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1954-02-09 第19回国会 衆議院 予算委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年二月九日(火曜日)     午前十一時五分開議  出席委員    委員長 倉石 忠雄君    理事 小峯 柳多君 理事 西村 直己君    理事 西村 久之君 理事 森 幸太郎君    理事 川崎 秀二君 理事 佐藤觀次郎君    理事 今澄  勇君       相川 勝六君    岡田 五郎君       尾崎 末吉君    尾関 義一君       小林 絹治君    迫水 久常君       庄司 一郎君    高橋圓三郎君       富田 健治君    中村  清君       灘尾 弘古君    羽田武嗣郎君       葉梨新五郎君    原 健三郎君       福田 赳夫君    船越  弘君       本間 俊一君    八木 一郎君       山崎  巖君    山本 勝市君       稲葉  修君    小山倉之助君       河野 金昇君    河本 敏夫君       中村三之丞君    古井 喜實君       足鹿  覺君    伊藤 好道君       滝井 義高君    横路 節雄君       稲富 稜人君    川島 金次君       河野  密君    小平  忠君       堤 ツルヨ君    西村 榮一君       吉川 兼光君  出席国務大臣         国 務 大 臣 緒方 竹虎君         法 務 大 臣 犬養  健君         外 務 大 臣 岡崎 勝男君        大 蔵 大 臣 小笠原三九郎君         厚 生 大 臣 草葉 隆圓君         農 林 大 臣 保利  茂君         通商産業大臣  愛知 揆一君         国 務 大 臣 安藤 正純君         国 務 大 臣 木村篤太郎君  出席政府委員         保安庁局長         (経理局長)  石原 周夫君         大蔵政務次官  植木庚子郎君         大蔵事務官         (主計局長)  森永貞一郎君         大蔵事務官         (主税局長)  渡辺喜久造君  委員外出席者         専  門  員 小林幾次郎君         専  門  員 園山 芳造君         専  門  員 小竹 豊治君     ————————————— 二月九日  委員吉川兼光君辞任につき、その補欠として稻  富稜人君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  昭和二十九年度一般会計予算  昭和二十九年度特別会計予算  昭和二十九年度政府関係機関予算     —————————————
  2. 倉石忠雄

    倉石委員長 これより会議を附きます。  昭和二十九年度一般会計予算外二案を一括議題として質疑を継続いたします。古川兼光君。
  3. 吉川兼光

    吉川(兼)委員 まず緒方総理にお伺いいたしたいのであります。  二十九年度の一兆円予算のおもな政治目的ということであります。すなわちこの予算は真の建設目標を全体どこに置いておるのかということでございます。吉田総理大臣は、一月の中旬でございましたか、旅行先での記者会見で、こういうことを言つております。外国から日本政府に対して、日本予算規模をもつと縮小すべきであるということをしばしば忠告された、そこで二十九年度は一兆円以内の予算編成したということを語つておるのであります。そこでお伺いしたいのは、もし外国の忠告がなかつたならば、今回の緊縮予算はやらなかつたのかどうかということであります。また、外国の忠告によつて初めて政府が今度の緊縮予算をつくる決意をしたのであれば、まつたく国独立自主性もあつたものではないのでありまして、外囲、すなわちアメリカでございますが、アメリカは何のために他国の内政にそれほどしばしば干渉し、日本政府はまた何ゆえに一も二もなくこれに聴従せねばならぬのであるか。この点は国民の最も不可解とするところであると思いますがゆえに、その理由をお伺いしたいのであります。
  4. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 お尋ねの理由について申し上げる前に、事実の点に非常な御認識の間違いがあると思いますから、それから申し上げますが、今回の緊縮予算編成は、外国の勧告によつてやつたものでは絶対にないのであります。これは、日本独立を完成いたしまする上に、経済自立の完成ということが何よりも必要であるので、通貨価値の維持、またはその対外価値を維持することによつて国際収支均衡を保ち、それによつて日本自立経済に資して行こう、それには何よりも財政規模圧縮が必要であるという、政府として独自の見識に基いた政策でありまして、外国の勧告あるいは圧迫等によつてつた予算編成方針では絶対にありません。
  5. 吉川兼光

    吉川(兼)委員 副総理は今のような御答弁をなさいますけれども、私は、総理がいらつしやればその新聞の切抜きをここで読み上げてもよろしいのでありますが、まあそこまでのことはいたさぬことにいたしましよう。ところで、この緊縮予算は、MSAを受入れて再軍備を強化するというのが、その政治目的の主眼になつていることは、これはだれが見てももう一目瞭然でございます。そこで日本の長期総合的な経済自立構想が放棄されておると私どもは見るのであります。政府与党でありまする自由党は、先般の大会におきまして、ぎようぎようしい政府を発表いたしまして、経済自立の促進であるとか、電源開発食糧増産、あるいは国土の保全開発等、いわゆる十大政綱と称するものを並べ立てておりますけれども、これは私はことごとく国民を欺瞞するものではないかと思つておるのであります。このような基本的な経済政策は、申すまでもなく、長期かつ総合的な計画性の上に立たなければ物になるものではございません。しかるに、さきに経済審議庁で立案いたしました経済自立五箇年計画、すなわち昭和二十七年から三十二年によりますところのこの経済自立五箇年計画というものをば、官僚の机上案として吉田さんはしりぞけております。そのしりぞけた代償としまして、岡野前経審長官は三目標四原則というものを当時宣伝したのでございますが、これもいつの間にか消えてなくなつてしまつておるのであります。そうしてこのたびの政府与党の十大政綱といいまするものは、何ら数字の裏づけのないところの、実行性の伴わないところの新政策となつておる。いわゆる経済自立ということは、から念仏になつてしまつたのではないかと私ども思つておるのであります。政府はこのような軍備偏重経済圧縮緊縮予算をもつて、はたしていかなる経済自立計画を実行しようとお考えになるのであるか。経済自立こそはまさに今日の日本至上命令でなければなりませんが、その構想を簡単に伺いたい。  さらにまたこの予算を強行することによりまして、デフレ政策から参りますところのいろいろな摩擦がございます。失業でありますとか、倒産でありますとか、あるいは海外市場、特にアメリカ不況際等におきまして、日本国内デフレ政策を行いますと、かえつて国内不況ば深刻となるおそれもあるということを、経済常者は言つておるのであります。政府はこのデフレ予算がもし行き過ぎまして、そうして取返しのつかないような結果を日本経済に生じた場合におきまして、その対策等をどういうふうに考えておるかということも、あわせてお伺いしたいと思います。
  6. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 最初にお話でございました日本経済自立につきましては、これは総合的に施策を進めなければならぬことは、吉川さんがお考えになつておる通りであつて、私どもはまず財政面においては緊縮予算でやつて政府資金散布超過なからしめ、また金融面では引締めを強化して、資金の効率的な使用をはかつて行こう。またこれを産業面企業面についていうなら、設備を近代化合理化して、コストを安からしめて行くということ、国際収支の面についていうなら、その均衡を得させるための貿易の振興、その他のことをはかること、輸出貿易の面についていうなら、諸般施策を総合して、日本輸出品国際競争力を持たせるように物価を下げて行くこと、そのほか諸般政策を総合的に進めて参る次第であります。もちろん個々のものにつきましては、たとえば食糧関係でいえば、酪農その他畜産等につきましても、あるいは産業面につきましていえば、電源についても鉄についても石炭についても、それぞれ計画を持つてつておるのであります。それに基いて日本通貨価値回復向上をはかつて国際収支均衡を得ることによつて日本経済の強化に資して参りたい、こういうのが私どものねらつておるところであることは申すまでもございません。  しからば今いわゆる防衛予算が多いではないかという仰せでありますが、これはどうも立場が少し違うのでやむを得ぬかと存じますが、日本の国の防衛予算は御承知の千三百七十三億であつて、いわゆる一兆円予算の面から見れば一割四分に足りません。これはたとえばイギリスにおきましても三割七分についておりましよう。アメリカではおそらく六割二、三分についておるかと思いますが、それに比べますと、これは比較になりませんほどの小さいものであります。さようなことで、私どもはこの国防予算というものは、日本の国はお互いの力で守つて行かなければならぬ、こういう点から見ましては、この程度のいわゆる自主的の防衛に一歩を進めるという立場としては、やむを得ぬことであると考えておるのであります。さらにそれにデフレ政策等を今とつておるが、ただいまの日本は、過日も申しましたごとく、戦後朝鮮事件等が起つてから特にいわばやすきになれておるところがあつて日本商品価格は、各国が下つておるのに上つておるという事実は、あなたもよく御承知通りであります。従つて、少くとも昭和二十七年のところまで持つて参りたい、こういうので五分ないし一割物価引下げを標準として、政策を立てておることも御承知通りでありまして、これは急激な政策とつたわけではございませんので、私どもは特にデフレというほどの強い線は出て来ないであろうようにも考えます。しかしそれにいたしましても、日本物価が下つてデフレ的傾向に置かれなければならぬことは、これは政策の結果当然でありまして、またそのことが日本商品国際競争力をつけ、国際収支均衡を促進化せしめるゆえんでもございますので、これはあくまでその線に持つて行かなければならぬと私ども考えております。しかし一時に急激な打撃を与えざるために——国際的に見れば物価は三制から高いでありましよう、しかしそこをただいま申し上げましたように、五分ないし一割程度引下げに持つて行くというので漸を期してやつて、一足飛びにでない政策をとつておるということで、私ども考えておるところを御了承願いたいと思うのであります。
  7. 吉川兼光

    吉川(兼)委員 小笠原大臣の非常に懇切丁寧な御答弁でございましたが、私は与えられた時間が非常に短かいので、従来委員に御答弁なさつたことはなるべく簡単にお願い申し上げたいと思うのであります。ただいまの防衛費のことでございますが、大蔵大臣は、千三百幾らと申しますけれども、私ども予算を見ますところの見方によりますと、防衛費昭和二十八年度におきまして千七百十七億、二十九年度におきましては二千百八十七億二千七百万円、こういうような計算が出ております。それはむろんそこに政府と私どもとの考え方の違いがあるのでありまして、私はその数字をなお詳しく説明せよと言われればここで申し上げますけれども、それはどこまで行きましてもおそらく議論は一致しないでしようから省略いたしましよう。  そこでただいま物価お話がございましたが、政府説明によりますと、昭和二十九年度の日本経済物価は五分ないし一割低下する、鉱工業生産はほぼ横ばいである、国民所得は昨年に比較いたしまして、三百億円上まわるところの五兆九千八百億円であると推算しておるのでありますが、どうしてこのような方程式が出るかということを、簡単にお伺いしたいのであります。
  8. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 最も短かい言葉でいえば、物価は需給によつて左右されるのでありまして、方程式のもとに動くものではございません。
  9. 吉川兼光

    吉川(兼)委員 方程式という言葉にたいへん拘泥されたようでございますが、それではもう少し詳しくお尋ねいたしましよう。私の方程式というのは、いわゆる論理ということを伺つたつもりでございます。いわゆる物価の五ないし一〇%と申しますと、平均しますと七・五%ということになるわけでありますが、これを国民分配所得において見ますと、鉱工業生産が四兆でございまして、その七・五%と申しますと、すなわち三千億円の国民所得の減少を生ずるはずでございます。鉱工業生産が横ばいとおつしやられるならば、そういうことになるでありましよう。しかもなお国民所得におきましては三百億円増加するというのであれば、結局鉱工業生産に対しますところの農業生産において、実に三千三、四百億円、これは米に換算しますと、およそ三千三、四百万石の増収を予想しなければ、こういうような数字つじつまが合わないのではないかと私は思うのであります。政府生産数字、あるいは物価国民所得に対するその積算の根拠と思うものを、簡単にお聞かせ願いたいと思います。
  10. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 生産数字は私はちよつとここに持ち合せませんが、鉱工業生産は大体昨年と同様一五二——戦前の九−十一は一一二ぐらいのところであろうと思いますが、なお農業生産は、二十八年は異常な災害があつて少かりたのでありますから、平年度化すればもつと増加すると考えております。  しからば、今どういうふうに国民所得を見ておるかというと、国民所得は五兆九千八百億と見ておるのでありまして、その点から見て、私どもが五分ないし一割ということは、これは最終目的を一割に置いておるのですけれども、将来どういうふうに出て来るかというようなことははつきり申し上げられないので、そう申しておるのでありますが、これは事実でごらんくださいますれば、各般の施策というものが出て来ますから、これは必ず下りますよ。
  11. 吉川兼光

    吉川(兼)委員 事実を見ますと、必ずしも下らないから私は聞いておるのでございます。昨年の農作凶作については、ただいまお話がございましたが、私は昨年凶作であつたから、今年は必ずしも豊作とは限らないであろうと思います。しかしながら政府予算書によりますと、たいえん農作状況を楽観しておるようであります。ただいま大蔵大臣お話を伺いましても、やや楽観の口吻がうかがえるのでありますが、私ども計算によりますと、三千万石の増収をしなければ予算つじつまが合わないのでございますが、二十九年度におきますところの食糧輸入は、大幅に削減を見込み得るかといいうことになつて来るわけであります。これはむしろ農林大臣にお伺いするところであろうと思いますが、論理の順序としまして、もし、お答えできれば大蔵大臣に伺いたいのでありますが、三千万石増収できますならば、まず四億ドルくらいの食糧輸入の節約ができるという数字計算になると思いますが、その点に対するあなたのお考えちよつと伺つておきたい。
  12. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 私は二十九年度豊作たることは非常に希望しておりますが、豊作の見通しをもつて申し上げておるわけではありません。平年作の見込みをもつて申し上げておるのでありまして、その点は誤解ないようにお願いします。  なお輸入につきましても、米を幾ら入れるか、大麦を幾ら入れるか、小麦を幾ら入れるかということによつて、よほど輸人食糧に対する関係も違つて参ります。昨年はよく農林大臣はここで百六十万トンの外米を入れると言つておりましたのが、百四十数万トンになり、最近は百十五万トンになつておると思います。こういう情勢から申しますと、麦を入れることとその他を入れることとで非常に違うことは、これは古川さんよく御承知通りであります。従いまして、私どもが一応見ておるのは、大体麦の方をよけい入れるという計算で見ておるのが——今年の予算になつておるのが食糧補給金であります。
  13. 吉川兼光

    吉川(兼)委員 私が豊作と申しましたのは、非常に時間を急ぐからこういう言葉を用いたので、三千四百万石の増収数字見積つている、これは豊作ということをこの数字見積つているからそういう言葉使つたのですが、言葉のことはどうでもよろしい。  そこで、私がこれに関連してお伺いしたいと思いますのは、政府は往々に、しまして、今日の物価高原因賃金高騰によるものとして、物価引下げのためには労働基準法の改正をほのめかしている。私は朝鮮動乱後、賃金はほぼ生産上昇と比例して上昇して来ているにとどまつてつて、しかもその間雇用指数はほとんど変化はないのでありますから、従つて賃金は大体におきまして生産性上昇の限度内にあると思つてよろしいと思うのであります。物価上昇が特に作用しているとは、私にはどうしても考えられないのでございます。現に国連経済社会理事会報告というものを見ますと、一九五二年におきましてわが国鉱工業生産上昇は、朝鮮動乱勃発の年であります一九五〇年に比較いたしまして、三八%上昇しているのでございます。米国は一〇%、英国は三%の増加にとどまつております。これはたいへんな相違でございます。爾来毎年二〇%程度生産増加を示しているのでございまして、朝鮮動乱わが国労働生産性あるいは操業度などは著しく向上しているのでございます。しかも賃金上昇生産性上昇とほぼ同一の歩調をとつているのでございまして、物価高騰ということを別個に考えてみますならば、実質賃金動乱前に比較いたしまして、わずかに一〇%程度しかし上昇しておらないというのが、この国連理事会報告に基くところの計算であります。かような状況のもとにおきまして、何ゆえ国際価格において二〇%も三〇%も割高になるような物価現象が現われたのでございましようか。政府はややともしますと、操業度が低いとか、生産性が低いとかいう説明をいたしますけれども、私は物価高の真因をついていないのではないかというふうに思います。またそればかりではありません。われわれ労働者祖国復興のために、たゆまざる努力を続けている今日の状況に対しまして、政府がこういう見方をしますことは、生産階級といいますか、まことに労働者全体を侮辱するとでも申しますか、こういうふうな結果になる。これは生産意欲その他におきまして、決して芳ばしい影響はないと思いますので、この点についての政府の御所見を伺わせていただきたいと思うのであります。
  14. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 労働者生産意欲の点に対しましては、労働大臣がおりませんのでお答えはできないかと思いますが、私どもは今古川さんが指摘をされたごとくに、労働賃金というものは物価の中で相当大きい部分を占めていると思いますけれども、しかし労働賃金が高いから日本物価が高くなつているとは思つておりません。日本物価高というものは、主として戦争中及び戦争後における物の不自由さから来た一つ購買力増加の意味もございましようが、また一つは、何といつても気のゆるみが大きいと私は思います。国民がぜいたくになつたことは間違いありません。これは一方で非常に生産確保をやらずに、他方でいわゆる遊楽機関とか、娯楽機関とか、歓楽機関がことごとく備わつてしまつている。デパートその他へ行つてみても、高級品がいつでも羽のはえるがごとくに飛んで売れて行く、こういうようなことは、やはり国民精神がいささか弛緩していることがしからしめていると私は思います。その点から、やはり国民がもつと合理的な、倫理的な生活をする、こういうのも、私どもこの予算を通してお願いしている次第でございます。
  15. 吉川兼光

    吉川(兼)委員 時間がありませんからどんどん飛ばして参りますが、私はただいまの大蔵大臣説明には満足いたしません。わが国物価高のほんとうの原因は、朝鮮動乱勃発後の、あるいは九箇月くらいの間に行われましたところの金融信用政策というもののずさんに大きな原因があつた、これは大蔵大臣もうなずいておられますので、私と御同感であろうと思うのであります。それを国民の何か心構えにでもその原因があるかのようなただいまの御答弁には、私は絶対に承服はできません。時間があればもう少しここでその点を追求しながらお伺いしたいのでありますが、この辺でとめておきます。  次に私は保安庁長官がお見えでありますから、ちよつと一点お聞きしておきたいのは、政府緊縮予算を組んで国民耐乏を求めているのであります。しかしながら私どもから見ますと、どうも政府みずからが相当むだをしておるのではないか。たとえば行政費切り詰めなどということが、ほとんど関心を持たれておらないのではないかということを申し上げたいのであります。特に私は問題になつておるところの保安庁の経費におきましては、その感を深くせざるを得ない。ちよつと私が思いついて拾いました数字がここに一つあります。それは何かと申しますと、保安大学東京大学法学部との比較でございます。保安大学はただいま学生は四百人、教員の数は文官と武官を入れまして四十五人、事務員は七十五人いるのであります。その事務員も十級というような高給者が四人もいるのでございます。東京大学法学部学生はこの約五倍に近いところの千九百二十二人、しかも教員はわずかに一人上まわるところの四十六人、事務員に至りましては保安大学よりは十三人も少い六十二人、しかも十級以上のものは二人しかおらぬというようなことで、ちやんと東京大学法学部教育ができておりますのに、ひとり保安大学は、こういうような莫大もない人や金を使つて教育をしなければならぬということが、私にはどうにも納得が行かない。大臣お答えになるには小さい問題と思われるかもしれませんが、これは決して小さくない。これは今日の耐乏予算との関連におきまして、国民が知ります場合にははなはだ政府不信の大きな原因になる。こういうふうに考えますので、私ども納得の行くように御答弁が願いたいのであります。  それからついででございますからお尋ねいたしますが、東京湾の木更津の沖の方へフリゲート艦というのが十二、三ばい、地元では観艦式といつておりますが、何か演習のごときものをもう二月の初めから約十日間にわたつてあの辺を盛んに遊尤いたしております。ところがこれがどういうわけですか、古くて機械でも悪いのかしれませんが、油を盛んに海面にばらまきます。あの辺は実はのり採集地でございまして、のりは二月の今時分までに採集しなければ、もう取つても役に立たなくなるのでございますが、それが全部油臭くなります。私は漁民からその話を聞きまして、それではもう取らぬでおけばいいのではないか。油が流れてから取れといわれてもそういうわけには行かぬそうです。今の時期は油が水面に浮いておるものでありますから、引上げたとたんにのりが全部油臭くなります。これでは全然商品にならぬというので、その損害が数千万円に及んでおるのでありますが、フリゲート艦というものは、そんなにのりのあるところでなければ演習もできないものか。ひとつのりのないところに持つて行つてこういうことをやるぐらいなおもんばかりがあつていいのではないかと思いますので、御答弁を願いたいと思うのであります。
  16. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。今の保安大学校の御質問でありますが、保安大学校の教育方針は主として理工科つまり技術の点に重きを置いておるのであります。文科系統とは多少趣を異にしております。文科系統は御承知のように一人当り費用は、理科系統の一人当り費用より非常に少い。理科系統の方は多いのであります。従いまして相当の金がかかることは当然なことであろうと思います。またこの教育につきましても、普通の大学と違いまして訓練その他非常に金のかかる面もあります。また給与をことごとく国費で支弁しなければならぬことになつておりますから、これらの点から見まして、決してむだに金を使つているわけではありません。  次にのりお話であります。私は常に一般民衆に迷惑をかけることをしては相ならぬということを、強く訓示しているわけであります。フリゲートのことでありますが、フリゲートは横須賀を出て東京湾あるいは港外に遊尤することがあります。しかし御承知通り東京湾では各種の内外船舶が毎日航行しているのであります。従いましてこれらの船舶の数とフリゲートの遊尤する数とは比較にならぬのであります。どれがはたしてのりに被害を加えるかということは、ただいま私は調査の上でなければわかりませんが、しかしお示しの通り、さような事実がありとすれば、これは私は大いに注意しなければならぬと考えております。のりの繁殖しているところへわざわざ持つて行つて遊尤するということは、これはいけないことであります。さような点は事実を調査した上で、もしもそういう事実ありとすれば、さようなことのないように、将来十分注意して行きたい、こう考えます。
  17. 吉川兼光

    吉川(兼)委員 それでは法務大臣ちよつとお伺いしたい。選挙違反の取締りについて、政府ははたしてその徹底を期しておられるかということでございます。最近政府の御方針として町村合併が全国的に行われているのでございまして、その結果は当然市長とか教育委員とかの選挙を行われているのでありますから、この機会における選挙違反の取締りといいますか、選挙粛正の心配りというものが、特に大事じやないかと思いますがゆえに、一言お伺いしてみたいことがございます。これをやりませんといわゆる民意の暢達というものが、非常にむずかしくなりますことは申し上げるまでもありません。実は千葉県におきまして、昨年の暮れから正月を中にはさんで、参議院議員の補欠選挙があつたのでございますが、公職選挙法のたしか百四十六条の二項であつたと思いますけれども、選挙運動期間中におきましては、候補者であるとかあるいは候補者の同一戸籍にある者でございますとか、あるいは選挙事務長、選挙運動員などは、一切印刷物を出してはいけない、いわゆる年賀状といえどもこれを出してはいけないということが明記してある。ところが千葉県におきましては、某保守党の側におきましては、候補者はむろん選挙事務長から選挙運動員全部実にたくさんの年賀状をばらまいている。とこ余たまたまそのころ毎日新聞主催で選挙運動期間中に各候補者の事務長の座談会というものがありまして、その座談会の席上で年賀状のことが話題になりましたところが、保守党の選挙事務長氏はみずからいわく、いやあれはちよつと私どもの連絡がまずかつたとか何とか言つておられましたが、とにかく出すには出しました、出したものはやむを得ないから、もうあとは法のさばきを待つているということをおつしやいましたから、堂々とそれが毎日新聞の千葉版に載つているのです。これは私は議会が始まつてこつちへちよちよいとまつたりしますから、あるいは見落しているかもしれませんが、新聞を通じて見ますと、その当人は法のさばきを待つているというのに、検事局といいますか検察庁の方で、その事犯を取上げたということは一向新聞には見えない。これはいわゆる選挙のためにあれはおれが出したのじやないとか出したとかいう水かけ論でなくして、事務長みずからがそう言つておられて、それが新聞に載つて県民が知つているのでありますから、お取調べになつているのかもしれませんが、これは一体お取調べになつているのかなつていないのか。また一般的な問題として選挙取締りをどうお考えになつているかということを、簡単にお答え願いたい。
  18. 犬養健

    犬養国務大臣 お答えをいたします。お話の千葉県における選挙に関する年賀状にまつわる公職選挙法違反事件というものは、まだ受理をいたしておりません。ただいまお話をだんだん伺つての感想を申し上げるのでございますが、御指摘のように公職選挙法百四十六条の二項であつたと思いますが、年賀状に関する禁止規定がございます。そこで問題の千葉県の選挙でございますが、よく御承知のように昨年の十二月二十一日に公示になりました。それでたまたま年賀状が多数出たということはありそうなことでありますが、選挙中に年賀状が方々のあて名に届いたとしましても、出した時期等を一ぺん調べてみませんと、今ここでそれは違法だと断定するのは、どうも少し早いのではないかと思います。これは御指摘のこともございましたから、以上のような心持で事態の経過を十分注意し、調査してみたいと思つております。
  19. 吉川兼光

    吉川(兼)委員 それでは私農林大臣に二、三お伺いを申し上げたいのであります。時間の関係でこの問題は前後しまして、まず緊急な問題を先にお伺い申し上げたいのでございます。わが国食糧不足については、主食の二千万石の不足、これを主として問題にしておりますけれども、私はいわゆる動物蛋白、脂肪の絶対量の不足というものも重要ではないかと思います。米の不定を、麦を中心とする粉食に切りかえようとしておりますところの現政府食糧政策といたしましては、特に私はこれを尊重されなければならないと思うのであります。今日世界の各国について見ましても、この食糧自給態勢を整えておりますところの国——私は昨年ちよつとヨーロッパをまわつて来たのでありますが、そういうところの事情を見ましても、たとえば畜産事情といいますものは、牛とか馬とかいいます大家畜に換算いたしまして、大体その国の人口の数と匹敵する数量を確保しておるのであります。翻つてわが国を見ますと、人口八千七百万に対しまして畜産の実態は、いわゆる大家畜に換算いたしまして、おそらく四百万かそれをちよつと出るくらいな頭数になつておる、すなわち二十分の一くらいではないかと思うのであります。従つてこういう状況のもとにおける粉食の奨励は、これは考え方によりますと、国民の体位が低下するおそれがあるのでありまして、私はこの動物蛋白の絶対量を大いに急速にふやさなければならないと思うのであります。畜産奨励に対しましては、いろいろ政府施策も伺つております。ところで日本は周囲が海でありまして、水産方面における魚介蛋白といいますか、こういうものをまず今日の応急の時期においては相当国民に摂取せしめるという対策、いわゆる畜産関係の増強が十分な域に達しますまで、大いに魚介関係のことが行われてよろしいのではないかと思うのでございます。詳しい数字は私も多少存じておりますが、大臣御存じでしようから差控えますが、政府の従来の水産行政の方針というものを見ますと、来年度の予算にもそれが現われておりますように、沿岸漁業よりは沖合い漁業、沖合い漁業よりは遠洋漁業という方面に重点を置いておられるようでありますけれども、この海岸線の長い、いわゆるフイヨールドすなわち地峡の多い特殊事情の地形、あるいは雨量が多い、あるいは三百万町歩からの田畑から流れるところのこやしがそれぞれの海岸に入つて行く、こういうような関係等から、世界無比の魚田を持つております日本におきましては、浅海漁業というものを大いに助成しなければならないものではないかと考えるのであります。ところがこの二十九年度予算を見ましても、浅海漁業の方面に振り向けておりますところの予算は、わずかに八千八百万円ぐらいではなかつたかと思うのでございます。しかもそれ以外の面におきましては、七億五千万円からの金を使つておるのでございます。これは山口君のような、どういいますか和歌山県出身の人にしては珍しく御理解がないようですが、これはたいへんな浅海漁業の虐待であるといわなければなりません。このような浅海漁業が虐待されておりますところの段階におきまして、またここにたいへんな問題が起つておるのでございます。それは何かと申しますと、ここに二、三日前の新聞もありますが、全紙面を通じて書いてありますようないわゆる東京湾におけるひとで六千万円を食うという、このひとでというものが貝類を食つておりますところの大被害であります。東京湾と申しますと、何だか神奈川県とか千鷹県だけに関係しておるというふうに考えられやすいのでございますけれども、御承知でもございましようが、全国的に九州の有明海から渥美湾、伊勢湾、瀬戸内海、あるいは東北地方の各地方に稚貝、いわゆる貝類の種苗の八割をこの地域から送り出しておるのであります。ここに現物もありますが、これがひとででございます。こういう異様なやつが現われまして、これが貝をとりかこみまして食うのです。食い方も私はよく聞いて十分知つておりますが、それを申し上げる時間は省きましよう。いわゆる浦安から木更津にかけましての約三十箇町村の、水深二メートルから八メートルに至りますところで、およそ千二百万坪のたいへんな地域にわたりまして、昨年の十一月からこういう化けものが出て来ておるのであります。ひどいところではこれが一坪に六十も折重なつて棲息しておるのでありまして、まつたくあの東京湾内の貝類はもう全滅の寸前に置かれておるのでございます。あの付近の三十箇町村、四十浦の漁業協同組合におきましては、昨日二月八日からひとで一掃週間というものを起しまして、老いも若きもみな海に入つて、一万人の人がこのひとでと今闘つておるのであります。ところが御存じのように、東京湾は例の防潜網等の関係によりまして、数年来回遊魚は来なくなつている。またことしの暖冬異変、またフリゲート艦の乗入れで、のりも食えなくなつております。こういう状態で東京湾の漁民が特に経済的に困窮しております際、こういうようなひとでの襲来を受けて、一層たいへんな困窮に置かれておるのでございます。彼らは労力はいとわないのでございますけれども、ただこのひとでを退治しますには、相当な技術の指導がないとやれません。また大がかりな機械力なんかも必要とする。船も相当沖合いまでたくさん出さなくてはならぬのでございますから、こういうものを早く片づけていただくように、農林当局におきましても現に御指導をなさつておるのかどうか。もしなさつていなければ、どういうふうにこの対策を考えておられるのかということを、ひとつはつきりと農林大臣からお伺いしておきたいと思うのでございます。
  20. 保利茂

    ○保利国務大臣 わが国食糧問題を解決して参ります上に、脂肪、蛋白の給源を増すということは、これは根本の施策でなければならぬと思います。そこで畜産振興にあわせまして海洋蛋白の増強の必要を私も大いに感じておるわけであります。そこで沿岸から沖合いへ、沖合いから遠洋へというモットーでいたしておりますのは、沿岸漁民を保護して参ります上からいたしましても、長い間封鎖されておりましたわが国の漁場が、まだ一部には摩擦もありますけれども、ともかくも独立以来遠洋が開放せられておりますから、沿岸漁業を圧迫している現状からいたしまして、できるだけ力のある人は沖の方へ、沖から遠洋の方に出て行く。そうして蛋白資源の開発に力を尽していただくようにというのをモットーとしてやつておるわけであります。お話の千葉県のひとでによるはまぐり、あさり、稚貝の被害はかなり甚大なものがございます。水産研究所におきましても一体どういう事情で深海生物のひとでが——おそらくこれは海流の関係であろうとは存じられますけれども、浅海に移動して参りましたことにつきましては、研究もいたしております。結論は結局これはお話のように、このひとでを駆除する以外には、しかも薬物等によつて駆除するのではなく、結局人力によつてこれを排除するという以外にはないわけであります。沿岸の漁民の方々が非常な苦労をなさつておるということは、よく承知をいたしております。従いまして私どもとしましては、この駆除をやつていただくにやりいいように、たとえば金融等の措置を講じまして、駆除の助成をはかつて行く。それを取除く以外には被害を食いとめる道がないようでございますから、そういうことでただいま大急ぎで現地でいたしておるわけでございます。
  21. 吉川兼光

    吉川(兼)委員 それではただいまの農林大臣の御答弁に全幅の信頼を置きまして、ぜひどうか早急にひとでを退治していただきたいということを重ねてお願いを申し上げます。  同じく食糧増産関係の問題でございますが、政府の出しております昨年の経済白書によりますと、国内食糧増産に努力しないでこのまま放任すれば、人口の増加と耕地のつぶれなどのために、五年後には現在よりさらに二百万トンぐらいの米が不足する。いわゆる輸入増加とならなければならない。こうすれば海外の支払いはさらに三億ドルぐらい増大するであろうということを、白書の三十八ぺ−ジかに書いてあります。三億ドル増大するということになりますと、現在の食糧輸入支払い外貨と合せまして九億ドルになるわけでございますが、政府は、今までの食糧増産計画を見ましても、これはいずれも机上の案でありまして、掛声だけである。いたずらに国民を瞞着するというような結果になつた面が少くない。これは統計がはつきりと表わしておるのであります。今日の世界におきまして、これほど大量な食糧を海外から買いあさつている国は、これは三億五千万の人口を持つておりますインドと日本だけでございます。買いあさりますと当然これは値段がせり上ります。現に昭和二十七年は国内豊作であつたにもかかわりませず、政府は外米の輸入にトン当り百四十ドル見当で買付に当りましたけれども、結果は百八十ドルから二百ドルでなければ買えなかつた。そのためにあの年はたしか二百七十億円の予算で足りなくて、さらに百数十億円の穴埋め追加をいたしたのでございます。しかるにことしの外米補助費を見ますと、いわゆる一兆予算つじつまを無理に合せるとしか思えないのは、非常にこれが過小でございます。しかもトン当り百八十一ドルでございますか、そうして農林大臣は臨時国会におきましては百六十万トンの輸入を盛んに呼号されておりましたが、予算面には百六十万という数字はてんで見当らないというような、非常な減量をここにあげておるのでございます。私はこういうような無理な予算をおつくりになりましても、今後必ず遠からず馬脚を現わすに違いないということを信じて疑いません。従つて当然年度末までには輸入量を追加する補給金が二倍か三倍かふえるような結果になる。私はこれは断定をしてもいいのではないかというくらいに、確信を持つてそういう見通しに立たざるを得ないのであります。今日の日本経済の危機のその根因をつきますならば、私は食糧危機に尽きるのではないかと考えます。こういうような重大な問題を、目先の糊塗策をもつて一時を塗りつぶすというような食糧対策をもつて放任することは、食糧危機の電圧というものが、日本経済のいわゆる崩壊にまで大きな影響を与えまして、ために国内は動揺混乱し、社会不安が醸成されまして、重大な国家的な危機に陥るおそれなしとはしないのであります。  実は私昨年デンマークを見て参りました。また十七、八年前に第一次世界大戦後のイタリアも見たことがございます。デンマークは一八六四年ですか、今から九十年ばかり前に、ドイツとの戦争で敗戦国になりました。イタリアも第二次世界大戦後におきましては、非常な食糧危機に当面したのでございますが、いずれもその両国の政府は、農業生産農業の増産、食料の自給ということを基本的な政策といたしまして、それに没頭したといつてもよろしいくらいの施策を行いましたがゆえに、間もなくイタリアのようなところにおきましても、食糧問題は七箇年にして解決しておるのであります。今日デンマークの農業のごときものは実に驚くべきものがあるのでございます。こういう事例が目の前にありますにもかかわらず、このたびの予算を見ましても、ややともいたしますと、食糧予算を減額している。おそらく政府に言わせますと、食糧増産費はこれこれふやしたと言われるかもしれませんが、そうおつしやいますならば、私は数字をもつてこれはふやしてないということをここで切りかえすことができます。しかしながらもう時間がないそうでありますから、そういう論議は避けますが、食糧増産につきまして、どういうふうな思い切つた構想をお持ちであるかということを、この機会に大臣に聞いておきたい。実はいろいろ箇条書きによつてお伺いいたしたいと考えましたが、時間かたいへん迫つているようでありますから、伺いませんが、この問題についての大臣の御説明はできるだけ親切にお聞かせ願いたい。
  22. 保利茂

    ○保利国務大臣 今日外地食糧に大きく依存しておる現状が、経済目立を達成して参ります上に大きな障害をなしているということは、もう厳然たる事実でございます。従つて外地食糧の依存度を軽からしめる。すなわち食糧自給度の向上をはかつて参るということは、これはもう超国策的な問題であると考えておるわけであります。そういう意味からいたしますれば、食糧増産対策事業というものは、私どもから申しますれば、この緊縮予算の中においてはきわめて不満足ではございます。しかしこの二十九年度に最も力を入れておりますのは、通常申しております食糧増産対策事業の中の土地改良でございまして、土地改良の予算はかなりきゆうくつながらも計上をいたしているわけでございます。これを重点的、効率的にできるだけ成果を早くもたらす事業に主力を置いて、年度中にできるだけ事業の完成を造成するようにいたして参りたいと思います。しかし、食糧増産はいわゆる農地の造成、開墾でありますとか、干拓でありますとか、たいへんに負担を要する面のみが食糧増産ではない、これはもちろん申し上げるまでもないわけでありますが、三百万町歩の水田から戦前一石九斗台の平均反収が、今日では三石一斗を上まわつておる、これがもし全体として一割なり二割なりの反収を引上げることができますならば、私は食糧増産としてそこに長も大きなかぎがあるのじやないか、そういう上から土地の改良等に今日まで相当多額の資金を投じて来ておりますが、そういうふうに土地の条件を整備するとともに、特にむしろ世界的に、有名なくらいの日本の農民の努力と、この改善せられた土地条件にマッチする営農技術が持たれるようになることが、私は食料増産の一つの残されたかぎだと存ずるのであります。そういうことにつきましても、今回の予算でこれもきわめて少額ではございますけれども、そういう方向についても十分の配慮をいたして、増産の実をあげて参りたいと思つております。一応の予算計画としましては、土地改良を考え、あるいは干拓、開墾等による二十九年度の増産目標は、百十万石か百二十万石程度の増産計画になろうかと考えております。
  23. 吉川兼光

    吉川(兼)委員 大体もうしばしばいろいろな機会に伺つております御答弁をそのまま繰返して伺つたことでありますが、私は土地改良あるいは開墾、干拓、ただいまお話のありましたそういうものにだけついてみましても、政府の今の予算はたいへん足りないと思います。また予算の中においてこれを行います分配の仕方につきましても、もつと御配慮を仰ぐ面があるのではないかというふうに思います。これは質問ではなく私の意見を少しつけ加えておきたいと思いますが、それは、土地改良にいたしましても、国営でありますとか道府県営でありますとか、そういう大きな面にのみ政府の金が流れておるのでありまして、いわゆる団体営でありますとか小規模土地改良でありますとかいう方面には、大幅にこれを減らしておるのでございます。ところが問題になりますところのいろいろな事業計画の錯誤でありますとか、あるいははなはだしきは工事の不正でありますとか、こういうものは全部国営とか道府県営とかいうような大きな工事にのみ、従来ふしぎにこれがつきまとつておるのでございます。反対にこの小規模土地改良といいますものは、事業目的が大体当年度内ということになりますので、これは生産の成果もすぐ上りますし、従つて現実的な農民の生産意欲も上りますので、どうかこの方面に今後の施策の重点を御展開願いたいものだということを私の意見として申し上げておきます。  それでは次に外務大臣に簡単にお伺いいたしたいと思います。それは今度在外公館を方々におつくりのようでございますが、私は在外公館のつくり方について、御参考になるか、どうかと思いますが、この間私は向うで痛感したことを申し上げておきたいと思いますのは、どうも外務省のお役人を海外に配置なさるのが、戦争前とあまり考え方がかわつておらないのではないかという感を私は抱いたのです。これは私だけではありません。旅行者もそういう話をする者が多いようであります。たとえば今日本における至上命令ともいうべき食糧増産というような問題、これなどはもう私がこういうところで申し上げるまでもなく、デンマーク農業というのは四十年も五十年も前から日本で宣伝されておるのでありますが、そのデンマークにわれわれが行つてみると、あそこには外交官は一人もおらない、ロンドンとかパリへ参りますと、たくさんの人々がそれぞれ自動車をお持ちになつていらつしやる。まあ、ああいう大きな国でありますから、相当外交官が必要でありますことはわかりますけれども、少くとも今日の日本のような事情のもとにおきましては、デンマークに、もし外務省に人がなければ、それこそ農林省あたりに御協力を願つてでも、あの辺に農業アタッシェのようなものが相当数おられても、日本の今日の外交の実態から考えて、私は決して無意味ではないと思う。ところがあそこにはどういうわけかスウェーデンの公使がノルウェーとデンマークを兼務されて、あそこには館員が三人か四人で、これは一日に十六時間、十八時間と働いても、なかなか仕事が片づかないというような状況です。大きいところに参りますると、何かしていらつしやるには違いないのでありますが、あの小さな公使館のお忙しいのに比べると、比較にならないように人がたくさんおる。これはぜひ岡崎さんの御在任中に、従来のオーソドックスなやり方だけでは、今日の日本の外交は成果を上げ得ないのではないかというようなこともひとつ考えになつて、もしお考えいただけますならば、そういうことを具体的に現わすような御努力を願いたいものだと思います。この点につきましてどうか簡単にお答えを願いたいと思います。
  24. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 おつしやることはまことにごもつともでありまして、私どもそのつもりでやるつもりでおります。ただほかの点では、たとえば向うから公使が参りますと、やはりこちらからも大公使を出さなければならないことになりますものですから、そこでつい、こちらで特に欲しているところに必ずしもマッチしない場合もあるのであります。おつしやるデンマークのごときは、先方から専任の公使が参つておるようなわけでありますから、こちらとしても出すのがあたりまえであります。おつしやるようにできるだけ努力したいと思います。
  25. 吉川兼光

    吉川(兼)委員 もう時間がたいへん迫つたそうでありますから、最後に通産大臣に中小企業問題をごく簡単にひとつ答弁願いたいのであります。本年の予算の金融引締めといいますか、緊縮予算の直接の犠牲は何といつても中小企業です。すなわち一番弱いところの下請業者ではないかと思いますが、これに対する政府の対策をお伺いしたいと思います。
  26. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 今回の財政政策なり経済政策なりにつきましては、私は一部に伝えられておりますような非常な不況であるとか恐慌であるとか、そういうことを予想されるような、さような性格のものではないと思います。しかしながら財政金融を通じまして引締めの政策を行うということでありますれば、やはりその影響を一番直接かつ早く受けるものは、どうしても中小企業であると考えますので、中小企業の対策につきましては、特に従来にも増しまして、この苦しい中でございますが、いろいろのくふうを払つておるつもりでございます。たとえば財政投資、融資の関係の金融の問題につきましても、中小企業家について、融資の額とすれば年間百七十億円というような程度に、これはほかは全部減つておるのでありますが、これだけは何とかして減らさないようにということで、政府としては十分の配慮をいたしたつもりでありますが、さらにこれはいわゆる財政的な金融にたよるというだけのことではいかぬと考えますので、総合的に考え得るいろいろの施策をあわせ用いたいと思つておるのであります。たとえば税の問題にいたしましても、最終的にまだ法律案として御提案するまでには至つておりませんが、地方税の事業税の関係等におきましても、少額の所得の場合には、ある程度税率を下げるというようなくふうもいたすつもりでございます。また金融を受けるについては信用力を充実しなければならない。また世間の大きな波に対抗して参りますためには、協同連帯で共同施設なり、あるいは組合を強化をするなり、あるいはまた信用力の造成ということで、たとえば小口保険をつくらなければならぬというような面につきましては、随時所要のものは法律の改正等をも用意いたしておるような次第でありまして、あらゆる面から何とか力を出し合つて、中小企業だけに不当なしわ寄せが起らないようにということにいたして参りたいと思つております。
  27. 倉石忠雄

    倉石委員長 よろしゆうございますね。
  28. 吉川兼光

    吉川(兼)委員 よろしゆうございます。
  29. 倉石忠雄

    倉石委員長 それでは午後一時十分より再開することといたしまして、暫時休憩いたします。    午後零時十一分休憩      ————◇—————    午後一時三十六分開議
  30. 小峯柳多

    ○小峯委員長代理 休憩前に引続き会議を開きます。  質疑を継続いたします。山本勝市君。
  31. 山本勝市

    ○山本(勝)委員 最初に緒方総理、それから厚生大臣大蔵大臣とにお伺いをいたしますが、いわゆる非公務死の問題であります。御承知通り戦争中に召集された軍人軍属の中で、死亡の原因が公務死でなくて、いわゆる非公務死であるという理由で、具体的に申しますと、たとえば肋膜でなくなつたとか、あるいは腹膜でなくなつたとかいう方の遺族が、遺族援護法の適用も何も受けて来ないで今日に至つておることは、御承知のことであります。これは人数の上からは七万人ばかりと申されております。数はさまで多いとは申しませんけれども、しかし遺族の立場から見ますると、いかに肋膜で死のうが、あるいは腹膜で死のうが、赤紙で召集されたということは、達者であつたから召集された。病人が召集されておるわけはない。かように考えておるのであります。達者な者が召集されて、そうして戦地や、あるいは台湾とか沖繩とかいつたような所において死亡した。その病気が法律上の公務死でないという理由で何らの考慮も払われないということに対して、言葉は適当でないかもしれませんが、悲憤やる方ない気持になつておるのであります。やかましくこれまで問題になりまして、おそらくこの非公務死に対する遺族にまでこの手を伸ばすということは、各党だれ一人反対がないと私は信じております。われわれの自由党におきましても、政務調査会において満場一致で、その援護をすべきことを決定いたしたのです。今回政府の方でも、これに対して何らかの援護の方法を講じるということになつておるようでありますが、新聞で伺いますと、厚生省の要求する金額と大蔵省の考えと、金額に開きがあつて、決定されないというようなことも出ておりますが、これがどういうふうな経過になつておるのかということを伺いたいのであります。厚生大臣からでも、あるいは大蔵大臣からでもけつこうでありますが、その経過と今後の見通しを伺いたいと思います。
  32. 草葉隆圓

    ○草葉国務大臣 お話のように、非公務死のことにつきまして、実は戦傷病者、戦没者遺族等援護法には、恩給法と関連いたしまして、いわゆる改正恩給法を復活いたしまするまで独立早早の暫定措置としていたしましたので、同一な考え方から、援護法でも公務死の遺族に対しまして、恩給法と同等の方法で考えて参りました。従いまして公務死の人たちだけに限定したわけでございます。しかしただいまお話になりまするように、実際上の問題では、約七万程度と推計いたしておりまするが、これらの御遺族に対しまして、いろいろな点から将来相当の方法を講ずべきである。従つて近く戦傷病者戦没者遺族等援護法を一部改正いたしまして、これらの非公務死の人たちに対しましても、弔慰金等の方法を講じたいと存じております。ただいろいろこれには影響するところがありまするから、目下大蔵省と事務的にいろいろそういう点を検討いたしております。決して両省が対立しておるわけではございませんので、十分事務的な、あるいは従来の恩給法によつていたしておりまする行政実例、そういうものをよくしんしやくいたしまして、遺漏なきを期したいと存じまして、関係各省間において研究をいたしております。いずれ近くこれは援護法の改正として、御審議をいただくという段階になるべく早くいたしたいと存じております。
  33. 山本勝市

    ○山本(勝)委員 厚生生大臣お答えがありましたが、われわれの考えでは、それにあまり厖大な費用がかかるというふうには聞いておりません。われわれの聞き及んでおる範囲のことならば、その金額をこの非公務死者の遺家族に与えることに対して、おそらく全国民だれ一人反対がないと私は思う。喜んで全国民はこれに応ずると思う。これが忘れられておつたと言つては悪いかもしれませんが、そのままにされておつたことに対して、申訳ないという気持を国民は持つだろうとすら思うのです。ですから大蔵大臣の方でも、また恩給法に関係するのかしりませんが、総理府の方でも、これまでの規則云々というようなことに長い間こだわつて今日に来つたのでありますが、一刻も早く解決してほしいし、解決にあたつては、全国民が喜んでこれに応ずるかどうかということも考えられて、金額の点も決定していただきたい。この点はむしろ御答弁をいただかなくても、折衝中ということでありますから、私の希望を申し上げておきます。自由党の中でも一人も反対はありませんでしたが、私の属しておる委員会などでも、その話をいたしますと、どの政党の方も、もう一人も反対はありません。そのことを御記憶願いたいと思うのであります。  第二にお伺い申し上げたいのは、これは通産大臣にお伺い申してみたい。大臣はお気づきだと思いますが、最近に国会に対して、中小企業者の猛烈な陳情運動が行われております。参観で参られる方もずいぶんありますけれども、しかし中小企業者がこうもたくさん国会に押し寄せて来るということは、私は前古未曽有だと思う。労働団体などはしよつちゆう押しかけて来ますけれども、中小企業者はめつたに来ません。それが忙しい仕事をほうつておいて、血眼になつて押しかけて来ておる。この事実に対して、中小企業者の振興を担当しておられる、運命を考えておられる通産大臣としての所感を、私は承りたいと思います。
  34. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 まことにごもつともでございまして、最近は新しい緊縮予算の問題等によりまして、あるいは金融、あるいは税制その他につきまして、非常に陳情の多いことは事実でございます。私も常にこの方々に応接をいたしております。私どもといたしましては、先般も申しました通り政策の転換調整という場合には、最も中小企業の立場を擁護して考えなければなりませんので、基本的な政策の滲透はもとより考えなければなりませんが、実質的にその余波が不当にしわ寄せされることがないように、各般の措置を考えつつあるわけであります。たとえば金融の問題につきましては、中小企業金融公庫を初めといたしまして、乏しい中でも財政投融はできるだけ減らさないように、それから受信力を増しますためには、小口保険制度というようなものを、今回法律案の改正を用意いたして、御審議をいずれ願いたいと思つております。それから税制の面につきましても、地方税の事業税等にわたりましても、相当の考慮を払うというようなことで、何とかして知恵をしぼりまして、これらの方々の御心配を除去いたしたいと考えております。
  35. 山本勝市

    ○山本(勝)委員 税制の面でも大いに考慮しておるというふうなことであります。また中小企業金融公庫に金を出しておるというふうなお話でありますが、しかし前々国会でありましたか、中小企業金融公庫に百三十億円の金を出されるときに、私はここで大蔵大臣に申しました。中小企業者を最も苦しめておるものは何か。百三十億やそこらの金を出してみたところで、その恩恵を受ける者というものは、何らかの有力な肩書を持つた者と関連を持つた、あるいは従来の銀行と何らかの深い関係を持つた特殊な人だけが恩恵を受けるのだ。それよりも、それだけの金を金庫に出すのならば、むしろそれだけの減税をしてやつた方が、どれだけ多くの中小企業者が助かるかわからない。今日中小企業者の最も苦痛としておるものは何かというと、税の問題であります。金額が多いということももちろん苦痛でございますけれども、税金に関連してのトラブル、これが最も大きな心配であります。中小企業者が今日一番おそれておるもの、一番きらつておるもの、それは税務署の役人であるということがいわれておるのです。税務署の役人は一生懸命やつておるのですけれども、その一生懸命やつておる税務署の役人の顔を見たり、帳面をいじくられることが、何よりこわい。ですから私は、税に関する心配を、額の上でももちろんですけれども、徴税方法その他の点で、税務署の心配なしに安らかに仕事のできるようにしてやることが、金融公庫などを設けるよりももつと先決問題だ。これは実際問題としてそうなんです。今日忙しい仕事をなげうつて全国から中小企業者が毎日集まつておるのは、通産大臣が税の問題で大いに心配しておると言いましたが、税の問題で新しく考えられたことが、さらに中小企業者の心配の種になつて押しかけて来ているのです。たとえば織物消費税が小売課税になるというようなことで、大あわてにあわてて、全国から押しかけて来ておるのです。ですから、通産大臣大蔵政務次官を最近までされて、税のことも詳しい。さらに通産大臣となつて中小企業者の運命をになつておられる。ですから、織物消費税とか、あるいは物品税とかというような、今日の中小企業者が悪税として悩み抜いておる税について、今後どういうふうに持つて行かれようとするのか。これは心配しておられるに相違ない。考えがおありになるに違いないと思います。物品税のごときは、従来政府においても党においても、悪税である、だからだんだん撤廃するという方針で昨年まで進んで参つた。ところがことしは、もちろんその方針はかわつていないのだと私は思います。そういうお答えがあるだろうと思いますが、ただ一方で、新しい幾つかの物品税を新設したということが新聞に伝わつたために、従来の物品税は漸次撤廃して行くという方針がかわるのではないかということを、ひどく心配しておるのです。ですから、どうか決して方針がかわつたのでないのならば、ないということを私ははつきりして安心させてもらいたい。  それから織物消費税の問題もデリケートな問題でありましようけれども、はつきりした答えを求めることは無理だと思いますが、しかしこれは、私はおよそ新しい税というものをつくるときには、だれが何を陳情して来ても、そのことはよく承知しておる。承知の上で、しかもこうするのだという自信がなければ新しい税はつくるべきでない。新税は悪税なりということわざがありますが、業者から聞いてみれば、なるほどそういうこともあつたのか。またほかの業者から聞いてみると、なるほどそういう点もあつたのかというようなことを新しく気づくような、そういう自信のない程度で税をつくるべきじやないのじやないか。それをつくつておきますと、結局困るのは税務署と、それから納税者。税務署と納税者の間に血みどろのトラブルが行われて、よくわれわれは陳情を受けます。受けたときに、税務署へねじ込んで行くと、法律をつくつたのは国会ではないか。われわれはただそれを執行するだけだと言われる。その通りだと思う。ですから、結論をどうということは聞きませんけれども、私はこの点についても、面子などにつまりとらわれないで、国民生活、ことに中小企業者がほんとうに安らかに、一兆円の予算のしわ寄せが来てもなおそれを乗り切つて行くために、さらにトラブルを加えるようなことのないように、大蔵大臣も通産大臣も御考慮を願いたい。これは大蔵省だけでなく、通産省が積極的に乗り出してほしい。ことに愛知さんは大蔵関係は詳しいのですから、お願いを申し上げたいのであります。もしお考えがございましたら、ひとつ伺いたいと思います。
  36. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 一応私からお答え申します。中小企業の問題については、よく私どもも愛知通産大臣と打合せをいたしておりまして、中小企業者のために、今の税制問題だけにつきましても相当配慮いたしておる次第であります。今度も少額所得につきまして減税案を出しておることは、御承知通りでありますし、さらにまた青色申告等の奨励によりまして、しかもその手続等も従来の複雑なものでなく、きわめて簡素化した書式等をつくりまして、これらのことについても税務署は相当働きかけております。そうして十分理解を深めるようにいたしたいと考えておる次第であります。  なおお話に出ました新しい税につきましては、まだ最後の決定を見ていないことは、山本博士は御承知通りであります。しかし税というものは、国民納得して納め得るものでなければ行くものでございませんので、従つていろいろ言われておることと、また過去において、たとえば繊維消費税のごときものも、一応織物消費税の経験がありますので、そういつた悪い面は今度の税からは除きたい。そうしてこの程度ならということで、納得のできる税にもりたいというのが私ども考えておるところであります。それがかれこれ決定が遅れておるもとになつておるのであります。いずれにいたしましても、税の問題は国民負担の問題であると同時に、国定が納得して払わなければならない問題でありますので、この点は十分考慮いたしたいと考えております。
  37. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 ただいまは一々ごもつともな御意見でありまして、大蔵大臣からお答えいたした通りでありますが、さらに補足いたしますると、従来地方税で、たとえば事業税のごときは、御承知のように課税標準が、国の税務署できめたものと地方の税務署できめたものとが違つておつたのでありますが、今回地方税法の改正に伴いまして、原則的に課税標準は一致させる。国の課税標準の方に税率をかけるのが地方税の建前といたしました。かような二重の手続を省くということも、一段の進歩ではなかろうかと考えております。  それから物品税等についてのお話でございましたが、これは従来の方針をかえておるわけでございません。たとえばテレビでございますとか、その他若干の高級品の奢侈品に対しまする課税でございまして、そういうものは一般的にこの際がまんをして、奢侈を抑制したいという気持をこの税の上に現わしただけでありまして、従来のような一般大衆の小売課税をふやすということは考えておりません。それからただいま大蔵大臣からお答えがありましたように、いわゆる高級の織物に対する消費税につきましては、これもやはり一般大衆が常識的に常用しなければならないようなものは省きまして、かつこれが高い上等なものでも買いたいという消費者に完全に転嫁されて、小売屋には転嫁がされないというような徴税方法がとられるような税法にしたいということで、今鋭意関係政府部内におきましても、協議を進めておるような次第でありますから、御了承願いたいと思います。
  38. 山本勝市

    ○山本(勝)委員 鋭意研究中であるということでございましたから、なお一言申します。これも御研究されるときによく御考慮願いたいのでありますが、高級の織物あるいは繊維にかける、あるいは奢侈的なものにかける、奢侈という言葉も今通産大臣言葉にありましたが、しかしこういう考え方もあるということを御承知願いたい。高級とか低級ということは何できめるのだ、なかなかむずかしい問題です。値段が安いからといつて低級とも言えませんし、高いから高級とも言えません。ことに奢侈品に至つては、奢侈という言葉があることは事実であり、また言葉があるということは、奢侈という事実のあることも承認します。しかし奢侈という言葉があり、事実があつても、奢侈品というものはないのだ、これは詭弁でも何でもない。人との関係において奢侈品となり、実用品となる。従つてある人が使えば実用品となり、他の人が使えば奢侈品となる。また同じ人でも、ある場合には実用品として使うが、ある場合には奢侈品として使う。ですからピアノならピアノでも、奢侈品であるという場合もありましようし、実用品という場合もありましよう。あるいはお召の着物も、よくいわれるように、芸者が着た場合には労働服であるから、実用品だ。(笑声)これは、じようだんではありません。ですから税の専門家自身が奢侈と言うことは困る。もし大蔵委員会へ行つて、奢侈品とは何か、具体的にこういう場合は、こういう場合はと持つて来られたら、とうてい答弁ができぬというお話すら聞いておるのです。社会党の方にも聞いてみましたら、奢侈品ならよろしい、改進党の方に聞いてみましたら、いや奢侈品にかけるならよろしい、奢侈的なものなら繊維課税もよろしいということでありました。われわれ自由党の中にも、そういう方はあります。しかし自由党の中には私のように、そんな奢侈品というものはあるものじやないのだ、奢侈という事実はあり、言葉はあるけれども、奢侈品というものはない。これはもう昔から研究され尽した問題で、それを簡単に奢侈品などときめて実際に出してみますと、税務署と納税者とのトラブルが起つて来る。結局例外を設けて、この場合は例外とするというようにするよりしかたがなくなる。ですから、今鋭意研究中と言われるのでありますが、奢侈品的な織物ならよろしいとか、糸ならよろしいという考えにも考慮の余地があるということを申し上げておきたいと思います。
  39. 西村久之

    西村(久)委員 ちよつと関連して一言お尋ねしておきたいのですが、私は山本君の質疑に対しての当局のお答えが悪いと申し上げるのじやないのですが、当委員会の建前として、八十五億という数字が繊維課税として出ておるのでありますが、この算出の基礎を伺つておきたい。
  40. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 数字に基くものですから、取調べの上、政府委員から答弁いたさせます。
  41. 小峯柳多

    ○小峯委員長代理 山本君、西村君への答弁は保留いたしまして、どうぞ進行してください。
  42. 山本勝市

    ○山本(勝)委員 法務大臣にお伺い申し上げますが、この食糧管理法の違反者として検挙された者、検事局に送られた者の数は、地方警察、自治警察の統計を私とつてみたのでありますが、昭和二十六年度の統計を見ますと、検挙数が二十八万三千百二十九件となつております。それから送られた件数が二十六万五千八百四十一件となつております。この二十八万とか、二十六万とかいうのは、おそらく実際に食糧管理法違反をやつた者の数から言うと何十分の一か何百分の一かだろうと思います。こういうふうにわれわれの食生活が、この何十万という違反者の上にささえられて行く、そうして大臣以下国民全部が天下周知の事実のようにやみ米のごやつかいになつて行く、こういうことが毎年々々繰返されて、この制度ができてから一年としてなくなつたことはないのでありますが、この食管制度に対して、私は法務大臣としてのお考えを承りたい。
  43. 犬養健

    犬養国務大臣 お答え申し上げます。なるほどお話のようなわけで、食糧管理法というものは議論の余地が十分あるものでございます。一方実情から申し上げますと、御承知のように、昨年のたしか十月二十一日か二十二日の閣議において、特に凶作状況にかんがみて、食糧も管理を強化して行くという農林省からの御注文もあり、閣議決定になつたことでありまして、今御指摘のような数が出て来るわけでございます。しかしこれは法の本質から言うと、なるほど奇妙な点がございます。これは再検討を要する時期でもあろうかと思い、現に農林省の方では、食糧対策協議会をつくつて、本年一月から発足いたしました。これは政府のみならず、民間の有識者も集めて根本対策を立てようということで、この答申を私どもは期待しておるのでありますが、現状は法務当局はどう思うか、こういう問題になりますと、主食の絶対量が不足しておりまして、外米を非常に高いドルで買つておる現状ですと、なるほど議論の余地のあるところでございますが、食糧管理法を今急にやめるという勇気がただちに出るというわけにどうも行かないのでありまして、結局これは食糧問題の権威を集めた、今申し上げた協議会の公平な蘊蓄の深い答申を待つておるような次第でございます。こうなりますと農林大臣答弁の範囲に入りますので、いささか遠慮いたしますが、法務当局としては、今あれをやめてくれと主張するまでには立ち至つていないわけでございまして、どうか御了承を願います。
  44. 山本勝市

    ○山本(勝)委員 私が農林大臣にお伺いしないで法務大臣に伺つたのは、農林大臣にこれまでの行きがかりもあるし、現に食糧管理の関係でたくさんの役人をかかえておる。それで委員会や審議会を開きましても、新聞で見たところでは、どうやらこれの撤廃は時期尚早だというふうな答えの出そうな人がたくさん入つておるようです。しかし法務大臣としては、そういう問題よりも、これだけたくさんの違反者を出して——しかも国民はこの違反者に対して、普通の犯罪とは見ていない。昔からよく、前科者の娘は嫁にもらうなということを言いますが、今農村へ行きましても、法律にひつかかつたかひつかからぬかは別として、実際にやみをやらない者の娘をもらおうというような人は、一人だつていやしない。そういう状況に対して、遵法といいますか、法をあずかつておられる法務大臣としては、もつと真剣に考えられて、農林省としても、これがなくなるような——もしやる者があれば、どろぼうのように世間から非難されるというのならいたし方ありませんけれども、そうでない。こういう状況が続く場合に、これをなくする方法がないのならば、ほかに多少長所がありましても、何百人という犯罪人をつくつて、そうしてそれで食生活を維持して行くというようなことは、それだけで私は落第だと思う。これはことしはどうだつたとか来年はなくなりそうだとか去年はなかつたとかいうのじやありません。この制度に必然に伴つて来たのですから、これはもう毎年なくならない。そうなると、この辺でひとつ根本的に考え直してもらいたい。食糧の絶対量が足らぬなどということを簡単に申しますけれども、農林省の統計局の出したものだけ見ましても、澱粉食糧というものを全国民にわければ、一人当り五合ぐらいある。蛋白食糧でも、脂肪食糧でもあるのです。これは農林省統計事務所の報告を見ればわかるのです。ただ配給組織をとるから足らぬように見えて来る。夏みかんを米と同じ方式で全国民に配給したら、ちようどこれくらいの夏みかんを半分ずつ、一年に一回配給できるだけです。ところが自由にすれば、どんないなかの山へ行つても夏みかんが並んでおるようになる。配給組織をとれば、夏みかん半分を一年に一回だけ一人に配給できるだけにしかならない。これは農林省の統計に出ておる夏みかんの数量を人口で割つてみればわかる。ですから、私が法務大臣に特に質問いたしましたのは、遵法という見地から、こういうことが少くとも近き将来になくなるように、強力にこの食管制度の改正に発言してもらいたい。文部大臣からも、私はほんとうは教育上の立場からやつてもらいたい。法律を犯して、それがあたりまえになつて、こういう質問をすることが物笑いの種になるように麻痺してしまつておるということが重大問題です。時間がありませんからこの問題はこの程度にいたします。  大蔵大臣に伺いますが、ドッジ・ラインと小笠原ラインとの根本的な違いを伺いたい。これは目標における違い、それから方法における違い、要点だけでけつこうですから伺いたいと思います。
  45. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 ドッジ・ラインが、非常な勢いで進みつつあつたインフレを遮断するために、いわゆる中央地方を通じての超均衡予算をやつた、均衡以上のことをやつた。言いかえますと、過去の債務まで払うような方法を立てて行つた。この点にドッジ・ラインというものの特色があつて、同時に、目的を達した一面に、あるいは少し行き過ぎたのじやないかとさえ非難されたのは、そこから来ているのじやないかと私は思うのであります。私は、別に私のラインとかいうものを持ち合せておるわけではありませんが、私は、日本の現状から見まして、どうしても今進みつつあるインフレ的傾向——あえてインフレとは申しませんが、インフレ的傾向を完全に遮断することが必要であるとともに、やはり日本が国際経済に伍して、国際競争場裡の一員として経済自立がやつて行けるということでなければならぬと考えますので、本年度の予算において、この緊縮予算でねらつておるところは、年度における収支の均衡もそうでありますけれども、財政はいわば政策一つでありまして、これはよく申します金融、為替、あるいはまた生産、消費、その他各方面を通じて、日本物価を五分か一割とりあえず下げたい。二十七年のところまで下げたい。そういうことによつて日本の経済を歩一歩、国際経済界に伍して国際競争力を持つて行けるようにしたい。私の短かい言葉で言わしてもらうならば、健全財政、健全経済、すべて健全に持つて行きたいというのが、私の根本の考え方であります。
  46. 山本勝市

    ○山本(勝)委員 ドッジ・ラインは、伝えられるように、インフレでもない、デフレでもない。つまり通貨価値安定と申しますか、デイスインフレの線で行く、こういうことでありました。ところが、今度の予算大蔵大臣その他が強調されるところでは、五分とか一割とか下げる、あるいは行く行く二割も下げるというふうに日本銀行の総裁なども政府と歩調を合せて言つておりますが、国民の方では、大体物価が安定するところをねらつているのだろうか、それとも物価が一割、二割と下るところをねらつているのだろうか、つまり物価安定で横ばいということであれば、デイスインフレということになりましようが、一割も二割も下げて行くということになるとデフレというべきだろう、だから、デフレ政策ということになるとドッジ・ラインとも違うようでもある、しかしまた、二割下げるつもりだけれども、実際はちようど安定するくらいだろう、こういうようなことを言う人もある。そうすると、物価が安定するということを希望している方からいうと、デフレくらいの構えで行つて、ようやく事実は安定するのだというので安心するのでありますけれども、しかしそうなると、国際収支関係からいつて貿易に支障を来す。目標としておられるところが物価引下げにあるというのか、事実もやはり引下げになるが、それくらいの勢いでやらないとこのインフレはとまらぬという考えでやつておられるのか、その辺を伺いたい。
  47. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 私の考え方は、ちようど今山本さんか言われたように、インフレを遮断するのみでは足らない、つまり、日本の経済の基調をば世界経済の基調のところまて持つていかなければならぬということで、言葉をかえて言いますと、日本物価が今ただちに国際的な物価の三制、大体三割と申しておりますが、そこまで下つて行く必要はないと思います。これはいろいろの事情がありますが、そこまでは行かぬでもよいと思います。しかし、少くともやはり五分ないし一割下げるという形だけの努力だけでは足らないので、引続きもう少し、国際基調に近づけるところの線まで持つて行かなければならぬ。従いまして私どもは、今日は物価引下げ、さらに言葉をかえて申しますれば、日本商品国際競争力増加、これに重きを置いて、健全経済、健全財政の線を強く進めて参りたいと思つておるのであります。
  48. 山本勝市

    ○山本(勝)委員 私はやはり、一応一兆円財政をつくつて、それで追加予算も出さないで乗り切れるという政府の方針をたびたび承つて承知いたしておりますが、残つた問題は金融政策だろうと思います。ですから、一兆円予算をかりに財政面で貫きましても、金融の方でゆるめて行けばこれは何にもならなくなる。また、財政の方で多少ゆるんでおつても、金融の方で締めて行けば、また財政緊縮と同じような効果を持つて来ると思いますが、その金融の方の今後のやり方について、これは日本銀行は日本銀行でいろいろなことを言つておるようです。おそらく政府と歩調を合せて行かれることと思いますが、大蔵大臣は大体どういう方針で行かれるか。いよいよあちらでもこちらでも中小企業がばたばた倒れ出すような事態が起つて来た場合に、これは非常にむずかしい問題ですけれども、どういう処置をとられるか。これは私の個人の考え方から言うと、少々つぶれてもやむを得ない部面もあろうし、そうかといつて、それをそのまま放任するわけには行かぬしという、いかにもむずかしい問題であります。
  49. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 これはちようどお話のごとくに、私どもも財政金融の一体化ですべてをやらなければいかぬと思つておりまして、二十八年度予算は御承知通り多少散布超過になるので、特に金融の引締めを強く要望しておつたわけでありますが、これは山本さんお調べになればわかりますように、昨年末どちらかというと、金融面から多少インフレ的傾向が助長されておつたことは数字の示すところであります。そこで私どもはこれではいかぬから、金融面でもう少し金融引締めの強化をはかつてもらいたい。それで先ごろもちようど日銀の総裁とよく懇談をして、両方の意見が一致して強力にこれを進めて参るということにしておる次第であります。  それでは金融面でどうするかといいますと、これは申すまでもなく今一番問題になつているのは輸入金融についてであります。特に昨今、昨年の上半期で一億四百五十万ドルのいわゆる自動承認制の輸入しかなかつたものが、本年は正月一月で自動承認制のドルの輸入が一億八百万ドルにも及んでおることは、金融の行き過ぎだと思うのでありまして、従つてこういう面からも、どうしても金融を引締める必要があるので、先般たとえば高率適用の問題とか、あるいは日銀いろいろな操作の関係もありまするので、いろいろ打合せをしたわけであります。それではまた具体的の問題としてはどうするかということについては、日銀の方から近く案がありまして、それに基いてやつてもらうことにするのでありますが、日銀の考え方としては、一つの方針で貫いて行つて、まああまり一週間や十日ばかり見て、ここは手ぬるいじやないかということを言われても困る、これは私ももつともだと思うのでありまして、ただいわゆる強化する方針はあくまで貫いて行きまして、またそれに効果がないときは、先般もちようどここで申し上げましたけれども、どうもやはり市中銀行が国策に沿つて金融引締めをやつてもらわなければ、つまり特に金の質的の統制を自発的にやつてもらわなければ、やはりある場合には国がクレジット・コントロールのごときものも考えなければいかぬとまで、実は私は考えている次第でございます。
  50. 小峯柳多

    ○小峯委員長代理 山本君、副総理ちよつと中座したいというのでありますが、質問がありましたらちよつと前に……。
  51. 山本勝市

    ○山本(勝)委員 副総理に一言だけ申し上げて御考慮願つておきますが、巣鴨にいる戦犯の中にフランス関係というのが二人残つております。元来フランス関係は全部釈放になつた、ところが当日の朝になつて、何かの行き違いかなんかで、本人たちは出られるものと思い、親たちも帰れるものと思つて迎えに行つたが、その朝になつて、あとに残るということがわかつて、非常にトラブルを起したものであります。その当時私はフランス大使館へ行きまして、前の大使に会つて訴えたんですけれども、いろいろ手違いがあつてそれだけ延びた、しかし本国の方へさつそく手紙を出す、別に残しておく事情は何にもない、手続上の問題だから待つてもらいたい、こういう話でありました。そのときに私は早くやつてくれと言つたところが、フランスでもお役所仕事はやはり同じようなもので、日本でもそうでしようが、日数がかかりますということでしたが、しかしそれ以来もうすでに半年になります。先般聞きますと、まだその二人が残つておるということでありますが、こういうことはただ二人の問題でありますけれども、別にフランス側に何にも故障がないので、ただ手続だけの問題だということをフランス大使が言つておるのですから、私は政府の方でもフランスの大使館に直接電報でも打つて、そうして向うの方でも交渉して、一日も早く出してやるように御考慮願つておきたい。これは数の問題ではないのでありますからお願い申したいと思います。それだけでけつこうです。
  52. 小峯柳多

    ○小峯委員長代理 何か御答弁ありますか。
  53. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 その具体的な事実を私は承知しておりませんが、その所管の方面に連結いたしまして確かめておきます。
  54. 山本勝市

    ○山本(勝)委員 大蔵大臣に今の続きでもう少し具体的にお伺いしますが、これまでのインフレ、戦後の放漫な日本経済のやり方の結果、今日融通手形というものが非常にたくさん動いておる。それで融通手形でどうにか維持しておる中小企業がずいぶんたくさんあります。ところが昨年末からの金融引締めで、まずもつて打撃を受けて来ておるのがこの融通手形であります。融通手形がきかぬようになつておる。そこでその連中は手をあげるのです。だから考えようによつては融通手形というがごとき考え、違法のことでやつて来ておつたのが間違いなんだ。だからそういうのは手をあげてもしかたがないとも考えられる。そうかといつてそれが手をあげてしまうと、これは波及するところも相当大きいし、また生産の上にも相当の影響を及ぼす。これは具体的に起つて来ております。ですから、こういう問題も私はこうするという御答弁は今ここでいただきませんけれどもすでに不健全にここまで来ておる経済でありますから、これを健全にするにも、よほど医者は用心をしないと結局大きな崩壊を来すおそれがある。これもお願い申し上げておきたいと思います。  それはそれといたしまして、次に大蔵大臣に平衡交付金というものと交付税交付金というものの違い、平衡交付金というものは今度の予算からなくなりましたけれども、しかしそれにかわつて交付税の交付金というものが出て参りました。それならば平衡交付金という考え方は全然なくなつたかというと、やはりあるにはあるようでありますが、言葉がなくなつた。またなくなつただけに、事実の上でも若干の変化があることは当然であります。私自身は了承しておりますけれども、地方の方々は平衡交付金が一文もなくなつたのだ、予算面からなくなつておるのだという。しかし平衡交付金で組んでおるのだという答弁もあるし、かなりはつきりしていない点がありますので、この際ひとつ平衡交付金という言葉はやめて交付税交付金と改めた理由をはつきりさせていただきたい。
  55. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 名前をかえた理由は、あるいは主計局長をして答弁させるのがよくわかると思いますが、御承知のごとくに今度は地方税の改正について三つねらうものがありまして、その一つは今の平衡交付金でなくして、いわゆる法人税、所得税、酒税等からの一般所得に対するやつを出しました分をいわゆる交付税というふうにいたす。これが予算では千二百何ぼか計上されております。もう一つは例の一般会計から揮発油税というものを今度やつた。この分につきまして地方税の方に道路等の関係で三分の一をやつた。こういうふうな分があります。それからもう一つは入場税と一連の——これは遊興税もやろうと思いましたが、これはできませんから、いわゆる譲与税譲与金といいますか、譲与税式のやり方、譲与税という特別会計をやつておる。こういうふうな考えで形を幾らか正しくしたというか、私はそういうふうに了承して責任をとつたのでありますが、もう少しこまかい説明ちようど主計局長がおりますから答弁いたさせます。
  56. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 従来の地方財政平衡交付金という制度は、いわば地方財政の足らずまいを国庫がまかなうという制度でございまして、この制度でございますと、地方財政が足りなくなると、そのしりをいつでも持ち込まれるというような制度になつておるわけであります。今度はこれをやめまして、所得税と法人税と酒税に対しまして、一定の割合を交付する、つまりその財源を確定化することによりまして、地方財政にもある程度のめどを与える、またその中で自主支弁をしてもらうというように、いたずらな中央依存の弊もこれで断ち切つて行きたい、そんなような考え方で制度をかえたわけでありまして、名前がかわつたと同様に、制度の中身も思想的には相当かわつて来ておる、さように私ども考えるのであります。
  57. 山本勝市

    ○山本(勝)委員 主計局長からもう一ぺん説明していただきます。今の平衡交付金というものがなくなつたというのじやなくて、やはり財政需要に対する不足分は平衡交付金として組んでおる、こういうことを説明しておられる。だから、全然なくなつたのではないのでしよう。
  58. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 平衡交付金という制度はやめまして、交付税にかえたわけであります。交付税制度をとります最初は、地方財政の規模を策定いたしまして、その中でどのくらい足りないということを計算しまして、それも初年度と平年度両方についてそういう計算をいたしまして、そうして所得税、法人税、酒税についてどのくらいの割合を交付したらいいかということをきめるわけであります。そのきめました金額は、これは従来の平衡交付金と大体同じようなやり方でわけるわけでありますが、今後の問題といたしましては、その一定割合は軽々しくかえない、来年度以降はそのきめられたわくの範囲内の交付税で地方財政をやりくりして行つていただく、もちろん非常に大きな事情の変化がございますれば、また率をどうという問題もございますけれども、そういう事情がありません限りは、その一定率の範囲内の交付税で地方財政の方をまかなつて行つていただく、さような趣旨でございまして、地方に交付されることは交付されるのでありますが、意味が大分従来と違つて参つたわけであります。
  59. 山本勝市

    ○山本(勝)委員 その地方の財源の不足はこれを補う、その金の出どころが、税の何パーセントというふうにきまつたということが、これまでとかわつた点でありましようが、しかし元がきまつたというだけではなしに、やはり足らないところはそれで補うという考え方が根本的になくなつたのか、幾らか残つておるのか、そこをはつきりさせていただきたい。
  60. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 平衡交付金を地方交付税交付金にかえます際には、どのくらいを中央から交付税を交付したらいいかということを当然計算に入れるわけでありまして、その意味では、足りないところをまかなつているわけでございますが、しかしその場合に、初年度、平年度の交付税の交付率をきめますれば、その率はみだりにはかえない。従いまして、地方財政といたしましては、率できめられるわけですから、その与えられた率の範囲内で今後地方財政をやりくつてつていただくという趣旨でありまして、従来の通りに、何でもしりが出れば、それを中央政府に持ち込むということでなくて、与えられたわく内でできるだけやりくつていただきたい。そこに政府の趣旨の今までと違つた点があるわけであります。
  61. 山本勝市

    ○山本(勝)委員 主計局長にもう一点伺つておきますが、元の額がきまつている、従つてもし税の収入が減つたような場合には、地方へ交付する基準を下げて行くということで調整するわけですか。
  62. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 交付税の交付率はみだりにはかえないつもりでございまして、むろん税の自然増減ぐらいがあつたということだけでは交付率はかえない建前で考えております。よほど大きな事情の変化がありました場合に、交付率をふやすべきか、あるいは減らすべきかというような問題が絶無ではもちろんないと思いますけれども、通常の税の自然減増収、経費の増減等ではみだりに率をかえるということは考うべきではない、さように考えております。
  63. 山本勝市

    ○山本(勝)委員 なお若干の質問がありますが、予定の時間が迫りましたので、最後に、私は先般の五日の日の今澄君の発言に関して一言させていただきたいと思います。五日の日に今澄代議士が保全経済会類似の金融機会に顧問をしているという者の名前を列挙された際に、私の名も列挙された。私はうとうとしておつて、何か自分の名前を読んだと思つて、質問席の今澄君のところへ行つて聞いたんですが、あなたなどは名前だけ使われたのだろうというふうなことを言われた。しかし、とにかくあくる日は新聞に堂々と出たのでありまして、この機会に、二、三分時間をいただいて一言させていただきたいのであります。  大体私は、今澄君がこれをここで持ち出される場合には、その機関がはたして保全経済会類似の機関かどうかということを確かめる必要があつた、それから第二に、その機関が大衆に迷惑を及ぼしているのかどうかということも確かめる必要があつた、第三には、それらの機関に顧問や相談役として名を連ねた方々が顧問料というふうなものをとつているかどうかということも確かめる必要があつた、それから最後に、かつてに名前を使われているのではないかということも研究されて、ここに公にされるのがほんとうは適当であつたと思うのであります。私の場合を申しまするが、私は根本の態度において、この保全経済類似の会社からたびたび顧問になつてくれということを頼まれたことがある。ところがそのたびごとにそれは全部私は断つた。神田のある会社のごときは、私がはつきり断つたにかかわらず、私を顧問という名前で印刷物を出しているということを、東京の興信所から私のところへ来て知らせてくれたので、さつそく呼びつけて、その書類を全部破棄させると同時に、申訳なかつたというわび証文すらとつて私は持つているくらいであります。そういうぐあいでありますから、ああいう類似の会社には私は絶対に関与しない。ところが、御指摘になつ昭和何でしたか、利財会でしたか、この会社との関係についてはどういう関係になつておつたかと申しますと、これは山形県の米沢の両羽銀行の頭取をしておられる高野という方の弟で、高野銀行の取締役を長くしておられた高野源次郎君という方は私も前から知つておつた。ところが私のある親友で、これは多くの皆さんが御存じの方でありますが、その友人から懇篤な手紙をよこして、私も知つている高野君が今度二、三の友人と金を出し合つて土地の分譲の仕事を始めるのだ、それで何かと御指導願いたいという手紙をつけて、会いたいということで、会つてみたところが、その手紙を持つておつた。そこで私はその際に、これは昨年の二月六日の日——私は日記帳をくつて見たが、二月の六日の日で、私はもちろん当時は代議士ではありませんでしたが、その親友の手紙を持つて高野君が来たので、私は会つてもくろみをいろいろ聞いたら、本人もそういう話である。すでに分譲地の用意もできておるのだ、将来は大きな土地をまとめて買つて、そうして小さくわけて、つまり箱根土地の小さいようなものである、だからそれの指導をしてくれと言う。私は経済学の研究をしているので、始終いろいろな相談を受けるのです。ことに親友から自分にかわつてつてくれと言うから、それはできるだけのことはしましよう、こういう返事をしたのであります。これが昨年の二月六日であります。話はそのまま切れておつたのです。もちろん顧問料とか何々料というものは一切とつておりません。ところがその後私が昨年の四月の選挙に当選してここへ参りました。予算委員としておりましたところが、朝日新聞のある記者が、このうしろのところで私に、実は山形県のある方から朝日新聞社に照会があつた、それは高野氏の会社が山形県の何とかいうところへ支店を設けるるについて主任になつてくれということを言われたが、引受けてよかろうかどうかということを朝日新聞の方に照会して来た。その書類の中に私の名前が顧問として載つておるということを初めて聞いた。そこで私は最初高野君に引受けたときには、五つの条件を出しておる。一つは不特定多数の、つまり未知の人から金を集めないということ、株には投資しないということ、それから金は貸さないということ、それからいつも私に相談をかけるということ、それから人間をあまり使わないことという五つの条件をつけて、そうしてこれからできるだけの指導はしましようということを答えておつたのでありますが、山形はいかに高野君の郷里ではあつても、そういうところへ刷りものなどを持つて行つて、そうして私の名前で仕事するというようなことは困ると考えたから、すぐに呼びつけて、その書類の破棄を命じ、また自分はもう関係を絶つ、こう言つてしかりつけて、議員会館で帰した、ただそれだけのことであります。もちろんこの高野君がその後下特定多数の者から金を集めておるかどうか知りません。おそらく集めてなかろうと思う。私と話したのが——本人の性格から言うと、自分は土地の分譲では長い経験があるが、株のことは絶対やらぬし、また貸金はしないと言うからやつておらぬだろうと思いますが、とにかくいずれにしても私の関係はそれだけだ。これは今澄君を私は責めるわけではありませんが、しかし私はびた一文も不純の金はとらぬ。とらぬからこの年になつても自分の家もようつくらぬし、小型自動車もよう買わずにこうしてやつておるのです。どうかああいうところで言われるときには、今後私は注意してほしいと思う。それは今澄君などは若いのだから……。ですけれども、君の方がぼくよりもはるかにわれわれ及ばぬような暮しをやつておられる。そういうふうなことを君が軽率に言われたために、私の選挙区からも心配をして、いろいろなことを言つて来たのです。   〔小峯委員長代理退席、委員長着席〕 時間がなければ私はきよう発言するつもりがなかつたのですけれども、先般三木武夫君も言われたということでありますので、最後の時間を借りてそれだけ申し上げておきます。
  64. 倉石忠雄

    倉石委員長 中村三之承君。
  65. 中村三之丞

    中村(三)委員 昨年の日本経済は朝鮮戦争の結果いかんによつて支配せられたのであります。朝鮮戦争戦争ブーームであつて、いつかは反動量気の来るということは政治家として警戒しておかなければなりません。しかるに現内閣は朝鮮ブームの寝台の上に昼寝をしておられた。そうして朝鮮休戦の鐘が鳴りますや、あわてまくつて、そうして国際収支がどうの、緊縮予算がどうの、まつたく私は怠慢の責任を感じない政治家であると言わざるを得ません。この点はおそらく総括質問において総理大臣を招いて、われらの同僚議員からその責任はただされると思います。また現内閣閣僚諸君の御注意を願いたいことは、自分は何もせずしてこれは他人がやつた、こういう態度である。総理大臣は戦前戦時の治山治水が十分でなかつたから昨年の大水害は天災とはいえそれが起つて来た、こういうことを言うておられる。なるほど一理ありましようが、しからば戦後五箇は、治山治水に対して何をなさつたのか、その工事の監督は何をなさつたのか、まつたく他人事のように言われるということは、私どもははなはだ了解に苦しむ。財政演説を読んでみますると、ビルディングは立ち並んでおる、ネオンサインは輝いておる、またぜいたくな輸入品は店頭に並んでおると言われておる。まことに中学生の作文として名文なりといわなければなりません。しかしながら政治はそれでいいのですか。もし不要不急のビルディングを建てる者ありとするならば、何がゆえ政府はその禁止をなさらないのでありますか。現にアメリカのような自由主義国家においてもそういう場合には統制をしておる。ぜいたく輸入品が店頭に並んでいるというなら、輸入制限をなさるがよろしい。高率の禁止課税を行われればよろしい。なるほど昨今あわててそういうことをやろうと言うておられますけれども、これは後手です。政治は私は先手を打つというところに成功すると思うのであります。  こういう前提をもつて私は昭和二十九年の日本の経済をながめてみますると、朝鮮戦争の反動景気の影響が尾を引くと同時に、本年における日本の経済を支配するものは何といつてアメリカの景気状態であると思います。アメリカの景気状態を判断いたしますならば、一九三〇年における恐慌的景気は私は来ないと思います。世界の学者の中にはそういうものが来ると言う人がありますが、私どもは来ないと考える。しかしながら少くともアメリカの経済が景気後退しておる、リセッションの状態になつておるということは判断できると思います。従つておそらくアメリカの政治次はこの景気後退に対する再調整ないしは向うでいわれるところの循環調整ということをやるだろうと思います。私は本年におけるアメリカの景気の後退がいかに日本の経済に影響をするか、自由主義国家郡の一国としての日本がどういう影響を受けるか、こういうことについて見通しを持つておられることは、やはり当局の政治経済政策をお立てになる上の重要なる要素であると思うのであります。この点の見通しについて外務大臣大蔵大臣からお答えを願えれば幸いであります。
  66. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 私どもも現在のアメリカが多少景気後退とまで行かぬかもしれませんが、少くとも景気停滞という状況にあることは私もそう思います。しかし日本がこれに備えるには、アメリカの多少の景気後退をも織り込んで行く心要があろうと思つて、二十九年度予算では特にこの点を強く感じておる次第であります。
  67. 中村三之丞

    中村(三)委員 昨年のときには大蔵大臣関係ないように言われましたが、本年は織り込んだ。これは私は大蔵大臣の進歩であると思います。それを今度お考えになつておく必要がある。  そこで次に進みまして、総理大臣大蔵大臣の御演説、予算説明書などを拝見してみますると、また本委員会における論議などを見ますると、インフレ論が盛んであります。これは当然であります。そこで私はこのインフレ論について具体的に承つておきたいのであります。私の見るところによりますると、インフレーションというものに十二の型がある。これは私の質問の前年間政権を担当しておられる吉田内閣提でありますから、お聞きを願いたい。第一は通貨インフレである、第二は信用インフレである、第三は購買力インフレである、第四は財政インフレである、第五は税金を通ずる物価インフレである、第六は過剰投資を通ずるインフレであります、第七は生産減退を通ずるインフレであります、第八は貯蓄減退によるインフレであります、第九は通貨切下げによるインフレであります、第十は輸入インフレであります、第十一は商品価格インフレであります。それから最後は輸入制限による物価インフレ、こういうふうに見てよろしかろうと思うのであります。そこでこの前提のもとにまず財政インフレについてお伺いをいたします。財政インフレを緊縮予算によつてとめようとせられる現内閣の意図はわかります。しかしながら問題は、予算均衡を得ようとせられる——これもわかる。一体予算は形式においていずれの予算均衡をいたしてまります。この予算均衡には三つの方法がある。第一は歳入が支出を越えていること、あるいは少くともあまり下足していないということであります。第一は、私はこれを超均衡予算、第二のものは、これを条件つき均衡予算と呼びます。その次は公債を発行して予算のバランスをとるということであります。第三は、歳出の節約、削減と新規要求の圧縮によつて予算のバランスをとるということであります。察するに大蔵大臣のおとりになつ政策、われわれの前に出されておる二十九年度予算は、第三の方法によるところの歳出の節約、削減と新規経費の圧縮にあると思うのでありますが、大蔵大臣お答えを願いたいのであります。
  68. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 実はこうこまかく分析して私どもはものを見たわけでありません。あるいは学問的にいえばそういうふうにいえるかもわかりませんが、私どもとしてはいわゆる歳入歳出の均衡を得るということを主眼としてやつたものでございまして、私どもの本年の予算は、歳入歳出の均衡を得ることを主眼として編成してあるのであります。
  69. 中村三之丞

    中村(三)委員 それはその通りでありましようが、予算説明書などによりますると、新規要求というものは原則としてこれは認めない。そうして歳出の節約をはかるのだと言つておられる。これが主ではございませんか。これがここにやかましい問題になるのである。機械的に削減なさつた、だからここにいろいろな問題が起こる。この切り方が上手ならばこんな問題は起らないのです。私はそこをお伺いする。
  70. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 私どもは歳入歳出の均衡という面からでありますけれども、もちろんこういつたときに、私どもの目指す自立経済、特に日本国際競争力を力づけるために物価を下げなければならぬというときに、こういう緊縮予算編成するのでありますから、従つて新規要求を認める余地がないので、これを圧縮するのは当然であります。しかし新規のうちでもぜひともそれが日本の経済発展、国運発展に必要なものであるならば、若干認めたものもあるわけであります。
  71. 中村三之丞

    中村(三)委員 昨年の十二月三日と記憶いたしますが、大蔵大臣はこの席上において骨格予算の見通しを申されました。見通しでありますから、いまさらそう大して違いがないということをおつしやるでありましよう。また私もその見通しについて、見通しが誤つたと別に攻撃する意味ではございませんが、少くともこういうことを言われた。国民所得は六兆二千億となり、歳入は一兆七百億円程度になるであろう。こういうふうに見ておられる。この数字も私は内輪に見積られたものと思います。内輪でいいのです。骨格予算の見通しに対して過大な見積りをやられることは危険であります。慎重なる財政家である大蔵大臣が内輪に見積られたことは私はわかる。しかしここに現われた歳入を見渡すと、九千九百九十五億円になつている。私は何としても補正予算は免れないと思う。補正予算は免れないから大蔵省は政治的考慮を持つておらるるのだと思う。私の考えでは中小企業救済のためにどうしても補正予算が、臨時国会は下半期においてやらなければならぬと思います。なぜかと申しますと、財政デフレこれはわかる。しかし金融デフレをやられている。財政デフレ、金融デフレで両方責め立てられ、そのしわが中小街工業に及んで行くことは、この委員会を通じても、世論も同様の考えであります。いかに大蔵大臣がおつしやつても、私はこの見通しは誤りないと思うのですありま。昨年は救農国会が開かれた。今度は中小企業救済国会、補正予算というものはどうしても免れないと思う。この歳入の見積りに関連して大蔵大臣から御説明を願いたい。
  72. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 私は昨年十二月三日に確かにその通り申しております。その当時においては、あの趨勢をもつてみますれば、大体国民所得は六兆二千億ぐらいになり、従つてそれで税収入を出してみると一兆六百か七百億になるであろう、従つて国の予算を組むときに、均衡予算の点等から一兆六百億まで組んでよろしいが、それではいかぬから、一兆二、三百億に圧縮したいというふうにその当時申したことは御指摘の通りであります。ところがその後均衡予算を組むにあたつて、今あなたの懸念されたようなデフレ的傾向が若干出て来ること等思いますると、来年の国民所得をそう多く見ることはできない。そこで経済審議庁の方でもその後多少そういうことを考慮に入れてやつてみますると、五兆九千八百億、二十八年度に比べて三百億ふえるこういう数字が出て参つたのであります。従いまして、それに基いて私ども考え方をきめたのでありまして、私どもはいわゆる自然増収的なものを見ないということが一瞬堅実である。つまり来年は悪くなるかもしれない。今あなたの言われるように、それがために緊急に国会を召集しなければならぬかもしれぬ、そういう見通しのあるときに、増収の方だけ多く見ておくということは避けたいので、この点から、私どもはその見積りをごく内輪に見て九千九百九十五億といたした次第でございます。
  73. 中村三之丞

    中村(三)委員 そうすると、昨年十二月三日、この議場でおつしやつた自然増収一千億円というものは取消されるのでございますか、ないと見られるのですか、これをひとつ承りたい。
  74. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 幸いに日本の経済状態がよくて一千億を望めればこれに越したことはございませんが、ただいまのところそれを見ることは危険だと考えております。
  75. 中村三之丞

    中村(三)委員 危険なことは、私もいつか旧したと思います。すなわち自然増収を得るために徴税当局を駆使して無理をする。しかしあの骨格予算の見通しでありますから、私は深く申しません。しかしいやしくも一国の大蔵大臣の口から千億の自然増収と育つておられる。また税制調査会の答申案を読んでみますと、中央、地方を通じて千三百億の自然増収があるから、所得税の基礎控除を八万円にしたらよかろうということをいつておる。これはその人の見るところでありましようから、議論でありましようが、ともかくあなたはそういうことを言われたということをひとつ御記憶願いたい、また私も永久記憶しておきます。   〔委員長退席、西村(直)委員長代理着席〕  そこで、小笠原財政は、均衡予算編成にあたつて既定経費の節約と新規要求の圧縮をおやりになつた、こういうことですが、私はこれはいいというのです。ただ問題はその内容でいかぬというのです。ひとつわれわれが今度の予算を判断するために数字的にお聞きをいたしたい。歳出節約の対象となつた既定経費の総額いかん、これです。
  76. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 ちよつと数字を間違つてもいけませんから、主計局長答弁いたさせます。
  77. 中村三之丞

    中村(三)委員 繰返して申します。節約の対象となつた既定経費の総額、繰延べと節約とはいずれが多いか、比較の金額、繰延べ節約の内容、すなわちいかなる経費に繰延べ節約を求められたか、この三つであります。
  78. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 今回の予算について、前年度に比較して減らした金額は、予算説明にも詳しく出ておるのでございますが、そのおもなるものについて申し上げますと、公共事業費及び食糧増産対策費において百四十一億であります。これは、主として災害復旧費の削減でございまして、繰延べというようなものでなくて、二十九年度の事業量を百四十三億円減らしておるわけでございます。それから文教施設費において十二億七千百万円減らしておりますが、これは公立文教施設の補助金を減額したのがおもでございまして、その内容は、危険校舎等について、二十八年度までの計画の進捗状況を勘案いたしまして、以後の分は残事業について大体三箇年計画で進もうということで、事業分量を調整することによつて、この程度の金額を削減いたしたわけでございます。それから住宅対策費、これはわずかに三億円くらい減つております。これは大体前年度通りということで御了承を得たいと存じます。それから官庁営繕費は前年度の半分以下、十三億二千万を削減いたしております。これは継続事業についてのやむを得ざる継続分だけを考える。もちろん例外として、地方官庁において追い立てを食つておるとか腐朽しておるとか、そういう程度のものでぼつぼつ新営いたしておるものが若干ございますが、そういうやむを得ざるもの以外は、継続事業について契約の関係その他からいつて、どうしても継続しなければならぬようなもののみを計上して、その他は一切計上をとりやめたのでございまして、これもネットに節約をいたしておるわけでございます。それから出資、投資で減りましたのが二百二十九億円でございまして、これはそれだけ専業分量、融資の分量等を減らしておるわけでございます。それからあと大きな減少といたしましては、輸入食糧価格調整補給金二百十億がございますが、これは外米の輸入数母の減、並びに海外における米価の低落に伴うものでございまして、当然の減少でございます。雑件、これが八十六億円くらい減少いたしております。この中には当然の減もございますが、一般行政費については、いわゆる旅費、庁費等極力節減を旨といたしまして、昨年二十八年度の予算について三党の修正があつたその線を上まわらない範囲で極力節約に努めて計上をいたしております。一例を申し上げますと、新規自動車の購入のごときは一切とりやめる。旅費についても、一般旅費については相当節約をする。乗務旅費等のやむを得ざるものについて若干の増加を見た分もございますが、一般旅費については相当節約を実施いたしまして、結局本年度程度の規模の金額を計上いたしております。そのようなことで繰延べというような性質のものはあまりございません。大体ネットに節約を実施いたしたわけでございます。
  79. 中村三之丞

    中村(三)委員 そこでもう一つ、今おつしやつた節約によるところの既定経費の節約の総額、これを判断の資料のためにそこでおつしやつてください。
  80. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 既定経費という観念が実は今の予算にはないわけでございまして、毎年々々すべての経費を査定して行つておるわけでございます。従いまして、特に既定経費についてどのくらいの節約をしたというような計数が出て参らないことを、御了承いただきたいと思います。
  81. 中村三之丞

    中村(三)委員 そうしまと、たとえば義務女であるとか、あるいは皇室費のような特別な経費、これは削減はしておらぬでしよう。ことに補助金等整理要綱というようなものを昨年お出しになつて相当切る、おそらく補助金の切り方が問題になつておるのだと思います。こういうものを合せて、数字的にまとめてお答えを願いたい。
  82. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 経費を大きく分類いたしまして、そのおのおのにつきまして、どういう状況になつておるかということを申し上げれば、ただいまの御質問にお答えすることになるかと思います。一般会計の中の一般的な分、すなわち国警とか、保安庁、公共事業、そういつたようなものを除外いたしました一般の経費につきまして、人件費からしますが、人件費は、御次知のような、ベース・アップによりまして、職員給与は約一側くらい増加いたしております。議員の歳費その他の項目でも約三割くらい増加いたしております。それからその次の分類といたしましては、旅費でございますが、旅費は大体前年度通りでございます。物件費も前年度通り。前年度と申しますのは、もちろん三党の修正、によりまして、行政費について大幅に節約をされたのでございますが、その節約後の初年度に対してはぼ同額でございます。それから施設費、さつき官庁営繕費について申し上げたのでありますが、施設費は前年度の八四%、金額を申しますと、別年度九十四億五千百万円が七十九億で十五億ぐらい減つております。それから補助費委託費でございますが、これは大幅に減つておりまして、前年度三千百七十二億円が千九百十六億日、六割になつております。もつともこの六割になつておりますのは、地方財政平衡交付金、これが本年度はこの補助費の金額の中に入つておりましたのでございますが、来年度は他会計への繰入れ、地方交付税特別会計の繰入れになりますので、その分の大幅な減があることを御考慮いただかなければならぬと思います。それから他会計へ繰入れは、前年度が千二百二十七億で、それが二千二十億、七百九十三億ふえております。ただいまのような他会計へ繰入分が地方関係で大きくふえておることをこの場合もお考えいただきたいと思います。割合は前年度に対して六割五分の増加になつております。数、字では前年度が二千十五億、来年度は一千百四十八億、百三十三億の増でございます。割合にいたしまして七%ぐらいの増加になつております。   〔西村(直)委員長代理退席、委員長着席〕
  83. 中村三之丞

    中村(三)委員 私は放出の節約をせられるということは賛成なんです。そうしなければ均衡予算はできません。ただそのどこを切るか、どこを節約するか、これは克明に調べるとわかりますが、時間がありませんから、ただその概算なり方針を聞いて、われわれこの予算に対する態度をきめるでありましよう。  次は保安庁予算、これは見のがすこともどうすることもできない。なぜならば七百何十億という大きなものをとつて傲然と木村長官はすわつておられる。(笑声)そこで昨年も予算外契約を百億円おとりになつた。本年も八十億おとりになつておる。大体この予算外契約というものは、このごろの大蔵大臣はあまりおやりになりませんが、かつて大蔵大臣でずいぶんむちやなことをやつた人がある。この予算外契約というものは、予算の膨脹の数字を隠すためのトリックなんです。しかし財政法で認めておりまするが、これが濫用せられますると、たいへんなことになる。問題はこの予算外契約がどこまで予算化しておるか。昨年の保安庁の百億円の予算外契約の経費は、どこまで予算化しましたか、長官よりお示し願いたい。
  84. 木村篤太郎

    木村国務大臣 数字のことでありまするから、経理局長から説明いたさせます。
  85. 石原周夫

    ○石原(周)政府委員 お答えを申し上げます。二十八年度の予算外契約は百二十四億円であります。三十五億円が施設の関係であります。残りの八十九億円が船舶の建造関係、この両者につきまして、いずれを二十九年度の予算のうちに全額その契約の履行のための金を組んでおります。
  86. 中村三之丞

    中村(三)委員 私は記憶違いで百二十億でございました。そうするとその百二十億全部が予算化したというのでございますか。
  87. 石原周夫

    ○石原(周)政府委員 さようであります。
  88. 中村三之丞

    中村(三)委員 繰延べ、節減はございませんか。
  89. 石原周夫

    ○石原(周)政府委員 先ほど申し上げましたように、船舶の処造並びに施設の計画というものは一定の計画がございますので、それに伴いましてその実施の経費が二十九年度に参る。従いまして繰延べあるいは節減ということは考えていないのであります。
  90. 中村三之丞

    中村(三)委員 完全消化をしておると言われるのですか。もう一ぺんちよつと確かめておきます。
  91. 石原周夫

    ○石原(周)政府委員 お答えを申し上げます。今申し上げました百二十四億のうち、現在なお十分に契約の進行いたしていない部分、従いましてそれらの分につきましては、今後の実行におきまして若干の食い違いが出て参ることはあり得るかと思つております。
  92. 中村三之丞

    中村(三)委員 若干じやないのです。相当あるのですよ。私はそう判定する。  それから保安庁予算は一種の自衛軍の予算、長官は何か均整のとれた自衛軍隊であるとか、総合的な軍隊であるとかいうようなことをこの間うち言われたようである。そこで予算の上にどう現われておるかと見ますと、たとえば陸上自衛隊の運営費を見ますと、これは四百億円要求しておられる。海上自衛隊の運営費は八十五億円、航空自衛隊の運営費が四十五億円、施設整備費が百三十億円、それから器材費が百四十四億円である。これは二十八年度におきましては二百十一億円で、減少しておるようである。それから施設整備費は二十九年度において二十七億円増加しておる。船舶建造費は七十七億円増加をいたしておる。こういう概略の数字をもつていたしまして長官に承りたいことは、この保安庁予算というものは政府が受入れようと思うておられますMSA援助を見込んで大蔵省に編成を要求せられたのか。MSAが成立した後に、あらためてこの保安庁予算に何らかの形をとつて行かれるのか。この根本を承りたい。
  93. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。陸海空均整のとれたものであるかどうかというお尋ねであります。これは私は均整のとれるようにいたしたいと思います。決してこれをもつて均整のとれたものとは考えておりません、将来のことでありますから。そこでMSA援助との関連でありますが、もちろんわれわれは予算を組むときに、MSA援助を期待してそれを盛り込んでやつております。従いまして、MSAの協定ができて、そのもとに援助を受けましても、これ以上に二十九年度は予算は、増加しないものと考えております。
  94. 中村三之丞

    中村(三)委員 一斉明でわかりました。そこで機材費が減つておるというのは、これはどういうわけですか、この理由を局長からちよつと説明してもらいたい。
  95. 石原周夫

    ○石原(周)政府委員 お答えを申し上げます。機材費は御指摘のように減少いたしております。これは従来ございました二十八年度までの予算におきまして、積み立てられましたストック及びリプレースという二つのものを利用いたしたわけであります。その理由は、本年度相当きゆうくつな予算関係でございますので、できるだけ現存のものをあげて用いるという考え編成をいたしたためであります。  そこでストックの方から申し上げますと、大体今陸上自衛隊と申しますか、保安隊の持つておりますところの機材、市町、通信機械、そういうものがあるわけでございますが、これが故障いたしましたときに修理する、そういう意味で、これが十分に稼動し得るようなことを考えてみますと、約二割見当の予備と申しますか、リザーブがいります。それをストックという形で、従来から二十八年度予算におきまして、準備をいたして参つております。  それからもう一つは、リプレースということを申し上げたのでございますが、持つております機材というものは、何年かたちますれば、だめになるわけでございます。それに対しまするいわば減価償却の引当てのようなものでございますが、これはものによりまして五年あるいは十年、大体今のところ平均いたしまして、七年くらいになつております。そういうようなものを、毎年々々減価償却引当て流に積み重ねて参りまして、ある時期に大きな財政負担が生することがないように、年間を平均いたしまして、その両者を通じまして、従来までありましたのを今回八十八億円ほど使うということにいたしましたので、御指摘のような減少が起こつたわけであります。
  96. 中村三之丞

    中村(三)委員 MSAを受けられると、何か完成兵器というようなものが来るのだという。問題は、アメリカの兵器をお受けになつても、維持費がたいへんかかると思います。そういうふうにしますと、保安庁予算はまた来年ふえる。そういう傾向を特つのじやないのですか。
  97. 石原周夫

    ○石原(周)政府委員 大体の年間の維持費は、今御指摘の機材関係の維持費も含んでございますが、一人当り大体年間にいたしまして三十万円見当ということを、この前の機会に木村長官から申し上げました。その中に物件費が十二、三万か入つております。その物件費の中に今おつしやるような維持費の系統のものが入つております。
  98. 中村三之丞

    中村(三)委員 広い意味において、顧問団の費用ども維持費なのであります。私はそう解釈いたします。  それからもう一つ、自衛軍費の根本問題を木村長官から承りたいのです。と申しますことは、この保安庁経費は、また来年度違つた意味でふえるその証拠をひとつ私は申し上げる。そうしなければ自衛軍隊というものは大したものじやない、何の意味もなさぬということになつて来るから、これを申し上げる。アメリカの国防費を見てみますと、一九五三年におきまして陸軍の総経費は百六十二億ドル、五四年には百四十二億ドル、五五年には百二億ドルに減つております。すなわち陸軍に関する経費は漸減しておる。海軍を見ますと、一九五三年には百十九億ドル、五四年には百十三億ドル五五年には百五億ドル、これも減つておる。ところが空軍を見ますと、一九五三年は百五十一億ドル、一九五四年には百五十億ドル、五五年は百六十二億ドルとなつております。そうすると、これによつて判断をいたしますならば、アメリカのような精鋭と申しますか、発達した高度の国防を持つておるところの国においては、陸海空軍が均整というよりも——経費の上でございますよ、経費の上では空軍優先軍備ということができる。  それからもう一つ、原子力の経費です。これはどういう経費かしれませんが、原子力の経費と書いてありますから、詳しいことは私は調べたのでありませんが、判断をしてみますと、一九五三年には十八億ドル、一九五四年には二十二億ドル、一九五五年には二十四億ドルという数字がここに出て来ております。あるいは今後原子力優先軍備になるかもしれない、それはそれといたしまして、少くとも木村長官がいつも近代軍備とか、近代戦争とかおしやることを聞いてみますと、結局近代兵器と申しますか、日本ならば近代自衛軍というのは、空軍に相当お金を食うということに将来なるだろう。現在は比較的少いのでありますけれども、空軍に比較的多く食う、すなわち優先する、それをすると非常に自衛軍備の経費が高くつくから、集団防衛立場から、空軍軍備アメリカに依存するというのか、日本も自衛の範囲——決して侵略じやない、自衛軍の範囲において国力相応の空軍というものをこしらえるというお考えなのか、この自衛軍備の経費の見通しを、今から承つておく必要がある、ひとつ長官よりお答えを願いたい。
  99. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。今アメリカの軍事予算についてお話がありました。しかしアメリカにおきましても兵器の進歩によつて、いろいろ考え方が違つておるのであります。御承知通り、最近のアメリカの雑誌を見ましても、非常にそれが論戦されております。海軍のみをただ一つつてみても、先だつても申し上げましたように、航空母艦主義で行くのかあるいは戦艦主義で行くのか、それらの論争があります。また空軍にいたしましても、御承知通り最近電波兵器が非常に発達しておるのであります。かてて加えていわゆる原子兵力もいろいろと様相がかわつて来たのであります。これを将来どう取扱うという立場にあるべきかということについても、現段階のことはアメリカにおいても、非常に議論されておるようにわれわれは承るのであります。そこで日本が将来自衛態勢を整えるに対しても、どれに重きを置くかということを、今からはつきりしたことは私は申し上げかねます。ことに注目いたさなくちやならぬことは電波兵器の進歩です。いわゆるGMの進歩であります。御承知通りイギリスにおいては非常に発達しておるのであります。これらのことから考えてみますと、将来の軍備の重点をどこに置くかということは、はつきり申し上げることはできないのであります。ただわれわれが日本の防備をどうして行くかというさしあたりの問題といたしましては、申すまでもなく日本は独力でもつて、外敵の侵留に対抗して行くことはできないのであります。集団安全保障をもつてこれを防衛して行くよりしかたがない。特にアメリカの力をまつより現段階においてはいたし方ないのであります。どの程度アメリカの力を借りるかということについては、よほどわれわれは頭を悩ましておるのであります。アメリカも無条件にわれわれに援助するというわけじやないのであります。それらの点を勘考いたしまして、将来われわれは日本防衛体制を整えるについては万全を尽すべく、今から十分研究いたしたいと考えております。
  100. 中村三之丞

    中村(三)委員 長期国防計画をやるということを、この間お答えなつたようです。そういうふうに計画をお立てになる場合は、こういう陸海空、原子力軍備ということの見通しはついておるべきはずです。これがついておらなければ、国防の長期計画はできないんじやないか。そこで私は、五年とかなんとかの計画は長官はできぬと言わないでしようが、この年次計画をひとつ議論いたしましよう。  われわれに出されておりますところのこの年次計画予算を見ますと、私の判断では、いわゆる陸上自衛力を主としておられる。経費を見ましてもそれが一番多いようです。また来年には空軍自衛力ですか、これがふえて行く。そうしなければバランスのとれた自衛軍じやありますまい。こういう見通しが立つと私は思うのです。たまたまアメリカなどの、一面において発達した国の国防予算というものを見てみると、そうなつておる。おそらくソ連でもそうだろうと思う。世界各国大体そういうふうで行くんじやないかと思う。空軍優先軍備、原子力優先軍備と来るだろう。そういうことの見通しをお立てになつて、われわれに答弁をしていただきたい。年次計画でよろしい。それをひとつ示されるならば、それによつてわれわれはいいか悪いか判断をすればよろしい。念のために伺いますが、来年はあなたの方の経費はもつとふえるでしよう。このままの状態で日本の国防力と申しますか、日本の国力に相応するものであるかどうか、これくらいの見通しをおつしやらなければ、今年もこれを通すわけに行かぬ。少くとも二年くらいのことはわからなければいけない。五年も十年もの長期国防計画を示せよと、ほかの方はおつしやるかもしれません。私はあなたに同情して、せめて来年の見通しくらいはわからなければならぬ。そうでなければわれわれは本年のこの予算審議することはできない。ひとつ答弁願いたい。
  101. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。私はせんだつても申し上げましたが、いわゆる長期の防衛計画というものはなかなか容易に意かぬものだ。と言いますのは、一国の防衛態勢を整えるにつきましては、いわゆる一国の力というものを見なければならぬ。経済力、それから人員の点から考えなければならぬ。兵器の生産能力から考えなければならぬ。輸送能力を考えなければならぬ。備蓄の点も考えなければならぬ。いろいろの点から総合して立てなければならぬものであります。そういうような長期の防衛計画というものは容易に立て得べきものではないというの、あります。しからば自衛隊をつくるときにどうなるのかというそのときの話は、これは三党の間において今せつかけ折衝しておつて、その結論が出ますれば、その線について十分検討して計画を立つて参りたい、こう考えております。そこでさしあたりの問題としては、二十九年度において、申すまでもなく、われわれは相当の増員を見込まなければならぬというので、二十九年度の予算に盛り込んだのであります。しからば三十年度においてはどうするのかというお話であります。これは先日も申し上げましたように、現在われわれの考えておるのは陸上では制服は二万、航空の方では八千六百、海上では六千ということを見込んで、今計画を立てんとしておるところでございます。しかしこれも日本の財政力その他と勘案してやらなければならぬのであります。確定的のものではありませんが、せつかく各方面から資料を集めて計画を立てたい、こう考えております。
  102. 中村三之丞

    中村(三)委員 私たちの考えでは、限られたる日本の国力においてむだのない、真の自衛力を有する自主的軍備をこさえてもらうということに、われわれ賛成します。そこなのであります。それでありますから、ほかの経費を削つても空軍に力を入れるとか、こういうことを今から考えられてわれわれにおつしやらなければ、立たぬのどうの、三党交渉はどうのということでは、われわれは手のつけようがない。ひとつその点は、またわれわれの同僚が総括質問をしますから、それまでゆつけり練つていただきたい。  それから最後に物価政策のことをひとつお尋ねいたします。物価予算を緊縮するということだけではできない。なるほど予算を緊縮するということは、購買力を節約するという意味においてできるでしよう。また政府が企図しておられるがごとく、個人の購買力を税制の上において切つて行く、これも考えられると思いますが、しかし物価政策そのものが確立しなければ物価は下らないと私は思います。しつかりした物価政策をお立てになることによつて物価の行方が明白になつて来る。そこで現内閣のお考えになつておる物価政策の根本は、物価引下げであることはわかりますが、しかしただ引下げるだけではない。貿易の現状を考え、国際物価に対する割高を是正することに根本があるであろうと思います。これをひとつ愛知さん、お答え願います。
  103. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 その通りでございます。われわれのねらいといたし与るところは、できるだけ国際物価にさや器せいたしたいということであります。
  104. 中村三之丞

    中村(三)委員 ところが日本物価を見てみますと、軽工業品は外国に比べてそう高くはない。ただ電化学工業品が国際的に割高なのですが、この電化学工業品をどういうふうにして引下げて行かれるか、その方法いかんということです。
  105. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 物価につきましては、いろいろの物資につきまして、それぞれ国際物価と違つて価格差がございますことは郷承知通りでございます。私どもといたしましては、基、本的には、先般申し上げた通り一つ生産財と消費財に大きくわけて考えていただきますると、生産財につきましては、国内の投資需要が、今回の予算その他の政策によつて相当減じます。しかし他面におきまして、産業活動自体は、二十八年度と年度を通じて見れば、大体同じ規模であろう、こう想像いたしまするから、生産財につきましては、需要供給の関係から申しまして、相当私産の下落をするであろうというふうに見通しております。それから消費財の方につきましては、主として本年度の農産物の生産考えてみますると、これはいかなる場合でありましても、二十八年度よりは相当ふえるであろうと思います。それに対しまする園児の消費水準の方のかわり方はしかく顕著でございませんから、従つて供給と需要の関係から、この方もある程度下ります。しかしこの方は、生産財ほどは顕著な下り方は期待できないのではなかろうか、基本的にはかように考えております。それから御指摘の具体的の問題につきましては、われわれのやり方といたしましては、一つ一つ物価について、たとえばマル公政策をやるとかいうような、いわゆる統制的な設置はやりませんで、主として基本的な、ただいま申しましたような金融の問題、あるいは外貨の割当の問題、あるいは企業のコストの切下げというような総体的な、基本的な政策によつて、順次物価が下ることを期待するやり方で行ぎたいと思つております。
  106. 中村三之丞

    中村(三)委員 これはいささか手ぬるうございますね。国際物価比較して割高というのは、重化工業なんです。これを重点的にやる。もとより物価というものは産業経済の全般に関しますから、そういう点もお考えになる必要があるが、さしずめ押えるところは、私はこの重化学工業品にあると思うのです。  それからお伺いいたしますが、私の見るところでは、物価政策には二つある。第一は物価の直接統制をやる。第二は自動的調整作用。第二の方の自動的調整作用というものは、大蔵大臣も言われておるように、財政を緊縮する、また税制の方面でも考える、こういうことであります。そこで物価統制をやるのかやらないのかということです。直接統制をやるのかやらないのか、自動的作用でもつて徐々に物価を下げて行く方策なのか、これを明らかにしていただきたいのであります。そこで私から一つ提議をいたしめすが——提議というのは、質問の提議です。これにお答えを願いたいのです。物価の直接統制の手取り早い方法は、かつてやられたように、ストップ令を出すことだ。それが一番早い。しかしこれは私の意見になりますが、ストップ令を出して公定価格をこしらえると、過去の経験では、堕落せる官僚統制になつて、私どもは大いに検討を要しますが、こういうことも一つの方法です。大蔵大臣にも一応関連して申し上げますが、大蔵大臣はこの間の委員会におきまして、銀行に対しては協力を求める、統制の点については、もし協力が得られなければ金融統制をやるかのような御答弁のようであります。そうすると具体的に申しますと、かつて資金調整法のようなものをおこしらえになるのか。私の申しますことは、こういうことをおやりになることは、一つの対策であると思いまするが、そうすると、自由任政策をとられて、ありのままにほつておく、事業というものは個人の企業心にまかすという吉田総理大臣のお考えが破れてしまつた。つまり吉田内閣の自由放任政策は、遂にその効を奏せずに、統制に乗り出した、こういうことになるのではないでしようか。私は国家のためにおやりになることはいいと思います。しかしその辺の政治家としての責任なり方針を明らかにしていただきたいのが、私の質問の要旨なんです。
  107. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 物価の問題につきまして、直接統制あるいはストップ令ということは考えておりません。先ほども申しましたように、ただいまのお尋ねのお言葉で言えば、間接的な方法ということになりますが、基本的な経済政策でもつて物価引下げることに努めて参りたい、こういりふうにわれわれは考えております。
  108. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 物価政策は、私も同様の意見でありまして、やはり徐々に自動的に持つて行くという考え方をいたしておる次第であります。しかし今金融の問題につきましては、これは私ども、別に現在すぐにそういうことをやるというのではなくて、どうしても財政と金融が一体となつて行かなければならなぬときに、依然として、金融がどうも引締めの点に遺憾の点がある、こういうような場合におきまして、われわれが極力金融業者の理解と協力とを求めてみる。しかしその理解と協力とを求めてみても、それでなお及ばぬときには、やはりある程度資金統制等について考えなければなるまい、こういうことなのであります。これはお読みになつたかどうか知りませんが、この間来た世界銀行の調査団の一行が、どうも日本資金が、いろいろビルディングとか各種の娯楽機関等に非常にたくさん行つている、ある程度資金統制について考えるべきではないかというようなメモランダムを、実は私にくれている。そういうことは、ちようど私どもと偶然一致したのであります。そういうふうにも考えておるので、この段階ですぐということではございません。しかしできるだけ協力を求めてみて、しかもなお協力が得られぬ場合には、そういうことも考えなければなるまい、こう考えておる次第であります。
  109. 中村三之丞

    中村(三)委員 ただいま娯楽機関とおつしやつたけれども、温泉ホテルというような建物は禁止だ、これは別に統制でもなければ、別に計画経済でもない。政治なんです。私どもはそれをを要求する。  最後に大蔵大臣一つお答えを願つておきたいことは、繊維品消費税、これは何と考えても弱い者いじめの悪税です。ことに政府の態度ははなはだふに落ちない。織物消費税を業者が反対するとひつ込めてしまう。繊維会社の大きな力をもつて圧迫すると、またひつ込めてしまう。そうして一番最後に出て来たのは、小売業者という弱い人間に向つて、圧迫をお加えになつておる。これはよくお考えを願いたい。現に与党の委員の諸君の中からも、繊維品消費税反対の声が出ておることによつても、いかに悪税であるか明らかでありましよう。大蔵大臣もこれは撤回せられることを要求いたしておきます。お答えを願いたい。
  110. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 この問題につきましては、先ほども答弁申し上げました通り、私どもも最終まで結論に達していないので、提案の運びに至つておりません。しかしいわゆる低額の所得者に対する軽減を加える結果として、他に何らかの財源措置をとらなければならぬのであります。その場合に、どういう方法がいいかということについては、これは十分な検討をしてみたい。先ほど申したごとくに、無理な課税、納得できぬような課税はやりたくない、かように考えておるのでありますが、同時に非常に奢侈的なもの——先ほどどなたか、奢侈などということは定義ができぬと言われておりましたが、しかし常識的に奢侈的なものということは理解ができるので、そういつたもの等につきまして、これはある程度の課税は——そのときもその人は、社会党の人も、改進党の諸君もみな賛成だと、同じ方が言つておられしまた。そういうようなことでもありますし、これは、どういうふうに持つて行くかということについていろいろ私どもも検討を加えまして、皆さんの納得の行くようなもので御協賛を得たいと思つております。
  111. 中村三之丞

    中村(三)委員 私はもう一言切に申しておきます。税金というものは単なる金銭の問題ではない、思想の問題である。これは大蔵大臣よくお考えを願いたい。これで終ります。
  112. 倉石忠雄

    倉石委員長 本日はこの程度にいたしまして、次会は明十日午前十時より開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時五十一分散会