○羽田
委員 通産大臣の
お答えで満足します。どうかひとつよろしく御督励をいただきたいということを重ねて要望いたしまして、通産大臣に対する
質問を終ります。
次に
小笠原大蔵大臣に対して御
質問を申し上げたいと存ずるのでございます。今回の超均衡
予算の遂行は、
日本経済を破綻から救い出すためにやむを得ざるものでありますが、この遂行に伴いまして、中小
企業者に対して
金融的に相当深刻なる影響が今後現われて来るのではないかということを、今ひそかに心配をいたしておるような次第でございます。この救済のためには、昨年の第十六回国会を通過いたしました中小
企業金融公庫の活動に大いに期待をいたしておるのでございます。御
承知のご
とくに同公庫は、
市中銀行、地方
銀行、相互
銀行、信託
銀行、商工中金、
信用金庫等の本店四百六を代理店といたしまして、その支店、出張所五千七百ぐらいを窓口にいたしておりまするために、開業早々から比較的順調に活動ができておるのでございます。すなわち同公庫は、昨年の九月の十一日に開店をいたしまして、昨年末までに一万二千件、二百六十億の
需要に対しまして、三千件、六十一億が融資されておるのでございまして、申込みに対して融資された額は、二割二、三分の貸出率を示しておるのでございます。大体月平均十五億円くらいの貸出しの割合に相な
つております。本
予算案におきましても、
政府の
財政投融資は二十八年度同様に百三十億でございまして、低かに本年度に六十億の回収が予定されておりますので、合せて百九十億になるのでありまするが、うち二十億は
開発銀行に返還をされなければならないのでございまするから、結局貸出し能力は百七十億でございまして、月に平均十五億弱の勘定にな
つております。私は、一兆円
予算で縛られて、
政府の
財政融資は昨年同様の百三十億円しかまわすことができなかつたことは、事情やむを得なかつたことを認めます。欲を言いますれば、せめて月々二十億くらいの貸出し能力を与えるように措置することができたらばと思うのでございますが、一兆円
予算でやむを得ないと存ずるのでございます。
以上が本公庫の昨秋開店以来の実績と二十九年度の展望でありますが、法律をつくるばかりが国会の使命ではなく、私は本公庫の運営が、はたして
金融難にあえぐところの
現下の中小商工業者のためにうまく行
つているかどうか、改善すべきものはどういう点か、ちまたの声を率直に申し述べて、監督者たる
大蔵大臣並びに当事者の注意を喚起いたしまして、運営の改善に資したいと考えまして、この
質問をいたす次第でございます。
そこでまず第一に取上げるべき問題といたしましては、昨年同公庫法が国会を通過いたしましたときには、来る日も手形を落とすために、身のやせる思いをしておりました中小
企業者は、
国家のお金で、五箇年の長期で、年一割の利子というような、夢にも思わなかつた有利な条件の本公庫の誕生を、まさに砂漠の中にオアシスを発見した思いで歓迎をいたし、心をおどらせたのでございます。しかるにいざ開業としてみますと、これらの五千七百の窓口の人たちは氷のご
とく冷たいものがあ
つたのでございます。本公庫法の第一条には、法の
目的といたしまして、明らかに「中小
企業金融公庫は、中小
企業者の行う
事業の
振興に必要な長期
資金であ
つて、
一般の
金融機関が融通することを困難とするものを融通することを
目的とする。」と規定してあります。つまり
一般の
銀行では貸さないようなところに貸すんだということが、この法律の第一条の一番最初の
目的のところに明記されているにもかかわらず、窓口の
銀行は、従来取引のある者ではないと、新規の者にはけんもほろろで貸してくれないのでございます。これは完全に法律を侵していると私は考えるのでございます。また五千七百も窓口が行き渡
つていることはいいのでありまするが、そのために、
一つの窓口に対する融資割当のわくが非常に小さくな
つてしまいまして、多数の
需要に応じ切れない場合が多いのでございます。なお窓口によ
つては、貸出し方法や手続等がさつぱりわか
つておらないような係員もおりまして、せつない気持でかけつけた
需要者をすつかり憤慨させ、深刻な落胆の気分に陥れている実例は枚挙にいとまがないのでございます。大蔵省は公庫の幹部を督励しまして、本公庫の立法の精神を第一線の
銀行諸君に徹底するようにしていただきたいと私は希望いたすのでございます。また重点的、かつ効率的に貸出し業務をやらせるためには、五千七百というたくさんの窓口ではなかなか徹底しない。むしろこれを少くいたしまして、少数なところに、この貸出しを要求する人たちの相談に応ずるような専門的な人を配置するようにして、できるだけ親切にしてやることが必要ではないかと考えるのでございます。
第二に、いざ受付の人が話に乗
つてくれる段になりますと、申込書が非常に複雑でございます。どうせ普通の
銀行とは取引のないような人でございまするから、経理の能力もございませんし、事務的な能力もございません。そういうような人たちには、この複雑な申込書はまつたくその煩にたえないという非難が非常に大きいということを御留意願いたいのでございます。次には、
担保について非常にやかましく申します。また保証人のことについても厳重をきわめております。かくのご
とくして、せつかく話が始まりましても、なかなかすらすら事が運びません。必要なるときに金が間にあ
つて価値があるのでございますが、こうして一月も二月も三月もかか
つて最後に金が借りられないという場合には、これらの悩める人たちを、まさにどん底に突き落すような立場に陥ることを考えなければならぬのでございます。
第三に、かくしてようやく現金を貸してもらう段になると、相当な歩積みる要求されるのでございます。中小
企業者の救済を
目的とする本公庫の使命にかんがみましても、この歩積みを要求するということは、その立法の精神に合わないと存ずるのでございます。
以上のぐあいでありますから、本公庫設立の精神を生かすために、代理店の人間を教育し、その考え方やお客様の扱い方を改めさせるようにすることが最も緊要なことであると存ずるのでございます。
次に法的の欠点を
指摘いたしますと、まず第一に、法律においては貸出し対象の業種を政令に譲
つてありますが、政令では十七業種を指定してあります。
国民生活に必要なクニーニング業とか、理髪業とかのサービス業は、その選に漏れているのでございます。彼らが公益衛生を完全にするための設備の改善をいたしたいとか、新規に開業
資金か借りたいという場合に、これらの者はそれが許されないのでございます。この際むしろ大蔵省において政令を改正されまして、奢侈遊興の業務を除いた以外は、もつと弾力性あるものにして、中小
企業者の切なる要望にこたえるべきではないかと考えるのでございます。
第二に、国会の
委員会において本法を通過させまする際に附帯決議をつけました。その附帯決議によりますと、単なる旧債の肩がわりはいけない旨のことが申されておりまするが、それは親切な立場から申されたのでありますけれ
ども、実際今まで
銀行から短期で借りておりました諸君に対して、本
資金によ
つて長期に借りかえることは、むしろ利用者の欲するところではないかと存ずるのでございます。こういう点も運用上改善をすべきことではないかと存じておる次第でございます。なお今後は設備
資金に並行いたしまして、長期運転
資金の貸出しにもつと力を入れて行くべきではないかと考えるのでございます。
最後に、
大蔵大臣は先日一万田
日銀総裁と会われまして、
オーバー・
ローンの
解消につき御相談に
なつたようでありますが、大
企業に対する
オーバー・
ローンを
開発銀行に肩がわりさせると同様に、中小
企業に対するものも本公庫に
政府資金を
預託いたしまして、漸次
オーバー・
ローンの
解消に進めて行くことがよいのではないかと考えるものでございます。
以上の諸点につきまして、総合的に
大蔵大臣の御
所見を承りたいと存ずるのであります。