運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1954-02-08 第19回国会 衆議院 予算委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年二月八日(月曜日)     午後二時三十八分開議  出席委員    委員長 倉石 忠雄君    理事 小峯 柳多君 理事 西村 直己君    理事 西村 久之君 理事 森 幸太郎君    理事 川崎 秀二君 理事 佐藤觀次郎君    理事 今澄  勇君       相川 勝六君    岡田 五郎君       尾崎 末吉君    尾関 義一君       迫水 久常君    灘尾 弘吉君       羽田武嗣郎君    葉梨新五郎君       福田 赳夫君    船越  弘君       八木 一郎君    山崎  巖君       山本 勝市君    稻葉  修君       小山倉之助君    河野 金昇君       河本 敏夫君    中村三之丞君       古井 喜實君    足鹿  覺君       伊藤 好道君    滝井 義高君       武藤運十郎君    山花 秀雄君       横路 節雄君    川島 金次君       河野  密君    小平  忠君       堤 ツルヨ君    西村 榮一君       吉川 兼光君    黒田 寿男君  出席国務大臣         内閣総理大臣  吉田  茂君         国 務 大 臣 緒方 竹虎君         法 務 大 臣 犬養  健君         外 務 大 臣 岡崎 勝男君        大 蔵 大 臣 小笠原三九郎君         文 部 大 臣 大達 茂雄君         厚 生 大 臣 草葉 隆圓君         農 林 大 臣 保利  茂君         通商産業大臣  愛知 揆一君         運 輸 大 臣 石井光次郎君         国 務 大 臣 安藤 正純君         国 務 大 臣 塚田十一郎君  出席政府委員         法制局長官   佐藤 達夫君         国家地方警察本         部長官     斎藤  昇君         大蔵事務官         (主計局長)  森永貞一郎君  委員外出席者         専  門  員 小林幾次郎君         専  門  員 園山 芳造君         専  門  員 小竹 豊治君     ――――――――――――― 二月八日  委員有田二郎君、黒金泰美君、瀬戸山三男君、  濱地文平君、堀川恭平君、持永義夫君、三木武  夫君、及び辻政信君辞任につき、その補欠とし  て小林絹治君、原健三郎君、中村清君、灘尾弘  吉君、福田健治君、庄司一郎君、三浦一雄君及  び黒田寿男君が議長の指名で委員に選任され  た。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  昭和二十九年度一般会計予算  昭和二十九年度特別会計予算  昭和二十九年度政府関係機関予算     ―――――――――――――
  2. 倉石忠雄

    倉石委員長 これより会議を開きます。  昭和二十九年度一般会計予算外二案を一括議題として質疑を継続いたします。古井喜實君。
  3. 古井喜實

    古井委員 いろいろお尋ねをしたい問題もございますが、一言だけ総理お尋ねをいたしまして、他の諸問題は、関係大臣から御答弁を伺うことにいたしたいと思います。  その総理にお伺いしたい問題は、政界刷新の根本問題であります選挙粛正の問題についてであります。日本は今庶政一新の時期に入ろうとしております。まず、今日の経済の行き詰まりは、決して一時の偶然の現象ではなくて、この狭い国土、貧弱な資源、過剰な人口という日本基本構造と合わない経済が、日本に行われて来たということの破綻が現われたのだと思います。しかし日本に合わないのは経済ばかりではない、終戦後至上命令のように教えられた考え方、与えられた制度が、いわば全体として日本に合わないところがあると思います。こういう考え方制度に縛られて、日本復興自立と発展とを犠牲にすることはできないと思います。われわれは、独立になりました今こそ、借り物の考え方制度を、日本実情合つた本物に改めて行かなければならぬと思います。これが今後われわれが生きて行く道であり、形ばかりの独立から真の独立に至る道であると思います。この改革は具体的には憲法の改正を頂点とする一連の国家の革新であり、いわば日本の新しい国づくりとも言うべきものと思います。しかもこの改革は好むと好まないとにかかわらず、大きな情勢として刻々われわれに迫つておると思います。経済の問題は実にその口火であると思います。ことし半年たち、一年を経過したら、いやでもおうでも重大な段階に追い込まれると私は思つております。もし手遅れにならないうちに、この必要な改革国会国会の選ぶ政府の手によつて実行することができないとしますならば、日本議会政治民主主義の運命は、まことに憂慮すべきものがあると思います。われわれは右翼のファッショを好みません。同時にまた赤化から日本を守らなければならぬと思うのであります。このときにあたりまして、政界官界腐敗疑獄が、天下の大問題となりました。われわれはここによい反省の機会を与えられたと思います。これを契機とし、天の戒めとして政界官界徹底的粛正に乗り出さなければならぬと思います。きよう爼上に乗せられたそれぐの事件については、すでに司直の手が伸べられ、また国会において糾明をぜられております。私は今これについては触れる考えはございません。しかしここに見逃された一つの重要問題があると私は思います。それはこの政界百弊の根源をなす選挙の宿弊に対する抜本的粛正の問題であります。政界腐敗は過去においても起りました。一体なぜこの政党と政治家は、多額の資金を求めなければならないのであるか。ひつきようするに選挙に金がかかるからであります。しかもこの選挙費は減るどころか、次第にうなぎ上りに上昇しております。政府は近来市町村の合併を強力に勧奨し、推進しておいでになりますが、合併に伴う選挙実情をどういうふうにごらんになつておりますか。私は幾多の事例を知つております。まことに恐るべきことであります。われわれはこういう状況を座視しておつて民主政治が虫ばまれてつぶれて行くことは、まことにたえがたいところであります。よしんばお互い犠牲になることがあつても、この民主主義のために選挙の徹底的な粛正をはかることを考えなければならぬと思います。選挙粛正は決してできないものとは思いません。なせないのではない、しないのであります。一体どういう方法があるのか、これが問題でありましよう。それはまず第一には序家連動の徹底でございましよう。第二番目には選挙取締りのやはり強化でありましよう。最後にやはり根本問題としては選挙法制自体改正だと思います。啓蒙運動については、昭和十年岡田内閣の当時に政府の音頭取りで、全国津々浦々にわたつて官民をあげて行われたあの選挙粛正運動の経験があります。いささか当時官製運動のきらいはありましたけれども、多大の成果を収めたことはいなめないと思います。選挙取締りもその際はこの粛正運動と並行して、きわめて粛正に励行されました。批判をいろいろ巻き起しましたけれども粛正の実をあげたことは万人の認めたところであつたと思います。この啓蒙運動選挙取締りとで選挙粛正をはかつて行くという道もございましようが、しかし遺憾なことに、これらの方策は長続きがしないのであります。ことにお互い貧乏な人の集まりであります日本実情としましては啓蒙運動によつて粛正の実を収めるということは、なかなか容易でないのであります。取締りの方はこれはあたりまえのことではありますけれども、へたをやるとすぐ行き過ぎを起す危険性をはらんでいるのであります。  そこでやはり一番的確な道は、法制によつて弊害根源を断つということだと思うのであります。その要点はいろいろ御意見もありましようけれども、私の信ずるところによれば二つであると思つております。一つはやはりこれは小選挙区制の採用だと思います。いま一つイギリスの一八八三年のあの腐敗行為違反行為防止法の例にならつた思い切つた連座制の断行だと思います。イギリス法制ばいささか強烈過ぎるうらみはありましようけれども、このためにあれほど腐敗しておつたイギリス選挙粛正されたのだと言われております。そうして選挙と金とは縁がないものだという観念を、国民に植えつけたと言われておるのであります。吉田総理は一ころ選挙法制改正について、熱意をお示しになつてつたと承知いたしております。いつかなしこの問題は忘れてしまわれたかのごとくに、たな上げされておるのを私は遺憾に思います。そこで私はこの機会総理にお伺いいたしたいと存じますが、吉田総理はここで一大決心をもつて、抜本塞源的な選挙法改正に当られるお考えはお持ちにならないかどうか、これが私は吉田総理日本政界に対する、不滅の功績になると思います。この問題についてもうたな上げのままでほうつてしまわれるのか、今目の前に起つている事態を見て、ひとつ思い切つて根源を断つ決心をされるお考えはないか、この点をお伺いいたしたいのであります。  なおこれに関連して法務大臣にお願いしたいが……。
  4. 倉石忠雄

    倉石委員長 古井さん、総理関係だけに願いたい。
  5. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをいたします。公職選筆法改正に関する調査特別委員会においても、選挙法抜本的改正をということであります。政府も同意見でありまして、特別委員会の答申を待つて十分政府もその改正に努力いたしたいと考えます。しさいは主管大臣からお答えいたします。
  6. 倉石忠雄

    倉石委員長 それでは交替していただきまして、足鹿覺君。
  7. 足鹿覺

    足鹿委員 私は吉田首相に対しまして、主として内政問題、なかんずく国民の四割を占めながら、常に閑却されがちであり、国政の上でも軽視されつつある農村農業農民問題を中心として、これに関連する若干の諸問題をお尋ねいたしたいのであります。  世界の農業生産は一九五三年度において戦前の二〇%を上まわつております。アメリカの小麦のストックは莫大な額に達し、朝鮮戦争の休止とともに国際緊張が緩和し、アジア諸国初め食糧下足の国々は、その買付を著しく抑制いたしたために、海外農産物価格は暴落の一途をたどつておることは御存じ通りであります。このような情勢は、日本農業に対しましても、農産物価格を通じて直接間接に深刻なる影響を与えることは免れかれません。今後の日本農業問題は、一大転機に直面をしておると言つて過言でないと思います。  翻つて国内農業情勢について見ますとき、昭和二十八年の異例の災害によりまして、直接災害を受けました農家はもちろんのこと、このことは国民経済に至大な影響をもたらしておることは御存じ通りであります。  かかる国際国内農業情勢のもとにあつて政府編成した昭和二十九年度予算案は、緊縮財政を呼号し、対外収支の改善を説き、国民に向つて耐乏生活を強調いたして、自立経済の題目を唱えておるのであります。首相はかねてから農政顧問等を御委嘱になり、かつて食糧増産促進法のごとき、いわゆる自動的に財政的措置が講じ得られるような基本法について、御構想があつたようでありますが、今こそ今後の日本農政について基本的なる施策を、しかも長期一貫した不動の体系ある立法措置を講じまして、もつて基本的なる対策を立てるべきであろうと存じます。首相は、農業基本法のごとき画期的なる法律を制定して、農村の問題、農業の問題、農民の問題が、ばらばらにならない総合したところの長期にわたる財政的な措置をもあわせ考えた御構想があるのかないのか、特に総理大臣の御所見を承りたいのであります。
  8. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをいたします。日本の現状といたしまして、しばしば申すようでありますが、戦前戦後を通じてとかく農村の問題、ことに治山治水の問題が閑却されてあつたように思われます。その結果が毎年不幸な災害が頻発するというような状態であり、またその結果国民食糧も足りなくなつて、現在貿易のバランスも、この食糧問題のために均衡を失つておるような状態でありますから、農業問題については、政府としては切実な施策を立てたいと考えております。ただ今年は予算の上から制約されておりますけれども、それにしてもできるだけのことをいたしたいと思つておるのみならず、また別に政府としては考えるところもございまして、特殊の方法等をとるというようなことになりますが、それらの方法でもつて、できるだけのことをいたしたいと考えております。しかし詳細のことは、主管大臣からお答えいたします。
  9. 足鹿覺

    足鹿委員 私はさらに詳細にお尋ねしたいのでありますが、理事会申合せもございますので、あとで主管大臣にさらにお伺いを申し上げることといたしまして、次に移りたいと思います。  ただいま首相治山治水等中心に、特別な考えをもつて農業問題に対処したい、こういう御所見を発表されましたが、本年度の予算編成をめぐつて、われわれの痛感いたしましたことは、大蔵省が、法律が現存しているにもかかわらず、各種予算を打切り、あるいは削除し、その件数は農林関係について見ましても、約二十四程度の法律が、生けるしかばねのごとき事実に直面せんとしておるのであります。主として議員立法がやり玉に上つておるようでありますが、立法権議会にあり、政府は行政府として予算編成権を持ち、法律の施行に当ることは言うまでもありません。首相議員立法の抑制をしばしば言明をされ、この趣旨を受けて、おそらく大蔵当局も非常なる決意をもつて臨んだと考えられるのでありますが、総理大臣大蔵当局に対して、議員立法なり、あるいは大いなる議会の修正によつて財政支出の増高したものに対しては、これを圧縮するような編成方針をもつて臨むことを指示せられたかどうか、これは予算編成上の大きな問題でありますので、この際伺いたいのであります。  そもそも議員立法のよつて来るゆえんはどこにあるか。自由党においても三役の承認を必要として、その承認のもとにいわゆる各派が協定をし、あるいは単独で提出されたものが、ほとんど大部分であります。従つてこのようなことについては、いわゆる与党においても野党においても厳重なる検討の結果、政府施策の盲点をついて、国民と密着した議員の感覚において、良心的に出されたものが多いと思う。これに対する昭和二十九年度の予算編成にあたつて大蔵官僚は、がらくた議員立法をこの際一掃してやると、農林当局の大官にかく豪語したと聞きますが、これはその場限りの言葉のやりとりとしても、聞きのがすことのできない重大な意味を持つておると思います。  従つて私の首相伺いたい第二点は、首相は今後予算編成権についての合理化、あるいは民主化についてどのような御方針を持つておいでになりますか。たとえば内閣直属予算局のごときものを設置して、いわゆる大蔵省吏僚政治に堕することを、未然に防止する御意思がありますかどうか、予算編成上の基本的構想について伺いたいのであります。
  10. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをいたします。私は議員立法による財政処置は一掃せよというような、乱暴な指示を与えたことはありません。大蔵当局財政全局から考えてみて、そして切盛りをいたしたのであります。  それから次のお尋ね予算機関といいますか、予算編成機関等内閣に置く考えはないか、これはただいまのところございません。
  11. 倉石忠雄

    倉石委員長 お打合せの時間が来ておりますので薄明に願います。
  12. 足鹿覺

    足鹿委員 次に、私は最近の陳情政治が、非常に激化していることについて、首相にお伺いをいたしたい。今次昭和二十九年度予算編成方針は、防衛費に重点を求め、そのしわが抵抗力の弱い社会保障費や、農業対策費に寄せられたことは、天下周知の事実でありますが、また歳入の面につきましても、直接税を名目的に軽減し、間接税等を創設または増徴して、大衆課税にその方針を切りかえたことは、論ずるまでもなく、明白であります。政府は輿論のはげしい、反撃にあい、社会保障費等の若干の復活をもつて対処したのでありますが、これは政府方針の誤りとともに、大蔵官僚の民心の動向と社会実情の把握を忘れた、独善的結果に大きく基因しておると思う。昨年末から本年初頭にわたつて、今日まで一大陳情運動が東京をにぎわし、世情騒然としてやむところを知りません。今もまた繊維消費税の悪税撤廃等の世論はきびしく、広汎に展開されつつありますが、この陳情要請に要する直接的な経費あるいは労力も莫大であるが、それに伴つて政治腐敗がここに発生すると思うのであります。最近無限大に発展する各種疑獄事件等を静かに考えてみるときに、少くとも政府は猛省をしなければならない点があると存ずるのであります。財力があり余裕もある者は強力な陳情もできるでありましよう。運動もできるでありましよう、予算復活運動もできるでありましよう。しかし陳情するにもその旅費もなく、献金するにもその財力のない、力ない人々は結局泣寝入りに終ることとなり、弱き者、貧しき者、しいたげられた者は、永久に現在のごとき政治のもとにおいては救われません。弱肉強食の政治に拍車を加えつつある本年度の予算編成方針に対して、吉田首相はあくまでもこれが正しいとお考えになつておりますか、吉田首相の御心境を伺いたいのであります。
  13. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをいたします。政府はこの予算編成のためには、相当苦心をいたしたのであります。苦心の結果一兆円以内にとどめたので、ここに至るまでは各方面からの要求もあり、またこれに対して同情的に考えた向きもありますが、しかし一兆円にとどめることが目下としていたさなければならぬところと考えて、政府財政全体の全局から考えてみまして、ここに決定をいたしたのであります。決して陳情等によつて動かされたところはないと思います。
  14. 倉石忠雄

  15. 吉川兼光

    吉川(兼)委員 私はきよう与えられておりまする四十分を、ほとんど全部総理大臣に御質問申し上げるつもりでおつたのでありますが、理事会申合せ総理大臣の御都合で十分だけに要約してくれという話でございますから、不本意ながらその御決定に従いまして簿単に質問をいたします。今日の危機の認識吉田内閣施政方針基本態度について、私はお尋ねしたいと思いますが、吉田総理大臣は今日の日本の危局を突破するためには、いわゆる保守合同といいますか、自由党国会内における勢力を強化しまして、そうして吉田内閣を安定させさえすれば、それが日本の今日の政局を安定するものというふうにお考えになつておられるかどうか。今日の日本政治の弱体は、はたして何に原因しておるかということをお伺いしたいのであります。
  16. 吉田茂

    吉田国務大臣 私は保守政権云々というようなことは考えておりませんが、いずれにしても政局を安定せしめて、そして政府政策を最も強力に進行いたすことが、今日の急務であると考えております。そのためにはできるだけのことをいたすつもりであります。
  17. 吉川兼光

    吉川(兼)委員 私は今伺いました吉田総理大臣のお考え方には、必ずしも同調するものではないのでありますが吉田さんの施政を見ておりまして、一番の欠点と思われますのは、その基本認識といいますか、従つてその基本方針において、かんじんかなめ国民の共感を得るということに対する御配慮が、はなはだ欠けておると思うのでございます。もとより政治の経綸におきましても、私どもは大いに異議がございます。そこで私ははなはだ申し上げにくいことでありますけれども、おそらく吉田さんに向つてはだれも言わないであろうと思うことを、この機会一言お聞きに入れておきたいと思います。  私は戦後三回目の選挙に落選いたしまして、三年九箇月ほど、選挙区内農民、漁民、労働者あるいは中小商工業者といつたような勤労大衆の中にもぐりまして、すなわち議席を離れて吉田さんのやつておりますことを、静かに見守る機会を持つたのでございます。その後また国会復活いたしましてからも、国会内における吉田さんの言動に対しましては、きわめて注意をいたしておりますところの一人でございます。もとよりこれは決してあなたのあら探しなどを考えての上ではありません。この私の見ました吉田総理観と、それから今日の日本自立経済、あるいは日本復興に対する関連ということを、私はここで申し上げてみたいのでありますが、私はもとよりいささかも個人的な感情を交えては物を言わないつもりでありますから、吉田総理はどうぞすなおにお聞き取り願いたいということを申し上げておきます。  私の見るところを率直に申し上げますならば、吉田総理大臣は現代の民主主義時代政治家といたしましては、はなはだ不適当であると私は考えます。その理由を一々ここであげておりますと枚挙にいとまありませんから、省きまするけれども、たとえば数々の国会軽視言動あるいは新聞記者ぎらいでありますとか、ないしは極端な貴族趣味でありますとか、こういうことを二つ三つ捨い上げてみましても、私はだれでもうなずけるのではないかと思うのであります。さらにその識見、抱負、ないしは国を思うところの熱情というようなものから見ましても、私は非常時を担当するところの政治家といたしましては、総理大臣はおろかのこと、平大臣として一つの省をあずかる資格もあるかどうかということを、私は疑わしく思うのであります。第一にいたずらに非常に自我心が強い、そうしてくだらないと思うことに盛んに反抗心をたくましくされるようであります。皆さんこの反抗心はすなわちレジスタンスでございますが、これはある程度私は今日の敗戦国としては必要と思いますけれども、しかしそれはあくまでも外に向つて日本民族のバックボーンを失わぬという、いい意味反抗心でなければならぬと思うのでありますが、吉田さんに至りましては、外に向つてははなはだよい。アメリカあたりに対しましては、何と言われても、唯唯諾々として、イエス・マンではありませんか。ただ内に向つて国民大衆やあるいはわれわれ国民の代表でありますところの反対党議員などに向つてのみ、はなはだ反抗心が強いのでありますが、これはまことに本末転倒とわなければならぬと私は思うのであります。おそらく総理大臣は、今私が申し上げておりますことに対しては、非常にごきげんにさわつておるのではありますまいか。総理の耳に逆うようなことであれば、たといそれが善意に出発する忠告でありましても、一切聞こうとしないと私は思うのであります。その態度は不遜であります。少しもあなたには謙虚というものがありません。しかも非常に感情的だから、すききらいが強いようであります。そのためにみずから気がついておられるかどうかはしりませんけれども、いわゆる世間でお茶坊主などといわれるような者どもが、あなたの周囲を取巻いて、あなたのやられますところは、いわゆる側近政治に堕しておるではありませんか。私は吉田総理大臣の御認識のいかんにかかわりませず、今日の戦後の日本といいますものは、恐ろしい勢いで革命が進行しておると思うのであります。この新しい革命の態勢は吉田総理大臣がいかに阻止しようとされましても、それはとうてい不可能であります。いわゆるごまめの歯ぎしりなんという言葉がありますが、ちようど私はそれに似ておると思うのであります。従つてこの革命時代が要請しておりますところの政治のあり方は、ひとつとつくりと考えてもらいたいと思うのでございます。そうして革命に対処するところのしんの太い、新しい政策を出してもらわなければならない。その新しい政策はあなたのお考えのもとでは、私は絶対に出ないというふうに見ておるのでございます。これは私だけではありません。国民の多数の者がそういうふうな政治に対して裏切られたという感情が強いのでありまして、今の内閣に見限りをつけておるばかりではなくして、ややともすれば政治をサボタージュしておるのではないかと私は思う。国民政治をサボタージュすることほど恐ろしいことはないのであります。ちまたに氾濫しますところのパチンコの盛んなことなども、おそらくその間の消息の一端を雄弁に物語るものであろうと思いますが、吉田総理大臣は、この国民政治をサボタージュしようとしておりますような、こういう機運に際して、特に純真な青年婦人層なんかの国民大衆を、どうして政治の方面にひつ張つて行こうとするお考えを持つておるのか、これを私は聞かなければならないと思うのであります。立憲政治といいますものは申し上げるまでもありませんが、責任政治であります。責任といいますのは、ものにけじめをつけることであります。すなわち折目を正し、筋を通すことであります。たとえば昭和二十五年の五月のわが国が曲りなりにも独立いたしましたこのときにおきましても、独立後の政治と占領下の政治というものは、おのずから異なるところがなければならないのである。従つて当時その局に当つておりました吉田総理大臣は、すべからく衆議院を解散しまして、独立後の日本の再建はいずれかの勢力が、どの政党が、いかなる政策をもつてそれを担当すべきかということを、総選挙を通じて国政の主権者でありますところの国民に聞くべきであつたと思うのでございますが、これをなさない。これをなすのがすなわち筋を通すということであるのであります。私はその当時吉田総理大臣がほおかむりをいたしまして、ずるずるべつたりと三年以上も、占領から独立への間の政治をやりましたために、国民の方ではいつから独立したのやら、いつまでが占領下やら、十分な認識を持たない間に、今日まで政治が来ていると思うのであります。たとえば今回の予算の提出にあたりましても、すでに同僚の議員から盛んに指摘されておるところでありますけれども、このたびのデフレ予算といいますのは、百八十度の政策転換であります。こういう転換を平気でなさるということも、政治に対する折目を正しておらない、筋が通つておらないことではないかと私は言いたいのであります。五箇年間あなたがおやりになりました政治の結論が、今日の日本経済における行き詰まりを来したのでありますがゆえに、これは当然あなた御自身が責任を持たなければならない、吉田内閣が責任を負わなければならないにもかかわりませず、それをやらない。そうしていわゆる責任はむしろ国民にあるというようなことを、あなたは言つておるではありませんか、私はこういうことに対する吉田さんのお考えも、この際聞いておきたいと思います。
  18. 倉石忠雄

    倉石委員長 吉川君、お持合せの時間が迫つて来ました。
  19. 吉川兼光

    吉川(兼)委員 そういうことになるので、私は困るのです。ですから、最後に一言だけ申し上げますが、いわゆる長期計画等につきましても、吉田さんは共産主義の国ばかりが持つておるものだと言う、あるいはあなたに言わせると、社会党は愛国心がない、国会議員はばかやろうだとか、さるに似たものだとか、労働者は不逞のやからだというのが、あなたの認識です。そういう御認識国民に耐乏を要求するだけの御資格があるかというのです。あなたの生活態度についていろいろ質疑が行われますと、一身上の弁明はなさない、あるいは私生活については弁じない、こういうものの考え方が、今日の民主政治に適しておるかどうかということを、私は言いたいのであります。それにつけて思い出すことが一つあります。それはかのナポレオン戦争後のフランスにおきまして、七十に近いところの老齢をもつてチャールス十世という人が王位についたことがあります。御存じでもございましようが、当時はかのメツテルニヒが指導いたしましたところのいわゆるウイーン会議のあとでありまして、ヨーロッパにおきましては新しい革命の風潮が、これを風靡しておつたというようなときでございます。
  20. 倉石忠雄

    倉石委員長 吉川君の御発言中でございますが、理事会決定は尊重していただきます。
  21. 吉川兼光

    吉川(兼)委員 二、三分で終ります。そのときチャールス十世は、革命後のヨーロッパにおいてかわらないのはわれ一人のみということを豪語しまして、そうして滔々たる革命の潮流にまつ正面から反対したところの反動政治を行つておるのでございます。このときに国民の間に怨嗟の声がみなぎりました。そこで私は申し上げたいのは、そのときの外務大臣のタレーランという人が、チャールスの暴政を批評いたしまして、こういうことを言つておるのです。それは、チャールスは新しい革命の風潮に対して何事も学ばない、そうして昔の反動政治時代のことを何事も忘れないということを言つている。私は吉田さんこそは、まさにこのタレーランが言いましたところの何事も学ばない、何事も忘れないというチャールスの現代版であると申し上げたいのであります。こういうような考えで、はたして民心をつないで行くことができるかどうか、あなたの考えておりますところの耐乏生活が、庶幾できるかどうかということを、この際お伺いしておきたいのであります。
  22. 吉田茂

    吉田国務大臣 るる御意見を承りましたが、これは御意見であります。不幸にして私はあなたと御意見を異にいたしております。しかしながら政府は責任を持つて、耐乏予算なり何なりの実行に当る考えでおります。
  23. 倉石忠雄

    倉石委員長 この際委員長より一言申し上げます。一昨日の三木武夫君の議事進行の発言に関しまして、理事会を開きましたが、いまだ結論に達しませんので、三木君の御発言の措置につきましては、さらに後日に譲ることといたしたいと存じます。川崎君より御発言を求められております。これを許します。
  24. 川崎秀二

    ○川崎委員 ただいま委員長から中間報告のありました三木武夫氏の先般の発言について、一言だけ議事進行に関して申し上げます。三木氏の発言は一身上の名誉に関する重大な発議であります。私はこれに関する内容については、今日各般の関係上申し上げませんが、三木氏が殖産金庫の顧問であるかいなか、法務大臣のすみやかなる調査をとられることを、委員長より善処されんことを要望いたします。
  25. 倉石忠雄

    倉石委員長 承知いたしました。それでは質疑を継続いたします。古井喜實君。
  26. 古井喜實

    古井委員 先ほど選挙粛正の問題について、お尋ねをいたしておつたのでありますが、この問題はあとにまわしまして、他の問題から伺いたいと思います。  まず最初にお伺いしたいのは、この一月二日の二重橋事件に対する警察当局の責任についてであります。この二重橋事件は、まことに未曽有の不祥事でありました。十七人の人命が失われ、その上に数十人のけが人を出したのであります。この不祥事は警察の手落ち、失態によつて生じたものであると、衆議院の地方行政委員会においても、参議院の地方行政委員会においても判定をしたようであります。少くとも手落ちがあつた、この手落ちがなければ起こらなかつたという趣意に解されるのであります。これに対してこの委員会は関係当局に対して、将来を戒めるということにとどめられたようであります。しかし、将来は当然でございますけれども、現に起つた事実に対する責任を、一体政府の御見解としてはどうお考えになつておるのであるか、すでにとられた程度の措置でもつて、十分であるとお考えになつておるかどうか、この点についての政府の御見解を明瞭にお伺いしたいと思います。なおつけ加えて申しますが、私はこの事件を見まして、警察部内において人命は尊重すべきものであるという、このことに対する認識が欠けていると思うのです。また警察の一番大きな職責は、人命の保護であるという警察の使命についての認識が足らないと思います。交通の取締り一つにいたしましても、これは運転手をいじめるのではない、人命を保護するために取締りをするのである。犯罪人を逮捕するにしても、犯罪人を憎むのではない、良民を保護するために犯罪人を逮捕するのであります。この人命の尊重すべきこと、かつ警察がこれを一番大きな責任にしておるということを忘れておるという感じが、私はするのであります。なおまたかような事態が起つた根本の原因は、私は警察部内における精神の弛緩だと思います。小さい事務上の手落ちであるとは思いません。空気の沈滞であり、精神の弛緩であると私は思います。これについては、一々の事実を申し上げる必要もございますまい。こういう弛緩した精神のもとにあつては、警察の機構をどう改めようが、私はものにならぬと思います。こういり警察で一体何の役に立つか。私は東京都の公安委員会と称するものが、単なる交通事故である、大きな責任を論ずる必要はないというような見解を明らかにした記事を読みました。驚くべきことであります。人命の保護ができないような事態を起こしておつて、一体何が軽いことでありますか。私は関係の諸君には親しい友人もおります。けれども、警察全体のために、この問題をあえてここでお伺いしたい気持が押えられないのであります。責任ある大臣にお伺いいたしますが、一体政府の見解としてはどうお考えになるか。あれはあれで、あの程度のことであるというようなお私えをお待ちになるかどうか、これをお伺いしたいと思います。
  27. 犬養健

    犬養国務大臣 お答えをいたします。今御指摘になりました今年の正月二日に二重橋において起りました不詳事件は、まことに責任重大でありまして、ただこの責任の重きを痛感している次第でございます。率直に申し上げまして、事のよつてつたゆえんのものは、毎年相当の人数が参賀をしたのに事故がなかつたという安心感のために、今年の事態の見通しが甘かつたということは確かに言い得ると思います。その意味で、ただいま御指摘になりました精神の弛緩ということも、警察関係の者は謙虚に反省いたすべきだと存じております。  人命に関することでございますが、もとより御承知のように、警察におきましては、上の警察官に昇級する場合の資格として、人命救助に対する知識、具体的観念、方法というものを熟知した者でなければ上に上げないのでありますが、しかしながら、これも欧米の国民輿論、あるいは欧米の警察官にみなぎつている、人命は何よりもとうとい、ことにキリスト教の影響を受けまして、人命は神から授かつたものであるというような崇高な観念から比べますと、御指摘のように、ややまだ不足しているということは、これは認めざるを得ないと思うのでございます。ただ当局としましては、わが国に人命を崇高なものだと思う観念の薄いことにおもんぱかりまして、ただいま申し上げましたように、昇級試験に際しては、人命尊重に関する具体的な観念と措置を熟知、精通、体得した者でなければ、上に上げないというふうにやつております。しかし欧米に比べてどうかというお話がありますならば、これは率直に認めざるを得ないと思いまして、私どもとしては、謙虚な気持で今後間違いを償う、国民におわびをするという意味で、一層そういう観念を旺盛にいたしたいと思つております。あの事件は、今申し上げましたように見通しの甘さ、相互の連絡などが確かに不備でありました。この点も認めざるを得ないと思います。一方において、けがをなさつた方を私四箇所の病院をおたずねしまして、傷が痛んでいない方にはいろいろ伺つたのでありますが、やはり群衆のおもしろ半分にあとから押すというようなわが国独特の傾向、これも確かに事件の一半の原因ではございますが、しかしおよそ交通取締りをする者としては、そういう国民の特殊性をのみ込んだ上で整理をするということが、これ職務でございまして、その点も私は、兼虚な気持で、落度があつたというふうに思うのでございます。  責任の問題でございますが、単なる交通事故といえばそれまででありますが、交通事故にすぎないという断定は、私は国民感情が受入れまいと思います。そういう言葉は私は使いたくないと思つております。責任はもちろん重大でございまして、早々武末皇宮警察本部長にやめてもらつたわけでありますが、ひとり武末本部長をやめさせれば、あとはかまわないという態度ではございません。一方におきまして東京地検では、今刑事責任の有無について詳細かつ緻密な調査をいたしております。この調査の結果をわれわれつつしむような気持で待つておるわけであります。  以上、まことに遺憾の意を表し、当局が再びこういうことを繰返さないように、この委員会を通じて国民に誓いまして、御答弁にかえる次第であります。
  28. 古井喜實

    古井委員 私は、関係者の責任に対する処分があの程度に行われてしまつたが、あれがあの程度でよいとお考えになつておるかどうか、その点についての御見解を伺つたのであります。刑事責任の結末がついてからということであれば、いつのことかわからぬと思います。ああいう事態が起こつたその背景は、十分御承知だと思います。古いことを申すのではありませんけれども、昔は、警視総監は発令即刻任地におもむいたものであります。そうして一瞬といえども任地を離れなかつたものであります。離れるだけで懲戒処分になつたものであります。あの事態が起つておるということに対して、あの程度のことでけつこうだ、十分だとお考えになつておるかどうかという点を私はお伺いしたい。
  29. 犬養健

    犬養国務大臣 私の申し上げ方が悪かつたかもしれませんが、けつこうだとは申さず、反対に、あれで済むとは思つておらないと申し上げた次第であります。また地検の調べはいつのことになるかわからぬというお話でございますが、これは、実は私の方が詳しいのでありまして、相当と申しますか、九分通り調査は済んでおります。ほとんど最終的と申してよいような報告を私は受けておるわけでありまして、決してこれがただのんべんだらりと延びておるとは思つておりません。また延ばすべきものではないと思います。しかし警視庁の方は、御承知のように私の監督下ではございません。これは警視総監あるいは公安委員会において、しかるべきお考えがあることと思つております。
  30. 古井喜實

    古井委員 これでこの問題はやめたいのでありますが、地検のことなどをおつしやるから申し上げます。地検だけできまることではありますまい。裁判もあります、上級審もありましよう、どこまで行つても、けりがつくときは先の先になるのであります。なおまた警視庁の問題については、自治体警察と言わんばかりにおつしやつたのでありますが、この任免については、総理大臣意見を聞かれれば言わなければならぬ立場を持つております。それだけ法律なつながりがありましよう。またそれを抜きにしても、よい日本の警察をろくるということのために、大きく考えて、見解は明瞭にされる必要があると思つております。しかしこの問題は、御趣意は大体わかりました。  次に、警察制度改正の問題でございます。政府は近いうちに警察制度改正を提案なさる趣でありますが、従来のような、国家警察の系統、自治体警察の系統と二つの系統の並び存しておつたあの警察制度は、これは是正を要するという点においては、私ども政府のお考えに同調するものであります。しかし問題は新しい制度をどういうふうにつくるかという点であります。これについて、私は二つの見方がこんがらがつておると思います。一つは警察の能率という面から見る見方、この点からいえば、昔の警察のように、国警一点張りで、警察の仕事は国の仕事であるという行き方でやつた方があるいは一番いいでありましよう。しかしまた、この問題は別の観点から見なければなりません。つまり地方自治という点からであります。この地方自治という点から見ますならば、できるだけ地方の自治を尊重して、これを育成して行きたいということになるはずだと思うのであります。この面からいいますならば、自治体でやつて行けるというものならば、自治体を育てる意味において、できるだけやらせる、こういうことにもなろう。またできるだけ中央の干渉を少くしたいということは、自治という立場から行くと当然の考えだろうと思うのであります。さつきの警察の能率という考えと、自治をできるだけ育てて行こうという考えとは、必ずしもぴたつと一致しないのであります。しかしどつちも理由があると私は思います。問題は、どこにこの調和点を見出すかということだと思うのであります。政府のおきめになつた要綱を拝見して感ずることは、一体自治体というものをどうお考えになつているのだろうか、その点が忘れられているのではないかしらと思うのであります。そこで私はお伺いしたいと思うのでありますが、一体この地方の自治というものに対して、どういうふうにお考えになつておるのか。これを尊重して、できるだけ育成して行こうとお考えになつておるのか、あるいはこの自治を剥奪し、抹殺して行こうというふうにお考えになつているのか、この点が、今日この警察の改革について意見が対立しておる根本だと思うのであります。一方的な見方だけでは、この問題はしよせん解決がつかぬと思います。この点についてどうお考えになりますか、お伺いしたいのであります。
  31. 犬養健

    犬養国務大臣 お答えいたします。これは昨年ずいぶん長い議論をお互いにかわしまして、古井さんともいろいろとお話をし合いましたし、また私の方も得るところが少くなかつたと思うのであります。御指摘のように、この警察制度というものは、相矛盾した要素が含まれているのであります。つまり警察というのは、非常に能率的で、いわゆるしつかりした警察でなければ安眠ができないという要素と、あまりしつかりして強過ぎちや困るという要素と、二つ始終ぶつかつているわけでありまして、その意味で、警察法の改正ということを上程いたしますならば、いかなる年代でも議論が起る本質的なものを持つていると思うのであります。しかしその意味におきまして、事柄は重大でありますから、いろいろの御指摘は十分すなおな気持で拝聴し、考えているつもりでございます。  今御指摘の自治というものをどう思うかという点につきましては、なるほど現在の暴力主義的破壊運動、地下運動、あるいはいろいろな右翼の運動その他から考えますと、能率的で、ボタンを押せば全国がそれつというようになるのが一番都合がいいという面があります。しかし、それではやはり国民からこわがられ、親しまれないという意味で、結局国民の協力を得ない警察になりますので、ただいま先ほど申し上げた二つの要素を織りまぜるということしか、どんな知恵者があつても、私は結論がないと思うのであります。その二種類の薬のあんばいぐあいにいろいろ御議論があると思うのでありますが、これは政府ができるだけ慎重に考えました原案を差出して御審議を願うことになるだろう、かように考えております。いやしくも国会で働く者、一人として自治なんかどうでもいいという人はないと思うのでございます。今度国警も廃し、自治警も廃して、府県単位の警察ということを考えましたのも、やはり全国が過去の国家警察一本というのでは行き過ぎであるという根本観念から出発いたしております。それから公安委員会というようなものも、能率本位からいえば、ない方が実はいいという議論も出るのでありますが、あのような形で公安委員会を残しまして、持続いたしまして、これは国民の選んだ公安委員会でございますから、この公安委員会が、あるときは警察にとつて親密な協力者、あるときは警察にとつてはなはだ煙たい監視人という両面のお役目をしてもらう、ここは地方自治の声が中央警察を抑制し得る制約機関として、私どもは大いに期待をいたしているところでございます。またこの間うち御議論がありまして、あんな抜けがらのような公安委員会では何にもならぬじやないかという御議論もございましたが、たびたび申し上げますように、これは不適任者であると国民が思うところの警察庁長官とか都道府県警察隊長に対しては、罷免懲戒の勧告権を持つているわけでございまして、これもこの間御議論がありまして、それを一々すぐに受取るのではないだろう、だから何にもならぬじやないかということでありましたが、私は、そこは国民の輿論というものを重視しているものでございまして、新聞に罷免懲戒の勧告を受けた長官である、隊長であるというふうに出ましたならば、相当の打撃であることは明らかでございまして、そこに国民の声の警察に対する抑制というものが動き得る、こういうふうに考えているわけでございます。御質問の御趣旨にはずれたかもしれませんが、これを要するに、地方の自治というものは尊重しながら、現代の警察に自然加わつて来る国家的要請を一部解決する、こういう考え方でこのたびの警察法の骨子をつくつたわけでございます。
  32. 古井喜實

    古井委員 いずれこの警察制度の問題については、他の機会もございましようから、この際は深くは論じません。ただあの案でもつて、地方自治は十分尊重されているのだ、こういうお考えをお持ちになつているとするならば、これは相当問題だと思います。なかなかそういう考え方で簡単にものが済むか済まぬか、これは今後の問題だと思います。これだけを申し上げておきたいと思います。  次に行政整理、すなわち行政人員の整理と行政機構の改革の問題についてお伺いいたします。この行政整理は、政府の大きな看板でもありましたし、またこのために政府はずいぶん御努力をなさつたようであります。しかしその結果はどうかといえば、まことに泰山鳴動ねずみ一匹、見るべきものがほとんどありません。役所の諸君をせいぜいおどしただけのことであります。関係大臣は、おきまりが悪いだろうと実は思うような状況でありますが、なぜこういう結果になつたか。大事な点を抜かしておいでになるのではないか。ただこういう結果になつたのは、官僚の諸君が抵抗したというだけのことではないと思います。大事な点を抜かしておるのではないかと思います。今日行政の一番大きな弊害は、中央に行政が集まり過ぎておることであることは申すまでもありません。市町村の一々のことまで中央に来ねばらちが明かぬという、これが今日の行政の弊であります。思い切つて自治行政の根を地方におろさなければ、とうてい中央の機構も簿素化できないと思うのであります。問題は、つまり適当な受入れというものがないということだと思う。今日の府県は、あのままでは事務を大幅に委譲するのに相手にしにくいということだと思う。それは結局突き詰めてみれば、知事の公選という点に問題がある、また府県があまり貧弱な単位である、ここにあろうと思います。先般塚田大臣は、知事を官選にしたいようなことをおつしやつておられました。私は、府県を将来根本的にどうするかというところにはなるほど当つておると思う。しかし昔のような官選にひつくり返すというようなことは、間違いだと私は思つておる。昔官選時代に、一体どういう大きな弊害を起しておつたか。あの弊害をもう一ぺん繰返すのか。ことにあれほど小さい単位で官選にした場合には、中央の政争の弊が国のすみずみまで行くと私は思う。府県は問題である。むしろもつと大きな地域に行政事務をおろすべき機構をつくるという問題に着眼される必要があるのではないかと思う。その大きな地域の行政機関について、どうお考えになるかということを伺うと同時に、あわせて伺つておきたいことは、今日政府はしきりに市町村合併をやつておいでになるが、どういう結果を起しておるかよく見ておいでになるかどうか。数箇町村を合せた新しい町村というものは、もう元の町村とは性格の違つたものであります。昔のいわゆる隣保相助の団体ではありません。行政の便宜の区域になつておる。この性格、機能は府県と同じものになつて来ておる。重復して来ておるのであります。こういう二重機構を今つくつておいでになるのであります。その間にむだが多いというようなことのみならず、結局これは市町村の自治というものを発達させることのじやまになると私はう。そこでこの点についてどうお考えになるか。つまり府県というものに対してどうお考えになるか、またその問題を解決せずして、行政整理などをおやりになるということに欠陥があつたと私は思いますけれども、その辺についての御所見をお伺いしておきたいと思います。
  33. 塚田十一郎

    ○塚田国務大臣 いろいろお話を伺つておりますと、実は私が今度行政整理を自分で手がけてみまして感じたことと、考え方がほとんど一致しているように伺つたのであります。実は私は今度の行政整理を、国の出先機関が非常に多いものでありますから、なるべくこれを整理する、その裏には、国の仕事をなるべく地方にやつていただく、こういう考え方でスタートいたしたのでありますけれども、結局においてはなかなかできないし、また途中から、やはりそれではいけないという感じにもどりまして、国の機構の整理の場合には、御指摘のように、国の出先機関は最小限度残すものは残す、しかし残した場合には、国の中央の権限を最大限度地方へ委譲するという考え方で行こうという考え方一ついたしております。これは今までも、各省の今度の行政整理が始まつてから実施をいたしたものもあるようでありますが、さらにそういうものを含めて、全体的にそういう体制をつくつてもらいたいということを各省に要請をいたしておるような状態でございます。それは当面の措置でありますが、しかし結局ものの考え方としましては、やはり第一段に町村合併を推進して行こう、そうして町村合併を推進して行く場合には、まさに御指摘のように、大きくなつた市町村という自治体と、府県の今の自治団体性格としてあるものとは、確かに重複をいたします。これは自治団体制というものをどちらか否認すべき性質のものである。これは私がよく申し上げております、自治団体の二段階というのはおかしいというのは、この考え方であります。そこで府県の一段階、自治団体制を否認する、そこのところで官選の本来の考え方が一応出て来るのであります。しかし、そこまで行く段階にひとつ考えなければならぬのは、私は町村合併があるところまで行つたときと、同じような考え方による第一段の府県統合というものが、ひとついるのではなかろうか、こういうように考えておるわけです。府県統合をしまして、完全な官選に持つて行く。と言いますことは、府県が完全な国の出先機関になる中途の段階に、今度の制度、公選制度の府県自治団体としての府県の前にあつた日本の府県の性格のものが、一度中途の段階としてあつてもよいのではないだろうか、こういうように考えておるのであります。従つて知事官選ということを考えます場合には、この第一段の場合の知事官選と、第二段の場合の知事官選と、私の考え方の上では、実は若干段階的に区別がついておるのでありますが、それをひつくるめて一言で知事官選、知事官選と私も申しておるわけであります。今私個人の考え方としては、今度の行政整理、それから地方制度改革というものを自分で手がけて検討いたしました結果、そんなところに結論が来ておる状態でございます。
  34. 古井喜實

    古井委員 あのできそこないの行政整理でありますから、もう一ぺん必ず根本的に考え直される時期がなければならぬと思います。思い切つて大事なところに着眼をされて、よい案をなるべく早く実行されることを望みます。  そこで塚田大臣にお伺いしたいと思いますが、二十七年度の地方財政の赤字は、三百億だと過日おつしやいましたが、これに対してはどういう対策をお立てになつておりますか。この点をお伺いいたします。
  35. 塚田十一郎

    ○塚田国務大臣 この地方団体の過去の年度の赤字は、今度の予算編成に当るかなり前までの考え方は、ぜひ今度の機会に過去の赤字を整理して、新しく赤字を生じないようにということを考えて、予算編成その他に当つてつたのであります。しかし、今度の予算編成、地方制度改革というものを全体としてだんだんと具体化して参つた段階において、少し考え方がかわつてつたのであります。実は今度の地方制度改革はどこに重点があつたかと申しますと、一言に申しますならば、全部の考え方が、何とかして地方財政の赤字をなくするということに集約されておつたと申してもさしつかえない。それにいろいろな制度改正がありまして、地方財政全体として、地方自治団体相互の間において、財政計画の状態がかわつて参ることになつたわけです。たとえば過去の赤字で、一体どこに一番赤字があつたかということでありますが、先日二十七年度の数字をここで申し上げたのでありますが、二十八年度は、あれよりも若干上まわるであろうということを大体申し上げておつたのであります。まだ推定の域を脱していないのでありますけれども、大体今二十八年度の見通される推定をいたしますと、二十七年度の三百億が、二十八年度末には三百六十億くらいな赤字になるのではなかろうかというように推定されます。そのうち約二百億が都道府県の分であります。百二十億が大体五大市を含めた市の分、それからさらに四十億が町村の分、こういうぐあいになつており、合計三百六十億であります。一番府県が大きいのでありまして、今度の税制改正で、その他地方財政計画全般の改正で、府県の赤字の原因というものは相当程度に是正できたのではないか、またそこに重点を置いてやつたわけであります。そこで見通される二十九年度以降の全体としての地方財政の赤字に、過去の是正すべきものを是正しておらなかつたのを、今度二十九年度の財政計画では是正をいたしました。その面で相当程度はよくなるのじやないかと思つております。それから個々の間の配分、それはこの税制、それから交付税、そういう制度全般を通して相当考慮いたしましたので、個々の間の是正もかなりできておるのじやないか。従つて二十九年度以降は、かりにあるとしてもかなり過去の赤字の状態とかわつて出て来る。おそらく今後赤字が大体生じないように行くのじやないかというような見通しをいたしておりますので、一応過去の赤字の部分も、二十九年度の改正後にどんな状態にかわつて来るかということを見通した上で、本質的、本格的な再建整備策を講じてみたい、そういうように考えましたので、本格的な再建整備策は国会側にもかなりそういう御意見があつて、私もぜひそうしたいと思つておるのでありますが、今度の二十九年度予算では、とりあえず見送りになつておるわけであります。従つて二十九年度は、地方自治庁が持つております各自治体に対する調査権、勧告権、そういうものを通して、なるべく新しい制度改正とあわせてやつてみたい、こういうように考えておるわけであります。
  36. 古井喜實

    古井委員 もう一ぺん伺いますが、二十七年度の赤字三百億、これを二十八年度にかかえ込んでしまつた。そのかかえ込んだ三百億も込めて、二十八年度の赤字は大体三百六十億だろう、こういうふうにおつしやるのかどうか。それから、なお二十九年度の地方財政計画でやつてみなければわからぬけれども、どうやらこうやらこなせるようなかつこうになつておる。つまりこの三百六十億というものは、二十九年度の地方財政計画において大体こなしてしまえる、こういうふうにお考えになつておるという意味かどうか。  なおその点についてでありますが、二十九年度の財政計画もよほど無理がありはしないか、これは詳しいところまではお伺いできませんけれども、既定財政規模に対する是正の問題にしても、地方制度調査会の見たところと、今度予算化された百四十八億とは大分開きがあるようであります。また赤字を起す新しい原因さえあるのじやないかという気がするのであります。いわんや、今までのかかえ込みの分を二十九年度にこなしてしまえるとは、どうも思いかねる。この辺をもう一度御説明願いたいと思います。
  37. 塚田十一郎

    ○塚田国務大臣 三百六十億と申し上げましたのは、二十七年度の三百億を含めて、二十八年度末には三百六十億という考え方であります。それから二十九年度の財政計画の策定で、過去の三百六十億がこなせるという考え方ではございませんで、今後に出て来る地方財政のぐあいについては、よほどかわつて来ると思われるからして、そのかわつて来たところを見きわめた上で、ひとつ本格的な再建整備計画というものを立てて行きたいこういう考えであります。それから全体としてまだ足りないのじやないかという感じでありますが、おそらく今までの地方財政の運営の仕方では、あるいは足りないかもしれないと存ずる。私は地方財政の赤字というものは、地方財政全体に対する総資金の点で不足している部分と、その個々の配分の部分が適当でないために、個々の団体に赤字が出て来る部分と両方あると思うのでありますが、しかしどちらにいたしましても、今度は相当その面が是正されておりますからして、これにあわせて、国の今年の緊縮方針というものを頭に置いて財政運営をやつていただけば、赤字は生じないで済むのではなかろうか、また生じないように運営をしてもらいたい、こういうようにお願いをいたしたいと考えておるわけであります。
  38. 古井喜實

    古井委員 塚田大臣のお話も時折かわつてくるのでありまして、五月の特別国会の暫定予算の審議の際には、二十七年度の赤字は一体何ぼくらいかとお尋ねしたところが、まず七、八十億か、多くて百億ということでありました。私は二百億以上ありましようと当時言つた。七月ごろになつて予算を審議するときには、二百億赤字が出るというふうに、だんだんふえて来ました。これをどうなさるか、本予算編成が遅れたのだから、二十八年度の本予算で解決なさつたらどうか、なぜなさらないかということを私はくどく申し上げた。ところがこれに対して、二十九年度には解決するのだ、こういうふうに当時おつしやつたのであります。ところが二十九年度は解決されておらぬ、これは事実であります。何にも対策がない、また推移を見て、模様を見てとおつしやつておる、これは当てになりません。つまり問題を延ばしたというだけになる。私は、これは特別国会の際におつしやつたことをきようはもう捨ててしまわれたと思う。とうとうまた問題を延ばしてしまわれた、こういうふうに感ずるのであります。何かこれについて御弁明があればお伺いいたしまして、他に移りたいと思いますが……。
  39. 塚田十一郎

    ○塚田国務大臣 見通し、それからそれに対する対策考え方は、よくかわるとおつしやれば、まさにその通りであります。日一日とかわつてしまう。ただかわつてつておりますのは、そのときどきの事情、国家財政の事情、全般の事情、そういうものと関連して考え方もかえて行かなければならぬという事態が起きてかわつておるものと思います。
  40. 古井喜實

    古井委員 それでは他の問題に移りまして、文部大臣にお伺いしたいと存じますが、先般原委員の質問に対して、市町村の教育委員会は存置しておいて育成強化して行きたい、こういうお考えのように伺つたのであります。この市町村の教育委員会は、一体育成強化できるものとお考えになつておるかどうか。私は、もともと市町村の教育委員会が教職員の人事をやるということは、できるものではない、市町村というわくの中で教員の人事ができるはずはないと思います。それからまた教科内容を市町村ごとにきめるなんといつても、そう市町村ごとに行きやしません。どうもこれは何のためにあるのかよくわかりませんし、むしろ育てても育たぬものではないかと思うのであります。現に一年以上たちましたけれども、教育長もできないような教育委員会もたくさんあるようであります。あるいは教職員の政治活動を監視させるというようなことでもお考えになつておるのか、これは私は邪道だと思います。のみならず、とても監視できるようなものではないと思います。多数の教育委員会は、むしろ教職員の手先になるくらいだと思つております。そうすれば、これを置いておくというふうにお考えになる理由が私にはわからぬのであります。また育てて行けるとお考えになつておるところにも、どうも得心が行かぬように思うのであります。この辺について、ほんとうにそうお考えになつておるのか、御見解を伺いたいと思います。
  41. 大達茂雄

    ○大達国務大臣 これは過日原委員の質問に対してもお答えしたのでありますが、私はこれを育成強化すべきものである。こういうふうに考えております。その点は一貫しておるのであります。これは先日も申したのでありますが、なるほど市町村教育委員というものが、いろいろな点でまだ仕事になれてないということが一つあるのであります。それからまた、いろいろな点で無理があるということも、これは私は否定をいたしません。ことに予算がきわめて貧弱であつて、いわゆる専任の教育長を置くだけの経費すらも国から見てもらえぬ、こういうこともあるのであります。また従来市町村長が教育の関係の仕事をしておつた、それが教育委員というものの手に移された、その関係からいたします当面の摩擦というものも、現実にあると思うのであります。今御指摘になりました、たとえば人事はとうていできないというようなことでありますが、これはなるほど小さい町村のような場合を考えると、従来教職員は、やはりそれぞれの市町村相互の間に人事の交流が行われておつたのでありますから、その点から多少無理があるというか、その町村の教育委員だけの考えで人事をやつて行くことは、相当困難な面があるということも想像されるのであります。しかしさればといつて古井君の言われるように、とうていこれは育成強化するにたえない、こういうふうには私は考えておらぬのでありますして、これを育成強化するための――育成強化ということはどうか知りませんが、つまりこれを制度本来の趣旨に沿うように育てて行くために、とるべき道はまだたくさん残されておると思う。予算の面においての裏づけも足りません。また教育委員が何しろ仕事になれておら、ぬこれまず第一にあげられる点であります。とにかく発足してわずかに一年ちよつとでありまして、これを今すぐいけないということに論断を下すことには、私は不賛成であります。申し上げるまでもない、この前申し上げた通りに、地方教育委員といい、県の教育委員といい、これは戦後の新教育制度の根幹になつておる、つまりその理念の基礎をなしておるものでありまして、もし教育委員制度というものに検討すべきものがあるならば、これを全部まとめて、はたしてわが国情に合つているかどうか、将来制度の本旨に従つたようにこれが大きく発達して行くものかどうかということを検討すべきであつて、市町村委員会だけとりあえずやめてしまう、こういうことは私としては考えられない。それは新教育制度の理念に亀裂を来すことであると思うのであります。御承知の通り県の教育委員会と市町村の教育委員会というものは、上下の段階をなしておるものではありません。県の教育委員会は県立学校の運営に当るものであります。市町村教育委員会は市町村立学校の運営に当るものであります。でありますから、これを片方だけ、県立学校の分だけは教育委員会を残して、市町村立学校の方はやめてしまうということは、これは制度自身が何のことかわからぬようになる、こう思うのであります。もう少しかすに時日をもつてしてこの制度を運営すべきものである、かように確信いたしております。
  42. 古井喜實

    古井委員 簡単にやります。文部大臣の御答弁は伺いましたが、今県の教育委員会と市町村の教育委員会との分担がそうなつておるからといつて、これをかえられぬものでもない。両方の仕事を県の教育委員会に持つてつたつてかまわぬ。これはりくつにならぬと私は思います。この市町村教育委員会のために、五十億ないし六十億の地方費が使われておると思つております。これだけの金を使うようならばむしろ危険校舎の改築の方にまわされるとか、あるいは僻地教育の経費にでもおまわしになるとかする方がよつぽど効果的であると思う。非常に存続を希望しておるとお考えになられるかもしれませんけれども、私の手元には、現にある村の教育委員会から廃止の要望書が来ておる。教育委員会が出して来ておるのであります。これはよほど問題だと思う。これは意見の相違の問題かもしれませんから、後日のことにいたしたいと思います。  最後に、簡単に厚生大臣にお伺いいたしたいと思います。今度の予算でだれしも言つておることは、社会保障的な経費が非常に乏しい、手薄であるということであります。それについて思いますことは、ほんとうにもうきよう一日過せないようになつた、いわば転落した、落伍した人に対する施策は相当重くお考えになつておるようであります。しかしそのきわにある、落ちそうな階層の人に対する方面は、どうも閑却されているうらみがあるのであります。これは財政全体の問題もありましようけれども、ことに地方の農村をまわつて、どこでも足らぬと思われるのが保育所であります。資力もなく、手のない勤労家庭が、保育所が足らないで弱つているというのが地方の実情であります。それで働くこともできない状況にあるのであります。またこの問題と同時に、地方に行つてどこでもまた問題になつて来るのが、水に恵まれていない農村のあの簡易水道の問題であります。どれほど働いて帰つたあとの婦人があのためにえらい苦労をしておるか、またどれほど不衛生な生活に家庭がたたき込まれておるか、これはほとんど各地の共通の問題だと思います。また病気になつてからあとというより、なる前に防ぐためのあの保健所なども、なる前ならばわずかな経費でもつて効果があがるものが、病気をしてしまわなければ世話をしてやらないと言わんばかりで、そういう仕事をしている方面には考慮が深く払われておらぬような気が今度の予算でもするのであります。この点についてどうお考えになつておるのか、この機会にお伺いをいたしたいと思います。
  43. 倉石忠雄

    倉石委員長 草葉厚生大臣。  この際委員長から申し上げますが、時間の制限がありますので、質疑応答ともなるべく簡明直截に願います。
  44. 草葉隆圓

    ○草葉国務大臣 お話のようにいわゆる防貧方面と申しますか、ボーダー・ライン以上の人たちに対しまする政策、これは根本だと思うのであります。そしてまたその数は相当多いと存じます。ことに保育所の問題につきましては、今後ぜひ相当主力を注いで参りたい。明年度の予算では百箇所の増設をいたしております。もちろんこれでは足らないと存じますが、とりあえず明年度もこれには相当力を注ぎたいと存じております。  それから簡易水道の問題もお話の通りであります。本年度と同じ予算でございますが、これは農村その他でたいへん喜ばれておりまするから、いろいろな観点から、最も急を要するところに主力を注いで参りたいと存じます。  保健所の問題におきましても本年度は新設十箇所、それからC級からA級に上しますのを十箇所といたしておりますが、なお百箇所ほど不足をいたしております。これも本年度は――本年度と申しますのは二十九年度でございますが、不十分「とは存じますけれども、目標に向つて今後十分」努力いたしたいと思います。
  45. 古井喜實

    古井委員 一言犬養大臣伺いたい。犬養大臣おいでにならぬときでありましたので総理にお伺いしたのでありますが、選挙粛正の問題でございます。これについては、この選挙法制の思い切つた改正ということをほんとうにやらなければならぬと私は思つておりますけれども、しかしそれに至らぬにしても、啓蒙運動と同時に選挙取締りもこれを相当に強力に、また持続して行かなければならぬと思う。今日、町村合併などがしきりに行われ、各地に選挙が行われております。この実情は先ほども申し上げましたけれども、ずいぶんひどい状況だと思います。今も毎日行われておるのでありますから、これに対してはつきりした態度を示し、かつ行つて行かれる必要があると思います。ただ取締りは、あらかじめ啓蒙し、警告をしないで取締りをやつてはひどいことになります。でありますからあらかじめ態度をはつきりし、かつまた十分法を周知させる努力をし、そうして事実取締りもしつかりやつて行く、こういうことになさる必要があると私は思つております。この点について、もう毎日選挙が各地にあるのでありますからどうお考えになつておるか、大臣の御所見伺いたいと思います。
  46. 犬養健

    犬養国務大臣 お答え申し上げます。会議がありまして座におりませんで、まことに失礼いたしました。総理大臣に対する御質疑の趣旨はただいま係の方から伺いまして、根本の原則、根本の考え方においては、まつたく御同感でございます。ただいま現実の問題として各地に行われている選挙で、あらかじめ警告もしくは根本方針を示して、そして啓蒙的であると同時に取締りをやつて行く、これも全然御同感でありまして、現にそういう方針をとつております。御参考までに申し上げますと、奄美大島の選挙でありますが、あれは米軍の占領中に金は使いほうだいというような選挙観念を植えつけておりましたので、いきなり無警告的にわが国の選挙法規則を当てはめますと、今御心配のような問題が起りますので、あらかじめ警告を幾たびか発しまして、よくよく目立つて来るものに対してまず検挙するというような方針をとつております。そのやり方を全国の今行われておる御指摘の選挙にも、啓蒙的であつて、かつまた取締り的であるというふうにやつて行きたいと思います。一言つけ加えさしていただきますならば、最近のいろいろな問題から考えまして、結局金のかかる選挙というものにお互いがえりを正して、根本的に考え直す時期が来たのじやないか、こう真剣に思つておる次第であります。
  47. 足鹿覺

    足鹿委員 私は先刻首相お尋ねを申し上げたい点があつたのでありますが、この際首相にかわつて、法務大臣に御答弁を願いたいのであります。  最近のわが国の世相を見ておりますと、かつての満州事変勃発当時の状態に酷似しておるようであります。この傾向はさらに大きくなつて行くように私は見受けるのであります。もちろんその当時の情勢なり事情は、必ずしも同一ではありませんが、大体一つの流れとして、基本的な動向というものはそう大きなかわりはないと思います、特に最近人間天皇を神格化せんとする傾向が漸次強まつて来、これを中心としたところの民族意識の高揚が説かれ、誤れる愛国心の扇動を事といたしまして、国民大衆の窮乏をよそに、限りない政治腐敗、これらのものと相関連してきわめて過激な、いわゆる右翼団体の台頭とでも申しますか、そういう傾向が顕著にあるようであります。漁業問題が朝鮮海域において起きまするや、まず実力行使を伴つた出漁説を唱えた。この背景になつたのもかかる団体の諸君が非常に多く見受けられたように考えるのであります。しかもこれは政府の一連の施策に通ずるがごとき復古調を伴いまして、反動的な思想や行動がわがもの顔に横行いたしまして、これはファッショ的な傾向へすら発展しつつあるのではないか、かように考えられるのであります。最近においては右翼的な全国的な団体が結集をされんとしておりますし、また保全経済会問題等に関連をして、右翼の徒党と目されるべき人々の名前も出て来ておるのでありますが、こういつた傾向に対しまして、最近はたして真偽のほどは私はよく存じませんが、新聞の伝えるところによると、首相の身辺の護衛も強化されたように伝えられておりますし、また例のノン・ストップ道路の急冷等も行われたと聞いておりますが、これらの点は一面の消息を物語つておるものであろうと存ずるのであります。最近農村においてソ連のミチューリン農法が、ヤロビ農法とも一面いわれまして、相当民間技術として普及をしております。もちろん共産党の人もその指導に当つておりますが、共産党とは何の関係もない人々もずいぶんこの農法については熱心に研究もし、また実践をしておる人々もあるのでありますが、これらの純然たる技術を普及し、研究をし、実行をしようというような会合に出た人間を警察官が調べる、あるいはどういう話があつたか、一答はどうであつたか、しつこくつきまとつて行く事例を私は幾多知つております。いわゆる左翼系あるいは革新糸の運動に対しましては、特高警察の復活をも意味するような実に微細な動きが末端まで伸びておるにもかかわらず、二面ただいま述べました右翼団体等に対する情報なり、あるいはその実情については、われわれは当局がどういう方針を持つて対処しておられるのか、一向この点については明確を欠いておるのでありまして、これらの問題を対比してお尋ねしたいのは、右翼団体あるいはファッショ的な、暴力的な行為をも伴うような思想なり行動傾向を待つ団体等に対しては、どのような方針をもつて対処して行かれようとしておるのか、またいわゆる技術普及に関するかつての特高警察の復活を見るがごとき行為が地方の警察官によつてなされておりますのは、当局はそういう問題について査察を指示せられ、あるいはそれらのものについての特別なる調査をも行うような方針で臨んでおられるのでありますかどうか。これはいだ単に一例でありますが、この二つの問題について法相の御所見を承りたいのであります。
  48. 犬養健

    犬養国務大臣 お答えを申し上げます。いわゆるファシズムの台頭についての御質問でございましたが、もちろん力をもつて政治思想を統一するというような民主主義に反する、ことに民主主義の持つ寛容さというものを無視する極左極右の傾向に対しましては、当局は断固として取締りをする決心でございます。私自身のことを申してはなはだ恐縮でございますが、私もファシズムの被害者の家族であります。この問題は重大なる関心を持つて取締りを十分いたしておる次第であります。ただいまいろいろ事をわけてのお話でございますが、委員長においておさしつかえない限り、具体的に調べたことを申し上げたいと思います。簡潔に申し上げます。戦前における右翼方面の議会否認という問題でありますが、戦後は少しその点が異なりまして、議会の運営その他に対しては相当の不満を持つておりますが、議会主義を否認するという傾向は戦前と大分かわつておりまして、むしろ戦前あるいは戦争中におけるテロをもつて政治革命をするということの誤りを反省しておるような傾向が見られております。一例を申し上げますならば、昨年の四月の参議院の総選挙に五・一五事件関係した三上卓氏が候補者に立ちまして、約九万票を獲得いたしましてから、にわかに右翼方面が活気づいておるという点から見ましても、議会主義そのものは認めて行くという傾向が戦前に比べてややあるのではないかと思つております。今申し上げましたように、テロによる政治革命に対する反省はございますが、しかしテロの偶発的な発生ということは別問題でございまして、その点は当局も注意しているわけでございます。ただいま御指摘の総理大臣に対する護衛をふやしたのは、私の政治責任において、私の見通しを持つてつたことでありますが、これは吉田総理そのものにどうというのではないのでありまして、先日も参議院で申し上げたと思いますが、過去の実例に照しまして、一つ内閣が長く続き、ことに総理大臣の性格が強いという場合には、右翼方面のあれが起りやすいのであります。これは統計上もとれるわけでありまして、吉田さん個人々どうというのではなく、私の政治的見通しの責任において護衛を若干ふやしたのであります。総理大臣御当人はあまり知らずにおられたような次第であります。  それから今御指摘がありましたか、右翼方面の統一的傾向が確かに見られます。それは昨年の六月でしたか、水戸の弘道館において救国懇談会というものが発足しまして、これからだんだん動いて参りました。これも戦前と違います。戦前は大体右翼の人はみんな一城のあるじでありまして、横の融合というものはあまり見られなかつたのでありますが、このたびはそういう統一的傾向があります。その原因は、要するに戦争直後の極左思想に対して、右翼の人から見ると国民が無批判に過ぎたというようなことから起つておるようであります。今申し上げました統一連動は、昨年の九月大阪において救国運動会全国協議連合会というものがありまして、関東から九州に至るまで五地方ブロックにわけて、それぞれ代表を出すというようなことで、近くまた全国協議会が結成されるような機運があるように見受けられる次節であります。  それから最近著しいのは、右翼と左翼の力関係の抗争ということが目立ちまして、一例を申し上げますと、昨年の募れに京都で大山郁夫氏の歓迎会がありましたときに、左翼、右翼の血なまぐさい衝突がありました。最近そういう傾向がちよいく見られるように思われます。思想的に分析してみますと、これも参議院で申し上げたことでありますが、旧右翼のうち、いわゆる先輩、年かさの右翼の人は、何と言いますか、国家を経論するというような傾向がありまして、経済でも、思想でも、政治でも、各般にわたつて綱領を掲げておるようでありますが、戦後の若い右翼の人は反共一点ばりというような傾向が著しいように思います。それから目立ちますのは、国の独立ということに自尊心を持とう、従つて向ソ一辺倒も、向米一辺倒も排斥する、こういうような考えでありまして、これに関連して日本人の真の憲法をつくろうというような強い主張があるようでありますが、憲法のどこをどうしようという具体案は、今のところあまり著しく現われておりません。情緒的と言いますか、よく言えば義憤的な考え方であります。それから資本主義に対してもやはり非常な反感を持つておりますが、これもしいて申しますならば、学理的と言うよりは、今申し上げたように、ほめて言えば義憤的と言いますか、しかし右翼の一部においては、御指摘のように資本主義の一番腐敗した半面におけるいろいろな類似金融機関との関係が見られるのでありまして、一概に言えないようなわけでございます。  それからただいま特に具体的な問題として御指摘になりました、警察官が思想調査をやつておるではないかということでありますが、これは全然私の方針でございません。昨年でありましたか、青森である雑誌の購読者を調べたことがあるではないかという質問を参議院において受けました。即日そういうことのないように、またその有無を調査したことがございます。従つて個々の思想調査ということは、警察官の任務にないという方針であるということを御承知願いたいと思います。こういう問題は第一線ではあるいはそういう疑いを受けることが万一にもあるかもしれません。そういう場合は具体的に御指摘くださいますならば、即日連絡して、そういうことのないようにいたしたいと思います。
  49. 足鹿覺

    足鹿委員 たいへん詳細にわたつて御答弁をいただきましたけれども、まだこの問題は掘り下げてお尋ねしたい点がありますが、急ぎますので後の機会に譲りたいと思います。  私は大蔵大臣及び経審長官にお伺いしたい。先ほど本年度予算編成方針等については吉田首相に伺つたのでありますが、この際私は農林関係中心として大蔵省のとられた予算編成方針について伺いたい。公共事業費や食糧増産対策費につきましては全般的に新規事業は一切認めない。すでに着手した工事も経済効果を再検討して一部休止する。そうして百四十億削減したと言つておりますが、この大わくの削減ももちろん重大問題でありますが、問題はさらに小規模の土地改良に対する補助率、たとえば客土三〇%を一四%に切下げる、あるいは農道三〇%を二〇%に切下げるとか、こういつた小規模の土地改良事業というものに対して大きな斧鉞を加えられる、その考え方自体が私は大きな問題であろうと思うのであります。わが国の一番遅れた産業にとつては、まだまだ大蔵省がお考えになつておるような考え方では、なかなか問題は解決しないと思うのでありますが、この方針を堅持して行かれた結果、いろいろなところに大きな問題が起きて来ておるのであります。この考え方の根本になつておりますものは、農業は私企業であるからというようなことが一つと、いま一つ戦前の農家の生活水準に比して、最近の農家の生活水準が向上したと見る、従つて個々の農家に対して補助金を交付する必要はないのであるというような考え方が、その基底になつておるのではないかと思うのでありますが、日本農業農民自体が自家労力を賃金にかえるという一種の農業労働者の性格を多分に持つておる。近代産業の場合には、他の企業の場合とは著しくその性格を異にしておると私は考えるのであります。そういう日本農業の特殊性というものをまつたく没却して、全然これを他の産業における企業と同等に見て行くという考え方に、私は大蔵省の非常に無理な予算の査定が行われ、また農林関係についても無慈悲きわまる予算編成方針がとられたのではないか、こういうふうに見るのであります。農業を私企業と見て行く場合であるならば、当然利潤を考えなければならぬ。土地を資本として見て行く場合には、当然労賃と利潤がこれに見込まれなければならないのであります。日本の統計が示しておりますがごとく、昭和二十七年におきますところの賃金統計を見ますと、大体各産業を総合した点において七百十一円、金融業においては八百五十二円、製造業において六百五十六円、鉱業において七百七十四円、卸小売業において七百三十八円、通信及び公共事業において七百六十六円、そして農業においては男二百三十四円、女百七十八円という資料を政府は出しておいでになる。この一つの賃金統計が示しておるところを見ましても、このような低い、問題にならない賃金換算によつて生計を営んでおる場合におきまして、はたして利潤があり得るとお考えになるのでありますか。これはまつたく企業としては成り立つておらないということは明らかであります。こういう考え方につきまして、私は大蔵大臣伺いたい。  なお経済審議庁の長官に伺いたいのでありますが、農業所得と国民所得との対比から見た農業所得の適正基準は、一体何であるか、この点について考え方の基本をひとつ承ておきたいと思います。
  50. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 私ども農業をもつて、決して単純なる私企業とみなしてないことは、もちろんであります。従いまして今お話もありましたが、本年の乏しき予算のうちでも、たとえば土地改良を中心とする食糧増産対策費のごとき、前年よりわずかながら増加いたしております。またこのもとになる治山治水対策費等も、増加いたしておることは御承知の通りであります。たださつきお話になつな二十幾つかの小さい補助金を切つておるではないか、こういうお話でありましたが、これは仰せの通り、そういうこまかに補助金を切つておるのであります。この点は、なかなかいろいろな補助金を出し得ぬということで、やかましいことを言われておつたのも一つの輿論であり、また私どももそういう小さいものは国家の手でやるべきではなくて、ほかのものでやるべきであろう、こういうことを実は考えておるのであります。それと、それだけの金をやはり食糧増産等に効率的に使つてもらう、また効果の早いものに使つてもらう、こういうことが現在の日本に課せられておる一番の急務ではないか、こういうふうに考えましたので、ごく少額のものの補助金、先に行つたらどれだけの効果があるかと非難されるようなもの等につきましては、いわゆる群小の補助金を打切つたことは事実であります。なお私の考え方を率直に申し上げさしていただきますと、日本の特に予算の規模、いわゆる歳出などをふやすことをもつて必要な策であるというふうな考えをせずに、予算規模もある程度伴わなければなりませんけれども、やはり心持としては、それでひとつやつていただく、そうして少い予算のもとでは効果的にこれを使つていただくことに皆さんの御助力が願いたい、こう私は念願しておるものであります。従いまして群小補助金を切りましたが、食糧増産対策治山治水といつたような額は若干ながら前年より場加しておることは御了承の通りであります。
  51. 足鹿覺

    足鹿委員 現在の補助金そのものが、政府方針によつてきわめてわずかなものである。しかしそれは今のあなた方の考え方がそうせしめておるのであつて、現在出ておる少額の補助金と大臣は仰せられますが、その少額の補助金自体は、非常に大きな要素を持つた性格のものがたくさんある。全部とは申し上げませんが、そういう現在の財政上においては小さく取扱われておるが、日本農業の場合においては大きな意味を持つており、また発展せしめなければならぬものがたくさんあるのでありまして、そういう点についてはもう少し深く御検討になることを、私はこの際申し上げておきたい。水かけ論になりますし、時間もありませんから、あまり深くは入りません。  次に私は経済審議庁の長官にお尋ね申し上げたい。二月一日発表になりました国民所得の推計は、五兆九千億、このうら農業所得は一兆九千億円でありまして、わずか一七%にすぎないのであります。これに対して総人口と農家人口との対比は、昭和二十八年において、総人口八千六百三十万人、うち農家人口三千七百九十万人、比率は総人口中の四三・九%実に四四%の人口を農村が包容しておるのであります。従つて今度産業の合理化が行われ、あるいは行政整理が進行するに従いまして、相当失業者が出るだろうということは、労働大臣も先般仰せられておりました。また資料もいただいておりますが、またこれらの者は、雇用の弾力性のある、そして幾らでも下げれば生活水準を下げ得る、自給面を持つておる農業が、かかえ込んで来るような事態が来ると私は思うのであります。そういつた場合におきまして、人口においては四割四分を包容し、国民所得の面においてはたつた一割七分しか持つておらない、この現在の日本農業の産業上において占める地位を、一体どういうふうに今後改善し、指導して行かれるのか、その対策は一体どこに根源を置いて行かれるのか。経済審議庁はそういつた日本産業構造の面において、日本農業をどういうふうな方向へ持つて行こうとしておるのか。この際基本的に長官の御所見を同つておきたい。
  52. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 お答えいたします。まず第一に最初のお尋ねのありました点でございますが、よく御案内のように、国民所得の推計をいたします場合に、農業、水産業者につきまして、いわる勤労所得に属するものと、それから個人等の企業の所得として見られるものと、二つにわけまして、ただいま御指摘の通りでございますが、二十九年度これら両方を総合いたしまして、水産、林業等も合せますれば、一兆三千四百四十億円になりまして、これは二十八年度の推計の一兆二千七百四十億円よりは、相当程度の増加というふうに見ております。こまかいその内訳を申し上げることは、時間の関係上省略いたしますが、大体農業生産におきましては、特に二十九年度においては、前年度に比べまして、大体一五%程度の生産の増になる。それに対しまして価格の一部低落ということを予想いたしまして、分析いたしました結果、こういうふうな推計にしておる次第であります。  それから人口の問題につきましては、まことにごもつともな御意見でありまして、政府におきましても、鋭意現在対策を考究いたしております。ただ今回の政策の調整に関連いたしまして、顕在的に現われる失業の数というものは、そう多数ではないと思うのでありますが、それにいたしましても、これをひとり農村で吸収するという安易な考え方だけをとりませんで、基幹産業等におきましては御承知の通り国内資源の開発ということについては、乏しい中でも重点的に資金の導入ということも考えておるわけでございますから、それらの面、あるいはいわゆるサービス業といつたような総合的な各般の産業部門において、これを吸収するように格段の努力をいたすつもりでおります。
  53. 足鹿覺

    足鹿委員 私はそういう点ももちろん必要だと思いますが、いわゆる日本の産業構造の面において、日本農業をどういう地位に置こうというのか。要するに推計をやられる場合に、一五%の所得増を見込むとかそういうようなことを聞いておるのではありません。いわゆる経済審議庁の基本的な任務は、日本の産業構造の今後の変化の方向、あるいはどういうふうに発展せしめるかということに、大きな任務の一つ一つがあろうと思うのであつて、そういつた観点から、私は日本の、後進産業であり、生産のきわめて遅々として停滞性を示し、一ぺん災害が来れば、元も子もなくしてしまう、こういうきわめて不利な条件にあつて、他産業との比較においては比較にならないような農業が、かくのごとき大きな人口を包容しておる。これをどういう方向に向つて今後切り開いて行くのか、そういう一つの基本的な構想があつて一つ一つ施策がそれになつて行かなければ、日本農村問題は基本的に解決がつかないと思うから、その点を伺つたのでありますが、その点については御答弁がなかつたようでありますが、御構想を承りたい。
  54. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 この点は一例を申しますると、農村の工業化というような点その中に考えられる問題だと思うのであります。これはたとえば輸出の産業にいたしましても、農村の工業化と申しますか、中小の工業、あるいは機械力の利用というような面におきまして相当の効果を上げられることが考えられると思うのでありますが、これらの点につきましては、従来もいろいろと考えておられましたが、なかなか実効が上つておりません。農林省その他と鋭意連絡をいたしまして、一つの具体的な構想を打ち出したいと思つております。
  55. 足鹿覺

    足鹿委員 それでは御答弁として満足することはできませんが、残念ながら時間がありませんので、もう少しこれに関連した問題で伺いたいのであります。政府はさきに国土総合開発法を制定いたしまして、全国にわたつて十四の特定地域を指定し、今日に至つておるのでありますが、この国土総合開発に基く地方が払つた期待というものは、きわめて大きい。厖大な調査を行い、何年も何年もこれに対して専念をし、運動をして、ようやくこの法律が制定されましたけれども、一向具体的な予算の計上も十分でなければ、また来年度におきましては調査費の問題にすら、従来の二分の一の補助金を四分の一に切下げようとなさつた事例等もあるのでありまして、看板だけは大きく国土総合開発といつて、全国に対して適格地を十五、六も選定して、地方民も大きな期待を抱き、国家としても大きな施策を、いかにもあるかのごとき印象を国民に与えておきながら、実際においてはほとんどその実行が緒にもついておらないというのは、これは一体何事であろうかと私は思うのでありますが、今後における見通し、また年度別の一つ財政支出の計画、そういつた点について所管大臣からこの際承つておきたいと思うのであります。
  56. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 私の方だけが所管というわけでもございませんが、とりあえずお答えいたしますると、総合開発計画の中で、特定地域計画につきましては、御承知のように、すでに閣議決定によりまして、北上、阿仁田沢、最上、この三地域につきましてはすでに計画が決定し、公共事業出費、食糧増産費等その他を加えまして、昭和二十九年度のただいま御審議を願つておりまする予算の上で、総計約三十六億円がこの関係として計上されておるわけでございます。それからただいま御指摘のその他の関係都府県から計画書の提出がありましたのは十三地域でございまして、この地域につきましては本年度内に審議を終りまして、閣議決定に持つて参りたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  57. 足鹿覺

    足鹿委員 大蔵大臣に承りたい。大蔵大臣は事実上の農林大臣だと私は思いますので、そのつもりで御答弁願いたいのであります。農林行政の系統をずたずたに切られるような財政的な計画をも御立案になる大蔵当局でありますから、私は日本農業の基本的な問題について御存じないはずはなかろうと思います。農林大臣にはまた別の機会お尋ねいたします。わが国の農家は、農業生産のみでは農業経営の維持はとうていできておりません。生活をささえるために、最近の傾向は、特に朝鮮動乱後においては、農業外収入に依存をし、兼業農家、すなわち第一種兼業、第二種兼業の農家が漸次増加して行く傾向をたどつておることは、政府の統計資料において明らかであります。しかもこれは一画において、農村の階層分化の激化に拍車をかけておると言つても過言ではないと思う。政府の農家経済調査資料によれば、専業農家に農家戸数の六〇%であるが、これは農用地一町歩以上の階層であつて、農用地五反歩未満の階層では、専業農家の割合はわずか二〇%ないし三〇%にすぎません。兼業農家の割合は、逆に四〇%から六〇%に及んでおるのであります。この傾向は地域的に若干の差異はありますが、いわゆる単作地帯である東北、北陸方面に激化し、東海と漸次西下するに従つて鈍化しておるのでありますが、傾向としては間違いはないのであります。この統計が明瞭に示しますがごとく、現金収入の大部分は農業外収入に依存しておるのであります。地域を越えて、しかもこれが中堅農家と目される五反ないし一町歩の農家に一番多く見出すことのできることは、日本農業の問題にとつてきわめて重大な問題であろうと思います。大蔵省は常に、戦前に比して農家の生活水準が一〇%ないし一二%程度向上したという。農林省は米価を決定するにあたつては、農家所得の増加を唱えておりますけれども、事実は農業の純所得の増加ではなくして、今私が指摘しましたように、農業外収入による現金収入の所得増を、農家全体として農林省は米価決定の要素として見、また大蔵省自体は、生活水準の向上については、この全体を見て考えておられるのである。農業の純所得の向上度につきましては、きわめて遅々たるものであることを知らなければならないのであります。こういつた点から考えてみました場合に、先ほども総理に私はお尋ねを申し上げたのでありますが、いわゆる農村政策、あるいは農業政策農民政策と、呼び方はいろいろあるでありましようが、しかし実際において現在の食糧増産政策のとり上げ方についても、食糧という物質にまず重点に置き、そして海外の対外収支を改善して行くために、食糧や繊維に払うところのドルを、あるいはホンドを節約するために、食糧を増産して行くという考え方であるが、問題はそういう物質に対するところの考え方ではなくして、農民政策でなけらねばならない。農民の純所得が向上し、農業によつて生活を維持して行くような総合的な施策がとられなければならないと考えるものであります。そういつた点について、日本の農林行政を常に財政的な面からほとんど決定的に左右しておいでになる大蔵大臣は、基本的にいかような御所見を持つておるのでありますか、この点重要でありますので、とくとお尋ねをいたしたいのであります。
  58. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 農業政策全般については、もちろん農林大臣の管掌するところでありますが、財政面からのお尋ねでございまするから、私からお答えをいたすのであります。  私ども今日の日本国際収支も非常に大切に扱つておることは申し上げるまでもございません。従いまして日本国内で食糧の増産が行われて、国際収支の改善に役立つということももちろん私どもとしては大きく考えております。しかし仰せになりましたように、足鹿さんは農村の熱心な研究家であつて、仰せになつた点、私どもまことにごもつともと思うのでありますが、私どもとしては、日本における農村のあり方としては、これは単純な国際貸借の改善のため食糧増産をすればいいというようには考えておりません。のみならず、思想的にも、これは日本の国の重点でなければならないので、さような考えは持つておりません。しかしながら、どうも仰せになるところを伺つておると、予算さへふやせば、いかにも農業政策をやつておるのだというような感じが持てる。そうだと私と少し考えが違うのであります。(足鹿委員「そうじやない」と呼ぶ)財政当局だけについてのお尋ねですから……。そういうふうに私は考えておりません。やはり日本の固有の農村のあり方を考えて行くと同時に、しかし財政のことも――これは今の日本財政の乏しい歳出の配分の上から見れば、相当多く出ておることは御承知の通りであります。これに基いて、やはり農民の努力と相まつて農村の向上をはかつてもらうということが必要なんでありまして、私どもは今そうじやないというような仰せでありましたが、大蔵省に聞かれるものですから、自然金の面になるので、金の面からのみ日本農村を進歩せしむることは、それのみにたよるということはいかぬ。もちろん金の面におきましても必要なもの、効率的なものを能率的にこれを使う。この予算についてできるだけのことをするのは当然大蔵当局として配意すべきことであると思いますが、やはり全体としては、あくまで国の大きな観点からつり合いのとれた予算編成するということが、私に課せられた任務であると考えております。
  59. 倉石忠雄

    倉石委員長 足鹿君、お持合わせの時間が大分なくなつて参りました。
  60. 足鹿覺

    足鹿委員 まだいろいろお尋ねしたいことがありますが、大事な点だけを簡潔にお尋ねしたいと思う。  政府は物価を五%ないし一〇%来年度の年度末を目標に引下げると言つておりますが、この関連において、農産物価格、なかんずく食糧管理制度と米価について、私はこの際お尋ねをいたしたい。政府は食管特別会計の編成において、食糧管理制度の根本的改革を行うことを明らかにし、農林省に食糧対策議会を設け、農民とは縁の遠い人々をかつてに指名して、予算わずかに三十万円をもつて六月ごろまでに結論を出すと言つておりますが、一応来年度の予算においては、現行管理制度を踏襲し、生産者価格は石当り八千七百九十五円、消費者米価十キロについて七百六十五円を大体予算米価として計上しておるようでありますが、その生産者価格算定の基礎は何でありますか、この際ただちに御答弁ができなければ、詳細なる算出根拠を資料をもつて御提示願いたい。
  61. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 こまかい数字は私ちよつと記憶しておりませんが、早場米奨励金を除いたほかのものを一本化した金額であると私は承知しております。従いまして、この価格につきましては、それで予算編成いたしたのでありますが、今後の米価がどうあるべきかというような事柄については、これは今の審議会ですか、それのこともございましようし、またあれは法律にきめてあつて、米価審議会というものの答申をまつこと等も必要なんでありまして、今日は米の価格農産物価格をどう持つて行くかということについては、これは私どもとしてはお答えする立場でないと思います。
  62. 足鹿覺

    足鹿委員 それは計算の根拠が明らかでないから、私ははつきり申し上げかねますが、大体私の計算によりますと、生産者基本価格を七千七百円とし、完遂奨励金五百三十七円、超過六百三十円、包装百八十五円、等級格差七十八円と、今年度の昭和二十八年産米については見ておるのであります。もちろん凶作加算と早場米奨励金を除外して、以上のものをトータルで行きますと九千百三十円の計算が出て参ります。しかるに政府は八千七百九十五円と予算米価を計上し、差引き三百三十五円の減を招来しておるのでありますが、しかも一面消費者価格においては、ただいま申し上げたように七百六十五円の一月一日引上げた米価をそのまま踏襲しておるのであります。しからば非常に本年度より安く予算米価において見込んでおられるのであるから、消費者価格については、常に大蔵当局はコスト主義をもつて貫いておいでになれば、当然消費者米価を引下げて行かなければならないのではありませんか。去年の米価よりも三百三十五円を基本的な価格において下げて行くならば、当然コストが安くなつたのでありますから、消費者価格をこれに準じて引下げて、予算米価として計上されるのが誠意のある良心的な態度ではありませんか。この間の矛盾を一体どのようにお考えになつておるのでありますか。
  63. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 事務的にお答え申し上げます。米麦の買入れ価格は買入れ時のパリティその他を基礎にいたしまして決定するわけでありますが、今からその要素を予測することは困難でございますので、原則として二十八年度の予算価格は同一の基準によつております。ただ米につきましては、先般も御説明の際に申し上げましたように、一応予算上の問題としまして、供出完遂奨励金並びに超過供出奨励金は、基本価格に統合して一本価格にするという前提で単価を計算しております。従いまして別に加わる奨励金といたしましては、早場米奨励金だけでございまして、残りのものは一本価格として基本米価の中に入れておるわけでございます。その場合に米価決定の基本的な要素として一番問題になりますのは、供出数量をどうするか、その問題によつていくらか違つて来るわけであります。私どもの計算におきましては、一応供出総数量を二千七百万石見当に見まして、そのうち二千三百万石見当を超過供出――義務供出が四百万石ちよつとありますが、そのような割合で計算いたしますと、一本価格にすれば八千七百九十五円くらいの見当になるわけでございまして、そういう事務的な検討の結果に基いて積算いたしておりますことを御了承願いたいと思います。なお当然の話でありますが、減収加算金は来年は見ておりません。
  64. 足鹿覺

    足鹿委員 とにかくその基本的な数字をもつて後日資料として御配付を願いたい。私もよく検討してみたいと思います。そこで今の主計局長のお話は、計算が違います。それは次に凶作加算金の追加払いをするのかしないのか。理由を省略して要点だけを申し上げます。  次に食糧管理制度改変の方向は、基本的にどう考えておるか、自由販売を中心にして考えておるのか。麦の場合のごとく間接統制システムを残して行こうというのか。元来現在の食糧管理制度昭和十六年制定の戦時立法であつて、これが民主的な改革は何人も望んでおるものである。問題はその改革の方向なんです。この戦時的立法は、国家権力によつて農民から米を徴発する一つの権力立法に大体主眼点が置かれておる。私ども農民との契約に基いてそこに民主的に改変をして行くという考え方が基本を貫くとするならば、あえて食糧管理制度そのものの改変に対しては反対するものではありませんが、政府の今考えておるような改変の方針には、私どもは納得が行かない。そういうことをしてはたいへんな結果を招来すると思いますが、基本的な構想はどうされるのでありますか。  次にこの予算書を見ますると、来年度大麦百三万三千トン、小麦百九十六万三千トンを輸入する計画を立てておりますが、この中にはMSA小麦を三十万トン入れるということを、先般のこの予算委員会の席上においてどなたかが仰せられましたが、この中へMSA小麦の三十万トンは含まれておるかどうか。以上三点をお尋ねしたい。
  65. 保利茂

    ○保利国務大臣 減収加算の問題につきましては、ただいま取扱つておりますのは、一応石当り五百円の概算払いになつております。これは米価審議会でもだんだん御審議をいただいておりますように、生産をいたさなければならないわけであります。この精算方式につきましても、審議会足鹿委員等きわめて御熱心に御審議を願つて、いろいろの案が出ておるわけであります。一案をもつてただいま大蔵省と協議をいたしております。追加払いを多少いたさなければならない案をもつて、ただいま協議をいたしております。  それから食糧管理制度の改変をどうするか、すでに目標を置いて食糧対策議会も臨んでおるかのごとき――これは誤解かもしれませんが、そういうことではございません。しかしながら、とにかく現行食糧管理の制度が、供出の面においても価格の面においても、改善を要するということは、これはまさに国会においても各党一致であり、輿論も一致しているところだと思いますので、何らかの改善の方途を見出したい。もとより政府の責任においてなすべきことでございますから、食糧対策議会内閣に置いていただいて広く各方面の意見を聞いて、そして慎重に対処いたしたい、こういうにふうに考えております。  MSAの問題は、一応来年の麦の需給推算から、お話のように百三万トン、小麦百九十六万トンの輸入を計画いたしておりますが、その中でMSAといいますか、とにかくそれに関する協定が成立しまして、三十万トンか六十万トンか、とにかく入ることになりますれば、それはその中で取扱うことになるべきものだと私は了解しております。
  66. 足鹿覺

    足鹿委員 たいへん恐縮でありますが、もう二、三お伺いしたい。  MSA小麦の価格は大体いかほどに見積つておいでになりますか。  次に農産物価格と生産資材価格とのシェーレ拡大と農村の独占資本支配に対する政府の基本的な対策伺いたい。特に肥料問題を中心伺いたいのであります。昭和二十五年八月肥料の統制が撤廃されましたが、統制中の財政負担によつてカバーされた価格差補給金の縮減、朝鮮動乱後の高騰で、終戦時を基礎として見ますと、米の値上り率は八十三倍、小麦の値上り率は六十三倍でありますが、硫安は実に二百四十八倍、過燐酸石炭二百四十三倍となつて、実に米価の値上りに三倍ないし四倍に及んでいるのであります。このようなシェーレの拡大は、今日に至るも解消しないにもかかわらず、政府は第十六国会において独禁法の骨抜きを行いまして、いよいよ独占資本の農村支配を強行せんとするやに見受けられるのでありますが、戦後における化学工業肥料は、食糧の危機を契機として国家の手厚い援護を受け、資本の蓄積の増大をはかつて、生産設備の能力は昭和二十七年三月には硫安二百八十九万トンというピークを示しておるごとく、生産能力に発展したのでありますが、一面農家の窮迫は、肥料需要の減退となつて現われ、過剰分のはけ口をアジア市場に求めざるを得なくなつたことは御承知の通りであります。しかしこれに対抗する西欧の化学肥料価格に比しまして、日本の硫安は著しくコストが高いために、いわゆる出血輸出と称してダンピングを強行し、二十五万トンの大量輸出が行われ、今日に至つても継続されておるのでありますが、政府は第十六国会に、肥料の需給安定と硫安工業の合理化に関する輸出国策会社の設立を内容とする二法案を提出いたしましたが、この法案が単に需給の安定にとどまり、輸出による損失の国家への肩がわりを真の目的とするために、与党の内部においてすら批判的な態度が濃化し、今日まで継続審議のままたなざらしになつていることは御存じ通りであります。通産、農林両大臣は御承知のことであろうと思いますが、こういう経過から見まして、最近は漸次肥料の値下り傾向が現われて来ておる。こういつた場合に需給安定法を制定することは、そして標準価格を設定するということは、むしろ高い方へ標準が引上げられる憂いなしとしないのでありますが、こういつた肥料情勢の変化に即応いたしまして、構想を一新し、重要農産物価格との均衡を主軸とした肥料対策に切りかえ、農民をシェーレの拡大による貧困から防衛し、一方これに協力するメーカーに対しては、国際競争に耐え得るために、肥料工業の近代化や合理化促進に当るべきだと思う。日本の肥料工業をどうしてもいいという考えはわれわれは毛頭持つていない。問題は今のように十四のメーカーが、そのコストにおいてトン当り数千円までの大きな開きを持つておるような、非常な高いコストのボロ会社を国家で援助して行くような現行方式であつてはならない。従つて私は真に農民に対しても、シェーレ拡大を防止し、国際競争に耐え得るようなコスト引下げに協力をして行くメーカーに対しては、近代化、合理化等に対して国が相当援助をいたさなければ、輸出産業としての将来が危うい。協力をせずして、ただいたずらに国家の支援にまち、独占価格を維持して資本の蓄積に汲々として行くようなものに対しましては、この際考え方をかえれ行かなければならないのではないか、こういうふうに思うのでありますが、その点いかがでありますか。もしこの構想をおかえにならぬとするならば――政府は自由経済がお好きでありますから、肥料の輸入を許可して、自由なる価格の形成を行つた方がむしろ得策ではないか、こういう議論もまた起きて来るのは当然であろうと思いますが、以上シェーレン拡大については、肥料問題が一番重大な問題でありますので、この際御所見を承つておきたいのであります。
  67. 保利茂

    ○保利国務大臣 お答えいたします。MSAの小麦の価格は、これはむろん協定が成立した上でなければわかりませんけれども、私どもは大体国際小麦協定で入つて来る現在の八十ドルから八十七ドル、これとほぼ同様の価格をもつて扱える、こういうふうに了解しております。  それから農村問題の一つの大きな問題であるシェーレの問題をお取上げでございますが、最近の状態は、朝鮮事変が起きました直後かなり拡大の傾向を現わしておりました。しかし昨年の後半期からこの現象は逆の状態に統計では出ておるわけであります。これはいろいろな大きな問題を含んでおりますから、私どもとしても、絶えず慎重に対策を講じて行くようにいたしたいと考えております。肥料問題につきましては、十六国会以来臨時硫安需給安定法及びお話の合理化法案、この二法案を国会で継続審議を願つておるわけでありますが、肥料事情はもう申し上げるまでもございません。昭和二十七年の春肥の一かます九百六十三円を頂点としまして、これは内外の事情及び他のすべての事情がからまつて来ますけれども、漸次低落をいたして来ていることも――これで決して満足する状態ではないと私は存じますけれども、ただ私どもといたしましては、当時の状況から、昨年少くも前期までに至る状況からいたしまして、あの法案以外にはどうも考え得ないということで御審議を願つておる次第でありまして、私は、今日までこの法案は成立を見ておりませんけれども、大体国会においてきわめて慎重に御審議をいただいておるというこの形においても、相当の効果をあげて行くというように思つて、ぜひこの案の成立をお願いをいたしておるわけでございます。この法の成立によりましてさらに御期待に沿うようにしなければならぬと考えております。
  68. 足鹿覺

    足鹿委員 もう一つで終ります。ただいま農林大臣はMSA小麦は国際小麦協定価格に準ずるであろう、こういう御趣意の御答弁がありました。昨年ロンドンにおいて契約をしました国際小麦協定は、従来に異つて三箇年の長期契約を日本政府は結んだ。私どもはその不当なことを、当時の外務委員会におきまして追究したのでありますが、大体先刻も述べましたように、過剰生産に陥つた国際食糧農産物は、漸時暴落の傾向をたどつておるにもかかわらず、三箇年間の長期契約の国際小麦協定に入つておる。しかもイギリスはいち早くこの四百万トンの大豊作の傾向を見抜いて、国際小麦協定から脱退しておる。日本だけこういう三箇年のばかくさい契約にはんこを押して契約しておる。こういつた一つの基本に立つておる国際小麦協定の価格で、MSA小麦をいただくなどということは、決して何らの恩恵でもなければなんでもありませんむしろアメリカの過剰小麦を、ごみ捨て場として日本に押しつけられるにひとしいではありませんか。こういつた問題については、もう少しよく御検討になつてしかるべきだと思うが、私はこれ以上は申し上げません。  最後に大蔵大臣に、重要な農林金融の基本的な問題について伺いたい。政府昭和二十九年度財政投融資資金計画中、民間への政府資金供給のトータルにおいて、政府資金は前年度四百二十九億、本年度二百億、差引二百二十九億を減じております。逆に資金運用部の繰入れは前年度七百五十一億、本年度千五十五億、差引三百四億をふやしております。その他を合せまして、総計において前年度、大体千七百九十億に比し、本年度は千四百三十億、差引三百六十億の縮減計画を立てております。すなわちこのことは、一兆予算の緊縮予算中、増加する防衛費等の捻出上、政府資金を零細な資金運用部資金に肩がわりをしてまかなわんとする意図が、明確に現われていると思う。一例を農林金融公庫について見ると、昨年度二百六十六億、本年度二百二十五億、差引四十一億の減となつて、昨年度は金庫創設の初年度であつたとは言え、二百六億の政府出資を本年度においては九十五億に減じ、一方資金運用部よりの繰入れを昨年に比し五十五億を増加して、つじつまを合せているが、この方針は住宅金融公庫、中小企業金融金庫等にも貫かれておることは御存じ通りであります。このことはただちに公庫の資金コストに響き、あるいはいろいろな深刻な影響をもたらすであろうと存じますが、大蔵大臣は、中長期の農村金融機関として昨年ようやく発足した唯一の機関であります農林金融公庫を通じ、中長期資金を十二分にまかない得るような基本的な積極的な御構想はないのでありますか、これが一点。  また補助金打切りの金融の肩がわり、災害復旧に伴う資金需要の増、農業生産力増進のための必要な新規事業の需要増等を考えました場合に、公庫への政府資金の増加をもつとはかつて、他産業に比し、労働の生産性が低く、引合わない農業投資として、一般金融機関からは見離されておる農林業の中長期資金に対して、特別の措置として、償還期限の延長、金利の引下げ、貸付範囲の拡大、貸付の簡易化等等を断行して、いわゆる日本における中堅農家を真に金融の面から救つて行かなければならないと思う。これらについて基本的にはどういうふうに考えおいでになりますか。いわゆる資金コストが非常に高くつく。政府資金の場合は、いわゆる何ら利息がつきませんが、資金運用部資金を受けた場合には六分五厘の金利がつく、その資金が供給面において非常に多く引込まれておる。従つてこれが資金コストに響かないはずがない。勢いいろいろな面に影響いたしまして、今述べました金利の引下げや貸付の簡易化や、貸付範囲の拡大化とはおよそ異なつた、逆な方向に向つて行くのではないかということを心配いたすのでありますが、その点について承りたい。これが第二点。  第三点は、最近保守党方面や政府の一部に、農地担保金融制度考えられておるようであります。政府もこれについては検討しつつあると言われておりますが、大蔵大臣方針はどうでありましようか。これに関連して、農地改革の成果維持の基本方針について、大蔵、農林両大臣の御所見をこの際承つておきたい。元来農地改革農民解放指令の中心題目であつて、先年政府は農地関係法律を整理して農地法を制定し、現在に至つておるのでありますが、最近の農村事情の推移は、これだけでは農地改革の成果を維持することは困難であります。いわんや農地担保金融制度が容認せられるがごときことがありますならば、農地改革の成果の維持どころか、崩壊に拍車を加える結果になろうと思うのであります。その理由は、農地改革によつて農民に解放された農地は、農地の公共性に基いて、働く農民への永久耕作権を保証したものと解すべきだろうと思う。これは一つの財産権を農民に分与したのでは私はないと思う。また一面においては、農地改革農村の封建制を打破し、農村民主化のための基本的な任務を与えられたものであると私は考えるのであります。今もし農地担保金融制を認めんとするならば、この大原則がくずれて参ります。農地は農民の財産権であるとの建前を認めることになりますならば、税金の面でも、いろいろな面に響く点も大きくなつて来、さらに最近全国に展開されておりますところの、農地改革によつて取上げられた農地をとりもどそうとし、あるいは農地法によつて生じた犠牲に対して、正当な損害の要求の運動が起きております。また不当に買収された土地の返還、買収代金の追払いというような各種一連の旧地主の擡頭がありますが、これらの運動に拍車をかけて行く結果になりはしないのでありますか。農地改革の成果維持が、強調されなければならない。音を立てて農地改革がくずれ行かんとする――最近の農地の移動あるいは農地価格の高騰、小作料の上昇というように、事実農地改革の成果は農村の窮乏と相まつて、音を立ててくずれんというときに、もしいわゆる質ぐさがないという立場からのみ、農地担保金融制度というものを制定いたしましたときには、今言つた政治的な運動と相からんで、重大な事態を私は惹起すると考えるのでありますが、この点を第三点の質問として大蔵大臣の御所見を承りたいのであります。
  69. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 農業に対する金融に二つあることは御承知の通りであります。農業組合を中心とする一つの金融であつて、これにつきましては各県の県連を通じまして集まつた農林中央金庫えの金を、できるだけ地方に還元して、それに努めておることは御承知の通りであります。もう一つは、今お話になつた農林金融公庫でありまして、この分につきましては、これはまあいわば零細な金を集めました資金運用部の金をそこへ入れる、そのほかは、もし出資するとすれば、一般会計からこれに出資するということになるのでありますが、本年は全体の出資額等を減じております関係等もありまして、ただし資金の需要には応ずるようにということで、資金運用部と両方でまかなつた次第であります。なおこの点につきましては、今後ともでき得るだけその資金の増加をはかつて参りたい、かように考えております。資金コストが若干高くなりますが、これはどうも今の国の一般会計から支出するということもできませんので、また昔のような見返り資金もありませんので、やむを得ぬことと御了承願いたいと存じます。  さらにもう一つ仰せになりました今の農地担保の金融のことでありますが、農地担保の金融は、これは以前には日本には勧業銀行、農工銀行があつて、農地担保の金融をやつて来た古い歴史もあるのでありまますので、いろいろこれについては考えなければならぬことと思つております。御承知のように、農地調整法の関係で、いわば小さい農家がふえて来た、それに対してどういうふうにこれを担保にして行くべきかという面につき、なかなか研究の余地が残されておりますのと、もしこれを財政資金等でやるといたしますならば、これは非常な巨額なものになりますので、一気になかなかそういうことはとりかねるのであります。先ほどの十億の分は運用面で処置されておりますが、これはちよつと容易ならぬ財政負担になる問題でございますから、この点はさらに検討いたしたい、かように考えております。
  70. 足鹿覺

    足鹿委員 まだいろいろとお尋ねしたい問題がたくさんありますが、たいへん時間もおそくなりましたので、厚生大臣に対する質疑、あるいは自治省長官に対する質疑等は別の機会にこれを譲りまして、本日はこれで質問を打切つておきます。
  71. 倉石忠雄

    倉石委員長 足鹿覺君の御発言に関連いたしまして、川崎秀二君より発言を求められております。この際これを許しますが、簡明に願います。川崎君。
  72. 川崎秀二

    ○川崎委員 私はこの間の質問の際に、小麦の問題を聞きたいと思つてつた。それは私が昨年の十月ころからずつと追いかけておつた。私は農村問題の専門家でないので、よく事情がわからない。しかし財政上の問題からこれを追いかけておると、相当大きな問題になつて来ておるのであります。それは、ただいまあなたは、大体国際小麦協定の値段でMSAの小麦が入ると言われますが、これは絶対に国際小麦協定の値段よりも上まわらないのでありますか、それより上になるようなことはありませんね。
  73. 保利茂

    ○保利国務大臣 お答えいたします。私は今度の協定の内容をこまかく承知いたしておりませんから、責任をもつてどういう価格になるということを申し上げるほど承知しておりません。ただ私の責任上、MSAの五百五十条の規定を厳格に見ますと、いわゆる市場の最高価格という価格がありますから、もしそういうことでありますと、今日のアメリカの市場価格は、日本に持つて参りますと九十五ドルから九十六ドルになる。そうすれば相当巨額の補給金を必要とすることになるから、従つてアメリカ側からどういう形にしろ援助物資が来て、それに補給金をつけなければならないということでは、私どもはどうも賛成いたしかねる。そこで大体補給金のいらない価格をどうしても保証してもらわなければ困るということを、私どもは部内において強く主張いたしたのでございます。それをせんじましてこれが表へ出ましたらどういうようになりますか、大体先ほど申し上げましたようなところに行くのではないかというように期待いたしております。
  74. 川崎秀二

    ○川崎委員 これは一々質問しておると大体この問題だけで二十問くらい質問しないといけない。しかしきようは時間がないから、五時半まででやめます。  そこで今までの経過について、農林大臣も知つておられれば、われわれもいろいろな情報を通じて知つておる。それは、つまり池田、愛知両君はアメリカへ行つて、そして五千万ドルのMSAの相互援助協定の内交渉をして来た。そのときの話はどうであつたか知らぬけれども、私の知つておる情報では、余剰農産物をひとつ経済援助の形でくれということを非常に交渉した。すると向うは、それは最高市場価格でとれということで話があつたが、最高市場価格ではとてもぐあいが悪いけれども、もし最高市場価格でとるならば、一千万ドルだけは別に贈与でくれということを交渉して、その一千万ドルを防衛生産にまわすことに成功した。その一千万ドルの方は成功だけれども、片方は、元来ならばたいへんな大問題になるべき性質を帯びておつた。ところが農林省なり経済審議庁、あるいは大蔵省の職員たちは、こんな価格でとれるかと非常な反対をして、去年の十月の二十九日から十二月の五日まで部内で大もめだつた。これは前の国会に実はわれわれは質問をしようと思つてつたが、時期がなくて質問ができずに年を越した。年を越して暖めている間に、どうやら十二月五日ごろには、あなたが今言われておるような農林省方面の主張もあつて、CCC価格で来るというふうにかわりつつあるそうであります。ところが問題は、先々週の金曜日に、あなたの方の輸入課長がディールという財務官、それからもう一人何とかいう商務官をたずねて、これは国際小麦協定の価格を上まわらないだろうねということをもう一度念を押しに行つたときに、大体大丈夫だと思うけれどもということで言葉を濁しておる。そこに大問題がある。今足鹿君が指摘した通り、これは国際小麦協定以下の値段でもらつてもよい。アメリカは昨年は非常に豊穰な年であつて、農産物は余つておるのだから、当然日本に対する援助の方法として、相当政治的な手は打てたはずだが、こういうような経過で今日まで来ております。そこで私の伺いたいのは、現在アメリカから輸入しておる小麦の価格はCIF、運賃含みで大体八十五ドルくらいですね。もしそういうことで大きな開きがここに出て来たときには、援助などということには当然ならない。それから防衛生産に投下されるものでも――今通産大臣がおらないから議論にならないけれども、この贈与は、形としては贈与だが、実権はおれの方で握るのだというようなことを、二、三日前に在日米大使館で言つておるんですよ。これは非常に大きなからくりがこの間にあるということになり、今までやつてつたことは大体においてうそつぱちだということになつて、非常な問題になつて来ると思うが、農林大臣は完全に国際小麦協定以下の価格でこれを入れられるところの交渉をしておるか、また事実そういう自信がありますか。
  75. 保利茂

    ○保利国務大臣 国際小麦協定の価格以下で入つて参りますということは、私申し上げていないと思います。大体は、国際小麦協定で入つて来ておる程度で扱われるものであるというように了解をしておりますけれども、なお調べてみましよう。
  76. 川崎秀二

    ○川崎委員 この問題はまたあとであらためて持ち出します。  それからもう一つ、農林大臣に聞いておきたいのは、この小麦の買付のために、今第一通商の今井とかいう人が一月の二十日に日本を立つてアメリカに行つておるそうです。ところがどうやら一手に取扱いを委任するような形で大蔵、農林の間に話合いがついたのか、そういうことで行つておるようですが、これについて何か情報を知つておりますか。これは池田政調会長とどういう関係にありますか。
  77. 保利茂

    ○保利国務大臣 お答えいたします。池田政調会長からは、そういう話は何も聞いたことはございません。ただ今井社長に私会いまして伺いましたのは、かつて濠州と日本との間でございますか、相当長期のクレジットをもつて輸入いたしたことがある。そこでこういう意見はあるのでございますね。アメリカにとにかく余剰農産物がある、国内では少くともそれをもてあましておるではないか、日本では足りないでぶうぶう言つておるではないか、だから今金を払わないで、相当長期のクレジットのもとに大量にこれを輸入することができて、そうしてその返済までの期間中に、その資金をあるいは電源開発あるいは食糧増産等の国の基本的な施策に使つて行くという方途が見出せないかどうか、そういうところを研究する価値があるかないか、もしそういうことができるというならば、それをやる、やらないは別といたしまして、それも一つ方法であろう。先般今井社長がアメリカへ行かれるときに、そういうことがはたしてできるかできないかというようなことを調べて来る。どうぞそれはお調べ願つたらけつこうでございますということを私が申し上げて、そういうお願いをいたしておいたのであります。そのほかには何も――これは何かうしろに控えているものがおるようなふうにお考えであるとすれば、それはもう全然ありません。私は直接お話を伺つておりますから。
  78. 川崎秀二

    ○川崎委員 私は、この問題については時をあらためて、また追及いたしたいと思いますが、中間マージンだけでも十五億とかなんとか言われておるのです。この三井系の今井さんの会社に、すでに三十億ほどの赤字が出ておるというようなこともある。われわれとしては世間でいろいろ汚職問題がうるさいときですから、これはまだ発展途中の段階ですが、できればどんなことがあつても、そういうまぎらわしいうわさの立たないようにするのが望ましいので、多少老婆心ながらこの問題を提供しておきます。  それから小麦の問題については、あらためてまた伺います。
  79. 倉石忠雄

    倉石委員長 本日はこの程度にいたしまして、次会は明九日午前十時より開会いたします。  これにて散会いたします。    午後五時三十二分散会