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高橋(圓)
委員 それでは
通産大臣にお伺いいたします。
政府が一兆円
予算を組まれて、そうしていわゆる超均衡財政といいますか、超緊縮
予算を組まれまして、物価の引下げを推進して行く、そうして
わが国の輸出の振興をはかり、国際収支の改善をはか
つて行く、こういう
方針で非常な決意を持
つてや
つておられますことは、私
どもも非常に多とするところでありますが、今日までのところでは、主としてまず
予算の面で国費を節約する、一方では金融の引締めをかなり強硬に実施せられまして、
相当の効果を上げておられるとは思います。しかしながら金融の漫然たる引締めだけでや
つておられました結果が、最近は多少いろいろと
通産省あたりでも大蔵省でも特殊の面に考慮を広げて行かれておるようでありますが、漫然とした金融の引締めを強行されます結果は、結局信用度の比較的低い中小
企業の面にだけその引締めのしわが寄せられる。そうして銀行とつながりのある、このごろよくいわれます新財閥といいますか、いわゆる系列
産業及びその系列
産業の下請
産業、直接の
関係のある
産業、そういうものには大してしわが寄らない。そういう
関係のない、何といいますか、独立の中小
企業者の面にだけ――だけとは申せませんが、主としてその
方面に圧力が加わ
つている。しかもその結果はどうかといいますと、引締めを非常にやかましく言い、銀行の窓口は非常にうるさいことを言う割合に引締めの効果が上らない。いわゆるオーバー・ローンというものは一向減らない。あれほどやかましく言
つておるのに、日銀の貸出しというものはだんだんふえて行く。それはどういうところに原因があるかといえば、結局私は系列
産業といいますか、従来の市中銀行と――変な言い方かもしれませんが、いわば一種の腐れ縁のあるような
産業、腐れ縁ばかりではありますまいが、そうい
つた産業の方には従来
通りに金が流れておる。これは最近特に
通産省においては御
心配にな
つて対策をお講じにな
つておるようであります。大蔵省でも御尽力をなさ
つておるようでありますが、不要不急とは言えないかもしれませんけれ
ども、きわめて巨額の
資金が
日本の
設備融資として出されておる。これは最近伺えば二十八年度の約六千億円から千四、五百億円を減少して、四千五百億円程度に圧縮するというようなことで、最近ではそういう点を御考慮になり、御尽力をなさろうとしておるようであります。少くとも今日までの金融引締めの結果は、弱い面にばかりしわが寄
つて行
つている。そのために、これはしばしば言われたことでありますが、不渡り手形の続出、最近では、ごく最近は三月以来ややおちついた
状態でありますが、今年に入
つてから不渡り手形の数は逐月増加をいたしております。二月は大体千二、三百枚、三月は千六、七百枚、千六百枚以上の数にな
つておる。そういうような
状態でこのまま推し進めて行きますならば、外国に比してきわめて数の多い
日本の中小
企業というものは全滅してしまう。
企業自体は非常に健全と申しますか、従来
通り何ら変化なくや
つておる。当面の景気とあまり
関係のないような
企業である。それだのにただ銀行が引締めをや
つたというだけのために不渡りを出す、倒産するという
企業が現にかなりあるのである。銀行が今まで
通りや
つてお
つてくれれば倒産しない。いわば銀行の金融引締め
政策だけのためにその会社がつぶれる、こういうものが現実に
相当あるのであります。これらのことは十分この上とも深く意をとどめていただいて、さような不自然な金融
政策のために
企業ののどを絞めて、絞め殺すようなことに結果がならないように十分の御留意を願いたいと思います。
ただいま申し上げましたのは
希望でありますが、
大蔵大臣がおいでになりませんので、
大蔵大臣に対する
質問を保留いたしまして、私はこの
機会にいま少しく
通産大臣に
お尋ねをしておきたいと思います。
日本の現在の
企業経営者が、追放等の
関係もありまして、きわめて不適格な人たちが大きな
企業の
経営の責任者にな
つている場合が非常に多いように私は思うのです。これは戦後
アメリカの示唆によ
つてなされたかと思いますが、商法の改正をや
つて資本と
経営の分離というようなことをやられたのであります。この
法律の改正による資本と
経営の分離そのものは大したことはないと思いますけれ
ども、過去の長い経験のある
経営者が追放に
なつた等の
関係がありまして、この
企業経営が非常にふまじめにな
つている。
政府ではたとえば資本蓄積というようなことを非常に考慮されて、そうして法人所得税を引下げる――税金が高いから
日本では資本の蓄積ができないのだという
考え方なり
意見がかなり行われ、財界
方面から特にそういう声が年中行われている。ところが税金を引下げたからとい
つて、資本の蓄積がちつともふえて来ない。これは
日本の法人所得税が特に高いからではないと私は思う。
アメリカの法人所得税も
相当高いので、これは前から引下げの
意見がしきりにあるのでありますけれ
ども、
日本はたしか四二%でしたが、
アメリカは一〇%ぐらい高いはずです。ドイツ
あたりでも法人所得税は
相当高いものです。けれ
ども、
企業経営者が真剣にな
つて、労働者から
経営者に至るまで真剣にな
つて企業の
経営に努力すれば、税金が高いから蓄積ができないということはないはずだ。現実に
日本においても、われわれの知
つております
産業で、あの
もつともつと税金の高い時代から、
原則として絶対に脱税はしない、これはある
意味でなかなか頑固な信念のある
経営者で、そういう
方針でや
つている。それは有名な人でありまして、個人も私はよく知
つている。名前を言えばよくわかるが、そういう
産業が私の知
つておるだけでも少くとも二つぐらいあります。これらは
日本でも模範的の
状態にな
つておる。新聞に出ておる考課状を見ておると、実に驚くようなりつぱな
経営をや
つておる。いわゆる戦後派の今日の
日本の
企業経営者がただ税金の高いことに籍口して、利益を出せば税務署に持
つて行かれるだけだというようなりくつにもならぬことを言
つて、会社の金を浪費しておる。今資産再評価といわれておりますが、私が申し上げるまでもなく、今の
日本の会社の利益とか配当とかいうものは、全部いわゆるたこが手足を食
つておるのと同じで、非常に少く見積られ、評価されておる資本に対する利益を計上しておるだけでありまして、ほんとうに厳格にいえば利益など上
つておらないと思う。それらの点につきまして、申し上げたいことはいろいろございますが、
通産大臣は、特に
法律をも
つてどうするこうするということは、いわゆる統制
経済でありませんからあれでありますが、
政治的な指導力を発揮せられて、現に金融引締め等から逐次そういう影響は出て参りましようけれ
ども、
通産大臣として何か今日の
企業経営者に大きな警告を発しその反省を促す、あるいは緊張をせしめるというようなお考えを持
つておいでになるかどうか。
政府として何らかこれらに対して指導と申しますか適当の
措置をおとりにならなければ、
政府がいかに一生懸命に努力をされても、実際の物価の引下げ、
企業の合理化というようなことが容易に実現しないのじやないか、かように考えるのであります。
またもう
一つ、公認会計士制度というものがもつとしつかりして行きますれば、これらの面にも
相当の効果があるかと思いますが、現在のところでは、制度が新しいためか、ほとんど会社の雇い人のような形にな
つておりまして、力を発揮しておりません。これらのことについても、何か公認会計士制度などを改めて、そうしてこういうものを大いに活用して行くというお考えがないかどうか、この
機会に
通産大臣にお伺いをしておきたいと思います。