○井堀
委員 はなはだ遺憾な結論を伺
つたわけでありますが、これは申すまでもありません、賃金の問題についてそういう定義を下すことになりますと、労使間の話合いにおいて、先ほ
どもお認めになりましたように、争議中の日給は支払わないのが原則であります。ところが実際問題としては、いろいろな形において支払われておる。これは理論的に言いましても、実際的に見ても、
労働というものは部分的なものではないのです。たとえば退職手当の例のごとく、あるいは賞与のごとく、賃金の
内容というものはかなり幅のあるものです。だから、出来高払いで契約するのであればこれは別です。出来高払いについても保障給を法律は命じておるわけです。こういう
精神からい
つても、賃金というものをそうたやすく部分的に決定をするということは許されぬことに
なつておる。ましてやそのことを中心にして
労使関係が紛争を起しておるときには、それは労使間の話合いにまかせることが良策で、そうでない場合は、裁判所の
判定を求めるという最後の段階に入る、あるいは
労働法はそのために特別の
労働委員会とい
つたような判断をする機関を設定してあるわけであります。
行政官庁が、こういうものに対して、そう軽々に判断を与えることは危険であると思うのであります。その点に対して、なおかつ危険でないという御主張をなされるのであるか。もしそういう御主張をされるとするならば、これは問題はおのずから別でありますから、責任ある大臣の答弁を伺
つて別に争いたい。それでお答えを願いたいのです。
もう
一つ、保安要員を
引揚げるという示威的な主張が問題にな
つたようであります。私
どもも、感心したことでないと思う。保安要員を
引揚げるというような行為は、いずれの
立場からい
つても、望ましいことではないのでありましてさつき丹羽
委員から雇い主側の
立場を威嚇するとか、あるいは
立場を圧迫するという要旨の質問がなされてお
つたようでありますが、私は逆な
立場で
お尋ねをいたしたいと思うのであります。というのは、これはもうスト規制法のときに論議を重ねて来たことで明らかなことでありますが、およそ労使の争いというものは、雇い主側はもう一方的な
立場で制度の上において、法律の上において完全に支配的地位を確保しておる、それと対等の力を養い得るものは、完全な団結、すなわち憲法にいう結社の自由の上に立
つて労働者が団結したときに、初めて対等の
立場になるわけであります。ところが実際問題としては、完全な理想に近い団結というものは困難であります。その困難なことをし遂げて行こうとするためには、いろいろと団体行動、運動が起
つて来るわけであります。こういう
立場から、ことに労使が団体交渉において決裂したような場合において、あるいは団体交渉の過程において、
労働者が団結の威力を相手に示すことによ
つて要求を通そうとすることは、
労働法の
精神として保護を規定しているところであるし、憲法のいう団体行動権の保障はここにあるわけであります。そういう場合に、もし保安要員を
引揚げるという事態が発生するおそれがあるとするならば、その
労使関係というものは、はなはだしく不穏当なものであるか、あるいは力の上においてアンバランスが起
つて来る、そのアンバランスは、言うまでもなく
労働者側が劣勢な場合において起り得る現象である、こういう
労使関係の原則的なものがあるわけであります。そのことを
労働者の
立場から言えば、完全な
労働者の団結権が行使できるよう応保護をし、これを援助することを法律は命じておるわけであります。ところが、今具体的に問題に
なつております
炭鉱のストライキの
労使関係の現状というものは、経営者側の方は、りつぱな社団法人として秩序ある統制力を持
つておる、
労働者側の方は二つにもあるいは三つにも割れている姿である。こういう均衡の破れたところに、ややもすれば不祥事が発生する。すなわち、これは説明するまでもなく、
労働法の設定は
労使関係を平和裏に解決せしめるために、団結の保護法として考えられたわけであります。そういう実際問題を
労働省がはつきり見通されて、
労働者の団結が容易になるように便宜をはかるような指導をするのが、妥当であろうと考えるのであります。今丹羽
委員の質問に対しては労使公平ににらんでという
お話がありましたが、公平なということについては、原則において
労働者の団結力が完成された場合に対等である。こうアンバランスに
なつておる場合に、ややもすればそういう不法行為といいますか、好ましからざる手段がとられがちになるのであります。むしろ
労働省の
立場からするならば、力の強い経営者側に対して注意、勧告をして、一日も早く合理的な解決をするように指導されるのが妥当ではないかと思うのです。こういう見解からいたしますならば、たとえばスト規制法の中に、保安要員
引揚げ云々という字句があ
つても、これは経営者側にむしろ注意、勧告するために用うる条項であ
つて、弱い者のためにそれが逆に作用するような
労働省の見解がもしあるとするならば、
労使関係はもつとはなはだしい不均衡に
なつて結果は好ましからざるところの暴力行為のごときものまでが予測できる過去の歴史もあるわけであります。こういう点で、丹羽
委員の質問に対する御答弁は、どうも納得が行かぬのでお尋ぬをいたすのであります。この見解に対する
労働省の見解を、聞くまでもないと思
つたのでありますが、明確にしていただくことによ
つて、前の答弁が明らかになると思います。