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1954-04-02 第19回国会 衆議院 労働委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年四月二日(金曜日)     午前十時四十七分開議  出席委員    委員長 赤松  勇君    理事 池田  清君 理事 丹羽喬四郎君    理事 持永 義夫君 理事 稻葉  修君    理事 多賀谷真稔君 理事 井堀 繁雄君       黒澤 幸一君    島上善五郎君       大西 正道君    日野 吉夫君       矢尾喜三郎君    中原 健次君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 草葉 隆圓君         労 働 大 臣 小坂善太郎君  出席政府委員         運 輸 技 官         (船舶局長)  甘利 昂一君         労働事務官         (労政局長)  中西  実君  委員外出席者         議     員 青野 武一君         議     員 楯 兼次郎君         議     員 山口丈太郎君         議     員 館  俊三君         厚生事務官         (大臣官房国立         公園部長)   森本  潔君         通商産業事務官         (企業局特需課         長)      影山 衛司君         運輸事務官         (船舶局監理課         長)      今井 栄文君         日本国有鉄道参         与         (職員局長)  井上 正忠君         日本国有鉄道参         事         (職員局労働課         長)      中畑 三郎君         日本国有鉄道参         事         (職員局給与課         長)      星野守之助君         日本国有鉄道参         与         (厚生局長)  吾孫子 豊君         日本国有鉄道参         与         (建設部長)  大石 重成君         参  考  人 岩井  章君         参  考  人 歌崎 藤作君         参  考  人         (関東特需労協         事務局長)   細貝 義雄君         専  門  員 浜口金一郎君     ————————————— 三月三十一日  委員川崎秀二辞任につき、その補欠として藤  田義光君が議長指名委員に選任された。 四月一日  委員山村新治郎君辞任につき、その補欠として  三和精一君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  参考人招致に関する件  連合審査会開会申入れの件  仲裁裁定実施に関する件  特需関係労務に関する件  失業対策に関する件  労使関係に関する件     —————————————
  2. 赤松勇

    赤松委員長 これより会議を開きます。  前会に引続き、仲裁裁定実施をめぐる紛争問題について調査を進めます。本件につきまして、前回委員会に御出席になりました参考人岩井章君及び歌崎藤作君の両君が御出席になつておりますから、御了承を願います。  なお本問題につきまして、前回同様、委員外の楯兼次郎君、青野武一君、山口丈太郎君、館俊三君より、それぞれ発言を求められておりますので、これを許すに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 赤松勇

    赤松委員長 御異議がなければさよう決します。  先に当局の方から御説明を願います。大石説明員
  4. 大石重成

    大石説明員 私、当時の東京鉄道管理局長をやつておりました大石であります。当時、東京管理局に起きました事態の大要を申し上げます。またそれに対しましての措置の御説明をいたします。  東京鉄道管理局の管内における昨年の十一月の遵法闘争並びに十二月の三割ないし十割の休暇闘争といつたものの概要を見て参りますと、二つの姿が現われたように思われるのであります。一つは、地方本部指令と申しますか、この指令によりまして闘争をやつたもの、それからもう一つは、地方本部指令逸脱いたしまして、個人的に行動をしたといつたものと、二つに大別されるように存ずるのであります。最初に申し上げました本部指令によるものと申しますのは、十一月二十五日から二十八日までの間のいわゆる遵法闘争、それから十二月一日から三日までの三割休暇闘争、それから十二月八日に行いました十割休暇戦術、かような三つがおもなる戦術であります。この指令が出まして、かような闘争が行われるということは、私たちは正常な業務の遂行ができないという見地からいたしまして、再三あるいは口頭で、あるいは書面をもちまして、組合にかような闘争は違法である、ゆえにかような闘争はやつては困るということを申し入れたのでありますが、その申入れにもかかわりませず、現実問題といたしましては、三つ闘争が行われました。そして遵法闘争によりましては、貨物列車運休が八本、遅延をいたしましたものが五十一本といつたような、実際の正常運行を乱すような結果が出て来たのであります。また引続きまして十二月一、二、三の三日間三割休暇をやるということになりまして、これまた業務の正常なる運行が阻害されるというようなことから、かようなものはやつてはいけないというような話をしたのでありますが、不幸にいたしまして三日間三割休暇と称する闘争が開始されたのであります。従いまして、私たちといたしましては、十二月一日には最も適切な忠告をいたし、また現地に係官を派しまして、ただちにかような闘争はやめてほしいということを申し、またかような闘争をすることによりまして、かくかくなる正常運行が乱れるという事例をあげまして、いろいろと説得に努めたのでありますが、これまた残念ながらかような説得も功を奏しませず、列車運休遅延といつたようなものが非常に多数出たのであります。運休列車旅行列車におきまして百五本、貨物列車が八十本、遅延旅客列車が四十七本、貨物列車が百六本といつたような、非常に大きな被害を生じたのであります。しかもこの三割休暇のときの被害が一番大きく出ましたのは、東京機関関係であります。この東京機関区の三割休暇といつたものにつきましては、場所柄非常に耳目を引くところであり、また重要路線運行をつかさどつておる業務機関でありますので、ここにおります当時の総務部長みずから現地に参りまして、ピケを解くように、また構内に入りましていろいろ業務支障を来すようなことをしないようにということを忠告いたしたのでありますが、残念ながらただいま申し上げましたような被害が生じてしまつたということであります。次に十割休暇につきましては、貨物列車運休が五十一本、遅延が七十七本、旅客列車には被害がなかつたのでありますが、貨物列車に非常に大きな運行の乱れというものを来しまして、年末におきます貨物輸送というものに一大障害を来したといつたようなことに相なつたのであります。     〔委員長退席持永委員長代理着席〕 かように、本部指令に基きます闘争につきましても、終始私たちはいろいろと忠告し、あるいは勧告をいたしまして、かような闘争の中止ということを念願いたしたのでありますが、かようは大きな被害を生じたのであります。かような闘争の経過を見て参りますと、これが指令またはこの闘争の方法というようなものが、実に地方本部委員長責任において行われたということを確認いたしましたので、公労法十七条に違反する行為であると私たちは確信いたしまして、当時の地方本部執行委員長歌崎氏に責任をとつていただくという措置をとつたのであります。  また先ほど申し上げました東京機関区におきまして、地方本部指令には、ただいま申し上げましたようなことが指令の中に入つてつたのでありますが、この指令逸脱いたしまして、東京駅のホームにまで出て参りまして、いろいろ私たち処置をいたしましして東京機関区から東京駅に列車を回送いたしまして、いざこの列車を発車させようというときになりまして、ホームにおいて、あるいは乗車しております乗務員機関車からおりることを強要いたしましたり、または乗車を阻害いたしました。あるときには線路上におりまして、列車の進行を阻害したといつたような事態を起しました。ために、東京駅におきましては、列車が七十分にも及ぶような大きな遅発をいたしまして、ために東海道の運行を乱しました。先ほど申し上げましたように、横須賀線の電車は、東京駅に乗り込むことができないというようなふうに、列車運行が乱れまして、横須賀線は品川で打切るというような結果にまでなり、大きな被害を及ぼしたということも、直接の行動は、当時その阻害行為を指揮し、あるいはみずから機関車に乗りまして、列車運行を阻害し、また線路上に多数の人間をおろして発車をとめるといつたようなことは、地方本部闘争指令には、そこまでのことはなかつたと私は聞いておるのであります。かように指令逸脱して行為をいたしました木田君と伊藤君に対しましては、さような直接的な行為責任をとつていただきました。これまた公労法十七条違反という判断をいたしまして、木田君と伊藤君に責任をとつていただいた次第であります。
  5. 歌崎藤作

    歌崎参考人 ただいま大石説明員の方から、今次の不当処分、あるいは遵法闘争、三割休暇、十割闘争に対しての具体的な説明があつたわけでありますが、まず第一点として申し上げておきたいことは、指令権の問題であります。私どもといたしましては、もとより中央闘争委員会下部機関である東京地方本部性格から、中央闘争委員会の発せられた指令に基いて、これを拡大して指令をいたした考えは毛頭ございません、従つて中央闘争指令従つて遵法闘争なり三割なり十割の闘争行つて参つたわけであります。処分の問題につきまして、私が指令責任者ということにおつて処分内容が発表されておるわけでありますが、指令内容については今申し上げたように、私といたしましては中央闘争委員会指令通りに、遵法闘争の場合は各業務機関、三割の場合におきましては参加者指定をしております。参加者指定にあたつては、東京地方本部がこれを指定いたしましたが、指令内容における三割の休暇を行う、この点については、何らかわつておりません。またこの闘争に入る前、ちようど三割休暇の前でございますが、十一月三十日の夕刻、十九時三十分に記者団に対しましても私の談話を発表し、三割休暇に対する東京地方本部考え方といたしましても、あくまで一般大衆に対しては迷惑をかけないように努力する、従つて重要列車あるいは通勤列車は確保するということで、あらゆる努力をして行つたわけであります。  今大石説明員の方から説明された具体的な問題、たまたま東京駅頭において、単に機関車乗務員室伊藤君なり本田君が率先して入つた、あるいは線路上におりた、こういう問題については、私の考え方といたしましては、指令逸脱をいたしておるということには解釈いたしておらないわけであります。と申しますことは、当日東京機関区に対する三割休暇指令をいたしましたが、機関区におきましては、当日の三割休暇該当者以外の者は全部入れております。当日三割に該当しておる者を一応説得する、こういう意味においてピケ張つてつたのであります。その中で東京駅における乗務員の三割による欠員の補充の問題は、当局側としての不手ぎわと申しますか——われわれはあくまでも重要列車を確保するということで、重要列車に対する職員の確保はいたしておつたはずであります。にもかかわらず、当日三三列車の問題が大きく取上げられて、七十分の遅延を見た。これらの問題につきましては、いわゆるピケ隊阻止によつて七十分の遅延をいたしたというふうには、私考えておらないわけであります。当時の闘争遵法闘争を併用いたしております。この遵法闘争においても、先般の広島あるいは新潟、大阪等において行われた闘争と相ひとしく、平素われわれが一つサービス労働として規定以外の労働を常時しいられておつた、こういうことは今後われわれ労働者の基本的な問題として、時に触れ折に触れ是正をして行かなければならぬ。当局自体においても、運転無事故月間あるいは荷物愛護月間というものをしばしば催されて参りました過程から考えても、この際そうした規定通りに仕事をしなければならぬ、こういう面を考えたのであります。当日の機関車の場合においても、機関士として諸条件を整えて乗るということであつたならば、当時木田君にいたしましても伊藤君にいたしましても、いわゆる阻止しようというような態度には出なかつたわけであります。機関士としてのこまかい問題で申しますと、たとえば運転通告券なりあるいは列車ダイヤなり、そうしたものがすべて条件整つて、初めて機関士として旅客列車運転を預かつて東京−沼津間なり東京−静岡間なりの業務につくわけであります。しかるに、当日のそうしたような休暇闘争の中から、人員の面で当局がいろいろな非常手段を講じました。たとえば、従来機関士の経験のある検査掛を、当日考査を行わずに乗務採用とした。管理局長なりの発行する運転通告券によつて旅客列車あるいは貨物列車運転をしなければなりぬ、あるいは正規のダイヤをもつて運転しなければならぬという運転規程があるにもかかわらず、こういう条件か具備されておらなかつた。こういうことが列車遅延原因となり、トラブル原因となつたわけであります。あえてこの二人が列車を阻害しようという意思のもとにやつたのではなくて、小部からの指令による遵法闘争を正確にやつたために、そこは一つトラブルが起つたわけであります。  ことに三三列車の場合においては、前から二両目でしたかの特別二等車のスプリングがぐあいが悪いということが、当該担当検査掛から指摘されました。この車は運転に重大な支障があるので、解放しなければならないということで、これを解放するために約七十分程度の遅延をした。こういうところに原因があつたのではないかと私は判断いたしておるわけであります。  さらに行動隊が云々という問題がございました。東京駅頭に対する行動隊の問題については、都心の東京駅でありますので、併発事故あるいはこれに対する外郭団体応援等の問題に対する準備として、約三十名ないし五十名をホームの片すみに常駐させて万一に備えたというのが、この行動隊性格であつたわけであります。そういうようなわけで、大体東京駅頭における三割休暇に対する組合側考え方といたしましては、そういう状態であつたわけであります。それから二十五日から行われました荷物愛護運動、これらによるところのいろいろの列車遅延その他につきましては、すでに御承知の通り、上野にいたしましても、東京にいたしましても、始発駅であり、とにかく日本の中心である東京からの荷物というものは連日相当の数が出ておるわけであります。特に昨年の四月におきましては、六〇一列車という、あの吹上におきまして小荷物車を一車焼失をしたああいう事件まで惹起をしておる。こういうような点からも、どうしても運転荷扱い関係乗務員あるいは担当小荷物掛等におきましても、これらの荷物の送り出しについては、日夜非常な苦労をされておるわけであります。     〔持永委員長代理退席委員長着席〕 先般、これらの積載の点につきましても当局側説明員から、いろいろ御説明があつたわけですが、今までわれわれといたしましては、概念的には一応高さは一・八メートルであり、まん中の通路をあけなければならぬ、あるいはとびらのところはあけておかなければならぬ、こういうようなことによつて指導をされて参つておるわけでありますが、やはり当事者といたしましては一個でも早く皆様方のお手元に送つてやらなければならぬ、こういうような気持から、かなり無理をいたして荷物積載等もやつておるわけであります。これらの問題は、最終的にはやはり国会におけるところの予算の問題等もありましようが、とにかく現状におけるところの荷物の問題にいたしましても、あるいは運転密度にいたしましても、全国一といわれるところの密度の高い東京におけるわれわれの労働条件としては、かなり悪い条件にあるわけでありまして、これらの問題を、平素の遵法闘争等を通じて少しでもいい形にして行かなければならぬ、こういう考え方も持つて、今次遵法闘争なり、休暇闘争等におきまして、それらの問題が十分含まれて行われたわけであります。  以上簡単に申し上げたわけでありますが、そうしたような情勢におきまして、われわれといたしましては先般の遵法闘争あるいは休暇闘争というものが行われたわけであります。その他御質問によつてお答えをいたすことにいたしまして、一応私らの御報告を終りたいと存じます。
  6. 赤松勇

    赤松委員長 これより質疑を許します。
  7. 楯兼次郎

    ○楯兼次郎君 ただいま管理局側組合側説明を聞いたのでありますが、問題が二つに集約されて来ておると思いますので、この点について御質問をいたしたいと存じます。  まず第一に、大石説明員の方から、問題を二つにわけまして、地方本部指令によつて闘争行つたから、公労法によつて処分をした。それから指令逸脱をしたものがあつたから同じように処分をした、こういうことで参ります。そこで第一にお伺いをいたしたいのは、東京地方本部の出しました指令というものが、国鉄労働組合中央闘争委員会から出した指令違反をしておるのか、逸脱をした箇所があるかないかということを、中闘の参考人の方にまずお伺いをしたいと思います。
  8. 岩井章

    岩井参考人 前回委員会でも、私の方から、一般論的なことになりますが、地方の実情によつて四つ地方本部だけが首切りになつている、こういう取扱いについて、私どもとしましては、当時の団体交渉の際にもわれわれの見解を言いましたが、これは明らかに当局があらかじめ意図していた主観的な考え方に基く処置である、こういうふうなことを前会も申し上げましたが、依然としてそういうふうな考え方をしているわけであります。というのは、今楯議員の方から御質問がありましたが、先ほど大石説明員お話の中にも、この点が明確にされていません。なぜ東京地方本部を対象にしなければならぬのかという点が、依然として不明確であります。先回の委員会当局側からの説明がありました列車の本数だけを見れば、もとより東京が一番大きい局ではありますが、総体的に見まして、今回選ばれた四つ地方本部以外の、選ばれていない地方本部の中にもそれ以上のものがある。しかし実際の行動はどうか、行動の点におきましても、私ども秘密指令をもつて出しています行動からはずれているものとは思われません。もとより指令に書いている一般的目標を遂行するために、その土地々々あるいはその現業機関状況等に応じて、いろいろの変化ある行動というものが生れて来ますが、それらは一貫して指令の精神を遂行する行動にほかならない、こういうふうに理解をするわけであります。今回の指令の中にも、当時三割休暇指令の中にも明確に書いてある。また先回にも私からも申し上げましたが、私ども考え方としましては、列車をとめてしまうというようなところに、別に重点を置いているわけではありません。むしろこの指令の末尾にも明確に書いてありますように、できるだけ旅客大衆なり、そういうものに対して迷惑を与えないように、あるいは無用の摩擦を避けるように、こういうことも明確に書いてあるし、また当局側考え方のように、そういう旅客大衆に迷惑をかけるためにいろいろなことがやられたものとは、私どもとしては考えていません。従つて、今は東京地方本部の問題についての御質問でありまして、私どもとしては東京地方本部としてこの指令逸脱をしている、こういうふうなことがあつたものとは、理解をいたしていないところであります。
  9. 楯兼次郎

    ○楯兼次郎君 それでは大石説明員にお伺いしたいと思いますが、あなたの言われます地方本部指令によつて闘争行つたからという理由は、その地方本部から出しました指令中央指令によつたものであるといなとにかかわらず、地方本部責任者であるところの歌崎君に対して処分をした、そういう意味であるかどうかお伺いしたい。
  10. 大石重成

    大石説明員 ただいまの御質問にお答えいたします。中央本部からの指令によつたかどうかということは、私は中央本部指令を存じておりませんので、わかりませんが、地方本部が出しました指令によりましていろいろの事態を起し、またそれを私たちは予期をいたしまして注告もし、阻止もいたしたのでありますが、それにも従わずいろいろな事態を惹起したということの責任を追究したものというふうに私は考えております。
  11. 楯兼次郎

    ○楯兼次郎君 大石説明員お話では、中闘の指令によつたものであるかどうかということは関係がない。いわゆるこの行為をした者は地方本部指令によつたから、それに基いて処分をした。こういうことをおつしやつておるわけでありますが、われわれ少くとも労働関係に対する、専門家ではございませんが、幾分なりとも知つておる者といたしましては、ただいまの大石説明員の言葉をふしぎに感ずるわけであります。あなたも管理局長として、やはり労働問題については相当研究をされ、従業員を指揮されておると思いますが、先日来の委員会においても、やはり労働組合団結権の問題についていろいろ言われております。今ここでこまかい面についての質問をするわけではありませんが、やはり地方本部というものは中央指令に基いて、私はつきり字句は記憶しておりませんが、服従をしなければならないというような字句が、やはり組合の規約にあるのではないかというふうに考えるわけです。この関連について、あなたは全然御存じないのか。そういうことはわかつておるけれども、それとこれとは違うのだ、こういうふうにおつしやるのか、この点についてお伺いしたいと思います。
  12. 大石重成

    大石説明員 中央本部指令を存じませんと申し上げましたのは、指令が出ておるということは聞き及んでおつたのでありますが、内容はいかなるものであるか存じませんと申し上げたのであります。しかしながら、違法な指令を受けまして、その実行を指導したという以上は、当然その実行を指導した責任はあると私は考えております。
  13. 楯兼次郎

    ○楯兼次郎君 中闘の参考人も、それから地方本部参考人も、中央闘争委員会から出された指令には逸脱をしておらない、この指令に基いて行動をしたということを責任者がはつきり言つておるわけです。こういう組合あるいは組合の中間、地方本部参考人の言明を聞かれて、なおかつ大石説明員としては、その関連性を全然考える余地がない、こういうふうにおつしやるのか、もう一回くどいようでありますが、御質問いたしたいと思います。
  14. 大石重成

    大石説明員 本部から違法な指令をたとい受けても、それをただちに実行に移しまして指導したという以上は、私は地方本部委員長にも責任があるというふうに考えております。
  15. 楯兼次郎

    ○楯兼次郎君 そういたしますと、この中闘の指令大石説明員としては違法である、こういうふうに断定をなされておるのでありまするが、この処分についてあなたが公労法十七条違反として、あなた独自の考え処分をされたのかどうか、この点についてお伺いいたしたいと思います。
  16. 大石重成

    大石説明員 処分につきましては、管理局長といたしまして、普通の場合でありますと、直接処置をいたします権限を持つておりますが、異例に属することだというふうに考えまして、十分本庁と連絡をいたしまして、そして私の名前の責任におきまして処分をした次第であります。
  17. 楯兼次郎

    ○楯兼次郎君 ちよつとはつきりいたさないのでありますが、最終的の処分決定ということを、あなたがなされたのであるかどうかということ、この点をひとつ簡単にお伺いしたいと思います。
  18. 大石重成

    大石説明員 本庁十分相談をいたしまして、私が処分をいたしました。
  19. 楯兼次郎

    ○楯兼次郎君 そういたしますと、あなたの先ほどおつしやいました公労法違反というものと一貫性がないと思う。中闘の指令には関係なく、あなたが東京中央本部指令はいわゆる違反であるから云々と、こういうことをおつしやるわけです。そこでこの指令公労法違反であるから処分をするということになれば、何も本庁と連絡をとつてその違法性の審議をやる必要は私はないと思う。どうもこの点が一貫しないと思うのですが、どうして一方ではあなた独断で公労法違反である、こういうことを断言しておいでになりまして、その違反に基いて処分をするときのみあなたは独自の行動ができない、こういう関連性はどこから参つておりますか。
  20. 大石重成

    大石説明員 この処置につきましては、異例でありますために、本庁と相談をするようにという通牒も私たちいただいておりまして、ためにその通牒に基きまして、本庁十分相談をいたしまして決定をいたしました。
  21. 楯兼次郎

    ○楯兼次郎君 相談なさつたというのは、公労法違反であるということを相談をされたのか、何を相談されたのですか。あなたは中闘の指令がどうあろうとも、地方本部指令違反である、こういうことをはつきり断定をなさつたわけです。処分については異例であるので本庁と相談をしてやられる。この場面に来て、公労法違反であるかどうかということに、非常にあなたは疑義を持つておられる、こういうふうにわれわれは受取るのです。最終の公労法違反であるという判定者はだれであるかという点を、はつきりひとつお答え願います。
  22. 大石重成

    大石説明員 違反しているということは、私現場におりましてはつきりしておつたのでありますが、その処分につきまして、本庁に御相談を申し上げ、そうして管理局におきまして処分を決定した、こういう順序で発令したのであります。
  23. 楯兼次郎

    ○楯兼次郎君 どうも私の質問に対する答弁が一貫しておらないと思う。公労法違反であるとあなたは断定し、それによつて処分をしたとおつしやる。しかも違反であるかどうかということを、相談をなさつたのであろう、こういうふうに私は考えるわけです。本庁の方と相談をして、私が処分をした。一体どこで最終的に決定をしたのかわからない。ということは、どこで公労法違反であるということを最終決定をしたかということが非常にあいまいであると思います。
  24. 赤松勇

  25. 館俊三

    館俊三君 今楯兼次郎君の質問をしているときに耳にはさんだのですが、管理局長として自分の指揮する範囲内の従業員——組合から言えば組合員です。その従業員の活殺の権利を持つていらつしやる。そこでしよつちゆういろいろな任免黜陟をなさつているのですが、いつごろから公労法違反を任免黜陟の形でおやりになさるような権利をお持ちになつたのですか。
  26. 大石重成

    大石説明員 今回のこの問題につきましては、常時私たちが扱つておりますことと違つた場合だということと、先ほど申し上げましたように、本庁からこのことにつきましては相談をしろという通牒もありましたので、私の方で違反をいたしました事実、またそれについての考えに基いて相談をいたしまして、管理局で決定いたしました。
  27. 館俊三

    館俊三君 そうすると、さつき局長さんがお使いになつた異例であるからということですが、そういう権利をお持ちになつてつて、いろいろの処分をなさる場合に、異例な場合はいろいろあるのじやないかと私考える。鉄道に長くいましたけれども、上の方のことはわからぬのですが、その異例の場合というのはどういう場合がおありですか、どういうものをもつて異例とされるか、何か規範があるだろうと私は思う。
  28. 大石重成

    大石説明員 日常の業務の遂行をやつておりますとき以外の予想のつかないような事例を、異例と考えております。
  29. 館俊三

    館俊三君 任免黜陟をおやりになる場合には、これこれのようなことに関しては、局長が任免黜院陟の権利を持つておるという事柄がおそらくあつて、その範囲から逸脱したものは異例ということになるのですかどうですかということなんです。たとえば、こういうことは異例である、こういうことは異例でない、そういうものがあつて、そのときには管理局長が自分で処理できない問題が異例に属するのであるかどうかということなんです、あなたは任免黜陟をやたらにできる権利を全体的に持つていらつしやるのであるか、それとも全体的にはないので何らかの規範があつて、その規範から脱けたようなものがあればどうかしなければならぬのか。そういう意味で異例という言葉が出て来たのではないか、どういうことですか。
  30. 大石重成

    大石説明員 原則といたしましては、管理局長自身で全部するというのが原則であります。しかしながら、ただいま申し上げましたように、今回のような場合は特に本庁から通牒もあり、かようなものにつきましては相談をしたのであります。
  31. 館俊三

    館俊三君 局長は体全的に事を処理する権利をお待ちだと御返事になる。そうすると、この問題もあなたの権限に属して自由に任免黜陟ができるということの範囲内に入るのですか。そういう場合には、異例というものはないわけです。そうすると、全部のことが局長の範囲内でできるというお答えと承るのですが……。
  32. 大石重成

    大石説明員 今申し上げましたように、原則として自分でやれるのであります。繰返して申し上げるようでありますが、今回は本庁から相談をするようにという話もあつたのでありますが、極端なことを言えば、自分でやればできるのであります。
  33. 館俊三

    館俊三君 極端なことを言えばというお話でしたが、それも入れて全部的に自分の管轄内の従業員処分する権利をお持ちであるかどうかを、私は聞いておきたいのです。今のお話ですと、全体的に局長さんがそういう処分も含めて、どういう事故が起きても、あなたの権限として執行される権利をお持ちだということなのです。それはよくわかりました。そこで本庁からこの問題については相談をしたいと言うて来たそうでありますから、それは上から言うて来たのだから御相談をなさらなければならないでしようけれども、それは相談であつたのですか。本庁からあなたの権限に干捗されておるのかどうか。もしあなたの権限内に属するというお話であれば、あなたが処分する腹をきめて、いろいろの事情を説明して、これによつて公労法違反だときめましたということを本庁に通報なさつたのですかどうですか。相談は相談でも、相談の根幹をなすものは局長の権限に属することであるから、通報をなさるという形でやつたのですか、どうですか。
  34. 大石重成

    大石説明員 繰返すようでありますが、原則として自分で全部平常な運営をやつて行きます上の人事権はあるのであります。極端にと申し上げましたのは、異例に——異例であるという解釈が非常にむずかしいと思うのでありますが、異例に属するものは本庁に指示を仰ぐということは、規程にもあるのであります。ただ異例の解釈が問題ですが、これは先ほど通報か相談かというお話がありましたが、相談をいたしまして決定をしたわけであります。
  35. 楯兼次郎

    ○楯兼次郎君 そういたしますと、先ほどこの行為がいわゆる公労法違反であるというようなことをおつしやいましたが、はたして公労法違反であるかどうかということがあなた自身断定できない、疑義を持つてつて、ここに相談の原因が生れて来た、こういうことに私は考えますが、ひとつうしろの方の考えでなく、あなたの考えをおつしやつていただきたい、そうしなければ筋が合わぬと思います。
  36. 大石重成

    大石説明員 公労法違反であるという判断は、これはもちろん私が現場におりましたので、はつきり違反であることを確認をしたのでありますが、今回の公労法違反処分は、相談をするようにという通牒をいただきましたので、相談をしたのであります。
  37. 館俊三

    館俊三君 局長さんは全体的な処分権を持つていらつしやるというお言葉でした。そこでこういう処分をするという決心がすでにできてその決心であなたは辞令を書いてお出しになつてさしつかえない。けれども本庁から相談せいと言われたので一応は相談なさつたが、その相談をするときに、本庁が、この人間については公労法違反でないと思うとか、あるいはまた公労法違反はもつと人数をふやさんならぬとか、あるいはまた状況を具備して説明をしておやりになつたと思うのですが、その説明の仕方が足りないとかいうことによつて本庁からあなたの決定したものと違つたものが来た時分には、あなたは自分の権限を放棄なさるのかどうか。権限とはそういうあやふやなものであるかどうか。異例のものは本庁に譲るということであると、楯兼次郎君が言つたように、そこに何か割切れないものを私は感ずる。しかもあなたにお話を聞けば、そういう場合であつても、権限が全体的にあるのだとおつしやる。そうするとあの日本国有鉄道という一般的な名前であなたが辞令をお出しになつた。その辞令のひな型を見たのですが、この日本国有鉄道に、管理局長の名前も書いてないし総裁の名前もないように見える。そうすると受取つた者は、一体本庁から首になつたのか、管理局長から首になつたのか、しろうとの私たちにはさつぱりわかりません。しかもこれを見てわからないと同時に、今のお話を聞いていると、いよいよもつてわからない。異例であつても何であつても、極端に言えばという言葉がおかしいのです。私に全体の責任がある、しかし異例の場合はというのですが、異例の場合というのは、何かあなたにまかされている権限以外に属するものが異例なのか、あるいは全部が権限に属しておるけれども、何かの場合には相談しろといわれておるのか、相談があつた場合には管理局長のそういう権限が本庁から侵害されたり、あるいは変更されたりするのかどうか。その辺が非常にあやふやなものでありますから、楯兼次郎君としても受取りがたいという話になつて来る。その辺を私たちは十分よく吟味したいと思いますけれども、今何かお考えがありましたならば、後刻の審議の資料にもなりますので伺いたい。
  38. 大石重成

    大石説明員 歌崎君と木田君につきます辞令は、東京鉄道管理局長大石重成の名前を書きまして、私の責任を持つて発令しております。
  39. 館俊三

    館俊三君 名前はここに書いてありますけれども、もう一人この事件でやめさせられた人がおつたのですが、もう一人の人はどういう名前で辞令が出ておるのであるか。
  40. 大石重成

    大石説明員 もう一人というのは伊藤君のお話ではなかろうかと思いますので、伊藤君について御説明いたします、伊藤君は東京地方本部の中に入つてつたのでありますが、鉄道の部内の籍は東京工事事務所に所属しておりますので、東京工事事務所長から発令しております。
  41. 館俊三

    館俊三君 私もまだ戸籍は調べてありませんが、不思議に思つていたのを尋ねる機会ができたのですが伊藤君は工事事務所に在籍しておつた。これは本庁伺いたい。中闘で四人やられておるのですが、中闘の人で本庁所属の人は本庁から辞令をもらつているのだろうと思うのですが、その四人の中でやはりどこか地方在籍の人がおるのではないか、この点はどうですか。
  42. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 中間の四人の方については、総裁がみずから発令をするというこにいたしたわけでございます。
  43. 館俊三

    館俊三君 その中闘の四人の方の在籍を私は聞いているのです。
  44. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 中闘の諸君の元所属というのは、いろいろばらくにあちこちに所属があるわけでございます。
  45. 館俊三

    館俊三君 その場合には、私は立ち会つて見ておつたのですが、在籍の権限者は区長さんなり駅長さんなり機関区長さんなりの辞令を出すべきではないかと私は思つてつた。それをあのときの団体交渉を見ておりますと、中闘だけが総裁で、地方のものは局長からこれをやるのだけれども——中闘の四人はおそらくどこかの地方局長か工事事務所長か知りませんが、そこの在籍から出ておるものであつて、給料なんかもそこからもらつているのだと私は思う。そして管理局長さんは、伊藤君は東京地方本部におつたのだけれども、工事事務所の在勤だからというのでそこから辞令を出したと言つておられる。辞令の出し方そのものについても、あなた方の職務権限そのものの規定もあるでしようが、その規定逸脱した形で辞令が出ておるような気がし、かつまた東京管理局長のお話は、おそらく各局長のお話であつて、そういうお話も全体的な権利を持つていらつしやるということになると、局長さんは全体的に権利を持つていらつしやる。その権利を何か本庁が侵害し、あるいは特別に取上げた、取下げた、与えた、その方の発令の仕方も、私は合点が行かない。この点は、全体的に見なければわからないと思いますので、質問はこれだけにして後日に譲ることにいたします。
  46. 赤松勇

  47. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 まず組合側参考人にお尋ねしたいと思いますが、東京地方本部戦術委員長並びに副闘争委員長並びに書記長は、その当時おられたのかどうか。あるいは外遊されたという新潟の例もありましたが、どういう事情にあつたかお尋ねしたい。
  48. 歌崎藤作

    歌崎参考人 副闘争委員長並びに戦術委員長はおりました。これらの闘争においても、その任に当つてそれぞれやつてつたわけであります。
  49. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 戦術委員長は、闘争委員長とは別にあつたわけですか。
  50. 歌崎藤作

    歌崎参考人 そういうことです。闘争委員会のほかに戦術委員会を設置いたし、その戦術委員会の決定を私が指令をする、こういう機構になつております。
  51. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 まず本庁吾孫子さんにお尋ねいたしたいと思いますが、責任をとつた支部もあり、とらない支部もあり、また天王寺は実行当事者でありますので別でありますが、大阪、新潟、広島では、組織の責任者を解雇されておる。そういたしますと、あるところでは委員長戦術委員長、あるところでは委員長戦術委員長、あるところでは書記長まで含んでということで、非常にまちまちである。ところが東京におきましては、今度の闘争指令に関する責任者として地方本部委員氏が解雇されておりますが、他の大腿、新潟、広島と東京との間に、中央小部の指令を遵守するにおいて何か差異があつたかどうかを、まずお尋ねいんしたいと思います。
  52. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 今回処分をいたします際に、私どもとして、単に結果だけに見るというのでなしに、その実行の方法その他の要素も勘案して、相談の結果決定したということにつきましては、前にも申し上げたと思うのでございますが、単に形式的に全体を観察いたしますれば、公労法違反という数は相当多かつたことは事実でございますし、形式的に同じように処分をするということになりますれば、地方本部ならば三役なら三役全部ということに考え方として自然になると思うのでございますが、前々から申し上げておりますように、私どもといたしましては、単に結果のみでなしに、その結果を招来するに至つた過程において行われたいろいろの要素というものを勘案して、最後の結論を出したというようないきさつにございますので、従つて全国の各地方の管理局別に処分された方たちの形式的な地位を比較してみますと、いろいろふぞろいがあるわけでございます。東京の場合には、東京管理局長から詳細その状況を聴取いたしたのでございますが、もちろん副闘争委員長にいたしましても戦術委員長にいたしましても、公労法違反行為に参加しておつたということは、これは争えない事実であるとは思うのでございますが、しかしこれらの諸君の実際の行動管理局側で調べましたところでは、他の、たとえば新潟であるとか広島であるとか大阪であるとか、こういうところとは、その行動において大分異なつた点がある。あるいはこう言うと少し言い過ぎになるかもしれませんが、指令実行するためには、もちろん地本の責任の地位にある諸君は、相当積極的に行動されるのは当然であると思うのでございますが、その行動のされ方が、大阪あるいは新潟、広島というようなところと大分隔たりがあるということを、私どもとしては相談の結果看取いたしましたので、その意味でこれらの諸君に公労法違反の事実がなかつたというふうに判断を下したわけではございませんが、その態様から考えまして、この際はこれらの諸君まで責任を追究することは保留をした、こういうような考え方に立つておるわけでございます。
  53. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そういう結果だけでなくして、結果を招来するに至つた過程を十分検討して責任をとらしたんだ、こういうことでありますので、この現在処分をされていない人についてとやかく言うことは差控えたいと思いますが、別の機会に、私はむしろ逆に、大阪、広島、新潟等の関係について、どう違うのかということをただしてみたいと思います。しかし、こういつたことがおおむね恣意的な判断になるわけであります。ここに全般的に非常に問題があると思うわけでございます。  それから、次にお尋ねいたしたいのは、実行行為責任者を処罰されているわけですが、これはどうも今管理局長からのお話を聞きましても、具体的な事例に乏しいのでありまして、三三列車の話がありましたが、いやしくも実行行為責任をとるということになりますと、相当具体的な話がなくては、われわれ納得できないのでございます。でありますから、その点について先に当局側からもう少し具体的にお話つて、それから組合側からそれについての意見を聞きたいと思います。
  54. 大石重成

    大石説明員 具体的な例というお話でありましたので、木田君の例について申し上げます。これは十二月一日に東京駅のホームにおきまして発車しようとした列車、特に列車番号を申し上げますと、一二九列車、三三列車、三二九列車、三三三列車、こういつた列車に妨害を加えまして、列車の発車もしくは乗務員の乗車を阻止したというような行為が、違法行為としてはなはだしいということを確認いたしまして、処分をいたしたわけであります。
  55. 歌崎藤作

    歌崎参考人 ただいま列車番号によつて、たとえば三三列車あるいは一二九列車に対してその運行阻止した、こういう問題でありますが、これにつきまして、私先ほどちよつと触れておいたわけですが、要するにわれわれは列車運転を阻害しようという目的で三割の休暇行つたわけではなくて、いわゆる三割休暇をとるぞ、いただきたいということで要請をし、そうして三割休暇を一日、二日、三日と行つた。たとえば当日三十人出勤であるとするならば、十名が当日出ない、従つて二十名は出勤しておるわけであります。従つてそれらの人の運用によつて、われわれとしては重要列車が十分に確保できるという確信を持つてつたわけであります。従つて、当日当局の側の不手ぎわと申しますか、組合側がそうした休暇戦術を行うということも、事前に察知をしておつたにもかかわらず、その手配を怠つてつたんではなかろうか。従つて急遽その際に乗務員なり機関士の手配をする場面に到達をいたしまして、乗務員の手配がつかぬということで、前日乗務をした者も乗せる、あるいは検査掛機関士の経験があるということにおいて乗せる、あるいは一旦機関区に帰つて乗務点呼をやつて乗車しなければならないのでありますが、それらのいとまがないということで、いわゆる機関士としての諸条件を具備せずして乗務をしようとした。このときわれわれ、その場面におつた伊藤君にいたしましても木田君にいたしましても、旅客列車運転して行く以上、安全を保たねばならぬ、こういう意味合いにおきまして、平素当局側から指導されておりますところの諸条件が備わつておるかどうか、こういう点を確かめて、少くとも旅客列車である限りにおいては安全に輸送しなければならぬ、こういう建前でその間いろいろと乗務員に対し、運転通告券を持つたか、ダイヤ等をお持ちになつたか、こういう点の話合いが列車の発車の際に行われた。こういうようなことから列車遅延された、こう私は考えております。
  56. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 列車遅延の場合に人が責任をとり、あるいは別個の箇所で一人が責任を問われるという関係がよく納得できないのですが。何か一人だけそういう権限を持つてそういう人をおろしたのかどうか、この点もう少し明確に当局からお聞きいたしたいと思います。
  57. 大石重成

    大石説明員 東京駅のホーム列車運行を妨害したというお話をいたしますと、そのときにおりましたのは、指導役と申しまするか、木田君と伊藤君がおりまして、その他、数ははつきりしないのでありますが、二、三十人の青年行動隊と覚しき連中がおりまして、この指揮によりまして、今申し上げましたようないろいろな事態を惹起したのであります。それでこの木田君と伊藤君を十二月一日の東京ホームにおきます列車妨害の責任、非常に違反行為がはなはだしかつたというように断定をしたのであります。
  58. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 実行行為といいましても、単なる実行行為でなくして、その団体の責任者といいますか、そういう点で処罰されておるわけですか。
  59. 大石重成

    大石説明員 団体の責任者であると同時に、あるいは機関車に乗り込み、実際の行為をしたというように、違反行為のはなはだしい実際の行動をしたという点につきまし責任をとつたのであります。
  60. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そういたしますと、地方本部闘争委員であつてピケならピヒケの指揮者として阻止した一つの団体の責任人的な行動であつた、あるいはそれが指名しておりろ、こういうような状態にあつた、こういうように解釈していいわけですか。
  61. 大石重成

    大石説明員 ピケと申しますか、そこに方々に固まつてつたのでありますが、あるいはそれがピケになり、あるいは列車のおりませんときにはあるところに集合しておるというふうなかつこうで、それの指揮をとり、しかも率先違反行為をやつた、こういうふうな状態であります。
  62. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 参考人にお尋ねしますが、参考人の陳述を見ましても、どうもはつきりしないのであります。たとえば、月光事件なら月光事件のときのような模様が、われわれに浮ばないのです。あるいは広島の事件のように雷管を持つていなかつたとかなんとかいうこともない。その点もはつきりしないのですが、もう少し具体的にお話願いたいと思います。
  63. 歌崎藤作

    歌崎参考人 具体的に申し上げますと、要するに遵法闘争を併用して行つてつたために、私が先ほど申し上げたように、具体的な例といたしましては、いわゆる機関士機関士として乗務をする場合に運転規程、乗務規程によつて携行品というものがあるわけです。広島の例等でいわれたように、それぞれの運転防護の用具とかあるいは運転する場合の列車ダイヤ、あるいはこの列車は何々間に変更をする、こういうものは運転規程によつて明確に一つの規格に当てはまつた用紙があるわけであります。これら成規の運転通告券を発行されずに、一つのそこにあつたあり合せのざら紙に時刻の表示をしてこれで乗つて行け、あるいは運転通告券というものを持たなければ列車運転してはならぬ、こういうことが運転規程に明記されておるにもかかわらず、そういう成規のものを持つておらなかつた。ここにいわゆる東京駅における紛争の原因があつたと私は考えております。
  64. 楯兼次郎

    ○楯兼次郎君 今多賀谷委員質問等を聞いておりますと、実にわれわれもはつきりと、いわゆる第二の指令逸脱したものであるという歌崎君以外の者の行動についての具体的な情景が浮かばないわけです。私は一つの例をとらえて具体的にお聞きしたいと思いますが、三三列車でありますか、七十分遅延をしたのは、当局説明ではピケによるものである、こういうことをおつしやつておるわけです。ところが組合側は、それはピケによるものではない、具体的な事実としては二等車のスプリングが破損をしておる、従つてこれを解放をするために相当の時間が——こうしたことが行われなくても解放の時間で遅れたであろう、こういうことを述べておられるわけです。この問題について私は組合側から先へ説明をされた方が早いと思うわけでありますが、七十分遅れました前後の関係について、やや詳細に御説明願いたいと思います。
  65. 歌崎藤作

    歌崎参考人 三三列車の場合におきましては、一応東京駅頭にすえつける間において、品川の客貨車区からこれが回送されて東京駅に到着をし、これが発車前にすえつけられる、こういう順序が平素とられるわけであります。それで当日三割休暇、こういうようなことにおきまして、この三三列車が一応東京駅に品川から回送されて参つたときが、約十分程度遅延をいたして十五番線に到着をいたしたわけであります。それからさらにこの列車が三三列車として正式に旅客を乗車せしむるホームにすえつけられまして、一定の検査規程によりまして、検査掛が各列車を精密な検査をいたすわけであります。その検査をいたす際に、前から二両目の特別二等車のスプリングが不良である、こういうことにおきまして、この列車を抜かなくては運転支障がある、こういうことを課員、いわゆる局の課員からそういう通告がされまして、この二等車が一軍解放をされ、そうしてこの列車を出すに至つた。その間にこの列車に対する機関士が——これまた先ほど申し上げたような機関士としての諸条件を具備をしておらなかつた、こういう点で木田君なり伊藤君等と機関士あるいは局の担当の課員等において、明確に運転通告券あるいは列車運転ダイヤの所持をさせて乗せろ、こういうトラブルも多少あつたわけですが、重大な遅延原因となつたのは、やはりこの特別二等車が不良であつたことが、そうした七十分という大きな遅延になつた原因一つになるわけであります。
  66. 楯兼次郎

    ○楯兼次郎君 それでは大石説明員にお伺いしたいと思いますが、あなたは三三列車が七十分遅れた根拠は、ただピケによつて処分該当者が先頭に立つてつたから遅れた、こういうことのみおつしやつておるわけであります。ところが現実に組合側参考人説明では、二等車のスプリングの下ぐあいであつた。これは組合側でなくて、あなた方の方の非組合員がこれを発見し、解放方を要請をしておる、こういうことを言つておるわけです。この事実をなぜ説明をされなかつたか、それからその事実を認めるかどうか、この二点についてお答え願いたい。
  67. 大石重成

    大石説明員 三三列車の遅れた原因を、私が報告を聞いておりますのは、東京機関区のピケ・ラインによりまして、成規の乗務員が乗務を阻止されまして、乗す、乗れないということが一つと、それから私どもの方で先ほど申し上げましたように、ダイヤが非常に乱れましたために、機関車の変更をせざるを得なくなつた。その点につきましても、いろいろとトラブルが起きましたこと、それから発車をしようというときになりまして、機関車のデッキで小ぜり合いが起りまして、列車が起動いたしましたときにピケラインによつて阻止されましたために列車がとまつた、かようなことで、いろいろ総合いたしまして七十分遅れたというふうに私は聞いておりました。今組合の方のお話になりました二等車のスプリング云々ということにつきましてただいまはつきりした資料を持つておりませんので、詳細取調べて後刻お答えいたします。
  68. 楯兼次郎

    ○楯兼次郎君 私は先日来の委員会で、われわれとしても両方の意見を率直に実態を聞いておかなければならぬかと思うわけですが、私たちが四日間にわたつてお聞きした経験から行きますと、どうも一番の焦点がぼやけておる。私はたまたま組合側参考人から車両毀損ということが言われたので、気がついたわけでありますが、当然それも遅延原因になるということを、率先してあなた方がここで説明されなければいけないと思います。間接的なずつと前のやつからここにしわ寄せをして来て、その原因のみによつて七十分遅れた、こういう説明では納得が行かない。特に今組合側参考人が言われましたスプリングが不ぐあいであるという以外、機関士として諸条件の備わつておらないのに、あなた方の方では、組みかえやいろいろの点もあつたと思いますが、乗務させようとした。これを組合員が阻止した。その現象だけ見れば、私はこれを阻止するのが当然である、こういうふうに考えられるわけです。歌崎参考人にお伺いいたしたいと思いますが、機関士としての諸条件が具備されておらない——具体的にどういうものが欠けておつたかという点を、ひとつ伺いしたいと思います。
  69. 歌崎藤作

    歌崎参考人 ここでちよとつけ加えておきますが、ただいまの三三列車遅延原因になつた点は、今私が申し上げましたスプリングの問題と、これに対する三三列車乗務員の手配ができておらなかつた、こういうことで四一列車乗務員をこれにふり当てた、こういうこともあるわけでございます。従つてこの四一列車運休いたし、四一列車機関士を三三列車にふり向けた、こういうことであつて、その際に先ほど申し上げたまず第一点として私の方で調査をした内容では、運転通告券が正式のものが発行されておらない。それから列車のダイヤが正規りものではない、いわゆるざら紙に書いた、それも組合員の方からそういうものを持つておるかと機関士に対して尋ねたところが、ないというわけで、当時派遣をされておつた当局側機関車課の課員に対して、そういうことでは旅客列車運転することは相ならぬじやないか、こういう点で、いわゆる一時の間に合せ的にざら紙に時刻、各駅の通過時分というものを記入をして渡されたということが、事実として私の方に上つておるわけであります。
  70. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 今の点について当局組合側との意見が、かなり違うわけであります。当局の方も、スプリングの故障についてはまだ詳細に聞いていないということでありますので、次会までにひとつ三三列車遅延した理由について、当局組合側より書類をもつて資料を出していただきたい、これを要求いたします。
  71. 赤松勇

    赤松委員長 それではさようにしてください。
  72. 楯兼次郎

    ○楯兼次郎君 それでは資料が参りましてから、さらにお聞きしたいと思います。
  73. 井堀繁雄

    ○井堀委員 時間がないそうで、たいへん恐縮ですが、今後審議する上に非常に重大だと思います一点がありますので、ごく簡単にお尋ねしておきたいと思います。  東京管理局長としての解雇理由について、だんだん御説明がありました中で、仲裁裁定を完全に実施し、年末手当に関する要求貫徹を国鉄労組の本部から各機関指令したことによる理由が最も強く説明されました。またあなたの方から出されている理由書の中にも明らかでありますが、こういう理由で、なぜ今日東京管理局の管下にある被解雇者になつておる人たちを選ばなければならなかつたかということについて、明確な説明がついていなかつた。この点は、今後これを審議する上に重要だと思いますので、この機会にこの点だけをはつきりしておきたいと思います。東京本部指令したものによつてあの行動が起つたとするならば、その問題でなぜ処分をしなければならなかつたか。その点に対する理由がここで明らかでないので、もしこれ以外にあるならば後日出していただいてもけつこうでありますし、今答弁ができますならば、明らかにしておいてもらいたい。
  74. 大石重成

    大石説明員 東京地方本部といたしましては、違法な指令本部から受けてその実行を指導したというところに、私たち責任があると考えております。
  75. 井堀繁雄

    ○井堀委員 あなたの方の出しております資料の説明も、公企労法の十七条、十八条によつて処分いたしておるわけであります。だからその処分の理由としては、ここにあげておる中闘の指令に基いて行動が起つたということなら納得できるわけであります。国鉄の労働組合の組織からすれば、中闘の指令によるのでありますから、ここに問題が限定されなければならぬのに、ことさらに東京局の管内の労組の下部機関の人を解雇したということに対する理由が明らかでない。その理由を明らかにされることを、私どもは今質問をしておるわけであります。この資料では十分でないし、今までの答弁でも明らかでないのです。特別の理由があるなら、その特別の理由をここであげなければいけない、そのことをお尋ねしておるのです。もしその用意がないというのでしたら、時間もないようですから、資料でお出しになつてもけつこうでありますが、資料がないならない、あるならあるという答弁だけ伺つておきたい。
  76. 赤松勇

    赤松委員長 次期委員会までにそれを出していただけますか。——なお近いところですから、必要ならば一度現地の調査をしてもいいと思つておるのですけれども、御協力願います。  それでは午後一時三十分まで休憩いたします。     午後零時二十分休憩      ————◇—————     午後二時五分開議
  77. 赤松勇

    赤松委員長 休憩前に引続き会議を開ます。  特需関係労務に関する件について調査を進めます。     —————————————
  78. 赤松勇

    赤松委員長 本件につきましては、本日出席の予定の坂本参考人がお見えになりませんので、そのかわりに関東特需労協事務局長細貝義雄君より参考人として御意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  79. 赤松勇

    赤松委員長 御異議なしと認めて、さよう決定いたします。     —————————————
  80. 赤松勇

    赤松委員長 まず一応通産省の影山特需課長から、今年度の特需の見通し等につきまして御説明を願いたいと思います。影山説明員
  81. 影山衛司

    ○影山説明員 お答え申し上げます。今年度の特需の見通しでありますが、特需すなわち米軍その他政府機関の物資及び役務の調達でありますが、これの二十八年度の契約の実績は約三億三千万ドル程度ありました。これが来年度どういうふうになつて行くかという見通しでございますけれども、まだ米軍関係の来年度の予算がはつきりときまつておりませんので、確かなことも申し上げられいなのでございます。大体二十八年度におきましては、主として朝鮮作戦関係の特需が活発であつたわけでございますが、昨年の七月に朝鮮休戦になりまして以降、今後においては特需の重点というものは、一つは朝鮮の復興特需、それから第二はMSAに伴います兵器弾薬等の域外調達、それから第三は、韓国とか日本に駐留をします米軍の必要とする物資、役務の調達、こういう三つの点に重点が移されて行くものと思われます。大体今までのいろいろ研究してみました結果では、やはり多少は将来漸減して行くというふうに考えられますけれども、そうはなはだしい減少はないであろう、三億ドル程度は確保されるのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  82. 赤松勇

    赤松委員長 それでは質疑を許します。  なお参考人にお願いしますが、この間概要を御説明つたのですけれども、要約でよろしいから、現在の修理特需の実情とこれに関する問題、あるいは希望意見等、そういうものがあれば簡単に御説明願いたいと思います。
  83. 細貝義雄

    ○細貝参考人 修理特需の現状を申し上げますと、朝鮮の戦乱終結とともに、ただいまの御説明にあります以外に、直接に影響をこうむりましたのが修理特需でありまして、これは大約四割ないし四割五分の作業量の打切りということが現状であります。その例を申し上げますならば、三菱下丸子の東京製作所におきましても、あるいは赤羽日鋼におきましても、もつと極端なのは京浜小松における作業打切りによる全員解雇、あるいは日野における約半数の人員整理、ビクターにおける三分の一の人員整理ということでありまして、四割ないし四割五分の作業量の縮小という形でもつて一方的に打切られております。これが修理特需における現状でありまして、そのためにそこに働いております労務者は、これまた機械的に解雇されて、何ら補償なく街頭にほうり出されておるという現状であります。こういう状態において、関東地方特需労働協議会といたしましては、この労働者が受けておる労働条件というものが、同じ職場に働いておりますLSO関係の職業労務者の退職金と比べて、作業内容その他について何らかわらないにもかかわらず、きわめて低額な退職金をもつて整理されておるという現状を陳情いたしまして、その退職金の支払い能力が職業労務者の退職金に相当額下まわるというような現象に対しましては、政府において、これに対する補償を行つていただきたい、これが現状並びに希望であります。
  84. 赤松勇

    赤松委員長 御質疑はございませんか。
  85. 日野吉夫

    ○日野委員 通産省の特需課の方にお伺いいたしますが、二十八年度のが三億六千万ですか。
  86. 影山衛司

    ○影山説明員 三億三千万ドルでございます。
  87. 日野吉夫

    ○日野委員 来年度もはなはだしい減少はないと見ておられるようですが、今のところ、昨年の十一月以降の受注を見ますと、昨年同期の三分の一くらいになつているようですが、これはどうしてこうなつておりますか。
  88. 影山衛司

    ○影山説明員 十一月以降特需が減少していることは、御指摘の通りでございます。それまでの特需の大部分——大部分とは行きませんが、相当部分を占めておりました弾薬類の特需が、昨年の八月からずつととだえておりまして——これはMSAの協定とも関連があつたかと思いますが、そのためにずつととだえておりましたので、少くなつておるというのが一番大きな原因であると思います。
  89. 日野吉夫

    ○日野委員 特需産業というのは、朝鮮事変が始まつて以来、一時花形産業であつて、今日の日本の復興に大きな力を持ち、今日までの外貨を積んだ大きな一つの産業であつたのですが、こうなつてみますと、ほとんどこの特需関係の問題が顧みられていないというので、各地に問題が起つているのであります。去年の四月選挙の最中に、米軍の当局から二年間の特需の保証をやるという声明があつたり、今年の二月スタツセン氏などが来て、八億の特需の約束をして行つたようなことがあり、今の話では、MSAの交渉の過程でこういう不規則の発注しかないというようなことになつておるのかもしれぬが、まだまだこれは日本政府の今後の努力で、ふえるのではないか。朝鮮なども、初めは日本からは買わないというようなことを言つてつたが、やはり買うということで、メンバーをこちらに派遣する予定にもなつており、一部には六十二万ドルの自動車の部品を買う、鉄道の車両もそれをもつて充てる、肥料の購入資金として一千一百万ドルですか、こういうものを用意して、これに米軍も認可を与えたというようなことになつているけれども、その後一向に進捗していない。こういうことは、結局MSAの締結の過程で遅れてはいるが、このあとMSA問題が解決つけば、次々出て来るのか、あるいはこのまま先細り、打切りの前提になるのか、そこらの関係をひとつ伺いたい。
  90. 影山衛司

    ○影山説明員 お答え申し上げます。一番最初に御指摘になりました二年間米国側の日本に対する特需を保証してやるとか、スタツセン氏の八億ドルの特需を保証してやるというふうな言明がございましたのは、先ほど私が御説明申し上げました三億ドルのほかに——三億ドルのほかと申しますと、物資とか役務のいわゆる狭い意味の特需の契約が三億ドルあるのでございまして、そのほかに米軍の軍人軍属及びその家族が消費します金、それから直用労務者用に軍が使います金、そういうものを含めまして大体八億ドルということを言つておるのでございますが、この八億ドルは、私どもの見通しといたしましては、八億ドルまでは行かなくても七億六千万ドル程度は行くであろうということを考えておるわけでございます。  後段において御指摘になりました政府の努力次第によつて特需がふえるのではなかろうかという御指摘は、非常にごもつともな御指摘でございますが、その努力次第でふえるではないかとおつしやいましたものは、一番最初御説明伸し上げました狭い意味の特需の三億ドルのことだろうと拝察するのであります。そのうち朝鮮の復興特需につきましては、昨年の七月朝鮮の休戦会談が成立しまして以降、ちよつと復興用の予算の使い方につきまして過渡期的なずれがございまして、まだなかなか本格的な使い方が始まつていないのでございます。しかしながら、今後この復興特需については、先ほども御指摘がございましたように、韓国の方も割合積極的に日本に発注してくれるでありましようし、それから軍関係の発注におきましても、日本に同情的にやつてくれるとううことで、日本政府及び日本の業界におきまして、ちようど輸出と同じような努力をいたしますならば、復興特需の方の確保も可能であろうというように考えます。  それから第二の項目でございます兵器の関係、これは従来通り弾薬類を主といたしまして、しばしば通産大臣も国会で言明しておられますように、約一億ドル程度の弾薬類を中心とした兵器の特需があるであろうというふうに言われております。これも日本政府及び業界の努力次第によつて、確保されるという、ふうに感じております。今後ともわれわれの努力次第によつては、特需というものは全然先細りになつてしまうというふうなものではないというふうに感じておるわけでございます。
  91. 日野吉夫

    ○日野委員 スタツセン氏が日本を経て朝鮮をまわつて、朝鮮の日本に発注することなどには、相当有力な発言をしたとも考えられますが、その足でマニラに行つて東南アジア関係会議を開いておるようです。その東南アジア会議等においてどういうとりきめがあつたか、何かそれらの情報を入手しておられるならば、一応発表願いたいのです。過般この委員会で、特需問題を大分取上げて、特調から資料などをもらうことの約束をしていたが、一向にその資料等が出て来ない、情報がわからぬ。われわれ何にも知らないで、つんぼさじきにいるうちに、経済雑誌等では相当詳細な数字まで出して発表している。こういうことでは、なかなか審議が進まない。もうすでにMSAの協定も国会を通つておる、すでに防衛計画の案も発表になつておる。もう経審の物動計画の案なども出ているので、こういうものは審議の資料に提供してもらわないと、とてもやつて行けないと思うのだが、もしマニラの会議の結果がわかつていれば、一応これを御発表願いたい。今いろいろの問題が起つている。特需関係の業者が大分困つておる。中には重大な事態を引起しているのもあるが、これは当局がこうした判断の資料にするいろいろの方針を一切秘密にしているところに、先物を買つたというか、先走りをして計画を立てて今手をあげている。こういうようなことにもなるので、当局にも一部の責任が生じて来ると思うのですが、こういう関係について、できればある程度の発表はしてもらわなければならぬと思うので、この点は通産大臣が経審長官を兼ねていますから聞いてみたいと思つていたところですが、一応そこらまでわかつていたら、お知らせ願います。
  92. 影山衛司

    ○影山説明員 スタツセン氏が最近マニラで会議を開かれたということは、私聞いておりますけれども、まだその詳細の内容は存じておりませんので、御了承いただきます。  それから資料の件でございますが、私のところで調整できます資料でございましたら、項目をお示し願えれば調製してお届けいたしたいと考えております。先ほどの参考人の方からお話がございましたように、特需のある部門におきましては、特需の打切りだとか、作業量の減少だとかいうようなことで、非常にお困りになつている例も私ども承知しておるのでありまして、これは日米合同委員会を通じまして、こういう事態は非常に困つた重大な事態であるということも、非常に強く相手国の英国側に認識させておりますし、日米合同委員会を通じまして、補償の問題等もできるだけのことを交渉しておる次第であります。その点御了承願います。     —————————————
  93. 赤松勇

    赤松委員長 この際お諮りいたします。ただいま厚生委員会において審査中の厚生年金保険法案は、本委員会の所管事項にもきわめて関連が深いと思いますので、厚生委員会へ連合審査会り開会を申入れたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  94. 赤松勇

    赤松委員長 御異議なしと認めてさよう決します。     —————————————
  95. 赤松勇

    赤松委員長 それでは特需関係労務についての質疑を継続いたします。細具参考人
  96. 細貝義雄

    ○細貝参考人 ただいまの御答弁に関係がありますので、申し上げたいと思うのでありますが、修理特需におきましては、私契約であるために、一方的に請求が打切られる。一週間先のこと、あるいは当日になつてもわからないということが間々ありまして、こういう点については、私たち働く者として非常に不安定な状態でありますので、補償等の問題もありますが、そういう事態に関して、政府はそういう事態のあることを米軍と協議の上、事前に業者に通告をしていただくようにしてもらいたい。そういたしませんと、一切のものが当日でなければわからなくて、それもきわめて少い作業量の減少ではなく、先ほど申し上げました通り四割になんなんとする作業量の打切りですと、ほとんどその工場の死命が制せらるというような重大な事態が起きますので、政府の努力をこういう点に十分現わしていただかなければ、働く者として非常に不安定であるということを申し上げたいと思います。
  97. 影山衛司

    ○影山説明員 たいへんごもつともな御発言でございまして、車両修理特需の打切りが、米軍予算の関係で急に行われます結果、非常に困つた事態が起つたわけでございますが、これに関しましては、日米合同委員会を通じまして、こういう重大な事態が起ることをそう急にやつてもらつては困るから、こういう事態が起る場合には、前もつこちらに通知してもらわなければ困るということを申入れしておりまして、先方からも、こういうことがわかれば、先方ですぐこちらに知らせてやるというふうに言つております。今後は今までのようにひどい事態は起らないのじやないかというふうに考えております。
  98. 赤松勇

    赤松委員長 この際中西労政局長から、労働省の見解を伺いたいと思います。
  99. 中西実

    ○中西政府委員 この問題は、労働省としましては当然突然の打切りによる失業者その他の発生は困ることは言うまでもありませんので、調達庁あたりから、十分に米軍にそういうことのないように、是正方を申し入れて折衝しておるところでございます。
  100. 日野吉夫

    ○日野委員 労働省に伺いますが、過般特調の総務部長に聞いたのですが、非常に消極的で、自分たちは契約には立ち会うが、それ以外何か問題が起つたときでなければ、タッチできない。従つて一切そういう関係がわからないのだというようなことを言つているのです。当面の労働行政を扱つている労働省として、こういう事態が起り、そうしてこういう契約があれば、当然にいろいろの問題が起ることは予想しなければならぬ。業者と駐留軍との私契約である以上、これはどうしても対等の関係ではないのでありまして、それが労働者にとつては、自分たちには何らの故意も過失もないのに、この契約の仕方で労働条件が悪くなり、今言われたように、ただちに契約官か何かがいて期間も置かずに解雇される、あるいはもつとひどい契約官の考え方一つで免職ないし雇用拒絶ができるというような条項が含まれている。こういう契約があることは、当然そこには労働問題が発生する可能性があるので、これは労働組合等からそれぞれ関係筋に申入れはしてある。しばしば六箇月以前にひとつ予告をしてくれ、こういうような申入れがしてあるのだが、その後一向にそういう折衝をした様子がない。労働省はこれを、直接の官庁として黙つてみておるわけには行かぬのじやないかと思うのでありますが、労働省はこれに対して何か折衝したか、あるいはそういう経過等があれば、一応伺つてみたいと思います。
  101. 中西実

    ○中西政府委員 今の問題は、結局特需契約の建前の問題に関係して来ると思うのでありまして、とにかく今のように私契約のかつこうになつております限りは、一応今の建前上から、ときに問題になつておりますような事態が出来ますことは、これはやむを得ないというように考えられるのであります。しかし、なるべく事前にそのことがわかるようにということが望ましいことでありますので、この点につきましては、私の方としましては、労働政策の立場から、調達庁を通じて外務省、これから軍に十分申し入れてございます。ただ軍としまして、今までのところでは、これに対して確たる確答を得ていないというふうに承知しております。  それから、契約の中に、あつさりと事前通告もなしに一方的に解雇できるようなお話がございましたが、しかし特需工場へ行きましても、当然基準法の適用もございまして、理由もない即時解雇ということは、あり得ないわけであります。それから契約の中に保安条項の問題がございます。これも理由があればいたし方ございませんけれども、なければ、われわれの方で取上げて十分に善処いたしております。
  102. 日野吉夫

    ○日野委員 このことでは、特調にこの間お尋ねしてみたのですが、非常にむずかしいと、こう言つておるのであります。けれども、やはりこの私契約というのが災いをなすので、これを公契約に改めて、一応国と向うの駐留軍と対等な立場で契約して、これを責任ある業者に遂行させる、こういうような間接契約の形をとることが望ましいと思うのです。むずかしいということは言つておられるが、決して不可能じやないので、この点こうすべきだというお考え労働省でお持ちかどうか。かつて講和以前の調達の仕方は、そういう形でやつていたことがある。これは、米軍に折衝したら、可能だと思うのですが、労働省の考えはどうでしようか。
  103. 中西実

    ○中西政府委員 この問題は、もちろん労働問題と関係はございますけれども、一応これの主務官庁の見解に、実はゆだねておるわけであります。これは、聞いておるところによりますと当初いろいろと論議がされたようでございますが、いろいろと関係方面との話合い、それから直接担当しておる官庁におきまして、やはり現在やつておるようなやり方で行こうということに、いろいろな経緯を経てきまつたようでございますので、一応その方の判断に従つておるわけでございます。
  104. 影山衛司

    ○影山説明員 現在の特需の契約の私契約を公契約に改めるという点でございますが、この点国全体の利益としてどちらがいいかということは、いろいろ議論のあるところでございます。当初講和が終りまして新しい事態が発生いたしましたときに、例の日米行政協定との関連で、このことが議論されたのでございますけれども、結局のところ私契約のかつこうにおちついたわけでございます。現在の事態に大きい変化がない限りは、見通しといたしましては、今のところ私契約を公契約に改める可能性は、あまりないのじやないかというふうに率直に感じております。
  105. 日野吉夫

    ○日野委員 大分弱腰のようですが、今いろいろの問題が起る根源がここにあるのじやないか。私契約で一方的にやられるところに、今日の修理特需の問題ばかりでなく、いろいろの問題が起つて来る原因があると思う。一時はこの形でいい、朝鮮事変のまつ最中のああいう状態のときは、これでいいかもしれぬけれども、今日特需というものが先細りの一つの見通し、こういう膠着した状況になると、やはり公契約に引きもとしてやつた方がいいのじやないかと思うのです。これは特調が非常に弱腰ですけれども、強くこれを要請するならば、改訂は可能だと思うのてす。もし現状のままてこの特需の今の状況を続ければ、当然出血が予想される。何かここに出血防止の手段を当然考えてやらなければならぬと思うが、特需産業の保護あるいは転換労働者の直用労働者との不均衡の是正、こうしたものについて、何か労働省に対策がありましたら、ひとつ御発表願いたいと思います。
  106. 中西実

    ○中西政府委員 われわれの方からいろいろの希望も言い得るわけでございます。要は、やはり労使関係の安定あるいは雇用関係の安定という点が、万全に行くようにということを期待しておるわけでございますが、ただこれに対するいろいろな契約上の措置は、やはり産業関係を預かつておる方でいろいろと都合もあると思いますので、その方で十分に検討してもらいたいというふうに考えております。
  107. 細貝義雄

    ○細貝参考人 いわゆる契約の問題に入るのでありますが、私たちは私契約よりは公契約の方がよろしいということは、再三国会にも陳情しておつたところなんでありますが、行政協定との関連から考えまして、きわめて困難であるということも了承しております。そういたしますと、先ほど修理特需の現況を申し述べましたように、非常に修理特需が先細りになるということも、衆目の一致しておるところでありますので、当然この特需打切りによる退職者に対する補償の問題になつて来るのでありますが、私契約のために対等の位置において単価の改訂という問題がきわめて困難な状態にある現状において、同じ職場に働いておりますLSO関係の労務者との退職給与の差、この問題ついては当然われわれが役務の提供という形でドルをかせいで来た従来のLSO関係労務者と何らかわりのない状態から考えてみましても、雇用主が、雇用関係が違うという理由のみで補償なくして街頭に出て行くということについて、十分配慮あつてしかるべきではないかと思うわけであります。なぜそれが退職給与において差があるかと申しますと、単価の中に織り込まれる退職積立金相当額が限定されております関係上、最終的に支払い能力が企業にないということになりますので、従来の慣例から考えていただいて、われわれとしては、直用労務者の退職金相当額を下まわる場合においては、政府においてこれを補償していただきたい、こういうふうに希望いたしたいと思います。
  108. 中西実

    ○中西政府委員 私どもは、一応建前か私契約になつております関係上、その工場、事業場における労働関係は、一応使用者が全責任を持つてつておる、従つて使用者が、たとえば今の退職金の問題にいたしましても、もしも世間一般並から非常に下まわつておるということになれば、それが払えるように努力すべきだというふうに考えておるわけでありまして、その点を国家が補償するというよりは、やはり向うとの交渉で、それが払えるような契約にかえて行くより、やむを得ないのじやなかろうかと考えております。これは特需工場に限らず、一般事業場でもそうで、退職金は工場によつて非常に差があります。非常にいいところもありますし、ほとんど出ないところもあるわけです。それと同じでありまして、退職金の額はこうでなければならないというものは、実はないわけであります。その点は、今のところ、結局使用者側が満足に払えるように努力すべきだというのが筋じやなかろうかと考えております。
  109. 日野吉夫

    ○日野委員 通産省の方に伺います。受注の契約高を見ますと、二十八年度の上期では、物資で二億五千万ドル、サービスで八千八百万ドル、合計二億九千三百万ドル、こうなつていますが、下期では一億五千二百万ドル、去年の七月から見ますと七千九百万ドル、八月が九百万ドル、十月が二千三百万ドル、十一月が八百万ドルというふうに非常にでこぼこが多いですね。こういうことで、しかも今年の一月になると一千一百万ドルということになつている。こういうでこぼこがあつて、通産省ではこういう状況で、防衛計画、物動計画が立ちますか。
  110. 影山衛司

    ○影山説明員 特需全体の契約につきましては、月によつて非常にでこぼこがございまして、計画性がないわけでございますが、物動と申しましすか、国の産業政策と申しますか、そういうものに非常に重大な関係のある防衛産業計画、兵器弾薬類というものにつきましては、あらかじめ米軍側と常に折衝、連絡しておりまして、たとえば来年度においては、さしあたつて七千五百万ドル程度の砲弾類を発注するというようなことを言つておりますので、そういういわば物動計画に重大な影響を及ぼすようなものについては、事前に連絡してやつております。
  111. 日野吉夫

    ○日野委員 結局こういうでこぼこな結果になるのは、私契約で駐留軍と業者の間に何らの調整なしに行われる結果がこうなるのであつて、これが公契約になつて、国がそこに介在して契約を調整するならば、こういうでこぼこなしにある種の調整が保てて、物動計画等にも非常に好都合である。計画を混乱する、そしてこのことによつて社会問題を起すというようなことがあるならば、やはり若干の困難はあつても公契約に改むべきであると考えるが、労働省、通産省等の見解を伺つておきたい。
  112. 影山衛司

    ○影山説明員 たいへん有益な御意見でございまして、研究させていただきたいと思いますけれども、先ほど申し上げましたように、見通しといたしましては、公契約に移して行くのはなかなかむずかしいものでありますので、こういう物動とか社会問題とかに重大な関係のあるものを重点的に取上げてやつておりますのと、私契約の立場では、先ほど御指摘になりましたように。     〔委員長退席持永委員長代理着席〕 アメリカ側と弱い日本の業者との間では対等の條件で契約がア行われていないという点がございますので、それを日米合同委員会に契約の調整委員会とか調停委員会とかいう委員会がございまして、その側面から契約条件の改善あるいは契約の打切りになつた場合の退職金の問題とかいうものを、日本側の業者を援助するという方向でやつているわけでありまして、御指摘の公契約の問題は、ごもつともな御意見でございますので、研究をさせていただきたいと考えます。
  113. 日野吉夫

    ○日野委員 これは大分重要な問題で、ただちに解決できないとしても、もしこういう事態で、今、次々起つている日平産業の問題などの訴えを聞いても、これはこのままにしておけないじやないか。もし公契約にしてこういう事態が救われればけつこうだけれども、そう行かないならば、何といつても保護立法でもして社会問題を防止する、こういうことが絶対に必要になつて来るのではないかと思いますが、労働省ではそういうお考えはございませんか。
  114. 中西実

    ○中西政府委員 御質問の問題は、産業所管省でいろいろと考えてもらわなければならぬじやないか。われわれの方としては、先ほど言いましたように、とにかく労使関係、雇用関係の安定、これにプラスになるような方法が望ましい。しかし、われわれの方の立場からだけでは不十分で、いろいろとほかの経済関係もございましようから、要は、建前としてわれわれの方として望ましいのは、今言つたようなことでありますが、その全体のことを考えてのいろいろな改善施策は、産業省において十分考えてもらいたいと考えます。
  115. 日野吉夫

    ○日野委員 もちろん労働省だけでは決定できないでしよう。特調、通産省、外務省等も関係を持つでしようが、協議をしてそういう保護立法でもやるという方向に進める御意思がございますか。
  116. 中西実

    ○中西政府委員 日本の今の経済機構全体の建前が、根本として自由経済、自由企業ということになつております。確かに今の問題も、公契約にすることによつて、いろいろと利点もございます。しかしながら、特需関係ばかりでなしに、たとえば一般の貿易関係その他にいたしましても、同じような問題があろうかと思いますので、これはここだけを切り離して考えるわけに行かないものじやなかろうかと考えております。     〔持永委員長代理退席、池田(清)   委員長代理着席〕
  117. 日野吉夫

    ○日野委員 実は通産大臣が来るというものですから、見通しを聞かなければ明確な線が出ないので、末端に入つているのですが、やはりこうした問題は、直接の関係のある労働省あたりがまず中心になつて、そういう事態を、社会問題を引起さない前に、それぞれの関係筋と協議をしてそういう方向に進められることが望ましいと思うので、そういう要望をしておきます。そのほかに、特調がこのことについてはきわめて消極的ですが、特調では前に駐留軍の使用による特別損失の補償、という法律をつくつて無過失責任の救済をやつている。この間大分議論をしたのですが、これはあの法律の時代とは違う。避けようという努力をすれば避けられるということはありますけれども、今日の労働者の状態においては、労働契約の自由がそうないのでありまして、やはり無過失責任のような形で、労働者の意思いかんにかかわらず、業者と駐留軍の契約でこういう事態が起るならば、何かこれを立法して救済して行くべきものだと考えます。この点については、慎重にお考え願いたいと思いますので、特に要望いたしておきます。  なお、特需の見通しについてお伺いしたいのですが、通産大臣がなかなかお見えにならないのですが、ここで打切りになるのか、あるいは今後このままで継続して行くのか、MSAの関係でもつと多くなつて行くのか、あらゆる情報を総合して——私はそう悲観すべき状態でないと思うのですが、これらについてのはつきりした見通しをつけて、このまま行くならば、今のような契約の改訂や救済の形でやつて行くか。もし将来重大な転換が来るならば、これは企業の転換を考えなければならぬわけですが、何か通産省の方に特需産業の転換指導の計画でもあれば、伺つておきたいと思います。
  118. 影山衛司

    ○影山説明員 特需の見通しにつきましては、冒頭において、将来多少は減つても、大体本年度と同様に三億ドル程度が確保できるのじやないかということを申し上げたのでありますが、これは一般的に申し上げたのでありまして、その中のおのおのの項目について見ますと、やはり興りすたりがあるわけであります。たとえば、一番問題になります特需の車輌の修理契約などでございます、これは米軍側あたりとも非公式にいろいろ議論したりしておりますが、アメリカの今会計年度が終ります今年の六月までは、少くともそうひどい、現状以上の減少はないということはほぼ確実だと思いますが、来年度の米会計年度においてはどうなるかということは、まだアメリカの予算がきまつていないものですから、そう確実な言質等はとるわけには行きません。どうも私の受けました感じでは、現状からそうひどい減少はないのじやないかというふうに考えております、  そこで、万一将来におきまして、それが少くとも一部でも減少するようなことがあつたり打切りがあつたりする場合に、これらの特需産業の企業の転換対策いかんということでございますが、これは一般的というか抽象的にはなかなか議論できない問題でありまして、おのおのの会社、工場の特質がございまして、そのおのおのの会社、工場に適した転換対策をやりたい、その場合に、おのおのの会社、工場の方から具体的な転換対策を出していただいて、その資金的な面とかその他の、たとえば施設の転換の面とかいうことにつきましては、側面から御援助申し上げたいというふうに通産省としては考えておるわけでございます。
  119. 日野吉夫

    ○日野委員 あと一つだけ伺つておきます。今度のMSAの小麦買入れの五千万ドルの配分が、今いろいろ協議されておると聞くのでありますが、その中の一千万ドルの贈与が、基礎産業と防衛産業に使われる。けさの朝日新聞は、論説にこれを扱つて、特需産業の融資に使つてはならないという意見を述べておるのでありますが、何かこの配分の協議等に、この種の産業の転換指導というようなものを考えておる動きでもおありになるでしようか。
  120. 影山衛司

    ○影山説明員 一千万ドル相当の円貨の贈与分の使途につきましては、どういう方面に使うかということは、実はまだ具体的にきまつておりません。これは大体設備資金に使うということはほぼ確実でございますが、運転資金的のものには使われないだろうと思います。まだ具体的な細目については論議中でございます。
  121. 日野吉夫

    ○日野委員 私はこの程度で終つておきまして、あとは通産大臣が見えたときにその見通しをもう少し伺いたいと思います。     —————————————
  122. 池田清

    ○池田(清)委員長代理 次に失業対策に関する件につきまして調査を進めます。質疑を許します。大西正道君。
  123. 大西正道

    ○大西(正)委員 私は造船労働者の当面しておりますところの失業問題につきまして、特に第十次造船の促進という面から、二、三労働大臣並びに運輸大臣に質問したいと思います。  わが国の経済の自立のためには、海運造船の拡大強化が必要であることは、申し上げるまでもないところでございます。昭和二十九年度の貿易の見通しにおきましても、約九千万ドルくらいの輸入超過が予想されるのでありまして、これを克服するためにも、どうしてもこの際海運造船の飛躍的な拡充強化をはからぬばならぬと思うのであります。ところが、二十九年度予算案を見ますと、財政投融資の総額が非常に減つておるのであります。ふえたのは再軍備のための費用のみでありまして、本年度は昨年度の三千三百八十九億に対しまして二千八百五億円になつております。特に海運造船融資の総額は、昨年は二百二十億であつたのが、今年は百八十五億に減つております。  しかもその百八十五億のうちでも、開銀の融資が三十五億減つておりますので、そのうちの約十五億が当然この中に食い込むということで差引百七十億、こういうことを言われておるのであります。私どもはこの予算の編成に対しましては、組みかえ案を出しまして、この財政投融資のわくをもつと広げる、特に開銀の融資を約二十五億ふやすことにおいて、実質的において百八十五億よりも、さらに海運造船に対する融資の規模を拡大する組みかえ案をもつて闘かつたわけでありますが、遺憾ながらこれの実現を見なかつたわけであります。そこで私はお聞きしたいのですが、このような非常に少い予算のもとにおいて、二十九年度の新造船の見通しはどの程度のものかということを応お聞きしたい。
  124. 今井栄文

    ○今井説明員 ただいま大西先生の御質問にありました約百七十億の財政資金をもちまして、今年度の十次船の大体の建造量は、約十七万総トン程度に考えております。十七万総トンでございますので、隻数にいたしますれば約二十二、三隻というところではないかと想像いたします。
  125. 大西正道

    ○大西(正)委員 それは計画造船だけの数字でありますか。そのほかに輸出船並びに保安庁関係のものもあると思うのですが、そういうもののトータルをひとつお聞きしたい。
  126. 今井栄文

    ○今井説明員 先ほどお答え申し上げましたのは、計画造船のみでございます。これに対しまして、別に輸出船舶といたしましては、昭和二十八年度の実績等より推算いたしまして、約十万総トン、これに保安庁のつくられる船あるいはその他を合せまして、商船のトン数に換算いたしまして約五万総トンでございますので、先ほどの十七万総トンに対しまして十五万総トンをプラスした三十二万総トン程度が、大型船として昭和二十九年度に受注を予想されるように想像しております。
  127. 大西正道

    ○大西(正)委員 わが国の造船の稼働可能の船台の総トンは、六十五万トンだと言われておりますが、これだけの設備を持ちながら、わずかに三十二万総トンしか実際に造船できない。こういうことは、国の一つの産業計画の上からいつても、非常にまずいことであろうと思うのでありますが、この二十九年度予想されるところの三十二万総トンに対しまして、昨年並びに一昨年と、年次的に一体どのような数字が現われておるか、これをひとつお聞きしたい。
  128. 今井栄文

    ○今井説明員 ただいま手元に昨年度並びに一昨年度の建造量に関する正確な数字を持つておりませんが、大体におきまして計画造船並びに輸出船舶を合せまして五十一万トンから六十万トン程度ではなかつたかと思います。なお昭和二十七年度におきましては、大量の輸出船舶を受注いたしました関係上、計画造船と合せまして年間の進水量が約七十万トン近くになつてつたやに記憶いたしております。
  129. 大西正道

    ○大西(正)委員 今のお答えは、私どもの調査しておるところと大体合つておるのですが、もつと正確なことを申し上げますと、二十七年度は六十四万捻トン、これをパーセンテージで一〇〇といたしますと、二十八年度は四十万トンで二十七年度に対して六二%ということになります。そういたしますと、今あなたの方から御説明がありました二十九年度は三十二万総トン、これだけが予想されておる。これは二十七年度に比べますと、実に微々たるパーセンテージになるわけであります。  今度は労働省にお聞きしたいのでありますけれども、これだけ建造されるところの船が少いというところから、一体これによつて昨年度からどれだけの失業者がふえるというふうにお考えになりますか。これは当初労働大臣が労政方針を説明されたときにも、失業問題の項において相当失業者の数が少くなつたということが論議されたのでありますから。当然そういうことは考慮に入れたてのことだと思いますので、その点について伺います。
  130. 池田清

    ○池田(清)委員長代理 今係を呼んでおりますから……。
  131. 大西正道

    ○大西(正)委員 それでは私どもの方の数字をお示しして、話を進めます。二十七年十二月に臨時工をのけて九万七十人、二十八年度の六月に九万人、二十九年度は七万人、こういうふうに出て来るわけであります。そうすると、ここで昨年度から比べると二万人の失業が予想されるわけであります。造船工業は、非常に関連産業が多いものでありますから、その関連産業を含めますと、約七万五千人の失業ということが一応考えられる。家族を含めますと約二十万人が犠牲になると私ども考えております。このように見て参りますと、この三十九年度におけるところの財政投融資の減少によつて生ずるところの造船規模の縮小によつて、非常に多くの失業者が出て来ることになるわけであります。そこで労政局長にお尋ねいたします。これは労働行政の上から非常に重大な問題であると思いますが、この点についてどのようにお考えになり、またいかなる対策を考えられておるか、全般的に一応お尋ねいたします。
  132. 中西実

    ○中西政府委員 造船の発注が減ることによつて非常に失業者が出て来る、ことに地元の町村あたりでは間接に非常な被害を受けるのでありまして、労働省では、この関係でたびたび陳情を受けたことがございます。しかしながら何と申しましても、これは結局発注いかんでございまして、その元がふえませんことには、労働関係からいいますと、いかんともしがたいということになります。たとえば昨年あたり炭鉱で一年間に三万人の整理がありましたが、ここらあたりとも若干事情は似ておりまして、一応地域的に集中的な失業状態が出るわけであります。結局は、労働省といたしましては、失業保険関係とかあるいは失対事業関係、あるいは新たに他の職を見つけるというようなことで、何とかこれらをどこかにおちつけたわけであります。従つて、この造船関係で、もしも受注が昨年、一昨年並に行きませんで、そのために失業者が出ることになりますれば、やはりそういつた施策によりまして解決するよりほかになかろうと考えております。
  133. 大西正道

    ○大西(正)委員 今申しました二十九年度の財政規模の縮小によるところの失業者が出て来るという不安の上に、もう一つ初めに申しましたところの第十次造船の遅延によるところの非常な不安があるわけであります。私は播磨造船所を近所に控えておりますので、この関係もございましようが、非常な陳情、要請が出るわけであります。いまだに十次造船の計画が軌道に乗らない、もちろん着工できない。こういうふうな状況でありますけれども、これは単にわが国の経済の自立の上に重大な問題であるのみならず、失業問題としても——もちろんこれは今中心的な議題になつておりますが、大事なことであるし、またさきに労政局長が触れられたように、地方財政、特に造船所が中心になつてつているところの都市に対しては、非常なる打撃になるわけであります。こういう意味におきまして、各方面からこの十次船の着工が遅れているということは、たいへん困つた問題になつておるわけでございますが、一体なぜこういうふうに遅れておるのか、またいつごろから実施されるのか、この見通しをひとつお話願いたいのであります。ただ言いのがれのための答弁というのじやなしに、私は今日は運輸省の疑獄の問題で追究するのじやないのですから、ひとつその点はわかるように、詳細に説明を願いたい。
  134. 甘利昂一

    ○甘利政府委員 今お話のように、造船労務者及びその造船所の所在する地域の労働者にとつて、十次船の遅延が非常に大きな打撃になつておることはお話通りであります。本来ならば、われわれとしても三月の末までには一応二十九年度の造船計画をきめ、あるいは場合によつては船主なり造船所をきめまして、四月一日から着工すべき段取りにすべきじやないか、こういうふうに考えておつたのでありますが、ただ昨年九月にやりました九次の後期を行うときにもすでに市中銀行側から非常に金融面において苦しい、従つてやりたくないというふうな空気が非常に強かつたのであります。そのおもなる理由は、船会社に担保力が非常に少くなつて来た。それから一方運賃の悪いために、貸した金の償還期間が来ても償還できない、償還はもちろん利子を補給してやつても、その残りの利子もかつかつというような状態になりましたので、市中銀行としては担保の点及びその他の点から、造船融資はしたくないという空気が非常に強かつたのでありますが、今おつしやつたようないろいろな社会問題及び造船所の労務の問題等また海運の必要性から、政府としても強行したのであります。しかしその当時から、昭和二十九年度の新造船については、銀行の要求する担保の問題あるいは財政資金と市中銀行の比率の問題等について、何らかの措置をとらなければ、市銀は融資するのは非常に困難だということがわかつてつたのでありましてわれわれもその点について鋭意考慮して参つたのでありますが、本問題は市銀の融資が造船所に対して困難だというところにあつたわけであります。しかし大臣初め、みな十次船のやり方について根本的に考え直して、その問題はそれじや担保をどうして増すか、たとえば開銀及び市中銀行の担保の見方について、何らか緩和する措置はないかというような問題、あるいは来年度特に困りますのは、担保以上に全般の市中銀行の金融が非常にきゆうくつになつて来たということがそれに加わりましたものですから、この点について財界及び海運界あるいは造船界、労働界いろいろな方の意見を、大臣が今まで聴取いたしておりまして、おそらく近々皆様の意見をとりまとめて、第十次造船に対する根本施策を編み出しまして、経済閣僚懇談会、あるいはその他の会議において関係閣僚その他とも話合いされて、その基本方針を出されるのじやないかと考えます。またその基本方針が出ましても、財政資金の規模から言いまして非常に少くなる。現に一応予算としては百八十五億を出しておりますが、開銀に対する出資が幾分減るために、多少それより減るのじやないかというようなことも言われておりますので、財政資金全体としても少くなります。その面で造船量が非常に少くなるということも言えると思います。従つて量も少くなりますし、時期的にも、平素に比べて相当遅れておりますが、ただ従来新しい年度の造船計画が、一体予算の通つたあといつごろ出るかといいますと、大体三月末に予算が通りましても、船主の選考とかいろいろな問題で、七月の初め及び中ごろに大体許可が出ておるわけであります。従つて今年度は、その点については例年に比べて少し遅れておりますので、あるいはもう少し遅くなるのじやないかと予想されますが、しかし先ほどの造船所の所在地の社会問題あるいは労務の問題も、大臣は十分考慮しておられますので、鋭意早急に着工できるように今施策を練つておるような状況でございます。
  135. 大西正道

    ○大西(正)委員 今の話では、市中銀行は融資が非常に困難だ、これだけが理由のように言われておるのでありますが、私はこれはまだほかに理由があると思うのです。その点について、あなたの方はどう考えておられるか、私はただこれだけではなかろうと思う。
  136. 甘利昂一

    ○甘利政府委員 今まで皆さんのお話を聞いたところでは、担保の問題が特に大きいのでありますが、そのほか船主としても、こういう運賃の悪いときに、しかもある程度不満足ながら船体が整備されて来た現状においては、積極的に船をつくりたくないというふうな状況も幾分関係するかと思いますが、しかし主たる問題は、市中銀行が融資を渋つておる点が一番大きな難点でございます。
  137. 大西正道

    ○大西(正)委員 それでは今の市中銀行が融資を渋つておるというこの項だけについて質問をいたします。あなたの方で緊急に根本施策を打出すということならば、この担保力が薄弱なものを、どのような裏打ちをして、そして市銀から融資をさせる方法を考えておられるか。こういうふうなところまでひとつお聞きをしなければ、こういう計画というものは、単なる答弁に終ると思うのですが、その点はいかがでしようか。
  138. 甘利昂一

    ○甘利政府委員 抜本的な方法は、おそらくないと思いますが、担保力の不足を補う方法としては、さしあたつて十次船については、従来本船担保を八割とり、そのほかの三割について増し担保をとつてつたわけでありますが、この増し担保のいろいろな見方等についてある程度の緩和はできるのじやないか。こういう緩和措置をとりましても、おそらく知れたものだろうと思います。従つて担保の不足によつて、それを解決することによつて新造船の工期を早める、あるいは市銀をそれに引入れるということは困難だと思いますが、しかしある程度担保の見方をかえることによつて、幾分担保の余剰能力が出て来るのじやないかというふうに考えられます。ですから、もしどうしてもそれで計画通りにできないということであれば、全額財政資金でまかなう、そういうようなことも考えられておりますが、結局これになりますと、初めは開銀資金で全部まかなうことになると思うが、おそらく開銀としても、やはり銀行である以上、ある程度担保を要求するだろうと思いますので、担保にするという点から行くと、財政資金で全部まかなつてもできないという場合も同じだろうと思います。従つて最後には、やはり国家造船というようなことも考えなければならぬだろうと思います。そういう点について、先ほどお話しましたように皆さんの御意見を聴取しながら、三十年度の根本策をある程度きめて、さしあたつて二十九年度の十次船については、その根本策によることは、時期も迫つておりますので、根本策によるわけには行かないが、一応三十年度の根本対策を見出して、二十九年度については経過措置として、できるだけ適当な方法で何とか早くそれを進めたいというふうな措置をとりたい、こういうふうに考えております。
  139. 大西正道

    ○大西(正)委員 その担保の問題ですが、これはややその方面の専門に入りますので、労働委員会の論議としてはふさわしくないと思いますが、開銀は優先的に担保を要求するのですから、これをとやかく言つても話にならぬと思います。またどうしても市銀の融資がない場合に、政府資金のみでもやる方法があるという話ですが、私は今の段階になつて、こういう方法もある、こういう方法もあるという、いろいろな場合の方法をあなたから聞いておるのではない。あなたの今の言明にあつたごとく、これはおそきに失しているのです。そのために全国の船台が、六月になつたらからつぽになろうとしておる。こういうときに、はつきりした方針が打立てられない、市銀を納得させるだけの手も打てない、そういうことに対する責任を感じてもらいたい。そうしてあの手もある、この手もあるということじやなしに、一体そういうことは、どの程度まで話合いができて、実行方法とかいろいろ話合つてみたが、むずかしいからこの方法で行こうという一応の結論が出ておるのなら、出ておると言つてもらいたい。そういう話をしてもらわないことには、差迫つているこの問題を控えて困つておるのですから、そういうふうな答弁のための答弁でなしに、もう少しどういう方向に進もうとしているという固定した線をひとつ出してもらつて、あなたの信念のあるところを言つてください。私はここで、その前にもつとあなたの方に聞きたいことがある。全国の造船所みずからの造船総連だとか、全造船労からの報告によりますと、大体五月、六月になりますと、それ以上船台がからになるだろうという報告を聞いておるし、報告のみならず、これは各造船所の進水状況、こういうものも手元にあるのですが、こういうふうに見てみますと、今は単なる方法を模索しておるような段階じやないと思うのです。もう少し固まつた一つの案を発表願いたいと思うのです。
  140. 甘利昂一

    ○甘利政府委員 先ほど申しましたように、まだ案は固まつておりませんし、大臣もいろいろ考究されておりますので、近々何かの案が出るんじやないか、こういうふうに考えております。
  141. 大西正道

    ○大西(正)委員 それじやもう少し聞きますが、私は、何とかかんとかいつても、一般の市銀は金を出すと思う。しかしあなたの方では、その点について非常にむずかしいということになれば、あなたのお話のあつたように、全部国家資金でもつて十七万トンにするか、あるいは十三万トンにするかわからぬが、それだけでもやるというような構想を持つておられるようであるが、はたしてそういう形で船をつくつた場合には、今の船会社というものの運営、船会社と造船所との関係、これはただ単なる一般の民間企業としてのみほうつておくわけにいかないと思う。こういうことになつて来ると、単なる融資の問題だけではなく、国の産業の根本的な一つの方向づけに関係があるのです。そういうことも場合によつてはやり得るということを本気に考えておられるのですか。
  142. 甘利昂一

    ○甘利政府委員 国家造船のことについては、大臣もたびたび答弁をしておられるように、好ましくない。しかし、いろいろな方法を考えて、どうしても無理な場合には、そういうことも一応研究に値するということを言つておるわけです。われわれもそういう考えで進んでおります。
  143. 大西正道

    ○大西(正)委員 そこであなたにもう少し聞きたいのは、この問題に対して政府の考え方はもちろんですが、各党は一体どういうふうな考え方を持つているか、十分あなたの方も御研究だと思うのですが、それをひとつお述べ願いたいのです。私の見るところでは、各政党ともこれについては非常に怠慢であると思う。特に与党である自由党あるいは改進党は、この造船疑獄の問題の渦中の人であるがゆえに、これに対して発言権がないのではないかと私は思う。私どもの党は、疑獄は疑獄で徹底的に追究して、国民の血税がこういうばかなことに使われているのに対して、私は国民の憤りを代表して、その追究を推進して行きたい、こういうふうに思つているのですが、そのために、それが解決しなければこの十次船の実施ができないのだ。左派社会党の方では、大体そういうふうな考え方でおられるようでありますけれども、私どもの方では、それはそれで別個に考える。こういう建前から、私どもの方はこの前の大会におきましても、あるいはまたその後のいろいろな会合におきましても、この点を強く推進したい、こういうふうな建前でおるのですから、ひとつあなたの方から見られた各党の情勢なんかもお話願いたいと思います。
  144. 甘利昂一

    ○甘利政府委員 私たちも、今大西委員がおつしやつた通り、今度の問題と十次船の問題とは、まつたく切り離してやるべきだと思います。十次船の問題は、造船所の問題もありましようが、日本の海運復興に対する根本政策でありますので、あくまでこれを遂行するのですから、この問題と今度の問題とは切り離して、独自の立場で、従来通り遂行するという決意は、大臣初めみな持つております。今までも国会でいろいろの御質問を受けておりますが、われわれの感じたところでも、大体その両方の問題は離してやるべきである。しかも十次船については、差迫つた問題であるから、早急に政府としても手を打つべきであるというふうに言われておりますが、私たちもまつたくその点については同感であります。御期待に沿うように今後いたしたいと思います。
  145. 大西正道

    ○大西(正)委員 私が別個だと言つたからといつて、あなたの方に全然そういうことに対しての責任を感じてもらわなくてもいいというのではない。もつと国民のいろいろな感情をそんたくされて、あなた方はみからず進んで、たとえば市銀の融資の問題以外に、進んで割当に対して、単なる運輸省だけで独断専行にこういうことをやらないとか、あるいは船会社並びに造船会社に対しての監査制度を強化して、もつと明朗なものにするとか、そういうことも考えられてしかるべきじやないかと私は思うのですが、その点はいかがでしようか。
  146. 甘利昂一

    ○甘利政府委員 当然船価の査定を厳重にし、あるいは査定をするような法的措置を講ずるということも一緒に考えております。また船価の方針についても、従来の方針にはいろいろ疑義がありますので、私ども自身としては、毎回その方針を審議会にかけて皆さんの御意見を聞いて、その当時としては最もいい方法を採用して来たのですが、また皆さん方の御意見によつて、さらに別個の方法でそれを審議するというようなこともあわせて考えております。
  147. 大西正道

    ○大西(正)委員 そこで、なかなか要領を得ないのですが、今いろいろな案が出されたが、その結論を近々中にというのですが、その近々はいつごろでしようか。
  148. 甘利昂一

    ○甘利政府委員 今ここではつきり申し上げられませんが、われわれも大臣と毎日のようにいろいろ話合いをしておりますので、できるだけ早くしたいという気持はまつたく大西委員と同じでありますが、そういう問題でありますので、それじやそれがいつということは、今ここではつきり申し上げることはできません。
  149. 大西正道

    ○大西(正)委員 私はこういう段階になつたら、やはりいついつと言えないというようなことは、答弁にならぬと思うのです。そうでしよう。そういう意味で、ぼくはやはり運輸大臣に出てもらつて、そうしてそういう責任感の上から、少くともいついつまでに方針を出すという言明を得たかつた。これ以上ここであなたに言うことはできない。とにかく今のお話を聞きましても、政府におけるところの十次造船の割当促進、実施に対する準備というものがまつたくできておらぬのです。あなたはそれに対する十分なる責任というものも感じておらぬと私は見ざるを得ぬのです。今のお話では、近々中と言うても、それがはつきり言えないという。これはおそらく私個人の意見じやない、国民の声、一つの希望ですからね。これは次の機会に、ひとつなるべく早くその結論を出してもらいたい、こういうことをお願いしておきます。  次に、私はあとごく少時間ですが、労働大臣にお伺いいたします。今あなたがおいでになります前に、いろいろと二十九年度の財政規模の特に造船、海運に対する融資の減少と、それから十次船の実施の遅延によつて、これが労働者の上に非常な不安をもたらすということがはつきりして来たわけです。そこで概括的な答弁は労政局長からあつたのですが、私は一つ一つここで六点ばかり聞きますが、少くとも二十九年度の海運、造船の融資の額の減少によつて、最低二万人の失業者が出るのです。そういう場合に、その生活の保障、すなわち失業救済をどうやられるかということをひとつお聞きしておきたい。
  150. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 御承知のように、現在失業保険の制度がございますので、さしあたり六箇月というものは保険の給付を受けられるわけでございます。しかし、その期間内において、できる限り再就職の便をはかりますように、労働省といたしましては職安活動に非常に力を入れてやつておりまするわけで、昨年も御承知のような造船の整理があつたわけでございますが、大観してみまして、完全業者の数というものはだんだん減つて来ておりまして、十二月には三十一万人というふうになつておるのであります。本年は国家の財政投資の縮減という建前から、相当に失業者がふえるのではないかというような御意見もいろいろあるのであります。これはひとり造船のみならず、他の国家の財政投資を受ける面においても、あるいは昨年は消費の年といわれたように、非常に消費需要がふえておりまするから、一般のサービス部門その他においても殷賑をきわめておつた、その面に雇用されて行く吸収力というものがなくなるのだから、その面で相当失業状態というものは悪化するんじやないかというような御意見もあるのでありまするけれども、これは私どもといたしましては、失業保険制度をまず六箇月やる、そうしてその間にできる限り就職のあつせんをする、しかも何ともいたし方ないものについては、緊念失対法の適用を考慮して行く、こういう考え方で、予算面でもそれぞれ増額の措置をいたしておるのであります。概括的に申し上げれば、そのようなことになると思います。
  151. 大西正道

    ○大西(正)委員 失業保険の適用その他職業補導によつての配置転換等は、当然やるべきことであります。今申されましたところの失対事業の問題でありまするけれども、これは労働大臣が初めの労政の方針の説明のときにも、昨年は九十七億でありましたが、今年は百十一億とふえておるからというふうな御説明でありましたが、これはそのときにも論議されましたように、昨年より賃金が上つておりますからこういう意味からいつても、昨年の規模よりもあまりこれが大きくなるということで、この失対事業の方面でも万全だという説明にならぬ、こういうふうに私は思うのです。一体本年度の予算の組まれる場合には、全般的に失業者が出るということを予想しておつたと言われるけれども、今言つた造船労働者のこういう予想されるところの失業問題については、そのときにも一応のお考えは考慮に入れられておつたのですか。
  152. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 今年の予算は、御承知のように一兆円のわくにとどめるということでございまするし、財政投資の面におきましても五百億程度の縮減をする、こういう建前がございまするから、その限りにおいての整理というものは、多少は考えられるのではないかという予想はしております。ただ大西さんも御承知の通り、失業保険の給付六箇月というものが前にございますると、給付を受けられなくなるという関係は年の後半において出て来るわけでございます。従つて百十一億というものは給料の原資の増加を考慮いたしまして——大体五%程度でございまするが、後半に集中して行くというために、大体一割くらいにまわるわけであります。従いましてその間の運用の効率化によりまして、私は何とかやつて行けるのではないか、こういうふうに期待しておるわけであります。
  153. 大西正道

    ○大西(正)委員 私はあなたの言われるようにはならぬと思う。この予算の中では、実際は非常に支出することが困難になるであろう、こういうところを憂えるものであります。  その次にお伺いしたいことは、計画造船に対して、規模が縮小して行きますと、当然そこに起つて来るものは、私は低賃金ということが必至だろうと思う。労働力の過剰から、低賃金ということは必至になると思う。これは相当重大な問題に発展すると思うのですが、この点いかがお考えですか。
  154. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 賃金そのものもそうでございますが、全体に物価が下るという見通しを立てておるわけであります。五%ないし一割下げようというのが、政府の財政政策の基本であるわけであります。御承知のように、暮れあたりに思惑も多少あつたのでありますけれども、最近それが一応おちついて参りまして、物価も漸次低落の方向をたどつております。私どもは何とかしてそういうふうにしたいと考えておるのであります。これはもちろん国民各位の御協力を得なければならぬ問題でございますが、ぜひそういうふうにしたいと思つております。計画造船の問題についての融資が、最近の実情で市中銀行からも非常にきらわれまして、困難になつて来ておるという実情はおつしやる通りでありまして、私どもも心配しておるのであります。しかし国家の基幹産業の一つでありまするところの造船、海運という問題について、そういつまでもほうつておくわけにも行かぬと思う。これはやはり昨年のように思惑がありますると、こういうふうに思惑で物価が上つているではないか、どうするかという御意見も出て参ると思いますが、そのうちにだんだん平静に復して行くのと同様に、造船関係の金融も必要な問題でございますから、いずれは解決して行くことになるであろうと、私どもは期待しておるわけであります。
  155. 大西正道

    ○大西(正)委員 もう一つ、これは労働大臣のみならず私の非常に憂えることは、造船に従事する労働者は、非常に特殊な、高度な技術を持つたものであります。これがこういうことのために解雇され、そうして職場を失つて行くということは、また別な面から申しまして、惜しむべきことだと思うのです。この点はどうですか、労働大臣。単なる押し問答じやなしに、こういう問題はひとつほんとうに御心配はなさいませんか。
  156. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 おつしやる通りだと思います。やはり製罐であるとかウエルデイングの非常に熟達したという人は、そうあるものじやない。大体製罐の仕事なんというものは、非常に上手な人はひつぱりだこになるようであります。だから腕に覚えのある人は——集団的にはいろいろな問題がありますが、個々人について見ますと、やはり技術優秀という人は、そう心配しないでもいいじやないかと思うのであります。なお国家といたしまして、職業補導所というようなものについて、相当力を入れておるのでございますが、そうした技術保存というか、一般的な技術水準の向上ということは、これは別な話になりますが、できるだけ努めております建前もございまして、そうした技術保存ということは、十分配意いたすつもりで考えております。
  157. 大西正道

    ○大西(正)委員 最後に、労政局長は、最終的な解決はこれは発注を多くするということよりほかにない、こういうふうにおつしやつたのでありますが、これはそうなんです。そこで私が労働大臣に今お話をしましただけでも、これは労働問題として非常な問題だということがおわかりになつただろうし、いや、以前からそういうことは予想されたと思うのです。そこでこういうふうに計画造船の実施が遅れるということに対して、労働大臣としては、あるいは運輸大臣なりその他の関係の閣僚、機関等に対して、この労働行政の面から、どのような意見を述べられるか、促進方をやられたか、こういうことについてひとつお聞きしておきたい。
  158. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 御承知のように、この造船の問題は、やはり現在の風潮にかんがみまして、市銀が非常に臆病になつているといいますか、貸し渋つておる。なお一方において開銀などにおきましても、なるたけさわらぬ神にたたりなしというような、そんなような気分が非常に大きな原因じやないかと思うのであります。これは事態がだんだんおちついて参りますれば、そうしたことも漸次冷却して平静に復すると思います。大体開銀というような機関をつくりました趣旨も、国家の基幹産業であつて、一般の市中金融の手に負えないようなものを引受けて行くという趣旨なのでありますから、そうしたものについてできるだけ活用するように、こういうことで私も国務大臣といたしまして考えておる次第であります。
  159. 大西正道

    ○大西(正)委員 ちよつと今の発言中、よく聞き取れなかつたのですが、ほつておけば自然に冷却するという発言があつたようですが、それはどういう意味ですか。
  160. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 現在造船関係に対する貸出しに、必要以上に一般金融機関が配意いたしておる。そういうことも大体事態の全貌がすつかり明らかになつて、そうしてそのことに対して、なるほどこういうことでは無理はないということになれば、そうでない方法で十分に考慮しようということに一般の気分がなるのではないかと思う。造船、海運それ自体を振興させるということは、非常に必要なことでありますから、私はそういう問題が自然に解決することになるだろうと思います。私どもとしては、できるだけ解決促進に骨を折りますが、一般的に申しまして、やはりある程度この期間はずれるということは認めざるを得ない状況にあるのではないか、こういうふうに考えます。
  161. 大西正道

    ○大西(正)委員 それは非常に私はふらちな言い方だと思います。言つている趣旨は、市銀の取越苦労だ、実際以上の思惑があるから、冷却期間を置けば元通りになつて来る。こういうことを言つておるのだが、そういうことを言いますのは、直接の運輸大臣じやないから、あなたはそう言うかもしれないが、第十次造船を今が今実施をしなければならぬというような建前からいうと、これはまことにふらちな言い方です。そういうことなら、今申しました造船労働者がどういううき目に立ち、あるいは労働行政がどういう混乱を来すかということは、あなたもおわかりだろうと思う。これが一箇月やそこらで自然に冷却されて、一般市銀の思惑が平静にもどるというようなことは考えられない。これは労働大臣として、そういうことを待つているというのじやなしに、もつと積極的にそういうことを解消して、そうして早く着工させるために努力しなければならぬ。私は考え方自体が非常に不満であります。私がお聞きした、従来どういう手を打たれたかということについて、明確なお答えがなかつたが、これは労働大臣としては、そういう失業問題等を予想して、何ら努力なされなかつたということですね。
  162. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 別にそう気負われる必要はないと思います。私の申し上げておりますのは、この市中金融機関というものは、それ自体の責任と能力において貸出しをするのであります。政府が貸し出せという強制的な権限はないのであります。ですから、この市銀の人々の考え方というものが、やはり必要なものに必要な貸出しをするということに、おちついて考えるような時期が必ずあると思う。それを今言うてみても、どうにもならぬ問題についてはいたし方がないじやないか。そこで私が後段に言つておりますことをお聞き取り願いたいのでありますが、開銀その他の国家の財政投融資の面において、できるだけ骨を折るということは、私も従来とも申しているし、今後とも必要であると考えている、こういうことであります。
  163. 大西正道

    ○大西(正)委員 その市銀が自然に冷静になつて、融資をするような機運になるまでほつておいたらというのじやないのです。これは政府としても手が打てるのです。私のようなしろうとでも、たとえば政府が預託して、そうして損失を補償してやるというような措置を講ずれば、これは十分市銀は金を貸しますよ。そうでしよう、そういうことはできるのです。だから、政府の力でそのくらいなことはてきるのです。それをしないで、市銀が貸したくないところへは貸さないのだとほつておくというようなことでは、これは労働大臣であろうとだれであろうと、この問題は解決いたしません。今運輸省の方では、近々閣僚に何してということを言つておるりところが、そういうことを言う閣僚が一人でもおつたら、この喫緊の問題は解決しないのです。今のお話を聞きましても、労働大臣がこれに対してあまり心配をしておらぬし、あまり努力をいたしておらぬということが明らかになりましたが、これはまことに遺憾であると私は思います。しかし今の言明によりまして、今後なお運輸省あるいは大蔵省その他に、労働大臣は労働問題等の見地から、ひとつ強力に働きかけるということの確約を願いたいと思います。それは当然のことだと思うのです。
  164. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 市銀に預託をするということ自身に、腐敗したやり方があるというふうに世間が言つているときに、国民の大事な金を、ただむぞうさに貸しつけるということはできないと思います。事態が明瞭になり、真相が明らかになるときでないと、私は国民の金を、そうかつてに政府が右から左に物をやるように出すということは、できぬのじやないかと思います。ただ、造船の必要は十分考えますし、そこに働く勤労者諸君の生活が安定するということは非常に必要なことでありますので、一般の事態を明瞭にすることと並行いたしまして、もつと言葉を強めて言うならば、それを促進するような努力も一方にしつつ、できるだけ骨折りたい、こう考えております。
  165. 大西正道

    ○大西(正)委員 最後に一つ、今腐敗した云々という言葉がありましたが、これは確かに憂うべきことでありまして、今回の十次船の促進に対しても、船主並びに造船所の責任者等は、これに対してほんとうに正面切つて言えない理由は、初め申しましたように、自分が渦中の人間であるからです。今私どもに働きかけて参りますのは、これは造船に従事しているところの労働組合が主になつて、第十次造船促進労働組合協議会とかいうものを設けまして、労働者がみずからこの促進のために各方面に陳情し、働きかけておるという実情にある。私はこの陳情を受けて、非常に悲痛な気持になつたわけであります。労働大臣もこの辺はよくおわかりになると思う。そこでこのような疑惑を一掃し、将来再び疑獄が起きないようにするために、たとえば労働組合が経営に対して何らかの発言権を持つて、すなわち経営参加ということが、各労働組合と経営者との間で話合いを進められておるという事実も私は聞くのであります。労働大臣はこのような問題について、特に日本の労使間の問題を解決するためにも、また経済の発展のためにも、特には今回の疑獄を解消して、国民の疑惑をなくする、そうしてすみやかに第十次船の割当を促進するという意味からも、労働者の経営に対する参加——参加の仕方はいろいろありますが、こういう方向をたどることは好ましいことだとお考えになりますかどうか。私どもの党では、一方では最低賃金法の構想とともに、もう一つは経営参加法ともいうべき構想を今練つておるのであります。おそらく労働大臣はこういうことについては、基本的には賛成されると思うのですが、この点はいかがでしようか。
  166. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 御承知のように、労働省におきまして、労働問題協議会というものをいたしておりまして、労使双方並びに第三者の良識を持つている各位にお集まりを願つて、種々話合いをしております。そこにおいても、そうした問題は議題に上つておりますが、一般的に申しますと、時期尚早であるということのようであります。いかにすればこの時局下において日本経済の基盤である労使関係の平和が招来されるかということについて、労使双方とも熱心に話合いをいたしております。しばらくその成行きをまちたい、かように考えております。
  167. 池田清

    ○池田(清)委員長代理 井堀君。
  168. 井堀繁雄

    ○井堀委員 ただいまの大西委員の御質問に対する答弁は、はなはだ心外に思います。ただいま造船計画の担任者である局長の説明によりましても、造船汚職のために、計画が一頓挫しておるという事実は明らかにされておる。こういう事柄は、単なる一般の事業と異なつて、第一次から第八次までの計画を通じて、国費をすでに一千億以上投じておる事業である。しかも利子補給金をきぐつての汚職事件であります。今日汚職がその原因のすべてとは言わないまでも、次の計画が停頓して、そのために労働問題が、しかも労働者の犠牲において発生するという事態に対しまして、労働行政を担任する国務大臣としては、議員から質問がある前にしかるべき措置を講じておるべきで、その報告をわれわれは期待しておつたわけなのです。こういう問題でありまするだけに、大西委員質問も、大臣の真摯な態度の答弁を求めたと思うのであります。ほとぼりがさめるまで問題を放置することが、別な意味において正しいとするならば、その責任として、言うまでもなく政府が労働者の犠牲に対する償いをする必要が生ずるのであります。そういう償いをお考えになつての答弁であるならば、そのお考え伺いたい。そういう対策もなく、ただ成行きにまかせるというようなことでは、それはまつたく無政府的な状態といわなければならぬのでありまして、そういう放言は許されない。この点につきましては、はなはだ聞き捨てならぬことと思うのであります。次の第十次造船計画については、この際に問題が発生したものではない。大きな国策の一つとして、莫大な血のにじむような国民の負担になる財政資金が投入されて進行中の事業計画であることは、繰返して申すまでもないことであります。今までの答弁によりますと、政府みずからの責任において労働者の犠牲が救済されなければならぬことは明らかであります。この点に対する対策がおありであれば伺つておきたい。もし対策がないとするならば、至急にその対策をお立てになることを私は希望すると同時に、そのお考え方、所信を伺つておきたい。
  169. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 現在私が聞いておりますところでは、全国でいろいろな造船会社が競争しておるわけであります。どうもその数が少し多過ぎるのじやないか。もう少し規模を適正なものにする一方能率を非常にいいものにするということで、その間少し総合的なものにする——それも強制的にするか、自主的にするか、私はその担当でないから存じませんが、そういうことをしたらどうかという意見があるやに聞いております。私は、その趣旨は一つの方向ではないかと思います。やはりこれは国際的なレベルで競争するものですから、この機会に禍を転じて福とするというか、そうした将来の競争力の根を養うことが、非常に必要なことではないかと考えております。そういう合理化され、非常に能率がよくなつた基礎の上に、できるだけ建設を促進するような即定計画を促進するような援助をするという方向は、非常に好ましいことではないかと私は考えまして、この点については大いに協力したい、こう考えておる次第であります。
  170. 井堀繁雄

    ○井堀委員 今までの計画にいろいろな矛盾や撞着が現われたのでありますが、第四次以後における計画は、言うまでもなく吉田内閣の産業政策の中でも重要な施策の一つであつた。もし欠陥が生じたならば、それに対してしかるべき方針を立てるために発生する労働者の犠牲は、当然事前に考慮されて、その救済の道を講ずべきである。ことに労働行政を担当する労働大臣としては、この問題については十分お考えになつておると思いますが、その所信の発表もないようであります。この点もう一度伺つておきたい。
  171. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 造船自体が非常に必要だ、海運を振興することは日本として非常に必要だ、またそこに働かれる労働者諸君の福祉を招来することは非常に必要なことだと思います。それについては、産業政策でございますが、私どもの面からも、国務大臣としてできる限り協力したいと考えておるわけであります。
  172. 井堀繁雄

    ○井堀委員 産業政策の上で蹉跌が出た場合には、一方それによつて被害をこうむる労働者の救済の道が講ぜられなければならない。それを一般の失業保険や失対事業や、あるいは職安による職業のあつせんでやるというような労務行政は、この場合にはまつたく的はずれの答弁である。こういう事態に対しては、やはり臨機応変な処置考えられるところに生きた政治があるわけであります。労働行政は、こういうものに対して具体策を持たなければ意味をなさぬのじやないですか。それでなければ、事務屋にまかせておけばいいことになると思うのであります。少くともこういうものに対して何らの方針がないということは、まつたく奇怪なことであります。まつたくないのであるか、もう一度伺つておきたい。
  173. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 御承知のように産業政策そのものが繁栄しなければ、雇用関係は増大されないわけでありますが、それについてできるだけ吉田内閣として努力そしておるわけであります。今御指摘の話は、何か非常にこれでもう何もかもだめになるのだが、お前はどうしているというようなお話のようでありますが、そうではないのです。今こうした時期において、この事態のもとにおいて、計画が今まで通りに行かないということでして、ですから、この事態を勘案して、これを将来も見通して、この機会にでき得る限り将来への造船、海運の政策を確立して、それに従つて繁栄を考えよう、こういうのでありますから、そこを誤解のないようにひとつお願いいたします。
  174. 井堀繁雄

    ○井堀委員 ちつとも誤解はしておりません。先ほど日野委員からも、日平産業の問題についてお尋ねがありましたが、この日平産業の問題も、汚職事件関連があるとされております。ここにも約一万五千の労働者が未払い賃金に当面して苦境に立つておる。そのほか全国の造船関係労働者が、まつたく不安の中にさらされているわけであります。こういう問題の原因が、政治的な政策もしくは汚職、疑獄等によるものであることは、もうぬぐうことのできない事実で、先ほどの答弁で明らかになつておるわけであります。こういうような政治的な責任において労働者が思い設けない犠牲をしいられる場合についての労務対策というものは、やはりそれに相応する応急対策というものがあつてしかるべきである。そのことを私は伺つているので、ちつとも誤解はいたしておりません。そういう必要がないというのであれば、それも一つの答弁かもしれないが、そういう必要を認めるのか認めないのかということを今度はお伺いいたしましよう。
  175. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 ある会社が、その業態が非常に不振になつた、これは政府の責任だから政府に全部持つという御議論は、私どもの政策からいたしますと、ないのであります。たとえば、今日平産業の話が出ましたが、これについては、私も所管外でよく存じませんが、やはりそれを再建しようということで、産業界としてもいろいろ苦心はしておるようであります。ただ問題は、この再建が必要な事業であれば軌道に乗るでありましようし、これをうまく軌道に乗せ得るかどうか、こういうことでありまして、そういうことに私どもとしてはできるだけ協力をしよう、こういうことであります、そのことは、ひいてはそこに働く労働者諸君の福祉を招来することにもなる、こういう考でやつております。国営ではございませんから、やはりその産業自体の努力、またそれを盛り立てるような金融的な、あるいはその他の援助をできるだけする、こういうことに尽きるのではないか、かように思つております。
  176. 井堀繁雄

    ○井堀委員 この事態が政治的責任で発生したから、そのすべてを政府に持てと言つているのではないのです。こういう思い設けない、いわば政治政策の失態や貧困、その他の事情によつてつた労働者被害をこうむる労働問題に対しては、やはり適切なる臨時的処置というものが労働行政の中になければいかぬのではないか、こういうことを質問しておるわけです。そういう必要を認めないというのであれば、それはまた別ですが、認めるというなら、こういう方策があるということをお答えがなければならぬ、そのことを私は伺つておるのであります。
  177. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 ですから、産業がうまく行かないような場合に失業をするということについては、失業保険という制度があるわけであります。それについて、その間に経営者も一生懸命になつて再建に努力する、労働者も協力する、そこでまたさらに産業が興つて来る、こういうのが私どもは資本主義の建前であると考えております。それについて、できるだけその摩擦を少くするような策があるかというと、これは結局政府の金融なりあるいは財政投融資なりの面で、できるだけ必要な産業とあればこれに協力する、こういうことではなかろうかと思つております。
  178. 井堀繁雄

    ○井堀委員 他の問題もあるようでありますから、簡単にきまりをつけますが、日平産業の問題は、あなたは御存じないかもしれませんが、もうすでに未払い賃金が発生しておるのでありますから、当然労働省としてはしかるべき措置を講じなければならぬ事態にあるわけです。しかも一万五千の労働者であり、その原因は、私が説明するまでもないのでありますが、特需関係、しかもその特需関係にからんでの政治献金をしたとかしないとかいう事態まではらんだ、きわめて好ましからざる政治的な問題によつて、その特需が今日中断せざるを得ない事態にあるわけである。このことは一経営者の責任であると同時に、これに関連した政治的な責任というものは、今日決して許されるものではないのです。また今大西委員から質問をいたしておりまする造船計画のごときは、先ほど来運輸省の方の説明がありましたけれども、一定の計画をもつて予算を組み、しかもその予算の中から貴重な財をつぎ込んで遂行しつつある過程で、こういうような問題によつてもし失業が生じた場合に、あなたは失業保険で救済する——一体そういう労働政策というものがあなたの政策であるというなら、これはもう何ぼ議論しても始まらぬのですけれども、あなたを私はもつと高く評価して、そういう問題に対しては、相当の熱意を持つて、しかるべき対策を立てようとなされる人ではないかと思われたからお尋ねしたのであります。しかし、もしそういう意図もないということであれば、これはまことに私のあなたに対する過大評価ということになるわけでありまして、これはおのずから別であります。とにかくこういう緊急な、しかも労働者の責めに帰せない大きな被害でありますから、そういう対策を持つていなかつたとするならば、この際労働大臣の地位を十分御自覚をされて、緊急にしかるべき対策をお立てになることを要望して、私の質問を打切りたいと思います。
  179. 日野吉夫

    ○日野委員 関連して。労働大臣の今の答弁を聞いていて、私もそういう感を深くしたのですが、あなたは第一回の施政方針のときから、日本の経済を憂え、重大な経済審議庁長官あるいは大蔵大臣になられたようなお気持であの方針を発表されておるが、その以前に、あなたのまず果すべき任務は労働行政である。今あなたの直接の担当労働行政の面で、労働問題が幾多起つておる。今の造船問題も、結局造船労働者の問題で、あなたの直接の主管下にある問題なんです。日平産業の問題にしろ、特需労働者の問題にしろ、最低賃金の問題にしろ、ずいぶん山積した労働問題を控えておる。けさの新聞には、戦後の最悪状態だと失業者の数字を労働省が発表しておる。こういう重大なる事態に、いかにも自主性のない、だれかがやつてくれるであろう、自然解決するであろうということでは、労働大臣たる地位を忘れておられるのじやないか、こういうような感を深くするのでありますが、ひとつ重大な決意を持つて今起つておるもろもろの労働問題に取組んで、自主的に、自分の力でもつて関係官庁を率いて、閣議をリードしてやるだけの自信が一体あるのかどうか、そういうお気持を持つておるかどうか、あなたの決意のほどを承つておきたい、こう思うのであります。労働大臣である地位をお忘れなく、ひとつお願いしたいと思うのでありますが、その決意をちよつと承つておきたい、こう思うわけです。
  180. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 労働大臣たる決意に燃えております。
  181. 日野吉夫

    ○日野委員 労働大臣である決意に燃えておられるならば、今の答弁は、少し的はずれでなかろうか。一体今起つておる失業問題、こうした問題に具体的な案も持たず、漫然として、労働大臣である意識に燃えておられるということは、労働行政の一大不幸であるとぼくは思う。ここで押し問答してもあなたはいまさらようできないでしようから、ひとつ十分にその点をお忘れなて、今後の次々起る問題に取組む態勢を整えられんことを希望いたしておきます。     —————————————
  182. 池田清

    ○池田(清)委員長代理 次に労使関係に関する件について調査を進めます。質疑を許します。多賀谷眞捻君。
  183. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 厚生大臣にお尋ねいたします。日本労働組合総評議会代表者として、藤田藤太郎君から、厚生大臣あてに、メーデーの会場として皇居外苑使用許可の申請をしたと思いますが、その後どういうように厚生省ではお取扱いになつたかまずお知らせ願いたいと思います。
  184. 草葉隆圓

    ○草葉国務大臣 二月二十五日の申請に基きまして、日本労働組合総評議会議長藤田藤太郎君の名儀によりまして、第二十五回メーデー祭典を五月一日皇居前広場においてとり行いたいという申請が参りました。この申請に対しまして、いろいろ検討いたしました結果、厚生事務次官の名をもちまして、三月十六日付をもつて同君に対しまして、皇居外苑の使用については許可をしないという旨の通知を出した次第であります。
  185. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 許可しないということになりますると、どういう理由で——いろいろの点を勘案してということでありましたが、その理由を具体的に明示していただきたいと思います。
  186. 草葉隆圓

    ○草葉国務大臣 ただいまの申請によりますと、五月一日午前十時から午後一時まで、但し、集会終了後全員退場に約二時間を要する見込みというので、ただいま申し上げました第二十五回中央メーデー祭典を執行したいからということで、皇居外苑の使用を申請をして参つたのであります。皇居外苑の使用は、御承知のように昭和二十七年に大体の方針を立てまして、それによりますると、宗教的、政治的の行事なり、あるいは治安を乱すおそれのある行事は許可をしない。第二は、小区域かつ短時間でない行事は許可をしない。第三は、国家的行事は原則として許可をする、こういう方針のもとに当時から取扱つてつてつたのでございます。その後昭和二十七年のメーデーの騒擾事件が起りました後におきまして、今後は国家的行事にのみこれを使用するという方針を立てました関係がありますので、今回の、ただいまお話のメーデーに関しまする行事に対しましては、不許可という方針をもちまして、通知を出した次第でございます。
  187. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 大臣は、このメーデーの会場に関する最高裁判所の判決を御承知であろうと思うわけであります。この判決によりますと、この皇居外苑は公共福祉用財産であつて、公共福祉用財産は国が直接公共の用に供した財産であつて、国民はその供与をされた目的に従つて、ひとしくこれを利用し得るものである、こういうことを書いております。さらに、この公共福祉用財産の許可については、これは単なる自由裁量に属するものでなくて、管理者が当該公共福祉用財産の種類に応じ、またその規模施設を勘案し、その公共福祉用財産として使命を十分達成せしめるよう適正にその管理権を行使すべきであり、もしその行使を誤り、国民の利用を妨げるにおいては、違法たるを免れないと解されなければならない、こういう判決が出ておるわけであります。  そこで私は、この最高裁の判決から受ける感じは、これはある程度の規制さえすれば、当然勤労者を主体といたします中央メーデーの使用に際しては許可をしなければならない、自由かつてにそれをしないとか、するとかという性格のものでないと判断するわけですが、政府はこの最高裁の判決をどういうように解釈なされているか、お尋ねいたしたいと思います
  188. 草葉隆圓

    ○草葉国務大臣 お話のように、管理をいたしております管理者が、単なる思いつきと申しますか、そういう意味における自由裁量においてこれを管理するということは、国有財産管理の上から申しますと妥当ではないと存じます。従いまして、厚生省がただいま管理いたしております国民公園の管理につきましては、先ほど申し上げましたような方針をもちまして、その方針によつて、この国民公園を管理することが最も妥当であるという一つの方針によりまして管理して参つておりますから、その管理の範疇に当てはめましてただいま申し上げました許可の方針を出したわけであります。
  189. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 何か今度のこの皇居外苑の使用に関しては、国家的行事にのみ使用さすのだと、こういうことを決定したということを、さつき大臣は言われたわけですが、国家的行事だけを許可の対象にするのだということになりますと、これは外苑というものを何か侵すべからざる聖域であると、こういうように解釈をされておるのではなかろうかと思うのです。国家的行事以外の行事も、こうこうこういう場合には使用さすんだということならば別ですけれども、従来いろいろこの問題についてはありました。旧皇室苑地運営審議会あるいはその運営審議会の答申に基きましたいろいろな決定、こういう決定を全然無視されておる、そうして国家的行事だけに限つてされておるということは、これはこの前の東京地方裁判所の判決にもありましたように、現在その皇居外苑の考え方というものはかわつているはずであります。それを何か昔の考え方に移つておるように感ずるのですが、その点どういうように考えられておるか、お尋ねいたしたいと思います。
  190. 草葉隆圓

    ○草葉国務大臣 実は皇居外苑を国民公園として管理いたしまする考え方は従来のような侵すべからざるところ、あるいは旧憲法にありますような考え方の延長という点は、全然考えておりません。むしろその後に参りました新しい憲法のもとにおきまする考え方におきまして、いわゆる国民公園、あるいはただいま御指摘になりました旧皇室苑地運営審議会等におきましては、国民広場という名を使つておりますが、そういう意味におきましての管理ということを考えております。     〔池田(清)委員長代理退席、持永委員長代理着席
  191. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そういたしますと実におかしな話でありまして、二十二年十二月二十七日の閣議決定にいたしましても、特に宮城外苑につきましては、宮城外苑に野外ステージを中心とする国民広場を設置し、各種行事運動競技等に使用せしめることにするというように書いております。さらに二十四年四月二十五日付の運営委員会の報告によりますと、道路まで設けて、そうしてこの整備をすることを書いておるわけでございます。こういう答申が出ておるのであります。そうしますと、今大臣のお話のように、そういう趣旨でやつておるのだということになりますと、まるつきり国家的行事だけに限つて対象にしておるということとは、ずいぶん隔たりがあるわけですが、一体これはどういうようにかわつたのか、お尋ねいたしたいと思います。
  192. 草葉隆圓

    ○草葉国務大臣 お話通りに、昭和二十二年の十二月の旧皇室苑地の運営に関する運営審議会の決定によりますると、ただいまお述べになりましたような方針で参つておる。皇居前の広場に、あるいは野外ステージをつくつたり、あるいは各種の行事、運動競技等のできる便宜を与えるようにするという方針で参つております。さらにこれらの運営、あるいは皇居前の広場の今後の運営を十分にするために検討をいたしました結果、さらにお話の昭和二十四年の四月に、旧皇室苑地整備運営計画というものを審議会で出しまして、さらにそれを具体的に一々のどこはこういうふうにどこはこういうふうにと、皇居外苑あるいはその他の二箇所はこういう方針でやるというやり方で、だんだんと具体的にかわつてつたと思います。そういうような順序を経まして、国民公園管理規程というものを設け、今後の国民公園をどうして行くか、皇居前の広場をどういうふうにして行くかということを、二十五年の六月に厚生省におきまして決定いたして、その決定に基きまして、現在運営をいたしておりますが、その運営の方針におきまして、先ほど申し上げました昭和二十七年並びにその後のこれらで行いますあるいは集会あるいは行進等に対する許可の方針を決定いたしまして、その許可の方針のもとに、現在はとりはからつておる次第であります。というのはどういうものでありますか、国家という認識をお聞かせ願いたい。
  193. 草葉隆圓

    ○草葉国務大臣 そういうような順序で参りましたので、昭和二十二年のときには、皇居前の広場はあるいはステージをつくつたり、具体的に申しますると、運動場をつくつたりあるいは場合によると道路の拡充等をいたして、少しもかわつたかつこうのものをつくることをおそらく当時は矛想したのではないかと思います。しかし、その後だんだん具体的に検討して参りますと、そうじやなしに、なるべく静穏な静観な国民全体の散策の観光の地にして、その状態をそのままに保存をした国民公園として取扱つて行く。従つて国民公園としての皇居前の広場は、なるべく都民を初め全国から集まります人たちのために、あの姿においてそのままいつでも自由に使えるような方向に持つて行くことが必要でありますから、むしろ特定の集会あるいは特別な使用——特別使用とここでは申しておりますが、特別使用というものは原則としてあまり使わないように、そういう設備も今後しないようにという方針でいたしております。ただ、やむを得ず特別許可をいたします場合におきましては、直接国家が行う事業あるいは行事、あるいはこれに類する行事というものに限つて行こうじやないかというのが今申し上げました国家的行事である、こう申し上げたのであります。
  194. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 国家的行事というのは、具体的にどういう行事をさすのですか。
  195. 草葉隆圓

    ○草葉国務大臣 具体的に申し上げますと、憲法発布の記念式典とか、あるいは立太子式典とか、そういう式典を考えてさしたのであります。
  196. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 この前の海上保安庁の三周年祝賀行進というのは、国家的行事に入りますか。
  197. 草葉隆圓

    ○草葉国務大臣 そういうこともやつたようですが、これはこの方針をいたす前であります。これをいたします前は、いろいろな行事が行われております。これも御承知の通りであります。
  198. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 現在も入りますか。
  199. 草葉隆圓

    ○草葉国務大臣 現在は一省あるいは国家が直接にやるという場合におきましも、広く国家的な意義を持つておる行事だけと考えております。従つてある省が特別にあそこを運動場として貸してくれという場合には、むしろ一般の人たちを制約いたしますから、かような場合にはなるべく考慮いたさないという方針が妥当であろうと考えます。
  200. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 何か国家というものを昔の状態にまつり上げて国家的行事だけ認めるのだという点について、私は考え方そのものがどうも昔の状態に復活しておるのじやなかろうかと思うのであります。このメーデーの会場に関する訴訟問題におきまして、東京地方裁判所は、御存じのように、現在憲法もかわつておるのだし、国の主権者は国民である。そして国民の大多数が勤労者なんだから、この中央メーデーというのは勤労者の祭典である、だから当然貸すべきであるという判決をしておるわけであります。またその判決の中に、憲法のかわつたことによつて、皇居というものの観念がかわつて来た、ことに皇居外苑の観念がかわつて来たのであつて、昔のような立場で許可するとかしないとかいうことは間違いである、こういうことを言つておる。また今度の最高裁の判決によりましても、なるほどこの前は五十万という数字を出して来た、あるいは時間も長時間で何時間やるかわからなかつた、あるいは厖大な人数、長い使用時間のために、公園自体が著しく損害を受けることが予想された、こういうことでもあるから必ずしも証可しないということが違法な行為でないと言えるというようなことも、大多数の意見として書いておりますが、これを裏面解釈をいたしますと、一定の規制さえあれば当然貸さなければならないのだ、そういう点を強調して、これは自由裁量ではないのだ、こういうことを書いておると私は思うのです。この最高裁の判決をどこから読みましても、国家的事業にのみ貸すべきであつて、メーデーのようなものは国家がやるのじやないのだから貸すべきでない、こういうことは書いてないと思う。でありますから、私はどうも国家的行事に限られたという点の考え方が、昔の旧憲法の考え方でなかろうか、かように解するわけですが、その点、もう一度明確にお答えを願いたいと思います。
  201. 草葉隆圓

    ○草葉国務大臣 これは先ほど申し上げましたように、いわゆる新憲法のもと、主権在民としての考え方のもととしての皇居前広場を取扱います場合には、旧憲法下の考え方は全然持つておりません。従いまして、現実に皇居前の広場の取扱い方は、従来の旧憲法時代とは全然違つておると思います。ただ、あそこを集会に使う場合の取扱いについては、集会とかあるいはその他これに類似するような設備もなければ、また適当ではない。かえつて国民広場とし、国民全体の人たちの自分のものとするためには、特定な使用というものは、特定の使用の可能なるところで使うことにして、あの広場は自由に国民が使うという考え方で、むしろ逆に私ども考えておる次第でありまして、従つて特定もものに特定な時間、特定な場所を区切つて常に使用されるという行き方をやめてしまつて、あの姿のままで自由に国民が、いつでもかつてに散策し、観光し、静養し、レクリエーシヨンし得るような場所にする方が管理としては妥当ではないか、こういう考え方であります。
  202. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 実際問題として、メーデーというのは勤労者の祭典である。その祭典を、ことに場所がないからというので皇居前広場にこれを求めた、こういうことは私は不当でないと思う。今、昔よりもずつとかわつたと言われますが、昔でもかなり自由に皇居前広場は貸しておつたわけです。私の大学では、建国祭の日には、二万人からおるのですが、あそこで式典をやつてつた。そして相当混雑しました。学生が全部集まるのですから二時間くらいかかつた。そういうことも自由に行われておつた。ところが、今の話によりますと、これはむしろ制限をしておるように感ぜられる。少くとも集団が動く場合には、制限をしておられるように感ぜられる。これだけのメーデーのような祭典が許可されないということ、しかも最高裁の判決は、少数説あるいは多数説ありましたが、少数説の方がむしろ原告の労働者には有利な判決で、被告に比較的有利な多数説にいたしましても、そのときの処分は必ずしも違法ではなかつたが、やはり今後はこういうふうにすべきであるということを示唆しておるから、わざわざこの判決に比較的関係のないような将来に向つてのむしろ指示を与えておる、こういう点において判決が述べられておるのです。この判決があつたのにかかわらず、まだ政府は最初の許可をしなかつたということに非常に固執をされておるのではなかろうか、かように考えるわけですが、労働者の祭典であり、しかもああいつたメーデーの騒擾事件というものは、決して労働者に有利になつておりません。でありますから、労働組合としても十分認識しておると私は思う。でありますから、この際政府といたしましては、ぜひひとつ許可をして、おおらかな気持でもう一度使用させてみたらどうかと思うのですが、大臣はどういうお考えであるか、お伺いいたしたい。
  203. 草葉隆圓

    ○草葉国務大臣 実は旧憲法時代にいろいろあそこを使つてつたことも、よく承知いたしておりますが、この使いようには、現実的に具体的にいろいろ検討すべき余地があつたと思うのです。従つて、従ずしも現在私どもが申しております新憲法不の使いよう、また考えておる皇居前の広場という観念とは大よそ違つてつた。それこそ神聖にして侵すべからずという観念が多分にあつたと思いますが、現在ではそういう考え方とは全然違つて、むしろ一般に自由にするために特定な使用というものを制限するというやり方に来ております。従いまして特定な人に使用させる。たとえば今度でも甲と乙と出ました場合に、あるいは甲に許可をして乙に許可をしない、甲はこういうようだからという意味は、全然持たずに考えております。それで、労働者の祭典としての一年に一度のメーデーという点に対しましては、私どもも同感でございますが、今申し上げましたような意味で、これを一度不許可にしたから、それにこだわつておるという意味ではございません。そういう意味でなしに、そうして行くことがあの皇居前の広場を今後管理して行くのに最も適当であるのじやないか、こういう考え方でございます。
  204. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 甲と乙とあつて、乙から申請が出て一方を認めれば一方はどうだということを言われておりますが、そういう意味も今後不許可になつた理由にあるわけですか。
  205. 草葉隆圓

    ○草葉国務大臣 そういう意味は全然持ちません。そういう考え方ではございません。
  206. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 国家的行事に限られたという点が、私はより問題があると思うのです。なぜ国家的行事に限られたか、これをもう一度お伺いしたい。
  207. 草葉隆圓

    ○草葉国務大臣 現在厚生省が管理しておりまする考え方というのは、管理の規程がちやんとありますから、その規程に基いて、一体どういう考え方でやるかというお話だから、ざつくばらんにぎりぎり一ぱいはここまでと申し上げたのです。そこで問題は、今申し上げますように、なるべく特定な集会に使わないというのがいいのではないか、またそういう設備もいたしておりません。ただ普通の方々が自由に入り、自由に地方から上京して参る、それは三々伍々でありましようとも、なるべくそういう状態において使わせるようにして、今申しております特別許可というのは、ここには規定はいたしておりまするが、むしろ国民公園を管理する本質ではない、本質はどこまでも一般に使う。特別許可をやむを得ずほんとうに最後にしぼつて行つた場合には、国家的行事というもの以外にはなるべく使わないようにして、国家的行事は国家が行う行事あるいはこれに類する行事というのでしぼる。それも実はなるべく使わないくらいの方がほんとうはいいのではないか。しかし、やむを得ず国家が行いまする、また国民全体がこれを承知いたしまする行事ならば、国家的行事として妥当であるという意味で申し上げたのであります。
  208. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 ちよつと伺いますが、国家的行事というものを、どこでそういうふうに決定されたか知りませんが、そういう決定をされた場合に、それは法的に拘束力を持つわけですか。
  209. 草葉隆圓

    ○草葉国務大臣 これは法的に考えますと、私どもの取扱つております管理の考え方からいたしましたならば、国有財産法に基きまして現在は皇居用の財産も国において直接公共の用に供し、また供するものと決定したものの運営を、国民公園管理規則によつて取扱つております。それに基いて第四条を十分考えて行く上におきましては、最後は国家的行事ということで紋めることが最も妥当ではないか、こういう考え方でいたしたい、またこういう取扱いでいたしたいと思つております。
  210. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 国家的行事ということを決定したということは、これは自由裁量の権限の範囲でやられたのか。それとも国家的行事ということを決定してしまえば、その範囲内で行うことは法規裁量になるのかどうか、これをお尋ねいたしたい。
  211. 草葉隆圓

    ○草葉国務大臣 そこで管理そのものにつきましては、集会も考え、行進も考え規定いたしております。その集会並びに管理というものを制約して参りましたのは、厚生省としての立場においてその範囲を制約して来ておりますから、そういう意味におきましては、厚生省が自由裁量でしたのではないかと、あるいは解釈ができ得ない点はないと思います。
  212. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 もう一度お聞きしますが、神宮外苑なんかと皇居外苑とを、どういうように区別して考えられておるか、お尋ねいたしたいと思います。
  213. 草葉隆圓

    ○草葉国務大臣 たしか神宮外苑は明治神宮の管轄における外苑であり、宗教法人としての外苑であつたと記憶しております。片一方は、まつたく国有財産としての、公共用の財産としての国民公園、国民広場として取扱つておりますから、これは全然違つた考え方であると存じます。
  214. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 国民的立場からこれを考えなければならぬ、こういうことになつておりますが、国民的立場というのは、私は単に国家的行事だけではないと思うのです。今特定のという言葉を使われましたけれども、いやしくも現在総評がその他の組合とともにやります中央メーデーというものは、決して単なる小部分の特定の使用というわけには行かないと思うのです。そのメーデーを中心として、一千万近い労働者が各地で祭典に参加するわけであります。もちろんこれは東京に集まるわけではありませんが、それを中心として五月一日にはそれだけの行事が全国的に行われるわけでありまして、これはこの東京地裁の判決にも書いてありますように、当然勤労者を主体といたします。すなわち主権者の多くの者が集まつてやる年一回の行事である。でありますから、当然これはやはり、国家的な行事とは申しませんが、国民的な行事である、かように考えるわけであります。これを一部の特定な団体の行事とは考えられない性格がメーデーにはあると思うのですが、その点をどういうように認識されておるか、お尋ねいたしたいと思います。
  215. 草葉隆圓

    ○草葉国務大臣 メーデーにつきましては、それが年に一度の労働者の祭典であるということは、国民も認め私どもも認めておるのであります。
  216. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そういたしますと、どうして国家的行事だけを限つて、今国民全部が認めておるという行事を阻止されるのか、どうもはつきりしないのですが、お伺いいたしたいと思います。
  217. 草葉隆圓

    ○草葉国務大臣 メーデー自身は、勤労者にとりましては、日本のみならず、世界的にも一つの最たる年中行事であることは、国民も認め私どもも認めておる点であります。しかし、この最たる年中行事のメーデーも、メーデーであるから禁止したのではないかということをお話でございますが、さつきからだんだん申し上げましたように、むしろ国民公園としての皇居前広場の使用についてのそういう特別許可というのは、国家的行事という言葉で表示いたしましたが、ごく少数に狭めて、あとはあそこは使わないようにする方が適当であるという意味におきまして、実はあそこを使いたいなら使わせたら適当ではないかという御意見もございましたが、いろいろ御計画等もあろうから——従来ぎりぎり一ぱいに不許可の通知を出しておりましたが、そうではなしに、ほかの準備等の都合もあるだろうから、なるべく早くお知らせしたらというので、年はたしか三月十六日に通知を差上げておいたつもりでございます。そういう意味で、ごく善意に解しまして、決してこだわつた意味ではなしに、取扱つておるつもりであります。
  218. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 この問題に対しまして労働大臣はどういうようにお考えであるか、大臣は非常に急いでおられますので、まず先にお伺いしたいと思います。
  219. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 結論から申し上げますと、厚生大臣の言われた通り考えております。皇居外苑は、公共福祉用財産としての性格にかんがみまして、できる限り一般に自由に使わせるという趣旨におきまして、特定の行事というものはなるたけ避けたい、こういうことが至当であろうと考えております。なお厚生省の通知もありましたので、労働者としては、お話があれば他に適当な場所をあつせんするようにできるだけ御尽力をいたしたい、かように考えております。
  220. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 では、労働省としては、厚生大臣の言われる通りに、大臣としてもむしろ当初から考えておつた、こういうことでございますか。
  221. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 私の考えはさようでございます。
  222. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 どうも先ほどの造船の問題といい、さらに特需労働者の問題といい、われわれの労働大臣に対する認識が足らなかつたと思われるのです。少くとも労働大臣だけはこの点はおわかりになつて、厚生省と折衝された結果、どうもうまく行かなかつたというなら、労働大臣としてはあるいはやむを得なかつたかもしれませんけれども労働大臣も、メーデーの認識についても、あるいは皇居広場を使うことについても同意見であつた、しかも初めからそうであつたということにおいては、どうも納得が行かない。少くとも現在これを中心といたしまして一千万の労働者が参加する式典でありまして特定なものに使わすことによつて一般的な使用が阻害される、だから特定のものに使わせないで一般国民が自由に使えるようにするんだと言われますけれども——それは若干制約はあるでしようけれども、五月一日の、一年に一回あの皇居外苑においてメーデーをやつたからといつて、他の国民に非常に迷惑をかけるということはあり得ないと思うのです。一体労働者以外に、五月一日に仕事を休んでああいうところに集まつて来るのは、ごくわずかであろうと私は思う。でありますから、あの式典に使わすことによつて、他の一般の国民が全然使用することができないという迷惑は、きわめて微々たるものであろうと思う。そういうことに名をかりて許可をしないということこそ、私は国民的な視野から考えるならば、非常に当を得ない処置であると、かように考えるわけですが、労働大臣に、もう一度お聞きいたしたいと思います。
  223. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 先ほど御引用になりました最高裁の判例にもありますように、立入り禁止事項を除きますと、その収客能力にも限りがございますし、また国民全般の気持としても、皇居前広場というものは、できるだけ静謐に、しかも清潔に保ちたい、またそこにいつ何どきたりとも自由に立ち入り、自由に散策し得るようにありたい、こういう気持があるのではないかと私は考えております。従いまして、他に最適な場所をできるだけごあつせん申し上げたい、かように考えておる次第でございます。
  224. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 人数と申しましても、この東京地方裁判所の判決にもありますように、当日の集合が五十万といつておるけれども、二十数万である、これは適当であるというようなことが言われておる。そこで、もし人数が二十万が多ければ、あるいは厚生省としては二十万は多いから十四万にしてくれ、こういうような折衝はあつてもしかるべきだと思うのですが、そういうこともなくて、単に人数が多いからというようなことで拒否せられるということになると、これまた問題がある。しかし、厚生大臣としてはそういうことでなくて、国家的行事だけである、こういうことをあくまで言われておりますから、私はその点は申し上げませんが、どうも国家的行事だけに限つたという点が、私は根本的に問題があると思うのです。これはいかに答弁されましても、昔のような皇居外苑は侵すことのできない聖域である、こういう扱い方をだんだんされつつあるのではなかろうかと思うのであります。でありますからして、国家的な行事だけに限つたということになるわけです。国家的行事と中央のメーデー、こういうものが国民的な立場においてどのような差異があるか、お尋ねいたしたいと思います。これは厚生大臣でけつこうであります。
  225. 草葉隆圓

    ○草葉国務大臣 これは先ほど申しましたように、現在の二十五回に及んでおりまするメーデーは、勤労者にとりまして年に一度の最も大事な祭典であるということは、勤労者のみならず、国民一般も認めていることは、ただいま申し上げた通りであります。しかし、そうかといつて、それがそのまま国家的行事と言い得るかというと、そうは行かないのじやないか。やはり国家的行事は、国家が全体として主催いたしまする場合、このような場合を直接な国家の行事と言い、またこれに類似いたしまするものを国家的行事と言いますが、メーデー自身につきましては、私も大いに尊重して行きたいと思います。
  226. 大西正道

    ○大西(正)委員 国家的な行事ということを非常に重んじられているというところに、私は国家というものに対する認識が、旧憲法のような認識をされているのではなかろうか、かように考えるのであります。国家というものは、何か国民の上にあつて、そうして国民を支配し得るものである、こういうような認識の上に立つておられるようですが、国家的行事というものは国民の総意が集まつた行事である。ただ政府がするというだけじやないんです。私はその点をもう一度お伺いしたい。
  227. 草葉隆圓

    ○草葉国務大臣 決して国家が従来の旧憲法のように、国民とは離れた、その上に支配者としてあるというのでなしに、主権は在民でありまするから、これはよく承知をいたしております。またそういう考えであればこそ、こういう取扱いを実はいたした次第であります。
  228. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 国民の大多数が要望しているんですから、これはあなたの言う通りならば、国家的な行事になるでしよう。
  229. 草葉隆圓

    ○草葉国務大臣 それは私は必ずしも同意をいたしがたいと思います。メーデーそのものが国家的行事かというと、これはそうはだれしも考えないと、こう思います。これは先ほど来私がるる申し上げた通りであります。
  230. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 国家的行事に限つたというところに、私は根本的な問題があると思う。これがあるいは人数が多いとか、あるいは時間が長いとか、こういうようなことで制限を受けたというならば、ある程度了承できるわけですが、これを国家的行事にしか使わさぬのだ、こういうことを言われておる。そういう方針で行くんだ、こういうところに私は根本的な問題があろうと思うのです。しかし、これ以上話しましても水かけ論であります。しかしながらこの問題につきましては、われわれは重大な決意をせざるを得ないと思うのです。それで私はこの問題につきましては保留いたしまして、次回にまた質問いたしたいと思います。
  231. 大西正道

    ○大西(正)委員 関連して。労働大臣の見解を、私もただそうと思つたのですが、お話を聞きまして、まことにがつかりしたわけであります。そこで、私は厚生大臣に聞きたいのですが、この管理規程には国家的行事とあるのですが、国家的行事の中にはメーデーは入らないということは、今後メーデーという行事は来年も再来年も入らぬのだというふうな結論を出されて、使用を不許可になつたのですか。それとも閣議で——今のお話では閣議で話し合つたということでありますが、閣議でそのたびごとに、やはり新たな問題としてこれを討議なさるのか。これをお聞きしておかないと、例年あることでありますから、一体どうなんですか。
  232. 草葉隆圓

    ○草葉国務大臣 これは閣議で例年その都度その取扱いの範囲をきめるという筋じやないと思いますが、今回も、ただいまお話がありましたから申し上げますると、閣議の了解を一応得たことは事実でございます。しかし現在の私ども考え方からいたしますと、国家が行う行事あるいはこれに類似する意味における行事を国家的行事と解釈いたしておる次第であります。
  233. 大西正道

    ○大西(正)委員 そういうことになりますと、やはり国家的行事というこの表現も、私どもは明確にしておきたいと思うのですが、国家的行事という言葉は、国家が行う行事以外に、全国民的な行事も、国家的行事と言うのが通念だろうと私は思うのです。そういう意味から、昨年もその通りですが、今年も労働組合のすべてがこの使用を望んでおるわけなんです。そうしていろいろな紛糾がこの間に起きておるのであります。こういう意味から言いましても、国家的な行事というのを、固定したそういう独断的な解釈じやなしに、今後やはりこれはもつと弾力性のある考え方をして、ここを使わすことにおいて、はたしてどれだけの損失があるか、あるいはこれを貸すことにおいて、労働組合一つの満足を与えることが、今後わが国の労働運動の上にどれだけ好影響を及ぼすかというような、そういう一つの高い配慮をする必要があろうと私は思うのであります。これを見ますと、メーデーでごたごたが起きたから、禁止するためにわざわざこういう表現を使つたというような考え方さえ、私は出て来ざるを得ないのではないか。厚生大臣は、メーデーについてもかなり深い理解を持つておられるのです。ああいう答弁をする労働大臣には期待は持てないが、あなたには、そういう意味から期待が持てると思うのだが、こういう字句を自分でつくつて押えるというのでなしに、今私が言つたような意味で、あれを労働者に使わすことにおいて、どれだけ日本労働運動の将来によい面が出て来るかというようなことも考慮に入れてもらいたいと思う。まあそれに対して、いい返事はできないだろうと思うけれども、私はそれを要望いたしておきます。それからもう一つ、私は国際的な行事というものも、当然国家的な行事と言われると考えるものですが、こういう場合なんかは、これは具体的な例をあげないとわからないかもしれないが、どういうように考えられますか。
  234. 草葉隆圓

    ○草葉国務大臣 国際的な行事という点は、現在あまり検討いたしておりません。従いまして、それらの問題がありましたら、ひとつよく検討いたします。
  235. 持永義夫

    持永委員長代理 次会は来る七日午前十時より開会いたします。  本日はこれをもつて散会いたします。     午後四時五十八分散会