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1954-03-18 第19回国会 衆議院 予算委員会 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年三月十八日(木曜日)     午後一時一五十二分開議  出席委員    委員長 倉石 忠雄君    理事 小峯 柳多君 理事 西村 直己君    理事 西村 久之君 理事 森 幸太郎君    理事 川崎 秀二君 理事 佐藤觀次郎君    理事 今澄  勇君       岡田 五郎君    尾崎 末吉君       尾関 義一君    小林 絹治君       迫水 久常君    庄司 一郎君       高橋圓三郎君    富田 健治君       中村  清君    灘尾 弘吉君       葉梨新五郎君    原 健三郎君       福出 赳夫君    船越  弘君       本間 俊一君    八木 一郎君       山崎  巖君    山本 勝市君       小山倉之助君    河野 金昇君       中曽根康弘君    中村三之丞君       三浦 一雄君    足鹿  覺君       滝井 義高君    松原喜之次君       山花 英雄君    横路 節雄君       稲富 稜人君    川島 金次君       河野  密君    佐竹 晴記君       堤 ツルヨ君    舘  俊三君  出席国務大臣         国 務 大 臣 緒方 竹虎君         外 務 大 臣 岡崎 勝男君        大 蔵 大 臣 小笠原三九郎君         文 部 大 臣 大達 茂雄君         通商産業大臣  愛知 揆一君         運 輸 大 臣 石井光次郎君         労 働 大 臣 小坂善太郎君         国 務 大 臣 木村篤太郎君  出席政府委員         保安政務次官  前田 正男君         保安庁長官官房         長       上村健太郎君         検     事         (刑事局長)  井本 臺吉君         外務政務次官  小滝  彬君         大蔵事務官         (主計局長)  森永貞一郎君         運輸事務官         (海運局長)  岡田 修一君         運 輸 技 官         (船舶局長)  甘利 昂一君  委員外出席外出席者         専  門  員 小林幾次郎君         専  門  員 園山 芳造君         専  門  員 小竹 豊治君     ————————————— 本日の会議に付した事件  昭和二十八年度一般会計予算補正(第3号)  昭和二十九年度特別会計予算補正(特第1号)     —————————————
  2. 倉石忠雄

    倉石委員長 これより会議を開きます。  昭和二十八年一般会計予算補正(第3号)及び昭和二十九年度特別会計予算補正(特第1号)の両案を一括議題といたします。質疑を継続いたします。佐竹晴記君。
  3. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 それではこれから副総理並びに石井運輸大臣刑事局長に対しましてお尋ねいたします。  政治腐敗は、民主政治を根底から動揺せしめております。国民は相次ぐ汚職吸血予算に対し、遺憾の眼を見張つております。今日審議中の補正予算中には外航船舶建造資金貸付利子補給昭和二十八年度予算額七億八百万円中から、五千五百八十二万町千円を補正減少いたしまして、減税捻出に充ておりますが、時期が時期だけに、お職が問題となつたための補正減少ではないかとの疑いが起こりまして、それならこのような小さな額ではとても承知知ならぬという考えも起つて参るのであります。    〔委員長退席小峯委員長代理着席従つて、本案と汚職問題は切り離して考えることができません。それのみならず汚職問題は、総理もかつて認めておりました通り対外関係に重大なる影響がありまして、その粛正なしには外資の導入はもちろん、将来の日本の財政、経済の根本的問題を左右するような壷要なる素質を打つておりますので、この汚職問題を徹底的に究明することは今日探せられた必須の問題であると同時に、国民もまた何よりもこれを強く要望いたしております。元来いわゆる造船汚職は今にわかに起つた問題ではございません。昨年の七月に政府から利子補給法が提出されて、自由党、改進党、日本自由党三派合同修正案が出された当時からスキャンダルが包蔵されているといつて批判されて参りました。当時海運局から提出されました資料によりますと、三井船舶昭和二十五年に三億七十七百万円、同二十六年に十六億七千万円もうかつておる。山下汽船が二十五年に二億六百万円、二十六年に七隈円、飯野海運が二十五年に二億七千九百万円二十六年に十五億二千万円、三菱海運が二十五年に七千万円、=十六年が七億四千万円、二十七年二億円もうかつております。当時の山縣厚生大臣のやつておられました新日本汽船が、昭和二十五年に八千万円、二十六年に一億四千万円、二十七年に一億円もうかつておる。日本郵船昭和二十五年に千三百万円、二十六年に五億九千万円、大阪商船は二十五年、赤字三千五百万円でありましたものが二十六年に二億四千万円の利益を上げております。  こういう状態で非常にもうかつておりまして、あとで申し上げます通り自由党などには莫大な献金をいたしておりまして、こういうような状態であるにかかわらず、昭和二十五年にさかのぼつて利子補給とは何ごとであるか。山縣厚相のやつておられました新日本汽船のごときは四割の配当をしておる。しかも重役は相当の報酬をとつておる。それなのにかかわらずそのあとになつて払をしたから補給をせよといつたようなことはまにとにけしからぬことであるという非難がすでにされておるのであります。参議院では当時木村議員が強烈ににれを追究いたしておるのでおりますが、速記録によりますと、木村議員犬養法務大臣石井運輸大臣に対しスキャンダルがあることを強調して、かつ、このように言つておる。この問題は非常に利権運動的なことが目にあまるようになつて司令部から警告が発せられ、警視庁二課でにれを捜査したと言われておる。この捜査がたいへんだというので当時の運輸次官の秋山と改進党の一松定吉氏の女婿の今の運輸省官房長壷井玄剛氏が一松氏を通じてもみ消し運動行つたということが買われておるとまで指摘いたしまして、大いにその責任を追究したのでおりますが、にれに対しまして犬養法務大臣石井運輸大臣もそのスキャンダルは絶対にないと否定し、いささかもその責任を感じられなかつたのでおります。しかし壷井官房長は今日逮捕せられておる。それ以後事件がだんだん拡大いたしきて、今日の状態におりますことは御承知通りであります。すなわち木村氏の追求は事実となつてここに現われておる。政府答弁がいかに無責任であつたかということを如実にここに示しておるのであります。従つて、今日犬養法務大臣は出ておられませんけれども、どなたかかわつて——これは副総理けつこうでございますが、さらに石井運輸大臣のごとき、こうなりましてもなお責任をいささかもお感じにならないのであるか、過去において当時すでにこれにはスキャンダルがあるといつて追、究されておるにかかわらず、一切それはないと言つて押し切つて今日に至つている。今やそれらの人々がぐんぐんと逮捕されている実情にあることを見ても、なおいささかも責任を感じないのであるか、政府の御所見を承りたいと考えます。
  4. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 お答えをいたします。いわゆる造船汚職問題につきましてはいろいろなうわさが飛んでおりまするがこの場合政府といたしましては検察権威と申しますか、独立と申しますか、それを尊重いたしまして、十分に実態の究明せられることを待つておる段階でございまして、今申されましたようなことで、軽率にどの大臣も進退を決すべきではない、かように考えております。
  5. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 石井運輸大臣に伺います。
  6. 石井光次郎

    石井国務大臣 お答えいたします。参議院木村さんからそういうふうなお話のあつたことを私もよく承知いたしております。数日前において木村さんに参議院でその問題を取上げてお話したことがあります。あれほど注意があつて、私どももこういうことで問題を起してならないという心持のもとに、これならば考え得る一番いい方法だろうと思うて私ども計画造船をいろいろやつて来たのであるが、こういうふうな問題が起つたのははなはだ遺憾なことであるというふうなことを申し上げたのでございます。ただいまのお話の、二十五、六年ごろのいわゆる海運界好況時代におきましてはそういうふうなたくさんの利益が上り、それを自己資本の方にまわす、いわゆる資本の蓄積の方にまわすということに対しましても私は相当努力したのも事実でございます。これはその方の数字をごらんくださればわかると思いまするが、配当をいたしまして、配当よりも多い増資を計画いたして、みなといつていいくらいだと思いますが——はつきり私存じませんが、おもなところ、大きいところはみな増資をやりまして、今日では相当な、名前の上の資本はどつさりできるような状態にまでなつておるのでございまして、ただむやみに濫費したということでは私はないと考えておるのでございます。私といたしましては、こういうふうな海運界の、また造船界実情に照しまして、どうしても日本海運国策の立場からいたしまして、船を増すことは何としてもやらなければならないということを痛感いたしまして、その線に沿いまして一層問題の起らないような明るいガラス張りの中でやつて来たつもりでありますが、さらにもつといい方法がありますれば、その方法をとつて造船計画等をやりたいと思いまして、目下各方面の方々の意見をいろいろ徴しておる次第でございます。
  7. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 関係閣僚は、外航船建造資金利子補給をさかのぼつて増加し、並びに損失補償をすることになつたのは、三派合同による修正案に基くものであつてその責任がないという、またスキヤンダルには何ら関係ないと逃げておられますが、しかし簡単にさようには申されないと思います。いかに議院の修正によるものであつても、大蔵運輸大臣の了解なしにできることではございませず事実その法案通過の前後をよく検討いたしまするならば、互いに深い関係のあつたことがよくわかります。今議員連盟業者の動き、政党への献金並び法案審議の状況を年月日順にまとめてみますると、次のようになつております。すなわち昭和二十四年の非に海運造船議員連盟が結成されて、郵船ビル五階に事務所を置いて、星島氏が理事長になつて活躍を始めた。以来理事会を開くこと数十回、業者からは日本船主協会日本造船工業会幹部が必ずこれらの理事会に顔を出しております。昭和二十七年八月に衆議院が解散になりまするや十月一日の選挙の前、九月から十月にかけて選挙の最中に、自由党へは九月の五日に造船工業会から一千万円を献金し、九月の八日に船主協会より五百万円を献金する等、二十七年中に合計一千九百五十万円を献金いたしました。次いで改進党へは九月の三日に造船工業会から百万円、九月の六日から二十六日までに日本郵船大阪商船、三井造船、三菱海運山下汽船川崎日産等から各五十万円、合計三百五十万円を献金いたしております。昭和二十七年の十一月の二十八日、二十七年の十月選挙の後に東京ステーションホテル海運議員連盟役員会を開いて昼食会を催しておる〇十二月の十九日に総理大臣官邸連盟臨時総会を開いて、造船利子補給並びに損失補償制度確立に関する決議をいたしておる。第十五国会においては最初の利子補給法が提出されて可決した。このときに損失補償大蔵省反対にあつて取上らげれておりません。二月の六日に連盟理事会を開いて船主協会理事山下汽船社長横田愛三郎運輸省岡田海運局長から、損失補償制度市銀から強い要望があるが、大蔵省反対空気が強いからどうか援助してほしいという要望をいたしておる。そうして連盟では議員立法で提出しようという申合せをしておる。二月の十一日に星畠理事長等石井運輸小笠原大蔵の両相にその旨を要望いたしておる。二十八年になつて三月解散になり、四月に選挙となりまするや、自由党に対して三月の二十五日造船工業会から五百万円四月の六日に三百万円、四月の十七月に二百万円を献金し改進党に三月の二十日に船主協会から三百万円、三月の二十五日に造船工業会から三百万円を献金した。選挙終了後ただいま申し上げましたところの運動がますます活発になつておるのであります。しこうして五月以降、先日私の出しました資料、いわゆる赤坂の中川等にけおるところの豪遊がいかに頻繁に行われたことであるか、これは別途いわゆるメモとして発表いたしておいた通りであります。これとこの間の運動を織りまぜて、そうしてこれらの役員活動状態を織りまぜて考えてみまするならば、これらの人々がどのように動いておるかということを十分に御了承願うことができると思います。五月の十九日に工業倶楽部船主協会第六回総会が開かれて、星島連盟理事長海運造船界要望達成に全力を尽す旨の祝辞を述べた。同月の二十二日に海運造船議員連盟の四十一回理事会を開いてその席において船主協会瀞辺副会長岡田海運局長出席して連盟に援助を求めている。六月の一日に工業倶楽部において運輸省自由党業界懇談会が開かれて運輸省から石井運輸大臣西村牛島次官岡田海運局長甘利船舶局長自由党からは池田政調会長松野、小金、水田、山本の副会長出席し、業界からは淺尾船主協会長、横田山下汽船社長伊藤大阪商船社長芳賀日産汽船社長等の各理事出席しまた丹羽造船工業会会長、これは三菱造船社長、土光副会長、これは石川島重工の社長渡邉専務理事等出席している。さらに六月八日に連盟役員協議会を開いて星島理事長岡田五郎有田喜一河本敏夫等が集まつて、二十八印度予算編成にあたつて大幅に利子補給損失補償鋼材価引下げ減税などについての対策の申合せをいたしておる。翌六月の九日に工業倶楽部において船主協会造船工業会の代表が改進党三浦政調会長芦田最高顧問等をまじえて懇談をし、六月の二十九日両団体は新丸ビルのポールスターで、星島理事長等幹部二十名を招いて午餐をともにし、懇談会を開催した。七月七日に連盟の四十五回理事会を開いて、この席において改進党の海運造船政策が発表せられて、有田喜一氏がこれを説明いたしておりますが、連盟もこの案に賛成をいたし、政府より利子補給法改正法律案を提出することになり、同日この法律案が提案されているのであります。しこうして七月の二十三日までは何もいたしませず放任しておいて、自由学、改進党、日本自由党三派共同の修正案が七月の二十三日に提案され、わずか二十四日、二十五日審議しただけで二十七日討論採決をやつてそのままこれを押し切つておる。   〔小峯委員長代理退席委員長着席〕 社会党の反対を押し切つてこれを通しておるのであります。八月の三日に参議院を通過して十五日公布になつた。これらの関係を十分ごらんいただきましたならば、いかに議員連盟業者のつながりが深いことであつたか、業者よりの献金法案審議との関係がいかようなものであつたかは明瞭であると同時に、今回の汚職とも切つても切れない深い関係にあることが十分理解されると思います。しかもこの間石井運輸大臣中川の宴会にも出ておる。所管大臣として驕奢な饗応を受けるがごときことはもつてのほかであります。これだけでも汚職嫌疑は十分である。運輸大臣責任を問いますと同時にさような事態であるのに法務大臣は何がゆえにこれらのこうした関係を一切放任したのであろうか。すなわち先ほど来申上げておりまするこの議員連盟が出発して以来の各行動献金並び中川におけるところのあの豪遊状態等をつなぎ合せただけでも、相当にこれは調査しなければならぬのに、放任をいたしておるということは何事であろうか。この点については副総理並び運輸大臣答弁と、ほかに刑事局長の御所見を承つておきたいと考えます。
  8. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 今お述べになりました種々の会合は、きわめて詳しいことを拝聴いたしましたが、その内容を私は存じておりません。それに関連してすぐ汚職呼ばわりをすることはいかがであろうかと考えます。
  9. 石井光次郎

    石井国務大臣 中川に呼ばれたということでたいへんな問題のようにおつしやいましたが、私は友だちから一夕飯を食いたいということで呼ばれて行つて、そうして何人かの人と飯を食うということは、私は交際上今でもそう悪いこととは思うていないのであります。そこで何か陰謀でもたくらめば別でありますが、そういうことは何もないのであります。佐竹さんでも友だちから誘われて飯を食うこともあり得るだろうと思います。私はそのように思うております。またそのときに変なことはもちろんなかつたということをこの際はつきり申し上げておきます。
  10. 井本薹吉

    井本政府委員 お答えいたします。飲食したり、遊興したりすることが一般社交上の儀礼程度を越えまして、特に度をはずれた意味の遊興であつて、それがいわゆる問題に関係しておるということになりますれば、これは刑法の涜職罪嫌疑が生じますが、社交上の儀礼程度であれば問題に相なりません。現在ではまたその点について涜職というようなことは考えておりません。もし社交上の儀礼程度を越えて涜職の容疑があれば、これは私どもといたしましては捜査することにやぶさかではございません。
  11. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 石井運輸大臣は普通のおつき合いであるとおつしやつておりますが、私の先ほど申し上げたことは、前後の関係を総合してこれを考えるのに、単なる義礼的なおつき合いというのではなく、具体的な事実の上に立つて相互関係をにらみ合せて考えるときに、さように言わざるを得ないというのであつて、これを社会的儀礼であるというだけで葬り去ろうとするがごときは、とうてい国民がこれを許さぬと思います。今や国民検察陣の公明なる追究に何よりも信頼をいたしましてその腐敗分子の一掃に強い期待をかけておるとともに、国会におけるところの真相究明にも深い関心を持つておることは申し上げるまでもありません。しかるに政府並びに与党は、ややともするとその摘発をかばい、その遂行を妨げ、ときにはもみ消し運動まで行われているやの疑いがあります。まだ検察陣に対しいわゆる政治的圧力を加えようとしておるではないかと見られる節のあることはまことに遺憾であります。今その二、三の例をあげて申し上げてみますならば、すでに要路の大官ないしは議員が、各汚職事件もみ消し運動を行い、新たな汚職事案となつて別途に事件となつて現われていることは御承知通りであります。第二に、さきに行政監察委員会において池田勇人君を証人に喚問しようとするや、多数をもつて阻止いたしました。第三に、過般決算委員会において森脇証言が行われた翌日に、副総理は大磯においでになつて協議なさつたようでありますが、その翌百の各委員会はどうであつたか。われわれは法務委員会において法務大臣出席を求めて、しこうして私ども資料に基いて質問をしようといたしますや、こういつたような問題については一切これを言わせないといつて、遂に流会にしてしまつたではないか。従つてどももやむなく用意いたしました資料代議士会において発表いたしたのでありますが、それがいわゆる佐竹メモとなつて公表された。次に第四に有田二郎氏の逮捕許諾請求に難しては、許されない期限を付して、もつて捜査を困難ならしめておる。第五には、さらに最近いわゆる大物に対する捜査はあらゆる手が伸びて、検察陣に対しましても幾多の政治的圧力が加えられておるではないかと言われておるのであります。私はかような事態ははなはだ遺憾であると思う。少くとも検察陣に対しては有形無形を問わず、断じてかようなことがあつてはならない。従つてかようなことは絶対にないということを天下に十分周知せしむると同時に、検察陣健在であることを、しこうして国民をして信頼せしむるだけのことを十分ここに明らかにする必要があると考えます。私が以上申し上げた四つ、五つの根拠に基く私どもの見解に対する政府当局の御所見を承つておきたいと考えます。
  12. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 ただいまの御発言はきわめて重大なことだと考えます。何か別に確たる根拠もなく、政府あるいは与党検察に対して圧迫を加え、その独立あるいは権威を害するがごとき行動があつたように示唆されますけれども、絶対にそういうことはございません。それは検察権威のためにはつきりここで申し上げておきます。なおそういうふうな言動は、国会議員としてはお互いに自重して恨みたいと考えます。   〔発言する者多し〕
  13. 倉石忠雄

    倉石委員長 静粛に願います。
  14. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 私はここに一つの事実を指摘せねばなりません。それは何か。いわゆる政界大物につながる事件が、ややともすると南頭蛇尾に終るのではないかとの世間の危惧がやはり脳裏から離れないことである。たとえばその一例をあげるならば、参議院議員西郷吉之助さんが受取つた五百万円の金の行き先がはなはだ不可解である。その取調べが、何と申しますかいつ消えたともなしに消えるかのごとき形をなしておる。また関東電気工事所敬之氏に対する被疑事件の金二百万円の提供先が一体どう突きとめられたであろう。その西郷参議院議員や、関東電気工事社長大金提供先といわれる某大物は、最近検察官より某所で取調べられた事実が明らかであります。ある報道機関がこれを調査いたしましたが、その報道によれば、その取調べたという当日、その取調べたという検察官取調べ箇所よりずつと隔たつた箇所に自動車を置いていてそこで乗るので、これを追つかけた、ところが遂に見失つた、だがしかし別働隊が調べられた大物と調べた検察官のお宅へ張り込んでいたが、遂に同日お二人とも帰らなかつたと報ぜられている。その政界大物西郷参議院議員も折々その行方をくらまされる。しこうして別に逮捕もされませんで、一体住所をくらましておる間に何をせられておつたのか。むしろ検察当局といたしましても、こういつたような問題を調査するには断固として逮捕状を出し、断固としてしかるべき方法によつてこれを調べたらいいではないか、かように私どもは思うのであります。所敬之氏に対する処分についても、去る十四日日曜日にもかかわりませず、検察当局におきましてはたいへんに御精励をなさつておる。あるいは拘置所あるいは最高検の間に往復をいたしましてしきり重大なる協議が重ねられておりますが、遂に釈放されておる。世人をして何らかの疑いをさしはさまざるを得ない空気がこの間に起きておると思わざるを得ないのでありまして、保全会でも、砂糖でも、やみドルでも、みんなせんじ詰めるとこの某大物に線がつながつているが、どういうわけかその大物は巧みにのがれております。何がゆえにこれに断を下さないのでありますか、私はこれを聞きたい。
  15. 倉石忠雄

    倉石委員長 佐竹君、どなたに答弁を要求されておられますか。
  16. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 先などの質問に続いて何の根拠もなしにとおつしやるから、私はここに多少の根拠をあげて今申し上げたのであります。
  17. 倉石忠雄

    倉石委員長 副総理答弁のしようがないのじやないですかな。   〔「しようのあるやつが出席してな   いじやないか」と呼ぶ者あり〕
  18. 倉石忠雄

    倉石委員長 副総理答弁のしかたがありますかということをお尋ねしておるのです。
  19. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 副総理が答えられなければ刑事局長けつこうです。
  20. 井本薹吉

    井本政府委員 お答えいたします。御承知通り刑事事件は人権に関して重要な影響を及ぼすものでありまして、慎重の上にも慎重を期さなければなりません。ことに国会議員であられる方におきましては、国政審議関係もございますので、一段とこの点について慎重審議しなければならないのでございます。お尋ねの西郷さんの関係は、現在その関係西郷隆秀氏を検挙いたしまして、その事案のいきさつについて取調べを継続しております。(「十日もほうつておいたではないか」と呼ぶ者あり)取調べが簡単に参りますれは五日でも十日でも調べができるのでありますが、最近いろいろな事情で調べが非常に困難でございます。従つて法定の期間の十日以内に、あるいは延長して三十日以内に調べができないで処分保留のまま釈放するということもたびたびございます。しかしながら検察当局といたしましては、悪いものはあくまでも悪いので徹底的に調べまして、最後まで調べを続けるつもりでございます。決して途中で調べを投げるというようなことはございません。また先ほどお話があつたような政治的圧力があつたということは、私の知る限り断じてございません。この点ははつきり申し上げておきます。
  21. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 法務大臣がお見えになつておりませんので、以下主として法務大臣にお尋ねいたしたいと考えておりますことが直接お啓えを得られませんので、本人自身から答えなければけないということについては刑事局長よりお告げを願つて、適当な機会に御答弁をいただきたい。しこうして副総理といたしましても、やはり内閣の責任に関することについてはぜひお答えをいただきたいと思います。法務大臣は過般この委員会で発言いたしまして、私の出しました資料中の、一月十三日、山干汽船会長山下太郎氏と料亭中川での会合の事実をお認めになつた。その翌十五日に横田社長逮捕せられたことについて、法務大臣がもみ消しのために打合せたのではないかという疑問についての古屋委員質問に答えて、かように述べております。私は神様ではありませんから数日後に何が起るか存じません、あなたはわかりますかと等えられておりますが、私どもの疑問というのは、十三日の会合の後に横田氏が逮捕せられたということよりも、その前からの関係について重大なる疑惑があるという点であります。すなわち山下汽船に対しては昨年の春からすでに手入れが行われている。一月七日には吉田専務が確かに逮捕せられたと記憶いたしております。しかるにその後一月十日に法務大臣が山下太郎氏と会い、さらに一月十三日に中川において会合をいたしておる。法務大臣は古屋君に答えて言うのに横田社長逮捕せられるということはお互いの頭にないことは明らかであつて、新聞の日をごらんになればよくわかると反撃をいたしております。しかしわれわれの疑いは横田社長だけのことではございません。山下汽船全体のことであつて山下汽船が前から捜査線上に浮び上つて、すでに吉田専務が逮捕せられておるのであります。その次に来るものは横田社長ではなかろうかという危慎を感ずるのは当然である。従つてこの間もみ消しが行われそうな状況にあつたことも当然であると思う、このときに、その社長の身辺を気づかうところの山下会長法務大臣と待合で会見するというがごときことは、それ事態容易ならぬことではないかと言うのであります。かりにもみ消しの相談を受けなかつたといたしましても、検察庁に対する指揮権を持つております法務大臣が、会社の専務を検挙しておいて社長と会うということだけでも、これは容易ならぬことではないかと言うのであります。おまわりさんが亭主をひつぱつておいて今度は家内とどこか飲食店で飲食してごらんなさい、そのおわまりさんは首でしよう。検事やあるいは警察官などが取調べ中の被疑者の親戚と料亭あるいは待合で会合などいたしましたならば、それだけでこれは首になりましよう。大臣だからと言うて許されるべきではございません。かようなことがはたして許されると思うのか。私はこの点副総理に承つておきたいと考えます。
  22. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 私はこのことについて犬養法務大臣と一度も話したこともございませんし、法務大臣は非常に交際の広い人でありますので、どういうことでそういうことをされたか、私は責任を待つてお答えすることはできません。
  23. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 三月五日の毎日新聞の「ぎごく横丁」という欄に、日活会館における状況が書かれておる。「社長大臣“顔合せ”の場、お値段は張つても出入口が多く諸事“打合せ”に好都合」の題で、有田二郎君のこのホテル利用のことを書いた後に、こう書いてある。「その二、三日前、妙なことがあつた。このホテルの九階九五二号室——この部屋は応接室のついた二間つづきで一泊八千円——に、I海運のM社長が秘書らしい男を連れて泊つていた。それだけならなんの変哲もない、当然なことでさえあるのだが、隣り合せた九五一号室——九五二号室とほぼ同じ仕掛けだが、わずかに調度がよくおホリの白鳥がのぞめる場所にあつて、スワン・ルームといいならされている〇一泊九千円——に、この事件には重要なポストをしめている某大臣が、若くて美しい婦人を伴つて、すべり込んだというのである。」この人はだれかと聞いたら、そこに使われておる使用人が、それは法務大臣犬養さんであると明言しておる。もし本日ここにおいでになるならばはつきり聞こうと思つたが、おいでにならないのでお伝え願つておきたい。このI会社のM社長とは、言わずもがな、飯野海運の俣野社長であることは明瞭であります。四、五日後に調べてみたらその通りであります。この俣野氏はすでに二十日前に家名捜査を受けておる。家宅捜索を受けて、今度は参考人としてその当時しばしば取調べを受けておる。参考人ではあるが、裏を返せばすぐ被疑者になる状態にある関係人として、すでにその身辺が洗われておるという人物である。その俣野氏と、逮捕せられる少し前に、隣合せの二つの部属で二人がとまつておる。特に時を同じうして席を並べて同一ホテルにとまり込むというのは、それ自体これは何かこの事件関係について御相談でもなさつていたのではなかろうかという嫌疑を受けるに十分である。これはおそらく、本日ここに法務大臣がおつたならば、それは偶然であるとまたおつしやるかもしれません。中川で会つたのも偶然である、日活国際会館で会つたのも偶然であるとおつしやるかもしれません。しこうして私が、この間法務委員会でどうぞ大臣出てくれと言つたら、偶然に腹下しをやつたと言うてお出にならない。昨日から今日出て来いと言つたら偶然に足をねじらかしたからとて出て来ない。会わなくてもいい人に会うときには偶然に会つて、どうしても出て来なければならないときには偶然のできごとで出て来られない。(「ヒヤヒヤ」笑声)これはじようだんじやありませんよ。これだけの記事が白昼はつきり公然と書かれておつて、これだけ言われておるのに、じようだんなどとおつしやることは、よほど顔の皮が厚い、ほんとうの人間であつたならばこの事実はなければないと否定なされなければならない。もしこれが事実でないとするならば、はつきりないことを天下に声明すべきもので、もしあつたといたしますならば、この嫌疑をいかにするか、こんなことがあつても一向平気だ、やつてけつこうだと副総理はお考えでしようか、副総理の御所見を承つておきたい。
  24. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 法務大臣に直接御質問をお願いいたします。私からお答えできません。   〔発言する者あり〕
  25. 倉石忠雄

    倉石委員長 静粛に願います。
  26. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 私は翻つて承りたいのでありますが、法務大臣は一月の十二日、中川で山下会長と会合したことについて弁解して、あの日は八時ごろ、ある流儀の踊りの切符を友人に頼まれて、なかなか手に入らぬので中川のおかみに頼みに行つた。そうして赤坂の名物になつておるまんじゆうを私の妻が客に使いたいと言うので、これも頼みに参りました。いずれとりに来るからよこしてくださいと言つているときに、偶然に山下太郎とそこで会つた、こう言います。そうしてお茶は飲まずに冷たいものを飲んで帰つたとおつしやつております。ところが少くとも私の調査によれば、当日芸妓数人と冷たいものでなくて熱いおみきを相当にお召し上りになつて、その日の宴会費は数万円に及んでおると承知をいたしておる。どういうところにだれという人がすわつて、どういう応待をしたかまで、私はもにはわかつておるのであります。こういつたような弁解で国会が通るものであるならば、これでは国会はうそをついて事の済むところだという焼判を押されたことになつて、これほど国会を侮辱するものはないと考えます。この点については、法務大臣がおいでになりませんから、副総理にお尋ね申し上げましても無理でありましよう。  次いで、それのみではございません、浦賀ドッグの多賀さんとはずいぶんたびたびお飲みになつておる。放蕩息子が芸者買いに行つている時分なら、これはたびたびおいでになるかわかりませんが、いやしくも法務大臣として多忙の朝夕をお過しになつております方が、何の用もなしに芸者の顔だけ見たさに行かれるわけはない。必ずそういうときは何か用がある。そうして一番よけいに会うておるのは多賀さんなんです〇五回ほどもつておられる。何か今度の造船関係につながりがあるではなかろうかと、こういう疑いを持つのは当然のことであつて刑事局長はこういうようなことは一応お調べになつてしかるべきだと思う。さらに「日本週報」の三月五日号に、「自爆しなかつた爆弾男」と題して山縣明夫の署名で河野代議士のことが書いてあります。「河野一郎が用意した爆弾質問は、次のようなものであつたといわれる。現閣僚岡崎外相の長男、犬養法相の長女にまつわるやみドル事件が第一。特に犬養については、その長女道子は渡米、尼となつているが、これが最近ローマ法皇から尼僧という高い地位をもらつた。しかしこれは実はドルを多数献納して、むしろこの地位を買つたものである。このやみドルはどこからどうして犬養の娘に渡つたのか。霊友会会長小谷喜美が四谷教会とやみドルの取引をしている。この教会には日ごろ犬養も出入りしているが、ここから出た嫌疑が濃厚だというのである。また岡崎外相の長男についても、岡崎の地位利用がはつきりしている。こういう事実をどうするのか云々」と明記いたしております。さらに「真相」という雑誌に至りましては、これは実にもつともつと詳しくひどいこと書いてある。私はあえてこれは引用はいたしません。このような事実がもしありといたしまするならば、これはたいへんであります。ないとするならば、大臣、ことにこういうことを取締るべき法務大臣の名誉にかけて、この嫌疑は払拭しなければなりません。ほうつておいてしかるべきものではございません。何がゆえに一体こう言つたことをそのままにし、弁解なさらないでほうつておくのか。またこういう事実がありといたしますならば、あるかないかくらいは、このことについてたとい大臣といえども検察当局はこれを取調べるべきものであると思う。この点について刑事局長は何かお調べになつたことでもございますか、また部内におけるところの調査状態等についてもただされたことがありますか、刑事局長からこれを承つておきたいと存じます。
  27. 井本薹吉

    井本政府委員 お答えいたします。「真相」につきましては私もその記事を読んだのでございますが、あまりにばかばかしいので、一応はよく書いてはございますけれども、全然これは調べておりません。「週報」につきましては、ただいまお読み上げになりましたので、もう一度ゆつくり読んで私も検討いたしたいと思いますが、現在ではまだ調べておりません。
  28. 倉石忠雄

    倉石委員長 佐竹君、お持ちの時間がもう過ぎておりますが……。
  29. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 それではごく簡単に。あまりにばかばかしいとおつしやいますけれども、この海運汚職の問題でも、昨年木村君が聞いた時分には、ばかばかしいと言つてせせら笑つて取上げなかつたじやないか。どうです。今まじめになつて検察当局がやつているし、国民検察陣に向つて一切の信頼を払つているじやないか。ばかばかしいなどとは、これは調べた後に言うべきことであつて、先入主をもつて言うべきことではございません。私はいろいろな面からこれを考えてみて、法務大臣に対するところの世の疑惑は、いろいろとすでにかようにあげられておるのであります。私が先ほど申し上げまする中川におけるところの饗応だけについて考えてみても、これだけでもほうつておかれることではないと考えます。もしも私ども選挙をやるといたします。一合の酒、一冊のさかなを響応いたしましても、また饗応を受けても、ただちに逮捕され勾留される。今中川の饗応についてこれを見るならば、最低芸者五、六人から多きは四十幾人、何の用もなしにやつておるのではございません。そうしてその経費だけでも、一晩五、六万円から、多きは五十万円になつております。中川の収入が月収七、八百万円から千万円と言われ、その七、八十パーセントがこの船会社関係といわれております。このような豪遊、しかもこの豪遊と今回検挙せられつつあるあらゆる汚職、ことに逮捕せられておる人物の多くが豪遊の場に顔を出しまして、その豪遊の人物と検挙せられている関係人相互に、造船をめぐる共同目的があつたことを想像するにかたくないのであります。この中川豪遊の場に法務大臣が、あるいは造船会社の社長と、あるいは船会社の社長と、しばしば遊興をほしいままにしたというだけで、法務大臣はすでに取調べを受くべき立場にあるといつてさしつかえないと私は思う。少くとも参考人として取調べを受くべき人物であるといわなければならぬ。この調べらるべき人物が調べをなすべき検察庁の総指指揮ということでは取調べようにもできないことでありましよう。かような場合はむしろすみやかにその地位の交代を願いまして、公明正大に明朗に取調べのできるような方途を講ずることこそ検察陣の信用を保持し、国民をして安んじて信頼せしむる道であると思うのでありますが、緒方総理の御所見はいかがでございましよう。
  30. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 もし検察庁として犯罪の捜査上ぜひとも法務大臣に対し取調べる必要があれば、取調べもいたすと思います。今御指摘になりましたことは私直接存じておりませんので、責任あるお答えはいたしかねます。
  31. 倉石忠雄

    倉石委員長 ただいま川崎秀二君より議事進行の発言を求められております。これを許します。
  32. 川崎秀二

    川崎委員 先ほど来佐竹委員より造船疑獄の問題、あるいはその他のいろいろな問題に関連して、犬養法務大臣の動きについて種々言及されたのでありますが、その中には犬養法務大臣がこの委員会出席しておらなければ、どうしても奥州がわからない車夫な問題も含んでおります。犬養法務大臣はたいへん夜の仕事の忙しい人ですから、先ほど来笑い声をもつて委員は対処しておる。しかし笑い声というものはつまりその人の性格を知つておるから笑つておるだけであつて、そのことは法務大臣としては許すべからざることであると私は思つておるのであります。法務大臣の今日の欠席は、足の捻挫によつて、病状診断も出ておりますから、手続の上においては何らあやまちがないから私どもは今日法務大臣なしに佐竹委員の質疑を続行していただいたのであります。しかるに質疑の中にはきわめて重大な、かつその人個人と今日の造船問題についてのきわめて深い疑惑も投げられたのでありますから、委員会としては当然法務大臣出席をすみやかに求めなければならぬ。私は今日ただいまここへ連れて来いという意味の議事進行を求めるのではありませんが、委員会がこの案を採決するまでには当然何らかの方法において、法務大臣の見解というものを明らかにしてもらわなければ、私はこの採決に入ることはできないと思うのであります。従つて委員長はすみやかなる機会に法務大臣出席を求めて、そうして再び佐竹委員自身の口からするところの質疑応答を続けてもらうようにおとりはからいを願いたい、このことを要求いたしておきます。
  33. 倉石忠雄

    倉石委員長 川崎君にお答えいたしますが、川崎君も御承知のように犬養法務大臣は主治医から坐骨神経痛で向う七日間静養を要するという診断書が、三月十七日付で参つておるのでありまして、従つて佐竹さんは御質疑に入りますときに、御病気であるのであるから井本刑事局長佐竹君の御質疑を書き取つて、御本人にこれを伝えて、適当な場所で答えよという御要求でありましたからそのように進めて参りましたが、ただいまのお話は後刻理事会で御相談いたしたいと存じます。  なお昨日留保されておりました横路節雄君の文部大臣に対する質疑を続行いたしたいと思います。
  34. 横路節雄

    ○横路委員 文部大臣にお尋ねいたしますが、今回の第三次補正予算でただいま提出されております義務教育費国庫負担金の増二十七億八千万円につきましては、その説明書にありますように東京、大阪、神奈川ということになつておるのであります。この点はわれわれも説明書で知つているわけでありますが、これを除いた他の府県につきましては、私どもが今までの各府県の実態からいろいろ考えてみますと、どうもこの三月の年度末には給与の不払い、遅延等が起ると思うのであります。この点は文部大臣も御承知だと思うのでありますが、これは何とかやり繰りをしなければならないのではないかと思うのですが、この点の実態について御存じかどうか、その点をお尋ねいたします。
  35. 大達茂雄

    ○大達国務大臣 この点は今文部省として調べておりまして、まだはつきりしたことはわかりません。非常な不足を生ずるというふうには私ども考えておりませんけれども、ある程度不足が生ずるということはあり得るのではないかと思います。
  36. 横路節雄

    ○横路委員 ただいま文部大臣はある程度の不足は生ずるのではないかというお話でございます。私どもそう思つておるのでありますが、大体文部大臣としては、それ、ではどの程度の金額の不足を生ずるとお考えになつていらつしやるのですか。大体でよろしゆうございますからお答え願います。
  37. 大達茂雄

    ○大達国務大臣 これはただいま申し上げますように、今調査をしておりますので、どの程度の金額ということは、実ははつきりはわかりません。しかしいろいろ話を聞きますと五千万円くらい足りないというところが多いのではないかというのですが、これも実は国会でそういうお話を聞くのでありまして、あるいはそういうことになるかもしれません。十億程度足なりくなるのではないかという話もあります。この点どうも私どもとしてははつきりした見込みは申し上げられないのであります。
  38. 横路節雄

    ○横路委員 ただいま文部大臣から五千万円程度足りなくなるかもしれない。十億程度足りなくなるかもしれないというお話であります。十億円と五千万円ではどうもはなはだしく差異があるわけですが、しかし文部大臣としては今一生懸命教育二法案について文部委員会でやつておるわけで、これはそれぞれ文部委員の方がおやりになつております。ここで私がお尋ねしたいのは、五千万円にしても、あるいはまた文部大臣がお考えになつておるように、かりに十億、どちらにいたしましても、明らかになつた場合には来年度までほつておくというわけには参りませんので、その点はどうなさいますか。
  39. 大達茂雄

    ○大達国務大臣 ちよつと今言葉が足りなかつたのですが、五千万円というのは一府県平均五千万円くらいではないかということで、私どもはそんなにはなかろうと思いますが、これはわかりません。これは御承知通り決算補助でありまして、従来年度の進行中におきましては月々概算払いをして参つておるのであります。従つて実支出額の二分の一という法律の規定からいたしましても、当然決算額が明瞭になつて初めてその負担額もきまる、こういうことであります。二十八年の総体の決算は出納閉鎖期間を待つて確定する。従つて、それに対して過不足を生ずる場合には、決算のきまつたところでそれが精算されるわけであります。不足額を生ずれば、法律の建前によつて当然二分の一に相当する金額を負担しなければならない、この点は法律の規定でありますから動かないと思います。
  40. 横路節雄

    ○横路委員 今文部大臣から、五千万円というのは一府県当りだ、こういうお話でございますから、もしも五千万円ということになりますと、大体二十億円の赤字ということになるので、文部大臣お話からは十億円ないし二十億円の義務教育費国庫負担金が足りない、従つて最低十億円足りないということは明らかでございます。そして義務教育費国庫負担法の建前で、実際の支出の二分の一を決算によつてやるんだ、こういうお話であります。そこで私は大蔵大臣にお尋ねしますが、ただいま参議院の予算委員会審議中の予算案の義務教育費国庫負担金の給与費六百八十億円、教材費を入れまして七百億円にわたるこれは、今文部大臣からお話の、この三月末には十億円の赤字が出るであろうということをまさかお見込みになつてお立てになつたものと私は思わないのであります。この点十億円の赤字が出て、義務教育費国庫負担法の建前によつて当然組むということになれば、第二次補正予算が必要になるわけですから、大蔵大臣は第二次補正で十億をお出しになるか、その点を明らかにしていただきたいと思います。
  41. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 大体私どもは二十八年度はそう大きな過不足はないと考えておりますが、しかし文部大臣の方で今調べておられまして、かりに不足が出るといたしましても、これは二十八年度の決算がきまらないと出て参りません。従いまして、予算措置をとるのは三十年度でいいわけでありまして、二十九年度ではそういう措置をとつておりません。これはよくおわかりくださると思います。
  42. 横路節雄

    ○横路委員 なるほどそれは二十八年度の決算で三十年度にやるいうことについては一応お話はわかりますが、現実に三月の末に至つて十億円足りなければ、十億円だけ俸給の不払いが起きて来るわけであります。この点についての措置はどうなさいますか。
  43. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 その分については、三十九年度の予算の国庫負担の分の配分を調整することによつてやり得ると思います。
  44. 横路節雄

    ○横路委員 今のお話では二十九年度の国庫負担金の配分によつてやれるというのですが、実際は三月の二十一日には俸給を払わなければならない。現に三月末に赤になるということは、三月二十一日の俸給日には十億円足りないということなんです。今かりに一番うまく行つても三月三十一日でなければ参議院の予算が通過しないのに、どうして二十九年度の国庫負担金が配分されたものの中で、この三月二十一日に全国で十億円足りないものが払えるのでございましようか。
  45. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 これは、手続は従来やつておるようであります。こまかいことは主計局長から……。
  46. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 義務教育費国庫負担は、これは先ほどから大臣からもいろいろお話がございましたように、決算補助でございますので、決算が確定いたしました後に、その半額を正確に計算して補助するわけでございます。今まで払つておるのは概算払いでございまして、決算が確定しなければ、正確な数字は出て来ないわけであります。その間自然過不足はございましようが、これは地方団体が上がるべく金繰りをつけらるべき性質のものでありまして、要すれば預金部資金等の短期融資等も御相談がございますれば応ずるつもりであります。なお、これは決算額に対する補助の問題でございますが、来年度に参りましてそういう足りなかつたところに対しては、金繰りが苦しいところにある程度来年度の義務教育費国庫負担金を概算的にまわしておいてその金繰りを緩和する、そういう措置は二十九年度におきましては可能なわけでございまして、ただいま大蔵大臣からお話がございましたのはその点を申し上げたのであります。
  47. 横路節雄

    ○横路委員 主計局上長にお伺いしますが、そうすると要求があれば資金運用部資金等からつなぎ融資として出したい、こういうような御答弁ですが、この点につきましては定員と今年の一月一日からの給与単価の引上げで十億円の赤字になることは文部大臣はすでに御承知なんだ。そこで今のは、つなぎ融資でやるというのか、地方が適当にやるだろうというのか、大蔵省としたは、つなぎ融資でちやんとやるならやると、その点をひとつはつきりしていただきたい。
  48. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 年度末、牛皮初めにはいろいろ財政調整上の必要がございまして、短期資金の融通の要請もあるわけでございますが、これは義務教育費国庫負担金の問題だけには限りません、地方団体全般の資金繰りの問題でそういう需要がありまして、従来ともそういう需要には応じて来ているわけであります。そういう全般の資金繰りの問題につきましては、そういう財政調整資金の融資等の通も開かれておるということを申し上げたわけでございます。
  49. 横路節雄

    ○横路委員 大蔵大臣にお尋ねしますが、そうしますと、大蔵大臣が九千九百九十五億で組まれました一兆億円のわくの二十九年度予算というのは、もうすでに義務教育費国庫負担金が十億はみ出しておる。それはなるほど三十年度で見ればよい、毎月繰つて行けばよいのだというお話になりますが、そうするとこの七百億組まれました義務教育費国庫負担金はその十億だけふえる、これは結果的にはそういうことになりませんか。
  50. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 それは決してふえません。さつき申した通り二十八年度の分は三十年度の予算で見るの、だから、二十九年度には少しも関係ないので、何もふえません。またそういう意味で言うなら今度は繰越しになつたらそれだけ減るのかという議論になる。そういうことは一切関係ありません。
  51. 横路節雄

    ○横路委員 文部大臣にお尋ねしますが、今大蔵大臣からああいう御答弁でございますが、二十九年度の義務教育費国庫負担金というのは、十億円と予想されているものがまだ赤字であるとはつきりきまらないうちにきめたものです。実際に文部大臣が十億と算定されている基礎数字は、昨年の五月一日の現員現給をもとにして、それを年間に推計したところが、その後生徒の自然増等のための教員の定員を認められまして、現に教員の定員数はそのために小学校で約四千二四人ないし四千三百四十六人、中学校においても大体二千人程度の過少見積りになつているわけです。このために文部大臣の推定される大体十億の赤字が出るのであります。そうすると、二十九年度に組まれた義務教育費国庫負担金七百億のうちの給与費の大百八十六億という算定の基礎は、この定員の実態に即して私はくずれて来ると思うのです。そうではございませんでしようか。
  52. 大達茂雄

    ○大達国務大臣 初めに申し上げておきますが、私は十億の赤字が出る見込みであるということを言つたのではありません。調査をしておるから今はつきりした見込みの数字は申し上げられない、こういうふうに言つたのであります。それから、来年度におきましても当然赤字になるという御趣旨かと伺いましたが、自治庁において財政計画として考えておりますものは、来年度において百万人の児童が増助する、それに対応する教職員の定員の増を見ております。そしてこれによつてそれぞれの地方で教職員の人数なりあるいはその給与を決定するのでありますから、特に当然に赤字になるということは私どもとしては考えてない。ベース・アップの点も、それから百万人の児童が増加する点につきましても、従来の実績から算出して二万四千人程度の増員と見て、自治庁の方では財政計画を立てておるのであります。この数字は国庫負担の場合の数字と一致しておるのでります。われわれの方では、従来の実績——つまり実際の実員というものと、それからその比率によつて算定して児童数百万の増加に応じて当然増員せられるべきもの、それだけの実績の積上げをもつて予算を組んでおります。従つてこれは実際支出額に対する負担金でありますから、実際支出額の増減に伴つて動いて来るのは当然であります。これは今日すぐに欠陥が生ずるものである、こういうふうに思つておるわけではないのであります。
  53. 横路節雄

    ○横路委員 今の大体十億と推定されているものは、いいかげんな数字ではないのでありまして、これはいわゆる格付の実際の定員、一月一日以降におけるベース・アップの実際の差額等を計算して行つて、大体その数字が出るのであります。そこで、第三次補正の中で、東京・大阪、神奈川を除いた他の府県の義務教育費国庫負担金でも足りない分は、私ども社会党としては当然補正しなければならぬ、こういうように考えておりますので、この点の賜源につき、私は外務政務次官にお尋ねしたい。それは昭和二十七年度の決算検査報告の中にあるのでございます。外務省の方に、お答えをいただきたいと昨日お話してありますので、読んでおられると思いますが、三十五ページの第三総理府、調達庁関係経費の中に、「なお、連合国軍の調達要求に基き契約をし、平和条約の発効後においてアメリカ合衆国駐留軍および英連邦軍に提供した工事、役務、物品の代金等として終戦処理事業費から支出した二十一億九千七百余万円については、外務省を通じこれが求償方を相手国と折衝中である。」とここでは発表しているのであります。二十一億九千七百余万円でございますから非常に大きい金でございまして、この点についてはつきりここで御答弁願いたい、こう言つておるのであります。
  54. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 私から申し上げます。この立てかえ分の取立て請求の交渉経過は大体次の通りでございます。平和条約発効前に契約したもので需品の引渡しが条約発行前のものは日本側の負担、それから引渡しが条約発行後のものは米国側で負担する、こういうことについては日米相互に合意しておるところでございます。日本側としては、引渡しが条約発効後になるものにつきましては、アメリカ側の確認を日米合同委員会を通じて求めておるのでありますが、米国側の関係資料日本にあるものと米本国にあるものとがありまして、その後者、米本国にあるものについて、米国側が本国に間合せ中であつて、そのために遅れておるのでありますが、これはできるだけ急いで解決するようにしばしば要請をし、外務省でたびたび交渉をしておる次第でございます。
  55. 横路節雄

    ○横路委員 文部大臣は、向うの会議もおありでしようし、いろいろ委員質問もあるでしようけれども、この第三次補正の中で今お話のございました点は文部大臣も御承知のはずです。これはぜひ、主計局長からお話がありますように、つなぎ融資その他で各県の実際の俸給の遅延、不払いが起らないように、ひとつ文部大臣としても責任を持つてつていただきたい、この点だけをちよつと御答弁いただいて、なお大蔵大臣に対して重ねてお伺いたします。
  56. 大達茂雄

    ○大達国務大臣 これはただいまも申し上げるように、どれくらいの程度の赤字になるかわかりませんが、しかしこれは、先ほど主計局長から答弁されましたように、全体に通ずる県への配分の問題であろうと思います。私どもの方としては、でき得るだけ地方でこれがために不便を感ぜられるようなことのないように、その状況によりましては、二十九年度分の支出は当然四月以降でなければできませんから、二十九年度の四月分についてはできるだけ早く配分をしたい、仮払いをするようにしたい、こういうふうに考えております。そこでその赤字につきましては、その赤字の数によつて二十九年度における概算払いといいますか、その上に地方であまり一時に金繰り上苦しくならないような措置を講じて参りたい、こういうふうに考えております。
  57. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 先ほど申し上げましたのは、地方財政全般として年末年始にはいろいろ資金の需要があるわけであります。そこで従来も資金繰りで財政調整資金というような名のもとに、年末年始の地方団体の金繰りを円滑にするために、ある程度の短期金融をやつておつたわけでありますが、今後もしも赤字があるとすれば、これは仮定でありますが、そういうことがありますれば、当然そういう地方団体全般の資金状況に反映されるわけでありまして、そういう財政調整資金の問題を対象として考慮せられる道がある、さような趣旨でありますから、誤解のないようにお願いいたします。
  58. 横路節雄

    ○横路委員 大蔵大臣から御答弁がございましたこの終戦処理事業費から支出した二十一億九千七百余万円、これは当然向うに要求する権利はあるのでございますね。この点が一つ。それから外務省を通じて折衝中だというのですが、一体いつこれがどういうようになるのか、お見通しはどうなりますか。これは前に河野さんから対米債権四千七百万ドルと言われておる件とは性質が違うのです。この二十一億九千七百余万円については、明らかに当然に請求する権利もあるし、当然支払いを受けなければならないわけであります。この点について確たる見通しをひとつお話願いたい。
  59. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 この点は両方の合意でもって、つまり条約発効前のものは日本の負掛、条約発効後のものはアメリカの負担ということにはつきりとなつておりますので、この点ははつきりといたしております。この間河野さんが問題にしたようなものとは性質が全然違います。ただ先ほども申したように、交渉は今外務者へ頼んでおる次第でございますので、どなたがどういうふうに交渉されておるかという経過については、これは別に外務省の方からも御答弁を願わなければなりませんが、ただ私どもとしては、向うの書類を本国へ照会しておるから、その点がはつきりすれば、もう双方できちんと約束しものですから、あまり遠くないうちにはつきりするのじやないかと考えて、予算書にもはつきり書いておるわけであります。
  60. 横路節雄

    ○横路委員 政務次官、どうですか。今大蔵大臣から、これの折衝に外務省なんだから、外務省の方でどうなつておるかということですが……。
  61. 小滝彬

    ○小滝政府委員 実はこうした問題は大蔵省の鈴木財務官が取扱つておりまして、それが特に紛糾して来れば、外務省としてもつと正式に委員会にかけなければならぬ。しかし現在は鈴木財務官ができるだけ早く解決するようにせつかく努力しております。
  62. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 鈴木財務官は大蔵省の職員でございますが、実はこの問題は外務省にございます日米合同委員会の財政部会で取上げ、再三双方の折衝を重ねておるわけでございます。私どもの方が最終の要請をいたしましたのは昨年末でございまして、それに対する向うのお返事を待つておるところでございます。先ほど大臣からもお答えいたしましたように、日本内地にある資料でつき合せられるのは、これは大体つき合せが済んでおるわけでございますが、ワシントンに持ち帰つておる書類がございまして、その方とのつき合せを現在やつておる次第であります。間もなくその方のつき合せも済みまして、本件が解決することを確信いたしておる次第でございます。
  63. 横路節雄

    ○横路委員 なお大蔵大臣に国有財産の件についていろいろお尋ねしたい点もあるのですが、外務政務次官に一つだけお尋ねしたいのです。昭和二十七年度の国有財産総額及び現在額報告書の中の二百十四ページに、外務本省として外務省所管の一般会計所属の普通財産の中で、汽船を売却しているのじやないかと思いますが、これはどういうことになつておるのか、私ども値段があまりにとつぴようしもないので聞いてみるのですが、汽船一隻が三百四十六円五十六銭となつているわけです。汽船となつておりますので、これは鉄でつくつたものであることには間違いがないのでございまして、こういう点、これは突然こういう話をして政務次官としてはおわかりにならないかもしれませんが、私は国有財産の払下げに関してどうも了解できないのです。汽船が一隻三百四十六円五十六銭という——私はきのうちよつと低能船舶の点でお尋ねをしたのでございますが、この決算の検査報告時は数多く事例があるのであります。こういうふうに国全体の所有である国有財産がどんどん必要以上に低廉に売られ、もしもそういう中に何か特別な業者との契約等があればいろんな疑いを持つて見られるのでありまして、この点特に大蔵大臣としては、いわゆる管財その他地方の財務局等の関係もございますので、国有財産の払下げについて今後どういう方法でおやりになるのか、ひとつお尋ねしておきたいと思います。
  64. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 実は従来国有財産については相当慎重にやつておつたようでありますが、これは横路さん、御記憶かもしれませんが、昨年枚方の問題がありまして、あのときに大臣は決裁したと言う、私は決裁してないと言う、帰つてみたら何も決裁してない、大臣、了と書いてある。それでも行わなかつたのでありますが、そういうことがあつては相ならぬというので、爾来必ず省議にかけることにいたしまして、省議にかけて一々資料を出させた上で十分に省議を尽してやる、こういうことにいたしておりますほか、この問題については、大きいものは閣議にかける、閣議でいつも了解を得るということにいたしております。こういうふうにすることにしたということについて、すべて閥議で了解を得ることにいたしております。それで現在は相当綿密な調査をして、たとえば土地であれば付近の土地の値段その他等十分それらをとりまして、そしてこれを調べておりますから、国有財産の処理には、少くとも中央では私は全然遺憾のないことと思つております。しかし地方の中にはなお小さいものについていろいろあるやに聞いておるのであります。そこで地方財務局の方に特にこの関係を、世間でかれこれ言われることだからといつてやかましくいたしておるのであります。今これを扱つておる局長はきわめて清廉な人でありまして、この点万間違いはないということを私は確信いたしておりますが、今申し上げたように、手続としてはすべて省議を経なければやれない、こういう建前にしております。
  65. 横路節雄

    ○横路委員 私もぜひ大蔵大臣にそういう点についての監督は十分にしていただきたいと思うのであります。実は昭和二十五年度の決算の検査報告などを見ますと、近畿財務局、というよりは中国財務局で、八幡製鉄その他の製鉄会社に非常に多くのくず鉄を売つておるわけです。このくず鉄の総額は、会計検査院の見通しでは、総額について約三億二、三千万円は、過小に見積つても、低価に払下げをしておるということを言つておるのであります。特に昭和二十七年度の決算の検査報告を読んでみますと、非常に大事なことはいわゆる平和条約発効後におきまして旧陸軍省、海軍省、軍需省の所管における機械器具が払下げになつておるのであります。この昭和二十七年度の報告書の中でもすでにこの機械器具の払下げについては四千三百五十一万円だけ過小に払下げをされておる。会計検査院でやかましく言つて、ある場合においては一千万円よけいとつたとか、こういうのであります。昭和二十七年度の決算では元の陸軍省、海軍省、軍需省の払下げが非常に多いので、この点は一体時価でお売りになるのか、そのものがつくられたときの一番最初の値段でおやりになるのか、大蔵大臣、そういう根本方針はどうなつておりましようか。
  66. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 実は綿密な処理方針が立つておりまして、これは数ページにまたがるものになつておりますが、ちよつと長いものでありますから御参考にあとで差上げましよう。  私はそういうことについて何ら不正なことが行われていないと確信しておるのであります。しかしときどきそういううわさを聞きますので、このごろ特にやかましくして、こういう処理方針に基いてやつております。ただ今仰せになつたものについていうと、あるいは占領時分のものが少し入つておるのではないでしようか。いわゆる独立後でなくして、あの時分だと占領行政の命令でいろいろやれといわれたものをやつておりますので、少しその点が独立後と違うのではないかと思つておりますが、独立後はこの点はよほどきれいになつておると私は信じておるのであります。
  67. 横路節雄

    ○横路委員 一つだけ、今の点ですが、大蔵大臣はそうおつしやいますが、これも大蔵省所管の関東財務局で昭和二十七年十二月ですから、平和条約発効後に、随意契約で三菱の日本重工業に対して、元の横須賀の海軍工廠のデイーゼル機関付発電機一基を四百九十二万余円で売つておる。ところが本件の売渡し価格は、この会計検査院が比べたのに対して約千百万円程度低い、こういうように言つておるのであります。またこの中には中国財務局の呉出張所で、昭和二十七年八月に随意契約で尼ヶ崎製鉄株式会社に元の呉海軍軍需部の塔型起重機一基を二百八十五万三千円で売つておりますけれども、この点も本件の売渡し価格は六百七十六万八千八百円低いと言つておる。私もそれぞれの財務局の諸君が不正を働いておるとは考えたくないのでありまして、その通りであると信じておるのであります。ただ国の財産を処分するのに、これはいわゆる国の財産なんだ、だからこれは当然国の収入になるのだ。従つて今日こういう緊縮財政だといわれておる建前等からいつても、国の財産を正当な値段で払い下げるのだ——この中では明らかに随意契約になつておるのであります。随意契約というのは契約の中では特殊なものであります。そういう点はやはり指名入礼をするとかそういうことで、これを不正とかなんとかいう意味でなしに正しく時価に換算をし、他のものと比べてこれの払下げをすべきではないかと思うのです。その点お尋ねしているのですが、どうでしようか。
  68. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 これは私もまつたく同感です。それは国の財産ですから、少しでも高く売らなければならぬと思います。今管財局長に来てもらうようにいたしましたから、そうすればどういう標準で、どういう種類のものを売つたかはつきりするのじやないかと思います。
  69. 横路節雄

    ○横路委員 時間も大分たちましたから、私はこれで終ります。大蔵大臣、特に国有財産の払下げの問題につきましては厳重にやつていただきたい。いやしくも国民全体、国家に損失を与えることのないように、それが法律の建前に基いてやつたのだから正しかつたのだと言われても、やはり根本は国の収入を増すという基本方針でやつていただきたいということをお話し申し上げまして終ることにいたします。
  70. 倉石忠雄

    倉石委員長 昨日の横路節雄君の御発言に関連いたしまして、尾崎君より発言を求められておりましたが、これを保留してございましたので、ただいまこれを許します。尾崎君。
  71. 尾崎末吉

    ○尾崎委員 昨日本委員会で横路委員から質問せられた、かつて船会社と政府との共有の形になつていた低性能船舶処分に関する問題は、質問というよりも質問者の断定と思われるような節もあつたようであります。従つて聞く人によりましては署しく誤解をせられるおそれがありました。先般来国会で盛んに論議せられておるいわゆる汚職問題の取上げ方に関する世の中の批評の中には、軽率であるとか、ことさらに他意あつてのやり方はないかなどという批評も出て来ておるこの際であります。この種の誤解を招くような発言は、国会権威を失墜することにもなると思われますので、ここにあらためてこの問題の根本的な事柄の二、三を御質問申し上げたいと思うのであります。  その第一は、横路君の御質問昭和二十五年法律第二百四十二号低性能船舶買入法、及び二十六年三月に改正せられた低性能船舶買入法の一部改正、この二つの法律に基くところの船主の共有船舶に対する国の持分の買取りに際して、国の持分を当初の共有契約時の持分で買い取つたのが不当だ、要約いたしますれば、こういう趣意のものではなかつたかと思うのであります。そこでまず伺つてみたいのは、一体これらの船は当時なぜ船舶会社と国の共有になつたのか、この点について運輸大臣または政府委員から御答弁願いたいと思います。
  72. 石井光次郎

    石井国務大臣 これはその当時の事情を私あまり詳しく存じませんので、海運局長から詳しく答弁いたさせます。
  73. 岡田修一

    岡田(修)政府委員 共有船の問題でございますが、御承知通り戦争によりまして日本の船主はその船の大部分を失い、またそれに対する補償金も全部打切られました。従つて戦後における船の回復ということが自分の力でできません。ちようど産業設備営団の廃止にからみまして、産業設備営団の手によりましてつくりつつあつた船が約十九万総トンありました。この船の完成と、当時国内航路におきましても非常に船腹が不足でございましたので、沈船の引揚げ補修、並びに故障船の修理、こういうことにつきまして船主に資金的な力が全然ない。そこ船舶公団というものを昭和二十二年につくりまして、その船舶公団で所要の資金の七割を出し、あとの三割を船主が出し、その七割の方は船舶公団の所有という形にしたわけでございます。この船舶公団の所有分が船舶公団の廃止と同時に国に引継がれまして、国と船主の共有、こういう形で今日まで来ておるわけでございまして、その船は大部分戦争中につくりかけておりました戦標船、その後における修復、並びに沿岸に使います中型以下の船の新造によつていたのであります。
  74. 尾崎末吉

    ○尾崎委員 そうしますと、こういうふうに了解してよろしゆうございますか。この船の共有に対する国の持分とのう横路君が御質問なつた趣意によりますと、船の値段の全部の半分の持分が国にあつたというのではなくて、中にはそういうものもあつたでありましようが、いわゆる改造、改装等に要する経費を国が出したこの分だけが国の持分であつた、こういうことに了解してよろしゆうございますか、重ねて御答弁願います。
  75. 岡田修一

    岡田(修)政府委員 船によりまして違いますが、船の価格の半分あるいは簿価の半分に相当するものもありましようし、あるいは七割に相当するものがあつたかと思います。しかしその国の持分とは申しますが、実際は債権と同様の性質を持つておりまして、たといその船が利益を上げなくても、その船の国の持分に対しましては一定の金利を支払う義務を持つておるのでございます。従いまして、もしその船が非常に値下りした場合に、船主が国の持分を買う場合におきましても、最初に国が出しました金、その金額で買わなくてはならないのでございます。所有とは申しますが、実際は債権と同じ性質のものとであるということを御了解願います。
  76. 尾崎末吉

    ○尾崎委員 重ねてその点をもう一ぺんはつきりしておきます。と申しますのは、私は低性能船舶買入法及びその改正法をつくりますときの審議に参画いたした一員であります。従いましてその内容は相当承知いたしておるのでありますが、重ねて今の御答弁の点をはつきりいたしておきたいと思います。御答弁によると、この船の共有持分といつても、国の持分は実質は債権同様のものであつた、従つてこの船による利益がなくても金利だけは支払わなければならない実情にあつた、こういうことであつて従つて海運業者が国の持分を買い取るには、元の契約のそのままの価格で買い取るのが至当であるのだ、こういうふうにはつきり了解してよろしうございますか。
  77. 岡田修一

    岡田(修)政府委員 お説の通りであります。
  78. 尾崎末吉

    ○尾崎委員 その点ではつきりなつたと思いますので、速記録で誤解のないようにいたしておく次第であります。  次にもう一つ伺つておきたいのはこういうことであります。これはお読みになつたかどうかわかりませんが、去る本月十日付の読売新聞並びに三月十五日付の読売新聞であります。前者は相当大きなスペースを使つて、「開銀造船融資の秘密」という横の題目で、縦には「一千億の明細」「利息さえ一文も滞らず」こういう記事が出ておつたのであります。ゆゆしい大事だと私は思つておるのであります。全部を読みますと時間がかかりますから、頭の方だけをちよつと読んでみますと、「遊船疑獄の進展につれて開発銀行融資の行方が注目されて来た。開銀が船をつくるためにいままでに船会社に融資した国家資金は約一千億円この金はいわば国民の血税を同じだから注視されるのも当然。ましてその金が汚職の道具に使われているとあつては関心を呼ぶのはあたりまえで、去る一日衆院決算委員会で一委員がすでに返済期限が来ているのに返済しない会社の名前や、その金額を公表するように運輸省や開発銀行関係者に要求したが、満足な答弁は得られなかつた。開銀では軽軽しく会社の経理内容に関することを公表するのは私企業に対する干渉になる、という立場から極力融資内容や返済状況の発表を避けているが、本社が入手した資料によると返済金は全社ゼロ、全額が借金として残されていることが判明した。もちろんこれは法律的には違法ではないが、船会社が貴重な国家資金をまるでただでもらつたみたいに使つている海運界実情をうかがう一資料として注目される。」こういう前提のもとに五十四社の船会社の名前があげられ、その下には経済評論家たちのこれに対するところの批評までも求めた大きな記事が出ておるのであります。さらに越えまして三月十五日の同じく読売新聞の編集手帳の中に、これも相当長いのでありますが、二、三行読みますと、「なにしろ金をただもらつたつもりでいるのだからやりきれたものじやない。」こういう書出して大きな記事が出ております。お読みになつたかどうか知りませんが、もしこれが真相であるといたしますならば、国民の血税をかく軽々しく船会社等によつて壟断されているということはゆゆしい問題であると思いますので、これらの真相ははたしてこの通りであるのかないのか、その点をひとつはつきりここで伺つておきたいのであります。
  79. 石井光次郎

    石井国務大臣 詳しくは海運局長から申し上げますが、大体のことを申し上げますと、開発銀行から新造船の計画造船に貸した金が八百三十一億、そのほかのものを合せまして船関係で九百九億あるわけでありますが、この中で期限の来ておるものと期限の来てないものがごつちやまぜになつておるために、ひどくおかしく響いておるように思うのであります。その中で期限の来ておりまするのは、第五次造船と第六次造船の一部のものでありまして、その貸付の元本総額が二百二十八億、これらの元本のうちで償還期限の来ておりますのが、五次、六次合せまして八億五千万円ほどでございます。これも形の上は、半箇年間だけ償還が延期されておりますので、滞納ということにはなつていないのでございますが、いずれにいたしましても期限の来ておりますのは非常に少いのでございまして、これがあるかないか、あると言えばその通りでございますが、全般的に大きな金額がにつちもさつちも動かぬ状態になつているということはないのでございます。なお詳しくは海運局長から申し上げたいと思います。
  80. 岡田修一

    岡田(修)政府委員 期限が来ましていわゆる延滞と見なされます願は、ただいま運輸大臣からお話がありました五次船につきまして六億二千万、六次船につきまして一億三千万、合せて八億五千万円でありますが、これはさらに半年期限の延長を認められ、形式的には延滞でなく、ことに金利に至りましては一文も滞つておりません。開発銀行の金利の取立ては非常に厳重でありまして、市中銀行から開発銀行の金利の取立てが厳重だということに対して苦情が出ているぐらい厳重にやつておられます。
  81. 尾崎末吉

    ○尾崎委員 今大臣並びに局長の御答弁を伺いますと、記事の内容と実際とは、格段とは申しません、非常に大きな開きがあるようでございますが、この種のものをこのままにしておきますと、時節柄非常に大きな影響があると思うのでありますが、国民に対するこういう誤解を解くために何らかの対策をお考えになつておりますかどうか、この点も伺つておきたいと思います。
  82. 岡田修一

    岡田(修)政府委員 私ども海運関係をいたしている者といたしましては、こういう読売新聞の記事は非常に世人の誤解を招くものでございまして、あるいは日本海運造船に対して故意にその発展を妨げるような考えがあるのではないかというふうに考えられるのでございます。特に十次造船の遂行につきましては非常な障害になつている、かように考えております。船主協会の方ではこれを非常に遺憾といたしまして、日本の船主全体の信用を傷つけるものであるというふうに考えて、告訴を考慮している、こういうふうに聞いております。私どもといたしましては、たいへん遺憾しごくである、かように考えております。   〔「やおちようはやめろ」と呼び、その他発言する者あり〕
  83. 尾崎末吉

    ○尾崎委員 やおちようと言うよりは、自分たちの間違つたことをまず是正する、猛省するところのゆとりを持たなければ政治家になれません。ただいまのやじでありますが、この種の誤つた事柄をもつてすでに信用を傷つけられているなどと断定するというに至つては、まことに本委員会権威をそこなうから御注意を促しておきます。  最後に大蔵大臣に一間だけ申し上げておきます。それは前の委員会の冒頭の総括質問においていささか触れたのでありますが、造船汚職という問題について、その汚職がはたして真実であるかどうか私はわかりません。むしろ内容がどうであろうかということについては私は疑問を持つている一人であります。だから平気でこういう話ができるのでありますが、そこで申し上げますのは、こういう誤つた事柄も加えた疑念のために造船及び海運等の育成と申しますか、発展と申しますか、こういうことに対する政府の施策並びに開発銀行その他のやり方等が、もしいわゆる縮み上つた気持で手心を加えられる、こういうことになりますならば、造船と海運の持つ目的、すなわち海運においては、わが国における外貨獲得の首位をなしておる、これが海運の持つ大きな仕事であります。造船にいたしましても同様でありまして、日本海運界に必要な船で、日本にできたものはわずかに四割何ぼしかありません。従つてできるだけ造船の拡充をやつて、国際市場の獲得にも当らなければならないし、外貨の獲得にも当らなければならない。今もしこういう議論等のために政府の施策を誤つて、これらに対する縮減等のやり方をやられるということになれば、おそらく外国の海運界に押されて、日本海運並びに造船は立つことのできない結果になることを私は真に恐れるのであります。でありますから事件があるならば事件を厳重に究明すべきでありましようが、事件とこれらに対する施策とは別個のものでありますから、それらの点に違算なきを期せられる決意があるかどうか、最後にこれを伺つておきたいのであります。
  84. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 この点は、尾崎委員の御意見、まつたく同感でありました、私どもはこれがために国策を左右すべきでないと思つて、かたい決意をもつて臨んでおります。但し本年は御承知のように海運界は多少不況の兆もございますが、一方例の財政投融資を若干圧縮いたしましたので、従来年間三十万トンというのが、これは船の形によることであり、また性能によることでありまするが、あいるは十七万トンくらいになるのじやないかと思つてはおります。あくまでこの方針は貫く、こういう考えで臨んでいる次第であります。
  85. 尾崎末吉

    ○尾崎委員 これで終ります。
  86. 倉石忠雄

    倉石委員長 中村三之亟君。
  87. 中村三之丞

    中村(三)委員 われわれの手元にある大蔵大臣の説明によりますと、昭和二十八年度の第三次補正予算、二十九年度特別会計の補正、これはMSA協定に伴う経済援助資金の特別会計であります。   〔委員長退席小峯委員長代理着席大蔵大臣の説明によりますと、義務教育国庫負担金に関する臨時特例の法律案が不成立になつた、それがために二十七億円の補正予算を要するというのであります。そこで考えなければならぬ点は、予算と法律との関係であります。私は別にここで憲法論や財政法の解釈の議論はいたしませんが、政治的の意義をただしておきたいのであります。その前に一言申し上げますが、法律は国家を拘束いたします。従つて法律において支出の義務が規定されておるならば、政府は予算において実行しなければなりません。われわれはこの臨時特例の廃止に反対をいたしたのでありますから、この第三次補正予算に対しましては、否決はいたしません。しかしながら政府法律案をお出しになりまする場合は、自信を持つておられるでありましようけれども、その法律案の通過の見通し、あるいは国会内または外部におけるところの政治的情勢を判断しなければ、そうして慎重にお出しにならなければ、ただ予算を伴う法律案を出してみる。こういつたようなことでは、結局それがあとに尾を引く結果になるのであります。また増税案ないしは新税法案というものをお出しになる。それが国会において否決せられますると、予算は修正を経ずして、実質的に変更して来るのであります。現にそういう状態になつておる。かのぜいたく繊維課税に関する法律案、これは私どもの見通しによれば、あるいは否決されるか、審議未了になるか、そういう運命であると見ております。すなわち八十五億円というものは実行できない。そこでこういう予算に伴う法律案をお出しになりまする場合は、よほどその法律案について、政治的判断をしてお出しにならなければ、後においてこういう補正予算をつくるとか、あるいはその穴埋めをしなければならないということになるのでありまして、この点は大蔵大臣に謙虚な気持を持つて考えていただかなければならぬじやないか。すなわち予算と法律案関係において、謙虚な気持を持つておらなければ、蹉跌を来すようなことがあるではないか、しかも教育費の国庫負担に関する臨時特例のごときは、三度も出しておられる、そして流れてしまつておる、こういうことであります。私は予算と法律の政治的意義において、大蔵大臣はどういうふうにお考えになつておるのか、この予算を議するわれわれといたしまして、これをお伺いいたしておきたいのであります。
  88. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 この義務教育費の半額国庫負担の特例法案につきましては、当初の経過から見て、私どもは当然これを通すべきであるという考え方のもとに、これを出したのであります。しかし全然審議をされずに事が終つてしまつた。しかしながら今申し上げた通りの当初のいきさつから見て、私もまずいと思つたから、重ねてこれを出したのであるが、これまた重ねて審議未了に終つてしまうというようなことでありました。それで今度補正予算を出した次第であります。法律と予算との密接な関係については、私どもももちろんよく了解しております。また問題いかんによつては、それぞれの立場でいろいろのことを考慮しなければなるまいと考えるが、現実の問題は、今あなたが言われたような、たとえば繊維課税の問題、あなたの御意見はそうだが、私どもの見通しはそういうように考えておりません。また今日自由党の方においてはこれが通らないというようなことはないと考えておる、また私どもはしやし繊維税ということは何らさしつかえないと思つておる、これが賛成だといわれた方も多数自由党以外にもあつたのでありまして、もちろん何か特別の意図を持つておれば別として、特別の意図がなければ、私はこの原案に賛成されるものと考えております。この問題については先へ行つて、またそのときに考えてみますが、私どもはあくまでこの予算との関連上、原案の通過を信じておる次第であります。
  89. 中村三之丞

    中村(三)委員 私は大蔵大臣とは考えが違う、現在の情勢において今おつしやつたぜいたく繊維課税というものは、審議未了になる、これは私ははつきり申し上げておく、私個人の見解じやない。自由党、改進党、社会党を通ずる意見なんです。しかも私の申し上げたいのは、繊維課税のごときは、最初製造課税だつた。それからまたかわつてしまつた。小売になり、今度は問屋課税になつた。これはだれが見たつて、世間ではいかにも政府の方針がぐらぐらしているように見える。国民負担を課せられる場合における浮草のようなやり方、これは私は決して信頼を得るゆえんではないと思う。国会内の情勢、世論において、こういうものはいかぬというなら、これはいさぎよく撤回せられるか、あるいは初めからひつこめられておく力が、私は慎重なる態度であると思うのであります。ともかく政府官僚の諸君は、今の国会は法案さえ出せば何でも通るというように国会をなめてかからないように、私は特に警告をいたしておきます。  次は経済援助資金特別会計法案というものを出しておられる。これはMSAの協定の問題と重要なる関係を持つておるのでありますから、まず外務大臣にちよつとお尋ねいたしたい。
  90. 小峯柳多

    小峯委員長代理 外務大臣参議院の本会議出席しております。岡もなく見える予定であります。政務次官がおります。
  91. 中村三之丞

    中村(三)委員 こまかいことは政務次官けつこうです。根本方針は外務大臣から御答弁を願いたい。  それ、では大蔵大臣にまずお伺いいたしますが、この特別会計は、かつての対日援助物資特別会計、また見返資金特別会計、これはアメリカの占領治下において行われたものでありますけれども、今日は独立国家としてこれが行われる。その点に相違はありますけれども、大体特別会計の内容、その体裁は今申し上げました点に似ておるようでありますが、今申し上げた二つの占領治下の特別法は、日本の通貨及び財政の健全化をはかる。そうして日本の経済の再建に努めるというところにあつたようであります。ところがこの経済援助資金特別会計は、MSAの援助に基いて円資金を工業の助成その他本邦の経済力の増強に資する費用に充てるというのでありますが、これは工業の助成と申しましたところで、結局は防衛生産であることは、だれしもわかることであります。そこで私のお伺いいたしたいことは、小美をお買いになる、買うといつても実際はもらうのでありましよう。グラントでありましよう。その小安の六月末まで来ますものは食管の方に入るのですか。そうして金はこの会計に入る、こういう順序でございますか。伺いたいのであります。
  92. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 麦は食管特別会計に行くことになりましようが、金の方はこの会計に入ることに相成つております。
  93. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 ちよつと補足して申し上げます。五千万ドルの小麦、大麦は、これは手続としまして、まず普通の外貨を使いまして買うわけでございます。買つた場合に代金の支払いがアメリカで済みますと、その使つた外貨をいただきたいということをアメリカに申し入れるわけであります。そうするとその外貨を日本にくれる。これはもちろんただでくれるのではございません。円を払うわけでございます。その払つた円を日本銀行に積みまして、その中から一千万ドル相当分、三十六億分を日本政府に譲与する。そこでこの会計で働いて来るわけであります。  一方小麦の方は、普通の外貨を使つて買うわけですが、それが日本に入つて参りますれば、これまた普通の小麦の輸入と同じように食管会計が国内でそれを買い取るということになるわけでございます。
  94. 中村三之丞

    中村(三)委員 その買われた小麦は、食管会計に入るとすると、一般国民の使用になるというのか、あるいはユーゴスラビアでありましたか、アメリカからそういう食糧をもらつて、これは軍事能力がユーゴスラビアの飢饉のために低下するから、それを軍隊用として、そういうものを援助するといつたような規定があつたようでありますが、これは保安隊専用なのか、一般国民がこの小麦の輸入の恩恵にあずかるのかどうか、これは外務省でも、大蔵省でもいいから御答弁を願いたい。
  95. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 この入つて来る小慶は普通の小麦でありまして、何ら特別なものではございません。
  96. 中村三之丞

    中村(三)委員 この小麦の性質がどういうものであるか、これはもらつてみなければわからないのですが、ともかく余剰農産物なんだから、まあ大したものではないと思います。そこで念のために聞いておきますが、アメリカの港から横浜まで持つて来る運賃、保険料はアメリカが払うのですか、日本払いですか、小さいことですけれども、これはひとつ聞いておかなければならない。
  97. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 この小麦は元来も品うのではないのでありまして、円で買るというわけであります。従いまして今の運賃分、これはアメリカがトルでくれることになつております。しかし円ではやはり払うわけでございます。なお食管会計では二十九年度に百九十六万トンの小麦を国内需給調整のために輸入する計画でございますが、その中の一部になるわけでありまして、これは普通の国民の食用に供せられるわけであります。
  98. 中村三之丞

    中村(三)委員 そうするとMSA協定によるところの援助の形式の中に贈与というのがある。その贈与というものは二つあるでありましよう。すなわち渡しきりのものか、いずれは返さなければならないものか。私は渡しきりなんだと思うのですが、外務政務次官、どうでしよう。
  99. 小滝彬

    ○小滝政府委員 小麦はドルを払いませんけれども、円を払つて日本が買つたので、これは先ほどの説明にありましたように食管会計で処理するもの、であります。ただそのグラントを受けます二〇%、一千万ドルにつきましては、この具体的な計画は、日本の方で立てますけれども、この使用にあたりましては、相互間で合意する条件に従つて云々と書いてありまするので、たとえば防衛生産あるいはこれに関連した産業または技術の研究というようなことに使いますが、個々の問題につきましては、経済審議庁あるいは通産省あたりで協議しますが、その前にアメリカの方で大体こういう条件だというその条件を示す。そういう意味において協議に乗るだけでありまして、そのあとにつきましてはこれを返済しなければならぬという義務は全然ございません。
  100. 中村三之丞

    中村(三)委員 そうすると普通のグラントと解釈してよろしゆうございますね。
  101. 小滝彬

    ○小滝政府委員 その通りであります。
  102. 中村三之丞

    中村(三)委員 そこで資金会計を見ますと第四条「資金は、工業を助成し、その他本邦の経済力の増強に資するため、政令で定めるところにより、運用又は使用する」というのですが、この政令はかつての見返り援助物資等のあの会計から見てみますと、運用手続をきめたところの政令、こういうようなものが出て来るのだろうと思います。あるいは経済援助資金特別会計令というようなものも出て来るのでありましようか。これは私は今日頭をもつて答弁はいりませんが、文書をもつてわれわれに出していただけますか。それをわれわれはこの資金特別会計の判断の資料にせねばならぬと思いますが、いかがでありますか。
  103. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 これは向うとの協定が工業の助成及び経済力の増強、こういうふうになつておるのでその文句をそのまま使つたのでありますが、ものの性質上、主として防衛生産に使うことは当然のことであります。どうせ政令はできると思います。
  104. 中村三之丞

    中村(三)委員 その政令はもうできておるはずです。できていなければこの法律案をお出しにならぬはずです。ここで詳細をおつしやる必要はない。ことに運用の手続が問題なんです。手続を厳重にしておかなければ、これはまたいろいろなこと起してしまう、これをお答え願いたい。
  105. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 これはまだ向うと構いろいろ相談を要する点もありまして、まだ政令はできておりません。
  106. 中村三之丞

    中村(三)委員 できておらぬところに私は問題があるのじやないかと思う。それはMSAに関する、またそれに関連するところのアメリカの法律を読んでみますと、経済援助にあたりましては、日本は相当監督を受けなければならぬ、そういうふうに解釈できる。その前にお伺いいたしますが、たとえば軍事援助、のいわゆる顧問団は来るにきまつて、三億五千万円の金がいるらしい。技術経済使節団というのも来ると思いますが、これは外務省はどうお考えになりますか。
  107. 小滝彬

    ○小滝政府委員 技術的に情報を交換するとか、あるいは工業所有権の交換というようなことにつきましては、適当なとりきめを作成するというようになつておりますが、今具体的にどういう使節団が来るとか、日本から出すという点は確定いたしておりません。これは一応とりきめをして、そういうことが適当であり必要であるとする場合には、MSAの本協定第四条の規定によつて、そういうとりはからいをすることになろうかと思います。
  108. 中村三之丞

    中村(三)委員 この援助資金の用途を決定しなければならぬ。これは日本政府単独でできるのか、大蔵大臣単独でできるのか。アメリカの指示を受けなければならぬと思いますが、自由でできるのか。
  109. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 それは御審議を願つておる協定にありますように、双方で合意するということになつております。
  110. 中村三之丞

    中村(三)委員 そういう文句は私も拝見しました。それは非常にやわらかい文字でありますけれども、結局アメリカはこの与えた金が、あるいは平和産業にとられたり、パチンコにとられたりしたら黙つておりましません。これは極端な例かもしれません。つまり日本の防衛力漸増計画の目的に沿うよう、この三十六億円を日本にグラントする、こういうのである。だからこの辺をはつきりしていただかなければならぬ。と申しますことは、今は日本独立国である。占領当時見返資金会計、援助物資等の会計は占領軍当局のさしずにおいて用途が弁ぜられたはずです。これは占領当時でございまするから、やむを得ませんが、今日は日本独立国家である。防衛協定は対等の協定である。もとより与える、とる、これは相互の援助でありまして、ギヴ、アンド、テークになることは私は認めるのでございますけれども、アメリカのようなそろばんのこまかい資本主義の国家が、かりに三十六億にしたところで、手放しにかつてにやらせはせぬと思うのですが、これは外務省はどういうようにお考えでありますか。
  111. 小滝彬

    ○小滝政府委員 この具体的な問題につきましては、交渉の経過においてもちろん相互に合意する条件に従いということはどういうことであるかといつて話合いをしたのであります。しかし先方の見方では、結局日本の国内の個個の産業、どういう産業に投資するかというような問題は、日本の経済関係各省及び開発銀行あたりが一番よく知つておることであるから、大体大綱について審議をしよう、こういうことを話合いをしようということになつておるのであります。但しこの条約によつては、日本工業の援助及び日本国の経済力の増強に資する他の百的のため云云と書いてありまするから、この条約に従つて使用しなければならないわけであります。でありますから、もしそれが不当なことに使われれば条約違反にもなりますので、日本としては十分注意をしなければならないが、個々の問題について干渉するというようなことは絶対にないものと私どもは確信をいたしております。
  112. 中村三之丞

    中村(三)委員 私どもの判断によれば、アメリカのいわゆるカントリー・チームというものは、単に軍事顧問が来て日本の保安隊が自衛隊を訓練するというばかりではない、経済援助に対するところの監視に出て来ると私は考えます。これは外務大臣に私は言明を願わなければならぬと思うのですが、どうも私どもはそういうふうに考える。外務大臣がお見えになつてから私は伺いたい。  それからこの経済援助資金特別会計には援助資金の経理の方法が書いてない。以前の物資と処理、それから見返り資金は日本銀行に特別の勘定を入れて他の勘定と区別するということになつておつた。あの寺別会計法にはそういうことがちやんと書いてある。ところが今度のとりきめによると、何かアメリカ政府日本銀行に特別会計を設定するというようなこともあるように私は読んだのですが、この辺の関係をひとつ承りたいと思います。すなわち、この特別会計法では援助資金の経理の方法が具体的に以前のもののように書いてない。だから私はそういう疑問を起すのであります。
  113. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 この五十万ドルのうちグラントの一十万ドルのもの、これは特別会計で日本側でやるのであるが、四千万ドルは、これははつきりと日本銀行におけるアメリカの口座ということになつておるので、これは特別に扱われる、しかもこのものは大体いうといわゆる域外買付その他に使われるということが言われております。それから今の工業その他と書いてあるのは、この協定の文句からいつて、私がさつきお話した通りであります。大体において防衛生産の方面に主として使われることは間違いないのであります。やはりその基礎になるものも相当関係を持つて来るので、こういう点から、こまかいことはまだ向うとは——こらち同士でも、実は内部で打合せておりませんが、あまりさまつなことを向うが言うはずがない。これはグラントのものですから、大体において、日本のいわばそういつた防備力をもう少し増加することと、もう一つはだんだんとアジア諸方面、特に南の方面もありますが、そういつた方面への域外買付をするのに都合のいいようにということを向うは考えておるのでありまして、そういつた点から、そうむづかしいことでなく話合いができると私は考えております。むしろどの工業ということになると、みんなそれぞれ自分の点を重く考えるものですから、まだ日本人側の打合せもまとまつておりません。いろいろ交渉しておるような次第であります。
  114. 中村三之丞

    中村(三)委員 私どもはここを政府に確かめておきたいのです。軍事顧問団は内政干渉であるとかいうようなことを言われる。この疑いはもつともな喜んです。アメリカのようなそろばんのこまかい国が、日本にグラントしたのに対して、そう自由放任にしないと思うのです。ここなんです。これがだんだん進んで参りますれば、日本経済全体にわたつて半占領時代のようなおそれなしとしない。私はこれをおそれる。これはうんとつつぱつてもらわなければいけません。日本はこのMSAにおいて義務もあるのですよ。あるいはもつと率直に言えば、日本はこの協定によつて、アメリカを中心とする集団防衛機構の中に入つてしまつた。これに対しては議論もありますよ。しかしともかく入つた。これには相当の義務もあるはずだ。それにこういう経済援助で干渉がましいことを言われることはつつばねていただかなければ、この協定を承認するかしないかについても、われわれ非常に考えて行かなければならないという意味で私はお確かめを申し上げている。それで、軍事顧問団が内政干渉にならないようにすると同時に、日本の経済の内容にも干渉してもらいたくない。しかし誠実に、防衛生産増強の目的に沿うてその運用をやるということを日本が声明すれば、アメリカも信用していいじやないかと私は思う。しかしこれは将来の推移によるだろうと思いますが、私の懸念するところであります。——外務大臣はまだ見えませんか。政務次官でもけつこうですが、大きな問題ですから、外務大臣でないと……。
  115. 小峯柳多

    小峯委員長代理 外務大臣を今呼びに行つておりますから、しばらくそのままでお待ちください。ちよつと速記をとめて。   〔速記中止〕
  116. 小峯柳多

    小峯委員長代理 それでは速記を始めてください。——中村さん、外務大臣がお見えになりました。
  117. 中村三之丞

    中村(三)委員 MSA協定、これはわれわれがイエスかノーかおきめなければならない。そこで外務大臣に、経済方面から見たMSA協定についてお伺いをしたいのであります。政府はたいへん経済援助があるというふうなことをよくおつしやつたようであります。もとよりMSA協定は軍事協定を主とするものでありますから、かりに経済援助があつても、結局防衛生産力の増進という線に沿うものであると私どもは見るのでありますが、さてふたをあけてみると、完成兵器を日本にグラントする。その金額は一億ドルとか、一億五千万ドルとか伝えられておるようでありますが、私たちはこの金額を問わない。この完成兵器の性能であります。またそれが日本の国内防衛によく役立つか。また日本の地理、日本人の体格等にその完成兵器がよくマッチしておるかという点にわれわれは重点を置かなければならぬと思います。それから経済的援助でありますが、三十六億円は、われわれに防衛生産に使え、域外買付もある。ただ国民の前に突きつけられたのは、大体これらの事実なんです。しかし私はMSA援助というものはこれに限るとは思いません。すなわち初年度が大体今示された通りであると思いますが、しからばこれが二年、三年においてどういうふうにMSAによるところの経済援助が伸びて行くか、どういう規模を持つて来るのであるか、これが日本の工業力の助成となり、日本の経済力の発展になるかというこの見通しであります。この見通しを外務大臣から承ることによりまして、われわれはこのMSA協定を了解することができるのであります。これはあるいは例をとるのはどうかと思われるかもしれませんけれども、占領当時援助物資、それによるところの見返り資金というものがあつて、記録を読んでみますると、その収入は三十億円を越えておる。その純資産は二千億円を越えておる。もとよりこれは占領時代でありますから、アメリカは占領地の経済が混乱すれば責任を負わなければならぬので非常な力を入れたのでありましようけれども、ともかくこれらによりまして日本の経済が安定の方向に向いたということは、これは私は認めるのであります。MSA援助によるところこの経済関係において今後もつと伸びて行くんだ、こういう見通しをここでひとつ外務大臣から明白にしていただきたいのであります。
  118. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これはただいま御審議を願つておりますものが承認をされますと、政府としては、この協定に書いてあるような各種の問題について、実際的な交渉をいたす権限を得るわけでありまして、従つて今度はその次の来年の分、再来年の分については、具体的に見通しをすることは実は困際でありまして、申し上げることができないのでありますけれども、今までいろいろ話合いをいたしました結果から見ますと、もし本年程度の援助を来年も受けるといたしますれば、少くも本年程度の経済的の寄与もなされることは、これはもう間遠いないというふうに申してもさしつかえないのじやないかと思います。そこでそれ以上にどの都度日本の経済に寄与され得るかということにつきましては、第一にこの三十六億を外に出しまして日本のこの方面の産業がどの程度整備されて、域外買付の発注をどれだけ引受け得るに至るかという点にもかかつて来ます。それからまた日本の防衛力が増強いたしまして、アメリカの駐留軍の一部でも撤退できる——実際これは計画して何箇月後には撤退できるというような状況になりますれば、アメリカの駐留軍は、実は防衛分担金で、アメリカが負担しているよりも実際ははるかに多くの金を使つておりますから、それを国内に一部でも引きもどせるというようなことになり、さらにまたその後も逐次引きもどせるということになりますれば、これによつてアメリカとしても相当の経済的負担が減るわけでありますから、この方面でもある程度考慮ができるのじやないか。また一般日本の経済状況にいたしましても、これは水かけ論になるような気もいたしますが、アメリカの援助がなければ、日本の経済自立は困難であるという面もあります。まず日本が経済自立の努力を十分にして、それでも足りない場合には、援助ということも考慮をされるのだという議論にもなつて来るのでありまして、こういういろいろの日本側自体の努力によりましてどの程度ふえるかということになろうかと思います。しかし先ほど申したように、原則としては、本年度程度のものは、日本が欲するならば、来年度も受け得ることは、これは間違いないと思いまして、それ以上の点をただいま申し上げたようなわけであります。これはさらに今後いろいろ交渉をいたしまして、逐次一つの面について明白になる部分はあろうかと思いますけれども、ただいまは原則的のことでお許しを願いたいと思います。
  119. 中村三之丞

    中村(三)委員 私は占領時代の対日援助物資見返り資金と同じようになるとは思いません。またわれわれは独立圏でございますから、そうアメリカにたよるということは無理でありますが、しかし日本以外の各国とのMSA協定などを見ても、またその実際の状況などから判断いたしますならば、三十六億円くらいの防衛生産の資金なんというようなものでは、何もできはしません。ことに防衛生産というものは、ざつくばらんに言つて、軍需工業でございましよう。こういうものは非常な資金を要する、非常な設備を要する。また総合工業であり、精密工業でありますから、その要する資金というものは決して少いものではない。アメリカが日本の防衛生産力を充実せしめ、そうして国内防衛をまつとうせしめるというならば——またわれわれがこの問題にぶつつかつている際に、外務大臣はあるいはそういうことは一つの例であるとおつしやるかもしれませんが、われわれ国民ちよつと考えましても、たとえば農産物の購入のごときは、これはドルを使わないでけつこうでございますが、ただ余つた小麦だけではちと物足らぬじやございませんか。現にアメリカにおいては、小麦はもう運河の船にまで入れるくらいにあり余つている。あり余るものなら、だれだつてやる。私の考えは、もし日本の防衛力を充実せしめるというと、たとえば自衛隊の被服などが必要でありましよう。そういうものには綿花もこの協定によつて出して来る、こういうふうに進む、また進ましてもらう方がいいんじやないか。その防衛生産に要するこの三十六億円というものも増して来るのでありましようけれども、そういう意味において伸ばして行く。一体これはアメリカの相互安全保障法とどういう関係にあるか、私は今詳しく知りませんが、完成兵器なんかよりも、むしろ工作機械を日本に持つて来てもらう、あるいは飛行機生産をなさる場合は、それに特殊の機械を持つて来てもらうといつた方が、能率が上るんじやありませんか。どこかのデパートにあるところのアメリカの中古の服のようなものは、われわれの間尺に合いません。そんなものをもろうても、これははなはだ失礼な申分でございますが、工業能力の増進になるかどうか、こういうような見通しはつくと私は思うのでございますが、これを承つおくことがわれわれといたしまして、MSA協定に伴うところの経済援助資金特別会計を認めるということの一つの資料になるのでございます。ここを御説明願いたいと思うのであります。
  120. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 お説の通り、三十六一億という金は決して多額なものじやざいません。これはただ五千万ドルの中の二〇%というのであります。元の五千万ドルがそう高額というわけに宏りませんので、これはお認め願いたいのであります。またもう一つ、いわゆるほんとうのMSAに経済援助と申す項目があるのであります。これについては、アメリカも相当多額の費用なり、工作機械なり、その他技術等を仕給している部面がありますが、現在おもに行われておりますのは、フランスにおけるもの、及びイギリスに対する援助であります。フランスは御承知通り戦闘機が非常にすぐれているといわれております。イギリスはジェット機が非常にすぐれている。アメリカの技術をもつてしても、むしろフランスの戦闘機なり、イギリスのジェット機なりの生産を盛んにする方が、早く目的を達して、これがイギリス、フランスのみならず、ほかの国の役にも立つという面からやつているのでありますが、もし日本の工業生産の中で、必ずしもそういう戦闘機と限りませんが、何らか他国にすぐれた優秀なものができますれば、その方面に対する援助というものはまた別個に考えられると考えております。それから協定の付属書のAをごらんくださいますと、「アメリカ合衆国政府は、この協定の実施に当り、日本国及び他の国の使用に供すべき需品及び装備を実行可能な場合には日本国内において調逃することを、並びに日本国の防衛生産の諸工業に清報を提供し、及びその諸工業の技術者の訓練を促進することを」「できるだけ考慮する」こういうようなものもありまして、さらに「この点に関連して、日本政府の代表者は、アメリカ合衆国政府日本国の防衛生産の諸工業の資金調達を援助するよう考慮するならば、日本国の防衛能力の発展は著しく容易になるべきことを述べた。両政府は、アメリカ合衆国による日本国内における調達を容易にするため、両政府の間に十分な連絡手段を設けることが累ましいことを認める。」こういうような付属書もできているのでありまして、これは一方においては日本の希望を述べたにすぎない点はありますけれども、しかし附属書にこういうものを載せることをアメリカ側も承諾をいたしましたということは、日本側の言つたことを十分に認識したいということはあるのであります。非常に資金の調達だとか、その他、おつしやるような工作機械を含めました諸技術、情報の提供等は、これはもうぜひ促進いたしたいと考えておりまして、できるだけ先が太くなるようにわれわれは努力いたし、ある程度は見込みもあろうかと思つておりますが、今それを大胆に、ありますと申し上げる程度にはまだ行つていないわけであります。
  121. 中村三之丞

    中村(三)委員 そこでお尋ねしなければならぬ点は、このMSA協定を結んだ場合に、アメリカの日本における出先機関の問題です。カントリー・チームとかいわれておりますが、軍事顧問団が来て、木村長官鷹下の自衛隊を訓練するということ、これはわかる、あるいは日本の自衛隊員をアメリカの学校にやつて、一層訓練するといつたようなこともこれはわかります。今外務大臣がおつしやたように、だんだん経済援助が太つて来る、その場合特別技術経済使節団というような、平たく申しますならば経済顧問というようなものが、合意の上でありましようが来て、ことに日本のこの防衛資金の用途について監督する、あるいはこれらの経済援助が防衛生産の目的に沿うておるかいなや、監視という言葉は強いかもしれませんが、おそらくそういうふうに出るのじやないかというように私どもは考えるのであります。防衛工業に資金を売らんとするというのでありますから、   〔小峯委員長代理退席、西村(久)委員長代理着席〕 先ほど外務大臣のおいでにならぬときに申しましたように、まさか紡績事業に金を貸しますまい、いわんやパチンコなどに金を貸しますまい、こう思われるのであります。こういう軍事顧問団に対しまする、平たく申しまして経済使節団というものは来るのかどうか、こういうようなものは絶対来ないと言われるのか。私の申しますこと、また懸念しますことは、軍事顧問団さえ、内政干渉のおそれはないかというような議論が出て来る。もしこういう経済顧問団というか、使節と申しますか、そういうものが来て——もとよりこれは外交使節であるかもしれませんが、そういう人が来て、どこまで日本の経済、ことに防衛産業を監督して行くのか。かつて戦争中に、何もわからない大尉や少佐が日本の軍事工場へ行つて監督したというようなことは、おそらく文明国民でありますところのアメリカではないと信じますが、しかし相当の監督はされ、資金の用途について指示は受けなければならぬじやないかという矛うに思うのでありますが、はたしてこういう経済使節団というものは来るのか、それは来ないのだ、一切日本にまかすのだ、日本を信じているんだ、そういうふうにお考えになるか、これを私は承つておきたいのであります。
  122. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 この意につきましては、私かなりつき進んでいろいろ話をいたしておきました。今考えておりますのは、これは防衛産業の育成といいますか、強化といいますか、これは実は三十六億でも足りないんじやないか、ある程度日本の銀行もめんどう児なければならぬ臨があるかもしれぬと思つておりますが、いずれにしましてもこれは主として城外買付に対応するものでありますから、アメリカの域外買付がどの方向に向かつてどの程度発注され、それが何箇月あるいは何年続くものかということは十分確かめて、アメリカ側と十分なる連繋をとつて、どの方面に今度は資金を融通するかというようなこともきめなければなりません。その意味では域外買付の今後の見通しというようなことについては、私は率直に申しますと、アメリカ側と十分話合いをいたして方角を定めたいと思つてお。ますが、それについてはアメリカ側の意見もわれわれの考えを左右する面が相当あると思います。たとえばこちらでこういうものをつくりたいと思つても、向うの注文がこつちだということになれば、やはりこつちをつくることを助長しなければならないということはあろうと思います。しかしそれはよく話合いがついて、はつきりわかりますれば、あとは開発銀行なり適当な機関が資金の融通をなすのでありますが、これについては何か使節のようなものが来てこれを監督するということは、アメリカ側でも全然考えておりませんし、また日本側でもそういうものを受入れる考えはございません。
  123. 中村三之丞

    中村(三)委員 次にお伺いいたしておきたいのは、この協定の中に投資保証の問題、それから経済安定の問題があるのであります。これは外務、大蔵大臣からお答えをいただきたいのですが、投資の保証というものはどういう形で来るのか、私的投資に対して保証するというのですが、一体最近の傾向は、各国とも個人の投資というものは、第二次世界大戦以後減つておるようであります。政府政府の投資というようなことになつておるように私どもは見るのでありますが、この点についてどういう見通しであるか承りたいのであります。たとえばウォール・ストリートにおけるところの金融業者日本に対して投資をする、私的投資をする、現に戦前においてはモルガンであるとかジロンリードであるとか、ターンロープなどが日本に来、またラーモント氏のごときものが来て、いわゆる日米の投資関係は非常によく進んでおつた。こういうものの動員はなかなかむずかしいだろうと思います。なぜならば日本の経済に対してアメリカは労働問題などで相当不安を持つておるのです。資本というものはいわば国際的に臆病である、そういう考え方をもつていたしますならば、この投資保証というものはどういう矛うになるのか、これをひとつ承りたいのであります。
  124. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 私どもこの点は実地にいろいろ調べてみましたけれども、一番最近の例としてあげられるのはトルコの例でありまして、トルコにおいては国内におけるいろいろな法的措置をもつて外国の資本に対する保護を与えております。またこの外国資本の元本や利息の外貨による引上げと申しますか、持つて行くことについてもこれを認めておるのみならず、外国の商社に対していろいろの便宜を提供しております。その結果一昨年の半ばごろから昨年一ぱいにかけまして、おそらくことしも続いておると思いますが、アメリカの投資は盛んに——これは民間投資でありますが、トルコにおいて行われておりまして、あるいはゼネラルモータースのようなもの、あるいはゼネラル・エレクトリックのようなもの、それから化学工業もかなりトルコでは盛んに行われております。それでアメリカの民間投資が多国に行かないとは限らないのでありまして、その国のやり方一つによつては、相当来るのじやないか。もつともトルコとアメリカとの間の協定で軍事力が非常に強化されまして、そうしてソ連側からの脅脅威が比較的少いという点もあろうかと思いますが、いずれにいたしましても、トルコのような例もありますので、民間投資が、困難ではありましようが見込みがないというふうには考えておりません。そこでそれを誘導するいろいろの措置は必要でありましようが、この投資保障は、そのいろいろの措置のうちのただ一つの措置にすぎないのでありまして、これだけでアメリカの資本が誘導されて来るとは限らないと思いますが、これもやはり必要な一つの措置であると思います。この内容はアメリカが局間投資を激励するために戦後に法律をつくりまして、それで外国に間投資したときに、その政治上の不安によつて、その投資がやり方の間違いによらないでだめになつたというような場合、アメリカ政府が投資家にこれを補償してやるということになります。その結果今度の協定が生れたわけでありまして、日本の外貨事情が悪くなつて、アメリカの投資家の元本なり利息なりを、ドルでアメリカへ持つて帰ることができない場合、あるいは日本が何かの都合で、投資によつてできた工場なりその他のものを、国家で収用するというような場合、こういう場合には、投資家に対してアメリカの政府がトルで投資を補償する。そのかわり日本の国内にあるその投資家の財産なり、あるいは円による配当その他のものは、アメリカ政府が継承する。これに対しては、日本政府はほかの投資と同様の程度にこれを尊重して行く、こういう約束になりまして、これによつてアメリカの投資家がいい投資の対象があれば、そう心配せずして投資することもできようというので、簡単な三箇条のものをつくつたようなわけ、であります。
  125. 中村三之丞

    中村(三)委員 経済安定のことでありますが、どうもアメリカのウオール・ストリートあたりでは、日本の公定為替相場について相当疑いを持つておるようであります。これは有力な資料かどうか、私は確言はできませんが、数日前英文夕刊朝日の中に載つてつたのです。それはウオール、ストリートにおけるデイーク商会というものが、世界の為替相場を解説して、日本の円は二〇%オーバー、ヴアリユートしておる、つまり四百四十五円という相場を立てておる。こういうデイーク商会というものはどういう金融家であるか、私どもは事情は知りませが、少くともそういうことが伝えられておる。これは結局日本の経済に対する不安を反映しておるのじやないか。そこで外務大臣は今までこの協定に努力して来られて、今後も努力せられるでありましようが、大蔵大臣はこの経済安定に努力をせられるということが必要である。また努力せられる決意とは信じておりまするが、MSA協定に伴う日本経済安定に対して、大蔵大臣はいかなる経論を持つておられるか。その方針をこの際私は宣明願いたいのです。
  126. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 MSAに直接の関係はございませんけれども、しかし日本経済を、また日本の財政を健全ならしむることは、今日きわめて必要であることは申すまでもございませんので、この二十九年度予算編成にあたつては、この間も、悪口を言われれば、百八十度の転換をしたということも言われたのでございましたけれども、つまり日本の物価を国際価格に近づける措置をとつて、そうして国際収支の均衡をはかる、このことを主眼として各種の財政政策、金融政策、その他の諸般のものを進めておる次第であります。  なお今ちようど出ました、こういつたアメリカの方の融資に対する保証が漸次行われる。この保証は、アメリカの方でもこういうものをやる、日本の方でも同意するものに限られるのであります。世界全体を通じて、今のところ、たしか三億ドルという極限であつたと思いますが、そのうち日本にどれだけ来るかよくわかりませんが、いずれにせよ、この調印によつてそういうものを相当予期される。予期されるときに、通貨価値の確保されておることが、そういう外資を入れるにもきわめて大きな役割をする、こういうふうにも考えられるのでありますので、直接の関連は持ちませんが、日本の国策としては、あくまで私は繰返す言葉で言う健全財政、健全通貨の方針を堅持して参る、それで一切の今の施策を貫いて参る、こういう次第でございます。
  127. 西村久之

    西村(久)委員長代理 中村さん、大分時間も経過いたしましたから、結論をお急ぎを願いたいと思います。
  128. 中村三之丞

    中村(三)委員 私はそう楽観しないです。なるほど緊縮予算、デフレ政策、しかし現に恐れるところは、外貨の状態、国際貸借をよくするために、たとえば輸入制限をやる。そうすると物が上る。すなわち輸入インフレーシヨンというものが出て来る。現に出て来ておりましよう、それから最近どうも預金の伸びが悪い。いろいろな原因もございましよう。あるいは貸出しが固定しておるということもありましようが、預金の伸びが悪く、貸出しが固定するということになりますと、貯蓄が減少する。貯蓄減少によるインフレーシヨンというものが出て来る。こういう点はよほど御警戒せらるべきものであると私は思います。ただ予算を一兆円以内にしたから、それで万事終れりでは私はいけないと思います。繰返し私たちが申しますところの経済計画を、すみやかに実行せられる必要があると私は考えるのであります。  これで私は終ります。
  129. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 ちよつと一言申し上げておきますが、決して私は一兆円予算をもつて万事終れりという考え方ではない。これはいつもこれが第一着甲であるということを申し上げておるので、どうも中村さんはおわかりだと思いますが、いつでも言葉をとじられるときに、これをもつて万事終れりと更することはいかぬと言われるけれども、だれも万事終れりとしてはいない。これは第一着手であるということを申しておるのでありますから、同じことを繰返しませんが、決して私はそ吊れをもつて終れりとは思つていない。われわれの財政政策は、それをやらなかつたらどうするか、これをお考えくだされば、あなたはよくわかるわけです。
  130. 西村久之

    西村(久)委員長代理 この際小山倉之助君より関連質問の申出があります。これを許します。ごく簡単にお願いいたします。
  131. 小山倉之助

    ○小山委員 ただいま中村再から言われたように、日本の三百六十円は向うでは四百四十円あるいは四百四十五円というふうに見ておるようであります。しかるに五千万ドルのうち、グラントとして来るのが三百六十円に換算されておるようでありますが、将来来る四千万ドルというものも同様のレートで換算されるのでありますかどうか、その点を一点だけお伺いをいたします。
  132. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 その通りでありまして、全部三百六十円で換算いたします。
  133. 小山倉之助

    ○小山委員 それは日本の経済の変化いかんにかかわらず、この五千万ドルは三百六十円で換算されるのでありますか。
  134. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 これは実はひとりこの問題に限りません。日本が国際通貨基金に入つておりますと、今の一ドル三百六十円を若干でも変更しようとするなら、あらかじめそれの同意を得ることが必要なことに相なつております。従いましてレートは、今の四百何円とか、これはニューヨークあたりでは、絶えず一部のやみドルの取引についてはそういう相場はいろいろ立つております。はげしいときには、五百何十円、六百円近い相場が出ておることもあり、また四百二十円のときもあります。大体さつき中村さんの言われたように、昨今は四百円から五百円の間を相場が高下しておるようです。しかしそれはやみ相場のことでありまして、日本が国際通貨基金に入りましたときにはつきりと、一ドル三百六十円を今後変更する場合には、これらの各国の同意を得ることになつております。従いましてこのレートは一切かわりはございません。
  135. 川崎秀二

    川崎委員 ちよつと関連して……。
  136. 西村久之

    西村(久)委員長代理 ごく短かい時間にお願いいたします。
  137. 川崎秀二

    川崎委員 外務大臣に伺いたいのですが、昨年の十月ごろから、ソビエト連邦の船が日本海の沿岸で故障を起して、二隻ばかり日本の造船所に入つておるという情報がありますが、これは知つておられますか。
  138. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 故障を起してというのは、北海道に一隻故障を起したのがありますが、修理をいたしておりますのはそうではなくて、初めからそういう計画で、修理賃として向うが石炭なら石炭をくれる、こういうことでやつたものは数隻あるわけであります。
  139. 川崎秀二

    川崎委員 それは初めから向うが計画をして、そうして入つたというのですか。つまり途中で故障を起したのではなしに、日本と何かの貿易をする——今日は貿易がないわけですね。そこでこれはどういう基礎によつて行つておるのですか、それをひとつお話願いたい。
  140. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 計画ではなくて契約でありますが、日本の商社と契約をいたしまして、修理代を日本がとるかわりに、石炭なり、木材なりをとり入れる、こういうことでもつて契約をいたて修繕を認めてやつておるわけであります。
  141. 川崎秀二

    川崎委員 その業者が、今度は船の問題でなしに、他の物品を買いつけたいというような関係で、長く日本へ残つておりたいというような要望を商社を通じてしたことを聞いたことはありませんか。
  142. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 私の承知しているところは、その船の修理を監督する技術者が、今度は、たしか木材だつたと思いますが、木材と、さらに他の船の修理とのバーターみたいなもので話を進めたいので、その技師を東京によこして話を進めたいという希望が日本側の商社からあつたのであります。ところがわれわれの承知しておるところでは、このソ連側の人間は、当初は船の技術者であつて、修理が完全に行われていたかどうかということを検査するために来るのであるから、ドックの中に終始滞在しておつて、外に出なくてさしつかえないという了解でありましたので、その人たちの入国を認めたのであります。途中でそれが資格がかわつて、今度は商社の代表だと言われても納得することができませんので、それは断つておりまして、船とともに帰つたはずであります。今後何かそういう話がありますれば、さしつかえない範囲においては、イデオロギーに関係なく、貿易をやるということはこれは日本にとつても必要なことでありますから、条件次第によつてはさらに考慮する場合もありましようけれども、ただいまの問題は技師が船とともに帰つて、一応けりがついておる、こう私は了解しております。
  143. 川崎秀二

    川崎委員 それがさらに発展をして、ソ連から新しい造船の注文が今日来ておるようにわれわれは聞いておるのであります。これは四隻来ておるように聞いております。物によつては、二千トンないし三千トンの船を注文しておるという形跡もあるのですが、この情報は確認されませんか。
  144. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 その具体的の話は私はまだ聞いておりませんが、ソ連との間の船の修繕によるバーター取引というものは、占領時代からずつとあつたわけでありまして、さしつかえない範囲でこれは認めてもよろしいかと思つております。ただココムにおける約束もありまして、一定の限度を越えた船については修繕が引受けられない場合もあるのであります。
  145. 川崎秀二

    川崎委員 もう一、二問聞いておきたいと思いますが、新しい問題です。今の外務大臣の見解によると——条件次第によつては、イデオロギーはイデオロギー、貿易は貿易だから、物によつては商売してもいいのだ、こういうことになると、たとえば中国貿易あるいは東西貿易の可能性というものが相当出て来るはうに思うのでうす。ただわれわれの最近聞いたところでは、あなた方では首脳部会議を開いて、ソ連船の新発注、つまり四隻の新発注については、今日の日本の国策上好ましくない、あるいはこれは、将来設定されるであろう秘密保護法に関連をして、船舶の建造もまた部分的にかなり微妙なものもあるというような関係から、そういうものもやらないという情報が私どもの手元に来ておるのであります。そうすると、今御答弁なつたことと少し違うようであります。私は線の引き方が非常に問題だとは思うけれども日本の船にユーゴスラビアあるいはその他の各国からかなり注文が来ておるようであるので、さしつかえない限りにおいてはそれに応ずべきものだと思つておる。ところが実際の情報ではそうでないように聞いておるのですが、この点はどうでしようか、もう一度御答弁願いたいと思う。
  146. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは、船の大きさによりますとそういう点が出て来るかもしれません。現に先般の修理の場合にも、初めはもつと大きな船を持つて来ることを希望したのでありますが、それは断りました。しかし原則としていろいろな規格、その他条件はありましようけれども、その条件に合う範囲内において、しかもこれに見返る物資が低廉であつて良質であるというようなことになりますれば、これは日本利益になりますから、あながち断る理由はない、こう私は考えておりまして、外務省でもさように考えております。
  147. 川崎秀二

    川崎委員 最後に、今私が関連して申し上げたユーゴスラビアから船の発注が来ておるように思いますが、これはいかがであるかということ。たしかこれは応じたはずのようにも聞いておるのであります。それから、今の御答弁で大体了承はいたしましたが、やはり大きな船に行くと、いろいろ国策上の問題もありましよう。それらの場合に対処するいろいろな法的根拠というものが相当問題になつて来ることになりはしないか。現在のところでは、この程度ならば外務大臣の御方針でけつこうだとは思いますけれども、それらの問題は今後の研究問題としてわれわれも十分研究たしますが、同時に、外務省においては、はつきりした線をもつて対処せられるように要望しておきたいと思うのであります。
  148. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 ユーゴスラビアの分はたしかダニユーブ航行の船だと思いますが、これは原則的には、小さな船でありまして、さしつかえないと考えております。実際どの程度進んでいるのかは今承知しておりませんが、原則としてはさしつかえない。こう思つております。  それからソ連側の船につきましては、これはパリにおきまして、ココムの関係で話合いをいたしました一定の基準がございまして、諸外国もこれを守つておりますから、その範囲でわれわれも処理いたしたい、こう考えておりますが、お説の点はさらに外務省としても十分研究いたしたいと思つております。
  149. 川崎秀二

    川崎委員 これは質問でなしに要望いたしておきますけれども、造船疑獄の問題が非常にやかましくて、世界各国も注目をしている。そういうようなときにおいて、造船疑獄の真相はあくまでも追究して行かなければならぬけれども海運助長政策というものが遅れるということは、われわれは国家のために非常に憂えなければならぬ。特にヨーロッパの諸小国等においては、相当日本の船に対して関心を持つておるのでありますから、これはひとつ外務省も運輸省に劣らざる関心を持つて、今日の造船疑獄をめぐる種々の難局を切り開いていただきたい、かよう考えておる次第であります。
  150. 西村久之

    西村(久)委員長代理 本日はこの程度にいたしまして、次会は明十九日午後一時より開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時四十一分散会