崎藤作

    歌崎参考人 レバーサー・ハンドルの問題につきましては、私も調査の中からまだこの点については関知をいたしておりませんので、ちよつと回答いたしかねます。
  60. 大石重成

    大石説明員 まことに恐縮でございますけれども、先ほど申し上げましたように当時の運転部長がおりますので、詳細の点につきましては、かわつて説明させていただきたいと思います。
  61. 水野正元

    水野説明員 この電気機関車にはレバーサー・ハンドル逆転機と申しまして、前進する場合と後進する場合に、前後に切りかえるハンドルがあります。これは電気機関車には必ずつけてあるのでございまして、そこまで来た電気機関車にこれがないわけはないのでありまして、それは組合員の手によつていずれかに持ち去られた、こういうふうに考えておるわけであります。
  62. 島上善五郎

    ○島上委員 レバーサー・ハンドルがなくなつたのは、組合員がどこかへ隠したのじやないか、こう推定されるということですが、これは推定であつて組合員のだれかがどつかへ持つてつたということが、その後はつきりりと事実によつて立証されなければ、組合員がどこかへ隠したとか持つてつたとかいうことは言えないと思うのです。その後そのレバーサー・ハンドルがどこから出て来て、だれかがどこかへ隠したということが立証されるような事実があるかどうか、それを承りたい。
  63. 水野正元

    水野説明員 このハンドルは、実はなかつたのでございますので、局の方から別のハンドルを持つて来まして出したわけであります。それでこの列車のハンドルは、どこに行つたかわからないのであります。
  64. 島上善五郎

    ○島上委員 そういたしますと、今組合員がどこかへ持ち去つたのであろうということは、私は根拠のない邪推だと思う。組合員が持ち去らなくても、なくなる場合があり得る。これに対して組合側から御意見を承りたい。
  65. 歌崎藤作

    歌崎参考人 特に当日組合責任者を、当時のホームに派遣をいたしておいたわけですが、また同時に当局側といたしましても、運転議員なり機関車課員を派遣をいたし、それらの問題の処理をいたしておつたわけです。われわれが推測いたすところ、当局側の係員としては、常に組合員に対して動向なり行動というものを、臆測あるいは邪推、偏見的な気持、そういう態度であつたということが、われわれとしては一応申し上げられるわけであります。しばしば私が申し上げているように、決して組合員が故意に列車運転を阻害しようとか、列車を運休させようとか、こういう目的は毛頭ないわけであつて、ことさらに運転に必要なそうしたハンドルを隠すとかいうようなことは、常識的に考えましてもあり得ない、私はこういうふうに考えるわけであり、このハンドルの問題については、全然組合としては関知いたしておりません。私といたしましては、きよう初めて当局側資料の中にそういうことが書いてあるということを聞きまして、驚いたわけでありますが、そういうような事実は、全然組合側の方としてはなかつたと私といたしましては信じおります。
  66. 島上善五郎

    ○島上委員 これは新しい事実であるし、今言つたように、多分組合側が持ち去つたのであろうということを邪推されたのでは、組合では非常に迷惑すると思う。そこで私は、組合側においてその当時現場の業務に関係のある人で、そのレバーサー・ハンドルのなくなつた事情について、直接関与しておると申しますか、知つておる方がもしありましたら、その方からあとでまたもう一ぺん伺いたいと思つています。  それで、さらに伺いたいのは、この組合側の書類によりますと、特別二等車の故障を発見した車両掛が制動試験を終了したのは、機関士が乗り込んだ直後であつて、十一時五分であつた。そうして十一時十分には列車発車しているわけです。ですから、列車発車する五分前まで、その特別二等車の故障修理と制動試験のためにかかつた。こういうことになりますれば、列車遅延の七十分の時間というものは、どうも大部分あるいは全部組合側の責めに帰すべきものではないというふうに、私どもしろうとなりに考えられますが、特別二等車の故障の修理をして車両掛が制動試験を終了したのは、時間的に十一時五分であつたということにつきまして、組合側からもう一ぺん、時間のことですからはつきりと伺いたいし、当局側からもその事実を確認されるかどうかを伺いたいと思います。
  67. 歌崎藤作

    歌崎参考人 その点につきましては、先ほども申し上げました運転事故報告書の状況及び処置、損害の程度、こういう欄に詳細に書きまして、いわゆる制動試験完了は十一時五分である、こういうことがすでに局長の手元に報告を出されております。従つて、この機関士運転台に乗つておらぬというと、緩解試験ができないわけです、エアーの試験が……。そういうこともあつて、とにかくそれらの全部、列車としてさあ発車できるという情勢までに、列車検査あるいはその他の手配をいたすまでに、十一時五分までかかつたということは、明確に運転事故報告書の中に時刻をしるして、当局の方に提出をいたしてあります。
  68. 大石重成

    大石説明員 実は私まことに申訳ないのでありますが、そこまでこまかく報告を聞いておりません。ほかの車両と入れかえたのが何時に終了したかということは、まだ報告を聞いておりませんので、これは詳細調べてみます。
  69. 島上善五郎

    ○島上委員 どうもこの七十分遅延を大きく取上げて、これが組合側責任であるということを言つておるのに、そういう事実をよく調査していない、出された報告書も目を通していないというようなずさんなことでは、私どもこの三三列車責任組合側に負わせるという当局の態度は、まつたく事実に立脚しないものであり、納得することができないわけです。この運転事故報告書を出されたということは、今証言されておりますから、これは間違いのない事実だと思いますが、ひとつはつきりとその事故報告書を見ていただきまして今までの七十分の遅延責任組合側にあるというその事実の基礎が、まつたく妥当でないものであるということを、当局側において反省してもらわなければならぬと思います。  事実はだんだんとはつきりして参りましたが、もう一つ伺いたいのは、当日現場における当局の態度が、非常に挑戦的であつたというか、高圧的であつた。そのことのために、穏やかに済むことまでかどが立つて、紛争が激化したというように、組合側の書類に書いてあります。組合は、組合の要求が仲裁裁定によつて当然実施さるべきものがされない、そうしてそれが、年末を控えて苦しい生活に重大な関係を持つている問題ですから、組合員がそのことのために多少興奮するとかいうようなことはあり得ることで、これはやむを得ないことでもあろうと思うのですが、そういう際に、管理者側の当局者が、まるでこれを闘争するというような、感情的な、高圧的な態度でもつて処理に当るということは、これは大きな間違いだと思います。そういうような当局側の当日の現場における態度が、事態を一層紛糾せしめ、そのことがまた列車遅延原因にもなつている、こういうふうにこの書類から想像できるわけですが、その現場における当局の態度というようなものについて、ひとつ組合側から御見解を伺いたいと思います。
  70. 歌崎藤作

    歌崎参考人 私責任者として、その当時その現場場におらなかつたわけですが、報告によりますと、終始そういうような非常に挑発行為があつた、こういう報告だけを受けておりますので、さらに事象としてこういうようなこと、こういうようなことという点については、後刻十分当時派遣をしておりました闘争委員から聴取いたし、御報告申し上げたいと思います。今ただちに具体的な問題で、こうであろうということは、ちよつと調査が不完全でありますので、後にさせていただきたいと思います。
  71. 矢尾喜三郎

    ○矢尾委員 今の島上君の質問に関連いたしまして、一点お伺いしたいと思います。ただいまの質問によりまして、東京駅の三三列車遅延につきましての当局側理由としましては、結論において七十分列車を遅らせたということが解雇の理由になつておるのでございますが、ただいま組合側の主張と当局の主張とを総合してみましても、東京駅に入つて来た最初の十分間というものは、組合側において正しく立証されておるのでありまして、またあとの四十分の問題につきましても、これはタイヤの修理に要した時間ということがはつきりと現われておるのであります。そして残つた二十分というものがいろいろ問題になつておるのでございますが、それに対して組合側妨害によつて発車が遅れたように言われておるのでございます。ただ、本日資料として出されました中の最終に「そうして結局、局員の命令で七十分遅延して発車することになりました。」という報告があるのであります。そういたしますと、いかにピケを張られたとか、あるいは妨害行為があつても、局員の命によつて発車することができたという結論になつております。これから推定いたしてみますと、結局においてそういうタイヤの修理をしなければならぬとか、あるいは到着が十分遅れたというような事故がなければ、完全無欠の列車が編成されておりますならば、当局局員の命令によつて定時発車することができたと思うのでございます。この点につきにまして、当局はどういう考えを持つておられるか。結局は局員の命令によつて列車が出発したというこの事実は—組合側妨害したと主張せられる事実があつても出発することができたということは、出発することができなかつた車両故障であるとか、列車到着遅延したというようなことがあつたことを立証しておるものと考えるのでございます。結局、局員の命令によつて出発することができた。今組合並びに当局において主張されたことが、出発できなかつた理由であつて、実際完全無欠のものであるならば、局員の命令によつて出発できておつたと私は考えるのですが、当局はその点についてどういう考えを持つておられますか。この報告書に基きまして、一応見解を求めたいと思います。
  72. 大石重成

    大石説明員 組合妨害がなければ、また今お話のように車両が完全なものであることが前提であれば、毎日定時に出ておるのですから、定時に出たものだと思います。
  73. 矢尾喜三郎

    ○矢尾委員 妨害がなければ出ておつたと申されますけれども、今組合側の主張しております十分間遅れて到着したという事実、車両故障でこれを入れかえするための四十分の時間、これを見ましても、これは組合妨害でも何でもないのです。列車が遅れて到着したことも、タイヤが悪くなつてつたごとも、組合が故意に妨害をしたというようなことではございません。これはやむを得ざる事故によつてこれだけの時間を要したのです。だから、あとの二十分が問題になるのですが、この二十分は、当局側に言わせれば、組合妨害したということであるならば、この二十分も局員の命令によつて列車が出発しておらなければならぬはずでございます。事実において、命令によつて出発することができる状態にあるならば、それは妨害によつてつたものではなくて、組合側の主張しておるいわゆるハンドルがなかつたとかなんとかいうことによつて遅れたものであると私たちは考えるのですが、その点を聞いておるのです。
  74. 大石重成

    大石説明員 この場合には、いろいろ妨害がありました。最後に局員が直接ホームに参りましていろいろ説得もし、また協議もしまして、そうして列車発車したというふうに私は報告を聞いております。     〔池田(清)委員長代理退席、委員長   着席〕
  75. 矢尾喜三郎

    ○矢尾委員 その点につきまして、組合側のお考えを述べていただきたい。
  76. 歌崎藤作

    歌崎参考人 先ほどからしばしば申し上げておるように、当局があえて妨害と言うならば、われわれ組合側といたしましては、あくまでも正常運転安全確保—少くとも旅客列車であるので、安全確保という点で、通告券の問題なりあるいは機関士としての諸条件、たとえていうならば、機関士職別運転取扱い心得というものを、乗務する場合に必ず持たなければ乗つてはいかぬということが規定に明文化されておる。こういう諸条件が整つておらない。旅客列車である限りは、こういう点を整えて、お客さんを安全に輸送しなければならぬ。こういう建前から、われわれとしては現場において、当局側の派遣されておつた人々に対する要求として、完全無欠な形で運転をやれという話合いがなされた。こういうこと以外には、あえてわれわれが故意に妨害をしたとか、あるいはピケによつて阻止したということは毛頭考えられないことであります。
  77. 矢尾喜三郎

    ○矢尾委員 もう一点お伺いしたいと思います。今度のこの解雇全般を見てみますと、あの年末闘争における争議は、全国鉄にわたつて行われたので、こういう事故は各所において無数に行われておるのでありますが、当局は特に国鉄の中央闘争委員の現場におる者のみを取上げて、闘争委員を解雇するという目標のもとに、各地における事態を取上げているように私たちは推測するのでございます。東京鉄道管理局管内におきましても、各所においてこういういろいろの事態が起つておると思いますが、たまたまこの列車のところに中央闘争委員が二名出ておつたということをつかまえて、直接その本人を首を切るという方針でおられるのでございます。中央闘争指令においては、東京管理局管内至るところにおいてこういう問題が起つておると思いますが、今まで当局の意見を聞いておりますと、当局は特に中央闘争委員を馘首するという目標のために、こじつけにどつちともわからぬような問題をつかまえて馘首されたように思うのでありますが、この点について、全般的に行われた争議から見て、これが一番大きかつたと思われてやられたのかどうか、その点につきましてお伺いしたいと思います。
  78. 大石重成

    大石説明員 御説のように、特に業務の正常な運行を阻害した、程度のはなはだしいというものを取上げまして、責任を問うたわけであります。
  79. 矢尾喜三郎

    ○矢尾委員 これは闘争委員がその場におつたとかおらぬとかいうことは別問題でありまして、東京管理局管内において一番大きな問題であるという見解から、今回の馘首を発表されたのでありますか。
  80. 大石重成

    大石説明員 東京鉄道管理局の管内におきまして、特に違反行為がはなはだしいというものを取上げて、解職したのであります。
  81. 赤松勇

    赤松委員長 黒澤幸一君。
  82. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 東京管理局の解雇の理由につきましては、前委員会から本日にわたりましていろいろ双方からお聞きいたしまして、その真相が明らかになつてつたのでありますが、ことに三三列車の七十分遅延理由が、組合側責任ではなくて、当然当局責任に帰すべき事由であるということがはつきりして参つたわけであります。ことに、私遺憾にたえないのは、かような労働者を断頭台に上せるような解雇の理由につきまして、この事実の真相を明らかにするための当局の努力が何らなされていないということであります。局長は、いわゆる運転遅延報告書その他の報告書を見ていない、だからわからない、これから調査をしてみる、そういうふうな簡単な気持でかような解雇の問題を取扱われるということは、私は絶対に許されない軽率なやり方ではないかと考えるのであります。この三三列車の十分遅延して東京駅に着いたということも、はつきりして参りました。それからあとの四十分が、故障あるいは修理のために要した時間であるということになりますと、木田君、伊藤君、両君に対する最も大きな解雇の事由になります七十分遅延の問題が、解雇の理由からはずれて参りますが、こういう事実が明らかになつた今日におきまして、当局においてはどういうお考えをお持ちになりますか。私は、当局におきましても、間違つておることは間違つたとして、釈然としてそれを訂正し、正しい処置をとられることが当然ではないかと思うのであります。こういう事実の真相が明らかになりました以上、これに対する当局の今までのやり方は、当然かえられなければならないのではないかと思うのでありますが、これについて、どういうふうに大石局長は考えておられるか、お伺いいたします。
  83. 大石重成

    大石説明員 私といたしましては、当時行いました行為が、業務の正常な運行を阻止するという行為がありましたことに基きまして責任を問うた、これにつきましては、今もかわつた気持は持つておりません。
  84. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 あなたは今までそういうお考えで、またそういうお考えをするような方向に基いてかような処置をとられて来たと思うのでありますが、本委員会の審議の過程におきまして、この事実が誤まつていたということが明らかになつて来たんじやないですか。しかもあなたのところに遅延した報告書が参つておる。それをあなたは見ていないと先ほどおつしやつております。またそうした詳細なことは知らないとも言つておる、今後調査するということもあなたはおつしやつておる。そういうあやまちが明らかになりました以上は、今までそういう誤つたことを基礎にしてこの大きな解雇の理由にしておるのでありますから、当然これは訂正されるべき問題ではないか。私は今までのことを言つておるのじやなくて、この委員会において明らかになりました点について、当然私は今までの当局の考え方はかえてもらわなければならないと思いますが、この点についてお聞きしたいのです。
  85. 大石重成

    大石説明員 先どほも申し上げましたように、当日いろいろの違反行為があつたのであります。その点につきまして、公労法十七条によりまして責任を問うたというふうに考えております。
  86. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 どうも同じことを御答弁になつておるのだが、私はそのことを聞いておるのではありません。あなたはこの三三列車定時東京駅に着いたという報告を受けておるわけであります。ところが、その当時事故報告書では十分遅れて到着したということが出ておるわけであります。ところが、それに対して、あなたはそれをごらんになつていないということを言つておるのでありますが、そういう報告書をあなたは見落しているのであります。しかもこの委員会においてそのことが明らかになつておる。またその後の四十分の遅延というものが故障、修理のためで、これは当然当局の責めに帰すべき事実が明らかになつて来た。そういうことに対して率直に当局は、報告漏れになつたこともわかつた、事実と相違しておる点が明らかになつたというならば、それを恬淡として受入れられて、そうしてほんとうの正しい処置をとられることが当然ではないかと考える。今までのことに何もこだわる必要はないじやないですか。そうしてそのことによりまして、解雇の通告を受けた人が、そういう事実がなかつたということで解雇しないで済むということになれば、あなたの部下が一人助かるのでありますから、あなたはそれを快く受入れるべきではないかと考えておるのでありますが、もう一度その点をお伺いしたいと思います。
  87. 大石重成

    大石説明員 いろいろの妨害事故があつたということは、私当時報告を聞いておりますし、さような点に基きまして責任を問うたわけであります。
  88. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 今まで妨害行為があつたということは、あなたから何回も言われなくてもわかつておるわけです。そうじやなくて、この委員会における審議の過程において、あなたへの報告が誤つていたということが指摘されて来たのじやないですか。それをあなたは、今まで知らなかつたということを先ほどもおつしやつたじやないですか。そういう事実の真相が明らかになつた場合には、やはりその真相に基いて過去の誤つた報告を訂正して、正しい事実に基いて処置せられることが当然ではないかと考えておる。あなたは、私が何回聞いても、過去にいろいろな妨害があつたとかなんとかいうことを繰返しておるのでありますが、過去においてもそういうようなあやまちがあつた、事実に相違したということが明らかになつておるのでありますから、その事実をあなたはお認めになる以上は、やはりその事実に基いて、この解雇の理由が事実と相違したということになりますならば、これによつて正しい処置をされるべきではないか。そういうお考えをお持ちになつておるかどうか、もう一ぺんお尋ねしたいと思います。
  89. 大石重成

    大石説明員 当時いろいろ妨害行為があつた、また違反行為があつたということを聞いて私は知つておりますので、その点におきまして責任を問うたのです。
  90. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 それではまた繰返しますが、あなたはこの委員会において、七十分遅延した、その責任組合側の闘争にあるのだということをおしやつて来たのであります。ところが、東京駅に三三列車定時に着いたということを大石局長は信じられて参つたところが、十分遅れて東京駅に着いたということが明らかになつたわけであります。しかも、それに対しては、その当時報告書が局長あてに参つてつた。それを局長はごらんになつていないということをおつしやつています。またそういう詳細のことは私は知らぬともおつしやつております。なお、あとの四十分の遅延が、故障とその修理のために時間がかかつたということも明らかになつてつたわけです。こういう事実が明らかになれば、あなたが今まで報告を受け信じて来たその七十分遅延と大きな違いができたわけです。それですから事実に対してあなたはお認めになつて、そしてわれわれから考えますならば、この解雇は当然私は撤回さるべきものだと思うのでありますが、そういう新たなる事実に対して、局長はどういう御処置をおとりになるか、その点を私は聞いておるのです。
  91. 大石重成

    大石説明員 今の七十分のうち四十分が車両のさしかえであるとか、その他の事由につきまして、いろいろとお話があつたのでありますが、私といたしましては、非常にこの時間の問題も大きな問題ではありますが、直接機関車のデッキでもみ合いましたり、列車発車をとめるといつたような行為があつたというようなこと、またその他のことにつきまして、正常な運行を阻害する行為であるというふうに考えますので、責任を問うたわけであります。
  92. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 前の十分には触れないで、あとの四十分の触れてきたわけでありますが、この点もあなたあてに運転事故報告書というものが参つておるわけであります。その点につきましても、あなたはごらんになつていない、そういうこまかいことは私は承知していないということを先ほどおつしやつているのでありますが、そうしますと、それをごらんになつていれば、どうして避延したかということも、当然その当時局長はわかつていなければならないはずであつたのであります。そうした事実が今日明らかになつたのでありますから、その明らかな事実に対して今までの局長のところに参つていた報告書、その報告書に基いてのあなたの判断、処置というものも、当然私はかわつて来なければならないと思うのであります。こうした新事実に対しまして、局長はどういうお考えをお持ちになつているか、またこの解雇になりました三名に対してどういう御処置をおとりになるか、私はその点を聞いているのです。
  93. 大石重成

    大石説明員 当時私が報告を聞きまして、直接妨害行為、違反行為をしておりましたということにつきましてこの確認は今もつてかわつておりませず、またこの解雇いたしましたことにつきまして、これで考えがかわるといつたよりな気持は、ただいまのところ持つておりません。
  94. 楯兼次郎

    ○楯兼次郎君 今黒澤委員大石説明員の話を聞いておりますと、私は非常に大石説明員の話は強引に過ぎると思います。とにかく公労法違反によるということで、一筆で今度の処分が行われておつたならば、この国鉄労働組合が昨年末行つた争議について公労法の違反であるかどうか、この問題のみを論議すればいいわけです。ところが五つの各地方の管理局にわたつてそれぞれの方々を処分しておる。しかもその処分の理由には、たとえば大阪の場合でありますと、有力なる原因として第二信号扱所の問題あるいは月光事件の問題、あるいは天王寺管理局の地方の役員の処分の問題につきましては、いわゆる客貨車区の暴力行為であるとか、その他の理由が明示をされて解雇理由になつておる。従つて本労働委員会としては、それらの事実について、今ここで審議をしておるわけです。本日の委員会においては、東京管理局において有力なる地方の組合の役員の解雇理由であるところの三三列車の七十分の遅延について、二日にわたつていろいろの事情を聞いたところが、これはあなた方が解雇理由に言つておるところの組合妨害行為によつて七十分三二列車遅延をした。ところが私どもがこの委員会において審議をいたしました結果によりますと、七十分の遅延組合側妨害行為ではない、こういうことがはつきりして来たわけです。しかもこの反証については、あなたは答弁ができない、あとで調べて説明をする、そういうことを言つておいでになるわけです。従つて七十分三三列車遅延したということについては、両日の委員会の審議過程から見て、大石説明員としても率直に、そういう事実はなかつた、こういうことを当委員会において認められても何ら私はふしぎではない。しかもそうすることが今後の審議においても、色のかかつておらない審議を継続して行くことができる、こういうふうに私ども考えておるわけです。あなたはこの問題について詳細なる説明ができずして、ただ最後になると妨害行為があつた、こういうことのみでは、われわれ委員としても納得ができない、従つて大石説明員に私は最後にお伺いしたいことは、少くとも三三列車の七十分の遅延については、当初あなた方が説明をされたような、組合側妨害行為によつて七十分遅延したことではない、この一点だけはひとつ委員会において確認をしていただきたいと思います。
  95. 大石重成

    大石説明員 今のお話のありました四十分につきましては、お手元に差上げました資料にも書いてあります通りでありますが、この妨害の事実につきましては、ただいま裁判の問題にもなつている問題でありまして……。
  96. 赤松勇

    赤松委員長 大石説明員に申し上げますが、質問者はそういうことを質問しておりませんから、質問者の質問にたしました点だけを明快に御答弁願います。
  97. 大石重成

    大石説明員 私といたしましては、四十分の遅延原因は、タイヤ弛緩による原因であるというふうに思うのでありますが、その他はいろいろのトラブルによりまして遅延をし、またそれのときに著しく違反行為があつたということを確認しておるわけであります。
  98. 楯兼次郎

    ○楯兼次郎君 私は具体的にもう一回お聞きしたいと思います。あなたの御説明では、これは私以外の委員でも納得が行かないと思う。だから、このことによつてあなたのお立場がどうなる、こうなるという問題ではないと思う。率直に審議の過程の事実から、私はあなたのこの七十分遅延についての確認をしていただきたい、こう思うわけです。十分遅れて来た、四十分がタイヤ弛緩、これは組合の運動、行為いかんにかかわらず、当然通常事故として遅延すべきはずのものです。あとの残り二十分が、たとえば運転通告券の問題あるいは時刻表の問題で、しかも私は先ほど資料をいただかなかつたのでございますが、今資料を見てふしぎに感じておることは、静岡の機関士を三三列車に乗せておる。しかもまだ一ぺんも乗つたことのない機関車に乗せておるわけです。従つて組合側が初めての型式の機関車であるので運転できない、こういうことを言つて阻止をした。こういうことはあなたの方の資料に載つております。規約上はそういうことができるかもしれませんけれども、われわれの常識としては、今まで一回も乗つたことのない型式の機関車にいきなり乗せて運転をせよということも、正常な取扱いであるということは私はいえないと思う。こういうあなた方の不手ぎわな問題によつて組合との間にトラブルが起きておる。従つて、これは当然組合がいろいろな争議行為をやつておらなくても、遅れるべきものである。こういうふうにわれわれ委員は今までの審議の過程から受取つておるわけです。この事実についてあなたがここで取消されても、何らあなたの立場云々というものには関係がない、こういうふうに考えるわけです。率直にこの三三列車の七十分遅延については、今まで当局のいう理由は間違つてつたということを認められても、私はいいのじやないと考える。再度お答え願いたいと思います。
  99. 大石重成

    大石説明員 四十分は特別二等車のタイヤ弛緩によりまする故障によつて遅れたということは、お手元に差上げました資料にもありますように、これは明らかであります。その他のことにつきましては、(「十分は認めておるじやないか」と呼ぶ者あり)十分につきましては、私が聞いておりますところでは、東京駅に定時到着したという報告を受けておりますように、この点につきましては、四十分は特別二等車の故障であり、その他のことは争議行為による遅延であると私は考えております。
  100. 島上善五郎

    ○島上委員 同じ答弁ばかりしていますので、私も同じことを聞くようですが、解雇の理由とした事実に重大な誤りがあつた、相違があつたということがはつきりしますれば、それに対しては、新しい事実の上に立つて考え直すというのは当然だと思うのです。ここで解雇を取消しますという言明は、すぐにはできないかもしれませんけれども、解雇の理由にした七十分遅延組合側責任であるという事実が、先ほど来の両者の証言によつてはなはだしく相違しておるということがはつきりした。はつきりした事実の上に立つてあの措置が妥当であつたか妥当でなかつたかということについては、考え直してもらわなければならぬ。また考え直すのが当然だと思うのですが、考え直すお考えがあるのかどうか。
  101. 大石重成

    大石説明員 時分の問題もさることでありますが、運転時分の遅延のみによつて—これも一つの要素ではありますが、それのみによつて責任を問うたのではないのでありまして、それに加えまして、直接列車運行を阻害したといつたような事実もあるのでありまして、かような点について責任を問うたということにつきましては、今も同じような気持でおるのであります。
  102. 楯兼次郎

    ○楯兼次郎君 大石説明員お話はおかしい。とにかく三十五万の国鉄労働組合組合員が、中闘の指令によつて全部行動しておるわけです。それを特に二人なり三人なりを抜き出して解雇したという理由は、たとえばこういうようなことがあるのでやつた、大阪の場合はこうだ、新潟の場合ばこうだ、天王寺の場合はこうだというので、それぞれ特殊な問題があつてこの労働委員会の問題となつておるし、解雇の理由になつておる事実を、われわれがあなた方あるいは組合側から聞いて、その事実がないとするならば、少くともこの解雇の理由とした七十分の延発については取消されることが至当であり、かつ島上委員が今質問されたように、事実と相違しておつた場合には再考慮するということは、当然なことじやないかと思う。それを、ほかにも事実があると言う。そのほかの事実というのは、おそらく三十五万なり四十万なりの組合員がみなやつておることだと思う。ところが、解雇された数名の人に対しては、特に抜き出たこうこうこういう行為があるということを吾孫子職員局長が再三再四言明しておる。だからわれわれ委員としても、その特殊的事項をとらえて検討した結果、事実と相違しておる。相違しておつたら、あなたは再考慮されてもこれは当然だと思う、どうですか。
  103. 大石重成

    大石説明員 妨害行為につきましては、機関車に乗り、あるいは乗務員の乗車を阻止し、また列車発車まぎわに、ピケ隊を動員いたしまして列車発車を阻害するといつたようないろいろな行為があつたのであります。かようなことは、ほかにもたくさんあつたろうというようなお話でありますが、かようなはなはだしき行為をしたというようなことは、私どもの方ではないのでありまして、特にはなはだしい行為をとつたということによりまして責任を問うたのであります。
  104. 島上善五郎

    ○島上委員 解雇するというここは、労働者にとつては死刑の宣告なんです。その事実に重大な相違があることを発見された以上は、かりに今あなたが言うように、他に多少の妨害行為があつたとしても、極刑にしたということは再考慮さるべきものではないかと思うのです。七十分の遅延組合側責任であるということが、少くとも解雇の主要な理由になつておる以上は、その事実が主で、あとはいわばつけたりのような理由しかないといたしますならば、極刑にしたこの処分については再考慮さるべきものだと思う。しかも、どんな小さな違反あるいは妨害というようなことでも、死刑の宣告しかないというようなものではないと思う。今度の処分にしても、死刑の宣告以外に、もつと軽い程度のものがあると思う。この極刑に処した事実に変化がありましたので、この解雇という極刑について、再考慮されるのが当然である、こう考えるので、それを再考慮する御意思があるかどうかというこを伺つておきたい。
  105. 大石重成

    大石説明員 たびたび申し上げるのでございますが、時間が七十分が三十分になつたから、二十分になつたから、いいというふうには考えませず、またこのほかに直接列車運行妨害するといつたような行為もありましたので、今お話の極刑を考え直す、減刑をするということは、ただいま私らとしては考えられないわけであります。
  106. 赤松勇

    赤松委員長 島上委員のお尋ねの事実の変化については、どうなんですか。事実無根であるということが明確になつた場合には、どうなんですか。
  107. 大石重成

    大石説明員 七十分のうち四十分は特別二等車のタイヤ弛緩のためにさしかえの時間であつたということは、お手元に差上げました資料にも書いてあるのでありますが、その他のことにつきましては、組合妨害によりまして列車遅延したものだというふうに私は考えております。
  108. 持永義夫

    ○持永委員 私はこの解雇ということについては、決して希望してこの質問を申し上げるわけではありませんから、その点は委員諸氏の御了解を得たいと思います。ただいま大石説明員お話は、何度聞きましても結局同じような返答であります。そこで私は私の党の立場からひとつ念を押して聞きたいと思う。先ほどからお話がありましたように、解雇ということは、確かに死刑に相当する極刑であります。だから当局としましても、特に鉄道は一家であるという伝統からいつて、極刑を処せられるに至つた事情については、相当やむを得ざる事情があり、また十分なる審査を経てやられたと思う。そこで、今日まで数回にわたつて当局及び従業員側のいろいろな事実の調査がありまして、われわれも質問をいたし、ある程度事実を知つたのでありますが、その総合の結果、大石説明員とされましては、解雇されたその当時の法律事実、すなわち業務の正常なる運営に支障を来したというので解雇を適用した法律事実について、今日までの委員会質疑応答から見て、何らかわりがないかどうかということと、それに対する現在の心境はどういうふうな心境を持つておられますか。かわりがあるのか、ないのか、それをはつきり聞かしていただきたい。
  109. 大石重成

    大石説明員 違反行為のことにつきましては、当時私は報告を聞いております。私情といたしましては非常に残念でありますが、確信をもつて公労法十七条に該当するものと考えまして、十八条に従いまして解雇いたしました。また現在におきましても、この解雇をしたということにつきましての心境は、誤つたというような心境は持つておりません。
  110. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 大石説明員の御答弁を聞いておりますと、三三号列車遅延がくずれて来たために、それ以外の妨害行為というようなことを強調して参つたのでありますが、われわれはその妨行為につきましても、本委員会の審議の過程において事実と相違しておることを当局が主張しておることをわれわれは認めざるを得ない。そこで妨害行為ということを一応認めることにいたしまして、それが公労法十七条違反であるかどうかという問題でありますが、これは十二月三日の国鉄当局列車運行の阻害者に対する処分についての通達というものを見ますと、これは公労法違反ではなくて、日本国有鉄道法第三十一条によるべきものではないかと考えております。ここに一、二、三と処分の基準を当局は示しております。その三の中に、線路または橋梁に坐り込む等、機関車または列車運行妨害する事実があつたときには、日本国有鉄道法第三十一条によつて処分するという通達を出しております。ところが、今この解雇理由にあげておることを見ますと、これは当然国有鉄道法第三十一条によるべきであつて、公労法十七条によるべきではない。しかもそういう通達を当局は出しておりますが、その点どういうわけでこの国鉄の通達に従わないで、公労法十七条をあえて適用したのか、この点をお聞きしたいと思います。
  111. 大石重成

    大石説明員 その点につきましては、十分本庁と打合せまして発令したわけでございます。
  112. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 ただいま申し上げた通達に従わないで、公労法十七条を適用したという理由です。どうしてこの通達に従うことができないのであるか、公労法十七条をあえて適用したのか、その理由をひとつ明らかに示してもらいたいと思います。
  113. 大石重成

    大石説明員 その点につきましては、本庁と相談をいたしまして、また本庁からもその通牒の後に、今回の問題は公労法によつて処分するようにという通牒を受けたわけであります。
  114. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 私はそういうことを聞いておるのではなくて、その理由をお聞きしておるわけです。なぜこういう通達を当局が出しておりながら、この通達に従わないで公労法十七条を適用したか、その理由であります。
  115. 大石重成

    大石説明員 私はこの行為を争議行為であるというふうに考えましたので、先ほど申し上げましたように、本庁とも相談をいたしまして公労法を適用した次第であります。
  116. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 その点は総括的な質問のときにお聞きしたいと思います。
  117. 赤松勇

    赤松委員長 大石さん、実は理事会の申合せで、きようで東京管理局調査は終つてあとは総括的な問題に移ろう、こういうように考えているわけです。従つて、そういう意味から、できる限り質問の核心に触れて答弁していただくように、先ほどからお願いしておつたわけですが、争議行為とは何ぞや等の問題になると、これは総括質問の際に黒澤幸一君がやりたい、こういう申出でありますから、当局の方も十分答弁をまとめていただいて、統一的な御答弁を願いたいと思います。  どうでしようか、特需関係の人も来て大分待つておられますし、なお、このあと造船、日平産業等の質疑もありまして、政府側の方も予定がございますので、東京管理局調査は、むろんこれで打切るわけではございませんが、一応本日はこれで打切つて、来る木曜日からこの問題に関する総括的な質疑をば行いたい、こう思いますが御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  118. 赤松勇

    赤松委員長 それではさよう決定いたします。  本日御出席岩井参考人には、御足労ながら来る十六日の委員会にも御出席くださるようお願いいたします。  それでは午後質疑の通告もたくさんございますので、正二時より本委員会を再開いたします。  二時まで休憩いたします。     午後一時二十一分休憩      ————◇—————     午後三時一分開議
  119. 赤松勇

    赤松委員長 休憩前に引続いて会議を開きます。特需関係労務に関する件について調査を進めます。     —————————————
  120. 赤松勇

    赤松委員長 本件につきまして坂本登君、細貝義雄君、川内文一君を参考人として意見を聴取したいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  121. 赤松勇

    赤松委員長 御異議なければさよう決します。  なおこの際お諮りいたしますが、本件に関連いたしまして、日平産業株式会社の争議関係について、高橋兵二君及び大吉光君の両君を参考人として意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  122. 赤松勇

    赤松委員長 御異議がなければさよ決します。
  123. 赤松勇

    赤松委員長 それではこれより質疑に移ります。  その前に参考人の方から通産省に対する意見、希望等があつたら、一応意見を述べてもらい、それに対して記内政府委員から特に特需関係の通産行政に関して、政府の御意見を述べていただきたいと思います。それでは川内参考人
  124. 川内文一

    ○川内参考人 前回までの委員会におきまして、私ども修理特需を中心とする役務提供の特需労務者が、現在調達庁の庇護、管理下に置かれております直用労務者と比較しまして、その成立から、またあらゆる労働環境、将来の見通し、職場の不安定性というようなものが全然異なるところがないということ、それにもかかわらず、給与面においては非常に大きな開きがある。特に退職金につきましては、直用労務者の二分の一にしかすぎないという実情を、大体御了解願えたのではないかと思います。これに関しまして、前回までの政府の関係者の方々の答弁を承つておりますと、大体要約しまして、調達庁において米軍と交渉するから、その努力を待つべきであるという御見解のように承りました。そこで、私どもとしましては、この際特に現在行われております米軍と業者との直接契約、いわゆる私契約という方式のもとにおいて、政府がはたしてどの範囲まで介入することができるかが不明確なのであります。従来、私どもが直接調達庁に参りまして伺いましたところによりますと、少くも現在の契約方式が行われている限り、私契約がある限りは、政府として介入する余地は非常に限られた、きわめて狭い範囲のように承つております。もともと私どもがこのような要請をするに至りましたことも、私ども年来の主張である契約方式の改訂、現在行われておりますような米軍と業者との直接契約を公契約に切りかえる。この公契約の実施につきましては、調達庁におかれてもわれわれとまつたく同意見であるように承つておりますが、これがさまざまな事情からして早急に実現できがたい。同時にまた、公契約が実行できなければ、政府としてもそうつつ込んだ交渉は米軍となし得ないのではないか、こういう観点から、今回の要請になつたものであります。従いまして、もしも調達庁におきまして、現在の私契約という契約方式下においても、それをよくなし得るという法的根拠と決意とを持たれ、またそれに対してはつきりした見通しを持つておられるならば、私どもといたしましても、あえてこの要請を固執する必要はないということも考えられるのであります。従いまして、まずこの点について調達庁から明確に御説明をお願いいたしたいと思います。
  125. 山内隆一

    ○山内説明員 ただいま参考人から御意見がありましたが、大きな問題でありまして、私がここであまり独断的なことを申し上げることは、差控えなければなりませんが、ただ調達庁として大きな関係があり、関心を持つた問題でありますので、感じだけを申し上げておきたいと思います。  今の特需契約の上から、業者が意外な不利益をこうむることもあるだろうと思います。ましてや、その結果、たくさんな労務者に不利益が及ぶことも想像されるのであります。これには、いろいろ原因がありまして、必ずしも一つの方法で解決するというような単純なものではなく、各種の問題が複雑になつているかと思いますが、その一つの問題として、間接調達にしてはどうかという問題が当然考えられるわけであります。これは今の行政協定ができるときにも、大分問題になりまして、結局今のように直接調達となり、多少きわどい場合に、幾分かそれを緩和する措置として、十二条に若干の緩和の道が講ぜられているわけであります。この十二条によつて、すぐに間接調達ができるかというと、なかなかそれは問題であろうと思います。そんな関係から、現在は間接調達ということはやつておりませんが、今後間接調達にかえる研究ができるかということになれば、研究は私どももやつておりますし、調達庁の立場からいえば、間接調達が望ましいという感じは持つておりますけれども、しかしいろいろの事情がありまして、すでに今日のようにきまつているものでありますから、将来簡単にこれを間接調達に切りかえることは、なかなか容易なことじやなかろうと考えております。
  126. 川内文一

    ○川内参考人 ただいま山内総務部長から御説明がありましたけれども、私は現在行われている私契約という契約方式のもとで、現在より以上にもつと政府として深く介入することができるかいなか、その法的根拠がどこにあるかということであります。
  127. 山内隆一

    ○山内説明員 現在の契約方式の前提に立つて、何かもう少し政府が介入する道はないか、こういう御意見のようでありますが、調達庁が現在やつておる仕事は、軍と業者との間の契約について、業者に不利益にならないように、また公正な利益はできるだけ擁護するという立場で、この契約調停委員会の主査を出してその事務をとつておるわけであります。その仕事の範囲は、前にもここで申し上げたと思いますが、全体の契約方式として、とかく軍の方ではアメリカ式に日本の業者に押しつけるようなことになり、その結果大勢の業者に不利益が及んでは、これはどうも気の毒である。従つて、なるべく日本式といいますか、あるいは業者が一般的にあまり不利益にならないように、できるだけ軍と折衝して、契約の一つの基準のようなものをつくりたい、こういう意味で契約の一般方式、あるいは一般条項、あるいは特殊条項というようなものを相談の結果採用していただいておる。そして多くは大体この方式になつていると思いますが、しかしこれも当初、完全に目的を達するためには、いつまでかかつたらきまるかわからぬような状態でありましたし、すでに時日も大分過ぎておりますから、まずまずこの程度で一応がまんして発足しようということで、今の契約に入つたわけでありまして、まだ必ずしも満足しているわけではないので、今後悪い点があれば、できるだけ是正する努力は、調達庁としてすべきであろうと思います。  なお、個々の契約について、業者側から見て、あるいは契約の解釈の仕方—契約のりくつでなしに現地における実際のやり方がどうも悪い、そのために業者が非常に不利益をこうむつておるというような問題、その他業者側としていろいろ不満足であるという場合に、異議の申立てを出していただけば、それに対して調達庁としてはできるだけ実情を調べて、なるべく有利にといいますか、公正な解決策を出して合同委員会においてきめてもらう、こういう意味においては、現在の契約のもとにおいても、調達庁としてはその範囲において介入ができるわけであります。私どもの今の立場としては、これによつて、できるだけたくさんの業者を有利に導いて行きたい、そして現実に損をするような状態になれば、なるべくその損を回復して積極的に利益をもたらすような努力をいたしたいと考えております。
  128. 赤松勇

    赤松委員長 この際関説明員から、外務省の態度につきまして御説明を願いたいと思います。
  129. 関守三郎

    ○関説明員 御説明申し上げます。法的根拠と申されますが、私は法的根拠が行政協定のどこにあるかというようなことは、条文を見ないとはつきりわかりませんが、法的根拠はあつてもなくても、事実上困ることは何とかしてやらなければならぬ、こういうふうに考えております。そこで今のお話は、やつてみたのでありますが、こういう理由で米軍は非常に難色を示しておる。一つは、行政協定そのものにおいて、直接調達ということははつきり認められておるのであります。さらにもう一つの理由としては、米軍としても、予算の使い方については向うの法律がある。それで業者と直接契約ができるようなことについては、なるべくいろいろな業者と話合いをして、一番値段の安いものからやつて行くというふうな仕組みになつておる。従つて、これを特に日本についてのみ、民間を相手として契約が履行できる仕事について、特に政府を相手として政府との間に契約を結んでやるというようなことは、ちよつといたしかねる、こういう話でありました。そういうような理由から、話合いはやりましたが、その後進展していないのであります。  それから、具体的にいろいろな点で思わしくない点があることは、私ども十分承知しておりますので、今調達庁の方から御説明がございましたが、これは結局金の面に帰着することが多いのでございますが、そういう問題につきましては、調達調整委員会で—話合いが非常にひまどるので恐縮でありますけれども、いろいろなまずい面について、最近は相当改善されて来ております。従いまして、今後もそういう面におきましては、個々の問題を具体的に取上げて、改善するように話をして行きたいと思います。いきなりこれを政府間の間接契約の方式に切りかえて行くということは、現在のところでは、非常にむずかしいのじやなかろうか、こういう印象を持つております。
  130. 記内角一

    ○記内政府委員 ただいまの参考人の方の御意見について、あるいは直接の説明にはならないかとも思いますが、私どもの考え方といたしましては、従来修理特需というものは、やはり一種の輸出契約であるというふうに考えまして、日本の外貨獲得の面から、ぜひこれはできる限り有利に多額に契約を締結し、それの完遂を期したいというふうに考えておる次第でございます。ただ事の性質上量が—ことに作戦の関係どもつたでありましようが、非常に大量に、しかも短期間に修理をして納めなければならぬというふうな場合が、従来非常に多かつたかと思うのであります。そういう要請に対しましては、そのあとの仕事が継続するということを考慮に入れまして、許される範囲内において—量の多量はけつこうでありますが、それが継続して流れるように注文が来ることを望んでおるわけであります。もし少量の場合におきましては、納期をできるだけ延ばしてもらい、それによつて契約の当事者である修理業者が、仕事の繁閑によつて非常に苦しむということのないようにいたしたいと考えまして、そういう考え方のもとに、米軍といろいろ折衝をいたして参つたのであります。ただいま参考人の申されるのは、おそらく車両関係の特需が中心だつたかと思うのでありますが、御承知通り朝鮮事変が終結いたしましてから、戦闘行為の行われておつた当時の厖大な破損車両が、漸次減退したということから修理の打切りが逐次現われて参つたということに相なつておるわけであります。われわれとしては、今後におきましても、今申し上げたような観点で、できる限り日本の実情に合つたように、一時に大量の注文が来て、しかもそれを短期間に納入するというふうなことのないように、いわゆる継続事業として流れるように仕事ができるようにという考え方で、今後とも先方と折衝して参りたいと考えております。  なお、個々の契約の賃金と申しますか、修理代金の問題につきましては、これは直接調達という関係もありまして個々の契約業者と米軍との直接契約に相なつておりまして、そのものには直接政府はタッチできないわけでありますが、ただいろいろな間接費、直接費、その計算の方式等につきましていろいろ問題があるようであります。またその契約の量の計算におきましても、いろいろ問題があるようであります。そういう面につきましては、できる限り業者の困らないようにということで、契約調停委員会あたりにおきまして先方と折衝して、できる限りこちらに支障の起らないような方式に持つて参りたいということで、努力いたしておるような次第でございます。
  131. 川内文一

    ○川内参考人 具体的な事例について申し上げたいと思います。前回の委員会におきまして調達庁から御報告がありました契約期間内の特需の打切りにつしては、特別退職金を出すという協定が米軍との間に結ばれたということでございますが、私どもとしましては、これに対しては、実はあまり大きな期待を持たないのでございます。なぜかと申しますと、私どもの経営者との間に締結しております労働協約内における退職金の額そのものが低いのです。先ほども申し上げましたように、これが直用労務者の半ばに行つていない。こういう状態でありますから、これにプラス・アルフアするとしましても、そのプラス・アルフアが五〇%とか一〇〇%とかいう大きなものになる。それを米軍が承認するということは、常識としてちよつと考えられません。従いまして、私どもがこの協定について大きな期待を持ち得るようにするためには、大体次のような条件が必要になるんじやないかと考えます。第一に、特別退職金の金額にある基準を設ける。これはパーセントで示されるか、あるいは直用並にするというふうな字句によつて示されるか、いずれにしましても、ある基準を設けること。さもなくば、業者が米軍と契約いたします契約単価の中に、業者がわれわれと直用並の退職金を出せるような協定を結び得るような金額を単価の中に織り込んで行くということがなされなければならないと思います。第二に、契約期間内の打切りだけでなく—私どもの場合、通常一年が契約期間でございますが、契約期間完了時の打切りについても、これが拡大適用されるということでないと、私どもの不安はなくならないわけであります。  以上のような観点からしまして、非常に調達庁にはお世話になつておりますけれども、この協定そのものについては、そう大きな期待をかけ得ない。昨年以来の修理特需の削減におきまして、業者はそれぞれに米軍と単価改訂の交渉をいたしまして、被整理者に対しては、特別退職金なり一時金というものを出しております。これは金額にいたしましてまず五千円、八千円という程度であります。このたびの協定は、ただこれを成文化し、それを基礎づけた。従つて、今後業者が米軍と交渉する際には、これによつて非常に交渉がしやすくなるということは事実でありまして、その点まことに感謝しているものでありますけれども、私どもの希望を満たすためには、この程度の協定では、それほど大きな結果は得られない、これが実情であります。
  132. 山内隆一

    ○山内説明員 ただいまのお話を伺いまして、そんなものかと私も疑問を抱いたわけでありますが、私も契約調停委員会に出ておるわけではありませんので、きわどい話合いなり解釈がどうかということについては、あまり確定的なことを申し上げ得ないと思いますけれども、作業量の削減の中で、確定契約の場合に削減をされたというときと、契約の全面的打切り、こういうような軍の都合による整理といつたような結果になつた場合、あるいは軍による打切り補償の対象として退職金を考えるというような場合には、必ずしもその額に制限されずに、適当な額の話合いをする道があるのではないかと思つております。それ以外の場合につきましては、なるほど労働協約など一般の場合には、わずかしかコストの中に入れてないとか、あるいは積立金がわずかであるという場合におきましては、どこまでも労働協約できめてある額の範囲だという制限を受ける場合もありますけれども、今の二つの場合には、それによらずにやれる、かように考えております。  なお、ちよつとお断りしておきたいことは、ほんとうは、きようは契約調停委員会の主査になつている人に直接出てもらつて、そういう方面のご質問にお答えするように実は考えておつたのが、ちようど運悪く前からの約束で、きようの午後一時から夕方まで契約調停委員会があるので、遺憾ながらその主査の人が出席できないことをおわびを申し上げておきます。
  133. 赤松勇

    赤松委員長 参考人の方で何か御発言ありますか。
  134. 細貝義雄

    ○細貝参考人 契約調停委員会の協議の内容であります。先ほど関次長の方から、非常に時間がかかることはかかるけれども、その結果については相当の成果があるという御発言がありました。なるほどある程度の成果につきましては、私どもとしても認めますけれども、非常に時間がかかります。そのために、たとえば私たちの例をとりましても、昨年の六月ごろの問題が今年の初頭に解決するというような状態のために、非常に労使間に無益なトラブルが起きる。こういうことは何に基因しておるかというと、行政協定によつてきめられてある直接契約のために、政府がこの問題に対して現実的な介入ができない、こういう事態のために起きる。業者が卑屈になるという態度が、この面を非常に表わしておる。いかに業者を督励されても、作業をやつておる業者が強硬に出た場合には、作業を打切る、キャンセルという問題を中心にして争いに入るために、しばしばこの席において私たちが聞いておるように話が実際の問題として起きていないのが実情であると申し上げたいと思います。
  135. 川内文一

    ○川内参考人 ただいまの発言に関連しますが、要するに私どもは、現在の契約方式である私契約のもとにおいては、私どもの希望するような交渉を政府が米軍とやつてもらえないので、公契約にしていただきたいのであります。調達庁も、先ほどこれが好ましいと言われましたけれども、しかもこれが実現できない。これは私ども考えますのに、先ほど関次長からも触れられましたが、要するに行政協定にひつかかつて来る問題であります。また一方においては、私どもいわゆる基地内に働いておる特需労務者にとりましては、日本の労働法規というものも完全に適用されておりません。こういう事態も、何から生ずるかと申しますと、やはり同じく、行政協定内の米軍の施設に対する管理権が、日本の労働法規よりも優先的に考えられているということに基因します。そのように、私ども関係したあらゆる問題は、根本的には行政協定によつて左右されておる、こういうふうに考えております。従つて、私どもがこういうふうな要請を、唐突のようではありますけれども、これを政府に対して行うよりほかないということは、御理解願えるのではないかと考えます。
  136. 赤松勇

    赤松委員長 関さん、この問題について外務省としての、何かもう少し希望的な見通しというものはありませんか。
  137. 関守三郎

    ○関説明員 そう一概になにされると、確かに労働法がどこが行われていない、いるということで、またこれがいろいろな議論になりまして切りがなくなるのですが、全面的に契約の方式をかえろというようなことに話を持つて行きますと、これはどうしても—私は実際問題としては、話はしてみましたし、今後も労働省その他と御相談しましてやることにしたいと思います。しかしながら、契約の方式を間接方式にかえるというようなことは—現実に向うの方にもJPA自身を縛つている法律もあるわけです。そこまでやつたつて、なかなか話がつかないだろう、私はこういうふうに感じておるわけです。はなはだ時間もかかるやつかいな仕事ではありますけれども、具体的な問題をとらえましてこういう点は—たとえば今の特別退職金の点も、ちよつとやつかいだと思いますが、作業の打切りに関します補償の問題なんかも、向うの方でも最初相当かつてなことを言つてつたのが、契約調停委員会で話合いをしますと、なるほど時間はかかつておりまけけれども、相当な成果は上つて来ておる。これは御承知通り、業者の問題としてではなくて、むしろ政府と米軍との間で話合いをしておるのでありますが、その結果としては、若干の成果は上つておる。私は全般の行き方としましては、現実的な行き方としてはやはりそういう方式で、めんどくさいし、しやくにもさわりますけれども、そういう具体的な問題をつかまえて一歩々々話合いで解決して行く、それ以外には、私は現実的に考えまして、あまりいい方法はないんじやなかろうかというふうに考えておるわけでございます。少しいくじがないようでありますし、御期待に沿わぬようなことを申し上げて恐縮でありますけれども、私は前からこの点につきましては、必ずしも行政協定に書いてあるからというだけのことではなくて—向う自身にもやはり私契約で行ける場合には、できるだけ私契約で行けということに法律がきめてあるそうでございます。これは当然そうあるべきものだと私は思うのでございます。従いまして、そこまでやめろということを話しても、なかなか話はつかぬだろう、こういうふうに考えるわけであります。
  138. 日野吉夫

    ○日野委員 関さんに伺いたいのですが、この問題について特調としばしば話し合つたが、山内さんは、重大な問題ではつきりしたことは言えないということで、ずつと結論を得ないのですが、今の私契約を公契約にしてほしい、こういう要望は非常に熾烈なんです。今の特需関係の問題は、大体ここに禍根があると見なければなるまい。出血受注とか納入の遅延とかいろいろ問題を起しておる。こういう根源は、やはり私契約で業者と向うの機関とが自由にやつておる、しかもこれは対等の契約じやなしに結ばれるというところにあるわけで、それがひいては労働者の問題になり、作業の打切りも起れば、いろいろな問題が起つて来るのだがきようの毎日新聞を見ますと米国はMSAに伴う強力な発注機関をつくろう、これでもつて計画的な発注をやる、こう言つておるようであります。財界等でも日本の政府は何ら手を打つていない、手遅れだというような不満を持つておると書いてある。アメリカはこの発注をどこままでも高度に計画化す。向うが計画的な発注をやるということになれば、やがてこの次に問題になりますのは、こつちの受入れ態勢も、当然計画的なものになつて行かなければならぬ。経審の方で出している資料を見ますと、やはり物動計画までちやんと用意してこれに対処して行こうと考えておる。こういう段階になりますと、従来の私契約ではとても対抗できないんじやないか、ことに、このごろ問題になつております特需の見通しも一向立たない。これはMSAが交渉中だから遅れたんだというこの間の特需課長のお話ではありますけれども。やがてこれが計画化されて、一つの計画の上に乗つてやられるということになれば、勢いこれは公契約になつて行かなければならぬのじやないか。物動計画等を立てる場合に、今のような受注の一定しない状態、先月は幾らで今月は幾ら、まるで話にならぬ状態では、国内の計画経済は立たない、物動計画はとても立つて行かない。むしろこういう段階になつて来れば、向うも計画的に公契約でやつてほしいという要望があるいは出て来るかもしれない。そういうことも考え合せますと、やはり公契約にすべきものだという考えで先方に折衝するならば、案外あなた方が心配されておるようなものでなく、これは改め得るんじやないか。いろいろ特需に関する楽観の材料もありますし悲観の材料もありますけれども、これらを総合してみて、その悲観すべきものじやない。先方は二箇年の八億の保証をしておる関係もあり、今年六月の会計年度前に一億ドルぐらいの特需の発注をしようとまで言つおる。MSAの交渉が長引いた結果として遅れているかもしらぬが、もうすでにきまつた今後は、用意してあるいろいろなものが一時にどつと出て来ると、これを受けて立たなければならぬ。その態勢は、今までのような私契約ではなかなか計画に乗らない、こういう情勢等をにらみ合せてみると、やはり公契約に直すのが本筋でそうすることが将来の計画経済の上から妥当だ。これは努力次第では、先方も応ずるのじやないかというふうに考えるのですが、あなたのこれに対する考え方と、外務省の国際協力局がもう一段と本気になつてかかつたら、これは出るのじやないか、そうすることによつて、いろいろの問題が防止できるのじやないかと思うが、あなたの見解をもう一歩掘り下げて伺つておきたいと考えます。
  139. 関守三郎

    ○関説明員 最初の点でございますが、私は新聞記事の出たソースがどこであつたかということ、またどういうつもりで言つておるかわかりませんが、そこに計画化ということを申しておりますのは、今の兵器の修理の関係ではなくて、弾丸類のいわゆる兵器そのものの生産に関する方じやなかろうか。これにつきましては、御承知通り非常に向うが計画がなくて生産が断絶するということでわれわれ労働組合からもお話を承りましたし、企業家の方からもお話を承りましたが、政府部内でもみな意見が一致をしあおります。もう少し計画的にやれということを要望しておつたのであります。多分それに即応するようなことになつて来ておるのではなかろうかと思います。それからして必ずしも物動とかそういうところまで及んで来るものかどうかということは、私は若干疑問に思います。しかしながら、われわれといたしましては、できるだけ特需の関係に従事しておられますところの労務者の方方にも御迷惑にならないようなかつこうで特需契約が遂行されるということにきましては、当然非常な関心を持つておるのでありまして、その意味におきましては、今後とも—先ほど申します通り、必ずしも自信はないのでございますけれども関係省とも話をいたしまして、さらに米軍との間にできるだけの話合いをつけるように努力して行きたいと存じております。
  140. 日野吉夫

    ○日野委員 これは自信を持つてつてもらわなければ困るのですが。それならば今のは修理も含めまして、弾丸や一般の特需関係に当てはまる。今年の日本に供与される武器は、米軍が今まで使用していたもの、むろん朝鮮戦争等で使用したもので、今保有しているものが供与されることになるのじやないかと思うのですが。小麦の代価の一千万ドルは日本に供与する、あとの四千万ドルは完成兵器をもつて供与する、こう言つておりますし、その他の武器の供与も完成兵器をくれるというが、あの計画を見ますと、現に保有している、あるいは東南戦争で使つた武器をくれる以外に、あまり目新しいものもないようである。そうなると、これらのものは完成兵器でくれる以上、修理をして日本に引渡すと考えられるのだけれども、これはそう考えてよろしいのか。そうなれば、当然修理、特需というものがここに出ると考えられるが、この点についてあなたのお考えはどうなんですか。
  141. 関守三郎

    ○関説明員 私ちよつとはつきりしたことをお答えいたしかねるのでございますけれども、一部のものは当然やはり修理した上でくれるものだろう。しかしはつきりしたことは、いずれもう少し調べてからでないとお答えできませんが、ある種のものについては、やはり日本で修理した上でくれるものもあるということは聞いております。
  142. 日野吉夫

    ○日野委員 この問題は、どうも先刻からしばしば文句を言うような形になるのですが、われわれさつぱり内容がわからぬでいると、いろいろ雑誌や新聞等に詳しい資料が出されて、それらを拾つてみると、結局そういうことになるんじやなかろうかという判断をするよりほかないのでありますが。やはりある種のものは委員会の審理の都合上、資料を出してもらわなければ困ると思います。大体まだ一切秘密にされているけれども、相当の計画と話いが進められているのではなかろうかと思うのであります。そういうことでいるうちに、日本の特需産業は、日本経済の再建の一ころは花形産業であつた、そうしてまた貿易の関係等から見ましても、今、日本産業は特需を全部放棄して自立経済をやろうといつても、なかなか無理なのでありまして、もうしばらくはこれを重要に考えなければならぬ、これは重大な外貨獲得の一つの要素になるのでありますが、これに対する保護、あるいは今度のMSA関係の内容は、戦時中と大分かわつて来ます、従つて転換の指導もしなければならないだろうし、いろいろのそういう問題が起つて来る。今のままでほつておくと、いろいろの思惑で先走つて設備をしたり、そうしていろいろの無理なことをして特需産業は非常に混乱して行く。現に日平産業のごとき、いろいろ問題を起しておる。この間の新聞によると、最大の原因は過剰投資だと、こう言つておる。判断の資料を与えられないからこういうことになるのでありますが、過剰投資をやつて非常に困つておる。あるいは先行きの見通しが立たぬから無理な出血受注をしたり、こういうことで混乱する。秘密もある程度守らなければならぬでしようが、さしつかえのない点は、そう臆病でなく、大胆にここに発表されて、そうして次に特需産業はどこに行くべきか、どうすべきかという指針を与えて指導してもらわなければ、日本の特需産業はほとんど破綻に瀕してしまう。こう思うので、特に一応明確な指針を与えてほしいということと、重大な今の私契約を公契約に切りかえるとか、今まで日本の外貨獲得のために大いに活躍したこれらの労働者に不安を与えないように保護政策をとる、こういう一つの方針を立てなければならぬので、ひとつ臆病になつて先方の鼻息ばかりうかがうのじやなしに、堂々と計画を持つて、自信を持つて先方に折衝するならば、これらの問題の解決の道があろうと思う。ひとつ外務省の国際協力局の方では、これらの問題に自信を持つて折衝をしていただきたいと思うので、その希望を申し上げておきます。
  143. 井堀繁雄

    井堀委員 特需の問題につきましては、再々特需の実態についての資料を要求いたしておるのでありますが、遺憾ながらまだ資料を得ることができないので、審議に非常に支障を来しておるわけです。このことは前会にも希望しお尋ねをいたしておいたことでありますが、御案内のように特需の関係は、一つには、大きな国際的な条約の裏打ちをする問題であるし、一つには、日本の独立を事実の上で日本民族が誇りを持つて自認することができないという大きな問題にもなつておるわけであります。このことについては、今後どうなるかという問題よりは、当面している問題としては、大口小口を合せますと、すでに日本産業の中における、重要な地位を占めて来たし現在も占めておるわけなのであります。しかも、それがドル決済による国際収支の上に果した役割は、きわめて大きな足跡を残しておるわけであります。それが結果から見て、日本の労働者を奴隷的条件のもとにおいて特需を果したということになりますと、これは日本民族にとつては、はなはだしい屈辱になるわけであります。そこで、今まで問題になつております事実問題についてお尋ねをいたしましても、はつきりした回答が得られないということは、この点の解決の上に、今後も大きな障害を残すことになるのでありますが、きようは幸いに各関係者の方々がお集まりでありますので、同時にそれぞれの立場から見解を伺おうと思うのであります。     〔委員長退席、持永委員長代理着席〕  第一に、私は調達庁の立場というものはこういう問題を総括的に処理できる立場にあると考えてお尋ねをしたわけでありましたが、今までの答弁によりますと、ただ特需契約の紛争や、あるいは特需契約の部分的な問題の処理にあるように答弁されておるわけであります。それにしても、私が要求いたしました特需の実態というものを把握しないで、たとえば限られた契約の紛糾があつたとしても、今日の特需というものは、決して部分的な問題だけで結論を出すことは困難だと思うのであります。日本経済の全体の姿と国際的な諸条件の中に、日本が有利な受注契約を締結することができるようにバツクするのが主要な役目だと私は思うのであります。こういう点からも、全体を把握しないで具体的な処理ということは、決して完全な処理はできないと考えておるわけであります。この点についてお答えを願いたいと思います。  次に、特需関係を日本経済の中で、通産省は従来どのように判断されて処理されて来たか。というのは、先ほど来問題になつておりますように、占領下にあつては、契約は間接契約をして、独立後においては、もちろん日本の商人と軍との間に自由契約で受注関係を結ばれることは、一応もつともに聞えるのでありますが、形式的には独立はいたしたものの、経済的にはまつたく従属的な地位にあるということは、残念ながら認めざるを得ないのであります。ことに、特需は軍需関係であり、あるいは軍事作戦につながる労務提供であります。でありますから、こういうものを常でさえ脆弱な基盤の上にある—ことに中小企業、零細企業等が、私契約で軍との間に一体公正な自由契約ができると考えておいでになるのかどうか。この点は、たびたび具体的な事実について問題にいたしておりますように、われわれは出血受注という言葉を、このくらいはつきり認識させられたことはないのであります。それは結局において、基地内における労務提供の際における事実としてあげておるように、日本の弱い企業に対しても、労働三法を強制することは当然であります。連合国の軍需のために日本の労務を提供したり、あるいは日本の労務もしくは日本の労働力で需要を満たすということになります際に、労働条件を犠牲に供して、しかも労働保護法の線以下において受注をするというようなことが事実であるとするならば、これは日本の民族にとつては、まことに耐えざる屈辱であるといわなければならぬ。そこでそれが法律的にどうであるというようなことよりも、こういう事実が生じておる場合において、一体どうしてこの問題を解決するかということは、日本政府として当面喫緊の処置を要すべき事柄であると考えるのであります。この点について、通産省は、従来特需については手放しで業者と軍との契約を是認され、またその上に立つて通産行政を行つて来たのであるか、また今後もそういうものに対してそのままで行こうとするのか。本来ならば通産大臣からお答えをいただくのが妥当でありますが、たびたび要求いたしてあるにもかかわらず、通産大臣所用のゆえをもつて出席を得られませんので、局長から御答弁願いたい。  それから同じ事柄でありますけれども、労働省についても、このことについては労働大臣を通じて答弁をいただくつもりでありましたが、労政局長がお見えでありますから、労政局長からも、そういう奴隷的な、もしくは労働者にしわ寄せされるような出血受注というものは、私どもは事実をわずかしか経験いたしておらないのでありますが、たとい一つでも、そういう事実があるとするならば、そういう状態の労働関係をどうして解消されようとするか。これをこのまま今後見送るつもりであるのか、この点についての見解を、それぞれの立場から明らかにしていただきたい。
  144. 山内隆一

    ○山内説明員 ただいまのお尋ねの調達庁に関する分についてお答え申し上げます。調達庁の所掌事務を調達庁が処理するにあたつての心構えと申しますか、ただいま御教示になりました点は、私どもつたく同感であります。やはり仕事は特需のうちの一部でありましても、考え方として、絶えず全般をながめて、大所高所から処理するということが、結局適切なる結論を得ることになるであろうと考えまして、私どももそういう気持で執務をいたしておるわけであります。ただ、非常に失望の念をお与えしたような結果になつておりますのは、井堀委員は調達庁が特需についてもつと広汎に処理しておるというふうにお考えになつてつて、非常な期待をもつて、私どもといろいろ話合いをして参つたところが、調達庁の仕事の範囲というものは非常に狭いというわけで、自然御希望の資料等も満足に差上げることができなかつたというところに、私らの仕事のとり方について、若干の御不審をいただかれただろうと思います。申すまでもなく、制度上の調達庁のやつている仕事は、特需契約の上の不満なりあるいは問題がありまして、その異議の申立てがあつた場合に発動するということになつておりますけれども、そういう異議の申立てなんかにならないように、多少の問題があれば、積極的に調べるというか、あるいは情報を得て、なるべくそういう問題にならないうちに未然に防止するというところに理想があるわけでございまして、そういう意味でも仕事をしております。なおまた、不服の申立てがありました場合に、適切な解決をするためには、当然その種類の仕事について、一体普通の国内の契約ならばどうあるべきか、あるいはコストあたりはどうなるのが正しいか、いろいろの点から総合的にそういう問題についての研究をして、そして正しい解決法案はどうなければならぬかというふうに検討して参つしおります。これは日本だけではありません、アメリカさんの委員も四人出ておりまして、あるいは私どもの方よりもつともつとこまかに調べて反駁する材料を持つておりますので、これに対抗するためには十分勉強してやつておるつもりであります。  なお、根本の問題になりますと、契約条項がはたして適当かどうか、まだまだ不満足な点も多々あるわけでありまして、今まで一応解決がついたものにつきましても、いろいろの点から各業態々々について普通の契約を十分調べて、一番妥当な考え方で折衝したわけであります。なお今後まだ不十分の点については、個々の問題を解決するよりも、もつと前提において契約条項を直す余地があるならば、なお直して行きたい。そういう意味においては、もつともつと各業態の契約のやり方等を研究しなければならぬというようなわけで、調達庁の狭い範囲の仕事をやつて行きます場合においても、適切な仕事をするためには、あらゆる点から、大所高所からながめて検討して行かなければなりませんので、ただいまの御教示の点も十分体しまして、決して一部の仕事だから一部だけで満足して、他の仕事は知らぬ顔をしておるというようなわけではない、十分広汎に勉強してやつて行きたいと考えております。  なお調達庁のやる仕事は、なるべく遠慮なしに、問題がありましたら出していただくことが、私ども実は商売としても繁昌するわけで、それがひいては特需業者を有利に導くことになりますので、なおひとつ御鞭撻、御指導を願いたいと思います。
  145. 記内角一

    ○記内政府委員 特需につきましての通産省の態度でございますが、われわれは特需の問題が起きました当時から、主として機械産業を中心にいたしまして、日本の経済界が相当萎靡沈滞しておつた従つて無方針にこれを受入れる場合におきましては、仕事のない業者が多数これに殺到いたしまして、いわゆる受注競争を行つて赤字になつて自分の首を絞めるような結果になるのじやないかということを心配いたしました。従つて、行政協定を結ぶ際におきましても、できる限り直接調達でなくて、間接調達の方式をとるように交渉しておつたわけでございますが、先ほど外務省からの御説明にありましたように、向うの法律の問題もからんで参りまして、結局直接調達という結果になつた次第であります。しかしながら、われわれといたしましては、関係の業界にはしばしば警告を発しまして、赤字受注にならぬようにということで督励をいたしておりますし、また同じ受注におきましても、原価計算の方式に際しまして、日本の方式では当然入れるべき経費を経費と見ないというふうなことで、向うの計算によれば黒字になるが、日本の計算によれば赤字になるというような場合におきましても、計算方式をかえてもらうというふうなことに努力をして参つたのであります。ただ、何分にも直接調達でありまして、公開入札あるいは指名競争入札によつて安いところに落札する。またその上にいわゆるネゴシエーシヨンと称しまして、さらにその上値引きさせるというふうなことがしばしば行われたのであります。これに対しまして、業界の仕事をあせつてとるというような意味合いから、自然に赤字受注に陥りがちになる傾向があつたことは事実であります。ただ朝鮮事変直後におきましては、現実におきまして戦闘行為が行われて、相当な消耗戦が行われ、それに対する緊急調達というふうな関係がありまして、どちらかと申せば赤字受注の問題は少かつた。ただ朝鮮事変が終結いたしまして消耗戦が減つて参りますと、自然日本の経済界全体としても、いろいろ経済的な仕事が減つて参り、また特需自身もいわゆる緊急性を失つて来る。従つてこの辺から漸次また赤字の問題が議論されるようになつておるわけであります。ただ最近における注文につきましては、どちらかと申しますと、朝鮮事変中の当時とは違いまして、向うも比較的長期にわたつての注文が発生するように注文をして参るようになつたのであります。自然これを頭に置きまして受注ができるような態勢に漸次なつて参りました。従つて競争関係さえ排除すれば、この赤字受注ということは、漸次解消できる態勢にはあるわけであります。ただ、何分にも先ほど来申し上げておりますように、直接調達の関係がありますので、業界の競争意識の余りに、この赤字受注の問題がさらに論議されることになつて来るわけであります。われわれといたしましては、できる限りそういうことのないように、業界を指導して参つておる次第でございます。さらに、たとえば工場を受注のために新設するというふうな場合におきましても、今後の日本の産業界の全体とにらみ合せまして、それに合せるように生産設備を整備させるということを念願いたしておりまして、この受注のために厖大な設備を新設し、そのために、受注がとまつたあとで非常に苦しむというふうなことのないように、注意をいたしておるわけであります。われわれといたしましては、今後におきましても、日本の防備態勢また日本の一般産業の態勢とにらみ合せまして、過大な設備なり過大な受注なりということの起らないように、調節をして参りたいと考えておる次第であります。
  146. 井堀繁雄

    井堀委員 通産当局としましては、過去の特需については、非常に変動の多い受注でありますから、把握に困難な相手方だということは、われわれもよく了承しておるわけであります。それだからといつて、受注を拒むことはもちろんできないわけでありますし、事実上は二つの悩みに当面して、日本の業者にいたしましても、ことにそのもとに労働する者にとつては、どういうすべを講じても、みずからの地位を守ることの不可能な条件の中に置かれておるということは、特需の一つの因果性だといえると思うのであります。なるほど、業者の不正な競争を避けさせようと、外部からいかにあせりましても、日本の現状からいえば、特に今日のように金融の枯渇した時代において、特需の一つの特徴ともいうべきものは、支払いの点において確実である、受注を受けることによつて金融がより円滑になるといつたようなところに存外大きな魅力を感じて、もともとコスト割れをした受注をしているという事実を、われわれは方々で承知しているわけであります。これを阻止しようとすれば、今のような競争入札もしくは指名入札といつたような形で受注をさせることは、みすみす日本の業者を死地に陥れることになることは必至だと思う。局長の今の説明によると、アメリカの国内法にしいられて、余儀なくそういう直接契約に切りかえざるを得なくなつたということでありました。また外務当局も、そういう特需に関係した条約の際に見解を明らかにされていると思う。もしそうだとするならば、これは結果として必ず低労働条件、すなわち労働者にしわ寄せして企業を継続する以外に道がないわけであります。こういう事実をお認めになつて、ただ単に過大な設備を監視する—しかしこのことも、特需の性質からするならば、相当量が発注されて来る場合に、期限がなければいいが、納期を定められて発注される場合には、それに相応するだけの設備を持たなければ、そういう契約を結ぶことはできない。でありますから、過大な設備を警戒するといつてみても、これは不可能なことに近いのであります。でありますから、事実上は、日本の通産行政というものは、特需に関する限りは弱肉強食やむを得ぬ、連合国のなすがままに見送るというふうにしかとれないのであります。今後特需が全然なくなるのか、あるいは先細りではあるが相当期間続いて行くのであるか、あるいは先ほど日野君からちよつと質問されましたが、MSAとからんでどういう形に出て来るかというようなことについては、われわれはまつたく予測ができないわけであります。こういうようなことについては、通産行政としては全然目をつむつて行くわけに参らぬと思う。こういうものに対する通産省の通産行政に対する—これは通産大臣でないと答弁のしにくい事柄が相当あると思いますが、しかし局長の立場において、こういう問題に対する見解をひとつつておきたい。
  147. 記内角一

    ○記内政府委員 ただいまのお尋ねでございますが、われわれといたしましては、特需の態様につきまして、今の日本の産業のそのままの姿で特需を受入れる部門と、新しく設備をふやし、人を入れなければやつて行けない部門と、両方あると思われるのであります。前者につきましては、これは特需という関係ではありますけれども、ことに現在の段階におきまして、これから行われる特需等を見ておりますと、大体が海外からの輸出貿易の引合いがあつたものと同様のものと見てさしつかえないじやないか。従つて、その海外に対する輸出が終りますと、その仕事はなくなるのであります。これは何も特需に限つた問題ではありませんで、いやしくも企業家が事業をやつて行きます際には、ことに注文生産でやつて参ります以上は、その注文の納入が終りますれば、あとの仕事はどうするかということは企業家が当然考えなければならない問題でありまして、これはただ単に特需の問題に限つたことではないのであります。ことに間歇的に出て参る輸出貿易などに携わつている者につきましては、やはり大きな波を打つて参りますし、その繁閑の波の間をいかにして仕事をつないで参るかということが、事業家の手腕、才能であり、またそれに応じて労働組合、労務者も一緒になつて解決しなければならぬ問題だろうと思うのであります。従いまして、特需についてだけ特殊の考え方をするというよりも、特需を受ける事業家自身が事業家としての才能を十分に発揮していただくことが、まず第一に必要だろうと思うわけであります。  第二の場合のように、たとえば現在問題になつております銃弾の問題でありますが、御承知通り戦前には相当な設備を持つておりましたが、終戦後すつかり破壊されてしまつております。従つて、これから銃弾をつくろうといたしますれば、どうしても新しい設備を持たなければならぬ。そういう際においては、ただいまの受注は、相当大量ではありますが、それを注文してから半年目に納入を始めて一箇年間に納入してしまう、あるいは一箇年半に納入するというふうな相当な期間を区切つての契約になつているわけであります。そうなりますと、新しい事業を興すということになつて参るのでありますが、これもまた事業家が仕事を始めるにつきましては、およそそういうことを頭に置いて事業設備を行い、さらにそれに基いていつまでの納期にどれだけ納めるかということを計算して参るのが当然でございます。従いまして、この場合においても、そういう設備の増設につきまして、われわれとしてもできる限りの応援をし、めんどうを見、またその契約ができるように応援はいたしますが、その基本は、やはり企業家自身がそれを頭に置いて考えてもらわなければならぬ問題であろうと思います。ただ、その際におきまして、たとえば銃弾の注文がなくなつたという際に、あと引続いて銃弾の注文があるか、あるいは銃弾の製造設備がほかの設備に転用できるかということになつて参りますと、銃弾のような設備につきましては、ほかに転用の道がございません、専用機械として行われているのであります。従いまして、銃弾の工場を新設する場合におきましては、その注文がなくなつても、たとえば日本の保安庁の方面の注文がある程度来るかどうかということを頭に置きまして、その規模をきめて参りたい。またそういうことを頭に置いてアメリカの注文自身につきましても、同じ一億発の銃弾の発注でありましても、納期を一箇年といつているのを、それでは大き過ぎるから一箇年半に延ばしてもらいたい、あるいは二箇年に延ばしてもらいたい、毎月の生産高はこのくらいにしてもらいたいというふうなことを一応頭に置いて検討いたしまして、折衝をいたし、自然それに応じた生産設備態勢を新設するというふうな考え方をとつているわけであります。従いまして、その限りにおきましては、たとい特需としての注文が将来においてとだえましても、     〔持永委員長代理退席、委員長着席〕 何らかの形においてその設備が無用の長物にならないようなことを頭に置きながら考えて参つておるわけであります。従いまして、今後の特需の調達につきましては、先ほど委員の方から御指摘がありましたように、向うにおきましても、やはり計画と申しまして、われわれが期待するほどの計画ではないようでございますが、大体ある程度の計画的な、一年二年というふうな長期にわたる納入の注文が出て参つております。従いまして、無用の摩擦が起きる場合は少いかと思うのでありますが、ただ残念ながら修理特需につきましては、ちようど朝鮮事変の終末期に際会しまして、その混乱期の跡始末のようなかつこうで問題が出て参りました。従いまして、そこに非常にやつかいな問題が起きましたし、また修理の特性といたしまして、どの程度の量の修理があるかということが予測しにくかつた、また予測に反して早目に引揚げられたというふうな問題が出て参つておるわけでございます。従いまして、われわれといたしましては、特需一般につきましては、今後そういう問題はあまりないでありましようし、またあるとすれば、それは業者自身の才能の欠陥がある場合ではなかろうかと思うのであります。特需のみについて特殊な措置を講ずる—もちろん今後の日本の産業界の全体の立場において、これを育成するということはやつて参りますが、特需だからということで特殊な取扱いをするということは、いかがかというふうに考えておるわけであります。ただ修理特需につきましては、今言つたようなことで、ちようど過渡期にありましたので、過渡期の整理の段階に混乱を生じたということについて、非常に遺憾に存じておる次第であります。
  148. 井堀繁雄

    井堀委員 特需の関係につきましては、それぞれの官庁のお立場からお答えいただいたわけであります。その立場持場によつて、特需に対するそれぞれの方針があるようでありまして、必ずしも一貫した方針がないことを、われわれははからずもこの機会に知ることができたわけであります。たとえば、ただいまいただきました通産省のお答えによりますと、特需であろうと、それは注文生産に対する企業者、すなわち経営者の能力と責任において処理すべき限界のものであるという見解が、きわめてはつきりいたしたのであります。このことは、私どもとしては多少疑義を抱くものでありますが、一応そういう方針であるといたしますならば、またここに労働問題の処理に対する一つの方針が明らかになると思うのであります。  これは一応この程度にいたしておきまして、いま一つの問題は、特需の関係は、あくまで日米のきわめて外交上重要な関係の中に動いておる事柄でありまして、先ほどこのことについても、特需の間接契約と直接契約の利害得失について、それぞれ質疑応答がかわされたわけですが、その中で関次長から明らかにされたことは、アメリカの国内法の要請に基いて、日本政府の意図する間接もしくは国の関与する契約ということが不可能になつたという事態を明らかにしておるわけであります。ここでも、日本の特需のもとに行われております労使関係の処理というものは、あくまで雇い主対労働者の間に問題の処置がしわ寄せされて来ておる。さらに調達庁が、こういう特需に対する特別の契約関係に関与する役所でありながら、事実においては、こういう問題を処理するにはまつたく無力な立場であるということも明らかにされたわけであります。こういうように、問題が今のところ明らかになつておりますから、当面しております特需産業のもとにおける労働者の多大の犠牲は、結果において雇い主対労働者の間において解決しなければならぬということになりますと、問題は必ずしも簡単でないと思う。この辺については、本日は他の問題もございますし、政府側の都合もあるそうでありますから、後日この問題について、もつと明確に政府の見解と立場を明らかにして、その後に吉田政府の労働政策に対する適切な処置を伺つて行きたいと思います。  私は、今私のお尋ねしたことについて、確認する意味で申し上げたのでありますが、もし間違いがあれば、それぞれ御出席の政府委員の方から答弁をいただいて明らかにしていただきたいと思います。—それでは大体私の今確認した範囲内で、次回に適当な方法で政府の責任者の御出席を得てただしたいと思いますので、一応保留しておきます。  今運輸大臣が御出席になりましたので、それでは前回お尋ねをしておきました日平産業の問題について一、二お尋ねいたしたいと思います。  日平産業は、これも特需が生産の約八割を上まわるほどであると聞いておりますが、これが新聞で明らかにされておりますように、汚職問題を起しまして、そのために賃金遅払いを生じておるわけであります。約二万人の従業員が、三つの職場に雇用されております。そのうち約一万五千の従業員が働いております工場が、特需の大半を占めておるわけでありますが、ここではあの紛議が起きましてから賃金の遅払いを生じておるのであります。この点に対して、労働省はどの程度御承知になつておるか、またそのようなものに対して、どのような処置をおとりになつたかをまずお尋ねいたします。
  149. 中西實

    ○中西政府委員 便宜私からお答え申し上げます。日平産業の賃金遅払いの件でございますが、本年の二月分までは、完全に支払われております。三月分につきまして、千七百六十万円が未払いになつております。この点につきましては、まことに遺憾でございますが、会社の責任者は、この金につきましては四月中に必ず払うということを確言いたしております。今月中には支払われる予定になつております。なおその後につきまして、未払い賃金ができるかどうか、これにつきましては、目下会社側と常に連絡いたしまして厳重監視中でございます。
  150. 井堀繁雄

    井堀委員 未払い賃金がすでに起つておる事実をお認めになつた。これは明らかに基準法違反である。労働省としては、適当な処置を講じなければならぬ事態にあることは申すまでもないわけであります。この点に対する労働省の処置は、ただ経営者側から支払いを約束したからというだけで見送りになるとすれば、将来に対する遅払いは起らぬという問題についての見通しはどうですか。
  151. 中西實

    ○中西政府委員 賃金未払いの問題は、基準行政としましては、最も解決に難渋する問題でございます。そこでこの問題につきましては、とにかく会社といたしましても、賃金優先支払いの原則から極力努力しておるのでありまして、四月中に必ず払うということを申しておりますれば、一応この言、それからそれに対する努力にまつよりほかないじやなかろうか。なお今後の問題につきましては、さらにその起りました事態に応じまして適当な処置を講ずるという以外になかろうと思います。
  152. 井堀繁雄

    井堀委員 後日また問題が起るようでありますから、留保しておきます。  この機会にちよつと調達庁に伺つておきたいと思いますが、日平産業の特需は、私の調べによりますと、機銃弾の十二億円の受註が納期を過ぎておるということを聞いておりますので、キャンセルもしくは契約上故障が起るようなことがありはせぬかと思いますが、こういう点に対する何かお調べになつておることがありますれば、お答え願いたい。
  153. 山内隆一

    ○山内説明員 日平産業が非常にたくさんな特需契約を締結しておることは、承知いたしておりますが、今の状態で、契約の執行上何か問題がありますれば、私どもも絶えず注意を払つて、当然私どもとしても関与すべき場合には努力するつもりでありますが、まだ何も会社側から申出を聞いたことがありませんので、今のところは、調達庁としては何らこの方には手出しをいたしておりません。
  154. 井堀繁雄

    井堀委員 会社の方から何の申出がないといたしますれば、相手方の軍の方で、こういうものに対してもし故障等かある場合には、調達庁を通じて異議を申し立てるものであるか、あるいはいきなり経営者の方にキャンセルその他の手続をするのであるか。またそういうことになつておるとすれば、その間何かあつせんの道を講ずるとかなんとかいうことは事前にやるべきものであるかどうか、その点に対する当局の扱い方について伺います。
  155. 記内角一

    ○記内政府委員 ただいまのような事態につきましては、今までにも司令部の方から、もし納期が遅れるようなことになると発注を取消す場合があるから、できるだけ納期を完遂させるようにという注意は、公式ではありませんがございました。われわれといたしましても、できるだけこれが完遂できるような態勢に持つて参りたいと努力いたしたのでございますが、遂に先般不渡りを出して銀行取引を停止されるというような状態になりまして、目下のところでは、いつ態勢が立ち直るかということが不明の状況であります。業界の長老も仲に立つていろいろ奔走しておるようであります。また会社内部等におきましても、これの再建について努力いたしておるようでございます。われわれとしては、その成行きを注視しているという状態でございます。  なおこの機銃弾については、特殊なものでございまして、現在日本ではこれを完成する機械がございませんで、ドイツに発注しているような状況でございます。従いまして、これを他に振り向けて完成させるということは、その機械を活用する以外には道がないという状況であります。
  156. 井堀繁雄

    井堀委員 この問題は、従業員側の参考人が見えておるので、その方から事情を伺つて、さらに当局側にただしたかつたのでありますが、また次会に適当な方法で参考人の意見を伺いたい。従つて応この問題は留保しておきます。
  157. 赤松勇

    赤松委員長 本日の議事運営の都合上、日平産業株式会社の争議問題についての参考人高橋、大吉の両君は、次回の委員会に御出席願いたいと存じますから御了承願います。     —————————————
  158. 赤松勇

    赤松委員長 次に失業対策に関する件について調査を進めます。質疑を許します。大西君。
  159. 大西正道

    ○大西(正)委員 この前の委員会で、運輸大臣はお見えになりませんでしたので、船舶局長その他からお話を聞いたのでありますが、どうもその説明が的確でありませんので私ども納得できません。幸い今日は運輸大臣が見えましたので、あらためてお尋ねをいたします。十次船の着手が遅れておりまして、そのためにいろいろな問題が現に起きつつあることは申し上げるまでもありません。従いまして、各方面からこの十次船の促進の陳情、請願が運輸大臣に寄せられておることと思いますが、どういう方面からどういう理由でこの促進を陳情しておるか、これをまず初めに伺います。
  160. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 主として私のところに陳情に見えたりあるいは書類を送られたりしておりますのは、たとえば大阪、神戸、函館、そういうところの地方団体の役員の方並びに地方議会の人、商工会議関係の方、または直接そういうところに働いておられます労務者関係の人、造船業というような直接の関係者でありますが、十次造船をなるべく早く、なるべく多くしてくれ、そうして自分たちのところにも必ず割当が来るように、またできればなるべく多くその地方に来て、その地方を潤すようにしてもらいたいということであります。これには一造船所の直接の従業員だけの問題ではなく、関連産業に従事する者が非常にたくさんな数である。たとえば神戸市のごときは、造船所並びに関連産業によつて衣食する者を見ますと、市の人口の非常に大きな割合を占めておつて、神戸市の盛衰にかかわる問題であるから、ぜひこれをやつてもらいたい。神戸などは各県、市議会別々に御熱心に陳情しておるようなわけであります。
  161. 大西正道

    ○大西(正)委員 今の御説明にもありましたように、単に船舶会社のみならず、直接造船に従事するところの労働者は全国で約十万、ほかの関連産業を含めまして約四十万、非常に大きな影響があるわけであります。さらに、今お話のありましたように、造船所の所在しておるところの地方団体、これらの死活問題に関係しておりまして、熱心に陳情しておるというのは、大臣も認められた通りであります。そういうように見て参りますと、この十次船の着工の遅れておるということは、いろいろな意味において実に大きな影響を及ぼしておるのであります。それにつきまして、運輸大臣は当面の責任者として、今日いまだ市銀との話合いもつかず、その見通しも明確でないように聞いておるのでありますが、一体その遅延理由はどこにあるのか、いろいろあると思うのですが、その理由をまず運輸大臣がどのように考えておるか、ひとつお聞きしたいと思います。
  162. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 十次造船を私どもが予算に盛りましたときと今日と、いろいろ情勢がかわつて来たということが言えるのであります。私どもは、第十次造船を計画するときにあたりまして、まず金融の問題から申しますれば、市中銀行が三割、それから財政資金で開銀から貸すのが七割という、昨年と同じような割合で金を調達するという案を立てておつたのであります。当時におきまして、金融界の情勢その他から見まして、二十九年度の造船いわゆる第十次造船までは、その線で行き得るという見通しを私どもは持つてつたのであります。ところが、昨年の暮れごろに金融業者から私どもに申出のありました問題は、どうも自分たちの方から見ると、船会社の担保力が弱つて来ておる、それに対しての政府の特別なる措置を講じてもらいたい。ということは、開銀の担保をとることを少しゆるめて、そうして船会社に担保余力をこしらえて、それで自分たちが貸す対象になるようにしてもらいたいということが第一。それから次は、自分たちも、ほかにもたくさんいろいろ融資をしなければならないのであるし、船の方に相当たくさんの金を出しておるから、三割というのをもう少し少くしてもらいたい、できれば二割ぐらいというようなことでございました。そういうような希望を申し出られておつたのであります。しかし、私ども省内でいろいろ相談をいたしますと、二十九年度まではそう言いながらも何とか行けるであろう、三十年になると、いわゆる十一次造船という時期になりますと、担保力等で今までの状態が続くとするならば、計画造船をやつて行く上において困る。しかし、一方日本の海運界の立場を考えますと、どうしても計画造船を続けて行かなければならない。そうすると三十年度においてはひとつ根本的な考え方の立て直しをしなくちやならぬじやないか、しかし、二十九年度はこれで行けるであろうという見通しで参つてつたのですが、今度の予算が御承知のように緊縮財政の方針となり、金融界の引締めという問題が出て来たということが一つの大きな問題になります。そうして一方、世界の海運界はどうかと申しますと、大体ダルな市況が続いておるわけでございますから、これでは船会社の方が借金をしても飛びついてやるというわけに行かないような空気も少し根ざしておつたのであります。もう十次造船は自分のところはやめようかというような声も出ている。九次造船のときのような熱までもないような情勢のときに、造船疑獄というようなものも起りましたため、なお平たく申しますれば、おじけをふるつたとでも申しますか、船主側の方では、あまり進んでやろうとする空気がなくなつたのであります。もちろんこれは、その関係人たちをこの間も集めていろいろ聞きますと、決してやらないわけじやない、やるべきものだと思うが、もう少し情勢を見たいという空気があり、その中には、ことしは予算の関係で造船量が少くなる、そうすると造船所が競争をしてうんと値を下げるであろうというような商売的な考え方から見ておる人も、私はあるだろうと思います。そういうふうで、予算の通るころになりまして、私はこの問題に—毎年そうでございますが、毎年と同じような線で行けるかどうか、何とかしてそこへ持つて行きたいと思うけれども、いろいろな人の語を通してみますと、造船所並びに造船所に働いておられる職員の人たちは、非常に熱心に、どうしても早く、なるべく大きくつくつてくれという話でありますが、船主の方は今申すようにちよつと控え目であり、金融業者になりますと、今度はさらに進んで非常に強い意見になつて来たのであります。それはまず、船会社には償還能力がない、第二には担保力かない、第三には、まあ斯界を見渡してみたところが、いつ回復するかわからない状態であつて、それに対して金を貸すことは無理であろうというようなことがだんだん積み重なりまして、金融業者は、どうか今年はかんべんしてもらえぬか、われわれの方はもう金を出すことは困る、こんな緊縮財政のもとに、また金融引締めという問題もあつたために全般の資金が少くなつてしまつた。かりに担保があつても、それからまた返還能力があつても、貸そうにも金が全般的に少くなつた。銀行としてはもつと有利なものにも貸さなくちやならぬと思うものも、なかなか資金繰りがつかない状態であるから、できればひとつかんべんしてもらえぬかというのが、金融業者を通じての意向でございます。こういうような、情勢でありますので、これをどうやつて打開するかという問題に、ただいま立ち至つておるわけであります。九次造船までは、とにかく銀行業者は何とか言われましても、銀行業者も船主も造船所も、みんな同じように造船をするという線に一本に向いておりましたが、今度は、先ほど申し上げましたように、造船所とそこの従業員の人たちだけが熱心に遂行しようとして、あとは非常に控え目で、ここでえんこしてしまつて立ち上ろうとせぬというような状態で、非常なかわつた情勢になつて来ておるというのが、現在までの状況でございます。
  163. 大西正道

    ○大西(正)委員 今のお話では、積極的なのは造船に従事しておる労働者並びに造船所のあるところの地方団体だ、そして金融業者は金を貸さない、船主がこれに対して非常に消極的だ、こういうふうに言われたのでありますが、この船主が非常に消極的だということは、これは運輸大臣の見解がそのまま妥当であるとは私どもは思わないのであります。しかしながら、このことは私はあまりここで論議はいたしませんが、市銀が融資をがえんじない、このためにそれでは運輸大臣としては、金融業者が船会社に金を貸すようなどのような措置を講ずる、あるいはまた船主が積極的に十次船を促進して行くという機運にならせるということについて、どういうふうな対策をお持ちになつておられますか。
  164. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 その線を早く出すために、今せつかくいろいろな努力をいたしておるのでございますが、私どもといたしまして、各業界別にいろいろお話を聞き、先ごろは各業界の代表の人に一、二名ずつ集まつてもらいましてフリー・トーキングをやりました。一方経済関係の閣僚の集まりをいたしまして、政府のこれから先の考え方についても、いろいろ相談を始めておるところでございます。今はどういうところにあるかと申しますと、今お話がありましたが、船主はみなしり込みをしておる—みながしり込みをしておるというわけではありませんが、大体としてはそういうふうな傾向であり、それにはこういう部面もあつたということを申し上げたのであります。中には熱心に早くやるべきだということを言うておる人も、もちろんあります。問題は、金融方面の問題だと私ども考えるのです。それで、今どうするかと申しますと、開銀の担保は今本船担保のほかに増担保をとつておる。これが前からの問題でありまして、開銀が本船担保だけでやつてくれれば、そこに大分担保力ができて来る。これを市中の担保力の方にまわしてくれぬかということが、前から出ておるのであります。開銀の方としましては、なかなかそうは行かないというので、これはもう去年からいろいろデイスカツスし合つておる問題であります。そういうことができるかできぬかということが、一つの問題であります。担保力というものに相当余力ありと市銀の方が思いましたならば—それは、市銀からも集まつて、いろいろ言われるときはみな反対されております。しかし、それぞれ船会社にも造船所にも、金融上のいろいろなつながりが金融業者としてはあるわけでありますから、むげにこれを排せられることはないと私は思います。ただ、銀行の心配されておりますものは、担保力のないものにどんどん金を貸す、そういうことは、まごまごすれば仕事の上の背任にもなるのじやないか、そういうことがあつてはならぬということが心配されておる。まずそういう力をつけるところの方法はないかということで、相談いたしておるわけであります。  それから、根本の問題をひとつ考えなくちやならぬと思うのは、今年はうまく話合いがついたといたしましても、三十年度からは担保力というものもほとんどとまつて来るという状態であることを考えますと、一方において船はどうしてもつくらなければならぬ。私どもが今三百十万トンの船があると申しますが、これは少くとも戦前までとは申しませんけれども、戦前の六百何十万トンに対して四百万トンぐらいまでは、ぜひ船をこしらえなければならぬと私どもは思うのであります。そうしますと、昨年度から四箇年計画で年々三十万トンつくりたいということで、昨年は三十万トンできたのでありますが、今年の予算によりますと、うまく行つて十七、八万トンぐらいじやないかと思うのであります。年限の四年が、かりに五年とか六年に延びても、この造船計画だけは遂行して行かなければならぬと思うのでございますが、それには一体金融面をどうするか。それにつきまして、先ごろから予算の会議のときにこの問題は取上げられまして、どうやつて行くんだ、今の状態では、今お尋ねにありましたように、金融界がついて来ぬというようなことを聞くが、それについては政府はどうするんだ。それには一つの方法としては、政府が自分でストック・ボートのような船をどんどんこしらえてそれを船会社に貸して運営するなり何なりして、それから先は別問題として造船すべきじやないかということも言われたのでございますが、どんな形にするかは別といたしまして、政府が中心になつて何かの方法を講じなければならない。それは私どもかりに名前をつけて海事金融公庫というようなものを設けて、それには今の開銀がやつております財政融資の仕事を持つて行く。また同時に、これはまだほんとうに案までも行かないもので、今日もその相談をいたしておつたわけでございますが、今申しましたように、銀行に聞けば、なかなかできない、金はないと申しますが、船会社の方で自分の力で金をこしらえ得るところもあると思うのです。どれだけかのものができれば、それと政府の金とを持ち寄つて共有のような形で船を持つて行けば、かりに今年のようにして百七、八十億の金しか来年にも財政資金が出ぬとすると、七・三の割で出しても十六、七万トンできるだろう。これを全額こちらでやりますと十万トン近くに下つてしまうのであります。で政府が船をこしらえるということは、非常に簡単のようで、法規を設けてもらえばすぐできるようでありますが、そうすると造船量がさらにうんと減つて参りますので、何か民間で出せる限りの資金が出せたら、それは七、三でも、中には五、五出せるところもあるかもわかりません。とにかく多く出せて、そうして信用の置けるようなところと造船をやつて行くというようなことはどうだろうかというようなこと等も含めまして、今しきりに案を運輸省としてまず練り、各省と相談をするつもりですが、これはこの間の経済閣僚懇談会に、いずれにいたしましても、三十年度になりますと、どうしても市中に頼ることが普通の方法では困難だから、何か別な方法を講じなければならぬということを申しておるわけでございます。それで、そういうふうな政府において基本的なあるものが一つ出て参りますれば、本年度の融資問題については、やがて、たとえば開銀なら開銀にいたしましても、来年はそういうふうなものを引継ぐ、あるいはそういう組織の方に向けて行くことができるとすれば、本年度はあるいは本船担保だけでもやつて行ける—これがずつと続いては困るけれども、今度だけならそういうことができるというようなめども、あるいは立ち得るたろうと思うのであります。三十年度から先の根本の行き方がきまつて、二十九年度は暫定的にやるというだけならば、何とか考えようじやないかということになると思うのであります。こういうふうな方法によりまして、政府が政府の方策を立て、そうして開銀と話し合い、そうして一般に本年度は今まで通りの計画の線に近いものからとつて、今度の七対三という割合でできるものから申し込ませる。一人でできないなら、三つか四つのものが一緒になつて申し込むというような形もとらせまして、何とかして今年はやるということで、今せつかく話を急いで進めておるところであります。
  165. 大西正道

    ○大西(正)委員 基本的ないろいろな海事金融公庫のような考え方、けつこうでありますが、今の話では当面十次船に着工するためには、とにかく市銀に対する担保力の増強ということが必要である、この点について今話を進めておる、こういう話であります。これはいつごろ妥協の見通しがつきますか、話合いは成立しますか。
  166. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 これはこの間から各業者の代表の集まりを数日前にやつたのでありますが、これに対しまして銀行方面は、開銀を初めといたしまして造船所並びに船主、いわゆる運送業者、これがオペレーターならオペレーター、あるいは造船所は造船所としての企業の整備態勢をもう少しとらなければ、話は進められないという声が非常に強いのであります。これは昨年の秋から私は言うており、これは政府からこうしろ、ああしろといつて形を整えてやることは、どうしても今の組織としてはできないのでございますから、強く要望していろいろやつて、船主があれば各航路の整理と申しますか、たとえばニユーヨーク航路が非常な乱戦状態になつたのが、このごろようやく少しずつかつこうをなしてつつありますが、そういうふうな話を進めておるという状態で、この間具体的にはなかなか困難だというのでありますが、困難だというだけでは、今のままで金を貸せ、船をつくるということはそれはとてもできないという声が開銀からも市銀からも出ております。それで、造船業者の諸君も、それから船会社の諸君も、自分たちも真剣にもう少し話合いをするということで、来週の中ごろに、もう一ぺんそれまでに自分たちのいろいろな話をまとめて来るという話になつております。それから政府といたしましては、その間にまた閣僚と話合いもし、いろいろ事務的の話合いもし、政府の線というようなものも立て、どういうふうにおちつくかという話にだんだんなつて行くのであります。これは担保力が増した、それならばすぐ貸しますという、これだけでは解決しないのであります。しかしこれができれば、私は解決の道は開けて来るということを信じておるのでありますが、そのほかに、さつき申しましたように、金融業者はいろいろな問題があるものでありますから、その点におきまして、できれば何回でも集まつて、そして何かの結論を出すまでやろう、そしてこの次集まるときには、十次造船についてどういうふうにしたらどうやつて行けるかということを、各界からフリー・トーキングをやつて持ち寄るということになつておりますので、私たちといたしましては、さつき大西君の言われましたような地方の情勢においても全然同じような認識を持つておりますので、これも急いではおります。いつごろになるかということは申し上げられませんけれども、ここ数回話を進めておるうちに、必ずそこに結論が見出せる、こういうふうに思つております。
  167. 大西正道

    ○大西(正)委員 銀行側からいえば、やはり企業の再編成というようなことが前提条件になるという話であります。これは、あなたのお話では、何回でも話合いを進めれば、その間に結論が出るだろうというようなお話でありますが、これはだれが考えましても、業者自体で企業の整理、再編成というようなことはほとんどできないでしよう。またこれを政府が力でもつてやらせることも、不可能だと思うのであります。そういうことを考えますと、この事業の再編成を前提にして初めてこの十次船の着工ができるというこういう場合は、実際いつのことになつて実現できるかわからぬと思います。大臣はそういうことをお考えになりませんか。
  168. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 企業の再編成という問題になりますと、あなたのおつしやるように、その簡単にきよう、あすに話をするということはなかなかできるものではありません。しかしながら、大体どういうふうな方向にこれを進め得るかという線は出し得ると思います。たとえば、オペレーターがニユーヨーク航路ならニユーヨーク航路にたくさんのものがある、これをどういう形にして行くか。そうすれば、少くとも国内の競争か抜ける、従つて、外国との競争は残るわけでありますが、同盟関係でどういうふうになるというおよその見通しがつく。こうやれば、仕事にいたずらな齟齬を起さずにうまく行くというような話合いができれば、それが実際に行われるのは遅れてもかまわないと思う。そういうふうなことで、今十次造船は急がなければならぬ。それは必ずやるから、ひとつ大いに今のうちにつくるだけはとにかくつくらせてくださいというのでは、お流れになるのであるから、この際一つの整理統合といいますか、そういうふうなものの流れをこしらえよう。およそ系列をどういうふうにやりますか、実際の方向をここではつきりさすということだけは、私はやれると思います。そういうことをいたしたいという意味であります。
  169. 大西正道

    ○大西(正)委員 おつしやることはよくわかるのですが、話合いのうちに自然に結論を出すというようなことは、私はおそらくここ一箇月や二箇月では、大体の方向にいたしましても、金融業者が金を出すような状況には、そう簡単に行かぬと思うのです。あなたは今まで話をなさつて、そう簡単に行かぬという見通しは持つておられると思います。日本の海運力の増強という面からすれば、あるいはそういう基本的な問題を解決するということが必要なことでありましようが、私の言うのは、それと同時に、この六月になつたら造船所の船台はほとんどからになる、こういうことを言われておるのであります。これは誇張した言い方ではないと思うのであります。私は各造船所の船台の状況も、一応資料を持つておりますが、これは誇張した言い方ではない。少くとも十次船の実施は、これは五月に入つたら着手しなければ、ここに働いているところの造船労働者の方に大きな問題が起つて来るということを考えますときに、私は労働大臣のような、そういうのんきな気持でおることはできないと思うのです。どうもむずかしい問題ではあろうけれども、運輸大臣の話はすこぶる消極的である。これはこの前労働大臣にも尋ねたところが、労働大臣の答弁は、市銀に少し頭を下げたら何とかなるだろうというような、まつたく消極的な答弁である。あなたの話は多少当面の責任者だから、いろいろ苦慮なさつておりますが、私はこういうふうないろいろの条件を検討いたします、基本的な方向を打出す、それで本年度は話がつくと言われても、これは違うと思うのであります。もしそういうことについてあなたが、それは、いや自分としては見通しがつくとおつしやるならば、大体は、あなたの責任において、いつごろまでにこの決定を出すかということを、ひとつ明言願いたいと思う。そのくらいなことは、私は言われる義務があろうと思う。予算はすでに百八十五億の船舶造船に対する融資を決定しておる。それからその遅延しておるとかなんとかいうことにつきましては、ここにいろいろ事例をあげられましたが、私はそういうことはあまり強く言わないが、造船疑獄の問題が大きく原因しておるのであります。その責任は、政府になしと言わせない、ましてや、運輸大臣に大きな責任があると私は思う。そういうような意味からいつて、今のような努力のありさまでは、近い将来に希望は持てません。その点いかがでしようか。
  170. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 私は一日も早く船が着手できるようにということにおいては、一番自分としては熱心に希望し、それの線に沿うように努力いたしておるつもりであります。いつできるか、これはお約束しても、できなかつたら何にもならないことであります。私は何か言いのがれをして、まあまあその日を糊塗するという気持はもちろんありませんし、どうかして一日も早くということで、各方面とも折衝をやつておるし、今のような線は、いかにもまどろこしい、消極的だとおつしやいますが、そういうふうにせずして、それではどうしてやれるか、やれというならば、こういう名案があるからこれでというようなものが、私はすぐに考えられないのです。私はこういうふうなことで押し通して早く盛り上げてしまうということを考えておるわけでございますが、それにはもつと積極的にこうすべきだという名案がありますれば、私は喜んで一日も早くやりたいということは、あなたにおくれをとらぬくらいに熱心に思つておるのであります。何でもその通り賛成なればやりますけれども、私は今のような方法によつてできるだけ早くやるということに渾身の努力をするということを申し上げるよりほかにないのであります。
  171. 大西正道

    ○大西(正)委員 名案があれば今お前が示せ、こういうような話です。私も多少の私案は持つておりますが、これは十次造船を実施する責任者のあなたとしては、非常にふらちな答弁であります。そうでしよう、そういうことについて案がない、ただこれよりほかは努力して、そしてできるだけ早くするよりほかにない、案があればお示し願いたい、こういう態度は、まことにふらちであります。それではあなたの責任はどこにあるか。労働者の失業問題を、ここに具体的な数字を私がお示しすればよくおわかりだと思う。それは労働大臣にお聞き願いたいが、たいへんな混乱が起る。それに対して、自分はできるだけのことをやるが、それ以上のことはできないということは、まつたくこれは責任を感じない答弁です。少くとも五月中には着手する、しかし、もしも自分の努力が実を結ばなければ、これに対しては責任をとるとか、こういう強い決意があつて初めて業者も動く、あるいはまた銀行側もこれに対してついて来るわけであります。今のあなたの言葉の奥には、やはり非常に消極的な、責任を回避した態度が見えると思うのです。ですから、私は開き直つて言うわけではないが、あなたのこの十次造船の遅延に対する責任をお聞きしたいと思います。どのように責任を感じておられるか。
  172. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 私があなたに、何か非常にうまいことがあれば教えてもらいたいと言つたのは、私が自分としては一番いい方向にだんだん進んでいると思うけれども、何かいい案があればみんなで進むべきものだ—この間も、私は参議院の予算委員会木村禧八郎君から質問があつたときに、自分にも案なきにしもあらず、それでぜひ聞かせてもらいたい。自分はこういうふうな線で進めておるという説明をして、ストック・ボートの話もいたしました。これも一つの考え方だ、それを取上げてみて、今いろいろ研究の対象にももちろん私はいたしておるわけであります。そういうふうな意味で申しておるのでございますから、責任のがれで申したわけではないことを、御了承願いたいと思うのであります。  私が今申しましたように、いろいろな線で十次造船をどうして早くかかれるかという問題は、この根本的な問題とあわせて、現実の問題も、もちろん目の前の問題も考えて行かなければならぬということも承知いたしております。それには今の担保力の問題というふうな問題がありますが、それにはどうしても政府が三十年度にはどうするかというようなおおよその線がそこに一つ出ないと、さつき申しました開銀から市銀に多少の添え担保をまわすというような問題もなかなか解決しないのであります。これは一生懸命やつて、そしてそれがそうしてもどうしても十次造船もできない、混乱するというようなことで私が責任をとるくらいなことは、いとたやすいことでありますけれども、そんなことではならないので、もつとこれを実際に現わして行かなければならぬという心持で、自分のからだを張つて一生懸命やつております。
  173. 大西正道

    ○大西(正)委員 責任を追求しているわけじやないのですが、あなたの考え方自体が、まことに私としてはふに落ちぬから言つておるのであります。しかし、あなたがこれだけ努力しても、なお五月中に着手できなければ自分は責任をとるというようなことをひとつおやりになれば、これは何とか打開の道もできると私は思うのです。今の責任もとるとかいうようなお話でありますが、そのくらいな確約はできますか。
  174. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 何月までにできなければ私は責任をとるとかいうような、はつきりしたことは申し上げられませんが、そういうような気概をもつてなるべく早く達成し得るような努力をいたします。
  175. 大西正道

    ○大西(正)委員 それでは、具体的に関係閣僚との話合いを来週の中ごろからやるというようなお話ですが、これは来週といわず、隔日くらいに関係閣療と相談をしていただいて、そしてその上でなおできないということになれば、努力は認めますが、一週間に一回ずつくらい三十分や一時間話合いをして、そして努力しましたとかなんとか言つていたのでは、われわれは納得できません。また造船の割当をする海運造船合理化審議会ですか、これなんかもいつ開かれる予定なんですか、そういう具体的なプランをお聞かせ願いたいのです。
  176. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 造船合理化審議会は、十次造船の方向と申しますか、十次造船が着手し得るというような見通し、今で申しますれば資金の面等のまだはつきりしないものが見当がついて、どういう形で造船をやらせるかということの意見を聞く会でございますから、基本的なものがきまらなければ、いつ開くかわかりませんが、基本的なものが早くきまりますれば、引続き開ける準備はいたしております。
  177. 大西正道

    ○大西(正)委員 もう一つの、今後これの具体的な決定線を打出す会合を、いつどういうふうに開いて行くかということを、今急に私があなたに言つても何だけれども、一週間に一回ぐらいというようなことでなしに、一応あなたの心構えを話してください。
  178. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 会議はおおよその議題というものがはつきりしないで、たた漫然と集まつてもしかたないのであります。この間集まりましたときには、今までの経過をずつと話をいたしました。そして三十年度からは、たとえば海事金融公庫というような形のものをつくることも考えなければならぬと思うて、今研究しておる、これを事務的にひとつ各省の間で研究してくれということになつております。今その研究の資料を私のところでこしらえておりまして、これを大蔵省あるいは経審の関係者と打合せをいたしておるのであります。そういうふうなものがおおよその線が出ますれば、毎日でもやつてもよろしいのでありますが、ただこのごろは、私はこの間集まつて、実はあすか月曜日にと、こう思うておりましたが、関係大臣が旅行するというようなことがあり、今までは予算会やらいろいろなものを初めといたしまして、関係大臣が委員会に出てちぐはぐになるものですから、なかなか寄る機会ができないでおるのであります。これから、予算も済んだあとの今日でありますから、実際に具体的に進む案ができますれば、毎日でもやります。
  179. 大西正道

    ○大西(正)委員 これはひとつたちの希望を善意に解されて、ぜひ今おつしやつたような決意で、速急に結論を出すように努力してもらいたいと思います。それで、あなたには御迷惑かもしれぬが、その会のあつた直後に、この委員会において、あなたの方からその経過の報告をお聞きしたいと思つております。その点はあらかじめ含んで、あなたの思いつきの話じやなしに、かなり詳しい報告をお願いしたいと思つております。  それからもう一つ、十次船の促進をあなたに強く要望するのは、その一つは、造船に従事する労働者の失業問題を懸念するからであります。そこで造船労働者の失業問題を打開するためには、ただ十次船の早期着工のみならず、まだほかに手もあると思うのであります。たとえば、輸出船を多量に受注して失業をなからしめることも、一つの方法であります。すでにこの間ソ連からの注文があつたとかいうようなことが、いろいろ出ているのであります。そういう点で、私はもつともつと十次船の着工のほかにも手が打てると思うのであります。たとえばバトル法の制限によつて鉄鋼船を輸出することはできぬというようなこともありますけれども、このような現状を直視した場合には、こういうものの緩和というようなこともまた、ひとつ関係閣僚を通じて交渉をなさつて、外国からの注文をとるような努力も、造船労働者の失業問題を救済する一つの方策であろうと思うのであります。こういうことも、やはり運輸大臣として考えられることだと思うのであります。そういうこともよくお考え願つて、今申しました十次船の早期着工ということに対して、もつと積極的に御尽力願いたいと思います。  それから労働大臣は、この前私が質問しましたときに、市銀の融資の問題については、もう少し熱が冷めてから云々という話でありました。その後非常に荒い言葉であなたに質問をいたしておきましたが、この考えは改めてもらいたいと思うのであります。そこでこの次の閣僚懇談会には、ぜひ労働大臣が出てもらいたいと思う。運輸大臣はひとつ労働大臣を招請してもらいたい。もちろんそうでなくても、労働大臣はみずから進んで、この労働問題を解決するために、これは大きな問題であるから出てもらいたいと思うのであります。この点は御両人から、懇談会には出席する、そうして十次船の早期着工のためにお互いに努力するということを言明願いたいと思います。
  180. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 経済閣僚の懇談会ですか、会議をしたら、そのあとで必ずここに報告に来るということは、ちよつとはつきり御約束できませんけれども、できるだけわれわれの状態をお知らせする機会をつくりたいと思います。  それから労働大臣に造船問題の会議のときに出ていただく。これは私からもぜひお願いいたしたいと思います。
  181. 赤松勇

    赤松委員長 ただいま議題になつております失業問題につきまして、委員外の山村新治郎君より発言を求められておりますので、これを許すに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  182. 赤松勇

    赤松委員長 御異議なければさよう決します。山村新治郎君。
  183. 山村新治郎

    ○山村新治郎君 私は、実は入場税の関係で、労働委員でありましたのが、今大蔵委員になつておりまして、委員外の発言をあえてお許し願いまして、ここで発言をいたしたいと思います。  労働大臣にお尋ねしたい問題は、実は造船の労働関係とは少し縁がないのでございます。造船の労働関係の問題につきましては、組織もあり、あるいはまた時局柄、非常に世間の注目を引いておりますので、大きな問題として取上げられております。実は利の選挙区ではないのでございますが、千葉県に突然妙な失業問題が起つているのであります。それは東京湾に臨みます海面一帯に、ひとでの大群が来襲をして参つたわけであります。そのために、大体東京のそばの浦安町を中心にいたしまして、その近所は貝類の日本一の養殖場でございまして、東京の貝類はほとんどその地方から供給されておつたのでございますが、この貝類がほとんど全滅の状況になつているのでございます。これは各新聞の社会面にも、一応報道された問題でございますが、この損害は、ざつと浦安を中心にした近所だけを考えてみましても、二億以上の金額に上る模様であります。特に精密に計算いたしますと、このための失業者は、千葉県では相当数が出ていると思いますが、現に浦安の町自身は、人口約一万七千ばかりの町でございますが、その役場には毎日々々五、六百人の食うに困る方々が押し寄せて参りまして、何とかしてくれというように陳情があるわけでございます。従つて、今までの失業対策事業においては、一応予想しておらなかつた突然の失業でございます。この地方は、十月過ぎになると、のりの生産に従事することができますために、十月にはどうやらのりの仕事に携わることによつて生計を保つことができるかもしれないのですが、当面の問題として、十月までの何とか口にのりするための手段を講じてやらなくちやならない重大問題が起つているわけでございます。実は労働省当局にも参りまして、一応地元としても事務的に陳情をしたようでございますが、御承知のように、第一・四半期の一応割当も終つた段階になつております。その陳情は最近のことで、あるいは事務当局も御存じないことかもしれないのでありますが、事態は非常に急迫しておりまして、浦安の役場は、そのためにあたかも暴徒に襲われるよりな相当の騒ぎをしているようでございますので、この点について特別の御配慮を願いたいというのが、一つの陳情を兼ねた質問でございます。特にそういう漁業労働者は、組織も不完全でございますがために、いろいろと声を大にしてその関係に陳情をする手段も心得ておらない次第でございますがために、一応造船問題と比較いたしますと、まだ陰に置かれているようなうらみがあるのでありますが、実際には直接漁業に関係している労働者ばかりでなく、これに関連を持つ行商関係の連中の失業も実に大きなものがあるのでございます。これは突然の異変でございますので、予算のきゆうくつな現在において、事務的な問題としてこれをすぐに便宜をはかろうことは、なかなか困難な問題だと思いますが、一応政治的な問題として取上げまして、ぜひこの困つている約二万に及ぶ漁民の方々を救つていただきたいというのが、私としてのお願いでありますと同時に、この問題につきまして、当局として何か今まで御研究になつたことがございますか。あるいはまた、ないといたしましても、この突然異変が起つて、ここにどうしても四、五百人の人を失業から救わなくてはならないという場合におけるところの予算措置が何らか講ぜられますかどうかということを、事務当局でけつこうでございますから、まずお尋ねをいたしておきたいのであります。
  184. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 ただいまお話の件につきましては、現地の方にはまことにお気の毒なことでございまして、私も新聞によりまして、それを拝見しておつたのでありますが、まだこれについての具体的な報告も参つておりませんので、従いまして、ただいまお話のよりに突然のことで、事務的にどう申し上げていいかわかりません。しかしお話もございますので、漁業不振のためにお困りの方々に対しましては、できるだけのごあつせんをいたしますように職業安定所等において十分努力いたしますように、現地の労働関係部局に至急連絡いたしまして善処いたしたいと考えております。  なお、私これは新聞で得た知識でございますが、せんだつての記事に、ひとでからビタミンB12ですか、何か非常に貴重なものがとれるというような反面の朗報もあつたようでございますが、その後どうなつておりますか。もしそうであるとすれば、これは非常に貴重な資源でありまして、従来全部輸入に抑いでおつたようでありますが、それについてもひとつ関係部局に連絡してみたい、こういうふうに思つております。
  185. 山村新治郎

    ○山村新治郎君 実はひとでがホルモン剤である、あるいはビタミンが非常に多いとかいうような問題が新聞にも出ておりまして、これが実際にそうであればけつこうなことでありますが、しかし、これが実際に工業化されるまでには、なかなかの時日があるわけであります。そういう点から言いまして、それは一応の新聞の面の朗報でございまして、現実には浦安の二万の町民は、ほんとうに食うや食わずの現状に置かれております。おそらくこの問題は、ほうつておきますと治安の問題にも—東京のすぐそばで、大きな問題が起るおそれもございますので、第一・四半期の割当を終りました現在において、事務的な面についていろいろと困難な問題があるかもしれませんが、この問題につきましては特別の御配慮を願いたいことをお願いいたしまして、私の質問を終ります。
  186. 赤松勇

    赤松委員長 私より特に労働大臣にお願いしておきますが、本委員会におきまして、労働問題につきまして長く御尽力を願つておる山村新治郎君の発言でございますから、特に御留意願いまして処していただくようお願いいたします。  次会は来る十五日午前十時より開会いたします。本日はこれにて散会いたします。     午後五時三十三分散会