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1954-02-12 第19回国会 衆議院 予算委員会公聴会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年二月十二日(金曜日)     午前十時三十三分開議  出席委員    委員長 倉石 忠雄君    理事 小峯 柳多君 理事 西村 直己君    理事 西村 久之君 理事 森 幸太郎君    理事 川崎 秀二君 理事 佐藤觀次郎君    理事 今澄  勇君       相川 勝六君    岡田 五郎君       尾崎 末吉君    尾関 義一君       小林 絹治君    庄司 一郎君       高橋圓三郎君    富田 健治君       中村  清君    灘尾 弘吉君       羽田武嗣郎君    葉梨新五郎君       原 健三郎君    福田 赳夫君       船越  弘君    八木 一郎君       山崎  巖君    山本 勝市君       稻葉  修君    小山倉之助君       河野 金昇君    河本 敏夫君       古井 善實君    足鹿  覺君       滝井 義高君    松原喜之次君       山花 秀雄君    河野  密君       小平  忠君    堤 ツルヨ君       黒田 寿男君  出席国務大臣         国 務 大 臣 緒方 竹虎君         国 務 大 臣 安藤 正純君  出席政府委員         大蔵政務次官  植木庚子郎君         大蔵事務官         (主計局長)  森永貞一郎君         大蔵事務官         (主計局次長) 王示啓次郎君  出席公述人        早稲田大学教授 時子常三郎君         山一証券株式会         社取締役社長         日本証券業協会         会長      小池厚之助君         全国未亡人団体         協議会事務局長 山高しげり君         国民金融公庫総         裁       櫛田 光男君         農林中央金庫理         事長      湯河 元威君         全日本中小工業         協議会中央副委         員長      中島 英信君         函館ドック株式         会社取締役会長 加納 久雄君  委員外出席者         専  門  員 小林幾次郎君         専  門  員 園山 芳造君         専  門  員 小竹 豊治君     ————————————— 二月十二日  委員河野一郎君辞任につき、その補欠として安  藤覺君が、議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の公聴会意見を聞いた事件  昭和二十九年度総予算について     —————————————
  2. 倉石忠雄

    倉石委員長 これより昭和二十九年度総予算につきまして公聴会を開きます。  開会にあたりまして、御出席公述人各位にごあいさつ申し上げます。  本日は御多忙のところ、貴重なるお時間をさいて御出席をいただきましたことに対しまして、委員長として厚くお礼を申し上げます。申すまでもなく、本公聴会を開きますのは、目下本委員会において審議中の昭和二十九年度総予算につきまして、広く各界の学識経験者たる各位の御意見をお聞きいたしまして、本予算案審査を一層権威あらしめようとするものであります。各位の忌憚のない御意見を承ることができますれば、本委員会の今後の審査に多大の参考となるものと存ずる次第であります。一言ごあいさつを申し上げます。  なお議事の順序を申し上げますと、公述人各位の御意見を述べられる時間は大体二十分程度にお願いいたしまして、御一名ずつ順次御意見の開陳及びその質疑を済まして行くことといたしたいと存じます。  なお念のため申し上げますが、衆議院規則の定めるところによりまして、発言の際は委員長の許可を得ることになつております。また発言内容は、意見を聞こうとする案件の範囲を越えてはならないことになつております。なお委員公述人質疑をすることができますが、公述人委員に対して質疑をいたすことはできませんから、さように御了承願います。  それでは、まず早稲田大学教授時子常三郎君より御意見を拝聴することといたします。持子山常三郎君。
  3. 時子山常三郎

    時子公述人 私、実は各党に非常に親しい皆さんがおいでになりまして、こういうことはちよつと申し上げにくいので今まで御遠慮申し上げておりましたが、きようは私が考えているところを率直に申し上げたいと思います。  本日は予算の問題でございますが、予算はこれをよく見ますと、政府の赤裸々な政策、場合によつてはその能力、性質、品性までも暴落しておるものだ、こういうふうに申し上げ得るかと思うのであります。よけいなことでありますが、ドイツのゴールドシヤイトは、予算というものはあらゆる紛飾的イデオロギーを脱ぎ捨てた国家の骨組みであると言つたが、すなわち、まつたく裸になつ政府の姿が見えるのじやないかと思います。そこで三、四点申し上げたいと思います。  まず第一は予算組み方であります。これはこの前に改進党が自由党に要求したときの組みかえ案にも現われたことでありますが、今度の予算を拝見いたしますと九千九百九十五億、一兆円予算ということになつておるのであります。   〔委員長退席小峯委員長代理着席〕 ところがよく内容を拝見いたしますと、特別会計がつくられておりまして、その特別会計の中に地方財政平衡交付金にかわる特別会計を設けられておりまして、入場税国税に移管するということになつております。たしか百九十二億だと思いますが、それをまず特別会計に入れておいて、その一割だけを一般会計に振り向けるという方法をとつておるのであります。こういたしますと、ほんとうは百七十三億だと思いますが、それだけが一般会計に入らないで、それを素通りして特別会計に行つておりまして、一兆円予算と言つておりますが、実は九千九百九十五億でなくして、なおこの百七十三億のほかに租税の払いもどし金というものをこの一般会計からはずして、九千九百九十五億として一兆円予算を高くうたわれておるのであります。こういう事柄は何でもないようでありますが、国民からいいますと、何かここにからくりをやつておるのではないか——ことに最近のように国会につきまして国民がいろいろな目をもつて見ておりますとき、こういう予算が出て参りますと、予算の中にも何かからくりが含まれておるのではないかというふうな気持を強くするのではないかと思いますので、実は予算というものはすつきりしていただいた方がいいのではないか。ことに私ども国会にも官庁にも全然関係ございませんが、組まれた予算を拝見いたしますと、まつたく手のうちがはつきりわかつて参ります。おそらく国民にも相当そういう人がおるのではないかと思うのです。でありますから、今後予算を組まれるときには、もつとすつきりした予算にしていただきたい、まずこのことについてお願い申し上げたいと思います。  その次には基本方針でありますが、この基本方針を拝見いたしますと——二十八年度予算は、昨年の六月から今年の一月までのわずか半年の間に、その基本方針に根本的な大きな変革があるのであります。この二十八年度予算の当時におきましては、いわゆる積極財政という銘を打たれまして、財政投融資というものを非常に積極的にやつておられたのであります。ところがその当時すでに私ども心配しておりましたのは、二十四年のドツジ政策以来、インヴエントリー・フアイナンスその他などで蓄積しておりました財政資金を非常にたくさん食い込んでしまつてつたのでありまして、たしか五百三十二億かと思いますが、それだけ食い込んでおりました。あと二百億かせいぜい三百億しか残りません。しかも通産省の発表の五箇年計画を見ますと非常に厖大になる。全部で財政資金だけで約一千八百八十八億ですか、発表になつておりましたが、それが必要だ、こういうことになつておりましたのに、二十八年度予算におきましてすでに長い間の財政蓄積資金というものを食つてしまつておる、あと二、三百億しか残りがない、そういう予算を組んでおりましたので、これは一体来年どうするだろうと考えていたのであります。ところが二十九年度予算はまだ半年たたないうちにすつかり方針がかわりまして、今度は緊縮で行くのだ、ことに耐乏予算だというふうに大転回をしておるのでありますが、こういう方法は結局政府経済政策がないのだ、美的にわれわれはそれを非常に憂えるのであります。ことに重点産業は、ここ数年電源開発造船鉄鋼石炭というものに集中的に財政資金をつぎ込んで来ているのであります。もちろんこれは私ども日本国民経済の復興の上から反対ではございません。しかしそれを昨年はもつと積極的にやるのだという態勢をとられて、おそらくこの関係業者人たちもそのつもりで始めたろうと思うのでありますが、ことし第二年に入りまして、それがすつかり取上げられてしまつておる。こういう政治をやつていいのだろうかというふうに考えるのであります。ことに電源開発でございますが、これなどおそらく今度の予算によりますと、大部分の投資が大幅に削られておりますので、五箇年計画は第二年で蹉跌を来さざるを得なくなつて来ておる。新規工事はもちろんとりやめなければならぬが、さらに継続事業さえもうまくやれるかどうか、こういうふうに思われるのであります。造船を見ましてもおそらく三割減くらいになりまして、貨物約二十万総トンできるかどうかというふうに思うのでありますが、またことに船につきましては造船には非常に関連事業が多うございますが、これにも影響を及ぼして、弱小企業が閉鎖せざるを得ないというふうな危惧がいたされます。鉄鋼にいたしましても計画はもう第二次合理化計画の練直しの必要があるだろう。弱小企業はまた整理淘汰せしめられるのじやないか。石炭にいたしましてもあの炭価を低めるためには縦坑が必要だというので、これはどなたもおそらく御賛成だろうと思いますが、これもこの合理化見通しが困難になると見送らざるを得ないのじやないか、そのほか重要産業といたしまして合成繊維もございますが、これ一も五箇年計画でやろうとなさつておられたのでありますが、ことに日本国民経済資源から見まして、食糧、衣料をどうしても買わなければならぬ、そういう国策から見ましても、ビニロンなどは日本資源石炭電源を開発すれば大体できるはずでございますから、国際収支の上からいつても、育成が非常に必要じやないかと思いますが、これなどもおそらく予定通りに行かないだろう。機械、いい機械は種類によりましていくらか過剰生産傾向がございますけれども、しかし機械の方も五箇年計画は困難じやないか、ことに一万六千台という目標というようなものは困難になつて来る、こう思いますと、政府予算組み方いかんによりまして、国民経済が非常な影響を受けるのでございますが、ことにこの予算によりましてデフレであるかインフレであるか、これは今の状態でははつきり申し上げることが危険であると思います。と申しますのは、二十八年度の繰越しが一千億になるか一千二百億になるか、それはまだはつきりわかつておりませんし、さらにまたこの自然増収、最近の予算組み方を見ますと、一兆円につじつまを合せるために、租税見通しを少し少くしておられるのじやないか、案外自然増収が大きく出て来るのじやないかと思いますが、そういうことになりましてデフレ傾向が強くなりますと、中小企業倒産というものも出て参りましようし、この重点産業資金の差繰りをとめたために、こちらからの影響も起つて来るのじやないか、そういう点がわれわれにはかなり考えられるわけでございます。  従いまして政府方針を立てられるときに、ことに私どもふしぎに思いますのは、政党も内国もかわつておらない、しかも日本国際事情といたしましてもあまりかわつておらない、ただ若干の被害があり、またさらに凶作ということがございましたが、それ以外に大きな変化の理由がなかつたように思われるのでございます。ところが予算が非常に大きな変化をしておる、これは結局基本政策はつきり打出しておらないからであります。国会の答弁などを伺つております。と、自由主義には計画はないのだというふうに報告されておりますけれども、今日の敗戦後の日見ますと、まずわれわれは着るもの、それから食うもの、それに原料というものをどうしても買わなければならないのでありまして、いかなるイデオロギーのもとに立とうとも、計画を基本的に立てていただきたい。それに従つて国民に対していただきますと国民も安心することができるのじやないか、こう思いまして基本政策の確立ということにつきましてお願い申し上げたいと思います。  それから次は耐乏予算というふうに大きく打出されておりますので、それに関連いたしまして申し上げたいと思います。耐乏予算あるいは最近労使協調ということが非常にやかましくいわれておりまして、同町にそれは今日の状態から見て必要じやないかと思いますが、それにつきましては、まず上の力から耐乏の形態を整えなければならぬじやないか。それにつきましてはこの前の不成立予算のときに、法人交際費接待費機密費、これに課税をするということが問題になりました。ところがそれがとりやめになり、今度の予算を見ますと、法人税の改正のところに若干それが顔を出して来ておるのじやないかと思います。それを見ますと、一定額を越える場合に、その越える金額の二分の一に相当する金額は損金に算入するというふうになつておるのでございますが、私はこれをもつと積極的にやつていただきたい。年間八百億あるいは一千億とかいわれるいわゆる社用族浪費でございますが、こういう事柄が今日の日本実情の中にあつてよろしいものだろうか。これにつきまして前にある租税研究会で問題になりましたときに、業者のある人たちがそういうことをやるのは政府会社企業の中に干渉するのだ、企業ふところに手を入れるのだというふうな御意見があつたようでございますけれども、しかしすでに日本の今日の国民経済再建のために必要であるからやつておるのでございます。企業育成資本蓄積ということは、これは歴代内閣のやつて来ておる方針でございます。その意味におきましてすでに企業ふところ政府はつきりと手を入れておるのだということが言えるはずなのです。企業育成あるいは資本蓄積のために、国民がそれだけの税の負担をしておるのでありまして、国民は事実国の再建のために貢献しておるのでありまして、それにもかかわらず造船に対する利子補給のように、はつきりとそういう方法を現在とつておるわけであります。そういう点から考えますと、法人交際費接待費機密費に対して相当な裸視をするということは、何人が見ても合理的なものだと思うのでございます。業種によりましていろいろ事情が違いますので、業種資本とあるいは取引金額等、いろいろ標準がございましようが、この点は私は今度は耐乏予算という建前からも、はつきりと手を打つていただきたいと考えます。  それからこれは同じ点からでございますが、最近新聞紙上にいろいろ、出ておりますが、経費不当不正支出でございます。これはあるいは決算の問題になるかと思いますが、予算関連がありますので申し上げたいと思うのでございます。あの問題にいたしましても最近新聞で拝見いたしますと、どこかの党で上級官吏にも責任をとらせた方がいいという意見が出ておるように伺つておりましたが、これは官吏はもちろんであろうと思うのであります。少くとも判こを押した官吏は全部責任をとるという必要があろうと思う。何のために判こを押したかということになるのでございまして、たくさん判こを押したのは権力集中主義責任分散主義だというのでは困る。これはほんとう責任をとる必要があると思う。その上にアメカリ支出予算法を御参考になさつて考えていただいたらどうか。と申しますのは、アメリカ予算を組まれましても、支出予算法によらなければ支出ができない、これは御承知の通りでございます。その場合に支出千算法によつて支出することが、その支出の適法であることの条件だけでなくして、その支出が有効であるということの条件になつておるようでございます。従つてもし一度その支出予算法に違反して不当、不正支出だということになれば、これは正しくないのみならず、その法に違反したということで非難されるのみならず、国の方でその支出したことに対する債務の責任は負わないということになつておるようでございます。これにつきましては会計検査院の総務課長をしておられました池田さんなどは、詳しく研究をしておられるはずでございますので、そういう人たちの御研究参考にいたされまして、日本の場合においても、予算執行職員がもし不正、不当な支出をした場合には、国が責任をとらないというところまできめていただけば、絶対に不正はできないと思うのであります。もし業者がその役人のきげんをとつて支出をしてもらつても、その支出した結果に対して国が責任をとらないということになれば、これはどうにもならない。その点で私は、アメリカ歳出予算法によつてつていただきますと、根元を断つことができるのじやないかというように考えますので、この点もひとつお願い申し上げたいと思います。  それからいま一つでございますが、最近経費が非常に膨脹して参りまして、しかも財源はもはや行き詰まりの段階に来ておるわけでございます。従つて問題は経費節約というところに行くよりほかに、方法がなくなつて来ておると思うのでありますが、それにつきましては、行政費節約ということは、これは申すまでもないことでございます。ことに最近公務員が非常に増加して参りました。よく昭和九年から十一年と今日との状態を比率で参考にされるようでありますが、かりに昭和九年の官吏の数——これは今日本は軍人がおりませんから文官だけを考えてみますと、昭和九年の官吏の数は十三万三千人、雇員が全部で三十五万九千人、とにかく両方合せて五十万足らずであつたようでありますが、今年度私はまだ資料を拝見しておりませんが、二十八年度の予算定員を見ますと百四十万三千人、保安隊はこのうちから省いております。二十八年度は保安隊約十二万三千名ございましたが、これを省きますと百四十万三千人と、約三倍近く膨脹しておるのでございます。ところが戦争前にすでに役人の数に対する問題がありましたのみならず、年金及び恩給というのがありまして、そちらが非常に大きな経費を食つておる。実際に役人として働いておる人に対する俸給に対して、さらにその方が多かつたのでございます。今日のように役人が多くなりまして年金及び恩給というものが増大して参りますと、戦前以上に大きな負担を課す結果になるのじやないか。そこで本日の問題はこの恩給について申し上げたいと思います一この問題はわれわれ恩給をもらつておらないから公平に見ることができるのだと思いますので、特にこのことを最後に申し上げたいと思います。  恩給につきましては今まで三つの歴史がございます。最初は役人が殿様の家来であつた当時に恩恵的にもらつたもの、それが資本主義段階に入りまして、恩給というのは役人になれば経済的に自由な活動ができない、私益追求はできない、従つてそういう経済上の活動能力喪失に対する補填だということで、恩給合理化されて来たわけでございます。ところが今日の実情を見ますと、はたして国民のうちの何人が利益活動が十分にできて利益を得ることができるかという段階に来ておるのでございまして、今日の恩給の合理的な根拠は、雇主の使用人に対する老廃救済制度である。こういうふうに松化して来ておるのでございます。これは高木とかおつしやる恩給関係の深い方がそういう意見をすでに新聞発表しておりますので、私の独断ではないと思うのでありまして、そういうふうに使用人である役人老廃救済制度としてこれを払うのだというところまでもう考えておるのでございます。ところが終戦前と異りまして、最近の納税事情を見ますと、終戦以前は国税を払う者は相当の収入があつて生活の比較的楽な人が払いましたが、最近の国民状態生活費の一部をさいて払わなければならない。これはシャウプ勧告が認めておりますように明らかに日本の税制において所得税は各フアミリーの中に入り込んで来ておるのだ、そういう大衆課税だということをシヤウプ・ミッシヨンが報告の中に書いておるのでありますが、そこまで今日の国民税負担が来ておるのであります。そういたしますと、納税者官吏使用者のはずでございます。明らかに使用者で、しかもその使用料を払つておる。その払つておる使用料よりも比較的高い俸給官吏はとつておる。あるいは場合によつて中小商工業者のように倒産をしてまで払つておるのに、使用料を受けておる人たちが中等ないしはそれ以上の待遇を受けておる官吏である。その人たちに対して考廃救済制度をなお続けなければならないだろうか、私は虚心担懐に考えていただきますと、今日そこに大きな問題があろうと思うのであります。この点につきましては国会社会党関係の諸君が強く主張されるべきはずだと思うのでございますが、私はまだ遺憾にしてそれは聞いておらないのでございますが、その実質的内容というものを十分考えていただきたい。ことにこの二十九年度予算が遂行されますとデフレになる。そうしてかなり経済の混乱が来るのじやないか、こういうように考えるのでございます。そうなりますといよいよ官吏特権階級というふうな形になりはしないか。と申しますのは、この恩給法根拠を考えてみますと、これは旧憲法の第六十七条にまず規定されたものでございますが、旧憲法の第六十七条は天皇の大権事項を規定したものであります。その関係恩給というものが規定され、これはいわゆる官憲勢力温存根本的規定であつた、その物的基礎を保証する根本的規定であつたわけでありますが、それが新憲法によつて全面的に否定されておる。ところが最近見ますと物価の値上りによりまして、公務員給与と同じようにベース・アップされて来ておるのであります。ところが戦争前に企業整備で大きな徹宵を受けた人、家を焼かれた人、あるいはまたその当時たとえば十万円預金のあつた人は依然として十万円である。たとえば同定資産税の場合におきまして、償却資産課税する場合に、たまたま償却資産を持つておるものは他の財産よりも有利だというので課税をしておるわけでございますが、ところがたまたま役人であつた者だけが戦前と同じベース・アップで今日待遇を受けておる。しかも納税者状態が非常にかかつておる。これは社会保障わくの中で国民全体に適用されて行くべきであります。そのわくの中でこれは扱わるべきものじやないか、こういうふうに考えるわけでございます。ことにこの二十九年度予算の遂行というふうなことから考えまして強くその点を感じますので、この辺のところでこの予算関連いたしまして恩給の問題を再認識していただきたいと思います。ことに二十九年度の予算社会保障ということはかえつて弱められておるようでございます。また中小商工業失業者も出ると私は考えるのでございますが、それについての手当もかなり不十分じやないだろうかと思いますので、その恩給をもらうべき人たち国民との間の不平等ということは、かなり強く現われて来る可能性があるのじやないか。こうなりますと、そういう大きな組織を持つた勤労者と未組織勤労者との間の対立感情を引起す可能性もあると思いまして、予算の面でその点今日からひとつ手当をしていただきたい、こういうふうに考えるのであります。  こういう点から考えまして、ことに基本方針ども拝見いたしまして、私の考えますことは、だんだん縮小の傾向はございますが、経済審議庁というものが今日ございますので、あそこにもう少し国民の知能を動員していただいて、基本的な政策を立てていただく、あるいは各党が政調会というものをもう少し充実していただきまして、国政につきまして基本的な面を打出していただいて、国民がこれならばと安心するような政治を実践していただくようにお願いいたしまして、私の発言を終りたいと思います。(拍手)
  4. 小峯柳多

    小峯委員長代理 ありがとうございました。  ただいまの公述に関しまして御質疑がありましたら、・・・・・。
  5. 山本勝市

    ○山本(勝)委員 ほかの委員の方からも質問があると思いますが、支出予算法かあるいは恩給関係でいろいろ傾聴すべき御意見を承らしていただいてありがとうございましたが、二点ばかりちよつと疑問の点をお伺いしたいと思うのであります。  その一つはこれまで積極的と申しますか、かなりインフレ的な財政予算を組んで来た、今度は非常に緊縮的なものにかわつたということに対する御意見がありましたが、時子山さん自身は、この際日本の現実の情勢において、やはりこれまでのような行き力で予算を組んだ方がいいとお考えなのか、それともこれまでの行き方をかえて、ここで緊縮的な予算を組んだ方がいい、こういうふうにお考えなのか、その点だけ。これの原因がどこにある、ここにあるという政治的な問題を離れて、この情勢において組み方としては緊縮予算を組むべきだという段階であるかどうかを承りたい。これが一つ。  それからもう一つは譲与税の交付金。九千九百九十五億という一般会計予算を組んでおるけれども、そのほかに特別会計があり、譲与税の交付金というものがあつて、すつきりしないというようなお話でありましたが、しかし聞いておるとその譲与税の交付金が一兆の中に入つていないような印象も受けるのですけれども、私どもの了解しておるところでは、やはり一兆の中にそれが組まれておる、こう了解しておるのですが、その辺をどういうふうにお考えでありますか。
  6. 時子山常三郎

    時子公述人 お答え申し上げます。緊縮財政でやつた方がいいのか、従来通りでいいのかという御質問でございますが、私は昨年度のようなああいうふうな財政の組み方からすでに反対でございます。重点産業の復興につきましては、財政資金を注入することは国民経済の立場から当然だと考えますが、しかし昨年度のように明年度の予算資金がすでにもう予想がつかないまでに使つてしまい、そして今度のようにこういう急転換をするということについて疑問を持つております。  それからいま一つはあれは九千九百九十五億の中に入つていないのでございます。たとえば地方財政平衡交付金は今まで全部一般会計に入つておりました。ところがこの間いただいた予算書を見ますと、特別会計の中に直結で入つておる。特別会計から一割の十九億だけが一般会計へもどつて来ることになつている、それ以外のものはあの一般会計から入つております。ところが国税に関しては入場税だけがそういう特殊扱いを受けておる、これを私はどういうお考えでなすつたのだろうか、こういうふうに考えるわけであります。
  7. 小峯柳多

    小峯委員長代理 原健三郎君。簡潔に願います。
  8. 原健三郎

    ○原(健)委員 恩給の廃止といいますが、最近軍人恩給をのこのこ復活しておるという状態ですが、あなたのおつしやるのは軍人、文官も全部廃止してしまえ、こういう御意向ですか。
  9. 時子山常三郎

    時子公述人 私は戦争によりまして負傷したりなんかしておる方には、特別に待遇すべきだと思うのであります。ところがそれ以外非常に元気でおられる人たちは、軍人も一般の文官も総じてそういう恩給は今日の段階では必要ない、公平に見て私はそういうものではないかと思います。従来だと相当国税を納める人はいい生活をしておつたのであります。その人たちが納めたので、従つて恩給というものは合理性がありましたが、今日は一般の役人方よりもはるかに下の人たちが納税しておるのでありますから、これを全国押しなべて社会保障わくの中に置いていただきたい、こういうふうに思います。
  10. 小峯柳多

    小峯委員長代理 それでは時子山君の公述はこの程度でお願いいたします。ありがとうございました。  次は小池厚之助君から公述を願いたいと存じます。日本証券業協会会長小池厚之助君。
  11. 小池厚之助

    ○小池公述人 小池でございます。私は今回政府の編成されました緊縮予算につきましては基本的には賛成でございます。しこうしてその政府の編成方針であるところの緊縮予算によりまして購買力の膨脹を防ぎ、物価を下げて国際収支の改善をはかろうと意図されておるこの観念には、私賛成でございます。但しこれは簡単な仕事でないのでありまして、予算だけではできません。その裏づけのいろいろの施設がいると思うのです。先日の国会における大蔵大臣の御答弁にも、予算の裏づけとしては金融政策租税政策、外貨予算等の裏づけが必要であるのだという御答弁のように承知いたしましたが、ごもつともであります。しかしそれが十分な御用意があるかどうかということについては、はなはだ疑問に思つております。このほかに私はこの緊縮財政を遂行して国際収支の改善・物価の引下げを実現するためには、有力な裏づけ施設として労働政策の確立が必要だと思うのです。これらにつきましてどういう御対策を持つておられるか、たいへんに疑問に思つておるのでございます。  申すまでもなく、御承知のことでありますが、英国におきましては、数年前にポンドの価値の維持のために、チヤーチル内閣が非常な英断の財政政策をやつたのであります。その際チャーチル首相はみずから閣僚の俸給を減俸されまして、そうして英国民に範を示すというような意味からスタートされました。そういう御用意が政府にあるかどうかと私は思つておるのであります。経営者も労働界の方も政府の方々も、ほんとうにこれでひざを交えて、腕を組み合つてつて行かなければならない非常に重大な政策であると思うのであります。国内の態勢がそこに来ておるかどうか、私はたいへん疑問に思つております。物価だけのことをとつてみますと、バトラーは国際収支の改善のために大きな輸入制限をやりました。一九五二年大きな輸入削減をやつたにかかわらず、英国の物価は一割五分の下落をいたしております。しかし日本におきまして国際収支の改善のために、私はある程度の輸入制限というものは必要だと思いますが、日本におきましては輸入制限をいたしますと、輸入の大宗が食糧であり、また国民の生活の必要品をつくるところの原料でありますので、これは物価にはね返りまして、政府の予期されるがごとき物価下落が起るかどうか、たいへん私は疑問に思つておるのであります。これらにつきまして、予算の裏づけとしてどういう政策を用意されるか、これをうまくやつていただきたいと希望するものであります。物価を下げますにつきましては、申すまでもなく、購買力を適当に善導しなければならぬと思います。経済審議庁発表されました昨年の経済白書——これは二十七年度分か二十八年度分か、ちよつと忘れましたが、数箇月前に出ました経済白書です。−によりますと、消費の増大とそれから設備投資の増大、これを大きな日本経済の特徴にしております。二十七年度、二十八年度がそういう状態であつたと思うのでありますが、今度の政府の子算方針によりまして、どうしても購買力を押え、そして不急の投資を押えるという方向に向つて行かなければならないと思うのでありますが、それに対してどういう裏づけの施策を用意されておるかと私は思うのであります。たとえて申しますならば、購買力の問題でありますが、このたびの予算は表面上は確かに均衡予算であります。しかしながらその内容を掘り下げてみますと、消費的の支出はむしろ増大しておると思うのであります。公務員ベース・アップ、これが一つであります。それから旧軍人の恩給、これがその一つであります。それから米価の引上げによります農村収入の増加、これまた購買力を増大する支出であります。それから勤労所得税の軽減、これもたいへんけつこうなことでありますが、これもやはり購買力の増大を助長するというような方向に行きやすいものであります。これらの購買力の増加をどういうふうに有効に導かれるか、これについて私は若干の疑問を持つものであります。結論的には、わが田に水を引くわけではございませんけれども、それをやはり有効な投資に向けて行くことが必要である、資本蓄積に向けて行くことが必要である。そのために私ども証券界もお役に立つところがあるのではないかと思つておるのですが、これは後ほど申し述べたいと思います。その他、予算を見てみますと、大きな消費であるところの公共事業費、これについては何らの削減がございません。これにつきましても、私ははなはだ遺憾に思つておるのであります。また地方財政はむしろ膨脹であります。これも購買力の抑制どころか、むしろ購買力を刺激するものだと思うのであります。  次には設備資金でありますが、昭和二十六、七、八年度というものは、御承知の通り設備資金、産着投資、これが非常に増大いたしまして、これは必要なものもございましたけれども、相当不急不要のものがございました。いわゆる日本の設備が老朽化しておりますので、合理化資金に向つているならば、心配はないのでありますけれども、このことしの設備資金の中には、相当不急不要のものもございますし、また単なる増産設備に向つている点がたくさんあるのであります。その結果はここでもつてオーバー・プロダクシヨンという問題にぶつかるのではないか。そうしますと、ことしのこの設備資金の抑制については、政府はどういうお考えであるかということも私は心ひそかに憂えておるというか、疑問に思つておる次第でございます。なるほど今度の予算におきましては、財政投融資の額はカットされました。それから銀行預金は、いわゆるオーバー・ローンの解消というような見地から、銀行における資金というものは制限されると思います。これらによりまして設備資金の投資に対しましては、相当のスクリーンが行われると思いますので、けつこうだと思いますが、しかしここでもつて私は申し上げたいのですが、このオーバー・ローン解消に対する政策でございます。これは私は新聞紙上だけで拝見しているので、ほんとう政府の御対案を親しく伺つたわけではございませんので、見当違いの議論をするかもしれませんけれども、このオーバー・ローンの解消の政策は、今回の予算の裏づけとして非常に重要なる施策の一つだと思うのですが、しかしこの政策の施行につきましては、慎重なる御研究を願いたいと思うものの一人であります。これをうつかり誤りますと、たいへんなことになるのではないかという懸念を私は持つております。私の申し上げることが見当違いならばいつでも訂正いたしますが、もしも銀行預金がふえただけ以上のものは絶対に貸さぬというような結論に来るならば、これは私は非常に問題だと思います。最初に申し上げました通り、このたびの政府のインフレをストップするという政策に対しては、私は全面的に非常に賛成でありますが、同時にそれはその表づけとして、いろいろの施策を希望いたしますが、その裏づけ政策が行き過ぎますと、非常に大きなむずかしいところにぶつかるという気がいたしております。その一番大きなものがこのオーバー・ローン解消政策であります。私ども財界におります者がこの緊縮政策に賛成しながらも、また御協力申し上げたいと思いながらも、しかしこれは決してなまやさしいことでないと思いますけれども、根本におきましてやや安心しておるところがあり、昭和四、五年の濱口内閣の金解禁のときと違つた気持を持つております根本の原因につきまして、私はこれはゴールド・スタンダードでないからだと思つております。今の日本経済はゴールド・スタンダードに立つておりません。言うまでもなく、濱口内閣のときには、コールド・スタンダードでなかつたのをゴールド・スタンダードに立たせた。ゴールド・スタンダードに立ちますと、通貨というものはいやおうなしに収縮するのであります。国際収支あたりが悪化いたしますと、いやおうなしに収縮する。ここに調節の余地がないの百であります。今回のオーバー・ローン解消策がどういうところをねらつておらるるかわかりませんけれども、高率適用そのほかでもつて、なるべく今後のオーバー・ローンをさせないようにお導きになることはけつこうでありますが、そこに一つのゆとりもなく、銀行預金がふえた以上のものは絶対に貸し出せないということになりますとゴールド・スタンダードに立つたと同じ結果になる。その結果は財界に非常に大きな深刻な影響を与えるものであると私は思います。国際収支が楽観はできないのでありますから、外貨も減り、あるいは輸入金融によつて金融が引締まる、それだけどんどん一般の国内金融を引き締められましたならば、たいへんなことが起るのではないかという気がいたしております。昭和四、五年とは世界の経済界全体の様子が違いますけれども、この点だけは非常に心配しておりますので、この予算の裏づけとしてのオーバー・ローン解消策につきましては、証券界といたしましても、深甚の注意を払つておりますことをこの機会に申し上げたいと思います。  それから設備資金の問題でありますが、財政投融資がカットされ、それから銀行資金というものはオーバー・ローンをなるべく解消するという意味から、どうしてもここに事業会社は増資または社債の方に資金を求めるという方向に行く。ここにわれわれ証券業界としましては、直接の問題にぶつかるわけであります。実は社債は日本銀行の手元で、どういう方法もとれますが、株式につきましては現在統制の道がないのでありまして、増資が殺到されますと、証券業界にもおのずから受入れ能力が限定されておりますので、われわれの力量以上の増資が参りますと、これが受け切れない。従つてその結果といたしましては株は下りまして、庶幾するところの増資が今年はむずかしくなるという結果になるのではないかと憂えております。昨年は大体上場株において千二百億、非上場株のうち大蔵省の届出を要する増資が五百億、大体千七百億ほどの有償増資があつたのであります。現在四月までの増資の予定によりますと、やはり今年も同じようなテンポで増資が行われそうであります。むしろ銀行の貸出し等が締められれば、あるいはそれ以上の増資があるのではないかとさえ思うのでありますが、しかし一方証券界の方はその増資を受入れるだけの能力はむしろないというような感じがいたします。すなわち株価が低落いたしましたことと、それから昨年は投資信託というものが非常に大きな働きをいたしまして、ネット三百七十億ほど投資信託の総量がふえました。それでその三百七十億のうち六、七十億を自分の打つておる株式の増資払込みに充てまして、三百億ほどはこれはまわりまわつて新しい増資にお役に立つたわけですが、今年は投資信託にはそれだけの余力がないように思います。これだけのことを考えますと、増資をどういうふうに導くかということは、証券界としても大きな問題になります。しかるに一方大蔵省は増資を大いに奨励されるような政策もとつておられます。すなわち資本是正、第三次再評価を大いに奨励されまして、なるべく増資をしろというような政策をとつておられますが、われわれとしましては、おのずから自分の力以上の増資には応じかねるという問題にぶつかります。そうしますとこの必要増資、それから不急の増資をどういうふうに調節して行くか、あるいは必要の増益ならば、それができるようにどういうふうな助長政策をとられるか、こういうこともやはり必要な政策になつて来るのではないかと思うのであります。これらにつきまして、十分の御配慮をお願いしたいと思つております。  私の申し上げたい点は、自分の方の立場からのみ申すのではありませんけれども、やはりこのインフレ抑制の政策を遂行されるには、結局購買力の抑制とそれから不急、不変の施設に対する投資を抑制されるということが根本になると思います。その購買力を抑制されるのはいろいろの方法があると思いますが、やはり資金蓄積の方向への奨励政策をおとりいただくことだと思うのです。ところがこの資金蓄積策のうち、有価証券に関しましては、今までのところではどうも奨励策が何にもございません。資本蓄積に対してはどうしても預金偏重になるのであります。このたび私どもの見るところによりますと、長期預金に対しましては税的の優遇措置があるのでありますが、有価証券に対してはあまり優遇の御処置がございません。これは証券界といたしましてはたいへん不満であります。なるほど第三次再評価に伴つて、なるべく償却を多くするという御政策はこれはたいへんけつこうであります。そして配当をある程度まで損失処分と見るという御処置、これもけつこうであります。こういう点については現在の政府の案よりももつと一層進めていただきたい。すなわち配当八分までは損失処分と認めてやるという御処置のようでありますが、これをさらに一割なり、一割二分まで上げていただくということも一つの方法ではないかと思つておるのであります。それから配当の源泉課税につきまして、現在二割を一割五分に下げるという御案がありますが、これは実はほんとうは減税ではないのでありまして、結局は最後に調節されますと同じことになるので、株主といたしましては何かもう少し有利な方法はないかということを実は考えております。少し虫がいいとおつしやるかもしれませんけれども資本蓄積という面でもつてお役に立つためには、どうしてもやはり税の方面において優遇していただかなければならないと思つております。それから今回の予算では、法人税については減税を予期していたのでありますが、実現されませんでした。これはたいへん遺憾に思つております。やはり法人税を軽減されまして、事業会社の内部蓄積を多くするということに政策を向けていただきたいのであります。  それから最後に申し上げたい点は、必要増資——不必要の増資につきましては私はお願いをいたしませんけれども、必要増資はぜひともこの際やらさなければならないと思います。先ほど申した通り、証券界の増資に応ずる能力に限度がございますので、必要増資をさせるためには、どうしてもその裏づけとしてある証券金融措置を御用意願いたいと思うのであります。これにつきましては、私ども証券界といたしましては、経団連にお願いいたしまして、金融界、事業会社と一緒に相談いたしまして、今結論を出そうと努力中でございます。まだ結論が出ませんので、ここで申し上げるまでに至つておりません。何らかの結論が出ましたならば、あるいは国会方面あるいは大蔵省方面あるいは日銀方面にお願いに出たいと思つております。その際はよろしく御審議を願いたいと思つております。  私の申し上げたい点は以上でありますが、もう一辺繰返して申しますと、今回の予算編成方針には大賛成でありますけれども、裏づけの諸政策につきましては十分御考慮を願いたい。ことにオーバー・ローン解消問題は、証券界としてもその成行きによりまして非常に大きな影響があります。十分御慎重に願いたい。物価を下げるためには購買力を押え、不急不当の産業投資を押えなければなりませんけれども、そのためにはどうしても資金蓄積の援励ということがなければならない。それに対しましては、有価証券方面におきましても十分の御配慮を願いたい。こういうのが私の意見でございます。どうぞよろしくお願いいたします。(拍手)
  12. 小峯柳多

    小峯委員長代理 ありがとうございました。  ただいまの公述に関しまして御質疑はありませんか。
  13. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 どうもありがとうございました。一つお尋ねいたします。あなたはこの予算によつて消費支出が増大する、その原因として勤労所得税の減、ベース・アツプ、それから恩給、農村の収入の増大というような面を指摘され、地方財政は放縦であるというようなお考えもあるようでございます。勤労所得税の減、ベース・アツプ、それから軍人恩給の復活にはもちろんいろいろ意見はございますけれども、あれも内容を検討しますれば、八五%が、戦争犠牲の英霊の跡始末であります。それから勤労零細大衆の消費支出を増大せしめるから、インフレを押えようとしたつて押えられないじやないかというお考えをお持ちのようですが、ことほどさように戦争犠牲者でも農村でも、勤労所得税を払う人々、  ベース・アツプを受けた人々が、インフレをあおるほど生活がゆたかで余裕があると思つておられるのか、この点をお聞きしたい。
  14. 小池厚之助

    ○小池公述人 そのよしあしを私は論じておるのでありませんで、むしろ私は、勤労所得税の軽減については大賛成でございます。ただそれが購買力増大の傾向のあることだけは問題であります。ですからこれを善導する必要がある、こういうことを申し上げたわけであります。
  15. 小峯柳多

    小峯委員長代理 ほかに御質疑はありませんか。——ないようでありますから次に移ります。全国未亡人団体協議会事務局の山高しげり君にお願いいたします。
  16. 山高しげり

    ○山高公述人 私は前のお二人のような専門家ではございません。婦人の立場から何か申し上げるようにということでございましたけれど、実は予算書を拝見いたしましても、私どもがふだん見なれておる家計簿の数字と違つて、けたが大きいのでございます。私ども予算がないと何もできないということをよく伺いますので、自分たちの関係範囲内でも多少の予算をぜひいただきたいと思いまして、この二十九年度予算についても、婦人側でも多少努力をいたしましたけれど、その数字をいくら探してみても、書類の上に出て来ないほど小さい。時子山先生は、予算国民生活の骨組だとおつしやつたのですが、女が要求しておる骨はよほど小骨かなあとつてさつきも伺っておつたのです。たとえば、婦人教育費というようなものを全国の婦人団体がぜひ去年よりたくさん組んでいただきたい——去年は五十万、ずいぶん小さいけただと思います。それも抹殺はされなかつたのでございますが、三十三万何がしというような小さなけたでございます。しかも去年より減つたその理由には、もう男女同権だから特に女だけ教育する必要はなかろうというようなお考えも、幾らかまじつているらしいというようなことを、これは又聞きでございますから、違つておればいけないと思いますけれど、そういううわさが伝わつて来ることを考えても——ども予算についても申し上げたいことは多々あるわけでございまして、まだまだ婦人の教育なども過渡期でございますから、ただ男女同権だから女だけを特別扱いにする必要はないというようなお考えを、政府もまた国会もお持ちいただくと困るとつくづく思つておるわけでございます。そんなふうに考えて、婦人の立場から台所の問題、子供の問題等についていろいろお願いしておりますと、本日は時間もございませんので、きようこれからの時間は、私のきようの肩書きについておる未亡人たちの代弁として少しお話をいたしたいと思います。  最初に申し上げたいのは、やはり社会保障費の問題でございます。この予算内容に入る前に、どうしても聞いていただきたいのは、この予算の数字になる前に、二十九年度予算が組まれる過程において、大蔵原案が発表になりましたときに、例の社会保障費を大幅に削るという御案について、私どもお正月早々ほんとに息がとまるような思いをしたということでございます。あの社会保障費の中の一番大きな額を占めておる生活保護費、その生活保護費をいただいて毎日の暮しを立てておる被保護世帯の半数が母子世帯であるという事実の上に立つてこのことを申し上げるわけでございますが、もし国が負担する八割を地方と国と五分々々にわけるというようなあの案が実現をしておりましたならば、私どもが預つております未亡人たちは、また母子心中、あるいは死なないかわりに自分のからだを売つて、子供を育てるというような売春の道へたどらなければならなかつただろうということを考えただけでも、まだ実は冷汗がとまらないのでございます。財政引締めはもちろん今の日本として必要なことであると思われますし、またそれを重点的に政府が法律化なさりたいということもよくわかるのでございますが、何でございますか、私どもの立場では、その重点がすこぶる問題ではないかしら、私はよくわからないのでございますけれども、この間の社会保障費削減のような行き方でございますと——取り違えおりましたらお教え願いたいのでございますが、防衛費のために社会保障費を削つた。削つたと言つては悪いかもしれませんが、削ろうとなさつたのではなかろうかというような気持が、非常に弱い人たちの胸にまだ残つております。まだあのときの心臓がとまりそうだつたその動悸がなかなかやみません。一つの大きな不安として残つております。そういうこともございました直後といたしまして、いよいよおきまりになつた、国が八割持つてくださるということにおいて、去年までの通りの約束で組まれました今年の生活保護費を拝見したわけでございますが、扶助人員は増加を見込んでいただいておるようでございますが、扶助額の引上げ——最低基準の引上げと申しましようか、扶助額の引上げの御予定はどうもないように拝見をしたわけでございます。なるほど政府デフレ政策をおとりになりまして、この政策が成功すれば物価は下るというりくつでございますから、去年通りの金をやるんだから、物価は下つて来るから去年以上に苦しくなることはないであろう、というようなお考えなのかもしれないと、一応考えてみたのでございますが、しかし私どもの周囲を取巻いております。毎日の現状は、物価は下るどころでなく日に増し上つておるのでございます。この事実に立ちましたときに、下げるつもりだとおつしやることはわかりますけれども、下げるつもりで出発をしても、下らなかつたときの責任はどういうふうに負つていただけるのだろうか。弱い者の生活の切り詰めでこれが埋め合わされるということでは、これはどうしても私どもは心配で、国会の皆様にお願いをいたしまして、この点はひとつ、もしも下らなかつたときにどうしていただけるかというお返事を国会の先生方によりまして、政府からおとりを願いたいと思うのでございます。もしもそれでございませんでしたら、現行の生活保護費でも、おふろには一週間にようやく一ぺん、げたは一年に二足しかはけない。軍人恩給復活のお話もございましたけれども、あれで全部の遺族が潤つておられるわけでございません。現に遺族年金を抵当に借りてしまつた御遺族は、実におびただしいのでございます。私どもはこの正月に生活保護費の問題で、方々に陳情に参りましたときに、お前たちはそうは言うけれども、自分たちの選挙区の選挙民の人の話を聞いてみれば、お百姓はまつ黒になつて、汗を流して働いているのに、疎開の未亡人はやわらかいものを着て、ぞべぞべ遊んでいるじやないか、濫給ということについて、何と言つていいかわからないというお話を聞いたのでございますが、私どもがそのお話を開きますと、その疎開の未亡人は、働くたんぼも何もございません。また木綿のしつかりしたもんぺでも買いたいと思つても、その余裕すらございません。嫁に来たときのあり合せのものを着ておれば柄がはでで、やわらかものである場合もあると思うのでございますけれども、そういうこともひとつお考えくださいまして、物価が下らなかつたときには、どうしていただけるのかというこの心配を、ひとつ何とか国会の先生方でしつかりと御相談を願いたいと思うわけでございます。  次に、やはり同じような母子世帯の立場から住宅にも問題がございます。政府は十万戸の家を建てるとおつしやるのでございますけれども、この十万戸には、おそらく私どもがかかえております母子世帯は一世帯も入らないのじやないかということを心配いたしております。現在第二種公営住宅というものがございますが、この中に母子世帯にわくをとつてもらいたいという強い要求があるのでございますが、それもまだ実現はいたしません。もしまたこれが実現をいたしましても、この第二種公営住宅も相当な家賃でございまして、なかなか一般の母子世帯はそれだけの家賃を負担することのできないような生活の実情でございまして、まあ第三種公営住宅とでも申しますか、第二種よりもさらに低廉な家賃の住宅を要望しているような実情でございまして、私どもは、子供が大きくなりますと母子寮から出なければならない母君たちのために、そういつた低家賃の母子住宅とかりに呼んでいるものを要望しているのでございますけれども、どうもこの住宅問題は深刻でございまして、一昨年の十二月に皆様方のお力で御制定をいただいて、一昨年四月一日施行と相なつております母子福祉資金の貸付等に関する法律の中でも、七色の資金を貸していただくことになつたわけでございますが、その中になぜ住宅資金を入れてくれなかつたという声が非常に強うございました。もちろん住宅はほんとに三万や五万では建ちませんし、またそれ以上たくさんお借りしてもなかなか返すことは困難でございますから、この法律に入れていただけなかつたわけはわかるのでございますが、この間もある未亡人が参りまして、自分は母子寮に入つている。これは東京の未亡人でございますけれども、幸いにして職業があるために部屋代を払つて、だんだん上つて来て千円余り払つているけれども、自分の住んでいる母子寮の隣に公務員住宅があつて、そこはお部屋が三つもあつておふろもついている。七百円ぐらいの家賃しかりつぱな課長さんでありながら払つていらつしやらない。こういうのを見ると何だか矛盾を感ずるのだ、何だか社会保障費というものがだんだん細つてつて、別の費用に使われるような気がするということを申しておりましたけれども、その未亡人の訴えを、私どももそんな心配はありませんよと言い切ることはできないわけでございます。そこで私どもは、この住宅というものは建設省が今は御所管になつておりまして、建設省が焼けない家、つぶれない家を建てようと一生懸命になつておいでになることもよくわかるのでございますけれども、人間が入る家でございますから、これはほんとうは厚生省の御所管に願えたら、もう少しあたたかい政治がやつていただけるのではないかというような気持もいたすのですが、どうぞ住宅問題もこの予算の上でひとつお考えを願いたいと思います。  最後に、緊縮政策と申しますか、耐乏予算でございますけれども、このためには当然国民に対しても生活合理化と申しますか、生活刷新と申しますか、私どももいよいよ自分たちの暮らしを詰めなければならない方向へ向いておるようでございますが、このことにつきましても、母子世帯は、もうこれ以上詰められないというところまで来ているように思うのでございます。そうでなくても、一般の国民の感情も、上の人ほどいいのだ、下だけまじめにやつてもつまらないというような空気は、日に日に瀰漫しつつあるように思つております。しかしこれ以上詰められない母子所帯が貯金をやつていると申しましたら、大蔵省もびつやりしてくださるのかと思うのでございますが、それは何のための貯金かと申しますと、先ほどちよつと申し述べました母子福祉資金て、貸していただくお金はお返ししなければならない仕組みになつておりますので、後家さんたちはこれを踏み倒していいなどとは決して思つておりませんので、たとい年三分の利子でも利子は利子でお払いをして、返すときには返して行かなければならないということでございまして、このごろ全国各府県の未亡人会を通しまして末端の町村には、この資金を借りたお母さんたちによつて、償還のための貯蓄組合すらどんどん結成をされておるのでございます。私どもも現状を見て参りましたけれどもほんとうにあばら家の台所の柱には、青竹の筒がかけてございました。貯金を入れる筒でございます。毎日のおかず代の中から五円、十円をしぼり出して、それをその竹の筒に入れまして、お返ししなければならないときには返して行こうというような意気込みでやつておるのでございます。そのお母さんたちが、今はまあそうやつて貯金をしております。けれども、ついこの間までは、保全経済会のようなところにそのつらいつらいお金をみんな預けまして——まとまつたお金の顔が見たいばつかりに預けまして、お恥かしいのでございますが、女はばかだ、後家さんは間抜けだといわれてもしかたのないほど、ああいうところの被害者には私が関係している未亡人方が多いという実情も申し上げまして、これ以上、もしもああいう問題が起り、毎日新聞をにぎわしておるような、上の人がいい、下はまつたくみじめになる一方だというような事実がふえて参りますと、ほんとうにこのおとなしい未亡人たちの気持もどちらへ向いて行くか、私どもは正直保証ができないような気持でおるのでございます。かつて未亡人金庫という言葉もございおして、その考え方で現行の母子福祉資金の貸付等に関する法律が昨年誕生いたしたわけでございます。これは今年の予算でも相かわらず国と地方と五分々々に持つていただくようなことに相なつておりますが、昨年の予算では地方財政が苦しゆうございまして、国が御用意をいただいただけのお金を、地方で使いこなせなかつたというような実情もあるわけでございます。そこで私どもが願いますことは、どうかこの小さな子供をかかえ——この子供というものは国家の未来でございます。将来でございます。その国家の未来をかかえて孤軍奮闘しております母子世帯が借りますお金ぐらいは国からまるまるお出しを願うということでないと、ある県ではたくさん貸していただける、ある県では、県が貧乏でろくろく貸していただけないというようなでこぼこは、法の公平ということを私ははばむものではないかと思つております。まだいろいろ問題もございますけれども、結局先ほどから申しました生活費の問題にいたしましても、また住宅の問題にいたしましても、今の金融の問題からいたしましても、政府はむしろ一日も早く総合的な母子対策を樹立してくださいまして、国家の将来をかかえている母親たちに安心をして、その最小限度のつつましい生活に耐えて行かれるように保障していただく。母子の総合対策は、言うまでもなく、社会保障制度の一環として考えなければならないものと存じますけれども、大きな総合的な社会保証制度の全部でき上るのを待つていられない母子世帯の現状をいささか申し述べまして、それに先行する社会保障制度の一環としての総合母子対策の樹立の方向に向いていただきたいと思つているわけでございます。少くとも二十九年度の予算内におきましても、以上私が申し述べました趣旨に関連をいたしました要所々々におきまして、諸先生方の理解ある、御同情ある御協力を仰ぎたいと思つて、まかり出た次第でございます。(拍手)
  17. 小峯柳多

    小峯委員長代理 ありがとうございました。ただいまの公述に関しまして、御質問がありましたならばどうぞ——質疑がないようでございますから、これで山高さんの公述を終ります。  それでは午後一時から再開することにいたしまして、暫時休憩いたします。    午前十一時五十四分休憩      ————◇—————    午後一時三十九分開議
  18. 倉石忠雄

    倉石委員長 休憩前に引続き公聴会を開きます。  御出席公述人各位にごあいさつ申し上げます。公述人各位には、御多忙中にもかかわらず貴重なる時間をおさきくださいまして御出席いただきましたことに対しまして、厚く御礼を申し上げます。公述人各位の忌憚のない御意見の開陳は、本予算案審査に多大の参考となるとともに、その審査に一段の権威を加えるものと存じます。何とぞその立場々々より腹蔵のないご意見をお述べいただきたいと存じます、一言ごあいさつといたします。  なお議事の順序を申し上げますと、公述人各位の御意見を述べられる時間は大体二十分程度にお願いいたしまして、御一名ずつ順次御意見の御開陳及びその質疑を済まして行くことにいたしたいと存じます。  なお念のため申し上げますが、衆議院規則の定めるところによりまして、発言の際は委員長の許可を得ることになつております。また発言内容は、意見を聞こうとする案件の範囲を越えてはならないことになつております。なお、委員公述人質疑をすることができますが、公述人委員に対して質疑をすることはできないことになつておりますから、さよう御了承をお願いいたします。  それでは、まず国民金融公庫総裁櫛田光男君より御意見をお聞きすることといたします。櫛田光男君。
  19. 櫛田光男

    ○櫛田公述人 私国民金融公庫をお預かりいたしております櫛田でございます。  実は御承知のように、政府関係金融機関の一つをお預かりいたしております立場からいたしまして、本日の公述人といたしましてはたして適格であるかどうかということに若干の疑問を抱いたのでございましたが、おさしずによりましてまかり出たような次第でございます。  本日は昭和二十九年度の予算案にきまして、私のいろいろ感じましたことを御参考までに申し上げたいと存ずるのでございますが、大体の順序といたしまして、最初にまず総論と申しますか、予算案全体につきまして私の感じましたことを申し上げまして、次に各論と申しますか、本論とでも申しましようか、日ごろ取扱つております仕事の面を通じまして、中小企業関係の問題につきまして、この予算案との関連について若干私の感じているところを申し上げまして、御参考に供したいと存ずるのであります。私がくだくだしく申し上げるまでもなく、現在の日本経済が非常な事態に立ち至つておるということは申すまでもないことかと存じます。昭和二十七年におきましては三億ドルの国際収支の黒字があり、昭和二十八年におきましては約一億ドルの赤字になる、この一年間に五億ドルの国際収支の大逆転を見るといつたようなところに現われておりまする、何と申しますか、使い切れない投資をやつて来るとか、あるいは実力以上に消費をしておると申しますか、いわゆる背伸び経済とでも申しますか、その姿をまざまざと現わしておるような感じがいたされます。このままで行きますれば、おそらく経済的自立といつたようなことは夢のことになりまして、やがては国際的破産といつたような事態にまで追い込まれるかもしれない、といつたようなことを私自身しみじみと感ずるのでございます。結局これはこの三年来のインフレーションの結果でありますから、このインフレーションを何とかして押えつける、退治するといつたようなことに、この機会にかじを切りかえなければならない。これはだれしもが感じていることだろうと思うのでありますが、すでに昨年の九月から金融の面におきましては、引締めと申しますか、かなり強く打出されて参つたわけであります。ただ御承知のように私自身の感じによりますと、昭和二十五年から二十七年までの三年間、財政の面から見ますと、ともかくもある程度の均衡を保つて来たと存じます。つまりインフレを促進する要因にもならなかつたが同時にデフレ要因にもならなかつた、いわば中立的財政であつたような感じがいたしますが、その間において、金融面においてかなりのインフレ要因を推進して来た、そんなふうに感ぜられたのでありましたが、ただ昨年の二十八年に至りましては、財政面におきましても、かなりインフレ的な様相を示して来たと思われます。それがまたある程度拍車をかけまして、現在の事態に立ち至つたような感じがするのであります。  こういつた関係からいたしまして、昭和二十九年度の予算がどんなふうに組まれるかということに多大の関心を持つた次第でございましたが、このたび御審講中でございます予算案というものを拝見いたしまして、ともかくも二十八年度よりは相当程度の圧縮を遂げまして、一般会計並びに政府財政投融資関係の純計をとりますと、ともかくも六百億見当は圧縮が遂げられて来ている、そういう案が組まれた。このこと自体については、非常に意味があるものとして、私はこれを高く評価したいと思うのであります。と申しますのは、今までの財政史上におきまして、毎年膨脹して来ている傾向にありまする財政というものを、ともかくもそこでストツプをかけた、これをある程度あともどりと申しますか、まわれ右をさせるという方向に切りかえたことは、実は数えるほどしかございません。そういつた意味で、これは特筆すべきことだろうと私には考えられるのであります。ただ具体的にこれを見てみますると、何と申しますか、緊縮予算デフレ予算とかいうふうな表現がしばしばとられておりますけれども、私はこれを足踏み予算と言つた方がよろしいと思うのであります。その意味は、総額並びに使途の点について指摘することができると存じます。  総額の点で申しますと、なるほど二十八年度からは、先ほど申しましたように、六百億見当の圧縮が遂げられたわけでありますけれども、それでもなお二十八年度当初予算と比較いたしますと、二百億まだ多いのであります。また二十七年度当初予算に比較いたしますと、二千億も多い。そういつたような意味で、隴を得て蜀を望むということになるかもしれませんが、せめて二十八年度当初予算くらいまでのところまで締めることができたならば、より以上効果があつたのではないかといつたような感じがせられるのでございます。この意味では、インフレ退治とでも申しますか、そういつた見地からいいますと、この予算はこれはまだ序の口、スタートを切つたところといつたような意味があるのではないか、こういつたような意味で、足踏み予算ということを申し上げたわけでございます。  さらにもう一つの問題があります。それは内容と申しますか、その使途でございます。大体がインフレを抑圧するという場合、このインフレというものは麻薬みたいなものでありますから、知らず知らずのうちにその甘さになれまして、骨の髄まで虫ばまれるような事態引起すこわいものでありますが、同時にまたそれは惰性の非常に強いものでありますから、これを打開するには容易ならぬ努力が必要であります。そのためには、何よりもまず政府みずからにおいて、金なり物なりをもつと大事にするということをお考え願わなければならぬと思うのであります。ところが、その使途の面において、冗費を節約する、むだを省くとかいつたような点においてまだまだお考え願わねばならぬ点があるのではないか。さらにまたその使途と申しまするか、その経費の配分におきまして、もつともつと経済的効果を上げるようなところに重点的な配慮をいま少し総合的に加えられてしかるべきものがあるのではないか、さような感じがいたされるのであります。むだの例でありますが、たしか一昨日であつたかと思います。これは新聞紙上で拝見いたしたのでありますが、災害復旧等の問題についてかなり水増し的なもの、架空なものがあつた。その金額が最低に見積つたところでも十六億ぐらいはあつたということであります。この十六億という金は全体の規模から申しますると、あるいは少いかもしれません。けれども、これは具体的に個人の話になりまして恐縮でありますが、私がお預かりいたしておりまする国民金融公庫の身になつて考えてみますと、あまりにもこれはもつたいないという感じがいたされていたし方がないのであります。具体的に申しますと、国民金融公庫の仕事におきまして年々お客様はふえる一方であります。特殊の経済情勢を反映いたしまして、私どものところにたずねて参りまするお客さんはふえる一方であります。そういうような状況からいたしまして、昨年の暮れには補正予算をもつて十六億——ちようど金額が符合するのでありますが、十六億お増しを願いまして、その資金を全部昨年の末に投入いたしまして、一昨年に比べますれば二割方ふえております五十六億という貸出しをいたしたのでありました。それにもかかわりませず、全部使い果してなお足りませず、お貸出しをしたいのであるけれども、今のところ金がないので、しばらく待つてもらいたい、一月になつてまたお越しくださいと言つて繰越しました金額が十数億に上るのであります。かりにこのただいま申し上げました予算の使い方においての十六億のむだが、少くとも指摘せられたならば、その十六億というものをかりに私の方にその当時おまわしが願えておつたならば、ただいま申しましたような今年十数億を繰越すといつたような事態は避け得たに違いない。それだけまた私どものお客横に対してたいへんにお役に立つたに相違ない、まことにこれはもつたいないものであつたということを痛感いたしたのであります。かようなことを実は予算の全体にわたつて相当指摘することができるのではなかろうか、かような点を非常に感じた次第であります。  なおこの予算はまだ審議の途上にございまして、まだ実行せられたものではございませんけれども、ただ過去のたとえば昭和二十四年当時の緊縮の場合、ああいつたものと比較いたしまして、このたびの要素に多少違つたものを感ずる次第であります。それはどういうことかと申しますと、前回の経験のときには財政の方では引締めましたが、金融の面においてはこれをゆるめるといつたような事柄があつたかと存じます。ところが今回の場合におきましては、財政も金融も歩調を合せて緊縮の方向に向うというのでありますから、その影響力におきましては、かなり強烈なものがあるということは言わざるを得ないと存じます。この新予算はまだ実施されておるわけではございませんけれども、昨年の九月以来の金融の引締め並びにこの新予算案の方向というものが、すでに一般にある程度感得せられまして、この予算案の心理的効果というものはすでに現われておる、ある程度のデフレ現象が一般的に行われておる、このことは申し上げてさしつかえないかと存じます。   〔委員長退席小峯委員長代理着席〕  そこでこのデフレの問題であります。一般的に総わくの点においてまず締めることがかんじんでありますが、ただそれのみにとどまりますれば、御承知のようにただ全体が引締められるだけでありますから、そこに弱肉強食と申しますか、結局は経済力の弱いものにそれがしわ寄せされて行くという結果になることは、私は火を見るよりも明らかだと思います。ただ総わくのみを締めるということであつては、実はほんとう経済自立へ向つてこのインフレーシヨンを退治するということには画竜点睛を欠くきらいがあるのではないか。もちろん第一の前提といたしましては、その総わくを締めなければたりません。しかし締められた総わくをいかに有効に使つて行くかというところに問題があるわけでありまして、先ほど申し上げましたむだ、冗費、そういつたものを徹底的に排除すると同時に、重点的にそれらのデフレの効果を受けまする階層その他のものに対して、総括的に見て何がしかの具体的な手を打つて行かねければ、全体としての目標を、滞りなくと申しますか、あるいは急激なる事態の変化を建起すことなしに持つて行くことは困難なのではないか、さように感ぜられる次第であります。  そこで私の今お預かりしておりまする国民金融公庫の仕事の面から見まして、若干中小企業関係の問題を御参考までにこれから申し上げてみたいと思います。私のところに御相談に参りまするお客さんは、中小企業と申しましてもいわば小企業、零細企業に属する方々でございます。従いまして中小企業全般というよりは、その大半にはなりましようが、かなり下の方というと語弊がありますが、そういつたようなところの方が多いわけであります。その方々の御相談を受けておるわけでありますが、最近顕著に現われておる事柄が二つ見受けられるのであります。これは前からもそうでありましたが、ことに最近露骨に拝見される点は、一つはその方々のお仕事の中身でありますが、売掛金が非常にふえて来ておるということであります。それから第二の点は、ストックがかなりふえて来ておる。いわゆる在庫品がふえて来ておる。この二点を私は指摘することができると思うのであります。これがことに顕著に現われて来ておるように思います。この売掛金の増加ということは、戦山の中小企業の特徴の一つでありますが、具体的に申しますれば、これはむしろ大企業の圧迫とでも申しますか、要するに大企業関係の支払い状態が悪くなつて来ておることを具体的に反映しておると思います。これは戦前におきますれば、御承知のように大企業は物なりあるいは前渡金の形で中小企業を実は養つたものでありました。または問屋がある程度そういうことをやつたものでありましたが、現在はむしろ売掛金の形において、大企業に対して中小企業が信用を供与しておるという逆の関係になつて来ておる。その逆の関係になつておりますることが、最近はますますはつきりと見えて来ておる。これが言えると思います。次はストックの増加であります。ことにこれは商業の面について指摘することができるのでありますが、その一つの理由は、大企業なりメーカーなりあるいは問屋なりが、小売その他に対して適宜売り抜けておる。その売り抜けの逆が、受ける方の側にとつて抱き込まされておるということを指摘することができます。それからもう一つは、中小企業自体が組織性を持たない。また非常にその日その日の商売に追われておるといつたような関係から、かなり広く遠い将来についての計画というものを立て得ないといつたようなことから、仕入れその他の面においてかなり計画がない。無計画性と申しますか、あるいは目先のことで急に仕入れをするといつたような傾き、これは中小企業経営者自体の及ばざるところの結果でありますが、そういつた点も指摘することができるかと存じます。ともかくも売掛金が非常にふえている。それからストックが相当ふえて来ているというところに、かなり顕著な傾向が認められると存じます。その結果、中小企業自体が今までは非常に身軽ということをいわれておつたわけでありますが、景気の変動に応じまして、かなり自由に転換をする、また資本負担がかなり少いといつた点から、そういつた特徴が指摘せられたのでありましたが、その特徴がだんだんとなくなりつつあるのではないか。そういつたところが、指摘せられるのでありまして、後つて今後この緊縮の影響がかなり本年の下半期等になりまして、相当深刻に進行いたして参つたあかつきにおいて、相当これに対してこらえ得るものがどの程度になろうかというほど、中小企業自体の景気の内容その他について、かなり硬直した状態が今までよりはふえて来ているような感じがいたされるのであります。これを何とか早い機会にもう少し身軽な状態に置くことを考えなければならないということを、私は非常に痛感いたしているのであります。  その結果中小企業自体の金融に対する需要は日にふえる一方であります。私どもの窓口の経験からいたしましても、一昨年に比べまして昨年は五割から、年末に至りましては七割需要が増加いたしております。本年におきましてもおそらくこの傾向は持続せられることでありましようし、簡単な計算でありますが、二十八年度におきましては国民金融公庫に対するお客様の需要は大体において九百億、それを越すものと認められるのでありますが、それが二十九年度におきましては、おそらく千四、五百億に上るであろうということは、現在の趨勢から推しまして容易にこれを指摘することができると思うのであります。  ところが予算関係でありますが、国民金融公庫の場合におきましては、二十八年度におきましては政府出資並びに借入金を合せまして九十六億円、そのうち資金運用部に返済十一億円ございますので、これを差引ますと、新規資金の増加が八十五億円あつたわけであります。二十九年度の予算案におきましてはともかくも九十億円、政府出資並びに借入金を合せまして、今予算に組まれているわけであります。三十八年度に比べまして六億円の減少でありますが、まずまず同額といつたところかとも思いますが、ただ二十九年度中には二十一億円だけ資金運用部に返済をいたさねばならぬ関係上、新規資金の増加は、六十九億円にとどまります。従いまして、新規資金関連におきましては、両年度を比較いたしますと、十六億円の減少、かようなことになつているわけであります。  ところが先ほど申し上げましたように、少くとも需要の面におきましては五割くらいふえるであろう、そういう状況でありますので、貸出しの新規資金のほかに回収金を含めまして二十九年度が大体二百九十数億、二十八年自体が同様二百九十数億になりますので、大体回収金を含めますと新規資金を合せて昨年二十八年同様のものが三十九年度には金額としてはお貸出しできるわけであります。ただ需要が五割もふえるという関係からいたしますと、今までは申込みに対しまして三割のお貸出しができたのが、どうしても二割ぐらいまでこれを下げざるを得ない、かような状況になつて来ているわけであります。  この状況はまた私の同僚とでも、申しますか、似た金融機関であります中小企業金融公庫についても言えることかと存じます。中小企業金融公庫の場合には、政府出資並びに借入れを合せまして百三十億というものがこの予算に盛られております。これは前年度の二十八年度と同額であります。ただ二十八年度におきましては年度の途中から中小企業金融公庫がスタートいたしました等の関係もありましたから、大体毎月二十億見当の貸出しができたわけであります。それが二十九年度におきましては大体月十五億見当の貸出しにしか当らないということを中小企業公庫では、言われているわけであります。かようなぐあいでありまして、今度の二十九年度予算全体につきましては、私先ほど冒頭に申し上げましたように、圧縮という点には非常な意義があるということを認めるのであります。そういう予算の中におきまして、少くとも前年同様あるいはそれに近いくらいの出資なり借入れなりを中小企業公庫なりあるいは国民金融公庫なりが認められたという点については、ほかのものと比較しますれば、あるいは優遇的なお考えがあつたかとも思うのでありますけれども、ただいま申し上げたような事情でありますから、これは我田引水的なことになるかも存じませんが、何かもつとよその力を節約しておまわし願えるということがあるいはできたのではないか。これは隴を得て蜀を望むというようなことになるかもしれませんが、感じるのであります。  と申しますのは、若干我田引水的とおとりになられるかもしれませんけれども、私どものところに御相談に参りますお客さんが実は二色あるのであります。二つに区別ができるわけであります。簡単に申しますと、数多くの方方の中でお金だけあれば何とかできるという方とお金だけでは何ともできないという方にわかれるわけであります、いろいろな条件、その方の仕事の性質なりその経営の能力なりその他の点から考えまして、資金だけが足りない、それさえあれば十分にその仕事を維持し発展させ、国民経済自体に力を添えるのに十分に働き得るというお方と、実は金だけではどうにもならない、そのほかに経営の点あるいはいろいろな点についてなおいろいろ改善をしない限りにおいては、それが同時並行的に行われない限りは、そのお金がかりに調達できたとしてもむだになるであろう、こういう方とにわかれるわけでありますが、その中で大体お客さんの五割見当はお金さえあれば何とかできようというお方なのであります。でありますから、今までの申込みに対して三割見当ということ自体がなお足らなかつたのではないかという感じを始終持つておりました関係から、かようなことがさらに二十九年度につきましてはその三割が二割にまで下らねばならぬということ、しかもこれがせめて従来通り三割見当が維持できるならば、あるいはもつとこの経済の立直しということについて、お役に立ち得るのではないかという感じを日夜痛切にいたしておりますので、かようにこの席上をかりて申し上げた次第であります。
  20. 小峯柳多

    小峯委員長代理 どうぞ結論を急いでください。
  21. 櫛田光男

    ○櫛田公述人 ただ、先ほど来申しました通り、現在の状態は非常に容易ならぬものがありますので、もつとお金と物とを大事にするということを、予算のみならず、経済全体について徹底することが私は必要だと存じます。その点についていま少しく政府各部におかせられていろいろな施策を講ぜられることが必要ではないか。簡単に申しますと、私自身、今度の資産が申込みに対して三割が二割くらいの率に減るわけでありますので、お客さんに対してこの間来からこういうことを申しているわけであります。こういう情勢であつて、どうしてもこのインフレというものは退治しなければならぬ、今までよりももつとお金というものを大事に扱わなければなりません。そこでたくさんのお客さんがおりますから、どうでしようか、今までは三十万円お貸出しができるようなお方でありましても、今度は二十万円でごかんべん願えないだろうか、但し、この二十万円を何とか従来の三十万円といつたようなところに働かしめるくふうをお互いにすることはできないでしようか、まあそういつたことをひざつき合せて相談をいたしました。この資金なり物なりを丁寧に慎重に、しかも生かして今までより以上効果を上げるということにお客さんと手をつないでやろうじやありませんかということを、実は昨年末以来訴えて来ておるわけなのであります。こういつたようなことを全部について何とか押し広めて行くようなことをもう少しお考え願えれば、さらに錦上花を添えるといつたようなことになるのじやないか、こういう感じであります。ということは、中小企業体について、金融の面と同時にある程度経営指導という面について、いま少し御努力を願うことがあればけつこうなのではないかということを痛感いたしておりますので、かようなことを申し上げたわけであります。とりとめもなくいろいろ申し上げましたが、時間の関係もございますので、大体私の話をこれで一応終りたいと存じます。
  22. 小峯柳多

    小峯委員長代理 ありがとうございました。  ただいまの公述に関し御質疑がございましたら、・・・・・。
  23. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 御承知のように、現在一番困つておる庶民の金融について、金融公庫が非常に骨折つてもらつておりますが、結局今度の予算でしわ寄せは中小企業に行くと思うのです。それで、おそらくこの予算では十分にまかない切れぬと思いますが、その点どういうふうにお考えになつておるかということが第一点。  それから第二点は、今説明されたように資金需要が非常にふえる、特に御承知のようにいろいろ類似金融機関が倒れて行くというような関係もあり、また今年度の金融の引締め等で非常に中小企業が困つて行く、そういう場合にどう方法でこれを処置されるのか、この予算でどういうふうに処置をされて行くのか、ひとつはつきりした責任のある答弁を聞きたい。
  24. 櫛田光男

    ○櫛田公述人 ただいま申し上げたのでございますが、中小企業関係につきましての予算的措置は、現在の金額はできればもつとふやしていただきたいというのが私の切望であります。ただ先ほど申し上げましたように、予算わく全体はインフレ克服に対して非常に意義がある、私はそれを高く評価したいと思います。ただほかの関係においていろいろなことが、まだ節約なり、そういう点があるのではなかろうか、いま少し重点的に、総合的に考えられて、この緊縮関係国民経済全体の各部、各層に及ぼす影響をいま少し詳しく測定せられて、いま少し重点的に再配分せられるようなことが可能であれば望ましいことだ、私はかように考えます。  第二点は、どうしても中小企業関係にしわ寄せが来ることは必然的だと思います。これをどうして切抜けるか、これは政府の施策のほかに中小企業の方面においてもまた自分自身の問題であり、国民経済全体の問題として考える。そこで両方が手をつないで行つて、初めて全きを得るのであります。簡単に申しますと、先ほど申し上げましたように、最近中小企業の中で特に私どものところは参りますお客さんの経営の状況から見て痛感せられる点が二点ある。その一つは、売掛金の増加ということ、これは大企業そりその他に対して何らかの措置を講ぜざる限り、中小企業はこれに対して立ち向う道はありません。これは何とか別段の措置を講じなければならぬかと思います。ただ、もう一点の在庫品が増加しておるという点、この点については中小企業の例においてももう一度考え直してみる必要があるのではないか、もつと資金と物とを大事に使うということを中小企業者自体がいま少し徹底的に考え直してみることが、やはり必要なのではないかということを痛感いたします。この両方合せて参りますと、初めて中小企業全体が相当の勢いと申しますか、生気と申しますか、動ける状態が出て来るのではないか、そのために先ほど経営指導といつたような点も申し上げたのでありますが、大体そういうふうに御了承を願いたいと存じます。
  25. 庄司一郎

    ○庄司委員 お話の中にはなかつたようでございますが、恩給担保の貸付の問題に関して、政府は近くその恩給担保関係の法律案を本国会に提案して、あなたの金庫において取扱わしむるというようなうわさも聞いておりますが、何かそれらに関して政府との内約、あるいはその備準等がございましたら、この際承りたいと思います。
  26. 櫛田光男

    ○櫛田公述人 恩給担保の貸付につきましては、ただいま政府の方でいろいろ案を御検討に相なつておりまして、やがて単行法としてお出しになるように承わつております。私ども国民金融公庫におきましては、その法律が通りましたあとにおきましては、大体国民金融公庫自体の仕事は小口の事業資金を貸しつけるというのが建前でございますけれども恩給担保の貸付の場合に限りまして、この制限をとりまして、消費金融の方にまで広げたらどうかということになつております。大体資金的には二十三億円見当のものを今見込んでおります。
  27. 庄司一郎

    ○庄司委員 よろしゆうございます。
  28. 西村直己

    西村(直)委員 ちよつと簡単にお伺いしておきますが、あなたの方の資金の回収の状況は割合よいのではないかと思いますが、どのような状況になつておりますか。それから大体平均してどのくらいの線で貸出しをやつておられますか。もう一つは、大体御意見ごもつともで、あなたの公庫としては資金量の多い方がよろしいし、また多くなければいけないと思いますが、一番因つておるのは、受ける力でも調査について手が足りない、また中間都市においては店もない、そこでどうしても一部の都市に片寄りやすいという状況で、これも将来金融公庫を拡大して行かなければならぬという問題があるだろう。私の意見ですけれども、最近類似金融がずいぶん倒れております。類似金融はどつちかといえば、表面は金融機関のような形をしておりますけれども、実際は利殖機関であると思います。そこでこの連中から金融を受けておつた層というようなものについては、今後あなた方の方でこれらを拾つて行けるお構えが多少ありましようか、どうでしようか。相当類似金融で利殖の面から金を集めておつたわけすから、実際、中には、金融公庫その他のいろいろな金機関のあり方を知らないために、そういうところへ高利でもつて借りに行つたという人もあろうと思いますが、こういうものを多少なりともあなたのような機関でもつて緩和できるかどうか。おそらく資金の今の状況から行くと非常に困難じやないか。そこのところに一つのエア・ポケツトというものが将来起りはしないか。回収の状況、資金がどのくらい貸出しになつているか。それから調査というものがあなたの方としてはおそらく手が延ばしにくいのではないかという点、それから類似金融に利殖でなくて金融の面からはまつた人たちに対しての考え、こういう点をちよつとお聞かせ願いたい。
  29. 小峯柳多

    小峯委員長代理 関連しまして。今の西村君の質問の中で触れられましたが、一件あたりあなたの貸出し残高が、どうなつていますか、調べたものがありますか。ありましたらあわせて一緒にお答え願いたい。
  30. 櫛田光男

    ○櫛田公述人 お答え申し上げます。回収の状況はおかげさまでたいへんよろしいのであります。ただ一昨年に比べますと、昨年は多少鈍くなつております。現在は大体延滞率が二・五%ぐらいになつておるかと存じます。一昨年は一・七%程度でございました。これはやはり金融情勢を若干反映いたしておると存じますが、全体的に見ましてほかの金融機関と比べまして私はよい方であろう、こう存じております。  それから一件あたりの金額でありますが、残高で申しまして現在大体普通貸付におきましては十四万円ぐらいが  一件あたりの平均でございます。さらに五十万円以上の、公庫といたしましては大口の貸出しになりますが、それが全体の六%までになつておりません。そういう状況でございます。それからお客様はまつたくふえる一方でありまして、従つて手が足りないということがございますが、おかげさまで店は支所の数が現在五十五に相なりました。二十九年中にこれを六十にいたすつもりでおります。また代理所の機能をさらに一段と活用いたしたい。さように考えている次第でございます。  それから類似金融機関関係の問題であります。が、この問題は対策の一つといたしまして、実は四月以降、金額は十億ばかりでございますが、特別小口の貸付というものをやつてみようということを計画いたしております。つまり普道五万円、特別の場合で十万円ぐらいを、三箇月から六箇月ぐらいの短期、季節的な仕入れ資金でありますとか、そういつたような用途に特別に充てるために、短期の運転資金を手続を簡略にいたしまして、二週間ぐらいでお貸出しをするようなことを考えてみたい。今研究をいたしておりますことをこの機会に申し添えさせていただきたいと存じます。
  31. 小峯柳多

    小峯委員長代理 これにて櫛田公述人の公述を終りました。  次に農林中央金庫理事長湯河元威君にお願いします。湯河元威君。
  32. 湯河元威

    ○湯河公述人 御指名によりまして若干申しあげたいと存じます。私は農林関係の金融業務に関係しておりますので、その見地から本委員会の御審議に何か御参考になろうかと存じまして二、三申し上げたいのでございます。  全体の予算が緊縮になつて一兆というわくがはまつておりますが、農林予算というものはその中でやはり相当圧縮を受けておるのであります。これは全体から見まして、もとより農業関係もそうなると思いますが、しかし実は予算の編成の過程におきまして、いろいろと政府部内の御折衝を外から拝見しておりますと、かなり当初はきびしい減額があつたようであります。それを見ましたときに感じましたことは、農林政策というようなものがこれによつて一つの転機を画するのではないかというようなことも思つたのであります。戦前また戦後を通じましていろいろな施策が行われておりましたけれども、事態が非常に急テンポにかわつておりますときにおきまして、農林政策の中枢をなしまするもろもろの施策は、あるいはすでに用を果したものもあろうし、あるいはその効果が落ちて来ているものもあるのではないか、あるいは新しく施策すべき重点が漸次はつきりして来ており、新しく着手しなければならぬものもあるのであります。緊縮というときに刷新が行われるということを私は若干期待をしておつたのでありますが、今日国会で御審議中の予算を拝見いたしますと、従来の予算の中に立つている柱は大体そのまま維持されているようであります。これが全体として小さくなつて来ているというような感じがするのであります。これは事後の感想でございますが、こういうときに農政が刷新されるということでもあれば、非常によかつたという感じがいたします。しかし全体として一律に圧縮されたということは、農林行政ばかりではないと存じますが、農林経済の面におきましては、これはやはり相当な打撃があるというような感じがいたします。あわせてこの緊縮財政を表打ちする金融の引締めということを申されております。従来日本経済の自立が危ぶまれておりましたものが、この財政と金融によつてここで引締まつて行くのだということになりますれば、それはけつこうなことだと思いますが、その各部面々々においていろいろと摩擦が起ることはやむを得ないことといたしましても、十分に気をつけなければならぬことだろうと存じます。今櫛田総裁らいろいろ中小企業のお話がございましたが、やはり経済的に弱い農林業におきましては、この予算削減の影響がかなりあります。直接的に農業の資本投入がそれだけ減るということからいたしまして、農業がそれだけ悩むという面もございましよう。これは一つ一つ項目を拾つて御検討願いますれば、それぞれあるわけでございます。農業関係者として申し上げたいこともございます。また間接には一般会社の経済デフレ的な傾向を帯びまするときに、そのしわ寄せがどうしても農山漁村に来るということもあるのであります。でございまするが、こういう機会にぜひとも皆様方にお考えいただきたいことは、やはり緊縮とか、引締めとかいうことをなさるときにおきましても、これは全体が経済安定を目ざしておるといたしますれば、その中にやはり濃淡厚薄があるべきものだろうと思うのであります。私これは手前みそかもしれませんけれども、食糧増産関係経費のごときは、これはよほど注意をいただかなければならぬものであろうと存じます。われわれといたしましては金融の面からいたしましても、緊縮なり引締めなりのさ中におきましても、何とかして食料増産というふうなことについては御協力を申し上げなければならぬ。そうしなければ、結局日本経済がジリ貧になる。今日。外国食糧の輸入が大きい、そうしてそれが何ともならぬという事態をさらに激化するようなことはあくまで避けなければならぬと思います。また農山漁村のような経済的に弱いところにしわ寄せされて行く。社会全体が圧縮を受けるならよろしい。しかし特定の面に特にひどくしわが寄るというようなことにつきましては、われわれはこれを座視することはできないと思うのであります。予算の御検討に当られまする場合におきましても、また政府予算を執行することをいろいろ御監視になる上におきましても、これらの点につきまして特にお見落としのないような御措置をぜひお願いいたしたい、かように存ずるのでございます。それとともに、この緊縮とか引締めとかいうことは、金融面の者といたしまてはなかなかえらい影響を受けるのでございまして、ことに農林水産関係の金融は、主として協同組合組織の組合金融でこれをまかなつておるのでございますが、この組合金融というものは、この緊縮引締めの影響を受けまして、資金の供給すなわち蓄積が減るという一面と、先ほど来申し上げましたような食料増産の必要性をまかなうに足りない予算だとか、あるいは農山漁村にしわ寄せが来るというふうなことを、何とかしてしわを延ばさなければならぬというようなことからいたしまして、相当金融面において力を尽さなければならぬ面があろうと思うのでございます。組合金融といたしましては、資金の供給が減つて需要がふえる、ちようど中小金融の場合と似たようなことにもなるのでございまして、これはわれわれとしては十分警戒して参らなければならぬとは考えております。ところてこの組合金融が昨年来実は大きな御用を仰せつかつております。これは昨年災害がたび重なりましたために、国会の皆様方のいろいろの御配慮によりまして、災害融資の措置が法律によつて講ぜられておるのでございます。従来でございますれば、災害救済のごときは、政府の財政によつて直接措置がとられておつたわけでございます。昨年来この扱いがかわりまして、政府の財政が直接に資金を入れるという面ももとよりございまするが、しかし金融をすることによつてそれをまかなつて行け、それについては必要な金融のための損失補償の措置あるいは利子補給等の措置を講ずるから、あとはお前たちやつて行けと、こういう御指示があつたわけでございます。ところで農山漁村の災害に対しましては、他の金融機関が何ともしてくれませんので、いわゆる組合金融系統機関が、その総力をあげましてこの御要請にこたえて参るわけでございます。われわれといたしましては、その立法を拝見いたしましたとき以来、政府の御指導のもとに、これは大事なお仕事であるからして、この災害対策というものにおいてかりそめにもこの立法の御趣旨にそむくようなことのないよう、われわれとしては資金の貸付等について十分気をつけて行かなければならぬということを口やかましく申して参つたのでございます。とかく公共事業費の使い方とかあるいは補助金、金融資金の使い方などに粗漏がございまして、世間からいろいろと御批判があるときでございますので、われわれとしては十分気をつけて参るつもりでいたしておつたのでございます。問題はそれのみならず、実はこの災害融資が非常に厖大な額に上つておるのでございます。総計いたしますと、組合金融の資金負担として約四百八十五億くらいのものを覚悟しなければならぬということになつておるのでございます。この資金をいかにして調達するかということが、昨年来また本年にわたつての大問題でございます。このことが先ほど来申し上げた財政緊縮あるいは金融引締めの過程に現われて来たのでございます。このことは組合金融にとつては非常に大きな負担になつて来おるのでございます。われわれはこれらの事態に対処いたしまして、何とかしてお役に立つて参りたいという気持から、協同組合金融の総力をあげて、いわゆる自まかないをする、できるだけ自分らの手元に預金を集めて、それをもつてこれらの必要なる資金をまかなうという態勢を立てて、その資金計画のもとに事を進あておるのでございます。しかし、何と申しましても、一般のデフレ経済界においてこの大きな要請にこたえて行くのは、非常にむずかしいのであります。実は昨年の国会におきましてこれらの法律をお通しになるときに、もし金が足りなくなつたならば、政府がしかるべく援助をせよというふうな御決議もあつたやに承つております。われわれとしても日本銀行なりあるいは政府の預託を受ける等のことを予期しないわけではございませんが、今後の経済情勢を見ますと、そういうことにたよることもなかなかむずかしいと思いまして、もつばら自力をあげて努力をするというつもりでやつておるような次第でございます。さような事態において予算の御審議が行われておるようなわけでございます。私この機会に農林予算の将来についていろいろ考えますと昨年の災害融資を契機といたしまして、財政の引締め、財政の緊縮等の機会に一つの新しい方式が出て来た。財政資金を農業に用いるいろいろな用い方がございます。たとえば公共事業費を用いる、あるいは補助金を交付するというふうに、直接に農業に喫緊な財政資金が投下される形式もございます。また、すでに昨年来発足しておる農林漁業金融公庫等に対して、財政資金があるいは直接出資され、あるいは貸し付けられて、それが農林漁業に融資されるというふうな融資の形式をとつておるものもございます。さらに先ほど来申し上げた災害融資、またその以外においても、有畜農家創設事業等においては、民間の金融というものの価値を認めて、それに対して行政、財政の面からは金融を盛んにさせて、そして必要があるならば、それに損失補償あるいは利子補給をつける、こういうふうな形式をとつておられるのであります。つまり公共事業費だとかあるいは補助金だとかいう形において、その事業に必要な資金を直接交付する形式と、それから財政資金を融資するという形式があるわけでございます。さらにその政財資金をもつて利子補給をするというような形があるのであります。直接資金を投下するよりも、融資の形をもつてする方が、実は財政資金がそれだけ将来にわたつて回転するという意味において効果があるように思われます。公共事業費あるいは補助金であればやりつぱなしである。ところが融資であればその資金が回転するということが考えられる。さらに利子補給というような形ないしは融資の場合の損失補償というような形をとりますときは、これは比較的そういう財政支出をしないで済む、あるいは元本に対する補助金よりも、利子に対する補給金の方が少くて済むというふうなことからして、少額なる財政負担において相当大きな効果もあり得るというふうに思われます。公庫融資であるとかあるいは災害融資等の新しい産業助長政策は、補助金、公共事業費というふうなものと違いまして意味があると思うのであります。このことは、一面から申しますと、農民に対して金を貸すということは、金をやるということよりも、農民が民主的にある形ではないか。そこにはよき影響があるのではないか。金を借りるというときに、よく農民がものを考え、借りた金は返すという責任を負うということは、計画についても周到であり得る。とにかく民主的に農民が目ざめるというふうなことからいいのではないか、かように考えられるのであります。財政がいろいろこれから多端になつて行くとわれわれは思つておりますときに、先ほども申し上げましたように、そういう場合でも農林漁業というものに対し、御配慮は当然あるべきもの、こう思うのでありますが、少い金を有効に使うのに、従来の公共事業費あるいは補助金というような形式、特定のものに金を直接やるという形式から、融資という形に切りかえて行くところに意味があるように思うのであります。そのときにそれをお扱いするものは、やはり農山漁村におきましては、組合金融、われわれがその衝に当るわけでございますが、われわれは今日までの自分らの業績にかんがみまして、それらのお仕事にたえられるほどよく完成しているものとは自分でまだ決して思つておりません。幾多至らない点がございます。農山一漁村の方々に対し、サービス等におきましても、非常にまだ御不満を買つておる点が多いということは、重々反省しております。   〔小峯委員長代理退席、西村(久)委員長代理着席〕 これらの点につきまして、十分自戒自粛いたしまして、勉強して行くつもりでございまするが、将来の農林漁業に対する財政のあり方の一つとして、昨年の災害融資または有畜農家の創設事業等、これらのことに芽ばえましたものを、将来皆さま方におかれましても、とくと御吟味願いまして、またわれわれ組合金融関係者の至らぬ点につきまして、十分の御指導と御鞭撻をいただきまして、何らか農山漁村の将来のためにお役に立ちたい、こういう念願を持つておりますものでございます。  まことに不完全でございますが、以上をもちまして私のお話を終ることにいたします。(拍手)
  33. 西村久之

    西村(久)委員長代理 ただいまの公述に関して、御質疑はございませんか。御質疑がないようですから、湯河君に対する質疑を終ることにいたします。ありがとうございました。  次に全日本中小工業協議会中央委員長の中風島英信君の御意見をお聞きすることにいたします。中島君。
  34. 中島英信

    ○中島公述人 私、ただいま御指名いただきました全日本中小工業協議会中央委員長の中島でございます。  私は中小企業の立場から、この二十九年度の予算についての所見を述べたいと思います。もつとも予算についてそれぞれの立場から非常に我田引水的な、あるいは独善的な意見ばかりを述べていたのでは、これは納まりがつかぬと思うのでありますが、われわれは一応中小企業の立場とともに、日本経済の健全なあり方という問題についてもやはり考慮をして、その観点も十分に取入れて考えて行きたいということを根本には考えております。  最初に今度の予算につきまして、この予算の編成の方針とか、それと関連しております、その基礎になつておる経済政策に関するわれわれの持つておる疑問なり意見を簡単に申し上げて、それからこの予算内容に関する考えを申し述べたい、かように思います。  二十九年度の予算を拝見して第一番に感ずる点は、緊縮予算をとつておられるということであります。しかしほんとうの意味で緊縮されるということが徹底した方針であるとするならば、むしろそれはある意味では緊縮の仕方が足りないということになるのかもしれません。またそうでなしに、たとえばこれが補正予算でくずれるとかその他のことによつて、さらに新しい支出を必要とする、あるいは来年度からまた元へもどるということであるならば、おそらく一時的な対策によつてできたものはすぐまた元へもどるに違いないと思う。そういう点から、もしも緊縮政策をとられるということならば、これはある程度継続してやられなければならぬということになると思うのであります。そうなつて来ますと、この予算の裏づけは相当長期にわたる経済見通しなり計画がなければならぬことになるわけでありますが、そういう点についてはどうもはつきりしないような感じがするわけであります。新聞などで見ておりますと、総理大臣は長期計画などは必要ない、そんなものはないという答弁をされたようであります。それはあるいは答弁のあやだつたかもしれませんけれども、そういう点についてわれわれ中小企業あるいは産業関係者として、どういう見通しの上にこの政策を進めて行かれようとするかという点について、若干の不安を持たざるを得ないのであります。もしもそういうものがはつきりなければ、この予算の立て方については根本的にまず検討する必要があるような感じがするわけであります。  それから第二点は、緊縮を標榜されておられますが、しかし予算内容を見ますと、かなり不生産的な支出が出ておるようであります。そういう消費的な支出が、一方において非常に増大しておるということは、やはりこの緊縮予算としては非常に大きな矛盾を含んでおるのではないかという感じがするわけであります。  それから第三番目に感じますことは、今度の予算が、一方において膨張しつつある国民所得を押える。それを通じて購買力を押え、消費の増大を抑える。それによつて物価の引下げをして、輸出の増進をはかるということが根本のねらいになつておるようであります。   〔西村(久)委員長代理退席、委員長着席〕 それで、おそらく経済白書などでせも言つておりますが、日本の現在の消費水準なり生活水準が非常に高くなつて来ておるということを一応前提に考えられておつて、ある程度下げられてもいいという考え方の上に立つておられるのであります。しかしこれらの点につきましても若干疑問を持つておるのでありまして、もちろん私らは一方において非常なぜいたくが行われておるということを見ないわけには行かないのでありますから、こういう点において不当な、あるいは必要以上のぜいたくというものは、これは当然批制して行くべきものだろうと思います。しかしながら一方、地力の農村におきましても、あるいは都市の中小企業におきましても、相当に経済状況的には窮迫しておる者が少くないのであります。こういう点では生活水準を引下げるどころか、あるいは高めなければならない立場に立つておる者が相当に多いのであります。ことに中小企業といつても非常に範囲が広いために、一番底にある零細企業ということになりますと、これは労働者の生活と大してかわらない生活をしておる者ももちろん多いのでありまして、ことに大企業における組織労働者等に比べるならば、むしろその生活の状況が低い者もあるのであります。こういう面において、この生活水準あるいは消費水準を引下げるということは、実際にはまだなかなかできがたいことであります。従つて私は、その生活水準の引下げということよりも、むしろ生活水準をある意味で平均化することの力が、現在の日本にとつて必要ではないかというふうに考えておるのであります。つまり非常に高過ぎるところは抑える必要がある。しかし低過ぎるところはむしろ若干上げなければならぬ状況にあると考えておるわけであります。そういう意味で現在の予算の方向は、むしろその間の開きますます大めくして行こうとする傾きが見られるのでありまして、これは逆に、やはりもう少しこの差を縮めて行くことが必要であろうと考えます。現在大企業中小企業の賃金の較差を見ましても、大企業の賃金に対して中小企業の賃金というものは約半分ぐらいになつております。こういうふうに賃金水準の差があるということは、小企業者がもうけておつて、給料いわゆる賃金を払わないというのではなく、やはり中小企業の収益が少いということを現わしているわけであります。極端な場合には、工員に給料を払うと今度は事業生の自分の生活費がないというような実例が非常に多いのであります。そういう点から見て、こういう賃金の較差を縮めて行く必要があります。あるいは企業の収益において較差を縮めることが非常に必要である。これをます開いて行くような方向は、私は逆な方向ではないかというふうに考えるわけであります。  もう一つは物価引下げをねらつておられるようでありますが、この物価引下げの方法として国民所得を下げ、購買力を押えるような方向をとつておられるようであります。しかし購買力というのはそう簡単には押えられないものでありますが、これに対していろいろな財政投融資の削減とかその他の方法をとつておられますが、こういつたような方向から購買力を引下げて行こうという方針がどういう結果を生ずるだろうかということを考えてみますと、これはかなり危険な状況をつくり上げるのではないかと思います。また今日の物価、中小企業関係の製品の値段というのは、ある程度需要供給の関係によつて規整される点がございますが、大企業関係の特に独占的な価格といわれているのは、そう簡単には下らないのであります。ことに大企業関係の製品の価格は、どちらかというと、原則として費用決定価格、コストによつて決定される価格である場合が多いのであります。こういうものは多少需要が減退したからといつて下るものではないのであります。そういう点から見ますと、大企業の面においては相当に高い価格で製品を売つてつて中小企業の製品は下げられて行くということになつて来ると、先ほど申し上げました差がますます開いて来て、中小企業はやはり原料高で製品安というところへ追い込まれる危険性が非常に多いというふうに考えるわけであります。なおこういつた方向で、一方で需要が減退して来ますと、現在でさえ苦しんでいる中小企業には、やはり倒産その他の者を生じて来る。失業者も生じて来る。こういつた面から社会不安というものを考えなければならぬと思うのであります。また一方におきましては、大企業は確かにある程度の打撃を受けると思いますけれども、最も主要な産業における大企業というものは、必ずしもそう痛烈な打撃を受けるとは考えられないのでありまして、これを契機として企業の系列化というものがおそらくことしだんだんと進んで行くと考えられるわけであります。こういう居合に中小企業としましては、企業の一系列の中に入つて行くものは、ある意味では安定をして来るものがあります。しかし一方は価格をたたかれるといつた点について、やはり難点を持つておるのであります。なおこの系列の中に入ることのできない中小企業は、相当に困難な状況に立たざるを得ないことになります。かりに、系列の中に入りましても、もしもこの予算で示される政策の方向が実現されて来ることになりますと、おそらく大企業も、やや金詰まりに困つて来る。かつ財政の引締めと同時に金融の引締めも行われるわけでありますから、このしわは当然中小企業に寄つて来ると思うのであります。これにはおそらく二つの形で寄つて来ると考えられます。一つは大企業の下請企業に対する代金の支払いの状況が、まずく悪くなつて来るのであります。今日においては、極端の例を上げますと、去年の十月に品物を納めて検収してもらつて、七十六万円くらいの代金をもらうことになつておる。これを十一月も十二月も払わない。一月になつて初めて六万円払つた。この六万円も百五十日の手形で払つた。こういうような極端な例もあるわけであります。こういう下請関係の問題については、各方面で調査をしておりますので、御承知の方もおありと思います。現在でさえもこういう状況がますますひどくなつて来るということは当然予想されるのであります。さらに普通の金融機関の引締めを強化して行くということになりますと、これが軒並にまた中小企業の方にしわが寄つて来ます。現在におきましても、この予算の心理的な影響というものが若干現われておるのでありますが、従来よりも銀行へ行つて金を借りる場合のわくというものは、二割、三制くらいは引下げられて来ておるという状況であります。こういつた面からの困難というものは、ますます増して来るというふうに考えられるのであります。これは中小企業に最も強くしわが寄つて来るわけでありますので、全体的にやはり日本経済に不況の傾向が出て来ざるを得ないと考えます。少し前に、経済安定政策とつた場合に、あれによつて日本経済は幾らかインフレがとまりましたが、経済的な不況に追い込まれて、非常に困難な状況に立つておるときに、朝鮮事変が起つた。朝鮮事変が起つたことによつてほつとしたというのが、日本経済のそのころの実情であつたと思うのであります。おそらく今度またこれに近い状況の方へ入つて行く。そのときに都合よくまた朝鮮事変のようなものが起れば、またそこで局面がかわるかもしれませんけれども、そういうものは簡単に期待はできない。そうすると、そういつたものでも起して片づけるということになると、非常に物騒な話になるわけでありまして、こういつた点においても、私はそういう方向をとつてでなければ解決できないかどうかということについて、若干疑問を打たざるを得ないのであります。要するにその方向が中小企業その他多くの犠牲を伴い過ぎる。この犠牲に対する手当というものは、この政策の中に盛り込まれてないという感じがいたします。もしも物価を下げるということでありますならば、やはり本格的にこの生産性を高めて行くということ、そうしてコスト引下げという基本的な方向をやはりわれわれとしては考えなければならぬじやないかと思うわけであります。もちろんこの生産性の引上げのために、大企業方面においては設備その他の合理化の問題が出て来ます。この点について、私はやはりある程度この線を進める必要があると考えております。ただそういう方面に対する投融資にしましても、従来の実績から見て若干条件は必要であると思われます。というのは、今日までその方面の合理化資金というのが相当出ておりますけれども、しかし価格は実際においては下つていない。そうして一方では高率の配当をしておる、労働者には高い賃金を払つておる、社用族というのが盛んに浪費をしておる、こういうような状況であつて中小企業に対する代金は支払いをしていないという状況であります。従つてその方面に対して投融資をする場合には、当然これは条件付でなければならぬ、なるべくコストを引下げて、価格を引下げるというようなことの条件をつけて行うべきだと思うのであります。一方そういう大企業だけに偏することなく、やはり中小企業合理化あるいは近代化という面に対して、当然に相当の顧慮が払わるべきであると考えるわけであります。中小企業が現在国民経済の中に占めておる地位というものは、あらためて数字的に申し上げるまでもなく、皆様のよく御承知のことであると思いますので、そういうものは略しますけれども、この重要性というものを十分に考慮に入れなければならぬと考えるわけであります。こういう点で今度の予算につきましてこまかい例をあげますと、たとえば中小工業に対する技能者養成の補助費というものは、前年度一千万円出ておりますが、今度はこれが削られておる、これは小さな例でありますけれども日本の中小工業を今後育成して行く場合の一つのポイントは、やはり技能水準を引上げて行くということであります。これによつて中小工業における生産性を高めて行くのであります。同時に、生産性を高めて行くということは、輸出の大半をになつておる中小工業を輸出の方向に向けて行くということに当然私はなると思うのであります。この前のアメリカのランドール委員会の報告を見ましても、あれによると、原価構成の面からアメリカの産業を三つにわけておる、その第二、第三のものは原価構成における労働賃金の高いものである、こういうものに対してはある程度の保護関税政策が行われる傾向もうかがわれるのであります。こういう場合に中小企業の製品が大部分を占めておる日本の輸出を増進して行く場合には、当然にこの部面における生産性を高め、かつコストを引下げて行くということは当然必要であります。こういう場合に、中小工業の技能水準の引上げのために考えられる技能者養成に対するわずか一千万円の費用も今年度は削つてある。単にそういう点を考えた場合には、削るべきものはほかに幾らでもあるのではないか一と私は思うのであります。こういう点からいつて中小企業に対する政策というものはほとんど考えられていないといつたような感じを持つわけであります。要するに物価引下げに対してとられておる方向というものは、経済ほんとうの意味で自立をさせる方向に対しては、若干これを停滞させる、あるいは逆行させる傾向を持つておると考えられるのであります。つまりコストを引下げるためにも、あくまで生産経営の合理化を行うということ、それから一方国内的に自給度を高めて行くということがやはり基本のあり方であると思うのでありますが、そういう点を考えずに、ただ物価の引下げを通じて国際的な帳じりを合せるということにばかりとらわれているという感じがいたすのであります。われわれとしてももつと真剣にコスト引下げを考え、品質の向上を考え、さらに新しい市場を開拓して行くために努力をしなければならぬと考えておるわけでありますけれども、そういう面に対する施設の費用というものは、ほとんど十分に見られない状況であると考えるわけであります。  もう一つ、輸出の増進ということが、物価の引下げを通じて考えられておりますけれども、今日のように二重価格が一般的になつている場合には、国内の価格が若干下つても、直接的には輸出の価格に響かない。こういう点からは、輸出の増進に役立つということは非常に少いと考えられておるのであります。こういう点にも一つの難点があるように思われます。  第四点といたしまして、国際収支日本経済自立の関係についても現在の方向でいいかどうかということについて、幾らかの疑問を私は持つておるわけであります。これは法人にいたしましても、個人の経営にしましてもそうでありますけれども、今月黒字であつても、来月以降赤字になるということであれば、これは意味がないのであります。しかし今月赤字であつても、来月以降黒字になるというならば、むしろこの方が健全な経営である。だから、国際収支のバランスというものは非常に重要でありますけれども、自立経済ということを単にその面からだけとらえるということについては、場合によつては非常な危険性を生ずると思うのでありますが、これはやはり相当長期にわたつて国際収支のバランスを考えなければならぬ。ことに金の面からだけものを見るときには非常に危険があると思う。ぜいたく品の輸入は別として、工業原料その他が輸入されて来ることは、一面において日本経済を非常に充実して行くことになる。また輸出が幾らか伸びても、これがいわゆる飢餓輸出のようなものであるならば、これはたけのこ生活を意味するわけであつて、輸出は伸びて行くけれども、実際には国民経済というものはむしろ窮乏化して行くことを意味すると思うのであります。従つて今日のような状況において、世界経済に対応するような日本経済を立てて行く場合、むしろ第一にはやはり国内における経済をもつと健全にするという方が第一義であると考える。もしもこういう方向をとれば、それに対する条件としては、当然外資の導入のような問題が出て来ると思うのでありますが、それが現状で非常に困難であるということが、この予算を生んだ一つの原因であるかもしれませんけれども、この点について日本はもつと対外的な政治力を持たなければならぬというように私は考えるわけであります。外国のある新聞——たしかクリスチャン・サイエンス・モニターであつたと思いますが、今度の日本の緊縮予算を批評して、アメリカのアジアにおける大きな外交的勝利であるということを言つております。結局アメリカの外交的勝利ということは、一面において日本の外交的敗北を意味するかもしれませんけれども、そういう面においてはやはり自主的にもう少し強い対外的な力が必要じやないかと考える。しかしかりに現在の日本の状況においてそういつた新たなる外部からの経済援助あるいは外資の導入は考えられないとするならば、この国際収支の問題から来るところの難点は、他の方によつて当然考えなければならぬということになると思います。これは貿易の面におけるバーター制その他の面を活用することによつて一定の期間を切り抜けることは、なお可能ではないかというふうに考えるわけです。  要するに私どもの申し上げたいことは、あまり中小企業にしわの寄らない、結局あまり多くの犠牲者を出さない形をもつて経済を維持し伸ばして行くという対策をとられないものであろうかということでございます。つまりだれにも犠牲の生じないような生産の維持と拡大、だれも犠牲にしないような経済の安定と繁栄、インフレーシヨンを伴わないところの経済の安定ということが、まつたく不可能であるかどうかということであります。この点についてはわれわれは政府その他の方面においてももつと深く検討をしていただく必要があるというふうに考えるわけです。要するに、今日耐乏する、そうすれば明日こういう希望があるということであるならば、それは耐乏もできると思うのでありますが、耐乏のし放しということであつては、これはとうてい収まりがつかないのであります。つまり今度の予算を見て感ずることは、明日への建設的な希望というものが少しもわれわれに与えられていない、そうしてただいきなり耐乏だけをしている、しかも耐乏できるところに対しての耐乏はいいのでありますが、もはや耐乏のできる余地のない層に耐乏をしいるということは、実際不可能に近いことであると考えるのであります。  大体私はそういうような見解からこの予算を見まして、それではどういう点について具体的に今度の予算に対して希望を持つているかということを次に申し上げたいと思います。  第一は財政の規模の問題でありますが、われわれはやはり原則的には財政の規模はできるだけ、収縮して行くべきであるというふうには考えております。しかしこの理由は、この予算編成の方針に現われているのとは少し別な理由であります。というのは、われわれ中小企業者はもちろん、一般にやはり担税力の限度に立つているというふうに考えるわけです。こういうふうな状況において財政の規模をふやして行くということは非常に困難な話である。そういう御点から、私は結論としてはやはり財政の規模を拡大しないということが必要であると考えております。しかしその理由は、この予算編成の理由になつているような、国民所得を引下げ、購買力を引下げて行くということとは別な理由であります。つまり予算関係においては、その基礎にある方針は、予算の規模がたとえば一千億ふえれば、国民所得は三千億ふえるとか、そうすれば輸入は二億五千万円ふえて行くといつたような、そういつた面から見ての話ではないのでありまして、あくまでも私らの方は国民の持つているところの担税力という面から見て、今後財政の規模というものはできるだけ縮減して行くべきであろうというふうに考えるのであります。それから歳入の関係でありますが、これは先般の税制調査会で出した答申案によるような減税というようなことは、今度の予算では行われないようであります。が、やはり今申し上げたような趣旨から申しまして、できるだけ減税の方向に行くべきであると考えております。税金の面においてなお足りない問題は、われわれとしては法人においても場合によつたならば高度の累進所得税というものを考える必要があるんじやないかと思つております。また法人と個人企業とにおける不均衡というものははなはだしいのでありまして、これを直す必要があると思います。ことに個人企業の場合には、中小企業者が働いて得られる実際的な勤労の報酬に対しても、利益として課税されている現状であります。これが大企業でありますと、社長の俸給でも重役の俸給でも、一応これは経費の中に入るわけです。ところが個人企業の場合はそうでないのであつて生活費に対して課税されているという状況でありますので、個人、法人を問わずに、勤労所得と事業所得というものを截然と区別して行くことが当然必要であると考えているわけであります。こういう面で税制を合理化される必要があるでないかと考えます。  なお今当面中小企業者の間で非常に大きく問題になつておりますのは、繊維消費税の問題であります。消費税という考え方につきましては、根本的にはこれについてはなかなかむづかしい問題であると思いますので、それについては申し上げませんけれども、実際問題といたしまして、日本で消費税をかけて行くと、これが末端の中小企業者に転嫁されるという危険性が非常に多いのであります。これが中小企業者が反対する一つの大きな理由になつているのであります。つまり直接に実際に消費する人間が負担をするということでなしに、その税金が中小企業者の方の肩にかかつて来るということであります。この点に危険性があるために、日本経済的な慣習、それから中小企業の実態、そういつた面から見て、実際的にこの面において考えなければならぬ点があるわけであります。しかも本来これは原糸課税というふうになつてつたものが、たちまちの間にして小売課税にかわつたとか、こういうことがあつたために、これがやはり中小企業者の大いに憤激の原因になつたということは、率直に申し上げておきたいと思うのであります。  それから歳出に関する問題でありますが、これは結論的に申し上げますと、先ほどお話いたしましたように、日本経済の立て方を、この中間層の生活を十分に充実する、さらに中小企業を含めて全般的に経済の安定をはかるという建前からして、やはり私は中小企業に対する振興の施策あるいは財政投融資の点においても、この面に対して相当の重点を当然に置くべきであると考えるのであります。先ほどはこまかい例で、技能養成に関する施設補助費の問題をあげましたけれども、これなどはもちろんその一面であります。つまり中小企業の面における生産性を高める、あるいは輸出の面にこれを寄与させるという面で、こういつた面はわずか一千万円くらいのものでありますけれども、こういつた面は、他の面をさいてこのくらいのものを生み出すことは、決して不可能ではないと考えるわけであります。しかもこの面では欧米を通じて先進国の中で、この関係の補助費を持つていないのは、おそらく日本だけであると言つてさしつかえないと思います。こういう点について非常に私は日本は遅れている、ほんとうに、この生産を高めて行くということの配慮が欠けているのだと思います。  それから根本的な点としては、やはり金融関係の問題があります。それで今度の予算を拝見しますと、表向きは開発銀行関係の融資が二百億くらい減つております。中小企業金融公庫を見ますと、町年度百三十億が今度同じように百三十億になつております。しかし実際を見ますと、中小企業金融公庫は昨年十月から貸出しをしております。従つて半年間で百三十億の金を貸す予定になつております。今度は四月から三月まででありますから一年間であります。そういう点を見ますと、単に二十八年度の予算と二十九年度の予算を数字の上だけで比較しますと、同じ百三十億のようでありますけれども、実態は半分になつておるということになると思います。こういうような点から見て、たとえば中小企業金融公庫に対する投資というようなものは、非常に少な過ぎるというふうに思うわけであります。それから先ほど国民金融公庫の櫛田総裁のお話がありましたので、国民金融公庫に関する問題は省略さしていただきますけれども国民金融公庫においても、先ほど櫛田総裁の言われたように、結局中小企業者の要望のわずか二割を満たすに足りないのではないかということになるわけであります。こういう点から見まして、私らは少くとも全部とまでは行かなくても、半分くらいまではその要求を満たす程度の資金が必要であると考えます、そうしますと、現在の予算に盛られています九十億を、少くともやはり三百億くらいにする必要があると思うのであります。そうしますと、本年度貸し出す予定になつておる二百九十三億に二百億を加えて五百億でありますから、資金需要に対して半分くらいはこれによつて満たされるというぐあいに考えます。中小企業金融公庫に対しても、その程度の金額であれば、これでやはり私は半分くらいの需要が満たされるというふうに考えるわけであります。中小企業金融公庫の方は、先月の末までに開設以来二百六十億くらいの申込みが窓口に来ておるわけであります。これは申込みの中でも書面による申込みだけでそのくらいになつております。これに対して貸し出した金というのが、六十一億くらいであります。それから件数で二二%、金額で二三%くらいのものがようやく出ておるわけであります。なおこれは最初の間設備資金を主にしたために、長期運転資金に対する要望というものは、まだあまり出て来ておりません。そういう関係で、本年度はさらに多くの需要がここへ殺到すると考えられるのであります。こういう点からもその方面に対する資金手当というものは、当然にもつと必要になつて来るのではないかというふうに考える。それからその他金融以外の面における中小企業の対策費というものは、これは今度の原案から比べますと、かなりひどく削られておるようであります。おそらく前年度に比べますと、多少はふえておりますが、予算として要求された最初のものは、二十七億一千万円程度のものが要求された。これが徹底的に大なたを振われて、三億七千二百万円というように削られておるわけであります。もちろん各方面の要求も非常に多いわけでありますから、そのうちで中小企業だけに金をまわすということはもちろんできないことであると思います。また要求したものを全部が全部これを満たすことは、もちろん困難でありますけれども、どうしても必要なものについてはこの際やはり十分な資金をここに投じて行く必要があると考えられるわけであります。そういう意味において、中小企業振興対策として通産省あるいはその他の方で原案をつくつて要求された金額の中で、もちろん検討すべき余地はあるだろうと思うのでありますけれども、これは二十七億が三億七千万くらいに削られて、わずかに一三%くらいが充てられたわけでありますけれども、こういう点についてはさらによく検討をして、なおどうしても必要と思われるものについては、これを増額していただくことが望ましいと思うわけであります。  それで最初申し上げましたように、私も原則としては予算の規模というものはあまりふやさない方がいいと考えております。従つて結局現在の歳出の予算の中で、できるだけ不要不急と思われるもの、あるいは多少問題があるというようなものについて検討を加えていただいて、そういう面の費用を必要な面にまわしていただくということをわれわれとしては希望するのであります。  第一はやはり行政費の徹底的な縮減ということが必要であります。なお今度ふえておりますものの中では、軍人恩給その他があります。これは軍人の遺家族の方の中には生活に非常に困窮しておられる方がもちろんあるわけであります。そういう方に対してはできるだけのことをしなければならぬわけでありますが、今度の戦争で非常に多くの災害をこうむつて、やはり父や夫を失つたという人は非常に多いわけであります。また軍人の遺族の方であつても、現在非常に楽な生活をしておられる方も非常にあります。従つて今日のような経済の状況が苦しい場合には、仕事がなくて困つておる人には仕事を与える、生活に困つておる方には、生活保護法によつてこれを保護する、あるいはまた社会保障的な政策によつてそういう面を救済して行くというのが建前であつて、そういう意味においては、こういう面にも若干考慮の余地があるのじやないかと考えるのであります。  なおもう一つは防衛費の問題であります。今年の予算で前年度よりもふえておるものは、多いのはやはり防衛関係支出であると思います。再軍備がいいか悪いか悪いかという問題は、なかなかむづかしい問題でありまして、これについてわれわれとしては別に意見を申し上げませんが、ただ日本経済実情からいつて、一方において非常に大きな犠牲を負わせながら、一方において防衛的な支出をふやして行くというような段階にあるかどうかという点については、われわれははなはだ多くの疑問を持つものであります。しかもやはり多くの場合——多くの場合というよりも大体において不生産的な支出であり、消費的な支出であると考えられますので、こういう面についてやはり私は削減の点について十分検討を加えていただく必要があるのではないかと考えます。  時間も大分たちましたので、以上、この予算の編成の方針あるいは予算内容についての私どもの考えの要点だけを申し上げた次第であります。(拍手)
  35. 倉石忠雄

    倉石委員長 どうもありがとうございました。ただいまの公述に関して御質疑がございましようか。  それでは次に加納久朗君より御意見をお聞きすることといたします。
  36. 加納久雄

    ○加納公述人 時間がありませんから相当速力をかけて私の意見を九箇条ばかり申し上げたいと思います。  第一に、第十九回国会における経済審議庁長官の演説と小笠原大蔵大臣の演説を拝見いたしまして、一番先に感じますことは、この御両君ともに外貨減少恐怖病にとりつかれているように思う。(笑声)この両君ともほんとう経済がわかつていらつしやらないでこの予算をお立てになつたというふうに私は考えるのです。(拍手)そのわけは、経済の自立というものがほんとにできていれば、予算は一兆でも一兆五千でも二兆でもさしつかえないのです。しかし経済の自立が今日のようにできていない場合には、かりにこれが五十億でも四千億でも多過ぎるということが言えるのです。経済自立というのは、政府のお題目にはたくさん述べてございますが、ほんとうにはわかつていらつしやらないんじやないかと思う。それは日本の歴史で東条時代まではほんとう経済自立というような考えがなかつたのでございますから、それまではアジアのほかの国を犠牲に供しても、また国民生活を低下させても、鉄砲なり何かをつくつて行けばいいというのが総理大臣のお役でございました。ところが平和国家における今日はそれではいけないのであつてほんとう経済自立というものを立てて行かなければいけない。それで日本は二年ほど足踏みをして遅れてしまつたと私は思うのでございます。負けたドイツでは、二年前からアメリカの援助を断つて——アメリカの援助をもらえば依頼心が生ずるからいかぬ。第二はアメリカの援助をもらうとむだ使いをしていかぬ。第三は援助をもらうとそれに相当したむだな設備をつくるから、結局損だというようなことから、援助を断つて、そうして経済自立ということをほんとうにやつてつた。それで中東諸国、アルゼンチン、アフリカ、東南アジアの方にまでも、ドイツは自分のサービスを出し、自分の品物を出してその国のものを買うというので、ほんとうの共栄共存して行くという経済自立の政策を立てて行つたわけでございます。それだからドイツは一昨年の六月に外貨が五億ドルございましたのが、昨年の七月には外貨が十億ドルになつたというくらいに外貨がふえて来た。そうして国民の生活はどんどん上つておるという状態でございます。ところが日本の場合にはどうかというと、経済政策をまつたく誤つてしまつたのですから、それで今日になつてからようやく気がついて、国民耐乏生活をしいておる。世界のどこの国も、今日国民耐乏生活をしいるというような、そんなへまな政府はございません。その意味でこのお二人の御演説というものは、経済が全然わかつていらつしやらない方の演説である、こういうふうに私は思います。(拍手)  それから経費の節減ということでございます。が、今のように一兆でも高いのですけれども、これを減らせばいいというだけの簡単なものではいけないと私は思うのであります。やはりアメリカがやつております通りに、第一年度どのくらい、第二年度どのくらい、第三年度どのくらいというように、経費を減らして行くという計画を立てなければ、国力を培養するということはできない。全然国力の培養ということのプランがなく、そして今までの失敗をほつておいて、国民耐乏生活をしいるということでは、国民は楽しみがないからやりません。  それからもう一つはコストの引下げの問題ですが、外貨が非常に減つておるから心配だ、こういうことを両方ともうたつてあるのでありますけれどもそもそも何もなかつた外貨が十億ドルできた。十一億ドルできた。どうして外貨ができたかというと、国民ほんとうにかせいだところのサービスと国民がかせいでつくつたところのものが外国へ出ておる。その外国へ出た品物がたまつたのが外貨でございます。でございますから、物を出しつぱなしにしておいて、それで必要な機械と原料と技術を買わずにおれば、国内に物が足りなくなつてインフレが起るのは当然である。であるからして、この根本原因は、外貨をいかに上手に便わなかつたかということで今日のインフレが起つておる、こういうふうに私は解釈するのであります。そこで今でも遅くございませんから、この外貨を四億ドルでも三億ドルでも減らして、そして必要な機械と技術と原料を入れて、日本経済を立て直す。こういうことになれば自然にその思惑だけでも物価が下り、コストが下り、そしてほんとうにコストが下つて、二年、三年後に輸出に向うということができると私は存じます。  それからもう一つ、私ども今まで海外貿易に長く従事しておりました者から申し上げると、政府のこの演説にもございますけれども、不要不急の輸入品は買わぬようにというように強調しておられます。しかし、こういうことのできないことは非常にはつきりしておりまして、今度の日英経済協定でも御承知でございましようけれども、ウイスキーとビスケットとお菓子は日本はどうしても買わなければならないような約束ができておるのでございます。もし日本が外国の不要不急品を輸入するなということを強調するならば、御木本の真珠、名古屋の七宝焼それから日本の生糸、そういうものは向うからいえば不要不急品だから買わないということを言つて来るわけであります。それから観光事業といつて大いに奨励しておられるけれども、これは向うからいえば奢侈的なものである。ですから日本はやはり世界経済の上では共存共栄して行くという考えでなければいけないのであつて、この点はあまり強調していただきたくない、こういうふうに私は存じます。  それから政府が財政投資をやられる。今度はだんだん減つておりますからけつこうでございますけれども、この財政投資というものは、もともと税金でとり上げた金で政府が銀行屋のまねをするというわけです。ですから、いわばこれは税金銀行です。(笑声)そういうものはなるべく少くしてもらいたい。つまり動力、石炭、船舶というような三つくらいな基本的なものに限つて財政投資をやるということにしていただきたい、いろいろなこれに対するスキヤンダルも起つて来るのでありますから。  それから今、日本では労使の協調ということが非常に大切なんでございます。私は小さいドツク会社をやつておりますけれども、引受けましたとかきら経営をすべてガラス張りにして、すべて労働組合に見せる。そして今日では、労働組合の代表者は、君たちはただ賃金の値上げのための闘争ということで来ないで、経営の内容に参加するというほんとうの参加の代表者を出してもらいたいというふうに私は自分から言つております。そういうふうに労使の協調というのは、結局ガラス張りにして、ほんとうの協力を求めるということでなければいけないのであつて、その点では今日までの日本の経営者というものはまつたく落第しておるのです。しかしながら今日経営者が自覚するならば、ほんとうに組合との協力ができて来ると私は思うのでございます。この労銀のコストに占めて行く割合が大きいということについては、政府公務員ベース・アツプを実行したということが非常に大きな原因をなしていると思うのであります。つまり三百万人の労働者のうちで二百万人が公務員であつて、そのベース・アツプをやつたということがやはりもとになつて企業の、工業のベース・アップの運動に持つて来る、こういうことになると思うのであります。  次に、繊維税の問題でございますが、これは私は中小工業を圧迫することが非常に大きいと思います。のみならず洋服税をかけるということになりますと、これを徴税するということは非常にむずかしいことなんです。それから洋服がはたして奢侈品かどうかという問題、上等な洋服なら十年も十五年も持つものなんですから。これに税をかけて行くということはたいへんな悪税でありはしないか。特に洋服屋というものは、中小工業ではほとんど占めておるのでありますから、この税金は私は悪い税だと思う、こういうふうに存じます。  それからその次に、日本経済をよくする上においての再評価の問題でございますが、再評価をやらなければ日本の産業というものはほんとうに自分の足の上に立つことはできないのでございますが、その再評価をやらせるのには、再評価に税をかけるということはやめなければいけない。何となれば、再評価したからといつて現金がそこにあるわけではないのでございます。でありますから、再評価をさせてそれは税をなしにして、ほんとうの建直しを助力しなければいけない、こういうふうに存じます。  それから私は役所の能率——政府の独占事業、公共事業、鉄道、そういうものの中にたくさんのむだが存在しておる。このコストを引下げるということが非常に大切な問題である。民間から言わせるとたくさんなすきがこれに存在しております。これには私は、日本の能率協会なりあるいは産業能率大学の専門家なりを寄せて、そうして実業人をまぜた、一年くらいの期間の、政府の仕事の能率化ということの委員会を設けていただきたい。そうしてそこで決定したものはどうしても政府が実行しなければいかぬということを法律できめていただきたい、そういうふうに私は存じます。  もう一つしまいに申し上げておきたいのは、日本は今日、御承知の通り、たいへんな手形経済でございまして、大商社は大工業家から物を買うときに手形を出しておる。また卸、小売、いずれも現金がないために手形を出して大商社から物を仕入れておる、こういう状態でございます。そうして今日物が下つて来たために、大阪あたりでは、先週参りましたけれども、すでに毛織物が五割も下つております。その下つたわけは投売りでございます。手形の期日に間に合せるために投売りをしなければいけない。その状況が進んで参りますと、投売りをして払つた手形はよろしゆうございますが、払われなかつた手形はそのまま不渡りになつてしまう。そういうふうにして行きますと、たくさんの不渡りが不渡を生じて、結局日本経済がびようぶ倒しになるというおそれがあると思うのであります。この原因はどこに存しておるかというと、とりもなおさず高い税金ということにどうしても帰着するのであります。でありますから、初めに申し上げましたように、政府は税金を三年、四年の計画をもつて下げて行き、そうして国力を培養して行く。自然増収があつたらそれは国民に返して行くということで、国民の力を養うということでなければ、日本経済ほんとうに立ち直らないと私は存じます。この予算は、結局経済ということが全然わからずにつくつたほんとうのパッチ・ワークであるというふうに私は存じます。これだけでございます。
  37. 倉石忠雄

    倉石委員長 ありがとうございました。ただいまの公述に関しまして御質疑はございませんか。——それではどうもありがとうございました。  本日の公聴会はこれにて終ることといたします。明十三日午前十時より引続き公聴会を開くことといたしまして、本日はこれにて散会いたします。    午後三時三十五分散会