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1954-02-10 第19回国会 衆議院 予算委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年二月十日(水曜日)     午前十時三十五分開議  出席委員    委員長 倉石 忠雄君    理事 小峯 柳多君 理事 西村 直己君    理事 西村 久之君 理事 森 幸太郎君    理事 川崎 秀二君 理事 佐藤觀次郎君    理事 今澄  勇君       相川 勝六君    岡田 五郎君       尾崎 末吉君    尾関 義一君       小林 絹治君    迫水 久常君       庄司 一郎君    高橋圓三郎君       富田 健治君    中村  清君       灘尾 弘吉君    羽田武嗣郎君       葉梨新五郎君    原 健三郎君       福田 赳夫君    船越  弘君       降旗 徳弥君    本間 俊一君       八木 一郎君    山崎  巖君       山本 勝市君    稻葉  修君       小山倉之助君    河野 金昇君       中曽根康弘君    中村三之丞君       古井 喜實君    足鹿  覺君       伊藤 好道君    滝井 義高君       武藤運十郎君    山花 秀雄君       横路 節雄君    稲富 稜人君       川島 金次君    河野  密君       小平  忠君    堤 ツルヨ君       西村 榮一君    黒田 寿男君  出席国務大臣         国 務 大 臣 緒方 竹虎君         法 務 大 臣 犬養  健君         外 務 大 臣 岡崎 勝男君        大 蔵 大 臣 小笠原三九郎君         文 部 大 臣 大達 茂雄君         農 林 大 臣 保利  茂君         通商産業大臣  愛知 揆一君         運 輸 大 臣 石井光次郎君         労 働 大 臣 小坂善太郎君         建 設 大 臣 戸塚九一郎君         国 務 大 臣 安藤 正純君         国 務 大 臣 木村篤太郎君  出席政府委員         大蔵事務官         (主計局長)  森永貞一郎君  委員外出席者         専  門  員 小林幾次郎君         専  門  員 園山 芳造君         専  門  員 小竹 豊治君     ————————————— 二月十日   委員富田健治君辞任につき、その補欠として   降旗徳弥君が議長の指名で委員に選任された。     —————————————  本日の会議に付した事件   昭和二十九年度一般会計予算   昭和二十九年度特別会計予算   昭和二十九年度政府関係機関予算     —————————————
  2. 倉石忠雄

    倉石委員長 これより会議を開きます。  昭和二十九年度一般会計予算外二案を一括議題といたします。質疑を継続いたします。佐藤觀次郎君。
  3. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 せつかく議員がまじめに出ておりましても、大蔵大臣が時間までに来られませんので、特に委員長から大蔵大臣に警告を与えていただきたいと思います。  なお先日大蔵大臣財政演説におきまして過去の予算にいろいろな痛烈な批判を加えられまして、ざんげ、、反省、自粛というような意味で述べられたことは、これは確かに私たち大蔵大臣がみずからの人間を知つておられることに尊敬をしますけれども、しかし現在大蔵大臣あるいは吉田首相がひな壇で耐乏生活を説きましても、みずからそれを国民に示すだけの意力がなければ、いくら述べたつて国民はおどらぬと思います。今度の予算均衡予算であるとか、あるいは超均衡予算であるというようなことを言われておりますが、一体どういう予算になつておるのか。御承知のように、浜口内閣のときに、井上大蔵大臣が、その予算のいい悪いは別にいたしまして、非常にかたい快感をもつて、非常に強い決心をもつてデフレ予算を組んだことがございます。今度の場合におきまして、二十八年度と二十九年度とはまつた違つた予算でございますけれども、遺憾ながらそれだけの決心がわれわれにわからない。国民には大蔵大臣総理決意がどこにあるかということもわからないような場合に、突如として今回の予算が組まれたわけでございます。そこで先日も与党同僚議員から、この予算はどういう予算であるかということを大蔵大臣に尋ねますと、大蔵大臣はこの予算ディスインフレでもないし、デフレでもない、ディスインフレインフレの中間のようなところにあるというようなことを御説明されましたが、一体大蔵大臣は、今度の予算をどういう予算とお考えになりますか。私はまず最初にこれを大蔵大臣にお尋ねしたいわけでございます。
  4. 倉石忠雄

    倉石委員長 委員長よりこの際政府側に申し入れておきます。当委員会委員は努めて定刻出席をいたしておるのでございますが、政府側、ことに政府委員の御出席が遅れますので、審議に支障を来しておるのであります。さようなことはまことに遺憾なことでございますので、なるべく定刻に努めて御出席になるようにお願いいたします。
  5. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 この予算は、過日来も申しますごとく、日本国際収支状況にかんがみまして、日本国際収支均衡を一日も早からしむるために、日本の商品に国際競争力を持たせるために、ある程度物価引下げをはかつて行く。   〔委員長退席小峯委員長代理着席従つて、それがため財政収入あるいは為替その他諸般の政策を総合的に進めて参る、こういうことが主眼となつておることは、過日来佐藤さんにも申し上げた通りであります。  ところで、この予算を実行するについての決意ということでありますが、過日も申したごとくに、二十九年度予算だけで、私どもはその目的を完全に達成すると思つておりません。従いまして、なお明年度もあるいは状況によつてはさらに明後年度も、引続きそういうような方向に進めなければならぬと考えておるのであります。従つて非常なかたい決意のもとにやつておるのでありますが、ただ二十九年度予算について、それではディスインフレかあるいはデフレかというようなお尋ねがございましたが、インフレを遮断する。このことは二十九年度予算性格はつきり申し上げられるが、しかしデフレというほどの性格を二十九年度予算で出したものでないから、この意味で申し上げた次第であります。
  6. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 日本経済国際経済の中にあるということもわれわれ知つておりますので、そういうことはむろんわかりますが、しかしここでお尋ねしたいのは、一体世界物価はどういうふうになつておるかといいますと、朝鮮動乱のあつた昭和二十六年には、もう世界物価は下つてつたわけであります。特に御承知のようにイギリスアメリカは、すでに戦前の近くまで物価が下つております。しかるに世界がそういうような空気であるにかかわらず、昨年まではインフレ的な予算を組んでおられまして、そういうような国際的な考えはほとんどないような状態でございました。まことに悪い例でございますけれども、昨年十月ワシントン池田蔵相に会いました。そのとき池田蔵相は、世界のうちで八億ドルからのアメリカの資金を持つておる国は、日本だけじやないかと非常に豪語しておられました。私たちワシントン——これは個人的な話でございますから、公の席では申しかねますけれども、そのくらいの経済力があるならば、昨年にはそうであつて、急に今年になりまして、こういうような緊縮予算を組むということは、どこかおかしいじやないか、どうも私たちにはふにこういうような予算が組まれたということに対しましては、理解ができないのでございますが、大蔵大臣はどういうようにお考えになりますか、ひとつ説明願います。
  7. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 御承知のように、今あなたがちようどおつしやつた日本物価というものが、ひとり朝鮮事変以後ほかの物価に比べて、非常ないわば率を失したよりになつてつた。このことは日本としては何らかの措置を前にとるべきであつたでありましよう。今日からよく考えて見ますれば、とるべきであつたでありましようが、御承知のように長い間占領政策のもとにあつて、みんな不自由をして来た、そうして敗戦その他の関係で、いろいろなことをやらなければならぬことが山のごとくにあつた従つてそういうことのために、多少すべての点にゆるみのあつたことは、私は間違いないと思うのであります。この点からやはり現実の姿をよく見詰めることが必要である。そうして見ますと御承知のごとく二十五年、二十六年、二十七年度は、いずれも毎年三億ドルずつからの受取り勘定になつてつた。ところがこの二十八年度、特に下期に入つてから、非常に状況が悪化いたしまして、約一億九千万ドルからの赤字になり、二十八年度は二億四千万ドルからの赤字になる。この情勢を続けて行けば、おそらく二十九年度は四億ドルくらいの赤字が出るというようなおそれも多分にあるのであります。従つてこの際何としても日本経済国際収支均衡へ持つて行くために、今までの政策にとらわれずに、やはり日本立場はつきり認めた政策をとるというのが、今度の予算編成一つ——今後とも賃金その他の対策もこれに応じて対応してとつて行く、こういう考え方をしておるのであります。
  8. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 現実を見詰めてやつたと申されますが、それについては私どもに異論がございまして、もし現実を見詰めるならば、私たちには言わせていただきたいことがある。それは御承知のように、世界各国とも、予算を編成しておりますときには、世界の風潮として平和予算を組んでおります。たとえにアメリカでもイギリスでもフランスでも、できる限り軍事費をさいて、そうして緊縮予算をとつておるわけでございます。ところが今度の二十九年度予算を見ますと、こういうような緊縮予算にかかわらず、防衛費だけがふえておる。これは大蔵大臣防衛費は自国を守らなければならぬから、ふやさなければいけないということをいろいろ説明されますけれども、何がためにこんな防衛費をふやさなければならぬか。この前ダレスは、日本人はもつと耐乏生活をして防衛強化をしろ、そういうようなことをアメリカの新聞に言つておりますが、こういうため軍事費をふやしておるのかと思われるほど、われわれは今度の予算はおかしい。少くとも現在の外国事情を知つております者には、日本だけが今ごろ保安隊費用をふやしたり、防衛費をふやすということは、納得行かないのでございます。御承知のように、今年度はソ連におきましても、やはり消費物資生産に重点を置いて、戦争をやる危険はございません。私も昨年ヨーロツパに行きまして、ヨーロツパ民主主義を見て参りました。少くとも現在戦争するような空気もありませんし、おそらくアメリカの手に乗つて大きな軍備をやるというような国は一国もないのでございます。そういうようなふうに世界は平和の風が吹いておる、そうして防御費費用を減らそうとしておるのに、日本だけが緊縮予算を組んでおつて、しかも防衛費をふやすということに私たち納得行かないわけでございます。この点を私が納得行くようにひとつ十分に御説明が願いたいと思います。
  9. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 どうも少しお立場が違うので、あるいは御納得がむずかしいかとも考えるのでありますが、しかし私どもは、自分の国は自分で守らなければならぬという体制に一歩を進めて参る。それには日本国力を越してはならない。これはやはり自衛力の漸増、漸次増加するということが約束されておることでありまして、私ども国力に応じてやつて参らなければならぬ。このことは私たちも全然御同感です。国力に応じてやつて行く、ところが現在の日本で見ますと、これはなるほど百四十億ほどいわゆる防御予算が昨年よりふえておりますが、しかしこれは、どの程度かと申しますならば、過日来申した通り、いわゆる一兆予算で見ますれば、ちようど一割三分七厘二毛にしかすぎない。また国民所得の面から見ますならば、わずか二分五厘、世界のどこにもこんな少い国は一国もありません。そういうことを考えてみますと、これくらいのことは今の日本国力でやるべきであろう、私どもはそういうふうに考えまして、この程度国防費増加、いわゆる防衛費増加を認めたような次第でございます。
  10. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 蔵相日本軍事費が非常に少いように言われておりますけれども、しかしこれは軍人恩給などを入れますと、大体二割一分になるわけであります。これはこの前も大蔵大臣は、軍人恩給社会事業のような費用だということを言われましたけれども、私たちはそうはとりません。少くとも、これには傷痍軍人とか未亡人なんかの金もありますけれども、しかしこれは再軍備ためにこういうものを急につくつたのでありまして、そういう観点からすれば、一割三分とかいうようなことを言つておられますけれども日本財政イギリスアメリカや西ドイツのような恵まれた国でございません。私たちはそういう立場から、この軍事費は決して少いものだということを考えることができないわけでございます。そういう点から考えまして、これは私たち立場が違いますから、これ以上追求しませんけれども、少くとも大蔵大臣は、その点は十分に、現在の費用が決して少くない費用だということをお考え願いたいと思うのであります。  それから弟四点でございますが、実は先日の計画経済の問題でございますけれども政府の方ではいろいろ立案がありまして、急にいろいろな計画をとめられたのでありますけれども吉田首相演説あるいは大蔵大臣演説では、この計画経済あるいは長期の経済計画をやることを、何か共産党の一枚看板のような立場から反対をしておられますけれども、しかし実際は日本経済のような底の浅い、しかも戦争で敗れて資源の乏しい国におきましては、どうしてもこの計画経済をやらなければ、日本経済は立ち行かないと私たち考えておるわけであります。そういう点から考えまして、今までのような由放任主我のアダム・スミス流自由経済、またその日間に合せの経済では、私たち日本経済は救えないという考えを持つてるわけでございます。イギリスが、ポンドが暴落しまして、もうほとんど経済破滅寸前にあつたときに、バトラー大蔵大臣は、これは保守党の人でございますけれども、三箇年の計画を立てて、そうして今日ポンドはドル以上に強くなつておるわけでございます。こういう点から考えまして、大蔵大臣総理大臣は、何かこの計画経済をやるということが、日本経済のマイナスになるように言われておりますけれども、私たちはこういうように昨年とことしと急に経済がかわるようなやり方は古いやり方であり、少くとも今後は計画を立てた経済をやらなければ、日本経済は立ち行かないと思つておりますが、大蔵大臣はどういうお考えを持つておられますか、お尋ねしたいと思うのであります。
  11. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 最初に申し上げておきますが、実は佐藤さんお調べくださればわかりますが、軍人関係扶助費はほとんど四分の三までが遺族のものでありまして、旧軍人が面接もらつておる部分はきわめて少いのでありまして、これを軍事費に計上するということは、私どもどの点から見ても穏当でないと思います。  それからその次の問題でありますが、私どもも決して自由放任主義がいいと少しも考えておりません。しかしながらいわゆる計画経済というものは私どもとらぬところでありまして、やはり個人創意工夫を生かして行くという自由主義経済を基調とする。しかしながらそれでは経済計画がなくていいか、こう仰せになりますと、もちろん経済計画を必要とするのでありまして、私どもはちようど時計の針がまわつて行くように計画経済できちんと行くものと考えておりません。しかしながら二つの計画目標を立ててそれに向かつて進んで参るためには、昨日来申しましたごとくに、たとえば農作物につきましても、あるいは食糧増産五箇年計画を立てたり資産十箇年計画を立てましたり さらにまた鉄につきましても、石炭につきましても、電力につきましても、造船等につきましても、一応の計画を立てておることは御承知通りでありまして、ただ仰せになるような時計の秒針をきざむような意味のいわゆる計画経済は立てない、個人創意くふうをあくまで生かして参る、この長所を失わぬように、しかし一つの目途を持つた計画のもとにやつて参る、かように考えておる次第でございます。
  12. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 私たちはそんな時計の針の秒のような計画経済をいつておるわけではありません。そういう観点蔵相とわれわれと、頭の考え方が違うので、これ以上追求いたしませんけれども、今度の予算のうち、私たちが一番解しがたいのは、物価を下げる問題でございます。御承知のようにたびたび大蔵大臣からも経審長官からも国際収支の問題でいろいろお話がございましたが、一体二十八年度から輸出減になつておりまして、これが今度の予算で急に輸出超過になるような方法がとれるかどうか。私たちには少くとも今年は平和の年でございますので、各国ともに低物価政策をとりまして、貿易戦がたけなわになると想像されるのでありますが、ところが大蔵大臣は今年の予算やり方によつて物価を五%か一〇%下げるというようなことを発表されておりますけれども、一体こんなことでどうして物価が下るか。その根拠を十分に私は承りたい。たとえば砂糖、ガソリン、タバコ、ビールその他電話料金また電燈料金も上るということを言つておりますが、政府関係のものをどんどん上げて、そしてそれについて物価が上つて来るのに、どういう理由で五%あるいは一〇%の物価が下つて来るかという根拠を示していただきたい。先日も与党小峯委員からもこのことにつきましては強く痛いところをつかれまして、なかなか率直に論ぜられておりますが、これは皆さん御承知のように、大蔵大臣はどういう方法で実際五%から一〇%を下げるかということについて根拠を示していただきたい。そのときに大蔵大臣答弁では、私が通産大臣をやつてつたときに、石炭は下らぬと言われたけれども答弁をしたときにはしばらく待つてくれ、こう言つたところがやはりしばらくたつたら一割下つた、今度もそういうふうになるから安心してくれ、ということを言つておりますが、いつも柳の下にどじようはおらぬ。今の世界状況考えますと、そうやすやす物価下りようがない。日本がかり下つたとしても、国際的に各国物価が下つて来れば同じことになるわけでありますが、もしこの問題がはつきり解決しなければ、今度の予算は組みかえでもしてもらわなければ補正予算を組まなければならぬことになりますが、一体どういう根拠で、この五%から一〇%の物価が下るかという根拠を、納得の行くように御説明をしていただきたいと思います。
  13. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 多少数字に基いたような説明は、あるいは経審長官の方がよく知つておられるかもしれませんが、ただ私の申しますことは、今タバコの値段を上げるとおつしやつたが、これは奢侈品的に扱うものを値上げするので、奢侈の抑制でむしろ物価引下げに役立たせようという考えで、従つてピース以外に何も上げておりません。こういう考え方で臨んでいるのでありまして、この物価引下げ方につきましては、本年は農作物は少くとも平年度以上にとれるでありましよう。従つてこれらの点から、たとえばこの間の外米外麦等輸入補給金等も、本年度は御承知のように九十億程度にとどめるということになつておりまして、こういう点からも物価の安い傾向が漸次見られて来ると私は思うのでありますが、しかし主としてはやはり需給関係から物価が起るので、その需給関係に対して最も大きな役立ちをするものは、やはり私たち財政金融面からの話であろうと思う。特に今まで物価引下げを、どちらかといえば抑制した一つに、たとえば滞貨金融というものがある。滞貨金融しているからずつと持つてつてなかなか売らない。思惑的なことをやつているのでありまして、こういう滞貨金融に対する措置を相当厳格にやるということになりますれば、いつまでも思惑的に物を打つということはできません。現在日本における鉱工業生産は、佐藤さん御承知のごとくに九十一に比べて十五二になつている。それにかかわらず輸出はわずかに三割何分しか出ていない。それはなぜかというと、いろいろ国内消費されている面が多いのでありますから、消費抑制に対する対策と、これに伴う金融の是正とをやりますれば、数字的にここで一分出て来るとかこれで七分出て来るということは、私は申し上げることはできませんけれども、この程度物価引下げることは必ずできるというように私は信じているのであります、どうも数字的なことは、経審長官方からお答え申し上げる方が御納得が行くかと思います。
  14. 愛知揆一

    愛知国務大臣 お答えいたします。昨日も御答弁申し上げたのでありますが、たとえばただいま大蔵大臣も言われましたように、生産財について供給需要関係考えてみますと、二十八年度生産活動鉱工業の場合は大体二十九年度におきましてもその規模は保たれて、数字的にいえば一五二の生産指数ということに考えております。それに対しまして需要というものを考えてみる。そうしますと、いわゆる国内投資需要が、今回の財政措置によりまして、客観的に申しまして大体一割は減るわけでございます。そういたしますと、基本的な考え方からいつて供給がかわらずにそれに対する有効需要が引締められるということになりますれは、この関係からだけでも、りくつの上からいいましても、物価は当然下るということになります。それから農産物の例のごときはもつと常識的にお考え願えると思うのでありますが、二十八年度の凶作に対しまして二十九年度がかりに平年作だといたしますれば、一一%ないし一三%の供給増になる。それに対して消費水準増加も若干、二十八年度から比べて二十九年度はやはり上昇すると思いますが、しかしながら供給ふえ方が多い関係で、これは相当の値下がりになる。大体各物流別等についての見通しも、相当分析的にいたしているのでありますが、あまりこまかいことは省略いたしますが、結論的に生産財の方で申しますと、二十八年度に比べて六ないし七%、それから消費財につきましては四%内外二十八年度に対して下ることになるのであります。今申しました下る率は、年度を通じて下る率でございますから、一つ時点時点を比較いたしまして、たとえば来年の三月とことしの三月、それぞれ二十カ年度と二十八年度年度末の一つ時点をとつて比較いたしますと、生産財等につきましては約一〇%値下りが予想される。そこで私はもといたしましては、五ないし一〇%ということを目標として申し上げているわけでございます。
  15. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 いくら都合のいいように説明されましても、物価経審長官の思うように行きません。自由主義経済のもとにおいて物価を下げるのには、昨日も中村さんが言われましたが、ストツプ令でもかけなければいいけれども、あなたの思うようには行かない。なぜ行かないかと言いますと、金利も労働賃金もなかなかそう簡単に下らない。御承知のように世の中はそんなに甘くないのでありまして、日本が今までにデフレ政策物価引下げをやつたときにおきまして、松方大蔵大臣、それから井上準之助大臣のときにも失敗をしまして、なかなか困難なる歴史があるわけでございます。ところが去年までは盛んに景気のいいことを言つてつて、ことしの予算から急に物価の下るようなことを言いましても、なかなか他の中はそううまく行かない。政府のやることに反対なことを国民がやるような時代でございますから、あなた方がいくら数字——愛知さんも銀行局長を長くやつておられましたから、大蔵省の数字の上ではうまく行くかもしれませんけれども、私どもはどうしても納得ができない。そこに今度の予算のからくりがあるのでございまして、私たちはこの問題がはつきりせぬことには、どうしてもこういうようなずさんな予算では賛成をいたすことが、できないわけでございます。そこでなかなか世の中は複雑でございまして、初めは昨年と同じような国民所得があつたわけでございますけれども、急に五兆九千八百億にされたかと思いますけれども、私たちは少くとも六兆円以上あるということを予想しております。そういうところで結局今度の予算はやはり無理がありまして、これはあとで言いますけれども、いろいろその点でからくりがあるのでございますが、そういう点で大蔵大臣経審長官も、数字できつちりとこうだこうだということは、世の中のことでございますからそう簡単に行きませんけれども、こういう点があるから確実に下るというような根拠をお示し願わぬと、私たち物価がこれで下るということの納得が行かないわけでございます。何か私たちにきめ手をひとつ教えていただきたい。これなら下るという数字でなく、下るきめ手をひとつ大蔵大臣からお教えをいただきたいと思うのでございます。
  16. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 物価引下げというものが、たとえば石炭に例をとれば、輸入石炭をやればすぐ下る。これはすぐきめ手なのです。しかしそういうことがたとえば石炭行政について、日本の重要産業からとつていいかどうかという問題があるごとく、どの物価についてもたとえば不足する物資、あるいは安くしようとする物資をねらい打ちにして、安い輸入品を増加すればすぐ下る。しかしそういうことは穏当でございませんので、一般的に申しますならば、やはり物価引下げというものが、財政金融その他の諸般の政策を総合的に推し進めることによつて解決して行く。こういう以外にあなたがおつしやるような、これなら下るぞというきめ手は、むしろ私ども経済政策としてはとるべきでない、かように考えております。
  17. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 そういうようなちよつとやつてどうというきめ手を言つておるのではない。おそらくこれはわれわれが今しやべつておることが、半年か一年後になつて現われて参りますから、そのときに勝負をつけた方がいいと思いますけれども、私たち大蔵大臣経審長官考え方が全然違つて、あなた方のやり方では、物価は絶対下らぬという結論を持つておるわけであります。なお一々この問題でやつておると時間を食いますから進んで行きますが、今度の予算の中で私たちが一番心配をしておりますのは、何といたしましてもこの予算によつて一番大きな犠牲を受けるのは、平和産業である中小企業者が一番しわ寄せを食うということでございます。御承知のように、朝鮮の特需の減少から、昨年の秋からは相当日本に不景気が押し寄せて参りまして、われわれの地元でも相当中小商工業者がばたばた倒れて参ります。おそらくこの予算関係上一番悪化の傾向をたどりますのは、この一番弱い中小企業者であると思います。政府は盛んに中小企業者のため国民金融公庫、中小企業金融公電の金をふやしたではないか、これで金を借りられるではないかと言つておりますけれども、そんなに世の中はなまやさしいものではございません。御承知のように今日保全経済会とか、あるいは類似金融の問題とか、いろいろ問題がありますが、これも政府のやつておる金融政策が、一部の大きな資本家のみの金融であります関係から、いろいろこういう問題が起きるのでございまして、皆さん方はどういう考えでおられるか知りませんが、私たちは少くとも今度のような予算の組み方をやると、そのしわ寄せが中小企業者の弱い者に行くということをお考えつているかどうか、われわれは現存銀行から金を借りるにいたしましても、信用のない者は金を借りられないので、私どもが確実に現在金を借りる道は、今のところは国民金融公庫だけが十万、二十の金をどうにか三月くらいで借りられるようになつたことは、われわれも認めますけれども、少くとも今度の予算におきましては、これら以外の人は悲惨なものだろうということを想像するわけでございます。現在これは悪い表現でございますけれども、いろいろな席におきまして、一番席の中心の床の間には銀行の支店長と税務署長がすわつております。私大蔵委員会で言いましたが、現在町の一番いいところは大銀行の支店が占めております。そういう状態では、日本の再建はできないという考えを持つておるわけでありますが、一体中小企業者に対してどういう政策をとつて救済なさるのか、この点を大蔵大臣からお示し願いたいと思います。
  18. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 中小企業に対しまして私ども考えておるのは、金融の面と税制の面とこの二つが少くとも考えられるのであります。従いまして金融の面におきましては、これは今お話になりましたような中小企業金融公庫とか、あるいは商工中金とか、さらにまた零細な方に対しては国民金融公庫とか、この方面の資金の増加もはかつておりますが、しかし一番大きい資金源はどこかといいますと、これはお調べになればわかりますが、中小企業の黄金源は市中銀行、特に地方銀行でありまして、一十万円以上の中小企業に対する貸出しは一兆二千億に達すると思います。このうち約九千億は市中銀行であります。それで市中銀行が容易に貸出しやすいようにすることが、一番金融を円滑にする道であります。それに対して信用保険とか、信用保証協会の制度を拡充して参つたのでありまして、従つて今後これを十分利用していただくと、この方面への道が開けるのではないかと考えます。これは法制的に拡充したことはすでに御協賛を得てやつたことでございますから、ここで御説明をいたしません。  税制につきましては、今回もいわゆる低額の収入所得者に対する所得税の減税をはかつておりますことはもちろん、さらに青色申告等についても過日申した通り、非常に簡易な方法で青色申告ができるという書式に、これもごく新しいのでありますが、つくりまして、今それぞれ勧誘いたしておる等のこともございまして、税制面でも措置し得るだけのことは措置しておると考えておりますが、なお決して十分とは考えておりません。たとえば低額所得の人に対しましても、従来低額所得者と申しますと、給料所得者のことを言つたのでありますが、今度はそうでなく、一般所得者にも及ぼし得るように、いわゆる低額所得者の取扱いをいたしておるのであります。
  19. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 ちようど税金の問題が出ましたから言わせてもらいますけれども政府は減税々々という公約を発表されておりまして、三百二十億ばかりの減税をやつたわけでございますが、しかし自由党の減税政策はいつも名目的な減税で、大きな方には減税するけれども中以下には減税しない。今問題になつております繊維品消費税の問題も、どうしてこんな税金をかけなければならぬのか、私たち納得行かない。これは大衆課税になるのにきまつている。大蔵大臣は財源がないからこういうこともやむを得ないじやないかということを言われますが、財源はある。たとえば一昨年昭和二十七年に大法人の接待費、招待費いわゆる交際費におきまして、約三千億の財源があるという原案を大蔵省は出して来ました。ところがこれは自由党と改進党の反対で、実はうやむやになつたわけでございますけれども、こういう財源がとろうと思えばある。こういう財源をなぜとらぬかというと、徴税にめんどうだからとらぬということを言われますけれども、今度の繊維品消費税のごときは、めんどうといえばまことにめんどうなので、もしめんどうだということならば繊維品消費税をやめたらいいじやないかと私考えます。一昨日もあなたの方の国務大臣の大野さんが、岐阜で繊維品消費税はやめるということを新聞に発表されておりますが、閣僚でさえ反対がある、与党でさえ反対があるのに、何で大蔵大臣はわずか八十五億のこんな税金をとられるのか。これは大衆課税なんです。そういう立場から、減税々々と言われますけれども納得行かない点があるわけでございます。昭和二十七年や二十八年は御承知のように自然増収という形で財政の危機をのがれて来ましたが、おそらく二十九年度も、現在の計算によりますと五百億から七百億ぐらいの自然増収があるのではないかと考えております。こういう費用はまた防衛費か保安庁費に使うのではないかと懸念しておりますが、そういうことはないかどうか。そういう点では私は補正予算を組まなければならぬような状態が出て来ると思いますが、大蔵大臣はどういうように考えておられますか、御答弁を願います。
  20. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 最初に小額所得者に対する話でございましたが、これは御承知のように一番多い時分は千三百五十万人からあつた納税者が、だんだんと減税の措置によつて減りまして、このごろでは千万人そこそこになつておると思います。今度でさらに百数十万人を減ずることになつております。従いましてあなたが仰せになつたように、小額所得者に対する分が減らなくて上の方のものだけが減つたということはない。人数は少くともやる前に比べれば非常に減じておるということは、あとでそういう表がお手元に行くと思いますが、それをお調べになればよくわかるので、相当効果があると私は考えております。  その次にお尋ねのありました法人の交際費の問題でありますが、これはある特定額以上の交際費に対しては課税したらよかろうということで、特に国民の奢侈の抑制ということをこいねがつておるときには、こういうことについての措置も必要と存じまして、これは今度の法案に出すことにいたしております。  その次に繊維品消費税の問題でありますが、繊維品消費税につきましては私どもでまだ確定案を得ておりませんので、お手元へ差出すに至つておりません、しかしながら私どもは、だれが見てもこれは奢侈であるというものについて課税をする、こういう考えでございまして、従つて仰ぜになるような大衆課税になるということは毛頭考えておりません。ごくぜいたくな階級が——もつとも昨日どなたか芸者が着れば労働服だということをおつしやいましたが、そういう説明もありましようが、しかし私どもはどなたでもなるほどこれは奢侈品だとお思いになるようなものにのみ、課税する考えでございますので、これは法案を差出しましたときに、御審議を願いたいと存じております。
  21. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 税金の問題は言えば切りがありませんが、私たちヨーロツパへ行つて見て参りますと、日本が一番税金のとり方がひどい。スウェーデンが一番理想的で、これは社会党が天下をとつておりまして、上から下までずつと連絡して、上は高く下は薄いというまことに理想的な税制をやつておりますから、社会党が天下をとつたらやりたいと思つておりますが、少くとも税金の問題については、日本のとり方が下手なのか、あるいは戦争に敗れましたから、いろいろ理由がありましようが、どうも苛斂誅求という声がある。これは税務諸のやり方も悪いと思つております。何といたしましても日本の税金問題はなかなか解決しないと思いますけれども、今までのやり方では私は納得しない。これは税金が高いということよりも、公平でないということであります。大法人にもつともつとかければある程度まで行くけれども、なかなかそうやらない。これはわれわれ立場が違いますから、大蔵大臣がこうだと言われればやむを得ませんが、少くとも現在のような自然増収のある場合には、できるだけ苛斂誅求のないように、国民納得して税金を出すような形をとつていただきたい、これは希望であります。税金の問題は切りがありませんから申し上げませんが、そういう点を御注意願いたいと思うのであります。  それから、本年は世界貿易戦の年でございますが、わが日本の口は立ち遅れまして中共貿易ができない。何といいましても日本の一番の欠点は、設備の古いのと近代的な科学を利用した機械の少いことであります。こういう点で、日本のコストを下げるのには、やはり機械の近代化ということをやらなければなりませんが、そういう点についての考え方が、この予算にないじやないかと考えますけれども大蔵大臣はどういうお考えを持つておられるのか、ひとつお示し願いたいと思います。
  22. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 最初の税についてのお話はよく伺つておきます。十分注意して苛斂誅求等のことなきよう措置いたします。  それから今の機械の近代化、合理化でありますが、これにつきましては、昨年もたしか五千万ドル以上の機械を輸入いたしております。しかしてこれをサンプルとして国内で同様の機械を多数つくらせることに努力いたしております。今後ともこれに対する外貨の割当等については、日本産業を進めるために、ぜひそういうぐあいに持つて参りたいと考えておるのであります。ただ、同時に日本の産業にはまだ経営についての近代化が少し足らぬ点があるように思います。たとえば青色申告という制度をつくつても、なかなか青色申告は全部に行き渡らぬような実情でありますので、やはり経営の近代化ということももう少し進めらるべきものであろうと考えております。両々相まちまして行かなければならぬ。これについては、いわば外貨の割当そのものが相当入れますのに役立つておりますわけで、別に予算措置としてこれについてとつておる点はそう目につかぬようでありますが、しかし、たとえば製鉄についてとかあるいは各種のものについて、通産省の方の予算面にはそういつたものが相当数字的に現われておると存じます。金額は私はつきり記憶いたしませんので間違うといけませんから、もし必要であれば通商産業省の方からお答え願うようにいたしたいと思いますが、やはり予算面にも相当計上してはございます。
  23. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 現在町で問題になつております為替の銀行でありますが、横浜正金の復活ということを伺つております。市中銀行は反対しておるそうでございますが、この点についての大蔵大臣の御所見をひとつお伺いしたい。  それからもう一つは、御承知のようにイギリスへ行きますと、外貨のやみドルというようなことがほとんどない。非常にドルの統制がやかましくなつておりますが、わが国では遺憾ながらやみドルが盛んに横行しておりまして、世上いろいろ問題になつております。貿易を伸張するためにはこういう問題を徹底的に解決しなければならぬと思いますが、それについてはどういう御意見なのか。この二点を簡単に伺いたいと思います。
  24. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 外国為替銀行について申し上げますと、私どもは外国為替専門銀行をつくる必要ありと考えまして、近くその法案を上程御審議願う予定にいたしております。これは日本の今置かれておる状況といたしまして、普通銀行が大体為替を取扱つておる、相当その面で働いてもおりますけれども、何としてもやはり世界的に支店網を持ち、世界的に為替操作のできる銀行でないと、十分な活動はできません。それからまた為替は、相当高等な、いわゆる専門的な技術を要するのでありまして、それにはいわゆる片手間仕事ではこれはやれない、こういうことが第二点に考えられます。それにつきましては、やはり為替元とか為替資金というものを、一般預金——一般というのは佐藤さん御承知通り、大体普通銀行では平均して七分二、三厘のコストについているのではないかと思いますが、そういう資金で、二分とか二分五厘の安い資金を持つておる外国為替銀行と競争して参ることはできません。従いまして、どうしてもある程度これは国家的に育成する必要があろうとも考えておりますので、私は外国為替専門銀行をつくる必要を感じまして、近く提案御審議を願う予定でございます。  その次にやみドルの問題であります。これは外国為替管理法で相当やかましく実は取締つておるのでありまして、そういう点が今仰せになつたイギリスのごとくに十分行われぬ点がありとせば、やはり国民の道義心が足らぬ、順法精神が足らぬということに帰するのでありまして、この点法制もさることながら、やはり国民の良心の自覚にまつほかないと私は考えておるのでございます。
  25. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 大蔵大臣は、自分たちのことを反省をしないで、国民に押しつけることが上手でございますから、それ以上言いませんが、今度は経審長官に二点ばかりお伺いしようと思うのであります。  一昨々日でありましたか、ラヂオの討論会にお出になりましていろいろ御意見を承りました。それで私たち考えておりますことは、どうも吉田首相のもとにおいては、この愛知さんたち考え方は矛盾があるのじやないか。あなたは盛んに世界的な視野においての感覚におき面しても、新しい感覚を持つておられまして、どうも吉田さんのような長期計画をさらつたり、経済計画性をきらう内閣においては、不向きじやないかと思いますが、あなたはそれで矛盾を感じておられぬのかどうかということを、一点お伺いしたいのであります。
  26. 愛知揆一

    愛知国務大臣 今回の財政政策にいたしましても、経済政策にいたしましても、私は大蔵大臣財政演説にもあります通り世界的な感覚から申しましても、いわゆる健全なる財政政策、健全なる産業政策で行かなければならない。こういうような考え方が、財政演説にも出ておる通りでありまして、私どもはそういう考え方を推進して参りたいと思つておるわけであります。そこで総理の御意見と違いはないかというお話でございますが、これは吉田総理考えておられるところを、そのまま私どもとしては遵奉して施策に当つておるわけでございます。
  27. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 もう一点お伺いしたいのでありますが、物価を下げるという問題で先ほど御説明を受けましたが、私ども納得行きません。この金利の引下げとか、あるいは設備の近代化という問題と、もう一つはあなたが通産大臣をやつておりますが、日本の中共貿易という問題について何らかの手を打たなければ、日本経済はなかなかうまく行かない。これは同僚の小峯委員も質問しておられましたが、少くとも輸入の統制はできても、輸出をふやすことは非常に困難だと思いますが、その点について自信があるかどうか、ひとつ説明願いたいと思います。
  28. 愛知揆一

    愛知国務大臣 中共貿易につきましては、当委員会におきましてもすでにお答えをいたしましたし、また通産委員会等におきましては、相当こまかく実績等も話をいたしておりますが、ただいままでのところでは、国会の御決議の趣旨もございますので、政府としては国連に対する協力の建前を失わざる限りにおきまして、具体的な折衝等については、できるだけの努力をいたしておるつもりでございます。現に最近におきましても、二、三の物資につきまして、私が就任してからも、従来の実績に徴しまして相当数量も多く、また商談も従来に比べまして一段と促進するような見込みでございまして、具体的な手を怠りなく打つておるような次第でございます。漸次この範囲は拡大して参ることと思つております。
  29. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 保安庁長官にお伺いしたいと思います。また軍機保護法というようなものをお出しになるようでありますが、日本保安隊の中に、水爆とか原爆以上の武器でもできて、それで秘密にされる必要があるのか、一体どういう武器があつて国民に知らしていけないというようなことがありますのか、うわさだけでございますからわかりませんけれども、また恐しい法律が出るように聞いておりますが、何のためにこんな法律をお出しになるのか、ひとつ保安庁長官に御説明願いたい。
  30. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。また昔の軍機保護法のような悪法をつくるのではないかという御質問でありますが、断じてさようでないということを申し上げて御安心を願いたいと思います。そこでわれわれの考えておりますのは、御承知通り日本が外敵の侵略に将来対処するように保安庁法を改正して行きますと、これについての防衛上の機密というものがなければならぬはずであります。ことにMSA援助に基きまして、アメリカから相当な装備の貸与を受けることになりますと、これらのものについても秘密をやはり保つてやらなくてはならないのであります。従いまして、両々相まつてわれわれは最小限度において、日本で将来またつくりますような装備なんかについての保護を目的として、国民の自由を阻害しないような厳格な範囲において、一つの法案をつくりたいというので、目下これを研究中であります。
  31. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 保安庁長官にもう一点お伺いしたいのですが、その軍機保護法というものは、どのくらいの範囲でおやりになるのかということと、この国会に御提案になるのかどうかということをお伺いしたい。
  32. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 この国会に提出して御審議を願うつもりでおります。その範囲はきわめて小範囲、たとえば将来日本でつくります兵器装備の点について、秘密を要するものについて、ごく限度を縮小しまして、また万一不幸にして外敵の侵入を受けて、今度できます自衛隊が出動するような場合において、その行動なんかについて秘密を要する点があることは当然でございます。それらのようなごく厳密な特殊の行動あるいは事項というものについて、その秘密を保つて行きたい。この限度にとどめたい、こう考えております。
  33. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 なお副総理に最後にお尋ねしたいと思います。最近の国内状況を見ますと、ちようど満州事変の前のような、非常にあわただしい空気が出ております。そこでやはり言語統制とか、あるいは反動立法がいろいろ出て来ると思うのでございますが、かねがね問題になつておりました情報局のようなものをおつくりになる意思があるかどうか、この際お尋ねしたいと思います。
  34. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 そういう考えは全然持つて知りません。政府として一番重要なことは、内外の動きに対して正しい判断を刻々に持つているということで、それにはあらゆる方法で情報を集める必要は感じておりますけれども、今申されましたような機関をつくる考えは全然ございません。
  35. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 最近のMSA援助の問題、それから警察法の改正、あるいは教員政治活動の問題等々、反動立法がどんどん出て参りまして、その反面におきましては、官庁の汚職事件、造船疑獄その他の問題がどんどんできておりますが、まことに憂慮にたえないような状態が出て来ております。こういうような場合に、先日も足鹿委員から日本の右翼運動の質問がございましたが、一体そういう点について、総理大臣がおられませんので、このあわただしい空気をどのような方法でこの内閣は指導されて行くのか、どういう方法でこういうこんとんたる日本の情勢を指導されて行くのかということについて、副総理の御意見を承りたいと思います。
  36. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 これは総理がおられませんので、私個人考えを申しますが、占領期間が長過ぎたために、いろいろな方面に少し弛緩状態を生じておるように考えます。その結果がいろいろな形になつて現われておるのじやないかと思いますが、ただいまお話の中にありました汚職その他の問題の表に現われましたものに対しましては、どこまでも徹底的にこれを調査しまして、法の命ずるところにより明らかになりました問題に対しましては、政府がかねて申しておりますように、これは厳正に処断するつもりでございます。その他政府といたしましては、政府自身が自制し、自粛して、この時局を乗り切る上に誤りのないようにしてもらいたいと心から期待しておる次第でございます。
  37. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 最後に一点、犬養法務大臣にお尋ねしたいのですが、いろいろ国会の軍要問題もありますし、それから国民がいろいろ最近の汚職事件などにつきまして、国会を無視するような空気が出て来たと思うのでありますが、国会無視のような運動が現在起りつつあるかどうかということを、法務大臣として御説明を願いたいと思います。
  38. 犬養健

    犬養国務大臣 お答えをいたします。一昨日ですか、足鹿さんにお答えしたときに同様なことを申し上げたのでありますが、戦前と比べまして議会主義そのものを否認する傾向はよほどなくなつていると思います。しかし議会の内容、議会の運営などについては、お互い国会議員の行動いかんによつては、また不満が大きくなることも考えられます。これはお互いがやはりまじめに考え直さなければならないと思います。
  39. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 これで終ります。
  40. 川崎秀二

    ○川崎委員 譲与進行に関する発言を求めます。
  41. 小峯柳多

    小峯委員長代理 川崎君。
  42. 川崎秀二

    ○川崎委員 一昨日私から申し出ました件について、委員長を通じ、法務大臣より御答弁を促したいと思います。その件は三木武夫氏が日本殖産金庫の顧問であるかいなか、ほかのことはいりませんから、顧問であるかいなかという一点について、明快なる御回答を願いたいと思います。
  43. 小峯柳多

    小峯委員長代理 犬養法務大臣、お聞き及びの通りの議事進行でございます。御答弁がありましたら……。
  44. 犬養健

    犬養国務大臣 お答えをいたします。三木武夫君が日本殖産金庫の顧問であるかどうかというお尋ねがありまして、爾来調査をいたしております。まだ全部終了いたしておるという御報告はできかねますが、ただいままでに判明しておるところでは、顧問であつたという証拠はない模様でございます。
  45. 今澄勇

    今澄委員 議事進行について。ただいまの犬養さんの御発言は、ただいままでのところということでございましたが、いかなる資料と、いかなる資料に基いて犬養法務大臣はそういう御答弁をなされたのか。もし将来犬養さんの答弁に間違いがあつた際は、あなたは法務大臣として責任をおとりになるのかどうか。ひとつ答弁を願つておきたいと思います。
  46. 小峯柳多

    小峯委員長代理 ただいま議事進行について今澄君からの御発言がありました。お聞き及びの通りでありますが、御答弁がありましたら、どうぞ……。
  47. 犬養健

    犬養国務大臣 お答えをいたします。実は三木武夫君のみならず、今澄さんの御指摘になりました表といいますか、その中に名前の出た方で、自分としては事実無根だから、できるだけ早く調査してくれと要求があります向きもございました。またお聞き及びのように、昨日当委員会におきまして山本勝市氏からも、公の席上で明らかに自分に覚えのないことだというようなお話がありました。もしそれが真実ならば、さぞかし御迷惑だろうと思います。同僚議員立場からもお察しいたします。さつそく調査をいたしておるわけであります。三木氏の場合は、まず日本殖産金庫に顧問として掲げられてある人名があるかどうか調べましたところ、顧問として特別に掲げてある人名がないのであります。そこで実質的な顧問というようなことをしておられたのかどうか、これを一応当金庫に当りましたところ、当金庫では、三木さんは、顧問でなかつたという回答でありました。しかしそれだけですぐ最終的な御報告をするにはまだちよつと早いように思いますので、正式の回答をまだ保留しておきます。一方やはり御当人としても、同僚議員としても御迷惑であり、それで御質問があつたろうと思いますので、中洲報告的なことでございますが、ただいまのところそういう証拠はない。こういうふうに申し上げた次第であります。
  48. 今澄勇

    今澄委員 今の法務大臣の御答弁によると、顧問という形式においても、実質的な顧問的役割をしておつたかどうかについても、中間的の報告であるが、そういうことはないようである、最終的な報告でないと言われますから、私はここにある資料をあげてあえてここで読みません。それはあなたの最終的報告のときに対決いたしましよう。なお私はいろいろな名前が出ておるからお取調べになりたいというあなたのそのお言葉、せつかく御答弁があつたのでありますから、おみやげを一つだけ差上げたいと思います。現在の閣僚の中においていろいろ顧問になられた方等もおありのようでありますが、埼玉県の荻島村字南荻島の一人の人から私の手元に渡つておりますものの中の、三百通ばかりのこれは一通であります。本社は埼玉県南埼玉越ケ谷町九百四番地、東邦住宅株式会社。これは掛金で金を集めて、被害者は非常に大きな迷惑をこうむつておると言うておりますが、それの出しておる営業案内、金を集めるために使つた営業案内の中の一番上に、顧問内閣官房長官福永健司という名前が印刷してある。この次御答弁になるときは、これもひとつ真実であるかどうか確めて御答弁願いたい。そのときはさらにその他の問題というのも御依頼いたしますが、とりあえずこの件を御依願いたしておきます。
  49. 小峯柳多

    小峯委員長代理 稲富稜人君
  50. 稲富稜人

    ○稲富委員 私は大体農業対策を中心といたしまして、さらに災対策等に及んで関係閣僚にお尋ねいたしたいと思うのであります。そのお尋ねをいたしまする前に、一応議員立法に対する政府の所見を、これは実は総理にお尋ねしたいと思うのでありますけれども総理は不在でありますので、副総理その他政府委員から適当に御答弁願いたいと思うのであります。  そのお尋ねいたしまする要旨というものは、実は総理は先般来日経連または経済同友会等の会合において、しばしば議員立法の弊害というものを強調せられておるというような新聞報道を聞くのでございますが、そういうような事実があるのか。また政府としてはさようなお考えを持つておられるのであるか。その点をまずお尋ねいたしたいと思うのであります。
  51. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 総理が経団連その他で議員立法について言われました意見は、これは議員立法そのものよりも、予算等の増額修正あるいは経費を伴う議員立法のことについて、国会側の自制が望ましいというような意味のことを言われたのであろうと考えます。議員立法は憲法に規定されておるのでありまして、これは私少しも不都合でない、当然なことであると考えるのでありますが、ただ憲法あるいは議会制度の沿革から申しまして、議員立法に、同時に国家の経費を伴う、あるいは予算の増額を伴うというようなものは、むしろ不自然なものであつて、何かそういう場合には政府の同意を求めるとか、何かそこに国会としての考え方が必要であるのではないかと思うのであります。
  52. 稲富稜人

    ○稲富委員 なぜ私はそういうことを前提としてお聞きするかと申し上げますと、さような総理の言葉が予算編成に非常な影響を来しまして、あるいは予算編成上においては、議員立法の法律に対しては何でもこれを軽視する。はなはだしきは予算の炎づけにおいてこの議員立法を骨抜きにするというような傾向がありはしないかとさえも、最近私どもは本年度予算を見まして考えるわけであります。かような点から、副総理の御答弁によりますと、予算を伴う議員立法、ここに非常に重点を置いておるというような御答弁でありますが、かりそめにも議員立法である以上、それを法律化したものを予算面においてこれを骨抜きにするということにつきましては、私は非常に遺憾だと思うのであります。かような点から私はこのことをお尋ねしておるのであります。ただいまも副総理の御言葉にございましたように、御承知のごとく憲法第四十一条には、「国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である。」と明記してあります。すなわち民主主義は、この立法機関が国家最高の機関であることを確立することでなければならぬと思うのであります。この意味において議員立法こそは、新憲法による民主主義の基本であるといつても過言ではないと思うのであります。もちろんかくのごとき責任ある立法機関であるがゆえに、ただいま副総理がお話になりましたように、議員もまたその立法に対しましては慎重にあるべきであることは当然ではありますけれども、単に議員立法というものが弊害を生ずるのだというような考えを一般国民に持たせ、さらに予算編成に当る大蔵当局がこれを幸いとして、新憲法の真の精神をまげて、旧憲法当時のごとき政治感覚によりまして予算編成をやることは、大きな間違いであると同時に、最もこれは遺憾なことであると存ずる次第でございます。  そもそも憲法弟七十二条には「内閣総理大臣は、内閣を代表して議案を国会に提出し、一般国務及び外交関係について国会に報告し、並びに行政各部を指揮監督する。」かように明記してありまして、政府は法律を議案として国会に提出している、かように考えるのであります。私たちはこの憲法において議案を国会に提出するということが、はたして政府がこの議案の中に法律を含めておるのか、ここに一つの疑点があるのですが、私はこれを論ずるのではありません。しかしながらかりそめにもこの憲法におきましては第七十三条に「内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行ふ。」という言葉がはつきり明記してあります。すなわち一には「法律を誠実に執行し、国務を総理すること。」二には「外交関係を処理すること。」三には「条約を締結すること。」四には「法律の定める基準に従ひ、官吏に関する事務を掌理すること。」五には「予算を作成国会に提出すること。」さらに六、七の条項がありまするが、以上のようにはつきり明記してありまして、この議員立法こそ憲法に規定されました当然のことであるといわなければならないのであります。政府は憲法の定める基準に従つて予算の作成をすればよいのでありまして、それをかりそめにも、ただいましばしば申しましたように、議員立法はどうもいかないというような印象を与え、しかもそういうような言葉を総理みずから吐かれるということは、憲法の精神を無視し、国会の最高の権利と義務とをみずから放棄するものといわなければならないのであります。どうかさような意味から、たとえ予算を伴う議員立法でありましても、それが一つの法律として決定した以上は、十分なる責任をもつてこの予算措置をするとういことが必要である、かように私は考えるのでありまして、次に質問することに関連いたしておりますので、このことにつきまして、さらに一応予算を伴う議員立法に対しましては、少くとも政府は義務として予算の裏づけをしなければならないと思うのですが、こういうことに対する政府の御所見を承りたいと思います。
  53. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 国会が国権の最高機関であるということは、憲法にも明記してありますし、申すまでもないことであると考えます。また議員立法が憲法の規定によりまして当然であることも異論の余地はありません。ただ、今御引用になりました七十二条でありますか、内閣総理大臣は内閣を代表して議案を提出するということの中には、私はこれは法律案も入つておると思います。従いまして政府が法律案を提出することは、議員民主制のもとにおいても少しもふしぎはないと考えておるのであります。今の予算を伴う議員立法でありますが、これは議会制度の沿革から考えまして、何としても不自然である。従いましてこれは政府予算を作成するというところにやはりその意義が含まれておるのであつて議員立法に予算の増額あるいは費用を伴う場合には、あらかじめ政府の同悪を求めるというような何らかの形式が必要なのではないか。これは今の日本の建前としましては、財政法の第十九条でありまするか、それに基いて予算の増額修正が認められておるようでありますが、私は諸外国の憲法を全部知つておるわけではありませんか、予算の増額修正を認めておる憲法は非常に少いのではないか、これは三権がはつきりと分立しておる場合には、それが認められましようが、同時にそれにはどこにかこれを拒否する力があるのではないかと思うのですが、日本の憲法は、はつきりした三権分立とイギリス風の議院内閣制の憲法と両方が少し混淆されておりまするために、国会の予算の増額修正を理論上認めておりまするが、それを食いとめる力が、拒否権が政府にない。従いまして、これは政府の方からかれこれ、行政府の方からかれこれするのではなくして、国会におきまして自制をしていただくということ以外に道はないのではないか。これは議院内閣制が正しく正平の運営を得ておる場合、言いかえますと、政府が絶対過半数の上に組織されておる場合、しかしてその絶対過半数を持つておる政党の統制が十分に行き届いております場合には、政府の意思に反する予算の増額修正ということは出て来ない。そこに自然に統制される根拠があると思うのですが、今のような場合には、政府の意思に反して予算の増額修正が行われることは、ここにいろんな政府として処理しかねる問題が起つて来ることが予想される。従いまして、私は先ほど申しましたように、国会側の自例によりまして、その調整ができないか、かように考えておる次第であります。
  54. 稲富稜人

    ○稲富委員 もちろん国会側の自制によつて予算を伴う議員立法に対しては自粛しなくちやいけないということは、ただいま私申し上げましたことでもそういうことは考えるのでありますが、しかしながら議員立法なるがゆえに、その予算編成にあたつては、この精神をなくするような予算編成にあるということは、明らかに行政府の立法機関に対する非常な抑圧といいますか、圧迫といいますか、その趣旨に沿わないゆえんだ、かように私は考えておるのであります。将来においてそういう字句の問題は別でありますが、一旦法律になつた以上は、たといそれが議員立法でありましても予算を伴うものであろうとも、これに対して行政的に圧迫を加えることはできない、私はかように考えるのでありますが、これに対して御意見を承りたい。
  55. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 行政的に圧迫を加えることは、もちろんこれはできもしませんし、やりようもないと考えております。先ほど申し上げましたように、議員民主制が正常に運営されておりさえすれば、すなわち絶対過半数の与党の上に政府が立つておる場合には、そういう矛盾は起つて来ないのであります。そこに今多少不自然な状態がありまするので、問題が生じて来るのだと考えております。
  56. 稲富稜人

    ○稲富委員 では憲法問題はこのくらいにしまして、ただいま申し上げましたような観点から、次に災害対策に対しまして、まず大蔵大臣にお尋ねいたしたいと思うのであります。これもただいま申し上げましたように、議員立法が非常に多く提出された結果じやないかと思うのでございまするが、政府はさきに二十八年度は台風弟十三号による災害に対する国庫負担額を千八百億円程度だと発表されておりました。ところが去る弟十六国会におきましては、災害復旧に対する国庫負担額は千五百六十五億と減少して予算措置をとられたのであります。しかるにこのたびの予算編成にあたりますと、この国庫負担額をさらに千五七十九億、とかように決定されておるのでございまするが、この基礎数字根拠を承りたいと思います。
  57. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 千八百九十億が千五百六十五億になつたことについては、もう数回表を出してお話しておるので、いまさらこの話を伺うのはちよつと驚いたのであります。これは一応御了承願つておきたいと思いますが、その後行政管理庁の方でも調べましたが、大蔵省の方でも実地について調べました。それは過年度災についても調べました。今お尋ねの二十八年災について調べたのでありますが、その結果どういうことになつたかといいますと、とうてい全部を調べるいとまがございませんので、私の方で二十九年災について——自治庁等が今実は調べておりますが、まず緊急監査の結果、農林省所管、運輸省所管、建設省所管で今計九千四百六十件を調べてみました。その結果重複査定——重複に査定を申出ているものが二百九件あります。不正架空工事——全然ない架空工事を申出ているものが百六十八件あります。さらに水増しその他のものになりますと、千七百六十七件あります。そういうことで、その結果合計いたしまして、まあ不当事由——不当なるものが件数で、九千四百六十件のうち三千三百三十四件あります。さらに査定額で百三十二億の金額に対しまして、不当と見るべきものが十六億四千五百万ある。こういうこと等で、これを一つの基礎にしまして——これは大蔵省が調べた分ですが、行政管理庁が調べたものはもうちよつとこれよりふえております。そういうこと等を参考にしてみますると、大体机上査定で今のような数字の方が穏当である、こういうことがわかりましたので、一応そういうふうな数字に改めた次第でございます。なおしかし実際において全部調べて参りますれば、あるいは増加するものもありましよう。また減少するものもあるかと存じますが、一応この九千四百六十件を査定いたしました標準に基いてやりますと、そういう数子が出て参るのであります。
  58. 稲富稜人

    ○稲富委員 ただいま大蔵大臣から減額された当時のことを承つたのでありますが、大蔵大臣の話を聞いておりますと、非常に件数が多いようであります。私どもの方にもそういうような資料をいただいておりますが、金額から申し上げますと、非常に少いように思つておるのであります。しかも再査定なんかの事情を見ますと、政府緊縮予算ために、三割くらいまたその査定を減らさなくてはいけないというように意識的に考えて、地方によつては無理に否定を下げさせられたような実情もあるのでありまして、私たちはこの千百七十九億に対しては、一兆円予算ということを非常に頭に置かれて、なるたけ国庫負担額を少額にしようというような、かような意識が予算編成技術の上に非常に働いておるではないかという考えを持つのであります。さような結果から、ただいま申しましたような査定に対して、さらに苛酷なる再査定が行われておる現状でございます。地方におきましては、実際の仕事にあたりまして、すでに農林省あるいは建設省関係、これが大蔵省と一緒に前に査定をして受取つたものを認めてもらえるものと思つてつた。ところが今度さらに再査定で、前よりも三割減らさなくてはいけないというような、こういう結果から先に割出した査定をやられるということを罹災者はくやんでいるのであります。こういう点から私たちは、この千百七十九億という国庫負担額の現われた基礎数字は決して妥当な査定、妥当なことによつてなされたものではない、かように考えておるのでございます。ただいまのように大蔵大臣が各庁の机上の査定によつてこれを減らしたとおつしやるならば、しからば大蔵省がこの最後の額を決定されるにあたつて最初に査定をいたしました建設省であるとか農林省その他の諸官省と、十分なる稟議をなされたかどうかということをまず念のために、承つておきたいと思います。
  59. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 十分な相談をしたかどうか、私はそういうことはよく知りませんが、一応話をして予算化したのでございます。一応話はしてございますが、しかし私ども大蔵省が査定します時分に、大蔵省独自の査定をすることがやはり大蔵省に与えられた権限でございますので、これは独自の査定をいたしております。
  60. 稲富稜人

    ○稲富委員 だから私は、先刻申し上げましたようなことをまた申し上げるわけでございますが、少くとも農業災害の査定にあたりましては、農林省と大蔵省の出先とが立ち会つて最初の査定をいたしておる。建設省関係においてもしかりでございます。しかるにその査定を大蔵省独自の再否定によつて減額するということは、あまりに大蔵省の独断ではないかと思うのであります。各省において最初の査定をやつておりますので、これを変更になる場合に、その主務官庁に対してある程度の意向を聞かれるということ——大蔵省が予算編成をやられるのであるから、その義務があるかどうかわかりませんが、そのくらいの親心があつて最後の答えを出されるということが政治であり、これが大蔵大臣の災害に対する最も熱心なる態度である、かように私は考えるわけでありまして、この点一方的に、決定したから相談する必要はない、これでは罹災者は浮ばれないと思いますがその点ひとつ承りたい。
  61. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 稲富さんのおつしやるのはもつともで、私どもの方は、一方的にと申しますのは、今の査定表ではそうであるが、しかし予算を盛るときに全部打合せをして、それでは農林省の分についてはこういうように出しましよう、建設省の分についてはこういたしましようと言つているのでありますから、御相談していることは——事実お役所というものはお役所の仁義で、少し言葉が悪いが相談をいたしております。そう一方的に物をきわめているということはございません。それでは相手方が承服してくれません。このことはおわかりになると思います。ただ最後の責任を、たれがとるかということをお尋ねになつたと、少し先まわりして考えたことは悪いかもしれませんが、その点では大蔵省独自に査定をした、そういうことを申し上げたのであります。
  62. 稲富稜人

    ○稲富委員 くどいようでありまするが、しからば、私は名前はさしませんが、ある政府の責任のある方から聞いたところによりますと、最後の千百七十九億を決定する場合は、建設省も農林省も全然知らないうちに、大蔵省でその答えが出たのであるということであります。その方の名前をここにあげれば御迷惑と思いますから出しませんけれども、われわれはそういうような事実を耳にしているので、大蔵大臣の御答弁というものは、私が知つているその内容とは非常に違う、かように私は考えるのであります。さらに、本年度の災害が五百三十二億二千九百万円ということになつております。これは過年度災害も含まれておるそうでありますが、この内容におきまして、十二号台風と水産に対する災害の本年度の支出額は幾らになつているかということを承りたいと思うのであります。
  63. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 二十八年度の災害復旧の予算は三百七十八億円であります。なお、予算査定の手続についての問題でございますが、私どもの否定方針は、先ほど大臣からもお話があつたのでございますが、監査の結果並びにいわゆる超過工事を一応災害復旧の対象から別にいたしまして、その分は別途改良事業として考える、そういう方針をとつて査定をいたしておるわけでございます。なおまた各省の査定中には、いわゆる仮定査定になつておるものも少くないわけでございまして、それらにつきましては相当削減し得る見込みが立つておりますので、そういう点を勘案いたしまして、こういう結果になつたわけでございますが、その査定の方式につきましては、各省にもお話をいたしておりますし、その方式それ自身につきましては、各省でも御了承を得ておると思います。但しこれは予算積算上の査定でございまして、今後、建設省関係も、農林省関係も、再査定をこれから実行するわけでございます。その結果いかなる数字が出るか、私どもは、大体私どもの予定しておるラインにおちつくものと確信いたしておりますが、これは別途査定の問題でございますので、それによつて現実の補助額がきまるわけでございまして、そういうようなことで、各省ともこの予算に対しては了承を得ておるというふうにわれわれは了解いたしております。
  64. 稲富稜人

    ○稲富委員 ただいまの主計局長のお話によりますと、二十八年度の災害の負担額というものは三百七十八億ということでございまするが、これはかつて各党申合わせによりまして、災害復旧の年度割は、昨年度において三判、二十九年度において五割、来年度において一側、いわゆる三・五・二の比率を尊重するというように私は記憶をいたしておるのでございまするが、たとい、ただいま大蔵大臣の御発表になりました千百七十九億と一応いたしましても、三百七十八億というのは、その申合額の五割には相当しないわけでございまするが、これに対してはいかなる考えをお持ちになつているか承りたいと思います。
  65. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 この点は、三・五・二の比率ですと、お示しの通りでございます。ところが現在の予算配分の上から見まして、私どもはひとり災害対策のみに五を計上し得ないのでありまして、ここでやはり総合的に見まして、食糧増産対策費であるとか、あるいは公共事業費の中に重なつておるもの、関連があるものがあることは稲富さん御承知通りであります。そういうものをあわせて一体として考えて、その結果こういう三百七十八億という数字を出したのでございますが、これを重点的に効率的にやつていただけば、これでほぼ六割見当の二十八年度災害についての復旧をなし得るかと考えております。現在の日本の乏しい財政の配分をいたします上から、やむを得ずこういうふうに措置いたしたような次第であります。
  66. 稲富稜人

    ○稲富委員 私はこの三百七十九億で本年度がまんしてくれろという政府の御方針に対しては、どうも承服できないのでありまして、国家財政が逼迫しているとおつしやいますけれども、現在農地その他の復旧をやるということは、次の増産、次の生産に最も必要な条件でありますので、これをゆるがせにするということは、私は許し得ないことだと考えます。かような意味におきまして、私たちは、一日も早くこれを復旧するためには十分なる予算措置をやるということが必要であると思うのであります。ただいまお話のありましたような、国庫負担額の総金額に対しましても、再査定をされるということもただいまの御答弁で承つたのでありますが、さらに先刻のお話によりますと、農林省、建設省等にはある程度の話はしてあるのだというような話でありますけれども、これは、建設省、農林省では知らないでこういうふうになつたということもわれわれは聞いておりますので、再査定によつて、あるいはその他各省からの意見が出まして、これが不十分な予算であるというような見通しがつきました場合は、何とかこれに対して予算措置をやられるという方針があるかどうかを、念のためつておきたいと思うのであります。
  67. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 再査定の結果増額いたしまする場合には、これは私どもは、本年の予算編成の基本方針から、本年度でこれをふやすわけに参りませんので、進捗程度がにぶつて参ることになると存じます。
  68. 稲富稜人

    ○稲富委員 それでは次に、これに関連してでございまするが、農林大臣に承りたいと思うのであります。  ただいま農林大臣お聞きの通り、どうも政府の金というものは十分参つていないのでございます。農林大臣は、さきの救農国会の折も、六月の田植えには万難を排して間に合うように農地の復旧をやるべきだと言われておつたのでありまして、各罹災者あるいは地方公共団体等は、さような気持で、本年の六月にはぜひ田植えができるような十分なる備えをいたしまして、今日復旧に当つておるのでございまするが、すでに予算の決定せる本年度の復旧助成額すらもまた各町村には割当が決定していない、こういうような状態でありまして、各町村では不安のうちに復旧を急いでおるのが今日の現状であります。これは、農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助の暫定措置に関する法律による補助のところで、事業を施行する者に対し直接国が補助することになつているので、補助金の交付手続、事業の実施等が、指導監督等により種々の不便があるように私たちには思われるのであります。これを間接補助の方式にかえた方がすみやかにできるのじやないかと考えるのでございますが、これに対して政府はいかなる考えを持つているか、承りたいと思うのであります。
  69. 保利茂

    ○保利国務大臣 お答えいたします。災害復旧の関係につきましては、稲富さん御承知のように、会計検査院の検査報告によりましても、農林省所管の関係が非常な批難の報告を受けているわけでございます。昨年の例に徴しましても、国で直接責任を打つ件数が約三万件に達しており、そのうち実際に農林省の職員が現場査定をいたしておりますものは約二割、あとの八割というものは紙上査定になつており、このことが災害復旧事業に非常な問題を残している根本原因だと私は思つているわけでございます。それでも当局としましては、予算上のそういうルーズをできるだけ排除いたしまするために、かなりめんどうな取扱いをいたしております。二重にも、三重にも村から県、県から国、国から県、県から村とそれを繰返し、押し返し返して、やつと最後に補助金の交付をするというような、非常に慎重な扱いをこれはせざるを得ない現状にありますから、昨年度の問題にしましても、十二月十日にやつと県まで補助金の交付をしている。ところがこれは、県がまた町村の末端におろすまでに、また非常にめんどうで、おそらく稲富さんのお話のように、現在まだ町村の末端に至つていないところも相当あるのではないかと心配いたしておるわけでございます。結着するところは、国自身で目が届かないものに、国が責任を持つておるというところに問題の根本があると私は思います。そういう意味におきまして、御意見のように、間接補助と申しますか、そういうことはぜひ実現をいたしたいということでただいま検討いたして、できるだけ早い機会にこれを解決したいと考えております。
  70. 稲富稜人

    ○稲富委員 この問題につきましては、ただいま間接補助の方法をとるようにして行きたいという農林大臣のお含みもあるようですから、どうか政府といたしましても、罹災者と町村当事者の窮状を十分考えられまして、できるだけ早く実現しますように善処方をお願いしたいと思うのであります。  さらに先刻申しましたように、この災害復旧に対する予算処置は、農林大臣もお聞きになつておりましたように、大蔵省の一方的減額によつてやられまして、実は農民は泣いておるのであります。農民から申しますと、先刻申し上げましたように、農林省と大蔵省の官吏も一緒に立ち会われたのだ。それでほんとうにこれは自分たちの査定ができたのだ。これに対して十分な補助がもらえるのだ、こう思つてつたのが、また今度は査定が変更されて、非常に苛酷な結果になつて、農民には、変な言葉で申しますと、だまされた、こういうような不満さえあるのであります。ところが先刻大蔵大臣はさらに農林省が再査定して必要な分があつたら大蔵省もこれに対しては遠慮するのだといような御丁寧な御答弁もあつたのであります。従いまして農林省は、この罹災農民の立場から、しかも今日の農地の復旧ということが日本食糧増産に非常に重大なる役割を持つものである、こういうような立場から、ぜひひとつ丁重に扱つていただきまして、大蔵省に予算の裏づけ等に対してさらに御努力をお願いしたい、かように考えておるわけでございますが、これに対する農林大臣の御決意のほどを承りたいと思うのであります。
  71. 保利茂

    ○保利国務大臣 先ほど申しましたように、農林省といたしましても、現場査定のできます限りは現場査定をいたし、現場査定のできないものは農林省としての紙上査定をいたしております。この査定に対しましても、まつたくこれはお話の通り、大蔵省あるいは会計検査院あるいは行政管理庁等によつて、相当の批難を受けておる件数もあることは事実でございます。また災害復旧に関連して予算の執行がだらしなく行われているという批判も、かなり強いわけでございまして、この点につきましては、私ども非常に責任を感じておるわけでございます。ただしかし一、二の不正手段があつたために、災害復旧全体がそういうように行われておるというように、批判的に見られることは私は忍びない。どこまでもそれは同時に正直者がばかをみるという結果にならないようには、十分主責任を持つて当らなければならぬと考えております。私どもとしましては、いろいろ各財務局でありますとか、行政管理庁でありますとか、件数のあがりました分につきましては、手の及ぶ限りもう一度見直して行きたい、こういうふうに考えております。
  72. 稲富稜人

    ○稲富委員 次にただいま申し上げましたような復旧費の不足に対しましては、これは六月までに仕手を完成したい。かような見地からやむなく中金または信連等よりつなぎ資金の融資を仰がねばならないというような状態であるのであります。ところが、もしもこの金利の支払いをやつておりましては、せつかく補助率が高率になつたものでも、何にもならなかつたということになるのでありまして、町村がこれを負担しておりますると、町村財政は破綻をしなければならないというような現状さえも今日あるのであります。どうか政府はかような中金並びに信連からのつなぎ融資に対しまして利子補給を行うか、または政令を改正いたしましてつなぎ融資の利子分を事業費に含めて補助ができるような処置を講ずる、こうして不屈なる災害復旧の熱意にこたえるということが、政府として当然とるべき道ではなかろうか、私はかように考えるわけでございますが、これに対して農林大臣はいかなるお考えをお持ちになつておるか承りたいと思うのであります。
  73. 保利茂

    ○保利国務大臣 従前の例に徴しましても、そのことは、たとえば五割の補助が行つても、結局補助金が行く前に金融措置をしておるために、金利にある程度食われて、実際の補助率は四割か三割になつておるというのが、これにつきものであつたわけでございます。今度の大規模な災害におきましては、特にそのことがお話のように強く現われて来ておることは、私も実情として認めておりまして、心配をいたしておるわけでございます。ただ従前の扱い方をここで改善し得るかどうか、これは当然予算措置を伴つて参りますので、その方で検討はいたして参りまするけれども、ただいまこれをどういたしますということは、まだ御答弁をなし得る段階に至つておりません。
  74. 稲富稜人

    ○稲富委員 農林大臣にもう一つ承りたいと思いますのは、どうもどうするとはつきり言われないのでありますが、これは現実に進行しておる問題でございますので、当然これは政府が何とかすべき性質のものである、こういうことをお考えでございまするならは、その農林大臣としての御意見を承りたいと思うのでございます。
  75. 保利茂

    ○保利国務大臣 その点につきましては、政府がとにかく五割なら五割、六割なら六割の補助をする。それが補助率の実態としては二分か三分か下まわつて来るということになるわけでございますから、この矛盾は何とかして解消しなければならぬじやないか。二十八年度につきましても、地方起債等の関係において、ただいま主計局長の扱いを聞きましても、国としてはできるだけの処置はとつておるわけでございますけれども、しかしお話の点は災害復旧に関する根本の問題でございますから、よく政府部内で検討するようにいたしたいと思います。
  76. 稲富稜人

    ○稲富委員 ただいま申し上げました問題は、現在仕事の進捗上に非常に大きな結果をもたらすのでございますので、大体農林大臣としてはこれは、妥当であるし、何とかしなければいけないというようなお考えがあるようでございますが、どうも予算を伴うので、農林大臣がこれに対して先にくちばしを出すわけにも行かないというような御遠慮のある点もうかがえますので、これに対しまして大蔵大臣は何とかしなければいけないという考えであるか、あるいはやむを得ないという考えであるか。大蔵大臣の御意見を承りたいと思うのであります。
  77. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 よく農林当局と打合せまして善処いたしたいと考えております。
  78. 稲富稜人

    ○稲富委員 農林当局と打合せて善処されるそうでございますが、ここで重ねて大蔵大臣に申し上げたいと思うのであります。こういうように中金並びに信連あたりからつなぎ融資を仰がなくちやいけないような結果になつたということは、国家財政上やむを得ない場合、国家の支出が非常に少い、しかるに仕事は六月までにやらなければいけないというところからやむなく出た結果でありまして、その責任の一端は政府にもまた国にもあるといつても過言ではないと思うのであります。そういうような意味におきまして、この問題に対してはどうか農林当局の意見を十分聞かれまして、大蔵省として予算の裏づけに善処いただきますように、ぜひお願い申し上げたいという希望を、ここで重ねて申し上げたいと思う次第であります。  次に農業対策につきましてお尋ねしたいと思うのであります。   〔小峯委員長代理退席、委員長着席〕 まず農林大臣にお聞きしたいと思うのでございますが、わが国の現状においては農村の自立経済をはかるためには、辰村に対するできるだけの保護政策が必要である、かように私は考えるのでございます。これに対して所管の農林大臣は、いかなる考えをお持ちか承りたいと思うのであります。
  79. 保利茂

    ○保利国務大臣 日本農業の実体からいたしまして、ほかの機会でもお尋ねがありましたが、農産物の価格がある程度適正なところで運用されて行くということになれば、その価格の刺激によつて増産はもたらされることであろうから、それでもいいじやないかというような説をなす方もございますけれども、私は日本農業の実体が過去ずいぶん長い間いろいろの手を用いて、耕作営農の技術の改良向上のために長い努力の上に、いわば畳の目のような足取りで、徐々に向上をいたして来ておる、それではこの辺でもうほうつておいても価格だけで行けるかということは、私はどうもそういう考えにはなり得ない、そういう実体ではない、農業の本質からいたしまして、耕作技術の改良をいたすにしましても、あまりにもこの呼び水をここに注いで技術の改良進歩をはかつて行く、そして農家の経営を安定せしめて行くという丸めには、どうしても国の援助保護というものが絶えず惜しみなく払われて行かなければならぬ、こういうふうに考えております。
  80. 稲富稜人

    ○稲富委員 ただいま農林大臣の御答弁に対しましては、私もまことにそうであらなくてはならない、同感であります。ところが、二十九年度予算には、農林予算が極度に、圧縮されておるのであります。特に食糧増産対策費が、前年度に比しまして減額されておるということは 私たちの最も遺憾に存ずる次第でございます。何となれば国家として食糧の自給をとることは最も必要でありまして、かくのごとき意味からしましても、農業対策の重点は食糧増産対策にこれを求めなければできない、かようなことも明白な事実でございます。ところが政府はこの予算編成にあたりましては、緊縮予算編成の必要は国際収支の逆超からすみやかに脱却するためだと言われておるのであります。しからば一体今日までの食糧の輸入が、国際収支の上にいかなる状態になつてつたかといいますと、これはすでに政府が御承知通り昭和二十四年におきましては、輸入総額が九億五百万ドル、この九億五百万ドルの中に食糧の輸入総額というものは三億一千八百万ドルでありまして、その輸入総額のすでに三五%に達しておるのであります。二十五年におきましては輸入総額が九億七千四百万ドル、この中に食糧の総額というものは二億五千二百万ドルでありまして、このパーセンテージは二五・九%というこの食糧が大きな役割と申しますか、関係を持つておるのであります。二十六年におきましては、すべての輸入総額が十九億九千五百万ドルに対しまして、食糧の輸入総額は三億五千五百万ドル、これはその輸入総額の一七・七%に相当いたしております。二十七年度はさらにすべての輸入総額が二十億二千八百万ドルであります。その中に食糧の輸入というものは四億一千六百万ドルであつて、その比率は二〇・五%になつておるのであります。二十八年度におきましては、これは災等の関係もありましたでしようが、すべての輸入総額が二十四億九百万ドルのうち、食糧は六億二千五百万ドル、このパーセンテージは二五・九%の輸入比率になつておるのであります。こういうような実情を見ましても、この災害がなかつた二十七年度においても二〇・五%が輸入食糧になつておる。こういう状態でありまして、比率は二〇・五%でありますけれども、すべての輸入総額が非常に多くなつておりますので、パーセンテージは少くなつておるが、食料の輸入総額というものは四億一千六百万ドルという非常に多くを示して来ておるのであります。かような純然たる消費物である食料の輸入増によつて国際収支はおもしろくない結果になつておると思うのであります。昨年経済審議庁が発表されております経済白書の中にも、政府は今日農村における食糧増産対策を放任するならば、人口増加と耕地の壊廃等のために、五年後にはさらに二十万トン近くの食糧の輸入増加を必要とすると発表しておるのであります。かような事実から見ましても、食糧の自給態勢をつくるためには、食料対策すなわち予算面における食糧増産費の増額を必要とするのに、かえつてこれを減額するということは、実に私は本末転倒であるといわなければならぬと思うのであります。私たちはかような国際収支をよくとりもどすためにも、食糧増産対策というものはやるべきである、私はかように考えるわけでございますが、これに対して大蔵大臣はいかなる見解を持たれておるか、まず大蔵大臣の御意見を承りたいと思います。
  81. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 国際収支の面から見ましても、また日本国民生活安定の上から見ましても、食料の増産が大切なことは申すまでもないと存じます。但し本年は食糧の増殖対策費は、御承知のごとく前年度よりごくわずかでございますが増加いたしております。しかし同時に私は予算増加のみをもつて食料増産を考えるということではなくして、やはり農家の方がこういう国の財政状態をよく見て、やはり自分の努力をさらに加え、創意をさらに加えるということでやつていただきたいということを考えるのでありますし、また、たとえば日本の土地改良等も、ある程度効率的な面が少くなつて来ている向きもあるやに思うのであります。従いまして今後におきましては、もう少し増産に対して創意くふうが必要であると同時に、やはり農家の方が努力することが最も必要ではないか、もつとも農家の方が怠けておるというわけではありません。一層の努力をしてくださることが、特に予算の少いときにおいては一層そうである。しかし予算面におきましても、昨年より若干ずつ増加しておることは、数字で御承知通りであります。
  82. 稲富稜人

    ○稲富委員 大蔵大臣は一昨日も、予算増加したばかりでは増産対策にはならない、こういうことを繰返して言われておるのであります。しかも食糧増産対策費が非常にふえておるのだ、こうおつしやつておるのだけれども、どうも私たちが見ますと、実質面の食糧増産対策費はふえていない、どの点からどういうものを御計算になつておるか知らぬが、ほんとうに増産に対する実質面から見ますと、私は決してふえているということにはならない、かように考えるのであります。ことに私は本年度予算編成にあたりまして、これは大蔵省の考え方が違つたのか、農林省の考え方が違つたのか存じませんけれども、非常に考えが違つて、農村対策予算編成上に現われておることや、あるいは農業に対する補助というものは、一切米価に換算されているんだ、こういうような考え方が今日の予算の上に現われて来ておるのではなかろうかと思うのであります。現在の米価は神水知のごとく、ほんとうの生産費から割り出しますと、格安で買い上げられております。農民には生産費を割るところの価格で政府は買い上げておいて、そうして一切の農村の費用というものは、これは一切米価に換算されているのだというような政府の見方というものは、私は非常に間違つておると思う。これは農村の実情、農業生産品の実情を知らざる一方的な、自分よがりの解釈の仕方であろうと私は思うのであります。ほんとうに政府が一切の費用は農民が負担しなければいかぬというならば、米価に換算されているというならば、米を十分なる生産費で買い上げればそれでいい。ところがそれをやらないで、ただ一切の費用は米価に換算されているのだということは、いかに予算編成を圧縮するといえども、あまりにも押えけつた考え方ではなかろうか、かように私は考えるのであります。ことに現在のような資本主義経済組織のもとにおきましては、常に経済面によつてあらゆる角度から農村は圧迫されているのでありまして、この圧迫されている農村は、少くとも政治力によつて何とか経済自立をやつて行くようにするのが、政治でなければならないと思う。ところが政治面に対してはひとつも力を注がずして、ただ農民に働け働けと言いましても、ほんとうに農民が働く意欲も起きないと同時に、また働くだけの力が与えられないと思う。農民を働かせようと思うならば、働かせるだけの力を与えてこそ、農民は十分働くことができる、私はかように考える。この点から、大蔵大臣が、農民は一生懸命働いてくれろ、予算自分たちでくめんしてやつてくれろと言うが、これでは農村の事情を知らざるもはなははだしいと思うのであります。ただいまの大蔵大臣のおつしやるような、かような農村対策考え方で、はたして日本の農村が立ち行くかどうか。その当事者であります農林大臣からひとつ御所見を承りたいと思うのであります。
  83. 保利茂

    ○保利国務大臣 来年度予算食糧増産対策費が非常に少い、これは私も率直にその少いことを認めております。不満足であります。けれども、国全体の財政経済の上からやむを得ない来年度予算でございますから、この予算をできるだけ食糧増産の実をあげますように効率的に動かして行く、執行して行くという責任をよけい痛感いたしておるわけであります。食糧増産は、たとえば新しい農地の造成、干拓でありますとか、開墾でありますとか、かなり大きな金のかかる面も、もとより余力のある限り力を注いで行くべきである。同時にまた何と申しましても、既耕地三百万町歩の生産力と申しますか、農地条件を改良、改善して行くということが、非常に大事である、そこに土地改良の必要のゆえんがあるわけであります。お話のように、わが円の農民諸君が世界に冠たる勤労をやつておられることは、これはもう何人も否定するものはいないわけであります。ただしかし働けはいいというだけでは私はいかぬのじやないかと思う。働くためには、効率的にそこに成果が上るような働き方、すなわち労力を加える農地の条件を改善して行く、そして改善せられた農地の上に進歩した耕作技術を加えて、農民の働きが十二分に目的を達せられるように持つて行かなければならぬじやないか。そういう点におきましては、私は常にそう感じますが、土地改良等を施したあとの耕作技術というものは、よほど指導がいるのじやないか。そういう点については、この乏しい予算で少うはございますけれども、特段の配慮もいたしておるわけであります。食糧増産関係は、何と申しましても、既耕地三百万町歩の生産力をいかにして引上げて行くかというところに、私はかぎがあるように考え、そこに主力を注いで行くべきである、かように考えております。
  84. 稲富稜人

    ○稲富委員 本年度の、予算で農林大臣はよくがまんをされたと、私は感心をしているのでありまして、今後この予算で農林行政をやつて行かれる農林大臣の苦痛を、私は察するのでありますか、ただここに大蔵省の考え方が、本年度に限つて、ただいま大蔵大臣の言われるように、急にかわつて来たことは、どこに原因があるかというと、私のひがみかもしれませんが、MSA援助でアメリカから過剰農産物を入れてもらうから、日本の農村はどうなつてもいいのだという、かような考え方ではなかろうかとさえ疑わなくてはならないことを、私は悲しむものであります。この点は私のひがみかわからないけれども、悪くすると、農民がそう考えてもいたし方ないのではなかろうかと思う。そこで、農村に対してもう少し積極的になぜやらないかということを、私たちはほんとうに考えなければいけないだろうと思うのであります。さらに、政府はこのたび食料対策協議会を設けられている。この食糧対策協議会をつくられたのは、どういう意味であるか、どうも予算が少かつたり、てれ隠しにこういうものをつくつて何とかやるのだ、こういうようなつもりでやられたのか、あるいは米の統制撤廃でもやろうというつむりであるのか、あるいは余剰農産物の買入れに対して、どうしようという考えを持たれているのか、この点の運用に対して、これも所管大臣から承りたいと思うのであります。
  85. 保利茂

    ○保利国務大臣 間もなくMSA協定による小麦買入れもできそうだから、食糧増産の手をゆるめてもいいというよりな考えは毛頭持たないのであります。ひとり日本の問題だけでなしに、最近のイギリスの状態も日本の食料関係に非常に大きな示唆を与えている。戦後イギリス食糧増産に非常な力を入れて、今日国際的な供給力が強くなつているために、イギリスでも非常な議論かあるやに聞いております。私は自立経済を達数して行きます上の一番大きい障害は、先ほどお話の通り、外貨の状況から稲荷さんのお話のような状態か続いておつたんでは、これは自立経済達成といつてもなかなか困難だ、どうしても全国的な力によつて、これを除去して行くというところに全力を注がなければならぬということを根本的に考えているわけであります。  食糧対策協議会は単なる緊急予算のてれ隠しじやないかということでありますが、これはてれ隠しになりましても、なりませんでも、責任はとにかくとらなければならないわけでございますから、責任回避のためにかようなもりを置いたということでは絶対にございません。今日食糧管理制度の改善は、いずれの方面からも一致して強く要請せられている問題だと私は思うのであります。もちろん国会がございますから、国民的な議論は国会において行われることを期待しておりますけれども、同時に、政府の責任において管理制度を改善して参ります案をつくりますためには、できるだけ広く御意見も承つて、全体に関する問題でございますから、慎重に確立をいたしたいために、この協議会を設けている次第でございます。
  86. 稲富稜人

    ○稲富委員 農林大臣に伺いたいと思いますが、そうすると、MSA援助によりまして小麦の導入をいたしますと、日本の精麦との価格差に対する調整はいかなる方針でやられるかということが一つと、さらにまた、ことしの食糧増産対策費の中から、病虫害駆除に要しまする薬品の補助が非常に減額されております。私は今年のような気候不順の年には、相当に病虫害の発生するということを、従来の統計から考えても考慮しておかなくてはならないと思う。そうでないと、こういうことに対しましては、いざというときに間に合いませんので、もしもそういうような事態になつたならば、あるいは予備金からの支出でもして、これに対する万全の策をとるというようなお考えがあるかどうか、この二点を承りたい。
  87. 保利茂

    ○保利国務大臣 MSAの小麦の問題は、協定が成立して実際に入つて来るようになつてからの問題でございますけれども、大体今日買い入れております国際小麦協定と同じような扱いで扱つて参りたい、私ども食管当局の方としてはそういうふうに考えております。新たに補給金を要するというような価格でないことも大体見通しがついておるのであります。これに従来通りの扱い方で、少しも他のわくと異なる扱いはしないつもりであります。  それから農薬の関係が、事実予算編成途上におきましては、たいへんな問題になつたわけでございますけれども、たしか五万町歩か六万町歩の発生予想をした予算になつておると思います。病虫から来る減収というものは、想像以上に大きなものがございます。従つてこの食糧増産の緊急性からいたしまして、この病虫害の対策というものには、従来とも政府としては十分力を入れて来ておるわけでございます。事態が発生いたしましてから、なお下足するという場合には、十分善処いたしたいと考えております。
  88. 稲富稜人

    ○稲富委員 では最後に一言希望を添えましてお願いをしたいと思います。御承知のごとくこのたびMSA援助によりまして、アメリカの余剰農作物日本に導入されるのであります。これはもうすでに御承知だと思いますが、アメリカは今日食糧農産物増産のために非常なる農村恐慌を来しておるのでありまして、かような農村恐慌、農民衣救済するための余剰農産物の海外輸出というものがアメリカでは考えられている。私たちはそのアメリカの農民を保護するための余剰農産物の海外輸出を受入れて、これによつて日本の農民が圧迫されないような考え方を十分打つことが必要である。それと同時に、私は先刻も繰返しましたように、今日最も必要なこの増産対策費に対しましては、かりそめにもそういう問題があるがために、日本の農村が圧迫をされるような感じを持たないように、十分懇切なる予算の組みかえも考えていただきたい。あるいは必要なる増産対策に対しましては、予備費からでも支出して、そうしてほんとうに食料の自給態勢をとるように、政府は熱意を持つてもらうことが、農村経済を自立する最も必要な点であるということを、重ねて私は希望いたしまして、これに対する政府の再処方をお願いしたいと思うのであります。いろいろお尋ねしたいこともありますけれど、時間の制限がありますので、これをもつて私の質問を打切ります。
  89. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 一言だけ申し上げておきます。MSAの受入れのために、日本の諸般の政策が歪曲ないし圧迫を受けたというような事実は全然ございません。ただ私ども予算の配分につきましては、内外の日本の置かれておる事情にかんがみまして、最善を尽したのがこの予算案であるということを申し上げておきます。
  90. 倉石忠雄

    倉石委員長 それでは午後二時より再開することといたしまして、暫時休憩いたします。    午後零時四十八分休憩      ————◇—————    午後二時三十七分開議
  91. 西村久之

    西村(久)委員長代理 休憩前に引続き会議を開きます。  質疑を継続いたします。降旗君。
  92. 降旗徳弥

    降旗委員 人口の過剰と領土の狭小とは、従来わが国産業経済の重大なる難関とされていたのでありますが、敗戦の結果はますますこの傾向を強めまして、輸入は増加し、輸出は縮小し、貿易外の収入もまた激減いたしまして、いたずらに米国依存の度を高からしむるに至つたのであります。私はこれらの事情を背景といたしまして、国政上重大なる影響力を持つところの諸問題について、以上政府の所信をただしたいと思うのであります。  まず第一に、工業原料の輸入について伺いたいのであります。申すまでもなく、わが国は従来アジアの広大なる地域に産業貿易の基盤を有していたのであります。従つてこれらの地域と国交、貿易を回復することは、現下重大なる政策と申さなければならぬのであります。政府は最近賠償問題について相手国と交渉を進めておるのでありますが、私はここにアジア地域開発のモデル・ケースとして、神岡鉱業の事例を申し述べたいと思うのであります。神岡鉱業は、その必要とする亜鉛鉱石の大量を国内に求むることの困難を痛感いたしまして、同社の優秀なる技師長一家をインドに派遣したのであります。その条件は、技師長一家の生活費は一切同社で負担し、インドはこの技師長を十分利用して国内における亜鉛鉱山を探したのであります。この計画は図に当りまして、現在同社はインドより鉱石を大量に輸入し、かつ製品をインドへ輸出しておるのでありまして、さらに第二の技師班をタイに派遣するに至つたのであります。もしわが国が現在の逆調を打破いたしまして、近きアジアの地域に割安なる資源をまめ、わが国商品の販路を拡張することができますならば、わが国の産業、経済の発展は期して見るべきものがあると思うのであります。すなわち神岡鉱業のごとき方法をもつてするならば、国境を越えて共存共栄の基盤の上に、ある種の企業については、わが国と相手国との間にシューマン・プランのごときものの成立する可能性もあることと思うのであります。政府は賠償問題の進捗と並行いたしまして、アジア共同経済、これをいかに確立するか、何らかの計画がありますか。あるいはまたコロンボ・プラン、ポイント・ネオア計画等に関連いたしまして、何らかの見通しをお持ちになつておられるのでありますか。この点をお伺いいたしたいと思う次第であります。
  93. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいま神岡鉱業の例をおあげになりまして、東南アジア方面との経済協力のお話がございましたが、まことにごもつともと考えるわけでございます。私どもといたしましてもかねてから、東南アジアの諸地域から原料の供給を受けなければわが国の産業は伸びませんし、また何地域に対しまして、技術の提供、あるいはできればそれ以上進んだ両者間の経済協力ということについて、今後できるだけ努力をいたしたいと思つております。ところが御承知のごとく、最近におきましては同方面に対しまするブラント輸出ども相当見込みが具体的になつて参りまして、今後約一億ドルないし一億二千万ドル程度具体的に計画が進行する見込みが濃厚になつて参りました。  その次に、ただいまシューマン・プランというような、共存計画考えておるかというお話でございますが、シューマン・プランは御承知のごとく、相当高度に発展した国家間における、非常に競争的立場にあるのが協調いたしまして、共存圏の確立ということを目標にいたしておるようでありまするから、現在の東南アジアの諸地域と日本との関係におきましては、経済的環境も多少迷うように思いまするし、また現在の政治的な情勢等から見ましても、シューマン・プランがただちにモデルにするというふうには考えられないと思うのでありまするが、御趣旨のような同方面とわが国との経済提携を促進し、こちらは原料をできるだけ輸入させてもらい、向うへは製品を売りさばき、あるいは技術提携、さらに遊んで現地経済開発の促進というような点につきまして、できるだけの努力を傾けて参りたいと考えております。
  94. 降旗徳弥

    降旗委員 ただいま経審長官のお話によりますると、東南アジア方面にわが国のプラント輸出が大分成績も良好な状態を続けておる、こういうことでありましたが、一体どんなプラント輸出が今なされておりますか、それについて具体的に承りたいと思います。
  95. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいまプラント輸出として、まず弟一にあげられて具体的になると思つておりまするのは機械関係であります。
  96. 降旗徳弥

    降旗委員 次に、東アジアとの国交、貿易の再開につきましては、まず賠償の問題を解決することが先決問題であることは常識であります。しこうして賠償の内容といたしまして、世上に伝聞しておりますものの中には、沈船の引揚げ、病院の建設、水道の敷設等があるのでありますが、現在考えられておる賠償の内容について御説明願いたいと思うのであります。
  97. 愛知揆一

    愛知国務大臣 実は賠償の関係につきましては、外務大臣からお答えするのが適当かと思います。
  98. 降旗徳弥

    降旗委員 それでは、第二に承りたいのは外資導入についてであります。いわゆるアジアの経済的弱点はこれはひとしくわが国の経済的欠陥でもあるのでありますが、これを要約いたしますと、大体次の四点にあると思うのであります。すなわちその弟一は、人口がマルサス段階にあるということであり、弟二には、資源が貧弱で、一人当りの生産が低いということであります。第三には、工業化が世界的に立ち遅れている。弟四には、近代化の阻止条件といたしまして、古い文化が依然として根強く残つているということであります。これはまつたくアジアの諸国にのみ固有のものであります。しかもかかる悪条件のもとにおいて、日本は外資を手がかりといたしまして、その近代化、工業化をなし遂げたただ一つの国であつたのであります。この日本の外資導入が成功したゆえんは、およそ次の理由によるものと思われます。弟一に、外資が長期借款であり、しかもこれを直接消費に向けなかつたという点であります。第二には、その資本財の輸入は主として鉄道、造船、港湾等の施設の新設、拡張等、基礎的産業部門の強化拡充あるいは輸出産業部門の拡充等に向けられたのであります。弟三には、それが圧倒的に間接投資であつたということであります。すなわち、その調達が政府を仲介にする公社債の海外売却という形で行われたために、自主的に投資を可能にし、利子の負担を軽減せしめたということであります。以上が過失におけるわが国外資が成功した諸要因であります。申すまでもなく、多数の相手よりばらばらに借入れた外資は、企業利益を海外に持ち去り、または資金引揚げの危険があり、またひもつき外資等は往々借入れの不利を招くことがあるのであります。MSA問題、国際開発銀行問題等々わが国に対する外資援助の方式がいろいろと報道されているのでありますが、外資導入に対する政府の基本方針並びに現在における外資軍人の実績を説明願いたいのであります。  さらにこれに付随いたしまして伺いたい点は、最近大蔵省発表によりますと、外国技術の援助契約が三百四十四件に通しておるのでありますが、これらの技術援助が現在いかにわが国産業に貢献をしておるか、あわせてこの点を御説明願いたいのであります。
  99. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 外資の導入についての過去のことと、また将来のことについての御意見、まことにごもつともに存じております。私どもは、外資の導入はできるだけ主たる産業部門であつて、それが長期のものであり、同時にまとまつたものであるということを希望いたしておるのでありまして、それは先般の火力発電など一例でございます。しかし、どうもそれのみでもいけませんので、いろいろ考えているのではございますが、根本としては、日本は現在のところ国の中での資本蓄積も乏しいし、技術水準も低いというような点等もございますので、何としてもやはり外資の導入をはからなければならぬのであります。この点について私どもはある意味から、外資導入についても、今の外資法というものが今までもいろいろかえられて来ておりますが、さらにもう一度検討してみる必要があるのじやないかと考えております。これを今までの事実について見ますと、大きいものでは、火力発電四千二十万ドル、これは世界銀行からであります。そのほか民間に入つておりまするものは、昨年末までにおきまする導入の状況は、技術援助の契約に基く分が三百四十四件であるのでありますが、金の点で申しますと、株式の持分、受益証券の取得、この点が百十九億でございます。社債、貸付金、債券、こういつたものが百七十二億円でございます。まあ、民間の外資とすれは相当な額だと実は思つておるのでありますが、二九年度で一層緊縮予算を編成しておる事態もありまして、外資導入は、私ども日本財政に対する安心感を与えるから少し楽になるのじやないかと思います。これは降旗さんも御承知かと思いますが、世界銀行のドール氏が来まして、日本インフレを遮断する措置をとらなければ、なかなか外資を入れるということはむずかしいであろろということを、新聞記者に発表いたしておりましたが、そういう考え方アメリカに相当強く働いておりますので、今度の予算措置等についてこれが御協賛を得られると、たいへんその点はよいことになるのじやないかと私ども考えておる弟でございます。なお外資法につきましては、過去において二回ばかりかえておりますが、なお必要に応じてはもう少し改善を加えて行く点があるのじやないかと一つております。三百四十四件の内訳でござい申すが、製造工業の方が百九十六件、化学工業五十七件、金属工業二十四件、その他六十七件でございまして、これらはみな技術援助契約が締結されたわけでありますが、日本軽金属のアルミニウム工業とか、ああいつたもの等を初めとしまして、これらに対して相当効果をあげているものもございます。私は、これらがだんだんと日本の産業の合理化、近代化に貢献するということを固く信じておるものでございまして、今後もこの種のことについてはつとめて便宜をはかりたいと考えておる次第であります。
  100. 降旗徳弥

    降旗委員 ただいまの大蔵大臣の御説明によりますと、技術援助契約というものは所期の目的を達しておる、効果をあげておる、こういうことでありますが、この点につきましては、特に御留意を願つておきたいと思うのであります。  次に、外資導入は以上の通りでありまするが、これと並行いたしまして、国内の政治経済の情勢を十分にこれと調整せしむるということが肝要であると思うのであります。わが国が過去において外資の導入をいたしました当時における国内事情を分析してみますと、弟一には、人口の激増とこれに伴う低賃金、第二には、特に工業の課税を軽減したこと、第三には、輸出の促進を、はかり、国内消費抑制したこと、弟四には、ぜいたく品及び加工工業製品に対して高率の関税をかけたこと、第九には、工業化を阻止する民主主義運動、すなわち労働組合運動及び高賃金要求等を制限したこと、これであつたのであります。かくのごとき政治的社会的の条件は、当時アジア的貧国の中から立ち上らんとする日本の必死の姿であつたとも言えます。敗戦のどん底から祖国を再建せんとする日本の現在もまたこれとひとしいものと申さねばならぬのであります。占領政治下におきまして重大なる変革を余儀なくされたわが国諸制度の行き過ぎを断固是正しなければ、生産の向上、資本の蓄積、外資の導入はできぬのでありますしかるに、わが国の政治経済の現状がはたして事態を好転せしめておるか、むしろ悪化しておるものといわざるを得ない点すらあるのであります。  そこでこれは一つの例を申しますると、今日農村におきましては、旧地主より強制的に買い上げられた土地が、小作人たる新地主の手によつて農地以外の用途に驚くべき高価をもつて転化されておる実例がはなはだ多いのであります。これは、今日窮況にある旧地主の耐えがたいところであると言わなければなりません。私は、これらの問題について、農地法施行法を改正する必要があると思うのでありますが、政府の所見はいかがでありますか。  さらに、労働二法の運用あるいは改訂の件につきましては、いろいろの問題がありまするが、一つの例といたしましては、終戦以来特にはげしいストライキ騒動に関連いたしまして、官公労組が官庁その他公共建物、汽車、電車等にビラを張りまくり、あるいはまん幕を巻きまして大示威運動をしている、世間はこれをどうすることもできない、かくのごとき横車的無秩序なるところの運動を今後政府はこのままにしておくか。ことに、今後ストライキの頻発せんとする状況下におきまして、これに対していかなるお考えを持つか、この点を承りたいと思うのであります。
  101. 保利茂

    ○保利国務大臣 お答えいたします。農地改革は、わが国の農村基盤を強化いたしました点におきまして、むろん大きな変革上の犠牲は伴つておりますけれども、改革としては成功を収めておるものと存じております。ただ、農地法施行法の面々、部分々々につきましては、今後もいろいろ検討しなければならぬ問題越があろうと存ずるわけであります。御趣意の点につきましては、もちろんこれは、所有権が移転をいたして、そのあとの措置になるわけでございますから、相当複雑な検討を要するのじやないかと考えまして、慎重に検討をいたしております。
  102. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 お答えを申し上げます。公労組がみだりに官庁の建物や汽車等にビラを張つたり、あるいはまん幕を張つたりしてすわり込むというような行為は、いわば国民の公器をみだりにほしいままに濫用する行為でありまして、許可なくしてかかる行為に出でたる者に対しては、各省、各庁の長は当然にこれを排除するものと考えるのでありまして、かかる行為に対する取締りは、直接労働法上の問題ではなく、むしろ刑法、軽犯罪法の適用があるべき問題だと思いますが、こうした行為については、あえて取締り法規を云々するまでもなく、関係者の良識と当局者の毅然たる態度によつて十分阻止し得るものと考えております。  なお、労働関係の諸法規につきましては、今私どもの方で考えておりまするのは、労働基準法の施行規則の関係の改正でございますが、これは法令に根拠のない規則もあるのでございますし、また、そのために非常に厖大な煩瑣な手続を要する点もあります。また、いわゆる啓蒙的と申されるのでございますか、たとえば、なるべく寄宿舎の便所は水洗にするようにされたいというような規定もあるのでありまして、そうした啓蒙的なものはこれを改める、そういう諸規則の改正を考えており、今中央労働基準審議会の方で審議をしてもらつている状態でございます。
  103. 降旗徳弥

    降旗委員 ただいまの農林大臣の御答弁によりますと、農地法施行以来情勢は非常にかわつておりまして、改正を要すべき点があるならば、政府はこれを改正するにやぶさかでないという。私は、いずれ具体的にこの問題を御相談申し上げたいと思うのであります。それから労働大臣はこれは政府決心いかんだと申しますが、まさにその通りであります。この公共の建物の公共の器物を濫用する、しかも各省の看板と相並んで労働組合の看板がかかつておる、こういうようなことはおよそ労働問題というものを超越して、国民の常識から強く批判さるべきものである、しかるにもかかわらずごうごうたる世論の非難があり、批判があるにもかかわらずかくのごときことが白昼公然行われる。政治力なきことを暴露するものといわざるを得ない。この点につきましては特に政府において、慎重にその対策を考慮されんことを、お願いせざるを得たいのであります。  第三に承りたい点は、わが国の食糧政策についてであります。数日前の新聞は、食改善問題について厚生省と農林省との間のなわ張り争いを報じておるのでありますが、これは政府自体に徹底して食糧政策がないためであるとの非難があります。申すまでもなく、近代支那の発足にあたりましては、婦人の纏足を禁止し、明治維新にあたつては廃刀断髪を断行し、国民をあげて新生活運動に没頭せしめたのであります。民族発展、文化向上の前駆的徴候といたしまして、民族の生活と感情の中に理想を求め、改革を望む熱と力との革新運動を起させなければならぬと思うのであります。食改善の国民運動はまさにこれに当るものである。一体わが民の現在における衣食住をかつての徳川時代、かつての明治維新当時に比べますと、まつたく一新されておるのであります。ことに昨年の災厄に際しましては、民衆の中に自発的に新生活運動が盛り上つて来ております。今こそ米食偏重の陋習を打破すべきときである。しかしこうしてここにさらに考うべきは、米食編重を打破することは、米作偏重の従来の農政を打破することであります。畑灌漑の徹底を期し、牧野の造成、酪農の奨励等新しい農政を樹立いたしまして、いわゆる食糧の総合的増産をなさなければならぬのであります。この意味において衆議院は旧臘十五日各党の共同提案によつて決裁案を満場一致可決し、第一に食改善の国民運動を起すこと、第二に食糧の総合的増産をはかるべきことを政府に勧告したのであります。政府はしばしば国民耐乏生活を提唱するのでありますが、耐乏生活とは単なる貧乏生活であつてはならないのであります。合理的であり、計画と希望を持つた緊縮生活でなければならないのであります。国民の食生活改進の指導すらなし得ずしては、耐乏生活を説くの資格なしといわざるを得ない。一体政府の言う耐乏生活とは何ぞや、また食改作の国民運動に対していかに考えておられるか、この点を承りたいのであります。さらに食糧の総合増産をはかるためには、従来の米作偏重主義を修正するの必要があると思うのでありますが、これについて政府の所見を承りたいのであります。
  104. 保利茂

    ○保利国務大臣 旧臘の衆議院の御決議の趣意は、私どもその趣意ににおいては全然同感をするものでございますから、その線に沿いまして施策を込めて参る所存でございます。お話のように耐乏生活だから粉食をやる、あるいは食生活を改善しなければならぬというような考えは、先日も申し上げましたように毛頭ございません。今日の食糧事情からいたしまして、降旗さんのお話のように、食糧問題を解決して参りますのに、米のみをもつて解決して行くということは、できない国情になつていることを認識しなければならぬといいますか、さればとてこれは全体主義の国であればまた別でございますけれども、ともかくも全国民納得の上にやつて行かなければならぬ、またやることが正しい政治のもとにおきましては、粉食を奨励する食生活の改善を促進する基本的な政府の施策が必要であろうと存じます。単に粉々を奨励するというだけではいかぬ、やはり粉食を促進して行く基本的な条件をできるだけ整えるようにしなければならない。すなわち蛋白、脂肪の給源を安価かつ豊富に供給して行くところの施策が根本的にとられて、それはやがて必然的に食生活の改善をもたらして来る方向に持つて行くべきであろう、私はそういうふうに考えているのでございます。ただ今日の米食偏重を是正するために、米作中心の今日の農業形態を転換して行くという考えは、これは私は軽率にはいたしかねる。今日何と申しましても、また長い歴史の上に立つております日本の農業及び国民生活の実態からいたしまして、米が相当国民の基本的生活物資であるというとの現実は、やはり認めなければならぬ。従いまして米作の増産は志しますけれども、米作を他に転換するという政策は私は軽々にとり得ないのではないか、こういうふうに考えますけれども、よく御意見のほどを伺いまして、これらの問題に対処いたしたいと思います。
  105. 降旗徳弥

    降旗委員 実は農林大臣の今の御答弁の中に、粉食の奨励は基礎条件が確立しなければならない、私も同感であります。しかしながら政府がこの基礎条件一を積極的に整えるか、あるいは消極的な態度に終始するか、これが問題になるのであります、この点につきまして特に御熱意のある緒方副総理の御答弁をお願いしたいと思うのであります。  そこで米作偏重は私の考えをもつて申しますと、今までは米作偏重でよかつたでありましよう、しかしながら現在の段階以後におきましては、私はやはりこの米作偏重を是正して行かなければならぬ。これは不適作の土地に好んで水田をつくつておるという現実が、ことに昨年の凶作地常において顕著であつた、この点を私は御留意願いたいと思うのであります。さらに米食編重を打破することは申すまでもなく粉食の奨励を意味することでありますが、昨冬この粉食の普及をほかろうとする矢先になりまして、パンやうどんが高くなり、店頭のバターが姿を隠し、ごうごうたる世論を浴びた、これは一体政府のこの食糧対策というものがぐらついておるがためかどうか、あるいは業者のせいによるものか、こういう点を私どもは疑わざるを得ないのでありまして、この点についての御所見が承ることができれば幸いかと思うのであります。
  106. 保利茂

    ○保利国務大臣 何さま酪農の現状からいたしますと、食生活を改善するといたしましても、まず第一番にここにネックがあるわけでございます。基本的には、このきゆうくつな来年度予算の中におきましても、酪農畜産の振興につきましては、農林関係のものにおきましては、特段の増額計上をいたしておるわけでございます。ここへ私ども政府施策として、食生活改善の基礎条件をととのえて行く方向を、明確に打ち出しているつもりでおるわけであります。なるほど昨秋来凶作によりまして、最近また食生活改善の世論も影響しまして、かなり麦の消費が伸びて参つております。お話のようにバターの欠乏等が一時見られておりましたが、急拠昨冬二十万ポンドの緊急輸入もいたしまして、手当をいたしたようなわけでありますが、来年はマーガリンの増産をかなり大きく計画をいたしております。鯨油その他の原料につきましても、その確保措置を講ずるようにいたしておるのでありまして、食生活改善と、いわゆるバター、乳製品の供給とは、絶対離れがたいうらはらの問題として対処して参つておるわけでございます。
  107. 降旗徳弥

    降旗委員 ただいまお答えにありましたマーガリン、バターの問題でありますが、これは私数字はつきりと記憶しておりませんが、現在年間三万トンのバター、マーガリンができる、しかも国内における施設は十五万トンの施設がある。しかもこれらの問題について、政府の施策、政府の意図というものが、まだ業者にも徹底していない、こういう事実もあるのであります。どうかこれらの問題につきましては、特に政府が熱意を持ち、積極性を持つてこの国民食の改善の問題に御努力ありたい、このことを希望しておきます。先ほど緒方副総理に御答弁を求めましたが、このことについて緒方副総理からも御答弁を願いたいと思いますが、引続きまして、私は第四に、人口問題及び移民政策についてただしたいのでありますが、ここでは都合上移民政策についてのみ承りたいと思うのであります。  終戦後わが国民全体は日常の生活に追われ、かつ連合国のわが国に対する感情は険悪でありまして、移民問題はしばらく沈黙せざるを得なかつたのであります。しかるに、平和条約の締結、朝鮮事変の勃発等相次いで起るに及びまして、内外の情勢は大きく転換して参りまして、今や南米諸国におきましては、日本人移民歓迎の機運が急速に高まつて来たのであります。  思うに、過去におけるわが国の戦争責任につきましては、深く反省する点もあるでありましようが、その戦争勃発の原因が、激増する人口の圧力による内外情勢の激突にあつたことは、否定することのできぬ事実であります。日清、日露の両役、満洲事変、世界戦争中に費やされた戦費と人命は、けだし莫大なものであつたのでありますが、この鉄血の犠牲によつてわが国はその版図を拡張し、国威を宣揚したのであります。しかるに、弟二次世界大戦によつて、あわれむべし、かつて得たるものことごとく失わざるを得なかつたのであります。日本人はこの戦争を通じて、戦争の罪悪を痛感せざるを得なかつた。しかるに、わが国の人口は戦前よりも、終戦当時よりもかえつて激増し、さらに将来に向つてその増殖の歩調をとめないのであります。国内においては、産業経済上の苦悩はいよいよ深刻になり、国民生活はますます困窮して、遂に道義の頽廃と、権力への追随のとうとうたる弊風を生ずるに至つた。しかるに、幸いなことには南米各国においては、近代工業化運動のために、その国みずからの食糧自給ができなくなりまして、日本農民を大いに歓迎する機運を醸成するに至つたのであります。申し上げるまでもなく、ブラジルはその領土がソ連、北米、カナダなどに次ぐ世界第四位の大国であります。わが国の総面積の二十倍以上でおる。人口は五千万、耕地は全国の一%、異人種に対する悪感情を有せず、文化の程度もよく、邦人の移民は成功し、洋々たる前途を持つているのであります。ボリヴイア、パラグアイ、アルゼンチン等々、大小の差はありましても、いずれもブラジルと同様、移民のためには進んで好条件を提示しているのであります。かつてわれわれは戦争により国連を賭して民族の進路を獲得したのでありますが、今やわれわれは平和の手段によつて、民族の進路を開拓することができる。かつて戦争によつて獲得した領土の何十倍の土地は、人類の平和と自由を確立するために、わが民族の協力を求めているのでありまして、この道を進むことこそ、現代日本人が歴史の上に輝かしい足跡を残す大なる機会なりといわなければならないのであります。しかるに、移民政策の上に計上された予算は一体どれだけであるか。一兆円の予算総額に対し、また二千億円の自衛、保安予算に対して、わずかに数億円であります。南米各国における食糧需給対策は、今後十一数年の間にその計画を完了するものと思われます。その後の情勢は今日これを予断しがたいのであります。鉄は熱したるときにこそ打つべきである。今や移民の問題は、わが国重要国策中の重要国策と申すべきでありまして、強力にこの政策を推進せざるがごときは、むしろ政治の怠慢を暴露するものといわなければならなぬのであります。この点につきまして、特に緒方副総理の御答弁を煩わしたいと思います。
  108. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 移民の自由ということは、私は世界平和の基礎条件の一つであると考えるのであります。特に戦戦争においてわが国の置かれた位置から考えまして、移民というものにつきましては——海外移住ということにつきましては、特に力を注がねばならぬことは、今降旗さんのおつしやつた通りでありますが、予算面におきましては、この均衡予算、耐乏予算の際に、十分のものが組めなかつたことは、これまた御指摘の通りであります。移民移住の非情につきましては、先般お互いの同僚の今村君が南米を視察されて、その報告も私一通り目を通したのでありますが、これは非常に土地が広大である、食糧が豊富であると申しましても、やはり世界情勢の動きに伴つていろいろな運動、かつて北米において経験したような運動も起らないと限りませんし、今の間になるべく質のいい、従いまして移住地において原住者の信頼を受け得る質のいい移住者、それもできるだけ国の財政の許す限り、なるべく多数にこれを送ること、これは日本一つの大きな政治問題としてもぜひ解決しなければならぬことであると考えておりますが、今申し上げましたようにまだ十分の予算が組めないことははなはだ残念に存じております。ただこの際私はつけ加えて申し上げたいのは、今の状態では南米の移住というものは、人口の問題よりもむしろ外貨獲得の面の方がより多く母国に貢献しておるという状態であります。数の移住の点からいえば、私もう一度北海道に目を注ぐべきではないかと考えております。これは日本一つは国防の意味もありまして、二十年このかた満州の国防移民にもつぱら力を注いで参りましたために、北海道というものがややもすれば軽視されたようなきらいがあるのでありますが、北海道は御承知のように九州、台湾を合せてさらに余りあるほどの地域を持つておりますし、人口も現在四百三十三万そこそこで、なお五百万は十分に入れ得るのではないか。これに政府が特別の関心を注ぎますれば、一つの移住地といたしましてある程度海外移住にかわる措置ができるのではないか。政府といたしましては、さきに北海道開発長官を専任いたしまして、この点にも今の降旗君のおつしやつた観点から一応の努力をして行きたい。かように考えておる次第であります。
  109. 降旗徳弥

    降旗委員 ただいま副総理より北海道の移住について重視すべきお話がありましたことは、私はこれを否定するものではない。しかし今や南米におけるわが国移民歓迎の風潮は、今日これあるも明日必ずしもかくのごとき状態が続くものというわけに行かないのであります。先ほど私の申しましたように、鉄は熱したときに打つべしである。私はこういう意味におきまして、特に政府考えを一この点に注がれることを希望せざるを得ないのであります。人口問題は、現在の国際的環境あるいは国際的所有関係を前提といたします限りにおきましては、アジアの場合そうでありますが、日本の場合も結局は積極的対策は阻止されて、消極的対策すなわち人口調整の手段によらざるを得ないのでありましよう。しかし私は人数恒久の平和を求むる立場から申しますと、過剰人口問題は断じて国内問題でない、かように思うのであります。それは資源配分の国際的不均衡の問題であり、本質的には国際政治、国際問題として世界の国々が、世国の民族が共同の責任として処理すべき重大なる問題である、かように思うのであります。世界の資源を独占する国々と民族が、資源に乏しい人口過剰なる国々と民族に、海外発展の道をふさぎ、産児の制限を強要することは、人間の魂、神の心を、尊重するゆえんでないのであります。第二次世界大戦後における世界の人々の心の中には、新しい世界への希望がかすかながら具体性を持つて生れて来た。政府はこの内外の情勢を洞察いたしまして、移民百年の計を立てる必要があるのであります。すなわち内に対しましては第一に移民の行政機構を確立することであります。第二には民間団体を組合せしめて、これに移民の実際上の仕事を一括して行わしむることであります。第三には現在の不十分なる移民法規を整備することであります。かくのごとくして初めて強力なる国内態勢を結集し行るのであります。政府の所見はいかがでありますか。さらに外に対しましては、第一に国際諸機関に密接なる連絡をはかることであります。弟二には国際会議に提議して、わが国の移民問題を主張することであります。申すまでもなく世界における人口の偏在と、少数国における未開発地域の独占とは、世界の平和を脅かす重大なる原因であります。民族の移民権を認め、未開発地域を開放せしむるための真摯なる努力は、わが政府が断じてなさねばならぬところであります。これらの問題について政府の所見いかん。これを承りたいのであります。特に今春ローマにて開催せられる世界人口会議に対しましては、わが国委員会を通じて移民問題を提案するの用意ありやなしや。答弁を煩わしたいと思うのであります。
  110. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 移民問題につきましては、今お話のような趣旨で政府としてもいろいろの方面に努力をいたしております。国内における組織の整備あるいは法規等の改正、それから今度できました日本海外協会連合会、これによつて移民の事務を実際上やつてもらう。また相手国との間にもできれば協定をつくるところまで行きまして、一年でなく長い間の計画ができるところまで持つて行きたいと思つております。なお国際機関との関係、これは御承知のように国際連合におきましては現在ILOの労働機関、あそこで移民問題を取扱うことになつておりますので、この方面に働きかけたいと考えております。さらにお話のローマの人口問題の会議につきましては、日本側からも四名の代表者を出します。これは人口の問題でありまして、これがただちに移民問題だけをやるというわけではございませんが、先般政府から委嘱いたしまして、南米方面の移民問題も研究してもらいまして、その方面の権威者である東大の泉助教授も、この四人の一人となつて人口問題の会議出席してもらいまして、移民の方面から見た本問題の解決灸という点について、大いに努力をいたしてもらいたい、こう考ええております。
  111. 降旗徳弥

    降旗委員 ただいまの御答弁によりまして、政府の意図するところが大よそはわかつたのであります。しかしこの人口問題はあらゆる国際的機関に提議して、日本の移民の問題を世界の人人に理解してもらう、こういう努力は必然的にしなければならぬところでありしまして、この点は特に外務大臣の御留意を願いたいと思うのであります。そこで人口学上より申しますと、わが国の人口は今後十数箇年というものは増加の勢いをとめないのでありますが、この期間を過ぎますと、人口は一応安定するというのが人口学上の定論であります。従つてこの期間に行う移民の送出は、対外的であるとともに重大なる対内問題にもなるのであります。政府一は受入れ国との移民の契約、移民の渡航費、移民、船の建造等について年次計画を打つべしと思うが、どうであるか。また教育上の重大なる案件といたしまして、吉少年に対し海外事情、移民事情等を学習せしむることが必要であると思うのでありますが、これについていかなる考えをお考えでありますか。所管の大臣よりこれを承りたいと思います。
  112. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 長期計計画ことにつきましては、先ほどもちよつと申しましたが、相手国との間に協定ができますれは、それで相手国との間にはある程度計画が立つわけでありますが、ただ、今おつしやつたような船の問題などは、実はわれわれの方だけでは計画は持つておりますけれども、これを必ず予算に反映して、毎年この通りできるかどうかといいますと、ただいまの緊縮予算関係では、ときに実行できないような場合もあるのであります。しかし長い目で見れば、一定の計画をもつて、できるだけこれを実現するように努める、こういうふうにやろうと考えております。それから国内における移民に関する知識の普及等につきましても、これはもちろん非常に努力しなければいけないことだと思つております。外務省におきましても、毎月ラジオその他講演会等を各地でやつておりますので、この機会には移民の問題についても知識の普及に努めておりますが、同町に先ほども申しましたような海外協会連合会は各県に組織を持つておりますので、この方面を通じても予算の問題はもちろんありますけれども、移民に関する知識の普及にはぜひ努めたい、かように考えております。
  113. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 移民を南米に送るための特別な船の整備を思い立ちましたのは、昨年でございます。昨年の五月にとりあえず貨物船二隻を改造いたしまして、それぞれ五百名を収容できる移民輸送用の貨客船をつくつたのでございます。次いで昨年の九月、二十八年度の外航船建造資金のわく内から移民船を一隻つくつております。これは定員が一千名でございますが、現在新造中でありまして、本年の五月には就航できるつもりでございます。御承知のように年二回半近く動くことができますので、これらによりまして、二十九年度は約四千五百名ぐらいの輸送能力を持つことになるのであります。ところが一方今度二十九年度予算で移民の渡航費の貸付予算額として予算に計上されておりますのは三千五百名だと記憶しておりますが、そういたしますと、これからこの予算によつて貸付を受けて行く日本の移民は、全部日本の船で輸送できるばかりでなく、なお一千名ほどの自由な渡航者、呼寄せ移民の渡航も述べるということになるのが来年度の状態であります。しかし同時にこれから先、今お話のようにもつともつと移民を増すことのできるような情勢にあるようでありますし、移民船を来年度のうちにもう一ぱいつくるかどうかということが問題でございますが、今のような予算状況でありまして、三十年度においておよそどれだけ出せるかという見当いかんによつては、この移民船一ぱい建造が来年か再来年になつても間に合うということになることも考えられるのであります。これらについて十分研究いたしまして、来年度の造船計画の中において考慮を払つて行きたいと心つております。同時に輸送運賃が日本からブラジルの東海岸のベレムまたはサントス港まで、大体大人一人当り十一万ほどになりますが、これをもつと安くすることはできないかという問題について、なおいろいろ研究中であります。
  114. 大達茂雄

    ○大達国務大臣 青少年に対する海外発展の風を作興するための教育という点でありますが、これは御承知通り外国語大学あるいはその他大学における経済学部、商学部というようなところが、外国語ないし外国における経済事情というようなことについて予習させる施設になつております。これは必ずしも将来移民になる人に対する教育という特別な意味ではもちろんないのでありますが、しかし今後移民に対する難が、だんだん醸成せられるに伴いまして、これらの講座等の増設等については適当な措置をとつて参りたいと考えております。なおまた高等学校以下の学校におきましても、地理の教育でありますとかあるいは外国語の教育、あるいは経済一般に関する知識を習得させる、そういう点につきましては今後教科内容の改善に努めて参りまして、お説にありましたような海外発展の機運の起ります素地を築き上げたい、かように存じております。
  115. 降旗徳弥

    降旗委員 ただいま文部大臣及び運輸大臣から移民船の問題、あるいは青少年への海外事情あるいは移民事情の教育について御好意ある御答弁をいただきまして感謝にたえません。この点は特に今後も現実の問題について善処されんことを重ねてお願いしておくものであります。  最後に申し上げたいのは、人をおそれず神をおそれるの考え方を一もつて、わが民族の移民権を世界に向つて堂々と主張いたし、世界の未開発地域を人知に開放せしめることが、銃剣の威力によつて世界の平和と祖国の安泰をはかることよりも一層合理的であり、平和的であるということであります。どうか政府におきましては、この移民政策を強力に推進せられるように特に御配慮あらんことをお願いいたしまして、私の質問を終りたいと思います。   〔西村(久)委員長代理退席、小峯委員長代理着席
  116. 小峯柳多

    小峯委員長代理 小山倉之助君。
  117. 小山倉之助

    ○小山委員 長い間の吉田内閣のインフレ対策は、弟一にこのインフレーシヨンを阻止するという点から出発しておるのでありまして、大蔵大臣からは数次にわたつてインフレーシヨンをどうして収束せしむるかという点について、いろいろ御意見を伺つたのでありますが、その弟一歩として財政の緊縮と金融の引締め、こういう政策を強硬に推進せられておるのであります。今まで荒された日本財政経済を建て直すのでございますから、その御労苦に対しましては、まことに敬意を払わなければならぬのであります。そこで時間はすこぶる重大でありまして、もしただ財政の緊縮をやる、金融の引締めをやると言えば、これはしろうとでもできる。権力をもつてすればあまりにむずかしい問題ではないのであります。しかし財政の緊縮をしながら、金融の引締めをしながら産業の発注をどうするか、国民生活の安定をどうして期するか、わが国防の充実をいかに実現するか、複雑な大きな問題が横たわつておるのでありますが、私は何となく前途に不安を覚えざるを得ないのは、かような日本が乗るかそるかというこういう重大なる時代に、内閣総理大臣はまつた経済にはむとんちやくであるのです。経済については何らの計画も示さない。しこうしてここにお見受けする大臣公も、どうもこの産業経済ということについては、はたして十分なる御経験を持つておられるのか。あるいは相当の蘊蓄を持つておられるのかはなはだしく危惧の念を抱かざるを得ないのであります。私は一つの例を申しまするならば、アメリカのあの戦後の財政経済を切り抜けるのには、何しろ大統領アイゼンハウアーは、グレート・アドミニストレターでありました。何百万という兵隊を動かした人、兵站補給にもあずかつた、産業経済すべての問題について相当の見識を持つた人で、これを助けるのには国防長官としてはウィルソンのような人は大実業家であり、大銀行家である。ドッジのような人は予算局長となつています。あるいはまた農林長官のベンソンというようなみずから耕して、みずから農業の経験のある人が立つておる。ここに居並ぶ皆さん方、まことに優秀な方々ではあろうと存じますが、どうもそういう経験があるだろうか、体験があるだろうか。こういう方々にこんな大事業をゆだねるということは、国民の一人といたしましてまことにおぼつかないような気がする。もしこれを極端に申し上げれば、どうも小笠原君一人にたよるよりしかたがないのではないかというような気分さえするのであります。小笠原君は金融界には十分の経験も持つておられるのであるし、実業界にも相当の功績を表わした方でありますが、私はそういう非常な危惧をもつてこれからいろいろ御質問申し上げるのであります。  まず弟一に小笠原君はしきりに物価引下げ、それがために通貨の安定をはかるまた輸出の増進をはかると申しましても、国民は耐乏に耐えなければならぬ際にすでに米価は十二月から値上げをしている上に、公務員のベース・アツプによつて年度においてすでに四百億を越える金を出した、これを来年度に直せばおそらくは千七十三億になるでしよう。こういう膨大な費用を、国家の納税者の納めた尊いこの金をそういう方面に使つておるのみならず、今度は汽車賃も上げる。あるいは電車賃も上げる。四月には電気料も上げる。予算の議論の際には上げないが、大体四月に予算審議が済んだあとで、問題が起らないときに、国会から攻撃を受けないときに上げる。そういうようなことも予定されておると言われておるのでありますが、かような国民普遍的に支払わなければならぬような、そういう政府機関の賃上げとか、あるいは料金を上げるとかいうようなことで、はたしてほかの政策ばかりで低物価を維持することができるであろうかどうか、そういうふうに経済界を導くことができるであろうかどうか。この点をまずお伺いいたしたいのであります。
  118. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 これは非常に重大な問題でありまして、私ども自分の力の足らざることを憂えておる次第でございますが、しかし私どもはこの物価引下げにつきましては現に今お話のように、もう一月から米を上げているじやないか、その通りでございますが、これはあのときにも実は申し上げましたごとくに、個々の物価を上げる方が——これをあのままにしておいてあの大きな数字赤字公債等を出すと、一般的なインフレになりますので、どちらかを比べて見たときにこの方をとつた方がインフレ阻止の役をする。こういうような考え方で個別的に考えた次第でございます。なおベース・アップの問題は御指摘のこともあり、また当時小山君も御反対になつてつたので、よく私どもも記憶いたしておりますが、あの当時は民間給与との比較、物価騰貴の情勢並びに人事院の勧告等もありまして、その当時多年問題になつてつた、あるいは中だるみの問題とか、地域給の問題とか、これは一階級でありますが、下げる等、また認証官は俸給のベース・アップをしない等の措置をいたしまして、最小限度をやつた次第であります。これは当時世論もやむを得ぬと認め、また国会の御承認も願つたような次第でありますが、今後のことについては、これは今のあなたのお話だと国会でも済んだら、またぬくぬく上げるのではないかというお話でありますが、さような考えは毛頭持つておりません。ただ今度の税につきましも、あくまでも奢侈を抑制する、こういう建前を持つておるのでありまして、これはあなたは先ほどピースを上げたことについてピースは奢侈かと言われましたが、これは一番高級品なので、やむを得ず忍んでいただいたのでありまして、奢侈の対象ということになりますと、これは低額所得者の税負担を軽減するという関係から行つておりますので、これは議論はできましようけれども、お忍び願うよりしようがない。また電力料金につきましては、先般通産大臣が答えられた通り、これは上げないという方針のもとにいろいろやられておりますので、もう少し電力業者がみずから世間を納得せしむるだけの措置をとつた上でのことであろう。すなわちさしむきそう上ることはないと私は信じております。鉄道料金についてもお話がございましたが、これは一、二等だけの税をわくの外に出すというだけのことでございまして、貨物運賃などを上げているわけではございませんので、一般の物価騰貴というものには影響を持つものではございません。そういうふうに考えており逃す。いずれにしましても、物価はぜひ下げたい、物価を下げる以外に日本画品の国際競争力を持たす方法はないのでありますから、やはり物価については下げたい。けれども一度にどうも物価を急激に下げることは。これは御審議になつたような摩擦が各所に出て参りますので、やはり漸を期して参りたい、こういう考え方から二十九年度は五分ないし一割の目安のもとに総合的な施策を進めて行くという考え方でおる次第でございます。
  119. 小山倉之助

    ○小山委員 大蔵大臣のただいまの御答弁はたびたび伺つたのでありますが、私は必ずしもその議論には承服しないのであります。もし去年からこの緊縮政策を行い、財政支出を緊縮するということをやれば、今年はよほど楽になつたろうと思う。昨年度においてああいう物価を引上げるような、日本財政を困難にするようなこのたびの予算の編成についても、相当の御苦労があつたろうと思うのでありますが、そういう政策をとつたことが私は間違いである、かように思うのでありますが、大蔵大臣の言うことは一応お伺いしておきましよう。しかし私は必ずしもその御答弁には承服いたしません。大蔵大臣物価引下げる下げると言つておりますが、物価引下げはなかなか困難じやなかろうかということはこれからおいおい御質問申し上げますが、金融の引締めにつきましても、この一月においては揚超はいつの間にか四百億に達しております。その四百億という金は、外貨の緊縮から前途において原料を入れられないということを憂えて、多くの思惑の資金に使われたんじやないか、そういう日本銀行のやつたことが必ずしも大蔵省の承認するところじやないから、小笠原大蔵大臣と一万田総裁との間の会見となつて大蔵大臣のしばしば仰せられる財政金融の緊密なる連絡をとつてインフレを防止するという政策とは少し行き遣いを生じたのではないか、この事実はどうであまりすか。世間のうわさをもつてお尋ねするのは何でありますが、ありそうなことでありますからちよつとお伺いいたしたい。
  120. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 これも率直に申し上げておきますが、昨年の暮れの通貨増発が金融方面から相当来ておることは小山さん御承知通りであります。しかし年末のことでもあつてやむを得ぬことであるとは考えておつたのてありますが、この一月になりまして以来多少外貨に対する先案じの感もあつたかと考えますが、とにかく二十八年上期の六箇月間の輸入契約高よりも、この一月一箇月に契約された輸入契約高の方が多い、つまり前年上半期では一億四百五十万ドルであつたものが、この一箇月で一億八百万ドルにも上つておる、但しこれは念のために申し上げておきますが、いわゆるドル地域に対する自動承認制分だけであります。これは一般にそういう形勢は現われておりますが、これは自動承認制の分だものですから顕著にそれが現われた。そこから見れば私ども当初におきましては契約をするに一割の積立金というものも要望したのでありますが、どうもそういう事実から見て手ぬるいような感じでありましたし、またさつきあなたが言われたように私ども財政の緊縮ということは、全体の政策から言えばえいわば第一着手であつて、どうしても金融面からこれをやつてもらわなければならぬ。なかんずく金融面でやつてもらわなければならないものは、一つは思惑の阻止であり、思惑的な融通をやめてもらうということであり、もう一つ滞貨その他、つまりある商品等に対するものに対してこれも多少思惑的のものがありますが、売惜しみのための資金の融通をするあるいは価格維持のための資金融通をする。この二つはぜひ避けたい、こういう考え方から先般二万田総裁にいわゆる財政金融の緊密化という点で、もう少し金融の引締め方について何か案がないかというわけで相談をいたしたのであります。そこで何とかしてこれは金融を引締めなければならぬということには一致いたしました。それならどういう方法でやるかということは今日銀の方でやつてくれておりますので、近くそれが、たとえば今の二次高率の適用という——二次高率といいましても二銭三厄、四厘、五厘とありますが、そういつた金利自体についての問題もありましよう。あるいはさらにもう一つ適用の城を広めるような問題も起りましよう。各種の問題等もありますの、で、具体的に向うで案を練つてもらうことにいたしております。別に練るからといつてまた半月も一月もかかるわけではありません。これは速急にやつてもらうことに話をしております。ただくれぐれも私どもはこの商品についての思惑的な金融滞貨金融、こういう類のことは今後、ぜひとも阻止したい、かように考えておる次第であります。
  121. 小山倉之助

    ○小山委員 そこで大蔵大臣と一万田総裁との間には金融の量の規則については意見の一致を見たと申しておりますが、一体この質の規制というものは非常に必要と思うのであります。現内閣の諸施策にもその質の問題は相当考慮に入れておるということはわかりますけれども、ぜひ質の方もお考えを願いたい。そこでこれは少し問題が関連しておるかどうかわかりませんが、私の伺いたいのは、合理化とかあるいは近代化とかいつても、とかくその方に流れる金よりも、そのほかの方面に流れる金が多かつたのじやないか、あるいは絶対的には多くないとしても、その金はあまりにむだに使われたのじやないか。ドイツのエルハルトのやつておることとは大分違うのじやないかと思いますので、お伺いいたしたいのは、ビルデイングがどんどんできているが、こういう方面に金融された額がおわかりならばこれを伺いたい。これはただいまとは申しません。たとえば料理屋とか待合とか、近ごろりつぱな建築がどんどんできておる、しかるに中小工業者なんか近代化もできなければ合理化もできないでいるのに、こういう金がどんどん使われておる。キヤバレーやダンスホールあるいは競馬、競輪、日本のこういう時代に、われわれは緊張してまず産業の基礎をつくらなければならぬというときに、こういう方面に金があまりに多く使われておるように見えるので、これはひとつ適当の場合にその数字をお示し願えればまことにけつこうであります。  それから大蔵大臣は為替専門銀行をおつくりになるという構想をお持ちのようでありますが、それは至急に実現するお考えでありますかどうですか伺いたい。
  122. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 今お尋ねになりました不生産的な方面にどう黄金が流れておるかということにつきましては、一応調べまして後刻表が何かでお目にかけたいと存じております。ただ昨日中村君に笑われた、私は中学生のような文章をつくつて、役人がなんだ、ネオンサインがどうだといつたようなことを言われておるのでありますが、あれは一番わかりがいいので、西ドイツ等の例に比べるとこういうようなものに使われておる点に遺憾が多いという点を実はこめて、あえて中学生の作文をやつた次第であるのであります。西ドイツ等が生産的方面にほとんど集中的に金が使われておるのに比べまして、日本はこの点まことに遺憾に思います。たとえば鉄道にしても、私はこの間も運輸大臣に話をしたのですが、おそらく駅舎の建物のりつぱなことは、日本世界で最もりつぱなぜいたくな建物が建つておると思います。まずそれよりも鉄道の改善をする方が急務なのじやないか、西ドイツ式に考えればまさにそうなのです。そういう点等もありますので、これは後刻調べてお出しいたします。  それから外国為替銀行のことは、実はどうしても日本が今のままではとても為替方面においても競争ができません。外国の銀行が為替で使つておる金はおそらく二分か二分五厘の金だろうと考えます。これに反して日本では一流銀行の預金でも、資金コストが大体七分をちよつと上に出ております。そういうものをやつておることではいけませんのと、それからまた片手間ではこれはできません。為替銀行というものは片手間ではいけない。やはり全力を尽してこれに当るということが必要なのと、また相当高等な専門技術を要します為替を世界的に操縦して行くのには相当心門の技術も要しますし、また支店も採卵がとれるところだけつくるというようなぐあいでは、とうてい世界的に為替網を張つて活躍することはできませんので、ある程度これは国が多少の援助を与えるかわりに、義務的にも店舗を設けさすというようなことが必要なのでありまして、そういう点から私ども日本輸出増進のためにも、また輸入についても比較的安くよい品物を入れるためにも、よい原料等を入れるためにもやはり為替銀行を育て上げて行くということは必要であろうと思う。もちろん為替専用銀行をつくりましても、ただいまやつておる各銀行に不自由を与えるとか、不便を与えるとかいう考えは毛頭持つておりません。これらはそれぞれ採算のとれる地域で私設銀行がやつておるのでありますから、これはこれでそのまま伸びてもらう。しかし一方には、そういう多少犠牲を払つてでも、国家的な使命を果すというような専門銀行をぜひつくりたいと思つておりまして、近くその法案の御審議を願う予定にいたしております。
  123. 小山倉之助

    ○小山委員 近来外国へ旅行する人は、どういうような金を使つておりますか私はわかりませんが、私どもの若い時代には、サーキユレーテイング・クレジットでもつて世界中を歩けた。やはりこれは日本の特殊銀行が外国に存在しておつたからであります。大蔵大臣はもとより御承知でありましようが、近来は、ちようどわれわれ明治の初年に治外法権からだんだんそれを撤廃したようなぐあいに、弟一次大戦前までは、貿易というものはほとんど外国人の手か、あるいは支那人の手か、あるいはインド人の手に掌握されておつたのでありますが、第一次大戦を基点として、商権をだんだん奪回して来た。われわれの手に移つて来た。それは大体外国に日本の為替銀行があることも非常な大きな力でありまして、今日は大分外国商館の手を通じて輸入をする。外国商館の手を通して輸出もする。そんなことでは決して日本の富を増すわけでもないし、日本経済自立のためにも役立たないのでありますから、当時を思い出して、私どもはぜひ為替銀行を一日も早く設立して、できるだけ世界各国に拡張して行くという方針に出られんことを染みます。今日はちようど大正の初め、明治の末のようで、当時は、日本人はある場合においては海外移民の送金、海外における醜業婦の働いた金で日本経済の一部を助けた。ちようどただいまは、特需、それからパンパン・ガールの収入というものが日本の収入の大きなアイテムとなつておる。こんな屈辱的な状態から一日も早く離脱するように、貿易政策については、外国為替銀行のような大胆な、大きな構想で進まれんことを私は希望してやまないのであります。区々たる他の銀行の反対なんかを押し切つて、断固として早く設立せられんことを希望いたします。
  124. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 外国為替銀行に、即急に案を御提案申し上げて御審議を仰ぎたいと考えております。  なお貿易についてのお話があり存して、まつたくその遮りでありますが、実は日本の為替銀行の手で日本商社がこれを取扱うようにいたしたいということは、だれしも念願するところでありますが、実は御承知のごとくに、まだ通商航海条約等もできておらない。そういうようなところで、たとえばインドネシアとか東南アジア地方等でも、旅行者はほんの一月か二月しか滞在することはできない。そういつたことでなかなか自由にまかせませんので、今回の予算に特に賠償という文字を入れたりいたしておりますのも、やはり賠償問題をこの両国の和親の、何といいますか一つの促進の方法としたい。そうやつて早く通商航海条約をつくつてちようどアメリカ日本との関係のごとくに、早くこれらの地方も持つて行きたい。それでフィリピンを初めとして、インドネシアその他各東南アジア地方にそういうような話をこちらが進んで進めておるのも、そういう点からであります。なお、さつき外国を旅行するときのお話をちよつとなさいましたが、これは私も同様に考えます。このごろは私どももトラヴエラーズ・チェックというものを持つて歩く。昔のサーキユラー・クレジエツトとちよつと違つて、トラヴエラーズ・チエツクというのがありまして、どうも円が各方面で通用せぬから、自然そういうことになつておるのでありましようから、やはり通貨政策の維持安定、これが貿易政策の一番の根本になると考えております。
  125. 小山倉之助

    ○小山委員 私は大蔵大臣にさらに、二、三お伺いしたいのですが、このたびは一兆円以下の予算をつくつて物価引下げる。ところが、もうアメリカもフランスも、ドイツもみんな緊縮政策になつて物価引下げておるのですから、ここで五分から一割下げようといつても向うの方が先に下つてしまう。そうすればやはり国際的の物価高となるのでありますから、よほどの覚悟をもつて、九分とか一割とかいうようなことじやなく、ほんとうにもつと刷り下げて行くということに十分御留意を願わなければならぬと思う。向うの方が先に物価が下つて行くというような状態でありますし、アメリカども景気が下向いておるというようなことを心配し、各国がまたアメリカの景気の後退を心配しておるような状態で、それだけつまり世界経済というものはアメリカに依存しておるという実情でありますから、この点でも日本経済は、もつと切り詰めなければならぬ時代が来やせぬかと思いますが、大蔵大臣の御所見を伺いたい。
  126. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 これは仰せのごとくに、やはり日本経済の基調をば世界経済の基調に合せて行く、このことはぜひ必要なんであります。従いまして世界経済の基調を絶えず頭に置きつつ、日本経済の基調をこれに即応するように持つて参る。ただ五分ないし一割と申しましたのは、いろいろ政策についての影響という面についてのお考え等が出ますので、そこでまず——もつともここで伺つておると、五分ないし一割しか下らぬではないかという御議論と、もつと下るのではないかという御議論と二つ伺つておるのでありますが、実は私どもは一応の目標をそこに置いてやつておる次第でございますけれども日本経済の基調はあくまで世界経済の快調に相応せしめて参る。こういう所存でございます。
  127. 小山倉之助

    ○小山委員 大蔵大臣にひとつお伺いいたしたいのは、保全経済というものはああいう全貌が明らかになつた。これを災いを転じて福とするというような考えで、つまりああいう高金利の、法網を破つて行われた金融ため国民が、懲りごりしたのですから、この際長期預金に対しては、この課税を減免ずるとか、あるいは早くこの資本の蓄積をはかるために何とかここにかわつた手を打たれて、そうしてその大事な預金が正常な機関にもどるという、そういうふうな機運に今向いて来ておるのではないかと思いますが、ひとつこの際税制措置を法人並びに個人に対して行う御意思がありませんですかどうですか。
  128. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 ただいまの項貯金を増額し奨励するための税制措置につきましては、ちようど昨年のときにあなた方の方の御発意もございまして、二割の源泉を一割にいたしました。それで相当な貯金の増加を見ております。だが今お話になつた長期のもの、この長期いうのは二年以上にしたいという考えもあり、一年でもよいじやないかという考えもありましたが、これについてはあるいは無税とするか、あるいは現在の半額とするか、どちらもいろいろ議論がありますので、確案を得て、すぐお出しすることにいたして、そういうことにいたしたい。長期の預貯金の増加をはかりたい。言いかえますれば、一番資本になりやすい預貯金の奨励をいたしたいと考えております。それから一般の金融につきましては、これは大蔵省としては、貸金業者に対する取締りがございまして、この民間の貸金業者、これについてもある方は非難されて、大蔵省は日歩五十銭までとるというのはけしからぬじやないかという話がありましたが、これは決して大蔵省が日歩五十銭まで認めておるわけではありません。その日歩五十銭というのは、警視庁がここが犯罪になるというところで、裁判所の認定でございまして、大蔵省がそういう多額の金利を認めておるわけでは全然ございません。できるだけ安い資金の供給を阻んでおるのでございますが、この点はただいまのところは警視庁の一つの判断になつておる、たしか判例の結果だと思つておりますが、この貸金業者に対しては、これは大蔵省でも取締ることができますので、絶えずこれを取締つて、できるだけこれを善導するようなぐあいに指導いたしております。そのほかには、ただいまのところは、過日申し上げましたああいう苦い例もございまするから、下特定多数の人から受信行為を受けて金融をやるというのは、これはもちろん大蔵省が取締るので刈りますが、金融の疑いのあるような仕事をする者についてもこれを取締りたい。そうやつてあくまで正常なる金融機関の育成をはかりたい、かように考えておる次第でございます。
  129. 小山倉之助

    ○小山委員 通産大臣にお伺いいたしますが、御承知通りインフレ政策によつて、あるいはアメリカからの援助資金、あるいは朝鮮ブームによつて得た資金、これは恒久的に使われるような錯覚を起したかどうか、小笠原大蔵大臣以前には相当野放図な、ほとんど無統制な金の使い方をして来た。それが今度は念にこれを引締めたのでありますから、おそらくは産業に影響することは非常に多いだろうと思う。私は弟一にこれについてお伺いいたしたいのでありますが、たとえば輸入原料に依存しておる会社は、一時は設備に応じて割当をするというようなことをやつたので、どんどん設備が拡張された。そこであらゆる面において、たとえば羊毛でも銅でも、あるいは砂糖、鋼材いろいろな方面に過剰な設備が行われた。そういう過剰設備、二重設備というようなものについて、どのくらいあるかという資料を提供できるなら願いたいと思います。
  130. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいま的確にどのくらいの数字ということについてはここに持つておりませんから、調べましてできるものを差上げたいと考えます。
  131. 小山倉之助

    ○小山委員 そこで、たとえば設備を拡張したが外貨の割当がない、そうなればあ今まで設備をふやしたものは遊休になるか、あるいは失業者を起すという憂いはありませんか。つまり今までは設備をふやして、そうしてそれで外貨をもらつて原料をたくさん輸入して、そうしてフルに動かして来た。今度それを切られたという場合に、この設備を拡張したものは、あるいは遊休設備となり、あるいはそこに失業者が起る。第一私どもが一番心配するのは、こういう大きな基礎商業、あるいは大企業のもとにある中小工業に一番影響する。そこにしわ寄せされる。私は近来いろんな方面で聞くところによりますと、最近までは相当下請に対して金の融通をした。だんだん金融を引締めて、それが二割となり一割となり、今日はその下請工場というものは賃金を払うにすぎないのであるが、その賃金さえも払えない。これがばたばた倒れて行く、不渡り手形を出さなければならぬ非常な非惨な状態にあるようであります。そういうことについての何らかの用意があるかどうかということを伺いたい。
  132. 愛知揆一

    愛知国務大臣 まず第一の外貨の割当と過剰設備の問題でございます。この外貨に対するこれからの方針の問題でございますが、すでに御説明いたしておりまするように、二十九年度におきまして二十一億四千万ドルの輸入計画というものを一応策定いたしておるわけでありますが、その中の考え方といたしましては、たとえば、第一は食糧等については二十八年度の緊急輸入等の関係もありますから、総額においてこれは大体八、九千万ドル減るのではなかろうかと見ております。それから弟二に、日本生産活動、産業活動につきましては、たびたび申し上げておりますように、年度を通ずれば二十八年度と二十九年度では、大体同規模の生産水準を維持する計画になつておりますから、従つて輸入の原料に仰がざるを得ないようなものにつきましては、私は外貨の方の計画につきましても、そうこれを切り詰めるということは困難であろうと考えます。むしろ概して申しますれば、二十八年度と、原材料等につきましては大体同様の輸入計画ということにせざるを得ないと思つております。それから弟三に緊急ならざることに奢侈的な物資、いわゆるぜいたく品等につきましては、これは徹底的に削減をいたします。しかしこれを要するに、先ほどお尋ねのような大きな問題は、第二の種類に属する問題と思いますから、私は第一に原材料等については急激な引締めはできないと思います。従いまして、御指摘のように急にこの外貨の割当が減つたために設備がいらなくなつて、そうしてそこに倒産その他のことが起るというようなことは、しかく極端に起ることはあるまい、こういうように考えております。  それから中小企業に対しまして、これは外貨の問題とは別に、この一連の緊縮政策というものを、早くかつ相当深刻にその影響を受けるものでありますことは、これもたびたび申し上げます通り、私どももこれの対策が非常に大平であると考えます。従いまして、  これもたびたび申し上げておるのでありますが、ひとり財政資金による金融ということだけではなく、きようの午前中大蔵大蔵も答弁されましたが、たとえば金融については受信力を早く強くすることが必要であろう。そういうために小口保険制度というようなものを、現在法律案を用意いたしておりますが、これがこの受信力の強化ということに相当の改善になろうと思います。それから共同施設の拡充でありますとか、企業診断でありますとか、諸般の政策をあわせて行いたいと思いますし、なお税制についても十分の考慮を払いたいと考えております。
  133. 小山倉之助

    ○小山委員 原料側当の外貨はそう減らないというのは、つまり過剰設備を維持するためでありますか、あるいは失業者を防ぐためでありますか、たとえば私は、羊毛のようなものは少し減らしてもいいような気がする、砂糖のようなものも減らしてもいいような気がする。しかるにこういうものを、この企業を生かすがために、あるいは夫業者を出さないがためにどうしても従来通り入れるという考えでありますか、どうでありますか。
  134. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは設備の過剰を起すことを防ぐために輸入割当をやらないというのではなくて、日本生産全体を、現在見ておるような程度のところに維持するために、必要な原材料については外貨の割当をしなければならない、こういうふうに考えておるわけであります。
  135. 小山倉之助

    ○小山委員 たとえば羊毛のようなものは、あるいはこれをサルフアとリンクして非常な高いものを買つている。一方においては、またサルフアのようなものをトンにして七千円も六千円も損しておる。一方においては三判も高い羊毛を入れておる。そういうことは私は相当一に規制すべきもではないかと思つております。一方砂糖のごときも、たしかあれは一トン九十ドルか何かで買つたものが、百四十ドルになつている。内地の消費者にそういう高いものを食わせて、なお物価引下げができるかどうか。そういうリンク制というものが、今の日本の貿易を非常に害しているのじやないか。一方においては、われわれ労働者の働いたものを向うへダンピングする、一方においては海外から輸入した原料でもつてつくつた品物を非常に安く輸出しておる。つまり出入りに莫大な損をしておるのですから、日本の富は激減して行くことは当然だと思う。おしまいには経済力がなくなるのではないかとおそれるほど、このリンク制というものは災いをなしておるのではないかという気がするのであります。キューバから九十ドル程度で買入れた砂糖を、国民には百四十ドルで食わしている。たとえば羊毛を原価よりも三割も四割も高いものを輸入して国民に着せておる。つまり高い原料を買入れて国民消費をあおつて国民の金を奪つて行くようなものです。そういつた政策物価を低下させることができるであろうかどうか、日本国力をふやして行くことができるかどうかということを疑うのでありますが、通産省のとつておる政策は、その場限りのやり方であつて、必ずしも恒久的の政策じやないという気が私はするのでありますが、その点についての御意見はいかがでありましようか。
  136. 愛知揆一

    愛知国務大臣 いわゆるリンク制という問題は、御指摘の通りなかなかむずかしい問題でございます。これは今詳しく述べることを省略いたしますが、おおよそ四つくらいの必要性から生れたものであります。ただいま御指摘のものは、輸出を伸ばすために、輸入品でもつてその価格を調整するというような場合に行われたものを御指摘のことと思うのでありますが、これは御指摘の通り、あまりおもしろいやり方ではないと思うのでありまして、正常な輸出努力を妨げたり、あるいは国外的にいわゆる複数為替制度というような問題を起して、為替ダンピングというような疑いを受けるというようなものも、あまり進め過ぎると起るかもしれませんので、これらの点につきましては、十分慎重に今後処理したいと思います。
  137. 小山倉之助

    ○小山委員 農産物についてちよつとお伺いをいたしますが、この間の河野君の農林大臣に対する御質問は、今私が質問することと大体同じじやないかと思うのですが、たとえばカナダなりあるいはアメリカなりから麦を入れると、その麦についてトンについて六千円くらい政府がもうけておる。つまり六千円くらい高いものを国民に食わせている。こういうことは事実でありますか、どうでありますか。食料というものは、たとえば小麦にかえるというならば、向うから安く入れたら、安く配給していいじやないか。しかるにそれを六千円も高く国民に売つてつては、これは国民の粉食を奨励するということにもならないし、国民の家庭生活、経費に非常に影響するのであります。私はここにカナダのマニトバの一号から二号シフの値段を待つております。また同時に、日本で、どういうふうにこれを配給しているかという数次も持つております。もし日本の麦が外国の麦よりも高かつたならば、同数量のものを合わせてそれを平均しただけでも、国民に安く供給することができるじやないか。つまり食糧政策にも低物価を防ぐ政策があり、産業政策にも物価を下げない政策が織り込まれている。私は五分とか一割とかいうこの物価値下がりということに、固い信念を持てたいのはそこにある。また一方においてあまりに不足して来ると、今度はどんどん値が上つて来るのでありますから、そこに非常にむずかしい産業政策がある。ですからただいま紙に書いたいろいろな案でもつてこの通り行くとお思いになつたら、大きな間違いだ。外貨に制限を加えると、思惑の問題が起る。その思惑でもつてまた市場が乱される。そういうことになりますから、食糧政策においても、国民生活の安定のため国民生活の経費を安くするという政策をとるべきであるのに、それと全然反対な政策がとられているということが、将来の経済界を混乱に導くものでないかと思うのでありますが、この点について、農林大臣の御意見をお伺いいたします。
  138. 保利茂

    ○保利国務大臣 輸入食糧の面からのみ見ますと、まことにその通りでございます。それはもはやその逆の傾向になつて来ておりますけれども、内地農民から非常な不満を買いましたのは、内地農民から安く買い上げて、そうして高い外米を買つて来るという非難、これは内地の生産農民からも非常な御不満を受けておつたのであります。   〔小峯委兵長代理退席、委員長着席〕 今後の大きな趨向としては、逆の形になつて来るのじやないか。今お話のように、小麦の状態にすでに現われておりますように、小麦の内地価格よりも輸入価格の方が安く入つて来る。そうすると消費者の方からは、安く入つて来る小麦をなぜ安く売らないかということになる傾向が、非常に強くなつて来ると思います。そこで米でありますとか麦でありますとかいうものは、何と申しましても、国民の半数に達しております内地農民の農家経済の支柱的な物資でありますから、従つて農家経済が立ち行く米麦の価格というものはどうしても保障されなければならぬ。これは消費者もその認識と理解をもつて、食糧同順に御協力をいただくということでなければ、とうてい食料問題の解決はできないと思います。そこで今津輸入食糧の価格が下つて来る、内地の価格を下げるわけに行かぬ、こうなつてどうするか。細川はこれは両者のプールによつて、内地の農家経済の立ち行く価格を保障しつつ、しかも消費者の利益をはかつて行くという方向で考えるほかはないのですが、大体来年度予定いたしております小麦の輸入差金は二十五、六億に達するであろうと存じます。今日食管にまだ来年度においても九十億の一応輸入補給金を入れているわけでございます。それではむろん足りませんから、この二十五億を食管会計の操作の中に織り込んで計画を立てているわけであります。
  139. 小山倉之助

    ○小山委員 私は財政投資そのほかの投資について、ずいぶんちぐはぐなところもあるので、統一をとつて計画を立てる必要があると思いますが、最近は投資委員会とか何とかいう、そういう投資について全般の調査をしていただき、大臣に研究の結果を報告したり、あるいは相当の権威を持たせるという、つまり投資委員会というものが私は必要じやないかという考えを持つておるのですが、大臣はこの点についていかがですか。
  140. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 どうも一般金融だけでいけない分につきまして、国家がどうしてもやらなければならぬ重点産業に対して投融資をやる、しかし今年はいろいろな関係もございますので、やはり投融資の方も五百数十億切り詰めたのでございますが、お話のごとくに、あるいは委員会のごときものをつくつて、それに諮問する形をとるのがいいかもわかりません。ただ私ども今まで、相当省議等で数回この問題についてはいろいろな資料に基いて練りました結果で、やつておるのでありますが、しかし外部の知恵を借りる、よその知恵を借りるということは非常にいいことでございますから、ひとつ考てみます。
  141. 小山倉之助

    ○小山委員 最後に建設大臣にお伺いいたしたいのですが、実は私は見聞が狭いのでよくわかりませんが、東北に生れた関係で、北上川というものだけはよく承知しております。ところが御承知のごとく最近はみんな川底が上つて、あたかも朝鮮人やあるいはアフリカの女が水がめを頭に載せて歩くような気がしてならない。川底が上つて道路が高くなり、堤防が高くなる。その堤防の下に町があり村があるという状態でありまして、私は北上川はよほど前、モーター・ボートあるいはその当時の蒸気船で通行したことがあるのですが、今日はどんな小舟でも歩けないような状態になつております。しからばその周囲はどうであるかと申しますると、その川底の中にたくさんの中州がある。この中州の土を両岸にわけるか、あるいはこれを海へ運ぶというようなことをすれば、ここにりつぱな美田ができる。少くとも農耕地ができる。しかるに海外からもどつて来た人人を、あるいは山中に移植させてみたり何かしておるが、ただ木があるだけであつて、米なんかはできない。そういうところに入れておるのですが、そういう計画をすれば、海外の人々がもどつて、そこに牧場もあるいは田畑もりつぱにできるのです。ですから私は今日の日本の土木事業というものは、ひとり北上川だけではない、建設省であげておるところの全国の有力なる河川、あるいは利根川あるいは木曾川あるいは揖斐川、筑後川あるいは北海道の石狩川というようなのがたくさんある。こういうものに対して雄大な計画で、もつと大きな計画川底を掘つて、一方においては水連をはかる、こういうふうな計画が必要じやないか、国土計画について私はそれが根本の問題であると思うのでありますが、そういうことにすれば、私は農村の問題も食糧問題もある程度の解決ができると思います。これがためにはあるいは、ドレツジヤーとかブルドーザーとか、そういうものを、たくさんつくる必要があると思います。小さな機械を大きな河川に一つくらい置いたんじや、何にも役に立たない。もつと大きな計画を立てて、そうして国土の開発をする意思はないかどうか。今までの計画はあまりに小さ過ぎる。金がないからみんな役人は復旧だけのことをやるのです。復旧だからといつて、川底が上つた上に復旧すれば、ますます電信柱のごとく堤防が高くなるだけなんです。これを徹底に計画をなさる御意思があるかどうか。(「予算ができたらやるよ。」と呼ぶ者あり)予算なんかを心配したら、いつまでたつてもできやしません。かえつてそれがために十八百億というものを年々歳々使つている。けれどもこれを集約的に使うというような構想はありませんか、それを伺いたい。
  142. 戸塚九一郎

    ○戸塚国務大臣 お答え申し上げます。ただいまのお話は私の考えておるところとまつたく一致をいたしております。お話のように、一本の川が川底が漸次上つて来ておるというのは、全国的な状態であります。昨年の災害のあとで政府は治山治水の対策を立てる協議会をつくりまして、将来の構想を練つた中に、特に今後は治水の上にはどうしても上流からの土砂の流出して来ることを防ぐ、また従来までに堆積しておるものを何とかして浚渫するということを重点として考えておる次第であります。従来日本は川に対して、一口に言えば堤防主義と申しましようか、堤防をつくることが川の災害を防ぐというふうに考えられておつた点が多いのじやないかと考えられますが、私はどうしても土砂の流出と川底を下げるということに重点を置かなければいけないと考えておるのであります。それがために今後治山治水の対策としては、砂防を最も大きく取上げて行くことと、浚渫を重要視して行く。もちろんお話のように一つの川に一つの浚渫くらいでは追いつかないと思います。特にまた今全国的に見ましても、一つの川で浚渫費が幾らあるかということで、幾らあつても足りませんが、最も重点を置いて行くということが非常に大切なことであると考えております。
  143. 小山倉之助

    ○小山委員 そんなことではだめです。もつと雄大な計画を立ててください。私ども大いに応援します。
  144. 戸塚九一郎

    ○戸塚国務大臣 同時に機械の発煙ということも浚渫に役立つのではないか。今までももちろん考えたでありましようが、なかなか浚渫というものはできなかつた。近年機械が発達して参りましたから、機械を大いに使うということで、各河川の浚渫をすることが大事だ、かように考えます。
  145. 倉石忠雄

    倉石委員長 この際御報告いたします。公聴会の公述人の選定は委員長に御一任を願つておりましたが、次のように決定いたしました。早稲田大学教授時子山常三郎君、全国未亡人団体協会事務局長山高しげり君、農林中央金庫理事長湯河元威君、国民金融公庫総裁櫛田光男君、函館ドック株式会社取締役会長加納久朗君、全日本中小工業協議会中央副委員長中高英信君、日本海員組合組織部長和田春生君、山一証券株式会社取締役社長、日本証券業協会々長小池厚之助君、静岡新聞会長稲宮又吉君、大阪市立大学教授近藤文一君、日本労働組合総評議会政治部長石黒清君。  本日はこの程度にいたしまして、次会は明十一日午前十時より開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時四十分散会