○羽田
委員 生糸の行き詰まりといいますか、内地に七割も消費されるというような不健全な
状態が、今回の原糸保税の問題や、また今回の
法律が出される一番の原因をなす点でございまして、どうしても生糸を海外に輸出する、その振興策をつくらなければ、ほんとうに
日本の養蚕は意味をなさない。結局もし内地だけにやるということになればぜいたくな絹の着物をつくり、を盛んにすることになる、それは
日本が耐乏生活に耐えて復興するということのじやまこそなれ、何の意味もなさないのでありまして、どうしても海外の輸出振興という点に重点を置かなければならぬということは、もう言うまでもないと思うのであります。その意味において、最近これのリンク制の問題もありますし、あるいは三角貿易の問題もありまして、ずいぶん蚕糸界は多事多難でございます。そういうような意味からも、こうした海外の市場を
調査する
事務所をつくることは、非常に適切なることであると
考えております。ことに従来の絹糸が、主として
アメリカに参ると、婦人のくつ下に使われてお
つたものが、最近は織物の方に重点が行き、大部分が織物の原料として使われるような
状態にな
つておることは言う、までもないのであります。そういう意味で、どういう織物をつくるか、つまりフアツシヨンというか、織物の流行というか、これをつかむことが一番重要な点ではないかと思うのでありまして、そう、いう意味においては、こういう
事務所に働いて海外の需要を喚起する、あるいは宣伝をするというような面には、単なるお
役人とか、従来の普通の生糸方面の人でなく、
外国のフアツシヨンというか流行というか、そういうものを相当キヤツチするところの感覚と弾力のある、頭のある人間をそういう
事務所に使わなか
つたならば、結局おざなりの
事務所にな
つてしま
つて、これだけの金をかける意味が薄らいで参ると思うのです。そういう意味ではこういうところに使う人の問題というものは、よほど重大であると思います。流行を追つかけまわす
アメリカの婦人連の心理というものをよくつかみ、あるい、はむしろ流行をつくり出して行くくらいの幅と深さのある人を雇わなけれ。はならないと思うのでありまして、この
予算実施にあたりましては、中央蚕糸協会と十二分に御協議をしていただきまして、適材をお選びいただくようにと切望をいたしておきます。
次には、農業
改良普及事業について、これは大臣のお
考えを承
つておきたいと思うのであります。御承知のように農業
改良普及事業のうちでも、今一番力が入ら、なければならないのは、一番
日本で遅れておるものは、
日本の
農家の婦人生活の向上というものではないかと思うのであります。ちようど
昭和二十三年の十一月に、少数の生活
改良普及員というものを
全国に配置をいたすことになりまして、最初の予定ですと、今日は五箇年
計画で、二千百六十人ぐらいにな
つておるはずであ
つたのでありますが、
昭和二十八年度及び二十九年度の
予算においても、人員をふやすということができない
建前にな
つておりましたために、いまだ五箇年
計画の二千百六十人に対しては、ちようど半分ぐらいの千二十二人でストツプしておるような
状態でございます。
全国の六百万
農家に対して、千二十二人ということでは、一人の普及員の婦人の方が六千戸も担当しなければならぬというわけでありますから、これは非常にからだの上にも過重で、重労働であります。ことに御婦人のからだではどうしても適否市になる。しかも御婦人は非常に熱心であり、責任感が強いのでありますから、つい無理をして結核になるというような方も現われて参るのでございます。わずか一千二十二人の
人たちが実際
日本の
農家の生活の
改良のためには非常な働きをしておることを、
農林大臣に特に気をつけていただきたいと思うのでございます。しかもこれが非常に働きをなしますため一に、
農家の婦人の方々は、これらの婦人の
改良員の方々に対して、もつとうんと尊してもら
つてわれわれの手引いて、生活の向上に当
つてもらいたいという非常に熱心な農民の声のあることも、
農林大臣に強く頭に入れておいていただきたいのであります。現在これらの
人たちがどういうようなことをしておるかと申しますと、衣食住全体についての
農家指導をしておるのであります。が、その中でまず住の問題と申しますか、
改良かまどを普及することに非常に
努力しております。
農家向きの
改良かまどを普及する、それによ
つてたき木のむだを排除するということに力をいたしております。従来の
農家の原始的なかまどであ
つては、たき木が年間一億石も必要でございます。こんなことでは、たき本だけでも三十年もすれば
日本の山はまる坊主にな
つてしまうというようなことでありまして、森林
資源の少い
日本としては、すこぶる重要なる問題でございます。ところが
改良かまどにいたしますと、年間約七千三百万石くらいで済むのでありまして、それでも二千七百万石ものむだが排除でき、しかも将来ふろ場まで手を入れますと、もつとずつと冗費の節減ができると思うのであります。そういうようにいたしまして、かまどの問題はちよつとふしぎなようにも
考えますが、
日本全体の問題にも
関係があるのであります。ことに国策の重要問題にな
つています治山治水の上においても、こういうふうにして
改良かまどが普及されることは、非常に貢献をすることは言うをまたないのであります。ところが現在一千二十二人というよ、なわずかな普及員でありますから、
農家がかまどを築きたくてもなかなかこれらの普及がまわ
つて来ない。まずそのかまどの築き方もわからないし、購入をしたくてもその
方法について相談もできない。よく
農林省推薦というようないろいろなインチキものが出まわ
つておりますが、こういうものについて、付が一番いいのかということを、これらの普及員の方々が教えてやることも必要でございます。またそのかまどを築いたならば、正しく使う
方法も教える必要がありまして、こういう治山治水の面あるいは冗費節約の面から、
改良かまど事業というものがいかに重要であるか、そのためには農業
改良普及員がいかに必要であるかということを、まず認識をしていただきたいと思うのであります。もちろん
農林大臣は自分の御所管でありますからよく御承知でありまして、申し上げるまでもないことでありますが、特に
農林省の幹部の方方に毛頭に入れて、来年度から特に御婦人の問題に力を入れていただきたいと思うから申すのであります。
それから食の問題にいたしましても、先ほど
小林委員から粉食の問題について
お話がありましたが、去年はなるほど冷害あるいは病虫害の
関係から、米がとれなか
つたということのために、やむを得ずというとおかしいのでありますが、自然的な要求から粉食というものが、冷害地においては一日三度のうち一回だけは実施されておるような実情でございますけれ
ども、しかし今後米がとれると、また米に移
つて行くおそれもあるのであります。どうしてもやはり積極的に粉食を奨励するということは、今後の
日本の食糧政策の上に絶対的な問題でございます。もし三日に一回粉食をするようにし、それに油を一日に一句くらい使うというようなふうにして、
農村生活の栄養の充実をはかり、しかも粉食の奨励を恒久的にするということになりますと、六百万
農家が全部実行いたしますと、年に七百二十万石の米が節約になりまして、輸入米がいらなくな
つて来るという結果にもなるのでありまして、この重要なる粉食の問題についても、このたおやめの一千二十二人の御婦人の普及員の方々がどんなに力を入れて
農家をかけまわ
つておるかということも、この際強く頭に置いていただきたいと思うのであります。
それから衣の問題であります。
農家の婦人の済ます作業衣、これは最近は大分洋服まがいにもな
つて参
つておりますが、もし合理的な作業衣を使いますれば、布地も半分で済む。しかもそこに化繊というようなものを加味することになりますと、木綿の節約ということになり、
従つて外貨の節約の上に非常な貢献をいたすのでございます。また住の問題についても北海道あたりの普及員は、もうすでに
農家の家の建て方について、暖をとるために燃料を節約する建て方について
指導するまでに進んでおるようであります。とにかくこうして衣食住の問題について、こうしたわずかに一千二十二人の御婦人の普及員の
人たちが、真剣に
農家の婦人とともに手を携えて、
日本の
農家の
改良に力を入れておるというこの厳粛なる事実を、われわれは頭に深く入れてく必要があり、これらの方々の奮闘によ
つて治山治水の国策き行の一助にもなるということも、頭に入れておく必要があると思うのであります。ところが従来の
補助金は、これは
大蔵省に尋ねをして
大蔵省に反省して、もらうべきことでありますが、とにかく
大蔵省の査定が、従来はこれらの普及員に対しては三分の二の人件費の
補助であ
つたのでありますが、画の
予算においては二分の一となり、そしてあとは六分の一を交付税によ
つて補うというふうにな
つております。しかし交付税はひもつきではございませんから、はたしてこれが県の
段階に参りまして、交付税がこの普及員の人件費として流されるかどうかという点については、私
ども和一当疑問があるのでありまして、われわれもそういう点については
努力はいたしますが、特に
農林大臣、また農林当局におかれましても、各
府県に督励をいたしまして、この交付金がほんとうにその
通りに普及員の人件費に流れるように、御
指導と御鞭とをいただきたいと思うのでございます。これは、二十年度の
予算の問題になりまが、
農林大臣並びに農局といたしましては、ぜひとも以上申し上げましたことを頭に入れておいていただきまして、来年はこの御婦人の普及員のためにうんと
予算をと
つて、五箇年
計画で予定した人員をできるだけすみやかに充足をいたしまして、
農家の婦人の相談相手として、
農家経済の確立と住みよい
農村の建設のために
努力をさ迂るように、特に
予算のことに御配慮をいただきたい。また私
どもといたしましても、そのことに力を入れて行きたいと存じておるのでございます。私は自由党農でありますから私はあえてそうは申しませんが、万一二十九年度
予算が、各党の
予算の折衝によりまして、幾らかでも
予算の修正が行われるというようなことがあれば――私は自由党でありますから、今はそうは思
つておりません。絶対に原案でや
つて行かなければならない、一兆の
予算でや
つて行きたいというように
考えておりますが、もし万一この
予算を通すための手段として、幾らか妥協するというようなことが起
つた場合においては、この普及員の
予算をぜひともこの二十九年度においてもふやす、たとえ一億でも五億でもふやすように考慮を払うことが必要であると私は思うのでございます。今まではとか馬力の強い、何といいますか集団的な陳情運動をしますと、
予算がよけい獲得できるという傾きがありますでありますが、御婦人の方でありますから、あまり心臓が強い、あの人は女のくせに何だと言われて、結局引込んでしまうのでありますから、やはりこいう声なき声、
日本の国民の五割五分を占めておる婦人のために、ひとつ男である大臣初め
農林省官僚の各位は力を入れてもらいたいということを、特に私は要望をいたしておくのであります。この点につきまして、
農林大臣の御所見を承りたいと存じます。